説明

耐熱特性が強化された組成物

ポリマーと、一次酸化剤と、二次酸化剤と、2,2’−オキサミドビス[エチル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)の少なくとも一方から選択される金属不活性化剤とを含む組成物を開示する。本組成物は、光安定剤も含むことがある。本組成物を使用して、ワイヤーおよびケーブル用の絶縁体を製造することができる。本組成物は、改善された長期耐熱老化性を有し、熱に暴露されたとき、それらの色も保持する。一定の組成物から製造される導体、例えばワイヤーまたはケーブル用の絶縁体の製造方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製品を保護または絶縁するための組成物、より詳細には、絶縁ケーブルおよびワイヤーにおいて使用するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルおよびワイヤーは、自動車、トラックおよび他の乗り物を製造する際に広範に使用される。こうしたケーブルおよびワイヤーは、長期間にわたって高温に曝され、それ故、良好な耐熱老化性能を有する絶縁体が求められる。
【0003】
長期間熱に対して安定であるようにケーブル絶縁体を安定化することは、その絶縁体が銅線と接触している場合、非常に難しい。ボンネットの下およびエンジンコンパートメントの周囲で発生する熱は、銅線の絶縁体に使用されている1つまたはそれ以上のポリマーの劣化加速の原因となり得る。自動車用ケーブル業界では、定格温度での長期熱老化に合格する自動車用ケーブル絶縁体を求める傾向が増している。例えば、ISO−6722:200 2(E)またはLV−112:17.10.2001は、各々、Cクラスの自動車用ケーブルについて、125℃で3000時間の耐熱老化性、150℃で240時間の耐熱老化性を求めている。加えて、銅は、熱を発生するばかりでなく、絶縁体に使用されているポリマーの劣化を触媒する。他の金属、例えばアルミニウムも、ポリマーの劣化を触媒するが、一般には銅よりずっと遅い。
【0004】
自動車用ケーブルのための以前の絶縁体は、様々な酸化防止剤を含んでいた。例えば、1つまたはそれ以上のヒンダードフェノールおよびペンタエリトリトールベータアルキルチオプロピオネート(Seenox(登録商標)412S)から成る酸化防止剤パッケージが、銅導体の良好な耐熱安定性および非変色性をもたらすために使用されている。加えて、ワイヤーおよびケーブル絶縁体に、2つの酸化防止剤、ヒンダードフェノールおよび亜鉛−メルカプトトルイミダゾールが併用されている。これらの先行絶縁体が存在するのではあるが、ワイヤーおよびケーブル絶縁体の改善された耐熱性能に対する一般的な業界の要求が、いまだ存在する。
【0005】
上述の件を考慮すると、改善された長期耐熱老化性、耐熱性能および保色性を有する組成物が望ましい。上記特性を有する絶縁体である、ワイヤーまたはケーブル用の絶縁体、ならびにそれらの絶縁体の製造方法も、望ましいことであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の終わりに記載する特許請求の範囲により定義される本発明は、上述の問題の少なくとも一部を解決するためのものである。ポリマーと、一次酸化剤と、二次酸化剤と、2,2’−オキサミドビス[エチル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)の少なくとも一方から選択される金属不活性化剤とを含む組成物を提供する。一実施形態において、前記一次酸化防止剤は、ヒンダードフェノールである。他の実施形態において、前記二次酸化防止剤は、チオシネルギスト(thiosynertist)である。ヒンダードアミン光安定剤も本組成物に含めることができる。前記金属不活性化剤、一次段化剤および任意のヒンダードアミン光安定剤は、本組成物が長期耐熱性および保色性を有するように、前記ポリマーを安定させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ワイヤーまたはケーブル用の絶縁体も提供する。本絶縁体は、ポリマーと、一次酸化剤と、二次酸化剤と、2,2’−オキサミドビス[エチル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)の少なくとも一方から選択される金属不活性化剤とを含む組成物を含む。一実施形態において、前記一次酸化防止剤は、ヒンダードフェノールである。他の実施形態において、前記二次酸化防止剤は、チオシネルギストである。任意の光安定剤をこの組成物に添加することができる。
【0008】
絶縁体の製造方法も提供する。ポリマーと、一次酸化剤と、二次酸化剤と、2,2’−オキサミドビス[エチル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)の少なくとも一方から選択される金属不活性化剤とをブレンドする。ワイヤーまたはケーブルなどの導体の周囲に、この組成物を、所望の形に成形する。成形した組成物を架橋してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、以下の詳細な説明が、本発明を実施することができる特定の実施形態を説明するものであることを理解しなければならない。当業者が本発明を実施することができるように、十分詳細にこれらの実施形態を説明する。他の実施形態を用いることができること、ならびに本発明の精神および範囲を逸脱することなく構造の変更、論理上の変更および他の変更を行うことができることを理解しなければならない。
【0010】
本発明の1つの態様は、ポリマーと、一次酸化防止剤と、二次酸化防止剤と、金属不活性化剤とを含む組成物である。本発明の一実施形態において、前記一次酸化剤は、ヒンダードフェノールを含む。本発明の他の実施形態において、前記二次酸化剤は、チオシネルギストを含む。
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、2つの金属不活性化剤の方が、長期熱老化に対するポリマー安定化および組成物の色の保持に関して、ニューヨーク、タリータウンのCiba Specialty ChemicalsからIrganox(登録商標)1024として市販されている1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン(CAS 32687−78−8)、業界標準、と比較してより良好に作用することを発見した。その第一の金属不活性化剤は、コネチカット州、ミドルバリーのCrompton Corporation−Uniroyal ChemalsからNaugard(登録商標)XL−1として市販されている2,2’−オキサミドビス[エチル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](CAS 70331−94−1)であり、本明細書では、XL−1と呼ぶことがある。第二の金属不活性化剤は、テネシー州、キングポートのEastman Chemical CompanyからOABHとして市販されているオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)(CAS 6629−10−3)である。本発明者らは、本組成物に光安定剤を添加することにより耐熱安定性を有意に改善できることも発見した。
【0012】
