説明

脂肪酸合成酵素(FASN)阻害剤としての新規ポリヒドロキシル化化合物

本発明は、新規ポリヒドロキシル化化合物、特に脂肪酸合成酵素(FASN)阻害剤としてのその活性、及びこれらの酵素の阻害剤が示す病的状態の処置への使用に関する。また本発明は、それらを含有する薬学的組成物、及びこのような化合物を調製する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシル化化合物、特に脂肪酸合成酵素(FASN)阻害剤としてのその活性、及びこれらの酵素の阻害剤が示す病的状態の処置への使用に関する。また本発明は、それらを含有する薬学的組成物、及びこのような化合物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸合成酵素(E.C.2.3.1.85、FASN)は、アセチル-CoA、マロニル-CoA及びNADPH前駆体からの長鎖脂肪酸のデノボ合成を触媒するのに必要とされる重要な脂質合成酵素である(Wakil, S.J.ら, Biochemistry 1989, 28, 4523-30)。正常細胞は、新規の構造的脂質の合成のために循環している食餌性脂肪酸を優先的に使用する。よってFASN発現は、一般的に、肝臓及び脂肪組織以外の正常なヒト組織においては検出不能な程低い。これに対して、高レベルのFASN発現が、乳房、前立腺、結腸、卵巣、子宮内膜、中皮、肺、甲状腺、胃及び脳を含む、数種の癌で観察されている(Kuhajda, F.Pら, Cancer Res. 2006, 66, 5977-80により概説)。ヒト癌におけるFASNの広汎な発現とその予後不良との関係が、脂肪酸合成が腫瘍増殖に有利であり、抗腫瘍剤開発の有望な標的となりうることを示唆する。
【0003】
腫瘍細胞におけるFASN機能の喪失を研究するためにFASNの薬理学的阻害が使用されている。FASNの新規阻害剤の同定には、かなりの関心が寄せられている。最初に同定されたのは、セルレニン、つまり真菌Cephalosporium ceruleansの天然の抗生物質である(Omuraら, Bacteriol. Rev. 1976, 40, 681-97)。セルレニンによるFASN阻害はアポトーシス癌細胞死を生じることが報告されている(Menendez, J.Aら, Proc. Nat. Acad. Sci. 2004, 101, 10715-20)。しかしながら、セルレニンは不安定であるので、インビボ抗腫瘍剤としては不適切なものである。最近、より高い安定性を有するセルレニンに関連した合成誘導体である化合物C75((2R,3S)-4-メチレン-2-オクチル-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボン酸)の抗腫瘍効果が試験されている(Kuhajda, F.Pら, Proc. Nat. Acad. Sci. 2000, 97, 3450-4)。C75を使用するFASN阻害は、インビトロにおいて種々の腫瘍細胞株に対して細胞毒性であり、癌細胞の異種移植片及びインビボでのトランスジェニックマウスに対して増殖阻害効果もまた示す。しかしながら、インビボ抗腫瘍剤としてのC75の使用は、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-1(CPT-1)β-酸化の刺激に関連していると思われる用量依存性拒食症により制限される(Nicot, Cら, Biochem. Biophys. Res. Comm. 2004, 325, 2745-7)。高レベルのマロニル-CoA及びCPT-1阻害は、FASN阻害が腫瘍細胞死を生じせしめる機序を示すかも知れないことが推論されている。インビボ抗腫瘍活性を有する他の新規FASN阻害剤は、肥満症の処置に使用されるFDA-承認薬のβ-ラクトンオルリスタット(Kridelら, Cancer Res. 2004, 64, 2070-5)である。しかしながら、オルリスタットは、極めて低い経口生物学的利用能を有するため、腫瘍を処置するための新規な製剤が必要とされている。
【0004】
