耐火被覆構造
【課題】施工性および耐火性に優れた、建物の壁内部に設置される中空柱の耐火被覆構造を提供すること。
【解決手段】外周に少なくとも一つの平面を有する中空柱と、前記中空柱の周囲に配置された複数の石膏ボードと、前記複数の石膏ボードのうち前記中空柱の平面に配置された石膏ボードを覆う断面がコの字状の金属板と、前記中空柱の平面に配置された石膏ボードに対して平行に配置された壁材と、を少なくとも備え、
前記金属板のそれぞれの端面内側表面が、前記壁材に対して垂直に配置された石膏ボードの外側表面に対向して配置され、
前記金属板のそれぞれの端面に垂直となる前記金属板の本体外側表面が、前記壁材の内側表面と接して配置されていることを特徴とする、壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造。
【解決手段】外周に少なくとも一つの平面を有する中空柱と、前記中空柱の周囲に配置された複数の石膏ボードと、前記複数の石膏ボードのうち前記中空柱の平面に配置された石膏ボードを覆う断面がコの字状の金属板と、前記中空柱の平面に配置された石膏ボードに対して平行に配置された壁材と、を少なくとも備え、
前記金属板のそれぞれの端面内側表面が、前記壁材に対して垂直に配置された石膏ボードの外側表面に対向して配置され、
前記金属板のそれぞれの端面に垂直となる前記金属板の本体外側表面が、前記壁材の内側表面と接して配置されていることを特徴とする、壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火被覆構造に関し、詳しくは建築物の外壁、内壁、床壁、天井壁等の壁の内部に設置される中空柱の耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションやアパート等の集合住宅に代表される建物の柱やはり(梁)等ととして鉄骨が使用されている。
前記建物に耐火被覆のない鉄骨を使用した場合、火災が発生するとその炎等により鉄骨の強度が急速に損なわれるため、前記鉄骨に対して通常耐火被覆が行われる。
具体的にはH型鉄骨の周囲のうち、前記H型鉄骨のフランジ部にケイ酸カルシウム板を配置し、前記ケイ酸カルシウム板に沿って前記H型鉄骨のウェブ部に蓋をする様に亜鉛鋼板を折り曲げて配置したH型鉄骨用耐火被覆ユニットが知られている(特許文献1)。
また前記H型鉄骨以外にも建物の柱等として鋼管等の中空柱が使用される場合がある。
前記中空柱に対する耐火被覆として、鋼管の一つの面にケイ酸カルシウム板が配置され、前記鋼管の他の面に熱膨張性シートを内側に備えた金属板が配置された中空柱用の耐火被覆ユニットも知られている(特許文献2)。
【0003】
この一方、マンションやアパート等の集合住宅等のそれぞれの居住区分を区画する壁等の場合、中空柱に耐熱パネル等を配置することにより壁を形成する場合がある。この場合、前記居住区分側に前記中空柱が突出すると前記居住区分に家具等を配置する際の自由度が制限されるため前記壁内部に前記中空柱を収めることが要請される。
しかしながら前記壁内部に前記中空柱を収める際には様々な問題が生じる。
この問題点について図面を参照しつつ説明すると次の通りである。
図10は従来技術である壁200の内部に設置された中空柱1の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図であり、前記壁200を水平に切断した断面を上部から見下ろした状態を示したものである。
図10に示される様に、前記中空柱1の手前(図10の下側)および奥(図10の上側)にそれぞれ配置された二枚の15mm厚の強化石膏ボード板60により前記壁200が形成されている。
また前記中空柱1の周囲に沿って厚さ25mmの4枚のケイ酸カルシウム板70が配置されている。
【0004】
図10に示される様に、前記強化石膏ボード60の外側表面と前記ケイ酸カルシウム板70の外側表面との間に段差40が存在する。このためパテやモルタル等の充填材でこの段差40を埋める必要があり、前記壁200内部に前記中空柱1を収める際の施工性に問題がある。
【0005】
図11は従来技術である壁300の内部に設置された中空柱1の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図であり、図10の場合と同様に前記壁300を水平に切断した断面を上部から見下ろした状態を示したものである。
図11の場合は中空柱1の周囲が厚み25mmのロックウール80により被覆されている。
石膏ボード60の表面に、さらに石膏ボード90を追加設置することにより前記壁300内部に前記鋼管1を収めることはできるものの、前記壁300の表面積分の前記石膏ボード90を別途必要とする。
しかし特に小規模住宅等の場合には室内空間をできるだけ広く確保することが要求される。このため前記壁300の厚みをできるだけ小さくする必要があるが、図11に示す様に前記石膏ボード60と石膏ボード90とを重ねて使用した場合には前記壁300の厚みが大きくなるとの問題がある。
これらの問題に関連し、先に示したH型鉄骨用耐火被覆ユニット(特許文献1)や中空柱用の耐火被覆ユニット(特許文献2)の先行技術文献では、それぞれH型鉄骨や中空柱としての鋼管の耐火性を向上させる点については開示があるものの、前記壁内部に前記中空柱を収める際の問題点を解決する手段についての開示がなく、前記壁の施工性等の面で依然として問題が残る。
【特許文献1】特開2000−110273号公報
【特許文献2】特開2001−049760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の問題を解決する一つの手段として、先の図10の壁200の場合、段差40を埋めるためのパテやモルタル等の充填材に代えて、前記ケイ酸カルシウム板70の外側表面に前記ケイ酸カルシウム板70と同じ形状を有するはめ込み用の石膏ボードを別途配置することも考えられる。
しかしこの場合でも前記はめ込み用の石膏ボードの厚みが数mm異なるだけで前記石膏ボード60の外側表面との間に新たな段差が生じることになる。
また本発明者らが検討したところ、前記はめ込み用の石膏ボードを使用した場合、火災等の熱により前記はめ込み用石膏ボードが鋼管から剥離脱落し易いことも突き止めた。
【0007】
また先の図11の壁300の場合には前記石膏ボード60の配置を省略し、前記石膏ボード90のみを配置する構成も考えられる。
この構成であれば前記石膏ボード90が存在しないため、前記壁300の厚みを小さく抑えることができる。
しかしながら実際の施工現場では前記石膏ボード90の内側表面と前記ロックウール80の外側表面とが接しているとは限らず、両者に隙間がある場合がある。この場合には前記ロックウール80は前記石膏ボード90を取り付ける際の支持材として機能せず、前記石膏ボード90を取り付ける際の施工性に問題があった。
【0008】
本発明の目的は、施工性および耐火性に優れた、建物の壁内部に設置される中空柱の耐火被覆構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造の中でも、前記中空柱の周囲に配置された石膏ボードを覆う断面がコの字状の金属板を少なくとも備えた中空柱の耐火被覆構造が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
[1]外周に少なくとも一つの平面を有する中空柱と、
前記中空柱の周囲に配置された複数の石膏ボードと、
前記複数の石膏ボードのうち前記中空柱の平面に配置された石膏ボードを覆う断面がコの字状の金属板と、
前記鋼管の平面に配置された石膏ボードに対して平行に配置された壁材と、
を少なくとも備え、
前記金属板のそれぞれの端面内側表面が、前記壁材に対して垂直に配置された石膏ボードの外側表面に対向して配置され、
前記金属板のそれぞれの端面に垂直となる前記金属板の本体外側表面が、前記壁材の内側表面と接して配置されていることを特徴とする、壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造を提供するものである。
【0011】
また本発明は、
[2]前記壁材が、耐熱パネルとはめ込み用耐熱板とを含み、
前記はめ込み用耐熱板が、前記金属板の本体外側表面に配置され、
前記金属板のそれぞれの端面内側表面が、前記壁用耐熱パネルに対して垂直に配置された石膏ボードの外側表面に対向して配置され、
前記金属板のそれぞれの端面外側表面が、前記壁用耐熱パネルの側面に対向して配置され、
前記壁用耐熱パネルの側面と前記はめ込み用耐熱板の側面とが接して配置され、
前記壁用耐熱パネルの外側表面と、前記はめ込み用耐熱板の外側表面とが略同一平面上にある、上記[1]に記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0012】
また本発明は、
[3]前記はめ込み用耐熱板が、無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材を含む上記[2]に記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0013】
また本発明は、
[4]無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材が、前記金属板に配置されたことを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0014】
また本発明は、