これらの利点は、本組成物が銅線、他の熱源、またはポリマーの劣化を触媒する他の材料と接触する場合、特に重要である。本組成物を用いて製造した、ワイヤーおよびケーブル(例えば、自動車用ケーブル)ならびに他の製品のための絶縁体は、改善された長期耐熱老化性能を有する。例えば、本発明に従って製造した組成物は、ISO 6722.200 2(E)による125℃で3000時間の基準を満たす。
【0013】
本組成物は、自動車用ワイヤーおよびケーブルのための絶縁体を製造する際に、特に有用である。本組成物は、銅などの発熱材料と接触している組成物に良好な耐熱性が求められる、他の用途にも使用することができる。
【0014】
本発明において使用することができるポリマーとしては、ケーブルまたはワイヤー絶縁体に使用できるあらゆるポリマーが挙げられる。こうしたポリマーは、好ましくは、耐切削性および耐摩耗性を有し、可撓性であり、好ましくは、少なくとも少しは弾性である。本ポリマーは、絶縁体の成形を助長するために熱可塑性であるべきであるが、一部の好ましい実施形態では、本ポリマーは、後に架橋されるであろう。代表的なポリマーとしては、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性オレフィン(TPO)、熱可塑性加硫物(TPV)、またはこれらのポリマーのブレンドが挙げられる。ポリマーは、多くの供給業者から市販されている。本発明では、架橋性ポリマーも使用することができ、架橋性でないポリマーも使用することができ、それらを併用することもできる。非架橋性ポリマーを使用する場合には、それらを架橋性のものと併用して、それらのポリマーが少なくとも一部は架橋しているようにする。
【0015】
架橋性熱可塑性ポリマーは、好ましくは、ポリオレフィンである。適するポリオレフィンとしては、エチレンポリマー、プロピレンポリマー、およびこれらのブレンドが挙げられる。
【0016】
エチレンポリマーは、この用語を本明細書において使用する場合、エチレンのホモポリマーであるか、エチレンと小率の1つまたはそれ以上のα−オレフィン(3から12個の炭素原子、好ましくは4から8個の炭素原子、および場合によってはジエンを有するもの)とのコポリマーであるか、そうしたホモポリマーとコポリマーの混合物またはブレンドである。前記混合物は、機械的ブレンドであってもよいし、インサイチューブレンドであってもよい。前記α−オレフィンの例は、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンである。前記ポリエチレンは、エチレンと不飽和エステル、例えばビニルエステル(例えば、酢酸ビニルまたはアクリル酸もしくはメタクリル酸エステル)とのコポリマーであってもよいし、エチレンと不飽和酸、例えばアクリル酸とのコポリマーであってもよいし、またはエチレンとビニルシラン(例えば、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシラン)とのコポリマーであってもよい。
【0017】
ポリエチレンは、均一ポリエチレンであってもよいし、不均一であってもよい。均一ポリエチレンは、通常、1.5から3.5の範囲の多分散性(Mw/Mn)および本質的に均一なコモノマー分布を有し、ならびに示差走査熱量計により測定したとき、単一の比較的低い融点を特徴とする。不均一ポリエチレンは、通常、3.5より大きい多分散性を有し、均一なコモノマー分布がない。Mwは、重量平均分子量と定義され、Mnは、数平均分子量と定義される。
【0018】
ポリエチレンは、1立方センチメートルあたり0.860から0.965グラムの範囲の密度を有することができ、好ましくは、1立方センチメートルあたり0.870から0.955グラムの密度を有することができる。これらは、10分あたり0.1から50グラムの範囲のメルトインデックスも有することができる。ポリエチレンが、ホモポリマーである場合、そのメルトインデックスは、好ましくは、10分あたり0.75から3グラムの範囲である。メルトインデックスは、ASTM D−1238、Condition Eに従って決定され、190℃および2160グラムで測定される。
【0019】
低または高圧法により、ポリエチレンを製造することができる。これらは、従来の技法により、気相法または液相法(すなわち、溶液もしくはスラリー法)で製造することができる。低圧法は、一般に、1平方インチあたり(「psi」)1000ポンド未満の圧力で操作され、これに対して高圧法は、一般に、15,000psiより高い圧力で操作される。
【0020】
これらのポリエチレンを作製するための代表的な触媒系としては、マグネシウム/チタン系の触媒系、バナジウム系の触媒系、クロム系の触媒系、メタロセン触媒系、および他の遷移金属触媒系が挙げられる。これらの触媒系の多くは、多くの場合、チーグラー・ナッタ触媒系またはフィリップス触媒系と呼ばれる。有用な触媒系としては、シリカ−アルミナ支持体に担持された酸化クロムまたはモリブデンを使用する触媒が挙げられる。
【0021】
有用なポリエチレンとしては、高圧法によって製造される低密度ホモポリマー(HP−LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、超超低密度ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)およびメタロセンコポリマーが挙げられる。
【0022】
高圧法は、一般に、フリーラジカル重合であり、管型反応器または攪拌式オートクレーブにおいて行われる。管型反応器の場合、圧力は、25,000から45,000psiの範囲内であり、温度は、200から350℃の範囲である。攪拌式オートクレーブの場合、圧力は、10,000から30,000psiの範囲であり、温度は、175から250℃の範囲である。
【0023】
好ましいポリマーは、エチレンおよび不飽和エステルまたは酸から成るコポリマーであり、これは、周知であり、また従来の高圧技法により作製することができる。前記不飽和エステルは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、またはビニルカルボキシレートであり得る。前記アルキル基は、1から8個の炭素原子を有することができ、好ましくは、1から4個の炭素原子を有する。前記カルボキシレート基は、2から8個の炭素原子を有することができ、好ましくは2から5個の炭素原子を有する。コポリマーの中のエステルコモノマーに帰属する部分は、そのコポリマーの重量を基準にして5から50重量パーセントの範囲であり得る。前記アクリレートおよびメタクリレートの例は、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートである。前記ビニルカルボキシレートの例は、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、およびビニルブタノエートである。前記不飽和酸の例としては、アクリル酸またはメタクリル酸が挙げられる。
【0024】
前記エチレン/不飽和エステルコポリマーまたはエチレン/不飽和酸コポリマーのメルトインデックスは、10分あたり0.5から50グラムの範囲であり得、好ましくは、10分あたり2から25グラムの範囲である。
【0025】
エチレンとビニルシランのコポリマーも使用することができる。適するシランの例は、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランである。こうしたポリマーは、一般に、高圧法を用いて製造される。こうしたエチレンビニルシランコポリマーの使用は、湿気架橋性組成物が望まれる場合に望ましい。場合によっては、湿気架橋性組成物は、ビニルシランがグラフトされたポリエチレンをフリーラジカル開始剤の存在下で使用することによって得ることができる。シラン含有ポリエチレンを用いる場合、配合物に架橋触媒(例えば、ジブチル錫ジラウレートもしくはドデシルベンゼンスルホン酸)、または別のルイスもしくはブレンステッド酸もしくは塩基触媒を含めることが望ましいこともある。
