美白日焼け止め化粧料
【課題】本発明は、紫外線吸収剤と美白薬剤としてトラネキサム酸を配合した美白日焼け止め化粧料において、トラネキサム酸亜鉛の析出を抑制してトラネキサム酸と酸化亜鉛とを安定に配合可能な美白日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】下記成分（Ａ）〜（Ｅ）を配合したことを特徴とする美白日焼け止め化粧料。
（Ａ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸
（Ｂ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和剤
（Ｃ）酸化亜鉛
（Ｄ）トラネキサム酸
（Ｅ）水
【解決手段】下記成分（Ａ）〜（Ｅ）を配合したことを特徴とする美白日焼け止め化粧料。
（Ａ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸
（Ｂ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和剤
（Ｃ）酸化亜鉛
（Ｄ）トラネキサム酸
（Ｅ）水
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は化粧料に関する。さらに詳しくは美白効果と日焼け止め効果の両方を兼ね備えた美白日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【０００２】
日焼け止め化粧料にて発揮される紫外線防御効果は、酸化チタンや酸化亜鉛に代表される無機系紫外線散乱剤と、ケイ皮酸誘導体等に代表される多種多様の有機系紫外線吸収剤の配合量に大きく影響を受け、高い紫外線防御効果を出すためには両者を組合せる必要がある。
【０００３】
例えば、特許文献１には、高い紫外線防御効果を達成するため、ケイ皮酸誘導体を始めとする多種多様の紫外線吸収剤と、酸化チタンや酸化亜鉛を始めとする紫外線散乱剤とを配合し、高いＳＰＦ値を実現できる水中油型または油中水型乳化日焼け止め化粧料が開示されている。
【０００４】
一方、日焼け止め化粧料には前述の紫外線散乱剤や紫外線吸収剤の他に様々な薬剤が配合されており、薬剤の中には塩型の物質も多く含まれている。トラネキサム酸も美白薬剤の一種として公知の化粧料成分であり、日焼け止め化粧料に配合されることがある。例えば、特許文献２には、美白効果感を飛躍的に高めることができる皮膚外用剤として、トラネキサム酸及びその誘導体を配合した皮膚外用剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開２００７−１４５７２２号公報
【特許文献２】特開２００４−１３１３８８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、日焼け止め化粧料に、無機系紫外線散乱剤として酸化亜鉛を配合し、さらに美白薬剤としてトラネキサム酸を併用しようとすると、容易にトラネキサム酸亜鉛が化粧料中にて析出してしまうため、両者を配合することは技術的に困難であった。
【０００７】
そのため、トラネキサム酸を配合した化粧料には、紫外線散乱剤として酸化亜鉛は使用できず、酸化チタンしか使用できないという技術的課題があった。そして、酸化チタンを多量に日焼け止め化粧料に配合すると、塗布した際の白さやきしみ感を伴うという問題点があった。
【０００８】
本発明者等は上述の課題に鑑みて鋭意研究した結果、多種多様の紫外線吸収剤の中から、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸を中和して配合すると、驚くべきことに、酸化亜鉛を配合した日焼け止め化粧料中にトラネキサム酸を安定して配合ができることを見出して、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明においては、紫外線散乱剤として酸化チタンを配合しなくても酸化亜鉛を配合することによって、高い紫外線防御効果を実現でき、塗布時の白さやきしみ感などの使用性も改善できるという顕著な効果が発揮される。
【０００９】
本発明は、紫外線吸収剤と美白薬剤としてトラネキサム酸を配合した美白日焼け止め化粧料において、紫外線散乱剤の酸化亜鉛を、トラネキサム酸亜鉛の析出を抑制してトラネキサム酸と酸化亜鉛とを安定に配合可能な美白日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
すなわち、本発明は、下記成分（Ａ）〜（Ｅ）を配合したことを特徴とする美白日焼け止め化粧料を提供するものである。
