説明

缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルム、その製造方法及びそれを用いる缶体

【課題】金属板の缶外面側を印刷ポリエステルフィルムで被覆して保護被覆層を形成する際に接着剤の諸特性を改善し、画像のメタリック感を一層高めた色調を付与できる缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルム、その製造方法及びそれを用いる缶体を提供する。
【解決手段】印刷ポリエステルフィルム1a,1bは、缶体材料用金属板に熱硬化型樹脂系接着剤層4を介して加熱接着されて保護被覆層を形成する。基体ポリエステルフィルム2の一方の面に顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層3が設けられ、印刷層3上に、金属粉末が分散された熱硬化型樹脂系接着剤層4が設けられている。熱硬化型樹脂系接着剤層4は、ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物との混合物に、ブロックされていないイソシアネート化合物を0.1〜5重量%含有し、薄片で面方向の大きさが平均で15〜50μmのアルミニウム粉末を20〜70重量%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体材料用金属板の外表面に熱硬化型樹脂系接着剤層を介して加熱接着されて表面保護被覆層を形成する印刷ポリエステルフィルム、その製造方法及びそれを用いた缶体に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料物等の容器に使用される缶体としては、缶体材料用金属板を短冊状に裁断した平板状缶胴ブランクを丸め、その両側端縁を溶接接合することにより円筒状の缶胴部を形成し、この缶胴部の開口端に別途製造された缶蓋を取り付けたいわゆる3ピース缶、缶体材料用金属板を絞り加工或いはしごき加工して有底筒状の缶胴部を形成したいわゆる2ピース缶等が知られている。
【0003】
前記缶体では、基体金属と内容物との接触により基体金属が腐食されたり溶出した金属成分のために内容物のフレーバーが変化することを避けるために缶内面側には樹脂コーティングが施され、或は樹脂フィルムがラミネートされ保護被覆されている。一方、缶外面側には印刷塗装方法或は印刷フィルムラミネート方法等により所定の表示及びデザイン等の画像が形成されている。
【0004】
印刷塗装方法は、加熱オーブンの熱と揮散する有機溶媒による作業環境への影響の問題があり、それを解消する方法として、近年、予め印刷の施された印刷フィルムをラミネートして被覆する方法が実用化されている(特許文献1参照)。
【0005】
印刷フィルムのラミネート方法によれば、基体ポリエステルフィルムの一方の面に熱硬化型樹脂系接着剤層を設け、該ポリエステルフィルムと該熱硬化型樹脂系接着剤層との間に顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層を設けたポリエステルフィルムを、前記熱硬化型樹脂系接着剤層を介して缶体材料用金属板に熱接着することにより、缶体外面側に所定の表示及びデザイン等の画像を形成することができる。この方法は、缶体外面側に印刷塗装によらずに所定の表示及びデザイン等の画像による美粧性を付与することができ、印刷塗装及び焼き付けを行わずに缶外面保護被覆印刷缶体が得られるので作業環境が向上する。
【0006】
しかしながら、前記印刷ポリエステルフィルムを缶体材料用金属板に熱接着すると、前記印刷層の色調が前記缶体材料下地の色調に支配され、前記所定の表示及びデザインの画像に特殊な色調が得られないとの不都合がある。
【0007】
その解決策として、缶体材料用金属板に熱硬化型樹脂系接着剤を介して加熱接着されて保護被覆層を形成する印刷ポリエステルフィルムとして、基体ポリエステルフィルムの一方の面にパール顔料を除く顔料を含む樹脂組成物からなる第1の印刷層が設けられ、該第1印刷層上に金属粉末が分散された樹脂組成物からなる第2の印刷層が設けられ、該第2の印刷層上に、熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられているメタリック色調印刷フィルムを用いることにより、下地の影響を抑え、メタリック感および顔料の色調を出すことが出来、前記問題点を解消し美粧性を改善している(特許文献2参照)。
【0008】
近年、印刷による商品の差別化が進み、印刷フィルムを用いた飲料缶体が増えるにつれ、メタリック感のより強調された缶体が求められ、そのようなメタリック調缶体用の缶体材料被覆用印刷フィルムが求められている。また、該印刷フィルムとしては、前記メタリック調のみならず、印刷フィルムの製造性、缶体への密着性、得られた缶体のレトルト適性等、品質、生産性等の高いものが求められている。
【0009】
前記従来メタリック調印刷フィルムは、基体ポリエステルフィルムの一方の面に顔料入り印刷層、金属粉末入り印刷層をこの順に形成後、その上に接着剤層を形成しているが、メタリック感をより強調する方法としては、前記金属粉末入り印刷層に使用する金属粉末として、より大きい粒径の金属粉末を用いること、使用量を増やすことが考えられる。しかし、前記通常の印刷、たとえば汎用のグラビア印刷では、印刷速度、乾燥速度等の制約より、版の深さを大きくすることができず一回の印刷インキ厚さを厚くすることができない。そのため印刷インキ中に粒径の比較的大きい金属粉を用いることが困難で、無理に大きい粒径を使用すると版の目詰まりの原因となる。また印刷インキの中に含有させる金属粉末の使用量も限界があり、所望の大粒径の金属粉を所望の量だけ用いることがでず、さらには、所望の厚さにするためには複数回の重ね印刷が必要であり、それでも小さい粒径の金属粉末を使用する限りメタリック感は改善されないという問題があった。
【0010】
