説明

胃腸障害を処置するための剤形

【課題】異常な胃酸分泌を特徴とする疾患を治療するために使用できる薬物剤形を提供すること。
【解決手段】本発明の剤形は、腸溶性コーティングに囲まれた、プロトンポンプ阻害剤を含むコア、またはプロトンポンプ阻害剤を含む複数の粒子(各粒子は、腸溶性コーティングで囲まれている)を有する。この腸溶性コーティングは、周囲のpHが上昇するまで薬物の放出を遅延させる。錠剤はまた、プロトンポンプ阻害剤またはH2ブロッカーのいずれかを含む外部コーティングを含む。この外部コーティングは、患者の胃において迅速に溶解するように設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2005年1月12日に出願された米国仮特許出願第60/643,137号への優先権およびその利益を主張する。この先行する出願の内容は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、胃腸障害の治療、特に胃食道逆流症の治療のための医薬組成物に関する。この医薬組成物は、治療有効量のプロトンポンプ阻害剤(ppi)を有するコアまたは複数の粒子を含む。このコアまたは各粒子は、薬物の放出を遅延させるコーティングで囲まれている。さらに、これらの組成物は、プロトンポンプ阻害剤またはH2ブロッカーのいずれかを含み、患者による摂取の直後に薬物を放出するように設計された別個の外部コーティングを有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
胃食道逆流症(GERD)は一般的な障害であり、治療しない場合には重篤な健康上の結果を有し得る。食道逆流の症状は急性であり得、一般に、感受性の個体において誘発性の食事または横臥姿勢から生じる。GERDにおいて、食道逆流の症状は慢性であり、一日中生じ、誘発性の原因がないことがしばしばである。GERDの有効な治療は、急性および慢性の両方の逆流の管理を必要とする。GERDの治療のために頻繁に処方される2つの型の薬剤は、H2ブロッカーおよびプロトンポンプ阻害剤である。H2ブロッカーは、酸を産生する胃の細胞とヒスタミン(酸分泌を刺激することが知られている薬剤)との間の相互作用を防止する。これらの薬物は、比較的迅速な作用開始を有するが、有効性の持続期間は短い(典型的には8〜12時間)。現在市場にあるH2ブロッカーの例は以下である:シメチジン(Tagamet(登録商標));ファモチジン(Pepcid(登録商標));ニザチジン(Axid(登録商標));およびラニチジン(Zantac(登録商標))。残念ながら、より重篤な形態のGERDを有する多くの患者は、これらのH2ブロッカーから適切な軽減を得ていない。
【0004】
プロトンポンプ阻害剤(ppi)は、H2ブロッカー単独で有効に治療できないGERD患者に典型的に処方される。PPIは胃への酸の分泌を担う細胞酵素に結合してこれを阻害する。これらの薬物は、酸の分泌を低下させるにあたりH2ブロッカーよりも有効であり、典型的には、1日1回の摂取を必要とするだけの、充分に長い作用の持続期間を有する。これにより、治療における目的のプロトンポンプ阻害剤が、高いpHを維持することによって胃に対する長期保護を提供するように設計されている(公開された米国出願2003069255号;および特許文献1を参照のこと)。現在市場にあるプロトンポンプ阻害剤の例は以下である:オメプラゾール(Prilosec(登録商標));エソメプラゾール(Nexium(登録商標));ランソプラゾール(Prevacid(登録商標));パントプラゾール(Protonix(登録商標));ラベプラゾール(Aciphex(登録商標))。
【0005】
プロトンポンプ阻害剤は典型的に酸に不安定なので、腸溶性コーティングを伴った錠剤として通常製剤化されており(米国出願第4,853,230号を参照のこと;特許文献2;特許文献3および特許文献4もまた参照のこと)、このことが、有効性の遅い開始に寄与している可能性がある。患者は通常、錠剤の摂取後少なくとも24時間はそれらの症状からの実質的な解放を得ず、数日が必要とされ得る(Clin.Pharmakinet 20:38−49(1991))。最近、酸分解に対して保護するために、腸溶性コーティングの代わりに制酸緩衝剤を含む剤形を使用することによって、治療効果を達成するために必要な時間を減少させる試みがなされている(特許文献5;特許文献6;特許文献7;特許文献8;特許文献9および特許文献10)。
【0006】
より最近、酸ポンプにてカリウムと競合するより新しいクラスのプロトンポンプ阻害剤が開発された。このクラスの化合物は、「可逆的プロトンポンプ阻害剤」および「酸ポンプアンタゴニスト」と様々に呼ばれてきた。例には、AZD−0865、AR−H047108、CS−526、プマプラゾール、レバプラザン(revaprazan)およびソラプラザン(soraprazan)が含まれる(特許文献11および特許文献12を参照のこと)。このより新しいクラスのプロトンポンプ阻害剤中の全ての化合物が酸に不安定なわけではない。
【特許文献1】国際公開第04/060372号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,786,505号明細書
【特許文献3】欧州特許第0277,741号明細書
【特許文献4】欧州特許第0342,522号明細書
【特許文献5】米国特許第5,840,737号明細書
【特許文献6】米国特許第6,489,346号明細書
【特許文献7】米国特許第6,645,988号明細書
【特許文献8】米国特許第6,780,882号明細書
【特許文献9】米国特許第4,786,505号明細書
【特許文献10】米国特許第6,183,776号明細書
【特許文献11】国際公開第96/05177号パンフレット
【特許文献12】国際公開第96/05199号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
理想的には、剤形は、患者の症状の迅速な軽減および症状の再発を予防するための長期の有効性の両方を提供すべきである。本発明は、酸阻害剤の複数相の放出を提供する錠剤剤形の開発に基づく。一実施形態において、錠剤は、摂取直後(60分以内、好ましくは15分以内)に患者の胃において迅速に溶解し、H2ブロッカーまたはプロトンポンプ阻害剤のいずれかを放出する、外部コーティングまたは即時放出成分を有する。プロトンポンプ阻害剤は酸に不安定であり得るが、胃酸の産生を阻害するのに充分な量が、この即時放出成分または外部コーティング中に取り込まれ得る。経口剤形はまた、腸溶性コーティングされ得、プロトンポンプ阻害剤を含む、コアまたは遅延放出成分を含む。腸溶性コーティングは、コアが酸に不安定なプロトンポンプ阻害剤を含む全ての剤形に存在すべきであり、コアが酸に安定なプロトンポンプ阻害剤(即ち1.0〜3.0のpHで安定な阻害剤)を含む場合には、存在してもしなくてもよい。腸溶性コーティングは、胃のpHが上昇するまで、または剤形のこの成分が患者の腸に入るまで、コアからの阻害剤の放出を防止する。こうして、酸に不安定なプロトンポンプ阻害剤は分解から保護され、その結果、より高い割合が最終的に患者の血流に入り、症状の長期軽減を提供するであろう。