【0026】
前記VLDPEまたはULDPEは、エチレンと1つまたはそれ以上のα−オレフィン(3から12個の炭素原子、好ましくは3から8個の炭素原子を有するもの)とのコポリマーであり得る。前記VLDPEまたはULDPEの密度は、1立方センチメートルあたり0.870から0.915グラムの範囲であり得る。前記VLDPEまたはULDPEのメルトインデックスは、10分あたり0.1から20グラムの範囲であることができ、好ましくは、10分あたり0.3から5グラムの範囲である。前記VLDPEまたはULDPEの中のエチレン以外のコモノマー(単数または複数)に帰属する部分は、そのコポリマーの重量を基準にして1から49重量パーセントの範囲であることができ、好ましくは、15から40重量パーセントの範囲である。
【0027】
第三のコモノマー、例えば、別のα−オレフィンまたはジエン(例えば、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエンもしくはジシクロメンタジエン)を含めることができる。エチレン/プロピレンコポリマーは、一般にEPRと呼ばれ、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマーは、一般にEPDMと呼ばれる。この第三コモノマーは、そのコポリマーの重量を基準にして1から15重量パーセントで存在することができ、好ましくは、1から10重量パーセントの量で存在する。コポリマーが、エチレンを含めて2つまたは3つのコモノマーを含有することが好ましい。
【0028】
前記LLDPEは、同じく線状であるが、1立方メートル当たり0.916から0.925グラムの範囲の密度を有するVLDPE、ULDPEおよびMDPEを包含し得る。それは、エチレンと1つまたはそれ以上のα−オレフィン(3から12個の炭素原子、好ましくは、3から8個の炭素原子を有するもの)とのコポリマーであり得る。そのメルトインデックスは、10分あたり1から20グラムの範囲であることができ、好ましくは、10分あたり3から8グラムの範囲である。
【0029】
あらゆるポリプロピレンをこれらの組成物に使用することができる。例としては、プロピレンのホモポリマー、プロピレンと他のオレフィンとのコポリマー、およびプロピレンとエチレンとジエン(例えば、ノルボルナジエンおよびデカジエン)とのターポリマーが挙げられる。加えて、これらのポリプロピレンは、分散されていてもよいし、EPRまたはEPDMなどの他のポリマーとブレンドされていてもよい。ポリプロピレンの例は、Polypropylene Handbook: Polymerization, Characterization, Properties, Processing, Applications 3-14, 113-176 (E. Moore, Jr. ed., 1996)に記載されている。
【0030】
適するポリプロピレンは、TPE、TPOおよびTPVの成分であり得る。これらのポリプロピレン含有TPE、TPOおよびTPVを本出願において使用することができる。
【0031】
非メタロセンとメタロセンは両方とも、本発明におけるポリマーとして使用することができる。メタロセンポリマーは、本絶縁体の機械特性のバランスをとるために使用することができる。
【0032】
一次酸化防止剤は、主として、連鎖破壊型酸化防止剤として作用し、ペルオキシラジカルまたは他のラジカルと容易に反応する。一次酸化防止剤の例としては、反応性OHまたはNH基を有する化合物が挙げられる。その反応性OH/NH基からの水素が反応性フリーラジカルに移行することにより、阻害が発生する。この酸化防止剤から作られる、結果として生じたラジカルは、比較的安定であり、ポリマー鎖から水素を引き抜かない。一次酸化防止剤としては、ヒンダードフェノールおよびヒンダードアミンが挙げられる。
【0033】
ヒンダードフェノールは、水素供与体として作用する一次酸化防止剤である。ヒンダードフェノールは、ペルオキシラジカルと反応してヒドロペルオキシドを形成して、ポリマー骨格からの水素の引き抜きを防止する。本発明での使用に適するヒンダードフェノールとしては、Irganox(登録商標)1010((ペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])(CAS 6683−19−8));Irganox(登録商標)1076(オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(CAS 2083−79−3));Irganox(登録商標)1330(1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(CAS 1709−70−2));Irganox(登録商標)3114((トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート)(CAS 27676−62−6))が挙げられる。
【0034】
二次酸化防止剤は、ヒドロペルオキシドと反応して、非ラジカル、非反応性生成物、および熱安定性生成物を生じさせる。二次酸化防止剤は、多くの場合、ヒドロペルオキシド分解剤と呼ばれる。一次酸化防止剤と二次酸化防止剤を一緒に使用すると、それらは、相乗的安定化効果をもたらす。二次酸化防止剤としては、ホスファイト、ヒンダードアミンおよびチオシネルギストが挙げられる。
【0035】
チオシネルギストは、ヒドロペルオキシドを分解する硫黄系の二次酸化防止剤である。最も一般的な市販のチオシネルギストは、ラウリル酸またはステアリン酸のいずれかに基づくものである。本発明において使用することができるチオシネルギストとしては、(1)Seenox(登録商標)412S(ペンタエリトリトールテトラキス(B−ラウリルチオプロピオネート)(CAS 29598−76−3))、(2)ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート(CAS 693−36−7)、例えば、Naugard(登録商標)DSTDP(コネチカット州、ミッドバリーのCrompton Corporation−Uniroyal Chemicalから市販されている)、Lowinox(登録商標)DSTDP(インディアナ州、インディアナポリスのGreat Lakes Chemical Corporationから市販されている)、Cyanox SDTP(コネチカット州、スタンフォードのCytec Industries Inc.から市販されている)およびIrganox(登録商標)PS 802(ニューヨーク州、テリータウンのCiba Specialty Chemicals Inc.から市販されている)、(3)ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(CAS 123−28−4)、例えば、Naugard(登録商標)DLTDP、Lowinox(登録商標)DLTDP、Cyanox LDTPおよびIrganox(登録商標)PS800が挙げられる。金属不活性化剤は、金属表面および極微量の金属材料の触媒作用を抑制する。金属不活性化剤は、極微量の金属および金属表面を不活性化形態に変換する。これは、有益である。金属イオンは、例えば、銅線などの金属と接触するポリマーの劣化加速の原因となり得るからである。
【0036】
