義指
【課題】第一部材と第二部材とを大きな力で回動できるようにする。
【解決手段】末節骨に該当する第一部材2と中節骨に該当する第二部材3と基節骨に該当する第三部4材と中手骨に該当する第四部材5とをそれぞれ回動自在に軸支する。そして、第一部材2と第二部材3との第一連結点2a・3aを掌側に配置し、第二部材3と第三部材4との第二連結点3b・4aを手の甲側に配置する。そして、第一部材2と第三部材4とを接続する第一連結部材7と、第二部材3と第四部材5とを接続する第二連結部材8とを設け、第一部材2と第一連結部材7との第一連結部2b・7aを手の甲側に配置し、第二部材3と第二連結部材8との第二連結部3c・8aを掌側に配置した。
【解決手段】末節骨に該当する第一部材2と中節骨に該当する第二部材3と基節骨に該当する第三部4材と中手骨に該当する第四部材5とをそれぞれ回動自在に軸支する。そして、第一部材2と第二部材3との第一連結点2a・3aを掌側に配置し、第二部材3と第三部材4との第二連結点3b・4aを手の甲側に配置する。そして、第一部材2と第三部材4とを接続する第一連結部材7と、第二部材3と第四部材5とを接続する第二連結部材8とを設け、第一部材2と第一連結部材7との第一連結部2b・7aを手の甲側に配置し、第二部材3と第二連結部材8との第二連結部3c・8aを掌側に配置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基節骨に該当する部材を回動することで末節骨に該当する部材と中節骨に該当する部材とを同方向に回動するようにした義指に関する。
【背景技術】
【0002】
中節骨を失った指を機械的に補う義指が知られている。また、人間の手先の機能を有するロボットの義指も発明されている。これらの義指は、末節骨に該当する第一部材と中節骨に該当する第二部材と基節骨に該当する第三部材と中手骨に該当する第四部材とをそれぞれ回動自在に軸支している。そして、第三部材を回動させることでリンク機構を介して第一部材と第二部材とを同方向に回動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2007−502650号公報
【特許文献2】日本国特開2003−181787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の義指では第三部材に平行リンクを構成し、第二部材に鉤状のレバーを設け、このレバーの一端を平行リンクに連結し、他端を第一部材に連結するという複雑な構成となっている。また、特許文献2では、第一部材9と第二部材8と第三部材7と第四部材6とをそれぞれ回動自在に軸支し、第一部材9と第三部材7とを接続する第一連結部材15と、第二部材8と第四部材6とを接続する第二連結部材14とを設けている。そして、第二部材8と第二連結部材14との連結部14bと第三部材7と第一連結部材15との連結部15aとの中間に、第二部材8と第三部材7との連結部11aを配置している。このように各連結部14b・15a・11aを配置しているので、連結部14aと連結部11aとのスパンが短くなり、第二連結部材14による第二部材8の回動トルクは小さいものとなっている。
本発明は、簡単な構成で第三部材を回動することで第一部材と第二部材とを同方向に回動でき、大きな回動力が得られる構成の義指を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の発明は、末節骨に該当する第一部材と中節骨に該当する第二部材と基節骨に該当する第三部材と中手骨に該当する第四部材とをそれぞれ回動自在に軸支している。そして、第一部材と第二部材との第一連結点を掌側に配置し、第二部材と第三部材との第二連結点を手の甲側に配置する。そして、第一部材と第三部材とを接続する第一連結部材と、第二部材と第四部材とを接続する第二連結部材とを設け、第一部材と第一連結部材との第一連結部を手の甲側に配置し、第二部材と第二連結部材との第二連結部を掌側に配置した。
【0006】
第二の発明は、第四部材に、モータの回転を減速して伝達される螺線体を設け、この螺線体を第三部材に係合させ、螺線体の回転で第三部材を回動させた。
【0007】
第三の発明は、第四部材に、流体圧により進退移動するピストンを設け、このピストンの移動で第三部材を回動させた。
【発明の効果】
【0008】
第一の発明においては、第一部材と第三部材とを接続する第一連結部材と、第二部材と第四部材とを接続する第二連結部材とを設けただけの簡単な構成で、第三部材を回動することで第一部材と第二部材とを同方向に回動できる。
そして、第一部材と第二部材との第一連結点を掌側に配置し、第二部材と第三部材との第二連結点を手の甲側に配置した。そして、第一部材と第一連結部材との第一連結部を手の甲側に配置し、第二部材と第二連結部材との第二連結部を掌側に配置した。これにより、第一連結点と第一連結部とのスパンを広げたことで第一連結部材による第一部材の回動力を最大にすることができる。また、第二連結点と第二連結部とのスパンを広げたことで第二連結部材による第二部材の回動力を最大にすることができる。
【0009】
第二の発明においては、第三部材の回動を螺線体で行うことで義指が物を掴んだ状態を強力に維持することができる。
【0010】
第三の発明においては、第三部材の回動を流体圧により進退移動するピストンで行うことで義指の開閉移動の速度を早くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第一実施例を示す義指の側面図。
【図2】同分解斜視図
【図3】第一実施例を示す義指を手に装着した状態を示す図。
【図4】義指の基節板を45度折り曲げた状態を示す図。
【図5】義指の基節板を90度折り曲げた状態を示す図。
【図6】第二実施例を示す義指の側面図。
【図7】同分解図
【図8】歯車による回転伝達経路を示す正面図。
【図9】義指をロボットの手に取付けた状態を示す平面図。
