耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法及びエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
【課題】リフロー実装等の高温に対応可能な耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法と、その耐熱性帯電フッ素樹脂体を用いたエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法の提供。
【解決手段】接着剤を塗布したフッ素含有樹脂体を、酸素存在下においてフッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱処理を行なった後に、フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂体を構成し、該耐熱性フッ素樹脂体に着電処理を行なうことにより耐熱性帯電フッ素樹脂体を形成する。着電処理は、好ましくは、大気温での着電とその後の260℃〜330℃での加熱とを複数回繰り返すことにより、耐熱性帯電フッ素樹脂体の電荷保持量を増大する。
【解決手段】接着剤を塗布したフッ素含有樹脂体を、酸素存在下においてフッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱処理を行なった後に、フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂体を構成し、該耐熱性フッ素樹脂体に着電処理を行なうことにより耐熱性帯電フッ素樹脂体を形成する。着電処理は、好ましくは、大気温での着電とその後の260℃〜330℃での加熱とを複数回繰り返すことにより、耐熱性帯電フッ素樹脂体の電荷保持量を増大する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性に優れた耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法及びその耐熱性帯電フッ素樹脂体を用いたエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より帯電樹脂体を利用した電気製品としては例えばエレクトレットコンデンサマイクロホンが知られている。
【0003】
従来のエレクトレットコンデンサマイクロホン(以下ECMと略記する)は、例えば特開2002−345087号公報に開示されている如く、帯電樹脂体であるエレクトレット層の形成には金属製の背面基板上に樹脂層を形成し、この樹脂層に帯電処理を行なうことによりエレクトレット層を形成する方式や、樹脂製またはセラミック製の背面基板上に背面電極を膜形成し、この背面電極上に前記エレクトレット層を形成する方式が行われている。そして、前記背面基板を振動膜ユニット、スペーサ、外部接続電極を有する回路基板等と積層して一体化することによりECMを完成させている。
【0004】
そして、上記構成を有するECMは、前記民生用機器等に実装される場合、他の電気エレメントが実装されている回路基板に半田付け等の手段によって組みつけられる事になるが、従来のECMはエレクトレット層を構成する帯電樹脂体の耐熱性が良くないため、リフロー装置による実装が出来ないという欠点がある。
【0005】
すなわち、市場ニーズとしては実装コストの面からリフロー装置による半田実装が求められているが、このリフロー装置による半田実装は150℃〜200℃程度のプリヒートを90〜120秒行い、その後230℃〜260℃の高温で100秒間程度リフローされるため、この高温条件によって前記ECMのエレクトレット層に着電されている電荷が減衰することで、マイクロホンとしての性能が維持できなくなるという問題がある。
【0006】
上記帯電樹脂体の欠点である耐熱性の問題を解決する方式として従来よりいくつかの提案が成されている。例えば特表2001−518246号公報に開示されているECMは着電手段として耐熱性に問題のある有機質の帯電樹脂体に代えて無機質のシリコンを用いた半導体マイクロホンを構成している。しかしこの半導体マイクロホンは耐熱性の問題が無くリフロー装置による実装を可能としているが、反面コストアップになるという問題がある。
【0007】
また、特開2000−32596号公報には従来の有機質の帯電樹脂体を改良して、リフロー装置による半田実装を可能としたECMが開示されている。すなわち、エレクトレット層を構成するための樹脂体を金属板に融着した背面基板を、着電前に約200℃で1〜6時間程度の高温アニールを施し、その後着電して耐熱性の高いECMを構成するものである。
【0008】
また、ECMとは直接関係はないが、ポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと略記する)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(以下FEPと略記する)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下PFAと略記する)等のフッ素を含有する樹脂体に、ある温度条件下で、かつ酸素不存在下において電離性放射線を照射して架橋させることにより、放射線環境下での耐熱性と機械特性を向上させた改質フッ素樹脂が開示されている。
【0009】
すなわち、特許第3317452号公報にはPTFE等のフッ素を含有する樹脂体をその結晶融点以上の温度で、かつ酸素不存在下において所定量の電離性放射線を照射して架橋させた改質フッ素樹脂が開示されており、さらに特開平11−49867号公報にはFEPに結晶融点付近の温度で、かつ酸素不存在下において所定量の電離性放射線を照射して架橋させた改質フッ素樹脂が開示されている。
【0010】
上記改質フッ素樹脂の技術は、耐熱性と耐薬品に優れた特性を有し、産業用や民生用として広く利用されているフッ素樹脂が、その欠点としては放射線に対する崩壊型分子構造を有するため、原子力施設等の放射線環境下での使用ができないことを改善するために行われたものであり、電離性放射線の照射条件を適正化して架橋を行わせる事によって放射線環境下での耐熱性や機械特性を飛躍的に向上させたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記エレクトレット層として帯電樹脂体を用いて、市場ニーズであるリフロー実装が可能なECM等の開発を目的として前記背景技術を検討した結果、前記特開2000−32596号公報に開示されている技術は基本的に樹脂に対するアニーリング技術であるため、高温下に長時間放置する必要があり、製造時間が長くなる欠点に加えて、時間管理や温度管理の変化にともなう製品の安定性にも問題がある。
【0012】
そこで、本出願人は特許第3317452号公報や特開平11−49867号公報に開示された電離性放射線を照射して架橋させた改質フッ素樹脂に着目した。
【0013】
すなわち、架橋させた改質フッ素樹脂が放射線環境下等の悪い環境でも高い耐熱特性を示すということは、前記改質フッ素樹脂を帯電させた帯電樹脂体をエレクトレット層として用いることにより、リフロー条件下での電荷減衰の防止に効果があるものと想定した。
【0014】
本発明の目的は、上記電離性放射線の照射技術を応用して、従来困難とされていたリフロー実装等の高温に対応可能な耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法と、その耐熱性帯電フッ素樹脂体を用いたECMの製造方法を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は、
フッ素含有樹脂体を用意する工程と、
該フッ素含有樹脂体の一側面に接着剤の層を形成して接着剤塗布フッ素含有樹脂体とする工程と、
該接着剤塗布フッ素含有樹脂体に、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射して架橋して耐熱性フッ素樹脂体とする工程と、
該耐熱性フッ素樹脂体に着電処理を行う工程と
を有し、
該接着剤層が、耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとした耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法を提供する。
【0016】
後述する実施例の説明において述べるように、耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用する接着剤によって、耐熱性フッ素樹脂に対する着電が安定状態で行われることが分かった。すなわち、本発明における接着剤とは、エレクレット形成のために行われる、例えば、フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱処理においても、それ自体が実質的に収縮することがなく、フッ素含有樹脂の形状を維持するよう作用するものであればよい。具体的には、アクリル系、シリコーン系の粘着剤、エポキシ系、シリコーン系の接着剤、熱硬化タイプや紫外線硬化タイプの接着剤などがあるが、以下で説明する本発明の実施例ではアクリル系粘着剤を使用している。
【0017】
該耐熱性フッ素樹脂体とする工程の前に、該接着剤塗布フッ素含有樹脂体を酸素存在下においてフッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱して該接着剤を熱処理する工程を有するようにすることができる。具体的には、この熱処理によって、接着剤が収縮することなく固化することにより、フッ素含有樹脂体の形状を維持するようにすることができる。
【0018】
該接着剤塗布フッ素含有樹脂体とする工程においては、基板上に、該フッ素含有樹脂体を該接着剤により接着して該接着剤塗布フッ素含有樹脂体とすることが好ましい。
【0019】
該基板は、金属、樹脂、セラミックから選んだ1つから形成することができる。
【0020】
該加熱して該接着剤を処理させる工程は、大気中で温度260℃〜330℃で行うようにすることができる。
【0021】
該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程においては、該フッ素含有樹脂体を温度260℃〜330℃、酸素濃度50ppm以下において10kGy〜100kGyの電離性放射線を該フッ素含有樹脂体に照射するようにすることができる。
【0022】
該接着剤は、アクリル系又はシリコーン系粘着剤、若しくはエポキシ系又はシリコーン系接着剤とすることができる。
【0023】
該フッ素含有樹脂材は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体のうちのいずれか1つとすることができる。
【0024】
該着電を行う工程に次いで、さらに該耐熱フッ素樹脂体に加熱を行うようにし、この着電を行う工程及び加熱を行う工程を2回以上繰り返して耐熱性帯電フッ素樹脂体を形成するようにすることができる。以下の実施例の説明で述べるとおり、この着電と加熱とを2回以上繰り返すことにより、耐熱性フッ素樹脂への帯電量を大幅に増やすことができることが分かった。
【0025】
該フッ素を含有する樹脂体は、シート状とすることができる。
【0026】
前記耐熱性帯電フッ素樹脂体は、着電処理によって負の電荷を保持するようにすることができる。
【0027】
更に、本発明は、
フッ素含有樹脂体を用意する工程と、
該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂体に着電を行う工程と、
該着電を行う工程に次いで、該耐熱性フッ素樹脂体に加熱を行う工程と、
を有し、
該着電を行う工程及び該加熱を行う工程を少なくとも2回以上繰り返して耐熱性帯電フッ素樹脂体を形成する耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法を提供する。
【0028】
更に、この方法では、
該着電を行う工程を、常温、大気中において−500V±200Vのコロナ放電によって行い、
該加熱を行う工程を、温度260℃〜330℃で行うようにすることができる。
【0029】
また、該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程においては、該フッ素含有樹脂体を温度260℃〜330℃、酸素濃度50ppm以下において10kGy〜100kGyの電離性放射線で照射するようにすることができる。
【0030】
本発明では、更に、この製造方法によって製造された耐熱性帯電フッ素樹脂体をエレクトレット層として備えたエレクトレットコンデンサを提供する。
【0031】
更に、本発明は
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
背面電極上に接着剤によりフッ素含有樹脂層を接着する工程と、
該フッ素含有樹脂層を、該フッ素含有樹脂層を、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線で照射することより架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電してエレクトレット層を形成する工程と
を有し、
該接着剤層が、耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとすることができる。
【0032】
該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程の前に、該接着剤塗布フッ素含有樹脂体を酸素存在下においてフッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱して該接着剤を熱処理する工程を有するようにすることができる。
【0033】
また、本発明は、
