説明

胆汁酸吸着剤

【課題】廃棄物とされてきた醤油粕から、胆汁酸吸着作用をもつ機能性製剤を製造する方法及びその製剤を提供する。
【解決手段】本発明の胆汁酸吸着剤の製造方法は、(a)醤油粕を含水アルコールと接触させて、胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を得る工程、(b)該胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を吸着樹脂に添加し、胆汁酸吸着成分を吸着させる工程、(c)該胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を添加した吸着樹脂から、胆汁酸非吸着成分を洗浄する工程、(d)該胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を添加し、胆汁酸非吸着成分を洗浄した吸着樹脂から、胆汁酸吸着成分を溶出させる工程、および(e)該胆汁酸吸着成分を含む溶出液を粉末化する工程、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醤油の製造工程で排出される醤油粕から製造した胆汁酸吸着作用のある機能性製剤およびその製剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
醤油粕とは、醤油製造工程において醤油もろみを圧搾した後に得られる固形分であり、主に大豆、小麦、食塩等からなる。
【0003】
醤油粕には多種の有用成分が含まれている。例えばイソフラボン、サポニン、アミノ酸、糖類等である。近年、これらの成分の機能性が明らかになってきており、醤油粕は機能性成分の供給源として有望であると考えられている(例えば、特許文献1〜3)。
【0004】
現在、多量の醤油粕が排出されているが、一部が家畜飼料として用いられているに留まっており、多くは有効利用されておらず、廃棄物として取り扱われている。
【0005】
以上より、醤油粕を機能性製剤の原料として用いることは、健康増進および廃棄物利用の点で優れていると考えられる。
【0006】
ところで、胆汁酸とは、胆汁中の主成分である。胆汁酸は肝臓でコレステロールを原料に合成された後、グリシンもしくはタウリンの抱合体として小腸上部で分泌され、脂質の消化・吸収を促進する。胆汁酸の大半は小腸下部で再吸収され、腸肝循環を行っているが、一部は再吸収されずに排出される。
【0007】
近年、食生活の欧米化に伴って高コレステロール血症の罹患者が増加している。一般的にその予防・改善には食生活や運動等の生活習慣を大きく変える必要があり、簡便な予防・改善手段が望まれている。
【0008】
生体内のコレステロールを低減させる方法として、食物由来コレステロールの吸収を抑制する方法、生体内のコレステロール生合成を抑制する方法、生体内コレステロールの代謝を促進する方法が挙げられる。生体内コレステロールの多くが体内で生合成されたものであることから、吸収を抑制する方法よりも、生合成を抑制もしくは代謝を促進する方法はコレステロール低減への寄与が大きいと考えられる。
【0009】
生体内コレステロールは胆汁酸やステロイドホルモン等へ代謝されるが、このうち量的に最も多いのは胆汁酸への代謝である。
【0010】
以上より、コレステロールから生合成された胆汁酸を腸内で吸着する物質を摂取すれば、胆汁酸を再吸収させずに体外に排出することができ、コレステロールから胆汁酸への代謝が活発になることによって、間接的にコレステロール値を低下させることができると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平03-052447号公報(サポニンの抽出精製方法)
【特許文献2】特開平05-170756号公報(醤油粕又は醤油粕から有機溶媒でイソフラボン化合物を抽出)
【特許文献3】特開2002-309251号公報(醤油粕由来の抗酸化組成物)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点を解決しようとするものであり、廃棄物とされてきた醤油粕から、胆汁酸吸着作用をもつ機能性製剤を製造する方法およびその製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、醤油粕から含水アルコールによって有用成分を抽出し、カラムクロマトグラフィーによって胆汁酸吸着効果が高い画分を分離し、濃縮、乾燥することによって胆汁酸吸着成分が得られることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。
