説明

羊水中の無細胞胎児DNAを使用する出生前診断

本発明は、改善された出生前診断方法、スクリーニング方法、モニタリング方法、および/または試験方法に関する。本発明の方法は、羊水から単離した無細胞胎児DNAのアレイベースのハイブリダイゼーションによる分析を含む。種々の疾患および状態の出生前診断ならびに胎児の性別および染色体異常などの胎児の特徴の評価に加えて、新規の本発明の方法は、従来の中期核型分析に要する時間よりも短時間で胎児ゲノムに関する実質的により多くの情報を提供する。特に、本発明によって提供された強化された分子核型方法により、微小欠失、微小重複、およびサブテロメア再編成など出生前にしばしば検出されなかった染色体異常を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2003年10月30日に出願された仮特許出願番号60/515,735号(これは、本明細書中にその全体が参考として援用される)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
遺伝子障害および先天性異常(出生時欠損とも呼ばれる)は、全生児出生の約3〜5%で起こる(非特許文献1)。遺伝子障害および先天性異常を合わせると、小児入院の30%までを占め(非特許文献2;非特許文献3)、先進工業国における全小児死亡の約半分を占める(非特許文献4;非特許文献5)。合衆国では、出生時欠損は、乳児死亡率の主な原因である(非特許文献6)。さらに、遺伝子障害および先天性異常は、長期障害に実質的に寄与し、これらは巨額の医療費に関連し(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)、患者および/またはその家族に大きな心理的および感情的負担を強いる。これらおよび他の理由のために、出生前診断は、妊娠自体の臨床管理ならびに遺伝子障害の検出、予防、および最終的に治療に向けての重要な措置の重要な一面として長期にわたり認識されている。
【0003】
従来の染色体分析法は、依然として異数性の出生前排除の判断基準である。このような方法は、胎児細胞由来の染色体の選択的染色に基づき、これにより、染色体の長さに沿った特徴的染色(または結合)パターンが形成されて全染色体が視覚化され、明白に同定される。これらのバンディング法によって決定された核型の試験により、全染色体の数的および構造的な染色体異常の存在が明らかとなる。これらの核型分析法で使用される胎児細胞は、染色体構造が最も明白である分裂中期で停止している。胎児細胞は、伝統的に、羊水サンプル(羊水穿刺)、絨毛膜(絨毛膜標本採取)、または胎児血液(臍帯穿刺または経皮的臍帯血標本採取)のサンプルから単離する。組織標本採取および選択的染色に加えて、従来のバンディング法はまた、組織供給源に依存して10〜15日間かかり得る細胞培養、うんざりする長期間の大きな労働力を必要とする高品質の中期伸展標本(spread)の調製が必要である(非特許文献11)。さらに、従来の染色体分析法は、感度に限界があり、その標準的な450〜550バンドレベルの分解能では、例えば、微小欠失/微小重複症候群に関連する染色体異常などの小さいかわずかな染色体異常が検出されない。
【0004】
過去10年間に、従来の染色体分析への分子生物学的技術の適用により、新規の臨床細胞遺伝学的ツールが生み出され、出生前に診断することができる障害の範囲が増大した。その出生前診断で潜在的有用性が評価されている(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15)これらの新規の細胞遺伝学的ツールには、蛍光in situハイブリダイゼーション(すなわちFISH)および関連技術、ならびに定量的蛍光ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が含まれる。これらの技術により、従来のバンディング分析によって検出ことができない染色体構造の異常(微小欠失および微小重複、わずかな転座、いくつかの染色体が関与し、サブテロメア領域が生じる複雑な再編成)を解明するための分解能が増大した。一定のこれらの方法では、細胞培養を必要とせず、試験期間および労力が有意に軽減される。しかし、従来のバンディング分析と対照的に、染色体異常の検出に染色体特異的プローブの使用に依存するFISHなどの一定の分子細胞遺伝学的方法では、ゲノム規模のスクリーニングが不可能であり、疑われる染色体異常およびそのゲノム中の位置に関する少なくともいくつかの予備知識が必要である。
【0005】
新規の出生前診断に加えて、胎児細胞の新規の供給源も調査されている。母体循環系中のインタクトな胎児細胞の発見は、羊水穿刺、絨毛膜標本採取、または経皮的臍帯血標本採取などの浸襲性技術によって得られた供給源に代わる胎児材料サンプルの供給源として一般的興味を誘った。母体血から採取したインタクトな胎児細胞に対して広範囲の研究が行われた。例えば、胎児が21トリソミーを罹患している場合、循環胎児有核細胞数が増加することを出願人は証明している(非特許文献16(その全体が本明細書中で参考として援用される))。母体血から単離した胎児細胞の分析もまた、胎児染色体異数性の出生前診断が可能であることが示されている(非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21)。
【0006】
しかし、ほとんどの母体血サンプル中のインタクトな胎児細胞の不足により、臨床応用にはさらなる技術的発展が待たれている(非特許文献22)。別の障害は、目的の胎児細胞(すなわち、この妊娠由来の胎児細胞)を「汚染」させる母体循環系中の胎児リンパ球が残存する可能性があることである。分析のための胎児細胞の単離、分離、および富化は著しく進歩しているが(非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25;非特許文献26;非特許文献27)、これらの工程は時間がかかり、労力を要し、高価な装置を必要とする。
【0007】
1997年に、Loおよび共同研究者ら(非特許文献28)は、妊婦の血清および血漿中に男児のDNA配列が存在することを証明した。その後、この同一のグループは、母体血漿中の胎児DNAの定量(非特許文献29)およびその速度および生理学の研究(非特許文献30)によってその所見を述べている。それ以来、多数の臨床応用が報告されており(非特許文献31;非特許文献32)、 胎児の性の決定およびアカゲザル胎児のD状態(D status)の同定(非特許文献33;非特許文献34;非特許文献35;非特許文献36;非特許文献37;非特許文献38)が含まれる。循環胎児DNA濃度の上昇は、子癇前症(非特許文献39;非特許文献40;非特許文献41)、早期陣痛(非特許文献42)、妊娠悪阻(hypernemesis gravidarum)(非特許文献43)、浸襲性胎盤(非特許文献44)を伴う妊娠におけるリアルタイム定量PCRテクノロジーによって測定されている。類似のアプローチを使用して、筋緊張性ジストロフィ(非特許文献45)、軟骨無形成症(非特許文献46)、ダウン症候群(非特許文献47;非特許文献48;非特許文献49)、異数性(非特許文献50;非特許文献51)、および父性遺伝嚢胞性線維症(非特許文献52)などの出生前状態を診断している。
【0008】
母体血中に存在する胎児細胞の分析と比較して、母体血漿から単離した無細胞胎児DNAの分析は、迅速であり、丈夫であり、実施が容易であるという利点を有する。さらに、胎児DNAは、排他的にこの妊娠に関与する胎児に由来する。しかし、血漿中の母体DNAの存在により、出生前診断のための無細胞胎児DNAの使用は、父性遺伝障害または胎児中にde novoで存在する状態(すなわち、母親から遺伝した状態と区別することができる変異対立遺伝子に由来する)に制限される。したがって、現在は上染色体劣性障害に適用不可能である(非特許文献53)。
【非特許文献1】A.RobinsonおよびM.G.Linden、「Clinical Genetic Handbook」、1993年、Blaclcwell Scientific Publications:Boston,MA
【非特許文献2】C.R.Scriverら、Can.Med.Assoc.J.、1973年、第108巻、p.1111−1115
【非特許文献3】E.W.Lingら、Am.J.Perinatal.、1991年、第8巻、p.164−169
【非特許文献4】R.J.Berryら、Public Health Report、1987年、第102巻、p.171−181
【非特許文献5】R.A.HoekelmanおよびI.B.Pless、Pediatrics、1998年、第82巻、p.582−595
【非特許文献6】R.N.Andersonら、Month.Stat.Rep.、1997年、第45巻、第11号、補遺2、p.55
【非特許文献7】A.Czeizelら、Mutat.Res.1984年、第128巻、p.73−103
【非特許文献8】Centers of Disease Control,Morb.Mortal.Weekly Rep.、1989年、第38巻、p.264−267
【非特許文献9】S.Kaplan、J.Am.Coll.Cardiol.、1991年、第18巻、p.319−320
【非特許文献10】C.Cunniffら、Clin.Genet.、1995年、第48巻、p.17−22
【非特許文献11】B.Eibenら、Am.J.Hum.Genet.1990年、第47巻、p.656−663
【非特許文献12】I.Findlayら、J.Assist.Preprod.Genet.、1998年、第15巻、p.266−275
【非特許文献13】A.T.A.Theinら、Prenat.Diagn.、2000年、第20巻、p.275−280
【非特許文献14】B.Pertlら、Mol.Hum.Reprod.、1999年、第5巻、p.1176−1179
【非特許文献15】E.Pergamentら、Prenatal.Diagn.、2000年、第20巻、p.215−230
【非特許文献16】D.W.Bianchiら、Am.J.Hum.Genet.1997年、第61巻、p.822−829
【非特許文献17】S.Eliasら、Lancet、1992年、第340巻、p.1033
【非特許文献18】D.W.Bianchiら、Hum.Genet.、1992年、第90巻、p.368−370
【非特許文献19】D.Gaenshirt−Ahlertら、Am.J.Reprod.Immunol.、1993年、第30巻、p.193−200
【非特許文献20】J.L.Simpsonら、J.Am.Med.Assoc.、1993年、第270巻、p.2357−2361
【非特許文献21】F.de la Cruzら、Fetal Diagn.Ther.、1998年、第13巻、p.380
【非特許文献22】D.W.Bianchiら、Prenat.Diagn.、2002年、第22巻、p.609−615
【非特許文献23】J.L.SimpsonおよびS.Elias、J.Am.Med.Assoc.、1993年、第270巻、p.2357−2361
【非特許文献24】M.C.Cheungら、Nat.Genet.、1996年、第14巻、p.264−268
【非特許文献25】R.M.Bohmerら、Br.J.Haematol.、1998年、第103巻、p.351−360
【非特許文献26】E.Di Naroら、Mol.Hum.Reprod.、2000年、第6巻、p.571−574
【非特許文献27】E.Paranoら、Am.J.Med.Genet.、2001年、第101巻、p.262−267
【非特許文献28】Y.M.D.Loら、Lancet、1997年、第350巻、p.485−487
【非特許文献29】Y.M.D.Loら、Am.J.Hum.Genet.、1998年、第62巻、p.768−775
【非特許文献30】Y.M.D.Loら、Am.J.Hum.Genet.、1999年、第64巻、p.218−224
【非特許文献31】B.PertlおよびD.W.Bianchi、Obstet.Gynecol.、2001年、第98巻、p.483−490
【非特許文献32】Y.M.D.Loら、Clin.Chem.、1999年、第45巻、p.1747−1751
【非特許文献33】B.H.Faasら、Lancet、1998年、第352巻、p.1196
【非特許文献34】Y.M.D.Loら、New Engl.J.Med.、1998年、第339巻、p.1734−1738
【非特許文献35】S.Hahnら、Ann.N.Y.Acad.Sci.、2000年、第906巻、p.148−152
【非特許文献36】X.Y.Zhongら、Brit.J.Obstet.Gynaecol.、2000年、第107巻、p.766−769
【非特許文献37】H.Hondaら、Clin.Med.、2001年、第47巻、p.41−46
【非特許文献38】H.Hondaら、Hum.Genet.、2002年、第110巻、p.75−79
【非特許文献39】Y.M.D.Loら、Clin.Med.、1999年、第45巻、p.184−188
【非特許文献40】T.N.Leungら、Clin.Med.、2001年、第47巻、p.137−139
【非特許文献41】X.Y.Zhongら、Ann.N.Y.Acad.Sci.2001年、第945巻、p.134−180
【非特許文献42】T.N.Leungら、Lancet、1998年、第352巻、p.1904−1905
【非特許文献43】A.Sekizawaら、Clin.Med.、2001年、第47巻、p.2164−2165
【非特許文献44】A.Sekizawaら、Clin.Med.、2002年、第48巻、p.353−354
【非特許文献45】P.Amicucciら、Clin.Chem.、2000年、第46巻、p.301−302
【非特許文献46】H.Saitoら、Lancet、2000年、第356巻、p.1170
【非特許文献47】Y.M.D.Loら、Clin.Med.、1999年、第45巻、p.1747−1751
【非特許文献48】X.Y.Zhongら、Prenatal Diagn.、2000年、第20巻、p.795−798
【非特許文献49】L.L.Poonら、Lancet、2000年、第356巻、p.1819−1820
【非特許文献50】C.P.Chenら、Prenat.Diag.、2000年、第20巻、p.355−357
【非特許文献51】C.P.Chenら、Clin.Chem.、2001年、第47巻、p.937−939
【非特許文献52】M.C.Gonzalez−Gonzalezら、Prenatal Diagn.、2002年、第22巻、p.946−948
【非特許文献53】D.W.Bianchi、Am.J.Hum.Genet.、1998年、第62巻、p.763−764
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
明らかに、他の細胞遺伝学的技術よりも広範、迅速、かつ正確に核型分析を実施可能な改良された出生前診断方法が依然として必要である。特に、異常が存在し得る場合に、染色体領域の予備知識を必要とすることなく複雑な核型を解明し、小さいか、わずかであるか、不可解な染色体異常を検出することができる、費用効果があり、かつ感度の高い方法が非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、胎児の遺伝情報を分析するための改良されたシステムを提供する。特に、本発明により、胎児の「分子核型」を決定可能である。この分子核型により、標準的なバンディング法よりも完全および/または詳細な情報を得ることができる。さらに、本発明の分子核型法は、細胞培養を必要とせず、それにより、従来の胎児核型分類よりも迅速に実施することができる。
【0011】
一般に、本発明は、羊水サンプルから無細胞胎児DNAを単離する工程と、DNAサンプルから分子核型を決定する工程を提供する。好ましい実施形態では、選択された配列の有無を評価するために核酸プローブ組の胎児DNAへのハイブリダイゼーションによって分子核型を決定する。このようなハイブリダイゼーションをアレイ上またはアレイを用いて行うことが望ましい場合が多い。一定の好ましい実施形態では、プローブ集団によってゲノム全域にわたる代表的配列を検出し、その結果、全ゲノム安定性を評価することができる。あるいはまたはさらに、好ましいプローブ組には、疾患もしくは状態または選択された物理的または個人的特性のいずれかに関連する公知の変異または対立遺伝子を検出する特定のプローブが含まれ得る。
【0012】
本発明の好ましい方法により、疑われる染色体異常およびそのゲノム中の位置に関する予備知識を必要とすることなく全ゲノムを同時にスクリーニング可能であり、小さいか、わずかであるか、および/または不可解な染色体異常(微小欠失、微小重複、およびサブテロメア再編成など)の検出および同定に十分に高い感度および分解能を示す。これらの重要な利点を使用して、本発明の方法は、将来的に従来の分子細胞遺伝学的技術に代わると期待され得る。
【0013】
1つの態様では、本発明は、羊水胎児DNAのサンプルを準備する工程と、ハイブリダイゼーションによって羊水胎児DNAを分析して胎児ゲノム情報を得る工程と、得られた胎児ゲノム情報に基づいて、出生前診断を行う工程とを含む、出生前診断方法を提供する。
【0014】
一定の実施形態では、羊水胎児DNAを、妊婦から得た羊水のサンプルを準備する工程、羊水のサンプルから細胞集団を除去して残存羊膜物質を得る工程、および残存羊膜物質中に存在する無細胞胎児DNAを抽出して分析に利用可能になるように残存羊膜物質を処置し、それにより羊水胎児DNAを得る工程によって得る。
【0015】
一定の実施形態では、実質的に全ての細胞集団を羊水のサンプルから除去し、羊水胎児DNAが本質的に無細胞胎児DNAからなる。他の実施形態では、残存羊膜物質は、いくつかの細胞を含み、羊水胎児DNAが無細胞胎児DNAおよび残存羊膜物質中に存在する細胞由来のDNAを含む。しかし、好ましくは、細胞の増殖を行わず、それにより、抽出された羊水胎児DNAは、増殖細胞由来のDNAを含まない。一定の実施形態では、残存羊膜物質を凍結し、適切な保存条件下で、DNA抽出に供する前の一定期間保存する。分析時に、凍結サンプルを治療前に解凍する。凍結材料の解凍後かつDNA抽出工程前に、任意の残存細胞集団を除去することができる。
【0016】
一定の実施形態では、ハイブリダイゼーションによって羊水胎児DNAを分析して胎児ゲノム情報を得る工程が、cDNAアレイ、オリゴヌクレオチドアレイ、またはSNPアレイなどのアレイを使用する工程を含む。他の実施形態では、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションを使用して羊水DNAの分析を行う。
【0017】
一定の実施形態では、抽出した羊水胎児DNAを、分析前に、例えば、PCRによって増幅する。この増幅工程は、少量の羊水胎児DNAしか分析で使用できない場合に特に有用であり得る。しかし、本発明の一定の実施形態は、増幅を含まない。
【0018】
他の実施形態では、抽出胎児DNAを、アレイベース比較ゲノムハイブリダイゼーションによる分析前に検出可能な物質または部分で標識することができる。検出可能な物質は、蛍光標識を含み得る。本発明の実施に際して使用される適切な蛍光標識は、Cy−3TM、Cy−5TM、テキサスレッド、FITC、Spectrum RedTM、Spectrum GreenTM、フィコエリトリン、ローダミン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、カルボシアニン、メロシアニン、スチリル色素、オキソノール色素、BODIPY色素、これらの等価物、これらのアナログ、これらの誘導体、およびこれらの組み合わせを含み得る。あるいは、検出可能な物質は、ハプテンを含み得る。適切なハプテンには、例えば、ビオチンおよびジオキシゲニンが含まれる。
【0019】
任意の種々の方法によって胎児DNA標識を行うことができる。一定の実施形態では、検出可能な物質での羊水胎児DNAの標識を、ランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはターミナルトランスフェラーゼを使用したテーリング(tailing)によって行う。
【0020】
一定の実施形態では、ハイブリダイゼーションによる羊水胎児DNA分析による胎児ゲノム情報は、複数のゲノム遺伝子座での染色体異常およびゲノムコピー数の変化を含む。
【0021】
本発明の方法は、得られた胎児ゲノム情報に基づいた出生前診断を行う工程を含む。一定の実施形態では、出生前診断を行う工程は、妊婦が妊娠している胎児の性を決定する工程を含む。他の実施形態では、出生前診断を行う工程は、染色体異常を検出および同定する工程を含む。さらに他の実施形態では、出生前診断を行う工程は、染色体異常に関連する疾患または状態を同定する工程を含む。
【0022】
一定の実施形態では、妊婦が有する胎児が染色体異常を有すると疑われる場合または胎児が染色体異常に関連する疾患または状態を有すると疑われる場合、本発明の方法を行う。他の実施形態では、妊婦が35歳または35歳を超える場合に本発明の方法を行う。
【0023】
本発明の方法によって検出および同定することができる染色体異常には、遺伝物質の増減が含まれる。染色体異常は、余分な個々の染色体(extra)、各染色体の欠損、染色体の余分な部分、染色体の一部の欠損、環、破損、染色体の再編成、およびこれらの任意の組み合わせであり得る。染色体の再編成は、転座、逆位、重複、欠失、付加、およびこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0024】
一定の実施形態では、本発明の方法によって検出または同定される染色体異常は、標準的なGバンディング分析または中期CGHによって検出できない。他の実施形態では、本発明の方法によって検出または同定される染色体異常は、微小欠失、微小重複(microduplication)、またはサブテロメア再編成である。
【0025】
一定の実施形態では、染色体異常は、余分な第21染色体、第21染色体の欠損、第21染色体の余分な部分、第21染色体の一部の欠損、または第21染色体の再編成である。
【0026】
他の実施形態では、染色体異常は、余分な第13染色体、第18染色体、X染色体またはY染色体、第1染色体に関与する染色体異常、染色体部分1q21の欠失、染色体部分4p16の欠失、第4染色体に関与する染色体異常、第5染色体に関与する染色体異常、第7染色体に関与する染色体異常、染色体部分7p11.23の欠失、第8染色体に関与する染色体異常、第9染色体および第22染色体に関与する転座、第10染色体に関与する染色体異常、第11染色体に関与する染色体異常、染色体部分13q14の欠失、染色体部分15q11−q13の欠失、染色体部分15q21.1の欠失、染色体部分16p13.3の欠失、染色体部分17p11.2の欠失、染色体部分17p13.3の欠失、第19染色体に関与する染色体異常、染色体部分22q11の欠失、およびX染色体に関与する染色体異常である。
【0027】
一定の実施形態では、染色体異常に関連する疾患または状態は、異数性(例えば、ダウン症候群(21トリソミーとも呼ばれる)、パトー症候群(13トリソミーとも呼ばれる)、エドワード症候群(18トリソミーとも呼ばれる)、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、およびXYY病など)である。
【0028】
他の実施形態では、染色体異常に関連する疾患または状態は、X連鎖障害(血友病A、デュシェーヌ筋ジストロフィ、レッシュ−ナイハン症候群、重症複合型免疫不全症、およびぜい弱X症候群など)である。
【0029】
さらに他の実施形態では、本発明の方法によって同定される疾患または状態は、標準的なGバンディング分析または従来の中期CGHによって検出できない染色体異常(例えば、微小欠失、微小重複、またはサブテロメア再編成など)に関連する。疾患または状態は、微小欠失/微小重複症候群(プラーダー−ヴィリ症候群、アンジェルマン症候群、ディ・ジョージ症候群、スミス・マジェニス症候群、ルービンスタイン−テービ症候群、ミラー・ディッカー症候群、ウィリアムズ症候群、およびシャルコー−マリー−ツース症候群など)、またはネコ鳴き症候群、網膜芽細胞腫、ウルフ・ヒルシュホーン症候群、ウィルムス腫瘍、脊髄延髄筋萎縮症、嚢胞性線維症、ゴーシェ病、マルファン症候群、および鎌状赤血球貧血からなる群より選択される障害であり得る。
【0030】
別の態様では、本発明は、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる羊水胎児DNAの分析によって行われる出生前診断方法を提供する。本発明の方法は、羊水胎児DNAの試験サンプルを準備する工程であって、前記試験サンプルが未知の核型を有し、かつ第1の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第1のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程と、コントロールゲノムDNAの参照サンプルを準備する工程であって、前記参照サンプルが公知の核型を有し、かつ第2の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第2のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程と、複数の遺伝子プローブを含むアレイを準備する工程であって、それぞれの前記遺伝子プローブが基質表面上の個別のスポットに固定されてアレイを形成し、前記遺伝子プローブが共に実質的に完全な第3のゲノムまたは前記第3のゲノムのサブセットを含む、工程と、サンプル中の核酸セグメントがアレイ上の遺伝子プローブと特異的にハイブリダイズすることができる条件下でアレイを試験サンプルおよび参照サンプルに同時接触させる工程と、前記試験サンプルおよび参照サンプルの各核酸のアレイ上に固定した各遺伝子プローブへの結合を決定して、相対的結合パターンを得る、工程と、得られた前記相対結合パターンに基づいて、出生前診断を行う工程とを含む。
【0031】
一定の実施形態では、試験サンプルおよび参照サンプルの核酸セグメントを、ランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはターミナルトランスフェラーゼを使用したテーリングなどの方法を使用して、検出可能な物質で標識する。
【0032】
他の実施形態では、第1の検出可能な物質は第1の蛍光標識を含み、第2の検出可能な物質は第2の蛍光標識を含む。好ましくは、第1の蛍光標識および前記第2の蛍光標識により、励起の際に二色蛍光が得られる。例えば、第1および第2の蛍光標識は、それぞれCy−3TMおよびCy−5TMまたはそれぞれCy−5TMおよびCy−3TMである。あるいは、第1および第2の蛍光標識は、それぞれSpectrum RedTMおよびSpectrum GreenTMまたはそれぞれSpectrum GreenTMおよびSpectrum RedTMである。
【0033】
一定の実施形態では、試験サンプルおよび参照サンプルの核酸セグメント中に存在する高コピー数反復配列のハイブリダイゼーション能力が抑制される。例えば、反復配列のハイブリダイゼーション能力を、接触工程前の試験サンプルおよび参照サンプルへの非標識ブロッキング核酸の添加によって抑制する。好ましくは、試験サンプルおよび参照サンプルに過剰な非標識ブロッキング核酸を添加する。一定の好ましい実施形態では、非標識ブロッキング核酸は、ヒトCot−1 DNAである。
【0034】
他の好ましい実施形態では、本発明の出生前診断で使用すべき羊水胎児DNAを、妊婦から得た羊水のサンプルを準備する工程、羊水のサンプルから細胞集団を除去して残存羊膜物質を得る工程、および残存羊膜物質中に存在する無細胞胎児DNAを抽出して分析に利用可能になるようにこの残存羊膜物質を処置し、それにより羊水胎児DNAを得る工程によって得る。一定の実施形態では、実質的に全ての細胞集団を羊水のサンプルから除去し、処置工程により、本質的に無細胞胎児DNAからなる羊水胎児DNAが得られる。他の実施形態では、残存羊膜物質がいくつかの細胞を含み、処置工程により、無細胞胎児DNAおよびこれらの細胞集団に由来するDNAを含む羊水胎児DNAが得られる。上記のように、残存羊膜物質を凍結し、解凍前に適切な保存条件下で一定期間保存し、DNA抽出処理および分析工程に供することができる。羊膜物質中に依然として存在する任意の細胞集団を、凍結サンプルの解凍後かつ抽出工程前に除去することができる。
【0035】
上記のように、羊水胎児DNAを、例えば、PCRによって分析前に増幅することができる。胎児DNAを、ランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはターミナルトランスフェラーゼを使用したテーリングなどの方法を使用して、検出可能な物質で標識することもできる。
【0036】
一定の実施形態では、第2のゲノムの核型は、Gバンディング分析、中期CGH、FISH、またはSKYによって決定されている。
【0037】
一定の実施形態では、試験サンプルおよび参照サンプルの各核酸のアレイ上に固定した各遺伝子プローブへの結合を決定して、相対的結合パターンを得る、工程が、第1の検出可能な物質および第2の検出可能な物質によってアレイ上のそれぞれ個別のスポットに得られたシグナルの強度を測定する工程と、アレイのそれぞれのスポットについてのシグナル強度の比を決定する工程とを含む。
【0038】
一定の好ましい実施形態では、試験サンプルおよび参照サンプルの各核酸のアレイ上に固定した各遺伝子プローブへの結合を決定して、相対的結合パターンを得る、工程が、多色蛍光画像を得ることができるコンピュータ支援画像化システムを使用してハイブリダイゼーション後のアレイの蛍光画像を得る工程と、コンピュータ支援画像分析システムを使用して得られた蛍光画像を分析し、アレイから画像化したデータを解釈し、第3のゲノム中のゲノム遺伝子座の関数としてのゲノムコピー数の比として結果を表示する工程とを含む。
