説明

耐溶剤性が改善された無色透明なポリイミドフィルム

【課題】極性溶媒に浸漬させてもフィルムの膨潤、溶解などの外形変化が発生しない無色透明なポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】本発明のポリイミドフィルムは、フィルムを極性溶媒に10分間浸漬させた後のフィルム厚さとフィルムを溶媒に浸漬させる前のフィルム厚さとの差の、浸漬前のフィルム厚さに対する百分率と定義される下記式1の耐溶剤性指数が2%以内であり、黄色度が10以下であることを特徴とする。
【数1】


(式中、tはフィルムを溶媒に浸漬させる前のフィルム厚さであり、tはフィルムを極性溶媒に10分間浸漬させた後のフィルム厚さである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐溶剤性が改善された無色透明なポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミド(PI)樹脂とは、芳香族二無水物と芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートを溶液重合してポリアミド酸誘導体を製造した後、高温で閉環脱水させてイミド化することにより製造される高耐熱樹脂をいう。ポリイミド樹脂を製造するために、芳香族二無水物成分としてピロメリット酸二無水物(PMDA)またはビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)などを使用しており、芳香族ジアミン成分としてはオキシジアニリン(ODA)、p−フェニレンジアミン(p−PDA)、m−フェニレンジアミン(m−PDA)、メチレンジアニリン(MDA)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(HFDA)などを使用している。
【0003】
このようなポリイミド樹脂は、不溶、不融の超高耐熱性樹脂であって、耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、低温特性、耐溶剤性などに優れた特性を持っており、自動車材料、航空素材、宇宙船素材などの耐熱先端素材、および絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体、TFT−LCDの電極保護膜などの電子材料に広範囲な分野にわたって使われている。
【0004】
ところが、ポリイミド樹脂は、高い芳香族環密度により褐色または黄色に着色されており、可視光線領域における透過度が低いため、透明性が要求される分野への使用には困るという難点があった。
【0005】
最近、無色透明なポリイミドフィルムが開発されているが、この場合、既存のポリイミド樹脂の耐溶剤性特性が非常に低下するという問題点がある。
【0006】
このため、基板用および光学用コーティング材およびフィルムとして使用されるとき、極性溶媒や酸、塩基などの現像液および別のコーティング液に露出される場合、その表面の溶出または膨潤によりその形態が変わる現象が起こるので、フィルムの保護層なしにそれ自体のみで使用されるには困難さがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、耐溶剤性が改善された透明ポリイミドフィルムを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、耐溶剤性が改善された表示素子用基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、好適な第1具現例として、フィルムを極性溶媒に10分間浸漬させた後のフィルム厚さと溶媒に浸漬させる前のフィルム厚さとの差の、浸漬前のフィルム厚さに対する百分率と定義される下記式1の耐溶剤性指数が2%以内であり、黄色度が10以下である、ポリイミドフィルムを提供する。
【数1】

式中、tはフィルムを溶媒に浸漬させる前のフィルム厚さであり、tはフィルムを極性溶媒に10分間浸漬させた後のフィルム厚さである。
【0010】
前記具現例において、極性溶媒はジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の中から選択されたものであってもよい。
【0011】
前記具現例に係るポリイミドフィルムは、二無水物および無水物とジアミンとが重合されたポリアミド酸で形成されたものであってもよい。この際、無水物は、二無水物および無水物の総モルに対して10mol%以下で含んでもよい。
【0012】
前記具現例に係るポリイミドフィルムは、二無水物および無水物とジアミンとが重合されたポリアミド酸溶液を製膜工程によってポリイミドフィルムとして収得した後、収得されたポリイミドフィルムは310〜500℃で1分〜3時間熱処理したものであってもよい。
【0013】
前記具現例に係るポリイミドフィルムは550nmにおける透過度が85%以上であってもよい。
【0014】
前記具現例に係るポリイミドフィルムは50〜250℃における熱膨張係数(CTE)が55ppm/℃以下であってもよい。
【0015】
