説明

耐熱性光学材料およびそれを用いた光伝送用媒体

【課題】光伝送用媒体、詳しくはプラスチック光ファイバーや導波路型素子のコア用材料として利用可能な耐熱性と信号伝送能力を兼ね備えた光学材料を提供する。
【解決手段】側鎖に脂環式炭化水素部位を有する重合体であって115℃以上の熱変形温度を有する重合体からなる光学材料。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学的特性に加えて耐熱性に優れた光学材料に関する。本発明の光学材料は、たとえば光伝送用媒体、詳しくはプラスチック光ファイバーや導波路型素子の特にコア用材料として好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラスチック光学材料としてアクリル系樹脂、ポリカーボネート、非晶性ポリオレフィンなどが利用されている。
【0003】
アクリル系樹脂、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)は可視領域の光に対して透明で、例えばLEDを光源(波長650nm)として用いる通信用プラスチック光ファイバーのコア部に通常用いられている。しかしながらPMMAは、耐熱性が不十分(Tg:105℃)なため、耐熱が要求される用途や場所においては形状が変化したり、特性を損なってしまい、実質的には70℃程度までの環境でしか使用できない。
【0004】
PMMAの耐熱性を改善する試みとして、α−メチルスチレンを共重合させる方法、無水マレイン酸/スチレンを共重合する方法がある。この場合耐熱性は向上するがそれに伴い、機械的強度が低下するため、ファイバーとしたのち屈曲させたときに破壊されやすくなる。
【0005】
またさらに、耐熱性を改善するためにα−フルオロアクリル酸エステル類を共重合する方法(特許文献1)が試みられている。しかし、本発明が目的とする耐熱性の光学材料、特に自動車用プラスチック光ファイバーに求められている耐熱性の要求からは不十分なものである。
【0006】
また、メチルメタクリレートにシクロヘキシルメタクリレートやフェニルメタクリレートを共重合したメタクリル系樹脂も合成されているが(特許文献2、特許文献3)、これらシクロヘキシルメタクリレートやフェニルメタクリレートは、PMMAの吸湿性を改善する目的で導入したものであり、本発明が目的とする耐熱性の光学材料、特に自動車用プラスチック光ファイバーに求められている耐熱性の要求からは不十分なものである。
【0007】
一方、ポリカーボネート樹脂は耐熱性には優れているが(Tg:145℃)、これを光ファイバーのコア材に用いた場合、光の伝送損失が著しく大きく、長距離の光信号の伝送、例えば20mを超える伝送には問題がある。
【0008】
また非晶性ポリオレフィン(Tg:171℃、屈折率:1.51)は、耐熱性は特に高いが、高温で大気中に曝すと、酸素分子の影響による着色およびゲル化が進行しやすく、その結果、光ファイバーのコア材に用いた場合、光信号の伝送損失を増加させてしまうという問題がある。
【0009】
近年、自動車の車内外の通信に関しては、高級化、自動化および安全性の確保を目指した種々のセンサ、信号処理装置、照明等が用いられるようになっている。その結果、信号処理量の増大、それに伴う電線ケーブルの肥大化が生じ、車体軽量化を阻害するという問題が生じている。
【0010】
そうした問題の解消のため、電線ケーブルに代わって多重化・高速通信を実現することができる光ファイバーの利用が望まれている。
【0011】
しかしながら、これら車両に搭載するLAN用(車載LAN用)の通信ケーブルにはエンジンルームや天井など高温になる部分での耐熱性が要求され、また、車両設計上の要請から長距離化となる場合もあり、耐熱性と信号伝送能力を兼ね備えた自動車用プラスチック光ファイバーが必要となるが、そうした光ファイバーは前述の理由で得られていないのが現状である。
【0012】
【特許文献1】
特開昭63−33405号公報
【特許文献2】
特開昭59−1518号公報
【特許文献3】
特開昭61−36307号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術に鑑み、耐熱性と信号伝送能力を兼ね備えた光学材料を得ることにある。
【0014】
さらに光伝送用媒体、詳しくはプラスチック光ファイバーや導波路型素子のコア用材料として利用可能な信号伝送能力を有する光学材料を得ることにある。
特に、自動車のエンジンルームで要求される125℃の環境、またはディーゼル車のエンジンルームで要求される150℃の環境で利用可能な光学材料を用いてなるプラスチック光ファイバーを得ることにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討の結果、側鎖に脂環式炭化水素部位を有する特定の重合体が耐熱性に優れること見出し、さらに、側鎖に脂環式炭化水素部位を有する重合体のうち、特定温度以上の熱変形温度を有する重合体が耐熱性光学材料として有用であり、例えば、前述のような車載LAN用のプラスチック光ファイバーに用いる光学材料として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明の耐熱性光学材料は、側鎖に脂環式炭化水素部位を有する重合体からなる耐熱性光学材料であって、該側鎖に脂環式炭化水素部位を有する重合体の熱変形温度が115℃以上であり、かつ、式(M−1):
−[M1]−[A]− (M−1)
[式中、
構造単位M1は式(1):
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、XはH、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;Zは脂環式炭化水素部位を有する炭素数3〜30の1価の有機基)で示される単量体の少なくとも1種に由来する構造単位、
構造単位Aは式(1)の単量体と共重合可能な単量体の少なくとも1種に由来する構造単位]で示され、構造単位M1を1〜100モル%および構造単位Aを0〜99モル%含む重合体からなるものである。
【0019】
本発明の式(M−1)の重合体は、側鎖中に脂環式炭化水素部位を有した式(1)のアクリル系単量体由来の構造単位(M1)を必須成分とする重合体であり、脂環式炭化水素を側鎖に導入することで、可視領域の光に対して透明で、かつ高いガラス転移温度となるため、耐熱性光学材料として好ましいものである。
【0020】
さらに、上記重合体の熱変形温度が115℃以上であり、70℃以上といった高温環境下でも利用可能な光学材料、例えば車載LAN用プラスチック光ファイバーに有用な材料となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の式(M−1)の重合体において必須成分である構造単位M1は、一般式(M−2)
−[M1−1]−[M1−2]− (M−2)
[式中、
構造単位M1−1は式(2):
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、Z1は脂環式炭化水素部位を有する炭素数3〜30の1価の有機基)で示される単量体の少なくとも1種に由来する構造単位、
構造単位M1−2は式(3):
【0024】
【化8】