【0008】
代替的設計において、錠剤またはカプセル内に、腸溶性コーティングされたプロトンポンプ阻害剤の多数の粒子が存在してもよい。上で議論したように、この腸溶性コーティングは、周囲の媒体のpHが少なくとも3.5になるまで薬物の放出を防止し、所望の場合、薬物の時限式の放出をも提供し得る。このコーティングは、全ての酸に不安定なプロトンポンプ阻害剤のために存在すべきであるが、コアのppiが酸に不安定ではない場合、腸溶性である必要はない。放出後、胃のpHが3.5以上に上昇するか、または3.5以上で維持されるように、充分なプロトンポンプ阻害剤が粒子コア内に含まれる。各粒子は、腸溶性コーティングを囲む外部コーティングを含み得、あるいは錠剤またはカプセルは、複数の粒子を囲む1つまたは複数の外部コーティングを有し得る。多数の粒子を有する剤形に関して使用する場合、用語「外部コーティング」は、単一のコーティングまたは複数のコーティングのいずれを指してもよいことが理解されよう。この外部コーティングはそれ自体腸溶性ではなく、別個の腸溶性コーティングで囲まれてもいない。所望の場合、1つまたは複数の材料の層(例えば、賦形剤または活性成分を含む)を、プロトンポンプ阻害剤を含む粒子と外部コーティングとの間に含めてもよい。患者による摂取の際に、充分な酸阻害剤が、60分以内、好ましくは15分以内に外部コーティングから患者の胃へと放出されて、新たな胃酸の産生による胃のpHの低下を防止する。本発明はまた、これらの剤形を製造する方法および患者を治療するためにこれらの剤形を使用する方法を包含する。
【0009】
その第1の態様において、本発明は、腸溶性コーティングされたコアを有する錠剤形態の医薬組成物、または各々が腸溶性コーティングに囲まれた複数の粒子を有する医薬組成物に関する。コア(または粒子)は、治療有効量のプロトンポンプ阻害剤を含む。用語「治療上有効な」は、胃において酸の産生を阻害することによって患者の症状を緩和して、上昇した胃のpHの中央値を生じるのに充分な量の薬物を示し、ここで、胃のpHの中央値は、一定の間隔で24時間の期間にわたって取得した胃のpHの測定値の中央値である。好ましくは、24時間後、胃のpHの中央値は、少なくとも約3.5、より好ましくは少なくとも4.5であるべきである。コアまたは粒子を囲む腸溶性コーティングは、周囲のpHが少なくとも3.5になるまでプロトンポンプ阻害剤の放出を防止するように設計され、5.5より高いpH値が好ましい。高いpHは、特に錠剤が最初に摂取されるときは、腸溶性コーティングされた薬物が患者の腸に達するまで、得られない場合があり得る。しかし、毎日医薬を摂取する患者において、胃は、より高いpHで直ぐに安定化するはずである。これらの患者において、腸溶性コーティングされた成分は、迅速に、好ましくは摂取後60分以内に、プロトンポンプ阻害剤を胃へと放出するであろう。あるいは、例えば時間依存的な様式で、胃のpH以外のある機構によって、プロトンポンプ阻害剤の放出を遅延させるコーティングが使用され得る。
【0010】
腸溶性コーティングされた成分を有することに加えて、上記剤形は、治療有効量のプロトンポンプ阻害剤またはH2ブロッカーのいずれかを含む外部コーティングを含むであろう。外部コーティング中の薬物は、腸溶性コーティングされておらず、摂取の直後に患者の胃へと放出されるはずである。外部コーティングが酸に不安定なプロトンポンプ阻害剤を含む剤形において、送達された投薬量のかなりの部分が、患者の血流中に吸収され得る前に、胃酸中で分解され得ることが理解される。それにもかかわらず、GERDに関連する症状の緩和を提供するのに充分な阻害剤が取り込まれる。一般に、充分な薬物(即ち、プロトンポンプ阻害剤またはH2ブロッカー)は、患者による摂取後6時間以内に胃酸の分泌を有意に抑制するように存在すべきである。
【0011】
好ましくは、固体経口剤形は、コアの外側のフィルムコーティング中に腸溶性コーティングされていないプロトンポンプ阻害剤またはH2ブロッカーを有する、プロトンポンプ阻害剤の腸溶性コーティングされたコアを含むであろう。この外部フィルムコーティングは、本質的に即時の薬物放出を提供するために薄くすべきである。その厚さは一般に、1,000ミクロン未満であるべきであり、好ましくは25ミクロンと500ミクロンとの間であるべきである。これらの特徴を有するコーティングは、薬物を含むフィルム形成溶液を、腸溶性コーティングされたコアにスプレーすることによって得ることができる。プロトンポンプ阻害剤またはH2ブロッカーに加えて、この外部コーティングは、安定剤、緩衝剤またはアルカリ性物質のような、他の薬剤を含み得る。緩衝剤またはアルカリ性物質が使用される場合、それらは胃のpHを上昇させるように設計すべきである。
【0012】
他のように示さない限り、本明細書中で使用する場合、用語「プロトンポンプ阻害剤」または「ppi」には、可逆的プロトンポンプ阻害剤または酸ポンプアンタゴニスト(例えば、AZD−0865、AR−H047108、CS−526、プマプラゾール、レバプラザンおよびソラプラザン)が含まれる。錠剤の外部コーティングおよび内部コアの両方での使用に好ましいプロトンポンプ阻害剤には、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾールおよびラベプラゾールが含まれる。これらの薬物は全て市販されているか、あるいは当該分野で周知の技術を使用して合成できる。これらは、好ましくは1〜200mgの投薬量で、より好ましくは5〜100mgで外部コーティング中に存在し、5〜600mgで内部コア中に存在すべきである。外部コーティングおよび内部コアの両方における特定のプロトンポンプ阻害剤についての好ましい投薬量の例は、以下である:5〜50mgのオメプラゾール;5〜100mgのエソメプラゾール;15〜150mgのランソプラゾール;10〜200mgのパントプラゾール;および5〜100mgのラベプラゾール。パリプラゾール(pariprazole)およびレミノプラゾールを含む、他のプロトンポンプ阻害剤もまた使用され得る。
【0013】
錠剤の外部コーティング中での使用に好ましいH2ブロッカーには、シメチジン;ラニチジン;ファモチジン;エブロチジン;パブチジン(pabutidine);ラフチジンおよびニザチジンが含まれる。これらの薬物は、好ましくは1〜300mgで、より好ましくは5〜150mgで存在すべきである。
【0014】
本発明はまた、1つまたは複数の上記錠剤を投与することによる、異常な胃酸産生、胃酸逆流または胃腸管に対する損傷を特徴とする疾患または状態について、患者を治療する方法を包含する。治療され得る特定の疾患または状態には、十二指腸潰瘍;胃潰瘍;胃食道逆流症;重篤なびらん性食道炎;低応答性全身性GERDおよびゾリンジャー−エリソン症候群が含まれる。
【0015】
