説明

耐熱性粘着シート

【課題】本発明は、耐熱性粘着シート(テープ)に関し、さらに詳細には、粘着剤層にエネルギー線照射により架橋反応を誘導できるから、高温で耐熱性を確保することができ、部品の高い寸法安定性を得ることができ、かつ剥離時に付着表面に残留物が粘着されずに剥離が可能であり、高温で金属などのような付着表面の酸化が発生しないなどの信頼性及び作業性に優れた耐熱性粘着シートを提供する。
【解決手段】
本発明による耐熱性粘着シート(テープ)は、耐熱性基材と、前記耐熱性基材の少なくとも一面に形成されるものの、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂と熱硬化性粘着剤樹脂、エネルギー線開始剤及び熱硬化剤を含む調液でコーティングされた粘着剤層として、エネルギー線を照射して架橋反応を誘導することによって硬化された耐熱性を有する粘着剤層と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性粘着シート(テープ)に関し、さらに詳細には、粘着剤層にエネルギー線照射により架橋反応を誘導できるから、高温で耐熱性を確保することができ、部品の高い寸法安定性を得ることができ、かつ剥離時に付着表面に残留物が粘着されずに剥離が可能であり、高温で金属などのような付着表面の酸化が発生しないなどの信頼性及び作業性に優れた耐熱性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一方、本発明は、各種電子部品の高温製造工程上にマスクシートとして適用できる粘着シートであって、多様に例を挙げることができるが、以下では、半導体パッケージング工程を例に挙げて説明し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0003】
一般に、QFN(Quad Flat No Lead package)半導体は、リード端子がパッケージの内部に装着された形態の半導体製造技術方法の一形態である。QFNの製造方法として、概して下記のような方法が知られている。まず、QFNは、粘着又は接着シート付着工程において、複数のリードフレームの片面に粘・接着テープ又はシートからなるマスクシートを付着し、ダイアタッチ工程でリードフレームの反対側の半導体素子搭載部に半導体チップ素子を各々搭載する。以後、ワイヤボンディング工程でワイヤーにより複数のリードと半導体素子とをボンディングして、電気的接続をするようになる。次に、エポキシモールディング工程でリードフレームとそのリードフレームに搭載された半導体素子をエポキシ樹脂により密封する。最後に、マスクシートをリードフレームから剥離することによって、複数のQFN単位を形成し、単位のQFNごとにダイシングにより個々の単位半導体を製造するようになる。
【0004】
上記のように、一般に、QFNパッケージ製造工程は、150℃〜250℃間の高温を含むが、粘着シートは、リードフレームに付着された後、150℃のダイ接着工程で2時間以上の間にリードフレームを固定させることができなければならず、特に、200〜250℃の範囲のワイヤボンディング工程では、2時間以上高い寸法安定性を維持しなければならず、かつエポキシモールド工程では、モールド圧力によりモールドフラッシュのようなシートとリードフレームとの間の粘着不良が発生してはならず、最後に、粘着シートの剥離時にはリードフレームに残留物なしに良好に剥離されなければならないなど、極めてややこしい高温工程特性を満たさなければならない。
【0005】
以上の内容を満たすために、従来の粘着シート及びテープは、基材として耐熱性ポリイミドフィルムを活用し、耐熱性基材上に耐熱性粘・接着樹脂層を含むことを特徴としている。代表的な前記粘着樹脂は、シリコーン系とアクリル系粘着剤樹脂を活用した方法があり、下記特許文献1、下記特許文献2、及び下記特許文献3に開示されているように、前記粘着樹脂を活用して半導体製造工程に対応しようとしている。
【0006】
また、前記半導体装置製造用シート又はテープは、粘着剤の他に接着剤を活用する場合もあり、これらは、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを混合して使用するが、代表的にNBR/エポキシ樹脂系があり、下記特許文献4に開示されている。
【0007】
しかしながら、シリコーン系粘着剤は、付着表面を汚染させるか、又は剥離時には、シリコーン粘着残留物を形成する問題点を有しており、高温でシリコーン粘着成分から発生した気体成分は、リードフレームの付着表面を酸化させるという問題点を有している。
【0008】
また、熱硬化性アクリル系粘着剤は、耐熱性が不足して100℃〜150℃から分解が始まるため、内部の凝集力の減少による粘着残留物が付着表面に発生するという問題点を有している。
【0009】
また、前記接着剤の熱硬化性/熱可塑性系混合樹脂は、加熱工程の途中で揮発ガス成分によりワイヤボンディング不良を引き起こすことができ、硬化収縮及び密着力増加による剥離性に対する問題点がある。
【特許文献1】韓国登録特許第10−0665441号
【特許文献2】韓国登録特許第10−0572191号
【特許文献3】米国特許第6777079号
