説明

耐力壁ユニット及び耐力壁施工工法

【課題】地震発生時に建築物に作用する圧縮と引張り荷重に十分耐えられる耐震性の高い耐力壁ユニットと、その耐力壁施工工法を提供することにある。
【解決手段】土台材2と、一対の柱材3と、柱材3間の壁装着溝16に沿って両端部が落とし込まれる壁材5と、桁材4と、それぞれの部材間を結合するボルト6及びナット7とからなり、土台材2と桁材4とには、柱材3の中心位置にボルト貫通孔11が形成され、柱材3の底部と頂部とには、その内部に土台材2と桁材4に形成されたボルト孔の中心線上に、ボルト挿通孔12が設けられ、ボルト6のネジ位置に相当する位置には、ナット7を差し入れて捻じ込み可能な座堀孔10が形成されている。そして、土台材2の貫通孔から柱材3の挿通孔に挿通したボルト6に、座堀孔10から差し入れたナット7を捻じ込んで各部材を一体に緊結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば木造家屋、木造倉庫などの主として木造建築物に用いられる耐力壁の改良に関し、詳しくは耐震強度を格段に向上し得る耐力壁ユニット及び耐力壁施工工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、木造建築物においては、その耐震性を向上するために、例えば特許文献1に記載された柱構造50により耐震強度の向上を図っていた。
【0003】
この柱構造50は、図5の要部断面の正面図に示すように、アンカーボルト51の上端に雄ねじ52を刻み、この雄ねじ52に雌ねじ53が刻まれている長ナット54を螺合し、他端に軸ボルト55に設けられた雄ねじ56を螺合して挿入し、これによって軸ボルト55を長ナット54を介してアンカーボルト51に接合し、軸ボルト55をブラケット57を介して、柱58に締結することにより、アンカーボルト51と軸ボルト55とで、基礎59と、土台60と、柱58とを一体化させていた。
【特許文献1】特開2006−124946号公報(請求項1、図1)
【特許文献2】特開2006−193996号公報(請求項1、図1)
【特許文献3】特開2005−171571号公報(請求項1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この柱構造50は、軸ボルト55が柱58表面から距離e分偏位した位置に設けられているので、土台60と柱58との結合力が不十分で、しかも軸ボルト55が柱58表面から露出しているので見栄えが悪く、施工上の邪魔にもなる欠点があった。
【0005】
なお、符号70の部材は、土台60内部の装着穴61と、柱58内部の装着穴62間に装着され、下方がピン71で土台60に、上方が二本のドリフトピン72で柱58に固定された支持シャフトである。このような支持シャフト70、ドリフトピン72等による金属製金具により、土台60と柱58とを結合する柱構造50は、例えば特許文献2や特許文献3にも見られるが、いずれも図の上下方向に緊結力が作用しない構造であり、これでは結合力が不十分で耐震性を確保することはできないものであった。
【0006】
本発明は、このような従来の耐力壁の問題点を解消すべくなされたもので、地震発生時に建築物に作用する圧縮と引張り荷重に十分耐えられる耐震性の高い耐力壁ユニットと、その耐力壁施工工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る耐力壁ユニットは、建築物の壁部分に作用する圧縮及び引張り力を負担する耐力壁であって、土台材と、土台材上に所定間隔を隔てて立設され、互いの対向面に柱軸に沿う方向に壁装着溝が形成された一対の柱材と、前記柱材間の壁装着溝に沿って両端部が落とし込まれる壁材と、前記一対の柱材間及び壁材上に位置する桁材と、前記土台材と一対の柱材の底部間、及び一対の柱材の頂部と桁材間のそれぞれの部材間を結合するボルト及びナットとからなり、
前記土台材と前記桁材とには、前記一対の柱材の中心位置に相当する位置に、ボルト貫通孔が形成され、前記一対の柱材の底部と頂部とには、それぞれの内部に、前記土台材と桁材に形成されたボルト貫通孔の中心線の延長上に、ボルト挿通孔が設けられているとともに、前記ボルトのネジ位置に相当する位置に、ナットを差し入れて捻じ込み可能な座堀孔が形成され、
