説明

育毛剤

【課題】育毛効果を有する有効成分の頭皮内部への浸透効果と、頭皮内部での徐放効果とが、より高い育毛剤を提供する。
【解決手段】超微粒子の表面に少なくとも第1の層がコーティングされている粒子状物質を含む育毛剤である。ここで、上記超微粒子は平均粒径がナノメートルオーダーの磁性超微粒子である。また、上記第1の層は育毛有効成分である。なお、上記粒子状物質の平均粒径が10ナノメートルオーダーであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛剤に関し、より具体的には、ナノサイズの磁性体超微粒子を核とし、当該磁性体超微粒子に有効成分がコーティングされている粒子状物質からなる育毛剤である。
【背景技術】
【0002】
従来、脱毛症とは、一般的には毛髪が生えることを本人自身が期待しているのにも拘らず、毛髪が生えない状態のことであり、通俗的には禿(はげ)と言われるものである。毛髪の脱毛の仕方は年齢や生活環境によって様々であるが、薄毛に悩む人も少なくはなく、近年、老若男女を問わず毛髪への関心は強くなっている。そのため、これまで、様々な育毛剤、発毛剤、養毛剤、増毛剤(以下、総称して育毛剤と称す)が開発されている。
【0003】
一般的に、毛髪の成長は周期的なヘアサイクル(成長期〜退行期〜休止期)に従って、成長および脱落を繰り返している。このヘアサイクルのうち、休止期〜成長期にかけて新たな毛包が形成されるため、この期間が発毛に最も重要であると考えられている。また、この期間において毛母細胞の分裂に重要な役割を果たしているのが、毛乳頭細胞であると考えられている。
【0004】
そのため、毛乳頭細胞への血行を促進し、毛母細胞の分裂を促進するための育毛剤が、これまで様々報告されている(例えば、以下の特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−194935号公報
【特許文献2】特開平8−40835号公報
【特許文献3】国際公開第2006/095778号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されている育毛剤は、毛乳頭細胞の血行を促進し、毛母細胞の分裂を促進するための促進剤として、例えば、血行促進剤、抗炎症剤、女性ホルモン等の合成薬剤成分や、ドクダミ、ヨモギ、アロエ等からの抽出物が配合されている。
【0007】
上記特許文献2に開示されている育毛剤は、毛乳頭細胞の血行を促進する血行促進剤として、酢酸dl−α−トコフェロール、ジカプリル酸ピリドキシン、ビオチン、ニコチン酸及びその誘導体(ニコチン酸ベンジルエステル)、塩酸トラゾリン、グリチルレチン酸グリセリル、センブリ抽出液、オトギリソウ抽出液、トウキ抽出液、センキュウ抽出液、トウガラシチンキ等が配合されている。
【0008】
上記特許文献3に開示されている育毛剤は、育毛効果を有する生薬成分を生体適合性高分子内に封入し、ナノ単位の大きさの粒子とする。そして、当該粒子を毛穴や頭皮表面から頭皮深部に浸透させ、頭皮深部において上記生薬成分を放出させることにより、育毛効果を狙ったものである。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1〜2に開示されている育毛剤における育毛効果は、必ずしも満足するものではなかった。つまり、上記特許文献1〜2に開示されている育毛剤における、当該育毛剤に含まれている有効成分(血行促進剤等)は頭皮に直接塗布した後、
頭皮内部に効果的に浸透しない、つまり有効成分の浸透性が十分ではなかった。
【0010】
また、上記特許文献3に開示されている育毛剤は、粒子の粒径が30ナノメートル〜300ナノメートルであり、頭皮深部において上記生薬成分を放出させるものである。しかしながら、一般的に、頭皮に皮脂が蓄積しているなどの原因で10ナノメートルオーダー(数10ナノメートル)の粒径の粒子しか、頭皮内部に浸透できないことも知られている。つまり、上記特許文献3に開示されている育毛剤は、育毛効果を有する生薬成分を封入させたナノ粒子を頭皮内部へ効果的に浸透させることができないことがあり、その結果、育毛効果を十分に得ることができなかった。
【0011】
そのため、育毛効果を有する有効成分の頭皮内部への浸透効果及び頭皮内部での有効成分の徐放効果のより高い育毛剤の開発が望まれていた。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、育毛効果を有する有効成分の頭皮内部への浸透効果及び頭皮内部での徐放効果のより高い育毛剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有している。すなわち、第1の発明は、超微粒子の表面に少なくとも第1の層がコーティングされている粒子状物質を含む育毛剤である。ここで、上記超微粒子は平均粒径がナノメートルオーダーの磁性超微粒子である。また、上記第1の層は育毛有効成分である。なお、上記粒子状物質の平均粒径は10ナノメートルオーダーであることを特徴とする。
