説明

耐被弾衝撃性の複合布地構造体

(a)不織布の一方向性配向繊維を第1の樹脂マトリックス中に含む第1の布地であって、当該繊維が高強度繊維を含み、当該第1の布地が第1および第2の表面を含む、第1の布地;及び(b)多方向性配向繊維を任意選択で第2の樹脂マトリックス中に含む第2の布地であって、当該第2の布地もまた高強度繊維を含み、第1および第2の表面を有する、第2の布地;を含む多層複合布地であって、第2の布地の第1の表面が、第1の布地の第2の表面に接着されることによって、複合布地を形成する、多層複合布地に関する。製造プロセス中に第2の布地層を支持体として使用し、その後、第1の布地層と一体化させて単一の構造体とする方法についても記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐被弾衝撃用途および他の用途に有用な複合材料、ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐被弾衝撃性製品は、当該技術分野で知られている。それらは、軟質タイプまたは硬質タイプであってよい。これらの製品の多くは、高強度繊維(high tenacity fibers)に基づくものであり、防弾チョッキなどの身体防護具などの用途に使用される。
【0003】
1つの一般的なタイプの耐被弾衝撃性製品は、高強度ポリエチレン繊維またはアラミド繊維などの一方向性配向高強度繊維から製造される。当該製品は、所望の耐被弾衝撃特性を有するが、複雑な製造法を必要とする。その結果、それらは、通常、他のタイプの耐被弾衝撃複合体より製造コストが高い。
【0004】
一方向性配向繊維を含むが、より経済的に製造することが可能な耐被弾衝撃性製品、ならびに当該製品の製造方法を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,552,208号明細書
【特許文献1】米国特許第6,642,159号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
(a)不織布の一方向配向繊維を第1の樹脂マトリックス中に含む第1の布地であって、前記繊維が高強度繊維を含み、前記第1の布地が第1および第2の表面を含む、前記第1の布地;および
(b)多方向性配向繊維を任意選択で第2の樹脂マトリックス中に含む第2の布地であって、前記第2の布地が高強度繊維を含み、第1および第2の表面を有する、前記第2の布地;を含む多層複合布地であって、前記第2の布地の前記第1の表面が前記第1の布地の前記第2の表面に接着されることによって当該複合布地を形成する、前記多層複合布地が提供される。
【0007】
さらに、本発明によれば、高強度繊維から複合布地構造体を形成する方法において、
(a)不織布の一方向性配向繊維を含む第1の布地であって、前記繊維が高強度繊維を含む、前記第1の布地を形成する工程;
(b)多方向性配向繊維を含む第2の布地であって、高強度繊維を含む前記第2の布地で、前記第1の布地を支持する工程;
(c)第1のマトリックス樹脂が前記第1の布地から少なくとも前記第2の布地内に達するように、前記第1の布地を前記第2の布地で支持する前、支持した後または支持している最中に、前記第1のマトリックス樹脂を前記第1の布地にコーティングする工程; および
(d)前記第1の布地と前記第2の布地が前記マトリックス樹脂によって互いに接着されるように、前記第1の布地と前記第2の布地を一体化(合体、結合あるいは結着)させて複合布地とし、それによって、前記第2の布地が前記複合布地の一体部分となる工程;
を改良として含む方法が提供される。
【0008】
さらに、本発明によれば、複合布地構造体を形成する方法であって、
(a)不織布の一方向性配向繊維を第1の樹脂マトリックス中に含む第1の布地であって、前記繊維が高強度繊維を含み、前記第1の布地が第1および第2の表面を含む、前記第1の布地を用意する工程;
(b)多方向性配向繊維を任意選択で第2の樹脂マトリックス中に含む第2の布地であって、前記第2の布地が高強度繊維を含み、第1および第2の表面を有する、前記第2の布地を用意する工程;および
(c)前記第2の布地の前記第1の表面を、前記第1の布地の前記第2の表面に接着させることによって、前記複合布地を形成する工程;
を含む方法が提供される。
【0009】
2つの布地層に加えて、他の布地または非布地層が存在してもよい。例えば、両外層が一方向性配向繊維層、または多方向性配向繊維層である3層構造体であってもよい。また、外層がともに一方向性配向繊維層であり、内層がともに多方向性配向繊維層である4層構造体とすることができる。第2の布地が第2のマトリックス樹脂を含む場合は、製造性および均一性の確保を容易にするために、好ましくは、第2のマトリックス樹脂は、第1のマトリックス樹脂と化学的に同一である。
【0010】
本発明は、優れた耐被弾衝撃特性を有する多層複合材料を提供する。また、一方向性配向繊維に対する支持構造体として、織布などの多方向性配向布地の1つまたは複数の層を使用することによって、この材料を製造することができる。後者の布地(多方向性配向布地)は、複合材料の一体部分となるため、廃棄物がより少なくなることにより製造コストが下がる。加えて、支持層を複合材料の一体部分とすることによって、材料の品質が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、少なくとも第1の布地層および第2の布地層から形成された多層複合布地を含む。第1および第2の布地層の両方における繊維は、高強度繊維(high tenacity fibers)を含み、それらの層は互いに接着される。
【0012】
本発明の目的では、繊維は、その長さ寸法が、幅および厚さの横方向寸法よりはるかに大きい長形体である。従って、「繊維」という用語は、単繊維、多繊維、リボン、ストリップ(strip)、ステイプル(staple)、ならびに規則的または不規則な断面を有する細断、切断もしくは不連続繊維等の他の形の繊維を含む。「繊維」という用語は、先述の繊維のいずれか、またはそれらの組合せを含む。糸(ヤーン)は、多くの繊維またはフィラメントで構成された連続的なストランドである。繊維は、スプリットフィルムまたはテープの形であってもよい。
【0013】
本明細書において有用な繊維の断面は、広く異なっていてもよい。それらは、断面が円形、平面または長円形であってよい。それらは、繊維の直線または長軸から突出した1つまたは複数の規則的または不規則な葉(ローブ;lobes)を有する不規則または規則的な多葉性断面であってもよい。繊維が実質的に円形、平面または長円形の断面であることが好適であり、最も好ましくは円形である。
【0014】