（Ａ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸
（Ｂ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和剤
（Ｃ）酸化亜鉛
（Ｄ）トラネキサム酸
（Ｅ）水
【００１１】
また、本発明は、前記成分（Ｂ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和剤がトリエタノールアミンであることを特徴とする上記の美白日焼け止め化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【００１２】
本発明によれば、紫外線散乱剤として酸化亜鉛を配合した日焼け止め化粧料中にトラネキサム酸を配合したとしても、トラネキサム酸亜鉛の析出を抑制できる。したがって、紫外線吸収剤と美白薬剤のトラネキサム酸とを配合した美白日焼け止め化粧料においても、紫外線散乱剤として酸化亜鉛を安定に配合できる。よって、紫外線防御効果に極めて優れた新規な美白日焼け止め化粧料が提供される。
【００１３】
本発明においては、紫外線散乱剤として酸化亜鉛を配合できるので、酸化チタンを多量に配合する必要がない。したがって、酸化チタン配合に起因する塗布時の白さやきしみ感などの使用性も改善できるという顕著な効果が発揮される。
【発明を実施するための形態】
【００１４】
＜（Ａ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸＞
本発明に用いるフェニルベンズイミダゾールスルホン酸は、公知の水溶性紫外線吸収剤である。水溶性の紫外線吸収剤であるため、目的とする配合量を水溶性日焼け止め化粧料、水中油型乳化化粧料、油中水型乳化化粧料などに配合し易い。
本発明においてはフェニルベンズイミダゾールスルホン酸市販品を使用できる（Ｅｕｓｏｌｅｘ２３２、Merck KGaA 社製）。
【００１５】
＜配合量＞
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の美白日焼け止め化粧全量に対する配合量は、０．０１〜５質量％が好ましく、さらに好ましくは０．１〜３質量％、最も好ましくは０．５〜２．５質量％である。
【００１６】
＜（Ｂ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和剤＞
紫外線吸収剤として配合されるフェニルベンズイミダゾールスルホン酸は処方中にてアルカリ中和剤により中和されなければならない。中和剤としては、ＮａＯＨやＫＯＨなどの無機水酸化物、有機アミン等が挙げられる。本発明に最も好ましい中和剤はトリエタノールアミンである。
【００１７】
＜配合量＞
中和剤の配合量は、配合するフェニルベンズイミダゾールスルホン酸によって適宜決定される。フェニルベンズイミダゾールスルホン酸を中和するのに適した量とする。具体的には、配合したフェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和点となる濃度（質量％）を中心として、その濃度の上下１０％程度であればよい。例えば、中和点となる濃度が３質量％である場合は、２．７質量％〜３．３質量％の範囲内とする。
【００１８】
＜（Ｃ）酸化亜鉛＞
本発明においては、紫外線散乱剤として酸化亜鉛の粉末が配合される。粉末の平均粒径は、紫外線散乱剤として通常使用される粒径のものであれば特に限定されない。
酸化亜鉛粉末は限定されない。市販品として、パーフルオロアルキルリン酸−アクリル酸アルキル・ジメチルシリコンコポリマー被覆低温焼成酸化亜鉛や、低温焼成酸化亜鉛−パルミチン酸デキストリン混合物が好ましく使用される。
なお、本発明においては、酸化亜鉛を使用できるので、紫外線吸収剤として必ずしも酸化チタンを使用する必要はない。勿論、本発明の効果を損なわない範囲で併用することは可能であるが、酸化チタンを併用すると、酸化チタン配合に起因する塗布時の白さやきしみ感が生じる場合がある。したがって、本発明においては、酸化チタンを実質的に配合しないことが好ましい。
【００１９】
＜配合量＞
酸化亜鉛の美白日焼け止め化粧全量に対する配合量は、０．１〜５０質量％が好ましく、さらに好ましくは１〜２０質量％、最も好ましくは３〜１５質量％である。
【００２０】
＜（Ｄ）トラネキサム酸＞
本発明に用いるトラネキサム酸はトランス−４アミノメチルシクロへキサンカルボン酸であり、化粧料配合成分として公知の薬剤である。美白剤等として配合されることが多い。美白日焼け止め化粧料として、酸化亜鉛粉末と併用すると、トラネキサム酸亜鉛が結晶として析出するため、併用することが出来なかったが、本発明により可能となった。この効果は極めて大きな技術的進歩である。