一次および二次酸化防止剤、ならびに金属不活性化剤の他の例は、当業者には周知であり、一部は、「Plastics Additives Handbook: Stabilizers, Processing AIDS, Plasticizers, Fillers, Reinforcements, Colorants for Thermoplastics」by H. Muller, P. P. Klemchuk, R. Gachter, Peter P. Klemchuk, H. Andreas, Hanser Gardner Publications, 1993 (ISBN: 1569901538)において見出すことができる。
【0037】
本発明者らは、驚くべきことに、2つの金属不活性化剤のほうが、長期熱老化に対するポリマー安定化および組成物の色の保持に関して、ニューヨーク、タリータウンのCiba Specialty ChemicalsからIrganox(登録商標)1024として市販されている1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン(CAS 32687−78−8)、業界標準、と比較してより良好に作用することを発見した。その第一の金属不活性化剤は、コネチカット州、ミドルバリーのCrompton Corporation−Uniroyal ChemalsからNaugard(登録商標)XL−1として市販されている2,2’−オキサミドビス[エチル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](CAS 70331−94−1)であり、本明細書では、XL−1とも呼ぶ。第二の金属不活性化剤は、テネシー州、キングポートのEastman Chemical CompanyからOABHとして市販されているオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)(CAS 6629−10−3)である。OABHは、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどのポリマーに卓越した安定性をもたらす銅不活性化剤である。OABHは、そうしなければポリマーの酸化の原因となる様々な銅塩をキレート化/不活性化することにより機能する。
【0038】
本発明者らは、本組成物にヒンダードアミン光安定剤(HALS)を添加することにより耐熱安定性を有意に改善できることも発見した。HALSは、UV線の有害作用に対して有機金属を安定させることにより作用する。具体例としてのHALSとしては、Chimassorb 2020(CAS 192268−64−7)が挙げられるが、これに限定されない。本組成物において使用することができるさらなるHALSは、例えば、米国特許第4,721,531号(これは、本明細書に参考として組み込まれる)に記載されている。ヒンダードアミン光安定剤は、例えば、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジンの誘導体または置換ピペリジンジオンであってもよい。本組成物において有用な多数のHALSが、例えば、Ciba Specialty Chemical Inc.から一般商品呼称TinuvinおよびChimassorbで、ならびにCytecから一般呼称Cyasorb−UVで市販されている。例としては、Tinuvin 111(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン,N,N’−[l,2−エタンジイルビス[[[4,6−ビス[ブチル(l,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)アミノ]−l,3,5−トリアジン−2−イル]イミノ]−3,1プロパンジイル]]−ビス[N,N’−ジブチル−N,N’−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−と、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとジメチルコハク酸のポリマーとの混合物);Tinuvin 123(ビス−(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート);Tinuvin 770(ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−セバケート);Tinuvin 765(ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−セバケート);Tinuvin 622(4−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールを有するジメチルスクシネートポリマー);ならびにChimassorb 944(ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]ヘキサメチレン(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]])、およびChimassorb 119(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン−N,N’−[1,2−エタンジイルビス[[[4.6−ビス[ブチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]イミノ]−3,1プロパンジイル]]−ビス[N,N’−ジブチル−N,N’−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル);およびChimassorb 2020(CAS 192268−64−7)が挙げられる。
【0039】
追加成分、例えば、難燃剤(例えば、アルミニウム・三水和物としても知られている水酸化アルミニウム)、充填剤、加工助剤、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛)、硬化助剤(例えば、ペンシルバニア州、エクストンのSartomer CompanyからSartomer SR 350として入手できる、1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−、トリメタクリレート(CAS 3290−92−4))、カップリング剤(例えば、ビニルトリエトキシシラン、ステアリン酸亜鉛)、および過酸化物(例えば、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン)も、本組成物に含めることができる。
【0040】
一実施形態において、前記ヒンダードフェノールおよびチオシネルギストは、それぞれ、Irganox(登録商標)1010およびSeenox(登録商標)412Sである。金属不活性化剤、ヒンダードフェノールおよびチオシネルギストの具体例としての組み合わせは、XL−1、Irganox(登録商標)1010およびSeenox(登録商標)412Sである。金属不活性化剤、ヒンダードフェノール、チオシネルギストおよび光安定剤の具体例としての組み合わせは、OABH、Irganox(登録商標)1010、Seenox(登録商標)412SおよびChimassorb 2020である。
【0041】
以下の実施形態のすべてにおいて、範囲は、ポリマーの約100重量部あたりである。一実施形態において、金属不活性化剤は、約0.05から約10重量部で含める。他の実施形態において、金属不活性化剤は、約0.2から約2重量部で含める。ヒンダードフェノールは、約0.05から約10重量部で含めることができる。ヒンダードフェノールは、約0.2から約3重量部で含めることもできる。チオシネルギストは、約0.05から約30重量部で含めることができる。チオシネルギストは、約2から約5重量部で含めることもできる。含める場合には、光安定剤は、約0.05から約10重量部で含めることができる。含める場合には、光安定剤は、約0.2から約3重量部で含めることもできる。
