説明

繰り返し移動する機関における移動結果を使用した移動機関予測情報通知システム。

【課題】 移動機関(路線バスや定期配送便等)を利用する場合、事前に(予約時等に)精度の高い予測情報を入手する事ができる移動機関予測情報通知システムを提供する
【解決手段】 予測に使用する移動機関情報を収集する予測情報収集システム2を搭載した路線バス1と、その情報を随時種類別に格納し移動体電話5等の要求に応じて希望する時に統計計算し結果等を通知するサーバーシステム4と、サーバーシステム4へアクセス可能な携帯電話5等の情報端末を備えた構成であって、精度の高い予測情報を簡単かつタイムリーに入手出来るようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば路線バス等の繰り返し移動する交通機関の過去の営業実績(到着時間、乗車率、売上高等)を多変量解析等の統計計算が可能なコンピュータシステムを使い比較や予測を行い、当該機関利用者や関係者に正確な予測情報を提供するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
交通機関の運行状況を通信機器やコンピュータシステムにより収集・整理し必要な関係者に正確な情報をタイムリーに提供する技術は、従来から存在する(例えば、特許文献1・2・3を参照)。しかし、この技術は、運行の現状を伝えるだけで未来の移動予測を行っていない。或いは、運行の現状と予め設定された運行ダイヤの時間差を使い、単純に到着時間を予測している。
【特許文献1】 特許公開2002−133589
【特許文献2】 特許公開2004−166275
【特許文献3】 特開平11−232495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため例えば路線バス利用者は、入手できる最新の運行状況に自ら記憶している知識・経験を加味し未来の運行予測を各自で行なっている。個人の記憶情報は、情報量が少なく、又定量的・論理的でないものが数多く含まれ精度に劣る。そしてこれが利用者の不安感を高め、いたずらに十分すぎる待ち時間を設けさせたり、十分すぎるほど頻繁に運行状況を確認させたりしている。また、運行状況とダイヤ表から単純予測した情報は、予測に使う情報量が少なく、また今後お起こり得る変化を考慮しておらず精度が劣る。さらに、信頼率等の補足情報も無く利用者にとってどの程度信頼して良いのか判断できず利用し難い情報である。
【0004】
そこで本発明の目的は、上記従来技術が抱える課題を解消し、多くの客観的情報を論理的かつ定量的に計算し精度の高い予測情報を提供するものである。これにより移動機関利用者及び関係者は、移動機関利用可否や移動機関の選定をする段階から移動が完了するまでの間の利便性と安心感を向上させ、計画の初期段階から無駄な時間や行動を減らすことが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、繰り返し移動する機関(例えば定期旅客便や定期配送便等)がそれぞれ持つ予測計算に使用出来る情報を中央サーバー装置に送信し分類・記憶させ、上記サーバーに記憶された情報は移動体電話やパーソナルコンピュータ等の情報端末のアクセスにより要求条件に合わせた抽出・再分類・統計計算等が行われ、予測情報として移動機関利用者や関係者に通知される構成としたものである。
【0006】
請求項目2記載の発明は、上記記載のサーバーが予め具備されたプログラムにより格納された予測用データ(例えば、乗車人数、降車人数、乗車定員)を基に新たな種類の予測用データ(例えば乗車率)を作成・格納できる構成としたものである。
【0007】
請求項目3記載の発明は、情報端末等からある移動機関の予測要求(例えばバス停AにバスBが到着する予測時刻の通知要求)があった場合、サーバーシステムに予め具備されたプログラムにより最適な統計計算手法を重回帰分析、判別分析、数量化1類、数量化2類等の中から選択し、直前まで格納した全データを使い推定値、推定区間、信頼率、寄与率、相関係数等の適切な統計結果を予測情報として当該端末等に送る構成としたものである。
【0008】
請求項目4記載の発明は、例えば2つの地点を結ぶ複数の比較可能な移動機関が存在し両者のデータをサーバーが格納している場合、情報端末等からの予測要求(例えばバス停CにバスDとバスEが運行しており到着時間の差の有無を確認する要求や到着時間のバラツキの差の有無を確認する要求)に基づき最適な検定・推定手法を選択し有意差判定、有意水準、優れた機関の推定値、推定区間、信頼率等適切な統計結果を当該端末等に送る構成としたものである。
【0009】
