説明

耐レーザーアブレーション性銅箔

RF−4に対する積層引き剥がし強さを少なくとも80.4グラム/ミリメートル(4.5ポンド/インチ)にする効果があり1.0ミクロン未満の平均表面粗さ(Rz)と1.2ミクロン未満の平均ノジュール高さを有するレーザーアブレーション防止層(100)によって、誘電基板(92)に積層されるための銅箔(96)が被覆される。被覆後の箔(96)は少なくとも40の反射率の値を有する。被覆後の箔(96)は通常、ガラス強化エポキシ又はポリイミドのような誘電基板(92)に積層され、画像形成されて複数の回路トレースとなる。誘電体(92)を貫通し箔(96)と誘電体(92)との境界で終わるブラインドビア(98)を、穴あけ加工することができる。本発明の被覆後の箔(96)はレーザーアブレーションに耐えるので、穴あけ加工中レーザーによって箔(96)に穴(102)があかないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電基板に積層された銅箔層を有するプリント回路板の製造に、より詳細には、誘電基板への銅箔層の接着を向上させる処理に関する。
【背景技術】
【0002】
銅及び銅系合金の箔はプリント回路板業界において広く使用されている。この箔は203ミクロン(0.008インチ)未満の厚さに製造されており、より一般的には、5.1ミクロン(0.0002インチ、当技術分野で1/7オンス箔として知られている)から1.0ミクロン(0.00004インチ)の範囲の厚さに製造されている。箔は通常、機械加工又は電着により製造されている。「展伸(wrought)」箔は、圧延のような方法によって銅又は銅合金のストリップの厚さを機械的に薄くすることにより製造される。「電着」箔は、回転カソードドラム上に銅イオンを電析させ、次いで析出したストリップをカソードから引き剥がすことにより製造される。
【0003】
銅箔は、プリント回路板を形作る誘電基板に、積層法を用いて接着される。誘電基板は通常、ガラス繊維強化エポキシ、例えば、FR−4(難燃性エポキシ)、又はポリイミド、例えば、デュポンにより製造されるKapton(登録商標)である。積層法は、熱及び圧力を用いることによって、銅箔層を誘電基板に接着させることを含む。FR−4では、約180℃の温度で、約30分の約2.07メガパスカル(MPa)(300ポンド/平方インチ(psi))の圧力によって層の間が適切に接着されるであろう。ポリイミドは通常、2分間の2.93MPa(425psi)の圧力と300℃の温度で積層される。
【0004】
接着を最大化するために、誘電基板に接触する箔の表面を接着の前に粗化することが多くの場合望ましい。箔を粗化又は処理するのに利用できる様々な技法があるが、例示的な1つの技法は、箔表面に銅又は銅酸化物の多数の樹枝状晶を生成させることを含む。いずれもPolon他の米国特許第4468293号及び米国特許第4515671号はこの処理を開示している。この処理はCopperBond(登録商標)処理として知られている。CopperBondはOlin Corporation(Norwalk、コネチカット州)の商標である。別の電解表面粗化処理は、Chen他の米国特許第5800930号に開示されているように、誘電基板に接触する箔表面上への銅/ニッケルのノジュール(nodule)の析出である。いくつかの場合には、箔の少なくとも一方の表面、特に樹枝状晶が付いている粗化表面は、その上に付いた亜鉛又は黄銅の電着皮膜をもち得る。この皮膜は箔と誘電基板との接着強度を向上させることが見出されている。
【0005】
銅箔の粗化表面の使用は、誘電基板との接着を高める効果があるが、表面の粗化の度合いは、しばしば、高周波用途での銅箔の電気的要求性能により制限される。問題なのは、これらの電気的要求性能に適合するように表面粗さを少なくすることにより、銅箔と誘電基板との間の接着力(引き剥がし強さ)が弱まることである。
【0006】
電解箔又は展伸銅箔のいずれかを用いるプリント回路板の製造業者が直面する別の問題は、銅が比較的反応性であることである。結果的に、銅は汚れ、変色しやすい。汚れ及び変色は、審美的に不愉快で、プリント回路板製造中の問題の原因であり得る。例えば、積層前の銅箔の汚れは、箔と誘電基板との間の接着強度、並びに得られる積層体のエッチング特性に影響を及ぼし得る。銅箔の耐変色性は、共析した亜鉛及びクロムのイオンを含む薄い(原子スケールであり得る)皮膜を付けることにより向上し得る。この処理はP2処理と呼ばれ、Lin他の米国特許第5022968号に開示されている。
【0007】
銅箔が誘電基板に積層されている場合、次に、それは通常、選択的にエッチングされて、複数の回路トレース(trace)を形成する。しばしば、銅箔は誘電基板の両面に積層され、両面が回路トレースへと選択的にエッチングされる。誘電体の対向する表面の回路トレースを電気的に相互接続することが、しばしば望まれる。電気的相互接続は、誘電体を貫いて穴あけ加工し電気伝導性材料を穴に付着させて導電性ビアを形成することによって実施され得る。ブラインドビアは、誘電体の一方の表面から、誘電体と誘電体の第2の表面上の銅箔との境界まで延びる。最も精確なブラインドビアは、例えば炭酸ガス(CO)レーザーによる、誘電体のレーザーアブレーションによって形成される。しかし、境界でレーザーを止め、望まれているブラインドビアをスルーホールビアに変える銅のアブレーションを防止することは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
誘電体への改善された接着力、耐変色性及び耐レーザーアブレーション性の組合せを向上させる銅箔の処理が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様において、引き剥がし強さを向上させる皮膜が銅箔の表面に析出され、この銅箔は誘電基板に積層され得る。この引き剥がし強さを向上させる皮膜は、本質的に、金属及び金属酸化物の混合物からなり、この金属及び金属酸化物の混合物は、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、及びレニウムの1種又は複数から生成される。好ましくは、金属酸化物は、クロメート、タングステート、及びモリブデートの1種から選択される。銅箔の表面は平滑であってよく、引き剥がし強さを向上させる皮膜は、約0.002から約0.02ミクロン(約20から約200オングストローム)の間の厚さをもち得る。誘電基板への積層の前に、シランを、引き剥がし強さを向上させる皮膜に付着させてもよい。
【0010】
本発明の別の態様においては、物品が、誘電基板に積層された平滑な表面を有する銅箔を備える。引き剥がし強さを向上させる皮膜は、銅箔と誘電基板との間に析出され、4NのHClに60℃で6時間浸漬された後、3.2mm(1/8インチ)試験体を用い、IPC−TM−650の方法2.4.8.5に従って測定すると、銅箔は引き剥がし強さが10%以下の低下を示す。引き剥がし強さを向上させる皮膜も、4NのHClに60℃で6時間浸漬後、10%以下の端部アンダーカットを示し得る。
