説明

胸腺腫の治療のためのキナーゼ阻害剤の使用

本発明は、胸腺腫及び胸腺癌の治療において使用するための式(I)


を有する低分子量ATP競合性CDK阻害剤及びTRKA阻害剤を提供する。前記化合物は1つ以上の細胞傷害性または細胞増殖抑制性物質と一緒に投与され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子量ATP競合性CDK(サイクリン依存性キナーゼ)及びトロポミオシン関連キナーゼA(TRKA)阻害剤の使用による胸腺腫及び胸腺癌患者の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
胸腺腫はまれな腫瘍であるが、前縦隔コンパートメントの最も一般的な新生物である。米国(1973〜1998)での悪性胸腺腫の全発症率は0.15人/100000人/年(849症例)である[ソース:“Malignant thymoma in the United States:demographic patterns in incidence and associations with subsequent malignancies”,Int.J.Cancer,2003;105(4):546−51]。胸腺腫は無痛増殖すると考えられているが、局所的侵襲、複数の播種及び遠隔転移の可能性を有している。局所的に進行または播種した胸腺腫を有する患者は通常症候性であり、胸痛、息切れ、横隔神経の麻痺、胸膜浸出及び上大静脈症候群を呈している。免疫障害も胸腺腫に関係しており、重症筋無力症が最も一般的である(Wright C.,Management of thymomas,Crit.Rev.Oncol.Hematol.,2008;65(2):109−20)。胸腺癌は通常診断時に進行しており、他の胸腺腫に比してより高い再発率及び悪い予後(生存率)を有している(NCI PDQ[Physician Data Query(医師データ照合)](登録商標),最終更新日05/08/2008)。
【0003】
TRKAは胸腺腫の生物学において重要な役割を発揮すると見られる。実際、ニューロトロフィン受容体の発現がかなり多くの患者(99患者)の胸腺上皮腫瘍で明確に立証された(Kim DJ,Yang WI,Kim SH,Park IK,Chung KY,Expression of neurotrophin receptors in surgically resected thymic epithelial tumors,Eur.J.Cardiothorac.Surg.,2005;28(4):611−6)。この研究で、TRKA発現のパターンをWHO分類に従って胸腺腫の組織学的サブタイプについて分析した。すべての腫瘍タイプ(すなわち、A、AB、B1、B2、B3、C)が(免疫染色により)TRKAの存在及び腫瘍の比率を明白に示すことが判明し、強い免疫反応性がタイプAからタイプCに徐々に増加することが立証された。逆に、いずれのタイプの胸腺腫もTRKBまたはTRKC免疫反応性を示し、よってこの疾患におけるTRKAに対する(いずれにしても更に解明されるであろう)特有の役割が示唆される。
【0004】
胸腺腫の上記したWHO組織学的分類の他に、マサオカステージングシステムがこの疾患に対する最適の治療はその臨床期に依存するので侵襲性を評価し且つ治療選択の根拠とするために一般的に使用されている(NCI PDQ[Physician Data Query(医師データ照合)](登録商標),最終更新日05/08/2008)。多くの症例で早期胸腺腫は局在しているので、手術(場合により放射線治療を伴う)がこの疾患の治療の主流である。放射線及び化学療法は通常補助及び緩和処置として広く適用されている(Kondo K.,Optimal therapy for thymoma,J.Med.Invest.,2008;55(1−2):17−28)。進行性侵襲性胸腺腫(例えば、大血管侵襲、胸膜及び/または心膜播種、リンパ節併発または遠隔転移を有する腫瘍)は通常外科的切除または放射線治療だけでは管理不能である(Yokoi K,Matsuguma H,Nakahara R,Kondo T,Kamiyama Y,Mori Kら,Multidisciplinary treatment for advanced invasive thymoma with cisplatin、doxorubicin、and methylprednisolone,J.Thorac.Oncol.,2007;2(1):73−8)。局所的に進行または転移している胸腺腫はしばしば放射線と化学療法を含めた併用治療モダリティーで治療されている。胸腺腫は一般的に化学療法感受性腫瘍である。