前記土台材のボルト貫通孔から前記一対の柱材のボルト挿通孔に挿通したボルトに、前記柱材の座堀孔から差し入れたナットを捻じ込むことにより、前記各部材が一体に緊結されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る耐力壁ユニットは、請求項1に記載の耐力壁ユニットにおいて、一対の柱材間に窓部材が嵌めこまれているとともに、該窓部材の両側が、隣接する柱材とボルト及びナットで結合されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の耐力壁ユニットは、請求項1又は2に記載の耐力壁ユニットにおいて、壁材が、鉄線入りの気泡コンクリートからなるとともに、該壁材の両端部が柱材の壁装着溝と接着剤により、接着されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の耐力壁施工工法は、一対の柱材が所定間隔を隔てて平行に立設され、それぞれの柱材の対向面に形成された柱溝に壁材を落とし込んで耐力壁を施工する耐力壁施工工法であって、前記柱材の中心線上の両端部に、柱端部から内部に向かう所定長さのボルト挿通孔と、該ボルト孔の端部に連通し、外部に開口する孔であってナットが捻じ込み可能な座堀孔とを形成し、前記一対の柱材の一端部同士間に、前記柱材間隔に一致する一対のボルト貫通孔が形成された土台材を、一方、前記一対の柱材の他端部同士間に、前記柱材間隔に一致する一対のボルト貫通孔が形成された桁材をそれぞれの貫通孔位置を前記柱材の中心位置に一致させて張り渡した後、前記対向する一対の柱溝内に壁材の両端部を落とし込んで所定面積の壁面を形成し、
しかる後に前記土台材と桁材の裏面から前記ボルトを前記ボルト貫通孔を経て前記柱材端部のボルト挿通孔に差し込み、前記座堀孔においてナットを前記ボルトに捻じ込むことにより、前記各部材を一体に緊結することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の耐力壁施工工法は、請求項4に記載の耐力壁施工工法において、壁材に、鉄線入りの気泡コンクリートを用いることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の耐力壁施工工法は、請求項4又は5に記載の耐力壁施工工法において、座堀孔は、正面視が円形であって、ボルトに円形対応座金を介してナットを締め付けることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の耐力壁施工工法は、請求項4〜6のいずれかに記載の耐力壁施工工法において、さらに柱材と柱材間に、窓を嵌め込み、該窓の両端部と隣接する柱材とをボルト及びナットで結合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る耐力壁ユニットによれば、一対の柱材の対向面に設けた溝内に壁材を落とし込んだ状態で、土台材と桁材とを柱材に柱材内部の中心線上の位置に設けたボルトとナットとで緊結するので、土台材と柱材及び柱材と桁材間の結合が非常に強固なものとなる。よって、壁材とともに一体化された耐力壁ユニットが得られ、圧縮及び引張り力が作用してもこれに十分抗し得る耐震性の強い耐力壁ユニットが得られる。又、ボルト及びナットは、柱材内部に隠れるので、見栄えも良く、邪魔になることもない。
【0015】
請求項2に係る耐力壁ユニットによれば、請求項1に記載の耐力壁ユニットに、さらに窓部材が耐震強度を低下させることなく嵌めこまれているので、耐力壁の利便性がさらに向上する。
【0016】
請求項3に記載の耐力壁ユニットによれば、請求項1又は2に記載の耐力壁ユニットにおいて、壁材が、鉄線入りの気泡コンクリートからなるとともに、該壁材の両端部が柱材の壁装着溝と接着剤によって接着されているので、さらに耐震強度が向上する。
【0017】
請求項4に記載の耐力壁施工工法によれば、柱材表面に壁材を張り付けるのではなく、両方の柱に溝を掘ってその溝に柱を落とし込む方法を採用するので、壁材の圧縮及び引張り特性を最大限に引き出すことができる。
【0018】
請求項5に記載の耐力壁施工工法によれば、請求項4に記載の耐力壁施工工法において、壁材に鉄線入りの気泡コンクリートを用いるので、耐震強度がより一層向上する。
【0019】