【図10】義指の基節体を45度折り曲げた状態を示す図。
【図11】義指の基節体を90度折り曲げた状態を示す図。
【図12】第三実施例を示す義指の側面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
中節骨を失った指を機械的に補える義指を図1から図5に亘って示す。図1は義指1の側面図を示し、末節骨に該当する末節板2(第一部材)と中節骨に該当する中節板3(第二部材)と基節骨に該当する円筒体4(第三部材)と中手骨に該当する中手板5(第四部材)とをそれぞれ回動自在に段付きネジ6(図2参照)で接続している。そして、末節板2と円筒体4とを接続する第一リンク7(第一連結部材)が設けられる。この第一リンク7は細長い板状をしており、一端に第一取付孔7a、他端に第二取付孔7bが開けられている。一方、中節板3と中手板5とを接続する第二リンク8(第二連結部材)が設けられ、この第二リンク8も細長い板状をしており、一端に第三取付孔8a、他端に第四取付孔8bが開けられている。
【0013】
図2に示すように、末節板2は板状で、一端側の掌側Aに中節板3に接続する第一孔2a(第一連結点)が設けられ、手の甲側Bに第一リンク7の第一取付孔7aに接続する第二孔2b(第一連結部)が設けられている。中節板3も板状で、一端側の掌側Aに末節板2に接続する第三孔3a(第一連結点)が設けられ、他端側の手の甲側Bには円筒体4に接続する第四孔3b(第二連結点)と、掌側Aに第二リンク8の第三取付孔8aに接続する第五孔3c(第二連結部)とが設けられている。円筒体4は、内径が基節骨部分の指を装着できる大きさの円筒形状をしており、一端側の手の甲側Bに中節板3の第四孔3bに接続する第六孔4a(第二連結点)が設けられている。また、円筒体4の一端側には第一リンク7の第二取付孔7bに接続する第七孔4bが設けられている。この第七孔4bは円筒の中心線に近い位置となっている。円筒体4の他端側には、両側面の掌側Aに中手板5に接続する第八孔4c(第三連結点)が設けられている。
【0014】
中手板5は薄板を箱状に折り曲げ形成したもので一端側の掌側Aに、円筒体4の第八孔4cに接続する第九孔5a(第三連結点)と第二リンク8の第二取付孔7bに接続する第十孔5bとが設けられている。そして、他端側には、掌側Aに第一舌片5cと、手の甲側Bに第二舌片5dとが設けられている。そして、末節板2の先端から各舌片先端までは、柔軟性に優れた材料の人工皮膚9で覆われている。
この義指1は図3に示すように、基節骨部分の指を円筒体4に装着して、第一舌片5cが掌側Aより、また第二舌片5dが手の甲側Bより手を上下方向から挟むようにしている。このように、第一・第二の舌片5c・5dが手を挟むことで義指1は手に保持される。
【0015】
ここで、図4に示すように、円筒体4の第七孔4b(第三連結部)は、中節板3が第四孔3bを中心に反時計方向に回動すると、第一リンク7により末節板2の第二孔2bが、末節板2の第一孔2aの回動軌跡aを内周から外周に向けて交差して回動する位置に設定されている。一方、中手体5の第十孔5b(第四連結部)は、円筒体4が第八孔4cを中心に反時計方向に回動すると、第二リンク8により中節板3の第五孔3cが、中節板3の第四孔3bの回動軌跡dを外周から内周に向けて交差して回動する位置に設定されている。
【0016】
(動作の説明)
図3に示すように基節骨部分の指を円筒体4に装着して指を45度曲げる。すると図4に示すように円筒体4は、第八孔4cを中心にして中手板5に対して反時計方向に45度回動する。この回動に伴い中節板3の第四孔3bは、円筒体4とともに回動する。一方、第二リンク8は第十孔5bを中心にして回動する。そして、第二リンク8の第三取付孔8aに連結している第五孔3cは、回動軌跡cを中節板3の第四孔3bの回動軌跡dの外周から内周に向けて第二リンク8に引かれて回動する。この結果、中節板3は円筒体4に対し第四孔3bを中心にして反時計方向に回動する。一方、末節板2の第一孔2aは、中節板3とともに回動をする。そして、第一リンク7は第七孔4bを中心にして回動する。第一リンク7の第一取付孔7aに連結している第二孔2bは、第一リンク7の回動の途中で第一孔2aの回動軌跡aを内周より外周に向けて交差するように第一リンク7に押されて回動する。この結果、末節板2は中節板3に対し第一孔2aを中心にして反時計方向に回動する。このときの中節板3は、円筒体4に対して約45度の回動をし、また末節板2は中節板3に対して約45度、反時計方向に回動をする。
【0017】
図5に示すように指を90度曲げると円筒体4は、第八孔4cを中心にして中手板5に対して反時計方向に90度回動する。この回動に伴って中節板3の第四孔3bは、円筒体4とともに反時計方向に回動する。一方、第二リンク8は第十孔5bを中心にして回動する。そして、第二リンク8の第三取付孔8aに連結している第五孔3cは、第二リンク8の回動の途中で第五孔3cを第八孔4cに接近する方向に第二リンク8で引かれて中節板3を回動する。この結果、中節板3は円筒体4に対し第四孔3bを中心にして反時計方向に回動する。一方、末節板2の第一孔2aは、中節板3とともに回動をする。そして、第一リンク7は第七孔4bを中心にして回動する。第一リンク7の第一取付孔7aに連結している第二孔2bは、第一リンク7の回動の途中で第一孔2aの回動軌跡aと第二孔2bの回動軌跡bとの開隔を広げるように第一リンク7で押されて末節板2を回動する。この結果、末節板2は中節板3に対し第一孔2aを中心にして反時計方向に回動する。このときの中節板3は、円筒体4に対して約90度の回動をし、また末節板2は中節板3に対して約90度の回動をする。
【0018】