また、本発明は、好適な第2具現例として、前記第1具現例のポリイミドフィルムを含む表示素子用基板を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本発明は、フィルムを極性溶媒に10分間浸漬させた後のフィルム厚さと溶媒に浸漬させる前のフィルム厚さとの差の、浸漬前のフィルム厚さに対する百分率と定義される下記式1の耐溶剤性指数が2%以内であり、黄色度が10以下である、ポリイミドフィルムを提供する。
【数2】

式中、tはフィルムを溶媒に浸漬させる前のフィルム厚さであり、tはフィルムを極性溶媒に10分間浸漬させた後のフィルム厚さである。
【0018】
前記極性溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の中から選択されたものであってもよい。
【0019】
前記耐溶剤性指数が2%を超過する場合、測定機器の厚さの差を考慮に入れるとしても、その表面が溶媒に溶出し或いは膨潤したものなので、表示素子製造工程内で現像液などの溶媒に露出されたとき、その表面の変化によりパターンの誤りが生じる。或いは、表面に耐溶剤性をコーティングを施すとしても、フィルムの側面からさらに溶媒に露出されるので、前述したようなパターンの誤りは依然として起こり得る。このような特性を持つ基板は、該当工程においてパターンの誤りおよび寸法変化を生じさせるので、実際使用されるには困難さがある。
【0020】
また、前記耐溶剤性指数が2%を超過する場合、フィルムに溶媒が滴下したとき、フィルムが溶媒に溶ける同時に溶媒が周囲の水分に露出されるので、溶媒の溶解度が低下し、これにより溶媒内に溶け込んだフィルム成分が白濁を引き起こす。
【0021】
したがって、ポリイミドフィルムが工程内で現像液などの溶媒に露出されるときに問題とならないように、前記耐溶剤性指数が2%以内であることが好ましい。
【0022】
本発明のポリイミドフィルムは、耐溶剤性の改善のためにポリアミド酸重合の際に架橋させたものであり得る。ところが、フィルム製造の際に化学硬化工程、沈殿工程および再溶解工程を経なければならないので、架橋基が前記工程中で予め架橋される場合、溶解度が低下して再溶解が不可であり、結果としてフィルムの製膜が不可である。よって、条件、すなわち前記工程において架橋が進行しないことを満足しなければならない。
【0023】
本発明のポリイミドフィルムは、ジアミンと二無水物および無水物成分とを共重合し、イミド化して形成されたもので、耐溶剤性を改善させるために、二無水物および無水物:ジアミンを1:1の当量比にして、ポリイミド分子鎖の末端を無水物で置換したものであってもよい。
【0024】
このようにポリアミド酸溶液を重合し、高温でイミド化および熱処理して製膜することにより、ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0025】
本発明で使用することが可能な二無水物としては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物(TDA)、ピロメリット酸二無水物(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)、スルホニルジフタル酸二無水物(SODPA)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、イソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸二無水物(6HBDA)などから選択された単独或いは2種以上の組み合わせを例示することができるが、これに限定されない。
【0026】
一方、本発明で使用することが可能なジアミンとしては、オキシジアニリン(ODA)、p−フェニレンジアミン(pPDA)、m−フェニレンジアミン(mPDA)、p−メチレンジアミン(pMDA)、m−メチレンジアミン(mMDA)、ビスアミノフェノキシベンゼン(133APB、134APB)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(33−6F、44−6F)、ビスアミノフェニルスルホン(4DDS、3DDS)、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)、シクロヘキサンジアミン(13CHD、14CHD)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(6HMDA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)、ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(DBSDA)などから選ばれた単独或いは2種以上の組み合わせを例示することができるが、これに限定されない。
【0027】
また、本発明で使用することが可能な無水物としては、ビシクロヘプテンジカルボン酸無水物(無水ナジック酸(Nadic anhydride)、Bicyclo[2.2.1]−5−heptene−2,3−dicarboxylic anhydride)、アントラセニルエチニルフタル酸無水物(4−(9−anthracenyl ethynyl)phthalic anhydride)などの不飽和基を有する原料を例示することができるが、これに限定されない。