【0014】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記超微粒子はマグネタイト超微粒子からなることを特徴とする。
【0015】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記育毛有効成分は酢酸トコフェロール、ニンジンエキス、サクラエキス、ビワ葉エキスからなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする。
【0016】
第4の発明は、上記第1乃至第3の何れか1の発明において、上記超微粒子の表面と上記第1の層との間に親水性膜の層を有することを特徴とする。
【0017】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記第1の層上に、さらに複合超微粒子(水溶性ポリマー)の層が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る育毛剤は、頭皮内部に効果的に有効成分が浸透しない、つまり有効成分の浸透効果が十分ではないといった問題を解決することにより、優れた発毛効果を得ることができる。
【0019】
また、超微粒子としてマグネタイト超微粒子を用いると、低コストで本願発明に係る育毛剤を作製することができる。
【0020】
また、超微粒子の表面と有効成分の膜(第1の層)との間に親水性膜の層があることによって、磁性超微粒子に有効成分の膜が付着しやくなる。さらに、有効成分の膜上に、さらに複合超微粒子(水溶性ポリマー)の層が形成されているので、有効成分の膜(第1の層)を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る育毛剤の作製手順を示した図
【図2】図1の工程5および工程6で磁性体超微粒子の表面に層が形成される様子を示した図
【図3】マウスの背部写真の一例
【図4】背部に発毛した背部毛を電子顕微鏡にて観察した結果を示す図(実施例)
【図5】背部に発毛した背部毛を電子顕微鏡にて観察した結果を示す図(比較例1)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本出願人は鋭意検討した結果、ナノサイズの磁性体超微粒子に着目し、当該磁性体超微粒子に育毛効果を有する有効成分をコーティングすることに成功した。そして、育毛効果を有する有効成分がコーティングされた磁性体超微粒子は、頭皮内部へ効果的に浸透し、当該育毛効果を有する有効成分を放出させ、毛乳頭細胞の血行促進および毛母細胞の分裂を促進させることができ、結果、高い育毛効果を得られることを見出した。なお、本説明において、ナノサイズとは、数ナノメートル〜数10ナノメートルのことをいう。
【0023】
つまり、本発明に係る育毛剤は、ナノサイズの磁性体超微粒子を核とし、当該磁性体超微粒子に有効成分がコーティングされている粒子状物質を含む育毛剤である。
【0024】
なお、以下の説明において、育毛効果を有する有効成分のことを単に有効成分と称し、上記ナノサイズの磁性体超微粒子を単に磁性体超微粒子と称し、有効成分がコーティングされた磁性体超微粒子を単に粒子状物質と称す。
【0025】
以下、本発明を詳細に説明するがこれらの説明は本発明を限定するものではない。従って、本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【0026】
〈育毛剤の作製〉
まず、本発明に係る育毛剤の作製手順について説明する。
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る育毛剤の作製手順について説明する。図1は、本発明に係る育毛剤の作製手順を示した図である。
【0028】
まず、適当な大きさの容器に、グリチルレチン酸類またはその塩類と、0℃〜5℃の温度に冷却した界面活性剤とを加え、約5分間撹拌することによって溶液Aを調製した(図1の工程1)。
【0029】
なお、上記グリチルレチン酸類またはその塩類の具体例として、例えば、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルリチン酸ステアリル等が挙げられる。
【0030】