【００２１】
＜配合量＞
トラネキサム酸の美白日焼け止め化粧全量に対する配合量は、０．１〜５質量％が好ましく、さらに好ましくは０．５〜３質量％、最も好ましくは１〜２質量％である。
【００２２】
＜（Ｅ）水＞
本発明において水は水溶性紫外線吸収剤であるフェニルベンズイミダゾールスルホン酸を溶解したり、中和したりするのに必須な成分である。イオン交換水が好ましい。
【００２３】
＜配合量＞
水の美白日焼け止め化粧全量に対する配合量は、５〜９５質量％が好ましく、さらに好ましくは１０〜７０質量％、最も好ましくは２０〜４５質量％である。
なお、水の配合量は、本発明の化粧料が水中油型乳化化粧料か油中水型乳化化粧料かによって、配合する油分と共に適宜決定される。
【００２４】
本発明の化粧料には、上記した必須構成成分の他に通常化粧料に用いられる他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pＨ調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤型に応じて常法により製造することが出来る。
本発明においては、使用性の観点から、油中水型乳化化粧料又は水中油型乳化化粧料等の乳液として調製されることが好ましい。これらの乳液（油中水型乳化化粧料又は水中油型乳化化粧料）は、油分と水と界面活性剤とを適宜選択して常法により乳化して製造される。
【実施例】
【００２５】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における配合量は特に断りのない限り質量％で示す。
【００２６】
下記の処方で、美白日焼け止め化粧料の水溶液を製造し、トラネキサム酸亜鉛の結晶析出状態を確認した。「表１」の結果から、本発明の必須成分（Ａ）〜（Ｅ）を全て配合する実施例１、２の水溶液は、他の水溶液（比較例１〜４）に比べて、結晶成長加速下（７０℃、一定期間保存下）において、極めて顕著な結晶析出抑制効果の有意差が認められた。
【００２７】
【表１】
＊１：パーフルオロアルキルリン酸−アクリル酸アルキル・ジメチルシリコンコポリマー被覆低温焼成酸化亜鉛
＊２：低温焼成酸化亜鉛−パルミチン酸デキストリン混合物
【００２８】
＜結晶析出の有無の判定＞
○ 顕微鏡観察時にトラネキサム酸亜鉛の析出が確認されない。
△ 顕微鏡観察時にトラネキサム酸亜鉛の析出が僅かに確認される。
× 顕微鏡観察時にトラネキサム酸亜鉛の析出が多量に確認される。
【００２９】
下記の処方で、乳液（油中水型乳化化粧料）を常法により製造し、トラネキサム酸亜鉛の結晶析出状態を確認した。
「表２」の結果から、紫外線吸収剤のフェニルベンズイミダゾールスルホン酸をトリエタノールアミンで中和した実施例３は、当該中和物を配合していない比較例５と比べて、結晶成長加速下（７０℃及び５０℃、一定期間保存下）において、極めて顕著な結晶析出抑制効果の有意差が認められた。
【００３０】
【表２】
【００３１】
＜結晶析出の有無の判定＞
○ 顕微鏡観察時にトラネキサム酸亜鉛の析出が確認されない。
△ 顕微鏡観察時にトラネキサム酸亜鉛の析出が僅かに確認される。
× 顕微鏡観察時にトラネキサム酸亜鉛の析出が多量に確認される。
【００３２】
以下に本発明のその他の美白日焼け止め化粧料を示す。いずれも、トラネキサム酸亜鉛の結晶析出が抑制され、安定性と使用感に優れた乳液である。
【００３３】
〔実施例４：油中水型乳化日焼け止め乳液〕
配合成分 質量％
（１）デカメチルシクロペンタシロキサン ２０
（２）ＰＥＧ−９ポリジメチルシロキシエチルジメチコン ２
（３）トリメチルシロキシケイ酸−デカメチルシクロペンタシロキサン溶液
０．５
（４）ジメチルポリシロキサン ５
（５）イソステアリン酸 ０．５
（６）２−エチルヘキサン酸セチル ３
（７）セバシン酸ジイソプロピル ２
（８）パラメトキシケイ皮酸２−エチルヘキシル ７．５
（９）ポリプロピレングリコール ２
（１０）香料 適量
（１１）クオタニウム−１８−ヘクトライト ０．２
（１２）低温焼成酸化亜鉛−パルミチン酸デキストリン混合物 １５
（１３）無水ケイ酸含有球状ポリアクリル酸アルキル ５
（１４）メチルポリシロキサン被覆タルク １
（１５）水 ２８．２
（１６）トラネキサム酸 ２
（１７）エデト酸三ナトリウム ０．３
（１８）グリセリン ２
（１９）フェノキシエタノール ０．５
（２０）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 ２
（２１）トリエタノールアミン １．２
［製造方法］