本明細書に用いられているように、「高強度繊維(high tenacity fibers)」」という用語は、約7g/d以上の靭性(テナシティ;tenacity)を有する繊維を指す。好ましくは、これらの繊維は、ASTM D2256によって測定して、少なくとも約150g/dの初期引張弾性率および少なくとも約8J/gの破断点エネルギーを有する。本明細書に用いられているように、「初期引張弾性率」、「引張弾性率」および「弾性率」という用語は、糸(ヤーン)についてはASTM2256によって測定し、エラストマーまたはマトリックス材料についてはASTM D638によって測定した場合の弾性係数を指す。
好ましくは、高強度繊維は、約10g/d以上、より好ましくは約16g/d以上、さらにより好ましくは約22g/d以上、最も好ましくは約28g/d以上の靭性(テナシティ)を有する。
【0015】
本発明の糸および布地に有用な高強度繊維としては、高度配向高分子量ポリオレフィン繊維、特に、高弾性率(または高強度)ポリエチレン繊維およびポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ポリベンゾキサゾール(PBO)およびポリベンゾチアゾール(PBT)などのポリベンザゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維、液晶コポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、グラファイト繊維、炭素繊維、玄武岩または他の鉱物繊維、硬質ロッドポリマー繊維、ならびにそれらの混合物およびブレンドが挙げられる。本発明に有用な好適な高強度繊維としては、ポリオレフィン繊維(より好ましくは高強度ポリエチレン繊維)、アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維、グラファイト繊維、ならびにそれらの混合物およびブレンドが挙げられる。高強度ポリエチレン繊維および/またはアラミド繊維が最も好適である。
【0016】
米国特許第4,457,985号明細書には、全般的に、そのような高分子量ポリエチレンおよびポリプロピレン繊維が記載されており、この特許の開示内容が、本明細書と矛盾しない範囲で参照により本明細書に組み込まれる。ポリエチレンの場合は、好適な繊維は、重量平均分子量が少なくとも約150000、好ましくは少なくとも約100万、より好ましくは約200万から約500万の間のものである。このような高分子量ポリエチレン繊維を溶液中で紡糸することができ(米国特許第4,137,394号明細書および米国特許第4,356,138号明細書参照)、またはフィラメントを溶液から紡糸してゲル構造体を形成することができ(米国特許第4,413,110号明細書、独国特許第30 04 699号明細書および英国特許第2051667号明細書参照)、またはポリエチレン繊維を圧延および延伸法によって製造することができる(米国特許第5,702,657号明細書)。本明細書に用いられている、ポリエチレンという用語は、少量の分枝鎖、または100個の主鎖炭素原子当たりの修飾単位が約5個を超えないコモノマーを含む、主に直鎖状のポリエチレン材料を指し、これは、アルケン−1−ポリマー、特に、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンもしくはポリブチレン、一次モノマーとしてモノオレフィンを含む共重合体、酸化ポリオレフィン、グラフトポリオレフィン共重合体およびポリオキシメチレン、または一般的に含まれる酸化防止剤、潤滑剤、紫外線遮断剤および着色剤等の低分子量添加剤などの1つまたは複数のポリマー添加剤を、約50重量パーセントを超えない量混合して含むこともできる。
【0017】
高強度ポリエチレン繊維(伸びきり鎖または高分子量ポリエチレン繊維とも称する)が好適であり、例えば、商品名SPECTRA(登録商標)繊維および糸として、米国ニュージャージ州MorristownのHoneywell International社から入手可能である。
【0018】
形成技術、延伸率および温度ならびに他の条件に応じて、様々な特性をこれらの繊維に付与することができる。ポリエチレン繊維の靭性(テナシティ)は、少なくとも約7g/d、好ましくは少なくとも約15g/d、より好ましくは少なくとも約20g/d、さらにより好ましくは少なくとも約25g/d、最も好ましくは少なくとも約30g/dである。同様に、インストロン(Instron)引張試験機で測定した繊維の初期引張弾性率は、好ましくは少なくとも約300g/d、より好ましくは少なくとも約500g/d、さらにより好ましくは少なくとも約1000g/d、最も好ましくは少なくとも約1200g/dである。初期引張弾性率および靭性(テナシティ)のこれらの最大値は、一般には、溶液成長またはゲル紡糸法を採用することによってのみ得られる。フィラメントの多くは、それらを形成したポリマーの融点より高い融点を有する。したがって、例えば、約150000、約100万および約200万の分子量を有する高分子量ポリエチレンは、一般には、バルクで約138℃の融点を有する。これらの材料で製造された高度配向ポリエチレンフィラメントは、それより約7℃から約13℃高い融点を有する。したがって、融点のわずかな上昇は、バルクのポリマーと比較して、フィラメントの結晶が完全であり、結晶配向がより高度であることを反映する。
【0019】
好ましくは、使用されるポリエチレンは、炭素原子1000個当たり少なくとも1個未満のメチル基、より好ましくは炭素原子1000個当たり約0.5個未満のメチル基、および約1重量パーセント未満の他の構成成分を有するポリエチレンである。
【0020】
同様に、重量平均分子量が少なくとも約200000、好ましくは約100万、より好ましくは約200万の高度配向高分子量ポリプロピレン繊維を使用することができる。以上に参照した様々な参考文献に記載されている技術、特に米国特許第4,413,110号明細書の技術によって、当該伸びきり鎖ポリプロピレンを合理的に十分に配向したフィラメントに成形することができる。ポリプロピレンは、ポリエチレンよりはるかに結晶性が低い材料であり、ペンダントメチル基を含むため、ポリプロピレンで達成可能な靭性(テナシティ)値は、一般には、ポリエチレンの対応する値より実質的に小さい。従って、好適な靭性(テナシティ)は、好ましくは少なくとも約8g/d、より好ましくは少なくとも約11g/dである。ポリプロピレンの初期引張弾性率は、好ましくは少なくとも約160g/d、より好ましくは少なくとも約200g/dである。ポリプロピレンフィラメントが好ましくは少なくとも168℃、より好ましくは少なくとも170℃の主融点を有するように、一般には、ポリプロピレンの融点は、配向処理によって数度だけ高められる。上記パラメータの特に好適な範囲は、有利には、最終製品の性能を向上させることができる。上記パラメータ(弾性率および靭性(テナシティ))の好適な範囲とともに、少なくとも約200000の重量平均分子量を有する繊維を採用することで、有利には、最終製品の性能を向上させることができる。