【0025】
(式中、X3は、H、CH3、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;Z2は脂環式炭化水素部位を有する炭素数3〜30の1価の有機基)で示される単量体の少なくとも1種に由来する構造単位]で示され、構造単位M1−1を1〜99モル%および構造単位M1−2を1〜99モル%含む構造単位であることが好ましい。
【0026】
本発明の好ましい重合体の第1は、上記M1−1が1〜99モル%、構造単位M1−2が1〜99モル%、式(M−1)における任意の構造単位Aが0〜98モル%の重合体(M−2)である。
【0027】
つまり、脂肪族脂環式炭化水素部位を側鎖に有するα−フロロアクリレート由来の構造単位M1−1と式(1)の単量体のうち式(2)で示されるα−フロロアクリレート以外の単量体由来の構造単位M1−2を必須成分として有する重合体であり、構造単位M1−1を導入することで耐熱性と機械的強度、特に曲げ強度、さらには可とう性を付与できる。
【0028】
また構造単位M1−2を導入することで耐熱性と透明性を付与でき、さらには屈折率の調整(例えば高屈折率化によりPMMA以上に設定)が可能である。
【0029】
構造単位M1−2は式(2)のXがCH3であるメタクリレート由来の構造単位であることが特に好ましく、上記と同様の耐熱性と透明性および屈折率の調整機能をさらに効果的に付与できる。
【0030】
構造単位M1−1とM1−2の存在比率は、M1−1を1〜99モル%、構造単位M1−2を1〜99モル%含むものであれば良いが、M1−1+M1−2=100モル%としたとき、好ましくはM1−1/M1−2が10/90〜95/5モル%比、より好ましくは25/75〜90/10モル%比、特に好ましくは40/60〜90/10モル%比、さらに好ましくは45/55〜90/10モル%比である。
【0031】
また本発明の式(M−1)または(M−2)の重合体において任意成分である構造単位Aは、式(M−3):
−[A−1]−[A−2]− (M−3)
[式中、
構造単位A−1は式(4):
【0032】
【化9】

【0033】
(式中、X1はH、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;R1は水素原子、炭素数1〜30の直鎖または分岐状のエーテル結合を含んでいても良いアルキル基および炭素数1〜30の直鎖または分岐状のエーテル結合を含んでいても良い含フッ素アルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種)で示される単量体の少なくとも1種に由来する構造単位および/または式(5):
【0034】
【化10】

【0035】
(式中、X2は前記式(4)のX1と同じ;R2は芳香環を含む炭素数6〜30の1価の炭化水素基であって、ただしR2中の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていても良い)で示される単量体の少なくとも1種に由来する構造単位;構造単位A−2は式(1)、(4)および(5)に示される単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]で示され、重合体中に構造単位A−1を1〜99モル%および構造単位A−2を0〜98モル%含む構造単位であることが好ましい。
【0036】
本発明の好ましい重合体の第2は、前記式(M−1)における側鎖に脂環式炭化水素部位を有する構造単位M1を1〜99モル%、上記脂環式炭化水素部位を含まない構造単位A−1を1〜99モル%、さらには任意の構造単位A−2を0〜98モル%含む重合体(M−3)である。
【0037】
式(4)の単量体に由来する構造単位を導入することで、機械的特性や透明性を付与でき、さらには屈折率の調整(例えば高屈折率化によりPMMA以上に設定)が可能である。
【0038】
式(5)の単量体に由来する構造単位を導入することで、さらなる耐熱性や機械的特性、低吸水性を付与でき、さらには屈折率の調整(例えば高屈折率化によりPMMA以上に設定)が可能である。
【0039】
構造単位A−1においてX1、X2がCH3であるメタクリレート由来の構造単位であるときは、耐熱性と透明性および屈折率の調整機能をさらに効果的に付与できる点で好ましい。
【0040】
また、構造単位A−1においてX1、X2がF原子であるα−フロロアクリレート由来の構造単位であるときは、耐熱性と機械的強度、特に曲げ強度、さらには可とう性を付与できる点で好ましい。
【0041】
つまり、構造単位A−1はなかでも、メチルメタクリレートまたはメチル−αフロロアクリレートから選ばれる少なくとも1種の単量体由来の構造単位であることが好ましく、機械的特性や透明性を付与できる。
【0042】
また構造単位A−1はフェニルメタクリレートおよびフェニル−α−フロロアクリレートから選ばれる少なくとも1種の単量体由来の構造単位であるときは、さらなる耐熱性と低吸水性を付与できる点で好ましい。
【0043】
構造単位M1とA−1の存在比率は、M1を1〜99モル%、構造単位A−1を1〜99モル%含むものであれば良いが、M1+A−1=100モル%としたとき、好ましくはM1/A−1が5/95〜90/10モル%比、より好ましくは5/95〜60/40モル%比、特に好ましくは10/90〜50/50モル%比、さらに好ましくは10/90〜40/60モル%比である。
【0044】
本発明の式(M−1)および(M−3)において式(1)の単量体由来の構造単位M1におけるXはなかでもF原子であることが好ましく、それによって、耐熱性と機械的強度、特に曲げ強度、さらには可とう性を付与できる。
【0045】
本発明の式(M−1)、(M−3)の重合体における側鎖を形成するZ、式(M−2)の重合体における側鎖を形成するZ1、Z2は炭素数3〜30の有機基であってその中に脂環式の炭化水素部位を有しているものである。
【0046】
脂環式の炭化水素部位は単環構造の炭化水素部位であっても、複環構造の炭化水素部位であっても、それらいずれをも含む炭化水素部位であっても良い。
【0047】
脂環式の炭化水素部位は単環構造の炭化水素部位を含む場合、Z、Z1、Z2は炭素数7以上の有機基であることが好ましく、それによってより効果的に耐熱性を付与できる。
【0048】
特に、前記Z、Z1、Z2は複環構造の炭化水素部位を含む有機基であることが好ましく、より効果的に耐熱性と透明性を付与できる。
【0049】
単環構造の炭化水素部位を含む場合の前記Z、Z1、Z2は、具体的には、
(1)シクロペンチル基およびその誘導体を有する有機基、
(2)シクロヘキシル基およびその誘導体を有する有機基、
(3)パーヒドロビフェニル基およびその誘導体を有する有機基、
(4)スピロ〔4,4〕ノナンおよびその誘導体を有する有機基、
(5)スピロ〔4,5〕デカンおよびその誘導体を有する有機基
などが好ましくあげられ、それらの一部の例として、
【0050】
【化11】