さらに、前記印刷フィルムは、接着剤層形成後、いったん巻き取り保管されるという作業工程をとるため、接着剤層は、短時間乾燥でタックフリーとされる必要があり、生産性を高めるためには、接着剤としては、塗装作業性がよく、高速塗装が可能で、より短時間で乾燥し、乾燥後の表面がタックフリーとなるものが求められる。さらに前記印刷フィルムを缶体材料表面に接着するにあたっては強力な接着効果が得られる必要があり、得られた缶体もレトルト処理後に白化等の生じないものが求められ、印刷フィルムの接着剤組成物としては、それらの特性についても優れたものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−96627号公報
【特許文献2】特許第3485333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる不都合を解消して、缶体材料用金属板の缶外面側を印刷ポリエステルフィルムで被覆して保護被覆層を形成する際に接着剤に求められる前記諸特性が改善され、前記所定の表示及びデザインの画像のメタリック感を一層高めた色調を付与することができる缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明の目的は、前記缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムの製造方法及び該缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムを用いる缶体を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明の缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムは、缶体材料用金属板の缶体外面側に熱硬化型樹脂系接着剤層を介して加熱接着されて保護被覆層を形成する印刷ポリエステルフィルムであって、基体ポリエステルフィルムの一方の面に顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層が設けられ、該印刷層上に金属粉末が分散された熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられていることを特徴とする。
【0015】
前記印刷層に用いられる顔料としては、従来から一般に用いられてきた有機顔料、無機顔料を使用することができる。また、印刷層を形成する樹脂組成物としては、従来から用いられてきた樹脂組成物を用いることができるが、エポキシブチラール系樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなる樹脂組成物、またはポリエステルポリウレタン樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなる樹脂組成物等が好ましい。本発明の缶体は、内容物を充填したのち、加熱殺菌処理(レトルト殺菌処理)が行われるのが通常であるが、前記レトルト処理を施すと、印刷層の選択を誤ると白化し該印刷層により形成される所定の表示及びデザイン等の画像が不明瞭になることがある。しかし、前記エポキシブチラール系樹脂とポリイソシアネート系樹脂、またはポリエステルポリウレタン樹脂とポリイソシアネート系樹脂からなる樹脂組成物により形成されていることにより、前記缶体材料被覆用ポリエステルフィルムにより保護被覆層を形成した缶体材料用金属板から形成してなる缶体に前記レトルト処理を施しても、前記印刷層に白化を生じず、鮮明な画像が得られるので好ましい。
【0016】
次に、本発明の前記熱硬化型樹脂系接着剤層としては、熱硬化型樹脂に金属粉末を分散させた金属粉末含有樹脂組成物を用いる。樹脂組成物としては、例えば、特許3485333号で開示のエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤を含む樹脂組成物、ポリエステル樹脂とアミノプラスト樹脂とを含む樹脂組成物を用いることができ、さらにはポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物とを含む樹脂組成物等からなる熱硬化型樹脂組成物等を使用することができる。本発明においては、より好適には、ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物からなる熱硬化型樹脂組成物を主体とし、少量のブロックされていないイソシアネート化合物を使用直前に配合して用いる樹脂組成物をあげることができる。
【0017】
前記印刷フィルムの接着剤の塗装工程は、顔料を含む印刷インキによる印刷工程と別工程とし、いったん印刷が施されたフィルムに対し、接着剤層を別工程で塗装することにより、印刷工程に拘束されず、好適な塗装速度条件で塗装することができる。また、接着剤の塗布は、印刷インキに比べ版を深く設計することができ厚塗りが可能なため、印刷インキでは使用できなかったような比較的大粒径の金属粉末を、比較的多量に分散させて使用することができる。
【0018】
前記熱硬化型樹脂系接着剤組成物に分散される金属粉末としては、アルミニウム、亜鉛、真鍮、ステンレス等の粉末を挙げることができる。優れたメタリック感を有する色調を付与するためには粒径の大きい金属粉末の使用が適しており、特に、薄片状で面方向の大きさが平均で15〜50μm、好ましくは薄片の厚さ0.1〜2μmの銀色の金属光沢を有する薄片状アルミニウム粉末を使用する。この粉末の使用量は、アルミニウム粉末の場合20〜70重量%、好適には、30〜60重量%の範囲で分散したものを使用することが適している。薄片の大きさが小さいとメタリック感がでず、大きすぎると塗装作業性が悪くなる。また使用量が少ないとメタリック感が得られず、多すぎても効果があまり変わらず、塗装作業性が低下するので好ましくない。また、乾燥後の膜厚が2〜8μmの層であることが適しており、薄いとメタリック感が得られず、厚すぎると印刷フィルムを接着後の加工密着性が低下するので好ましくない。
【0019】
前記金属粉末を分散させた前記接着剤層を備えた印刷ポリエステルフィルムを前記缶体材料用金属板からなる缶体外面に加熱接着することにより、缶体に従来印刷フィルムでは得られなかった独特のきらきらざらざら感のある優れたメタリック感を有する色調を付与することができる。前記樹脂組成物に分散されるアルミニウム粉末が20重量%未満のときには前記所定の表示及びデザイン等の画像にメタリック感が得られないことがあり、70重量%を超えてもメタリック感を付与する効果はそれ以上には得られず、接着強度が低下するので好ましくない。