【0042】
金属不活性化剤、ヒンダードフェノールおよびチオシネルギストは、組成物が高熱条件下で銅線と接触しているとき、または他の任意の発熱源と接触しているとき、その組成物への良好な耐熱性を付与する。驚くべきことに、XL−1およびOABHは、ポリマーの安定化に関して、Irganox(登録商標)1024、業界標準、と比較してより有効であることが判明した。本組成物への光安定剤の追加により、耐熱安定性を有意に改善できることが、さらに判明した。
【0043】
本発明の組成物は、一般に、ポリマーと金属不活性化剤と一次酸化剤と二次酸化剤とをブレンドすることにより製造できる。任意の光安定剤を本組成物の他の成分とともに添加またはブレンドすることもできる。本組成物は、マスターミックスで、または配合機で製造することができる。配合は、米国特許第6,565,784号(これは、本明細書に参考として組み込まれる)に記載されている。
【0044】
本組成物は、ワイヤーおよびケーブル絶縁体、ならびに良好な耐熱性および/または非変色性が求められる他の製品において使用することができる。最終用途では、本組成物は、下で詳述するように、例えば押出成形または鋳型成形により、所望の最終形に成形することができる。本組成物は、成形後、架橋することができる。本組成物を架橋する場合、隣接するポリマー鎖を共有結合により連結させる。
【0045】
架橋は、所望される場合には、照射により行うことができる。本組成物は、架橋剤の添加によって、または加水分解性にすること[これは、グラフト法または共重合法により、−−Si(OR)3(この場合のRは、ヒドロカルビルラジカルである)などの加水分解性の基をポリマー構造に付加させることによって、達成される]によって、架橋することができる。具体例としての加水分解性の基としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、およびガンマ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシ−シランが挙げられ、これらは、上述の有機過酸化物の存在下でポリマーにグラフトすることができる。その後、これらの加水分解性ポリマーを、シラノール縮合触媒、例えばジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、酢酸第一錫、ナフテン酸鉛およびカプリル酸亜鉛の存在下、湿分によって架橋させる。
【0046】
加水分解性グラフトコポリマーの例は、ビニルトリメトキシシランがグラフトされたエチレンホモポリマー、ビニルトリエトキシシランがグラフトされたエチレンホモポリマー、およびビニルトリブトキシシランがグラフトされたエチレンホモポリマーである。加水分解性シラン−エチレンコポリマーの一例は、The Dow Chemical Companyから入手できるSi−Link DFDA−5451であり、これは、エチレンとビニルトリメトキシシランの一反応器製造コポリマー(a reactor produced copolymer)である。
【0047】
本組成物は、有機過酸化物などのラジカル開始剤でさらに架橋させることができる。適する有機化酸化物は、例えば、ジクミルペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;t−ブチルクミルペルオキシド;および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン−3である。一般に、この有機過酸化物は、その過酸化物の有意な分解が開始する温度より低い温度で、ロールミル、二軸スクリュー混練押出機、またはBanbury(商標)もしくはBrabender(商標)ミキサーにおいて溶融ブレンドすることにより、ポリマーに配合することができる。過酸化物は、Plastic Additives Handbook, Gachter et al., 1985の646から649頁に記載されているように、それらの半減期温度に基づき、分解について評価する。ポリマー化合物に有機過酸化物を配合するための別法は、液体過酸化物とポリマーのペレットとを、ブレンド装置、例えばHenschel(商標)ミキサーで、またはその有機過酸化物の凝固点より高く、且つ、その有機過酸化物の分解温度およびポリマーの融解温度より低い温度で維持される均熱装置、例えば単一ドラムタンブラーで、混合する方法である。有機過酸化物を配合した後、そのポリマー/有機過酸化物を、例えば、押出機に導入し、それをその押出機で導電体の周囲にその有機過酸化物の分解温度より低い温度で押出して、ケーブルを成形する。その後、そのケーブルをその有機過酸化物が分解してフリーラジカルを生じさせる温度より高い温度に暴露する。それらのラジカルが、ポリマーを架橋させる。
【0048】
本発明の組成物を使用する導体、例えばワイヤーまたはケーブルは、様々なタイプ(例えば、一軸または二軸スクリュー型)の押出機によって作製することができる。配合は、押出機において行ってもよいし、押し出す前にBrabender(商標)ミキサーまたはBanbury(商標)ミキサーなどの従来のミキサーにおいて行ってもよい。従来の押出機の説明は、米国特許第4,857,600(これは、その全文、本明細書に組み込まれる)において見出すことができる。代表的な押出機は、その上流端にホッパーおよびその下流端にダイを有する。そのホッパーよって、スクリューを具備するバレルに供給する。下流端におけるスクリューの末端とダイの間には、スクリーンパックおよびブレーカープレートがある。
【0049】
この押出機のスクリュー部分は、3つのセクション(供給セクション、圧縮セクションおよび計量セクション)ならびに2つのゾーン(背面熱ゾーンおよび前面熱ゾーン)に区分されていると考えられ、これらのセクションおよびゾーンを上流から下流に走行させる。代案では、複数(2つより多く)の加熱ゾーンが、軸に沿って存在することもあり、それらを上流から下流に走行させる。1つまたはそれ以上のバレルを有する場合、それらのバレルは、直列に連結される。各バレルの長さ対直径比は、約15:1から約30:1の範囲である。材料を押出後に有機過酸化物で架橋させる、ワイヤー被覆の場合、クロスヘッドのダイによって、加熱ゾーンに直接供給し、このゾーンを約130℃から約260℃の範囲、好ましくは、約170℃から約270℃の範囲の温度で維持する。
【0050】
本発明のもう1つの態様は、ワイヤーおよびケーブル用のジャケットである。本ジャケットは、ワイヤーまたはケーブルの外面保護コーティングとして利用することができる。本ジャケットは、上で説明した組成物を含む。本ジャケットは、一般に、ワイヤーもしくはケーブル心線上に、またはその心線と本発明のジャケットの中間の絶縁層上に、直接、本発明の組成物を押出すことによって製造する。その後、上で説明したような適する手段で、その組成物を架橋してもよい。
【0051】
本明細書で言及する特許は、それら全文、本明細書に参考として組み込まれる。以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、これらの実施例を本発明の範囲の限定と解釈すべきではない。以下の実施例では、配合物中の成分を重量パーセントで与えており、これに対して、上述および特許請求の範囲では、成分をポリマーの100重量部あたりの重量部で与えていることに注意しなければならない。