【0051】
などがあげられる。
【0052】
またこれら例示の炭化水素基の水素原子を炭素数1〜5のアルキル基やフッ素原子、さらには官能基などで置換したものであっても良い。
【0053】
複環構造の炭化水素部位を含む場合の前記Z、Z1、Z2は、具体的には、
(6)アダマンタンおよびその誘導体を有する有機基、
(7)ノルボルナンおよびその誘導体を有する有機基、
(8)パーヒドロアントラセンおよびその誘導体を有する有機基、
(9)パーヒドロナフタレンおよびその誘導体を有する有機基、
(10)トリシクロ〔5.2.1.02,6 〕デカンおよびその誘導体を有する有機基
などがあげられ、それらの一部の例として、
【0054】
【化12】

【0055】
などがあげられる。
【0056】
またこれら例示の炭化水素基の水素原子を炭素数1〜5のアルキル基やフッ素原子、さらには官能基などで置換したものであっても良い。
【0057】
さらにこれら複環構造の炭化水素部位を含む有機基のうち、アダマンタンおよびその誘導体、ノルボルナンおよびその誘導体、トリシクロ〔5.2.1.02,6 〕デカンおよびその誘導体を含むものが好ましく、これらは特に耐熱性と透明性を効果的に重合体に付与できる。
【0058】
本発明の式(M−1)、(M−2)および(M−3)の重合体において、側鎖に脂環式構造の炭化水素部位を有する構造単位を形成できる単量体(式(1)、(2)および(3))は具体的には、前記Z、Z1、Z2から選ばれる少なくとも1種の側鎖構造を有するアクリル系単量体であり、例えばつぎのものが例示できる。
【0059】
(I)ノルボルナンおよびその誘導体を含む有機基を側鎖に有する単量体
【0060】
【化13】

【0061】
(式中、XはH、F、Cl、CH3またはCF3;R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a、R7a、R8a、R9a、R10aは同じかまたは異なり、H、F、Clまたは炭素数1〜14のハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基;R11aは結合手または分岐鎖を含んでいてもよい炭素数1〜6のアルキレン基;nは0、1〜2の整数)
より具体的には、
【0062】
【化14】

【0063】
などがあげられる。
【0064】
(II)アダマンタンおよびその誘導体を含む有機基を側鎖に有する単量体
【0065】
【化15】

【0066】
または
【0067】
【化16】

【0068】
(式中、XはH、F、Cl、CH3、CF3;R1b、R2bは環に結合した置換基であり、CH3、C25またはOH;R4b、R5bは結合手または分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基;R3bはH、CH3またはC25;nは0または1〜2の整数)などがあげられ、より具体的には、
【0069】
【化17】

【0070】
などがあげられる。
【0071】
(III)トリシクロ〔5.2.1.02,6 〕デカンおよびその誘導体を含む有機基を側鎖に有する単量体
【0072】
【化18】

【0073】
(式中、XはH、F、Cl、CH3またはCF3;R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6c、R7c、R8c、R9c、R10c、R11c、R12c、R13c、R14c、R15cは同じかまたは異なり、H、F、Clまたはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基;R16cは結合手または分岐鎖を含んでいてもよい炭素数1〜6のアルキレン基)
【0074】
【化19】

【0075】
(式中、XはH、F、Cl、CH3またはCF3;R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6d、R7d、R8d、R9d、R10d、R11d、R12d、R13dは同じかまたは異なり、H、F、Clまたはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基;R14dは結合手または分岐鎖を含んでいてもよい炭素数1〜6のアルキレン基)
より具体的には、
【0076】
【化20】