一方、適当な大きさの容器に、1種、好ましくは複数種類の有効成分を加えた水溶液を調製した。具体的には、上記水溶液を常温(25℃〜30℃)にて約10分間、十分に撹拌し、溶液Bを調製した(図1の工程2)。
【0031】
そして、上記工程1で調製した溶液Aと上記工程2で調製した溶液Bとを任意の割合で混合し、混合溶液とした。そして、当該混合溶液を常温(25℃〜30℃)にて約10分間、十分に撹拌した(図1の工程3)。
【0032】
その後、上記工程3で調製された混合溶液に磁性体超微粒子を加え、磁性体超微粒子含
有混合溶液とした。そして、当該磁性体超微粒子含有混合溶液を室温にて約10分間、十分に撹拌した(図1の工程4)。
【0033】
一方、適当な大きさの容器にイオン交換水を加え、次いでLIPIDURE(登録商標)−NR(日本油脂株式会社製の水溶性ポリマー)が10質量%〜25質量%になるように、当該イオン交換水に溶解させた。そして、当該溶液を十分に撹拌することによって溶液Cを調製した(図1の工程5)。
【0034】
最後に、上記工程4で調製された磁性体超微粒子含有混合溶液を約50℃〜60℃に保ちつつ、予め定められた量の上記溶液Cを任意の間隔で当該磁性体超微粒子含有混合溶液に滴下し、約30分間撹拌した(図1の工程6)。
【0035】
以上の工程を経て、本発明に係る育毛剤、つまりナノサイズの磁性体超微粒子を核とし、当該磁性体超微粒子に有効成分がコーティングされている粒子状物質が作製される。なお、図1の工程4および工程6で磁性体超微粒子の表面に層が形成される様子を、以下、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
図2は、図1の工程4および工程6で磁性体超微粒子の表面に層が形成される様子を示した図である。
【0037】
図1の工程4において、まず、磁性体超微粒子1の表面に親水性の膜2が形成される(図2の(a)〜(b))。その後、親水性の膜2の表面に有効成分の膜3がコーティングされる(図2の(b)〜(c))。なお、有効成分の膜3とは、請求項に記載の第1の層の一例に相当する。
【0038】
さらに、図1の工程6において、上記溶液Cを滴下することによって、有効成分の膜3を覆うように複合超微粒子(水溶性ポリマー)の膜4が形成される。なお、以上の工程を経て作製される本発明に係る育毛剤、つまり、ナノサイズの磁性体超微粒子を核とし、当該磁性体超微粒子に有効成分がコーティングされている粒子状物質の平均粒径は、10ナノメートル〜数10ナノメートル程度である。
【0039】
また、図1の工程6において、上記溶液Cを滴下したのは、有効成分の膜3の表面を複合超微粒子(水溶性ポリマー)の膜4によってコーティングすることによって、親水性の膜2の表面にコーティングされている有効成分の膜3が安定するからである。
【0040】
ここで、図1の各工程で用いた、磁性体超微粒子、界面活性剤、有効成分、それぞれについて詳説する。
【0041】
(磁性体超微粒子)
上記磁性体超微粒子は、微粒子の表面に無機酸化膜がコーティングされた磁性体超微粒子である。なお、上記磁性体超微粒子の作製は以下の通りである。まず、混合鉄族塩化物(Fe、Co、Ni、Mn、Cu、Znなど)の水溶液を所定の条件下で撹拌し、吸引漏斗を用いて吸引ろ過し、純水で数回洗浄してナトリウムと塩素イオンを除くことにより、マグネタイト超微粒子を作製する。そして、上記マグネタイト超微粒子が分散した溶液に金属の塩類(ケイ酸塩、チタンのエチル塩類など)を適量加え、所定の条件下で撹拌することにより、当該マグネタイト超微粒子の表面に無機酸化膜がコーティングされた磁性体超微粒子を得ることができる。なお、上記微粒子は、磁性を有する磁性ナノ粒子であればよく、例えば、NiCoナノ粒子、ND4MnF3ナノ粒子でもよい。
【0042】
(界面活性剤)
図1の工程1で用いた界面活性剤は、具体的には、天然界面活性剤であり、より具体的には、卵黄レシチン、牛乳由来のレシチン、大豆由来のレシチンである。なお、上記界面活性剤としては、親水基(カルボキシ基、スルホン基、アンモニウム基、ヒドロキシル基など)と疎水基(親油基と称すこともある;長鎖の炭化水素基など)の両方をもつ両親媒性の天然界面活性剤であればよく、卵黄レシチン、乳由来のレシチン、大豆由来のレシチンに限定されるものではない。
【0043】
(有効成分)
図1の工程2で配合した有効成分は、血行促進剤や細胞活性剤と言われる成分である。具体的には、図1の工程2で用いた有効成分は、酢酸トコフェロール、ニンジンエキス、サクラエキス、ビワ葉エキスである。より具体的には、溶液Bにおいて、酢酸トコフェロールが0.1質量%〜5質量%程度、ニンジンエキスが0.5質量%〜15質量%程度、サクラエキスが15質量%〜60質量%程度、ビワ葉エキスが0.5質量%〜18質量%程度、それぞれ含有されている。