請求項6に記載の耐力壁施工工法によれば、請求項4又は5に記載の耐力壁施工工法において、座堀孔に正面視で円形のものを用いるので、ボルト及びナットによる締結力を集中させることができ、その分耐震強度が向上する。
【0020】
請求項7に記載の耐力壁施工工法によれば、請求項4〜6のいずれかに記載の耐力壁施工工法において、さらに柱材と柱材間に、窓を嵌め込み、該窓の両端部と隣接する柱材とをボルト及びナットで結合するので、耐力壁の利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の最良の形態をその一実施例を示す図面に基づいて説明する。
【0022】
まず、本発明の耐力壁ユニットについて、その一実施例である図1〜図3を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の耐力壁ユニット1の正面図、図2(a)は、図1の耐力壁ユニット1のP部拡大図、図2(b)は、図2(a)の耐力壁ユニット1のA−A線の断面図、図2(c)は、図2(a)に示されているボルト頭部6aの変形例である。
【0024】
図1において、本発明の耐力壁ユニット1は、所定の壁面積を有する耐力壁の一基本構成単位、すなわち1ユニットを示している。耐震家屋の建築に際しては、図示のような1ユニットの耐力壁を必要とする部屋の壁に単独で使用されるか、あるいは壁面積に応じて複数ユニットが配置されるものである。
【0025】
本発明の耐力壁ユニット1は、土台材2と、一対の柱材3と、桁材4と、壁材5とが、ボルト6及びナット7で一体に緊結されて構成される。
【0026】
土台材2は、前述の図5で示したように例えば図示しないコンクリート基礎上にボルト6、ナット7等により固定されるものである。床に近いことからその材質は、耐腐食性を有するものが好ましい。なお、水平方向の長さは、説明の便宜上、図示の長さとされているが特に限定されるものではない。
【0027】
一対の柱材3は、後述する壁材5と共に通常加わる圧縮荷重のほか、地震発生時及び発生中に加わる圧縮荷重を負担し、かつ挫屈現象が生じない強度を有する部材である。居住性及び耐震性を考慮して、必要な柱間隔L及び高さHで土台材2上に平行に立設されるものである。
【0028】
図1のP部に示すように、土台材2と一対の柱材3の底部とは、ボルト6及びナット7により強固に緊結されている。すなわち、土台材2と一対の柱材3の底部とには、それぞれボルト貫通孔11と、ボルト挿通孔12とが同一の中心線上に形成されている。
【0029】
また、柱材3のボルト挿通孔12の最奥部には、さらにナット7差込用の座堀孔10が形成され、ボルト挿通孔12と連通している。そして、柱材3のボルト貫通孔11から差し入れたボルト6を柱材3のボルト挿通孔12に挿通して、ボルト6先端部を座堀孔10内に露出させ、それにナット7を捩じ込んで土台材2と柱材3とを強固に緊結するのである。
【0030】
図2(a)に示すように、ボルト6の頭部6aは、四角形の平面座金13に両端部が雄ネジのボルト6を貫通させ、土台材2側の雄ネジにナット7を捩じ込んだものにしているが、図2(b)に示すように、平面座金14にボルト6端部が溶接されたものであっても良い。
【0031】
座堀孔10の平面視形状としては、加工の容易性から図に示すような円形のものが好ましいが、ナット7の座面が水平面となっている四角形や三角形であっても良い。
【0032】
座堀孔10からナット7をボルト6に締め付ける前に座金15を入れるが、座堀孔10が円形の場合は、底面が平面でない、図に示すような正面視が半月形の蒲鉾形をした円形対応座金15を用いるのが好ましい。その理由は、円形対応座金15を用いると柱材3との接触面積が増えるほか、ナット7による締付力がボルト6中心線上に集中し、緊結力が強くなって耐震性が格段に向上するからである。
【0033】
なお、図2(b)に示すように、座堀孔10は、最奥部が閉塞されている洞穴の如きものが、柱材3の裏面に化粧面を位置させることができるので好ましいといえるが、そのような配慮が不要の場合は貫通孔であっても良い。
【0034】
図2(b)に示すように、それぞれの柱材3の対向面には、後述する壁材5を落とし込むか又は嵌め込むための壁装着溝16が、柱軸に沿う方向に形成されている。
【0035】
壁装着溝16の溝幅としては、耐力壁ユニット1として組み立て後に壁材5が移動しない程度の幅が好ましく、具体的には壁材5の厚さTプラス5mm以内が良い。