（１）〜（１０）の油相を混合溶解する。次に、（１１）〜（１４）を加え、ディスパーで分散混合する。（２０）を(２１)で中和溶解し、（１５）〜（２１）を混合溶解してから油相へディスパーで攪拌しながら徐々に添加し、十分均一に混合して、目的の日焼け止め乳液を得た。
【００３４】
〔実施例５：油中水型乳化日焼け止め乳液〕
配合成分 質量％
（１）デカメチルシクロペンタシロキサン ２２
（２）ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 ２
（３）トリメチルシロキシケイ酸−デカメチルシクロペンタシロキサン溶液
１
（４）ジメチルポリシロキサン ３
（５）２−エチルヘキサン酸セチル ３
（６）セバシン酸ジイソプロピル ５
（７）パラメトキシケイ皮酸２−エチルヘキシル ５
（８）香料 適量
（９）クオタニウム−１８−ヘクトライト ０．３
（１０）低温焼成酸化亜鉛−パルミチン酸デキストリン混合物 ７
（１１）表面処理酸化チタン（ＴＴＯ−Ｓ−４） ８
（１２）メチルシロキサン網状重合体 ３
（１３）水 ３０
（１４）トラネキサム酸 ２
（１５）ジプロピレングリコール ５
（１６）エデト酸三ナトリウム ０．０５
（１７）エリスリトール ０．１
（１８）ポリオキシエチレン（１４）ポリオキシプロピレン（７）ジメチルエーテル
０．５
（１９）フェノキシエタノール ０．５
（２０）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 １
（２１）トリエタノールアミン ０．６
［製造方法］
（１）〜（８）の油相を混合溶解する。次に、（９）〜（１２）を加え、ディスパーで分散混合する。（２０）を(２１)で中和溶解し、（１３）〜（２１）を混合溶解してから油相へディスパーで攪拌しながら徐々に添加し、十分均一に混合して、目的の日焼け止め乳液を得た。
【００３５】
〔実施例６：水中油型日焼け止め乳液〕
配合成分 質量％
（１）水 残余
（２）メタリン酸ナトリウム ０．０５
（３）エデト酸二ナトリウム ０．０５
（４）架橋型Ｎ，Ｎ−ジメチルアクリルアミド−２−アクリルアミド−２−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体 ０．１５
（５）グリセリン ３
（６）サクシノグリカン ０．３
（７）カルボキシメチルセルロースナトリウム ０．１
（８）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 ０．５
（９）トリエタノールアミン ０．３
（１０）トラネキサム酸 ２
（１１）パラメトキシケイ皮酸２−エチルヘキシル ５
（１２）メチルフェニルポリシロキサン ２
（１３）トリ２−エチルヘキサン酸グリセリル ３
（１４）ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 １
（１５）モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン ０．３
（１６）ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル
０．６
（１７）軽質イソパラフィン ５
（１８）イソステアリン酸 １
（１９）塩化ジステアリルジメチルアンモニウム ０．２
（２０）香料 適量
（２１）低温焼成酸化亜鉛−パルミチン酸デキストリン混合物 ５
（２２）エタノール ７
（２３）フェノキシエタノール ０．５
［製造方法］
（１）〜（１０）を溶解した水相へ、（２１）を分散させた（１１）〜（２０）の油相をディスパーで攪拌しながら徐々に添加し、（２２）〜（２３）の防腐剤を十分均一に混合して、目的の日焼け止め乳液を得た。
【産業上の利用可能性】
【００３６】
本発明によれば、特定の紫外線吸収剤と美白薬剤としてトラネキサム酸を配合した美白日焼け止め化粧料において、トラネキサム酸亜鉛の析出を抑制して、トラネキサム酸と酸化亜鉛とを安定に配合可能な美白日焼け止め化粧料を提供することが出来る。
本発明は、美白日焼け止め化粧料である油中水型乳化化粧料又は水中油型乳化化粧料等の乳液製品として好適に利用される。
【技術分野】
【０００１】
本発明は化粧料に関する。さらに詳しくは美白効果と日焼け止め効果の両方を兼ね備えた美白日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【０００２】
日焼け止め化粧料にて発揮される紫外線防御効果は、酸化チタンや酸化亜鉛に代表される無機系紫外線散乱剤と、ケイ皮酸誘導体等に代表される多種多様の有機系紫外線吸収剤の配合量に大きく影響を受け、高い紫外線防御効果を出すためには両者を組合せる必要がある。