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
半導体等の電気エレメントを実装した多数の電気回路基板が縦横に並んで一体化している形状の電気回路基板集合体を用意する工程と、
該背面電極を有する多数の背極基板が縦横に並んで一体化している形状の背極基板集合体を用意する工程と、
該背極基板集合体の各背面電極上に接着剤によりフッ素含有樹脂体の樹脂層を接着する工程と、
該樹脂層が接着された背極基板を、フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電してエレクトレット層を形成する工程と、
多数のスペーサが縦横に並んで一体化している形状のスペーサ集合体を用意する工程と、
多数の振動膜支持枠が縦横に並んで一体化している形状で、片面に振動膜素材を張った振動膜ユニット集合体を用意する工程と、
これら各集合体を積層固定して積層集合体とする工程と、
該積層集合体を切断することにより、個々のエレクトレットコンデンサマイクロホンとする工程と、
を有し、該接着剤が、該耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとする。
【0034】
この場合、
該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程の前に、該接着剤塗布フッ素含有樹脂体を酸素存在下においてフッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱して該接着剤を熱処理する工程を更に有するようにすることができる。
【0035】
更にまた、本発明は、
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
半導体等の電気エレメントを実装した多数の電気回路基板が縦横に並んで一体化している形状の電気回路基板集合体を用意する工程と、
該背面電極を有する多数の背極基板が縦横に並んで一体化している形状の背極基板集合体を用意する工程と、
接着剤を塗布したフッ素含有樹脂体の樹脂シートを、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂シートを形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂シートを型抜きして該集合背極基板の各背極基板に対応する耐熱性フッ素樹脂体を形成し、該耐熱性フッ素樹脂体を各背極基板上に積層固定する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂体に着電してエレクトレット層とする工程と、
多数のスペーサが縦横に並んで一体化している形状の集合スペーサを用意する工程と、
多数の振動膜支持枠が縦横に並んで一体化している形状で、片面に振動膜素材を張った集合振動膜ユニットを用意する工程と、
これら集合体を積層固定して積層集合体とする工程と、
該積層集合体を切断することにより、個々のエレクトレットコンデンサマイクロホンとする工程と、
を有し、該接着剤が、該耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとしたエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法を提供する。
【0036】
該製造方法は、更に、
該電離性放射線を照射して該耐熱性フッ素樹脂シートを形成する前に、該フッ素含有樹脂の樹脂シートを、酸素存在下において該樹脂シートの結晶融点以上の温度で加熱する工程と、
該着電を行う工程に続いて加熱を行う工程と、
を有し
該着電を行なう工程とこれに続く加熱を行なう工程とを2回以上繰り返すし、該耐熱性フッ素樹脂体をエレクトレット層とするようにすることができる。
【0037】
また、本発明は、
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、背面電極上にフッ素含有樹脂層を接合する工程と、
該フッ素含有樹脂層を、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することより架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電を行う工程と、
該着電を行う工程に次いで、該耐熱性フッ素樹脂体に加熱を行う工程と、
を有し、
該着電を行う工程及び該加熱を行う工程を少なくとも2回以上繰り返して該耐熱性フッ素樹脂体をエレクトレット層とするエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法を提供する。
【0038】
更に、本発明は、
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
半導体等の電気エレメントを実装した多数の電気回路基板が縦横に並んで一体化している形状の電気回路基板集合体を用意する工程と、
該背面電極を有する多数の背極基板が縦横に並んで一体化している形状の背極基板集合体を用意する工程と、
該背極基板集合体の各背面電極上にフッ素含有樹脂体の樹脂層を形成する工程と、
該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において、該樹脂層に電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電をし、続いて加熱を行うことを少なくとも2回以上繰り返し、該耐熱性フッ素樹脂層をエレクトレット層とする工程と、
多数のスペーサが縦横に並んで一体化している形状のスペーサ集合体を用意する工程と、
多数の振動膜支持枠が縦横に並んで一体化している形状で、片面に振動膜素材を張った振動膜ユニット集合体を用意する工程と、
これら各集合体を接合して積層集合体とする工程と、
該積層集合体を切断することにより、個々のエレクトレットコンデンサマイクロホンとするエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0040】
図1は本発明の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法を示す工程図である。
【0041】
図示のように、この製造方法は、工程J1〜J3からなる。
【0042】
工程J1では、図2及び図3に示すように、シート状とされたFEP、PTFE、PFA等のフッ素含有樹脂体材料2を用意し、その一側面に粘着層3を形成し、基板4に貼り付けられる。具体的には、フッ素含有樹脂体2は、例えば12.5μ又は25μmの厚さとされ、その表面にコロナ処理を行なって表面を活性化した後、例えば厚さ3μm程度の粘着剤層3を形成し、該粘着剤層を基板4の上面に150℃前後の温度で熱圧着する。基板は、金属、樹脂、セラミック等から作られたものとされる。
【0043】
工程J2では、フッ素含有樹脂体に対して加熱処理と電離性放射線照射処理を行なうことによって架橋した耐熱性フッ素樹脂体に変化させる。具体的には、酸素存在下、すなわち空気中で、フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度の260℃〜330℃で5分程度の前加熱処理を行なう。この前加熱処理において、基板4に接着されたフッ素含有樹脂体2は、その粘着剤層3が固化する。この前加熱処理に引き続き結晶融点以上の温度、酸素濃度50ppm以下の雰囲気中で加速電圧500keV〜800keVで電子線量が10kGy〜100kGyとなるように電子線照射を行なう(上記のような条件の下で行なう電離性放射線照射処理を、本明細書では、「EB処理」とする)。この加熱EB処理により溶融したフッ素含有樹脂体に架橋反応が起こり耐熱性フッ素樹脂体に変化する。
【0044】
工程J3では、雰囲気温度を室温にもどし、工程J2で耐熱性としたフッ素樹脂体に大気中にてコロナ放電による着電処理を行なって耐熱性帯電フッ素樹脂体が完成する。
【0045】
下記の表1は、フッ素含有樹脂体をFEPとして、図3に示す如くアクリル系粘着剤にて基板に接着し、図3に示す如き基板付きFEPを作り、これに加熱EB処理の条件を異ならせて作成したサンプルを、実装時に行なわれるリフロー温度を考慮した耐熱試験を行った結果である。
【0046】
表1のEB処理条件に示す如く、温度を260℃,280℃,300℃の3温度とし、各温度に対してEB照射の線量を10kGy、50kGy、100kGyの3レベルで照射し、資料記号に示すA1〜C3の9種類のサンプルを作成した。尚、前記の温度条件は、上述のように260℃〜330℃の範囲内とすることが可能であるが、製品としてのエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造という点から考慮した場合、FEPの高温による軟化変形を避けるために、300℃以下が適当であると考えられる。また資料Dは比較のために示したEB処理をしないフッ素含有樹脂体である。
【0047】
表1に示す電荷残存率(%)は、前記各サンプルを200℃のホットプレートに載せ、経過時間毎に表面電位を測定し、その電位の減少値から電荷残存率を算出したものである。尚、経過時間としてはリフロー時に高温にさらされる2〜3分を考慮して、1〜5分までは1分間隔とし、さらに厳しい条件として10分経過時の電荷残存率を測定した。
【0048】
【表1】
図4は、表1の結果を示すものである。 表1及び図4から分かるように、資料記号Dに示す未処理現状品の電荷残存率が1分後に4分の1、2分後に10分の1、3分後に零になるのに対し、EB処理を行なった資料記号A,B,Cは何れも10分経過後でも電荷残存率を有しており、EB処理による電荷残存効果は明らかである。
【0049】
さらに、EB処理条件毎の効果を比較してみると、温度条件に付いては資料記号Cの300℃が1番良く、資料記号Bの280℃が2番目で、資料記号Aの260℃が3番目であることがわかる。さらにEB照射の線量条件としては、資料記号Bは少し異なる結果となっているが、資料記号A,Cについては10kGyが1番良く、50kGyが2番目ではあるがかなり良く、100kGyは3番目でやや劣っていることがわかる。
【0050】
上記各サンプルの中からリフロー温度を考慮した判定を行なうと、リフロー時に高温にさらされる2〜3分を経過した条件下で電荷残存率が80%以上であるサンプルは資料記号C1,C2であり、それに準ずるのが資料記号C3,B3であるが、資料記号B3が傾向的に若干異常値であることを考慮すると、EB処理条件としては、温度条件は300℃、EB照射の線量条件は10〜50kGyが特に適していることがわかる。ただし、例えばECMに期待される性能やエレクトレット層の変形許容度を考慮すると前記エレクトレット層に対する電離性放射線の照射を、温度260℃〜330℃で、照射線量10kGy〜100kGyにて行なうことが可能である。
【0051】
また各サンプルについては、60℃、湿度95%の環境下での耐湿試験を行なったが、いずれのサンプルについても、60時間放置後の残存率は95%〜97%、さらに300時間放置後での残存率は93%〜95%であり、まったく問題は無かった。
【0052】
このような結果の原因としては次のようなことが考えられる。
【0053】
工程J2において前加熱処理を行なうと粘着剤が固化し、また、前加熱処理に続いて加熱EB処理が行なわれるによりフッ素含有樹脂体としてのFEPは架橋される。この粘着剤の固化とフッ素含有樹脂体の架橋により、当該フッ素含有樹脂体は、その後、加熱されても、該フッ素含有樹脂体内での分子運動は起こり難くなり、このため電荷の散逸が少なく電化保持性能が向上する。
【0054】
以上の耐熱性試験は、フッ素含有樹脂体としてFEPについて示したが、PTFE及びPFAに付いても同様の結果がえられた。
【0055】
図5は図3に示すように粘着剤により基板に接着したシート状のFEPと、基板に接着しないFEP単体とに対して、工程J2の処理を行い、次いで工程J3において帯電処理を行ったものを200℃のホットプレートに載せ、経過時間毎に表面電位を測定し、その電位の減少値から電荷残存率を算出したものである。尚、経過時間としてはリフロー時に高温にさらされる2〜3分を考慮して、1〜5分までは1分間隔とし、さらに厳しい条件として10分経過時の電荷残存率を測定した。
【0056】
図5に示す資料N1は図3のように基板に接着したFEP、資料N2は基板に接着しなかったFEP単体のデータを示すものである。資料N2の電荷残存率が1分後に80%、2分後に70%、5分後に45%、10分後には20%まで低下しているのに対し、本願発明の資料N1はアクリル系の粘着剤を使用したものであるが、5分後で80%、10分経過後でも65%の電荷残存率を有しており、基盤接着による電荷残存効果は明らかである。但し、資料N2は、図4に示した資料D、すなわち、工程J2の処理を受けていないものに比べれば、高い電荷残存率を示していることが分かる。
【0057】
図6は、図3に示すと同様に、シート状FEP2をアクリル系粘着剤3により基板4に接着し、J2工程を行なった場合の前後の状態を示し、図7は、シート状FEP2をゴム系粘着剤により基板に接着し、J2工程を行なった場合の前後の状態を示す。
【0058】
図6に示すアクリル系粘着剤を使用したものでは、工程J2の処理前後の状態にほとんど形状の変化が無く、FEP2の円形が保たれているのに対し、図7に示す粘着剤3としてゴム系粘着剤を使用したものでは、工程J2の処理後の状態では粘着剤3が極端に収縮していまい、この結果、FEP2の円形が楕円形に変形している。
【0059】