【0021】
伸びきり鎖ポリエチレン繊維の場合は、ゲル紡糸ポリエチレン繊維の調製および延伸は、その開示内容が本明細書と矛盾しない範囲で参照により本明細書に明確に組み込まれる米国特許第4,413,110号明細書;同第4,430,383号明細書;同第4,436,689号明細書、同第4,536,536号明細書;同第4,545,950号明細書;同第4,551,296号明細書;同第4,612,148号明細書;同第4,617,233号明細書;同第4,663,101号明細書;同第5,032,338号明細書;同第5,246,657号明細書;同第5,286,435号明細書;同第5,342,567号明細書;同第5,578,374号明細書;同第5,736,244号明細書;同第5,741,451号明細書;同第5,958,582号明細書;同第5,972,498号明細書;同第6,448,359号明細書;同第6,969,553号明細書および米国特許出願公開第2005/0093200号公報を含む様々な文献に記載されている。
【0022】
アラミド繊維の場合は、芳香族ポリアミドから形成された好適な繊維が、例えば、その開示内容が明細書と矛盾しない範囲で参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,671,542号明細書に記載されている。好適なアラミド繊維は、少なくとも約20g/dの靭性(テナシティ)、少なくとも約400g/dの初期引張弾性率および少なくとも約8J/gの破断点エネルギーを有し、特に好適なアラミド繊維は、少なくとも約20g/dの靭性(テナシティ)および少なくとも約20J/gの破断点エネルギーを有することになる。最も好適なアラミド繊維は、少なくとも約23g/dの靭性(テナシティ)、少なくとも約500g/dの弾性率および少なくとも約30J/gの破断点エネルギーを有することになる。例えば、適度に高い弾性率および靭性(テナシティ)値を有するポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)フィラメントは、耐被弾衝撃複合体を形成するのに特に有用である。例としては、デニールが1000のTeijin社のTwaron(登録商標)T2000である。他の例は、Du Pont社から入手可能な、初期引張弾性率および靭性(テナシティ)がそれぞれ500g/dおよび22g/dであるKevlar(登録商標)29、ならびに400、640および840デニールのKevlar(登録商標)129およびKM2である。他の製造元のアラミド繊維を本発明に使用することもできる。コ−ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド 3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド)などの、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)の共重合体を使用することもできる。Du Pont社が商品名Nomex(登録商標)で販売するポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)繊維も本発明の実施に有用である。
【0023】
高引張弾性率を有する高分子量ポリビニルアルコール(PV−OH)は、その開示内容が明細書と矛盾しない範囲で参照により本明細書に組み込まれるKwonらの米国特許第4,40,711号明細書に記載されている。高分子量PV−OH繊維は、少なくとも約200000の重量平均分子量を有するべきである。特に有用なPV−OH繊維は、少なくとも約300g/dの弾性率、好ましくは少なくとも約10g/d、より好ましくは少なくとも約14g/d、最も好ましくは少なくとも約17g/dの靭性(テナシティ)、および少なくとも約8J/gの破断点エネルギーを有するべきである。当該特性を有するPV−OH繊維を、例えば、米国特許第4,599,267号明細書に記載されている方法によって製造することができる。
【0024】
ポリアクリロニトリル(PAN)の場合は、PAN繊維は、少なくとも約400000の重量平均分子量を有するべきである。特に有用なPAN繊維は、好ましくは少なくとも約10g/dの靭性(テナシティ)および少なくとも約8J/gの破断点エネルギーを有するべきである。少なくとも約400000の分子量、少なくとも約15から20g/dの靭性(テナシティ)、および少なくとも約8J/gの破断点エネルギーを有するPAN繊維が最も有用であり、当該繊維は、例えば、米国特許第4,535,027号明細書に開示されている。
【0025】
本発明の実施に好適な液晶コポリエステル繊維は、例えば、米国特許第3,975,487号明細書、同第4,118,372号明細書および同第4,161,470号明細書に開示されている。液晶コポリエステル繊維は、商品名Vectran(登録商標)繊維としてKuraray America Inc.から入手可能である。
【0026】
本発明の実施に好適なポリベンザゾール繊維は、例えば、米国特許第5,286,833号明細書、同第5,296,185号明細書、同第5,356,584号明細書、同第5,534,205号明細書および同第6,040,050号明細書に開示されている。ポリベンザゾール繊維は、商品名Zylon(登録商標)繊維としてToyobo Co.から入手可能である。
【0027】
硬質ロッド繊維は、例えば、米国特許第5,674,969号明細書、同第5,939,553号明細書、同第5,945,537号明細書および同第6,040,478号明細書に開示されている。当該繊維は、商品名M5(登録商標)繊維としてMagellan Systems International社から入手可能である。
【0028】
好ましくは、第1の布地層における繊維は、高強度ポリオレフィン繊維(より好ましくは高強度ポリエチレン繊維)、アラミド繊維、PBO繊維、グラファイト繊維およびそれらのブレンドの群から選択される。同様に、第2の布地層における繊維は、同じ繊維群から選択される。
【0029】
本発明の布地層は、好ましくは、すべてのまたは実質的にすべての高強度繊維から形成される。あるいは、布地層における少なくとも約50重量%の繊維が高強度繊維であり、より好ましくは、布地層における少なくとも約75重量%の繊維が高強度繊維である。
【0030】