[5]無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材が、少なくとも一つの前記石膏ボードに配置されたことを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造によれば、前記断面がコの字状の金属板を前記壁材の垂直方向に沿って前後に移動させることができるため、前記壁材の内側表面と前記金属板の本体外側表面とを接して配置することができる。
このため前記金属板は前記壁材の支持材として機能するため、前記壁材の配置が容易になり施工性に優れる。
また前記壁材が耐熱パネルとはめ込み用耐熱板を含む場合には、前記断面がコの字状の金属板を前記はめ込み用耐熱板の垂直方向に沿って前後に移動させることができるため、前記壁用耐熱パネルに対する前記はめ込み用耐熱板の位置調整が簡便となり、前記壁用耐熱パネルの外側表面と前記はめ込み用耐熱板の外側表面とを略同一平面上に簡便に配置することができることから施工性に優れる。
【0016】
また前記金属板が存在しない場合、火災の炎等による熱にさらされた前記石膏ボードは脆くなるため自重により前記石膏ボードが前記中空柱から剥離脱落する場合がある。この結果、前記中空柱が火災の炎等による熱に直接さらされるため、中空柱の強度が大きく低下する場合があった。
これに対し、本発明の前記壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造によれば、前記断面がコの字状の金属板により前記石膏ボードが保持されているため、たとえ前記はめ込み用耐熱板等が火災の炎等による熱により剥離脱落した場合でも、前記中空柱側に配置された前記石膏ボードの剥離脱落を防止することができる。これにより、前記中空柱が火災の炎等による熱に直接さらされることを防止することができることから耐火性に優れる。
【0017】
また前記金属板や前記石膏ボードには無機系耐火材および熱膨張性耐火材の少なくとも一つが配置されていることから、耐火性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に図面を参照しつつ、本発明の第一の実施態様である壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造について説明する。
図1は、第一の実施態様である壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
図1に例示された中空柱1は、その断面が正方形の中空構造を有するものであり、前記断面の一辺が100mm、厚みが2.3mmのものである。
前記中空柱1の形状に限定はなく、建物の柱やはり(梁)等に使用される市販品等を適宜採用して使用することができる。
【0019】
前記中空柱1はその外周に少なくとも一つの平面を有する多角筒、円筒、楕円筒等のものを使用することができるが、多角筒を使用することが好ましく、多角筒の中でもその断面が正方形、長方形のものを使用することがさらに好ましい。
【0020】
前記中空柱1の一辺は30〜1000mmの範囲であることが好ましい。また前記中空柱1の厚みは0.5〜20mmの範囲であることが好ましい。
【0021】
また前記中空柱1としては、例えば、鋼管、鉄管、ステンレス管、亜鉛メッキ鋼管、アルミ亜鉛合金メッキ鋼管、アルミニウム鋼管等の金属管等が挙げられるが、取り扱い性や価格の面から鋼管を使用することが好ましい。
前記鋼管の材質としては、例えば日本工業規格(JIS G 3101、JIS G 3350)等に規定される一般構造用の圧延鋼材、一般構造用の軽量形鋼、建築用構造用鋼等が挙げられる。
【0022】
図1に例示された前記中空柱1はその外周に4つの平面を有するものであるが、それぞれの平面に隙間なく複数の石膏ボードが配置されている。
火災の炎等が直接前記中空柱1にさらされることがないように前記中空柱1に配置する複数の石膏ボードは図1に示す通り、石膏ボード同士を隙間なく配置することが好ましい。
【0023】
前記石膏ボードとしては、例えば、焼石膏に鋸屑やパーライトなどの軽量材を混入し、両面に厚紙を貼って成板したもの等を挙げることができ、具体的には、普通石膏ボード(JIS A6901準拠:GB−R)、化粧石膏ボード(JIS A6911準拠:GB−D)、防水石膏ボード(JIS A6912準拠:GB−S)、強化石膏ボード(JIS A6913準拠:GB−F)、吸音石膏ボード(JIS A6301準拠:GB−P)等が挙げられる。
【0024】
図1では石膏ボードとして、厚みが12.5mmの強化石膏ボード2および厚みが15mmの強化石膏ボード3が配置されている。
【0025】
前記強化石膏ボード2,3を前記鋼管1に配置する手段としては、例えば、ボルト、ビス、ピン、タッピングねじ等による固定手段が挙げられる。
【0026】
前記強化石膏ボード2,3のうち前記中空柱1の一つの平面1aに配置された石膏ボード2を覆う様に、厚み0.3mm、断面がコの字状の金属板4が配置されている。
【0027】
図2は、前記金属板4を例示した模式斜視図である。
図2に例示する様に、前記金属板4はその断面がコの字状となっている。
前記金属板4のそれぞれの端面4a,4b内側表面(4a’,4b’)と、前記金属板4のそれぞれの端面4a,4bに垂直となる前記金属板の本体4c内側表面(4c’)が図1に例示される前記石膏ボード2を覆う面となる。
【0028】
断面がコの字状の金属板4としては、例えば、一枚の金属板の両端面を同一方向に垂直に折り曲げたもの、一枚の金属板のそれぞれの両端に対して同一方向に垂直に二枚の金属板を溶接したもの等を挙げることができる。
前記金属板4の厚みは0.1〜5mmの範囲であることが好ましい。
【0029】
前記金属板4の幅は、前記石膏ボード2の幅に合わせて適宜設定されるが、前記金属板4を前記石膏ボード2の垂直方向に移動させることのできる範囲内において前記石膏ボード2の幅に一致させることが好ましい。
【0030】
前記金属板4としては、鋼板、鉄板、ステンレス板、亜鉛メッキ鋼板、アルミ亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板等が挙げられるが、取り扱い性、価格等の面から鋼板が好ましい。
前記鋼板の材質としては先に説明した一般構造用の圧延鋼材、一般構造用の軽量形鋼、建築用構造用鋼等が挙げられる。
【0031】
再度図1に戻って説明する。
前記金属板4の外側に壁材500が配置されている。
前記壁材500としては、例えば、壁用耐熱パネル60等を挙げることができる。
前記壁用耐熱パネル60としては、例えば、セメント系パネル、無機セラミック系パネル、金属サイディング系パネル等が挙げられる。
【0032】
前記セメント系パネルとしては、例えば、硬質木片セメント板、無機繊維含有スレート板、軽量気泡コンクリート板、モルタル板、プレキャストコンクリート板等が挙げられる。
【0033】
前記無機セラミック系パネルとしては、例えば、石膏ボード、けい酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、ロックウール板、窯業系板等が挙げられる。
【0034】
また前記金属サイディング系パネルとしては、例えば、金属ボードの間に樹脂系断熱材、無機系断熱材等の少なくとも一つを有するもの等が挙げられる。
ここで前記樹脂系断熱材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル、塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、トリ酢酸セルロース等からなるものが挙げられる。自消性であって建築材として適合性がよいことからポリカーボネート、塩化ビニルが好適である。
また、無機系断熱材としては、例えば、前記セメント系パネル、無機セラミック系パネルの他、ロックウール、セラミックウール、グラスウール等の無機繊維を含むもの等を挙げることができる。
また前記金属ボードとしては、具体的には、鉄板、ステンレス板、亜鉛メッキ鋼板、アルミ亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板、アルミガラスクロス、アルミクラフト、錫箔、金箔等が挙げられる。
【0035】
前記壁用耐熱パネル60は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0036】
前記壁用耐熱パネル60の形状は、本発明に使用する壁材500の形状に応じて適宜決定されるが、長さおよび幅は通常0.3〜10mの範囲であり、厚みは5〜150mmの範囲であれば好ましい。
【0037】
前記壁材500同士の間には鋼製フレーム等の柱やはり(梁)等が設置されていて、これらの柱やはり(梁)等に前記壁用耐熱パネルが、ボルト、ビス、ピン、タッピングねじ等の固定手段により固定されている(図示せず)。
【0038】
図1に例示する様に、前記金属板4のそれぞれの端面4a,4bの内側表面が、前記複数の石膏ボードのうち前記壁材500に対して垂直に配置された石膏ボード3の外側表面に対向して配置されている。
【0039】
このため前記金属板4を前記壁材500の垂直方向に沿って前後に移動させることができる。このため前記強化石膏ボード2の外側表面と前記壁材500の内側表面との間が離れている場合であっても、前記金属板4の本体外側表面を前記壁材500の内側表面と接するように配置させることができる。
【0040】
なお、前記金属板4のそれぞれの端面4a,4bは前記強化石膏ボード3にボルト、ビス、ピン、タッピングねじ等の固定手段により固定されている(図示せず)。