【0014】
従って、本発明は以下を提供する。
(項目1) (a)醤油粕を含水アルコールと接触させて、胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を得る工程、
(b)該胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を吸着樹脂に添加し、胆汁酸吸着成分を吸着させる工程、
(c)該胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を添加した吸着樹脂から、胆汁酸非吸着成分を洗浄する工程、
(d)該胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を添加し、胆汁酸非吸着成分を洗浄した吸着樹脂から、胆汁酸吸着成分を溶出させる工程、
および
(e)該胆汁酸吸着成分を含む溶出液を粉末化する工程、
を包含する胆汁酸吸着剤の製造方法。
(項目2) 前記(a)醤油粕を含水アルコールと接触させて、胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を得る工程の後に、該胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を濃縮する工程、を包含する項目1に記載の胆汁酸吸着剤の製造方法。
(項目3) 前記(d)胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を添加し、胆汁酸非吸着成分を洗浄した吸着樹脂から、胆汁酸吸着成分を溶出させる工程の後に、該胆汁酸吸着成分を含む溶液を濃縮する工程、を包含する項目1に記載の胆汁酸吸着剤の製造方法。
(項目4) 前記(a)工程で使用する含水アルコール中のアルコールの容量%が、30容量%〜90容量%である項目1に記載の胆汁酸吸着剤の製造方法。
(項目5) 前記(c)工程で使用する洗浄液が、水とアルコールとの混合物であり、該アルコールの容量%が、10容量%〜60容量%である項目1に記載の胆汁酸吸着剤の製造方法。
(項目6) 前記(d)工程で使用する溶出液が、水とアルコールとの混合物であり、該アルコールの容量%が、60容量%〜99容量%である項目1に記載の胆汁酸吸着剤の製造方法。
(項目7) 項目1に記載の方法によって得られる胆汁酸吸着剤であって、サポニンを20〜50重量%、イソフラボンを10〜30重量%含有する胆汁酸吸着剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、安価で簡便な方法により、胆汁酸吸着作用がある(コレステロール値低下作用が期待できる)胆汁酸吸着剤を醤油粕から得ることができる。この胆汁酸吸着剤の主な成分はサポニン(約40%)およびイソフラボン(約20%)である。本発明においては食品素材、医薬品素材などとして利用する上で問題になる溶媒を使用していないため、得られる胆汁酸吸着剤は食品素材、医薬品素材として非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本明細書において使用される用語は、特に言及されない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術語は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0018】
本明細書において、「胆汁酸吸着剤」とは、胆汁酸(グリココール酸、タウロコール酸等)に吸着し、不溶化させるものを言う。
【0019】
本明細書において、「醤油粕」とは、醤油の製造工程で大豆などの醤油原料から醤油を絞った後に残る副産物である。醤油原料に用いられる大豆は、当該分野で通常使用される大豆であり得る。醤油原料に用いられる大豆の例としては、丸大豆、脱皮大豆および脱脂大豆が挙げられる。醤油粕は、醤油を絞った直後のような湿った状態のものであってもよく、一旦乾燥したものであってもよい。
【0020】
本発明の方法は、(a)醤油粕を含水アルコールと接触させて、胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を得る工程を包含する。
【0021】
この工程に用いられる含水アルコールとは、水とアルコールの混合物であり、任意のアルコールを使用することができる。アルコールは好ましくは食用可能なアルコールであり、より好ましくはエタノールである。
【0022】