【０００３】
例えば、特許文献１には、高い紫外線防御効果を達成するため、ケイ皮酸誘導体を始めとする多種多様の紫外線吸収剤と、酸化チタンや酸化亜鉛を始めとする紫外線散乱剤とを配合し、高いＳＰＦ値を実現できる水中油型または油中水型乳化日焼け止め化粧料が開示されている。
【０００４】
一方、日焼け止め化粧料には前述の紫外線散乱剤や紫外線吸収剤の他に様々な薬剤が配合されており、薬剤の中には塩型の物質も多く含まれている。トラネキサム酸も美白薬剤の一種として公知の化粧料成分であり、日焼け止め化粧料に配合されることがある。例えば、特許文献２には、美白効果感を飛躍的に高めることができる皮膚外用剤として、トラネキサム酸及びその誘導体を配合した皮膚外用剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開２００７−１４５７２２号公報
【特許文献２】特開２００４−１３１３８８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、日焼け止め化粧料に、無機系紫外線散乱剤として酸化亜鉛を配合し、さらに美白薬剤としてトラネキサム酸を併用しようとすると、容易にトラネキサム酸亜鉛が化粧料中にて析出してしまうため、両者を配合することは技術的に困難であった。
【０００７】
そのため、トラネキサム酸を配合した化粧料には、紫外線散乱剤として酸化亜鉛は使用できず、酸化チタンしか使用できないという技術的課題があった。そして、酸化チタンを多量に日焼け止め化粧料に配合すると、塗布した際の白さやきしみ感を伴うという問題点があった。
【０００８】
本発明者等は上述の課題に鑑みて鋭意研究した結果、多種多様の紫外線吸収剤の中から、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸を中和して配合すると、驚くべきことに、酸化亜鉛を配合した日焼け止め化粧料中にトラネキサム酸を安定して配合ができることを見出して、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明においては、紫外線散乱剤として酸化チタンを配合しなくても酸化亜鉛を配合することによって、高い紫外線防御効果を実現でき、塗布時の白さやきしみ感などの使用性も改善できるという顕著な効果が発揮される。
【０００９】
本発明は、紫外線吸収剤と美白薬剤としてトラネキサム酸を配合した美白日焼け止め化粧料において、紫外線散乱剤の酸化亜鉛を、トラネキサム酸亜鉛の析出を抑制してトラネキサム酸と酸化亜鉛とを安定に配合可能な美白日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
すなわち、本発明は、下記成分（Ａ）〜（Ｅ）を配合したことを特徴とする美白日焼け止め化粧料を提供するものである。
（Ａ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸
（Ｂ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和剤
（Ｃ）酸化亜鉛
（Ｄ）トラネキサム酸
（Ｅ）水
【００１１】
また、本発明は、前記成分（Ｂ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和剤がトリエタノールアミンであることを特徴とする上記の美白日焼け止め化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【００１２】
本発明によれば、紫外線散乱剤として酸化亜鉛を配合した日焼け止め化粧料中にトラネキサム酸を配合したとしても、トラネキサム酸亜鉛の析出を抑制できる。したがって、紫外線吸収剤と美白薬剤のトラネキサム酸とを配合した美白日焼け止め化粧料においても、紫外線散乱剤として酸化亜鉛を安定に配合できる。よって、紫外線防御効果に極めて優れた新規な美白日焼け止め化粧料が提供される。
【００１３】
本発明においては、紫外線散乱剤として酸化亜鉛を配合できるので、酸化チタンを多量に配合する必要がない。したがって、酸化チタン配合に起因する塗布時の白さやきしみ感などの使用性も改善できるという顕著な効果が発揮される。
【発明を実施するための形態】
【００１４】
＜（Ａ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸＞
本発明に用いるフェニルベンズイミダゾールスルホン酸は、公知の水溶性紫外線吸収剤である。水溶性の紫外線吸収剤であるため、目的とする配合量を水溶性日焼け止め化粧料、水中油型乳化化粧料、油中水型乳化化粧料などに配合し易い。