【0077】
などがあげられる。
【0078】
本発明の式(M−3)の重合体において、構造単位A−1を形成する単量体の具体例としては、つぎのものが例示できる。
【0079】
式(4)の鎖状の炭化水素基を側鎖に有する単量体の具体例としては、
【0080】
【化21】

【0081】
(式中、nは1〜6の整数、mは0〜29までの整数を示す。またYはHもしくはF;R1e、R2e、R3eは同じか異なり、H、炭素数1〜29のエーテル結合を含んでも良いアルキル基または炭素数1〜29のエーテル結合を含んでも良い含フッ素アルキル基)
などがあげられる。
【0082】
より具体的には
【0083】
【化22】

【0084】
があげられ、なかでもメタクリル酸、α−フルオロアクリル酸、アクリル酸、メチルメタクリレート(MMA)、メチル−α−フルオロアクリレートが透明性、耐熱性、機械的強度の向上効果に優れる点で好ましい。特にMMAは光学特性、機械特性の向上効果に優れる。
【0085】
式(5)の芳香環を含む炭化水素基を側鎖に有する単量体の具体例としては、
【0086】
【化23】

【0087】
(式中、X2はH、F、Cl、CH3、CF3;R1f、R2f、R3f、R4f、R5fは同じかまたは異なり、H、F、Clまたはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基;R6fは結合手または分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基)などがあげられ、具体的には
【0088】
【化24】

【0089】
が好ましくあげられる。
【0090】
なかでも、フェニルメタクリレート、フェニルα−メタクリレートが耐熱性を向上させる点で好ましい。
【0091】
本発明の耐熱性光学材料に用いる重合体の分子量は数平均分子量で2000〜1000000の範囲のものが通常使用され、好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜300000である。低すぎる分子量は機械的特性、特に曲げ強度が低下したり可とう性が低下する点で好ましくない。また、高すぎる分子量は成形性が低下したり、光散乱の増加に伴う透明性低下を惹き起こす点で好ましくない。
【0092】
本発明の耐熱性光学材料に用いる重合体は熱変形温度で115℃以上であり、それによって高温の環境下でも軟化が抑えられ、その結果、光信号の散乱が低減でき良好な光信号の伝送(長距離において光信号の損失の少ない伝送)が可能になる。
【0093】
本発明における熱変形温度とは荷重たわみ温度(HDT)のことを言い、ASTM D684で規格化された方法にて測定した値を用いるものである。
特に、熱変形温度は120℃以上、特に130℃以上、さらには140℃以上のものが好ましく、熱変形温度が高いことにより、特にエンジン部分周辺に位置する自動車制御用や、航空機の制御用、産業用ロボットの制御用など高温の環境で利用する光学部品、光通信媒体、プラスチック光ファイバーなどに有利である。
【0094】
本発明の耐熱性光学材料は可視領域の光に対して透明性が高いことが必要であり、特に650nmの波長の光に対して透明性が高いことが望ましい。
【0095】
この観点から、本発明の耐熱性光学材料は、650nm波長光での吸光係数で、0.015cm-1以下であることが好ましく、特に0.014cm-1以下、さらには0.013cm-1以下であることが好ましい。それによって光信号の吸収損失を低減でき、20m〜100mといった長距離の光信号の伝送においても損失を低減できる。
【0096】
ここで吸光係数とは、適当な屈折率をもったクラッド材と溶融紡糸することにより、本発明の耐熱光学材料をコア材として、長さ100mmのプラスチック光ファイバーを作製し、波長650nmでの光で透過光強度を測定する。入射光強度をI0、透過光強度をI1としたとき、吸光係数は下式により計算された値をいう。
吸光係数=1/10・log(I0/I1
【0097】
本発明の耐熱性光学材料は広い範囲で屈折率を調整することが可能である。それによって、光伝送媒体に利用したり、またはクラッドに利用できる。
【0098】
特に本発明の耐熱性光学材料は透明性が高く、高屈折率に調整可能であるため光伝送媒体、例えば、プラスチック光ファイバや光導波路型素子のコアに利用することができる。
【0099】
その場合、本発明の耐熱性光学材料は屈折率:nDで1.45以上であることが好ましい。
【0100】
屈折率は、ナトリウムD線を光源として25℃においてアッベの屈折率計を用いて測定した値を用いるものである。
【0101】
屈折率は、1.47以上、さらには1.48以上であることが好ましく、最も好ましい範囲は1.48〜1.52である。屈折率が低すぎると、プラスチック光ファイバーを作製する際にクラッド材側の材料の選択が制約される点で好ましくない。屈折率が高すぎると、光散乱に基づく伝送損失が増大するほか、プラスチック光ファイバーの接合時に結合損失が増大する点で好ましくない。
【0102】
以上に構造単位および物性(特性)の観点から説明をしてきたが、つぎに本発明の耐熱性光学材料に使用する重合体の好ましい具体例を説明する。
【0103】
重合体(I)
式(M−4):
−[M1−1a]−[A−1a]− (M−4)
[式中、構造単位M1−1aは式(2−1):
【0104】
【化25】