【0039】
一定の実施形態では、本発明の方法を使用して、妊婦が妊娠している胎児の性を決定するか、染色体異常を検出および同定するか、染色体異常に関連する疾患または状態を同定する。本発明の方法によって検出することができる染色体異常および染色体異常に関連する疾患または状態を、上に列挙する。
【0040】
一定の実施形態では、妊婦が妊娠している胎児が染色体異常を有すると疑われる場合または胎児が染色体異常に関連する疾患または状態を有すると疑われる場合に、本発明の方法のアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる羊水胎児DNA分析を行う。他の実施形態では、妊婦が35歳または35歳を超える場合に、本発明の方法のアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる羊水胎児DNA分析を行う。
【0041】
別の態様では、本発明は、羊水胎児DNAの試験サンプルを準備する工程であって、試験サンプルが染色体微小異常(microabnormality)を有し、かつ第1の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第1のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程と、コントロールゲノムDNAの参照サンプルを準備する工程であって、参照サンプルが公知の核型を有し、かつ第2の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第2のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程と、複数の遺伝子プローブを含むアレイを準備する工程であって、それぞれの遺伝子プローブが基質表面上の個別のスポットに固定されてアレイを形成し、遺伝子プローブが共に実質的に完全な第3のゲノムまたは第3のゲノムのサブセットを含む、工程と、サンプル中の核酸セグメントがアレイ上に固定された遺伝子プローブと特異的にハイブリダイズすることができる条件下でアレイを試験サンプルおよび参照サンプルに同時接触させる工程と、多色蛍光画像を得ることができるコンピュータ支援画像化システムを使用してハイブリダイゼーション後のアレイの蛍光画像を得る工程と、コンピュータ支援画像分析システムを使用して得られた蛍光画像を分析し、アレイから画像化したデータを解釈し、第3のゲノム中のゲノム遺伝子座の関数としてのゲノムコピー数の比として結果を表示する工程と、第1のゲノムの核型をFISH分析によって決定する工程と、ゲノムコピー数の比として表示された結果をFISHによって決定された第1のゲノムの核型と比較する工程とを含む、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる羊水胎児DNAの試験方法を提供する。
【0042】
一定の実施形態では、ゲノムコピー数の比として表示された結果をFISHによって決定された第1のゲノムの核型と比較する工程が、ゲノムコピー数の比として表示された結果とFISHによって決定された第1のゲノムの核型との間の一貫性の程度を評価する工程を含む。
【0043】
他の実施形態では、ゲノムコピー数の比として表示された結果をFISHによって決定された第1のゲノムの核型と比較する工程が、FISHおよびアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる染色体微小異常の検出感度を比較する工程を含む。さらに他の実施形態では、ゲノムコピー数の比として表示された結果をFISHによって決定された第1のゲノムの核型と比較する工程が、FISHおよびアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる染色体微小異常の検出選択性を比較する工程を含む。
【0044】
他の実施形態では、本発明の方法は、第1のゲノム中に存在する染色体微小異常の関数としての一貫性の程度、検出感度、および検出選択性を分類整理する工程をさらに含む。
【0045】
一定の実施形態では、染色体微小異常は、微小欠失、微小重複、またはサブテロメア再編成からなる群より選択される。他の実施形態では、染色体微小異常は、染色体部分1q22の欠失、染色体部分7q11.23の欠失、染色体部分8q21の欠失、染色体部分10q21.1−q22.1の欠失、染色体部分15q11−q13の欠失、染色体部分16p13.3の欠失、染色体部分17p11.2の欠失、染色体部分17p13.3の欠失、染色体部分19q13.1−q13.2の欠失、および染色体部分22q11.2の欠失からなる群より選択される。
【0046】
一定の実施形態では、本発明の試験方法で使用すべき試験サンプルおよび参照サンプルの核酸セグメントが、ランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはターミナルトランスフェラーゼを使用したテーリングによって標識される。
【0047】
他の実施形態では、第1の検出可能な物質および第2の検出可能な物質は、Cy−3TMおよびCy−5TMまたはSpectrum RedTMおよびSpectrum GreenTMである。
【0048】
一定の実施形態では、試験サンプルおよび参照サンプルの核酸中に存在する高コピー数反復配列のハイブリダイゼーション能力は、接触工程前の試験サンプルおよび参照サンプルへのヒトCot−1 DNAなど過剰な非標識ブロッキング核酸の添加によって抑制される。
【0049】
好ましい実施形態では、羊水胎児DNAを、上記のように得た。上記のように、羊水サンプルから単離によって得た羊水胎児DNAを、例えば、PCRによって分析前に増幅することができる。
【0050】
一定の実施形態では、第2のゲノムの核型は、Gバンディング分析、中期CGH、FISH、またはSKYによって決定されている。
【0051】
別の態様では、本発明は、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる羊水胎児DNAの分析によって染色体異常を同定する方法を提供する。本発明の方法は、羊水胎児DNAの試験サンプルを準備する工程であって、胎児DNAが超音波試験によって複数の先天性異常を有すると決定された胎児に由来し、試験サンプルが正常な核型を有し、かつ第1の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第1のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程と、コントロール羊水胎児DNAの参照サンプルを準備する工程であって、胎児DNAが超音波試験によって先天性異常が存在しないと決定された胎児に由来し、参照サンプルが正常な核型を有し、かつ第2の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第2のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程と、複数の遺伝子プローブを含むアレイを準備する工程であって、それぞれの遺伝子プローブが基質表面上の個別のスポットに固定されてアレイを形成し、遺伝子プローブが共に実質的に完全な第3のゲノムまたは前記第3のゲノムのサブセットを含む、工程と、サンプル中の核酸セグメントがアレイ上に固定された遺伝子プローブと特異的にハイブリダイズすることができる条件下でアレイを試験サンプルおよび参照サンプルに同時接触させる工程と、多色蛍光画像を得ることができるコンピュータ支援画像化システムを使用してハイブリダイゼーション後のアレイの蛍光画像を得る工程と、コンピュータ支援画像分析システムを使用して得られた蛍光画像を分析し、アレイから画像化したデータを解釈し、第3のゲノム中のゲノム遺伝子座の関数としてのゲノムコピー数の比として結果を表示する工程と、表示された前記結果を分析して存在する任意の染色体異常を検出および同定する工程とを含む。
【0052】
一定の実施形態では、第1のゲノムの核型は、550バンドレベルの分解能の標準的な中期染色体分析を使用して決定されている。好ましい実施形態では、染色体異常は、標準的なGバンディング分析または中期CGHによって検出できない染色体異常である。例えば、染色体が、微小付加、微小欠失、微小重複、微小逆位、微小転座、サブテロメア再編成、またはこれらの任意の組み合わせなどの微小異常である。
【0053】
好ましい実施形態では、試験サンプルの羊水胎児DNAおよび参照サンプルの羊水胎児DNAを、上記の2つの異なる羊水サンプルからの単離によって得た。一定の実施形態では、試験サンプルおよび参照サンプルの胎児の性別、サンプル獲得部位、在胎齢、および保存期間が合わせられている。
【0054】
一定の実施形態では、試験サンプルおよび参照サンプルの核酸セグメントを、ランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはターミナルトランスフェラーゼを使用したテーリングなどの方法を使用して、検出可能な物質で標識する。他の実施形態では、第1の検出可能な物質および第2の検出可能な物質は、Cy−3TMおよびCy−5TMまたはSpectrum RedTMおよびSpectrum GreenTMである。
【0055】
一定の実施形態では、試験サンプルおよび参照サンプルの核酸中に存在する高コピー数反復配列のハイブリダイゼーション能力は、接触工程前の試験サンプルおよび参照サンプルへのヒトCot−1 DNAなど過剰な非標識ブロッキング核酸の添加によって抑制される。
【0056】
別の態様では、本発明は、以下の構成要素:妊婦から得た羊水サンプルから無細胞胎児DNAを抽出するための材料と、複数の遺伝子プローブを含むアレイであって、それぞれの遺伝子プローブが基質表面上の個別のスポットに固定されてアレイを形成し、遺伝子プローブが共に実質的に完全なゲノムまたは前記ゲノムのサブセットを含む、アレイと、本発明の方法に従ったアレイの使用説明書とを含むキットを提供する。
【0057】
本発明のキットは、任意選択的に、第1の検出可能な物質で第1のDNAサンプルを標識するための材料および第2の検出可能な物質で第2のDNAサンプルを標識するための材料も含み得る。好ましくは、本発明のキットが検出可能な物質でサンプルを標識するための材料を含む場合、第1および第2の検出可能な物質は、励起の際に二色蛍光が得られる蛍光標識を含む。例えば、本発明のキットは、Cy−3TMおよびCy−5TMまたはSpectrum RedTMおよびSpectrum GreenTMで2つのDNAサンプルを差分的に標識するための材料を含み得る。
【0058】
本発明のキットは、さらに、公知の核型を有するコントロールゲノムDNAの参照サンプルも含み得る。一定の実施形態では、参照サンプルのゲノムは、核型が正常である。他の実施形態では、参照サンプルのゲノムは、核型が異常である。例えば、キットは、余分な個々の染色体(extra)、各染色体の欠損、染色体の余分な部分、染色体の一部の欠損、環、破損、転座、逆位、重複、欠失、付加、およびこれらの任意の組み合わせなどの染色体異常を示す。例えば、本発明のキットは、正常な女性核型を有するコントロールDNAの一方の参照サンプル、正常な男性核型を有するコントロールDNAの他方の参照サンプル、および任意選択的に公知の染色体異常を有するコントロールDNAの第3の参照サンプルを含み得る。
【0059】
一定の実施形態では、本発明のキットは、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液を含む。
【0060】
他の実施形態では、本発明のキットは、ヒトCot−1 DNAなどの非標識ブロッキング核酸を含む。
【0061】
(定義)
別段の指定のない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明に属する当業者によって一般に理解される意味と同義である。以下の用語は、他で特に指定しない限り、これらの用語に帰する意味を有する。
【0062】
本明細書中で使用される、用語「出生前診断」は、胎児の健康および状態の決定をいい、欠損または異常の検出および疾患の診断が含まれる。種々の非浸襲性技術および浸襲性技術は、出生前診断に利用可能である。これらのうちのそれぞれを、特定の妊娠期間のみで最も有用に使用することができる。これらの技術には、例えば、超音波検査法、母体血清スクリーニング、羊水穿刺、および絨毛膜標本採取(すなわちCVS)が含まれる。本発明の出生前診断法には、羊水から単離した無細胞胎児DNAのアレイベースのハイブリダイゼーションによる分析が含まれる。本発明の出生前診断法により、胎児の性および染色体異常を決定し、胎児の疾患または状態を同定することが可能である。
【0063】
用語「ソノグラフ検査」、「ウルトラソノグラフ(ultrasonographic)検査」、および「超音波検査」は、本明細書中で交換可能に使用される。これらは、短波を使用して胎児の異なる組織および器官から得られたエコーパターンから可視画像を作成する非浸襲性臨床手段をいう。ソノグラフ検査を使用して、胎児のサイズおよび位置、胎盤のサイズおよび位置、羊水の量、および胎児の生体構造の外観を決定することができる。超音波検査により、先天性異常(すなわち、出生時に存在する解剖学的または構造的奇形)の存在を明らかにすることができる。
【0064】
本明細書中で使用される、用語「羊水穿刺」は、針を誘導するための超音波を使用して長い針を母体の下腹部から子宮内の羊膜孔まで挿入し、少量の羊水を採取することによって行われる出生前診断をいう。羊水は、胎児の皮膚細胞、腎臓細胞、および肺細胞を含む。従来の羊膜穿刺では、これらの細胞を培養にて増殖させ、その核型の決定および分析によって染色体異常について試験し、羊水自体を生物学的異常について試験することができる。出願人によって発見されたように(以下を参照のこと)、羊水は無細胞胎児DNAも含む。
【0065】
用語「染色体」は、その当該分野で理解されている意味を有する。染色体は、生物のほとんどの遺伝情報を含む非常に長いDNA分子(および結合タンパク質)から構成される構造をいう。染色体は、「遺伝子」と呼ばれる機能単位に分割され、それぞれ特定のタンパク質分子またはRNA分子を作製するための遺伝コード(すなわち、命令)を含む。ヒトでは、正常な体細胞は、46本の染色体を含み、正常な生殖細胞は、23本の染色体に関与する。
【0066】
用語「染色体異常」、「染色体の異常(chromosomal aberration)」、および「染色体の変化」は、本明細書中で交換可能に使用される。これらは、核型が正常な個体における染色体の数および構造と比較した染色体数の相違(すなわち、変動)または1またはそれ以上の染色体の構造機構の相違(すなわち、改変)をいう。本明細書中で使用されるように、これらの用語は、遺伝子レベルで起こる異常を含むことも意味する。異常な染色体数(すなわち、多すぎるか少なすぎる)を、「異数性」と呼ぶ。異数性の例は、21トリソミーおよび13トリソミーである。染色体の構造異常には、以下が含まれる:欠失(例えば、遺伝子配列中に通常は存在する1またはそれ以上のヌクレオチドの欠如、全遺伝子の欠如、または染色体の一部の欠損)、付加(例えば、遺伝子配列中に通常は存在しない1またはそれ以上のヌクレオチドの存在、遺伝子の余剰コピーの存在(重複とも呼ばれる)、または染色体の余分な部分の存在)、環、破損、および染色体の再編成。染色体物質の欠失または付加を含む異常によって生物の遺伝子のバランスが変化し、異常によって活性な遺伝子が破壊または欠失される場合、異常により胎児が死亡するか重篤な精神的および身体的欠損を受ける。染色体構造の再編成は、DNA損傷による染色体の破損、組換えのエラー、または減数分裂もしくは配偶子細胞分裂時の母方および父方の離れた二重らせんの末端の交差に起因する。染色体再編成は、転座または逆位であり得る。転座は、遺伝物質が一方の遺伝子から他方の遺伝子に導入される過程に起因する。2つの染色体片が遺伝物質を喪失することなく交換される場合には転座はバランスが取れているが、染色体の遺伝物質が増加または減少する場合に不均衡な転座が起こる。転座は、2つの染色体または1つの染色体のみを含み得る。染色体中の2つの破損が生じ、破損セグメントが180°回転し、それにより遺伝子が逆の順序で再編される過程によって逆位が生じる。
【0067】
本明細書中で使用される、用語「染色体微小異常」は、小さい、わずかな、および/または不可解な染色体異常をいう(例えば、遺伝子配列中の1またはそれ以上のヌクレオチドを含む染色体異常または1つの遺伝子コピーの増減またはサブテロメア領域で起こる染色体異常)。
【0068】
本明細書中で使用される、用語「微小欠失」、「微小付加」、「微小重複」、「微小再編成」、「微小転座」、「微小逆位」、および「サブテロメア再編成」は、標準的な細胞遺伝学的方法(例えば、従来のGバンディングまたは中期CGHなど)によって検出できないか容易に検出できない染色体の微小異常をいう。
【0069】
本明細書中で使用される、用語「染色体異常に関連する疾患または状態」は、染色体異常に起因することが公知であるか疑われる任意の疾患、障害、状態、または欠損症をいう。染色体異常に関連する疾患または状態の例には、トリソミー(例えば、ダウン症候群、エドワード症候群、パトー症候群、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、およびXYY病)、X連鎖障害(例えば、デュシェーヌ筋ジストロフィ、血友病A、重症複合型免疫不全症の一定の形態、レッシュ−ナイハン症候群、およびぜい弱X症候群)が含まれるが、これらに限定されない。染色体異常に関連する疾患または状態のさらなる例を以下に記載し、これらは、”Harrison’s Principles of Internal Medicine”,Wilson et al.(Ed.),1991(12th Ed.),Mc Graw Hill:New York,NY,pp 24−46(その全体が本明細書中で参考として援用される)でも見出すことができる。
【0070】
本明細書中で使用される、用語「微小欠失/微小重複症候群」は、これらの多数が標準的な細胞遺伝学的方法の検出の分解能を超える小さいかわずかな染色体構造の異常に関連する遺伝子症候群の集合をいう。微小欠失/微小重複症候群には、以下が含まれるが、これらに限定されない:プラーダー−ヴィリ症候群、アンジェルマン症候群、ディ・ジョージ症候群、スミス・マジェニス症候群、ルービンスタイン−テービ症候群、ミラー・ディッカー症候群、ウィリアムズ症候群、およびシャルコー−マリー−ツース症候群。
【0071】
本明細書中で使用される、用語「核型」は、通常は分裂中期の染色体の数および形態によって定義される各染色体成分または各染色体の関連群をいう。より詳細には、核型には、全染色体数、各染色体のコピー数(例えば、染色体Yのコピー数)および染色体の形態(例えば、長さ、動原体率、および連結性など)が含まれる。核型試験により、染色体異常(例えば、染色体の余剰物、欠損、または破損)の検出および同定が可能である。一定の疾患および状態が特徴的な染色体異常に関連するので、核型分析により、これらの疾患および状態を診断することが可能である。
【0072】
本明細書中で使用される、用語「G(ギムザ)バンディング」は、核型分類のための標準的な染色技術をいう。Gバンディング(G−T−Gバンディングとしても公知)は、染色体に関連するいくつかのタンパク質を分解するための酵素(プロテアーゼであるトリプシン)の使用およびグアニンおよびシトシンが豊富なDNA領域に選択的に結合する染色用色素(ギムザ)の使用を含む。この選択的染色により、各染色体に特徴的な染色体の長さに沿った交互の暗いバンドおよび明るいバンドの特色のあるパターンが形成される(明るいバンドはグアニンおよびシトシンが豊富な活性DNAである真性染色質に相当し、暗いバンドはアデニンおよびチミンが豊富な非発現DNAに対応する)。この染色により、染色体の余剰物および欠損、巨大な欠失および重複、ならびにセントロメア(染色体中の主なくびれ)の位置が明らかとなる。しかし、遺伝物質の範囲が狭いか再編成がより複雑であること、マーカーの染色体起源、およびわずかな転座により、標準的なGバンディング(ギムザ、リーシュマン、またはその異形)を使用して確実に検出できないか同定が困難である。どのようにしてGバンディング分析を行うかについてのさらなる詳細については、例えば、J.M.Scheres et al.,Hum.Genet.1982,61:8−11;およびK.Wakui et al.,J.Hum.Genet.1999,44:85−90(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0073】
本明細書中で使用される、用語「蛍光in situハイブリダイゼーションまたはFISH」は、核型の生成に使用することができる分子細胞遺伝学的技術をいう。FISH実験では、特別にデザインした蛍光分子を使用して、蛍光顕微鏡によって特定の遺伝子または染色体区域を視覚化し、それにより染色体異常を検出する。静止核(主に非培養羊膜細胞由来)に対するFISHは、選択された異数性の迅速な排除のためのツールとして一般的になりつつある(例えば、T.Bryndorf et al.,Acta Obstet.Gynecol.Scand,2000,79:8−14;W.Cheong Leung et al.,Prenat.Diagn.2001,21:327−332;J.Pepperberg et al.,Prenat.Diagn.2001,21:293−301;S.Weremowicz et al.,Prenat.Diagn.2001,21:262−269;およびR.Sawa et al.,J.Obstet.Gynaecol.Res.2001,27:41−47(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0074】
本明細書中で使用される、用語「スペクトル核型分類またはSKY」は、核型分析を非常に容易にする異なる色での全ヒト(またはマウス)染色体の同時視覚化が可能な分子細胞遺伝学的技術をいう。SKYは、スペクトル的に区別可能な蛍光色素で標識した一本鎖DNAの短い配列のライブラリーの調製を含む。このDNAライブラリー中のそれぞれの各プローブは、固有の染色体領域に相補的であり、全遺伝子プローブが共にヒトゲノム内の全染色体に相補的なDNAの集団を形成する。in situハイブリダイゼーション後、スペクトル画像化による定義された発光スペクトルの測定により、異なる色で全ヒト染色体を確実に識別し、それにより染色体異常(転座、染色体の切断点クラスター領域(breakpoint)、および再編成など)を検出可能である。SKY技術および核型決定におけるその使用に関するさらなる詳細については、例えば、E.Shrock et al.,Hum.Genet.1997,101:255−262;I.B.Van den Veyver and B.B.Roa,Curr.Opin.Obstet.Gynecol.1998,10:97−103;M.C.Phelan et al.,Prenatal Diagn.1998,18:1174−1180;B.R.Haddad et al.,Hum.Genet.1998,103:619−625;およびB.Peschka et al.,Prenatal.Diagn.1999,19:1143−1149(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0075】
用語「比較ゲノムハイブリダイゼーションまたはCGH」および「中期比較ゲノムハイブリダイゼーションまたは中期CGH」は、本明細書中で交換可能に使用される。これらは、試験DNAおよび正常な基準DNAの蛍光色素での差分標識、2つの標識DNAサンプルの正常な中期染色体伸展標本への同時ハイブリダイゼーション、および蛍光による2つのハイブリダイゼーションDNAの視覚化を含む分子細胞遺伝学的技術をいう。一定の染色体または染色体領域に沿った2つの蛍光強度の比は、2サンプル中の各核酸配列の相対的コピー数(すなわち、存在量)を反映する。CGH分析により、全ゲノムにわたる遺伝物質の増減の概観が得られる。本明細書中で使用される、用語「標準的な中期染色体分析」は、従来のGバンディング分析または中期CGHをいう。
【0076】
中期CGHと対照的に、「アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションまたはアレイベースのCGH」は、バイオチップまたはマイクロアレイプラットフォーム上に整列させた固定化された遺伝子特異的核酸配列を使用する。一定の実施形態では、本発明の方法は、羊水から単離した無細胞胎児DNAのアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる分析を含む。
【0077】
本明細書中で使用される、用語「アレイベースのハイブリダイゼーション」は、遺伝物質の増減、染色体異常、および複数のゲノム遺伝子座でのゲノムコピー数の変化などの遺伝情報を提供するアレイベースのDNA分析方法(例えば、アレイベースのCGHなど)をいう。
【0078】
用語「アレイ」、「マイクロアレイ」、および「バイオチップ」は、本明細書中で交換可能に使用される。これらは、公知の配列の複数の核酸分子の基質表面上の配列をいう。それぞれの核酸分子を、基質表面上の「個別のスポット」(すなわち、定義された位置または割り当てられた位置)に固定する。用語「マイクロアレイ」は、より詳細には、小型化され、それにより目視評価のために顕微鏡試験を必要するアレイをいう。本発明の方法で使用されるアレイは、マイクロアレイであることが好ましい。
【0079】
用語「核酸」および「核酸分子」は、本明細書中で交換可能に使用される。これらは、一本鎖形態または二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリマーをいい、別段の指定のない限り、類似の様式で天然に存在するヌクレオチドとして機能することができる天然ヌクレオチドの公知のアナログを含む。この用語は、合成骨格を有する核酸様構造および増幅産物を含む。
【0080】
用語「ゲノムDNA」および「ゲノム核酸」は、本明細書中で交換可能に使用される。これらは、1またはそれ以上の細胞の核から単離した核酸をいい、ゲノムDNAに由来する(例えば、単離、増幅、クローン化されているか、その合成バージョン)核酸が含まれる。全ゲノムを同様に示すことが見出された場合、羊水から単離された胎児DNAを、ゲノムDNAと見なすことができる。
【0081】
用語「DNAサンプル」(例えば、「羊水胎児DNAのサンプル」で使用される)または「コントロールゲノムDNAのサンプル」は、天然供給源から単離したDNAを代表するか、別の核酸(例えば、アレイ上に固定した)へのハイブリダイゼーションに適切な形態(例えば、可溶性水溶液など)のDNAまたは核酸を含むサンプルをいう。本発明の実施に際して使用すべきDNAサンプルには、共に実質的に完全なゲノムを対象とする、複数の核酸セグメント(またはフラグメント)が含まれる。
【0082】
本発明の文脈で使用される、用語「遺伝子プローブ」は、アレイ上の個別のスポットに固定された公知の配列の核酸分子をいう。遺伝子プローブは、定義されたゲノム領域中にその起源を有する(例えば、ゲノムライブラリー由来のクローンまたはいくつかの連続クローン)。遺伝子プローブの配列は、比較コピー数の情報が望まれる配列である。遺伝子プローブは、このようなクローンのAlu間または縮重オリゴヌクレオチドプライマーPCR産物でもあり得る。全ゲノムプローブが共に実質的に完全なゲノムまたはゲノムの定義されたサブセットを対象とすることができる。本発明のアレイベースのハイブリダイゼーション分析では、遺伝子プローブは、羊水胎児DNAの試験サンプル由来の核酸フラグメントがハイブリダイゼーションされる遺伝子特異的DNA配列である。遺伝子プローブは、1またはそれ以上の化学結合型、通常は水素結合の形成を介して相補配列の核酸に特異的に結合することができる(または特異的にハイブリダイズすることができる)。
【0083】
用語「ハイブリダイゼーション」は、相補的塩基対合を介した2つの一本鎖核酸の結合をいう。用語「特異的ハイブリダイゼーション」(または「特異的にハイブリダイズする」)および「特異的結合」(または「特異的に結合する」)は、本明細書中で交換可能に使用される。これらは、ストリンジェントな条件下で核酸分子が特定の核酸配列に優先的に結合するか、二本鎖を形成するか、ハイブリダイズする過程をいう。本発明の文脈では、これらの用語は、より詳細には、試験サンプルまたは参照サンプル由来の核酸フラグメント(またはセグメント)がアレイ上に固定された特定の遺伝子プローブおよびより少ない程度に(または全く存在しない)他の整列された遺伝子プローブに優先的に結合する過程をいう。2つの核酸分子間のハイブリダイゼーションは、目的の配列の所望の検出を達成するためのハイブリダイゼーション/洗浄媒体のストリンジェンシーの減少によって受け入れられ得る小さなミスマッチを含む。
【0084】
本発明の文脈では、用語「胎児ゲノム情報」は、アレイベースのハイブリダイゼーションによって羊水胎児DNA分析を介して得た結果から抽出することができる任意の種の情報をいう。胎児ゲノム情報には、例えば、遺伝物質の増減、染色体異常、および複数のゲノム遺伝子座におけるゲノムコピー数の変化または比率が含まれる。
【0085】
本明細書中で使用される、用語「ゲノム遺伝子座」は、定義されたゲノムの一部をいう。本発明の方法では、アレイ上の個別のスポットに固定されたそれぞれの遺伝子プローブは、特定のゲノム遺伝子座に特異的な(特徴的な)配列を有する。アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーション実験では、アレイ上の所与のスポットにおける2つの差分標識試験のサンプルおよび参照サンプルの比は、特定の遺伝子遺伝子座における2サンプルのゲノムコピー数の比を反映する。