本発明はまた、上記特徴を有する単位剤形を製造するための方法を包含する。これらの方法は、5〜600mgのプロトンポンプ阻害剤を含むコアを最初に形成することを含む。次いで、コーティング、好ましくは周囲のpHが少なくとも3.5になるまで溶解しない腸溶性コーティングが、コアに適用される。任意選択で、1つまたは複数のさらなる層が、コアを囲むコーティング上に適用される。これらのさらなる層は、薬物、賦形剤、緩衝剤またはアルカリ性薬剤を含み得る。最後に、外部コーティングがスプレーによって適用される。この外部コーティングは腸溶性ではなく、1〜200mgのプロトンポンプ阻害剤または1〜300mgのH2ブロッカーを含む。好ましくは、この外部コーティングは直径1,000ミクロン以下であり、より好ましくは、直径25ミクロンと500ミクロンとの間であるべきである。任意選択で、胃のpHを上昇させるように設計された安定剤または緩衝剤が、外部コーティング中にか、またはコーティングの直ぐ下の別個の層として含められ得る。錠剤での使用に最も好ましいプロトンポンプ阻害剤および最も好ましいH2ブロッカーは、上記したものである。
上記に加えて、本発明は、以下の手段を提供する:
(項目1)
a)腸溶性コーティングに囲まれた治療有効量のプロトンポンプ阻害剤を含む腸溶性コーティングされたコアであって、前記腸溶性コーティングが、周囲の媒体のpHが少なくとも3.5となるまで、前記プロトンポンプ阻害剤を放出しないコア;および
b)前記腸溶性コーティングされたコアを囲む外部コーティングであって、
i)前記外部コーティングは、患者による摂取後6時間以内に胃酸分泌を抑制するのに充分な量の酸阻害剤を含み、前記酸阻害剤は、プロトンポンプ阻害剤およびH2ブロッカーからなる群より選択され;
ii)前記外部コーティングは腸溶性コーティングではなく、腸溶性コーティングで囲まれておらず、摂取後60分以内に前記酸阻害剤を放出する外部コーティング
を含む、錠剤形態の医薬組成物。
(項目2)
前記外部コーティングが1000ミクロン未満の厚さを有する、項目1に記載の錠剤。
(項目3)
前記外部コーティングが25ミクロンと500ミクロンとの間の厚さを有する、項目1に記載の錠剤。
(項目4)
前記外部コーティングが、安定剤または緩衝剤をさらに含む、項目2に記載の錠剤。
(項目5)
前記外部コーティング中の前記酸阻害剤がプロトンポンプ阻害剤である、項目1から4のいずれか一項に記載の錠剤。
(項目6)
前記酸阻害剤が、オメプラゾール;エソメプラゾール;ランソプラゾール;パントプラゾールおよびラベプラゾールからなる群より選択される、項目5に記載の医薬組成物。
(項目7)
前記外部コーティング中の前記プロトンポンプ阻害剤が、1.0〜3.0のpHで安定である、項目5に記載の錠剤。
(項目8)
前記プロトンポンプ阻害剤が、AZD−0865、AR−H047108、CS−526、プマプラゾール、レバプラザンおよびソラプラザンからなる群より選択される、項目7に記載の錠剤。
(項目9)
前記酸阻害剤が1〜200mgで前記外部コーティング中に存在する、項目5に記載の医薬組成物。
(項目10)
前記酸阻害剤が5〜100mgで前記外部コーティング中に存在する、項目9に記載の医薬組成物。
(項目11)
前記腸溶性コーティングされたコアが、5〜600mgの前記プロトンポンプ阻害剤を含み、前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール;エソメプラゾール;ランソプラゾール;パントプラゾールおよびラベプラゾールからなる群より選択される、項目5に記載の医薬組成物。
(項目12)
前記プロトンポンプ阻害剤がオメプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に5mgと50mgとの間で存在する、項目11に記載の医薬組成物。
(項目13)
前記プロトンポンプ阻害剤がエソメプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に5〜100mgで存在する、項目11に記載の医薬組成物。
(項目14)
前記プロトンポンプ阻害剤がランソプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に15〜150mgで存在する、項目11に記載の医薬組成物。
(項目15)
前記プロトンポンプ阻害剤がパントプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に10mgと200mgとの間で存在する、項目11に記載の医薬組成物。
(項目16)
前記プロトンポンプ阻害剤がラベプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に5mgと100mgとの間で存在する、項目11に記載の医薬組成物。
(項目17)
a)前記外部コーティング中の前記酸阻害剤が、1〜200mgで存在し、オメプラゾール;エソメプラゾール;ランソプラゾール;パントプラゾール;ラベプラゾール;AZD−0865;AR−H047108;CS−526;プマプラゾール;レバプラザンおよびソラプラザンからなる群より選択されるプロトンポンプ阻害剤であり;
b)前記腸溶性コーティングされたコアが1〜600mgの前記プロトンポンプ阻害剤を含み、前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール;エソメプラゾール;ランソプラゾール;パントプラゾールおよびラベプラゾールからなる群より選択される、
項目1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目18)
前記外部コーティング中の前記酸阻害剤が5〜100mgで存在し、前記腸溶性コーティングされたコアが5〜200mgの前記プロトンポンプ阻害剤を含む、項目17に記載の医薬組成物。
(項目19)
前記外部コーティング中の前記酸阻害剤がH2ブロッカーである、項目1から4のいずれか一項に記載の錠剤。
(項目20)
前記酸阻害剤が、シメチジン;ラニチジン;ファモチジン;エブロチジン;パブチジン;ラフチジンおよびニザチジンからなる群より選択される、項目19に記載の医薬組成物。
(項目21)
前記酸阻害剤が1〜300mgで前記外部コーティング中に存在する、項目20に記載の医薬組成物。
(項目22)
前記酸阻害剤が5〜150mgで前記外部コーティング中に存在する、項目21に記載の医薬組成物。
(項目23)
前記腸溶性コーティングされたコアが1〜600mgの前記プロトンポンプ阻害剤を含み、前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール;エソメプラゾール;ランソプラゾール;パントプラゾールおよびラベプラゾールからなる群より選択される、項目19に記載の医薬組成物。
(項目24)
前記プロトンポンプ阻害剤がオメプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に5mgと50mgとの間で存在する、項目23に記載の医薬組成物。
(項目25)