第1の布地は、高強度の一方向性配向繊維の不織布の形である。知られているように、当該配置において、一方向性配向繊維は、共通の繊維方向に沿って互いに平行に配列されている。一方向性配向布地は、製品に交差方向安定性を付与する少量の材料を含むことができ、当該材料は、すべてが高強度の材料とは限らない繊維、糸もしくは接着糸の形態で、または一方向性配向繊維の長さに沿って間隔をおいて配置されているが、それに対してある角度で伸びることができる樹脂、接着剤およびフィルム等の形態であってよい。当該材料は、存在する場合、第1の布地の全重量の約10重量%まで、より好ましくは約5重量%までを構成することができる。
【0031】
第1の布地層を様々な方法によって構成することができる。好ましくは、高強度フィラメントの糸束が、クリールから供給され、ガイドを通じてコリメーティングコーム(collimating comb)に誘導される。コリメーティングコームは、フィラメントを同一平面にかつ実質的に一方向に配列する。次いで、コーティング装置に含めることができ、またはコーティング装置の前または後に配置することができる、1つまたは複数のスプレッダーバーに繊維を誘導することができる。
【0032】
第1の布地を形成する一方向性配向繊維の高強度繊維網にマトリックス樹脂組成物がコーティングされる。本明細書に用いられているように、「コーティング」という用語は、個々の繊維が、繊維を取り囲むマトリックス組成物の連続層、または繊維の表面上のマトリックス組成物の不連続層を有する繊維網を描写する広い意味で用いられる。前者(連続層)の場合は、繊維がマトリックス組成物に完全に埋設されていると言える。コーティングおよび含浸という用語は、本明細書において区別なく互換性のあるものとして用いられる。
【0033】
これまでは、樹脂マトリックス(母材)でコーティングする前または後で当該一方向性配向布地を形成する際に、一方向性布地が、剥離紙またはフィルム基板などの支持体ウェブで支持されていた。そのような以前の方法は、その開示内容が本明細書と矛盾しない範囲で参照により本明細書に明確に組み込まれる米国特許第5,552,208号明細書(特許文献1)および同第6,642,159号明細書(特許文献2)に記載されている。このような方法において、支持体ウェブは、究極的には、一方向性配向布地から剥がされ、破棄される。
【0034】
本発明によれば、好ましくは、一方向性配向繊維にマトリックス樹脂をコーティングした後に、第1の布地は、ロールの形であってよい第2の布地によって支持される。あるいは、第1の布地をコーティング工程の前または最中に支持することができる。支持体ウェブが第2の布地材料である点を除けば、例えば、前記米国特許第6,642,159号明細書(特許文献2)に示されているようにして、第2の布地の1つの表面が第1の布地の1つの表面と接触するように第2の布地を第1の布地の下に供給することができる。すなわち、第2の布地層は、第1の布地層のコーティング後に、第1の布地層に接着される。あるいは、第2の布地層は、コーティング工程の前に、第1の布地層に接触するおよび/または第1の布地層を支持することができ、次いで、例えば、前記米国特許第5,552,208号明細書(特許文献1)に示されているように、両布地層がコーティング工程でコーティングされる。
【0035】
本発明の方法の一実施形態において、最初に、第1の布地の一方向性配向繊維に所望のマトリックス樹脂がコーティングされる。コーティング後に、好ましくは、第1の布地層における過剰のマトリックス樹脂が、一対のローラなどによって絞り出される。その後、コーティングされた第1の布地が第2の布地の上に配置される。次いで、両布地が一体化され、冷却または加熱されることによって、第1の布地からのマトリックス樹脂が、第2の布地の少なくとも接着面を第1の布地に接着させることによって単一の構造体を形成する。合体した(結合した)布地構造体をオーブンに送り込むことによって、布地が乾燥される。
【0036】
第2の布地層は、第2の布地に第1の布地層のマトリックス樹脂が少なくとも部分的に浸透するように、コーティングされた第1の布地と接触する前に樹脂マトリックスを含まないことが好適である。あるいは、第1の布地層に接触し、それを支持する前に、第2の布地に、好ましくは同一または同様の化学構造の別のマトリックス樹脂を予備コーティングすることができる。次いで、熱および/または圧力を利用して、これらの層が貼り合わされる。この場合は、より好ましくは、第1の布地のためのマトリックス樹脂として使用されるものと同じ樹脂が、第2の布地にも使用される。
【0037】
あるいは、いずれか一方の布地層にマトリックス樹脂を全面的に含浸させ、次いで、この布地層を、樹脂の量および粘度に応じて、樹脂を染み込ませることができるか、または表面で接着し得る、他方の布地ウェブと貼り合わせることができる。
【0038】
マトリックス樹脂組成物を溶液、分散液またはエマルション等として、第1の布地層を形成する第1の繊維網に施用(塗布)することができる。マトリックス樹脂を噴霧、浸漬、ローラコーティングまたはホットメルトコーティング等の任意の所望の技法によって施用(塗布)することができる。次いで、以上に述べたように、コーティングされた布地層を、それらがマトリックス樹脂組成物における水または他の溶媒を蒸発させるのに十分に加熱される乾燥用オーブンに通すことができる。
【0039】
第2の布地層も高強度繊維から形成されるが、それらの繊維は、布地において多方向に配向している。すなわち、第2の布地における繊維は、多方向性配向繊維である。これは、布地の主方向から第2の方向に伸びて、布地にある程度の交差方向強度を付与するに十分な繊維が存在することを意味する。「多方向性配向繊維」という用語は、「一方向性配向繊維」とは明確に異なる。
【0040】
第2の布地は、織布、編布、編組布、フェルト布および紙布等の形態であってよい。好ましくは、第2の布地は、織布の形態である。この第2の布地層は、耐被弾衝撃繊維製品と称することができる。
【0041】
以上に述べたように、第2の布地層における高強度繊維は、第1の布地層に関して、以上に述べたのと同じ繊維群から選択される。好ましくは、第2の布地層における繊維もまた、高強度ポリオレフィン繊維(より好ましくは高強度ポリエチレン繊維)、アラミド繊維、PBO繊維、グラファイト繊維およびそれらのブレンドから選択される。より好ましくは、当該繊維は、高強度ポリエチレン繊維および/またはアラミド繊維である。
【0042】
織布が使用される場合は、それは、平織、バスケット織、綾織、朱子織、三次元織布、およびそれらのいくつかの変形のいずれかを含む任意の織パターンを有することができる。平織およびバスケット織布が好適であり、経糸数と緯糸数(縦糸数と横糸数)が等しい布地がより好適である。一実施形態において、以上に述べたように、織布は、樹脂マトリックスを含まない。別の実施形態において、織布は、第1の布地に接着する前に樹脂マトリックスを含むことができる。