従って、図6に示す粘着剤3としてアクリル系を使用したものでは、前述の粘着剤3固化の効果、及び、FEPの架橋の効果に基づき、該FEPがその後に帯電処理された後に加熱されても、帯電された電子は安定して保持され、高い電荷残存率を示したのに対し、図7に示す粘着剤3としてゴム系粘着剤を使用したものでは、工程J2の処理によるFEPの分子運動を抑制する効果が少なく、工程J2処理後に帯電処理されたものを加熱したものの電荷残存率は低くなることが分かった。従って、ゴム系粘着剤を使用する場合には、工程J2の処理時に、このようなFEPの収縮を防止するための工夫が必要である。換言すれば、接着剤は、工程J2の処理が行われるときに、フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものであればよく、アクリル系の粘着剤のほか、シリコーン系の粘着剤、熱硬化タイプ、紫外線効果タイプの接着剤などが考えられる。なお、粘着剤3としてシリコーン系粘着剤を使用した場合にもアクリル系粘着剤を使用した場合と同様な形状維持効果が得られることがわかった。
【0060】
以上で説明したところでは、図1に示す工程J3での着電処理は、常温、大気中において一回のみ行なうことを前提としていたが、この着電工程の後に加熱処理を行う工程を繰り返しを行うことにより、電化保持量を増大することができることが分かった。
【0061】
表2は、工程J2において温度300℃、EB照射の線量条件は10〜50kGyの加熱EB処理条件(図3に示す資料記号Cの条件)にて耐熱性フッ素樹脂体に改質されたFEPのサンプル10個(資料記号、S1〜S10)に対し、着電工程と加熱処理との繰り返しを15回行なった結果である。
【0062】
すなわち、常温、大気中において−500Vのコロナ放電により着電処理を行い、この着電処理されたサンプルを285℃±25℃の高温状態で約10秒間加熱処理を行う工程を1回から15回行なった時の表面電荷の測定値である。なお、加熱処理の温度条件としては完成したECMがリフロー実装される時の温度条件である260℃より高い温度条件が必要であるが、あまり高温にするとフッ素樹脂体2が熱劣化をおこすので、その温度条件としては下限がリフロー温度である260℃より高く、上限が熱劣化を起こさない330℃以下が適切である。また表2の表面電荷の測定値は−Vではあるが表の作成上、−を省略して数値のみを示した。
【0063】
【表2】
表2において、1回目の繰り返し処理における10個のサンプルの電荷保持量の平均値は−67.6Vと低く、この値は繰り返し処理を行なわない場合の電荷保持量と略同じであり、ほとんど効果が無いことがわかる。
【0064】
また、2回目の繰り返し処理における電荷保持量の平均値は−83.8V、3回目が−85.7V、4回目が−100.5V、5回目が−124.3Vと増加し、6回目で−135.8Vと最高値を記録した後7回目が−135.1V、8回目が−129.6V、9回目が125.5V、10回目が−116.7V、15回目が−110.7Vと僅かづつ減少しているが−100V以上の電荷保持量を維持している。
【0065】
この結果より、繰り返し処理は4回以上行なうことでかなりの効果が得られることが分かる。この繰り返しの効果はサンプルとなる耐熱性フッ素樹脂体の大きさや形状によって影響を受けるものと思われるが、効果を得る為には少なくとも4回以上の繰り返し処理を行なうことが望ましい。
【0066】
また、表2に見られるように資料記号S3、S6のように電荷保持量の多いサンプルや資料記号S2,S10のように電荷保持量の少ないサンプルがあるが、これはサンプルとなるFEPの形状や厚さのバラツキ及び前記電極基板4への接着状態のバラツキによって生じるものであるが、繰り返し処理に対する電荷保持量変化の傾向はすべてのサンプルにおいて共通している。
【0067】
上記着電及び加熱の繰り返し処理と電荷保持量の増加との関係を説明する。
【0068】
耐熱性フッ素樹脂体に対する電荷の帯電は所定の温度下で自由な分子運動の起こり難い個所で行なわれる。この分子運動の起こり難い個所は架橋ポイントや微結晶ポイント等の分子が配向した個所であり、すなわち分子間相互作用が強い個所である。
【0069】
また、分子運動の起こり難い個所とはイメージ的には一種の深い量子井戸のようなものであり、その量子井戸に相当する個所が生成されて、その量子井戸に電荷が落ち込んで安定状態を形成することで帯電が行なわれると考えられる。
【0070】
そして、着電処理によって負の電荷を保持した状態で加熱処理を行なうと、微結晶ポイント等の配向成分が増加し、この着電及び加熱の繰り返し処理を行なうことで分子運動の起こり難い個所が増加して帯電性能が向上していくものと考えられる。
【0071】
これを量子井戸の状態でみると、量子井戸に電荷が帯電している状態で加熱処理を行なうと単なる加熱処理に比べて量子井戸の深さが増したり、量子井戸の数を増加させて容量を大きくする効果があり、この容量が大きくなった量子井戸に注入された電荷は総じて安定性を増すことで帯電性能が向上していくものと考えられる。
【0072】
また、表2の6回目以降のデータに見られるように、着電及び加熱の繰り返し処理によって極大値に達した後、さらに着電及び加熱の繰り返し処理を行なうと電荷保持量が僅かに減少していくが、この理由としては量子井戸の深さ並びに数量が何等かの原因により、浅くなったり少なくなったりするものと考えられる。すなわち量子井戸に存在するマイナスの電荷によりFEPフィルムの架橋ポイント或いは微結晶ポイントが分解していくので電荷保持性能が減少して行くことが考えられる。
【0073】
しかし、この減少量は僅かであるため、着電及び加熱の繰り返し処理回数を極大値付近の回数とすることで、容易に電荷保持量増加の効果を得ることが可能である。
【0074】
次に本発明に係るECMについて記載する。図8は本発明の耐熱性帯電フッ素樹脂体をエレクトレット層とするECMの断面図、図9は図8に示すECMを構成する各エレメントの分解斜視図である。
【0075】
図8において20は回路基板であり、該回路基板20は絶縁基板20aにより構成され、接続や出力のための電極20bが膜形成されるとともに電子部品である集積回路11が実装されている。30は絶縁材よりなる背面基板であり、その上面側に背面電極40が形成され、該背面電極40の上面にエレクトレット層5が膜形成されるとともに背面基板30を貫通する貫通孔15が設けられている。6はスペーサであり開孔6aを有する。7は振動膜ユニットであり、該振動膜ユニット7は絶縁材よりなる振動膜支持枠8の下面側に張設された振動膜取り付け電極9に導電性の振動膜10を設けることにより形成されている。
【0076】
具体的には、フッ素含有樹脂体である12.5μmもしくは25μm厚さのFEPのシート材を粘着剤を介して150℃前後の温度で背面電極40の上面に熱圧着し、この状態で
酸素存在下、すなわち空気中で、FEPの結晶融点以上の温度である260℃〜330℃で5分程度の前加熱処理を行なう。この処理により粘着剤3が固化する。
【0077】
これを更に、電離性放射線照射装置内に投入する。電離性放射線照射装置内において、FEPの結晶融点以上の温度である300℃前後の雰囲気で、かつ酸素濃度50ppm以下の酸素不存在下において、500〜800KeVの電子線強度で10〜100kGy程度の放射線量で電離性放射線を照射することによって(図1の工程J2)FEPを架橋した耐熱性フッ素樹脂に変化させる。
【0078】
さらに、前記背面基板30を着電装置に投入することにより、耐熱性フッ素樹脂に着電処理を行って(図1の工程J3)耐熱性帯電フッ素樹脂体を完成させる。この耐熱性帯電フッ素樹脂体が耐熱性に優れたエレクトレット層5となる。
【0079】
上記各エレメントは図9に示す如く、前記回路基板20、背面基板30、スペーサ6、振動膜ユニット7を、各々接着材を介して積層することにより、ECM100が完成する。
【0080】
そして、この完成されたECM100は携帯電話等の装置に実装されることになるが、前記装置内のマザーボードに形成された配線電極に対して、ECM100の出力電極20bを半田接続する場合、リフロー装置による150℃〜200℃程度のプリヒートを90〜120秒行い、その後10秒間程度の230℃以上の高温処理を行っても、前記耐熱性帯電フッ素樹脂体であるエレクトレット層5の着電状態の劣化が小さく問題とはならない。
【0081】
上記構成を有するECM100においては、表面に導電膜を有する振動膜9と、表面にエレクトレット層5が形成された背面電極40とがスペーサ6を挟んでコンデンサを形成する。そして空気の振動により振動膜9が変位すると、コンデンサがこの変位を電気信号に変換し、この電気信号が振動膜取り付け電極12から各接続電極(図示は省略)を介して回路基板20に導かれ、集積回路11で処理された後に回路基板20の裏面に設けられた出力電極20bより出力される。貫通孔15の存在によって振動膜9の動作がスムーズになり、音響特性が確保される。
【0082】
次に、図10〜図12によりECM100の最も生産性の良い、集合体方式の製造方法を説明する。
【0083】
図10(A)〜図10(D)は製造工程で用いる各集合部品の斜視図である。図10(A)の集合振動膜ユニット7Lは、図9の振動膜ユニット7に相当する領域を格子状に多数含む大型の集合体で、下面に振動膜9を接合してある。同様に図10(B)の集合スペーサ6Lは、図9のスペーサ6の領域を格子状に多数含む集合体である。
【0084】
図10(C)の集合背面基板30Lは、図9の背面基板30の領域を格子状に多数含む大型の基板であり、多数の背面電極40とエレクトレット層5を配置してある。なお、エレクトレット層5の製造は集合背面基板30Lの状態において、図1の工程J1〜J3で行うものである。図10(D)の集合回路基板20Lは、図9の回路基板20の領域を格子状に多数含む大型の基板で、集積回路11を多数搭載したものである。なお、図10(A)〜図10(D)は概略図であるから描いてないが、各部品の集合体には電極パターンや、部品間の導通のためのスルーホールや放音用の貫通孔等が設けてある。
【0085】
ECMの製造に当たっては、このような部品の集合体、すなわち集合回路基板20L、集合背面基板30L、集合スペーサ6Lそして集合振動膜ユニット7Lをそれぞれ製作して準備する。そしてこれらを図10(A)〜図10(D)の順序に重ねて接合する。接合は各集合体の表面に接着剤を塗布して行ってもよいし、あるいは接着剤をシート状にしたものを層間に配置して重ね、加熱して接合することもできる。接着剤シートは図示を省くが、図10(B)の集合スペーサ6Lに似た形状のものを用いればよい。
【0086】
前記の工程によって、図11に示すように各集合体を積層したものである集合ECM100Lが得られ、これは多数のECM100が縦横につながって一体化しているものである。この集合ECM100Lを粘着シートに貼って、各ECM領域間の境界線に沿ってカッターでダイシングすれば、分割された各片がそれぞれ図12に示すECM100として完成する。図10(A)〜図10(D)、図11は説明のための模式図であるから、部品の素材である各集合体上には3行4列の12個の製品領域しか描いてないが、実際には1枚の集合体に数百個の製品領域を配置して量産することができる。
【0087】
次に図13により本発明におけるECM100の、集合体方式の製造方法の工程を説明する。
【0088】
図13において工程E1は集合振動膜ユニット7Lの製造工程であり、絶縁材料の集合振動膜支持枠に導電性の振動膜を接着して一体化する。工程E2は集合スペーサ6Lの製造工程であり、スペーサ素材に複数の開孔を形成する。
【0089】
工程E3は集合背面基板30Lの製造工程であり、集合絶縁基板に複数の背面電極と前記シート材のFEPにアクリル系粘着剤を接着した粘着剤付きFEPを積層して集合背面基板30Lを形成する。加熱処理後、EB処理を経た後、この集合背面基板30Lを電離性放射線照射装置内において、前記FEPの結晶融点以上の温度である300℃の雰囲気で、かつ酸素濃度50ppm以下の酸素不存在下において、10〜100kGy程度の電離性放射線を照射する過熱EB処理を行なうことによって前記粘着剤付きFEP層を架橋した耐熱性フッ素樹脂に変化させる。
【0090】
さらに、この加熱EB処理を行なった集合背面基板30Lを着電装置に投入することにより、加熱EB処理によって耐熱性フッ素樹脂に変化した粘着剤付きFEP層に着電を施してエレクトレット層5を構成することで耐熱性の集合背面基板30Lを完成させる。
【0091】
工程E4は集合回路基板20Lの製造工程であり、配線や接続電極等を有する集合配線基板に集積回路等の電気エレメントを実装して前記集合回路基板20Lを構成する。工程5は集合ECM製造工程であり、前記工程E1〜E4で製造された各集合エレメントを積層し、接着剤により接合一体化して図11に示す集合ECM100Lを構成する。工程E6は完成ECM製造工程であり、工程E5で製造された集合ECM100Lを切断・分離して図12に示すECM100を完成させる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
上記のごとく、工程J1においてフッ素含有樹脂体を基板に接着し、これに工程J2の処理をして形成した耐熱性帯電フッ素樹脂体は、高温条件下において電荷の減少が少ないため、リフロー等の高温実装が行なわれるECMのエレクトレット層に適するものではあるが、図5で示した資料N2からも分かるようにフッ素含有樹脂体を基板に接着しないで工程J2の処理をして形成したものも、図4において資料Dとして示した工程J2の処理を施さないものに比べて、優れた電荷保持力を有するものであり、特に、表2に示したように工程J3において着電工程と加熱処理との繰り返し行うことにより電荷保持量を大幅に増加することが可能であるので、そのようにして作った耐熱性帯電フッ素樹脂は、エレクトレット以外の耐熱帯電性を必要とされる種々の材料として使用することができる。例えば、フッ素含有樹脂体を不織布もしくは繊維状として、工程J2及び工程J3の処理をして、それにより形成された耐熱性帯電フッ素樹脂により高温条件化で使用されるエアコンや空調用のフイルターを形成することも可能である。不織布とした耐熱性帯電フッ素樹脂体は表面積が大きく成るため、空気中や排気ガス中の微粒子の吸着力が強くなり、防塵マスクや花粉症用のマスク等にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態である耐熱性帯電フッ素樹脂体を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態である耐熱性帯電フッ素樹脂体を示す断面図である。