【特許文献4】韓国公開特許第2004−00423658号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、粘着剤層にエネルギー線の照射により架橋反応を誘導できるから、高温で耐熱性を確保することができる耐熱性粘着シートを提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、部品の高い寸法安定性を得ることができ、かつ剥離時に付着表面に残留物が粘着されずに剥離が可能であり、高温で金属などのような付着表面の酸化が発生しないなどの信頼性及び作業性に優れた耐熱性粘着シートを提供することにある。
【0012】
本発明の前記及び他の目的と利点は、添付図面を参照して好ましい実施例を説明した下記の説明からより明確になるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成すべく、本発明による耐熱性粘着シート(テープ)は、耐熱性基材と、前記耐熱性基材の少なくとも一面に形成されるものの、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂と熱硬化性粘着剤樹脂、エネルギー線開始剤及び熱硬化剤を含む調液でコーティングされた粘着剤層として、エネルギー線を照射して架橋反応を誘導することによって硬化された耐熱性を有する粘着剤層と、を備えることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記耐熱性基材は、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、トリアセチルセルロール、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン及びポリカーボネートの中から選択された少なくとも一つのフィルムであることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記耐熱性基材は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、亜鉛、錫などからなる箔、合金箔及びメッキ箔の中から選択された少なくとも一つの金属箔であることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記粘着体層の前記エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂は、設計目的に応じて1種又は2種以上混合して使用し、前記粘着剤層のエネルギー線硬化型オリゴマー樹脂/熱硬化性粘着剤樹脂の使用量の割合は、1/9〜1であることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記熱硬化性粘着剤樹脂の重量平均分子量は、40,000〜3,000,000であることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、前記エネルギー線開始剤は、設計目的によって1種又は2種以上混合使用し、前記エネルギー線開始剤の使用量は、前記エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂全体使用量対比1/100〜1/5であることを特徴とする。
【0019】
好ましくは、前記粘着剤層の前記エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂は、可視光線、紫外線又は電子線により硬化されることを特徴とする。
【0020】
好ましくは、前記耐熱性粘着シートは、銅箔に積層された後、約200℃で40分間加熱してから常温で1時間放置された状態で5g・f/2.54cm幅〜600g・f/2.54cm幅以下の粘着力を有することを特徴とする。
【0021】
好ましくは、前記耐熱性粘着シートは、銅箔、ガラス板又はステンレス板に積層された後に常温で1時間放置された状態で5g・f/2.54cm幅〜120g・f/2.54cm幅以下の粘着力を有することを特徴とする。
【0022】
好ましくは、前記耐熱性粘着シートの粘着剤層は、常温から250℃まで10℃/min.で昇温して温度を加熱した時、2%以内に重量が減少することを特徴とする。
【0023】
さらに好ましくは、前記耐熱性粘着シートは、金属表面にマスキングされた後、250℃の高温で金属表面に酸化が起きないように金属表面を保護することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明による耐熱性粘着シートによると、粘着剤層にエネルギー線照射を介して架橋反応を誘導することができ、高温で耐熱性を確保することができるという効果を有する。
【0025】
また、本発明による耐熱性粘着シートによると、部品の高い寸法安定性を得ることができ、かつ剥離時に付着表面に残留物が粘着されずに剥離が可能であり、高温で金属などのような付着表面の酸化が発生しないなどの信頼性及び作業性に優れているなどの効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施例を参照して、本発明を詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明をさらに具体的に説明するために例示的に提示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないことは、当業界における通常の知識を有するものにとって自明である。