第一の実施例おいては末節板2と、中節骨に該当する中節板3と、基節骨に該当する円筒体4と、中手骨に該当する中手板5とを第一・第二のリンク7・8で結ぶだけの簡単な構成で義指1を構成することができる。また、末節板2には、掌側Aに第一孔2a(第一連結点)、手の甲側Bに第二孔2b(第一連結部)を設けたので、第一孔2aと第二孔2bとのスパンが大きくなり、第一リンク7による末節板2の回動トルクは最大のものとなる。一方、中節板3には、手の甲側Bに第四孔3b(第二連結点)、掌側Aに第五孔3c(第二連結部)を設けたので、第四孔3bと第五孔3cとのスパンが大きくなり、第二リンク8による中節板3の回動トルクは最大のものになる。
【実施例2】
【0019】
人間型ロボットの手先に使用できる義指10を図6から図11に亘って説明する。なお、第一実施例と同じ部材は、同じ名称と同じ符号を使って説明する。図6はロボットの義指10の側面図を示し、末節骨に該当する末節体12(第一部材)と中節骨に該当する中節体13(第二部材)と基節骨に該当する基節体14(第三部材)と中手骨に該当する中手体15(第四部材)とをそれぞれ図7の鎖線で示す線で接続している。そして、末節体12と基節体14とを第一リンク7(第一連結部材)で接続している。この第一リンク7は細長い体状をしており、一端に第一取付孔7a、他端に第二取付孔7bが開けられている。一方、中節体13と中手体15とは第二リンク8(第二連結部材)で接続している。この第二リンク8も細長い体状をしており、一端に第三取付孔8a、他端に第四取付孔8bが開けられている。
【0020】
図7に示すように、末節体12は二枚の板を並べて組合わせたもので、一端側の掌側Aに中節体13に接続する第一孔2a(第一連結点)が設けられ、手の甲側Bに第一リンク7の第一取付孔7aに接続する第二孔2b(第一連結部)が設けられている。中節体13も二枚の板を並べて組合わせたもので、一端側の掌側Aに末節体12に接続する第三孔3aが設けられ、他端側の手の甲側Bには基節体14に接続する第四孔3b(第二連結点)と、掌側Aに第二リンク8の第三取付孔8aに接続する第五孔3c(第二連結部)とが設けられている。基節体14も二枚の板を並べて組合わせたもので、一端側の手の甲側Bに中節体13に接続する第六孔4aが設けられている。また、基節体14の一端側には第一リンク7の第二取付孔7bに接続する第七孔4bが設けられている。基節体14の他端側には、両側面の掌側A側に中手体15に接続する第八孔4c(第三連結点)が設けられている。
【0021】
ここで図10に示すように、基節体14の第七孔4b(第三連結部)は、中節体13が第四孔3bを中心に反時計方向に回動すると、第一リンク7により末節体12の第二孔2bの回動軌跡bが第一孔2aの回動軌跡aを内周から外周に向けて交差して回動する位置に設定されている。一方、中手体15の第十孔5b(第四連結部)は、基節体14が第八孔4cを中心に反時計方向に回動すると、中節体13の第五穴3cの回動軌跡cが第四孔3bの回動軌跡dを外周から内周に向けて交差して回動する位置に設定されている。
【0022】
中手体15は薄板を箱状に形成したもので一端側の掌側Aに、基節体14の第八孔4cに接続する第九孔5aが設けられ、中央に第二リンク8の第四取付孔8bに接続する第十孔5bが設けられている。そして、箱内には、モータ16と長尺の送りねじ17(螺線体)とこの送りねじ17に螺合するナット18、そしてこのナット18と基節体14の端部孔14dとを連結する第三リンク19とが配置されている。第三リンク19には一端に端部孔14dに連結する第一接続孔19aと、他端にナット18の突起18aに連結する第二接続孔19bとが設けられている。中手体15の他端側には、送りねじ17の一端に取付けられる円ボス20と、この円ボス20に回転自在に取付けられ凸ピン21aを有する大ギヤ21と、円ボス20と一体的に取付けられ外周方向に角22aを突出する回転板22と、大ギヤ21に噛合う二段ギヤ23と、モータ16の回転軸に取り付けられる小ギヤ24とが配置されている。そして、モータ16の回転は小ギヤ24、二段ギヤ23、大ギヤ21、回転板22、円ボス20を介して送りねじ17に減速回転伝達される。
【0023】
図8に示すように、モータ16から送りネジ17への回転伝達は、モータ16の回転が小ギヤ24、二段ギヤ23、大ギヤ21に伝達された後、大ギヤ21の凸ピン21aが回転板22の角22aに当接し、回転板22より円ボス20を介して行われる。ここでの角19aの幅は小さく設定されている。したがいモータ16の回転方向が変わると、凸ピン21aは約一周、空回転して再び角22aに当接する。したがい、モータ16は逆転時には空転をする時間が与えられている。このような空転時間を設けたことで、送りねじ17により移動するナット18が、移動の終端で壁に当たって移動を禁止されたとき、ナット18が送りねじ17に食付いて送りねじ17の回転を阻止したとしても、モータ16は逆転をすることができる。そして、この逆転で凸ピン21aが角22aに激しく当接して、ナット18による送りねじ17の食付きを解除することができる。
【0024】
図9は第二の実施例の義指10を人間型ロボットの手先に使用した例を示す。人差し指、中指、薬指、小指には前記の義指10が使用される。義指10は回動軸10aを主甲板30に回動自在に軸支している。親指は上記義指10の中節体13を取り除き、末節体12と基節体14とを第四リンク25で連結している。そして親指の中手体15は大菱形骨に該当する副甲板31に回動軸31aを回動自在に軸支している。主甲板30と副甲板31とは蝶板で連結されている。主甲板30には中手体15とほぼ同じ構成の第一アクチュエータ32と第二アクチュエータ33が取付けられている。第一アクチュエータ32のナット18と副甲板31とは第五リンク26で連結されている。第二アクチュエータ33のナット18にはスライド板27が連結されている。このスライド板27には、図中下方に移動することで人差し指、薬指、小指に該当する義指10を所定の方向に回動させる傾斜溝27aを形成している。一方、副甲板31には第三アクチュエータ34が設けられている。この第三アクチュエータ34のナット18は回動板28に連結されており、ナット18が図中左方に移動をすると回動板28は親指を反時計方向に回動させるものとなっている。
【0025】