【図4】本発明の粘着剤付きFEPの耐熱特性を示す特性図である。
【図5】本願発明の粘着剤付きFEPと粘着剤を接着していないFEP単体との耐熱特性を示す特性図である。
【図6】アクリル系粘着剤を用いた耐熱性帯電フッ素樹脂体10の平面と断面を示すもので、(a)は粘着剤付きFEPの状態、(b)は加熱EB処理を行なった後の状態を示す。
【図7】ゴム系粘着剤を用いた耐熱性帯電フッ素樹脂体10の平面と断面を示すもので、(a)は粘着剤付きFEPの状態、(b)は加熱EB処理を行なった後の状態を示す。
【図8】本発明の第3の実施の形態である耐熱性帯電フッ素樹脂体をエレクトレット層とするECMの断面図である。
【図9】図8に示すECMを構成する各エレメントの分解斜視図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態である集合ECM100Lの製造工程で用いる各集合部品の斜視図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態である集合ECM100Lの完成体斜視図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態である単体ECM100の完成体斜視図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態である集合ECM100Lの製造工程図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性に優れた耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法及びその耐熱性帯電フッ素樹脂体を用いたエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より帯電樹脂体を利用した電気製品としては例えばエレクトレットコンデンサマイクロホンが知られている。
【0003】
従来のエレクトレットコンデンサマイクロホン(以下ECMと略記する)は、例えば特開2002−345087号公報に開示されている如く、帯電樹脂体であるエレクトレット層の形成には金属製の背面基板上に樹脂層を形成し、この樹脂層に帯電処理を行なうことによりエレクトレット層を形成する方式や、樹脂製またはセラミック製の背面基板上に背面電極を膜形成し、この背面電極上に前記エレクトレット層を形成する方式が行われている。そして、前記背面基板を振動膜ユニット、スペーサ、外部接続電極を有する回路基板等と積層して一体化することによりECMを完成させている。
【0004】
そして、上記構成を有するECMは、前記民生用機器等に実装される場合、他の電気エレメントが実装されている回路基板に半田付け等の手段によって組みつけられる事になるが、従来のECMはエレクトレット層を構成する帯電樹脂体の耐熱性が良くないため、リフロー装置による実装が出来ないという欠点がある。
【0005】
すなわち、市場ニーズとしては実装コストの面からリフロー装置による半田実装が求められているが、このリフロー装置による半田実装は150℃〜200℃程度のプリヒートを90〜120秒行い、その後230℃〜260℃の高温で100秒間程度リフローされるため、この高温条件によって前記ECMのエレクトレット層に着電されている電荷が減衰することで、マイクロホンとしての性能が維持できなくなるという問題がある。
【0006】
上記帯電樹脂体の欠点である耐熱性の問題を解決する方式として従来よりいくつかの提案が成されている。例えば特表2001−518246号公報に開示されているECMは着電手段として耐熱性に問題のある有機質の帯電樹脂体に代えて無機質のシリコンを用いた半導体マイクロホンを構成している。しかしこの半導体マイクロホンは耐熱性の問題が無くリフロー装置による実装を可能としているが、反面コストアップになるという問題がある。
【0007】
また、特開2000−32596号公報には従来の有機質の帯電樹脂体を改良して、リフロー装置による半田実装を可能としたECMが開示されている。すなわち、エレクトレット層を構成するための樹脂体を金属板に融着した背面基板を、着電前に約200℃で1〜6時間程度の高温アニールを施し、その後着電して耐熱性の高いECMを構成するものである。
【0008】
また、ECMとは直接関係はないが、ポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと略記する)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(以下FEPと略記する)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下PFAと略記する)等のフッ素を含有する樹脂体に、ある温度条件下で、かつ酸素不存在下において電離性放射線を照射して架橋させることにより、放射線環境下での耐熱性と機械特性を向上させた改質フッ素樹脂が開示されている。
【0009】
すなわち、特許第3317452号公報にはPTFE等のフッ素を含有する樹脂体をその結晶融点以上の温度で、かつ酸素不存在下において所定量の電離性放射線を照射して架橋させた改質フッ素樹脂が開示されており、さらに特開平11−49867号公報にはFEPに結晶融点付近の温度で、かつ酸素不存在下において所定量の電離性放射線を照射して架橋させた改質フッ素樹脂が開示されている。
【0010】
上記改質フッ素樹脂の技術は、耐熱性と耐薬品に優れた特性を有し、産業用や民生用として広く利用されているフッ素樹脂が、その欠点としては放射線に対する崩壊型分子構造を有するため、原子力施設等の放射線環境下での使用ができないことを改善するために行われたものであり、電離性放射線の照射条件を適正化して架橋を行わせる事によって放射線環境下での耐熱性や機械特性を飛躍的に向上させたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記エレクトレット層として帯電樹脂体を用いて、市場ニーズであるリフロー実装が可能なECM等の開発を目的として前記背景技術を検討した結果、前記特開2000−32596号公報に開示されている技術は基本的に樹脂に対するアニーリング技術であるため、高温下に長時間放置する必要があり、製造時間が長くなる欠点に加えて、時間管理や温度管理の変化にともなう製品の安定性にも問題がある。
【0012】
そこで、本出願人は特許第3317452号公報や特開平11−49867号公報に開示された電離性放射線を照射して架橋させた改質フッ素樹脂に着目した。
【0013】
すなわち、架橋させた改質フッ素樹脂が放射線環境下等の悪い環境でも高い耐熱特性を示すということは、前記改質フッ素樹脂を帯電させた帯電樹脂体をエレクトレット層として用いることにより、リフロー条件下での電荷減衰の防止に効果があるものと想定した。
【0014】
本発明の目的は、上記電離性放射線の照射技術を応用して、従来困難とされていたリフロー実装等の高温に対応可能な耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法と、その耐熱性帯電フッ素樹脂体を用いたECMの製造方法を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は、
フッ素含有樹脂体を用意する工程と、
該フッ素含有樹脂体の一側面に接着剤の層を形成して接着剤塗布フッ素含有樹脂体とする工程と、
該接着剤塗布フッ素含有樹脂体に、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射して架橋して耐熱性フッ素樹脂体とする工程と、
該耐熱性フッ素樹脂体に着電処理を行う工程と
を有し、
該接着剤層が、耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとした耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法を提供する。
【0016】
後述する実施例の説明において述べるように、耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用する接着剤によって、耐熱性フッ素樹脂に対する着電が安定状態で行われることが分かった。すなわち、本発明における接着剤とは、エレクレット形成のために行われる、例えば、フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱処理においても、それ自体が実質的に収縮することがなく、フッ素含有樹脂の形状を維持するよう作用するものであればよい。具体的には、アクリル系、シリコーン系の粘着剤、エポキシ系、シリコーン系の接着剤、熱硬化タイプや紫外線硬化タイプの接着剤などがあるが、以下で説明する本発明の実施例ではアクリル系粘着剤を使用している。
【0017】
該耐熱性フッ素樹脂体とする工程の前に、該接着剤塗布フッ素含有樹脂体を酸素存在下においてフッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱して該接着剤を熱処理する工程を有するようにすることができる。具体的には、この熱処理によって、接着剤が収縮することなく固化することにより、フッ素含有樹脂体の形状を維持するようにすることができる。
【0018】
該接着剤塗布フッ素含有樹脂体とする工程においては、基板上に、該フッ素含有樹脂体を該接着剤により接着して該接着剤塗布フッ素含有樹脂体とすることが好ましい。
【0019】
該基板は、金属、樹脂、セラミックから選んだ1つから形成することができる。
【0020】
該加熱して該接着剤を処理させる工程は、大気中で温度260℃〜330℃で行うようにすることができる。
【0021】
該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程においては、該フッ素含有樹脂体を温度260℃〜330℃、酸素濃度50ppm以下において10kGy〜100kGyの電離性放射線を該フッ素含有樹脂体に照射するようにすることができる。
【0022】
該接着剤は、アクリル系又はシリコーン系粘着剤、若しくはエポキシ系又はシリコーン系接着剤とすることができる。
【0023】
該フッ素含有樹脂材は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体のうちのいずれか1つとすることができる。
【0024】
該着電を行う工程に次いで、さらに該耐熱フッ素樹脂体に加熱を行うようにし、この着電を行う工程及び加熱を行う工程を2回以上繰り返して耐熱性帯電フッ素樹脂体を形成するようにすることができる。以下の実施例の説明で述べるとおり、この着電と加熱とを2回以上繰り返すことにより、耐熱性フッ素樹脂への帯電量を大幅に増やすことができることが分かった。
【0025】
該フッ素を含有する樹脂体は、シート状とすることができる。
【0026】
前記耐熱性帯電フッ素樹脂体は、着電処理によって負の電荷を保持するようにすることができる。
【0027】
更に、本発明は、
フッ素含有樹脂体を用意する工程と、
該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂体に着電を行う工程と、
該着電を行う工程に次いで、該耐熱性フッ素樹脂体に加熱を行う工程と、
を有し、
該着電を行う工程及び該加熱を行う工程を少なくとも2回以上繰り返して耐熱性帯電フッ素樹脂体を形成する耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法を提供する。
【0028】
更に、この方法では、
該着電を行う工程を、常温、大気中において−500V±200Vのコロナ放電によって行い、
該加熱を行う工程を、温度260℃〜330℃で行うようにすることができる。
【0029】
また、該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程においては、該フッ素含有樹脂体を温度260℃〜330℃、酸素濃度50ppm以下において10kGy〜100kGyの電離性放射線で照射するようにすることができる。
【0030】
本発明では、更に、この製造方法によって製造された耐熱性帯電フッ素樹脂体をエレクトレット層として備えたエレクトレットコンデンサを提供する。
【0031】
更に、本発明は
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
背面電極上に接着剤によりフッ素含有樹脂層を接着する工程と、
該フッ素含有樹脂層を、該フッ素含有樹脂層を、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線で照射することより架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電してエレクトレット層を形成する工程と
を有し、
該接着剤層が、耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとすることができる。
【0032】
該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程の前に、該接着剤塗布フッ素含有樹脂体を酸素存在下においてフッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱して該接着剤を熱処理する工程を有するようにすることができる。
【0033】
また、本発明は、
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