【0011】
本発明の別の態様において、誘電基板に積層された銅箔の引き剥がし強さを向上させるための方法は、積層の前に、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、及びレニウムの1種又は複数から生成するオキシアニオンを含む電解質水溶液に銅箔を浸漬することを含む。好ましくは、この金属は、クロム、モリブデン、及びタングステンから選択される。前記水溶液は電解セル内の電解液であってよく、前記方法は、約0.002から約0.02ミクロン(20から200オングストローム)の間の厚さを有する皮膜が銅箔上に析出するように、銅箔と電解液を通して電流を流すことをさらに含む。この方法は、銅箔上に皮膜を析出させた後、銅箔をシランに浸漬することをさらに含むことができる。
【0012】
本発明の別の態様において、誘電基板に積層されるための銅箔は銅箔の表面に析出した層を含む。この層は、クロム及び亜鉛のイオン又は酸化物から生成され、少なくとも0.5%のシランを含む水容液により処理される。銅箔の表面は平滑であってよく、層の厚さは約0.001から約0.01ミクロン(10オングストロームから約100オングストローム)であってよい。
【0013】
本発明の別の態様において、誘電基板に積層される銅箔の引き剥がし強さを向上させる方法は、積層の前に、銅箔又は銅系合金箔の表面にクロム及び亜鉛のイオン又は酸化物の混合物を共析させること;共析ステップの次に、銅箔を少なくとも1秒間、少なくとも0.5%のシランを脱イオン水に含む水溶液に浸漬させること;並びに、積層の前に銅箔を乾燥させることを含む。前記水溶液は、約15℃から約30℃の間の温度でもよい。クロム及び亜鉛のイオン又は酸化物の混合物を共析させることは、クロム及び亜鉛のイオンを含む電解液内に配置されたアノードを含む電解セルを供用すること;カソードとして銅箔を供用すること;並びに、クロム及び亜鉛のイオンを銅箔上に電析させることを含む。クロム及び亜鉛のイオン又は酸化物から生成される層の厚さは、約0.001から約0.01ミクロン(10オングストロームから約100オングストローム)であり得る。
【0014】
一実施形態において、電解液は、水酸化物イオン、約0.07g/lから約7g/lの亜鉛イオン、及び約0.1g/lから約100g/lの水溶性6価クロム塩を含む塩基性溶液であって、亜鉛イオン又はクロム(VI)イオンの何れか或いは両方の濃度は1.0未満である。一実施形態において、共析ステップは、銅箔を電解液に浸漬すること;及び、約1ミリアンペア/平方センチメートルから約1アンペア/平方センチメートルの電流密度が供給されるように、銅箔と電解液を通して電流を流すことを含む。電解液は、本質的に、約10から約35g/lのNaOH、約0.2から約2.5g/lのZnO、及び、約0.2から約2g/lのNaCr・2HOからなり得る。
【0015】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、添付図と下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的及び利点は説明及び図と特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0016】
本発明は、添付図(似た要素には似た番号が与えられている)に関連させて考慮すれば以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
平滑な銅箔が用いられる場合ですら、銅箔と誘電基板との間に強い接着を生じる2つの表面処理が本明細書において記載されている。本発明は銅箔又は銅系合金箔に対して同じように適用でき、ここで「系」は少なくとも50重量%の銅を含む合金を意味する。本明細書で使用される、「銅箔」という用語には銅箔及び銅系合金箔が含まれる。また、本発明は平滑な銅箔で使用すると特に有用であるが、本発明はどのような表面仕上げの銅箔に対しても適用され得るであろう。本明細書で使用される、「平滑」という用語は、低いプロファイル(low profile)、例えばRz(表面形状測定装置(profilometer)を用いて測定された、山から谷までの距離の5個の測定値の平均)が1μm未満の表面を意味する。
【0018】
表面処理1
図1は、本発明の第1の態様による、銅積層体の引き剥がし強さ向上のための装置10を示している。装置10は、本明細書においてP2処理と呼ばれているものを用いて、銅箔14の表面に、クロム及び亜鉛の金属又は酸化物の混合物を共析させるための電解セル12と、シラン溶液槽16を含み、被覆後の銅箔14はシランを含む水溶液18に浸漬される。シラン溶液槽16を出た後、銅箔14は脱イオン(DI)水を用いてすすぎ、次いで、それが誘電基板に積層される前に乾燥してもよい。
【0019】
電解セル12は、電解液22を含む槽20と、銅箔ストリップ14がその間を通過するアノード24を含む。シラン溶液槽16には、シランを含む水溶液18が入っている。ガイドロール26及び28を用いて、それぞれ、電解セル12とシラン溶液槽16を通る銅箔ストリップ14の移動を制御することができる。ガイドロール26及び28は、電解液と反応しないどのような材料からでも作製される。以下に詳細に述べられているように、電流を銅箔ストリップ14に流せるように、好ましくは、ガイドロール26の少なくとも1本は電気伝導性材料(例えばステンレス鋼)により形成される。以下に述べられているように、銅箔14が必要とされる時間、アノード24の間に位置するように、ガイドロール26は制御された速度で回転する。以下に述べられているように、銅箔14が必要とされる時間、水溶液18に浸漬されるように、制御された速度でガイドロール28は回転する。
【0020】
電解セル12では、電解液22により直流電流がアノード24から銅箔ストリップ(カソード)14に流れ得るように、電源(示されていない)が備わっている。このようにして、望みの組成と厚さの変色防止皮膜が箔ストリップ14に析出する。
【0021】
電解液22は、本質的に、水酸化物源、亜鉛イオン源及び水溶性6価クロムからなる水溶液である。水酸化物源は、好ましくは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、最も好ましくは水酸化ナトリウム(NaOH)である。6価クロム源は、NaCr・2HOのようなどのような水溶性6価クロム化合物であってもよい。
【0022】
最も広い組成範囲として、電解液22は、本質的に、約5から約100グラム/リットル(g/l)の水酸化物、水溶性亜鉛化合物(例えばZnO)の形で供給される0.07から約7g/lの亜鉛イオン、及び0.01から約100g/lの水溶性6価クロムの塩からなる。但し、亜鉛イオン又はクロム(VI)イオンの濃度の少なくとも一つは1.0g/l未満である。好ましい実施形態において、電解質は、約10から約40g/lのNaOH、約0.16から約2g/lのZnイオン(最も好ましくは0.2から約1.6g/lのZnイオンの形である)及び約0.08から約30g/lのCr(VI)イオン(最も好ましくは、約0.2から約0.9g/lのCr(VI)イオンの形である)を含む。