【0043】
織布の糸を撚ってもよいし、上包みしてもよいし、絡めてもよい。第2の布地を、経糸方向と緯糸方向(縦糸方向と横糸方向)、または別の方向で異なる繊維を有する糸で織ることができる。例えば、経(縦)糸方向にアラミド繊維を用い、緯(横)糸方向に高強度ポリエチレン繊維を用いて、またはその逆にして織布を形成することができる。
【0044】
以上に述べたように、第2の布地は、あるいは、編布の形であってよい。編構造体は、噛合ループで構成された構造体であり、4つの主要なタイプは、トリコット構造体、ラッシェル構造体、ネット構造体および配向構造体である。ループ構造の性質により、最初の3つの範疇の編物は、繊維の強度を十分に利用しないため、それほど好適ではない。しかしながら、配向編構造体は、微細なデニール編目によって適所に保持された直線のつづれ編糸(inlaid yarns)を使用する。それらの糸は、糸に対する交絡(インターレース)効果により、織布に見られるけん縮効果を受けることなく、完全に直線である。これらの撚り糸を、工学的要件に応じて一軸、二軸または多軸方向に配向させることができる。耐荷糸を撚るのに使用される具体的な編装置は、糸を通さないのが好適である。
【0045】
あるいは、第2の布地を、ニードルパンチフェルトなどのフェルトの形の布地などの不織布から形成することができる。フェルトは、好ましくは、その少なくとも1つが不連続繊維であって、好ましくは、約0.64cm(0.25インチ)から約25cm(10インチ)の範囲の長さを有する短繊維である、ランダム配向繊維の不織布網である。これらのフェルトを、カーディングまたは流動堆積(fluid laying)、メルトブロー、および回転堆積(spin laying)などの当該技術分野で知られているいくつかの技法によって形成することができる。繊維網は、ニードルパンチング、スティッチボンディング、水圧交絡、空気交絡、スパンボンドまたはスパンレースなどの機械的手段で、接着剤などを用いた化学的手段で、または先端接着する繊維もしくはより低い融点を有するブレンド繊維を用いた熱的手段で一体化(結着、結合)される。
【0046】
あるいは、第2の布地は、例えば、高強度繊維を含む液体をパルプ化することによって形成できる紙布地の形態であってよい。
【0047】
別の実施形態において、第2の布地は、一方向性配向布地または多方向性配向布地であってよい第3の層を含む布地などの多層複合布地の形態であってよい。第3の層も好ましくは高強度繊維から形成される。
【0048】
様々な繊維層に有用な糸(ヤーン)は、任意の好適なデニールのものであることができ、各層のデニールは同一であっても異なっていてもよい。例えば、糸は、約50から約3000のデニールを有することができる。選択は、耐被弾衝撃効果、他の所望の特性およびコストを検討することによって決まる。織布では、糸が微細であるほど、製造および織工コストが高くなるが、単位重量当たりの耐被弾衝撃効果を高めることができる。糸は、好ましくは約200デニールから約3000デニールである。より好ましくは、糸は、約400デニールから約2000デニールである。最も好ましくは、糸は、約500デニールから約1600デニールである。
【0049】
繊維層の樹脂マトリックスを、所望の特性を有する広範な熱可塑性、熱硬化性またはエラストマー材料から形成することができる。一実施形態において、当該マトリックスに使用されるエラストマー材料は、ASTM D638によって測定して約41.4MPa(約6000psi)以下の初期引張弾性率(弾性係数)を有する。より好ましくは、エラストマーは、約16.5MPa(約2400psi)以下の初期引張弾性率を有する。より好ましくは、エラストマー材料は、約8.23MPa(約1200psi)以下の初期引張係数を有する。これらの樹脂材料は、典型的には、本質的に熱可塑性である。
【0050】
あるいは、樹脂マトリックスを、硬化すると少なくとも約690MPa(約1×10psi)のように高い引張弾性率を有するように選択することができる。当該材料の例は、例えば、その開示内容が本明細書と矛盾しない範囲で参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,642,159号明細書(特許文献2)に開示されている。
【0051】
複合層における樹脂マトリックス材料と繊維の割合は、最終用途に応じて大幅に異なり得る。樹脂マトリックス材料は、繊維と樹脂マトリックスの全重量に基づき、好ましくは約1から約98重量パーセント、より好ましくは約5から約95重量パーセント、さらにより好ましくは約5から約40重量パーセント、最も好ましくは約10から約25重量パーセントを形成する。
【0052】
広範なエラストマー材料を樹脂マトリックスとして利用することができる。例えば、以下の材料のいずれかを使用することができる:ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元重合体、ポリスルフィドポリマー、ポリウレタンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、フタル酸ジオクチルまたは当該技術分野で良く知られている他の可塑剤を使用した可塑化ポリ塩化ビニル、ブタジエンアクリロニトリルエラストマー、ポリ(イソブチレン−コ−イソプレン)、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリエーテル、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、熱可塑性エラストマーおよびエチレンの共重合体。熱硬化性樹脂の例としては、メチルエチルケトン、アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサン、エチルアセトン、およびそれらの組合せなどの炭素−炭素飽和溶媒に可溶である樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂には、前記米国特許第6,642,159号明細書(特許文献2)に開示されているように、ビニルエステル、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、フタル酸ジアリル、フェノールホルムアルデヒド、ポリビニルブチラールおよびそれらの混合物がある。ポリエチレン繊維布地に好適な熱硬化性樹脂は、少なくとも1つのビニルエステル、フタル酸ジアリル、および任意選択でビニルエステル樹脂を硬化するための触媒を含む。
【0053】