前記プロトンポンプ阻害剤がエソメプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に5〜100mgで存在する、項目23に記載の医薬組成物。
(項目26)
前記プロトンポンプ阻害剤がランソプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に15〜150mgで存在する、項目23に記載の医薬組成物。
(項目27)
前記プロトンポンプ阻害剤がパントプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に10mgと200mgとの間で存在する、項目23に記載の医薬組成物。
(項目28)
前記プロトンポンプ阻害剤がラベプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に5mgと100mgとの間で存在する、項目23に記載の医薬組成物。
(項目29)
a)前記外部コーティング中の前記酸阻害剤が、1〜300mgで存在し、シメチジン;ラニチジン;ファモチジン;エブロチジン;パブチジン;ラフチジンおよびニザチジンからなる群より選択されるH2ブロッカーであり;
b)前記腸溶性コーティングされたコアが5〜600mgの前記プロトンポンプ阻害剤を含み、前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール;エソメプラゾール;ランソプラゾール;パントプラゾールおよびラベプラゾールからなる群より選択される、
項目1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目30)
前記外部コーティング中の前記酸阻害剤が5〜150mgで存在し、前記腸溶性コーティングされたコアが5〜200mgの前記プロトンポンプ阻害剤を含む、項目29に記載の医薬組成物。
(項目31)
a)治療有効量のプロトンポンプ阻害剤を一緒に含む複数の粒子であって、各粒子は、周囲の媒体のpHが少なくとも3.5となるまで、前記プロトンポンプ阻害剤を放出しない腸溶性コーティングで囲まれている複数の粒子;
b)各腸溶性コーティングされた粒子を囲む外部コーティングまたは複数の粒子を囲む1つもしくは複数の外部コーティングであって、
i)前記外部コーティングは、患者による摂取後6時間以内に胃酸分泌を抑制するのに充分な量の酸阻害剤を含み、前記酸阻害剤は、プロトンポンプ阻害剤およびH2ブロッカーからなる群より選択され;
ii)前記外部コーティングは腸溶性コーティングではなく、腸溶性コーティングで囲まれていない外部コーティング
を含む、錠剤形態またはカプセル形態の医薬組成物。
(項目32)
前記外部コーティングが1000ミクロン未満の厚さを有する、項目31に記載の医薬組成物。
(項目33)
前記外部コーティングが25ミクロンと500ミクロンとの間の厚さを有する、項目31に記載の医薬組成物。
(項目34)
前記外部コーティングが、安定剤または緩衝剤をさらに含む、項目32に記載の医薬組成物。
(項目35)
前記外部コーティング中の前記酸阻害剤がプロトンポンプ阻害剤である、項目31から34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目36)
前記酸阻害剤が、オメプラゾール;エソメプラゾール;ランソプラゾール;パントプラゾールおよびラベプラゾールからなる群より選択される、項目35に記載の医薬組成物。
(項目37)
前記酸阻害剤が1〜200mgで前記外部コーティング中に存在する、項目36に記載の医薬組成物。
(項目38)
前記酸阻害剤が5〜100mgで前記外部コーティング中に存在する、項目37に記載の医薬組成物。
(項目39)
前記外部コーティング中の前記プロトンポンプ阻害剤が、1.0〜3.0のpHで安定である、項目35に記載の医薬組成物。
(項目40)
前記プロトンポンプ阻害剤が、AZD−0865、AR−H047108、CS−526、プマプラゾール、レバプラザンおよびソラプラザンからなる群より選択される、項目39に記載の医薬組成物。
(項目41)
前記腸溶性コーティングされたコアが、1〜600mgの前記プロトンポンプ阻害剤を含み、前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール;エソメプラゾール;ランソプラゾール;パントプラゾールおよびラベプラゾールからなる群より選択される、項目37に記載の医薬組成物。
(項目42)
前記プロトンポンプ阻害剤がオメプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に5mgと50mgとの間で存在する、項目41に記載の医薬組成物。
(項目43)
前記プロトンポンプ阻害剤がエソメプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に5〜100mgで存在する、項目41に記載の医薬組成物。
(項目44)
前記プロトンポンプ阻害剤がランソプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に15〜150mgで存在する、項目41に記載の医薬組成物。
(項目45)
前記プロトンポンプ阻害剤がパントプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に10mgと200mgとの間で存在する、項目41に記載の医薬組成物。
(項目46)
前記プロトンポンプ阻害剤がラベプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に5mgと100mgとの間で存在する、項目41に記載の医薬組成物。
(項目47)
a)前記外部コーティング中の前記酸阻害剤が、1〜200mgで存在し、オメプラゾール;エソメプラゾール;ランソプラゾール;パントプラゾールおよびラベプラゾールからなる群より選択されるプロトンポンプ阻害剤であり;
b)前記腸溶性コーティングされたコアが5〜600mgの前記プロトンポンプ阻害剤を含み、前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール;エソメプラゾール;ランソプラゾール;パントプラゾールおよびラベプラゾールからなる群より選択される、
項目31から34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目48)
前記外部コーティング中の前記酸阻害剤が5〜100mgで存在し、前記腸溶性コーティングされたコアが5〜200mgの前記プロトンポンプ阻害剤を含む、項目47に記載の医薬組成物。
(項目49)
前記外部コーティング中の前記酸阻害剤がH2ブロッカーである、項目31から34のいずれか一項に記載の錠剤。
(項目50)
前記酸阻害剤が、シメチジン;ラニチジン;ファモチジン;エブロチジン;パブチジン;ラフチジンおよびニザチジンからなる群より選択される、項目49に記載の医薬組成物。
(項目51)
前記酸阻害剤が1〜300mgで前記外部コーティング中に存在する、項目50に記載の医薬組成物。
(項目52)