(動作の説明)
図10に示すように、義指10は、モータ16が起動して送りねじ17がナット18を図中左方向に移動させると、ナット18の動きは第三リンク19を介して基節体14に伝達される。すると基節体14は、第八孔4cを中心にして中手体15に対して反時計方向に回動する。この回動に伴い中節体13の第四孔3bは、基節体14とともに回動する。一方、第二リンク8は第十孔5bを中心にして回動する。そして、第二リンク8の第三取付孔8aに連結している第五孔3cは、第二リンク8の回動の途中で第四孔3bの回動軌跡dを外周から内周に向けて交差するように第二リンク8に引かれて回動する。この結果、中節体13は基節体14に対し第四孔3bを中心にして反時計方向に回動する。一方、末節体12の第一孔2aは、中節体13とともに回動をする。そして、第一リンク7は第七孔4bを中心にして回動する。第一リンク7の第一取付孔7aに連結している第二孔2bは、第一リンク7の回動の途中で第一孔2aの回動軌跡aの内周より外周に向けて交差するように第一リンク7に押されて回動する。この結果、末節体12は中節体13に対し第一孔2aを中心にして反時計方向に回動する。
【0026】
図11に示すようにナット18が図中左端に達すると基節体14は、第八孔4cを中心にして中手体15に対して反時計方向に90度回動する。この回動に伴って中節体13の第四孔3bは、基節体14とともに反時計方向に回動する。一方、第二リンク8は第十孔5bを中心にして回動する。そして、第二リンク8の第三取付孔8aに連結している第五孔3cは、この回動の途中で第八孔4cに接近する方向に第二リンク8に引かれて回動する。この結果、中節体13は基節体14に対し第四孔3bを中心にして反時計方向に回動する。一方、末節体12の第一孔2aは、中節体13とともに回動をする。そして、第一リンク7は第七孔4bを中心にして回動する。第一リンク7の第一取付孔7aに連結している第二孔2bは、この回動の途中で第一孔2aの回動軌跡aより離れるように、第一リンク7に押されて回動する。この結果、末節体12は中節体13に対し第一孔2aを中心にして反時計方向に回動する。このときの中節体13は基節体14に対して約90度の回動をし、また末節体12は中節体13に対して約90度の回動をする。したがい、基節体14を90度までに曲げる過程で、掌側Aにある物体を基節体14、中節体13、末節体12とで把持することができる。
【0027】
図11において基節体14を外力で時計方向に回動させようとすると、第三リンク19はナット18を右方に移動させようとする。この移動力は送りねじ17を回転させようとする。しかし、送りねじ17のピッチを0.4ミリ以下とすると、ナット18の移動で送りねじ17を回転させることは困難であるから、基節体14を外力で時計方向に回動させることはできず、掌側Aにある物体を基節体14、中節体13、末節体12とで把持した状態を強力に維持できる。
【0028】
第二実施例において基節体14と螺線体である送りねじ17とを、ナット18と第三リンク19とで連結したものとして説明したが、基節体14に円弧ギヤを設け、これに直接噛合うウォーム(螺線体)を中手体15に設けてもよい。このようにすると一定の力で基節体14を回動することができる。
【実施例3】
【0029】
図12は第二実施例の中手体15の構成を換えたものであり、第二実施例と同じ部材は、同じ名称と同じ符号を使って説明する。末節骨に該当する末節体12(第一部材)と中節骨に該当する中節体13(第二部材)と基節骨に該当する基節体14(第三部材)と中手骨に該当する中手体38(第四部材)とが設けられる。そして、末節体12と基節体14とを第一リンク7(第一連結部材)で接続している。一方、中節体13と中手体38とは第二リンク8(第二連結部材)で接続している。この中手体38の一端側の掌側Aに、基節体14の第八孔4cに接続する第九孔5aが設けられ、中央に第二リンク8の他端側の第四取付孔8bに接続する第十孔5bが設けられている。そして、中手体38内には、基節体14に直接、連結するピストン40とピストンを収納するシリンダー41が配置されている。シリンダー41の両端には空気口41aが設けられ一方の空気口41aから空気を送り込むことでピストン40を所定の方向に移動させる。このピストン40の移動で基節体14は所定の方向に回動する。空気口41aから空気を送り込む圧力を調整することで基節体14、中節体13、末節体12の回動力と回動速度とを任意のものとすることができる。
【符号の説明】
【0030】
2 第一部材(末節板)
3 第二部材(中節板)
4 第三部材(基節板)
5 第四部材(中手板)
7 第一連結部材(第一リンク)
8 第二連結部材(第二リンク)
2a 3a 第一連結点 (第一孔)(第三孔)
3b 4a 第二連結点 (第四孔)(第六孔)
4c 5a 第三連結点 (第八孔)(第九孔)
2b 7a 第一連結部 (第二孔)(第一取付孔)
3c 8a 第二連結部 (第五孔)(第三取付孔)
【技術分野】
【0001】
本発明は、基節骨に該当する部材を回動することで末節骨に該当する部材と中節骨に該当する部材とを同方向に回動するようにした義指に関する。
【背景技術】
【0002】
中節骨を失った指を機械的に補う義指が知られている。また、人間の手先の機能を有するロボットの義指も発明されている。これらの義指は、末節骨に該当する第一部材と中節骨に該当する第二部材と基節骨に該当する第三部材と中手骨に該当する第四部材とをそれぞれ回動自在に軸支している。そして、第三部材を回動させることでリンク機構を介して第一部材と第二部材とを同方向に回動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2007−502650号公報