【0036】
壁材5は、前述したように一対の柱材3とともに、耐力壁として圧縮及び引張り力を負担するものである。その機能からすると継ぎ目のない、いわゆる一枚ものの方が耐震性があるため好ましいが、図1に示すように複数枚に分けて継ぎ目なく、壁装着溝16間に落とし込んでも良い。又、壁材5を壁装着溝16内に落とし込んだ後又は落とし込む前に、両者間に適当な接着剤を流し込んで接着しても良い。
【0037】
壁材5の厚さとしては、材質にもよるが30mm以上のものであれば、引張り特性及び圧縮特性上、好適である。
【0038】
壁材5の材質としては、例えば軽量気泡コンクリートパネル(JIS A 5416:1997、旭建材株式会社製ALCパネル)や石膏ボードなどが例示できるが、鉄線入りの軽量気泡コンクリートパネルが引張り特性及び圧縮特性に優れるうえ、住宅の壁材5として必要な断熱効果や遮音効果を有するうえ、軽量であるので施工上も好適である。
【0039】
桁材4は、上部からの圧縮荷重を支えるもので、所定の断面形状及び寸法を確保することにより一定の撓み内に収まるよう設計されているものである。この桁材4の水平方向の長さ及び一対の柱材3とのボルト6及びナット7による緊結方法も、土台材2と柱材3間の結合方法と同様である。
【0040】
以上に述べた土台材2、一対の柱材3、桁材4の材質としては、木造建築の場合は当然木製のものを使用することになるが、本発明の特徴から言うと特に限定されるものではなく、例えば金属製やプラスチック製のものであっても良い。
【0041】
本発明の耐力壁ユニット1によれば、一対の柱材3の対向面に設けた溝内に壁材5を落とし込んだ状態で、前述した図5の従来の柱構造と異なり、土台材2と桁材4とを柱材3に柱材3内部の中心線上の位置に設けたボルト6とナット7とで緊結するので、土台材2と柱材3及び柱材3と桁材4間の結合が非常に強固なものとなる。
【0042】
よって、壁材5とともに一体化された耐力壁ユニット1が得られ、圧縮及び引張り力が作用してもこれに十分抗し得る耐震性の強い耐力壁ユニット1が得られる。
【0043】
また、この耐力壁ユニット1は、建築物の壁仕様に応じて特別仕様のものとしても良いが、予め工場において負荷しえる圧縮及び引張り力に応じたものを製造してストックしておけば、必要な耐力壁を直ちに供給でき、建築工期の短縮、製造コストの低減等に寄与しえる。そして、複数個のものを併置すれば、壁面積が異なる場合においても柔軟に対応できる効果を奏する。
【0044】
図3は、本発明の耐力壁ユニット1Aの別例の正面図である。
【0045】
この図の耐力壁ユニット1Aは、図1の耐力壁ユニット1の上から二段目の壁材5を取り外して図示しない窓の嵌め込み空間20を設けたもので、以下の説明においては図1で用いたのと同じ符号のものは同一部材であるため、その説明は省略する。
【0046】
すなわち、本例の耐力壁ユニット1Aは、壁材5を取り去った空間20に、窓の上下方向の外寸を上下間隔とする二本の桟21を平行に嵌め込み、桟21の両端部を隣接する柱材3と図1のP部と同様の締結構造にて結合したものである。この例では、座堀孔10は正面視が四角形のものであるが、勿論図1のように円形のものであっても良い。
【0047】
本例においても、ボルト6A及びナット7Aは、桟21の内部に設けられ、しかも上下方向に加えて水平方向にもボルト6A及びナット7Aによる締め付け力が加えられるので、壁材5一枚の取り外しによる強度低下を招くことなく、窓付きの耐力壁ユニット1Aを構成できる。この窓付き耐力壁ユニット1Aは、図1の耐力壁ユニット1と組み合わせて用いることができる。
次に、本発明の耐力壁の施工工法について、再び図1〜図3を参照して説明する。
【0048】
まず、図2(a)に示されているように、土台材2に、柱材3間隔Lに一致するボルト貫通孔11を形成する。
【0049】
次に、柱材3の底部にも柱材3のボルト貫通孔11の延長上であって、柱材3内部の中心線上にボルト挿通孔12を穿ち、最奥部のボルトネジ位置に相当する位置に、ナット7を差し入れる座堀孔10をボルト挿通孔12に連通させて形成する。
【0050】
そして、土台材2のボルト貫通孔11から挿通したボルト6の端部に柱材3の座堀孔10から差し入れたナット7を捻じ込むことにより、土台材2と一対の柱材3とを一体に緊結する。一対の柱材3と桁材4についても同様である。