【0052】
(実施例1〜4)
比較サンプル(CS)A〜Bおよび実施例(Ex.)1〜4の配合物は、250mL Brabendrミキサーに材料を充填し、それらの材料を3分間、約95〜110℃の融解温度で溶融混合することによって、調製した。その後、Brabender調製配合物を公称50ミルのプラークにプレスし、油圧プレスのもとで15分間、180℃で硬化させた。そのプラークからドッグボーン型試験片を切り抜き、Instron機を使用して毎分20”の引張速度で引張特性を測定した。
【0053】
比較サンプルA〜Bおよび実施例1〜4の配合物を下の表1に示す。比較サンプルAおよび実施例1〜2は、Irganox(登録商標)1024(比較例Aにおいて使用)とOBAH(実施例2において使用)の両方が、Irganox(登録商標)1010およびCyanox(登録商標)STDPを使用するときに耐熱性およびポリマーの色の安定性をもらすために、XL−1(実施例1において使用)ほど有効でないことを示す。実施例1の配合物の強化された耐熱性は、例えば、その優れた破断点引伸び率および優れた破断点引張伸び残率によって示される。180℃オーブン内で14日後、実施例1は、比較サンプルAについての30%および実施例2についての12%に対し、57%の破断時引張伸び率を有した。180℃オーブン内で14日後、実施例1は、比較サンプルAについての18%および実施例2についての6%に対し、73%の破断点引張伸び残率を有した。
【0054】
ポリマーの色の安定性については、180℃での14日の熱老化後、実施例1配合物の色は、淡色のままであり、これに対して、比較サンプルAおよび実施例2の配合物は、暗色になってきた。
【0055】
Cyanox(登録商標)1790およびSeenox(登録商標)412Sを使用したとき、比較サンプルBおよび実施例3〜4は、XL−1(実施例3において使用)およびOABH(実施例4において使用)が、ポリマーの安定化に関して、Irganox(登録商標)1024(比較サンプルBにおいて使用)より有効であることを示す。実施例3および4の配合物の強化された耐熱性は、例えば、それらの優れた破断点引張伸び率および優れた破断点引張伸び残率によって示される。180℃オーブン内で14日後、比較サンプルBについての48%に対し、実施例3は、90%の破断点引張伸び率を有し、実施例4は、144%の破断点引張伸び率を有した。180℃オーブン内で14日後、比較サンプルBについての25%に対し、実施例3は、80%の破断点引張延び残率を有し、実施例4は、71%の破断点引張延び残率を有した。
【0056】
ポリマーの色の安定性については、180℃で14日の加熱後、実施例3および4の配合物の色は、淡色のままであり、これに対して比較サンプルBの配合物は、暗色であった。
【0057】
これらの実験は、XL−1が最も有効な金属不活性化剤であり、一方、Irganox(登録商標)1024が最も有効でない金属不活性化剤であることを示している。
【表1】

1Sartomer SR 350は、1,3−プロパンジオール,2−エチル−2−ヒドロキシメチル−,トリメタクリレート(CAS 3290−92−4)であり、ペンシルバニア州、エクストンのSartomer Companyから入手することができる。
2Irganox(登録商標)1010FFは、Irganox(登録商標)1010(粉末形)の易流動形であり、(ペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](CAS 6683−19−8)であり、ニューヨーク州、タリータウンのCiba Specialty Chemicalsから入手することができる。
3Cyanox(登録商標)1790は、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(CAS 40601−76−1)であり、ニュージャージー州、ウエストパターソンのCytec Industries,Inc.から入手することができる。
4Irganox(登録商標)1024 FFは、Irganox(登録商標)1010(粉末形)の易流動形であり、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン(CAS 32687−78−8)であり、ニューヨーク州、タリータウンのCiba Specialty Chemicalsから入手することができる。
5Naugard(登録商標)XL−1は、2,2’−オキサミドビス[エチル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](CAS 70331−94−1)であり、コネチカット州、ノーガタックのCrompton Corporationから入手することができる。
6OABHは、オキサリルビス(ベンジリデンヒドラジン)(CAS 6629−10−3)であり、テネシー州、キングポートのEastman Chemical Companyから入手することができる。
7Seenox(登録商標)は、ペンタエリトリトールテトラキス(B−ラウリルチオプロピオネート)であり、ルイジアナ州、ハーンヴィルのCrompton Corporationから入手することができる。
8Cyanox(登録商標)STDPは、ジステアリルチオプロピオネート(CAS 693−36−7)であり、ニュージャージー州、ウエストパターソンのCytec Industries,Inc.から入手することができる。
9VulCup Rは、α−α”−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−ジイソプロピルベンゼンであり、ペンシルバニア州、アンバーのGeo Specialty Chemicalsから入手することができる。
【0058】
(実施例5〜8)
実施例5〜8の配合物は、250mL Brabenderミキサーに材料を充填し、それらの材料を3分間、約95〜110℃の融解温度で溶融混合することによって調製した。その後、これらのBrabender調製配合物を公称40ミルのプラークにプレスし、油圧プレスのもとで15分間、180℃で硬化させた。そのプラークからドッグボーン型試験片を切り抜き、Instron機を使用して毎分20”の引張速度で引張特性を測定した。
【0059】
それらの配合物を下の表2に示す。実施例5と実施例8の比較により、Seenox(登録商標)412Sを含有する配合物(実施例8)は、DSTDPを含有する配合物(実施例5)より良好な引張伸び残率および色の安定性をもたらすことが証明される。実施例8の配合物の強化された耐熱性は、例えば、その優れた破断時引張伸び率および優れた引張伸び残率によって示される。180℃オーブン内で21日後、実施例8は、実施例5についての13%に対し、107%の破断時引張伸び率を有した。180℃オーブン内で21日後、実施例8は、実施例5についての13%に対し、48%の破断時引張伸び残率を有した。
【0060】
ポリマーの色の安定性については、180℃で21日加熱後、実施例8の配合物の色は、4(暗いベージュ色)にランクされ、これに対して実施例5の配合物は、6(褐色)にランクされた。
【0061】
これらの配合物は、XL−1またはOABHとIrganox(登録商標)1010およびSeenox(登録商標)412Sとの併用が、XL−1またはOABHとCyanox(登録商標)1790およびSeenox(登録商標)412Sとの併用より良好な引張伸び残率および保色をもたらすことも示す。実施例8の配合物(Irganox(登録商標)1010、XL−1およびOABH)の強化された耐熱性は、例えば、実施例6(Cyanox(登録商標)1790、XL−1およびSeenox(登録商標)412S)と比較したときのその優れた破断時引張伸び率および優れた引張伸び残率によって示される。180℃オーブン内で21日後、実施例8は、実施例6についての22%に対し、107%の破断時引張伸び率を有した。180℃オーブン内で21日後、実施例8は、実施例6についての12%に対し、48%の破断時引張伸び残率を有した。