【0027】
本発明による耐熱性粘着シートは、各種電子部品の製造工程でマスクシートとして使用されることができ、必ず半導体製造用粘着シートに限定されるものではない。
【0028】
本発明による耐熱性粘着シートは、耐熱性基材を使用し、その基材上にエネルギー線硬化型オリゴマー樹脂と熱硬化性粘着剤樹脂、エネルギー線開始剤及び熱硬化剤を含む調液でコーティングされた粘着剤層を含むことを特徴とする粘着シートに関し、重要には、粘着シートの製造過程でエネルギー線を照射して、前記粘着剤層の架橋反応を誘導し、これにより耐熱性の高い架橋構造を形成することを特徴とする。
【0029】
まず、粘着剤層を形成する方法において、一般的なアクリル系粘着樹脂は、粘着力に優れた特性があるが、耐熱性が不足して、100℃〜150℃以上から分解が始まるので、このようなアクリル系粘着樹脂を利用して製造した粘着シートは、高温工程でマスクシートとして使用され難い。また、シリコーン系粘着樹脂は耐熱性に優れているという特性があるが、粘着力を調節し難く、被着剤にシリコーン残留物による汚染が発生しがちである。したがって、本発明は、粘着樹脂としてアクリル系を使用し、これをエネルギー線で照射して架橋反応を誘導することによって、耐熱性を有する粘着剤層を形成する創意的な方法を創案するようになった。
【0030】
前記アクリル系粘着樹脂は、「相互浸透による架橋構造(Interpenetrating polymer network)」と知られている混合架橋構造形態からなることができ、前記混合構造は、互いに異なる2種類の硬化性樹脂が互いに異なる化学的反応メカニズムにより独立的に架橋する間に相互浸透により絡み合っている架橋構造である。このような架橋構造は、樹脂の凝集力及び耐熱性の特徴を有することができ、実際「相互浸透による架橋構造」の活用は、エポキシ接着樹脂の製造方法でも活用されている方法である(Epoxy Adhesive Formulation;Edward M.Petrie;151〜152p)。本発明は、上記の目的を達成するために、前記相互浸透による混合架橋構造を形成することができるように、エネルギー線の硬化方法を活用しており、これは、従来の技術とは差別化したシート製造方法である。
【0031】
以下、本発明の構成要素について詳細に説明する。
【0032】
耐熱性基材
本発明による耐熱性粘着シートの耐熱性基材は、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、トリアセチルセルロース、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン及びポリカーボネートの中から選択された少なくとも一つの(プラスチック)フィルムになることができ、ここに限定しない。また、基材としてプラスチックフィルムの代わりに金属箔を使用することができるが、アルミニウム、マグネシウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、亜鉛、錫などからなる箔、合金箔及びメッキ箔の中から選択された少なくとも一つの金属箔を使用することができる。
【0033】
基材フィルムの場合に、熱膨張係数が大きいと、リードフレームとの熱膨張係数差が大きくなるので、室温に戻ってきたとき、シートに付着されたリードフレームは、曲げが発生でき、このような曲げ発生は、モールディング工程で寸法不安定を誘発して位置変形によるモールドフラッシュ不良が発生するおそれがある。したがって、このような条件が符合する耐熱性基材には、ガラス遷移温度が150℃以上の耐熱性フィルムが好ましく、100℃〜200℃で基材の熱膨張係数は、5ppm/℃〜50ppm/℃が好ましく、10ppm/℃〜25ppm/℃がさらに好ましい。
【0034】
粘着剤組成物
本発明による耐熱性粘着シートの耐熱性粘着剤層に使用されるエネルギー線硬化型アクリル系オリゴマー樹脂は、ウレタン系アクリレート、ポリエーテル及びポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、そしてアクリルアクリレートなどがあり、アクリル系以外に分子末端にアリルグループを有するチオール付加型樹脂、光−陽イオン性重合型樹脂、シンナモイル−含有重合体、ジアゾアミノ−ノボラック樹脂がある。また、高エネルギー線に反応性である重合体は、エポキシ化ポリブタジエン、不飽和ポリエステル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリアクリルアミド及びポリビニールシロキサンを含む。このようなエネルギー線硬化性樹脂が使用される場合には、上述の母体物質が常に必須なものではない。前記樹脂の反応する官能基は、2〜6個までが好ましい。また、これらのアクリル系オリゴマー樹脂の重量平均分子量は、300〜8,000程度が好ましい。前記樹脂は、エネルギー線開始剤と共に反応して、粘着剤層に内部凝集力を付与できるように設計できる。したがって、高耐熱性及び残留物が形成しない粘着剤層を得ることができるようにする。
【0035】