緑茶の主要なポリフェノールカテキンである(-)-エピガロカテキン-3-ガラート(EGCG)と、他の自然に生じるフラボノイド類(ルテオリン、ケルセチン及びケンフェロール)はFASNを阻害し、インビトロにおいていくつかの腫瘍細胞株のアポトーシスを誘導し、動物モデルにおける腫瘍サイズを低減させることが最近報告されている(Brusselmans, Kら, J. Biol. Chem. 2005, 280, 5636-45)。我々は、EGCGが、C75により示される全ての細胞性、機能性及び分子的抗腫瘍効果を達成するが、CPT-1活性を調節しないことを最近報告した。よって、EGCGは、C75投与に関連しているインビボでの減量経路を、おそらくは回避する。しかしながら、インビボにおけるEGCGの効果は、FASNを過剰発現している癌細胞では、その高IC50値のために限定されており(EGCGの阻害能はC75及びセルレニより4倍低い)、インビボ投与に対しては、明らかに高用量が必要である。さらに、EGCGはNakagawa Kにより証明されているように、生物学的利用能が乏しいことが示されている(Nakagawa, Kら, Anal. Biochem. 1997, 248, 41-9)。この研究では、56mgのEGCGを経口投与した後、0.012%のEGCGのみがラットに吸収されたことが示されている。この低吸収性は、中性又はアルカリ性溶液中においてEGCGの安定性が乏しさが原因である。腸及び体液のpH値は、中性か又はわずかにアルカリ性であるため、緑茶カテキンはヒト体内で不安定であり、よって生物学的利用能の低下に至る。
【0005】
また、脂肪酸代謝の調節を利用して食物の取込を阻害することも知られている。元々、FASN阻害剤として設計されたC75は、痩せたマウス、食餌性肥満(DIC)のマウス、レプチン欠損(ob/ob)マウス、及び正常な痩せたマウスに、かなりの可逆的な減量を生じさせ、マウスモデルでは24時間以内に体重の12%までが失われる結果となった(Kuhajda, Fら, Trends Pharmacol. Sci. 2005, 26, 541-4)。欧州特許第0869784-B1号は、有意な毒性なしに減量及び/又は脂肪細胞質量の低減を達成するための、ここに記載したものとは構造的に関連していないFASN阻害剤の使用に関する。
【0006】
FASN阻害剤は、減量を誘発し、以前から存在している癌細胞の成長を阻害するための薬剤として開示されている。例えば、欧州特許出願公開第0869784号には、FASN阻害剤のあるクラス(γ-置換-α-メチレン-β-カルボキシ-γ-ブチロラクトン化合物)を投与することにより、減量を誘発させる方法が開示されている。また、欧州特許第0869784号には、これらの化合物が前から存在している癌細胞の増殖を阻害するのに有用であることが開示されている。
欧州特許出願公開第651636号には、癌細胞に対しては選択的に細胞毒性があるが、他の種類の非形質転換(正常)細胞に対してはそうではない用量でFASN阻害剤を投与することにより、前から存在している癌を処置する方法が開示されている。
J. Chem. Soc. Perkin Transl. 1, 1996: 7: 649-656には、ポリエステルデンドリマーの合成法が開示されており、そこでは、化合物2,6-ビス[(3,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレンに言及されている。何の生物学的活性も挙げられていない。
【0007】
要約すると、FASN阻害剤が、減量を誘導し、前から存在している癌細胞の増殖を阻害するための薬剤として有用であることを示す強力な証拠が存在する。よって、新規のFASN阻害剤の発見は、これらの疾患又は病気の治療において興味をもたれている。
【発明の概要】
【0008】
本発明者は、CPT-1活性を同時に刺激することなくFASNの有意な阻害を示す一連の新規ポリヒドロキシル化化合物を提供した。実施例に示すように、癌細胞の増殖及びシグナル伝達経路におけるそれらの効果を試験した。細胞増殖、脂肪酸の代謝経路(FASN及びCPT-1活性)、アポトーシス誘導性(ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の切断により評価)及び細胞シグナル伝達(HER2、ERK1/2及びAKTカスケード)を評価した。結果は、本発明の化合物はFASN阻害剤であり、これら化合物が、減量を誘発し、ヒトを含む哺乳動物において前から存在している癌細胞の増殖を阻害するための処置として有用であることを示すものである。
【0009】
よって、本発明の第1の態様によれば、式(I)