【0044】
また、上記有効成分に加えて、抗炎症効果を有する成分、つまり抗炎症剤を、好ましくは0.01質量%〜5質量%程度配合してもよい。なお、抗炎症剤としては、例えば、グリチルレチン酸およびその誘導体、カンゾウエキス、塩酸ジフェンヒドラミン、シコンエキス、エイジツエキス、酢酸ヒドロコルチゾンなどが挙げられる。
【0045】
なお、図1の工程2で配合することのできる有効成分は、トコフェロール、ニンジンエキス、サクラエキス、ビワ葉エキスに限られるものではなく、血行を促進したり、細胞を活性化させたりすることのできるものであればよい。
【0046】
例えば、ビタミン類およびその塩類、アミノ酸類およびその塩類、パンテノール誘導体、塩化カルプロニウム、オリザノール、カンフル、トコフェロール、リノレイン酸エステル、ニコチン酸、ニコチン酸メチル、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸ブトキシエチル、ニコチン酸エステル、トコフェロールニコチン酸、トコフェロールニコチン酸エステル、イノシトールヘキサニコチン酸エステル、トコフェロールリノレイン酸エステル、ノナン酸バニリルアミド、コハク酸トコフェロール、デキストラン硫酸ナトリウム、アセチルコリン、センブリエキス、トウガラシチンキ、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキ、オタネニンジン、チクセツニンジン、セファランチン、サークレチン、ニコランジル、ピナシジル、ニンニクエキス、トウキエキス、ゲンチアナエキス、ヨウ化ニンニクエキス、カンゾウ、ミノキシジル、センキュウ、チクセツニンジン、ショウガ、ジオウ、アロエ、スピロノラクトン、ヒノキチオール、ヒノキオール、朝鮮にんじん、桃仁、白薬子、防巳、補骨脂、黄耆、紅花、感光素101、感光素201、感光素301、感光素401なども図1の工程2で配合することができる。
【0047】
なお、図1の工程2で配合することのできる有効成分は、育毛、発毛、養毛、増毛効果を有する種々の成分であれば、上述した各成分に限定されるものではない。つまり、上述したものは、図1の工程2で用いられる可能性のある有効成分の一例を列挙したに過ぎない。従って、生体への安全性などを損なわない限りにおいて、殺菌剤、抗男性ホルモン剤、脂分泌抑制剤、免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤、局所刺激剤、角質軟化剤、抗アポトーシス剤など、育毛、発毛、養毛、増毛効果を有するあらゆる種類の薬剤も図1の工程2で有効成分として配合することができる。
【0048】
また、本発明に係る育毛剤の実際の使用場面においては、毛髪や頭皮に塗布または散布するに可なる剤型(液剤、乳液剤、クリーム剤、ジェル剤、チック剤、シャンプー剤、スプレー剤、ムース剤、パック剤など)がとられる。従って、本発明の効果を損なわない限りにおいて、図1のいずれかの工程において、水、低級アルコール類(メタノール、エタ
ノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなど)、多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、イソプレングリコール)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィンなど)、エーテル類(エチルエーテル、プロピルエーテルなど)、香料、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、香料等を適宜配合してもよい。
【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例および比較例に基づき更に詳細に説明する。
【0050】
〈発毛評価〉
2週間馴化した生後8週齢のC3H系マウス(雄)の背部毛を電気バリカンで剃毛し、1日後に電気シェーバーでさらに背部毛を剃毛し、皮膚を露出させたマウスを用いて発毛評価を行った。
【0051】
実施例:露出させたマウスの皮膚に図1で説明した方法で作製された育毛剤を1日1回0.1ml塗布した。
比較例1:露出させたマウスの皮膚に植物エキス(酢酸トコフェロール、ニンジンエキス、サクラエキス、ビワ葉エキスの混合溶液)を1日1回0.1ml塗布した。つまり、図1の工程2で調製された溶液Bを1日1回0.1ml塗布した。
比較例2:露出させたマウスの皮膚に蒸留水を1日1回0.1ml塗布した。