また前記金属板4と前記壁材500も同様にボルト、ビス、ピン、タッピングねじ等の固定手段により固定されてる(図示せず)。
【0041】
本発明の第一の実施態様では、前記中空柱1の断面の大きさが変化した場合でも、前記壁材500の垂直方向に沿って前記金属板4を前後に移動させることにより前記金属板4の本体外側表面を前記壁材500の内側表面と接するように配置させることができることから前記壁材500の設置が容易となる。このため施工性に優れる。
【0042】
次に本発明の第二の実施態様である壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造について説明する。
図3は、第二の実施態様である前記壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
第一の実施態様の場合と比較して、熱膨張性耐火材7および8が配置されている点が異なる。
前記熱膨張性耐火材は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリ―エム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック(ブチルゴム等を含む熱膨張性耐火材)等の熱膨張性耐火材等を使用することができる。
前記熱膨張性耐火材は火災等の熱により膨張し、不燃耐火層を形成する。この不燃耐火層が前記中空柱に対する火災等の炎を遮断する。このため火災等が発生した場合であっても前記中空柱の強度が低下すること等を防止することができる。
【0043】
第二の実施態様では前記石膏ボード3に熱膨張性耐火材7(商品名フィブロック、積水化学工業社製)が配置されている。前記熱膨張性耐火材7は前記強化石膏ボード3にビスとワッシャーとを用いて固定されている。図3では前記熱膨張性耐火材7が前記金属板4を介して前記石膏ボード3に配置されているが、前記熱膨張性耐火材7を直接前記石膏ボード3に配置することもできる。
また熱膨張性耐火材8(商品名フィブロック、積水化学工業社製)が前記金属板4の内側にビスおよびワッシャーを用いて配置されている。
【0044】
次に本発明の第三の実施態様である壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造について説明する。
図4は、第三の実施態様である前記壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
第一の実施態様の場合と比較して、図1に示される前記壁材500が、第三の実施態様では図4に示されるはめ込み用耐熱板5および壁用耐熱パネル6により構成されている点が異なる。
【0045】
図4に例示されるように、第三の実施態様の場合では前記金属板4の外側にはめ込み用耐熱板5が配置されている。
前記はめ込み用耐熱板5としては、例えば、セメント、モルタル、石膏、ケイ酸カルシウム、無機セラミック等の無機系耐熱材を含むもの、熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分、熱膨張性層状無機物、リン化合物、無機充填材等からなる熱膨張性耐火材を含むもの等が挙げられる。
前記熱膨張性耐火材としては、先に例示した市販品等を使用することができる。
【0046】
また前記はめ込み用耐熱板5に対して平行に壁用耐熱パネル6が配置されている。
前記壁用耐熱パネル6は、先の第一の実施態様の場合と同様である。
【0047】
前記壁用耐熱パネル同士の間には鋼製フレーム等の柱やはり(梁)等が設置されていて、これらの柱やはり(梁)等に前記壁用耐熱パネルが、ボルト、ビス、ピン、タッピングねじ等の固定手段により固定されている(図示せず)。
【0048】
図4に例示する様に、前記金属板4のそれぞれの端面4a,4bが、前記複数の石膏ボードのうち前記鋼管1の平面1aに対して垂直に配置された石膏ボード3の外側表面と、前記壁用耐熱パネル6の側面との間に配置されている。
【0049】
このため前記金属板4を前記はめ込み用耐熱板5の垂直方向に沿って前後に移動させることができ、前記壁用耐熱パネル6の側面と前記はめ込み用耐熱板5の側面とを接して配置させることができると共に、前記壁用耐熱パネル6の外側表面と前記はめ込み用耐熱板5の外側表面とを略同一平面上に配置させることができる。
【0050】
なお、前記金属板4のそれぞれの端面4a,4bは前記強化石膏ボード3にボルト、ビス、ピン、タッピングねじ等の固定手段により固定されてる(図示せず)。
【0051】
図4では前記壁用耐熱パネル6の外側表面と前記はめ込み用耐熱板5の外側表面とが一体となって壁の表面を形成していて、前記中空柱1は壁100の内部に収容されている。
【0052】
前記中空柱1の断面の大きさが変化した場合でも、前記はめ込み用耐熱板5の垂直方向に沿って前記金属板4を前後に移動させることにより、前記壁用耐熱パネル6の外側表面と前記はめ込み用耐熱板5の外側表面とを略同一平面上に配置することが可能である。このため施工性に優れる。
【0053】
上記に説明した通り、前記断面がコの字状の金属板を使用することにより施工性に優れる耐火被覆構造が得られる。
この一方、前記断面がコの字状の金属板に代えて平面耐火板を使用することにより、特に耐火性に優れる耐火被覆構造が得られる。
次にこの耐火被覆構造の第二の発明について説明する。
【0054】
この第二の発明は、
[6]外周に少なくとも一つの平面を有する中空柱と、
前記中空柱の周囲に配置された複数の石膏ボードと、
前記複数の石膏ボードのうち前記中空柱の平面に配置された石膏ボードに配置された平面耐火板と、
前記中空柱の平面に配置された石膏ボードに対して平行に配置された壁材と、
を少なくとも備え、
前記平面耐火板の外側表面と前記壁材の内側表面とが接して配置されていることを特徴とする、壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造を提供するものである。
【0055】
また第二の発明は、
[7]前記壁材が、耐熱パネルとはめ込み用耐熱板とを含み、
前記はめ込み用耐熱板が、前記平面耐火板の外側表面に配置され、
前記壁用耐熱パネルの側面と、前記はめ込み用耐熱板の側面とが接して配置され、
前記壁用耐熱パネルの外側表面と、前記はめ込み用耐熱板の外側表面とが略同一平面上にある、上記[6]に記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0056】
また第二の発明は、
[8]前記はめ込み用耐熱板が、無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材を含む上記[7]に記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0057】
また第二の発明は、
[9]無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材が、前記平面耐火板に配置されたことを特徴とする、上記[6]〜[8]のいずれかに記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0058】
また第二の発明は、
[10]無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材が、少なくとも一つの前記石膏ボードに配置されたことを特徴とする、上記[6]〜[9]のいずれかに記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0059】
第二の発明の耐火被覆構造によれば、壁材が火災等の炎等により剥離脱落した場合でも、平面耐火板により火災等の炎等が前記中空柱の周囲に配置された複数の石膏ボードに直接接触することを防止することができる。
このため前記鋼管が火災の炎等による熱に直接さらされることを防止することができることから耐火性に優れる。
【0060】
前記第二の発明は、前記断面がコの字状の金属板に代えて平面耐火板を使用する点以外は先に説明した場合と全く同様であるため重複する説明は省略し、変更された点を中心に以下に説明する。
【0061】
前記平面耐火板としては、例えば、平面金属板、アルミガラスクロス、ガラスクロス、熱膨張性耐火材等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。
前記平面金属板は、例えば、先に説明した一般構造用の圧延鋼材、一般構造用の軽量形鋼、建築用構造用鋼等を材質とする平面鋼板が好ましい。
また平面金属板にアルミガラスクロス、ガラスクロス、熱膨張性耐火材等を合わせて使用する場合には、前記平面金属板にアルミガラスクロス等をワッシャーとビス等の固定手段を用いて固定することが好ましい。
前記熱膨張性耐火材は前記熱膨張性耐火材そのものをシート状に成形して使用することもできるが、前記アルミガラスクロス、ガラスクロス等に前記熱膨張性耐火材を溶融積層したり、含浸させたりしたもの等を使用することができる。
【0062】
図5は、第二の発明の第一の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
先の図3に例示した壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造と比較して、前記金属板4および熱膨張性耐火材7が、図5の場合ではそれぞれ平面鋼板400およびエポキシ樹脂を含む熱膨張性耐火材700(積水化学工業社製、商品名フィブロック)となっている他は、先の図3に例示される第二の実施態様の場合と同様である。