【0020】
本発明の印刷フィルムの前記接着剤層は、前記金属粉末を分散した状態で高速塗装、たとえば、100m/分のごとき速度で塗装されるため、金属粉が安定した分散状態であり、なおかつ塗装できる適性粘度であることが求められる。そして、基体ポリエステルフィルムの印刷層の上に塗装、乾燥後は、高速で巻き取られるという工程をとるため、短時間で乾燥され、乾燥後の接着剤表面はタックフリーとされる必要がある。更に、平板状或いは円筒状の缶体用金属材料に接着剤層を介してラミネートされた後は、強固に缶体の外表面に接着し、内容物充填後のレトルト処理で白化等の無いことが求められている。
【0021】
かかる比較的大粒径の金属粉末の分散安定性と高速塗装適性、塗装フィルムの巻き取り時および再使用時のタックフリー適性、金属材への接着性、さらには、得られた缶体のレトルト適性等の点から、本発明においては、接着剤として、ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物からなる熱硬化型樹脂組成物を主体とし、少量のブロックされていないイソシアネート化合物を塗装直前に配合して用いる接着剤組成物が特に適している。すなわち、金属粉末を分散含有した塗装前の接着剤溶液は、粘度が低すぎると配合した金属粉末の分散安定性が低下し、高すぎると塗装作業性が低下するという問題がある。本発明においては、使用直前にブロックされていないイソシアネート化合物を少量添加することにより、溶剤使用量、樹脂含有量、金属粉末量はそのままで、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物を反応させて粘度調整を行い、金属粉末の分散安定性の確保と、塗装作業性の両者に好適な適性粘度範囲に調整して塗装することができる。さらに、溶剤を揮散させた乾燥後の接着剤層は、ブロックイソシアネート化合物は実質的に未反応の状態を保持したままで、使用ポリエステル樹脂はイソシアネート化合物との反応により高分子化されてタックフリーとなり、フィルムの巻き取り保管作業性が向上する。このフィルムは、缶体材料用金属板にラミネートして加熱することにより、高分子化された接着剤組成物は、ブロックイソシアネート化合物のブロック剤がはずれ、ポリエステルとの熱硬化反応がさらに進み、缶体下地との接着強度が一層向上し、レトルト処理にも耐える接着強度が得られる。また、得られた印刷フィルムは、缶体にラミネートすることにより優れたメタリック感を付与することができる。
【0022】
前記ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物を含有する熱硬化型樹脂系接着剤組成物において用いられるポリエステル樹脂としては、多価カルボン酸化合物と多価アルコール化合物との縮合重合反応により得られる側鎖或は末端に水酸基を有するポリエステル樹脂であって、イソシアネート化合物との反応後は、常温でタックフリーとなるような分子量、ガラス転位温度(Tg)を備えるポリエステル樹脂が適している。ガラス転位温度(Tg)としては、10℃以上、好ましくは20℃〜65℃のものが適している。硬化剤として用いるブロックイソシアネート化合物としては、脂肪族系、芳香族系、脂環状の多官能イソシアネート化合物と公知ブロック化剤との反応により得られるブロックイソシアネート化合物をあげることができる。
【0023】
多官能イソシアネート化合物としては、たとえば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系ジイソシアネート類、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環状イソシアネート化合物、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族系イソシアネート類を上げることができる。このようなイソシアネート化合物のブロック化剤としては、公知のブロック剤、たとえばフェノール、クレゾール等のフェノール類、ラクタム類等を上げることができる。
【0024】
本発明の接着剤組成物は、ポリエステル樹脂を主体とし、ブロックイソシアネート化合物を接着剤組成物の全量に対して1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%程度の範囲で含むことが適している。1重量%未満では缶体へのラミネートの熱接着時の硬化反応が不十分で、缶体への接着性、レトルト適性が不十分となり、10重量%を超えると硬化が進みすぎ加工性が低下するので好ましくない。また使用直前に配合して用いるブロックされていないイソシネート化合物としては、前記のごとき脂肪族系、芳香族系の多官能イソシアネート化合物を接着剤組成物の全量に対して0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%程度の範囲で使用することが適している。0.1重量%未満では、塗装粘度の調節がしにくく、塗布乾燥後の接着剤表面がタックフリーになりにくく、巻き取り後の再使用時の作業性が悪くなり、フィルムを金属材に接着後の接着性も低くなり好ましくない。また、5重量%を超えると、配合後の樹脂溶液が増粘しやすく塗装作業性が悪くなり好ましくない。
【0025】
前記接着剤組成物を使用する方法としては、ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物とを含む樹脂溶液中に、使用直前にブロックされていないイソシアネート化合物をブレンドし、イソシアネート化合物の反応による粘度増加を考慮しながら、粘度の下限と上限を、金属粉末の分散安定性に適し、かつ、塗装作業性に支障をきたさない適正粘度範囲に設定し、汎用のコーター、好ましくはグラビアコーターで印刷済みのフィルム上に塗装する。塗装時の樹脂溶液の粘度としては、フォードカップ#4で20秒〜40秒の範囲が適している。粘度が低すぎると金属粉末が沈降しやすく分散安定性が低下し、塗装面も不均一となり、粘度が高すぎると樹脂の流動性が低下し塗装作業性が悪くなり、塗装面も塗装むらができて好ましくない。接着剤塗装後、ブロックイソシアネート化合物とポリエステル樹脂との実質的な硬化反応が進行しない程度の高温短時間の加熱処理を行い、溶剤の乾燥除去と、添加イソシアネート化合物とポリエステル樹脂との反応を促進させ、接着剤層をより高分子化することにより、接着剤層をタックフリーとすることができる。かくすることにより高速でフィルムを巻き取り保管することができ、さらに本フィルムを缶体材料用金属板に接着使用するときの作業性及び接着性が一段と向上する。