【0086】
用語「分析に利用可能になる」は、(例えば、アレイ上に固定された)別の核酸へのハイブリダイゼーションに適切な形態であるように羊水胎児DNAを操作する(例えば、増幅する、標識する、クローン化する、断片化する、精製する、および/または濃縮し、水溶液中に再懸濁する)ことを特定するために本明細書中で使用される。
【0087】
用語「ポリメラーゼ連鎖反応またはPCR」は、本明細書中で、その分野で理解されている意味を有し、DNAまたはRNAの特定のストレッチの複数のコピーの作製技術をいう。PCRを使用して、DNA中の変異を試験することができる。PCRを使用して、サンプル中の核酸の量を定量することもできる。PCRを使用して、核酸分子をサブクローン化および/または標識することもできる。PCR実験の実施方法は、当該分野で周知である。
【0088】
用語「標識された」、「検出可能な物質で標識され」、および「検出可能部分で標識された」は、本明細書中で交換可能に使用される。これらを使用して、サンプル由来の核酸分子または各核酸セグメントを結合(すなわち、ハイブリダイゼーション)後に視覚化してアレイ上に固定されたプローブを生成することができることを特定する。本発明の方法で使用すべき核酸セグメントのサンプルを、ハイブリダイゼーション反応前に検出可能に標識することができるか、ハイブリダイゼーション産物に結合する検出可能な標識を選択することができる。好ましくは、検出可能な物質または検出可能な部分を、測定することができるかその強度がハイブリダイゼーションされた核酸の量と関連するシグナルが得られるように選択する。好ましくは、検出可能な物質または検出可能な部分を、局在化シグナルを発生し、それによりアレイ上の各スポット由来のシグナルが空間的に解明されるようにも選択する。核酸分子の標識方法は、当該分野で周知である(このような方法のより詳細な説明については、以下を参照のこと)。標識核酸フラグメントを、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段、または化学的手段によって直接または間接的に検出可能な標識の組み込みまたは標識への抱合によって調製することができる。適切な検出可能な物質には、種々のリガンド、放射性核種、蛍光色素、化学発光剤、微粒子、酵素、比色標識、磁性標識、およびハプテンが含まれるが、これらに制限されない。検出可能な部分はまた、分子ビーコンおよびアプタマービーコンなどの生体分子であり得る。
【0089】
用語「フルオロフォア」、「蛍光部分」、「蛍光標識」、「蛍光色素」、および「蛍光標識部分」は、本明細書中で交換可能に使用される。これらは、溶液中で適切な波長の光で励起した場合に光を放出する分子をいう。広範な種々の構造および特徴を有する多数の蛍光色素が、本発明の実施に際して使用するのに適切である。同様に、核酸の蛍光標識のための方法および材料は公知である(例えば、R.P.Haugland,”Molecular Probes:Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals 1992−1994”,5th Ed.,1994,Molecular Probes,Inc.(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。フルオロフォアの選択では、蛍光分子が効率よく光を吸収して蛍光を発し(すなわち、モル吸収係数が高く、蛍光量子収率が高い)、光安定性を示す(すなわち、アレイベースのハイブリダイゼーション分析を行うために必要な時間内で光励起の際に有意に分解されない)ことが好ましい。本発明の方法の実施の際の使用に適切な蛍光標識には、例えば、Cy−3TM、Cy−5TM、テキサスレッド、FITC、Spectrum RedTM、Spectrum GreenTM、フィコエリトリン、ローダミン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、カルボシアニン、メロシアニン、スチリル色素、オキソノール色素、BODIPY色素、およびこれらの分子の等価物、これらの分子のアナログ、またはこれらの分子の誘導体が含まれる。
【0090】
用語「差分標識」を使用して、2つの核酸セグメントサンプルを、識別可能なシグナルを発する第1の検出可能な物質および第2の検出可能な物質で標識することを特定する。識別可能なシグナルを発する検出可能な物質には、蛍光色素の適合対(matched pair)が含まれる。蛍光色素の適合対は当該分野で公知であり、例えば、ローダミンおよびフルオレセイン、Cy−3TMおよびCy−5TM、ならびにSpectrum RedTMおよびSpectrum GreenTMが含まれる。
【0091】
用語「Cy−3TMおよびCy−5TM」は、Amersham Pharmacia Biotech(Piscataway,NJ)が製造している蛍光シアニン色素(すなわち、それぞれ3−および5−N,N’−ジエチルテトラメチルインドジカルボシアニン)をいう(例えば、米国特許第5,047,519号;同第5,151,507号;同第5,286,486号;同第5,714,386号;および同第6,027,709号を参照のこと)。典型的には、これらの色素を核酸に組み込んで、Cy−3TMまたはCy−5TMにカップリングした5’−アミノ−プロパルギル−2’−デオキシシチジン5’−三リン酸の形態にする。
【0092】
用語「Spectrum RedTM」および「Spectrum GreenTM」は、Vysis Inc.(Downers Grove,IL)から市販されている色素をいう。
【0093】
本明細書中で使用される、用語「コンピュータ支援画像化システム」は、ハイブリダイゼーション後にCGH−アレイを分析してハイブリダイゼーション後のアレイの蛍光画像を得ることができる多色蛍光画像を獲得することができるシステムをいう。コンピュータ支援画像化システムは、照射源(レーザーなど)、CCD(すなわち、電荷結合素子)カメラ、フィルターセット、およびコンピュータを具備し得るハードウェアから構成される。
【0094】
本明細書中で使用される、用語「コンピュータ支援画像分析システム」は、ハイブリダイゼーション後のアレイの蛍光画像を分析し、アレイから画像化したデータを解釈し、整列させたゲノム中のゲノム遺伝子座の関数としてのゲノムコピー数の比としてアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションの結果を表示するために使用することができるシステムをいう。コンピュータ支援画像分析システムは、アレイ上の個別のスポットにおける蛍光の定量および蛍光比の決定のためのソフトウェアを具備したコンピュータを含み得る。
【0095】
本明細書中で使用される、用語「コンピュータ」は、その最も広い一般的文脈で使用され、全てのこのようなデバイスを組み込んでいる。本発明の方法を、任意のコンピュータを使用するか任意の公知のソフトウェアまたは方法と組み合わせて実施することができる。コンピュータはまた、任意の記憶素子形態(ダイナミックランダムアクセスメモリもしくはフラッシュメモリなど)または大容量記憶装置(磁気ディスク光学記憶装置など)をさらに含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0096】
(特定の好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は、出生前診断、スクリーニング、モニタリング、および/または試験のための改善されたストラテジーに関する。より詳細には、疾患または状態の迅速な出生前診断ならびに胎児の性および染色体異常などの胎児の特徴の評価を行うことが可能な感度の高いシステムを記載する。より詳細には、出願人は、本発明が、羊水が胎児核酸の豊富な供給源であり、羊水から単離した無細胞胎児DNAを分析するためのハイブリダイゼーションまたはアレイベースのハイブリダイゼーションの使用を含む方法に関すると認識する。本発明は、変化し得る染色体/ゲノム位置の予備知識を必要とすることなく複数のゲノム位置における染色体異常およびゲノムコピー数の変動を同時に同定することが可能なシステムを提供する。少量の羊水物質しか必要でないことに加えて、本発明の方法は、他の従来の方法よりも短時間で実質的により多くの情報が得られるという利点も有する。特に、本発明の方法により、日常的な核型分類法によって検出できない小さいか、わずかであるか、および/または不可解な染色体異常(微小欠失、微小重複、およびサブテロメア再編成など)を検出可能である。
【0097】
(1.羊水由来の無細胞胎児DNA)
1つの態様では、本発明の方法は、羊水から単離した無細胞胎児DNAの分析を含む。
【0098】
多くの場合、核酸ベースのテクノロジーを使用した研究には、少量の羊水しか利用できない。その結果として、これらの方法は、非常に長いサンプル富化工程(羊膜細胞の培養など)を必要とし、この長い試験期間がこれから親になろうとする人の感情的な負担が大きくなり得る。出願人の研究所で行った予備研究(D.W.Bianchi et al.,Clin.Chem.2001,47:1867−1869(その全体が本明細書中で参考として援用される))により、無細胞胎児DNAが羊水中に大量に存在し、標準的な手順を使用して容易に単離することができることを証明した。さらに、母体の血清および血漿と比較して、羊水区画中の1mlの流動物あたりの胎児DNAが100〜200倍多いことが見出された。羊水中の胎児DNAの相対存在量は、時間のかかるサンプル富化工程が排除され(または少なくともその数が有意に減少する)、それにより試験期間および労力が減少する。
【0099】
(羊水サンプル)
本発明の方法の実施は、妊婦から得た羊水サンプルを準備する工程を含む。羊水を、一般に、長い針を母体の下腹部から子宮内の羊膜孔まで挿入し、少量の羊水を採取する羊水穿刺と呼ばれる方法を使用して採取する。
【0100】
出生前診断のために、ほとんどの羊水穿刺は、妊娠14週齢と20週齢との間で行われる。羊水穿刺の最も一般的な指標には以下が含まれる:高齢の母体(典型的には、米国において、推定出産時に35歳または35歳を超える年齢と設定)、前の子が出生時欠損または障害であること、親の染色体再編成、遺伝子成分を有する遅発性障害の家族歴、再発性流産、胎児の神経管欠損および/または胎児の染色体異常のリスクが高いことが報告されている母体血清スクリーニング試験(多マーカースクリーニング)が陽性であること、ならびに胎児超音波試験が異常であること(例えば、胎児異数性に関連することが公知の徴候の出現)。羊水穿刺に伴うリスクは稀であるが、胎児の喪失および母体のRh感作が含まれる。羊水穿刺後の胎児死亡率のリスクは、通常の予測よりも約0.5〜1%増加する。母体に対する副作用には、手順後の痙攣、出血、感染、および羊水の漏出が含まれる。
【0101】
羊水穿刺は、現在、最も多様な胎児の障害を検出する臨床試験の1つである。従来の羊水穿刺手順では、羊水中に存在する胎児細胞を、染色体分析、生化学的分析、および分子生物学的分析のために遠心分離によって単離し、培養で増殖させる。羊水から細胞集団を除去する遠心分離により、上清サンプル(本明細書中で、「残存羊膜物質」と名付ける)も得られる。このサンプルを、通常、アッセイが失敗したときのバックアップとして−20℃で保存する。この上清のアリコートを、α−フェトプロテインおよびアセチルコリンエステラーゼレベルの決定などさらなるアッセイに使用することもできる。一定期間後、典型的には、凍結上清サンプルを破棄する。出願人が残存羊膜物質のサンプルを得たCytogenetics Laboratory at Tufts−New England Medical Center(Boston,MA)に従った標準的なプロトコールを、実施例1に詳述する。
【0102】
(無細胞胎児DNAの単離)
本発明の方法で使用する無細胞胎児DNAを、妊婦から得た羊水サンプルから単離する。任意の適切なDNAの単離法または抽出法によって単離することができる。
【0103】
好ましい実施形態では、無細胞胎児DNAを、羊水サンプルからの細胞集団の除去後に得られた残存羊膜物質から単離する。細胞集団を、任意の適切な方法(例えば、遠心分離)によって羊水から除去することができる。
【0104】
一定の実施形態では、実質的に全ての細胞集団を、例えば、1回を超える遠心分離の実施によって羊水から除去する。他の実施形態では、残存羊膜物質は、いくつかの細胞集団を含む。
【0105】
上記で既に述べているように、無細胞胎児DNAの単離または抽出前に、残存羊膜物質を凍結し、適切な保存条件下で一定期間保存することができる。−20℃で8年間まで保存した胎児DNAは、アレイベースのハイブリダイゼーション実験に適切であることが見出された。抽出前に凍結サンプルを37℃で解凍し、ボルテックスで混合する。羊水サンプル中に存在する任意の残存細胞集団を、遠心分離によって除去することができる。
【0106】
胎児DNAの単離は、残存羊膜物質中に存在する無細胞胎児DNAを抽出して分析が利用可能になるように残存羊膜物質を処理する工程を含む。抽出羊水胎児DNAが得られる適切な単離方法を、本発明の実施に際して使用することができる。
【0107】
DNAの抽出方法は、当該分野で周知である。古典的なDNA単離プロトコールは、フェノールとクロロホルムとの混合物などの有機溶媒を使用した抽出およびその後のエタノールでの沈殿に基づく(例えば、J.Sambrook et al.,”Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,1989,2nd Ed.,Cold Spring Harbour Laboratory Press:New York,NYを参照のこと)。他の方法には、以下が含まれる:DNA抽出物の塩析(例えば、P.Sunnucks et al.,Genetics,1996,144:747−756;およびS.M.Aljanabi andI.Martinez,Nucl.Acids Res.1997,25:4692−4693を参照のこと);トリメチルアンモニウムの臭化物塩でのDNA抽出法(例えば、S.Gustincich et al.,BioTechniques,1991,11:298−302を参照のこと)、およびグアニジニウムチオシアネートDNA抽出法(例えば、J.B.W.Hammond et al.,Biochemistry,1996,240:298−300を参照のこと)。
【0108】
体液からDNAを抽出するために使用することができ、例えば、BD Biosciences Clontech(Palo Alto,CA)、Epicentre Technologies(Madison,WI)、Gentra Systems,Inc.(Minneapolis,MN)、MicroProbe Corp.(Bothell,WA)、Organon Teknika(Durham,NC)、およびQiagen Inc.(Valencia,CA)から市販されている多数の異なる多目的のキットも存在する。従うべきプロトコールを詳述しているユーザーガイドがこれら全てのキット中に含まれる。感度、処理時間、およびコストは、キットによって異なり得る。当業者は、特定の状況に最も適切なキットを容易に選択することができる。
【0109】
典型的には、約8mL〜約15mLの残存羊膜物質のアリコートに対して胎児DNA抽出を行う。好ましくは、約12mL〜約15mLの残存羊膜物質のアリコートに対して抽出を行う。より好ましくは、15mLを超える残存羊膜物質のアリコートに対して抽出を行う。
【0110】
実質的に全ての細胞集団を羊水サンプルから除去する場合、羊水胎児DNAは、本質的に、無細胞胎児DNAからなる。全細胞集団の一部のみが羊水サンプルから除去された場合、羊水胎児DNAは、無細胞胎児DNAおよび残存羊膜物質中に依然として存在する細胞由来のDNAを含む。後者の場合、一般に大量のDNAが得られる。
【0111】
出願人は、Qiagenによって記載の「血液および体液」プロトコールを使用して10mL以上の体積の残存羊膜物質サンプルに対してDNA抽出を行い、8ngと900ngとの間の胎児DNAを得た。羊水から単離した無細胞胎児DNAは、ゲノム全体で等しく示されることが見出された。
【0112】
(抽出した無細胞胎児DNAの増幅)
一定の実施形態では、ハイブリダイゼーションによって分析する前に羊水胎児DNAを増幅する。増幅工程は、少量の羊水胎児DNAしか分析に利用できない場合に特定に有用であり得る。
【0113】
増幅方法は、当該分野で周知である(例えば、A.R.Kimmel and S.L.Berger,Methods Enzymol.1987,152:307−316;J.Sambrook et al.,”Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,1989,2nd Ed.,Cold Spring Harbour Laboratory Press:New York,NY;”Short Protocols in Molecular Biology”,F.M.Ausubel(Ed.),2002,5th Ed.,John Wiley & Sons;米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号、および同第4,800,159号を参照のこと)。標準的な核酸増幅法には、以下が含まれる:ポリメラーゼ連鎖反応(すなわちPCR、例えば、”PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications”,M.A.Innis(Ed.),Academic Press:New York,1990;および”PCR Strategies”,M.A.Innis(Ed.),Academic Press:New York,1995を参照のこと);リガーゼ連鎖反応(すなわちLCR、例えば、U.Landegren et al.,Science,1988,241:1077−1080;およびD.L.Barringer et al.,Gene,1990,89:117−122を参照のこと);転写増幅(例えば、D.Y.Kwoh et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86:1173−1177を参照のこと);自立配列複製(例えば、J.C.Guatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1990,87:1874−1848を参照のこと);Q−βレプリカーゼ増幅(例えば、J.H.Smith et al.,J.Clin.Microbiol.1997,35:1477−1491を参照のこと);自動Q−βレプリカーゼ増幅アッセイ(例えば、J.L.Burg et al.,Mol.Cell.Probes,1996,10:257−271を参照のこと)、および他のRNAポリメラーゼ媒介技術(例えば、核酸配列ベースの増幅(すなわちNASBA、例えば、A.E.Greijer et al.,J.Virol.Methods,2001,96:133−147を参照のこと)など)。
【0114】
増幅を使用して、胎児DNAの抽出量を定量することもできる(例えば、米国特許第6,294,338号を参照のこと)。あるいはまたはさらに、ハイブリダイゼーションによる分析の前に適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用した増幅を使用して、無細胞胎児DNAをサブクローン化および/または標識することができる(以下を参照のこと)。当業者は、適切なオリゴヌクレオチド増幅プライマーを容易に選択およびデザインすることができる。
【0115】
増幅DNAのその後の定量および/または定性分析を、公知の技術(制限エンドヌクレアーゼでの消化、臭化エチジウム染色アガロースゲルの紫外線による視覚化;DNA配列決定、または対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを使用したハイブリダイゼーションなど)を使用して実施することができる(R.K.Saiki et al.,Am.J.Hum.Genet.1988,43(suppl.):A35)。
【0116】
(無細胞胎児DNAの標識)
一定の好ましい実施形態では、抽出胎児DNAを、ハイブリダイゼーションによって分析する前に検出可能な物質または検出可能な部分で標識する。検出可能な物質の役割は、ハイブリダイゼーションされた核酸フラグメント(例えば、アレイ上に固定された遺伝子プローブに結合した核酸フラグメント)を視覚化することである。好ましくは、測定することができるシグナルを発し、かつその強度が分析対象のサンプル中に存在する標識核酸の量に関連(例えば、比例する)するような検出可能な物質を選択する。本発明のアレイベースのハイブリダイゼーション法では、局在化されたシグナルを発し、それによりアレイ上の各スポット由来のシグナルを解明することが可能なように検出可能な物質を選択することも好ましい。
【0117】
核酸分子と検出可能な物質との間の結合は、共有結合または非共有結合であり得る。標識核酸フラグメントを、検出可能な部分の組み込みまたは抱合によって調製することができる。標識を、核酸フラグメントに直接結合するか、リンカーを介して間接的に結合することができる。種々の長さのリンカーまたはスペーサーアームが当該分野で公知であり、市販されており、これらを、立体障害を減少させ、および/または他の有用な性質または所望の性質を得られた標識分子に付与するように選択することができる(例えば、E.S.Mansfield et al.,Mol.Cell.Probes,1995,9:145−156を参照のこと)。
【0118】
核酸フラグメントの標識方法は、当該分野で周知である。標識プロトコール、標識検出技術、およびこの分野の最近の進展の概説については、例えば、L.J.Kricka,Ann.Clin.Biochem.2002,39:114−129;R.P.van Gijlswijk et al.,Expert Rev.Mol.Diagn.2001,1:81−91;およびS.Joos et al.,J.Biotechnol.1994,35:135−153を参照のこと。標準的な核酸標識方法には、以下が含まれる:放射性物質の組み込み、蛍光色素(例えば、L.M.Smith et al.,Nucl.Acids Res.1985,13:2399−2412を参照のこと)または酵素(例えば、B.A.Connoly and P.Rider,Nucl.Acids.Res.1985,13:4485−4502を参照のこと)の直接結合;免疫化学的に検出可能にする核酸フラグメントの化学修飾または他の親和性反応(例えば、T.R.Broker et al.,Nucl.Acids Res.1978,5:363−384;E.A.Bayer et al.,Methods of Biochem.Analysis,1980,26:1−45;R.Langer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1981,78:6633−6637;R.W.Richardson et al.,Nucl.Acids Res.1983,11:6167−6184;D.J.Brigati et al.,Virol.1983,126:32−50;P.Tchen et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,1984,81:3466−3470;J.E.Landegent et al.,Exp.Cell Res.1984,15:61−72;およびA.H.Hopman et al.,Exp.Cell Res.1987,169:357−368を参照のこと);およびランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはターミナルトランスフェラーゼを使用したテーリングなどの酵素媒介標識法(酵素標識に関する概説については、例えば、J.Temsamani and S.Agrawal,Mol.Biotechnol.1996,5:223−232を参照のこと)。より最近に開発された核酸標識システムには、以下が含まれるが、これらに限定されない:DNA中のグアニン部分のN7位との単一反応性シスプラチン誘導体の反応に基づくULS(普遍的連結システム(Universal Linkage System))(例えば、R.J.Heetebrij et al.,Cytogenet.Cell.Genet.1999,87:47−52を参照のこと)、核酸に挿入し、UV照射の際にヌクレオチド塩基に共有結合するようなソラレン−ビオチン(例えば、C.Levenson et al.,Methods Enzymol.1990,184:577−583;およびC.Pfannschmidt et al.,Nucleic Acids Res.1996,24:1702−1709を参照のこと)、光反応性アジド誘導体(例えば、C.Neves et al.,Bioconjugate Chem.2000,11:51−55)、およびDNAアルキル化剤(例えば、M.G.Sebestyen et al.,Nat.Biotechnol.1998,16:568−576を参照のこと)。
【0119】
任意の種々の検出可能な物質を、本発明の実施の際に使用することができる。適切な検出可能な物質には、以下が含まれるが、これらに限定されない:種々のリガンド、放射性核種(例えば、32P、35S、H、14C、125I、および131Iなど);蛍光色素(蛍光色素の特定の例については以下を参照のこと);化学発光剤(例えば、アクリジニウムエステルおよび安定化ジオキセタンなど);微粒子(例えば、量子ドット、ナノ結晶、およびリン光体など);酵素(例えば、ELISAで使用される酵素(すなわち、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)など);比色標識(例えば、色素およびコロイド状金など);磁性標識(例えば、DynabeadsTMなど);ビオチン、ジオキシゲニン、または抗血清またはモノクローナル抗体が利用可能な他のハプテンおよびタンパク質。
【0120】
一定の好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションによって分析すべき羊水胎児DNAを蛍光標識する。種々の化学構造および物理的特徴の多数の公知の蛍光標識部分は、本発明の実施の際の使用に適切である。適切な蛍光色素には、以下が含まれるが、これらに限定されない:Cy−3TM、Cy−5TM、テキサスレッド、FITC、Spectrum RedTM、Spectrum GreenTM、フィコエリトリン、ローダミン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、カルボシアニン、メロシアニン、スチリル色素、オキソノール色素、BODIPY色素(すなわち、ホウ素ジピロメテンジフルオリドフルオロフォア)、およびこれらの分子の等価物、これらの分子のアナログ、またはこれらの分子の誘導体。同様に、核酸などの生体分子への蛍光色素の結合または組み込みのための方法および材料は公知である(例えば、R.P.Haugland,”Molecular Probes:Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals 1992−1994’,5th Ed.,1994,Molecular Probes,Inc.を参照のこと)。蛍光標識剤および標識キットは、例えば、Amersham Biosciences Inc.(Piscataway,NJ),Molecular Probes Inc.(Eugene,OR)、およびNew England Biolabs Inc.(Berverly,MA)から市販されている。
【0121】
本発明の実施に際して使用すべき蛍光標識剤の好ましい性質には、高モル吸収係数、高蛍光量子収率、および光安定性が含まれる。好ましい標識フルオロフォアは、紫外線スペクトル範囲(すなわち、400nm未満)よりもむしろ可視光の吸収波長および発光波長(すなわち、400nmと750nmとの間)を示す。好ましい蛍光色素には、Cy−3TMおよびCy−5TM(すなわち、それぞれ3−および5−N,N’−ジエチルテトラメチルインドジカルボシアニン)が含まれる。Cy−3TMは、550nmで極大吸収を示し、最大570nmで蛍光を発し、Cy−3TMが生体分子と抱合した場合のその蛍光量子収率は、0.04と決定されている(Amersham Biosciences Inc.,Piscataway,NJ)。Cy−5TMは、それぞれ649nmおよび670nmで吸収および発光蛍光極大を示し、生体分子と抱合した場合のその蛍光量子収率は0.28と報告されている(Amersham Biosciences Inc.,Piscataway,NJ)。Cy−5TMの安定性を増大させるために(それにより、ハイブリダイゼーション時間が長くなり、かつ蛍光シグナルがより強くなる)、抗酸化剤およびフリーラジカル捕捉剤を、ハイブリダイゼーション混合物および/またはハイブリダイゼーション/洗浄緩衝液に添加することができる。Cy−3TMおよびCy−5TMはまた、アレイベースの装置のためのほとんどの蛍光検出システムと適合する蛍光標識の適合対を形成する利点を示す(以下を参照のこと)。蛍光色素の別の好ましい適合対は、Spectrum RedTMおよびSpectrum GreenTMを含む。
【0122】