【特許文献2】日本国特開2003−181787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の義指では第三部材に平行リンクを構成し、第二部材に鉤状のレバーを設け、このレバーの一端を平行リンクに連結し、他端を第一部材に連結するという複雑な構成となっている。また、特許文献2では、第一部材9と第二部材8と第三部材7と第四部材6とをそれぞれ回動自在に軸支し、第一部材9と第三部材7とを接続する第一連結部材15と、第二部材8と第四部材6とを接続する第二連結部材14とを設けている。そして、第二部材8と第二連結部材14との連結部14bと第三部材7と第一連結部材15との連結部15aとの中間に、第二部材8と第三部材7との連結部11aを配置している。このように各連結部14b・15a・11aを配置しているので、連結部14aと連結部11aとのスパンが短くなり、第二連結部材14による第二部材8の回動トルクは小さいものとなっている。
本発明は、簡単な構成で第三部材を回動することで第一部材と第二部材とを同方向に回動でき、大きな回動力が得られる構成の義指を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の発明は、末節骨に該当する第一部材と中節骨に該当する第二部材と基節骨に該当する第三部材と中手骨に該当する第四部材とをそれぞれ回動自在に軸支している。そして、第一部材と第二部材との第一連結点を掌側に配置し、第二部材と第三部材との第二連結点を手の甲側に配置する。そして、第一部材と第三部材とを接続する第一連結部材と、第二部材と第四部材とを接続する第二連結部材とを設け、第一部材と第一連結部材との第一連結部を手の甲側に配置し、第二部材と第二連結部材との第二連結部を掌側に配置した。
【0006】
第二の発明は、第四部材に、モータの回転を減速して伝達される螺線体を設け、この螺線体を第三部材に係合させ、螺線体の回転で第三部材を回動させた。
【0007】
第三の発明は、第四部材に、流体圧により進退移動するピストンを設け、このピストンの移動で第三部材を回動させた。
【発明の効果】
【0008】
第一の発明においては、第一部材と第三部材とを接続する第一連結部材と、第二部材と第四部材とを接続する第二連結部材とを設けただけの簡単な構成で、第三部材を回動することで第一部材と第二部材とを同方向に回動できる。
そして、第一部材と第二部材との第一連結点を掌側に配置し、第二部材と第三部材との第二連結点を手の甲側に配置した。そして、第一部材と第一連結部材との第一連結部を手の甲側に配置し、第二部材と第二連結部材との第二連結部を掌側に配置した。これにより、第一連結点と第一連結部とのスパンを広げたことで第一連結部材による第一部材の回動力を最大にすることができる。また、第二連結点と第二連結部とのスパンを広げたことで第二連結部材による第二部材の回動力を最大にすることができる。
【0009】
第二の発明においては、第三部材の回動を螺線体で行うことで義指が物を掴んだ状態を強力に維持することができる。
【0010】
第三の発明においては、第三部材の回動を流体圧により進退移動するピストンで行うことで義指の開閉移動の速度を早くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第一実施例を示す義指の側面図。
【図2】同分解斜視図
【図3】第一実施例を示す義指を手に装着した状態を示す図。
【図4】義指の基節板を45度折り曲げた状態を示す図。
【図5】義指の基節板を90度折り曲げた状態を示す図。
【図6】第二実施例を示す義指の側面図。
【図7】同分解図
【図8】歯車による回転伝達経路を示す正面図。
【図9】義指をロボットの手に取付けた状態を示す平面図。
【図10】義指の基節体を45度折り曲げた状態を示す図。
【図11】義指の基節体を90度折り曲げた状態を示す図。
【図12】第三実施例を示す義指の側面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
中節骨を失った指を機械的に補える義指を図1から図5に亘って示す。図1は義指1の側面図を示し、末節骨に該当する末節板2(第一部材)と中節骨に該当する中節板3(第二部材)と基節骨に該当する円筒体4(第三部材)と中手骨に該当する中手板5(第四部材)とをそれぞれ回動自在に段付きネジ6(図2参照)で接続している。そして、末節板2と円筒体4とを接続する第一リンク7(第一連結部材)が設けられる。この第一リンク7は細長い板状をしており、一端に第一取付孔7a、他端に第二取付孔7bが開けられている。一方、中節板3と中手板5とを接続する第二リンク8(第二連結部材)が設けられ、この第二リンク8も細長い板状をしており、一端に第三取付孔8a、他端に第四取付孔8bが開けられている。
【0013】
図2に示すように、末節板2は板状で、一端側の掌側Aに中節板3に接続する第一孔2a(第一連結点)が設けられ、手の甲側Bに第一リンク7の第一取付孔7aに接続する第二孔2b(第一連結部)が設けられている。中節板3も板状で、一端側の掌側Aに末節板2に接続する第三孔3a(第一連結点)が設けられ、他端側の手の甲側Bには円筒体4に接続する第四孔3b(第二連結点)と、掌側Aに第二リンク8の第三取付孔8aに接続する第五孔3c(第二連結部)とが設けられている。円筒体4は、内径が基節骨部分の指を装着できる大きさの円筒形状をしており、一端側の手の甲側Bに中節板3の第四孔3bに接続する第六孔4a(第二連結点)が設けられている。また、円筒体4の一端側には第一リンク7の第二取付孔7bに接続する第七孔4bが設けられている。この第七孔4bは円筒の中心線に近い位置となっている。円筒体4の他端側には、両側面の掌側Aに中手板5に接続する第八孔4c(第三連結点)が設けられている。
【0014】
中手板5は薄板を箱状に折り曲げ形成したもので一端側の掌側Aに、円筒体4の第八孔4cに接続する第九孔5a(第三連結点)と第二リンク8の第二取付孔7bに接続する第十孔5bとが設けられている。そして、他端側には、掌側Aに第一舌片5cと、手の甲側Bに第二舌片5dとが設けられている。そして、末節板2の先端から各舌片先端までは、柔軟性に優れた材料の人工皮膚9で覆われている。