【0023】
本明細書において上述された電解液22の各々に関して、界面活性剤(例えば硫酸ラウリル)の有効濃度により表面は一層均一になると考えられる。
【0024】
電解液22のpHは塩基性に保たれる。約12から14の範囲のpHが好ましい。電解液22は室温から約100℃までのすべての温度で容易に機能する。析出速度を最大にするためには、電解液22の温度を約35℃から約65℃の範囲の温度に保つことが好ましい。
【0025】
電解液22は広い範囲の電流密度で十分に機能する。よく出来た皮膜は、1ミリアンペア/平方センチメートル(mA/cm)から約1アンペア/平方センチメートルの範囲にある電流密度で付着され得る。より好ましい電流密度は約3mA/cmから約100mA/cmである。用いられる実際の電流密度は、箔ストリップ14が電流を流される時間に依存する。即ち、銅箔ストリップ14がアノード24の間にあって、電解液22に浸漬されている時間である。通常、この滞在時間は約10から約25秒である。この滞在の間に、有効な厚さの変色防止皮膜化合物が析出する。この有効な厚さは、空気中で約30分間、約190℃までの高温で銅の変色を防止できる厚さである。さらに、この変色防止皮膜は、4%のHClのエッチング液、又は好ましくは5wt%のHSOのエッチング液により容易に除去できるように十分に薄くなければならない。有効な皮膜の厚さは、0.01ミクロン(100オングストローム)未満から約0.1ミクロンまでである。よく出来た結果は0.004ミクロン(40オングストローム)のように薄い皮膜厚さを持つものが得られており、約0.001ミクロン(10オングストローム)から約0.01ミクロン(100オングストローム)の皮膜の厚さを持つものが好ましい。皮膜層は、透明に見える程、或いは銅箔14に僅かに灰色の薄い色合いを付与できる程、十分に薄い。
【0026】
銅箔14の被覆後のストリップは電解セル10を出て、ロール28によりシラン溶液槽16内の水溶液18を通して導かれる。水溶液18は、約15℃から約30℃の間、より好ましくは、約20℃と約25℃の間の温度で、DI(脱イオン)水中、好ましくは、少なくとも0.05%のシランからなる。銅箔14は、好ましくは、水溶液18に1秒又はそれ以上浸漬される。
【0027】
銅箔ストリップ14はシラン溶液槽16を出て、どのような余分の電解液22及び水溶液18も銅箔14の表面からすすぐことができる。すすぎ液は脱イオン水を含んでもよい。より好ましくは、少量の苛性アルカリが脱イオン水すすぎ液に加えられる。苛性アルカリの濃度はかなり少なく、1パーセント未満である。好ましくは、苛性アルカリ濃度は約50から約150ppmである。苛性アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウムから選択されるアルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物及び水酸化アンモニウムであるように選択される。最も好ましいのは水酸化カルシウムである。
【0028】
すすぎの後、銅箔ストリップ14は強制空気によって乾燥され得る。この空気は低温であっても(例えば、室温)又は加熱されていてもよい。促進乾燥は銅箔14のスポッティング(spotting)を最少にするので、加熱強制空気が好ましい。
【0029】
乾燥後、次に、銅箔14は、プリント回路板又はその類似物を形成するために、知られている何らかの積層方法を用いて誘電基板に接着され得る。誘電基板には、例えば、ガラス繊維強化エポキシ(例えばFR−4、難燃性のガラス充填エポキシ)又はポリイミド(例えば、デュポンにより製造されているKapton)が含まれ得る。積層方法は、熱及び圧力を用いることによって、誘電基板に銅箔層を接着することを含み得る。例えば、約175℃の温度で、30分間までの時間で、約2.07MPa(300psi)の圧力によって層の間が適切に接着されるであろう。
【0030】
表面処理2
ここで図2を参照すると、本発明の第2の態様による、引き剥がし強さを向上させる皮膜を銅箔上に電析させるための電解セル50が示されている。電解セル50は、電解水溶液52が入った槽20と、銅箔ストリップ14がその間を通過するアノード24を含む。ガイドロール26は、電解セル50を通る銅箔ストリップ14の移動を制御するのに使用される。ガイドロール26は、電解液52と反応しない何らかの材料により作製される。以下に述べられているように、銅箔ストリップ14に電流が流れ得るように、好ましくは、ガイドロール26の少なくとも1本は電気伝導性材料(例えばステンレス鋼)により形作られる。下で記載されるように、銅箔14は必要とされる時間、アノード24の間にあるように、制御された速度でガイドロール26は回転する。
【0031】
電解セル50には、電解液52により電流がアノード24から銅箔(カソード)ストリップ14に流れ得るように電源(示されていない)が備わっている。このようにして、望みの組成と厚さを有する引き剥がし強さを向上させる皮膜が箔ストリップ14に析出する。
【0032】
電解液52は、元素の周期表の5B、6B、及び7B族から選択される金属から生成する、酸素を含む多原子アニオン(オキシアニオン)を含む水溶液である。好ましくは、この金属は6B族から選択される。金属が2種以上のオキシアニオンを生成できる場合、より多数の酸素原子を含むオキシアニオンが好ましく(即ち、「−ate」イオンと記載されるもの)、最大数の酸素原子を含むオキシアニオンが最も好ましい(即ち、〔per−ate〕イオンと記載されるもの)。5B族には、バナジウム、ニオブ、及びタンタルが含まれる。6B族には、クロム、モリブデン、及びタングステンが含まれる。7B族には、マンガン、テクネチウム、及びレニウムが含まれる。
【0033】
好ましい組成において、電解液52は、DI水の中に、クロメート、タングステート、又はモリブデートを含み、例えば、約1から200g/lの二クロム酸ナトリウムからなる。任意的に、電解質の導電性を増すために、約5から100g/lの硫酸ナトリウム又は他の導電性の塩を加えてもよい。好ましい実施形態において、電解液52は、本質的に、約5から75g/lの二クロム酸ナトリウムからなる。
【0034】
電解液52のpHは、約0.5から14の範囲、好ましくは、約2から約10の範囲、最も好ましくは、約4から9の範囲に維持され得る。電解液52は室温から100℃までのすべての温度で容易に機能する。析出速度を最大にするためには、電解液52の温度を、約20℃から約80℃の範囲、より好ましくは、約40℃と約60℃の間に保つことが好ましい。
【0035】