図5に例示する様に第二の発明の第一の実施態様では、石膏ボード2に平面耐火板として平面鋼板400が配置されている。
前記平面鋼板400はビスにより前記石膏ボード2に固定されている。
また、前記平面鋼板400の外側表面に接して壁材600が配置されている。前記壁材600はビスにより前記平面鋼板400に固定されている。
一方、ビスおよびワッシャーにより石膏ボード3に対してエポキシ樹脂を含む熱膨張性耐火材700が固定されている。
火災等の炎等により前記壁材の一部が剥離脱落した場合でも、前記平面耐火板である平面鋼板400が石膏ボード2を支えるため前記石膏ボード2が剥離脱落することはなく、前記中空柱1を火災等の炎等から守ることができる。このため第二の発明の第一の実施態様は耐火性に優れる。
【0063】
図6は、第二の発明の第二の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
先の図4に例示した壁内部に収容される鋼管の耐火被覆構造と比較して、前記金属板4が、図6の場合ではアルミガラスクロスを積層したブチルゴムを含む熱膨張性耐火材410となっている点が異なる。
また、エポキシ樹脂を含む熱膨張性耐火材700(積水化学工業社製、商品名フィブロック)が使用されている点が異なる。
その他は、先の図4に例示される第三の実施態様の場合と同様である。
前記アルミガラスクロスを積層したブチルゴムを含む熱膨張性耐火材410の厚みを適宜変更することにより、はめ込み用耐熱板5の外側表面と壁用耐熱パネル6の外側表面をほぼ同一平面上に配置することができることから施工性に優れる。
また火災等の炎等により、前記はめ込み用耐熱板5が一部剥離脱落した場合でも、平面耐火板としてアルミガラスクロスを積層したブチルゴムを含む熱膨張性耐火材410が配置されていることから有効に熱を遮断して記石膏ボード2が剥離脱落することを防ぐことから、前記鋼管1を火災等の炎等から守ることができる。このため第二の発明の第二の実施態様は耐火性に優れる。
【0064】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0065】
図7は、実施例1の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
図7に示す様に、断面が正方形であり、一辺の長さ100mm、厚み2.3mmの中空柱1の外周に、厚み12.5mmの強化石膏ボード20および厚み15mmの強化石膏ボード30が配置されている。前記中空柱1と前記強化石膏ボード20,30とはビスにより互いに固定されている(図示せず)。
なお実施例1では中空柱として鋼管が使用されている。
【0066】
また厚み12.5mmの前記強化石膏ボード20を覆う様に、厚み0.3mm、断面がコの字状の金属板4が配置されている。前記金属板4として実施例1では鋼板が使用されている。
前記金属板4の外側にはめ込み用耐熱板として厚み15mmの強化石膏ボード50が配置されている。前記強化石膏ボード50は前記金属板4の内側からビスにより前記鋼板4に固定されている(図示せず)。
【0067】
壁用耐熱パネル6の外側表面と、厚み15mmの強化石膏ボード50の外側表面とが略同一平面上となる様に、厚み15mmの前記強化石膏ボード30に前記金属板4の端面4a,4bがビスにより固定されている(図示せず)。
【0068】
また厚み15mmの前記強化石膏ボード30に厚み2.5mmの熱膨張性耐火材7(商品名フィブロック、積水化学工業社製)が配置されている。前記熱膨張性耐火材7は前記強化石膏ボード30にビスとワッシャーとを用いて固定されている。図7では前記熱膨張性耐火材7は前記鋼板4を介して前記強化石膏ボード30に配置されているが、前記熱膨張性耐火材7を直接前記強化石膏ボード30に配置することもできる。
【0069】
また壁用耐熱パネル6が前記強化石膏ボード50に対して平行に配置されている。実施例1に使用した前記壁用耐熱パネル6は軽量気泡コンクリート板であり、前記壁用耐熱パネル5の側面と前記強化石膏ボード50の側面とが互いに接して配置されていて、前記壁用耐熱パネル6の外側表面と前記強化石膏ボード50の外側表面が略同一平面上に配置されている。
【0070】
次に実施例1の耐火被覆構造の耐火試験を実施した。
より厳しい条件で試験を行うため、図7に示された前記壁用耐熱パネル6を取り外した状態で、ISO834に準拠して一時間の耐火試験を実施した。
この結果、図7の中空柱1として使用した鋼管の平均温度は502℃であった。
【実施例2】
【0071】
図8は、実施例2の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
実施例2の耐火被覆構造は、実施例1の場合と比較して、厚み2mmの熱膨張性耐火材8(商品名フィブロック、積水化学工業社製)を前記金属板4の内側にビスおよびワッシャーを用いて配置した以外は実施例1の場合と同様である。
【0072】
実施例2の耐火被覆構造の耐火試験を実施例1の場合と同様に実施したところ、図8の中空柱1として使用した鋼管の平均温度は412℃であった。
【比較例】
【0073】
図9は、比較例の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
比較例の耐火被覆構造は、実施例1の場合と比較して、断面がコの字状の鋼板を省略した以外は実施例1の場合と同様である。
比較例の耐火被覆構造の耐火試験を実施例1の場合と同様に実施したところ、図9の中空柱1として使用した鋼管の平均温度は564℃であった。
【0074】
また試験中、図9に示す強化石膏ボード20,50が自重により一部剥離脱落し、前記鋼管の表面が見える状態であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第一の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
【図2】コの字状の鋼板を例示した模式斜視図である。
【図3】第二の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
【図4】第三の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
【図5】第二の発明の第一の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
【図6】第二の発明の第二の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
【図7】実施例1の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
【図8】実施例2の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
【図9】比較例の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
【図10】従来技術である壁の内部に設置された鋼管の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
【図11】従来技術である壁の内部に設置された鋼管の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 中空柱
1a 中空柱の一平面
2、3 強化せっこうボード
4 断面がコの字状の金属板
4a、4b 金属板の端面
4a’、4b’金属板の端面の内側表面
4c 金属板の本体
4c’金属板の本体の内側表面
5 はめ込み用耐熱板
6、60 壁用耐熱パネル
7、8 熱膨張性耐火材
20、30、50、60、90 強化せっこうボード
40 段差
70 ケイ酸カルシウム板
80 ロックウール
100、110、120、200、300、500、600、610 壁
400 平面鋼板
410 アルミガラスクロスを積層したブチルゴムを含む熱膨張性耐火材
700 エポキシ樹脂を含む熱膨張性耐火材
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火被覆構造に関し、詳しくは建築物の外壁、内壁、床壁、天井壁等の壁の内部に設置される中空柱の耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションやアパート等の集合住宅に代表される建物の柱やはり(梁)等ととして鉄骨が使用されている。
前記建物に耐火被覆のない鉄骨を使用した場合、火災が発生するとその炎等により鉄骨の強度が急速に損なわれるため、前記鉄骨に対して通常耐火被覆が行われる。
具体的にはH型鉄骨の周囲のうち、前記H型鉄骨のフランジ部にケイ酸カルシウム板を配置し、前記ケイ酸カルシウム板に沿って前記H型鉄骨のウェブ部に蓋をする様に亜鉛鋼板を折り曲げて配置したH型鉄骨用耐火被覆ユニットが知られている(特許文献1)。
また前記H型鉄骨以外にも建物の柱等として鋼管等の中空柱が使用される場合がある。
前記中空柱に対する耐火被覆として、鋼管の一つの面にケイ酸カルシウム板が配置され、前記鋼管の他の面に熱膨張性シートを内側に備えた金属板が配置された中空柱用の耐火被覆ユニットも知られている(特許文献2)。
【0003】
この一方、マンションやアパート等の集合住宅等のそれぞれの居住区分を区画する壁等の場合、中空柱に耐熱パネル等を配置することにより壁を形成する場合がある。この場合、前記居住区分側に前記中空柱が突出すると前記居住区分に家具等を配置する際の自由度が制限されるため前記壁内部に前記中空柱を収めることが要請される。