[上式中:
、R、R、R、R、R、R及びRは独立して、H、(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、NH、(C-C)アルキルエステル、CONH、(C-C)アルキルアミド、CF、及びヒドロキシルからなる群から選択され;
Y及びZはそれぞれ独立して、C及びNから選択され;
Xは、各環が5−6員、好ましくは6員で、芳香族又は部分的に不飽和の、分離又は縮合した環である2−3の環を含む既知の環系の一つから誘導されるビラジカルであり;各環は、(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、NH、(C-C)アルキルエステル、CONH及び(C-C)アルキルアミドからなる群から選択される一又は複数の基で置換されていてもよく;環員の各一が、C、N、O及びSから独立して選択され;
但し、Xは、クロマン、アントラセン、式:

のビラジカル、又は化合物2,6-ビス[(3,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレンではない]
のポリヒドロキシル化化合物、その立体異性体、その薬学的に許容可能な塩、又はその薬学的に許容可能な溶媒和物が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様は、適切な量の薬学的に許容可能な希釈剤又は担体と組合せて、Xがクロマン又は

ではない有効量の式(I)の化合物、その立体異性体、その薬学的に許容可能な塩、又はその薬学的に許容可能な溶媒和物を含有する薬学的組成物に関する。
【0011】
また本発明は、ヒトを含む哺乳動物において、FASNにより媒介される非常に広範囲の疾患、及び関連する臨床的兆候の処置及び/又は予防用の医薬を製造するための上述した薬学的組成物であって、このような疾患が癌及び肥満症から選択される薬学的組成物に関する。
従って、本発明の第3の態様は、ヒトを含む哺乳動物において、FASNにより媒介される疾患、及び関連する臨床的兆候の処置及び/又は予防用の医薬を製造するための、Xがクロマン又は

ではない上述した式(I)の化合物、その立体異性体、その薬学的に許容可能な塩、又はその薬学的に許容可能な溶媒和物の使用に関する。好ましくは、このようなFASNにより媒介される疾患は、癌又は肥満症である。
この第3の態様は、適切な量の薬学的に許容可能な希釈剤又は担体と組合せて、Xがクロマン又は

ではない治療的有効量の式(I)の化合物を患者に投与することを含む、上述の疾患のいずれかに罹患した、又は罹患しやすい、ヒトを含む哺乳動物を処置及び/又は予防する方法として構成される。
【0012】
本発明の第4の態様は、Xがクロマン、アントラセン、又は

ではない上述した式(I)の化合物を調製する方法であって、
a)式(II)

[上式中、Xは上述したものである]
のジヒドロキシ誘導体を、式(III)及び(IV)

[上式中、Y、Z及びR-Rは上述したものであり;Gp及びGpはそれぞれ独立して、ヒドロキシル保護基である]
のカルボン酸と反応させ、式(V)の保護された中間生成物を得;
b)中間生成物(V)

[上式中、Gp、Gp及びR-Rは上述したものである]
を脱保護して、式(I)の最終化合物を得る
工程を含む方法に関する。
【0013】
場合によっては、化合物が得られたら直ぐに、それを、当該分野で知られている一般的な方法により、その薬学的に許容可能な塩に変換させることができる。
場合によっては、化合物又はその薬学的に許容可能な塩が得られたら直ぐに、それを、当該分野で知られている方法を使用してそのプロドラッグに変換させることができる。例えば、本発明の化合物は、一又は複数のヒドロキシ基をエステルに転換させることによって、プロドラッグに変換させることができる。
【0014】
Xがクロマン、アントラセン、又は