検出可能な部分はまた、分子ビーコンおよびアプタマービーコンなどの生体分子であり得る。分子ビーコンは、5’末端および3’末端上のフルオロフォアおよび非蛍光消光剤を有する核酸分子である。相補的核酸鎖の非存在下で、分子ビーコンは、フルオロフォアおよび消光剤が互いに極めて近接し、それによりフルオロフォアの蛍光がFRET(すなわち、蛍光共鳴エネルギー転移)によって効率よく消光される、ステム−ループ(またはヘアピン)高次構造を取る。分子ビーコンへの相補配列の結合によってステム−ループ構造が開き、フルオロフォアと消光剤との間の物理的距離が増加し、それによりFRET効率が減少して蛍光シグナルが発生する。検出可能な部分としての分子ビーコン使用は、当該分野で周知である(例えば、D.L.Sokol et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998,95:11538−11543;ならびに米国特許第6,277,581号および同第6,235,504号を参照のこと)。アプタマービーコンは、2つまたはそれ以上の高次構造を取ることができること以外は分子ビーコンと類似している(例えば、O.K.Kaboev et al.,Nucleic Acids Res.2000,28:E94;R.Yamamoto et al.,Genes Cells,2000,5:389−396;N.Hamaguchi et al.,Anal.Biochem.2001,294:126−131;S.K.Poddar and C.T.Le,Mol.Cell.Probes,2001,15:161−167を参照のこと)。
【0123】
検出可能にするために、通常のヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドの「テール」を、核酸フラグメントに付加することもできる。テールに相補的であり、かつ検出可能な標識(例えば、フルオロフォア、酵素、または放射性標識された塩基など)を含む核酸との第2のハイブリダイゼーションにより、アレイに結合した核酸フラグメントを視覚化することが可能である(例えば、Enzo Biochem Inc.,New York,NYから市販されているシステムを参照のこと)。
【0124】
特定の核酸標識技術の選択は状況に依存し、標識方法の容易さおよびコスト、所望のサンプル標識の品質、ハイブリダイゼーション反応(例えば、ハイブリダイゼーション過程の比率および/または効率)に対する検出可能な部分の効果、使用すべきハイブリダイゼーション装置の検出システムの性質、ならびに検出可能な標識によって得られるシグナルの性質および強度などのいくつかの要因に支配される。
【0125】
(II.羊水胎児DNAのアレイベースのハイブリダイゼーション分析)
別の態様では、本発明は、アレイベースのハイブリダイゼーションによる無細胞胎児DNAの分析を含む、出生前診断方法、スクリーニング方法、モニタリング方法、および/または試験方法を提供する。
【0126】
ダウン症候群、ターナー症候群、およびクラインフェルター症候群などの発育異常は、各染色体または染色体領域の1つのコピーの増減に起因する。ディ・ジョージ症候群、プラーダー−ヴィリ症候群、およびアンジェルマン症候群などの他の状態は、伝統的な核型分類法を使用して検出が困難であり、かつ容易に見過ごされ得る微小欠失または他のわずかな染色体異常に関連する。ゲノムの実質的に完全な部分の染色体異常の高感度の検出およびマッピングが可能な技術により、より正確な出生前診断方法ならびに染色体の異常と疾患表現型との関連づけおよび重要な遺伝子の局在化および同定のためのアプローチが得られる。
【0127】
アレイベースのハイブリダイゼーションによる無細胞胎児DNAの分析を、任意の適切なアレイベースのハイブリダイゼーションDNA分析方法によって行うことができ、それにより、複数のゲノム遺伝子座における遺伝物質の増減、染色体異常、および/または遺伝子コピー数の変化などのゲノム情報を得ることができる。このような方法には、以下が含まれるが、これらに限定されない:アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションおよび各塩基対の変化またはミスマッチを含むアレイを使用したハイブリダイゼーション方法。
【0128】
(比較ゲノムハイブリダイゼーション)
比較ゲノムハイブリダイゼーション(すなわちCGH)は、全ゲノムにわたるDNAコピー数の変動を調査するために開発された分子細胞遺伝学的技術である(A.Kallioniemi et al.,Science,1992,258:818−821;O.P.Kallioniemi et al.,Semin.Cancer Biol.1993,4:41−46;S.du Manoir et al.,Hum.Genetics,1993,90:590−610;S.Willadsen et al.,Hum.Reprod.1999,14:470−475(その全体が本明細書中で参考として援用される))。CGH分析は、試験サンプルと参照サンプルとの遺伝子組成を比較し、例えば、ゲノムDNAの試験サンプルが、参照サンプルと比較して増幅、検出、または変異した核酸セグメントを含むかどうかを決定することが可能である。
【0129】
CGHは、通常、in situハイブリダイゼーション、蛍光顕微鏡法、およびデジタル画像分析の組み合わせに基づく。典型的には、伝統的な中期CGH実験では、2つのゲノム集団(すなわち、DNAのマルチメガベースの一方は試験サンプルであり、他方は基準配列である)を、蛍光色素で差分標識し、正常な中期染色体とin situで同時ハイブリダイゼーションし、蛍光によって視覚化する。染色体または染色体領域に沿った2つの異なる蛍光標識強度の比は、2つのサンプルの各核酸配列の相対存在量(すなわち、相対コピー数)を反映する。参照サンプルを、ネガティブコントロール(すなわち、正常または野生型のゲノム)またはポジティブコントロール(すなわち、染色体の異常を含むことが公知のサンプル)として作用するように選択することができる。
【0130】
その全ゲノムスクリーニング能力を使用する中期CGHは、他の核型分類法よりも迅速で負担が少なく、臨床細胞遺伝学での広範な種々の適用が見出されている(例えば、T.Bryndorf et al.,Am.J.Hum.Genet.1995,57:1211−1220を参照のこと)。しかし、中期CGHは、スクリーニングツールとしてのその有用性が制限される多数の制約がある。例えば、中期CGHは、PCRベースの欠失検出法よりも感度が低いことが見出された。中期CGHによって示されるほとんどの制約は、中期染色体の使用に固有のものである。実際、染色体中の高度に縮重したスーパーコイル状のDNA機構により、ゲノムの小領域を含む異常の検出および密集した異常の解明が妨げられる。中期CGHの解明は、細胞遺伝学的研究の有益な出発点を提供するが、目的の配列を正確に位置づけられない。逆に、FISH(すなわち、蛍光in situハイブリダイゼーション)などの技術は、中期CGHよりもはるかに高度に解明するが、ゲノムスケールで使用するには非常に骨が折れる。
【0131】
(アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーション)
アレイベースのCGHによってマッピングの分解能が増加する。固定プローブが中期染色体である中期CGHと対照的に、アレイベースのCGHは、バイオチップまたはマイクロアレイプラットフォーム上のアレイとして整列された固定遺伝子特異的核酸配列を使用する。アレイベースのCGHアプローチにより、1回の適時の感度の高い手順で全(または実質的に完全な)ゲノムにわたるDNA配列コピー数の情報が得られ、その分解能は、主に、アレイ内のDNA配列の数、サイズ、およびマップの位置に依存する。
【0132】
アレイベースのCGH実験は、中期CGH実験と類似している。同量のDNAの試験サンプルおよび参照サンプルを蛍光色素で差分標識し、実質的に完全なゲノムまたはゲノムのサブセットを集合的に対象とするクローン化ゲノムDNAフラグメントのアレイに同時ハイブリダイゼーションさせる。アレイ上の各スポットは、特定のゲノムセグメントに対応する核酸配列を含む。得られた標識アレイの個別のスポットにおける蛍光の比は、試験サンプルおよび参照サンプルの競合ハイブリダイゼーションを反映し、DNAコピー数の変動を遺伝子座毎に測定する。したがって、アレイベースのCGHにより、染色体/ゲノム領域の異常な位置の予備知識を必要とすることなく1回の実験でDNA配列のコピー数が変化した(すなわち、遺伝物質の増減)領域をゲノム規模でマッピングすることが可能である(T.Bryndorf et al.,Am.J.Hum.Genet.1995,57:1211−1220;M.Schena et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1996,93:10614−10619;およびE.S.Lander,Nat.Genet.1999,21(suppl.):3−4)。
【0133】
CGHは、遺伝子の増幅および欠失の検出ならびに腫瘍の発症および進行におけるその役割およびその治療に対する応答の研究のための迅速かつ正確なツールとしての癌遺伝学における適用が主に見出されている。種々の腫瘍型由来の凍結標本および細胞株から抽出したDNAの比較ゲノムハイブリダイゼーションによるスクリーニングにより、伝統的な細胞遺伝学的分析によって検出されない多数の再発する染色体の増減が明らかとなった。
【0134】
(アレイベースのCGHによる羊水胎児DNAの分析)
本発明の一定の方法は、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる羊水胎児DNAの分析を含む。
【0135】
より詳細には、本発明の一定の方法は、羊水胎児DNAのサンプルを準備する工程と、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによって羊水胎児DNAを分析して胎児ゲノム情報を得る工程と、得られた胎児ゲノム情報に基づいて、出生前診断を行う工程とを含む。
【0136】
本発明の方法における分析工程を、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションを実施するための任意の種々の方法、手段、およびその変形形態を使用して行うことができる。アレイベースのCGH法は当該分野で公知であり、多数の化学刊行物および特許に記載されている(例えば、米国特許第5,635,351号;同第5,665,549号;同第5,721,098号;同第5,830,645号;同第5,856,097号;同第5,965,362号;同第5,976,790号;同第6,159,685号;同第6,197,501号;および同第6,335,167号;ならびに欧州特許第1 134 293号および同第1 026 260号(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0137】
アレイベースのCGH法が開発されており、以下の医学研究および臨床研究で使用されている:例えば、毛髪および皮膚の疾患における複合的形質をマッピングするための皮膚科(V.M.Aita et al,,Exp Dermatol.1999,8:439−452)、癌遺伝型(H.Kashiwagi and K.Uchida,Hum.Cell.2000,13:135−141);新規の卵巣遺伝子を同定するための新規のストラテジーとして(A.B.Tavares et al.,Semin Reprod Med.2001,19:167−173);乳癌研究(D.Pinkel et al.,Nat.Genet.1998,20:207−211;J.R.Pollack et al.,Nat.Genet.1999,23:41−46;C.S.Cooper,Breast Cancer Res.2001,3:158−175);膵臓癌研究(M.Buchholz et al.,Pancreatology,2001,1:581−586);遺伝的に定義された白血病およびリンパ腫亜群の診断および同定のための新規のアプローチとして(P.Lichter et al.,Semin.Hematol.2000,37:348−357;T.R.Golub,Curr.Opin.Hematol.2001,8:252−261;S.Wessendorf et al.,Ann Hematol.2001,80(Suppl 3):B35−37);転移が原因として関連し得る遺伝子を同定するための新規の研究ツールとして(C.Khanna et al.,Cancer Res.2001,61:3750−3790);歯の研究(W.P.Kuo et al.,Oral Oncol.2002,38:650−656);薬理ゲノミクス(K.K.Jain,Pharmacogenomics,2000,1:289−307);腎臓疾患の研究(M.Kurella et al.,J.Am.Soc.Nephrol.2001,12:1072−1078);ならびに栄養と肥満についての研究(M.J.Moreno−Aliaga et al.,Br.J.Nutr.2001,86:119−122)。
【0138】
本発明の実施に際して、これらの方法およびアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションの実施のための当該分野で公知の他の方法を記載のように使用し、胎児ゲノム情報が得られるように改変することができる。胎児ゲノム情報には、多数のゲノム遺伝子座における遺伝物質の増減、染色体異常、およびゲノムコピー数の変化が含まれる。
【0139】
アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる羊水胎児DNAの分析によって行われる本発明の他の出生前診断方法は、羊水胎児DNAの試験サンプルを準備する工程であって、試験サンプルが未知の核型を有し、かつ第1の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第1のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程と、コントロールゲノムDNAの参照サンプルを準備する工程であって、参照サンプルが公知の核型を有し、かつ第2の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第2のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程と、複数の遺伝子プローブを含むアレイを準備する工程であって、それぞれの遺伝子プローブが基質表面上の個別のスポットに固定されてアレイを形成し、遺伝子プローブが共に実質的に完全な第3のゲノムまたは第3のゲノムのサブセットを含む、工程と、試験サンプルおよび参照サンプル中の核酸セグメントがアレイ上の遺伝子プローブと特異的にハイブリダイズすることができる条件下でアレイを試験サンプルおよび参照サンプルに同時接触させる工程と、試験サンプルおよび参照サンプル中の各核酸のアレイ上に固定した各遺伝子プローブへの結合を決定して、相対的結合パターンを得る、工程と、得られた前記相対結合パターンに基づいて、出生前診断を行う工程とを含む。
【0140】
(試験サンプルおよび参照サンプル)
本発明のアレイベースのCGH法では、羊水胎児DNAの試験サンプルを、コントロールゲノムDNAの参照サンプルと比較する。
【0141】
好ましくは、上記のように、羊水胎児DNAを、羊水サンプルから単離する。本発明の方法で使用すべき羊水胎児DNAの試験サンプルには、その核型が知られていない実質的に完全な第1のゲノムを含む複数の核酸フラグメントを含む。
【0142】
本発明の方法で使用すべきコントロールゲノムDNAの参照サンプルには、核型が公知の実質的に完全な第2のゲノムを含む複数の核酸フラグメントが含まれる。本発明のアレイベースのCGH法では、ゲノムコントロールDNAを、ネガティブコントロール(例えば、正常または野生型のゲノムを含むサンプル)またはポジティブコントロール(例えば、1またはそれ以上の染色体の異常を含むサンプル)として作用するように選択することができる。コントロールDNAの参照サンプルを、正常な46,のXX核型(雌性正倍数体)または正常な46,のXY核型(雄性正倍数体)のいずれかを有する個体から単離することができる。あるいは、コントロールゲノムDNAの参照サンプルを、同定された染色体異常に関連する疾患または状態を有する個体(例えば、ダウン症候群を罹患している個体)から単離することができる。あるいは、コントロールDNAの参照サンプルは胎盤に由来し、参照サンプルを、母体の血漿または血清中に循環しているか羊水中に存在する胎児細胞から単離することができ、その核型を、従来のGバンディング分析、中期CGH、FISH、またはSKYによって決定することができる(D.W.Bianchi et al.,Prenatal.Diagn.1993,13:293−300;D.Ganshirt−Ahlert et al ,Am.J.Reprod.Immunol.1993,30:2−3;J.L.Simpson et al.,J.Am.Med.Assoc.1993,270:2357−2361;Y.I.Zheng et al.,J.Med.Genet.1993,30:1051−1056)。あるいは、コントロールDNAサンプルは胎盤に由来し、コントロールDNAサンプルを、上記のように羊水サンプルから単離することができる。
【0143】
2つのゲノム由来のDNAを、アレイベースのCGH分析前に、増幅、標識、断片化、精製、濃縮、および/またはその他の方法で改変することができる。核酸の操作技術は当該分野で周知である(例えば、J.Sambrook et al.,”Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,1989,2nd Ed.,Cold Spring Harbour Laboratory Press:New York,NY;”PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications”,1990,M.A.Innis(Ed.),Academic Press:New York,NY;P.Tijssen”Hybridization with Nucleic Acid Probes−Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology(Parts I and II)”,1993,Elsevier Science;”PCR Strategies”,1995,M.A.Innis(Ed.),Academic Press:New York,NY;and”Short Protocols in Molecular Biology”,2002,F.M.Ausubel(Ed.),5th Ed.,John Wiley & Sons(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0144】
一定の好ましい実施形態では、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーション分析の分解能を改善するために、試験サンプルおよび参照サンプルの核酸フラグメントは、約500塩基長未満、好ましくは約200塩基長未満である。小フラグメントは、反復配列および他のバックグラウンド交差ハイブリダイゼーションの抑制によってコピー数の相違の検出または固有配列の検出の信頼性を有意に増大させる。
【0145】
DNA断片化法は当該分野で公知であり、以下が含まれる:DNアーゼ、超音波処理(例えば、P.L.Deininger,Anal.Biochem.1983,129:216−223を参照のこと)、機械的剪断(例えば、J.Sambrook et al.,”Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,1989,2nd Ed.,Cold Spring Harbour Laboratory Press:New York,NY;;P.Tijssen”Hybridization with Nucleic Acid Probes−Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology(Parts I and II)”,1993,Elsevier Science;;C.P.Ordahl et al.,Nucleic Acids Res.1976,3:2985−2999;P.J.Oefner et al.,Nucleic Acids Res.1996,24:3879−3886;Y.R.Thorstenson et al.,Genome Res.1998,8:848−855を参照のこと)などでの処理。酵素でのDNAの無作為な消化により、わずか25〜30塩基しか含まないフラグメントが得られる。このような消化を、DNAエンドヌクレアーゼ(例えば、J.E.Herrera and J.B.Chaires,J.Mol.Biol.1994,236:405−411;and D.Suck,J.Mol.Recognit.1994,7:65−70を参照のこと)または2ベースの制限エンドヌクレアーゼCviJI(例えば、M.C.Fitzgerald et al.,Nucl.Acids Res.1992,20:3753−3762を参照のこと)を使用して行うことができる。
【0146】
試験サンプルおよび参照サンプル中の核酸セグメントのフラグメントサイズを、任意の種々の技術(例えば、電気泳動(例えば、B.A.Siles and G.B.Collier,J.Chromatogr.A,1997,771:319−329)またはマトリクス支援レーザー離脱/イオン化飛行時間型質量分析法(例えば、N.H.Chiu et al,Nucl.Acids Res.2000,28:E31)など)によって評価することができる。
【0147】
本発明の方法の実施に際して、羊水胎児DNAの試験サンプルおよびコントロールゲノムDNAの参照サンプルを、アレイベースのCGHによる分析前に標識する。検出可能な物質での核酸の適切な核酸標識方法は、上に詳述している。ゲノムコピー数の比を決定するために、2つのDNAサンプルを差分標識すべきである(すなわち、試験サンプルを標識する第1の検出可能な物質および参照サンプルを標識する第2の検出可能な物質により識別可能なシグナルが得られるべきである)。本発明の方法で使用される適切な検出可能な物質の適合対を以下に記載する。
【0148】
ハイブリダイゼーション前に、試験サンプルおよび参照サンプルの標識核酸フラグメントを精製および濃縮し、その後にハイブリダイゼーション緩衝液中に再懸濁することができる。Microcon30カラムを使用して、1工程でサンプルを精製および濃縮することができる。あるいは、核酸を、メンブレンカラム(Qiagenカラムなど)またはセファデックスG50を使用して精製し、エタノールの存在下で沈殿させることができる。
【0149】
当業者は、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーション実験のための核酸サンプルの調製方法を容易に実施および/または修正することができる。
【0150】
(比較ゲノムハイブリダイゼーションアレイ)
本発明の方法では、羊水胎児DNAを、アレイベースのアプローチを使用した比較ゲノムハイブリダイゼーションによって分析する。
【0151】
任意の種々のアレイを、本発明の実施に際して使用することができる。研究者は、市販のアレイを利用するか、自作することができる。アレイの作製および使用方法は、当該分野で周知である(例えば、S.Kern and G.M.Hampton,Biotechniques,1997,23:120−124;M.Schummer et al.,Biotechniques,1997,23:1087−1092;S.Solinas−Toldo et al.,Genes,Chromosomes & Cancer,1997,20:399−407;M.Johnston,Curr.Biol.1998,8:R171−R174;D.D.Bowtell,Nature Gen.1999,Supp.21:25−32;S.J.Watson and H.Akil,Biol Psychiatry.1999,45:533−543;W.M.Freeman et al,Biotechniques.2000,29:1042−1046 and 1048−1055;D.J.Lockhart and E.A.Winzeler,Nature,2000,405:827−836;M.Cuzin,Transfus.Clin.Biol.2001,8:291−296;P.P.Zarrinkar et al.,Genome Res.2001,11:1256−1261;M.Gabig and G.Wegrzyn,Acta Biochim.Pol.2001,48:615−622;and V.G.Cheung et al.,Nature,2001,40:953−958を参照のこと;例えば、米国特許第5,143,854号;同第5,434,049号;同第5,556,752号;同第5,632,957号;同第5,700,637号;同第5,744,305号;同第5,770,456号;同第5,800,992号;同第5,807,522号;同第5,830,645号;同第5,856,174号;同第5,959,098号;同第5,965,452号;同第6,013,440号;同第6,022,963号;同第6,045,996号;同第6,048,695号;同第6,054,270号;同第6,258,606号;同第6,261,776号;同第6,277,489号;同第6,277,628号;同第6,365,349号;同第6,387,626号;同第6,458,584号;同第6,503,711号;同第6,516,276号;同第6,521,465号;同第6,558,907号;同第6,562,565号;同第6,576,424号;同第6,587,579号;同第6,589,726号;同第6,594,432号;同第6,599,693号;同第6,600,031号;および同第6,613,893号(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)も参照のこと)。
【0152】
アレイは、基質表面上の個別のスポット(すなわち、定義された位置または割り当てられた位置)に固定された複数の遺伝子プローブを含む。本発明で使用される基質表面は、基質表面への遺伝子プローブの直接または間接的結合(すなわち、固定)が可能な任意の種々のグリッド、セミグリッド、可撓性材料から作製することができる。適切な材料には、以下が含まれるが、これらに限定されない:セルロース(例えば、米国特許第5,068,269号を参照のこと)、セルロースアセテート(例えば、米国特許第6,048,457号を参照のこと)、ニトロセルロース、ガラス(例えば、米国特許第5,843,767号を参照のこと)、石英またはガリウムヒ素などの他の結晶性基質、シリコーン(例えば、米国特許第6,096,817号を参照のこと)、種々のプラスチックおよびプラスチックコポリマー(例えば、米国特許第4,355,153号;同第4,652,613号;および同第6,024,872号を参照のこと)、種々のメンブレンおよびゲル(例えば、米国特許第5,795,557号を参照のこと)、ならびに常磁性微粒子または超磁性(supramagnetic)微粒子(例えば、米国特許第5,939,261号を参照のこと)。蛍光を検出すべきである場合、シクロオレフィンポリマーを含むアレイを使用することが好ましいかもしれない(例えば、米国特許第6,063,338号を参照のこと)。
【0153】
基質表面への遺伝子プローブの直接または間接的結合のために、材料上の化学反応性官能基(reactive functional chemical group)(例えば、水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基など)を活用することができる。アレイを作製するための基質表面への遺伝子プローブの固定方法は、当該分野で周知である。
【0154】
各遺伝子プローブの1つを超えるコピーを、アレイ上にスポットすることができる(例えば、2つずつまたは3つずつ)。この配置により、例えば、得られた結果の再現性を評価することが可能である(以下を参照のこと)。関連する遺伝子プローブを、アレイ上のプローブエレメント中にグループ化することもできる。例えば、プローブエレメントは、複数の異なる長さの関連遺伝子プローブを含み得るが、実質的に同一の配列を含む。あるいは、プローブエレメントは、1つを超えるDNAのクローン化片のコピーの消化に起因する異なる長さのフラグメントである複数の関連遺伝子プローブを含み得る。アレイは、複数のプローブエレメントを含み得る。アレイ上のプローブエレメントを、異なる密度で基質表面に配置することができる。
【0155】
アレイ固定化遺伝子プローブは、例えば、実質的に完全なゲノムまたはゲノムのサブセットを集合的に対象とする配列を含む遺伝子由来の配列(例えば、ゲノムライブラリー由来)を含む核酸であり得る。遺伝子プローブの配列は、比較コピー数情報が望まれる配列である。例えば、全ゲノムにわたるDNA配列コピー数情報を得るために、全ゲノムまたは実質的に完全なゲノムを対象とする遺伝子プローブを含むアレイを使用する。他の分析型(すなわち、非ゲノム規模の実験)のために、アレイは、疾患または状態に関連することが公知であるか、疾患または状態との関連を試験すべきである遺伝子または染色体の位置に由来する特異的核酸配列を含み得る。さらにまたはあるいは、アレイは、未知の重要性または位置の核酸配列を含み得る。遺伝子プローブを、ポジティブコントロールまたはネガティブコントロールとして使用することができる(すなわち、核酸配列は、核型が正常なゲノムまたは1またはそれ以上の染色体異常を含むゲノムに由来し得る)。
【0156】