【0026】
前記熱硬化型接着剤には、適宜、ブロック解離触媒を少量用いることができる。また、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等を改質剤として適宜配合することもできる。
【0027】
また、前記エポキシ樹脂/酸無水物系熱硬化型樹脂系接着剤層としては、数平均分子量5000〜20000のエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤とを70/30〜99/1の重量比で含む樹脂を用いることにより、またポリエステル樹脂/アミノプラスト樹脂系熱硬化型樹脂系接着剤層としては、ポリエステル樹脂とアミノプラスト樹脂とを70/30〜90/10の重量比で含む樹脂からなるものを用いることにより、高温で短時間の加熱で、前記缶体材料被覆用ポリエステルフィルムと前記缶体材料用金属板との間で十分な接着強度を得ることができる。
【0028】
前記エポキシ樹脂は数平均分子量が5000未満のときには接着強度が不足し、20000を超えるときには高粘度となり塗布作業性が劣るので、共に好ましくない。また、前記数平均分子量が5000未満であると、前記ポリエステルフィルムに予め塗布乾燥して接着剤層を形成するときに、前記接着剤層の粘着性が高くなり、タックフリー性が低下する。また、前記エポキシ樹脂と前記酸無水物系硬化剤との重量比が99/1未満では高温で加熱しても前記エポキシ樹脂の硬化に長時間を要し、また70/30を超える割合としても前記エポキシ樹脂の硬化を促進する効果はそれ以上には向上されない。
【0029】
前記酸無水物系硬化剤としては、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸及びその誘導体等を挙げることができるが、硬化性、塗布後の膜の耐ブロッキング性、タックフリー性等に優れている点から無水トリメリット酸及びその誘導体からなる無水トリメリット酸系硬化剤が適している。無水トリメリット酸の誘導体としては、例えば、グリセロールトリストリメリテート無水物、無水トリメリット酸の二量体、エチレングリコールビストリメリテート無水物等を挙げることができる。
【0030】
前記接着剤層を形成するエポキシ樹脂は、ビスフェノールとエピクロルヒドリンとの反応により得られるビスフェノール型エポキシ樹脂であることが好ましく、前記酸無水物系硬化剤以外にさらにフェノール樹脂などの他の硬化剤を含んでいてもよい。
【0031】
前記接着剤層を形成する樹脂組成物は、高温で短時間の加熱で、前記缶体材料被覆用ポリエステルフィルムと前記缶体材料用金属板との間で十分な接着強度を得るために、前記印刷層を形成する樹脂の種類に応じて選択的に使用されることが好ましい。前記接着剤層がエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤とからなるときには、熱硬化の際、ブロック剤の揮散等も無いので、缶体内面側のフィルム接着用の接着剤としても好適である。
【0032】
前記ポリエステルフィルムは、使用前に、前記寸法安定性を確保するために、予め160℃で6秒間程度保持する熱処理を施してもよいが、前記接着剤層が設けられている面の反対側に熱硬化型樹脂からなる硬化オーバーコート層が設けられていることが好ましい。前記硬化オーバーコート層を設けることにより、前記ポリエステルフィルムの残留応力が緩和されると共にフィルムの伸縮が規制され前記寸法安定性が確保されるとともに、耐傷付性が向上する。また、前記硬化オーバーコート層を設けることにより、前記缶体材料被覆用ポリエステルフィルムにより保護被覆層を形成した缶体材料用金属から得られた缶体に内容物を充填し前記レトルト殺菌処理等の加熱処理を施す際にポリエステルフィルム中の低重合度成分(オリゴマー)が表面に析出することが防止される。また、滑り性がよくなる。かかるオーバーコート層は、あらかじめ印刷フィルムを製造する段階で施してもよく、また円筒状缶胴にオーバーコート層を設けない印刷フィルムをラミネートした後、該表面にオーバーコート層を形成してもよい。
【0033】
前記硬化オーバーコート層を形成する熱硬化型樹脂は、高温短時間で硬化フィルムを形成する樹脂であることが好ましく、例えば、エポキシ樹脂とアミノプラスト樹脂とからなり短時間硬化触媒として有機酸またはリン酸、ポリリン酸等の無機酸が添加されているものが適している。前記熱硬化型樹脂は、耐傷付性の向上、滑り性向上のために、シリコン或はワックスが添加されていることが好ましい。
【0034】
前記缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムの基体ポリエステルフィルムとしては、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合により得られる強度及び透明性等に優れているものが適しており、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール類との重縮合により得られるポリエステルが好ましい。
【0035】
前記ポリエステルフィルムは、後述の熱硬化型樹脂系接着剤による接着力を向上させるために、前記接着剤層が形成される面に予めコロナ放電等の表面酸化処理が施されていることが好ましい。
【0036】
また、前記ポリエステルフィルムは5〜50μmの範囲の厚さを有することが好ましい。前記ポリエステルフィルムの厚さが5μm以下であるときには、該フィルムの保護被覆層を缶体材料に接着させる工程で、あるいは、その後の加工工程で、該フィルムが傷付きやすく、ピンホール等が発生して、缶体の腐食、金属の溶出を防止する効果が十分に得られないことがある。また、50μm以上のときには残留応力が大きくなり、溶接缶体に加工するときに缶胴部にネックイン加工等の絞り加工を施すと、前記ポリエステルフィルムの前記缶体材料用金属板に対する密着性が低下する傾向がある。