電解液52は広い範囲の電流密度で十分に機能する。よく出来た皮膜は、0.46アンペア/平方メートル(A/m)(5アンペア/平方フィート(asf))から約18.6A/m(200asf)までの範囲にある電流密度により付着され得る。より好ましい電流密度は、約0.92A/m(10asf)から約9.3A/m(100asf)、最も好ましくは、約2.8A/m(30asf)から約6.5A/m(70asf)である。用いられる実際の電流密度は、箔ストリップ14が電流を流される時間に依存する。即ち、銅箔ストリップ14がアノード24の間にあって、電解液52に浸漬されている時間である。好ましくは、この滞在時間は約2秒以上、より好ましくは、約5秒から約25秒の間である。この滞在時間の間に、元素の周期表の5B、6B、及び7B族から選択される金属を含む金属と金属酸化物の混合物を含む有効な厚さの引き剥がし強さを向上させる皮膜が銅箔に析出する。引き剥がし強さを向上させる皮膜が平滑な銅箔に付着した場合、この有効な厚さは、3.2mm(1/8インチ)幅の試験体を用いて、IPC−TM−650の方法2.4.8.5に従って測定した場合、4NのHClに約60℃で6時間浸漬した後、引き剥がし強さの低下を10%以下にできる厚さである。IPC−TM−650は、アメリカ電子回路協会(Institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits、7380N、Lincoln Avenue、Lincolnwood、イリノイ 60646、米国)から入手可能であり、さらに以下に詳述される。処理された表面の組成は分析されていないが、皮膜は金属及び金属酸化物の混合物を含み、約0.002から約0.02ミクロン(20から約200オングストローム(Å))の厚さを有すると考えられる。皮膜のモルホロジーはまた、接着力向上作用を付与するいくらかのマイクロ−ラフネス(micro−roughness)を含むであろう。
【0036】
被覆後の銅箔ストリップ14は電解セル50を出てから、どのような余分の電解液52も銅箔14の表面からすすいでよい。すすぎ液は脱イオン水を含み得る。より好ましくは、少量の苛性アルカリが脱イオン水すすぎ液に加えられる。苛性アルカリの濃度は極めて低く、1パーセント未満である。好ましくは、苛性アルカリ濃度は約50から約150ppmである。苛性アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウムから選択されるアルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物と水酸化アンモニウムであるように選択される。最も好ましいのは水酸化カルシウムである。
【0037】
すすぎの後、銅箔ストリップ14は強制空気によって乾燥され得る。この空気は低温であっても(例えば、室温)又は加熱されていてもよい。促進乾燥は銅箔14の斑点を最少にするので、加熱強制空気が好ましい。
【0038】
乾燥後、次に、銅箔14は、プリント回路板又はその類似物を形成するために、知られている積層方法を用いて誘電基板に接着される。誘電基板には、例えば、ガラス繊維強化エポキシ(例えばFR−4、難燃性のガラス充填エポキシ)又はポリイミド(例えば、デュポンにより製造されているKapton)が含まれ得る。積層方法は、熱及び圧力を用いることによって、誘電基板に銅箔層を接着することを含み得る。例えば、約180℃の温度で、約30分間で、約2.07MPa(300psi)の圧力によって、層とFR−4との間が適切に接着されるであろう。ポリイミドは通常、2分間、2.93MPa(425psi)の圧力、300℃の温度を用いて積層されるであろう。
【0039】
図5を参照すると、典型的なプリント回路板90において、誘電層92は、その対向する表面に積層された第1の銅箔層94及び第2の銅箔層96を有する。それぞれの箔の層は1.0ミクロン(0.00004インチ)から5.1ミクロン(0.0002インチ)の程度の厚さを有し、前記の表面処理は、1.0ミクロン未満、好ましくは、0.4μmから0.8μmの程度の平均表面粗さ、Rzを有する。表面処理は、1.2μm未満の平均ノジュール高さを有するノジュール構造として析出している。好ましくは、平均ノジュール高さは、0.3μmから1.0μmである。市販の薄い銅箔製品に比べて低い表面凹凸は、レーザーによる穴あけ加工中に、第2の銅箔層96の裏面100でレーザーを止める度合いを高めると考えられる。約0.4μmの最小平均表面粗さは、銅箔の層間剥離(delamination)を防ぐのに適切な引き剥がし強さのために必要である。
【0040】
レーザーアブレーションは、裏側表面100が少なくとも40の反射率の値をもつ場合にゼロに近づく。好ましくは、反射率の値は50と90の間である。反射率の値が40未満である場合、レーザーは第2の銅箔層96に侵入する。反射率の値が90を超えると、第2の銅箔層と誘電層92との間の接着性が低下する。
【0041】
図9はノジュール高さと反射率の値との間の相関をグラフに示している。
【0042】
銅箔層94、96は、例えばフォトリソグラフィーにより、望みの回路トレースに形作られる。対向する銅箔層の間に電気的相互接続が必要である場合、ブラインドビア98が、第1の銅箔層94及び誘電層92を貫通して、第2の銅箔層96の裏面100で終わるように、穴あけ加工され得る。典型的に、ブラインドビア第2である。
【0043】
レーザーは第1の銅箔層94及び誘電体92を貫通して穴あけ加工するが、第2の銅箔層96を穴あけ加工しないように行われる。レーザーが第2の銅箔層に穴をあければ、欠陥102が生じ得る。第1の銅箔層94のアブレーションを促進させるために、レーザーアブレーション促進層、例えば、暗色酸化物(dark oxide)を、第1の銅箔層94の、誘電体92の反対側になる表面104上に生成させてもよい。
【0044】
本発明の利点は、以下の実施例により明らかとなるであろう。以下の実施例は例示のためであって、如何なる仕方においても本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
様々な比較例及び実施例試料を、FR4(ガラス充填エポキシ)誘電基板に積層される銅箔を用いて作り出した。それぞれの試料において用いた銅箔、誘電基板、及び積層方法は同じであった。異なる処理方法をそれぞれの試料の銅箔に用いた。最初に、3.2mm(1/8インチ)幅の試験体を用いて、IPC−TM−650の方法2.4.8.5に従って、それぞれの試料に引き剥がし強さ試験を行った。次に、塩酸(HCl)の効果を試験するために、積層され光を用いて画定された(photodefined)プリント回路板(PCB)の洗浄のためにPCB製造過程の間に使用され得るように、1つを除いたすべての試料を、25℃で48時間、18%のHCl溶液に曝し、次いで、再び、IPC−TM−650の方法2.4.8.5に従って引き剥がし強さ試験を行った。これらの試験結果は表1に記載されており、本発明の利点が例示されている。
【0046】