【0052】
なお、実施例、比較例1、比較例2それぞれにつき、マウス5匹を1組とし、発毛評価前、評価開始14日後、評価開始30日後、評価開始60日後にマウスの背部を写真撮影した。
【0053】
図3に、実施例、比較例1、比較例2それぞれにつき、発毛評価前、評価開始14日後、評価開始30日後、評価開始60日後のマウスの背部写真の一例を示す。まず、図3の比較例1および比較例2との対比より、単に蒸留水だけを塗布した場合と比べて、植物エキスを塗布した場合では、植物エキスを塗布した方が若干の発毛効果は得られた。しかしながら、図3の実施例と比較例1との比較から明らかなように、本発明に係る育毛剤を用いた場合、単に植物エキスを塗布した場合と比べて、優れた育毛効果を得ることができた。つまり、比較例1は、従来の育毛剤を想定した例であり、植物エキス(毛乳頭細胞の血行を促進する血行促進剤)を単に塗布したに過ぎないものであり、本発明に係る育毛剤と比較すると、有効成分の頭皮内部への浸透効果は小さい。言い換えると、本発明に係る育毛剤は、有効成分が頭皮内部へ効果的に浸透し、当該内部において有効成分が局所的に作用し、毛乳頭細胞への血行を促進し、毛母細胞の分裂を促進したためであると考えられる。
【0054】
〈毛球の観察〉
次に、実施例に係るマウス(30日後)と、比較例1に係るマウス(30日後)との背部に発毛した背部毛を電子顕微鏡にて観察した。結果を図4および図5に示す。なお、図4の(b)は、図4の(a)において実線で囲んだ箇所を拡大した図である。同様に、図5の(b)は、図5の(a)において実線で囲んだ箇所を拡大した図である。
【0055】
図4の(b)と図5の(b)との比較から明らかなように、実施例に係るマウスにおいて発毛した背部毛の毛球は、比較例1に係るマウスにおいて発毛した背部毛の毛球と比べて膨らみが大きかった。これら結果によっても、本発明に係る育毛剤は、有効成分が頭皮内部へ効果的に浸透し、当該内部において有効成分が局所的に作用し、毛乳頭細胞への血
行を促進し、毛母細胞の分裂を促進したためであると考えられる。
【0056】
以上の結果より、磁性体超微粒子に育毛効果を有する有効成分をコーティングすることにより、当該有効成分の頭皮内部への浸透効果と有効成分の徐放効果とが、有効成分を皮膚に直接塗布するより高いことが示された。つまり、本発明に係る育毛剤は、頭皮内部に効果的に有効成分が浸透しない、つまり有効成分の浸透効果が十分ではないといった問題を解決することにより、優れた発毛、育毛効果を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る育毛剤は、毛乳頭細胞への血行を促進し、毛母細胞の分裂を促進し、毛髪の育毛、発毛、養毛、増毛を促す育毛剤、発毛剤、養毛剤、増毛剤等として有用である。
【符号の説明】
【0058】
1…磁性体超微粒子
2…親水性の膜
3…有効成分の膜
4…複合超微粒子(水溶性ポリマー)の膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超微粒子の表面に少なくとも第1の層がコーティングされている粒子状物質を含む育毛剤であって、
前記超微粒子は平均粒径がナノメートルオーダーの磁性超微粒子であり、
前記第1の層は育毛有効成分であり、
前記粒子状物質の平均粒径が10ナノメートルオーダーであることを特徴とする、育毛剤。
【請求項2】
前記超微粒子はマグネタイト超微粒子からなることを特徴とする、請求項1に記載の育毛剤。
【請求項3】
前記育毛有効成分は酢酸トコフェロール、ニンジンエキス、サクラエキス、ビワ葉エキスからなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の育毛剤。
【請求項4】
前記超微粒子の表面と前記第1の層との間に親水性膜の層を有することを特徴とする、請求項1乃至3に何れか1に記載の育毛剤。
【請求項5】
前記第1の層上に、さらに複合超微粒子(水溶性ポリマー)の層が形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の育毛剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−241194(P2011−241194A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116767(P2010−116767)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(592028514)コタ株式会社 (6)
【出願人】(501169970)
【Fターム(参考)】