【0037】
さらに、前記ポリエステルフィルムは、前記印刷層を設けるための強度及び前記缶体材料用金属板に接着される際の熱処理に対する寸法安定性が要求されるので、ポリエチレンナフタレート等の耐熱性ポリエステルフィルム、一軸または二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルム等が好ましく、特に、材料物性的には150℃に30分保持したときの長手方向の熱収縮率が1.2%以下、幅方向の熱収縮率が0%の二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
【0038】
前記缶体材料用金属板としては、錫メッキ鋼板、TFS板、アルミ板、それらの表面に各種表面処理をほどこした表面処理金属板、またプラスチックフィルムをラミネートしたもの或いは樹脂コーティングを施したもの等を適宜用いることができる。
【0039】
また、本発明の印刷ポリエステルフィルムをラミネートする前記缶体材料用金属板は、平板状であっても、円筒状に形成されたものであってもよい。平板状金属板を用いる場合は、該金属板に印刷フィルムをラミネートした後、溶接缶形成方法等の公知方法により円筒状に丸め、缶蓋を取り付けることにより外面印刷フィルムラミネート缶体とすることが出来る。また、表面にプラスチックフィルムをラミネートした金属板を用いて絞り或はしごき加工により有底筒状のいわゆる2ピース缶を形成し、公知の方法により、その缶胴部に前記印刷フィルムをラミネートすることにより容易に外面印刷フィルムラミネート缶体とすることが出来る。
【0040】
たとえば、外面印刷フィルムラミネート溶接缶の場合、平板状の缶体材料用金属板の缶胴部外面側に対し、両側端縁部を除いた部分に、缶外面側となる一方の面に本発明の缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムを該接着剤層を介して加熱接着し、他方の缶内面側となる面に保護被覆層を設けた後、該平板状金属板を丸め両側端縁部を重ね合せて溶接接合することにより缶胴部を形成し、次いで、一方の開口端部に缶蓋を二重巻き閉めして3ピース溶接缶体を得ることができる。
【0041】
また、外面印刷フィルムラミネート2ピース缶体の場合、内外面に保護フィルムをラミネートした平板を絞り或はしごき加工して有底円筒状に成形後、形成された缶体の缶胴部外面側に対し、本発明の缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムを該接着剤層を介して加熱接着して保護被覆層を形成し、缶胴部を形成することにより2ピース缶体を得ることができる。
【0042】
本発明の前記缶体は、内容物に応じて、缶胴部内面側に塗装或はフィルムラミネートにより保護被覆層が形成されていることが望ましい。缶胴部内面側に保護被覆層を形成するフィルムとしては熱硬化型樹脂系接着剤層が一方の面に設けられているポリエステルフィルムが挙げられる。尚、このようなポリエステルフィルムは、無地でよく、印刷層を設ける必要がないので、前記外面側に保護被覆層を形成するポリエステルフィルムのような強度、寸法安定性などが厳格には要求されない。従って、延伸されていないポリエステルフィルムであってもよく、一軸または二軸延伸されたポリエステルフィルムであってもよいが、缶体材料用金属板を被覆する工程への適性、缶体となったときの缶品質の面からポリエチレンテレフタレートフィルムが適している。
【0043】
本発明の缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムは、その一方の面に設けられた前記接着剤層により缶体材料用金属板に加熱接着されて保護被複層を形成するときに、該ポリエステルフィルムに設けられている印刷層により前記缶胴形成用金属板の缶外面側に塗装によらずに所定の表示及びデザインの画像が形成される。このとき、印刷層と前記缶体材料用金属板の金属下地との間に金属粉末が分散された樹脂組成物からなる熱硬化型接着剤層が介在するので、印刷層の印刷が前記缶体の金属下地の色調に支配されることなく、前記印刷層により前記所定の表示及びデザインの画像に優れたメタリック感を有する色調が付与される。接着剤層は、グラビア印刷のインキ層に比べ一回の塗装工程で厚膜塗装ができるため、粒径の大きい金属粉末を比較的多量に使用することができる。そのため、独特のきらきらしたざらざら感のあるメタリック調印刷仕上がり感が得られ、美粧性に優れた缶体が得られる。また、インキ層に比べ厚膜塗装が可能なため、従来の印刷工程での重ね塗り厚膜仕上げに比べ印刷塗装工程数を減らすことも可能であり、印刷工程を簡略化することもできる。前記印刷層は、前記のようにポリエステルフィルムと金属缶胴部材との間に設けられるので、印刷層が該ポリエステルフィルムにより遮蔽され外傷から保護される。
【0044】
本発明の前記接着剤層は、前記金属粉末を分散した状態で高速塗装、たとえば、100m/分のごとき速度で塗装されるため、金属粉が分散状態であり、なおかつ塗装できる適性粘度であることが求められ、基体ポリエステルフィルムの印刷層の上に塗装され、加熱乾燥後、フィルムは高速で巻き取られるという工程をとるため、短時間で乾燥されタックフリーとされる必要がある。更に、平板状或いは円筒状の金属材料にラミネートされた後、熱硬化して強固に外表面に接着することが求められている。かかる金属粉末の分散安定性と高速塗装適性、ラミネート後のタックフリー適性、金属材への接着性、得られた缶体のレトルト適性等の点から、本発明においては、ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物からなる熱硬化型樹脂組成物を主体とし、少量のブロックされていないイソシアネート化合物を塗装直前に配合してなる接着剤組成物を用いることにより、ブロックされていないイソシアネート化合物とポリエステル樹脂中の反応基とを反応させて、金属粉末の分散安定性を確保しつつ、塗装に好適な適性粘度に調整して塗装することができる。さらに、乾燥後のフィルムの接着剤層は、ブロックイソシアネート化合物は実質的に未反応の状態を保持したままで使用ポリエステル樹脂は高分子化されてタックフリーとなり、フィルムを巻き取り保管の作業性が向上する。このフィルムを缶体材料用金属板にラミネートして加熱することにより、高分子化された接着剤組成物は、ブロックイソシアネート化合物のブロック剤がはずれ、ポリエステル樹脂との熱硬化反応がさらに進み、缶体材料表面との接着強度が一層向上し、レトルト処理にも耐える接着強度が得られる。