一般に、IPC−TM−650の方法2.4.8.5は、環境温度での電導体の引き剥がし強さを求めるための試験を記載している。この試験では、試験体は、層間剥離、皺、膨れ、クラック、及びオーバーエッチングのような欠陥がない積層銅箔であると指定されている。積層試験体は、パターンを描かれ、次いで、エッチングされ、洗浄され、標準的な工業的操作と装置を用いて処理される。本明細書において適用される場合、パターン線(imaged line)は3.2mm(1/8インチ)であり、端部に紙やすりをかけた、はさみで切り取った試料が用いられる。各試料は、引き剥がしラインが試験体の端部に直交するように、ストリップを25.4mm(1インチ)引き剥がすことによって調製される。次に、各試料は水平表面に対して固定され、引き剥がされた金属ストリップが上向きに突き出したようにする。ストリップの端部が試験機クランプのつめチャック(jaw)の間にしっかりと固定され、つめチャックが金属ストリップの全幅を引き剥がしラインに平行に覆うようにする。適切な試験機は、Carter Engineering Co.(Yorba Linda、カリフォルニア州、米国)から市販されているもの(Model # TA 520B10CR)である。力が水直面(90±5°)内で加えられ、金属箔が、50.8±2.5mm/min(2.0±0.1インチ/min)の速度で引っ張られる。引き剥がし強さは平均引き剥がし荷重として、キログラム/ミリメートル幅、ポンド/インチ幅の単位で求められる。
【0047】
比較例試料1を、粗い、CopperBond(登録商標)処理表面を有する銅箔を用いて作製した。比較例試料1にはまた前記のP2処理も行い、クロム及び亜鉛のイオン又は酸化物の混合物を銅箔の表面に共析させた。比較例の試料1の引き剥がし強さ試験では、約100.0g/mm(5.6ポンド/インチ(lbs/inch))の引き剥がし強さが示された。HCl溶液に48時間曝した後、比較例試料1は約78.6g/mm(4.4lbs/inch)の引き剥がし強さをもっていた。
【0048】
比較例試料2を、P2処理だけを行った平滑な銅箔を用いて作製した。比較例試料2の引き剥がし強さ試験では、約28.6g/mm(1.6ポンド/インチ(lbs/inch))の引き剥がし強さが示された。比較例の試料2は、HCl溶液にたった1時間曝された後、層間剥離(引き剥がし強さゼロ)した。
【0049】
実施例試料3を本発明の第1の態様に従って作製した。実施例試料3において使用された平滑な銅箔には、最初に、P2処理を行い、次いで、約22℃で1秒以上、0.5%シランのDI(脱イオン)水溶液に浸漬した。次に、この試料をDI水ですすぎ、積層の前に乾燥した。比較例試料3の引き剥がし強さ試験では、約98.3g/mm(5.5ポンド/インチ(lbs/inch))の引き剥がし強さが示された。HCl溶液に1時間曝した後、比較例試料3は約39.3から59.0g/mm(2.2から3.3lbs/inch)の引き剥がし強さをもっていた。
【0050】
比較例試料4を、約22℃で1秒以上、0.5%シランのDI(脱イオン)水溶液に浸漬した平滑な銅箔を用いて作製した。次に、この試料をDI水ですすぎ、積層の前に乾燥した。比較例試料4の引き剥がし強さ試験は、約26.8g/mm(1.5ポンド/インチ(lbs/inch))の引き剥がし強さを示した。
【0051】
実施例試料5を、本発明の第2の態様に従って、二クロム酸塩を含む溶液で平滑な銅箔を処理して作製した。詳細には、この溶液はDI水に15g/lの二クロム酸ナトリウム及び20g/lの硫酸ナトリウムを含み、37℃で、6.13A/m(66asf)のカソード電流で5秒以上処理した。FR4に積層後、この処理箔は、94.7と98.3g/mm(5.3と5.5lbs/inch)の間の引き剥がし強さをもっていた。HCl溶液に48時間曝した後、比較例試料1は53.6から64.3g/mm(3.0から3.6lbs/inch)の引き剥がし強さをもっていた。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に見られるように、実施例3及び5の試料はそれぞれ、約98.3g/m(5.5lbs/inch)の引き剥がし強さをもち、この値は、比較例2及び4の試料において用いた表面処理(P2又はシラン溶液処理の一方だけが用いられた)により与えられる引き剥がし強さよりずっと大きい。やはり表1に示すように、実施例3及び5の試料は、CopperBond(登録商標)処理された粗い箔で実測された100.0g/mm(5.6lbs/inch)に実質的に等しい、平滑な銅箔での引き剥がし強さをもつ。このように、本発明の表面処理方法により、平滑な銅箔が、通常の粗面の箔(例えば、CopperBond(登録商標)処理された箔)を用いて得られるものに実質的に等しい引き剥がし強さをもつことができる。このことは、極端に微細な回路パターン(feature)又は高周波信号透過率が、使用され得る表面粗さの度合いを制限する場合に、特に有利である。さらに、実施例3及び5の試料はまた、HClへの暴露後に、CopperBond(登録商標)処理を用いて得られたものに近く、P2処理だけのものより実質的に大きい引き剥がし強さを保持するというさらなる利点も示している。
【0054】
HClへの暴露による引き剥がし強さの低下が、HClへの暴露により引き起こされる、銅箔と誘電基板との間で失われた皮膜材料の量の関数であることが確認された。このような材料の損失は、本明細書では、「端部アンダーカット」と呼ばれ、図3を参照することによりこれを説明することができる。図3aは、HClへの暴露前の、誘電基板62に積層された銅箔60の横断面図である。銅箔60と誘電基板62との間に配置されているのは皮膜材料64であり、これは亜鉛又はクロム−亜鉛(P2)変色防止皮膜であるか、或いは、本発明の第2の態様による引き剥がし強さを向上させる皮膜であり得る。銅箔60と皮膜材料64は、PCB上に光を用いて画定された電気的トレースの一部をなしている。皮膜材料64の厚さは、説明のために、図3では誇張されて描かれている。被膜材料64が引き剥がし強さを向上させる皮膜である場合、例えば、皮膜材料の厚さは、約0.002から約0.02ミクロン(20から約200Å)であり得る。
【0055】
図3aに見られるように、HClに暴露する前には、皮膜材料64は箔60の側面66にまで実質的に延びている。HClへの暴露(PCBを洗浄するために使用されると思われる)により、図3bに示すように、端部表面66に近い被膜材料64の一部68が除去(即ち、アンダーカット)される。図3cは、アンダーカットされた被膜材料64を示す箔ストリップ60の長手方向の図である。図3cに見られるように、被膜材料64のアンダーカットにより、被膜材料64に真っ直ぐでない端部70が生じる。
【0056】