本発明においてはフェニルベンズイミダゾールスルホン酸市販品を使用できる（Ｅｕｓｏｌｅｘ２３２、Merck KGaA 社製）。
【００１５】
＜配合量＞
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の美白日焼け止め化粧全量に対する配合量は、０．０１〜５質量％が好ましく、さらに好ましくは０．１〜３質量％、最も好ましくは０．５〜２．５質量％である。
【００１６】
＜（Ｂ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和剤＞
紫外線吸収剤として配合されるフェニルベンズイミダゾールスルホン酸は処方中にてアルカリ中和剤により中和されなければならない。中和剤としては、ＮａＯＨやＫＯＨなどの無機水酸化物、有機アミン等が挙げられる。本発明に最も好ましい中和剤はトリエタノールアミンである。
【００１７】
＜配合量＞
中和剤の配合量は、配合するフェニルベンズイミダゾールスルホン酸によって適宜決定される。フェニルベンズイミダゾールスルホン酸を中和するのに適した量とする。具体的には、配合したフェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和点となる濃度（質量％）を中心として、その濃度の上下１０％程度であればよい。例えば、中和点となる濃度が３質量％である場合は、２．７質量％〜３．３質量％の範囲内とする。
【００１８】
＜（Ｃ）酸化亜鉛＞
本発明においては、紫外線散乱剤として酸化亜鉛の粉末が配合される。粉末の平均粒径は、紫外線散乱剤として通常使用される粒径のものであれば特に限定されない。
酸化亜鉛粉末は限定されない。市販品として、パーフルオロアルキルリン酸−アクリル酸アルキル・ジメチルシリコンコポリマー被覆低温焼成酸化亜鉛や、低温焼成酸化亜鉛−パルミチン酸デキストリン混合物が好ましく使用される。
なお、本発明においては、酸化亜鉛を使用できるので、紫外線吸収剤として必ずしも酸化チタンを使用する必要はない。勿論、本発明の効果を損なわない範囲で併用することは可能であるが、酸化チタンを併用すると、酸化チタン配合に起因する塗布時の白さやきしみ感が生じる場合がある。したがって、本発明においては、酸化チタンを実質的に配合しないことが好ましい。
【００１９】
＜配合量＞
酸化亜鉛の美白日焼け止め化粧全量に対する配合量は、０．１〜５０質量％が好ましく、さらに好ましくは１〜２０質量％、最も好ましくは３〜１５質量％である。
【００２０】
＜（Ｄ）トラネキサム酸＞
本発明に用いるトラネキサム酸はトランス−４アミノメチルシクロへキサンカルボン酸であり、化粧料配合成分として公知の薬剤である。美白剤等として配合されることが多い。美白日焼け止め化粧料として、酸化亜鉛粉末と併用すると、トラネキサム酸亜鉛が結晶として析出するため、併用することが出来なかったが、本発明により可能となった。この効果は極めて大きな技術的進歩である。
【００２１】
＜配合量＞
トラネキサム酸の美白日焼け止め化粧全量に対する配合量は、０．１〜５質量％が好ましく、さらに好ましくは０．５〜３質量％、最も好ましくは１〜２質量％である。
【００２２】
＜（Ｅ）水＞
本発明において水は水溶性紫外線吸収剤であるフェニルベンズイミダゾールスルホン酸を溶解したり、中和したりするのに必須な成分である。イオン交換水が好ましい。
【００２３】
＜配合量＞
水の美白日焼け止め化粧全量に対する配合量は、５〜９５質量％が好ましく、さらに好ましくは１０〜７０質量％、最も好ましくは２０〜４５質量％である。
なお、水の配合量は、本発明の化粧料が水中油型乳化化粧料か油中水型乳化化粧料かによって、配合する油分と共に適宜決定される。
【００２４】
本発明の化粧料には、上記した必須構成成分の他に通常化粧料に用いられる他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pＨ調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤型に応じて常法により製造することが出来る。
本発明においては、使用性の観点から、油中水型乳化化粧料又は水中油型乳化化粧料等の乳液として調製されることが好ましい。これらの乳液（油中水型乳化化粧料又は水中油型乳化化粧料）は、油分と水と界面活性剤とを適宜選択して常法により乳化して製造される。
【実施例】
【００２５】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における配合量は特に断りのない限り質量％で示す。
【００２６】