含水アルコールは、水と純粋なアルコールの混合物であっても、水と2種以上のアルコールの混合物であってもよい。水とアルコールとの混合比は、胆汁酸吸着成分を効率よく抽出できれば任意の比率であってよく、適宜選ぶことができる。含水アルコール中のアルコールの容量%は、例えば約30容量%以上であり、好ましくは約40容量%以上、さらに好ましくは約50容量%以上である。含水アルコール中のアルコールの容量%は、例えば約90容量%以下であり、好ましくは約80容量%以下、さらに好ましくは約70容量%以下である。アルコールの容量%が低すぎると、胆汁酸吸着成分の抽出が充分でない場合がある。アルコールの容量%が高すぎると、胆汁酸吸着成分の抽出が充分でない場合がある。
【0023】
抽出の際に用いる含水アルコールの量は、胆汁酸吸着成分を効率よく抽出できる量であればいかなる量でもよく、適宜選ぶことが出来る。含水アルコールの量(重量)は、例えば、醤油粕の重量の約1倍量以上であり、好ましくは約2倍量以上である。含水アルコールの量に上限は特にないが、例えば、醤油粕の重量の約20倍量以下であり、好ましくは約10倍量以下である。含水アルコールの量が少なすぎると、胆汁酸吸着成分を充分に抽出できない場合がある。含水アルコールの量が多すぎると、濃縮処理に負担がかかりすぎる場合がある。
【0024】
抽出の方法としては、バッチ法、カラム法などを適宜用いることができる。例えば、醤油粕を適切な容器に入れ、含水アルコールを添加し、撹拌後、濾過等によって抽出液を得る方法(バッチ法)、醤油粕をカラムに充填し、上部から含水アルコールを通過させることによって抽出液を得る方法(カラム法)等を用いることが出来る。バッチ法においては、必要に応じて同様の操作を繰り返すことにより、胆汁酸吸着成分の抽出量を上げることも可能である。
【0025】
このように、醤油粕を含水アルコールと接触させることにより、胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液が得られる。
【0026】
本発明の方法は、任意に、胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を濃縮する工程を包含することができる。
【0027】
濃縮は任意の方法によって行われる。例えば、加熱法、逆浸透法、減圧濃縮法等である。
【0028】
このように、胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を濃縮することにより、胆汁酸吸着成分を含む濃縮された粗抽出液が得られる。
【0029】
本発明の方法は、(b)胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を吸着樹脂に添加し、胆汁酸吸着成分等を吸着させる工程を包含する。
【0030】
吸着樹脂は任意のものを選択することが出来る。例えばダイヤイオンHP-20、セパビーズSP-850(それぞれ三菱化学社製)、アンバーライトXAD(ローム・アンド・ハース社製)等である。
【0031】
吸着方法としては、バッチ法、カラム法などを適宜用いることができる。例えば、吸着樹脂を適切な容器に入れ、粗抽出液を添加し、撹拌して胆汁酸吸着成分等を吸着させる方法(バッチ法)、吸着樹脂をカラムに充填し、上部から粗抽出液を通過させることによって胆汁酸吸着成分等を吸着させる方法(カラム法)等を用いることが出来る。
【0032】
本発明の方法は、(c)胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を添加した吸着樹脂から、胆汁酸非吸着成分を洗浄する工程を包含する。
【0033】
洗浄方法としては、バッチ法、カラム法などを適宜用いることができる。例えば、粗抽出液を添加した吸着樹脂を適切な容器に入れ、洗浄液を添加し、撹拌後、濾過等によって胆汁酸非吸着成分を洗浄する方法(バッチ法)、粗抽出液を添加した吸着樹脂を充填したカラムの上部から洗浄液を通過させることによって胆汁酸非吸着成分を洗浄する方法(カラム法)等を用いることが出来る。
【0034】
この工程に用いられる洗浄液とは、水とアルコールの混合物であり、任意のアルコールを使用することができる。アルコールは好ましくは食用可能なアルコールであり、より好ましくはエタノールである。
【0035】
洗浄液は、水と純粋なアルコールの混合物であっても、水と2種以上のアルコールの混合物であってもよい。水とアルコールとの混合比は、胆汁酸非吸着成分を効率よく洗浄できれば任意の比率であってよく、適宜選ぶことができる。
【0036】