図4は、RF4(ガラス充填エポキシ)誘電基板に積層された銅箔を用いて作り出した様々な比較及び実施例試料の試験から集めたデータをカーブフィッティングして表したものであり、アンダーカット(パーセント)の関数として引き剥がし強さの低下(%)を示している。図4に見られるように、引き剥がし強さの低下(パーセント)を、端部アンダーカットの一次関数として表すことができる。このように、HClへの暴露により試料が受ける端部アンダーカットが多いほど、引き剥がし強さの低下は大きい。本発明の第2の態様(表面処理2)に関して、試験により、この処理が、従来技術の変色防止皮膜に比べた場合、HClへの暴露による端部アンダーカット(パーセント)と引き剥がし強さの損失(パーセント)の両方を減少させることが示された。この試験を以下に記載する。
【0057】
表2は、図4のグラフを描くために用いたデータを含んでいる。様々な比較及び実施例の積層試料を、様々な表面処理を受けた平滑な銅箔を用いて作り出す試験方法を用いて、表2のデータを得た。比較例試料7〜9は、知られている表面処理を示し、一方、実施例試料9〜14は、本発明の第2の態様(表面処理2)による表面処理を示す。表2の試料の各々において使用した銅箔、誘電基板、及び積層方法は同じであり、試料は用いた表面処理によってのみ異なっていた。
【0058】
表2の各試料では、処理した銅箔をFR4誘電基板(FR4 PCL 370、ガラス転移温度(Tg)は175℃)に積層した。積層サイクルは、182℃の最高温度と2.07MPa(300psi)の圧力での50分間の加熱と、その後の15分間の冷却のサイクルからなっていた。銅箔の露出表面を、44℃で45秒間、過硫酸アンモニウム溶液(1リットルのDI水に120g/lの過硫酸アンモニウム+3体積%の濃硫酸(約18モル))でエッチングした。次に、試料をすすぎ、乾燥した。次に、銅箔を、光沢剤を含まない酸性銅浴(DI水に60g/lのCuと65g/lの硫酸、50℃)を用いて、約30.5から40.6ミクロン(0.0012から0.0016インチ)の厚さまでメッキした。望みの厚さを、約0.065アンペア/cmの電流密度を用いて24分で得た。ギロチン紙裁断機を用いて、6.4mm(1/4インチ)の幅で152mm(6インチ)の長さの試験体を各試料から準備し、次に、ダブルエッジ精密はさみを用いて、各試験体を3.2mm(1/8インチ)の幅に切った。試験体の端部を600番の紙を用いて軽く研磨して、はさみで切ることにより発生したかもしれない損傷を除去した。
【0059】
少なくとも4つの試験体を各試料について準備した。試験体の半分(コントロール試験体)を、HClに曝すことなく、IPC−TM−650の方法2.4.8.5に従って引き剥がし強さ試験した。試料の「積層後・暴露前」引き剥がし強さは、コントロール試験体に対する、ポンド/インチ幅の単位の平均引き剥がし荷重である。残りの試験体を4NのHClに60℃で6時間浸漬し、その後、すすぎ、乾燥した。次に、暴露試験体を、IPC−TM−650の方法2.4.8.5に従って引き剥がし強さ試験した。表2における、「6時間のHCl暴露後の引き剥がし強さ」は、暴露後の試験体に対する、ポンド/インチ幅の単位の平均引き剥がし荷重である。また、表2に示されているのは、各試料についての引き剥がし強さの低下(パーセント)であり、これは積層後・暴露前の引き剥がし強さのパーセンテージとして表された、HClへの6時間の暴露後の引き剥がし強さに等しい。
【0060】
各試料に対する端部アンダーカット(パーセント)を次の様にして求めた。最初に、暴露後の各試験体を100倍の倍率で見て、暴露後の試験体の両側で、被膜材料の端部と箔の端部との間の距離を、異なる3箇所で測定した。図3を参照すると、例えば、これらの測定は、72、74、76、78、80、及び84で示されており、3つの別々の測定を試験体の各側面66で行った。測定が行われた後、各側面での平均測定値を計算した。次に、試験体のアンダーカット(パーセント)を、試験体の全幅(3.2mm(1/8インチ))のパーセンテージとして表された両側の平均測定値の合計として計算した。次に、試料の端部アンダーカット(パーセント)を、その試料に関連する各試験体に対するアンダーカット(パーセント)を平均することにより計算した。各試料の端部アンダーカット(パーセント)を表2に記載する。
【0061】
【表2】

【0062】
表2の各試料を5μmの銅箔を用いて調製した。比較試料6及び7を、市販の銅箔を用いて準備し、試料7は、Olin Corporation(Norwalk、コネチカット州、米国)からXTFとして市販されているP2処理箔であった。比較例及び実施例試料8〜14の各々を、市販の銅箔を用い、P2処理を除去して、様々な表面処理を再び適用して準備した。比較例試料8のZn−Ni皮膜を、硫酸塩として10g/lのNi、硫酸塩として3g/lのZn、及び20g/lのクエン酸を含む、pH4で130°Fの水溶液を用い、0.93A/m(10asf)を3秒間、また4.6A/m(50asf)を3秒間流して析出させた。実施例試料9のシリケートを含むクロメート皮膜を、5g/lのNaCr・2HO(1.75g/lのCr)、10g/lのNaOH、及び10g/lのNaシリケートを含み、140°Fの水溶液を用い、1.8A/m(20asf)を10秒間流して析出させた。実施例試料10のクロメート皮膜を、5g/lのNaCr・2HO(1.75g/lのCr)、及び10g/lのNaOHを含み、140°Fの水溶液を用い、1.8A/m(20asf)を10秒間流して析出させた。実施例試料11の厚いクロメートを、比較例試料10のそれと同じ水溶液を用い、滞在時間を20秒に増やして析出させた。実施例試料12の酸性クロメートを、15g/lのNaCr・2HO、及び20g/lの硫酸ナトリウムを含み、140°Fの水溶液を用い、6.1A/m(66asf)を10秒間流して析出させた。実施例試料13のカソードジクロメート(CDC)を、8.75g/lのCr(25g/lのNaCr・2HO)を含み、pH4で140°Fの水溶液を用い、3.6A/m(40asf)を5秒間流すことにより析出させた。実施例試料14のタングステンを、31g/lのタングステンを含み、pH4で140°Fの水溶液を用い、3.6A/m(40asf)を5秒間流すことにより析出させた。
【0063】
表2に見られるように、各実施例及び比較例により、HClへの暴露前には、約71.5g/mm(4lbs/in)の許容できる引き剥がし強さが得られた。しかし、HClに暴露した後、比較例試料は、実施例試料より大きな引き剥がし強さの低下(パーセント)を示した。比較例試料では、引き剥がし強さの低下(パーセント)は11.2から19.8パーセントの範囲であった。他方、実施例試料には、4NのHClに60℃で6時間暴露した後、引き剥がし強さの低下(パーセント)を10パーセント以下にする効果のあることが示された。実際に、実施例試料には、引き剥がし強さの低下(パーセント)を約7パーセント以下にする効果があった。実施例試料はまた、P2又はZn−Ni皮膜を有する平滑な箔に比べた場合、端部アンダーカットに対する耐性の向上を示した。本発明の第1の態様におけるように、積層の前に銅箔をシランに曝せば、本発明の第2の態様に従って処理された銅箔の引き剥がし強さをさらに向上させるであろうと考えられる。
【0064】
(実施例2)