前記酸阻害剤が5〜150mgで前記外部コーティング中に存在する、項目50に記載の医薬組成物。
(項目53)
前記腸溶性コーティングされたコアが5〜600mgの前記プロトンポンプ阻害剤を含み、前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール;エソメプラゾール;ランソプラゾール;パントプラゾールおよびラベプラゾールからなる群より選択される、項目49に記載の医薬組成物。
(項目54)
前記プロトンポンプ阻害剤がオメプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に5mgと50mgとの間で存在する、項目53に記載の医薬組成物。
(項目55)
前記プロトンポンプ阻害剤がエソメプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に5〜100mgで存在する、項目53に記載の医薬組成物。
(項目56)
前記プロトンポンプ阻害剤がランソプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に15〜150mgで存在する、項目53に記載の医薬組成物。
(項目57)
前記プロトンポンプ阻害剤がパントプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に10mgと200mgとの間で存在する、項目53に記載の医薬組成物。
(項目58)
前記プロトンポンプ阻害剤がラベプラゾールであり、前記腸溶性コーティングされたコア中に5mgと100mgとの間で存在する、項目53に記載の医薬組成物。
(項目59)
a)前記外部コーティング中の前記酸阻害剤が、1〜300mgで存在し、シメチジン;ラニチジン;ファモチジン;エブロチジン;パブチジン;ラフチジンおよびニザチジンからなる群より選択されるH2ブロッカーであり;
b)前記腸溶性コーティングされたコアが5〜600mgの前記プロトンポンプ阻害剤を含み、前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール;エソメプラゾール;ランソプラゾール;パントプラゾールおよびラベプラゾールからなる群より選択される、
項目31から34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目60)
前記外部コーティング中の前記酸阻害剤が5〜150mgで存在し、前記腸溶性コーティングされたコアが5〜200mgの前記プロトンポンプ阻害剤を含む、項目59に記載の医薬組成物。
(項目61)
異常な胃酸産生、胃酸逆流または胃腸管に対する損傷を特徴とする疾患または状態について患者を治療する方法であって、前記患者に項目5に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
(項目62)
前記疾患または状態が、十二指腸潰瘍;胃潰瘍;胃食道逆流症(GERD);重篤なびらん性食道炎;低応答性全身性GERDおよびゾリンジャー−エリソン症候群からなる群より選択される、項目61に記載の方法。
(項目63)
異常な胃酸産生、胃酸逆流または胃腸管に対する損傷を特徴とする疾患または状態について患者を治療する方法であって、前記患者に項目19に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
(項目64)
前記疾患または状態が、十二指腸潰瘍;胃潰瘍;胃食道逆流症(GERD);重篤なびらん性食道炎;低応答性全身性GERDおよびゾリンジャー−エリソン症候群からなる群より選択される、項目63に記載の方法。
(項目65)
異常な胃酸産生、胃酸逆流または胃腸管に対する損傷を特徴とする疾患または状態について患者を治療する方法であって、前記患者に項目35に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
(項目66)
前記疾患または状態が、十二指腸潰瘍;胃潰瘍;胃食道逆流症(GERD);重篤なびらん性食道炎;低応答性全身性GERDおよびゾリンジャー−エリソン症候群からなる群より選択される、項目65に記載の方法。
(項目67)
異常な胃酸産生、胃酸逆流または胃腸管に対する損傷を特徴とする疾患または状態について患者を治療する方法であって、前記患者に項目49に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
(項目68)
前記疾患または状態が、十二指腸潰瘍;胃潰瘍;胃食道逆流症(GERD);重篤なびらん性食道炎;低応答性全身性GERDおよびゾリンジャー−エリソン症候群からなる群より選択される、項目67に記載の方法。
(項目69)
錠剤単位剤形、または錠剤もしくはカプセルに含めるためのコーティングされた薬物ペレットを製造する方法であって、
a)5〜600mgのプロトンポンプ阻害剤を含むコアを形成するステップ;
(b)前記コアに腸溶性コーティングを適用するステップ;および
(c)前記腸溶性コーティング上に外部コーティングをスプレーするステップを含み、前記外部コーティングは、
i)腸溶性ではなく;
ii)1〜200mgのプロトンポンプ阻害剤または1〜300mgのH2ブロッカーのいずれかを含む、
方法。
(項目70)
前記外部コーティングが1000ミクロン未満の厚さを有する、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記外部コーティングが25ミクロンと500ミクロンとの間の厚さを有する、項目69に記載の方法。
(項目72)
前記外部コーティングが、安定剤または緩衝剤をさらに含む、項目69に記載の方法。
(項目73)
前記腸溶性コーティングがpH感受性であり、周囲のpHが5.5以上になるまで前記コア中のプロトンポンプ阻害剤を放出しない、項目69に記載の方法。
(項目74)
前記外部コーティング中の前記酸阻害剤がプロトンポンプ阻害剤である、項目69から73のいずれか一項に記載の方法。
(項目75)
前記酸阻害剤が、オメプラゾール;エソメプラゾール;ランソプラゾール;パントプラゾールおよびラベプラゾールからなる群より選択される、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記外部コーティング中の前記プロトンポンプ阻害剤が、1.0〜3.0のpHで安定である、項目74に記載の錠剤。
(項目77)
前記プロトンポンプ阻害剤が、AZD−0865、AR−H047108、CS−526、プマプラゾール、レバプラザンおよびソラプラザンからなる群より選択される、項目74に記載の錠剤。
(項目78)
前記外部コーティング中の前記酸阻害剤がH2ブロッカーである、項目69から73のいずれか一項に記載の方法。
(項目79)