【0051】
次に、一対の柱材3の溝内に壁材5を落とし込んで所定面積の壁面を柱材3間に形成する。なお、壁材5を柱材3の溝間に落とし込む態様については、図1〜図3のように土台材2の上に所定間隔Lで立設した柱材3間に落とし込んで順次上方に積み上げても良いし、床面上に横たえた壁材5の両側から柱材3の溝を嵌め込んで結合して立ち上げてもよいものとする。すなわち、発明でいう「壁材を落とし込んで耐力壁を施工する」とは、広い意味であって、上記の二態様を含むものとする。前者の工法は、現場施工に適し、後者の工法は、工場での生産に適する。
【0052】
本発明の耐力壁の施工工法によれば、ボルト6、ナット7及び座金15等の少ない締結部材だけで耐震性の高い耐力壁を迅速に施工することができる。
【実施例】
【0053】
前述した図1及び図2に記載の耐力壁ユニット1を供試体1Bとして、これに図4記載の加力・計測装置30を用いて、降伏耐力等の各種の強度試験を行った。
1.供試体1Bの条件
図1及び図2に記載の耐力壁ユニット1(供試体)条件は次の通りである。
【0054】
・ 整理番号 : KNK−06
・ 寸 法 : 910mm(L)×2730mm(H)
・ 土台材2 : 桧材、 120mm×120mm
・ 柱材3 : 間伐杉材、120mm×120mm
・ 桁材4 : 間伐杉材、120mm幅×180mm高さ
・ 座堀孔10: 45mm×45mm
・ 壁材5 : ヘーベルライト(旭建材株式会社製ALCパネル)、
600mm×50mm厚さ
2.加力・計測装置30
図4の加力・計測装置30は、油圧源31及びアキュムレータ32からなる油圧駆動によりアクチュエータ33が供試体の桁材4A部分に対し、その水平方向に10トンの測定荷重を300mmの正負方向に加える駆動系を有する。
【0055】
また、供試体1Bには、随所にひずみゲージ34が固定されており、その検知した測定ひずみと測定変位とをスイッチボックス35経由でデジタル静ひずみ測定器36により測定し、データを測定用パソコン37に表示又は測定パソコン37からのデータ設定を受ける測定系を有する。そして、両系間には、制御用パソコン38と、制御装置39からなる制御系を有する。
【0056】
すなわち、これら三つの系で供試体に対する加力・計測装置30を構成している。
3.測定項目
本実施例では、次の項目について、上記加力・計測装置30により測定した。
(1)降伏耐力(KN/実壁長m)
荷重−変形の実験曲線から求めた値である。
(2)Pu(0.2/Ds)(KN)
上記荷重−変形の実験曲線から求めた終局耐力(KN)である。
(3)2/3Pmax(KN)
最大荷重を安全率(1.5)で除した値である。
(4)終局時破壊モード
終局時の破壊の仕方である。
(5)壁倍率(倍)
供試体の許容剪断耐力から一定式に基づいて算出した値である。
4.測定結果
後述の表1にまとめて示した。
【比較例】
【0057】
図6に示すように、この供試体1Cは、柱材3の両端部をボルト6及びナット7を用いて土台材2と桁材4とに緊結した実施例の耐力壁ユニット1とは異なり、外形寸法15mm角の込み栓のみにより、柱材3Bの両端部を土台材2Aと桁材4Aとに結合したものを用いた。
【0058】
そして、実施例と同じ加力・計測装置30を用い、実施例と同じ測定項目について測定した。
【0059】
以上の実施例及び比較例の測定結果をまとめたのが次の表1である。
【0060】
【表1】

上記表1の通り、本発明による工法を適用した実施例の耐力壁ユニット1と、込み栓40による従来工法の耐力壁ユニット1Cの壁倍率は次の通りであった。壁倍率は、数値が大きいほど耐力が高いことを示す。
【0061】
よって、本発明による耐力壁ユニット1及び工法を適用することによって、壁倍率は、従来工法に対して3.0倍(2.43/0.81倍)も高く、本発明の耐力壁ユニット及び耐力壁施工工法の優秀性が実証された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の耐力壁ユニット及び耐力壁施工工法によれば、一般家庭の壁部分にも適用することができ、耐震強度を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の耐力壁ユニットの正面図である。