ポリエチレン繊維布地の1つの好適な材料群は、共役ジエンのブロック共重合体およびビニル芳香族共重合体である。ブタジエンおよびイソプレンは、好適な共役ジエンエラストマーである。スチレン、ビニルトルエンおよびt−ブチルスチレンは、好適な共役芳香族モノマーである。ポリイソプレンおよび/またはポリブタジエンを含むブロック共重合体を水素化して、飽和炭化水素エラストマー部分を有する熱可塑性エラストマーを製造することができる。ポリマーは、R−(BA)(x=3〜150)型の単純なトリ−ブロック共重合体であってよい。上式において、Aは、ポリビニル芳香族モノマーからのブロックであり、Bは、共役ジエンエラストマーまたはA−B−A型のエラストマーからのブロックである。好適な樹脂マトリックスは、Kraton Polymer LLCから入手可能なKraton(登録商標)D1107スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などのスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体である。
【0054】
アラミド繊維のための1つの好適なマトリックス樹脂は、水性ポリウレタン樹脂などのポリウレタン樹脂である。
【0055】
1つの好適な実施形態において、マトリックス樹脂は、複合布地が柔軟であり、軟質防護具製品等の用途に有用になるように選択される。
【0056】
第1の布地と第2の布地が互いに貼り合わされた後に、それらは、好ましくはロール状に巻かれる。巻上げ中に層同士が固着するのを防止するために隔離シートを使用することができる。
【0057】
以上に述べたように、本発明の複合布地にさらなる層を含めることができる。例えば、高強度繊維の別の一方向性配向布地を含めることによって、3層構造体を形成することができる。この追加的な層は、第1の層に接着された表面に対して第2の層の反対表面に接着される。さらなる一方向性配向布地を、他の布地層を貼り合わせるのと同時に、他の布地層と貼り合わせることができ、あるいはこの第3の布地層を第2の布地層にあらかじめ接着させるか、または第1の布地層と第2の布地層を接着した後にそれらと貼り合わせることもできる。例えば、第1および第2の布地の構造体を形成した後に、複合構造体を再び使用して、高強度繊維の別の一方向性配向布地を支持し、第2の布地層に第2の一方向性配向布地層を支持させることができる。例として、最初に形成された複合布地を、第2の一方向性配向布地の下に配置して、多方向性配向布地を第2の一方向性配向布地の表面に隣接させることができ、第2の一方向性配向布地のマトリックス樹脂を多方向性配向布地に押し付けることができる。得られた構造体は、2つの一方向性配向布地の間に挟まれた、第2の多方向性配向布地を含む。
【0058】
同様に、別の多方向性配向布地(例えば織布)を、第2の布地に接着されていない一方向に配向した第1の布地の表面に接着されるようにして、第1および第2の布地と貼り合わせることができる。このようにして、第1の一方向性配向布地層は、2つの多方向性配向布地の間に挟まれる。
【0059】
これらの3層状構造体の各々において、各布地の高強度繊維は、他の布地層における繊維と同一であっても異なっていてもよい。また、布地層の各々におけるマトリックス樹脂は、存在する場合は、好ましくは化学的に同一または実質的に同一である。あるいは、異なる布地層のマトリックス樹脂は、異なっていてもよいが、層の所望の接着を達成できるように相溶性を有するべきである。
【0060】
本発明の別の実施形態において、4層布地構造体を2つの一方向性配向布地層および2つの多方向性配向布地層から形成することができる。例えば、2つの織布層は、互いに接着され、複合構造体の内部布地層を形成し、2つの一方向性配向布地層は、構造体の外層を形成することができる。
【0061】
あるいは、上述のようにそれぞれ第1および第2の布地から形成された2つの複合布地構造体を、同じタイプの2つの布地層が互いに接着されるか、または2つの異なるタイプの布地層が互いに接着されるように、好適に接着することによって4層構造体を調製することができる。
【0062】
複合布地構造体における布地層の数に関係なく、それぞれの層を一体化(合体、結合あるいは結着;consolidation)させることによって複合布地が形成される。「一体化させる(合体、結合あるいは結着させる;consolidating)」とは、マトリックス材料と繊維を1つの層に統合することを意味する。一体化(合体、結合あるいは結着)は、乾燥、冷却、加熱、加圧またはそれらの組合せによって起こり得る。
【0063】
複合布地構造体(2層構造であっても、3層構造であっても、4層構造であっても、さらなる層を含む構造であってもよい)の多数の層から製品を形成することができる。そのような製品に存在する複合布地構造体の層の数は、用途の種類、所望の重量等を含む様々な要因に応じて決まる。例えば、チョッキなどの耐被弾衝撃性製品において、2つの布地複合構造体の層の数は、約2から約60、より好ましくは約8から約50、最も好ましくは約10から約40の範囲であってよい。このような層は、縁のみを縫い合わせることなどによる従来の方法でいくつかの層を互いに接着させることなく貼り合わせることができる。そのような製品を形成するために、複合布地を所望の形状に切断することができる。
【0064】
一方向性配向繊維を含む複合布地のいくつかの層を使用する場合は、一方向性配向布地は、好ましくは、互いにある角度で配置される(例えば交差積層(クロスプライ))。当該角度は、約0°/90°、または任意の所望の角度であってよい。
【0065】
様々な構成の複合布地を所望の用途、衝撃の脅威、ならびに難燃性、耐久性および撥水性等の所望の特性に基づいて製造することができる。例えば、支持している多方向性配向布地層および一方向性布地層の両方にアラミド材料を、または当該両布地層に高強度ポリエチレン繊維を使用することができる。あるいは、第1の布地をアラミド布地とし、第2の布地を高強度ポリエチレン布地とする、または第1の布地を高強度ポリエチレン布地とし、第2の布地をアラミド布地とするなどの任意の所望の組合せで、高強度ポリエチレン繊維とアラミド繊維を組み合わせることができる。別の実施形態において、グラファイト一方向性配向布地を高強度ポリエチレン繊維織布に接着することができ、またはPBO一方向性布地をアラミド織布に接着することができる。これらの材料を任意の所望の構成で配置することが可能である。
【0066】