洗浄液のアルコールの容量%は、例えば約10容量%以上であり、好ましくは約20容量%以上、さらに好ましくは約30容量%以上である。洗浄液中のアルコールの容量%は、例えば約60容量%以下であり、好ましくは約50容量%以下、さらに好ましくは約40容量%以下である。アルコールの容量%が低すぎると、洗浄が充分になされない場合がある。アルコールの容量%が高すぎると、洗浄と同時に胆汁酸吸着成分が溶出してしまう場合がある。
【0037】
洗浄液の量(重量)は、例えば、吸着樹脂の重量の約1倍量以上であり、好ましくは約5倍量以上である。洗浄液の量に上限は特にないが、例えば、吸着樹脂の重量の約30倍量以下であり、好ましくは約20倍量以下である。洗浄液の量が少なすぎると、洗浄が充分になされない場合がある。洗浄液の量が多すぎると、洗浄と同時に胆汁酸吸着成分が溶出してしまう場合がある。
【0038】
本発明の方法は、(d)胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を添加し、胆汁酸非吸着成分を洗浄した吸着樹脂から、胆汁酸吸着成分を溶出させる工程を包含する。
【0039】
溶出の方法としては、バッチ法、カラム法などを適宜用いることができる。例えば、粗抽出液を添加し、胆汁酸非吸着成分を洗浄した吸着樹脂を適切な容器に入れ、溶出液を添加し、撹拌後、濾過等によって胆汁酸吸着成分を含む溶液を得る方法(バッチ法)、粗抽出液を添加し、胆汁酸非吸着成分を洗浄した吸着樹脂をカラムに充填し、上部から溶出液を通過させることによって胆汁酸吸着成分を含む溶液を得る方法(カラム法)等を用いることが出来る。バッチ法においては、必要に応じて同様の操作を繰り返すことにより、胆汁酸吸着成分を含む溶液の溶出量を上げることも可能である。
【0040】
この工程に用いられる溶出液とは、水とアルコールの混合物であり、任意のアルコールを使用することができる。アルコールは好ましくは食用可能なアルコールであり、より好ましくはエタノールである。
【0041】
溶出液は、水と純粋なアルコールの混合物であっても、水と2種以上のアルコールの混合物であってもよい。水とアルコールとの混合比は、胆汁酸吸着成分を効率よく溶出できれば任意の比率であってよく、適宜選ぶことができる。溶出液のアルコールの容量%は、例えば約60容量%以上であり、好ましくは約70容量%以上、さらに好ましくは約80容量%以上である。洗浄液中のアルコールの容量%は、例えば約99容量%以下であり、好ましくは約95容量%以下、さらに好ましくは約90容量%以下である。アルコールの容量%が低すぎると、溶出が充分になされない場合がある。アルコールの容量%が高すぎると、胆汁酸吸着成分以外の成分が多く溶出される場合がある。
【0042】
溶出液の量(重量)は、例えば、吸着樹脂の重量の約1倍量以上であり、好ましくは約2倍量以上である。溶出液の量に上限は特にないが、例えば、吸着樹脂の重量の約10倍量以下であり、好ましくは約5倍量以下である。溶出液の量が少なすぎると、溶出が充分になされない場合がある。溶出液の量が多すぎると、胆汁酸吸着成分以外の成分が多く溶出される場合がある。
【0043】
このようにして、粗抽出液を吸着樹脂で精製することにより、胆汁酸吸着成分を高濃度に含む溶出液が得られる。
【0044】
本発明の方法は、任意に、胆汁酸吸着成分を含む溶液を濃縮する工程を包含することができる。
【0045】
濃縮は任意の方法によって行われる。例えば、加熱法、逆浸透法、減圧濃縮法等である。
【0046】
このように、胆汁酸吸着成分を含む溶出液を濃縮することにより、胆汁酸吸着成分を高濃度に含む濃縮された溶出液が得られる。
本発明の方法は、(e)胆汁酸吸着成分を含む溶出液を粉末化する工程を包含する。
【0047】
乾燥は任意の方法によって行われる。例えば噴霧乾燥、凍結乾燥等によって粉末化することができる。また、乾燥の際には任意の賦形剤を使用することができる。
【0048】
このように醤油粕からエタノール抽出、吸着樹脂カラム精製を行うことにより、胆汁酸吸着作用のある製剤を製造することができる。
【0049】
得られた製剤は、主な成分として、サポニンおよびアグリコン型イソフラボンを含有し、典型的には、サポニンを20〜50重量%、アグリコン型イソフラボンを10〜30重量%含有する。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
脱脂大豆を原料として製造された醤油の副産物である醤油粕20kg(体積48L;水分含量27重量%;塩分濃度7.8重量%)に60%エタノール200Lを添加し、混合攪拌後、加圧濾過し、粗抽出液200Lを得た。得られた粗抽出液200Lを100Lまで減圧濃縮し、吸着樹脂(三菱化学社製ダイヤイオンHP-20)を充填したカラム(内容積16L、30%エタノールで平衡化)に添加した。