この義指1は図3に示すように、基節骨部分の指を円筒体4に装着して、第一舌片5cが掌側Aより、また第二舌片5dが手の甲側Bより手を上下方向から挟むようにしている。このように、第一・第二の舌片5c・5dが手を挟むことで義指1は手に保持される。
【0015】
ここで、図4に示すように、円筒体4の第七孔4b(第三連結部)は、中節板3が第四孔3bを中心に反時計方向に回動すると、第一リンク7により末節板2の第二孔2bが、末節板2の第一孔2aの回動軌跡aを内周から外周に向けて交差して回動する位置に設定されている。一方、中手体5の第十孔5b(第四連結部)は、円筒体4が第八孔4cを中心に反時計方向に回動すると、第二リンク8により中節板3の第五孔3cが、中節板3の第四孔3bの回動軌跡dを外周から内周に向けて交差して回動する位置に設定されている。
【0016】
(動作の説明)
図3に示すように基節骨部分の指を円筒体4に装着して指を45度曲げる。すると図4に示すように円筒体4は、第八孔4cを中心にして中手板5に対して反時計方向に45度回動する。この回動に伴い中節板3の第四孔3bは、円筒体4とともに回動する。一方、第二リンク8は第十孔5bを中心にして回動する。そして、第二リンク8の第三取付孔8aに連結している第五孔3cは、回動軌跡cを中節板3の第四孔3bの回動軌跡dの外周から内周に向けて第二リンク8に引かれて回動する。この結果、中節板3は円筒体4に対し第四孔3bを中心にして反時計方向に回動する。一方、末節板2の第一孔2aは、中節板3とともに回動をする。そして、第一リンク7は第七孔4bを中心にして回動する。第一リンク7の第一取付孔7aに連結している第二孔2bは、第一リンク7の回動の途中で第一孔2aの回動軌跡aを内周より外周に向けて交差するように第一リンク7に押されて回動する。この結果、末節板2は中節板3に対し第一孔2aを中心にして反時計方向に回動する。このときの中節板3は、円筒体4に対して約45度の回動をし、また末節板2は中節板3に対して約45度、反時計方向に回動をする。
【0017】
図5に示すように指を90度曲げると円筒体4は、第八孔4cを中心にして中手板5に対して反時計方向に90度回動する。この回動に伴って中節板3の第四孔3bは、円筒体4とともに反時計方向に回動する。一方、第二リンク8は第十孔5bを中心にして回動する。そして、第二リンク8の第三取付孔8aに連結している第五孔3cは、第二リンク8の回動の途中で第五孔3cを第八孔4cに接近する方向に第二リンク8で引かれて中節板3を回動する。この結果、中節板3は円筒体4に対し第四孔3bを中心にして反時計方向に回動する。一方、末節板2の第一孔2aは、中節板3とともに回動をする。そして、第一リンク7は第七孔4bを中心にして回動する。第一リンク7の第一取付孔7aに連結している第二孔2bは、第一リンク7の回動の途中で第一孔2aの回動軌跡aと第二孔2bの回動軌跡bとの開隔を広げるように第一リンク7で押されて末節板2を回動する。この結果、末節板2は中節板3に対し第一孔2aを中心にして反時計方向に回動する。このときの中節板3は、円筒体4に対して約90度の回動をし、また末節板2は中節板3に対して約90度の回動をする。
【0018】
第一の実施例おいては末節板2と、中節骨に該当する中節板3と、基節骨に該当する円筒体4と、中手骨に該当する中手板5とを第一・第二のリンク7・8で結ぶだけの簡単な構成で義指1を構成することができる。また、末節板2には、掌側Aに第一孔2a(第一連結点)、手の甲側Bに第二孔2b(第一連結部)を設けたので、第一孔2aと第二孔2bとのスパンが大きくなり、第一リンク7による末節板2の回動トルクは最大のものとなる。一方、中節板3には、手の甲側Bに第四孔3b(第二連結点)、掌側Aに第五孔3c(第二連結部)を設けたので、第四孔3bと第五孔3cとのスパンが大きくなり、第二リンク8による中節板3の回動トルクは最大のものになる。
【実施例2】
【0019】
人間型ロボットの手先に使用できる義指10を図6から図11に亘って説明する。なお、第一実施例と同じ部材は、同じ名称と同じ符号を使って説明する。図6はロボットの義指10の側面図を示し、末節骨に該当する末節体12(第一部材)と中節骨に該当する中節体13(第二部材)と基節骨に該当する基節体14(第三部材)と中手骨に該当する中手体15(第四部材)とをそれぞれ図7の鎖線で示す線で接続している。そして、末節体12と基節体14とを第一リンク7(第一連結部材)で接続している。この第一リンク7は細長い体状をしており、一端に第一取付孔7a、他端に第二取付孔7bが開けられている。一方、中節体13と中手体15とは第二リンク8(第二連結部材)で接続している。この第二リンク8も細長い体状をしており、一端に第三取付孔8a、他端に第四取付孔8bが開けられている。
【0020】
図7に示すように、末節体12は二枚の板を並べて組合わせたもので、一端側の掌側Aに中節体13に接続する第一孔2a(第一連結点)が設けられ、手の甲側Bに第一リンク7の第一取付孔7aに接続する第二孔2b(第一連結部)が設けられている。中節体13も二枚の板を並べて組合わせたもので、一端側の掌側Aに末節体12に接続する第三孔3aが設けられ、他端側の手の甲側Bには基節体14に接続する第四孔3b(第二連結点)と、掌側Aに第二リンク8の第三取付孔8aに接続する第五孔3c(第二連結部)とが設けられている。基節体14も二枚の板を並べて組合わせたもので、一端側の手の甲側Bに中節体13に接続する第六孔4aが設けられている。また、基節体14の一端側には第一リンク7の第二取付孔7bに接続する第七孔4bが設けられている。基節体14の他端側には、両側面の掌側A側に中手体15に接続する第八孔4c(第三連結点)が設けられている。
【0021】