本発明による耐熱性粘着シートの耐熱性粘着剤層に使用される熱硬化性粘着剤樹脂は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタル)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート及びドデシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートなどがあり、粘着性を付与する機能を有している。また、これらの熱硬化性アクリル系粘着剤樹脂の重量平均分子量は、40,000〜3,000,000程度が好ましく、700,000〜1,200,000程度がさらに好ましい。熱硬化性アクリル系粘着剤樹脂の重量平均分子量が40,000以下である場合には、基本的な耐熱性が与えられることができず、3,000,000以上であると分子量が大きいから、硬化反応に影響を与えることができるためである。これらを熱硬化剤と共に使用して、基本的に凝集力を確保することができ、粘着残留物を抑制することができる。
【0036】
本発明による耐熱性粘着シートの前記混合アクリル系粘着剤は、熱硬化剤又はエネルギー線開始剤を含めなければ硬化反応を行うことができない。硬化剤の例には、イソシアネート系、エポキシ系、アジリジン及びキレート系架橋剤を例に挙げることができる。硬化剤の使用量は限定されていないが、アクリル系粘着樹脂の100重量を基準に対比して、硬化剤0.1〜20重量部が好ましく、さらに好ましくは、2〜7重量部が好ましい。したがってアクリル系粘着剤は、熱硬化剤と共に使用することによって、適切な粘着力を得ることができるように設計できる。また、エネルギー線開始剤は、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ヒドロキシジメチルアセトフェノン、メチル−[4メチルチオフェニル]−2−モルホリンプロパノン、4−ベンジル−4’−メチルジフェニルスルフィド、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、メチル−オルト−ベンゾ−ベンゾエート、メチルベンゾイルフォーメート、4−フェニルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィン、2−ヒドロキシ−1,2−ジフェニルエタノンなどが使用されることができ、これらのエネルギー線開始剤は、粘着剤層のコーティング・乾燥温度及び使用するエネルギー線の照射条件に合せて選択でき、エネルギー線開始剤の使用量は、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂の100重量を基準に対比して、0.01〜0.2重量部が好ましい。また、エネルギー線開始剤は、設計目的に応じて1種又は2種以上を混合して使用することが好ましい。
【0037】
粘着剤層の構成方法
本発明による耐熱性粘着シートの製造方法は、特に限定されていないが、エネルギー線硬化型アクリル系オリゴマー樹脂と熱硬化性粘着樹脂、そしてこれらを硬化させるエネルギー線開始剤及び熱硬化剤成分を含んだ粘着剤組成物を溶媒と共に製造する。前記粘着剤組成物は、設計目的に応じる粘度で製造して、これを直接耐熱性基材にコーティング及び乾燥工程を介して粘着剤層を形成するキャスティング法と前記粘着剤を離型フィルム上にコーティング及び乾燥させて粘着剤層を形成して耐熱性基材にラミーネートした後、転写させる転写法を活用して製造する方法がある。このとき、粘着剤層のコーティング厚さは、5〜25μm以内が好ましく、さらに好ましくは、6μm〜10μm以内が好ましい。
【0038】
本発明の耐熱性粘着剤層は、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂/熱硬化性粘着剤樹脂の使用比(固形分基準)を1/9〜1に使用することが好ましく、このとき、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂含有量が必要以上に添加されているときには、相互浸透による架橋構造が形成されないか、又は粘着剤層が必要以上に固くなるという特性を有することができる。また、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂は、設計目的に応じて1種又は2種以上混合して使用することが好ましい。
【0039】
エネルギー線の硬化方法
前記方法により製造された粘着剤層の硬化方法は、可視光線、紫外線、そして電子線のようなエネルギー線により硬化反応を行うことにより、粘着剤層内に架橋構造を誘導でき、エネルギー線の種類は特に限定されるものではないが、紫外線を活用して硬化させることが好ましい。紫外線硬化は、極めて短い時間に起きる化学的な反応により短い時間の間に一定量の光量で完全に硬化させなければならない。仮に、一定以下の光量で硬化反応をさせると、硬化反応物中に未反応が含まれる場合が発生でき、一定以上の光量で硬化させる場合には、基材フィルム又は粘着樹脂の分解が起きることもできる。また、紫外線は、赤外線を伴うので、赤外線の熱による不作用が発生しうる。したがって、光量は、紫外線A領域を基準に10〜2000mJ/cmが好ましく、400〜1000mJ/cm程度がさらに好ましい。そして、紫外線ランプは、大きく短波長(紫外線B、C)領域を主領域として含む水銀ランプと長波長(紫外線A)領域を主領域として含むメタルハライドランプとに分けられることができ、2種類のランプを混合して使用するか、又はそれぞれのランプを使用して硬化を形成させることができ、光量調節は、ランプの高さ又は紫外線の照射時間により調節できる。そのほか、補助的に、熱硬化性粘着樹脂は、熟成室又はオーブンで熱硬化させることができる。熱硬化の温度は、25℃〜80℃で行われることが好ましく、40℃〜60℃程度でさらに好ましい。そして、熟成期間は、5日〜7日が好ましい。