実際、化学療法が切除不能、再発性または転移性胸腺腫に対して高い抗腫瘍活性を有しており、平均して患者の2/3で全体的に客観的な応答及び1/3で完全緩解が生じたことが分かった。シスプラチン/ドキソルビシンに基づく併用化学療法[PACレジメン(シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド)またはADOCレジメン(ドキソルビシン、シスプラチン、ビンクリスチン、シクロホスファミド)]は最良の全体的な応答率及び生存率を与えるようである。シスプラチン、エトポシド、イホスファミド、エピルビシン、メイタンシン及びステロイドを用いる他の併用及び/または単剤化学療法も使用されている(Kondo K.,2008,上記を参照されたい)。いずれにしても最適の治療戦略はまだ決定されず、他の薬物は進行性侵襲性腫瘍を有する患者の結果を改良するために認可されている(Yokoi K,2007)。
【0005】
従って、胸腺腫、特に胸腺癌を治療するための新しい強力な物質に対する医学的要求は満たされていない。本発明はこの問題に対処する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Int.J.Cancer,2003;105(4):546−51
【非特許文献2】Crit.Rev.Oncol.Hematol.,2008;65(2):109−20
【非特許文献3】Eur.J.Cardiothorac.Surg.,2005;28(4):611−6
【非特許文献4】J.Med.Invest.,2008;55(1−2):17−28
【非特許文献5】J.Thorac.Oncol.,2007;2(1):73−8
【発明の概要】
【0007】
本発明は、CDK(特に、CDK2/サイクリンA複合体)及びTRKAシグナル伝達経路を抑制することができ、胸腺腫、特に胸腺癌の増殖の抑制に有効である低分子量化合物を提供する。
【0008】
所望活性を示す本発明の化合物は、タンパク質キナーゼのATPポケットを標的するように設計されたピラゾロキナゾリンである。前記化合物はCDKの強力なATP競合性阻害剤であると判明した。前記化合物はTRKAに対しても著しい阻害能力を示すことが判明した。
【0009】
本発明の化合物は、その生物学的活性にてらして胸腺腫及び胸腺癌を患っている患者集団に対する治療の開発に対して新しい方針を与える。
【0010】
実際、フェーズI研究で2人の胸腺癌患者は客観的腫瘍応答を得た。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の態様で、本発明は、胸腺腫の治療方法において使用するための式(I)
【0012】
【化1】

を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩に関する。
【0013】
本明細書中で使用されている用語「胸腺腫」は、1999 WHO分類により示される6つの組織学的カテゴリー(タイプA、AB、B1、B2、B3、C)(Rosai J,Sobin L.,Histological typing of tumors of the thymus,World Health Organization.International histological classification of tumours,Heidelberg:Springer−Verlag,1999)を含み、従って胸腺腫サブタイプB3を分化胸腺癌として分類し、胸腺腫サブタイプCを胸腺癌として分類する最新のWHO分類(2004)(Travis Wら編,Pathology and genetics of tumours of the lung、pleura,thymus and heart,World Health Organization classification of tumours,Lyon:IARC Press,2004)に従って「胸腺腫」及び「胸腺癌」組織学を含む。
【0014】
好ましい実施形態では、上記した式(I)を有する化合物を胸腺癌の治療方法において使用する。
【0015】
式(I)を有する化合物は化学名8−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニルアミノ]−1,4,4−トリメチル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−h]キナゾリン−3−カルボン酸メチルアミドを有する。この化合物はWO2004104007に記載されているように製造され得、タンパク質キナーゼ阻害活性を有し、よって抗腫瘍剤として治療において有用である。特に、式(I)を有する化合物の好ましい製造方法は上に挙げた国際特許出願の実施例58に記載されている。