半導体等の電気エレメントを実装した多数の電気回路基板が縦横に並んで一体化している形状の電気回路基板集合体を用意する工程と、
該背面電極を有する多数の背極基板が縦横に並んで一体化している形状の背極基板集合体を用意する工程と、
該背極基板集合体の各背面電極上に接着剤によりフッ素含有樹脂体の樹脂層を接着する工程と、
該樹脂層が接着された背極基板を、フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電してエレクトレット層を形成する工程と、
多数のスペーサが縦横に並んで一体化している形状のスペーサ集合体を用意する工程と、
多数の振動膜支持枠が縦横に並んで一体化している形状で、片面に振動膜素材を張った振動膜ユニット集合体を用意する工程と、
これら各集合体を積層固定して積層集合体とする工程と、
該積層集合体を切断することにより、個々のエレクトレットコンデンサマイクロホンとする工程と、
を有し、該接着剤が、該耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとする。
【0034】
この場合、
該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程の前に、該接着剤塗布フッ素含有樹脂体を酸素存在下においてフッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱して該接着剤を熱処理する工程を更に有するようにすることができる。
【0035】
更にまた、本発明は、
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
半導体等の電気エレメントを実装した多数の電気回路基板が縦横に並んで一体化している形状の電気回路基板集合体を用意する工程と、
該背面電極を有する多数の背極基板が縦横に並んで一体化している形状の背極基板集合体を用意する工程と、
接着剤を塗布したフッ素含有樹脂体の樹脂シートを、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂シートを形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂シートを型抜きして該集合背極基板の各背極基板に対応する耐熱性フッ素樹脂体を形成し、該耐熱性フッ素樹脂体を各背極基板上に積層固定する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂体に着電してエレクトレット層とする工程と、
多数のスペーサが縦横に並んで一体化している形状の集合スペーサを用意する工程と、
多数の振動膜支持枠が縦横に並んで一体化している形状で、片面に振動膜素材を張った集合振動膜ユニットを用意する工程と、
これら集合体を積層固定して積層集合体とする工程と、
該積層集合体を切断することにより、個々のエレクトレットコンデンサマイクロホンとする工程と、
を有し、該接着剤が、該耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとしたエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法を提供する。
【0036】
該製造方法は、更に、
該電離性放射線を照射して該耐熱性フッ素樹脂シートを形成する前に、該フッ素含有樹脂の樹脂シートを、酸素存在下において該樹脂シートの結晶融点以上の温度で加熱する工程と、
該着電を行う工程に続いて加熱を行う工程と、
を有し
該着電を行なう工程とこれに続く加熱を行なう工程とを2回以上繰り返すし、該耐熱性フッ素樹脂体をエレクトレット層とするようにすることができる。
【0037】
また、本発明は、
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、背面電極上にフッ素含有樹脂層を接合する工程と、
該フッ素含有樹脂層を、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することより架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電を行う工程と、
該着電を行う工程に次いで、該耐熱性フッ素樹脂体に加熱を行う工程と、
を有し、
該着電を行う工程及び該加熱を行う工程を少なくとも2回以上繰り返して該耐熱性フッ素樹脂体をエレクトレット層とするエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法を提供する。
【0038】
更に、本発明は、
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
半導体等の電気エレメントを実装した多数の電気回路基板が縦横に並んで一体化している形状の電気回路基板集合体を用意する工程と、
該背面電極を有する多数の背極基板が縦横に並んで一体化している形状の背極基板集合体を用意する工程と、
該背極基板集合体の各背面電極上にフッ素含有樹脂体の樹脂層を形成する工程と、
該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において、該樹脂層に電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電をし、続いて加熱を行うことを少なくとも2回以上繰り返し、該耐熱性フッ素樹脂層をエレクトレット層とする工程と、
多数のスペーサが縦横に並んで一体化している形状のスペーサ集合体を用意する工程と、
多数の振動膜支持枠が縦横に並んで一体化している形状で、片面に振動膜素材を張った振動膜ユニット集合体を用意する工程と、
これら各集合体を接合して積層集合体とする工程と、
該積層集合体を切断することにより、個々のエレクトレットコンデンサマイクロホンとするエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0040】
図1は本発明の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法を示す工程図である。
【0041】
図示のように、この製造方法は、工程J1〜J3からなる。
【0042】
工程J1では、図2及び図3に示すように、シート状とされたFEP、PTFE、PFA等のフッ素含有樹脂体材料2を用意し、その一側面に粘着層3を形成し、基板4に貼り付けられる。具体的には、フッ素含有樹脂体2は、例えば12.5μ又は25μmの厚さとされ、その表面にコロナ処理を行なって表面を活性化した後、例えば厚さ3μm程度の粘着剤層3を形成し、該粘着剤層を基板4の上面に150℃前後の温度で熱圧着する。基板は、金属、樹脂、セラミック等から作られたものとされる。
【0043】
工程J2では、フッ素含有樹脂体に対して加熱処理と電離性放射線照射処理を行なうことによって架橋した耐熱性フッ素樹脂体に変化させる。具体的には、酸素存在下、すなわち空気中で、フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度の260℃〜330℃で5分程度の前加熱処理を行なう。この前加熱処理において、基板4に接着されたフッ素含有樹脂体2は、その粘着剤層3が固化する。この前加熱処理に引き続き結晶融点以上の温度、酸素濃度50ppm以下の雰囲気中で加速電圧500keV〜800keVで電子線量が10kGy〜100kGyとなるように電子線照射を行なう(上記のような条件の下で行なう電離性放射線照射処理を、本明細書では、「EB処理」とする)。この加熱EB処理により溶融したフッ素含有樹脂体に架橋反応が起こり耐熱性フッ素樹脂体に変化する。
【0044】
工程J3では、雰囲気温度を室温にもどし、工程J2で耐熱性としたフッ素樹脂体に大気中にてコロナ放電による着電処理を行なって耐熱性帯電フッ素樹脂体が完成する。
【0045】
下記の表1は、フッ素含有樹脂体をFEPとして、図3に示す如くアクリル系粘着剤にて基板に接着し、図3に示す如き基板付きFEPを作り、これに加熱EB処理の条件を異ならせて作成したサンプルを、実装時に行なわれるリフロー温度を考慮した耐熱試験を行った結果である。
【0046】
表1のEB処理条件に示す如く、温度を260℃,280℃,300℃の3温度とし、各温度に対してEB照射の線量を10kGy、50kGy、100kGyの3レベルで照射し、資料記号に示すA1〜C3の9種類のサンプルを作成した。尚、前記の温度条件は、上述のように260℃〜330℃の範囲内とすることが可能であるが、製品としてのエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造という点から考慮した場合、FEPの高温による軟化変形を避けるために、300℃以下が適当であると考えられる。また資料Dは比較のために示したEB処理をしないフッ素含有樹脂体である。
【0047】
表1に示す電荷残存率(%)は、前記各サンプルを200℃のホットプレートに載せ、経過時間毎に表面電位を測定し、その電位の減少値から電荷残存率を算出したものである。尚、経過時間としてはリフロー時に高温にさらされる2〜3分を考慮して、1〜5分までは1分間隔とし、さらに厳しい条件として10分経過時の電荷残存率を測定した。
【0048】
【表1】
図4は、表1の結果を示すものである。 表1及び図4から分かるように、資料記号Dに示す未処理現状品の電荷残存率が1分後に4分の1、2分後に10分の1、3分後に零になるのに対し、EB処理を行なった資料記号A,B,Cは何れも10分経過後でも電荷残存率を有しており、EB処理による電荷残存効果は明らかである。
【0049】
さらに、EB処理条件毎の効果を比較してみると、温度条件に付いては資料記号Cの300℃が1番良く、資料記号Bの280℃が2番目で、資料記号Aの260℃が3番目であることがわかる。さらにEB照射の線量条件としては、資料記号Bは少し異なる結果となっているが、資料記号A,Cについては10kGyが1番良く、50kGyが2番目ではあるがかなり良く、100kGyは3番目でやや劣っていることがわかる。
【0050】
上記各サンプルの中からリフロー温度を考慮した判定を行なうと、リフロー時に高温にさらされる2〜3分を経過した条件下で電荷残存率が80%以上であるサンプルは資料記号C1,C2であり、それに準ずるのが資料記号C3,B3であるが、資料記号B3が傾向的に若干異常値であることを考慮すると、EB処理条件としては、温度条件は300℃、EB照射の線量条件は10〜50kGyが特に適していることがわかる。ただし、例えばECMに期待される性能やエレクトレット層の変形許容度を考慮すると前記エレクトレット層に対する電離性放射線の照射を、温度260℃〜330℃で、照射線量10kGy〜100kGyにて行なうことが可能である。
【0051】
また各サンプルについては、60℃、湿度95%の環境下での耐湿試験を行なったが、いずれのサンプルについても、60時間放置後の残存率は95%〜97%、さらに300時間放置後での残存率は93%〜95%であり、まったく問題は無かった。
【0052】
このような結果の原因としては次のようなことが考えられる。
【0053】
工程J2において前加熱処理を行なうと粘着剤が固化し、また、前加熱処理に続いて加熱EB処理が行なわれるによりフッ素含有樹脂体としてのFEPは架橋される。この粘着剤の固化とフッ素含有樹脂体の架橋により、当該フッ素含有樹脂体は、その後、加熱されても、該フッ素含有樹脂体内での分子運動は起こり難くなり、このため電荷の散逸が少なく電化保持性能が向上する。
【0054】
以上の耐熱性試験は、フッ素含有樹脂体としてFEPについて示したが、PTFE及びPFAに付いても同様の結果がえられた。
【0055】
図5は図3に示すように粘着剤により基板に接着したシート状のFEPと、基板に接着しないFEP単体とに対して、工程J2の処理を行い、次いで工程J3において帯電処理を行ったものを200℃のホットプレートに載せ、経過時間毎に表面電位を測定し、その電位の減少値から電荷残存率を算出したものである。尚、経過時間としてはリフロー時に高温にさらされる2〜3分を考慮して、1〜5分までは1分間隔とし、さらに厳しい条件として10分経過時の電荷残存率を測定した。
【0056】
図5に示す資料N1は図3のように基板に接着したFEP、資料N2は基板に接着しなかったFEP単体のデータを示すものである。資料N2の電荷残存率が1分後に80%、2分後に70%、5分後に45%、10分後には20%まで低下しているのに対し、本願発明の資料N1はアクリル系の粘着剤を使用したものであるが、5分後で80%、10分経過後でも65%の電荷残存率を有しており、基盤接着による電荷残存効果は明らかである。但し、資料N2は、図4に示した資料D、すなわち、工程J2の処理を受けていないものに比べれば、高い電荷残存率を示していることが分かる。
【0057】
図6は、図3に示すと同様に、シート状FEP2をアクリル系粘着剤3により基板4に接着し、J2工程を行なった場合の前後の状態を示し、図7は、シート状FEP2をゴム系粘着剤により基板に接着し、J2工程を行なった場合の前後の状態を示す。
【0058】
図6に示すアクリル系粘着剤を使用したものでは、工程J2の処理前後の状態にほとんど形状の変化が無く、FEP2の円形が保たれているのに対し、図7に示す粘着剤3としてゴム系粘着剤を使用したものでは、工程J2の処理後の状態では粘着剤3が極端に収縮していまい、この結果、FEP2の円形が楕円形に変形している。
【0059】