表3に記載した銅箔に、約300μJ/パルスの単一COパルスを照射した。箔Aは、販売者から購入した市販品であった。箔Bは、従来技術により知られているように、P2処理され、平均表面粗さは1.1ミクロン(Rz)であった。箔Cは、P2処理されているが、平均表面粗さは0.6ミクロン(Rz)に減少していた。箔Dは、本発明のクロメートにより処理した。
【0065】
コントロール箔Bの表面モルホロジーを1000倍及び3000倍の倍率の顕微鏡写真として図6に示し、本発明の箔Cの表面モルホロジーを1000倍及び3000倍の倍率の顕微鏡写真として図7に示す。また、これらの箔をRF−4基板に積層し、引き剥がし強さを実施例1に記載したようにして測定した。
【0066】
【表3】

【0067】
表3から分かるように、レーザーアブレーションへの耐性と最大の引き剥がし強さの最善の組合せは、表面粗さとノジュール高さをそれぞれ、0.6μmと0.75μmの基準に抑えることによって実現された。
【0068】
(実施例3)
表3の銅箔の反射率の値を、DRLANGE反射率計RB型番LMG064(Dr.Bruno Lange GmbH(ベルリン、ドイツ)製)を用いて測定した。図8に示すように、光線110を、第2銅箔に垂直な軸112に対して85°の角度αで、第2の銅箔96の裏面100に向けて入射させた。反射の法則に従って、光線は裏面で同じ85°の角度α’で反射される(114)。反射光114を検出器116により捕捉した。直接反射以外に、一定量の拡散反射もまた存在する。この拡散反射はアパーチャ(aperture)118により検出器116に到達しないようになっている。この実施例3では、光線を銅箔の圧延方向に対して横から入射させた。
【0069】
図9は測定した反射率の値を示している。図9に示すように、処理表面の反射率とノジュール高さとの間には非常によい相関がある。このこともまた、レーザーアブレーション能力がノジュール高さに如何に影響されるかを示している。
【0070】
【表4】

【0071】
本発明の1つ又は複数の態様及び実施形態が説明された。しかし、様々な修正が、本発明の精神と範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解されるであろう。したがって、他の態様及び実施形態は特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態による、銅積層体の引き剥がし強さ向上のための電解セル装置を示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態による、銅積層体の引き剥がし強さ向上のための電解セル装置を示す図である。
【図3a】塩酸(HCl)に曝す前の、誘電基板に積層された銅箔の横断面図である。
【図3b】塩酸(HCl)に曝した後の、誘電基板に積層された銅箔の横断面図である。
【図3c】アンダーカットされた皮膜を示す図3bの銅箔の長手方向の図である。
【図4】アンダーカット(パーセント)の関数として引き剥がし強さの低下(パーセント)を示すグラフである。
【図5】ブラインドビアを形成するためのレーザーアブレーションを示す横断面である。
【図6】従来技術により知られている表面処理の表面モルホロジーを示す顕微鏡写真である。
【図7】本発明の表面処理の表面モルホロジーを示す顕微鏡写真である。
【図8】反射率の値を求める方法を概略的に示す図である。
【図9】ノジュール高さと反射率の値との間の相関を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電基板(92)に積層されるための銅箔(96)であって、
RF−4に対する積層引き剥がし強さを少なくとも80.4g/mm(4.5ポンド/インチ)にする効果があり0.7ミクロン未満の平均表面粗さを有するレーザーアブレーション防止層(100)により被覆されていることを含む、前記銅箔(96)。
【請求項2】
平均表面粗さが0.4ミクロンと0.6ミクロンとの間である請求項1に記載の銅箔(96)。
【請求項3】
前記レーザーアブレーション防止層(100)が、0.75ミクロン未満の平均高さを有するノジュールを含む請求項1に記載の銅箔(96)。
【請求項4】
前記ノジュールが0.3ミクロンから0.6ミクロンの平均高さを有する請求項3に記載の銅箔(96)。
【請求項5】
前記レーザーアブレーション防止層(100)がクロム及び亜鉛とこれらの酸化物の共析混合物である請求項2又は4のいずれかに記載の銅箔(96)。
【請求項6】
前記レーザーアブレーション防止層(100)が金属及び金属酸化物の混合物であり、前記金属酸化物がクロム、タングステン及びモリブデンの酸化物からなる群から選択される請求項2又は4のいずれかに記載の銅箔(96)。
【請求項7】
対向する第1及び第2の表面を有する誘電基板(92);
RF−4に対する積層引き剥がし強さを少なくとも80.4g/mm(4.5ポンド/インチ)にする効果があり0.7ミクロン未満の平均表面粗さを有するレーザーアブレーション防止層(100)により被覆されている、その第1の表面に積層された第1の銅箔層(96)
を含んで成り、
前記誘電層(92)が、それを貫いて延び前記誘電層(92)と前記第1の銅箔層(96)との間の境界で終わるビア(98)を有する電気伝導性回路(90)。
【請求項8】
前記レーザーアブレーション防止層(100)の平均表面粗さが0.4ミクロンと0.6ミクロンとの間である請求項7に記載の電気伝導性回路(90)。
【請求項9】
前記レーザーアブレーション防止層(100)が0.3ミクロンから0.6ミクロンの平均高さを有するノジュールを含む請求項8に記載の電気伝導性回路(90)。
【請求項10】
前記レーザーアブレーション防止層(100)がクロム及び亜鉛とこれらの酸化物の共析混合物である請求項9に記載の銅箔(96)。
【請求項11】
前記レーザーアブレーション防止層(100)が金属及び金属酸化物の混合物であり、前記金属酸化物がクロム、タングステン及びモリブデンの酸化物からなる群から選択される請求項9に記載の銅箔(96)。
【請求項12】
前記誘電基板(92)がガラス強化エポキシ及びポリイミドからなる群から選択される請求項7から11までのいずれか一項に記載の電気伝導性回路(90)。
【請求項13】
(a)銅箔(96)を、RF−4に対する積層引き剥がし強さを少なくとも80.4g/mm(4.5ポンド/インチ)にする効果があるレーザーアブレーション防止層(100)で被覆するステップ;
(b)前記被覆後の銅箔(96)の前記少なくとも第1の層を誘電基板(92)の第1の表面に積層するステップ;
(c)前記第1の層(96)を複数の回路トレースに形成するステップ;及び
(d)ステップ(c)の前又は後のいずれかで、前記誘電基板(92)を貫き前記第1の層(96)との境界までの少なくとも1つのビア(98)を形成するステップ
を含むプリント回路(90)の製造方法。
【請求項14】