しかしながら前記壁内部に前記中空柱を収める際には様々な問題が生じる。
この問題点について図面を参照しつつ説明すると次の通りである。
図10は従来技術である壁200の内部に設置された中空柱1の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図であり、前記壁200を水平に切断した断面を上部から見下ろした状態を示したものである。
図10に示される様に、前記中空柱1の手前(図10の下側)および奥(図10の上側)にそれぞれ配置された二枚の15mm厚の強化石膏ボード板60により前記壁200が形成されている。
また前記中空柱1の周囲に沿って厚さ25mmの4枚のケイ酸カルシウム板70が配置されている。
【0004】
図10に示される様に、前記強化石膏ボード60の外側表面と前記ケイ酸カルシウム板70の外側表面との間に段差40が存在する。このためパテやモルタル等の充填材でこの段差40を埋める必要があり、前記壁200内部に前記中空柱1を収める際の施工性に問題がある。
【0005】
図11は従来技術である壁300の内部に設置された中空柱1の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図であり、図10の場合と同様に前記壁300を水平に切断した断面を上部から見下ろした状態を示したものである。
図11の場合は中空柱1の周囲が厚み25mmのロックウール80により被覆されている。
石膏ボード60の表面に、さらに石膏ボード90を追加設置することにより前記壁300内部に前記鋼管1を収めることはできるものの、前記壁300の表面積分の前記石膏ボード90を別途必要とする。
しかし特に小規模住宅等の場合には室内空間をできるだけ広く確保することが要求される。このため前記壁300の厚みをできるだけ小さくする必要があるが、図11に示す様に前記石膏ボード60と石膏ボード90とを重ねて使用した場合には前記壁300の厚みが大きくなるとの問題がある。
これらの問題に関連し、先に示したH型鉄骨用耐火被覆ユニット(特許文献1)や中空柱用の耐火被覆ユニット(特許文献2)の先行技術文献では、それぞれH型鉄骨や中空柱としての鋼管の耐火性を向上させる点については開示があるものの、前記壁内部に前記中空柱を収める際の問題点を解決する手段についての開示がなく、前記壁の施工性等の面で依然として問題が残る。
【特許文献1】特開2000−110273号公報
【特許文献2】特開2001−049760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の問題を解決する一つの手段として、先の図10の壁200の場合、段差40を埋めるためのパテやモルタル等の充填材に代えて、前記ケイ酸カルシウム板70の外側表面に前記ケイ酸カルシウム板70と同じ形状を有するはめ込み用の石膏ボードを別途配置することも考えられる。
しかしこの場合でも前記はめ込み用の石膏ボードの厚みが数mm異なるだけで前記石膏ボード60の外側表面との間に新たな段差が生じることになる。
また本発明者らが検討したところ、前記はめ込み用の石膏ボードを使用した場合、火災等の熱により前記はめ込み用石膏ボードが鋼管から剥離脱落し易いことも突き止めた。
【0007】
また先の図11の壁300の場合には前記石膏ボード60の配置を省略し、前記石膏ボード90のみを配置する構成も考えられる。
この構成であれば前記石膏ボード90が存在しないため、前記壁300の厚みを小さく抑えることができる。
しかしながら実際の施工現場では前記石膏ボード90の内側表面と前記ロックウール80の外側表面とが接しているとは限らず、両者に隙間がある場合がある。この場合には前記ロックウール80は前記石膏ボード90を取り付ける際の支持材として機能せず、前記石膏ボード90を取り付ける際の施工性に問題があった。
【0008】
本発明の目的は、施工性および耐火性に優れた、建物の壁内部に設置される中空柱の耐火被覆構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造の中でも、前記中空柱の周囲に配置された石膏ボードを覆う断面がコの字状の金属板を少なくとも備えた中空柱の耐火被覆構造が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
[1]外周に少なくとも一つの平面を有する中空柱と、
前記中空柱の周囲に配置された複数の石膏ボードと、
前記複数の石膏ボードのうち前記中空柱の平面に配置された石膏ボードを覆う断面がコの字状の金属板と、
前記鋼管の平面に配置された石膏ボードに対して平行に配置された壁材と、
を少なくとも備え、
前記金属板のそれぞれの端面内側表面が、前記壁材に対して垂直に配置された石膏ボードの外側表面に対向して配置され、
前記金属板のそれぞれの端面に垂直となる前記金属板の本体外側表面が、前記壁材の内側表面と接して配置されていることを特徴とする、壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造を提供するものである。
【0011】
また本発明は、
[2]前記壁材が、耐熱パネルとはめ込み用耐熱板とを含み、
前記はめ込み用耐熱板が、前記金属板の本体外側表面に配置され、
前記金属板のそれぞれの端面内側表面が、前記壁用耐熱パネルに対して垂直に配置された石膏ボードの外側表面に対向して配置され、
前記金属板のそれぞれの端面外側表面が、前記壁用耐熱パネルの側面に対向して配置され、
前記壁用耐熱パネルの側面と前記はめ込み用耐熱板の側面とが接して配置され、
前記壁用耐熱パネルの外側表面と、前記はめ込み用耐熱板の外側表面とが略同一平面上にある、上記[1]に記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0012】
また本発明は、
[3]前記はめ込み用耐熱板が、無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材を含む上記[2]に記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0013】
また本発明は、
[4]無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材が、前記金属板に配置されたことを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0014】
また本発明は、
[5]無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材が、少なくとも一つの前記石膏ボードに配置されたことを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造によれば、前記断面がコの字状の金属板を前記壁材の垂直方向に沿って前後に移動させることができるため、前記壁材の内側表面と前記金属板の本体外側表面とを接して配置することができる。
このため前記金属板は前記壁材の支持材として機能するため、前記壁材の配置が容易になり施工性に優れる。
また前記壁材が耐熱パネルとはめ込み用耐熱板を含む場合には、前記断面がコの字状の金属板を前記はめ込み用耐熱板の垂直方向に沿って前後に移動させることができるため、前記壁用耐熱パネルに対する前記はめ込み用耐熱板の位置調整が簡便となり、前記壁用耐熱パネルの外側表面と前記はめ込み用耐熱板の外側表面とを略同一平面上に簡便に配置することができることから施工性に優れる。
【0016】
また前記金属板が存在しない場合、火災の炎等による熱にさらされた前記石膏ボードは脆くなるため自重により前記石膏ボードが前記中空柱から剥離脱落する場合がある。この結果、前記中空柱が火災の炎等による熱に直接さらされるため、中空柱の強度が大きく低下する場合があった。
これに対し、本発明の前記壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造によれば、前記断面がコの字状の金属板により前記石膏ボードが保持されているため、たとえ前記はめ込み用耐熱板等が火災の炎等による熱により剥離脱落した場合でも、前記中空柱側に配置された前記石膏ボードの剥離脱落を防止することができる。これにより、前記中空柱が火災の炎等による熱に直接さらされることを防止することができることから耐火性に優れる。
【0017】
また前記金属板や前記石膏ボードには無機系耐火材および熱膨張性耐火材の少なくとも一つが配置されていることから、耐火性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に図面を参照しつつ、本発明の第一の実施態様である壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造について説明する。
図1は、第一の実施態様である壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
図1に例示された中空柱1は、その断面が正方形の中空構造を有するものであり、前記断面の一辺が100mm、厚みが2.3mmのものである。
前記中空柱1の形状に限定はなく、建物の柱やはり(梁)等に使用される市販品等を適宜採用して使用することができる。
【0019】
前記中空柱1はその外周に少なくとも一つの平面を有する多角筒、円筒、楕円筒等のものを使用することができるが、多角筒を使用することが好ましく、多角筒の中でもその断面が正方形、長方形のものを使用することがさらに好ましい。
【0020】