である式(I)の化合物は、同様な方法で調製することができる。
【0015】
本方法の工程(a)及び(b)の双方をスキーム1に示す。

【0016】
本発明は、さらに上述した薬学的組成物、再構成剤、及び癌の処置又は予防のための組合せた各作用物質(アクター)を使用するための使用説明書を収容する別個の容器を含むキットを提供する。また再構成法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者は、驚くべきことに、顕著なFASN阻害活性を示す化合物のあるクラスを同定した。
【0018】
定義
本発明の詳細な実施態様の検討の前に、本発明の主要な態様に関連する特定の用語の定義を提供する。
波線は、部分の結合点を示す。
ここで使用される「薬学的に許容可能な塩」なる用語は、有機及び無機酸から誘導される塩を意味する。一般式(I)の化合物は、常法により、その薬学的に許容可能な塩、又はその薬学的に許容可能な溶媒和物に転換されうる。例えば、このような塩は、所望する薬学的に許容可能な金属水酸化物又は他の金属塩基の水溶液で、一又は複数の化合物を処理し、好ましくは窒素雰囲気における減圧下で、得られた溶液を蒸発乾固させることにより調製されうる。また、式(I)の化合物の溶液を、所望する金属のアルコキシドと混合し、逐次、溶液を蒸発乾固させてもよい。薬学的に許容可能な水酸化物、塩基及びアルコキシドには、(限定されるものではないが)カリウム、ナトリウム、アンモニウム、カルシウム、及びマグネシウムを含む、この目的にとって価値のあるカチオンのものが含まれる。他の代表的な薬学的に許容可能な塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、プロピオン酸塩、硝酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、及び類似した既知の許容可能な塩が含まれる。しかしながら、製薬的に許容可能ではない塩も、薬学的に許容可能な塩の調製に有用である場合があるため、本発明の範囲に含まれることが理解される。
【0019】
ここで使用される「(C-C)-アルキル」なる用語は、1〜4の炭化水素原子を有する飽和した分枝状又は直鎖状の炭化水素鎖を意味する。好ましくは、「(C-C)-アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル及びt-ブチルから選択される未置換基である。
ここで使用される「(C-C)-アルコキシ」なる用語は、酸素に結合した1〜4の炭化水素原子を有する飽和した分枝状又は直鎖状の炭化水素鎖(すなわち、上述した(C-C)-アルキル基)、よって(C-C)-アルキル-Oを意味する。好ましくは、「(C-C)-アルコキシ」は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、及びt-ブトキシから選択される未置換基である。
【0020】
「ハロゲン」なる用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含むことを意味する。
「溶媒和物」なる用語は、一又は複数の溶媒分子と、この発明の化合物と物理的に結合したものを意味する。この物理的結合には、水素結合が含まれる。ある例において、溶媒和物は、結晶性固体の結晶格子に、一又は複数の溶媒分子が組み込まれた場合に単離可能である。「溶媒和物」は溶液相及び単離可能な溶媒和物の双方を含む。代表的な溶媒和物には、水和物、エタノラート類、メタノラート類等が含まれる。
【0021】
「保護基」なる用語は、一又は複数の化学合成工程に参加し又は干渉する活性部分又は基を保護又は防止する化学部分又は基を意味し、それを除去することで、該部分は、その元々の活性状態に復元する。ここで使用される保護基なる用語は、合成手順中、所望しない反応から保護することを意図した基を意味する。このような保護基は当業者によく知られている。保護基の具体例は、Greenら,「Protective Groups in Organic Chemistry」(Wiley, 第2版. 1991), McOmieら,「Protective Groups in Organic Chemistry」(Plenam Press, New York, 1973)、及びHarrisonら,「Compendium of Synthetic Organic Methods」, Vols. 1-8(John Wiley and Sons, 1971-1996)に見出すことができる。