体形に合わせて成形することを容易にし、装着を容易にするために、または他の理由から、異なる複合層が互いに滑動できるように、1つまたは複数のプラスチックフィルムを複合体に含めることができる。これらのプラスチックフィルムを、典型的には、複合布地の片面または両面に接着することができる。ポリオレフィンで製造されたフィルムなどの任意の好適なプラスチックフィルムを使用することができる。このようなフィルムの例は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルムおよびポリカーボネートフィルム等である。これらのフィルムは、任意の所望の厚さを有することができる。典型的な厚さは、約2.5から約30μm(約0.1から約1.2mil)、より好ましくは約5から約25μm(約0.2から約1mil)、最も好ましくは約5から約12.5μm(約0.2から約0.5mil)の範囲である。LLDPEのフィルムが、最も好適である。
【0067】
本発明の非限定的な実施形態は、高強度ポリエチレン糸の織布に接着された高強度ポリエチレン糸の一方向性不織布;アラミド糸の織布に接着されたアラミド糸の一方向性不織布;アラミド糸の織布に接着された高強度ポリエチレン糸の一方向性不織布;高強度ポリエチレン糸の織布に接着されたアラミド糸の一方向性不織布;および同一または異なる高強度繊維を用いた他の構造体を含む。
【0068】
本発明の複合布地を耐被弾衝撃性製品、構造製品、自動車および航空宇宙産業における部品等の広範な用途に使用することができる。好適な用途は、耐被弾衝撃性身体防護具(防弾チョッキ等)、車両パネル等の軟質または硬質防護具製品である。
【0069】
以下の非限定的な実施例は、本発明をより完全に理解させるために提示されるものである。本発明の原理を説明するために記載される具体的な技法、条件、材料、割合および報告データは、例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0070】
実施例1
一方向性配向アラミド繊維およびアラミド織布の層から複合体を形成する。1000デニールのアラミド糸をクリールから供給し、コーミング(combing)工程に通して一方向性の繊維網を形成する。一方向性布地のコーティング前の重量は45g/mである。それらの糸は、一方向性布地に含浸するポリウレタンマトリックス樹脂の溶液を含むタンクに入る。コーティングされた一方向性布地は、次に、一対のローラを通って、過剰のマトリックス樹脂溶液を絞り出し、マトリックス溶液を実質的に均一にフィラメント中およびフィラメント間に拡散させる。樹脂含浸量は、コーティングされた布地の全重量に基づき、約16重量パーセントである。
【0071】
次いで、コーティングされた一方向性布地を、個別のローラから供給される乾燥アラミド織布(マトリックス樹脂を含まない)上に配置する。この織布は、重量が237.4g/m(7オンス/平方ヤード)である、840デニールのアラミド糸の平織洗上げ布地である。織布を一方向性布地層の底部上に供給し、その支持体として作用させる。一体化した構造体を、一対のニップローラに供給し、複合布地の厚さを制御し、一方向性不織布からのマトリックス樹脂を織布の隣接面に少なくとも接触させる。次いで、一体化した構造体を乾燥オーブンに送り込み、そこでマトリックス樹脂溶媒を揮発させる。一体化した複合布地を巻き上げて連続的なロールとする。
【0072】
45.7×45.7cm(18×18インチ)の複合布地の試料を、9mmフルメタルジャケット(FMJ)124グレイン弾および17グレイン22口径FSP硬化性破片シミュレータの両方に対して4.88kg/m(1.00psf)の重量のシュートパック(shoot pack)を用いて、耐被弾衝撃性について試験する。該材料の耐被弾衝撃特性は、耐被弾衝撃性製品に許容されるものであることがわかる。
【0073】
実施例2
一方向性不織布を1300デニールの高強度ポリエチレン糸(Honeywell International Inc.のSpectra(登録商標)1000)から形成し、一方向性繊維マトリックスの(コーティング前の)重量を53kg/mとする点を除いて、実施例1を繰り返す。マトリックス樹脂は、スチレン−イソプレン−スチレンエラストマー(Kraton(登録商標)D1107)である。織布は、高強度ポリエチレン糸(Honeywell International Inc.のSpectra(登録商標)1000の375デニール糸)の平織布地である。樹脂含浸量は、コーティングされた布地の全重量に基づき約16重量パーセントである。
【0074】
試料を実施例1のように試験すると、同様の結果を記録する。
【0075】
本発明の方法は、樹脂と一方向性繊維の接触を維持し、巻上げ時に一方向性繊維の結着性(統合性)を維持するために、主に、加工時に交差方向強度を与えるための基板を使用することによって一方向性テープを製造する現行の製造方法とは対照的である。そのような方法では、後で基板を破棄し、最終製品の一体部分としては使用しない。本発明では、ある程度の交差方向強度を有する耐被弾衝撃性繊維製品などの多方向性配向布地の形態の第2の布地を使用することで、破棄される基板に代えて、最終製品に耐被弾衝撃特性を与えることになる製品を提供する。材料の製造コストを抑える方法によって本発明の製品を製造することができ、該製品は、仮に性能が向上していないとしても、許容される耐被弾衝撃性能を有する。
【0076】
本発明によれば、複合構造体の樹脂の量を低減することが可能であり、このことは、チョッキなどの耐被弾衝撃構造体の単位重量当たりの耐被弾衝撃性能を向上させることになる。複合材料のコストを下げることができ、防護具製品等を製造するのに必要とされる層の数も減少させることができる。
【0077】
このように本発明を詳細に説明したが、当該詳細を厳密に遵守する必要はなく、さらなる変更および修正に当業者が想到でき、それはいずれも添付の請求項に規定される本発明の範囲に含まれることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)不織布の一方向性配向繊維を第1の樹脂マトリックス中に含む第1の布地であって、前記繊維が高強度繊維を含み、前記第1の布地が第1および第2の表面を含む、前記第1の布地;および
(b)多方向性配向繊維を任意選択で第2の樹脂マトリックス中に含む第2の布地であって、前記第2の布地が高強度繊維を含み、第1および第2の表面を有する、前記第2の布地;を含む多層複合布地であって、前記第2の布地の前記第1の表面が、前記第1の布地の前記第2の表面に接着されることによって、前記複合布地を形成する、前記多層複合布地。
【請求項2】
前記第2の布地が、織布、編布、編組布、フェルト布および紙布からなる群から選択される布地を含む、請求項1に記載の複合布地。
【請求項3】
前記第1の布地と第2の布地が、少なくとも前記第1の樹脂マトリックスの樹脂によって接着される、請求項1に記載の複合布地。
【請求項4】
前記第1の布地と前記第2の布地が、前記第1の樹脂マトリックスおよび前記第2の樹脂マトリックスの樹脂によって接着され、前記第1の樹脂マトリックスおよび前記第2の樹脂マトリックスにおける樹脂は、化学的に同一である、請求項1に記載の複合布地。