前記中空柱1の一辺は30〜1000mmの範囲であることが好ましい。また前記中空柱1の厚みは0.5〜20mmの範囲であることが好ましい。
【0021】
また前記中空柱1としては、例えば、鋼管、鉄管、ステンレス管、亜鉛メッキ鋼管、アルミ亜鉛合金メッキ鋼管、アルミニウム鋼管等の金属管等が挙げられるが、取り扱い性や価格の面から鋼管を使用することが好ましい。
前記鋼管の材質としては、例えば日本工業規格(JIS G 3101、JIS G 3350)等に規定される一般構造用の圧延鋼材、一般構造用の軽量形鋼、建築用構造用鋼等が挙げられる。
【0022】
図1に例示された前記中空柱1はその外周に4つの平面を有するものであるが、それぞれの平面に隙間なく複数の石膏ボードが配置されている。
火災の炎等が直接前記中空柱1にさらされることがないように前記中空柱1に配置する複数の石膏ボードは図1に示す通り、石膏ボード同士を隙間なく配置することが好ましい。
【0023】
前記石膏ボードとしては、例えば、焼石膏に鋸屑やパーライトなどの軽量材を混入し、両面に厚紙を貼って成板したもの等を挙げることができ、具体的には、普通石膏ボード(JIS A6901準拠:GB−R)、化粧石膏ボード(JIS A6911準拠:GB−D)、防水石膏ボード(JIS A6912準拠:GB−S)、強化石膏ボード(JIS A6913準拠:GB−F)、吸音石膏ボード(JIS A6301準拠:GB−P)等が挙げられる。
【0024】
図1では石膏ボードとして、厚みが12.5mmの強化石膏ボード2および厚みが15mmの強化石膏ボード3が配置されている。
【0025】
前記強化石膏ボード2,3を前記鋼管1に配置する手段としては、例えば、ボルト、ビス、ピン、タッピングねじ等による固定手段が挙げられる。
【0026】
前記強化石膏ボード2,3のうち前記中空柱1の一つの平面1aに配置された石膏ボード2を覆う様に、厚み0.3mm、断面がコの字状の金属板4が配置されている。
【0027】
図2は、前記金属板4を例示した模式斜視図である。
図2に例示する様に、前記金属板4はその断面がコの字状となっている。
前記金属板4のそれぞれの端面4a,4b内側表面(4a’,4b’)と、前記金属板4のそれぞれの端面4a,4bに垂直となる前記金属板の本体4c内側表面(4c’)が図1に例示される前記石膏ボード2を覆う面となる。
【0028】
断面がコの字状の金属板4としては、例えば、一枚の金属板の両端面を同一方向に垂直に折り曲げたもの、一枚の金属板のそれぞれの両端に対して同一方向に垂直に二枚の金属板を溶接したもの等を挙げることができる。
前記金属板4の厚みは0.1〜5mmの範囲であることが好ましい。
【0029】
前記金属板4の幅は、前記石膏ボード2の幅に合わせて適宜設定されるが、前記金属板4を前記石膏ボード2の垂直方向に移動させることのできる範囲内において前記石膏ボード2の幅に一致させることが好ましい。
【0030】
前記金属板4としては、鋼板、鉄板、ステンレス板、亜鉛メッキ鋼板、アルミ亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板等が挙げられるが、取り扱い性、価格等の面から鋼板が好ましい。
前記鋼板の材質としては先に説明した一般構造用の圧延鋼材、一般構造用の軽量形鋼、建築用構造用鋼等が挙げられる。
【0031】
再度図1に戻って説明する。
前記金属板4の外側に壁材500が配置されている。
前記壁材500としては、例えば、壁用耐熱パネル60等を挙げることができる。
前記壁用耐熱パネル60としては、例えば、セメント系パネル、無機セラミック系パネル、金属サイディング系パネル等が挙げられる。
【0032】
前記セメント系パネルとしては、例えば、硬質木片セメント板、無機繊維含有スレート板、軽量気泡コンクリート板、モルタル板、プレキャストコンクリート板等が挙げられる。
【0033】
前記無機セラミック系パネルとしては、例えば、石膏ボード、けい酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、ロックウール板、窯業系板等が挙げられる。
【0034】
また前記金属サイディング系パネルとしては、例えば、金属ボードの間に樹脂系断熱材、無機系断熱材等の少なくとも一つを有するもの等が挙げられる。
ここで前記樹脂系断熱材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル、塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、トリ酢酸セルロース等からなるものが挙げられる。自消性であって建築材として適合性がよいことからポリカーボネート、塩化ビニルが好適である。
また、無機系断熱材としては、例えば、前記セメント系パネル、無機セラミック系パネルの他、ロックウール、セラミックウール、グラスウール等の無機繊維を含むもの等を挙げることができる。
また前記金属ボードとしては、具体的には、鉄板、ステンレス板、亜鉛メッキ鋼板、アルミ亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板、アルミガラスクロス、アルミクラフト、錫箔、金箔等が挙げられる。
【0035】
前記壁用耐熱パネル60は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0036】
前記壁用耐熱パネル60の形状は、本発明に使用する壁材500の形状に応じて適宜決定されるが、長さおよび幅は通常0.3〜10mの範囲であり、厚みは5〜150mmの範囲であれば好ましい。
【0037】
前記壁材500同士の間には鋼製フレーム等の柱やはり(梁)等が設置されていて、これらの柱やはり(梁)等に前記壁用耐熱パネルが、ボルト、ビス、ピン、タッピングねじ等の固定手段により固定されている(図示せず)。
【0038】
図1に例示する様に、前記金属板4のそれぞれの端面4a,4bの内側表面が、前記複数の石膏ボードのうち前記壁材500に対して垂直に配置された石膏ボード3の外側表面に対向して配置されている。
【0039】
このため前記金属板4を前記壁材500の垂直方向に沿って前後に移動させることができる。このため前記強化石膏ボード2の外側表面と前記壁材500の内側表面との間が離れている場合であっても、前記金属板4の本体外側表面を前記壁材500の内側表面と接するように配置させることができる。
【0040】
なお、前記金属板4のそれぞれの端面4a,4bは前記強化石膏ボード3にボルト、ビス、ピン、タッピングねじ等の固定手段により固定されている(図示せず)。
また前記金属板4と前記壁材500も同様にボルト、ビス、ピン、タッピングねじ等の固定手段により固定されてる(図示せず)。
【0041】
本発明の第一の実施態様では、前記中空柱1の断面の大きさが変化した場合でも、前記壁材500の垂直方向に沿って前記金属板4を前後に移動させることにより前記金属板4の本体外側表面を前記壁材500の内側表面と接するように配置させることができることから前記壁材500の設置が容易となる。このため施工性に優れる。
【0042】
次に本発明の第二の実施態様である壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造について説明する。
図3は、第二の実施態様である前記壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
第一の実施態様の場合と比較して、熱膨張性耐火材7および8が配置されている点が異なる。
前記熱膨張性耐火材は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリ―エム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック(ブチルゴム等を含む熱膨張性耐火材)等の熱膨張性耐火材等を使用することができる。
前記熱膨張性耐火材は火災等の熱により膨張し、不燃耐火層を形成する。この不燃耐火層が前記中空柱に対する火災等の炎を遮断する。このため火災等が発生した場合であっても前記中空柱の強度が低下すること等を防止することができる。
【0043】
第二の実施態様では前記石膏ボード3に熱膨張性耐火材7(商品名フィブロック、積水化学工業社製)が配置されている。前記熱膨張性耐火材7は前記強化石膏ボード3にビスとワッシャーとを用いて固定されている。図3では前記熱膨張性耐火材7が前記金属板4を介して前記石膏ボード3に配置されているが、前記熱膨張性耐火材7を直接前記石膏ボード3に配置することもできる。
また熱膨張性耐火材8(商品名フィブロック、積水化学工業社製)が前記金属板4の内側にビスおよびワッシャーを用いて配置されている。
【0044】
次に本発明の第三の実施態様である壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造について説明する。
図4は、第三の実施態様である前記壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
第一の実施態様の場合と比較して、図1に示される前記壁材500が、第三の実施態様では図4に示されるはめ込み用耐熱板5および壁用耐熱パネル6により構成されている点が異なる。
【0045】
図4に例示されるように、第三の実施態様の場合では前記金属板4の外側にはめ込み用耐熱板5が配置されている。
前記はめ込み用耐熱板5としては、例えば、セメント、モルタル、石膏、ケイ酸カルシウム、無機セラミック等の無機系耐熱材を含むもの、熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分、熱膨張性層状無機物、リン化合物、無機充填材等からなる熱膨張性耐火材を含むもの等が挙げられる。