請求項目5記載の発明は、統計計算に用いたデータの性質(データセット数、データ取得期間、異常値の数、データの種類等)と各種統計量{有意水準、寄与率、(重)相関係数、ダービーワトソン比等}の組み合わせから最も適切な補足説明項目(アドバイス、判断、コメント等)をサーバーに具備されたプログラムを用い選択し、統計結果(平均値、バラツキ値、推定値、推定区間、信頼率等)と共に通知する構成としたものである。
【0010】
請求項目6記載の発明は、予測条件(検索したい便名、出発日時、天候等)と通知条件(通知日時、通知先、通知方法等)の入力と検索したい予測項目(到着時間、残席数、渋滞の有無)の選択をした上で、それまでの最新情報を希望した時に希望した所に希望した方法で通知することの出来る構成としたものである。受信した情報は、予め定められたプログラムにより画像、音声、光、振動、匂等五感で知覚出来る方法で通知される構成としたものである。
【0011】
請求項目7記載の発明は、移動機関の予測を行うためのデータを移動機関やその関係施設に具備した装置により自動又は手動で検知・収集・格納・プリントアウトでき、移動体電話等の通信手段を使い自動又は手動でサーバーに送ることの出来る構成としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、例えば旅客輸送機関等において利用者が乗車予約をする際に、最良の輸送機関を選択することが可能になる。過去の実績を統計処理することで得られる現実的で論理的な予測情報を当該便の運行が始まる前から入手できる。これにより利用者は精度の高い移動スケジュールをその初期段階から計画する事が出来、待ち時間や乗り継ぎ時間等を短縮でき、効率的な移動が出来る。また利用者の不安感と過剰な確認行為を軽減する。
【0013】
また、異常事態(異常気象・事件・事故等)が発生した場合、過去の同様の事例のみを検索・統計計算する事で異常事態発生時の運行予測や運行再開予測等従来旅客機関関係者や利用者が得る事の出来なかった信頼性が有り、かつ論理的な情報を提供できる。
【0014】
或いは、例えば貨物輸送機関等において利用者がどの輸送機関を使用するか検討する時、効率の良い輸送機関を選択する判断材料として利用できる。本発明により提供される予測情報は利用者及び輸送関係者に精度の高い配送スケジュールを計画させることが出来、両者に過剰な配送待ち時間や荷待ち時間を低減させる。また利用者の不安感と過剰な確認行為を軽減する。
【0015】
また、異常事態(異常気象・事件・事故等)が発生した場合、過去の同様の事例のみを検索・統計計算する事で異常事態発生時の配送予測や配送再開予測等従来配送機関関係者や利用者が得ることの出来なかった信頼性が有り、かつ論理的な情報を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態を示す。
【0017】
図1において路線バス1は、予測に使用するバス情報を自動又は手動により検知・収集・格納・送信・プリントアウトできる予測情報収集システム2を搭載している。この予測情報収集システム2は、送信により移動体電話会社の交換施設3を経由して中央に設置するサーバーシステム4に繋がっている。
【0018】
路線バス1に搭載の予測情報収集システム2は、予め決められた予測に使用するデータを適宜サーバーシステム4に送信する。サーバーシステム4は、これらの情報を随時自動又は手動で受信し、個々の情報を種類別に格納する。格納する情報は、例えば、路線名、便名、乗車定員、積載許容量、出発日・曜日・時刻、停車日・曜日・時刻、到着日・曜日・時刻、乗車人数、降車人数、天候、気温、風速、ワイパー作動日・曜日・時刻、ワイパー停止日・曜日・時刻、ブレーキ作動日・曜日・時刻、ブレーキ作動解除日・曜日・時刻、荷積日・曜日・時刻、荷降日・曜日・時刻、荷積量、荷降量、イベント・事件・事故・祭事等が当該路線当該便運行時刻に存在するか否か等がある。
【0019】
サーバーシステム4は、格納された一部の種類のデータを使用し予め定められたプログラムにより、或いは状況に応じ手動作成されるプログラムにより新たな種類のデータを作成する。例えば、乗車人数、降車人数、乗車定員が格納された直後に乗車率を算出、新たなデータとして格納する。または、ワイパー作動時刻とワイパー停止時刻から累積ワイパー作動時間を計算・格納する。
【0020】
サーバーシステム4に格納された情報は、路線バス利用者や関係者の移動体電話5等から移動体電話会社交換施設3等を使って自動又は手動で要求される。サーバーシステム4は、統計計算等の情報処理を行い当該利用や関係者の要求条件を満たした予測結果を移動体電話表示部5aや移動体電話スピーカー部5b等に通知する。