【0028】
上述した二無水物成分および無水物とジアミンとは第1溶媒中に溶解させて反応させ、ポリアミド酸溶液を製造する。
【0029】
反応時の条件は、特に限定されないが、反応温度は−20〜80℃が好ましく、反応時間は2〜48時間が好ましい。また、反応の際にアルゴンや窒素などの不活性雰囲気であることがより好ましい。
【0030】
一方、反応の際に二無水物の添加量によって分子量が影響を受けるが、当該ポリイミドの固有の物性を低下させないように二無水物および無水物の総モルに対して10mol%以下、好ましくは2mol%以下で添加してもよい。10mol%を超過して多くの量を使用する場合、分子量が低くなることにより黄色度が増加し、透過度および光学特性が低下する一方で、二無水物の含量増加によって架橋が発生するので、熱的特性の向上を期待することはできるが、多量の架橋は高分子鎖の配列を乱すため、CTEが増加するなど熱的特性の減少も発生しうる。
【0031】
前述した単量体の溶液重合反応のための第1溶媒は、ポリアミド酸を溶解させる溶媒であれば特に限定されない。公知の反応溶媒として、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセテートの中から選ばれた少なくとも一つの極性溶媒を使用する。この他にも、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどの低沸点溶液またはγ−ブチロラクトンなどの低吸収性溶媒を使用することができる。
【0032】
第1溶媒の含量に対しては特に限定されないが、適切なポリアミド酸溶液の分子量と粘度を得るために、第1溶媒の含量は、全体ポリアミド酸溶液の50〜95重量%が好ましく、さらに好ましくは70〜90重量%である。
【0033】
このように製造されたポリアミド酸溶液をイミド化して製造したポリイミド樹脂は、熱安定性を考慮してガラス転移温度が200〜400℃であることが好ましい。
【0034】
しかも、ポリアミド酸溶液を用いてポリイミドフィルムに製造するとき、ポリイミドフィルムの摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナー性などの各種特性を改善させる目的で、ポリアミド酸溶液に充填剤を添加することができる。充填剤は、特に限定されないが、好ましい具体例としてはシリカ、酸化チタン、層状シリカ、カーボンナノチューブ、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などを挙げることができる。
【0035】
前記充填剤の粒径は、改質すべきフィルムの特性、および添加する充填剤の種類によって変動できるものであって、特に限定されないが、一般には平均粒径が0.001〜50μmであることが好ましく、より好ましくは0.005〜25μmであり、さらに好ましくは0.01〜10μmである。この場合、ポリイミドフィルムの改質効果が現れ易く、ポリイミドフィルムにおける良好な表面性、導電性および機械的特性が得られる。
【0036】
また、前記充填剤の添加量も、改質すべきフィルムの特性および充填剤の粒径などによって変動できるものであって、特に限定されない。一般に、充填剤の含量は、高分子樹脂の結合構造を妨害しないながら改質すべき特性を示すために、ポリアミド酸溶液100重量部に対し0.001〜20重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜10重量部である。
【0037】
充填剤の添加方法は、特に限定されないが、例えば、重合前または重合後にポリアミド酸溶液に添加する方法、ポリアミド酸重合の完了後に3本ロールを用いて充填剤を混練する方法、充填剤を含む分散液を準備してこれをポリアミド酸溶液に混合する方法などを挙げることができる。
【0038】
前記の得られたポリアミド酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法は、従来の公知の方法を使用することができるが、すなわち、ポリアミド酸溶液を支持体にキャストしてイミド化することによりフィルムを得ることができる。
【0039】
この際、適用されるイミド化法としては、熱イミド化法、化学イミド化法、または熱イミド化法と化学イミド化法とを併用して適用することができる。化学イミド化法は、ポリアミド酸溶液に、例えば酢酸無水物などの酸無水物で代表される脱水剤、および例えばイソキノリン、β−ピコリン、ピリジンなどの3級アミン類などで代表されるイミド化触媒を投入する方法である。熱イミド化法を使用する場合、または熱イミド化法と化学イミド化法とを併用する場合、ポリアミド酸溶液の加熱条件はポリアミド酸溶液の種類、製造されるポリイミドフィルムの厚さなどによって変動できる。
【0040】