前記熱膨張性耐火材としては、先に例示した市販品等を使用することができる。
【0046】
また前記はめ込み用耐熱板5に対して平行に壁用耐熱パネル6が配置されている。
前記壁用耐熱パネル6は、先の第一の実施態様の場合と同様である。
【0047】
前記壁用耐熱パネル同士の間には鋼製フレーム等の柱やはり(梁)等が設置されていて、これらの柱やはり(梁)等に前記壁用耐熱パネルが、ボルト、ビス、ピン、タッピングねじ等の固定手段により固定されている(図示せず)。
【0048】
図4に例示する様に、前記金属板4のそれぞれの端面4a,4bが、前記複数の石膏ボードのうち前記鋼管1の平面1aに対して垂直に配置された石膏ボード3の外側表面と、前記壁用耐熱パネル6の側面との間に配置されている。
【0049】
このため前記金属板4を前記はめ込み用耐熱板5の垂直方向に沿って前後に移動させることができ、前記壁用耐熱パネル6の側面と前記はめ込み用耐熱板5の側面とを接して配置させることができると共に、前記壁用耐熱パネル6の外側表面と前記はめ込み用耐熱板5の外側表面とを略同一平面上に配置させることができる。
【0050】
なお、前記金属板4のそれぞれの端面4a,4bは前記強化石膏ボード3にボルト、ビス、ピン、タッピングねじ等の固定手段により固定されてる(図示せず)。
【0051】
図4では前記壁用耐熱パネル6の外側表面と前記はめ込み用耐熱板5の外側表面とが一体となって壁の表面を形成していて、前記中空柱1は壁100の内部に収容されている。
【0052】
前記中空柱1の断面の大きさが変化した場合でも、前記はめ込み用耐熱板5の垂直方向に沿って前記金属板4を前後に移動させることにより、前記壁用耐熱パネル6の外側表面と前記はめ込み用耐熱板5の外側表面とを略同一平面上に配置することが可能である。このため施工性に優れる。
【0053】
上記に説明した通り、前記断面がコの字状の金属板を使用することにより施工性に優れる耐火被覆構造が得られる。
この一方、前記断面がコの字状の金属板に代えて平面耐火板を使用することにより、特に耐火性に優れる耐火被覆構造が得られる。
次にこの耐火被覆構造の第二の発明について説明する。
【0054】
この第二の発明は、
[6]外周に少なくとも一つの平面を有する中空柱と、
前記中空柱の周囲に配置された複数の石膏ボードと、
前記複数の石膏ボードのうち前記中空柱の平面に配置された石膏ボードに配置された平面耐火板と、
前記中空柱の平面に配置された石膏ボードに対して平行に配置された壁材と、
を少なくとも備え、
前記平面耐火板の外側表面と前記壁材の内側表面とが接して配置されていることを特徴とする、壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造を提供するものである。
【0055】
また第二の発明は、
[7]前記壁材が、耐熱パネルとはめ込み用耐熱板とを含み、
前記はめ込み用耐熱板が、前記平面耐火板の外側表面に配置され、
前記壁用耐熱パネルの側面と、前記はめ込み用耐熱板の側面とが接して配置され、
前記壁用耐熱パネルの外側表面と、前記はめ込み用耐熱板の外側表面とが略同一平面上にある、上記[6]に記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0056】
また第二の発明は、
[8]前記はめ込み用耐熱板が、無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材を含む上記[7]に記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0057】
また第二の発明は、
[9]無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材が、前記平面耐火板に配置されたことを特徴とする、上記[6]〜[8]のいずれかに記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0058】
また第二の発明は、
[10]無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材が、少なくとも一つの前記石膏ボードに配置されたことを特徴とする、上記[6]〜[9]のいずれかに記載の耐火被覆構造を提供するものである。
【0059】
第二の発明の耐火被覆構造によれば、壁材が火災等の炎等により剥離脱落した場合でも、平面耐火板により火災等の炎等が前記中空柱の周囲に配置された複数の石膏ボードに直接接触することを防止することができる。
このため前記鋼管が火災の炎等による熱に直接さらされることを防止することができることから耐火性に優れる。
【0060】
前記第二の発明は、前記断面がコの字状の金属板に代えて平面耐火板を使用する点以外は先に説明した場合と全く同様であるため重複する説明は省略し、変更された点を中心に以下に説明する。
【0061】
前記平面耐火板としては、例えば、平面金属板、アルミガラスクロス、ガラスクロス、熱膨張性耐火材等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。
前記平面金属板は、例えば、先に説明した一般構造用の圧延鋼材、一般構造用の軽量形鋼、建築用構造用鋼等を材質とする平面鋼板が好ましい。
また平面金属板にアルミガラスクロス、ガラスクロス、熱膨張性耐火材等を合わせて使用する場合には、前記平面金属板にアルミガラスクロス等をワッシャーとビス等の固定手段を用いて固定することが好ましい。
前記熱膨張性耐火材は前記熱膨張性耐火材そのものをシート状に成形して使用することもできるが、前記アルミガラスクロス、ガラスクロス等に前記熱膨張性耐火材を溶融積層したり、含浸させたりしたもの等を使用することができる。
【0062】
図5は、第二の発明の第一の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
先の図3に例示した壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造と比較して、前記金属板4および熱膨張性耐火材7が、図5の場合ではそれぞれ平面鋼板400およびエポキシ樹脂を含む熱膨張性耐火材700(積水化学工業社製、商品名フィブロック)となっている他は、先の図3に例示される第二の実施態様の場合と同様である。
図5に例示する様に第二の発明の第一の実施態様では、石膏ボード2に平面耐火板として平面鋼板400が配置されている。
前記平面鋼板400はビスにより前記石膏ボード2に固定されている。
また、前記平面鋼板400の外側表面に接して壁材600が配置されている。前記壁材600はビスにより前記平面鋼板400に固定されている。
一方、ビスおよびワッシャーにより石膏ボード3に対してエポキシ樹脂を含む熱膨張性耐火材700が固定されている。
火災等の炎等により前記壁材の一部が剥離脱落した場合でも、前記平面耐火板である平面鋼板400が石膏ボード2を支えるため前記石膏ボード2が剥離脱落することはなく、前記中空柱1を火災等の炎等から守ることができる。このため第二の発明の第一の実施態様は耐火性に優れる。
【0063】
図6は、第二の発明の第二の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
先の図4に例示した壁内部に収容される鋼管の耐火被覆構造と比較して、前記金属板4が、図6の場合ではアルミガラスクロスを積層したブチルゴムを含む熱膨張性耐火材410となっている点が異なる。
また、エポキシ樹脂を含む熱膨張性耐火材700(積水化学工業社製、商品名フィブロック)が使用されている点が異なる。
その他は、先の図4に例示される第三の実施態様の場合と同様である。
前記アルミガラスクロスを積層したブチルゴムを含む熱膨張性耐火材410の厚みを適宜変更することにより、はめ込み用耐熱板5の外側表面と壁用耐熱パネル6の外側表面をほぼ同一平面上に配置することができることから施工性に優れる。
また火災等の炎等により、前記はめ込み用耐熱板5が一部剥離脱落した場合でも、平面耐火板としてアルミガラスクロスを積層したブチルゴムを含む熱膨張性耐火材410が配置されていることから有効に熱を遮断して記石膏ボード2が剥離脱落することを防ぐことから、前記鋼管1を火災等の炎等から守ることができる。このため第二の発明の第二の実施態様は耐火性に優れる。
【0064】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0065】
図7は、実施例1の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
図7に示す様に、断面が正方形であり、一辺の長さ100mm、厚み2.3mmの中空柱1の外周に、厚み12.5mmの強化石膏ボード20および厚み15mmの強化石膏ボード30が配置されている。前記中空柱1と前記強化石膏ボード20,30とはビスにより互いに固定されている(図示せず)。
なお実施例1では中空柱として鋼管が使用されている。
【0066】
また厚み12.5mmの前記強化石膏ボード20を覆う様に、厚み0.3mm、断面がコの字状の金属板4が配置されている。前記金属板4として実施例1では鋼板が使用されている。
前記金属板4の外側にはめ込み用耐熱板として厚み15mmの強化石膏ボード50が配置されている。前記強化石膏ボード50は前記金属板4の内側からビスにより前記鋼板4に固定されている(図示せず)。
【0067】