【0105】
(式中、Z3はアダマンタンおよびその誘導体、ノルボルナンおよびその誘導体、トリシクロ〔5.2.1.02,6 〕デカンおよびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の複環構造の炭化水素部位を含む炭素数10〜30の1価の有機基);構造単位A−1aはメチルメタクリレート由来の構造単位]であって、構造単位M1−1aを1〜100モル%、構造単位A−1aを0〜99モル%含む重合体。
【0106】
この重合体は高い透明性と機械的強度、特に曲げ強度や可とう性に優れる点で好ましい。
【0107】
重合体(II)
式(M−5):
−[M1−1a]−[A−1a]−[A−2a]− (M−5)
(式中、構造単位M1−1aおよびA−1aは前記式(M−4)と同じ;構造単位A−2aはフェニルメタクリレートまたはフェニル−α−フロロアクリレートに由来する構造単位)であって、構造単位M1−1aを1〜99モル%、構造単位A−1aを0〜98モル%、構造単位A−2aを1〜99モル%含む重合体。
【0108】
この重合体は優れた耐熱性と低い吸水性を有する点で好ましい。
【0109】
重合体(III)
式(M−6):
−[M1−1a]−[M1−2a]−[A−1a]− (M−6)
[式中、構造単位M1−1a、A−1aは前記式(M−4)と同じ;構造単位M1−2aは式(3−1):
【0110】
【化26】

【0111】
(式中、Z4はアダマンタンおよびその誘導体、ノルボルナンおよびその誘導体、トリシクロ〔5.2.1.02,6 〕デカンおよびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の複環構造の炭化水素部位を含む炭素数10〜30の1価の有機基)]
であって、構造単位M1−1aを1〜99モル%、構造単位M1−2aを1〜99モル%、構造単位A−1aを0〜98モル%含む重合体。
【0112】
この重合体は耐熱性および機械的強度、特に曲げ強度に優れ、さらに屈折率を調整しやすい点で好ましい。
【0113】
本発明の耐熱性光学材料を特にコアに用いる場合、耐熱性や信号の伝送性能を損なわない範囲で添加剤を混合しても良い。
【0114】
例えば、屈折率を調節するために、フタル酸ベンジル−n−ブチル(屈折率:1.575)、1−メトキシフェニル−1−フェニルエタン(屈折率:1.571)、安息香酸ベンジル(屈折率:1.568)、ブロモベンゼン(屈折率:1.557)、o−ジクロロベンゼン(屈折率:1.551)、m−ジクロロベンゼン(屈折率:1.543)、1,2’−ジブロモエタン(屈折率:1.538)、3−フェニル−1−プロパノール(屈折率:1.532)、ジフェニルフタル酸(C64(COOC652)、トリフェニルフォスフィン((C65)3P)およびジベンジルフォスフェート((C65CH2O)2PHO2)、4,4’−ジブロモベンジル、4,4’−ジブロモビフェニル、2,4’−ジブロモアセトフェノン、3’,4’−ジクロロアセトフェノン、3,4−ジクロロアニリン、2,4−ジブロモアニリン、2,6−ジブロモアニリン1,4−ジブロモベンゼン等の化合物などが添加できる。これらの低分子化合物は単純に本発明の耐熱性光学材料の屈折率を一様に調整するばかりではなく、例えば特開平8−110420号公報記載の屈折率分布(グレーデッドインデックス)型光ファイバーを得るためのドーパントとして機能する。本発明の耐熱性光学材料は、耐熱性の屈折率分布(グレーデッドインデックス)型光ファイバーを得るのにも有用な材料である。
【0115】
上記本発明の耐熱性光学材料は光伝送媒体、コアとクラッドで形成されるプラスチック光ファイバーのコア材に利用することが好ましい。
【0116】
本発明の耐熱性光学材料を用いた上記プラスチック光ファイバーは耐熱性が高いため、100℃以上の耐熱が必要となる場合に有用である。例えば、ライトガイドにおいては、ハロゲン光源に接近してプラスチック光ファイバーを敷設する際に耐熱性が必要になる。センサー用途においては、例えば車のヘッドライト照明の検知や溶融プレス機の位置決めセンサー等、雰囲気が高温になる部分の検出の際に耐熱性が必要になる。産業用ロボットのセンサーも同様である。光通信用途においては、例えば車載LANにおいて高温になるエンジンルーム内、車の天井部分、インストールドパネル等に配線する際には100℃以上の耐熱性が必要となる。航空機に搭載される場合も同様である。ファクトリーオートメーション(FA)用途におけるプラスチック光ファイバー配線に関しても高温の環境に曝される場合、耐熱性が必要である。また、屋外にて使用する際や屋内であってもビルの屋上の配電盤室内や通信基地局等、通常の空調設備がない環境のため耐熱性が要求されている。本発明の耐熱性光学材料は、これらの用途に効果的に利用できる。
【0117】
これら、耐熱性光学材料を用いた上記プラスチック光ファイバーのクラッドに用いる光学材料はガラス転移温度が100℃以上であって、屈折率(nD)が1.44以下であることが好ましい。
【0118】
クラッドに用いる光学材料は、ガラス転移温度がなかでも105℃以上のものが好ましく、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃、特に130℃以上のものである。ガラス転移温度が高いことにより耐熱性を向上させることができ、コアに用いる本発明の耐熱性光学材料と組合せて、高耐熱のプラスチック光ファイバーを構成できる点で好ましく、上記耐熱性を必要とする用途においてより一層効果的に利用できる。
【0119】
上記耐熱性クラッドとして用いる重合体の好ましいものは、屈折率1.44以下の含フッ素アクリル系樹脂が通常用いられ、側鎖にフルオロアクリル基を有するメタクリレート、α−フロロアクリレートの(共)共重合体などが好ましい。その中でも耐熱性(高ガラス転移温度)と低屈折率を兼ね備えた含フッ素アクリレートとして式(6):
【0120】
【化27】