ここで図10に示すように、基節体14の第七孔4b(第三連結部)は、中節体13が第四孔3bを中心に反時計方向に回動すると、第一リンク7により末節体12の第二孔2bの回動軌跡bが第一孔2aの回動軌跡aを内周から外周に向けて交差して回動する位置に設定されている。一方、中手体15の第十孔5b(第四連結部)は、基節体14が第八孔4cを中心に反時計方向に回動すると、中節体13の第五穴3cの回動軌跡cが第四孔3bの回動軌跡dを外周から内周に向けて交差して回動する位置に設定されている。
【0022】
中手体15は薄板を箱状に形成したもので一端側の掌側Aに、基節体14の第八孔4cに接続する第九孔5aが設けられ、中央に第二リンク8の第四取付孔8bに接続する第十孔5bが設けられている。そして、箱内には、モータ16と長尺の送りねじ17(螺線体)とこの送りねじ17に螺合するナット18、そしてこのナット18と基節体14の端部孔14dとを連結する第三リンク19とが配置されている。第三リンク19には一端に端部孔14dに連結する第一接続孔19aと、他端にナット18の突起18aに連結する第二接続孔19bとが設けられている。中手体15の他端側には、送りねじ17の一端に取付けられる円ボス20と、この円ボス20に回転自在に取付けられ凸ピン21aを有する大ギヤ21と、円ボス20と一体的に取付けられ外周方向に角22aを突出する回転板22と、大ギヤ21に噛合う二段ギヤ23と、モータ16の回転軸に取り付けられる小ギヤ24とが配置されている。そして、モータ16の回転は小ギヤ24、二段ギヤ23、大ギヤ21、回転板22、円ボス20を介して送りねじ17に減速回転伝達される。
【0023】
図8に示すように、モータ16から送りネジ17への回転伝達は、モータ16の回転が小ギヤ24、二段ギヤ23、大ギヤ21に伝達された後、大ギヤ21の凸ピン21aが回転板22の角22aに当接し、回転板22より円ボス20を介して行われる。ここでの角19aの幅は小さく設定されている。したがいモータ16の回転方向が変わると、凸ピン21aは約一周、空回転して再び角22aに当接する。したがい、モータ16は逆転時には空転をする時間が与えられている。このような空転時間を設けたことで、送りねじ17により移動するナット18が、移動の終端で壁に当たって移動を禁止されたとき、ナット18が送りねじ17に食付いて送りねじ17の回転を阻止したとしても、モータ16は逆転をすることができる。そして、この逆転で凸ピン21aが角22aに激しく当接して、ナット18による送りねじ17の食付きを解除することができる。
【0024】
図9は第二の実施例の義指10を人間型ロボットの手先に使用した例を示す。人差し指、中指、薬指、小指には前記の義指10が使用される。義指10は回動軸10aを主甲板30に回動自在に軸支している。親指は上記義指10の中節体13を取り除き、末節体12と基節体14とを第四リンク25で連結している。そして親指の中手体15は大菱形骨に該当する副甲板31に回動軸31aを回動自在に軸支している。主甲板30と副甲板31とは蝶板で連結されている。主甲板30には中手体15とほぼ同じ構成の第一アクチュエータ32と第二アクチュエータ33が取付けられている。第一アクチュエータ32のナット18と副甲板31とは第五リンク26で連結されている。第二アクチュエータ33のナット18にはスライド板27が連結されている。このスライド板27には、図中下方に移動することで人差し指、薬指、小指に該当する義指10を所定の方向に回動させる傾斜溝27aを形成している。一方、副甲板31には第三アクチュエータ34が設けられている。この第三アクチュエータ34のナット18は回動板28に連結されており、ナット18が図中左方に移動をすると回動板28は親指を反時計方向に回動させるものとなっている。
【0025】
(動作の説明)
図10に示すように、義指10は、モータ16が起動して送りねじ17がナット18を図中左方向に移動させると、ナット18の動きは第三リンク19を介して基節体14に伝達される。すると基節体14は、第八孔4cを中心にして中手体15に対して反時計方向に回動する。この回動に伴い中節体13の第四孔3bは、基節体14とともに回動する。一方、第二リンク8は第十孔5bを中心にして回動する。そして、第二リンク8の第三取付孔8aに連結している第五孔3cは、第二リンク8の回動の途中で第四孔3bの回動軌跡dを外周から内周に向けて交差するように第二リンク8に引かれて回動する。この結果、中節体13は基節体14に対し第四孔3bを中心にして反時計方向に回動する。一方、末節体12の第一孔2aは、中節体13とともに回動をする。そして、第一リンク7は第七孔4bを中心にして回動する。第一リンク7の第一取付孔7aに連結している第二孔2bは、第一リンク7の回動の途中で第一孔2aの回動軌跡aの内周より外周に向けて交差するように第一リンク7に押されて回動する。この結果、末節体12は中節体13に対し第一孔2aを中心にして反時計方向に回動する。
【0026】
図11に示すようにナット18が図中左端に達すると基節体14は、第八孔4cを中心にして中手体15に対して反時計方向に90度回動する。この回動に伴って中節体13の第四孔3bは、基節体14とともに反時計方向に回動する。一方、第二リンク8は第十孔5bを中心にして回動する。そして、第二リンク8の第三取付孔8aに連結している第五孔3cは、この回動の途中で第八孔4cに接近する方向に第二リンク8に引かれて回動する。この結果、中節体13は基節体14に対し第四孔3bを中心にして反時計方向に回動する。一方、末節体12の第一孔2aは、中節体13とともに回動をする。そして、第一リンク7は第七孔4bを中心にして回動する。第一リンク7の第一取付孔7aに連結している第二孔2bは、この回動の途中で第一孔2aの回動軌跡aより離れるように、第一リンク7に押されて回動する。この結果、末節体12は中節体13に対し第一孔2aを中心にして反時計方向に回動する。このときの中節体13は基節体14に対して約90度の回動をし、また末節体12は中節体13に対して約90度の回動をする。したがい、基節体14を90度までに曲げる過程で、掌側Aにある物体を基節体14、中節体13、末節体12とで把持することができる。