【0045】
本発明の缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムは、前記接着剤層が設けられている面の反対側に熱硬化型樹脂からなる硬化オーバーコート層が設けられていることにより、缶体材料用金属板に前記接着剤層を介して加熱接着される際に、前記ポリエステルフィルムの残留応力が緩和されると共に伸縮が規制されるので熱処理に対する寸法安定性が確保される。また、前記硬化オーバーコート層により、前記ポリエステルフィルムを加熱接着して前記保護被覆層を形成した缶体材料用金属板から溶接缶体を形成したのち、前記レトルト殺菌処理等の加熱処理を施す際に缶表面にポリエステルフィルム中のオリゴマーの析出、フィルム表面の傷付きが防止され、缶表面の滑り性がよくなる。
【0046】
また、本発明の缶体によれば、前記缶体材料被覆用ポリエステルフィルムでその缶外面側が被覆され、前記所定の表示及びデザインの画像に優れたメタリック感を有する色調が付与された缶胴部が形成されるので、該画像によりその缶胴部外面側に優れた美粧性が得られる。
【発明の効果】
【0047】
以上のことから明らかなように、本発明の缶体材料被覆用ポリエステルフィルムによれば、缶胴金属部に加熱接着されて保護被覆層を形成したときに、前記印刷層は、前記金属粉末が分散された樹脂組成物からなる熱硬化型接着剤層からなるメタリック層により金属下地の色調に支配されることなく、所定の表示及びデザインに優れたメタリック感を有する色調を付与することができる。
【0048】
また、前記接着剤層が、平均粒径15〜50μmのアルミニウム粉末を20〜70重量%の範囲で含み、厚さ3〜7μmの層を形成することにより、さらに優れたメタリック感を有する色調を付与することができる。
【0049】
また、前記接着剤層は、ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物との混合物に、ブロックされていないイソシアネート化合物を、該接着剤層の全量に対して0.1〜5重量%の範囲で含むことにより、溶剤使用量、樹脂含有量、金属粉末量はそのままで、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物を反応させて粘度調整を行い、金属粉末の分散安定性の確保と、塗装作業性の両者に好適な適性粘度範囲に調整して塗装することができる。さらに、溶剤を揮散させた乾燥後の接着剤層において、ブロックイソシアネート化合物は実質的に未反応の状態を保持したままであり、使用ポリエステル樹脂は高分子化されてタックフリーとなるので、フィルムの巻き取り保管作業性が向上する。前記接着剤層は、缶体材料用金属板にラミネートして加熱することにより、ブロックイソシアネート化合物のブロック剤がはずれ、高分子化されたポリエステルとの熱硬化反応がさらに進むので、下地との接着強度が一層向上し、レトルト処理にも耐える接着強度が得られる。
【0050】
また、本発明の缶体材料被覆用ポリエステルフィルムは、前記接着剤層が設けられている面の反対側に熱硬化型樹脂からなる硬化オーバーコート層が設けられているので、前記加熱接着の際の熱処理に対して寸法安定性に優れているとともに、缶体を形成したときにレトルト殺菌処理等の熱処理によるオリゴマーの析出を防止することができ、さらに耐傷付性及び缶材、缶体の滑り性を向上させることができる。
【0051】
本発明の缶体によれば、前記缶体材料覆用ポリエステルフィルムでその缶外面側が被覆され、前記所定の表示及びデザインの画像に優れたメタリック感を有する色調が付与された缶胴部が形成されるので、該画像によりその缶胴部外面側に優れたた美粧性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)は、本発明に係わる缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムの一構成例を示す説明的断面図であり、(b)は、本発明に係わる缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムの他の構成例を示す説明的断面図である。
【図2】図1(a)示の缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムが形成された缶体材料用金属板の構成を示す説明的断面図である。
【図3】図2示の金属板から形成される溶接缶体の缶胴部を示す説明的部分断面図である。
【図4】TFS金属板の両面にポリエステルフィルムをラミネートしたフィルムラミネート金属板を絞り或いはしごき加工して得られた有底円筒状の2P金属缶体を示す説明的部分断面図である。
【図5】図4示の円筒状缶胴部の外面側に缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムをラミネートし、開口部にネックイン加工およびフランジ加工が施された2ピース缶の説明的部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0054】
まず、本実施形態の缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムについて説明する。
【0055】