下記の処方で、美白日焼け止め化粧料の水溶液を製造し、トラネキサム酸亜鉛の結晶析出状態を確認した。「表１」の結果から、本発明の必須成分（Ａ）〜（Ｅ）を全て配合する実施例１、２の水溶液は、他の水溶液（比較例１〜４）に比べて、結晶成長加速下（７０℃、一定期間保存下）において、極めて顕著な結晶析出抑制効果の有意差が認められた。
【００２７】
【表１】
＊１：パーフルオロアルキルリン酸−アクリル酸アルキル・ジメチルシリコンコポリマー被覆低温焼成酸化亜鉛
＊２：低温焼成酸化亜鉛−パルミチン酸デキストリン混合物
【００２８】
＜結晶析出の有無の判定＞
○ 顕微鏡観察時にトラネキサム酸亜鉛の析出が確認されない。
△ 顕微鏡観察時にトラネキサム酸亜鉛の析出が僅かに確認される。
× 顕微鏡観察時にトラネキサム酸亜鉛の析出が多量に確認される。
【００２９】
下記の処方で、乳液（油中水型乳化化粧料）を常法により製造し、トラネキサム酸亜鉛の結晶析出状態を確認した。
「表２」の結果から、紫外線吸収剤のフェニルベンズイミダゾールスルホン酸をトリエタノールアミンで中和した実施例３は、当該中和物を配合していない比較例５と比べて、結晶成長加速下（７０℃及び５０℃、一定期間保存下）において、極めて顕著な結晶析出抑制効果の有意差が認められた。
【００３０】
【表２】
【００３１】
＜結晶析出の有無の判定＞
○ 顕微鏡観察時にトラネキサム酸亜鉛の析出が確認されない。
△ 顕微鏡観察時にトラネキサム酸亜鉛の析出が僅かに確認される。
× 顕微鏡観察時にトラネキサム酸亜鉛の析出が多量に確認される。
【００３２】
以下に本発明のその他の美白日焼け止め化粧料を示す。いずれも、トラネキサム酸亜鉛の結晶析出が抑制され、安定性と使用感に優れた乳液である。
【００３３】
〔実施例４：油中水型乳化日焼け止め乳液〕
配合成分 質量％
（１）デカメチルシクロペンタシロキサン ２０
（２）ＰＥＧ−９ポリジメチルシロキシエチルジメチコン ２
（３）トリメチルシロキシケイ酸−デカメチルシクロペンタシロキサン溶液
０．５
（４）ジメチルポリシロキサン ５
（５）イソステアリン酸 ０．５
（６）２−エチルヘキサン酸セチル ３
（７）セバシン酸ジイソプロピル ２
（８）パラメトキシケイ皮酸２−エチルヘキシル ７．５
（９）ポリプロピレングリコール ２
（１０）香料 適量
（１１）クオタニウム−１８−ヘクトライト ０．２
（１２）低温焼成酸化亜鉛−パルミチン酸デキストリン混合物 １５
（１３）無水ケイ酸含有球状ポリアクリル酸アルキル ５
（１４）メチルポリシロキサン被覆タルク １
（１５）水 ２８．２
（１６）トラネキサム酸 ２
（１７）エデト酸三ナトリウム ０．３
（１８）グリセリン ２
（１９）フェノキシエタノール ０．５
（２０）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 ２
（２１）トリエタノールアミン １．２
［製造方法］
（１）〜（１０）の油相を混合溶解する。次に、（１１）〜（１４）を加え、ディスパーで分散混合する。（２０）を(２１)で中和溶解し、（１５）〜（２１）を混合溶解してから油相へディスパーで攪拌しながら徐々に添加し、十分均一に混合して、目的の日焼け止め乳液を得た。
【００３４】
〔実施例５：油中水型乳化日焼け止め乳液〕
配合成分 質量％
（１）デカメチルシクロペンタシロキサン ２２
（２）ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 ２
（３）トリメチルシロキシケイ酸−デカメチルシクロペンタシロキサン溶液
１
（４）ジメチルポリシロキサン ３
（５）２−エチルヘキサン酸セチル ３
（６）セバシン酸ジイソプロピル ５
（７）パラメトキシケイ皮酸２−エチルヘキシル ５
（８）香料 適量
（９）クオタニウム−１８−ヘクトライト ０．３
（１０）低温焼成酸化亜鉛−パルミチン酸デキストリン混合物 ７
（１１）表面処理酸化チタン（ＴＴＯ−Ｓ−４） ８
（１２）メチルシロキサン網状重合体 ３
（１３）水 ３０
（１４）トラネキサム酸 ２
（１５）ジプロピレングリコール ５
（１６）エデト酸三ナトリウム ０．０５
（１７）エリスリトール ０．１
（１８）ポリオキシエチレン（１４）ポリオキシプロピレン（７）ジメチルエーテル
０．５
（１９）フェノキシエタノール ０．５
（２０）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 １
（２１）トリエタノールアミン ０．６
［製造方法］
（１）〜（８）の油相を混合溶解する。次に、（９）〜（１２）を加え、ディスパーで分散混合する。（２０）を(２１)で中和溶解し、（１３）〜（２１）を混合溶解してから油相へディスパーで攪拌しながら徐々に添加し、十分均一に混合して、目的の日焼け止め乳液を得た。