【0121】
(式中、X3はH、CH3、F、CF3またはCl;Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;Wはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基)で示される構造単位(a)を有する重合体が好ましい。
【0122】
特に上記式(6)の構造単位とメチルメタクリレート由来の構造単位とからなる含フッ素共重合体が好ましく、例えば上記式(6)の構造単位(a)とメチルメタクリレート由来の構造単位(b)の合計を100としたとき(a)/(b)32/68〜64/36モル%比とからなる含フッ素共重合体が好ましい。
【0123】
上記プラスチック光ファイバーの層構成は通常、内側よりコア層、クラッド層から構成される。口径には特に制限はないが、通常125μmから1mm程度である。各層の厚さは通常、コア層/クラッド層=98/2程度でコア層がその大部分を占める。さらに外周に保護層があってもかまわない。この保護層は主として耐熱性の向上、曲げ損失の低減、耐衝撃性の向上の目的で用いられ、通常、フッ化ビニリデン系共重合体が用いられる。中でもフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体が好ましい。保護層の厚さはクラッド層とほぼ同一である。また、光ファイバーケーブルとして使用する際にはさらにその外周に被覆層を配置する。被覆層としては従来から使用されているナイロン12、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン等を用いることができる。
【0124】
前述の構成においてコア層が単一の屈折率からなるものはSI(ステップインデックス)型プラスチック光ファイバーと呼ばれ、最も一般的である。
【0125】
コア層の屈折率が内周から外周に向かって階段状に屈折率が低下していくものをマルチステップ型プラスチック光ファイバーと呼ばれている。また、内周から外周に向かって屈折率がなめらかに低下していくものをGI(グレーデッドインデックス)型プラスチック光ファイバーと呼ばれている。
【0126】
上記プラスチック光ファイバの作製方法としては、例えば、SI型プラスチック光ファイバーの場合、複合紡糸ノズルを用いてコア材ポリマーとクラッド材ポリマーを同心円状に配置し、溶融複合紡糸することでファイバー状に賦形し、ついで機械的強度の向上を目的として加熱下での延伸処理を行なう方法が一般的である。
【0127】
本発明の耐熱性光学材料は光導波路型素子のコアとしても好ましく用いることができ、コア材およびクラッド材として前述の同様な重合体の具体例が同様に好ましく例示できる。
【0128】
図1に、典型的な光導波路素子の要部構造を例示する。ここで、1は基板、2はコア部、3および4はクラッド部である。かかる光導波路素子は、光機能素子間を接続するために使用され、一方の光機能素子の端末から送出された光は、光導波路素子のコア部2内を、例えばコア部2とクラッド部3、4との界面で全反射を繰り返しながら、他方の光機能素子端末へと伝播される。光導波路素子の形式は、平面型、ストリップ型、リッジ型、埋込み型等の適宜の形式を採ることができる。
【0129】
光導波路素子は例えば、光通信信号に対し、スイッチング、増幅、波長変換、光合分波、波長選択等の作用を示す素子があり、光スイッチ、光ルーター、ONU、メディアコンバーター等に利用できる。
【0130】
本発明の耐熱性光学材料は上記以外のその他の用途として、例えばレンズ(ピックアップレンズ、めがね用レンズ、カメラ用レンズ、プロジェクター用フレネルレンズ、コンタクトレンズ)、LED等の発光体用封止材、反射防止材、光ディスク基板、照明器具のカバー材、ディスプレイ保護板、透明ケース、表示板、自動車用部品等があげられる。
【0131】
【実施例】
つぎに、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限られるものではない。
【0132】
実施例1
2−メチル−2アダマンチルα−フルオロアクリレート30g、メチルメタクリレート(MMA)70g、n−ラウリルメルカプタン0.1g、アゾイソブチロニトリル0.025gを500mlのガラス製フラスコ内で溶解混合し、脱気および窒素置換を繰り返し、密封した後、70℃で16時間重合させた。
【0133】
重合終了後、生成物にアセトン300gを加えて溶解し、得られた溶液をメタノール5リットルに注ぎ込んだ。沈殿した重合物を液体から分離し、100℃の温度で10時間減圧乾燥し、固体状の重合体を92g(収率92%)得た。
【0134】
得られた重合体を19FNMR、1HNMRおよびIR法で測定し、2−メチル−2アダマンチルα−フルオロアクリレート/MMA=15/85(モル%)の共重合体であることを確認した。
【0135】
また、得られた共重合体の重量平均分子量、屈折率、ガラス転移温度、熱変形温度、メルトインデックス、吸光係数および引張強度を調べた。結果を表1に示す。
【0136】
なお、物性値の測定法は次の方法による。
(1)重量平均分子量(Mw)
GPC法により測定する(ポリスチレン換算)。
【0137】
(2)屈折率(nD
ナトリウムD線を光源として25℃において(株)アタゴ光学機器製作所製のアッベ屈折率計を用いて測定する。
【0138】
(3)ガラス転移温度(Tg)
セイコー電子(株)製のDSC(示差走査熱量計)を用いて、1st runを昇温速度10℃/分で200℃まで上げ、200℃で1分間維持したのち、降温速度10℃/分で25℃まで冷却し、ついで昇温速度10℃/分で得られる2nd runの吸熱曲線の中間点をTgとする。
【0139】
(4)熱変形温度(HDT)
(株)東洋精機製作所製のHDT試験装置を使用し、ASTM D684に準じて測定する。
【0140】
(5)メルトインデックス(MI)
(株)島津製作所製の降下式フローテスターを用い、各共重合体を内径9.5mmのシリンダーに装着し、温度230℃で5分間保った後、7kgのピストン荷重部に内径2.1mm、長さ8mmのオリフィスを通して押し出し、10分間に押し出された共重合体のグラム数で表わす。
【0141】
(6)吸光係数(ε)
重合体をコア材に、クラッド材として2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート50重量%、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート30重量%、メチルメタクリレート20重量%からなる共重合体を用い、230℃にて複合紡糸し、直径300μm(クラッド材厚さ15μm)、長さ100mmのプラスチック光学ファイバーを作製する。この光学ファイバーの波長650nmでの光で透過度を測定する。入射光強度をI0、透過光強度をI1としたとき、吸光係数、εは下式により計算する。
ε=1/10・log(I0/I1
【0142】
(7)引張強度(F)
引張強度は(株)島津製作所製の万能試験機を用い、ASTM D638に準じて測定する。
【0143】
実施例2
単量体として、イソボルニルα−フルオロアクリレート15g、フェニルα−フルオロアクリレート15g、MMA70gを用いた以外は実施例1と同様にして共重合体を得た。得られた共重合体の組成、および各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0144】
実施例3
単量体として、トリシクロデカニルα−フルオロアクリレート40g、メチルα−フルオロアクリレートの60gを用いた以外は実施例1と同様にして共重合体を得た。得られた共重合体の組成、および各種物性を実施例1と同様して測定した。結果を表1に示す。
【0145】
実施例4
単量体として、2−メチル−2アダマンチルα−フルオロアクリレート25g、イソボルニルメタクリレート25gおよびMMA50gを用いた以外は実施例1と同様にして共重合体を得た。得られた共重合体の組成、および各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0146】
実施例5
単量体として、シクロヘキシルα−フルオロアクリレート15g、フェニルα−フルオロアクリレート25gおよびメチルα−フルオロアクリレート60gを用いた以外は実施例1と同様にして共重合体を得た。得られた共重合体の組成、および各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0147】
比較例1
単量体として、MMA100gのみを用いた以外は実施例1と同様にしてMMAの単独重合体を得た。得られた重合体の各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0148】
比較例2
単量体として、フェニルメタクリレート30gおよびMMA70gを用いた以外は実施例1と同様にして共重合体を得た。得られた共重合体の組成、および各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0149】
比較例3
単量体として、2,2,2−トリフルオロエチルα−フルオロアクリレート25gおよびMMA75gを用いた以外は実施例1と同様にして共重合体を得た。得られた共重合体の組成、および各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0150】
比較例4
単量体として、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルα−フルオロアクリレートの50gおよびフェニルメタクリレート50gを用いた以外は実施例1と同様にして共重合体を得た。得られた共重合体の組成、および各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
合成例1
単量体として2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロパニルメタクリレート50g、MMA20g、および1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルメタクリレート30gを用いた以外は実施例1と同様にして重合体を得た。得られた重合体のガラス転移温度は110℃、MIは37g/10min、屈折率は1.419であった。
【0153】
実施例6
コア材として実施例1の重合体をクラッド材として2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート50重量%、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート30重量%、メチルメタクリレート20重量%からなる共重合体を用い、230℃にて複合紡糸し、直径300μm(鞘材厚さ15μm)、長さ50mのプラスチック光ファイバーを作製した。このプラスチック光ファイバーの伝送損失を25m−5mのカットバック法により入射NA=0.1における波長650nmの伝送損失を測定した。また、このプラスチック光ファイバーを100℃で168時間保持し、その後の波長650nmにおける伝送損失を同様に測定した。結果を表2に示す。
【0154】
実施例7
コア材として実施例4の重合体を用い、クラッド材として合成例1の重合体を用いた以外は実施例6と同様にしてプラスチック光ファイバーを得た。得られたプラスチック光ファイバーの特性を表2に示す。
【0155】
比較例5
コア材として比較例3の重合体を用いた以外は実施例6と同様にしてプラスチック光ファイバーを得た。得られたプラスチック光ファイバーの特性を表2に示す。
【0156】
【表2】