【0016】
式(I)を有する化合物の医薬的に許容され得る塩には、無機または有機酸(例えば、硝酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、過塩素酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、クエン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、イセチオン酸及びサリチル酸等)との酸付加塩が含まれる。
【0017】
式(I)を有する化合物の考えられる異性体及びその混合物、並びにその代謝物及び医薬的に許容され得る生物前駆体(別称プロドラッグ)のすべての使用が特許請求されている発明の範囲内である。プロドラッグはインビボで式(I)を有する活性親薬物を放出する共役結合化合物である。
【0018】
被験者が式(I)に従う化合物での治療により恩恵を受ける疾患または望ましくない状態を有すると判定されると、該被験者に対して治療有効量の前記化合物が投与され得る。医療または臨床担当者が被験者の疾患または状態の診断の一部として前記判定をなし得る。前記化合物は前記状態の予防においても使用され得、被験者が1つ以上の状態を有する可能性を減らすと見られ得る。
【0019】
本明細書中で使用されている化合物の「治療有効量」は所期目的を達成するのに十分な量を指す。有効量の決定は所望効果の達成に基づいて当業者の裁量の範囲内である。有効量は複数の要因に依存するが、前記要因には被験者のサイズ及び/または被験者が罹患している疾患または望ましくない状態が進行している程度が含まれるが、これらに限定されない。有効量は化合物を被験者に対して1回または時間をかけて周期的に投与するかに依存する。
【0020】
本発明の式(I)を有する化合物は被験者を治療するために意図されている。本明細書中で使用されている用語「被験者」は哺乳動物及び非哺乳動物を包含する。哺乳動物の例には哺乳動物網のメンバー、すなわちヒト、ヒト以外の霊長類(例えば、チンパンジー、及び他の類人猿及び猿属);耕作用動物(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ);家畜(例えば、ウサギ、イヌ及びネコ);実験動物(例えば、ラット、マウス及びモルモットのような齧歯類)等が含まれるが、これらに限定されない。非哺乳動物の例には鳥類、魚類等が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
明細書中で使用されている用語「治療する」は治療効果を達成することを含む。治療効果とは、治療を受けている基礎疾患を根絶または改善させることを意味する。例えば、癌患者の場合、治療効果には基礎癌の根絶または改善が含まれる。また、治療効果は、患者は基礎疾患になお悩んでいるという事実があるが、患者で改善が見られるように基礎疾患に関連する1つ以上の生理学的症状の根絶または改善で達成される。
【0022】
本発明の別の目的は、胸腺腫の治療方法において使用するための(a)上に定義した式(I)を有する化合物及び(b)1つ以上の細胞傷害性または細胞増殖抑制性化学物質を含む治療用配合剤である。好ましくは、胸腺腫は胸腺癌である。
【0023】
細胞増殖抑制性または細胞傷害性化学物質の例には、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミドやイホスファミドのようなナイトロジェンマスタード)、アルキル化様剤(例えば、シスプラチンやカルボプラチンのような白金誘導体)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ドキソルビシンやエピルビシンのようなアントラサイクリン、及びエトポシドのようなポドフィロトキシン)、微小管阻害薬(例えば、タキサン、ビンクリスチン及びメイタンシン)、ステロイド、ホルモン剤、免疫薬、インターフェロンタイプ物質、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、COX−2阻害剤)、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、テロメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗増殖因子受容体剤、抗HER剤、抗EGFR剤、抗血管新生剤(例えば、血管新生阻害剤)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ras−rafシグナル伝達経路阻害剤、細胞サイクル阻害剤、他のcdks阻害剤、チューブリン結合剤、トポイソメラーゼI阻害剤等が含まれる。