熱イミド化法と化学イミド化とを併用する場合のポリイミドフィルムの製造例をより具体的に説明すると、ポリアミド酸溶液に脱水剤およびイミド化触媒を投入して支持体上にキャストした後、80〜200℃、好ましくは100〜180℃で加熱して脱水剤およびイミド化触媒を活性化することにより、部分的に硬化および乾燥させた後、ゲル状態のポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して得、前記ゲル状態のフィルムを支持台に固定させて200〜400℃で5〜400秒間加熱することにより、ポリイミドフィルムを得ることができる。ゲル状態のフィルムはピンタイプのフレームまたはクリップタイプを用いて固定することができる。前記支持体としてはガラス板、アルミニウム箔、循環ステンレスベルト、ステンレスドラムなどを使用することができる。
【0041】
一方、本発明では、前記の得られたポリアミド酸溶液から次のようにポリイミドフィルムを製造することもできる。すなわち、得られたポリアミド酸溶液をイミド化した後、イミド化した溶液を第2溶媒に投入し、沈殿、濾過および乾燥させてポリイミド樹脂の固形分を収得し、収得されたポリイミド樹脂の固形分を第1溶媒に溶解させたポリイミド溶液を用いて製膜工程によって得ることができる。
【0042】
前記ポリアミド酸溶液をイミド化するときは、前述したように、熱イミド化法、化学イミド化法、または熱イミド化法と化学イミド化法とを併用して適用することができる。熱イミド化法と化学イミド化法とを併用する場合の具体的なイミド化の例を挙げると、得られたポリアミド酸溶液に脱水剤およびイミド化触媒を投入し、20〜180℃で1〜12時間加熱してイミド化することができる。
【0043】
前記第1溶媒は、ポリアミド酸溶液の重合の際に使用した溶媒と同一の溶媒を使用することができ、前記第2溶媒は、ポリイミド樹脂の固形分を得るために第1溶媒より極性の低いものを使用し、具体的には水、アルコール類、エーテル類およびケトン類の中から選ばれた少なくとも1種であってもよい。
【0044】
この際、前記第2溶媒の含量は、特に限定されないが、ポリアミド酸溶液の重量に対し5〜20重量部であることが好ましい。
【0045】
得られたポリイミド樹脂の固形分を濾過した後、乾燥させる条件は、第2溶媒の沸騰点を考慮に入れ、温度が50〜120℃であり、時間は3時間〜24時間であることが好ましい。その後、製膜工程において、ポリイミド樹脂の固形分が溶解しているポリイミド溶液を支持体上にキャストし、40〜400℃の温度範囲で徐々に昇温させながら1分〜8時間加熱してポリイミドフィルムを得る。
【0046】
本発明では、前述したように得られたポリイミドフィルムにもう1回熱処理工程を施してもよい。追加の熱処理工程の温度は310〜500℃が好ましく、熱処理時間は1分〜3時間が好ましい。
【0047】
前記最終熱処理の際に310℃未満で熱処理すると、末端基に置換された無水物が架橋されなくてその特性が発現しなかったためである。
【0048】
熱処理を済ませたフィルムの残留揮発成分は5%以下であり、好ましくは3%以下である。
【0049】
得られるポリイミドフィルムの厚さは、特に限定されないが、10〜250μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは25〜150μmである。
【実施例】
【0050】
<実施例1>
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器付きの1Lの反応器に窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)330gを充填した後、反応器の温度を25℃に合わせ、しかる後に、TFDB38.42g(0.12mol)を溶解させ、この溶液を25℃に維持した。ここにBPDA17.65g(0.06mol)を添加し、3時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた。この際、溶液の温度は25℃に維持した。そして、6FDA26.39g(0.0594mol)を添加し、4時間を攪拌し、無水ナジック酸0.0197g(0.0012mol)を投入して固形分の濃度が20重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0051】
ポリアミド酸溶液を常温で8時間攪拌し、イミド化触媒としてピリジン19.98g、無水酢酸24.48gを投入して30分間攪拌した後、さらに80℃で2時間攪拌して常温に冷し、これをメタノール20L入りの容器に徐々に投入して沈殿させ、沈殿した固形分を濾過して粉砕した後、80℃で真空にて6時間乾燥させて75gの固形分粉末を得、これをさらに300gのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして15wt%の溶液(粘度200poise(20Pa・s))を得た。
【0052】
反応が終了した後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、700μmにキャストし、150℃の熱風で30分以内に乾燥させた後、フィルムをステンレス板から剥離してフレームにピンで固定した。
【0053】
フィルムの固定されたフレームを熱風オーブンに入れて100℃〜330℃で2時間ゆっくり加熱した後、徐々に冷却してフレームから分離してポリイミドフィルムを得た。その後、最終熱処理工程として、さらに330℃で30分間熱処理を行った(厚さ100μm)。
【0054】