【請求項5】
前記第1の布地および前記第2の布地の前記高強度繊維が、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維、液晶コポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、グラファイト繊維、炭素繊維、玄武岩または他の鉱物繊維、硬質ロッドポリマー繊維およびそれらのブレンドからなる群から選択される、請求項1に記載の複合布地。
【請求項6】
前記第1の布地の前記高強度繊維および前記第2の布地の前記高強度繊維が、高強度ポリエチレン繊維、アラミド繊維、PBO繊維、グラファイト繊維およびそれらのブレンドからなる群から選択される、請求項1に記載の複合布地。
【請求項7】
前記第1の布地の前記高強度繊維および前記第2の布地の前記高強度繊維が、高強度ポリエチレン繊維および/またはアラミド繊維を含む、請求項1に記載の複合布地。
【請求項8】
前記第1の布地の前記高強度繊維が、前記第2の布地の高強度繊維と化学的に同一である、請求項7に記載の複合布地。
【請求項9】
前記第2の布地が、織布の形態である、請求項1に記載の複合布地。
【請求項10】
前記第1の布地の前記高強度繊維がアラミド繊維を含み、前記第2の布地の前記高強度繊維がアラミド繊維を含む、請求項1に記載の複合布地。
【請求項11】
前記第2の布地が、織布の形態である、請求項10に記載の複合布地。
【請求項12】
第3の布地をさらに含む請求項1に記載の複合布地であって、
前記第3の布地が、不織布の一方向性配向高強度繊維を第3の樹脂マトリックス中に含み、前記第3の布地が第1および第2の表面を有し、前記第3の布地の前記第1の表面が、前記第2の布地の前記第2の表面に接着されることによって、第2の布地が前記第1の布地と前記第3の布地の間に配置される、請求項1に記載の複合布地。
【請求項13】
第3の布地および第4の布地をさらに含む請求項1に記載の複合布地であって、
前記第3の布地が、多方向性配向高強度繊維を任意選択で第3の樹脂マトリックス中に含み、前記第3の布地が第1および第2の表面を有し、前記第3の布地の前記第1の表面が、前記第2の布地の前記第2の表面に接着され、
前記第4の布地が、不織布の一方向性配向高強度繊維を第4の樹脂マトリックス中に含み、前記第4の布地が第1および第2の表面を有し、前記第4の布地の前記第1の表面が、前記第3の布地の前記第2の表面に接着される、請求項1に記載の複合布地。
【請求項14】
多方向性配向高強度繊維を任意選択で第3の樹脂マトリックス中に含む、第3の布地をさらに含む、請求項1に記載の複合布地であって、
前記第3の布地は第1および第2の表面を有し、前記第3の布地の前記第1の表面が、前記第1の布地の前記第1の表面に接着されることによって、前記第1の布地が前記第2の布地と前記第3の布地の間に配置される、請求項1に記載の複合布地。
【請求項15】
第3の布地および第4の布地をさらに含む請求項1に記載の複合布地であって、
前記第3の布地が、不織布の一方向性配向高強度繊維を第3の樹脂マトリックス中に含み、前記第3の布地が第1および第2の表面を有し、前記第3の布地の前記第1の表面が、前記第2の布地の前記第2の表面に接着され、
前記第4の布地が、多方向性配向高強度繊維を任意選択で第4の樹脂マトリックス中に含み、前記第4の布地が第1および第2の表面を有し、前記第4の布地の前記第1の表面が、前記第3の布地の前記第2の表面に接着される、請求項1に記載の複合布地。
【請求項16】
前記第1および第2の布地の少なくとも一方に接着された、少なくとも1つのプラスチックフィルムをさらに含む、請求項1に記載の複合布地。
【請求項17】
請求項1に記載の多層複合布地を含む耐被弾衝撃性製品。
【請求項18】
高強度繊維から複合布地構造体を形成する方法であって、
(a)不織布の一方向性配向繊維を含む第1の布地であって、前記繊維が高強度繊維を含む、前記第1の布地を形成する工程;
(b)多方向性配向繊維を含む第2の布地であって、高強度繊維を含む前記第2の布地で、前記第1の布地を支持する工程;
(c)第1のマトリックス樹脂が前記第1の布地から少なくとも前記第2の布地内に達するように、前記第1の布地を前記第2の布地で支持する前、支持した後または支持している最中に、前記第1のマトリックス樹脂を前記第1の布地にコーティングする工程; および
(d)前記第1の布地と前記第2の布地が前記マトリックス樹脂によって互いに接着されるように、前記第1の布地と前記第2の布地を一体化させて複合布地とし、それによって、前記第2の布地が前記複合布地の一体部分となる工程;
を改良として含む方法。
【請求項19】
前記第2の布地が織布を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の布地の前記高強度繊維および前記第2の布地の前記高強度繊維が、高強度ポリエチレン繊維および/またはアラミド繊維を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
複合布地構造体を形成する方法であって、
(a)不織布の一方向性配向繊維を第1の樹脂マトリックス中に含む第1の布地であって、前記繊維が高強度繊維を含み、前記第1の布地が第1および第2の表面を含む、前記第1の布地を用意する工程;
(b)多方向性配向繊維を任意選択で第2の樹脂マトリックス中に含む第2の布地であって、前記第2の布地が高強度繊維を含み、第1および第2の表面を有する、前記第2の布地を用意する工程;および
(c)前記第2の布地の前記第1の表面を、前記第1の布地の前記第2の表面に接着させることによって、前記複合布地を形成する工程;
を含む前記方法。
【請求項22】
前記第2の布地が織布を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の布地の前記高強度繊維および前記第2の布地の前記高強度繊維が、高強度ポリエチレン繊維および/またはアラミド繊維を含む、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2010−533606(P2010−533606A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554691(P2009−554691)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/057330
【国際公開番号】WO2008/124257
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】