【0021】
図2は、統計計算プログラムフロー図の一例を示す。
【0022】
図3は統計計算プログラムフロー図内の統計情報組み合わせ表を示すブロック図である。
【0023】
予測計算は、例えば移動体電話5等から「3月3日水曜日午後3時乗車、路線バスF便、雨降り等々」の条件で「バス停Gの到着時刻の予測要求」があった場合、以下の如く行われる。サーバーシステム4は要求された目的変数と説明変数のデータの種類を識別し予めプログラムに具備されている「多変量解析等組み合わせ表」から重回帰分析を選択する。次に、格納されている全てのデータからバス停Gの到着時刻を目的変数にとった重回帰式を作成する。そしてこの式に上記条件を当てはめ、バス停Gにおける到着時刻推定値、推定区間、信頼率、寄与率、重相関係数等を算出する。
【0024】
次に、統計計算に使用したデータの性質と算出された各種統計量を予めサーバーシステム4内のプログラムに設定された「統計情報組み合わせ表」に対応させる事で補足説明項目を選定し、統計結果と共に移動体電話5等に通知する。例えば、上記例で使用したデータと算出された各種統計量が「統計情報組み合わせ表」のNo.2の条件{データのセット数31から90、異常値の数0、データ取得期間6から30日、有意差検定1%有意、(重)相関係数0.91以上、ダービーワトソン比1.6から2.4、寄与率0.81以上}に当てはまり統計計算結果が推定値15:00、推定区間14:55〜16:05、信頼率99%であった場合、それに対応する下記補足説明項目が統計結果と共に選定され移動体電話5等に送られる。「コメント:データ取得時期と同様な条件下で高精度の予測が可能である、結論:予想時刻は15:00と推定され99%の確立で14:55〜16:05の間に到着する、判断:統計的に精度は極めて高いが月間変動等加味されておらず十分注意すべきである、アドバイス:月間変動、季節変動、イベントの有無等考慮し、必要があればバス停には余裕を持って行くこと」。これらの情報により統計知識のない人でも簡単にその程度を理解できる。
【0025】
図4は、路線バス1に設置した予測情報収集システム2を示す。
【0026】
予測情報収集システム2は、移動機関の予測に必要な情報を検知・収集する情報取得部6と、情報取得部6を通して得られた情報を処理するCPU部7と、情報のやり取りを実行するインターフェース部8と、取得情報やプログラムを格納できるHD部9と、取得情報をアウトプットできるプリンター部10と、移動体電話等の送信に必要なプロトコルを生成するプロトコルコンバーター部11と、移動体電話等の回線を使ってサーバーシステム4に送信する送信部12を備えた構成である。
【0027】
図5は、本実施形態における動作フロー概略図を示す。
【0028】
予測情報収集システム2から中央に置かれたサーバーシステム4へ予測に使用する情報Tが送られる。サーバーシステム4は、上述の方法で情報Tを種類別に格納し、さらに一部種類のデータを使い新たな種類のデータも作成・格納する。一方、移動機関利用者や関係者から移動体電話5等により予測情報の検索要求tがあると、サーバーシステム4は、要求者の希望した時にその時点までに格納したデータを使って統計計算を行い、結果を当該移動体電話5等に送る。情報を受け取った移動体電話5等では、それを表示部5aやスピーカー部5b等を通して関係者へ通知する。
【0029】
図6は、予測情報要求から結果受信までのプロセスを示すフロー図(一例)である。
【0030】
移動機関利用者や関係者が、移動体電話5等を使い所定の方法によりサーバーシステム4へアクセスする。サーバーシステム4は、「検索目的選択メニュー」(「移動機関予測」か「移動機関比較予測」のどちらかを選択するための情報)を送信する。移動体電話5等は、この情報を表示部5aやスピーカー部5bなどにより通知する。当該利用者や関係者が移動体電話5等により「移動機関予測」を選択した場合、この情報はサーバーシステム4に送られる。サーバーシステム4は、予測に必要な「予測条件」(移動機関利用日時・曜日、路線名、便名、天候、祭事の有無等の検索条件を入力するための情報)、「通知条件」(通知日時、通知先、通知方法を入力するための情報)、「予測項目」(到着時刻予測、乗車率予測、残席数予測等の検索項目を選択するための情報)を移動体電話5等に送る。移動体電話5等はこの情報を前述の方法で当該利用者や関係者へ通知る。当該利用者や関係者が、「予測条件」と「通知条件」の入力と「予測項目」の選択をして送信すると、これを受けたサーバーシステム4は、当該利用者や関係者の希望する日時に要求された予測をして希望する通知先へ希望する方法で送る。これを受け取った移動体電話5等は、移動機関利用者や関係者に前述の方法で通知する。