<実施例2>
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器付きの1Lの反応器に窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)330gを充填した後、反応器の温度を25℃に合わせ、しかる後に、TFDB38.42g(0.12mol)を溶解させ、この溶液を25℃に維持した。ここにBPDA17.65g(0.06mol)を添加し、3時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた。この際、溶液の温度は25℃に維持した。そして、6FDA25.59g(0.0576mol)を添加し、4時間を攪拌し、無水ナジック酸0.0788g(0.0048mol)を投入して固形分の濃度が20重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0055】
ポリアミド酸溶液を常温で8時間攪拌し、イミド化触媒としてピリジン19.98g、無水酢酸24.48gを投入して30分間攪拌した後、さらに80℃で2時間攪拌して常温に冷し、これをメタノール20L入りの容器に徐々に投入して沈殿させ、沈殿した固形分を濾過して粉砕した後、80℃で真空にて6時間乾燥させて75gの固形分粉末を得、これをさらに300gのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして15wt%の溶液(粘度52poise(5.2Pa・s))を得た。
【0056】
その後、前記実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0057】
<実施例3>
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器付きの1Lの反応器に窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)330gを充填した後、反応器の温度を25℃に合わせ、しかる後に、TFDB38.42g(0.12mol)を溶解させ、この溶液を25℃に維持した。ここにBPDA17.65g(0.06mol)を添加し、3時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた。この際、溶液の温度は25℃に維持した。そして、6FDA23.99g(0.054mol)を添加し、4時間を攪拌し、無水ナジック酸1.97g(0.012mol)を投入して固形分の濃度が20重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0058】
ポリアミド酸溶液を常温で8時間攪拌し、イミド化触媒としてピリジン19.98g、無水酢酸24.48gを投入して30分間攪拌した後、さらに80℃で2時間攪拌して常温に冷し、これをメタノール20Lの入っている容器に徐々に投入して沈殿させ、沈殿した固形分を濾過して粉砕した後、80℃で真空にて6時間乾燥させて75gの固形分粉末を得、これをさらに300gのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして15wt%の溶液(粘度23poise(2.3Pa・s))を得た。
【0059】
その後、前記実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0060】
<比較例1>
前記実施例1と同一の方法でポリイミド重合し、製膜するが、フレームにフィルムを固定し、150〜300℃で2時間ゆっくり加熱した後、徐々に冷却してフレームから分離することにより、ポリイミドフィルムを得た。その後、最終熱処理工程として、さらに300℃で30分間熱処理を行った(厚さ100μm)。
【0061】
<比較例2>
前記実施例1においてN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)を609.54g投入した。温度を25℃にし、ジアミンとしての4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)70.084gを入れて溶かした後、ここにPMDA76.34g投入し、投入が終わると、温度を25℃に維持しながら2時間攪拌した。
【0062】
攪拌が完了すると、反応器を40℃に昇温して温度を維持しながら1時間攪拌した。反応済みのポリアミド酸溶液は、固形分含量が18.5wt%であり、粘度は2570poise(257Pa・s)である。投入された単量体のモル比はPMDA100%、ODA100%である。
【0063】
このポリアミド酸溶液100gを50gの触媒溶液(イソキノリン7.2g、無水酢酸22.4g)を均一に攪拌してステンレス板に塗布した後、100μmにキャストし、150℃の熱風で5分間乾燥させた後、フィルムをステンレス板から剥離してフレームにピンで固定した。
【0064】
フィルムの固定されたフィルムを熱風オーブンに入れて100℃〜350℃で30分間ゆっくり加熱した後、徐々に冷却してフィルムをフレームから分離した。その後、最終熱処理工程として、さらに350℃で30分間熱処理を行った(厚さ25μm)。