【0051】
次に、30%エタノール240Lを通液しカラムを洗浄した後、90%エタノール160Lを通液して溶出を行い、胆汁酸吸着成分を含む画分約10Lを採取した。この溶出液を3Lに減圧濃縮後、噴霧乾燥を行い、胆汁酸吸着成分を含有する粉末約50gを得た。得られた粉末はサポニンを38%、アグリコン型イソフラボンを24%含有していた。
(実施例2)
上記方法で得られた胆汁酸吸着剤の胆汁酸吸着能を測定した。
【0052】
約0.5mmol/Lのタウロコール酸ナトリウム溶液(10mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.8))0.8mlに上記方法で製造した胆汁酸吸着剤を2,5,10mgずつ懸濁し、37℃で2.5時間保温した。10,000×g、4℃で5分間遠心分離後、上清中の胆汁酸濃度を総胆汁酸テストワコー(和光純薬製)を用いて測定した。得られた胆汁酸濃度を、胆汁酸吸着剤を添加しない試験区と比較し、胆汁酸吸着率を求めた。結果は以下の表の通りであった。
【0053】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明により、醤油醸造の際の副産物であり廃棄物である醤油粕から、有用な胆汁酸吸着成分を簡便に抽出および精製することができる。得られる胆汁酸吸着剤は、食品、医薬品、健康食品などの素材として利用するに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)醤油粕を含水アルコールと接触させて、胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を得る工程、
(b)該胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を吸着樹脂に添加し、胆汁酸吸着成分を吸着させる工程、
(c)該胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を添加した吸着樹脂から、胆汁酸非吸着成分を洗浄する工程、
(d)該胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を添加し、胆汁酸非吸着成分を洗浄した吸着樹脂から、胆汁酸吸着成分を溶出させる工程、
および
(e)該胆汁酸吸着成分を含む溶出液を粉末化する工程、
を包含する胆汁酸吸着剤の製造方法。
【請求項2】
前記(a)醤油粕を含水アルコールと接触させて、胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を得る工程の後に、該胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を濃縮する工程、を包含する請求項1に記載の胆汁酸吸着剤の製造方法。
【請求項3】
前記(d)胆汁酸吸着成分を含む粗抽出液を添加し、胆汁酸非吸着成分を洗浄した吸着樹脂から、胆汁酸吸着成分を溶出させる工程の後に、該胆汁酸吸着成分を含む溶液を濃縮する工程、を包含する請求項1に記載の胆汁酸吸着剤の製造方法。
【請求項4】
前記(a)工程で使用する含水アルコール中のアルコールの容量%が、30容量%〜90容量%である請求項1に記載の胆汁酸吸着剤の製造方法。
【請求項5】
前記(c)工程で使用する洗浄液が、水とアルコールとの混合物であり、該アルコールの容量%が、10容量%〜60容量%である請求項1に記載の胆汁酸吸着剤の製造方法。
【請求項6】
前記(d)工程で使用する溶出液が、水とアルコールとの混合物であり、該アルコールの容量%が、60容量%〜99容量%である請求項1に記載の胆汁酸吸着剤の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法によって得られる胆汁酸吸着剤であって、サポニンを20〜50重量%、イソフラボンを10〜30重量%含有する胆汁酸吸着剤。

【公開番号】特開2011−116679(P2011−116679A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273978(P2009−273978)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
【出願人】(504163106)大野醤油醸造協業組合 (1)
【出願人】(000132172)株式会社スギヨ (23)
【Fターム(参考)】