従って、図6に示す粘着剤3としてアクリル系を使用したものでは、前述の粘着剤3固化の効果、及び、FEPの架橋の効果に基づき、該FEPがその後に帯電処理された後に加熱されても、帯電された電子は安定して保持され、高い電荷残存率を示したのに対し、図7に示す粘着剤3としてゴム系粘着剤を使用したものでは、工程J2の処理によるFEPの分子運動を抑制する効果が少なく、工程J2処理後に帯電処理されたものを加熱したものの電荷残存率は低くなることが分かった。従って、ゴム系粘着剤を使用する場合には、工程J2の処理時に、このようなFEPの収縮を防止するための工夫が必要である。換言すれば、接着剤は、工程J2の処理が行われるときに、フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものであればよく、アクリル系の粘着剤のほか、シリコーン系の粘着剤、熱硬化タイプ、紫外線効果タイプの接着剤などが考えられる。なお、粘着剤3としてシリコーン系粘着剤を使用した場合にもアクリル系粘着剤を使用した場合と同様な形状維持効果が得られることがわかった。
【0060】
以上で説明したところでは、図1に示す工程J3での着電処理は、常温、大気中において一回のみ行なうことを前提としていたが、この着電工程の後に加熱処理を行う工程を繰り返しを行うことにより、電化保持量を増大することができることが分かった。
【0061】
表2は、工程J2において温度300℃、EB照射の線量条件は10〜50kGyの加熱EB処理条件(図3に示す資料記号Cの条件)にて耐熱性フッ素樹脂体に改質されたFEPのサンプル10個(資料記号、S1〜S10)に対し、着電工程と加熱処理との繰り返しを15回行なった結果である。
【0062】
すなわち、常温、大気中において−500Vのコロナ放電により着電処理を行い、この着電処理されたサンプルを285℃±25℃の高温状態で約10秒間加熱処理を行う工程を1回から15回行なった時の表面電荷の測定値である。なお、加熱処理の温度条件としては完成したECMがリフロー実装される時の温度条件である260℃より高い温度条件が必要であるが、あまり高温にするとフッ素樹脂体2が熱劣化をおこすので、その温度条件としては下限がリフロー温度である260℃より高く、上限が熱劣化を起こさない330℃以下が適切である。また表2の表面電荷の測定値は−Vではあるが表の作成上、−を省略して数値のみを示した。
【0063】
【表2】
表2において、1回目の繰り返し処理における10個のサンプルの電荷保持量の平均値は−67.6Vと低く、この値は繰り返し処理を行なわない場合の電荷保持量と略同じであり、ほとんど効果が無いことがわかる。
【0064】
また、2回目の繰り返し処理における電荷保持量の平均値は−83.8V、3回目が−85.7V、4回目が−100.5V、5回目が−124.3Vと増加し、6回目で−135.8Vと最高値を記録した後7回目が−135.1V、8回目が−129.6V、9回目が125.5V、10回目が−116.7V、15回目が−110.7Vと僅かづつ減少しているが−100V以上の電荷保持量を維持している。
【0065】
この結果より、繰り返し処理は4回以上行なうことでかなりの効果が得られることが分かる。この繰り返しの効果はサンプルとなる耐熱性フッ素樹脂体の大きさや形状によって影響を受けるものと思われるが、効果を得る為には少なくとも4回以上の繰り返し処理を行なうことが望ましい。
【0066】
また、表2に見られるように資料記号S3、S6のように電荷保持量の多いサンプルや資料記号S2,S10のように電荷保持量の少ないサンプルがあるが、これはサンプルとなるFEPの形状や厚さのバラツキ及び前記電極基板4への接着状態のバラツキによって生じるものであるが、繰り返し処理に対する電荷保持量変化の傾向はすべてのサンプルにおいて共通している。
【0067】
上記着電及び加熱の繰り返し処理と電荷保持量の増加との関係を説明する。
【0068】
耐熱性フッ素樹脂体に対する電荷の帯電は所定の温度下で自由な分子運動の起こり難い個所で行なわれる。この分子運動の起こり難い個所は架橋ポイントや微結晶ポイント等の分子が配向した個所であり、すなわち分子間相互作用が強い個所である。
【0069】
また、分子運動の起こり難い個所とはイメージ的には一種の深い量子井戸のようなものであり、その量子井戸に相当する個所が生成されて、その量子井戸に電荷が落ち込んで安定状態を形成することで帯電が行なわれると考えられる。
【0070】
そして、着電処理によって負の電荷を保持した状態で加熱処理を行なうと、微結晶ポイント等の配向成分が増加し、この着電及び加熱の繰り返し処理を行なうことで分子運動の起こり難い個所が増加して帯電性能が向上していくものと考えられる。
【0071】
これを量子井戸の状態でみると、量子井戸に電荷が帯電している状態で加熱処理を行なうと単なる加熱処理に比べて量子井戸の深さが増したり、量子井戸の数を増加させて容量を大きくする効果があり、この容量が大きくなった量子井戸に注入された電荷は総じて安定性を増すことで帯電性能が向上していくものと考えられる。
【0072】
また、表2の6回目以降のデータに見られるように、着電及び加熱の繰り返し処理によって極大値に達した後、さらに着電及び加熱の繰り返し処理を行なうと電荷保持量が僅かに減少していくが、この理由としては量子井戸の深さ並びに数量が何等かの原因により、浅くなったり少なくなったりするものと考えられる。すなわち量子井戸に存在するマイナスの電荷によりFEPフィルムの架橋ポイント或いは微結晶ポイントが分解していくので電荷保持性能が減少して行くことが考えられる。
【0073】
しかし、この減少量は僅かであるため、着電及び加熱の繰り返し処理回数を極大値付近の回数とすることで、容易に電荷保持量増加の効果を得ることが可能である。
【0074】
次に本発明に係るECMについて記載する。図8は本発明の耐熱性帯電フッ素樹脂体をエレクトレット層とするECMの断面図、図9は図8に示すECMを構成する各エレメントの分解斜視図である。
【0075】
図8において20は回路基板であり、該回路基板20は絶縁基板20aにより構成され、接続や出力のための電極20bが膜形成されるとともに電子部品である集積回路11が実装されている。30は絶縁材よりなる背面基板であり、その上面側に背面電極40が形成され、該背面電極40の上面にエレクトレット層5が膜形成されるとともに背面基板30を貫通する貫通孔15が設けられている。6はスペーサであり開孔6aを有する。7は振動膜ユニットであり、該振動膜ユニット7は絶縁材よりなる振動膜支持枠8の下面側に張設された振動膜取り付け電極9に導電性の振動膜10を設けることにより形成されている。
【0076】
具体的には、フッ素含有樹脂体である12.5μmもしくは25μm厚さのFEPのシート材を粘着剤を介して150℃前後の温度で背面電極40の上面に熱圧着し、この状態で
酸素存在下、すなわち空気中で、FEPの結晶融点以上の温度である260℃〜330℃で5分程度の前加熱処理を行なう。この処理により粘着剤3が固化する。
【0077】
これを更に、電離性放射線照射装置内に投入する。電離性放射線照射装置内において、FEPの結晶融点以上の温度である300℃前後の雰囲気で、かつ酸素濃度50ppm以下の酸素不存在下において、500〜800KeVの電子線強度で10〜100kGy程度の放射線量で電離性放射線を照射することによって(図1の工程J2)FEPを架橋した耐熱性フッ素樹脂に変化させる。
【0078】
さらに、前記背面基板30を着電装置に投入することにより、耐熱性フッ素樹脂に着電処理を行って(図1の工程J3)耐熱性帯電フッ素樹脂体を完成させる。この耐熱性帯電フッ素樹脂体が耐熱性に優れたエレクトレット層5となる。
【0079】
上記各エレメントは図9に示す如く、前記回路基板20、背面基板30、スペーサ6、振動膜ユニット7を、各々接着材を介して積層することにより、ECM100が完成する。
【0080】
そして、この完成されたECM100は携帯電話等の装置に実装されることになるが、前記装置内のマザーボードに形成された配線電極に対して、ECM100の出力電極20bを半田接続する場合、リフロー装置による150℃〜200℃程度のプリヒートを90〜120秒行い、その後10秒間程度の230℃以上の高温処理を行っても、前記耐熱性帯電フッ素樹脂体であるエレクトレット層5の着電状態の劣化が小さく問題とはならない。
【0081】
上記構成を有するECM100においては、表面に導電膜を有する振動膜9と、表面にエレクトレット層5が形成された背面電極40とがスペーサ6を挟んでコンデンサを形成する。そして空気の振動により振動膜9が変位すると、コンデンサがこの変位を電気信号に変換し、この電気信号が振動膜取り付け電極12から各接続電極(図示は省略)を介して回路基板20に導かれ、集積回路11で処理された後に回路基板20の裏面に設けられた出力電極20bより出力される。貫通孔15の存在によって振動膜9の動作がスムーズになり、音響特性が確保される。
【0082】
次に、図10〜図12によりECM100の最も生産性の良い、集合体方式の製造方法を説明する。
【0083】
図10(A)〜図10(D)は製造工程で用いる各集合部品の斜視図である。図10(A)の集合振動膜ユニット7Lは、図9の振動膜ユニット7に相当する領域を格子状に多数含む大型の集合体で、下面に振動膜9を接合してある。同様に図10(B)の集合スペーサ6Lは、図9のスペーサ6の領域を格子状に多数含む集合体である。
【0084】
図10(C)の集合背面基板30Lは、図9の背面基板30の領域を格子状に多数含む大型の基板であり、多数の背面電極40とエレクトレット層5を配置してある。なお、エレクトレット層5の製造は集合背面基板30Lの状態において、図1の工程J1〜J3で行うものである。図10(D)の集合回路基板20Lは、図9の回路基板20の領域を格子状に多数含む大型の基板で、集積回路11を多数搭載したものである。なお、図10(A)〜図10(D)は概略図であるから描いてないが、各部品の集合体には電極パターンや、部品間の導通のためのスルーホールや放音用の貫通孔等が設けてある。
【0085】
ECMの製造に当たっては、このような部品の集合体、すなわち集合回路基板20L、集合背面基板30L、集合スペーサ6Lそして集合振動膜ユニット7Lをそれぞれ製作して準備する。そしてこれらを図10(A)〜図10(D)の順序に重ねて接合する。接合は各集合体の表面に接着剤を塗布して行ってもよいし、あるいは接着剤をシート状にしたものを層間に配置して重ね、加熱して接合することもできる。接着剤シートは図示を省くが、図10(B)の集合スペーサ6Lに似た形状のものを用いればよい。
【0086】
前記の工程によって、図11に示すように各集合体を積層したものである集合ECM100Lが得られ、これは多数のECM100が縦横につながって一体化しているものである。この集合ECM100Lを粘着シートに貼って、各ECM領域間の境界線に沿ってカッターでダイシングすれば、分割された各片がそれぞれ図12に示すECM100として完成する。図10(A)〜図10(D)、図11は説明のための模式図であるから、部品の素材である各集合体上には3行4列の12個の製品領域しか描いてないが、実際には1枚の集合体に数百個の製品領域を配置して量産することができる。
【0087】
次に図13により本発明におけるECM100の、集合体方式の製造方法の工程を説明する。
【0088】
図13において工程E1は集合振動膜ユニット7Lの製造工程であり、絶縁材料の集合振動膜支持枠に導電性の振動膜を接着して一体化する。工程E2は集合スペーサ6Lの製造工程であり、スペーサ素材に複数の開孔を形成する。
【0089】
工程E3は集合背面基板30Lの製造工程であり、集合絶縁基板に複数の背面電極と前記シート材のFEPにアクリル系粘着剤を接着した粘着剤付きFEPを積層して集合背面基板30Lを形成する。加熱処理後、EB処理を経た後、この集合背面基板30Lを電離性放射線照射装置内において、前記FEPの結晶融点以上の温度である300℃の雰囲気で、かつ酸素濃度50ppm以下の酸素不存在下において、10〜100kGy程度の電離性放射線を照射する過熱EB処理を行なうことによって前記粘着剤付きFEP層を架橋した耐熱性フッ素樹脂に変化させる。
【0090】
さらに、この加熱EB処理を行なった集合背面基板30Lを着電装置に投入することにより、加熱EB処理によって耐熱性フッ素樹脂に変化した粘着剤付きFEP層に着電を施してエレクトレット層5を構成することで耐熱性の集合背面基板30Lを完成させる。
【0091】
工程E4は集合回路基板20Lの製造工程であり、配線や接続電極等を有する集合配線基板に集積回路等の電気エレメントを実装して前記集合回路基板20Lを構成する。工程5は集合ECM製造工程であり、前記工程E1〜E4で製造された各集合エレメントを積層し、接着剤により接合一体化して図11に示す集合ECM100Lを構成する。工程E6は完成ECM製造工程であり、工程E5で製造された集合ECM100Lを切断・分離して図12に示すECM100を完成させる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
上記のごとく、工程J1においてフッ素含有樹脂体を基板に接着し、これに工程J2の処理をして形成した耐熱性帯電フッ素樹脂体は、高温条件下において電荷の減少が少ないため、リフロー等の高温実装が行なわれるECMのエレクトレット層に適するものではあるが、図5で示した資料N2からも分かるようにフッ素含有樹脂体を基板に接着しないで工程J2の処理をして形成したものも、図4において資料Dとして示した工程J2の処理を施さないものに比べて、優れた電荷保持力を有するものであり、特に、表2に示したように工程J3において着電工程と加熱処理との繰り返し行うことにより電荷保持量を大幅に増加することが可能であるので、そのようにして作った耐熱性帯電フッ素樹脂は、エレクトレット以外の耐熱帯電性を必要とされる種々の材料として使用することができる。例えば、フッ素含有樹脂体を不織布もしくは繊維状として、工程J2及び工程J3の処理をして、それにより形成された耐熱性帯電フッ素樹脂により高温条件化で使用されるエアコンや空調用のフイルターを形成することも可能である。不織布とした耐熱性帯電フッ素樹脂体は表面積が大きく成るため、空気中や排気ガス中の微粒子の吸着力が強くなり、防塵マスクや花粉症用のマスク等にも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態である耐熱性帯電フッ素樹脂体を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態である耐熱性帯電フッ素樹脂体を示す断面図である。