【0024】
本発明は、胸腺腫、好ましくは胸腺癌の治療において使用するための上に定義した式(I)を有する化合物を医薬的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤と混合して含む医薬組成物にも関する。
【0025】
更なる実施形態で、本発明に従う医薬組成物は更に1つ以上の細胞傷害性または細胞増殖抑制性化学物質を含む。
【0026】
本発明の化合物を含有する医薬組成物は通常慣用方法に従って製造され、適切な医薬形態で投与される。
【0027】
例えば、固体経口形態は、活性化合物と一緒に希釈剤(例えば、ラクトース、デキストロース、サッカロース、スクロース、セルロース、トウモロコシデンプンまたはジャガイモデンプン);滑沢剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、及び/またはポリエチレングリコール);結合剤(例えば、澱粉、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン);崩壊剤(例えば、澱粉、アルギン酸、アルギネートまたはグリコール酸澱粉ナトリウム);飽和剤;染料;甘味料;湿潤剤(例えば、レシチン、ポリソルベート、ラウリルスルフェート);並びに通常、医薬製剤中に使用されている非毒性の医薬的に不活性の物質を含有し得る。これらの医薬製剤は公知の方法で、例えば混合、顆粒化、錠剤化、糖衣コーティングまたはフィルムコーティング方法を用いて製造され得る。
【0028】
経口投与用分散液は、例えばシロップ剤、エマルション剤または懸濁液剤であり得る。
【0029】
例えば、シロップ剤は、担体としてサッカロース、またはサッカロース+グリセリン及び/またはマンニトール及びソルビトールを含有し得る。
【0030】
懸濁液剤及びエマルション剤は、担体の例として天然ガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含有し得る。
【0031】
治療に使用する場合、式(I)を有する化合物を被験者に対して約10〜約400mg/mの体表面/日の用量レベルで投与する。約20〜200mg/mの用量レベルが特に適した範囲である。成人被験者の場合、約20〜約800mg/投与、より好ましくは約40〜約400mg/投与の用量の連続1〜28日間を非限定例として使用し得る。治療の好ましいスケジュールは、4週サイクルで3週間の間150mg/日で4日間治療した後、残りの3日間休薬することからなる。或いは、以下の治療スケジュールも適切である:2週サイクルで150mg/日の用量で7日間治療した後、残りの7日間休薬する。または、3週サイクルで48〜72mg/m/日(約80〜120mg/日に相当する)の用量で14日間治療した後、残りの7日間休薬する。上記した治療スケジュールは医学的兆候が現れるまで周期的に繰り返されると意図される。
【0032】
本明細書に開示されている用量よりも少ないまたは多い用量を所要により使用し得る。しかしながら、前記用量は多数の変数に依存して変更され得、前記変数には使用する化合物の活性、治療対象の状態、投与モード、治療レジメン、個々の被験者の要件、治療対象の状態の重症度及び担当医の判断が含まれるが、これらに限定されない。個々の治療レジメンに関する変数の数は多く、これらの推奨値から大きく逸脱することも一般的であるので、上記範囲は単なる示唆である。
【0033】
限定を加えることなく本発明を更に説明する目的で、ここに以下の実施例を提示する。
【実施例1】
【0034】
キナーゼについてのシンチレーション近傍アッセイ(SPA)フォーマット
本アッセイにより、試験化合物で得られる特定酵素のキナーゼ活性の阻害を調べることができる。異なるキナーゼを平行して試験することができる。
【0035】
ビオチニル化基質をγ33−ATPトレーサーを含めたATPの存在下で特定キナーゼによりトランス−リン酸化する。反応の終わりに、リン酸化した基質をストレプトアビジンを被覆したSPAビーズを用いて捕捉する。濃い5M CsCl溶液を添加し、混合物を4時間インキュベートする。こうすると、SPAビーズは取り込まれていない放射標識ATPを含有するCsCl溶液の上部に浮き上がる。
【0036】
リン酸化の程度をβ−カウンターを用いて調べる。このアッセイで、式(I)を有する化合物はCDK2/サイクリンA複合体に対して強力な阻害活性(IC5O=45nM)を示し、密接に関連するCDK、すなわちCDK1、CDK4及びCDK5に対しても活性(それぞれ、IC50=398、160及び265nM)を示し、トロポミオシン関連キナーゼA(TRKA)に対しても活性(IC50=53M)を示す。
【実施例2】
【0037】
胸腺癌患者で得られた客観的腫瘍応答