壁用耐熱パネル6の外側表面と、厚み15mmの強化石膏ボード50の外側表面とが略同一平面上となる様に、厚み15mmの前記強化石膏ボード30に前記金属板4の端面4a,4bがビスにより固定されている(図示せず)。
【0068】
また厚み15mmの前記強化石膏ボード30に厚み2.5mmの熱膨張性耐火材7(商品名フィブロック、積水化学工業社製)が配置されている。前記熱膨張性耐火材7は前記強化石膏ボード30にビスとワッシャーとを用いて固定されている。図7では前記熱膨張性耐火材7は前記鋼板4を介して前記強化石膏ボード30に配置されているが、前記熱膨張性耐火材7を直接前記強化石膏ボード30に配置することもできる。
【0069】
また壁用耐熱パネル6が前記強化石膏ボード50に対して平行に配置されている。実施例1に使用した前記壁用耐熱パネル6は軽量気泡コンクリート板であり、前記壁用耐熱パネル5の側面と前記強化石膏ボード50の側面とが互いに接して配置されていて、前記壁用耐熱パネル6の外側表面と前記強化石膏ボード50の外側表面が略同一平面上に配置されている。
【0070】
次に実施例1の耐火被覆構造の耐火試験を実施した。
より厳しい条件で試験を行うため、図7に示された前記壁用耐熱パネル6を取り外した状態で、ISO834に準拠して一時間の耐火試験を実施した。
この結果、図7の中空柱1として使用した鋼管の平均温度は502℃であった。
【実施例2】
【0071】
図8は、実施例2の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
実施例2の耐火被覆構造は、実施例1の場合と比較して、厚み2mmの熱膨張性耐火材8(商品名フィブロック、積水化学工業社製)を前記金属板4の内側にビスおよびワッシャーを用いて配置した以外は実施例1の場合と同様である。
【0072】
実施例2の耐火被覆構造の耐火試験を実施例1の場合と同様に実施したところ、図8の中空柱1として使用した鋼管の平均温度は412℃であった。
【比較例】
【0073】
図9は、比較例の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
比較例の耐火被覆構造は、実施例1の場合と比較して、断面がコの字状の鋼板を省略した以外は実施例1の場合と同様である。
比較例の耐火被覆構造の耐火試験を実施例1の場合と同様に実施したところ、図9の中空柱1として使用した鋼管の平均温度は564℃であった。
【0074】
また試験中、図9に示す強化石膏ボード20,50が自重により一部剥離脱落し、前記鋼管の表面が見える状態であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第一の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
【図2】コの字状の鋼板を例示した模式斜視図である。
【図3】第二の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
【図4】第三の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
【図5】第二の発明の第一の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
【図6】第二の発明の第二の実施態様を説明するための模式要部断面図である。
【図7】実施例1の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
【図8】実施例2の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
【図9】比較例の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
【図10】従来技術である壁の内部に設置された鋼管の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
【図11】従来技術である壁の内部に設置された鋼管の耐火被覆構造を説明するための模式要部断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 中空柱
1a 中空柱の一平面
2、3 強化せっこうボード
4 断面がコの字状の金属板
4a、4b 金属板の端面
4a’、4b’金属板の端面の内側表面
4c 金属板の本体
4c’金属板の本体の内側表面
5 はめ込み用耐熱板
6、60 壁用耐熱パネル
7、8 熱膨張性耐火材
20、30、50、60、90 強化せっこうボード
40 段差
70 ケイ酸カルシウム板
80 ロックウール
100、110、120、200、300、500、600、610 壁
400 平面鋼板
410 アルミガラスクロスを積層したブチルゴムを含む熱膨張性耐火材
700 エポキシ樹脂を含む熱膨張性耐火材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に少なくとも一つの平面を有する中空柱と、
前記中空柱の周囲に配置された複数の石膏ボードと、
前記複数の石膏ボードのうち前記中空柱の平面に配置された石膏ボードを覆う断面がコの字状の金属板と、
前記中空柱の平面に配置された石膏ボードに対して平行に配置された壁材と、
を少なくとも備え、
前記金属板のそれぞれの端面内側表面が、前記壁材に対して垂直に配置された石膏ボードの外側表面に対向して配置され、
前記金属板のそれぞれの端面に垂直となる前記金属板の本体外側表面が、前記壁材の内側表面と接して配置されていることを特徴とする、壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造。
【請求項2】
前記壁材が、耐熱パネルとはめ込み用耐熱板とを含み、
前記はめ込み用耐熱板が、前記金属板の本体外側表面に配置され、
前記金属板のそれぞれの端面内側表面が、前記壁用耐熱パネルに対して垂直に配置された石膏ボードの外側表面に対向して配置され、
前記金属板のそれぞれの端面外側表面が、前記壁用耐熱パネルの側面に対向して配置され、
前記壁用耐熱パネルの側面と前記はめ込み用耐熱板の側面とが接して配置され、
前記壁用耐熱パネルの外側表面と、前記はめ込み用耐熱板の外側表面とが略同一平面上にある、請求項1に記載の耐火被覆構造。
【請求項3】
前記はめ込み用耐熱板が、無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材を含む、請求項2に記載の耐火被覆構造。
【請求項4】
無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材が、前記中空柱に配置されている、請求項1〜3のいずれかに記載の耐火被覆構造。
【請求項5】
無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材が、少なくとも一つの前記石膏ボードに配置されたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の耐火被覆構造。
【請求項1】
外周に少なくとも一つの平面を有する中空柱と、
前記中空柱の周囲に配置された複数の石膏ボードと、
前記複数の石膏ボードのうち前記中空柱の平面に配置された石膏ボードを覆う断面がコの字状の金属板と、
前記中空柱の平面に配置された石膏ボードに対して平行に配置された壁材と、
を少なくとも備え、
前記金属板のそれぞれの端面内側表面が、前記壁材に対して垂直に配置された石膏ボードの外側表面に対向して配置され、
前記金属板のそれぞれの端面に垂直となる前記金属板の本体外側表面が、前記壁材の内側表面と接して配置されていることを特徴とする、壁内部に収容される中空柱の耐火被覆構造。
【請求項2】
前記壁材が、耐熱パネルとはめ込み用耐熱板とを含み、
前記はめ込み用耐熱板が、前記金属板の本体外側表面に配置され、
前記金属板のそれぞれの端面内側表面が、前記壁用耐熱パネルに対して垂直に配置された石膏ボードの外側表面に対向して配置され、
前記金属板のそれぞれの端面外側表面が、前記壁用耐熱パネルの側面に対向して配置され、
前記壁用耐熱パネルの側面と前記はめ込み用耐熱板の側面とが接して配置され、
前記壁用耐熱パネルの外側表面と、前記はめ込み用耐熱板の外側表面とが略同一平面上にある、請求項1に記載の耐火被覆構造。
【請求項3】
前記はめ込み用耐熱板が、無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材を含む、請求項2に記載の耐火被覆構造。
【請求項4】
無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材が、前記中空柱に配置されている、請求項1〜3のいずれかに記載の耐火被覆構造。
【請求項5】
無機系耐火材および/または熱膨張性耐火材が、少なくとも一つの前記石膏ボードに配置されたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の耐火被覆構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−7326(P2010−7326A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166629(P2008−166629)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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