遺伝子プローブの調製技術および操作技術は、当該分野で周知である(例えば、J.Sambrook et al.,”Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,1989,2nd Ed.,Cold Spring Harbour Laboratory Press:New York,NY;”PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications”,1990,M.A.Innis(Ed.),Academic Press:New York,NY;P.Tijssen”Hybridization with Nucleic Acid Probes−Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology(Parts I and II)”,1993,Elsevier Science;”PCR Strategies”,1995,M.A.Innis(Ed.),Academic Press:New York,NY;および”Short Protocols in Molecular Biology”,2002,F.M.Ausubel(Ed.),5th Ed.,John Wiley & Sonsを参照のこと)。
【0157】
遺伝子プローブを得て、種々の伝達体(vehicle)へのクローニングによって操作することができる。これらを、スクリーニングし、再クローニングし、ゲノムDNAの任意の供給源から増幅することができる。遺伝子プローブは、哺乳動物およびヒト人工染色体(それぞれ、約5〜400キロベース(kb)のインサートを含み得るMACおよびHAC)、サテライト人工染色体またはサテライトDNAベースの人工染色体(SATAC)、酵母人工染色体(YAC;サイズは0.2〜1Mb)、細菌人工染色体(BAC;300kbまで);ならびにP1人工染色体(PAC;約70〜100kb)などを含む遺伝子クローンに由来し得る。
【0158】
MACおよびHACは、記載されている(例えば、W.Roush,Science,1997,276:38−39;M.A.Rosenfeld,Nat.Genet.1997,15:333−335;F.Ascenzioni et al.,Cancer Lett.1997,118:135−142;Y Kuroiwa et al.,Nat.Biotechnol.2000,18:1086−1090;J.E.Meija et al.,Am.J.Hum.Genet.2001,69:315−326;およびC.Auriche et al.,EMBO Rep.2001,2:102−107を参照のこと;例えば、米国特許第5,288,625号;同第5,721,118号;同第6,025,155号;および同第6,077,697号も参照のこと)。異なる哺乳動物種細胞におけるde novo染色体形成の誘導によってSATACを産生することができる(例えば、P.E.Warburton and D.Kiplin,Nature,1997,386:553−555;E.Csonka et al.,J.Cell.Sci.2000,113:3207−3216;およびG.Hadlaczky,Curr.Opin.Mol.Ther.2001,3:125−132を参照のこと)。
【0159】
あるいは、遺伝子プローブは、100万塩基対までのサイズのゲノムフラグメントの安定な増殖のために長年使用されているYACに由来し得る(例えば、J.M.Feingold et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1990,87:8637−8641;G.Adam et al.,Plant J.,1997,11:1349−1358;R.M.Tucker and D.T.Burke,Gene,1997,199:25−30;およびM.Zeschnigk et al.,Nucleic Acids Res.,1999,27:E30を参照のこと;例えば、米国特許第5,776,745号および同第5,981,175号も参照のこと)。
【0160】
BACを使用して、本発明の方法の実施に際して使用するための遺伝子プローブを産生することもできる。E.coliのF因子プラスミド系に基づくBACは、操作が容易であり、かつμgの量で精製されるという利点がある(例えば、S.Asakawa et al.,Gene,1997,191:69−79;およびY.Cao et al.,Genome Res.1999,9:763−774を参照のこと;例えば、米国特許第5,874,259号;同第6,183,957号;および同第6,277,621号も参照のこと)。PACは、バクテリオファージP1由来のベクターである(例えば、P.A.Ioannou et al.,Nature Genet.,1994,6:84−89;J.Boren et al.,Genome Res.1996,6:1123−1130;H.G.Nothwang et al.,Genomics,1997,41:370−378;L.H.Reid et al.,Genomics,1997,43:366−375;およびP.Y.Woon et al.,Genomics,1998,50:306−316)。
【0161】
遺伝子プローブを得て、他のクローニング伝達体(例えば組換えウイルス、コスミド、またはプラスミド)へのクローニングによって操作することもできる(例えば、米国特許第5,266,489号;同第5,288,641号;および同第5,501,979号を参照のこと)。
【0162】
あるいは、アレイ固定遺伝子プローブとして使用される核酸配列を、当該分野で周知の化学的技術によってin vitroで合成することができる。これらの方法は記載されている(例えば、S.A.Narang et al.,Meth.Enzymol.1979,68:90−98;E.L.Brown et al.,Meth.Enzymol.1979,68:109−151;E.S.Belousov et al.,Nucleic Acids Res.1997,25:3440−3444;M.J.Blommers et al.,Biochemistry,1994,33:7886−7896;およびK.Frenkel et al.,Free Radic.Biol.Med.1995,19:373−380を参照のこと;例えば、米国特許第4,458,066号も参照のこと)。
【0163】
遺伝子プローブの特注のアレイ配置の代替物は、市販のアレイおよびマイクロアレイを利用することである。このようなアレイは、例えば、Vysis Corporation(Downers Grove,IL)、Spectral Genomics Inc.(Houston,TX)、およびAffymetrix Inc.(Santa Clara,CA)によって開発されている。
【0164】
実施例3に記載の一連の実験で出願人が使用したアレイは、Vysis製のGenoSensorTMArray300である。このゲノムマイクロアレイは、遺伝子の増幅と検出を同時にスクリーニングすることができ、1遺伝子コピーの検出が可能な感度を有する。Vysisアレイは、3つずつスポットされた287個のプローブエレメントからなり、主に、全染色体およびテロメアに微小欠失領域、重要なX/Y染色体標的、アニューソミー(aneusomy)、および異数性を含む細菌人工染色体(BAC)由来の1300個を超える遺伝子座を含む。
【0165】
(ハイブリダイゼーション)
本発明の方法では、CGHアレイを、サンプル中の核酸フラグメントがアレイ上に固定された遺伝子プローブと特異的にハイブリダイズすることができる条件下で試験サンプルおよび参照サンプルと同時に接触させる。
【0166】
ハイブリダイゼーション反応工程および洗浄工程は、いくらかでもあれば、任意の種々の実験条件下で行うことができる。多数のハイブリダイゼーションおよび洗浄プロトコールが記載されており、当該分野で周知である(例えば、J.Sambrook et al.,”Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,1989,2nd Ed.,Cold Spring Harbour Laboratory Press:New York;P.Tijssen”Hybridization with Nucleic Acid Probes Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology(Part II)”,Elsevier Science,1993;および”Nucleic Acid Hybridization”,M.L.M.Anderson(Ed.),1999,Springer Verlag:New York,NY)。本発明の方法を、以下の公知のハイブリダイゼーションプロトコール、公知のハイブリダイゼーションプロトコールの修正または至適化バージョン、または新規に開発したハイブリダイゼーションプロトコールによって、これらプロトコールにより特異的ハイブリダイゼーションが可能である限り行うことができる。
【0167】
用語「特異的ハイブリダイゼーション」は、核酸分子がストリンジェントな条件下で特定の核酸配列と優先的に結合、重複、またはハイブリダイズする過程をいう。本発明の文脈では、この用語は、より詳細には、試験サンプルまたは参照サンプル由来の核酸フラグメントがアレイ上に固定された特定の遺伝子プローブおよびより少ない程度に(または全く存在しない)アレイの他の整列されたゲノムプローブに優先的に結合する過程をいう。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、配列に依存する。ハイブリダイゼーションの特異性は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーと共に増加し、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの減少により、より高い程度のミスマッチが許容される。
【0168】
ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件を、ハイブリダイゼーションの反応時間、洗浄工程の時間、ハイブリダイゼーション反応および/または洗浄過程の温度、ハイブリダイゼーション緩衝液および/または洗浄緩衝液の成分、これらの成分の濃度、ならびにハイブリダイゼーション緩衝液および/または洗浄緩衝液のpHおよびイオン強度などの要因の変化によって調整することができる。
【0169】
一定の実施形態では、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄工程を、非常にストリンジェントな条件下で行う。他の実施形態では、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄工程を、中程度からストリンジェントな条件下で行う。さらに他の実施形態では、1つを超える洗浄工程を行う。例えば、バックグラウンドシグナルを減少させるために、中程度から低いストリンジェンシーでの洗浄後に、非常にストリンジェントな条件下で洗浄した。
【0170】
当該分野で周知であるように、ハイブリダイゼーション過程を、他の反応条件の修正によって強化することができる。例えば、ハイブリダイゼーション効率(すなわち、平衡時間)を、温度の変動(すなわち、2℃を超える温度差)を誘導する反応条件の使用によって強化することができる。本発明の方法の実施に際してオーブンまたは温度を変動させることができる他のデバイスを使用して、ハイブリダイゼーション過程中に温度変動条件を得ることができる。
【0171】
湿度が飽和していない環境下で反応させる場合にハイブリダイゼーション効率は有意に改善されることも当該分野で公知である。ハイブリダイゼーション過程中の湿度の調節により、ハイブリダイゼーション感度を増加させる別の手段が得られる。アレイベースの装置は、通常、全ての異なる実験段階(すなわち、予備ハイブリダイゼーション工程、ハイブリダイゼーション工程、洗浄工程、および検出工程)で湿度を制御することが可能なハウジングを具備する。
【0172】
さらにまたはあるいは、浸透圧の変動を含むハイブリダイゼーション環境を使用して、ハイブリダイゼーション効率を増加させることができる。ハイブリダイゼーション反応混合物の張度を高/低に変化させるような環境を、ハイブリダイゼーション室中の溶媒和物勾配の作製(例えば、片側の室に低塩濃度のハイブリダイゼーション緩衝液を入れ、他方の室により高い塩濃度のハイブリダイゼーション緩衝液を入れること)によって得ることができる。
【0173】
競合ハイブリダイゼーション条件を得るために、アレイを、試験サンプルおよび参照サンプルの標識核酸フラグメントと同時に(すなわち、一度に)接触させる。例えば、試験サンプルおよび参照サンプルの混合によってこれを行ってハイブリダイゼーション混合物を形成し、アレイと混合物を接触させることができる。
【0174】
(高反復配列)
本発明の方法の実施に際して、サンプル中の核酸セグメントがアレイ上の遺伝子プローブと特異的にハイブリダイズすることができる条件下で、アレイを試験サンプルおよび参照サンプルと接触させる。上記のように、適切なハイブリダイゼーション条件の選択により、特異的ハイブリダイゼーションが可能である。ハイブリダイゼーションの特異性を、反復配列の阻害によってさらに強化することができる。
【0175】
一定の好ましい実施形態では、核酸フラグメント中に存在する反復配列を除去し、そのハイブリダイゼーション能力を無効にする。ヒトゲノムなどの複雑なゲノムは、異なる種の高度な反復配列(例えば、Alu、L1、およびサテライト配列)、特徴づけが不十分な中程度の反復(MRE)配列、および簡潔なホモまたはオリゴヌクレオチド領域を含む。ハイブリダイゼーション反応からの反復配列の排除またはそのハイブリダイゼーション能力の抑制により、ハイブリダイゼーション核酸由来のシグナルに対するこれらの反復型配列(ハイブリダイゼーションを受ける可能性が統計的により高い)に由来するシグナルからの支配が回避される。ハイブリダイゼーションからの反復配列の除去の失敗またはそのハイブリダイゼーション能力の抑制の失敗により、非特異的ハイブリダイゼーションが起こり、シグナルのバックグラウンドノイズとの識別が困難になる。
【0176】
当業者に周知の任意の種々の方法を使用して、混合物から反復配列を除去するかそのハイブリダイゼーション能力を無効にすることができる。これらの方法には、以下が含まれるが、これらに限定されない:固体支持体に固定した特定の核酸配列へのハイブリダイゼーションによる反復配列の除去(例えば、O.Brison et al.,Mol.Cell.Biol.1982,2:578−587を参照のこと);適切なPCRプライマーを使用したPCR増幅による反復配列産生の抑制;自己再連結による高反復配列のハイブリダイゼーション能力の阻害(例えば、R.J.Britten et al.,Methods of Enzymology,1974,29:363−418を参照のこと);またはハイドロキシアパタイト(例えば、Bio−Rad Laboratories,Richmond,VAから市販されている)を使用した反復配列の除去。
【0177】
好ましくは、高反復配列のハイブリダイゼーション能力を、ハイブリダイゼーション混合物に非標識ブロッキング核酸を含めることによって競合的に阻害する。接触工程前に試験サンプルおよび参照サンプルと混合する非標識ブロッキング核酸は競合物として作用し、標識反復配列の遺伝子プローブの高反復配列への結合を回避し、それによりハイブリダイゼーションバックグラウンドが減少する。一定の好ましい実施形態では、非標識ブロッキング核酸は、ヒトCot−1 DNAである。ヒトCot−1 DNAは、例えば、Gibco/BRL Life Technologies(Gaithersburg,MD)から市販されている。
【0178】
(結合の検出およびデータ分析)
本発明の方法は、アレイ上に固定された各遺伝子プローブに試験サンプルおよび参照サンプルの各核酸フラグメントを結合させて相対的結合パターンを得る工程を含む。アレイベースのCGHでは、2つの差分標識サンプルの同時ハイブリダイゼーションに起因する標識アレイの分析によって相対結合を決定する。
【0179】
一定の実施形態では、相対的結合の決定は、第1の検出可能な物質および第2の検出可能な物質によってアレイ上のそれぞれ個別のスポットに得られたシグナルの強度を測定する工程と、アレイのそれぞれのスポットについてのシグナル強度の比を決定する工程とを含む。アレイ上の個別の位置におけるサンプル由来のシグナル強度の比は、試験サンプルおよび参照サンプル中のDNA配列の競合ハイブリダイゼーションを反映する。したがって、アレイ(すなわち、実質的に完全なゲノムまたはゲノムのサブセット)にわたる相対結合パターンにより、DNAコピー数の変動が遺伝子座毎に測定される。
【0180】
任意の種々の手段および方法を使用して、標識アレイの分析を行うことができ、その選択は、第1および第2の検出可能な物質の性質に依存する。
【0181】
好ましい実施形態では、第1および第2の検出可能な物質は蛍光色素であり、相対結合を蛍光によって検出する。相対ハイブリダイゼーションを決定するために、第1および第2の蛍光標識は、使用すべきアレイベースのCGH装置の検出システムに適合する適合対の構成要素であるべきである。蛍光標識色素の適合対は、好ましくは、スペクトル的に区別可能なシグナルを発する。例えば、適合対中の蛍光色素は、同一のスペクトル範囲の光を有意に吸収せず(すなわち、異なる吸収極大波長を示す)、2つの異なる波長を使用して(例えば、連続的に)励起することができる。あるいは、適合対中の蛍光色素は、異なるスペクトル範囲で光を発する(すなわち、蛍光色素は、励起の際に二色蛍光を発する)。
【0182】
蛍光標識対は当該分野で公知である(例えば、R.P.Haugland,”Molecular Probes:Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals 1992−1994”,5th Ed.,1994,Molecular Probes,Inc.を参照のこと)。例示的蛍光色素対は、ローダミンおよびフルオレセイン(例えば、J.DeRisi et al.,Nature Gen.1996,14:458−460を参照のこと);Spectrum RedTMおよびSpectrum GreenTM(Vysis,Inc.,(Downers Grove,IL)から市販されている);ならびにCy−3TMおよびCy−5TM(Amersham Life Sciences(Arlington Heights,IL)から市販されている)が含まれるが、これらに限定されない。
【0183】
蛍光標識CGHアレイの分析は、通常、全アレイにわたる複数の蛍光の検出、画像の収集、画像化したアレイ由来の蛍光強度の定量、およびデータ分析を含む。
【0184】
複数の蛍光標識の同時検出方法および蛍光合成画像の作製は当該分野で周知であり、電荷結合素子(すなわち、CCD)などの「アレイ読取り」または「スキャニング」システムの使用が含まれる。任意の公知のデバイスもしくは方法またはその組み合わせを、本発明の方法の実施に際して使用するか適合することができる(例えば、Y.Hiraoka et al.,Science,1987,238:36−41;R.S.Aikens et al.,Meth.Cell Biol.1989,29:291−313;A.Divane et al.,Prenat.Diagn.1994,14:1061−1069;S.M.Jalal et al.,Mayo Clin.Proc.1998,73:132−137;V.G.Cheung et al.,Nature Genet.1999,21:15−19を参照のこと;例えば、米国特許第5,539,517号;同第5,790,727号;同第5,846,708号;同第5,880,473号;同第5,922,617号;同第5,943,129号;同第6,049,380号;同第6,054,279号;同第6,055,325号;同第6,066,459号;同第6,140,044号;同第6,143,495号;同第6,191,425号;同第6,252,664号;同第6,261,776号;および同第6,294,331号も参照のこと)。
【0185】
市販のマイクロアレイスキャナは、典型的には、2つ(またはそれ以上)の異なる蛍光画像を連続的に(例えば、PerkinElmer Life and Analytical Sciences,Inc.(Boston,MA)から市販されているシステム)または同時に(Virtek Vision Inc.(Ontario,Canada)およびAxon Instruments,Inc.(Union City,CA)から市販されているシステム)収集することができるレーザーベースのスキャニングシステムである。アレイ上のそれぞれのスポットの弱い蛍光シグナルおよびシグナル応答の線形性を確実に検出するためにいくつかの異なるレーザー強度を使用してアレイをスキャニングすることができる。蛍光画像の収集時に蛍光色素特異的光学フィルターを使用することができる。フィルターセットは、例えば、Chroma Technology Corp.(Rockingham,VT)から市販されている。
【0186】
好ましくは、上記などのアレイから多色蛍光画像を作成および収集することができるコンピュータ支援画像化システムを、本発明の実施の際に使用する。ハイブリダイゼーション後に標識アレイの1またはそれ以上の蛍光画像を収集し、保存することができる。
【0187】
好ましくは、コンピュータ支援画像分析を使用して、収集した蛍光画像を分析する。このようなシステムにより、強度の差を正確に定量し、その結果をより容易に解釈することが可能である。アレイ上の個別のスポットにおける蛍光の定量および蛍光比の決定のためのソフトウェアを、通常、スキャナハードウェアと共に備える。ソフトウェアおよびハードウェアは市販されており、例えば、Applied Spectral Imaging,Inc.(Carlsbad,CA);Chroma Technology Corp.(Brattleboro,VT);Leica Microsystems,(Bannockburn,IL);およびVysis,Inc.(Downers Grove,ILから入手することができる。他のソフトウェアは公的に利用可能である(例えば、ScanAlyze(http://rana.lbl.gov);M.B.Eisen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998,95:14863−14868)。
【0188】
コンピュータ支援システムを使用した画像分析は、画像収集、画像化アレイの解釈(前処理、スポットの同定、アレイ上のそれぞれのスポットの比の測定による)、および(配置した)ゲノム上の位置(すなわち遺伝子座)の関数としてのコピー数の比としての分析結果の表示を含む。
【0189】
実施例3に記載のように、出願人が使用したシステムは、Vysis製のGenoSensorTMと呼ばれるマイクロアレイテクノロジーシステムである(米国特許第5,830,645号および同第6,159,685号(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。GenoSensorTMReaderは、キセノン光源、自動化、3つのフィルターを有する6つのフィルターホイール、1.3メガピクセル高分解能冷却CCDカメラ、17インチモニタを備えたApple Macintosh G4コンピュータを具備する。GenoSensorTMソフトウェアにより、表1に示すように表示した核型分析の結果が得られる(実施例3)。
【0190】
正確な蛍光強度の決定には、蛍光比のベースラインの正規化および決定が必要である(A.Brazma and J.Vilo,FEBS Lett.2000,480:17−24)。データの再現性を、遺伝子プローブを2つずつまたは3つずつスポットしたアレイの使用によって評価することができる。同様に、コピー数の変化に関与すべきではない公知の核酸配列を含む遺伝子プローブがCGHアレイ上に存在し、これを内部コントロールとして使用することができる。差分標識したコントロールゲノムDNAをそれ自体と比較する平衡実験の実施によって、システムの特異性を確立することができる。発現アレイ実験で使用される全体的(global)正規化などの全体的正規化を使用して、ベースライン閾値を決定することができる(M.K.Kerr et al.,J.Comput.Biol.2000,7:819−837)。数学的正規化を行って、異なる蛍光色素の染色強度の全体的相違を補正することができる。
【0191】
さらに、好ましくは、コントロール実験を行い、蛍光比とコピー数の変動との間の関係の線形性を評価すべきであり、これは、この関係が低コピー数で線形性から逸脱することが報告されたからである(A.Kallioniemi et al.,Science,1992,258:818−821;J.R.Pollack et al.,Nature Genet.1999,23:41−46;S.Solinas−Toldo et al.,Genes,Chromosomes & Cancer,1997,20:399−407;およびD.Pinkel et al.,Nature Genet.1998,20:207−211)。
【0192】
(羊水胎児DNA分析のための他のアレイベースのハイブリダイゼーション法)
上記のように、胎児ゲノム情報を得ることができる限り、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションよりも他のアレイベースの技術を使用して、アレイベースのハイブリダイゼーションによる無細胞胎児DNAの分析を行った。
【0193】
例えば、Affymetrix Inc.(Santa Clara,CA)またはOrchid Biosciences(Princeton,NJ)から市販されているSNP(すなわち、一塩基多型)アレイが核型分類で有用であり得る。複数の染色体再編成(例えば、ヘテロ接合性の消失(LOH)を引き起こす染色体再編成)を、SNPアレイを使用して検出することができる(R.Mei et al.,Genome Res.2000,10:1126−1137)。SNPアレイは、種々の適用(遺伝病または薬物感受性をマッピングするための家族性連鎖研究およびde novo遺伝子変化の追跡など)で使用されている。SNPアレイは、ゲノム全体に分散した多数の遺伝的変異(すなわち、一塩基多型)の同時追跡によって全ゲノムを調査することができる。SNPアレイは、DNAコピー数が変化しないLOH事象を検出するのに特に有用であり得る(S.A.Hagstron and T.P.Dryja,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1999,96:2952−2957)。SNPアレイを使用したDNA分析法は当該分野で周知である。新規のSNP成分を有し、かつより広い調査能力を有するアレイが開発されている(例えばAffymetrix社)。このようなアレイを、本発明の方法の実施に際して使用する。
【0194】
特定の遺伝子または遺伝子サブセット中の遺伝子の変動(例えば、各塩基対の変化またはミスマッチの存在)を試験可能なアレイを使用して、本発明の方法を行うこともできる。
【0195】
(III.出生前診断)
本発明の方法の実施は、出生前診断を行う工程を含む。一定の実施形態では、試験サンプルおよび参照サンプル中の核酸配列の相対存在量を反映し、それにより染色体異常の存在が明らかとなる相対結合パターンに基づいて出生前診断を行う。他の実施形態では、複数のゲノム遺伝子座における遺伝物質の増減などの胎児ゲノム情報に基づいて出生前診断を行う。
【0196】
(染色体異常および関連疾患および状態)
本発明の方法によって検出および同定することができる染色体の異常は、数的および構造的な染色体異常を含む。
【0197】
例えば、本発明の方法により、正常な(または半数体)染色体数の余分な組(三倍体性および四倍体性)が存在する数的異常、各染色体が欠損した数的異常(モノソミー)、および余分な個々の染色体(トリソミーおよび二重トリソミー(double trisomy))などの数的異常を検出可能である。他の二倍体生物中の染色体数の異常を異数性と呼ぶ(A.C.Chandley,in:”Human Genetics−Part B.:Medical Aspects”,1982,Alan R.Liss:New York,NYを参照のこと)。自然流産の約半数が、胎児の核型における染色体数の異常の存在に関連し(M.A.Abruzzo and T.J.Hassold,Environ.Mol.Mutagen.1995,25:38−47)、異数性が流産の主な原因となる。トリソミーは最も頻繁な異数性型であり、臨床的に認識された全妊娠の4%を占める(T.J.Hassold.and P.A.Jacobs,Ann.Rev.Genet.1984,18:69−97)。最も一般的なトリソミーには、第21染色体(ダウン症に関連する)、第18染色体(エドワード症候群)、および第13染色体(パトー症候群)が含まれる(例えば、G.E.Moore et al.,Eur.J.Hum.Genet.2000,8:223−228を参照のこと)。他の異数性は、ターナー症候群(1つのX染色体の存在)、クラインフェルター症候群(XXY核型によって特徴づけられる)、およびXYY病(XYY核型によって特徴づけられる)に関連する。
【0198】
本発明の方法による羊水胎児DNAのハイブリダイゼーション分析を使用して、数的染色体異常を検出することができ、それにより、異数性に関連する疾患および状態(ダウン症候群、エドワード症候群、およびパトー症候群、ならびにターナー症候群、クラインフェルター症候群、およびXYY病が含まれるがこれらに限定されない)を診断することができる。比較ゲノムハイブリダイゼーションは、自然流産における異数性の検出に適用されており、このような技術の出生前の使用が有用であることが証明されている(M.Daniely et al.,Hum.Reprod.1998,13:805−809)。
【0199】
本発明の方法によって検出および同定することができる他の染色体異常型は、構造的染色体異常である。全染色体の増減に対応する数的染色体異常と対照的に、構造的染色体異常は、染色体の一部を含む。構造的染色体異常には、以下が含まれる:欠失(例えば、遺伝子配列中に通常存在する1またはそれ以上のヌクレオチドが存在しないこと、全遺伝子が存在しないこと、または染色体の一部の欠損)、付加(遺伝子配列中に通常存在する1またはそれ以上のヌクレオチドの存在、余分な遺伝子コピーの存在(重複とも呼ばれる)、または染色体の余分な部分の存在)、環、破損、ならびに転座および逆位などの染色体の再編成。