前記酸阻害剤が、シメチジン;ラニチジン;ファモチジン;エブロチジン;パブチジン;ラフチジンおよびニザチジンからなる群より選択される、項目78に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明は、患者における予期された逆流症状を低減させるための酸阻害剤の迅速な放出と、長期軽減を提供し、症状の復帰を予防するためのプロトンポンプ阻害剤の遅延放出との両方を提供する、剤形に関する。錠剤中で使用される活性成分(即ち、プロトンポンプ阻害剤およびH2ブロッカー)は当該分野で周知であり、上記好ましい薬剤は市販されている。所望の場合、当該分野で周知の方法論を使用して薬物を製造することもできる。
【0017】
医薬製剤の製造
本発明の錠剤は、当該分野で標準的な方法に従って製造できる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、A.Oslow、編者、Easton、PA(1980)を参照のこと)。薬物は、従来の賦形剤、担体、緩衝剤、香味料などと混合して調製され得る。典型的な担体には、以下が含まれるがこれらに限定されない:水;塩溶液;アルコール;アラビアゴム;植物油;ベンジルアルコール;ポリエチレングリコール;ゼラチン;炭水化物(例えば、ラクトース、アミロースまたはデンプン);ステアリン酸マグネシウム;タルク;ケイ酸;パラフィン;芳香油;脂肪酸エステル;ヒドロキシメチルセルロース;ポリビニルピロリドンなど。医薬製剤は、安定化され得、所望される場合、補助剤(例えば、滑沢剤;防腐剤;崩壊剤;シクロデキストランなどの安定剤;湿潤剤;乳化剤;塩;緩衝剤;着色剤;香味料;または芳香性物質など)と混合され得る。胃のpHを上昇させ得る緩衝剤が特に好ましい。例えば、炭酸水素塩緩衝剤は、外部コーティング中にか、または外部コーティングの直ぐ下の迅速に溶解する別個の層として含められ得る。
【0018】
コアを囲む腸溶性コーティングは、標準的なコーティング技術を使用して適用され得る。腸溶性コーティングを形成するために使用される材料は、有機溶媒または水性溶媒中に溶解または分散され得、これには以下のうち1つまたは複数が含まれ得る:メタクリル酸コポリマー;セラック;ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;ポリビニルアセテートフタレート;ヒドロキシプロピルメチルセルローストリメリテート;カルボキシメチルセルロース;セルロースアセテートフタレートまたは他の適切な腸溶性コーティングポリマー。腸溶性コーティングが溶解するpHは、ポリマーもしくは選択されたポリマーの組合せおよび/またはペンダント基の比率によって制御できる。例えば、コーティングの溶解特徴は、遊離カルボキシル基のエステル基に対する比率によって変更できる。腸溶性コーティング層はまた、例えば、クエン酸トリエチル;フタル酸ジブチル;トリアセチン;ポリエチレングリコール;ポリソルベートなどの医薬可塑剤を含み得る。分散剤、着色料、接着防止剤および消泡剤などの添加剤を含めてもよい。
【0019】
錠剤剤形の製造
錠剤は、当該分野で周知の標準的な技術を使用して製造できる。コアまたは外部コーティングにおいて使用される薬物は、スラギング、低剪断または高剪断造粒、湿式造粒、あるいは流動床造流などの方法によって造粒され得る。外部コーティングは、適切なポリマーおよび治療上有効な用量を得るのに充分な量の薬物を含む混合物を調製することによって形成され得る。次いで、溶液が、予め形成された腸溶性コーティングされたコア上にスプレーされて、最終錠剤を製造し得る。所望の場合、緩衝剤層または他の薬剤を含む層が、腸溶性コーティングされたコアと外部コーティングとの間に散在し得る。
【0020】
患者の治療
上記医薬組成物は、プロトンポンプ阻害剤が適応である任意の疾患または状態について患者を治療するために使用できる。最も一般的な状態はGERDであろう。他の状態には、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、重篤なびらん性食道炎およびゾリンジャー−エリソン症候群が含まれる。全ての場合において、患者には、過剰な胃酸産生に関連する症状を排除するのに充分な一日投薬量を投与すべきである。好ましい薬剤の全ての典型的な一日投薬量は、当該分野で周知である。一般に、5〜600mgのいずれかのプロトンポンプ阻害剤が錠剤のコア中で投与され得、さらに1〜200mgが外部コーティング中で投与され得る。H2ブロッカーを外部コーティング中で使用する場合、一般に、1〜300mgの投薬量で投与すべきである。使用される最終投薬量は、臨床状態に基づいて、当該分野で周知の方法を使用して、担当医によって選択されよう。一般的な規則として、薬物は1日1回摂取するように設計されるが、他の投薬レジメンを使用してもよい。特に、ある条件下では、2回の一日用量が好まれる場合がある。一般に、食べること、飲むこと、または任意の他の誘発行動に起因した症状の予期された発症の前に、薬物を投与することが望ましい。治療は、過剰な酸の産生に関連する症状が鎮静した後であっても継続すべきであり、患者は、典型的には長年にわたって医薬組成物を摂取し続けることが期待される。
【実施例】
【0021】
(実施例1:オメプラゾールの遅延放出および即時放出カプセル)
本実施例は、腸溶性コーティングあり(遅延放出)およびなし(即時放出)の、オメプラゾールペレットを含むカプセルに関する(ペレットの模式図については図1を参照のこと)。オメプラゾールペレットは、炭酸水素ナトリウムをアルカリ化賦形剤として含む。使用され得る他の可溶性アルカリ化剤には、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよびこれらの薬剤の組合せが含まれる。アルカリ化剤は、オメプラゾールを可溶化して、吸収される前の分解からオメプラゾールを保護する助けとなる。ラウリル硫酸ナトリウムは、オメプラゾールの湿潤を補助するためにペレット中に存在する。他の界面活性剤が、同じ機能を果たすために使用され得る。この実施例において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは顆粒形成を補助するために存在し、デンプングリコール酸ナトリウムは崩壊剤として含められる。他の賦形剤もまた、これらの機能を果たすために使用され得る。ペレットは、湿式マッシング技術ならびに従来の押出および球形化プロセスによって調製する。
【0022】
ペレットを形成した後、それらを乾燥し、サイズに従って分類する。遅延放出のためのペレットを、ポビドンを含む保護的サブコーティングで最初にコーティングする。使用され得る他のコーティング成分には、Opaspray K−1−4210A(商標)およびOpadry YS−1−7006(商標)(Colorcon,West Point,PAの商標)が含まれる。サブコーティング懸濁物中で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910およびポリエチレングリコール8000などのポリマーフィルムコーティング成分もまた使用され得る。サブコーティング中に存在し得る他の成分には以下が含まれる:クエン酸トリエチルまたはフタル酸ジブチルなどの可塑剤;タルクなどの付着防止剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢成分;および二酸化チタンなどの乳白剤。