前記ビア(98)がレーザーアブレーションにより形成される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップ(a)が、0.7μm未満の平均表面粗さを有し0.3ミクロンから0.6ミクロンの平均高さのノジュールを有する前記レーザーアブレーション防止層(100)を生成するのに効果がある請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記レーザーアブレーション防止層(100)を、クロム、亜鉛及びこれらの酸化物の共析混合物、並びに、金属及びクロム、タングステン及びモリブデンの酸化物からなる群から選択される金属酸化物の混合物からなる群から選択することを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記境界の反対側の前記銅箔(96)の表面にレーザーアブレーション促進層を析出させることを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
誘電基板(92)の対向する第2の表面に前記被覆後の銅箔の第2の層(94)を積層すること、前記第2の層(94)を複数の回路トレースに形作ること、並びに、第2の層(94)及び前記誘電層(92)の両方を貫き前記第1の層(96)との境界までの前記の少なくとも1つのビア(98)を形成すること、を含む請求項13から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
誘電基板(92)に積層されるための銅箔(96)であって、
前記銅箔(96)が、RF−4に対する積層引き剥がし強さを少なくとも80.4g/mm(4.5ポンド/インチ)にする効果があり少なくとも40の平均反射率の値を有するレーザーアブレーション防止層(100)により被覆されていることを含む、前記銅箔。
【請求項20】
平均反射率の値が50と90との間である請求項19に記載の銅箔(96)。
【請求項21】
前記レーザーアブレーション防止層(100)が、1.2ミクロン未満の平均高さを有するノジュールを含む請求項19に記載の銅箔(96)。
【請求項22】
前記ノジュールが0.3ミクロンから1.0ミクロンの平均高さを有する請求項21に記載の銅箔(96)。
【請求項23】
前記レーザーアブレーション防止層(100)がクロム及び亜鉛とこれらの酸化物の共析混合物である請求項20又は22のいずれかに記載の銅箔(96)。
【請求項24】
前記レーザーアブレーション防止層(100)が金属及び金属酸化物の混合物であり、前記金属酸化物がクロム、タングステン及びモリブデンの酸化物からなる群から選択される請求項20又は22のいずれかに記載の銅箔(96)。
【請求項25】
対向する第1及び第2の表面を有する誘電性基板(92);
RF−4に対する積層引き剥がし強さを少なくとも80.4g/mm(4.5ポンド/インチ)にする効果があり少なくとも40の平均反射率の値を有するレーザーアブレーション防止層(100)により被覆されている、その第1の表面に積層された第1の銅箔層(96)
を含んで成り、
前記誘電層(92)が、それを貫いて延び前記誘電層(92)と前記第1の銅箔層(96)との間の境界で終わるビア(98)を有する電気伝導性回路(90)。
【請求項26】
前記レーザーアブレーション防止層(100)の平均反射率の値が50と90との間である請求項25に記載の電気伝導性回路(90)。
【請求項27】
前記レーザーアブレーション防止層(100)が、0.3ミクロンから1.0ミクロンの平均高さを有するノジュールを含む請求項26に記載の電気伝導性回路(90)。
【請求項28】
前記レーザーアブレーション防止層(100)がクロム及び亜鉛とこれらの酸化物の共析混合物である請求項27に記載の銅箔(96)。
【請求項29】
前記レーザーアブレーション防止層(100)が金属及び金属酸化物の混合物であり、前記金属酸化物がクロム、タングステン及びモリブデンの酸化物からなる群から選択される請求項27に記載の銅箔(96)。
【請求項30】
前記誘電基板がガラス強化エポキシ及びポリイミドからなる群から選択される請求項25から29までのいずれか一項に記載の電気伝導性回路(90)。
【請求項31】
(a)銅箔(96)を、RF−4に対する積層引き剥がし強さを少なくとも80.4g/mm(4.5ポンド/インチ)にする効果があり被覆後の銅箔の反射率の値を少なくとも40にする効果があるレーザーアブレーション防止層(100)により被覆するステップ;
(b)前記被覆後の銅箔の前記少なくとも第1の層(96)を誘電基板(92)の第1の表面に積層するステップ;
(c)前記第1の層(96)を複数の回路トレースに形作るステップ;及び
(d)ステップ(c)の前又は後のいずれかで、前記誘電基板(92)を貫き前記第1の層(96)との境界までの少なくとも1つのビア(98)を形成するステップ
を含むプリント回路(90)の製造方法。
【請求項32】
前記ビア(98)がレーザーアブレーションにより形成される請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ステップ(a)が、1.0μm未満の平均表面粗さ(Rz)を有し0.3ミクロンから1.0ミクロンの平均高さのノジュールを有する前記レーザーアブレーション防止層(100)を生成するのに効果がある請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記レーザーアブレーション防止層(100)を、クロム、亜鉛及びこれらの酸化物の共析混合物、並びに、金属及びクロム、タングステン及びモリブデンの酸化物からなる群から選択される金属酸化物の混合物からなる群から選択することを含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記境界の反対側の前記銅箔(96)の表面にレーザーアブレーション促進層を付着させることを含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
誘電基板(92)の対向する第2の表面に前記被覆後の銅箔の第2の層(94)を積層すること、前記第2の層(94)を複数の回路トレースに形成すること、並びに、第2の層(94)及び前記誘電層(92)の両方を貫き前記第1の層(96)との境界までの前記の少なくとも1つのビア(98)を形成すること、を含む請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−525028(P2007−525028A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553108(P2006−553108)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/015703
【国際公開番号】WO2005/081657
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506071210)オリン コーポレイション (12)
【Fターム(参考)】