【0200】
本発明の方法を使用して、X染色体に関与する染色体異常を検出することができる。多数のこれらの染色体異常は、集合的にX連鎖障害と呼ばれる疾患および状態の群に関連することが知られている。例えば、本発明の方法を使用して、血友病A(主に男性が罹患し、異常出血を起こす第VIII因子として公知の血液凝固タンパク質の欠乏によって特徴づけられる遺伝性血液疾患)に関連するX染色体上のHEMA遺伝子(Xq28)の変異を検出することができる。
【0201】
本発明の方法を使用して、デュシェーヌ筋ジストロフィなどのジストロフィノパシーを引き起こすX染色体上のDMD(Xp21.2)の変異を検出することもできる。3,000人の生きて生まれてきた男児のうちの約1人の罹患率で発症するデュシェーヌ筋ジストロフィは、早ければ2歳で始まる進行性の筋力低下によって特徴づけられる。
【0202】
X染色体上のq26−q27.2に存在するHPRT1遺伝子の変異を、本発明の方法によって検出することもできる。この染色体異常は、レッシュ−ナイハン症候群(プリン代謝の崩壊を含む奇病)に関連する。レッシュ−ナイハン症候群は、神経機能障害、認知障害および挙動障害、ならびに尿酸の過剰産生によって特徴づけられる。
【0203】
本発明の方法を使用して、全ての重症複合型免疫不全症の半数を担う染色体位置Xq13.1におけるIL2RG遺伝子の変異を検出することもできる。重症複合型免疫不全症は、免疫応答がほとんどまたは全くないことによって特徴づけられる稀なしばしば胎児の先天性障害群を示す。一定の重症複合型免疫不全症形態はまた、第19染色体上に存在するJAK3(IL2RGによって活性化される重要なシグナル伝達分子)の変異に関連し、他の形態は、第20染色体上のADA遺伝子に関与する染色体異常に起因する。
【0204】
本発明の方法を使用して、ぜい弱X症候群(現在公知の最も一般的な精神発達障害であり、その影響は女性より男性の方がより頻繁かつ重篤である)に関連するX染色体上のFMR1遺伝子(Xq27.3)の一方の末端におけるCGGモチーフの増幅(200コピーを超える存在)を検出することもできる。
【0205】
他の疾患または状態は、本発明の方法によって検出することができるヌクレオチドモチーフの増幅に関連することが公知である。例えば、骨格筋および平滑筋、ならびに目、心臓、内分泌系、および中枢神経系に影響を及ぼす多系(multisystem)障害である筋緊張性ジストロフィは、第19染色体上のDMPK遺伝子のCTGモチーフの過剰増幅(37コピー超)に関連する。別の例は、男性のみに影響を及ぼし、第11染色体(Xq11−q12)上に存在するアンドロゲン受容体(AR)遺伝子中のCAG反復の増幅(35コピー超)に関連する少しずつ進行する神経筋障害である脊髄延髄筋萎縮症である。
【0206】
ぜい弱X症候群に加えて、多数の他の遅延障害が、染色体(すなわち、テロメア)の末端領域(またはチップ)に関与する染色体異常に起因することが公知である。テロメアのDNA配列の大部分は、異なる染色体間で共有されている。しかし、テロメアはまた、それぞれの染色体に特異的な固有の(はるかに小さい)配列領域を含み、非常に遺伝子が豊富である(S.Saccone et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1992,89:4913−4917)。テロメア領域に関与する染色体再編成は、重篤な臨床的結果を有し得る。例えば、超顕微鏡的サブテロメア染色体再編成は、先天性異常を伴うか伴わない精神発達障害の重要な原因であることが見出されている(J.Flint et al.,Nat.Genet.1995,9:132−140;S.J.L.Knight et al.,Lancet,1999,354:1676−1681;B.B.de Vries et al.,J.Med.Genet.2001,38:145−150;S.J.L.Knight and J.Flint,J.Med.Genet.2000,37:401−409)。テロメア領域は、最も高い組換え率を有し、非正統的対合および交差に起因する異常を引き起こす傾向がある。ほとんどの染色体の末端部分は、450〜500バンドレベルでの日常的な核型分析によってほぼ同一なようであるので、標準的な方法を使用したこれらの領域中の染色体異常の検出は困難である。従来の核型分類法よりも分解能がはるかに高い本発明の方法を使用して、このようなサブテロメア再編成を検出することができる(J.A.Veltman et al.,Am.J.Hum.Genet.2002,70:1269−1276)。
【0207】
テロメア異常に関連する疾患および状態には、例えば、ネコ鳴き症候群(重症精神発達障害個体の1%までを占め、第5染色体の遠位部分の欠失によって特徴づけられる疾患)が含まれる。別の例は、ウルフ・ヒルシュホーン症候群(典型的な目鼻立ちおよび小頭症によって特徴づけられ、骨奇形、先天性心臓欠損、難聴、尿路奇形、および構造的脳異常も伴い得る障害)である。ウルフ・ヒルシュホーン症候群は、バンド4p16を含む第4染色体短腕の遠位位置の欠損に関連する。一定の場合、この欠失は、第4染色体に関与する環および不均衡な転座などの他の染色体異常と共に生じる。本発明の方法はまた、精神発達障害に関連する多数の状態におけるサブテロメア再編成の役割のより深い理解を目的とした基礎研究および臨床研究で適用することができる。
【0208】
本発明の方法を使用して、微小欠失/微小重複症候群に関連する染色体異常を検出することもできる。微小欠失/微小重複症候群は、小さい、わずかな、または不可解な染色体構造異常(S.K.Shapira,Curr.Opin.Pediatr.1998,10:622−627)に関連し、その多数が標準的な細胞遺伝学的方法の検出分解能を超えている遺伝子症候群の集合である。いくつかの微小欠失症候群は、1遺伝子の消失に起因し、他の微小欠失症候群は、多数の遺伝子または未知数の遺伝子に関与する。他は、依然として、物理的に連続した遺伝子の欠失により複雑な表現型異常が生じる連続的遺伝子欠失症候群と見なされている。微小欠失/微小重複症候群の診断は、現在、核型および特異的FISHアッセイの両方が不可欠であり、したがって、これらの疾患は、出生前診断で最も診断されない。さらに、FISH分析を行った(order)場合でさえも、この技術は、有用なDNAプローブを選択するために予想される染色体異常の型および位置に関する少なくともいくつかの知識が必要である。1つの遺伝子コピーを使用してゲノム規模のスクリーニングが可能な本発明のCGH法により、このような染色体微小欠失および微小重複の有無についてマイクロアレイ上で分析される全ての無細胞胎児DNAが自動的に調査されるという利点が得られる。
【0209】
例えば、本発明の方法を使用して、第15染色体のq11−q13セグメントの欠失を検出することができ、父由来の第15染色体で欠失が起こる場合、プラーダー−ヴィリ症候群(精神発達障害、筋緊張の減少、低身長、および肥満症によって特徴づけられる疾患)に関与し、母由来の第15染色体で欠失が起こる場合、アンジェルマン症候群(精神発達障害、発語障害、異常歩行、発作、および不適切な幸福な表情(inappropriate happy demeanor)によって特徴づけられる神経遺伝学的障害)に関与する。
【0210】
本発明の方法を使用して、ディ・ジョージ症候群(出生前診断で確認された先天性心疾患の症例のうちの約10%で見出される常染色体優性状態)に関連する、第22染色体の微小欠失(例えば、バンド22q11.2で起こる微小欠失)を検出することもできる。
【0211】
本発明の方法を使用して、スミス・マジェニス症候群(最も頻繁に見出される微小欠失症候群)を診断することもできる。スミス・マジェニス症候群は、精神発達障害、神経−挙動異常、睡眠障害、低身長、軽微な頭蓋顔面および骨の異常、先天性心欠損、および腎臓の異常によって特徴づけられる。これは、染色体バンド17p11.2の中間部欠失に関連する。
【0212】
本発明の方法を使用して、ルービンスタイン−テービ症候群(中等度から重症の精神発達障害、特徴的な目鼻立ち、および低身長によって特徴づけられる障害)に関連する第16染色体上のCREBBP遺伝子(16p13.3)に関与する微小欠失を検出することもできる。
【0213】
本発明の方法を使用して、ミラー・ディッカー症候群(古典的脳回欠損(すなわち、脳滑症(smooth brain)、特徴的な容貌、およびしばしば他の出生時欠損によって特徴づけられる多発奇形障害)に関連する染色体バンド17p13.3中のLISI遺伝子内の微小再編成を検出することもできる。ミラー・ディッカー症候群は、先天性遺伝子欠失症候群と見なされている。ミラー・ディッカー患者では、LIS1遺伝子は、250kbを超えるテロメア遺伝子座を常に伴う。
【0214】
本発明の方法を使用して、ウィリアムズ症候群(心血管異常、特徴的な顔面形成異常、固有の先天性プロフィールを有する発育遅延、小児高カルシウム血症、および成長遅延を含む発達障害)に関連する第7染色体上のq11.23における欠失を検出することもできる。
【0215】
本発明の方法は、特に、疾患または状態が複数の異なる染色体異常に関連する場合に有用である。例えば、およびシャルコー−マリー−ツース症候群(CMT)遺伝性ニューロパシーは、慢性運動神経および感覚神経の多発ニューロパシーによって特徴づけられ、第17染色体上のPMPP2遺伝子(17p11.2)、第1染色体上のMPZ遺伝子(1q22)、第8染色体上のNEEL遺伝子(8q21)、X染色体上のGJB1遺伝子(Xq13.1)、第10染色体上のEGR2遺伝子(10q21.1−q22.1)、および第19染色体上のPRX遺伝子(19q13.1−q13.2)に関与する染色体異常に関与する障害群をいう。
【0216】
本発明の方法によって検出および同定することができる他の染色体異常には、例えば、第21染色体上に存在し得る第21染色体の小区域(21q22など)または別の染色体上(すなわち、転座後)の分節的(segmental)重複が含まれ、これはダウン症候群に関連する。
【0217】
第7染色体上のCFTR遺伝子(7q31.2)の変異を、本発明の方法によって検出することもできる。CFTR遺伝子の一定の変異は、嚢胞性線維症(米国で今日最も一般的な胎児遺伝病)に関連する。嚢胞性線維症は、大量の粘液による呼吸経路の詰まりに起因する呼吸障害、膵臓不全症および腸不全症を反映する消化不良、および塩辛い汗によって特徴づけられる。嚢胞性線維症患者で認められた変異の約70%は、CFTRのヌクレオチド配列中の3塩基対の欠失に起因する。
【0218】
本発明の方法を使用して、網膜芽細胞腫の遺伝型に関連する第13染色体上のRbと呼ばれる遺伝子(13q14)の欠失を検出することもできる。網膜芽細胞腫は、学齢前期に発症し、両眼に腫瘍が形成される。処置しないで放置すると、網膜芽細胞腫はほとんどの場合致命的である。しかし、初期の出生後診断および現在の治療方法を使用すると、90%を超える生存率が達成される。
【0219】
本発明の方法を使用して、鎌状赤血球貧血(米国で最も一般的な遺伝性血液疾患)に関連する第11染色体上に見出されるHBB遺伝子(11p15)の点変異を検出することもできる。鎌状赤血球貧血の症状には、慢性溶血性貧血および重症感染症ならびに疼痛発作が含まれる。
【0220】
本発明の方法を使用して、ウィルムス腫瘍(小児に発生する腎臓の癌)、無虹彩(眼病)、泌尿生殖器奇形、および精神発達障害)などの異なる症候群に関連することが公知の染色体領域11p13に関与する欠失を検出することもできる。
【0221】
本発明の方法を使用して、ゴーシェ病(出生前致死形態から無症候形態までの臨床所見の連続体(continuum)を含む遺伝病)に関連することが公知の第1染色体上のGAB遺伝子(1q21)に影響を及ぼす染色体異常を検出することもできる。
【0222】
本発明の方法を使用して、マルファン症候群(眼、骨、および心血管系を含む臨床症状変動性が高い結合組織の全身性障害)に関連する第15染色体上のFBN1遺伝子(15q21.1)に関与する染色体異常を検出することもできる。
【0223】
(出生前診断)
一定の実施形態では、妊婦が35歳以上である場合に本発明の方法を行う。危険性の高い結果に関連する最も一般的な要因は、妊婦の年齢が高いことである。35歳を超える女性では、染色体異常のリスク(1%またはそれ以上)は、推定上は羊水穿刺のリスクを超え、これは、90%を超える羊水穿刺が高齢出産の女性で行われるためである。しかし、80%までのダウン症候群の乳児が、一般に羊水穿刺の候補と見なされていない35歳未満の女性から誕生していると予測されている(L.B.Holmes,New Eng.J.Med.1978,298:1419−1421)。この状況により、このような出生前試験を要求する全ての女性に対して羊水穿刺の利用範囲を広げるように提案する研究者もいる。
【0224】
他の実施形態では、妊婦が身ごもっている胎児が染色体異常を有すると疑われる場合、または胎児が染色体異常に関連する疾患または状態を有すると疑われる場合に本発明を行う。例えば、これらから親になろうとする夫婦の前の子が染色体異常を有する場合、親に染色体再編成が存在する場合、遺伝子成分を有する遅発性障害の家族歴が存在する場合、例えば、胎児の神経管欠損および/または胎児の染色体異常のリスクが高いことが報告されている母体の血清スクリーニング試験が陽性に戻った場合、または胎児超音波試験が異常である場合(例えば、異数性に関連することが公知の徴候の出現)、このような状況が起こり得る。
【0225】
(IV.羊水胎児DNAの試験方法)
1つの態様では、本発明は、研究ツールとしての羊水胎児DNAのアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーション分析の使用方法を提供する。本発明の方法を使用して、アレイベースのCGHおよびFISHなどの他の分子細胞遺伝学的方法によって小さいか僅かな染色体再編成(すなわち、微小異常)の検出の選択性および特性を比較することができる。本発明の方法を使用して、中期CGHなどの標準的な中期染色体分析技術の検出限度を超える染色体の微小異常を検出および同定することもできる。
【0226】
(アレイベースのCGHによる染色体微小異常検出の選択性および特異性)
本発明の試験方法では、染色体微小異常を含むことが知られている羊水胎児DNAの試験サンプルを、正常な(正倍数体)核型を有するコントロールゲノムDNAの参照サンプルに対して試験する。染色体の微小異常を、標準的な中期染色体分析技術を使用して正確に検出することができないか検出が困難である、小さい、僅かな、または不可解な染色体異常と定義する。染色体微小異常には、微小付加、微小欠失、微小重複、微小逆位、微小転座、サブテロメア再編成、およびこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0227】
本発明の実施は、FISHによって羊水胎児DNAの試験サンプルの核型を決定する工程を含む。FISH(すなわち、蛍光in situハイブリダイゼーション)は、蛍光遺伝子プローブを使用して染色体、DNA特異的配列、または遺伝子の有無を決定する分子細胞遺伝学的技術である。FISHを使用して、従来のバンディング技術によって検出できない僅かな染色体再編成を解明することができる。しかし、このようなスクリーニングは、疑われる染色体異常に関する予備知識が必要である。
【0228】
次いで、FISH分析によって決定した試験サンプルの核型(特定の微小異常の存在および同定)を、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによって得た結果と比較する。この比較は、2つの核型分類法(すなわち、FISHおよびアレイベースのCGH)との間の一貫性の程度の評価、試験サンプルのゲノム中に存在する特定染色体の微小異常についての両方法の検出の感度および/または選択性の比較を含み得る。
【0229】
アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションおよびFISHによる一貫性の程度、検出感度、および検出選択性を、試験サンプルのゲノム中に存在する染色体微小異常の関数として分類整理することができる。
【0230】
(染色体微小異常の検出および同定)
本発明はまた、従来の中期染色体分析技術の検出限度を超える染色体異常の検出および同定方法を提供する。特に、本発明は、羊水胎児DNAのアレイベースのCGH分析によって標準的な550バンドレベルの分解能での中期CGH分析によって検出されない染色体の微小異常を検出および同定する方法を提供する。
【0231】
本発明の方法は、適合した試験サンプルおよび参照サンプルの症例対照組を開発する必要がある。本発明の方法の実施に際して使用すべき羊水胎児DNAの試験サンプルは、超音波試験によって複数の先天性異常を有すると決定され、そのゲノムが中期CGHによって正常な核型であえることが示された胎児に由来する。コントロール羊水胎児DNAの参照サンプルは、正常な超音波試験および正常な核型を有する胎児に由来する。好ましくは、サンプルを、胎児の性、サンプル収集部位、妊娠期間、および保存期間に適合させる。
【0232】
ウルトラソノグラフィは、高周波音を使用して異なる組織および器官によって得られたエコーパターンから可視画像を作製する非浸襲性手順である。出生前診断では、ウルトラソノグラフィ検査を使用して、胎児のサイズおよび位置、胎盤のサイズおよび位置、羊水の量、および胎児の生体構造の外観を決定する。超音波検査により、先天性異常(すなわち、異なる器官(脳、心臓、肺、腎臓、肝臓、骨、および腸管が含まれる)に関与する機能的、解剖学的、または構造的奇形)の存在を明らかにすることができる。染色体の欠失が、生物測定パラメータ(例えば、大腿骨および上腕骨の長さが短いこと、腎盂拡張症、巨大な項部の折りたたみ、脳室拡大、早期胎児成長制限)および形態学的特徴(例えば、脈絡叢の嚢胞(choroids plexys cysts)、エコー発生腸、エコー発生心臓内病巣)などの一定のソノグラフの特徴に関連することが公知であるので、異常な超音波は、羊水穿刺の最も一般的な指標の1つである。
【0233】
複数の先天性異常を有する胎児由来の羊水胎児DNAのアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる分析により、中期CGHによって検出されない染色体異常を検出および同定可能であり、これは、本発明の方法が標準的な中期核型によって現在提供されている情報に有意な臨床情報を付加することを証明する。
【0234】
したがって、羊水胎児DNAのアレイベースのハイブリダイゼーション分析(特に、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーション分析)は、出生前診断領域で広範に適用されると予想される。いかなる冗長な富化工程を必要とせず、それにより試験期間および労力が有意に減少する本発明の方法により、中期染色体分析などの従来の方法と比較して遺伝子異常を迅速に同定可能である。さらに、アレイベースのCGHは、制限された量の羊水から出発する全ゲノムにわたるコピー数の変化の同時検出が可能な多重(multiplex)テクノロジーである。染色体異常が起こったかもしれない領域中のゲノム情報の予備知識はアレイベースのCGH分析には必要なく、任意の染色体/ゲノム領域を予備研究または予備試験を行うことなく潜在的に試験することができる。さらに、本発明は、標準的な中期染色体分析よりも羊水胎児DNA中の染色体異常の検出および同定の分解能がより高い。出生前に容易に診断されない微小欠失/微小重複症候群の出生前診断および遺伝子障害の主な原因であることが公知のサブテロメア再編成の検出でこれを使用することができる。したがって、本発明の方法により、以前に実行可能な核型分析よりも核型分析を広範、迅速、かつ正確に実施することが可能である。
【0235】
(V−キット)
別の態様では、本発明は、本発明の方法の実施に有用な材料を含むキットを提供する。
【0236】
本発明のキットは、以下の構成要素:羊水サンプルから無細胞胎児DNAを抽出するための材料と、複数の遺伝子プローブを含むアレイであって、それぞれの遺伝子プローブが基質表面上の個別のスポットに固定されてアレイを形成し、遺伝子プローブが共に実質的に完全なゲノムまたはゲノムのサブセットを含む、アレイと、本発明のアレイの使用説明書とを含む。
【0237】
本発明のキットは、さらに、第1の検出可能な物質で第1のDNAサンプルを標識するための材料および第2の検出可能な物質で第2のDNAサンプルを標識するための材料を含み得る。好ましくは、本発明のキットが検出可能な物質でサンプルを標識するための材料を含む場合、第1の検出可能な物質が第1の蛍光標識を含み、第2の検出可能な物質が第2の蛍光標識を含む。好ましくは、第1の蛍光標識および第2の蛍光標識により、励起の際に二色蛍光が得られる。例えば、本発明のキットは、2つのDNAサンプルをCy−3TMおよびCy−5TMまたはSpectrum RedTMおよびSpectrum GreenTMで差分標識するための材料を含み得る。
【0238】
本発明のキットは、さらに、コントロールゲノムDNAの参照サンプルであって、参照サンプルが公知の核型を有する実質的に完全なゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、コントロールゲノムDNAの参照サンプルを含み得る。一定の実施形態では、参照サンプルのゲノムは核型が正常である。他の実施形態では、参照サンプルのゲノムは核型が異常である(例えば、各染色体の余剰、各染色体の欠損、染色体の余分な部分、染色体の一部の欠損、環、破損、転座、逆位、重複、欠失、または付加などの染色体異常を含むことが公知である)。本発明のキットは、例えば、以下のコントロールゲノムDNAの2つの参照サンプルを含み得る:正常な女性核型を有する一方のサンプルおよび正常な男性核型を有する他方のサンプル。あるいは、本発明のキットは、以下のコントロールゲノムDNAの3つの参照サンプルを含み得る:正常な女性核型を有する第1のサンプル、正常な男性核型を有する第2のサンプル、および異常な核型を有する第3のサンプル。
【0239】
一定の実施形態では、本発明のキットは、さらに、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液を含む。
【0240】
他の実施形態では、本発明のキットは、さらに、ヒトCot−1 DNAなどの非標識ブロッキング核酸を含む。
【実施例】
【0241】
以下の実施例は、本発明の好ましいいくつかの作製方法および実施方法を記載する。しかし、これらの例は例示のみを目的とし、本発明の範囲を制限することを意味しないと理解すべきである。さらに、実施例を過去形で記載しない限り、他の明細書部分と同様に、テキストは、実験が実際に実施されたかデータを実際に得たことを示唆することを意図しない。
【0242】
以下に示したほとんどの実験結果は、出願人が最近の科学論文に記載している(P.B.Larrabee et al.,Am.J.Hum.Genet.,2004,75:485−491(その全体が本明細書中で参考として援用される))。
【0243】
(実施例1:羊水胎児DNAの単離および予備試験)
凍結羊水上清標本(38)を、Tufts−New England Medical Center(Tufts−NEMC)Cytogenetics Laboratory(D.W.Bianchi et al.,Clin.Chem.2001,47:1867−1869)から入手した。全サンプルを、日常的指標(高齢の母体、異常な母体血清スクリーニングの結果、または胎児のソノグラフ異常の検出など)のために採取した。細胞遺伝学的研究の標準的なプロトコールは、入手時に羊水サンプルを遠心分離し、細胞ペレットを組織培養に供し、流動物のアリコートをα−フェトプロテインおよびアセチルコリンエステラーゼレベルについてアッセイし、アッセイ失敗の場合のバックアップのために残りを−20℃で保存することである。6ヶ月後、通常は凍結羊水上清サンプルを破棄する。
【0244】
Cytogenetics Laboratoryから入手した凍結液体サンプルを最初に37℃で解凍し、その後15分間ボルテックスしながら混合した。500μLの流動物のアリコートを微量遠心分離機にて14,000rpmでスピンして任意の残存細胞を除去した。Qiagenが記載している「血液および体液」プロトコールを使用して、最終体積400μLの上清をDNAの抽出に使用した。
【0245】
Perkin−Elmer Applied Biosystems(PE−ABI)7700配列検出器を使用して、リアルタイム定量PCR分析を行った。胎児が男性の場合、男性DNAの検出の基礎としてFCY遺伝子座を使用して、分析は、Tap DNAポリメラーゼの5’→3’エンドヌクレアーゼ活性に基づくものであった。FCYプライマーは、Y染色体特異的配列Y49a(DYSI)に由来する(G.Lucotte et al.,Mol.Cell.Probes,1991,5:359−363)。FCY増幅系は、増幅プライマーFCY−F(5’−TCCTGCTTATCCAAATTCACCAT−3’)および二重標識蛍光TaqManプローブFCY−T:(5’−FAMAAGTCGCCACTGGATATCAGTTCCCTTCTTAMRA−3’)からなる。β−グロビン遺伝子を使用して、DNAの存在を確認し、その総濃度を評価した。
【0246】
100nMの各プライマーを使用し、50nMのプローブを使用すること以外は、増幅反応を、以前にY.M.D.Lo et al.(Am.J.Hum.Genet.1998,62:768−775)に記載のように準備した。7700配列検出器によって増幅データを収集し、Sequence Detection SystemソフトウェアVer.1.6.3(PE−ABI)を使用して分析した。各サンプルを4連で行い、4つの反応の平均の結果をさらなる計算に使用した。適定した男性DNAを使用して精製増幅検量線を作成した。抽出およびその後の定量アッセイを各サンプルあたり2回行い、2つの結果の平均を最終分析に使用した。
【0247】
21サンプルでは、公知の女性核型は46,XX(正常女性)、15サンプルでは、公知の女性核型は46,XY(正常女性)、2つのサンプルでは、公知の核型は47,XY,+21(ダウン症候群を有する男性胎児)であった。しかし、サンプルを冷却し、盲検した。検出されたβ−グロビンDNAの平均量は、3,427GE/mL(293〜15,786の範囲)であった。妊娠期間と総DNA検出量との間の相関関係は存在しなかった。女性胎児では、羊水中で0GE/mLのDYSI DNAが検出された。男性胎児で検出されたDYSI DNAの平均値は、2,668GE/mL(228〜12,663GE/mLの範囲)であった。線形回帰分析により、胎児DNAと妊娠期間との間に相関関係が認められた(r=0.6225、p=0.0231)。全38症例では、推定した胎児の性は正確であった。結果は、統計的に有意であった(p<0.0001、フィッシャーの直接法)。胎児ダウン症候群の場合、正常な男性核型を有する胎児から得たサンプルと比較して、胎児DNA量は上昇しなかった。
【0248】
これらのデータは、母体血清および血漿と比較して、羊水区画中の流動物1mlあたりの胎児DNAは100〜200倍であることを示す。したがって、羊水は、標準的な手順の使用によって比較的容易に得ることができる以前に認識されていない胎児核酸の豊富な供給源である。
【0249】
(実施例2:羊水由来の無細胞胎児DNAを使用した分子核型分類)
羊水中の無細胞胎児DNAを分子核型分類のために使用することができるかどうかを決定するために、4つの公知の正倍数体の男性および4つの公知の正倍数体の女性由来の8つの凍結羊水上清サンプルから無細胞胎児DNAを抽出した。各サンプルの体積は10mL以上であり、200ngと900ngとの間のDNAが得られた。サンプルを分析のためにVysisに送った。Vysisから得た結果により、DNAの存在量を確認した。DNA濃度を、25ng/μLに調整した。GenoSensorTMArray 300の現行の標識プロトコールにしたがって、サンプルをCy−3TMおよびCy−5TMで標識した。各サンプルについて、CGHのために同量の基準男性および女性DNAを標識した。DNアーゼ消化後、サンプルを、2%アガロース/臭化エチジウムゲル上で視覚化した。図1に示すように、サンプルおよびコントロール由来のDNAは、均一な増幅および標識を示した。
【0250】
サンプルを合わせ、ハイブリダイゼーション緩衝液に加え、予備インキュベートし、37℃で72時間CGHアレイにハイブリダイゼーションさせた。4つのサンプル(2つの男性、2つの女性)の初期設定では、内部基準の問題により、最終的なデータを得ることができなかった。しかし、第2のサンプル組から有意なデータが得られ、同時調査員(盲検)によって4つすべての場合の胎児の性を正確に同定することが可能である。第2のサンプル組から得た結果を、表1に示す。
【0251】
試験DNAが男性胎児に由来する場合、Y染色体ゲノム配列(SRYおよびAZFa)は、基準女性DNAと比較して有意に増加した(予想比は1を超え、認められた比は1.37と2.18との間(p<0.01))。同様に、試験DNAが男性である場合、X染色体配列(STS3’、STS5’、KAL、ジストロフィンエクソン45〜51、およびAR3’)のシグナルは、基準女性DNAと比較して有意に減少した(予想比は0.5、認められた比は0.46と0.71との間(p<0.01))。試験DNAが女性胎児に由来する場合、Y染色体配列は基準DNAと比較して有意に減少し(推定比は1未満、認められた比は0.43と0.65との間)、X染色体配列は男性基準DNAと比較した場合に有意に増加した(推定比は約2、認められた比は1.30と1.86との間(p<0.01))。