【図2】図2(a)は、図1の耐力壁ユニットのP部拡大図、図2(b)は、図2(a)の耐力壁ユニットのA−A線の断面図、図2(c)は、図2(a)に示されているボルト頭の変形例である。
【図3】本発明の耐力壁ユニットの別例の正面図である。
【図4】実施例及び比較例で用いた加力・計測装置のシステム図である。
【図5】従来の柱の構造の要部正面図である。
【図6】従来の耐力壁ユニットの正面図である。
【符号の説明】
【0064】
1、1A、1B 耐力壁ユニット
2、2A 土台材
3、3A、3B 柱材
4、4A 桁材
5 壁部材
6、6A ボルト
7、7A ナット
10 座堀孔
11 貫通孔
12 挿通孔
16 壁装着溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁部分に作用する圧縮及び引張り力を負担する耐力壁であって、
土台材と、
土台材上に所定間隔を隔てて立設され、互いの対向面に柱軸に沿う方向に壁装着溝が形成された一対の柱材と、
前記柱材間の壁装着溝に沿って両端部が落とし込まれる壁材と、
前記一対の柱材間及び壁材上に位置する桁材と、
前記土台材と一対の柱材の底部間、及び一対の柱材の頂部と桁材間のそれぞれの部材間を結合するボルト及びナットとからなり、
前記土台材と前記桁材とには、前記一対の柱材の中心位置に相当する位置に、ボルト貫通孔が形成され、
前記一対の柱材の底部と頂部とには、それぞれの内部に、前記土台材と桁材に形成されたボルト貫通孔の中心線の延長上に、ボルト挿通孔が設けられているとともに、前記ボルトのネジ位置に相当する位置に、ナットを差し入れて捻じ込み可能な座堀孔が形成され、
前記土台材のボルト貫通孔から前記一対の柱材のボルト挿通孔に挿通したボルトに、前記柱材の座堀孔から差し入れたナットを捻じ込むことにより、前記各部材が一体に緊結されていることを特徴とする耐力壁ユニット。
【請求項2】
一対の柱材間に窓部材が嵌め込まれているとともに、該窓部材の両側が、隣接する柱材とボルト及びナットで結合されていることを特徴とする請求項1に記載の耐力壁ユニット。
【請求項3】
壁材が、鉄線入りの気泡コンクリートからなるとともに、該壁材の両端部が柱材の壁装着溝と接着剤により、接着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐力壁ユット。
【請求項4】
一対の柱材が所定間隔を隔てて平行に立設され、それぞれの柱材の対向面に形成された柱溝に壁材を落とし込んで耐力壁を施工する耐力壁施工工法であって、
前記柱材の中心線上の両端部に、柱端部から内部に向かう所定長さのボルト挿通孔と、該ボルト孔の端部に連通し、外部に開口する孔であってナットが捻じ込み可能な座堀孔とを形成し、
前記一対の柱材の一端部同士間に、前記柱材間隔に一致する一対のボルト貫通孔が形成された土台材を、一方、前記一対の柱材の他端部同士間に、前記柱材間隔に一致する一対のボルト貫通孔が形成された桁材をそれぞれの貫通孔位置を前記柱材の中心位置に一致させて張り渡した後、
前記対向する一対の柱溝内に壁材の両端部を落とし込んで所定面積の壁面を形成し、
しかる後に前記土台材と桁材の裏面から前記ボルトを前記ボルト貫通孔を経て前記柱材端部のボルト挿通孔に差し込み、前記座堀孔においてナットを前記ボルトに捻じ込むことにより、前記各部材を一体に緊結することを特徴とする耐力壁施工工法。
【請求項5】
壁材に、鉄線入りの気泡コンクリートを用いることを特徴とする請求項4に記載の耐力壁施工工法。
【請求項6】
座堀孔は、正面視が円形であって、ボルトに円形対応座金を介してナットを締め付けることを特徴とする請求項4又は5に記載の耐力壁施工工法。
【請求項7】
さらに柱材と柱材間に、窓を嵌め込み、該窓の両端部と隣接する柱材とをボルト及びナットで結合することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の耐力壁施工工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−144577(P2008−144577A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296266(P2007−296266)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(506251535)
【Fターム(参考)】