【0157】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性と信号伝送能力を兼ね備えた光学材料を提供することができる。
【0158】
さらに光伝送用媒体、詳しくはプラスチック光ファイバーや導波路型素子のコア用材料として利用可能な信号伝送能力を有する光学材料、特に、自動車のエンジンルームで要求される125℃の環境、またはディーゼル車のエンジンルームで要求される150℃の環境で利用可能な光学材料を用いてなるプラスチック光ファイバーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光導波路素子の要部構造の概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 コア部
3 クラッド部
4 クラッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に脂環式炭化水素部位を有する重合体からなる耐熱性光学材料であって、該側鎖に脂環式炭化水素部位を有する重合体の熱変形温度が115℃以上であり、かつ、式(M−1):
−[M1]−[A]− (M−1)
[式中、
構造単位M1は式(1):
【化1】

(式中、XはH、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;Zは脂環式炭化水素部位を有する炭素数3〜30の1価の有機基)で示される単量体の少なくとも1種に由来する構造単位、
構造単位Aは式(1)の単量体と共重合可能な単量体の少なくとも1種に由来する構造単位]で示され、構造単位M1を1〜100モル%および構造単位Aを0〜99モル%含む重合体である耐熱性光学材料。
【請求項2】
前記側鎖に脂環式炭化水素部位を有する重合体の構造単位M1が、式(M−2):
−[M1−1]−[M1−2]− (M−2)
[式中、
構造単位M1−1は式(2):
【化2】