【0252】
これらの実験結果により、胎児GJ1759およびLD1686の性は男性であり、サンプルCP28およびDH98は女性であると結論づけることが可能である。
【0253】
【表1】

LD1686/女性J AZFaハイブリッドにおけるAZFa領域のT/R比は1.2であったが、これらのスポット上のCVが高いので、P値は示さなかった。
【0254】
予備データは、羊水中に見出された無細胞胎児DNAが、コピー数を決定するための分子核型分類のためにCGHアレイ上で標識および使用されるのに十分な量および質であることを示す。羊水DNAを標識し、ゲノムマイクロアレイと十分にハイブリダイゼーションさせる。これは、羊水中に良質な(分解されていない)DNAが十分に存在することを暗示しており、その結果、羊水中の無細胞胎児DNAが現行の中期核型によって得られる臨床情報よりも多数の臨床情報を得ることができるという仮説を試験することが可能なはずである。例えば、羊水由来の無細胞DNAにより、現行の顕微鏡的視覚化レベルで検出できない遺伝子コピー数および遺伝子の欠失を得ることができる。
【0255】
(実施例3:分子核型を得るためのCGHマイクロアレイにおける羊水無細胞胎児DNAの使用:予備研究)
典型的な分析では、胎児DNAを、正常な核型および異常な核型を有する保存羊水上清サンプルから抽出する。次いで、サンプルを、分析のためにVysisに送る。サンプルを、CGHマイクロアレイ上の正倍数体の男性および正倍数体の女性の基準DNAにハイブリダイゼーションさせる。次いで、出願人は、Tufts/New England Medical Centerでハイブリダイゼーションデータを分析および解釈する。
【0256】
Vysisは、複数のゲノム標的を同時評価可能な新規のマイクロアレイテクノロジーシステムを開発した。GenoSensorTMシステムは、17インチ高解像度ディスプレイモニタを備えたMacintosh G3PowerPCコンピュータ、1.3メガピクセル高分解能冷却CCDカメラ、特注デザインの光学素子、自動化、3つのフィルターを有する6つのフィルターホイール、およびキセノン光源からなる。マイクロアレイは、主に細菌人工染色体(BAC)に由来する1,300個を超える遺伝子座ならびにフルオロフォアで標識した試験DNAおよび基準DNAからなる。CGHを使用して、遺伝子標的の複数のクローンを、各遺伝子標的の蛍光色比の分析によって測定することができる。GenoSensorTMリーダーは、1分以内にマイクロアレイの蛍光画像を自動的に収集するための高分解能画像技術を使用する。リーダーソフトウェアは、アレイ画像を解釈し、試験DNAと基準DNAとの間のコピー数の変化を決定する。
【0257】
IRB承認プロトコール下で、1300個を超える羊水上清標本を採取し、保存した(−20℃)。公知の異数性(13、18、21トリソミー、またはXXYなど)を有する胎児由来の羊水からなる23(23)の症例対照組ならびに胎児の年齢、サンプル獲得部位、妊娠期間、および冷凍保存期間を合わせた正倍数体胎児由来の少なくとも5つのコントロール標本を構築した。さらに、染色体が欠損または再編成された胎児由来の複数のサンプルも利用可能である。
【0258】
一連の予備実験では、20個の羊水の凍結サンプル(異数性核型を有する6人の胎児および正常な核型を有する6人の胎児由来)を使用し、これらのサンプルから抽出した羊水胎児DNAをVysisのマイクロアレイで研究した。これらの実験の目的は、全ての染色体の変化(異数性および性が含まれる)を同定することであった。
【0259】
これらの実験では、DNA抽出前に全残存細胞を羊水サンプルから除去した。アレイあたり100ngの各DNAサンプルを使用した。前に記載のように、試験サンプルおよび参照サンプルを、それぞれCy−3TMおよびCy−5TMで標識し、ハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーションは最初は全てのサンプルで不十分であったが、DNAサンプルのpHを7に調整すると、ハイブリダイゼーションの感度および特異が増大することが見出された。データの正規化後に大多数のX染色体マーカーが基準女性DNAと比較してハイブリダイゼーションが有意に減少し、SRY遺伝子座が女性基準と比較してハイブリダイゼーションが有意に増加したので、これらの条件下で分析した2つのサンプルは、正確に男性と同定された。2つのサンプルのうちの1つは、21トリソミー(核型47,XY+21、サンプル02−1636)を有する胎児に由来すると決定された。アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる分析では、このサンプルが正倍数体基準DNAと比較して6つの第21染色体マーカーのうちの5つでハイブリダイゼーションが増加したことが見出された。しかし、これらのマーカーのうちのたった4つしかp値が0.05未満ではなく、0.005未満のp値(これらの分析でVysisが使用した厳格なカットオフ)は存在しなかった。
【0260】
これらの予備実験により、性は100%正確に同定され、マクロアレイの異数性を決定する能力に関する結論が促される。
【0261】
第2の一連の実験では、前に記載のように、公知の正倍数体核型を有する9つの凍結羊水サンプルを使用し、無細胞上清画分からDNAを抽出した。分析に利用可能な胎児DNAの量を最大にするために、解凍後かつ抽出前に可能な残存細胞を除去するための第2の遠心分離は行わなかった。また、これらのサンプルのうちの8サンプルに対応する培養羊膜細胞サンプルからDNAを個別に抽出した。細胞遺伝学的核型を得た後にこれらの羊膜細胞を採取し、凍結した。すべてのDNAサンプルをTE緩衝液(中性pH7)で溶出した。
【0262】
リアルタイムPCR法およびHoechst蛍光光度法を使用してDNAを定量した。ハイブリッドが十分に作用しているかどうかを決定するために、1つのサンプル(PR861)をパイロットサンプルとして選択した。上記のように、羊水無細胞DNA、羊膜細胞由来のDNA、ならびに男性および女性の基準DNAサンプル全てを個別に標識した。羊水無細胞DNAを、以下の2つのマイクロアレイにハイブリダイゼーションさせた:女性基準DNAを有するマイクロアレイおよび男性基準DNAを有するマイクロアレイ。羊膜細胞由来のDNAも同様に2つのマイクロアレイにハイブリダイゼーションさせた。羊水無細胞DNAおよび羊膜細胞由来のDNAの両方は、マイクロアレイと十分にハイブリダイズすることが見出され、結果は、偽陽性および陰性はほとんどなかった。このサンプルは、正確に女性と同定された。
【0263】
次に、残りの8つの羊水無細胞DNAサンプルおよび7つの羊膜細胞由来のDNAサンプルを、女性基準DNAを使用してマイクロアレイにハイブリダイゼーションした。有益でない1つの羊水DNAサンプル(JH769)以外の全てのサンプルは、十分にハイブリダイゼーションした。残りのサンプルは、偽陽性または陰性はほとんどなかった。クローン間の可変性は、インタクトな培養羊膜細胞から抽出したDNAサンプルと比較して羊水無細胞DNAサンプルで僅かに高く、DNA量は無細胞サンプルがより少量であることが示唆される。
【0264】
9つの羊水無細胞DNAサンプルのうちの8つおよび羊膜細胞由来の8つ全てのDNAサンプルは、Vysis GenoSensorTMマイクロアレイとハイブリダイゼーションした場合に性が正確に同定された。1つの羊水無細胞サンプル(JH769)は、有益でなかった。一連の量予備実験で得られた結果を、図3および図4の表に報告する。全体的に見て、得られたデータは、羊水上清から抽出した無細胞胎児DNAがマイクロアレイを使用した分子核型分類のための核酸の信頼できる供給源であり得ることを示す。
【0265】
(実施例4:分子核型を得るためのCGHマイクロアレイにおける羊水無細胞DNAの使用:完全な研究)
より完全な研究では、全部で28の無細胞胎児DNAサンプル(19個の正倍数体および9個の異数性)および8つの対応する正倍数体羊膜細胞DNAサンプルを考慮した。
【0266】
羊水から抽出した無細胞胎児DNAとハイブリダイゼーションした28個のマイクロアレイのうちの有益な17個および残存培養羊膜細胞から抽出したDNAとハイブリダイゼーションした8個のマイクロアレイのうちの7個についてのデータを示す。17個の無細胞胎児DNAサンプルの核型は、46,XX(17個のうちの4個)、46,XY(9)、47,XY,+21(2)、47,XX,+21(1)、および45,X(1)であった。この群の17個のサンプルのうちの7個は、対応する細胞サンプルを有していた。図5、6、および7は、これらの各マイクロアレイについてのX染色体、Y染色体、および第21染色体を示す17個全ての無細胞胎児DNAサンプル由来のデータを示す。上記で報告しているように、性の同定は100%正確であった。
【0267】
図5は、2つの正倍数体および4つの異数性無細胞胎児DNAサンプル由来のデータを示す。13個の正倍数体胎児サンプル(他の11個は図6および7中に示す)について、第21染色体のマーカーは、正倍数体基準DNAと有意に異ならなかった。しかし、21トリソミーを有する3つの胎児サンプルは、ほとんどの第21染色体マーカーにおける標的:基準強度比が増加した(図5)。Xトリソミーを有する胎児サンプルは、正倍数体胎児基準と比較して9つのX染色体マーカーのうちの7つでハイブリダイゼーションシグナルが減少した(図6)。
【0268】
図6は、4つの正倍数体無細胞胎児DNAサンプルが男性または女性基準DNAのいずれかと個別にハイブリダイゼーションした場合に得られたアレイデータを示す。図7は、羊水無細胞胎児DNAおよび対応する羊膜細胞由来のDNAの両方とアレイにハイブリダイゼーションした正倍数体サンプル由来の比較データを示す。
【0269】
無細胞胎児DNAサンプルのハイブリダイゼーション能力を、その対応する羊膜細胞から単離したDNAサンプルと比較した場合、無細胞胎児DNAおよび細胞DNAサンプルは全て性に関して有益であるが、無細胞胎児DNAサンプルはクローン間の変動(ノイズ)がより高かった。小さいはずである細胞遺伝学上隣接したクローン間の絶対的Cy−3TM:Cy−5TM蛍光強度比の相違の中央値の決定によって計算した隣接クローン比の相違(MACRD)基準の中央値を使用してサンプル中のノイズを評価した。現在、高品質アッセイのためのGenoSensor分析ソフトウェアで推奨される「望ましい」MACRDは、0.065以下(Vysis、未公開データ)である。ほとんどの場合に隣接クローン対が類似の比を有するので、MACRDが高いほどハイブリダイゼーションの質が低下する。概して、羊膜細胞から単離したDNAのMACRDは0.065以下であるのに対して、無細胞胎児DNAサンプルでは0.05〜0.084であった。MACRDは、細胞DNAよりもいくつかの無細胞胎児DNAで高いにもかかわらず、蛍光強度の正規化標的/規準比およびP値によって測定した第21染色体マーカー、X染色体マーカー、およびY染色体マーカーの感度は類似しており、アレイパラメータの量(変動および標準偏差のモーダル分布の平均標的内相関係数が含まれる)は、量規準構築のためにVysisで行った複数のハイブリダイゼーション組から確立した許容可能なカットオフまたはそれ未満であった。
【0270】
これらの結果は、羊水から抽出した無細胞胎児DNAをCGHマイクロアレイの使用によって分析して胎児の性および21トリソミーおよびXモノソミーなどの全染色体の増減を正確に同定することができることを示す。無細胞胎児DNAは、通常は破棄される羊水の一部から容易に利用可能であるという利点を有する。したがって、標準的な核型分類と組み合わせて使用することができ、かつ現在の標準的な治療を妨げないか胎児の健康を犠牲にしない。さらに、時間のかかる培養細胞の増殖は必要ないが、標本を受け取った直後に実施することができ、より迅速に診断される。
【0271】
まとめると、CGHマイクロアレイテクノロジーの使用による羊水由来の無細胞胎児DNAの分子分析は、染色体全体の変化(異数性)についてサンプルを迅速にスクリーニングすることが可能であり、出生前遺伝子診断のための標準的な核型技術を増強することができる有望な技術である。このテクノロジーは、小さな遺伝子の異常(微小欠失および微小重複など)の発見および描写を補助することができ、潜在的にさらなる出生前遺伝子診断への適用を潜在的に強化する。発育している胎児における超顕微鏡的遺伝子再編成の検出の臨床的重要性を調査するためにさらなる調査が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0272】
【図1】Cy−3TMで標識した無細胞羊膜DNAのサンプルならびにCy−5TMで標識した基準雄DNAサンプルおよび基準雌DNAサンプルが均一に増幅および標識されたことを示すアガロースゲル(2%アガロース/臭化エチジウム染色)の写真を示す図である。レーン1〜8は、4つの無細胞羊膜DNAサンプル(各サンプルを連続レーンで2回ロードした)を含む。コントロールは、Cy−3TM、Cy−5TM、基準雄DNA、基準雌DNAであり、それぞれ、レーン9、レーン10、レーン11〜15、およびレーン16〜20にロードした。分子量マーカーを、レーン10とレーン11との間にロードした。
【図2】GenoSensorTMソフトウェアによって分析したアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーション実験のデータを示す図である。11の性マーカーのうちの10個が、91%の分析感度に等しい0.01未満の統計的に有意に検出された。これらのデータを、サンプル型について特別にアッセイを最適化せずに得た。
【図3】アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによって得たデータを示す図である。第21染色体、X染色体、およびY染色体を示すデータは、羊水から抽出した無細胞胎児DNAとハイブリダイゼーションした各マイクロアレイを示す。結果を、蛍光強度のT/R(すなわち、標的DNAと基準DNA(正倍数体雌基準))比(バックグラウンドを補正し、正規化した)として報告する。コピー数が有意に増加したマーカー(1.2超)を、ミディアムグレーで示し、コピー数が有意に減少したマーカー(0.8未満)をダークグレイで示す。有意なP値を、ライトグレーで示す。全雄サンプルを、雌基準DNAと比較した。雌1を、雌基準DNAと比較した。雌2、3、および4を、雄基準DNAと比較した。雄5サンプルは情報価値がなかった。雄11は、公知の21トリソミーを有する。(*0.005未満のP値を1で示し、これをライトグレーで示す;0.005を超えるP値を0で示した。例外は以下のサンプルである:0.001未満に設定された有意なp値を有する雄9、10、および雌2、3。雄11(21トリソミー)は、第21染色体マーカーのみについての絶対数として示した0.05未満のP値を有していた)。
【図4】アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーション実験のグラフデータを示す図である。パートAおよびパートBは、それぞれ雌および雄として同定されたサンプルについて得られた結果を示す。両実験で使用した基準DNAサンプルは雌であった。
【図5】羊水サンプル由来の2つの正倍数体および4つの異数体無細胞胎児DNA由来のマイクロアレイデータを示す図である。データは、サンプルゲノムを正常な雌ゲノムと比較した場合の染色体X、染色体Y、および第21染色体由来のクローンを差分した(differenced)予想される比を示す。サンプルを性および数で標識し、その後ハイブリダイゼーションのために使用した基準DNAの核型によって標識する。全サンプルを、正常な雌基準DNAとハイブリダイゼーションさせた。雌1は、モノソミーX(ターナー症候群)を有し、雌2ならびに雄3および4は、21トリソミーを有していた。第21染色体、X染色体、およびY染色体上にマーカーを含むGenoSensor Array 300クローン(Vysis)のサブセットを、各アレイの結果について示す。T/R=Cyanine3(試験)およびCyanine5(基準)蛍光強度(バックグラウンドを補正し、正規化した)の標的DNAと基準正倍数体DNAとの比。コピー数が増加したマーカー(1.2超)を、黒で示し、コピー数が減少したマーカー(0.8未満)をグレイで強調する。P値が0.01未満のコピー数の変化を有意と見なし、下線を引き、太字で示す。
【図6】雄および雌基準DNAとそれぞれ個別にハイブリダイゼーションさせた羊水サンプル由来の4つの正倍数体の無細胞胎児DNAについて得たデータの比較を示す図である。データは、サンプルゲノムを正常な雄ゲノムおよび正常な雌ゲノムの両方と比較した場合の染色体X、染色体Y、および第21染色体由来のクローンを差分した(differenced)予想される比を示す。サンプルを性および数で標識し、その後ハイブリダイゼーションのために使用した基準DNAの核型によって標識する。第21染色体、X染色体、およびY染色体上にマーカーを含むGenoSensor Array 300(Vysis)クローンのサブセットを、各アレイの結果について示す。T/R=蛍光強度(バックグラウンドを補正し、正規化した)の標的DNAと基準正倍数体DNAとの比。コピー数が増加したマーカー(1.2超)を、黒で示し、コピー数が減少したマーカー(0.8未満)をグレイで強調する。P値が0.01未満のコピー数の変化を有意と見なし、下線を引き、太字で示す。
【図7】羊水サンプル由来の7つの正倍数体の無細胞胎児DNAおよびその対応する羊膜細胞(細胞)DNAについて得たデータの比較を示す図である。データは、無細胞胎児DNA由来のゲノムおよび細胞DNA由来のゲノムを正常な雌ゲノムと比較した場合の染色体X、染色体Y、および第21染色体由来のクローンについての予想される比の相違を示す。無細胞胎児DNAをアレイ付近にハイブリダイゼーションし、ホールセルから抽出したDNAについても同様に行った。サンプルを性および数で標識し、その後ハイブリダイゼーションのために使用した基準DNAの核型によって標識する。全サンプルを、正常な雌基準DNAとハイブリダイゼーションさせた。第21染色体、X染色体、およびY染色体上にマーカーを含むGenoSensor Array 300(Vysis)クローンのサブセットを、各アレイの結果について示す。T/R=蛍光強度(バックグラウンドを補正し、正規化した)の標的DNAと基準正倍数体DNAとの比。コピー数が増加したマーカー(1.2超)を、黒で示し、コピー数が減少したマーカー(0.8未満)をグレイで強調する。P値が0.01未満のコピー数の変化を有意と見なし、下線を引き、太字で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を包含する出生前診断方法であって、以下:
羊水胎児DNAのサンプルを提供する工程;
ハイブリダイゼーションによって該羊水胎児DNAを分析して胎児ゲノム情報を得る工程;および
得られた該胎児ゲノム情報に基づいて、出生前診断を提供する工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記羊水胎児DNAを、
胎児を有する妊婦から得た羊水のサンプルを提供する工程;
該羊水のサンプルから細胞集団を除去して残存羊膜物質を得る工程;および
該残存物質中に存在する無細胞胎児DNAを抽出して分析に利用可能になるように該残存羊膜物質を処理し、羊水胎児DNAを得る工程;
によって得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
実質的に全ての細胞集団を羊水のサンプルから除去し、前記羊水胎児DNAが本質的に無細胞胎児DNAからなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記残存羊膜物質がいくつかの細胞を含み、前記羊水胎児DNAが無細胞胎児DNAおよび該残存羊膜物質中に存在する細胞由来のDNAを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、以下:
前記残存羊膜物質を凍結して凍結サンプルを得る工程;
該凍結サンプルを適切な保存条件下で一定期間保存する工程;および
該凍結サンプルを前記処理工程前に解凍する工程;
をさらに包含する、方法。
【請求項6】
前記解凍工程後かつ前記処置工程前に前記残存羊膜物質中になお存在する実質的に全ての細胞集団を除去する工程をさらに包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
胎児ゲノム情報を得るためにハイブリダイゼーションによって前記羊水胎児DNAを分析する工程が、アレイを使用する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アレイが、cDNAアレイである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アレイが、オリゴヌクレオチドアレイである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記アレイが、SNPアレイである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記羊水胎児DNAを分析する工程を、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションを使用して実施する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記分析工程前に前記羊水胎児DNAを増幅し、増幅羊水胎児DNAを得る工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記羊水胎児DNAを増幅する工程が、PCRを使用する工程を包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記分析工程前に前記羊水胎児DNAを検出可能な物質で標識し、標識羊水胎児DNAを生じる工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記検出可能な物質が蛍光標識を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記蛍光標識が、Cy−3TM、Cy−5TM、テキサスレッド、FITC、Spectrum RedTM、Spectrum GreenTM、フィコエリトリン、ローダミン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、カルボシアニン、メロシアニン、スチリル色素、オキソノール色素、BODIPY色素、これらの等価物、これらのアナログ、これらの誘導体、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される蛍光色素を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記蛍光標識が、Cy−3TMまたはCy−5TMを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記蛍光標識が、Spectrum RedTMまたはSpectrum GreenTMを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記羊水胎児DNAを標識する工程が、ランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはテーリングを包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記検出可能な物質が、ビオチンまたはジオキシゲニンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記胎児ゲノム情報が、複数のゲノム遺伝子座での染色体異常およびゲノムコピー数の変化を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
出生前診断を提供する工程が、胎児の性を決定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
出生前診断を提供する工程が、染色体異常を検出工程および同定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
出生前診断を提供する工程が、染色体異常に関連する疾患または状態を同定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記胎児が、染色体異常を有すると疑われる、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記胎児が、染色体異常に関連する疾患または状態を有すると疑われる、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記妊婦が35歳以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記染色体異常が、余分な個々の染色体、個々の染色体の欠損、染色体の余分な部分、染色体の一部の欠損、破損、環、染色体の再編成、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項23、請求項24、請求項25、または請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記染色体異常が、転座、逆位、重複、欠失、付加、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される染色体再編成である、請求項23、請求項24、請求項25、または請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記染色体異常が、余分な第21染色体、第21染色体の欠損、第21染色体の余分な部分、第21染色体の一部の欠損、第21染色体の再編成、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項23、請求項24、請求項25、または請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記染色体異常が、Gバンディング分析または中期CGHによって検出されない、請求項23、請求項24、請求項25、または請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記染色体異常が、微小欠失、微小重複、またはサブテロメア再編成である、請求項23、請求項24、請求項25、または請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記染色体異常が、余分な第13染色体、第18染色体、X染色体またはY染色体、第1染色体に関与する染色体異常、染色体部分1q21の欠失、染色体部分4p16の欠失、第4染色体に関与する染色体異常、第5染色体の欠失、第7染色体に関与する染色体異常、染色体部分7q11.23の欠失、第8染色体に関与する染色体異常、第9染色体および第22染色体に関与する転座、第10染色体に関与する染色体異常、第11染色体に関与する染色体異常、染色体部分13q14の欠失、染色体部分15q11−q13の欠失、染色体部分15q21.1の欠失、染色体部分16p13.3の欠失、染色体部分17p11.2の欠失、染色体部分17p13.3の欠失、第19染色体に関与する染色体異常、染色体部分22q11の欠失、およびX染色体に関与する染色体異常からなる群より選択される、請求項23、請求項24、請求項25、または請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記染色体異常に関連する疾患または状態が異数性である、請求項24または請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記異数性が、ダウン症候群、パトー症候群、エドワード症候群、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、およびXYY病からなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記染色体異常に関連する疾患または状態がX連鎖障害である、請求項24または請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記X連鎖障害が、血友病A、デュシェーヌ筋ジストロフィ、レッシュ−ナイハン症候群、重症複合型免疫不全症、およびぜい弱X症候群からなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患または状態が、Gバンディング分析または中期CGHによって検出できない染色体異常に関連する、請求項24または請求項26に記載の方法。
【請求項39】
前記染色体異常に関連する疾患または状態が、微小欠失/微小重複症候群である、請求項24または請求項26に記載の方法。
【請求項40】
前記微小欠失/微小重複症候群が、プラーダー−ヴィリ症候群、アンジェルマン症候群、ディ・ジョージ症候群、スミス・マジェニス症候群、ルービンスタイン−テービ症候群、ミラー・ディッカー症候群、ウィリアムズ症候群、およびシャルコー−マリー−ツース症候群からなる群より選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記疾患または状態が、サブテロメア再編成に関連する、請求項24または請求項26に記載の方法。
【請求項42】
前記染色体異常に関連する疾患または状態が、ネコ鳴き症候群、網膜芽細胞腫、ウルフ・ヒルシュホーン症候群、ウィルムス腫瘍、脊髄延髄筋萎縮症、嚢胞性線維症、ゴーシェ病、マルファン症候群、および鎌状赤血球貧血からなる群より選択される、請求項24または請求項26に記載の方法。