【0023】
サブコーティングしたペレットを、腸溶性コーティングポリマーを使用して腸溶性コーティングする。本実施例において、腸溶性コーティングポリマーはメタクリル酸コポリマーであり、可塑剤は、アセトンおよびアルコールの混合物中に溶解させたフタル酸ジエチルである。腸溶性フィルムは、胃において通常見出される酸性のpHでは溶解しないが、pHがpH4.5を超えると溶解する。腸溶性コーティングにおいて使用され得る他の材料には以下が含まれる:ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;アンモニオメタクリレートコポリマー;セラック;ポリビニルアセテートフタレート;およびセルロースアセテートフタレート。
【0024】
A.オメプラゾールペレットの調製
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを水中に溶解し、次いでラウリル硫酸ナトリウムをこの溶液に添加する。オメプラゾール、微結晶性セルロース、炭酸水素ナトリウムおよびデンプングリコール酸ナトリウムを一緒に乾燥混合し、造粒溶液で造粒する。湿った塊を、適切な稠度に達するまで混合する。次いで、押出し機を介してこれに加圧し、球形化してペレットを形成する。次いで、ペレットを乾燥し、適切な粒子サイズ範囲に分類する。
【0025】
【表1】


B.サブコーティング
上記ペレットコアの半分をポビドン溶液を使用してコーティングし、1〜2%の重量増加を得た。
【0026】
【表2】


C.腸溶性コーティング
Eudragit L−100を、イソプロパノールおよびアセトン中に溶解し、次いでフタル酸ジエチルを溶解する。この溶液を、フィルムコーティング装置を使用して、サブコーティングしたペレットコア上にスプレーする。ペレットのサンプルを、コーティングプロセスを停止する前に胃抵抗性について試験する。
【0027】
【表3】


D.カプセルの調製
オメプラゾールの即時放出ペレット(コーティングなし)および遅延放出ペレット(腸溶性コーティングあり)を一緒にブレンドして使用し、カプセル1個当たり20mgの遅延放出オメプラゾールおよび20mgの即時放出オメプラゾールを含むようにカプセルに充填する。
【0028】
(実施例2:オメプラゾールの遅延放出および即時放出錠剤)
この錠剤は、腸溶性コーティングしたオメプラゾールペレットおよび即時放出ペレットの混合物から圧縮し、図2に例示される。オメプラゾールペレットの製剤は、30mgのオメプラゾールを含み、充填剤としてマンニトールを使用し、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを使用し、崩壊剤および充填剤として微結晶性セルロースを使用する。遅延放出ペレットをサブコーティングでコーティングし、その後メタクリル酸コポリマーの水性分散物によって腸溶性コーティングする。
【0029】
A.オメプラゾールペレットの形成
オメプラゾール、マンニトール、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウムおよび第二リン酸ナトリウムを一緒に乾燥混合し、精製水を用いて造粒する。湿った塊を、適切な稠度に達するまで混合する。次いで、押出し機を介してこれに加圧し、球形化してペレットを形成する。得られたペレットを乾燥し、適切な粒子サイズ範囲に分類する。ペレットの組成は表4に示す。
【0030】
【表4】


B.バリアコーティング
Opadry clearを精製水にゆっくりと添加し、Opadryが完全に分散するまで調製物を混合する。この溶液を、1〜2%のOpadry clearがペレット上に沈着するまで、上記のように形成したオメプラゾールペレットの半分にスプレーする。
【0031】
【表5】


C.腸溶性コーティング
Eudragit L30Dを精製水およびシメチコンエマルジョン中に溶解する。次いで、タルクおよびクエン酸トリエチルを分散させる。この懸濁物を、フィルムコーティング装置を使用して、バリアフィルムコーティングを含むペレットコア上にスプレーする。ペレットのサンプルを、コーティングプロセスを停止する前に胃抵抗性について試験する。
【0032】
【表6】


D.錠剤の形成
オメプラゾールの遅延放出ペレットおよび即時放出ペレットをステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースと一緒にブレンドし、30mgの遅延放出オメプラゾールおよび30mgの即時放出オメプラゾールを含む錠剤へと圧縮する。この錠剤は、着色されたOpadry、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコールおよび着色料を含む典型的なフィルムコーティング成分を含む等価物で、フィルムコーティングされ得る。
【0033】
(実施例3:遅延放出オメプラゾールおよび即時放出オメプラゾールを有する二層フィルムコーティングした錠剤)
本実施例の二層錠剤は、腸溶性コーティングしたペレットおよびオメプラゾール顆粒から圧縮し、図3に示される。腸溶性コーティングしたオメプラゾールペレットは、実施例1または2に記載したとおりに調製できる。オメプラゾール顆粒は、結合剤としてポビドンを使用し、充填剤および崩壊剤として微結晶性セルロースを使用し、充填剤としてマンニトールを使用して調製する。
【0034】
A.オメプラゾール顆粒の形成
オメプラゾール、微結晶性セルロース、ポビドン、ラウリル硫酸ナトリウムおよび第二リン酸ナトリウムを造粒機中で混合する。水を添加し、適切な顆粒が形成されるまで混合する。顆粒をオーブン中で乾燥し、製粉する。製粉した顆粒を、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースとブレンドする。
【0035】
【表7】


B.錠剤の形成
腸溶性コーティングしたペレットを、微結晶性セルロースおよびステアリン酸マグネシウムと混合する。腸溶性コーティングしたオメプラゾールペレットからなるブレンドおよびオメプラゾール顆粒からなるブレンドを、二層錠剤プレスを使用して二層錠剤へと圧縮する。この錠剤は、着色されたOpadry、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコールおよび着色料を含む典型的なフィルムコーティング成分を含む等価物で、フィルムコーティングされ得る。
【0036】
(実施例4:遅延放出ランソプラゾールコアおよびフィルムコーティング中のランソプラゾール即時放出)
4層錠剤剤形の模式図を図4に示す。第1の層(H)は、医薬上許容される充填剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤および滑沢剤のマトリックス中に分散したランソプラゾールを含むコアである。
【0037】