金属缶体の缶胴外面側に接着される印刷フィルム1aとしては、図1(a)示のように、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、ポリエチレンテレフタレートをPETと略記する)フィルム2の一方の面に、顔料を含む印刷インキによりグラビア印刷が施された印刷層3、アルミニウム粉末を含む熱硬化型樹脂系接着剤からなる接着剤層4が設けられ、反対側の面には熱硬化型樹脂により形成された透明な硬化オーバーコート層5が設けられている。また、印刷フィルム接着後に所望により硬化オーバーコート層を設けるための印刷フィルムとして、図1(b)示のように、硬化オーバーコート層の形成されていない印刷フィルム1bが形成される。
【0056】
印刷層3は、エポキシブチラール樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなり顔料を含む印刷インキから形成されている。印刷層3は、缶外面側に所定の表示及びデザインの画像を形成するために、所要の各色の顔料を含む前記印刷インキが1色ごとにグラビア印刷により積層されて、多色印刷されている。印刷層3の厚さが、乾燥後に約1μmになるようにされている。そして、印刷層3により所定の表示及びデザインの画像が形成されている。
【0057】
接着剤層4は、好適接着剤組成物として、ポリエステル樹脂にブロック化イソホロンジイソシアネート化合物を、該接着剤組成物の全量に対して2重量%ブレンドした熱硬化型樹脂組成物を主体とし、ブロックされていないイソシアネート化合物を施工直前に、該接着剤組成物の全量に対して1重量%配合して用いられる。前記樹脂組成物が有機溶剤に溶解した樹脂溶液に平均薄片サイズ28μmのアルミ粉末を該接着剤組成物の全量に対し50重量%分散させた接着剤組成物を適性粘度に調整し、印刷層3の上に塗布し、乾燥条件として、溶剤の除去と、イソシアネート化合物の反応を進行させるがブロックイソシアネート化合物の反応は実質的に進行しないような温度として、160℃で数秒間の乾燥を行った。乾燥後の接着剤の膜厚は5μmであった。印刷層3の上に施工された接着剤層は乾燥状態で、タックフリーであり、連続的に施工された印刷フィルムは常温で巻き取られたが粘着することはなく作業性は良好であった。
【0058】
硬化オーバーコート層5は、図1(a)示のようにポリエステルフィルムの一方の面にあらかじめ塗布し、他方の面に印刷層、接着剤層を形成して印刷フィルムとするか、或は図1(b)示のように硬化オーバーコート層なしの印刷フィルムを金属板に貼り付けた後フィルム表面に設けるか、いずれの方法でもよい。用いる硬化オーバーコート層5は、エポキシ樹脂とアミノプラスト樹脂とからなり、リン酸触媒を添加した熱硬化型樹脂により形成されている。また、硬化オーバーコート層5は、ポリエステルフィルム1により保護被覆層が形成された缶体において、ポリエステルフィルム1の耐傷付性向上及び缶体表面の滑り性向上のために、シリコンまたはワックスが添加されていることが好ましい。
【0059】
次に、本実施形態の印刷ポリエステルフィルム1を用いる缶体について説明する。
【0060】
本実施形態の缶体Aは、図2に示すごとく、缶胴形成用ブリキ板11から形成される。缶胴形成用ブリキ板11は、その缶外面となる側の両側端縁部11a,11aを除いた部分に図1(a)示の印刷フィルム1aが接着剤層4を介して熱接着されて保護被覆層12が形成されている。なお、図2では、印刷フィルム1aの印刷層3、オーバーコート層5を省略して示している。また、ブリキ板11の缶内面となる側の両側端縁部11b,11bを除いた部分には、透明なPETフィルム13が接着剤としてエポキシ樹脂/酸無水物系熱硬化型樹脂系接着剤をあらかじめ塗布したポエステルフィルムを熱硬化型樹脂系接着剤層14を介して熱接着されて内面保護被覆層15が形成されている。
【0061】
ブリキ板11は印刷フィルム1aによりその缶外面側が被覆されているので、保護被覆層12に形成されている前記所定の表示及びデザインの画像に、接着剤層により優れたメタリック感が付与されている。ここで、印刷フィルムを接着させる前工程として、ブリキ板に表面処理を施してもよく、ポリエステルフィルム等をラミネートしたものであってもよい。
【0062】
次いで、保護被覆層12及び内面保護被覆層15が形成されたブリキ板11は、図3示のように丸められ、両側端縁部11a,11bを重ね合わせて溶接接合することにより缶胴部16が形成される。缶胴部16の保護被覆層12及び内面保護被覆層15が形成されていない部分には、公知の被覆補正塗料17により、被覆補正がなされる。そして、缶胴部16の両端縁部をネックイン加工、フランジ加工したのち、別途製造された缶蓋を二重巻締めすることにより、3ピース溶接缶体として本実施形態の缶体Aが得られる。缶体Aは、その缶外面側に印刷が施された印刷ポリエステルフィルム1aで被覆されて保護被覆層12が形成されているブリキ板11から缶胴部16が形成されるので、保護被覆層12に形成されている前記所定の表示及びデザインの画像により缶胴部16の外面側に優れた美粧性が得られ、食缶、飲料缶等に好適に用いられる。
【0063】
溶接缶体では、通常、内容物を充填したのち、レトルト殺菌処理が行われるが、前記溶接缶体では、前記レトルト殺菌処理を行っても前記印刷層に白化が生じることがない。従って、前記所定の表示及びデザインに鮮明な画像が得られる。たとえば、本発明の前記好適接着剤を用いた印刷フィルムを缶体外面に施した缶を用いて、125℃で30分のレトルト処理を行ったが、接着性は良好で、白化も無く、優れたメタリック感の印刷しあがりが保持されていた。
【0064】
尚、本実施形態では前記印刷層を形成する樹脂組成物にエポキシブチラール樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなる樹脂組成物を用いているが、ポリエステルポリウレタン樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなる樹脂組成物を用いてもよく、この場合にも前記レトルト殺菌処理の際に前記各印刷層に白化が生じることがなく、前記所定の表示及びデザインに鮮明な画像が得られる。
【0065】
また、本実施形態では、接着剤層4に前記の樹脂組成物のほかに、エポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤を含む熱硬化型樹脂系接着剤を用いてもよい。また、接着剤層4はポリエステル樹脂とアミノプラスト樹脂とを70/30〜90/10の重量比で含む熱硬化型樹脂系接着剤であってもよい。