保護基は、酸、塩基、フッ素イオン、水素化、金属、例えば亜鉛を用いて、同様に当該分野でよく知られている数々の他の方法により除去することができる。当業者であれば、過度の実験をすることなく、本発明の方法論的態様に従い、合成反応を促進させるための適切な保護基を容易に選択できるであろう。代表的なアミノ保護基には、限定されるものではないが、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBz」)、tert-ブトキシカルボニル(「BOC」)、トリメチルシリル(「TMS」)、terc-ブチルジメチルシリル(「TBS」)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(「SES」)、トリチル及び置換されたトリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロ-ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)等が含まれる。代表的なヒドロキシ保護基には、限定されるものではないが、ヒドロキシ基がアシル化又はアルキル化されるもの、例えばベンジル(Bn)、及びトリチルエーテル、並びにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル、及びアリルエーテルが含まれる。Bn基又はトリアルキルシリルエーテルが、ヒドロキシルの保護に対して好ましい基である。
【0022】
ここで使用される場合、「癌の発症」なる用語は、癌細胞の最初の出現を意味すると理解される。「癌細胞」とは、自己増殖特性を有し、隣接する組織に侵入する細胞を意味する。
ここで使用される場合、「それを必要とする被験者」なる用語は、前癌期であると診断され、癌を発症しており、又は遺伝的又はそうではないが疾患を発症する素因を有しているおそれのある被験者を含むと理解される。あるいは、肥満症の患者であると診断されており、又は遺伝的又はそうではないが疾患を発症する素因を有しているおそれがあり、減量が示され又は示される可能性のある被験者を含む。
ここで使用される場合、「阻害」なる用語は、例えば前癌期細胞においてアポトーシス(すなわち、プログラムされた細胞死)を刺激し、誘導し又は誘引させることにより、癌の発症を予防し、抑制し、妨害し、ブロックし又は遅延化させることを意味すると理解される。
【0023】
ここで使用される「FASNの活性を阻害」なる表現は、FASN活性を10%〜100%低減させることを意味する。より好ましくは、「FASNの活性を阻害」なる表現は、FASN活性を25%〜100%低減、最も好ましくはFASN活性を50%〜100%低減させることを意味する。本発明は、FASN活性に必要とされる前述の7つの酵素工程のいずれかを介して、及び任意の固有の工程又はプロセスを介して、FASNを阻害することを考慮している。FASN活性の低減又は変化は、当業者に知られている任意の方法により測定することができる。
【0024】
「FASN阻害剤」には、競合的及び非競合的FASN阻害剤が含まれる。競合的FASN阻害剤は、相互に基質結合を含まない形でFASN酵素に結合する分子である。典型的には、FASNの競合的阻害剤は活性部位に結合するであろう。非競合的FASN阻害剤は、脂肪酸の合成を阻害するものであるが、その酵素への結合は、基質結合に対して相互に排他的ではない。この発明で考慮されるFASN阻害剤は、少なくとも同程度の濃度で、他の細胞性活性に何ら有意な影響を及ぼすことなく、動物細胞のFASN活性を低減させる化合物である。
【0025】
本発明の化合物は少なくとも一のキラル中心を有し、よって「立体異性体」、例えばジアステレオマーを形成し得ることは当業者には明らかである。ラセミ形態、並びに全ての光学異性体は本発明の一部であり、よって請求の範囲に含まれる。
【0026】
本発明の一実施態様によれば、本発明は、Xが、各環が5−6員で、芳香族又は部分的に不飽和の、分離又は縮合した環である2−3の環を含む既知の環系の一つのビラジカル誘導体であり;それぞれが、(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、NH、(C-C)アルキルエステル、CONH及び(C-C)アルキルアミドからなる群から選択される一又は複数の基で置換されていてもよく;環員の各一が、C及びNから独立して選択され;
但し、Xが、アントラセン又は