【0062】
実施例9の配合物(Irganox(登録商標)1010、OABHおよびSeenox(登録商標)412S)の強化された耐熱性は、例えば、実施例7(Cyanox(登録商標)1790、OABHおよびSeenox(登録商標)412S)と比較したときのその優れた破断時引張伸び率および優れた引張伸び残率によって示される。180℃オーブン内で21日後、実施例9は、実施例7についての18%に対し、69%の破断時引張伸び率を有した。180℃オーブン内で21日後、実施例9は、実施例7についての9%に対し、35%の破断時引張伸び残率を有した。
【0063】
ポリマーの色の安定性については、180℃で21日加熱後、実施例6、8および9の配合物の色は、4(暗いベージュ色)にランクされ、これに対して実施例7の配合物は、5(淡い褐色)にランクされた。
【表2】


【0064】
(実施例10〜13)
実施例10〜13の配合物を下の表3に示す。過酸化物が存在しないこれらの配合物をバッチ式配合機において7分間、110から150℃で調製した。その後、それらのバッチ調製配合物に過酸化物を二本ロールミルセットにより約100℃で添加した。その後、それらの配合物を、ワイヤー押出しのために、顆粒にした。ポリエチレン計量スクリューを備えた2.5”押出機(20:1 L:D)にそれらの顆粒状配合物を供給し、16ミルの壁厚で18 AWG/7標準裸銅線上に押出した。押出されたワイヤーを、CV管において約200℃で、30秒の滞留時間で硬化させた。これらのサンプルを、150℃での10日(240時間)熱老化および125℃での18週(3000時間)熱老化に付した。試験期間終了時、それらの試験サンプルを、室温で、1/4”の心棒の周りに3回巻きつけ、その後、1分間、5重量%の塩水中、1kVでの耐電圧試験(修正ISO 6722試験プロトコル)に付した。実施例11と実施例12の比較により、XL−1(実施例11)は、耐熱性および色の安定性に関してポリマー組成物を安定化する点で、OABH(実施例12)より有効な金属不活性化剤であることが、証明される。125℃での18週間(3000時間)のオーブン老化後、実施例11の配合物は、オフホワイトの色を有し、これに対して実施例12の配合物は、暗褐色を有した。加えて、125℃での18週間(3000時間)のオーブン老化後、実施例11の配合物は、上で説明した巻きつけおよび1kVでの耐電圧試験に合格し、これに対して実施例12の調合物は、不合格であった。150℃試験での10日間(240時間)のオーブン老化後、実施例11の配合物は、オフホワイトの色を有し、巻きつけおよび1kVでの耐電圧試験に合格し、これに対して実施例12の配合物は、暗褐色を有し、巻きつけおよび1kVでの耐電圧試験に不合格であった。
【0065】
さらに、実施例12と実施例13の比較により、OABHを含有する配合物にヒンダードアミン光安定剤(Chimassorb(登録商標)2020)を添加したとき、耐熱安定性および色の安定性が、有意に改善されたことが証明される。125℃での18週間(3000時間)のオーブン老化においても、150℃試験での10日間(240時間)のオーブン老化においても、実施例13(Chimassorb(登録商標)2020)は、オフホワイトであり、巻きつけおよび1kVでの耐電圧試験に合格し、これに対して実施例12(Chimassorb(登録商標)2020不含)は、暗褐色であり、巻きつけおよび1kVでの耐電圧試験に不合格であった。
【0066】
実施例10と実施例11の比較により、XL−1、Irganox(登録商標)1010およびSeenox(登録商標)412Sの併用(実施例11)は、ポリマーの安定化に関して、XL−1、Cyanox(登録商標)1790およびSeenox(登録商標)412Sの併用(実施例10)より有効であることが、証明される。125℃試験での18週間(3000時間)のオーブン老化において、実施例11は、オフホワイトであり、巻きつけおよび1kVでの耐電圧試験に合格し、これに対して実施例10は、暗褐色であり、巻きつけおよび1kVでの耐電圧試験に不合格であった。150℃試験での10日間(240時間)のオーブン老化において、実施例11は、オフホワイトであり、巻きつけおよび1kVでの耐電圧試験に合格し、これに対して実施例10は、白色であり、巻きつけおよび1kVでの耐電圧試験に合格した。
【表3】

1Chimassorb(登録商標)2020は、1,6−ヘキサンジアミン,N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ポリマーと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとN−ブチル−1−ブタンアミンおよびN−ブチルー2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物(CAS 192268−64−7)であり、ニューヨーク州、タリータウンのCiba Specialty Chemicalsから入手することができる。
【0067】
さて、本発明を、多少特定的に説明し、例示してきたが、説明してきたものに、変型、追加および削除をはじめとする様々な変更を施すことができることは、当業者には理解されるであろう。従って、これらの変更も本発明に包含され、本発明の範囲は、添付のクレームと合法的に一致する最も広い解釈によってのみ限定されると解釈する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ポリマー;
b.2,2’−オキサミドビス[エチル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)の少なくとも一方から選択される、金属不活性化剤;
c.一次酸化防止剤;および
d.二次酸化防止剤
を含む組成物。
【請求項2】
前記一次酸化防止剤が、ヒンダードフェノール酸化防止剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒンダードフェノール酸化防止剤が、ペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記二次酸化防止剤が、チオシネルギスト(thiosynergist)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記チオシネルギストが、ペンタエリトリトールテトラキス(B−ラウリルチオプロピオネート)を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマーが、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマー、熱可塑性オレフィン、熱可塑性加硫物またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレンビニルアセテート、エチレンエチルアクリレートおよびこれらの組み合わせを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記金属不活性化剤が、前記ポリマーの約100重量部あたり約0.05から約10重量部で含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ヒンダードフェノールが、前記ポリマーの約100重量部あたり約0.05から約10重量部で含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記チオシネルギストが、前記ポリマーの約100重量部あたり約0.05から約30重量部で含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリマーの約100重量部あたり約0.05から約10重量部で含まれる光安定剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