【００３５】
〔実施例６：水中油型日焼け止め乳液〕
配合成分 質量％
（１）水 残余
（２）メタリン酸ナトリウム ０．０５
（３）エデト酸二ナトリウム ０．０５
（４）架橋型Ｎ，Ｎ−ジメチルアクリルアミド−２−アクリルアミド−２−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体 ０．１５
（５）グリセリン ３
（６）サクシノグリカン ０．３
（７）カルボキシメチルセルロースナトリウム ０．１
（８）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 ０．５
（９）トリエタノールアミン ０．３
（１０）トラネキサム酸 ２
（１１）パラメトキシケイ皮酸２−エチルヘキシル ５
（１２）メチルフェニルポリシロキサン ２
（１３）トリ２−エチルヘキサン酸グリセリル ３
（１４）ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 １
（１５）モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン ０．３
（１６）ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル
０．６
（１７）軽質イソパラフィン ５
（１８）イソステアリン酸 １
（１９）塩化ジステアリルジメチルアンモニウム ０．２
（２０）香料 適量
（２１）低温焼成酸化亜鉛−パルミチン酸デキストリン混合物 ５
（２２）エタノール ７
（２３）フェノキシエタノール ０．５
［製造方法］
（１）〜（１０）を溶解した水相へ、（２１）を分散させた（１１）〜（２０）の油相をディスパーで攪拌しながら徐々に添加し、（２２）〜（２３）の防腐剤を十分均一に混合して、目的の日焼け止め乳液を得た。
【産業上の利用可能性】
【００３６】
本発明によれば、特定の紫外線吸収剤と美白薬剤としてトラネキサム酸を配合した美白日焼け止め化粧料において、トラネキサム酸亜鉛の析出を抑制して、トラネキサム酸と酸化亜鉛とを安定に配合可能な美白日焼け止め化粧料を提供することが出来る。
本発明は、美白日焼け止め化粧料である油中水型乳化化粧料又は水中油型乳化化粧料等の乳液製品として好適に利用される。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
下記成分（Ａ）〜（Ｅ）を配合したことを特徴とする美白日焼け止め化粧料。
（Ａ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸
（Ｂ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和剤
（Ｃ）酸化亜鉛
（Ｄ）トラネキサム酸
（Ｅ）水
【請求項２】
前記成分（Ｂ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和剤がトリエタノールアミンであることを特徴とする請求項１記載の美白日焼け止め化粧料。
【請求項１】
下記成分（Ａ）〜（Ｅ）を配合したことを特徴とする美白日焼け止め化粧料。
（Ａ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸
（Ｂ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和剤
（Ｃ）酸化亜鉛
（Ｄ）トラネキサム酸
（Ｅ）水
【請求項２】
前記成分（Ｂ）フェニルベンズイミダゾールスルホン酸の中和剤がトリエタノールアミンであることを特徴とする請求項１記載の美白日焼け止め化粧料。
【公開番号】特開２０１１−１７３８１９（Ｐ２０１１−１７３８１９Ａ）
【公開日】平成２３年９月８日（２０１１．９．８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−３８１７７（Ｐ２０１０−３８１７７）
【出願日】平成２２年２月２４日（２０１０．２．２４）
【出願人】（０００００１９５９）株式会社 資生堂 (1,748)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年９月８日（２０１１．９．８）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年２月２４日（２０１０．２．２４）
【出願人】（０００００１９５９）株式会社 資生堂 (1,748)
【Ｆターム（参考）】
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