ではない式(I)のポリヒドロキシル化化合物が提供される。
【0027】
本発明の好ましい実施態様によれば、式(I)の化合物は、Xが、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン及びビフェニルからなる群から選択され、場合によっては、それぞれが(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、NH、(C-C)アルキルエステル、CONH及び(C-C)アルキルアミドからなる群から選択される一又は複数の基で置換されていてもよいものである。
【0028】
好ましい実施態様では、Xがビフェニルである場合、このようなビフェニル部分は、

[上式中、R、R、R、R及びRは独立して、H、(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、NH、(C-C)アルキルエステル、CONH及び(C-C)アルキルアミドからなる群から選択される]
から選択される。好ましくは、R、R、R、R及びRは独立して、H、(C-C)-アルキル及び(C-C)-アルキルエステルから選択される。
【0029】
他の好ましい実施態様では、Xがテトラヒドロナフタレンである場合、このようなテトラヒドロナフタレン部分は、

[上式中、R、R、R及びRは独立して、H、(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、NH、(C-C)アルキルエステル、CONH及び(C-C)アルキルアミドからなる群から選択される]
から選択される。好ましくは、R、R、R及びRは独立して、H、(C-C)-アルキル及び(C-C)-アルキルエステルから選択される。
【0030】
他の好ましい実施態様によれば、本発明は、Xが、

[上式中、各環系は、H、(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、NH、(C-C)アルキルエステル、CONH、(C-C)アルキルアミドから選択される一又は複数の基で置換されていてもよい]
からなる群から選択される化合物に関する。好ましくは置換基は、H、(C-C)-アルキル、及び(C-C)アルキルエステルから選択される。
【0031】
本発明の他の特定の実施態様によれば、上述した好ましい化合物は、式(I)の次のフラグメント