第2の層(I)は、ランソプラゾールを含む第1の層を保護するバリア層である。バリアフィルムコーティングは、従来のパンコーティング技術によって適用し、バリアコーティングの重量は、コア錠剤の重量の1%〜3%で変動し得る。特定の実施形態において、コア錠剤は、Opaspray(登録商標)K−1−4210AまたはOpadry(登録商標)YS−1−7006(Colorcon,West Point,PA)などのコーティング成分でコーティングする。コーティング懸濁物中で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910およびポリエチレングリコール8000などのポリマーフィルムコーティング成分を使用してもよい。
【0038】
第3の層(J)は腸溶性フィルムコーティングである。この実施例において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートは腸溶性コーティング成分であり、セチルアルコールは可塑剤であり、アセトンおよびアルコールは溶媒である。腸溶性コーティングのための他の材料は、アンモニオメタクリレートコポリマー、セラック、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルローストリメリテートおよびセルロースアセテートフタレートである。
【0039】
第4の層(K)は、フィルムコーティングが溶解すると直ぐに剤形から放出されるランソプラゾールを有効量で含むフィルムコーティングである。このフィルムコーティングは、従来のパンコーティング技術によって適用し、適用される薬物の量に依存して、コア錠剤の重量の4%〜8%で変動し得る。他の成分は、クエン酸トリエチルまたはフタル酸ジブチルなどの可塑剤、タルクなどの付着防止剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢成分、二酸化チタンなどの乳白剤および分散物のpHを調整するための水酸化アンモニウムである。このフィルムコーティングは薄く、吸収のためにランソプラゾールを迅速に放出する。従って、10mgのランソプラゾールが最初に放出され、次いでコアが侵食されて15mgのランソプラゾールが放出される。
【0040】
A.ランソプラゾールコア層(H)の調製
ランソプラゾール、微結晶性セルロース、ラクトース、ポビドン、ラウリル硫酸ナトリウムおよび第二リン酸ナトリウムを乾燥混合し、充分な精製水を用いて造粒機で湿式造粒する。湿った顆粒を乾燥し、製粉し、微結晶性セルロースおよびステアリン酸マグネシウムとブレンドする。最終顆粒ブレンドを錠剤へと圧縮する。
【0041】
【表8】


B.バリア層(I)の形成
Opadry clearを精製水にゆっくりと添加し、完全に分散するまで混合を継続する。所望の量のOpadry clearが錠剤上に沈着するまで、この溶液を従来のコーティングパンで錠剤コア上にスプレーする。
【0042】
【表9】


C.腸溶性コーティングの形成
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびセチルアルコールを、アルコールおよびアセトンの混合物中に溶解する。次いでこの溶液を、標準的なコーティング装置を使用して錠剤床上にスプレーする。錠剤のサンプルを胃抵抗性について試験し、錠剤が試験をパスしたときにコーティングプロセスを停止させる。
【0043】
【表10】


D.ランソプラゾールフィルムコーティング
ランソプラゾールを、第二リン酸ナトリウムおよびポリソルベート80を含む精製水中に分散させる。完全に混合した後、Opadry clearをゆっくりと添加し、Opadryが完全に分散するまで混合を継続する。所望の量のランソプラゾールが錠剤上に沈着するまで、この懸濁物を従来のコーティングパンで錠剤コア上にスプレーする。
【0044】
【表11】


(実施例5:治療実施例)
ある患者を、主治医によりGERDに罹患していると決定し、就寝前の胃にもたれる食事により、GERDを誘発し悪化させる。この患者に、毎晩夕食の45分前に摂取するように、実施例4に記載の錠剤を処方する。治療しない場合、この患者は夕食の開始の約30分後に食道逆流の重篤な症状に罹患し、次いで夜中、患者はリクライニングチェアで休まなければならない。最初の晩に患者が処方された錠剤を摂取した後、患者は、夕食後に僅かな症状を示し、ベッドに横たわって眠ることができる。次の晩、患者のGERDは制御されたままである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】:オメプラゾールペレット:図1は、オメプラゾールのコーティングされていないペレット(A)およびコアペレット(A)がサブコーティング(B)および外部コーティング(C)に囲まれた遅延放出製剤の両方を示す模式図である。コアペレットの組成および各外部層の組成は、実施例1に提供される。ペレットは、錠剤へと圧縮されるか、またはカプセル中に充填されるかのいずれかであり得る。
【図2】:即時放出オメプラゾールペレットおよび遅延放出オメプラゾールペレットを含む錠剤:この図は、コーティングされていないオメプラゾールペレット(D)(これは、胃液への曝露の際に直ぐに薬物を放出する)および腸溶性コーティングされたオメプラゾールペレット(E)(これは、周囲の媒体のpHが少なくとも3.5になるまで、薬物の放出を遅延させる)の両方を含む圧縮錠剤を示す。任意選択で、この錠剤は、摂取の直後に溶解する非腸溶性フィルムでコーティングされ得る。これらの錠剤は実施例2に詳細に記載される。
【図3】:二層錠剤:図3は、腸溶性コーティングされた遅延放出オメプラゾールペレット(F)および即時放出オメプラゾール顆粒(G)を含む二層錠剤を示す。より完全な記載については、実施例3を参照のこと。
【図4】:複数層錠剤剤形:図4は、ランソプラゾールを含むコア層(H)を有する錠剤を示す。これは、コアを保護するように作用するバリアコーティング層(I)で囲まれている。3番目の層(J)は、周囲の媒体が3.5以上のpHになるまで溶解しない腸溶性コーティングである。最後に、最も外側の層(K)は、治療有効量のランソプラゾールを含むフィルムコーティングである。この外部フィルムは腸溶性ではなく、摂取の直後にランソプラゾールを放出する。各層中に存在する正確な成分は実施例4に記載される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−102335(P2009−102335A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307505(P2008−307505)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【分割の表示】特願2007−551316(P2007−551316)の分割
【原出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(502030628)ポーゼン, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】