(式中、Z1は脂環式炭化水素部位を有する炭素数3〜30の1価の有機基)で示される単量体の少なくとも1種に由来する構造単位、
構造単位M1−2は式(3):
【化3】

(式中、X3は、H、CH3、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;Z2は脂環式炭化水素部位を有する炭素数3〜30の1価の有機基)で示される単量体の少なくとも1種に由来する構造単位]で示され、構造単位M1−1を1〜99モル%および構造単位M1−2を1〜99モル%含む構造単位である請求項1記載の耐熱性光学材料。
【請求項3】
前記側鎖に脂環式炭化水素部位を有する重合体の構造単位Aが、式(M−3):
−[A−1]−[A−2]− (M−3)
[式中、
構造単位A−1は式(4):
【化4】

(式中、X1はH、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;R1は水素原子、炭素数1〜30の直鎖または分岐状のエーテル結合を含んでいても良いアルキル基および炭素数1〜30の直鎖または分岐状のエーテル結合を含んでいても良い含フッ素アルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種)で示される単量体の少なくとも1種に由来する構造単位および/または式(5):
【化5】

(式中、X2は前記式(4)のX1と同じ;R2は芳香環を含む炭素数6〜30の1価の炭化水素基であって、ただしR2中の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていても良い)で示される単量体の少なくとも1種に由来する構造単位;構造単位A−2は式(1)、(4)および(5)に示される単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]で示され、重合体中に構造単位A−1を1〜99モル%および構造単位A−2を0〜98モル%含む構造単位である請求項1または2記載の耐熱性光学材料。
【請求項4】
前記構造単位A−1が式(4)で示される単量体の少なくとも1種に由来する構造単位である請求項3記載の耐熱性光学材料。
【請求項5】
前記構造単位A−1がメチルメタクリレートまたはメチル−α−フロロアクリレート由来の構造単位である請求項4記載の耐熱性光学材料。
【請求項6】
前記構造単位A−1が式(5)で示される単量体の少なくとも1種に由来する構造単位である請求項3記載の耐熱性光学材料。
【請求項7】
前記構造単位A−1がフェニルメタクリレートまたはフェニル−α−フロロアクリレート由来の構造単位である請求項6記載の耐熱性光学材料。
【請求項8】
前記式(1)中のXがFである請求項1または3〜7のいずれかに記載の耐熱性光学材料。
【請求項9】
式(1)のZが複環構造の炭化水素部位を有する炭素数4〜30の1価の有機基である請求項1〜8のいずれかに記載の耐熱性光学材料。
【請求項10】
式(2)のZ1および式(3)のZ2の少なくとも一方が複環構造の炭化水素部位を有する炭素数4〜30の1価の有機基である請求項2〜8のいずれかに記載の耐熱性光学材料。
【請求項11】
複環構造の炭化水素部位を有する1価の有機基が、アダマンタンまたはその誘導体を含む炭素数10〜30の有機基である請求項9または10記載の耐熱性光学材料。
【請求項12】
複環構造の炭化水素部位を有する1価の有機基が、ノルボルナンまたはその誘導体を含む炭素数7〜30の有機基である請求項9または10記載の耐熱性光学材料。
【請求項13】
複環構造の炭化水素部位を有する1価の有機基が、トリシクロ〔5.2.1.02,6 〕デカンまたはその誘導体を含む炭素数10〜30の有機基である請求項9または10記載の耐熱性光学材料。
【請求項14】
前記側鎖に脂環式炭化水素部位を有する重合体が、熱変形温度が130℃以上の重合体である請求項1〜13のいずれかに記載の耐熱性光学材料。
【請求項15】
前記側鎖に脂環式炭化水素部位を有する重合体が、650nm波長光での吸光係数が0.015cm-1以下の重合体である請求項1〜14のいずれかに記載の耐熱性光学材料。
【請求項16】
前記側鎖に脂環式炭化水素部位を有する重合体が、屈折率nDが1.45以上の重合体である請求項1〜15のいずれかに記載の耐熱性光学材料。
【請求項17】
前記側鎖に脂環式炭化水素部位を有する重合体が、屈折率nDが1.47以上の重合体である請求項1〜15のいずれかに記載の耐熱性光学材料。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の耐熱性光学材料を用いてなる光伝送用媒体。
【請求項19】
コアおよびクラッドから構成されるプラスチック光ファイバーであって、コアに請求項18記載の光伝送用媒体を用いてなるプラスチック光ファイバー。
【請求項20】
前記クラッドが、ガラス転移温度が100℃以上で屈折率nDが1.44以下の材料である請求項19記載のプラスチック光ファイバー。
【請求項21】
前記クラッドが、ガラス転移温度が105℃以上の材料である請求項20記載のプラスチック光ファイバー。
【請求項22】
車両に搭載されるLAN用プラスチック光ファイバーである請求項19〜21のいずれかに記載のプラスチック光ファイバー。
【請求項23】
コアおよびクラッドから構成される光導波路型素子であって、コアに請求項18記載の光伝送用媒体を用いてなる光導波路型素子。

【図1】
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【公開番号】特開2006−188544(P2006−188544A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−26359(P2003−26359)
【出願日】平成15年2月3日(2003.2.3)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】