が、次のもの

から選択されるものである。
本発明の特定の実施態様によれば、好ましい化合物は、R、R、R、R及びRの少なくとも2つがヒドロキシルに等しいものである。
【0032】
次の化合物が特に好ましい:
2,3-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(e);
1,3-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(f);
1,3-ビス[(3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(g);
1,3-ビス[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(h);
1,4-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(i);
1,4-ビス[(3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(j);
1,4-ビス[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(k);
2,6-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(l);
1,5-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(m);
2,5-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(o);
6-(ベンゾイルオキシ)-1,1'-ビフェニル-3-イル-3,4,5-トリヒドロキシベンゾアート(p);
4,4'-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(q);
4,4'-ビス[(2,6-ジヒドロキシイソニコチノイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(r);
4,4'-ビス[(3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(s);
4,4'-ビス[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(t);
4'-[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル-4-イル-4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシベンゾアート(u);
4'-[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル-4-イル-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシベンゾアート(v);
1,3-ビス[(4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(w);
1,3-ビス[(3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(x);
1,3-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン(y);
1,4-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン(z);
1,4-ビス[(3,5-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾイル)オキシ]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン(aa);
4-[(3,5-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾイル)オキシ]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル-3,4,5-トリヒドロキシベンゾアート(bb);
メチル-1-[(4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-4-[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-2-ナフトアート(cc);
メチル-1-[(3-ヒドロキシベンゾイル)オキシ]-4-[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-2-ナフトアート(dd);及び
メチル-1-[(4-ヒドロキシベンゾイル)オキシ]-4-[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-2-ナフトアート(ee)。
【0033】
最終生成物は、IR、NMR、及びMS技術により、構造的に特徴付けされる。取り扱いをより容易にするために、最終生成物が結晶性ではない場合、無機又は有機の酸又は塩基から誘導される薬学的に許容可能な塩に転換される。
本発明の化合物は、FASNに対して有意な阻害活性を示す。
実施例に示すように、化合物f及びiは、CPT-1活性を同時に阻害することなく、FASN活性を有意に阻害した(細胞暴露の6時間後、FASN活性の50%が低減)。
【0034】
本発明の化合物は、種々の腫瘍細胞株に対して際だった細胞毒性を示し、アポトーシス(PARPの切断)を誘導し、非悪性細胞に影響を与えることなく、腫瘍性タンパク質HER2、Akt及びERK1/2の活性形態を顕著に低減させる。特に際だっているのが、乳癌細胞の増殖に対するその活性である。
【0035】
SK-Br3細胞におけるEGCGの相対的IC50比は、化合物fに対しては7.5(150μM/20μM)であり、化合物iに対しては5.4(150μM/28μM)である。化合物f及び化合物iはアポトーシス(PARPの切断)を誘導し、処置後2時間以内に、腫瘍性タンパク質HER2、Akt及びERK1/2の活性形態を顕著に低減させた。同様の阻害剤濃度では、非悪性細胞は影響を受けなかった。総括すると、結果には、化合物f及びiが強力で、FASNの特異的な阻害剤であり、乳癌細胞の増殖を阻害することが示されている。
【0036】
ドラッグデザインの分野において、薬理学的に活性な化合物の任意の構造的修飾は、構造的特徴と活性度との間に実証された相関関係が存在しないならば、当初の構造の薬理学的活性プロファイルを乱すと、先験的に予期される。
本発明の化合物は、式の置換基の新規組合せ、特に、それらの構造体に存在する中心部分(X)の特異的選択によって、従来技術に記載されている化合物とは構造的に異なる。これらの構造的変化は、従来技術においては開示も示唆もされていない。これらの構造的変化により、種々の癌細胞株の増殖を阻害する際だった活性を有するFASN阻害剤として有用である化合物が得られる。
【0037】
ここに定義される式(I)の化合物のプロドラッグである任意の化合物は、本発明の範囲及び趣意に入る。「プロドラッグ」なる用語は広義の意味で使用され、代謝(例えば加水分解)により、インビボにおいて、そのN-オキシド類を含む本発明の化合物に転換されるそれらの誘導体を含む。プロドラッグは、いくつかの状況では、親薬剤よりも投与が容易であるため、多くの場合で有用である。例えば、それらは経口投与により体内に吸収されて利用され得るが、親薬剤はそうではない場合がある。またプロドラッグは薬学的組成物において、親薬剤よりも改善された溶解度を有する場合もある。さらにプロドラッグは、改善された化学的安定性、改善された患者許容性及びコンプライアンス、改善された生物学的利用能、長時間にわたる作用の持続時間、改善された器官選択性、改善された処方性(例えば、増加した水溶解性)、及び/又は低減した副作用(例えば、毒性)を有し得る。