【実施例】
【0040】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これに制限されるものではない。
【0041】
[実施例1]
アクリル系粘着剤樹脂(AT−211;Sam Won)は、調液全体100重量に対して46.28重量を使用し、イソシアネート系硬化剤(CAT−45;Sam Won)は、1.62重量、エネルギー線硬化型オリゴマーであるウレタン系アクリレート(EB280;Cytec)は、5.55重量、紫外線開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィン(Darocur TPO;Ciba)は、0.19重量、紫外線開始剤であるヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure184;Ciba)は、0.08重量、そして酢酸エチル溶媒は、46.28重量を使用して紫外線硬化性及び熱硬化性である粘着剤を製造した。この粘着剤を使用して、耐熱性基材であるポリイミドフィルム(25NPI;Kaneka;25μm)に10μmにコーティング・乾燥した。以後、紫外線照射(紫外線照射量約800mJ/cm)及び50℃で熟成により粘着剤層を硬化させて、粘着テープ又はシートを製造した。
【0042】
[実施例2]
アクリル系粘着剤樹脂(AT−211;Sam Won)は、調液全体100重量に対して47.1重量を使用し、イソシアネート系硬化剤(CAT−45;Sam Won)は、1.7重量、エネルギー線硬化型オリゴマーであるウレタン系アクリレート(EB280;Cytec)は、2.8重量、紫外線開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィン(Darocur TPO;Ciba)は、0.1重量、紫外線開始剤であるヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure 184;Ciba)は、0.2重量、そして酢酸エチル溶媒は、48.1重量を使用して紫外線硬化性及び熱硬化性である粘着剤を製造した。この粘着剤を使用して、耐熱性基材であるポリイミドフィルム(25NPI;Kaneka;25μm)に10μmにコーティング・乾燥した。以後、紫外線照射(紫外線照射量約800mJ/cm)及び50℃で熟成により粘着剤層を硬化させて、粘着テープ又はシートを製造した。
【0043】
[実施例3]
アクリル系粘着剤樹脂(AT−311;Sam Won)は、調液全体重量100重量に対して46.28重量を使用し、イソシアネート系硬化剤(CAT−45;Sam Won)は、1.62重量、エネルギー線硬化型オリゴマーであるウレタン系アクリレート(EB280;Cytec)は、1.85重量、Cytecエネルギー線硬化型オリゴマーであるフェニルノボラック系アクリレート(EB9656;Cytec)は、3.7重量、紫外線開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィン(Darocur TPO;Ciba)は、0.19重量、紫外線開始剤であるヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure184;Ciba)は、0.08重量、そして酢酸エチル溶媒は、46.28重量を使用して紫外線硬化性及び熱硬化性である粘着剤を製造した。この粘着剤を使用して、耐熱性基材であるポリイミドフィルム(25NPI;Kaneka;25μm)に10μmにコーティング・乾燥した。以後、紫外線照射(紫外線照射量約800mJ/cm)及び50℃で熟成により粘着剤層を硬化させて、粘着テープ又はシートを製造した。
【0044】
以下、表1に各実施例に使用された粘着剤製造液成分を示した。
【0045】
【表1】

【0046】
[実験例及び結果]
(実験例1:180°剥離力測定法I)
粘着シート又はテープを2.54cm×15cm(横×縦)で用意し、被着剤として使用する銅箔(MITSUI;3EC−HTE−AT)の表面をメチルエチルケトン又はアセトンで洗浄した後、銅箔と粘着シートをゴムローラ(約2kg)を使用して、2回擦って積層させる。以後直ちに、サンプルを200℃プレート上に載置して、その上にシリコーンゴムを載せて40分間熱を加える。最後に、常温で1時間保管した後、サンプルを300mm/minの速度で180°剥離力を測定する。
【0047】
(実験例2:180°剥離力測定法II)