【請求項43】
アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる羊水胎児DNAの分析によって行われる出生前診断方法であって、該方法は、以下:
羊水胎児DNAの試験サンプルを提供する工程であって、該試験サンプルが、未知の核型を有し、かつ第1の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第1のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程;
参照サンプルを提供する工程であって、該参照サンプルが、公知の核型を有し、かつ第2の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第2のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程;
複数の遺伝子プローブを含むアレイを提供する工程であって、各遺伝子プローブが基質表面上の個別のスポットに固定されてアレイを形成し、該遺伝子プローブが共に実質的に完全な第3のゲノムまたは第3のゲノムのサブセットを含む、工程;
該サンプル中の該核酸セグメントが該アレイ上の該遺伝子プローブと特異的にハイブリダイズし得る条件下で該アレイを該試験サンプルおよび該参照サンプルに同時に接触させる工程;
該試験サンプルおよび参照サンプルの個々の核酸の、該アレイ上に固定した個々の遺伝子プローブへの結合を決定して、相対的結合パターンを得る、工程;ならびに
得られた該相対結合パターンに基づいて、出生前診断を提供する工程;
を包含する、方法。
【請求項44】
前記試験サンプルおよび前記参照サンプルの核酸が、ランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはテーリングによって標識される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の検出可能な物質が第1の蛍光標識を含み、前記第2の検出可能な物質が第2の蛍光標識を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の蛍光標識および前記第2の蛍光標識が、励起の際に二色蛍光を生じる、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記第1の蛍光標識がCy−3TMを含み、前記第2の蛍光標識がCy−5TMを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の蛍光標識がCy−5TMを含み、前記第2の蛍光標識がCy−3TMを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の蛍光標識がSpectrum RedTMを含み、前記第2の蛍光標識がSpectrum GreenTMを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の蛍光標識がSpectrum GreenTMを含み、前記第2の蛍光標識がSpectrum RedTMを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記試験サンプルおよび参照サンプルの核酸セグメント中に存在する高コピー数反復配列のハイブリダイゼーション能力が抑制される、請求項43に記載の方法。
【請求項52】
前記高コピー数反復配列のハイブリダイゼーション能力が、接触工程前の前記試験サンプルおよび参照サンプルへの非標識ブロッキング核酸の添加によって抑制される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記非標識ブロッキング核酸がヒトCot−1 DNAである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記羊水胎児DNAが、以下:
胎児を有する妊婦から得た羊水のサンプルを提供する工程、
該羊水のサンプルから細胞集団を除去して残存羊膜物質を得る工程、および
該残存羊膜物質中に存在する無細胞胎児DNAを抽出して分析に利用可能になるように該残存羊膜物質を処理し、羊水胎児DNAを生じる工程、
によって得られる、請求項43に記載の方法。
【請求項55】
実質的に全ての細胞集団を羊水のサンプルから除去し、前記羊水胎児DNAが本質的に無細胞胎児DNAからなる、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記残存羊膜物質がいくつかの細胞を含み、前記羊水胎児DNAが無細胞胎児DNAおよび該残存羊膜物質中に存在する細胞由来のDNAを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
請求項54に記載の方法であって、さらに以下:
前記残存羊膜物質を凍結して凍結サンプルを得る工程;
該凍結サンプルを適切な保存条件下で一定期間保存する工程;および
該凍結サンプルを処理工程前に解凍する工程;
を包含する、方法。
【請求項58】
PCRを使用して前記羊水胎児DNAを増幅し、増幅羊水胎児DNAを生じる工程をさらに包含する、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記羊水胎児DNAを、ランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはテーリングによって検出可能な物質で標識し、標識された羊水胎児DNAを生じる工程をさらに包含する、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
前記第2のゲノムの核型が、Gバンディング分析、中期CGH、FISH、またはSKYによって決定されている、請求項43に記載の方法。
【請求項61】
前記試験サンプルおよび参照サンプルの前記個々の核酸の、前記アレイ上に固定した前記個々の遺伝子プローブへの結合を決定して、相対的結合パターンを得る工程が、以下:
前記第1の検出可能な物質および第2の検出可能な物質によって該アレイ上のそれぞれ個別のスポットにて生成したシグナルの強度を測定する工程;および
該アレイの各スポットについてのシグナル強度の比を決定する工程;
を包含する、請求項43に記載の方法。
【請求項62】
前記試験サンプルおよび参照サンプルの前記個々の核酸の、前記アレイ上に固定した個々の遺伝子プローブへの結合を決定して、相対的結合パターンを得る工程が、以下:
多色蛍光画像を得ることができるコンピュータ支援画像化システムを使用してハイブリダイゼーション後の該アレイの蛍光画像を得る工程;および
コンピュータ支援画像分析システムを使用して、得られた該蛍光画像を分析し、該アレイから画像化したデータを解釈し、第3のゲノム中のゲノム遺伝子座の関数としてのゲノムコピー数の比として結果を表示する工程;
を包含する、請求項43に記載の方法。
【請求項63】
出生前診断を提供する工程が、妊婦が妊娠している胎児の性を決定する工程を包含する、請求項43に記載の方法。
【請求項64】
出生前診断を提供する工程が、染色体異常を検出および同定する工程を包含する、請求項43に記載の方法。
【請求項65】
出生前診断を提供する工程が、染色体異常に関連する疾患または状態を同定する工程を包含する、請求項43に記載の方法。
【請求項66】
前記羊水胎児DNAが、染色体異常を有すると疑われる胎児に由来する、請求項43に記載の方法。
【請求項67】
前記羊水胎児DNAが、染色体異常に関連する疾患または状態を有すると疑われる胎児に由来する、請求項43に記載の方法。
【請求項68】
前記羊水胎児DNAが、35歳以上である妊婦から得た羊水のサンプルから抽出されている、請求項43に記載の方法。
【請求項69】
前記染色体異常が、余分な個々の染色体、個々の染色体の欠損、染色体の余分な部分、染色体の一部の欠損、破損、環、染色体の再編成、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項64、請求項65、請求項66、または請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記染色体異常が、転座、逆位、重複、欠失、付加、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される染色体再編成である、請求項64、請求項65、請求項66、または請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記染色体異常が、余分な第21染色体、第21染色体の欠損、第21染色体の余分な部分、第21染色体の一部の欠損、第21染色体の再編成、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項64、請求項65、請求項66、または請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記染色体異常が、Gバンディング分析または中期CGHによって検出不可能である、請求項64、請求項65、請求項66、または請求項67に記載の方法。
【請求項73】
前記染色体異常が、微小欠失、微小重複、またはサブテロメア再編成である、請求項64、請求項65、請求項66、または請求項67に記載の方法。
【請求項74】
前記染色体異常が、余分な第13染色体、第18染色体、X染色体またはY染色体、第1染色体に関係する染色体異常、染色体部分1q21の欠失、染色体部分4p16の欠失、第4染色体に関係する染色体異常、第5染色体の欠失、第7染色体に関係する染色体異常、染色体部分7q11.23の欠失、第8染色体に関係する染色体異常、第9染色体および第22染色体に関係する転座、第10染色体に関係する染色体異常、第11染色体に関係する染色体異常、染色体部分13q14の欠失、染色体部分15q11−q13の欠失、染色体部分15q21.1の欠失、染色体部分16p13.3の欠失、染色体部分17p11.2の欠失、染色体部分17p13.3の欠失、第19染色体に関係する染色体異常、染色体部分22q11の欠失、およびX染色体に関係する染色体異常からなる群より選択される、請求項64、請求項65、請求項66、または請求項67に記載の方法。
【請求項75】
前記染色体異常に関連する疾患または状態が異数性である、請求項65または請求項67に記載の方法。
【請求項76】
前記異数性が、ダウン症候群、パトー症候群、エドワード症候群、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、およびXYY病からなる群より選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記染色体異常に関連する疾患または状態がX連鎖障害である、請求項65または請求項67に記載の方法。
【請求項78】
前記X連鎖障害が、血友病A、デュシェーヌ筋ジストロフィ、レッシュ−ナイハン症候群、重症複合型免疫不全症、およびぜい弱X症候群からなる群より選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記疾患または状態が、Gバンディング分析または中期CGHによって検出できない染色体異常に関連する、請求項65または請求項67に記載の方法。
【請求項80】
前記染色体異常に関連する疾患または状態が、微小欠失/微小重複症候群である、請求項65または請求項67に記載の方法。
【請求項81】
前記微小欠失/微小重複症候群が、プラーダー−ヴィリ症候群、アンジェルマン症候群、ディ・ジョージ症候群、スミス・マジェニス症候群、ルービンスタイン−テービ症候群、ミラー・ディッカー症候群、ウィリアムズ症候群、およびシャルコー−マリー−ツース症候群からなる群より選択される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記疾患または状態が、サブテロメア再編成に関連する、請求項65または請求項67に記載の方法。
【請求項83】
前記染色体異常に関連する疾患または状態が、ネコ鳴き症候群、網膜芽細胞腫、ウルフ・ヒルシュホーン症候群、ウィルムス腫瘍、脊髄延髄筋萎縮症、嚢胞性線維症、ゴーシェ病、マルファン症候群、および鎌状赤血球貧血からなる群より選択される、請求項65または請求項67に記載の方法。
【請求項84】
アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる羊水胎児DNAを試験する方法であって、該方法は、以下:
羊水胎児DNAの試験サンプルを提供する工程であって、該試験サンプルが、染色体微小異常を有し、かつ第1の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第1のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程;
コントロールゲノムDNAの参照サンプルを提供する工程であって、該参照サンプルが、公知の核型を有し、かつ第2の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第2のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程;
複数の遺伝子プローブを含むアレイを提供する工程であって、各遺伝子プローブが基質表面上の個別のスポットに固定されてアレイを形成し、該遺伝子プローブが共に実質的に完全な第3のゲノムまたは第3のゲノムのサブセットを含む、工程;
該試験サンプルおよび参照サンプルの該核酸セグメントが該アレイ上に固定された遺伝子プローブと特異的にハイブリダイズし得る条件下で、該アレイを該試験サンプルおよび参照サンプルに同時に接触させる工程;
多色蛍光画像を得ることができるコンピュータ支援画像化システムを使用してハイブリダイゼーション後の該アレイの蛍光画像を得る工程;
コンピュータ支援画像分析システムを使用して得られた蛍光画像を分析し、該アレイから画像化したデータを解釈し、第3のゲノム中のゲノム遺伝子座の関数としてのゲノムコピー数の比として結果を表示する工程;
該第1のゲノムの核型をFISH分析によって決定する工程;および
該ゲノムコピー数の比として表示された結果をFISHによって決定された第1のゲノムの核型と比較する工程;
を包含する、方法。
【請求項85】
前記ゲノムコピー数の比として表示された結果をFISHによって決定された第1のゲノムの核型と比較する工程が、表示された結果とFISHによって決定された第1のゲノムの核型との間の一貫性の程度を評価する工程を包含する、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記ゲノムコピー数の比として表示された結果をFISHによって決定された第1のゲノムの核型と比較する工程が、FISHとアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションとによる第1のゲノム中に存在する染色体微小異常の検出感度を比較する工程を包含する、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記ゲノムコピー数の比として表示された結果をFISHによって決定された第1のゲノムの核型と比較する工程が、FISHとアレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションとによる第1のゲノム中に存在する染色体微小異常の検出選択性を比較する工程を包含する、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記染色体微小異常が、微小欠失、微小重複、またはサブテロメア再編成である、請求項84に記載の方法。
【請求項89】
前記染色体微小異常が、染色体部分1q22の欠失、染色体部分7q11.23の欠失、染色体部分8q21の欠失、染色体部分10q21.1−q22.1の欠失、染色体部分15q11−q13の欠失、染色体部分16p13.3の欠失、染色体部分17p11.2の欠失、染色体部分17p13.3の欠失、染色体部分19q13.1−q13.2の欠失、および染色体部分22q11.2の欠失からなる群より選択される、請求項84に記載の方法。
【請求項90】
前記試験サンプルおよび前記参照サンプルの核酸が、ランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはテーリングによって標識される、請求項84に記載の方法。
【請求項91】
前記第1の検出可能な物質が第1の蛍光標識を含み、前記第2の検出可能な物質が第2の蛍光標識を含み、前記第1の蛍光標識および前記第2の蛍光標識が、励起の際に二色蛍光を生じる、請求項84に記載の方法。
【請求項92】
前記第1の蛍光標識がCy−3TMを含み、前記第2の蛍光標識がCy−5TMを含む、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記第1の蛍光標識がCy−5TMを含み、前記第2の蛍光標識がCy−3TMを含む、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記第1の蛍光標識がSpectrum RedTMを含み、前記第2の蛍光標識がSpectrum GreenTMを含む、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
前記第1の蛍光標識がSpectrum GreenTMを含み、前記第2の蛍光標識がSpectrum RedTMを含む、請求項91に記載の方法。
【請求項96】
前記試験サンプルおよび参照サンプルの核酸セグメント中に存在する高コピー数反復配列のハイブリダイゼーション能力が、接触工程前の該試験サンプルおよび参照サンプルへのヒトCot−1 DNAの添加によって抑制される、請求項84に記載の方法。
【請求項97】
前記羊水胎児DNAが、以下:
胎児を有する妊婦から得た羊水のサンプルを提供する工程、
該羊水のサンプルから細胞集団を除去して残存羊膜物質を得る工程、および
該残存羊膜物質中に存在する無細胞胎児DNAを抽出して分析に利用可能になるように該残存羊膜物質を処置し、羊水胎児DNAを生じる工程、
によって得られる、請求項84に記載の方法。
【請求項98】
実質的に全ての細胞集団を羊水のサンプルから除去し、前記羊水胎児DNAが本質的に無細胞胎児DNAからなる、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記残存羊膜物質がいくつかの細胞を含み、前記羊水胎児DNAが無細胞胎児DNAおよび前記残存羊膜物質中に存在する細胞由来のDNAを含む、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
請求項97に記載の方法であって、さらに以下:
前記残存羊膜物質を凍結して凍結サンプルを得る工程;
該凍結サンプルを適切な保存条件下で一定期間保存する工程;および
該凍結サンプルを処理工程前に解凍する工程;
を包含する、方法。
【請求項101】
PCRを使用して前記羊水胎児DNAを増幅し、増幅羊水胎児DNAを生じる工程をさらに包含する、請求項97に記載の方法。
【請求項102】
前記羊水胎児DNAを、ランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはテーリングによって検出可能な物質で標識し、標識された抽出羊水胎児DNAを得る工程をさらに包含する、請求項97に記載の方法。
【請求項103】
前記第2のゲノムの核型が、Gバンディング分析、中期CGH、FISH、またはSKYによって決定されている、請求項84に記載の方法。
【請求項104】
アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーションによる羊水胎児DNAの分析によって染色体異常を同定するための方法であって、該方法は、以下:
羊水胎児DNAの試験サンプルを提供する工程であって、該羊水胎児DNAが超音波試験によって複数の先天性異常を有すると決定された胎児に由来し、該試験サンプルが正常な核型を有し、かつ第1の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第1のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程;
コントロール羊水胎児DNAの参照サンプルを提供する工程であって、該コントロール羊水胎児DNAが超音波試験によって先天性異常を有さないと決定された胎児に由来し、該参照サンプルが、正常な核型を有し、かつ第2の検出可能な物質で標識された実質的に完全な第2のゲノムを含む複数の核酸セグメントを含む、工程;
複数の遺伝子プローブを含むアレイを提供する工程であって、各遺伝子プローブが基質表面上の個別のスポットに固定されてアレイを形成し、該遺伝子プローブが共に実質的に完全な第3のゲノムまたは前記第3のゲノムのサブセットを含む、工程;
該サンプル中の該核酸セグメントが該アレイ上に固定された該遺伝子プローブと特異的にハイブリダイズし得る条件下で該アレイを該試験サンプルおよび該参照サンプルに同時接触させる工程;
多色蛍光画像を得ることができるコンピュータ支援画像化システムを使用してハイブリダイゼーション後の該アレイの蛍光画像を得る工程;
コンピュータ支援画像分析システムを使用して、得られた該蛍光画像を分析し、該アレイから画像化したデータを解釈し、第3のゲノム中のゲノム遺伝子座の関数としてのゲノムコピー数の比として結果を表示する工程;および
表示された該結果を分析して存在する任意の染色体異常を検出および同定する工程;
を包含する、方法。
【請求項105】
前記試験サンプルの核型が、550バンドレベルの分解能を有する中期CGH分析によって決定されている、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記第1ゲノム中に存在する染色体異常が、550バンドレベルの分解能を有する中期CGH分析によって検出され得ない染色体の微小異常である、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記染色体の微小異常が、微小付加、微小欠失、微小重複、微小逆位、微小転座、サブテロメア再編成、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記試験サンプルおよび前記参照サンプルの核酸が、ランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはテーリングによって標識される、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
前記第1の検出可能な物質が第1の蛍光標識を含み、前記第2の検出可能な物質が第2の蛍光標識を含み、前記第1の蛍光標識および前記第2の蛍光標識が、励起の際に二色蛍光を生じる、請求項104に記載の方法。
【請求項110】
前記第1の蛍光標識がCy−3TMを含み、前記第2の蛍光標識がCy−5TMを含む、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記第1の蛍光標識がCy−5TMを含み、前記第2の蛍光標識がCy−3TMを含む、請求項109に記載の方法。
【請求項112】
前記第1の蛍光標識がSpectrum RedTMを含み、前記第2の蛍光標識がSpectrum GreenTMを含む、請求項109に記載の方法。
【請求項113】
前記第1の蛍光標識がSpectrum GreenTMを含み、前記第2の蛍光標識がSpectrum RedTMを含む、請求項109に記載の方法。
【請求項114】
前記試験サンプルおよび参照サンプルの核酸セグメント中に存在する高コピー数反復配列のハイブリダイゼーション能力が、接触工程前の該試験サンプルおよび参照サンプルへのヒトCot−1 DNAの添加によって抑制される、請求項104に記載の方法。
【請求項115】
前記試験サンプル由来の羊水胎児DNAが、以下:
胎児を有する妊婦から得た羊水のサンプルを提供する工程、
該羊水のサンプルから細胞集団を除去して残存羊膜物質を得る工程、および
該残存羊膜物質中に存在する無細胞胎児DNAを抽出して分析に利用可能になるように該残存羊膜物質を処理し、羊水胎児DNAを生じる工程、
によって得られる、請求項104に記載の方法。
【請求項116】
実質的に全ての細胞集団を羊水のサンプルから除去し、前記羊水胎児DNAが本質的に無細胞胎児DNAからなる、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記残存羊膜物質がいくつかの細胞を含み、前記羊水胎児DNAが無細胞胎児DNAおよび該残存羊膜物質中に存在する細胞由来のDNAを含む、請求項115に記載の方法。
【請求項118】
前記参照サンプル由来のコントロール羊水胎児DNAが、以下:
胎児を有する妊婦から得た羊水のサンプルを提供する工程、
該羊水のサンプルから細胞集団を除去して残存羊膜物質を得る工程、および
該残存羊膜物質中に存在する無細胞胎児DNAを抽出して分析に利用可能になるように該残存羊膜物質を処置し、コントロール羊水胎児DNAを生じる工程、
によって得られる、請求項104に記載の方法。
【請求項119】
実質的に全ての細胞集団を羊水のサンプルから除去し、前記コントロール羊水胎児DNAが本質的に無細胞胎児DNAからなる、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記残存羊膜物質がいくつかの細胞を含み、前記コントロール羊水胎児DNAが無細胞胎児DNAおよび該残存羊膜物質中に存在する細胞由来のDNAを含む、請求項118に記載の方法。
【請求項121】
請求項115または請求項118に記載の方法であって、さらに以下:
前記残存羊膜物質を凍結して凍結サンプルを得る工程;
該凍結サンプルを適切な保存条件下で一定期間保存する工程;および
該凍結サンプルを処理工程前に解凍する工程;
を包含する、方法。
【請求項122】
PCRを使用して前記羊水胎児DNAを増幅し、増幅羊水胎児DNAを生じる工程をさらに包含する、請求項115に記載の方法。
【請求項123】
PCRを使用して前記コントロール羊水胎児DNAを増幅し、増幅コントロール羊水胎児DNAを生じる工程をさらに包含する、請求項118に記載の方法。
【請求項124】
前記羊水胎児DNAを、ランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはテーリングによって検出可能な物質で標識し、標識された羊水胎児DNAを生じる工程をさらに包含する、請求項115に記載の方法。
【請求項125】
前記コントロール羊水胎児DNAを、ランダムプライミング、ニック翻訳、PCR、またはテーリングによって検出可能な物質で標識し、標識されたコントロール羊水胎児DNAを生じる工程をさらに包含する、請求項118に記載の方法。
【請求項126】
前記第2のゲノムの核型が、Gバンディング分析、中期CGH、FISH、またはSKYによって決定されている、請求項104に記載の方法。
【請求項127】
前記試験サンプルおよび参照サンプルが、胎児の性別、サンプル獲得部位、在胎齢、および保存期間に関して合わせられている、請求項104に記載の方法。
【請求項128】
以下の構成要素:
妊婦から得た羊水サンプルから無細胞胎児DNAを抽出するための材料;
複数の遺伝子プローブを含むアレイであって、各遺伝子プローブが基質表面上の個別のスポットに固定されてアレイを形成し、該遺伝子プローブが共に実質的に完全なゲノムまたは前記ゲノムのサブセットを含む、アレイ;および
請求項43、請求項84、または請求項104に記載のアレイの使用説明書;
を備える、キット。
【請求項129】
第1の検出可能な物質で第1のDNAサンプルを標識するための材料および第2の検出可能な物質で第2のDNAサンプルを標識するための材料をさらに備える、請求項128に記載のキット。
【請求項130】
前記第1の検出可能な物質が第1の蛍光標識を含み、前記第2の検出可能な物質が第2の蛍光標識を含み、該第1の蛍光標識および該第2の蛍光標識が、励起の際に二色蛍光を生じる、請求項129に記載のキット。
【請求項131】
第1のDNAサンプルおよび第2のDNAサンプルをCy−3TMおよびCy−5TMで標識するための材料をさらに備える、請求項130に記載のキット。
【請求項132】
第1のDNAサンプルおよび第2のDNAサンプルをSpectrum RedTMおよびSpectrum GreenTMで標識するための材料をさらに備える、請求項130に記載のキット。
【請求項133】
正常な女性核型を有するコントロールゲノムDNAサンプルをさらに備える、請求項128に記載のキット。
【請求項134】
正常な男性核型を有するコントロールゲノムDNAサンプルをさらに備える、請求項128に記載のキット。
【請求項135】
染色体異常を含む核型を有するコントロールゲノムDNAサンプルをさらに備える、請求項128に記載のキット。
【請求項136】
ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液をさらに備える、請求項128に記載のキット。
【請求項137】
ヒトCot−1 DNAをさらに備える、請求項128に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−515947(P2007−515947A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538287(P2006−538287)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/035929
【国際公開番号】WO2005/044086
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(505281171)タフツ−ニュー イングランド メディカル センター (2)
【Fターム(参考)】