【図4】本発明の粘着剤付きFEPの耐熱特性を示す特性図である。
【図5】本願発明の粘着剤付きFEPと粘着剤を接着していないFEP単体との耐熱特性を示す特性図である。
【図6】アクリル系粘着剤を用いた耐熱性帯電フッ素樹脂体10の平面と断面を示すもので、(a)は粘着剤付きFEPの状態、(b)は加熱EB処理を行なった後の状態を示す。
【図7】ゴム系粘着剤を用いた耐熱性帯電フッ素樹脂体10の平面と断面を示すもので、(a)は粘着剤付きFEPの状態、(b)は加熱EB処理を行なった後の状態を示す。
【図8】本発明の第3の実施の形態である耐熱性帯電フッ素樹脂体をエレクトレット層とするECMの断面図である。
【図9】図8に示すECMを構成する各エレメントの分解斜視図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態である集合ECM100Lの製造工程で用いる各集合部品の斜視図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態である集合ECM100Lの完成体斜視図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態である単体ECM100の完成体斜視図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態である集合ECM100Lの製造工程図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有樹脂体を用意する工程と、
該フッ素含有樹脂体の一面に接着剤の層を形成して接着剤塗布フッ素含有樹脂体とする工程と、
該接着剤塗布フッ素含有樹脂体に、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射して架橋して耐熱性フッ素樹脂体とする工程と、
該耐熱性フッ素樹脂体に着電処理を行う工程と
を有し、
該接着剤層が、耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとした耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項2】
該耐熱性フッ素樹脂体とする工程の前に、該接着剤塗布フッ素含有樹脂体を酸素存在下においてフッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱して該接着剤を熱処理する工程を有する請求項1に記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項3】
該接着剤塗布フッ素含有樹脂体とする工程において、基板上に、該フッ素含有樹脂体を該接着剤により接着して該接着剤塗布フッ素含有樹脂体とする請求項2記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項4】
該基板が、金属、樹脂、セラミックから選んだ1つから形成されている請求項3記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項5】
該加熱して該接着剤を熱処理する工程を、大気中で温度260℃〜330℃で行う請求項2乃至4のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項6】
該耐熱性フッ素樹脂体とする工程において、該フッ素含有樹脂体を温度260℃〜330℃、酸素濃度50ppm以下において10kGy〜100kGyの電離性放射線を該フッ素含有樹脂体に照射する請求項5記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項7】
該接着剤がアクリル系又はシリコーン系粘着剤、もしくはエポキシ系又はシリコーン系の接着剤である請求項1乃至6のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項8】
該フッ素含有樹脂材がポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体のうちのいずれか1つである請求項1乃至7のいずれかに記載の耐熱性帯電樹脂材の製造方法。
【請求項9】
該着電処理を行う工程に次いで、さらに該耐熱フッ素樹脂体に加熱を行う工程を有し、該着電処理を行う工程及び該加熱を行う工程を2回以上繰り返して耐熱性帯電フッ素樹脂体を形成する請求項1乃至8のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項10】
該フッ素を含有する樹脂体がシート状である請求項1乃至9のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項11】
該耐熱性帯電フッ素樹脂体は着電処理によって負の電荷を保持する請求項1乃至10のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項12】
フッ素含有樹脂体を用意する工程と、
該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂体に着電を行う工程と、
該着電を行う工程に次いで、該耐熱性フッ素樹脂体に加熱を行う工程と、
を有し、
該着電を行う工程及び該加熱を行う工程を少なくとも2回以上繰り返して耐熱性帯電フッ素樹脂体を形成する耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項13】
該フッ素を含有する樹脂体がシート状である請求項12記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項14】
該耐熱性帯電フッ素樹脂体は着電処理によって負の電荷を保持する請求項13記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項15】
該着電を行う工程を、常温、大気中において−500V±200Vのコロナ放電によって行い、
該加熱を行う工程を、温度260℃〜330℃で行う請求項12乃至14のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項16】
該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程において、該フッ素含有樹脂体を温度260℃〜330℃、酸素濃度50ppm以下において10kGy〜100kGyの電離性放射線で照射する請求項12乃至15のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項17】
請求項13又は14記載の製造方法によって製造された耐熱性帯電フッ素樹脂体をエレクトレット層として備えたエレクトレットコンデンサマイクロホン。
【請求項18】
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
背面電極上に接着剤によりフッ素含有樹脂層を接着する工程と、
該フッ素含有樹脂層を、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線で照射することより架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電してエレクトレット層を形成する工程と
を有し、
該接着剤層が、耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとした耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項19】
該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程の前に、該接着剤塗布フッ素含有樹脂体を酸素存在下においてフッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱して該接着剤を熱処理する工程を有する請求項18に記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項20】
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
半導体等の電気エレメントを実装した多数の電気回路基板が縦横に並んで一体化している形状の電気回路基板集合体を用意する工程と、
該背面電極を有する多数の背極基板が縦横に並んで一体化している形状の背極基板集合体を用意する工程と、
該背極基板集合体の各背面電極上に接着剤によりフッ素含有樹脂体の樹脂層を接着する工程と、
該樹脂層が接着された背極基板を、フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電してエレクトレット層を形成する工程と、
多数のスペーサが縦横に並んで一体化している形状のスペーサ集合体を用意する工程と、
多数の振動膜支持枠が縦横に並んで一体化している形状で、片面に振動膜素材を張った振動膜ユニット集合体を用意する工程と、
これら各集合体を積層固定して積層集合体とする工程と、
該積層集合体を切断することにより、個々のエレクトレットコンデンサマイクロホンとする工程と
を有し、該接着剤層が、該耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとされているエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項21】
該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程の前に、該集合背極基板の各背面電極上に形成された樹脂層に、酸素存在下において該樹脂層の結晶融点以上の温度で加熱して該接着剤を熱処理する工程を更に有する請求項20記載のエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項22】
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
半導体等の電気エレメントを実装した多数の電気回路基板が縦横に並んで一体化している形状の電気回路基板集合体を用意する工程と、
該背面電極を有する多数の背極基板が縦横に並んで一体化している形状の背極基板集合体を用意する工程と、
接着剤を塗布したフッ素含有樹脂体の樹脂シートを、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂シートを形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂シートを型抜きして該集合背極基板の各背極基板に対応する耐熱性フッ素樹脂体を形成し、該耐熱性フッ素樹脂体を各背極基板上に積層固定する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂体に着電してエレクトレット層とする工程と、
多数のスペーサが縦横に並んで一体化している形状の集合スペーサを用意する工程と、
多数の振動膜支持枠が縦横に並んで一体化している形状で、片面に振動膜素材を張った集合振動膜ユニットを用意する工程と、
これら集合体を積層固定して積層集合体とする工程と、
該積層集合体を切断することにより、個々のエレクトレットコンデンサマイクロホンとする工程と、
を有し、該接着剤が、該耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとされているエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項23】
更に、該電離性放射線を照射して該耐熱性フッ素樹脂シートを形成する前に、該フッ素含有樹脂の樹脂シートを、酸素存在下において該樹脂シートの結晶融点以上の温度で加熱する工程と、
該着電を行う工程に続いて加熱を行う工程と、
を有し
該着電を行なう工程とこれに続く加熱を行なう工程とを2回以上繰り返すし、該耐熱性フッ素樹脂体をエレクトレット層とする請求項22記載のエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項24】
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、背面電極上にフッ素含有樹脂層を接合する工程と、
該フッ素含有樹脂層を、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することより架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電を行う工程と、
該着電を行う工程に次いで、該耐熱性フッ素樹脂体に加熱を行う工程と、
を有し、
該着電を行う工程及び該加熱を行う工程を少なくとも2回以上繰り返して該耐熱性フッ素樹脂体をエレクトレット層とするエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項25】
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
半導体等の電気エレメントを実装した多数の電気回路基板が縦横に並んで一体化している形状の電気回路基板集合体を用意する工程と、
該背面電極を有する多数の背極基板が縦横に並んで一体化している形状の背極基板集合体を用意する工程と、
該背極基板集合体の各背面電極上にフッ素含有樹脂体の樹脂層を形成する工程と、