粘着シート又はテープを2.54cm×15cm(横×縦)で用意し、被着剤として使用する銅箔(MITSUI;3EC−HTE−AT)、ステンレススチル板、そしてガラス板の表面をメチルエチルケトン又はアセトンで洗浄する。そして、被着剤と粘着シートをゴムローラ(約2kg)を使用して2回擦って積層させ、それぞれ被着剤に応じるサンプルを製作する。以後直ちに、常温で1時間保管した後、サンプルを300mm/minの速度で180°剥離力を測定する。
前記実施例1〜3で製造された耐熱性粘着シートを被着剤に積層させて、前記180°剥離力測定法IとIIによる剥離力を測定して、その結果を下記表2に示した。
【0048】
【表2】

【0049】
前記表2から分かるように、常温処理したサンプルは、被着剤別に40〜110g・f/2.54cm程度であったが、約200℃で40分間温度を加えたサンプルの場合には、140〜600g・f/2.54cm程度に粘着力が上昇した。実施例1と実施例2は、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂量に応じる剥離力を比較したものである。熱硬化性粘着剤樹脂100重量を対比して、実施例1は、30重量を使用し、実施例2は、20重量を使用したもの(前記表1のように、熱硬化性樹脂は、溶剤に固形分40%が溶けている製品であり、紫外線硬化型樹脂は、純水100%固形分の製品であり、これらの樹脂の重量は、固形分対比である)であり、その結果、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂含有量が高いほど、剥離力が低くなったことが分かる。
【0050】
(実験例3:剥離性測定法)
前記剥離力を測定したサンプル(180°剥離力測定法IとII)の被着剤である銅箔、ガラス板、そしてステンレススチル板の表面は、視覚に依存して表面検査にて粘着シートから発生した粘着剤残留物の有無を検査する。剥離の際、粘着テープやシートの枠に沿って発生した粘着残留物を除いた、表面から発生した残留物がないと、「正常」サンプルと判定し、残留物が発生すると、「非正常」サンプルと判定する。
【0051】
前記実施例1〜3でのサンプルを180°法により剥離力を測定した後の、その剥離された被着剤である銅箔、ガラス板、そしてステンレススチル板に表面を視覚的な方法により観察して剥離性を確認し、その結果を下記表3に示した。下記表3において「○」は、被着表面に粘着剤残留物が存在しない「正常」サンプルを表す。
【0052】
【表3】

【0053】
前記表3から分かるように、すべてのサンプルの被着表面には、粘着剤残留物が存在しなかった。これにより、前記実施例の剥離性に優れており、特に、200℃40分間、高温付加サンプル(剥離力測定法Iサンプル)の場合には、耐熱性及び内部凝集性を確認することができた。
【0054】
(実験例4:高温ねじり測定(Curl))
粘着シート又はテープを3.4cm×5cm(横×縦)で用意し、以下のように用意したサンプルは、ホットプレート上に載置し、150℃から250℃まで10℃ずつ昇温する時又は250℃から150℃まで10℃ずつ温度を冷却させる時ごとにサンプルのねじり長を観察する。このとき、サンプルの横方向又は縦方向に捻られて上がった長さを測定する。粘着剤層方向に捻られて上がると、「+」値で表現し、その反対に基材フィルムであるポリイミドフィルムの方向に捻られて上がると、「−」値で表現する。
【0055】
高温でねじり測定法IIにより実施例1と3で製作された粘着テープをホットプレートで各温度別に捻られて上がるのを観察し、その結果を下記表4−1と4−2に示した。
【0056】
【表4】

【0057】
前記表4から分かるように、250℃で横・縦方向へすべての値が0.5mm以内に表れたことが分かる。したがって、部品の高い寸法安定性を期待することができる。
【0058】
(実験例5:酸化防止性テスト)
粘着シート又はテープを一般銅リードフレーム上に付着してリードフレームの表面をマスキングし、150〜250℃間の温度で粘着テープが付着されたリードフレームは、各温度別に10分間熱を加える。この後、粘着テープを剥離させて、マスキングした表面を視覚的な観察により酸化の有無を判定することができる。特に、粘着シートでマスキングされない面とマスキングされた面とを比較して確認することができる。
【0059】
前記実施例1と3での製作された粘着テープを銅箔に積層させてマスキングし、一定高温で10分間銅箔の表面に酸化が発生するか否かを視覚的に観察し、その結果を下記表5に示した。
【0060】
【表5】

【0061】
前記実施例1及び3の耐熱性粘着シートの各温度別酸化有無の特性を示した表5から分かるように、高温で銅薄の付着表面が酸化されないことを確認することができる。
【0062】
(実験例6:高温で重量の減少測定)
前記内容で製作された粘着テープから粘着剤を採取でき、このような粘着剤は、熱重量分析系(TGA)により高温で粘着剤の重量の減少を測定することができる。測定条件は、常温から300℃までであり、昇温速度は、10℃/min.にして測定した。
【0063】
前記実施例1及び3で製作された粘着テープの粘着剤層を採取して、TGAにて常温から300℃まで採取した粘着剤の重量減少を測定し、下記表6にその結果を一部温度別に重量減少率を表した。
【0064】
【表6】

【0065】