ヒンダードアミン光安定剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記光安定剤が、1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ポリマーと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとN−ブチル−1−ブタンアミンおよびN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ISO 6722またはLV−112熱老化法の少なくとも一方によって評価したとき、金属不活性化剤を含まない組成物と比較して改善された耐熱老化性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
架橋剤をさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
a.ポリマー;
b.2,2’−オキサミドビス[エチル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)の少なくとも一方から選択される、金属不活性化剤;
c.ヒンダードフェノール酸化防止剤を含む、一次酸化防止剤;および
d.チオシネルギストを含む、二次酸化防止剤
を含む組成物。
【請求項17】
ヒンダードアミン光安定剤をさらに含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
a.ポリマー;
b.2,2’−オキサミドビス[エチル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)の少なくとも一方から選択される、金属不活性化剤;
c.一次酸化防止剤;および
d.二次酸化防止剤
を含む組成物を含む、ワイヤーまたはケーブル用の絶縁体。
【請求項19】
前記一次酸化防止剤が、ヒンダードフェノール酸化防止剤を含む、請求項18に記載の絶縁体。
【請求項20】
前記ヒンダードフェノールが、ペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を含む、請求項18に記載の絶縁体。
【請求項21】
前記二次酸化防止剤が、チオシネルギストを含む、請求項18に記載の絶縁体。
【請求項22】
前記チオシネルギストが、ペンタエリトリトールテトラキス(B−ラウリルチオプロピオネート)を含む、請求項21に記載の絶縁体。
【請求項23】
前記ポリマーが、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマー、熱可塑性オレフィン、熱可塑性加硫物またはこれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の絶縁体。
【請求項24】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレンビニルアセテート、エチレンエチルアクリレートおよびこれらの組み合わせを含む、請求項23に記載の絶縁体。
【請求項25】
前記金属不活性化剤が、前記ポリマーの約100重量部あたり約0.05から約10重量部で含まれる、請求項18に記載の絶縁体。
【請求項26】
前記ヒンダードフェノールが、前記ポリマーの約100重量部あたり約0.05から約10重量部で含まれる、請求項18に記載の組成物。
【請求項27】
前記チオシネルギストが、前記ポリマーの約100重量部あたり約0.05から約30重量部で含まれる、請求項18に記載の絶縁体。
【請求項28】
前記ポリマーの約100重量部あたり約0.05から約10重量部で含まれる光安定剤をさらに含む、請求項18に記載の絶縁体。
【請求項29】
ヒンダードアミン光安定剤をさらに含む、請求項18に記載の絶縁体。
【請求項30】
前記光安定剤が、1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ポリマーと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとN−ブチル−1−ブタンアミンおよびN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物を含む、請求項29に記載の絶縁体。
【請求項31】
前記ポリマーが、架橋される、請求項18に記載の絶縁体。
【請求項32】
ISO 6722またはLV−112熱老化法の少なくとも一方によって評価したとき、熱老化を受けたときに金属不活性化剤を含まない組成物と比較して改善された特性を有する、請求項18に記載の絶縁体。
【請求項33】
架橋剤をさらに含む、請求項32に記載の絶縁体。
【請求項34】
a.ポリマー;
b.2,2’−オキサミドビス[エチル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)の少なくとも一方から選択される、金属不活性化剤;
c.ヒンダードフェノール酸化防止剤を含む、一次酸化防止剤;および
d.チオシネルギストを含む、二次酸化防止剤
を含む組成物を含む、ワイヤーまたやケーブル用の絶縁体。
【請求項35】
ヒンダードアミン光安定剤をさらに含む、請求項34に記載の絶縁体。
【請求項36】
a.ポリマーと、一次酸化防止剤と、二次酸化防止剤と、2,2’−オキサミドビス[エチル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)の少なくとも一方から選択される金属不活性化剤とをブレンドして、組成物を成形すること;ならびに
b.導体の周囲に、その組成物を、所望の形に成形すること
を含む、絶縁体の製造方法。
【請求項37】
前記導体が、ワイヤーまたはケーブルを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記成形が、組成物の押出成形を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記成形が、組成物の鋳型成形を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物を架橋することをさらに含む、請求項36に記載の方法。

【公表番号】特表2008−521966(P2008−521966A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543077(P2007−543077)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/039042
【国際公開番号】WO2006/060093
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(591123001)ユニオン カーバイド ケミカルズ アンド プラスティックス テクノロジー エルエルシー (85)
【Fターム(参考)】