【0027】
図11において基節体14を外力で時計方向に回動させようとすると、第三リンク19はナット18を右方に移動させようとする。この移動力は送りねじ17を回転させようとする。しかし、送りねじ17のピッチを0.4ミリ以下とすると、ナット18の移動で送りねじ17を回転させることは困難であるから、基節体14を外力で時計方向に回動させることはできず、掌側Aにある物体を基節体14、中節体13、末節体12とで把持した状態を強力に維持できる。
【0028】
第二実施例において基節体14と螺線体である送りねじ17とを、ナット18と第三リンク19とで連結したものとして説明したが、基節体14に円弧ギヤを設け、これに直接噛合うウォーム(螺線体)を中手体15に設けてもよい。このようにすると一定の力で基節体14を回動することができる。
【実施例3】
【0029】
図12は第二実施例の中手体15の構成を換えたものであり、第二実施例と同じ部材は、同じ名称と同じ符号を使って説明する。末節骨に該当する末節体12(第一部材)と中節骨に該当する中節体13(第二部材)と基節骨に該当する基節体14(第三部材)と中手骨に該当する中手体38(第四部材)とが設けられる。そして、末節体12と基節体14とを第一リンク7(第一連結部材)で接続している。一方、中節体13と中手体38とは第二リンク8(第二連結部材)で接続している。この中手体38の一端側の掌側Aに、基節体14の第八孔4cに接続する第九孔5aが設けられ、中央に第二リンク8の他端側の第四取付孔8bに接続する第十孔5bが設けられている。そして、中手体38内には、基節体14に直接、連結するピストン40とピストンを収納するシリンダー41が配置されている。シリンダー41の両端には空気口41aが設けられ一方の空気口41aから空気を送り込むことでピストン40を所定の方向に移動させる。このピストン40の移動で基節体14は所定の方向に回動する。空気口41aから空気を送り込む圧力を調整することで基節体14、中節体13、末節体12の回動力と回動速度とを任意のものとすることができる。
【符号の説明】
【0030】
2 第一部材(末節板)
3 第二部材(中節板)
4 第三部材(基節板)
5 第四部材(中手板)
7 第一連結部材(第一リンク)
8 第二連結部材(第二リンク)
2a 3a 第一連結点 (第一孔)(第三孔)
3b 4a 第二連結点 (第四孔)(第六孔)
4c 5a 第三連結点 (第八孔)(第九孔)
2b 7a 第一連結部 (第二孔)(第一取付孔)
3c 8a 第二連結部 (第五孔)(第三取付孔)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末節骨に該当する第一部材(2)と中節骨に該当する第二部材(3)と基節骨に該当する第四部材(4)と中手骨に該当する第四部材(5)とを回動自在に軸支し、前記第一部材と前記第三部材とを接続する第一連結部材(7)と前記第二部材と前記第四部材とを接続する第二連結部材(8)とを設け、前記第三部材を回動することで前記第一部材と第二部材とを同方向に回動させた義指において、
前記第一部材と前記第二部材との第一連結点(2a)(3a)を掌側に配置し、
前記第二部材と前記第三部材との第二連結点(3b)(4a)を手の甲側に配置し、
前記第一部材と前記第一連結部材との第一連結部(2b)(7a)を手の甲側に配置し、
前記第二部材と前記第二連結部材との第二連結部(3c)(8a)を掌側に配置したことを特徴とする義指。
【請求項2】
前記第四部材に、モータ(16)の回転を減速して伝達される螺線体(17)を設け、該螺線体と前記第三部材とを係合させ、前記螺線体の回転で前記第三部材を回動させたことを特徴とする請求項1に記載の義指。
【請求項3】
前記第四部材に、流体圧により進退移動されるピストン(40)を設け、前記ピストンと前記第三部材とを係合させ、前記ピストンで前記第三部材を回動させたことを特徴とする請求項1に記載の義指。
【請求項1】
末節骨に該当する第一部材(2)と中節骨に該当する第二部材(3)と基節骨に該当する第四部材(4)と中手骨に該当する第四部材(5)とを回動自在に軸支し、前記第一部材と前記第三部材とを接続する第一連結部材(7)と前記第二部材と前記第四部材とを接続する第二連結部材(8)とを設け、前記第三部材を回動することで前記第一部材と第二部材とを同方向に回動させた義指において、
前記第一部材と前記第二部材との第一連結点(2a)(3a)を掌側に配置し、
前記第二部材と前記第三部材との第二連結点(3b)(4a)を手の甲側に配置し、
前記第一部材と前記第一連結部材との第一連結部(2b)(7a)を手の甲側に配置し、
前記第二部材と前記第二連結部材との第二連結部(3c)(8a)を掌側に配置したことを特徴とする義指。
【請求項2】
前記第四部材に、モータ(16)の回転を減速して伝達される螺線体(17)を設け、該螺線体と前記第三部材とを係合させ、前記螺線体の回転で前記第三部材を回動させたことを特徴とする請求項1に記載の義指。
【請求項3】
前記第四部材に、流体圧により進退移動されるピストン(40)を設け、前記ピストンと前記第三部材とを係合させ、前記ピストンで前記第三部材を回動させたことを特徴とする請求項1に記載の義指。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−85992(P2012−85992A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251257(P2010−251257)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(510297509)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(510297509)
【Fターム(参考)】
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