最初2002年5月に胸腺癌と診断され、2007年7月には肺への転移を伴う進行度3となり、2007年9月にフェーズI臨床トライアルに入った24才の女性患者で客観的腫瘍応答が得られた。4週サイクルで3週間の間4日間治療した後、残り3日間休薬する治療スケジュールで式(I)を有する化合物を150mgの1日用量で投与した。治療を10サイクル実施した後、患者は固形腫瘍のRECIST基準(Therasse P,Arbuck S,Eisenhauer EA,Wanders J,Kaplan RS,Rubinstein Lら,New guidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors,J.Natl.Cancer Inst.,2000;92(3):205−216)により部分的な腫瘍応答(PR)を示し、基準と比較して標的病巣の合計が31.2%低下した。PRは1ヶ月後確認され、第13サイクルまでに基準と比較して標的病巣の合計が37.6%低下したことが立証された。臨床トライアルで治療を受ける前、患者は胸腺癌のために次のように他の治療を受けていた。2005年1月〜2005年6月の間はアドリアマイシン(登録商標)、シトキサン(登録商標)、シスプラチン;2006年2月〜2006年5月の間はイホスファミド;2006年10月〜2007年6月の間はタキソール(登録商標)、カルボプラチン;2007年6月〜2007年7月の間はアドリアマイシン(登録商標)、シトキサン(登録商標)、ビンクリスチン。患者はまた2002年5月に手術を受け、2002年7月及び2006年7月に放射線治療を受けていた。
【実施例3】
【0038】
2番目の胸腺癌患者で得られた客観的腫瘍応答
最初2006年5月に胸腺癌と診断され、2007年10月には肺、骨及び腹膜に転移した62才の男性患者で別の客観的応答が得られた。この患者は2008年12月にフェーズI臨床トライアルの治療を始めた。4週サイクルで3週間の間4日間治療した後、残り3日間休薬する治療スケジュールで式(I)を有する化合物を150mgの1日用量で投与した。治療を6サイクル実施した後、患者はRECIST基準により部分的な腫瘍応答(PR)を示し、基準及び安定な非標的病巣と比較して標的病巣の合計が30%低下した。PRは1ヶ月後確認され、基準及び安定な非標的病巣と比較して標的病巣の合計が40%低下した。臨床トライアルで治療を受ける前、患者は2007年11月〜2008年3月の間に1ラインの化学療法(シスプラチン/ゲムシタビン)を受けた。2006年5月に手術を受け、2006年9月に放射線治療を受けた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸腺腫の治療方法において使用するための式(I)
【化1】

を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩。
【請求項2】
胸腺腫は胸腺癌である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
胸腺腫の治療方法において使用するための(a)請求項1に定義されている式(I)を有する化合物及び(b)1つ以上の細胞傷害性または細胞増殖抑制性化学物質を含む治療用配合剤。
【請求項4】
胸腺腫は胸腺癌である請求項3に記載の治療用配合剤。
【請求項5】
胸腺腫の治療において使用するための請求項1に定義されている式(I)を有する化合物を医薬的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤と混合して含む医薬組成物。
【請求項6】
胸腺腫の治療方法において使用するための1つ以上の細胞傷害性または細胞増殖抑制性化学物質を更に含む請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
胸腺腫は胸腺癌である請求項5または6のどちらか一項に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2012−520846(P2012−520846A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500209(P2012−500209)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053311
【国際公開番号】WO2010/106028
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(307012403)ネルビアーノ・メデイカル・サイエンシーズ・エツセ・エルレ・エルレ (55)
【Fターム(参考)】