該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において、該樹脂層に電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電をし、続いて加熱を行うことを少なくとも2回以上繰り返し、該耐熱性フッ素樹脂層をエレクトレット層とする工程と、
多数のスペーサが縦横に並んで一体化している形状のスペーサ集合体を用意する工程と、
多数の振動膜支持枠が縦横に並んで一体化している形状で、片面に振動膜素材を張った振動膜ユニット集合体を用意する工程と、
これら各集合体を接合して積層集合体とする工程と、
該積層集合体を切断することにより、個々のエレクトレットコンデンサマイクロホンとするエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項1】
フッ素含有樹脂体を用意する工程と、
該フッ素含有樹脂体の一面に接着剤の層を形成して接着剤塗布フッ素含有樹脂体とする工程と、
該接着剤塗布フッ素含有樹脂体に、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射して架橋して耐熱性フッ素樹脂体とする工程と、
該耐熱性フッ素樹脂体に着電処理を行う工程と
を有し、
該接着剤層が、耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとした耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項2】
該耐熱性フッ素樹脂体とする工程の前に、該接着剤塗布フッ素含有樹脂体を酸素存在下においてフッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱して該接着剤を熱処理する工程を有する請求項1に記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項3】
該接着剤塗布フッ素含有樹脂体とする工程において、基板上に、該フッ素含有樹脂体を該接着剤により接着して該接着剤塗布フッ素含有樹脂体とする請求項2記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項4】
該基板が、金属、樹脂、セラミックから選んだ1つから形成されている請求項3記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項5】
該加熱して該接着剤を熱処理する工程を、大気中で温度260℃〜330℃で行う請求項2乃至4のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項6】
該耐熱性フッ素樹脂体とする工程において、該フッ素含有樹脂体を温度260℃〜330℃、酸素濃度50ppm以下において10kGy〜100kGyの電離性放射線を該フッ素含有樹脂体に照射する請求項5記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項7】
該接着剤がアクリル系又はシリコーン系粘着剤、もしくはエポキシ系又はシリコーン系の接着剤である請求項1乃至6のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項8】
該フッ素含有樹脂材がポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体のうちのいずれか1つである請求項1乃至7のいずれかに記載の耐熱性帯電樹脂材の製造方法。
【請求項9】
該着電処理を行う工程に次いで、さらに該耐熱フッ素樹脂体に加熱を行う工程を有し、該着電処理を行う工程及び該加熱を行う工程を2回以上繰り返して耐熱性帯電フッ素樹脂体を形成する請求項1乃至8のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項10】
該フッ素を含有する樹脂体がシート状である請求項1乃至9のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項11】
該耐熱性帯電フッ素樹脂体は着電処理によって負の電荷を保持する請求項1乃至10のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項12】
フッ素含有樹脂体を用意する工程と、
該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂体に着電を行う工程と、
該着電を行う工程に次いで、該耐熱性フッ素樹脂体に加熱を行う工程と、
を有し、
該着電を行う工程及び該加熱を行う工程を少なくとも2回以上繰り返して耐熱性帯電フッ素樹脂体を形成する耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項13】
該フッ素を含有する樹脂体がシート状である請求項12記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項14】
該耐熱性帯電フッ素樹脂体は着電処理によって負の電荷を保持する請求項13記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項15】
該着電を行う工程を、常温、大気中において−500V±200Vのコロナ放電によって行い、
該加熱を行う工程を、温度260℃〜330℃で行う請求項12乃至14のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項16】
該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程において、該フッ素含有樹脂体を温度260℃〜330℃、酸素濃度50ppm以下において10kGy〜100kGyの電離性放射線で照射する請求項12乃至15のいずれかに記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項17】
請求項13又は14記載の製造方法によって製造された耐熱性帯電フッ素樹脂体をエレクトレット層として備えたエレクトレットコンデンサマイクロホン。
【請求項18】
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
背面電極上に接着剤によりフッ素含有樹脂層を接着する工程と、
該フッ素含有樹脂層を、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線で照射することより架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電してエレクトレット層を形成する工程と
を有し、
該接着剤層が、耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとした耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項19】
該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程の前に、該接着剤塗布フッ素含有樹脂体を酸素存在下においてフッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で加熱して該接着剤を熱処理する工程を有する請求項18に記載の耐熱性帯電フッ素樹脂体の製造方法。
【請求項20】
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
半導体等の電気エレメントを実装した多数の電気回路基板が縦横に並んで一体化している形状の電気回路基板集合体を用意する工程と、
該背面電極を有する多数の背極基板が縦横に並んで一体化している形状の背極基板集合体を用意する工程と、
該背極基板集合体の各背面電極上に接着剤によりフッ素含有樹脂体の樹脂層を接着する工程と、
該樹脂層が接着された背極基板を、フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電してエレクトレット層を形成する工程と、
多数のスペーサが縦横に並んで一体化している形状のスペーサ集合体を用意する工程と、
多数の振動膜支持枠が縦横に並んで一体化している形状で、片面に振動膜素材を張った振動膜ユニット集合体を用意する工程と、
これら各集合体を積層固定して積層集合体とする工程と、
該積層集合体を切断することにより、個々のエレクトレットコンデンサマイクロホンとする工程と
を有し、該接着剤層が、該耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとされているエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項21】
該耐熱性フッ素樹脂体を形成する工程の前に、該集合背極基板の各背面電極上に形成された樹脂層に、酸素存在下において該樹脂層の結晶融点以上の温度で加熱して該接着剤を熱処理する工程を更に有する請求項20記載のエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項22】
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
半導体等の電気エレメントを実装した多数の電気回路基板が縦横に並んで一体化している形状の電気回路基板集合体を用意する工程と、
該背面電極を有する多数の背極基板が縦横に並んで一体化している形状の背極基板集合体を用意する工程と、
接着剤を塗布したフッ素含有樹脂体の樹脂シートを、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂シートを形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂シートを型抜きして該集合背極基板の各背極基板に対応する耐熱性フッ素樹脂体を形成し、該耐熱性フッ素樹脂体を各背極基板上に積層固定する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂体に着電してエレクトレット層とする工程と、
多数のスペーサが縦横に並んで一体化している形状の集合スペーサを用意する工程と、
多数の振動膜支持枠が縦横に並んで一体化している形状で、片面に振動膜素材を張った集合振動膜ユニットを用意する工程と、
これら集合体を積層固定して積層集合体とする工程と、
該積層集合体を切断することにより、個々のエレクトレットコンデンサマイクロホンとする工程と、
を有し、該接着剤が、該耐熱性フッ素樹脂体とする工程と該着電処理を行う工程において、該フッ素含有樹脂体の形状を維持するように作用するものとされているエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項23】
更に、該電離性放射線を照射して該耐熱性フッ素樹脂シートを形成する前に、該フッ素含有樹脂の樹脂シートを、酸素存在下において該樹脂シートの結晶融点以上の温度で加熱する工程と、
該着電を行う工程に続いて加熱を行う工程と、
を有し
該着電を行なう工程とこれに続く加熱を行なう工程とを2回以上繰り返すし、該耐熱性フッ素樹脂体をエレクトレット層とする請求項22記載のエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項24】
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、背面電極上にフッ素含有樹脂層を接合する工程と、
該フッ素含有樹脂層を、該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において電離性放射線を照射することより架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電を行う工程と、
該着電を行う工程に次いで、該耐熱性フッ素樹脂体に加熱を行う工程と、
を有し、
該着電を行う工程及び該加熱を行う工程を少なくとも2回以上繰り返して該耐熱性フッ素樹脂体をエレクトレット層とするエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項25】
背面電極上にエレクトレット層を形成してなるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法において、
半導体等の電気エレメントを実装した多数の電気回路基板が縦横に並んで一体化している形状の電気回路基板集合体を用意する工程と、
該背面電極を有する多数の背極基板が縦横に並んで一体化している形状の背極基板集合体を用意する工程と、
該背極基板集合体の各背面電極上にフッ素含有樹脂体の樹脂層を形成する工程と、
該フッ素含有樹脂体の結晶融点以上の温度で酸素不存在下において、該樹脂層に電離性放射線を照射することによって架橋した耐熱性フッ素樹脂層を形成する工程と、
該耐熱性フッ素樹脂層に着電をし、続いて加熱を行うことを少なくとも2回以上繰り返し、該耐熱性フッ素樹脂層をエレクトレット層とする工程と、
多数のスペーサが縦横に並んで一体化している形状のスペーサ集合体を用意する工程と、
多数の振動膜支持枠が縦横に並んで一体化している形状で、片面に振動膜素材を張った振動膜ユニット集合体を用意する工程と、
これら各集合体を接合して積層集合体とする工程と、
該積層集合体を切断することにより、個々のエレクトレットコンデンサマイクロホンとするエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−39672(P2007−39672A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183782(P2006−183782)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
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