前記表6から分かるように、それぞれの粘着剤は、250℃で1.5%以内に重量減少があることが分かる。したがって、高温で粘着剤の重量減少が小さいことを確認でき、剥離時に粘着残留物を形成しないことを期待することができる。
【0066】
以上、本発明は、いくつかの実施例についてのみ詳細に説明したが、本発明の範囲内で多様な変形及び修正が可能であることは、当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正された事項は、添付された特許請求の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施例による耐熱性粘着シートの断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1…耐熱性基材フィルム、2…耐熱性粘着剤層、3…粘着層保護離型フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性粘着シートであって、
耐熱性基材と、
前記耐熱性基材の少なくとも一面に形成されるものの、エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂と熱硬化性粘着剤樹脂、エネルギー線開始剤及び熱硬化剤を含む調液でコーティングされた粘着剤層として、エネルギー線を照射して架橋反応を誘導することによって硬化された耐熱性を有する粘着剤層と、を備えることを特徴とする、耐熱性粘着シート。
【請求項2】
前記耐熱性基材は、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、トリアセチルセルロール、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン及びポリカーボネートの中から選択された少なくとも一つのフィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の耐熱性粘着シート。
【請求項3】
前記耐熱性基材は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、亜鉛、錫などからなる箔、合金箔及びメッキ箔の中から選択された少なくとも一つの金属箔であることを特徴とする、請求項1に記載の耐熱性粘着シート。
【請求項4】
前記粘着体層の前記エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂は、設計目的に応じて1種又は2種以上混合して使用し、前記粘着剤層のエネルギー線硬化型オリゴマー樹脂/熱硬化性粘着剤樹脂の使用量の割合は、1/9〜1であることを特徴とする、請求項1に記載の耐熱性粘着シート。
【請求項5】
前記熱硬化性粘着剤樹脂の重量平均分子量は、40,000〜3,000,000であることを特徴とする、請求項1に記載の耐熱性粘着シート。
【請求項6】
前記エネルギー線開始剤は、設計目的によって1種又は2種以上混合使用し、前記エネルギー線開始剤の使用量は、前記エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂全体使用量対比1/100〜1/5であることを特徴とする、請求項1に記載の耐熱性粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤層の前記エネルギー線硬化型オリゴマー樹脂は、可視光線、紫外線又は電子線により硬化されることを特徴とする、請求項1に記載の耐熱性粘着シート。
【請求項8】
前記耐熱性粘着シートは、銅箔に積層された後、約200℃で40分間加熱してから常温で1時間放置された状態で5g・f/2.54cm幅〜600g・f/2.54cm幅以下の粘着力を有することを特徴とする、請求項1に記載の耐熱性粘着シート。
【請求項9】
前記耐熱性粘着シートは、銅箔、ガラス板又はステンレス板に積層された後に常温で1時間放置された状態で5g・f/2.54cm幅〜120g・f/2.54cm幅以下の粘着力を有することを特徴とする、請求項1に記載の耐熱性粘着シート。
【請求項10】
前記耐熱性粘着シートの粘着剤層は、常温から250℃まで10℃/min.で昇温して温度を加熱した時、2%以内に重量が減少することを特徴とする、請求項1に記載の耐熱性粘着シート。
【請求項11】
前記耐熱性粘着シートは、金属表面にマスキングされた後、250℃の高温で金属表面に酸化が起きないように金属表面を保護することを特徴とする、請求項1〜10のうちの何れか1項に記載の耐熱性粘着シート。

【図1】
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【公表番号】特表2009−538389(P2009−538389A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526527(P2009−526527)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/KR2007/004007
【国際公開番号】WO2009/020253
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(501380081)トウレ セハン インコーポレイテッド (22)
【Fターム(参考)】