【0065】
<比較例3>
前記実施例1においてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)611gを充填した後、反応器の温度を25℃に合わせ、しかる後に、TFDB64.046g(0.2mol)を溶解させ、この溶液を25℃に維持した。ここに6FDA88.85g(0.2mol)を添加し、固形分の濃度が20重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0066】
ポリアミド酸溶液を常温で8時間攪拌し、ピリジン31.64gおよび無水酢酸40.91gを投入して30分間攪拌した後、さらに80℃で2時間攪拌して常温に冷し、これをメタノール20Lの入っている容器に徐々に投入して沈殿させ、沈殿した固形分を濾過して粉砕した後、80℃で真空にて6時間乾燥させて136gの粉末を得、これをさらに496gのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして20wt%の溶液(粘度71poise(7.1Pa・s))を得た。
【0067】
その後、前記実施例1と同様の方法でポリイミドフィルムを製造した。
【0068】
(1)透過度
実施例で製造されたフィルムをUV分光計(Varian社、Cary100)を用いて550nmにおける透過度を測定した。
【0069】
(2)黄色度
ASTM E313規格で黄色度を測定した。
【0070】
(3)熱膨張係数(CTE)
TMA(Perkin Elmer社、Diamond TMA)を用いてTMA−Methodによって第1測定、第2測定、第3測定の3回にわたって50〜250℃における熱膨張係数を測定したが、第1測定の値を除いて第2測定、第3測定の値を平均にして値を求めた。
【0071】
(4)厚さの測定および厚さの差
ポリイミドフィルムを80℃の真空オーブンで1時間乾燥させ、当該フィルムの任意の5箇所の厚さを測定し、さらにそのフィルムの2cm×2cm試片を、100%DMAcが50mL入っている100mL規格のビーカーに10分間浸漬させた後、水で洗浄し、80℃の真空オーブンで1時間乾燥させてフィルムの任意の5箇所の厚さを測定した。下記式1によって耐溶剤性指数を計算した。
【0072】
フィルムの厚さはAnritsu Electronic Micrometerで測定した。装置の偏差は±0.5%以下である。
【数3】

式中、tはフィルムを溶媒に浸漬させる前のフィルム厚さであり、tはフィルムを極性溶媒に10分間浸漬させた後のフィルム厚さである。
【0073】
(5)白濁現象
実施例および比較例で製造されたポリイミドフィルムの2cm×2cm試片に100%DMAcを一滴滴下した後、肉眼で評価した。
○:白濁現象が発生する
×:白濁現象が発生しない。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを極性溶媒に10分間浸漬させた後のフィルム厚さとフィルムを溶媒に浸漬させる前のフィルム厚さとの差の、浸漬前のフィルム厚さに対する百分率と定義される下記式1の耐溶剤性指数が2%以内であり、黄色度が10以下であることを特徴とする、ポリイミドフィルム。
【数1】

(式中、tはフィルムを溶媒に浸漬させる前のフィルム厚さであり、tはフィルムを極性溶媒に10分間浸漬させた後のフィルム厚さである。)
【請求項2】
前記極性溶媒はジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の中から選択されたものであることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
二無水物および無水物とジアミンとが重合されたポリアミド酸で形成されたことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記無水物は前記二無水物および前記無水物の総モルに対して10mol%以下で含むことを特徴とする、請求項3に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記二無水物および無水物とジアミンとが重合されたポリアミド酸溶液を製膜工程によってポリイミドフィルムとして収得した後、収得されたポリイミドフィルムを310〜500℃で1分〜3時間熱処理したことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
フィルムの550nmにおける透過度が85%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
50〜250℃における熱膨張係数(CTE)が55ppm/℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムを含む表示素子用基板。

【公開番号】特開2011−74384(P2011−74384A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216076(P2010−216076)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】