【0031】
「移動機関比較予測」を選択した場合は、サーバーシステム4は、比較に必要な「比較条件」(複数の比較する便名毎に移動機関利用日時・曜日、路線名、天候、祭事の有無等の検索条件を入力するための情報)、「通知条件」(通知日時、通知する所、通知方法を入力するための情報)、「比較項目」(到着予想時刻比較、乗車予想率比較、残席予想数比較等の検索項目を選択するための情報)を移動体電話5等に送る。移動体電話5等はこの情報を前述の方法で当該移動機関利用者や関係者へ通知る。この利用者や関係者が、「比較条件」と「通知条件」の入力と「比較項目」の選択をして送信すると、これを受けたサーバーシステム4は当該利用者や関係者の希望する日時に要求された比較予測を行い、希望する通知先へ希望する方法で送る。これを受け取った移動体電話5等は、移動機関利用者や関係者に前述の方法で通知する。
【0032】
移動機関利用者や関係者は、これらの予測情報を事前に(例えば予約時に)得る事で最も適当と予想される便を選択でき、或いは最も適当と思われる時間にバス停で待つスケジュールを組む事ができる。また、効率的かつ安心感のあるスケジュールを立てる事ができる。さらに、鉄道等の関係者(例えば保線作業者)は、運行ダイヤとその時の運行状況から得られる情報の他に、早い段階での現実的な予測(実際の実力値予想)が可能になり精度及び安心感が飛躍的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態
【図2】統計計算プログラムフロー図(一例)
【図3】統計計算プログラムフロー図内の統計情報組み合わせ表を示すブロック図
【図4】予測情報収集システムのブロック図
【図5】本実施形態における動作フロー概略図
【図6】予測情報要求から結果受信までのプロセスを示すフロー図(一例)
【符号の説明】
【0034】
1 路線バス
2 予測情報収集システム
3 移動体電話会社交換施設
4 サーバーシステム
5 移動体電話
5a 移動体電話表示部
5b 移動体電話スピーカー部
6 情報取得部
7 CPU部
8 インターフェース部
9 HD部
10 プリンター部
11 プロトコルコンバーター部
12 移動体電話部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し移動する機関の予測に使用する過去の移動情報(各地点の発車日・時刻、到着日・時刻、ドライバー名等)、移動環境(天候、路面コンディション等)、移動条件(移動経路、各地点間の距離等)や営業情報(売り上げ、乗降者数・積降ろし量等)などを収集し別に設置するサーバーに送る予測情報収集システム、送られてきた情報を随時格納し統計計算するプログラムを具備するサーバーシステム、そしてこのサーバーにアクセスでき最新の予測情報を含む予測情報を受け取ることの出来る情報端末等のシステムで構成される事を特徴とする移動機関予測情報通知システム。
【請求項2】
上記データが種類別に格納されると、これを基に予測に使用する新たな種類のデータを作成・格納できる構成とした請求項目1記載のサーバーシステム。
【請求項3】
情報端末等の要求(予測要求等)に応じて推定値、推定区間、信頼率、寄与率、相関係数等の予測に適した統計結果を計算・通知出来ることを特徴とする請求項目1記載のサーバーシステム。
【請求項4】
複数の比較可能な移動機関が存在している場合、有意差の有無、推定値、推定区間、有意水準等上記移動機関の間に存在する優劣を判断するために適した統計結果を通知できる事を特徴とする請求項目1記載のサーバーシステム。
【請求項5】
予測に使用したデータの性質と得られた各種統計量から適切な補足説明項目(コメント、判断、アドバイス等)を選択・通知できる事を特徴とする請求項目1記載のサーバーシステム。
【請求項6】
移動機関利用者や関係者が予測情報を要求した時に希望した所に希望した方法で受け取ることの出来るプログラムを具備した請求項目1記載のサーバーシステムと情報端末等のシステム。
【請求項7】
本予測に使用する情報を検知、収集、記録、プリントアウト、通知、送信出来ることを特徴とする請求項目1記載の予測情報収集システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−287110(P2007−287110A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138273(P2006−138273)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(506167199)
【Fターム(参考)】