【0066】
また、接着剤層4は金属粉末のほかに適宜有機、無機顔料等他の顔料を含むものであってもよい。接着剤層4に他の顔料を含むことにより、缶胴形成用ブリキ板11に接着された際に金属下地が確実に遮蔽されるだけでなく、印刷絵柄を引き立たせる優れたメタリック感が得られる。
【0067】
なお、保護被覆層12が形成されたブリキ板11により溶接缶体を形成しているが、ブリキ板11は缶詰の蓋、エアゾール缶の底蓋或はドーム状部等を形成するために使用することもできる。
【0068】
次に、本実施形態の缶体Bとしては、缶胴部の外面に本発明の印刷フィルムをラミネートした円筒状の缶胴部を備えた2ピース金属缶体を挙げることができる。該缶体Bは、図4示のように、TFS金属板18の両面にポリエステルフィルム19、20をラミネートしたフィルムラミネート金属板を用いて絞り或いはしごき加工を行うことにより形成される有底円筒状の2ピース金属缶体21として得られる。本実施形態の缶体21は、図5示のように、その円筒状缶胴部の外面側に図1(a)の印刷フィルム1a、或は図1(b)の印刷フィルム1bと同様の構成を備える印刷フィルム23をラミネートし、開口部にネックイン加工24およびフランジ加工25が施された2ピース缶体26として使用される。
【符号の説明】
【0069】
1a,1b…缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルム、2…基体ポリエステルフィルム、3…印刷層、4…熱硬化型樹脂系接着剤層、5…硬化オ−バーコート層、11…缶体材料用金属板、11a,11b…側端縁部、12…缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルム、16…缶胴部、21…有底円筒状缶体、22…印刷ポリエステルフィルムラミネート2ピース缶体、23…缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶体材料用金属板に熱硬化型樹脂系接着剤層を介して加熱接着されて保護被覆層を形成する印刷ポリエステルフィルムであって、
該印刷ポリエステルフィルムは、基体ポリエステルフィルムの一方の面に顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層が設けられ、該印刷層上に、金属粉末が分散された熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられていることを特徴とする缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記熱硬化型樹脂系接着剤層は、金属粉末として、薄片で面方向の大きさが平均で15〜50μmの範囲のアルミニウム粉末を、該接着剤層の全量に対して20〜70重量%の範囲で含有する層であることを特徴とする請求項1記載の缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記熱硬化型樹脂系接着剤層は、ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物との混合物に、ブロックされていないイソシアネート化合物を、該接着剤層の全量に対して0.1〜5重量%の範囲で含む樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記印刷ポリエステルフィルムの前記接着剤層が設けられている面の反対側に、熱硬化型樹脂からなる硬化オーバーコート層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルム。
【請求項5】
缶体材料用金属板から形成された缶胴部外面側に対し、一方の面に顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層が設けられ、該印刷層上に、金属粉末が分散された熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられている缶体材料被覆用ポリエステルフィルムを該接着剤層を介して加熱接着して保護被覆層を形成してなることを特徴とする缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルム被覆缶体。
【請求項6】
缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルム被覆缶体が溶接缶体、或は有底円筒状2ピース缶体であることを特徴とする請求項5記載の缶体。
【請求項7】
基体ポリエステルフィルムの一方の面に顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層が形成され、該印刷層上に、金属粉末を含有する熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられた缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムの製造方法であって、
該熱硬化型樹脂系接着剤層は、ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物との混合物に、金属粉末を添加して第1の樹脂溶液を調製し、第1の樹脂溶液に、ブロックされていないイソシアネート化合物を0.1〜5重量%の範囲で添加して第2の樹脂溶液を調製し、第2の樹脂溶液を、印刷層上に塗装し、実質的にブロックイソシアネート化合物の熱硬化反応が進行しない条件で加熱乾燥することにより設けられたものであることを特徴とする缶体材料被覆用印刷ポリエステルフィルムの製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−201856(P2010−201856A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51945(P2009−51945)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(505440295)北海製罐株式会社 (58)
【Fターム(参考)】