【0038】
本発明で考慮されるプロドラッグの種類のさらなる情報については、以下の参考文献を挙げることができる:Fleicherら, Advanced Drug Delivery Review 19(1996) 115-130;Design of prodrugs, H. Bundgaard編, Elsevier, 1985;H. Bungaard, Drugs of the Future 16(1991) 443;Saulnierら. Bioorg. Med. Chem. Lett. 4(1994) 1985;Safadiら Pharmaceutical Res. 10(1993) 1350。式(I)の化合物の種々の適切なプロドラッグには好ましくはヒドロキシ基のエステルの形態がある。
【0039】
薬学的生成物
他の実施態様では、本発明は、一又は複数の式(I)の化合物、それらの立体異性体、プロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、又は薬学的に許容可能な溶媒和物、及び場合によっては一又は複数の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤を含有する薬学的組成物を提供する。ここで使用される場合、「担体」なる用語は、担体、賦形剤及び希釈剤を含む。
このような担体の具体例は、当業者によく知られており、許容可能な製薬的手順に従い調製される。薬学的に許容可能な担体は、製剤中の他の成分と融和性があり、生物学的に許容可能な担体である。
【0040】
本発明の化合物又は組成物の投与は、任意の適切な方法、例えば経口的、経皮的、非経口的、筋肉内、静脈内、皮下的、又は他の投与方式によりなされうる。好ましくは、薬学的生成物は、経口的に投与することができる。好ましくは、本発明の化合物の薬学的組成物は、静脈内投与に適した組成物と共にされた液体(溶液、懸濁液又はエマルション)を含み、それらは、純粋な化合物を、又は任意の担体又は他の薬理学的に活性な化合物と組合せて含有してもよい。
【0041】
我々は、24時間まで、さらに好ましくは2−12時間、最も好ましくは2−6時間の注入時間が使用されることを好む。注入時間が短いと、病院に一晩滞在することなく処置を実施することができ、特に好ましい。しかしながら、必要であるならば、12〜24時間又はそれ以上の注入としてもよい。注入は、1〜4週間といわれる適切な間隔で実施されてよい。投与は、好ましい投与方法では、周期的に実施することができ、本発明の化合物の静脈内注入が、各サイクルの最初の週に患者になされ、患者はサイクルの残りについて回復が許される。各サイクルの好ましい持続時間は1、3又は4週間のいずれかであり;必要な場合は、複数回のサイクルを付与することができる。変形例として、他のプロトコルを考案することもできる。処置される個々の患者の耐性に応じて、必要な場合は、投与の遅延化、及び/又は投与量の低減、及びスケジュールの調節が行われる。投与量についての指針は上述した通りであるが、化合物の正確な投与量は、特定の製剤、適用方法、及び処置される特定の位置、宿主又は腫瘍によって変えられるであろう。他の要因、例えば年齢、体重、性別、食餌、投与時間、排出率、宿主の状態、複合薬、反応感度、及び疾患の重篤度を考慮すべきである。投与は、最大耐性用量の範囲内で、連続的又は定期的に実施することができる。
【0042】
本発明の化合物を含有する薬学的組成物は、徐放性製剤において、リポソーム又はナノスフェアカプセル化により、又は他の標準的な送達手段により送達されうる。
化合物の正確な投与量は、特定の製剤、適用方式、及び処置される特定の位置、宿主及び腫瘍によって変えられるであろう。
この発明の化合物及び組成物は、他の薬剤と共に使用され得、併用療法が提供される。他の薬剤が、同じ組成物の一部を形成してもよく、又は同時にもしくは異なる時間に投与される別々の組成物として提供されうる。
【0043】
代表的な固体状担体には、香味料、滑剤、可溶化剤、懸濁剤、フィラー、流動促進剤、圧縮補助剤、バインダー、錠剤崩壊剤、又はカプセル化物質として作用可能な、一又は複数の物質が含まれる。この発明の活性化合物を含有する経口用製剤は、錠剤、カプセル、口腔用形態、トローチ、薬用キャンディー、及び経口用の液体、懸濁液又は溶液を含む、任意の従来から使用されてる経口形態を含んでよい。パウダーにおいて、担体は、微細に分割された活性成分と混合された、微細に分割された固形物である。錠剤において、活性成分は、適切な割合で、必要な圧縮特性を有する担体と混合され、所望される形状及びサイズに圧密される。
カプセルは、不活性なフィラー及び/又は希釈剤、例えば薬学的に許容可能なデンプン、糖類、人工的な甘味料、パウダー状セルロース、例えば結晶性及びマイクロクリスタリンセルロース、小麦粉、ゼラチン、ガム類等と、活性化合物との混合物を含みうる。
【0044】
有用な錠剤製剤は、従来からの圧縮、湿式造粒法又は乾式造粒法により作製され得、薬学的に許容可能な希釈剤、結合剤、滑剤、錠剤崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁剤又は安定剤で、限定されるものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、マイクロクリスタリンセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアガム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、ケイ酸錯体、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、デンプン、糖類、低融点ワックス、及びイオン交換樹脂を含むものを利用してもよい。好ましい表面改質剤には、非イオン性及びアニオン性の表面改質剤が含まれる。表面改質剤の代表例には、限定されるものではないが、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイダル(colloidol)二酸化ケイ素、ホスファート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、及びトリエタノールアミンが含まれる。ここで、経口用製剤は、活性化合物の吸収性を変化させるために、標準的な遅延化又は持続放出性製剤に利用されうる。また経口用製剤は、必要な場合に、適切な可溶化剤又は乳化剤を含有する、水又は果汁に活性成分を投与することからなるものであってもよい。
【0045】
液状担体は、溶液、懸濁液、エマルション、シロップ、及びエリキシル剤の調製に使用することができる。活性成分は、薬学的に許容可能な油又は脂肪に溶解又は懸濁させることができる。液状担体は、他の適切な薬学的添加剤、例えば可溶化剤、乳化剤、バッファー、保存料、甘味料、香味料、懸濁剤、増粘剤、着色料、粘度調節剤、安定剤、又は浸透圧調節剤を含有することができる。経口及び非経口投与用の液状担体の適切な例には、水(特に上述した添加剤、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含有)、アルコール類(一価アルコール及び多価アルコール、例えばグリコール類を含む)及びそれらの誘導体、及び油(例えば、分画されたココナツ油及びラッカセイ油)が含まれる。
【0046】
非経口投与用に、担体は、油性エステル、例えばオレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルとすることができる。非経口投与用には、滅菌された液状担体が、滅菌された液状形態の組成物に使用される。加圧組成物用の液状担体は、ハロゲン化炭化水素、又は他の薬学的に許容可能な噴霧剤であってもよい。
【0047】
またこの発明の組成物は、非経口的又は腹腔内に投与されてもよい。遊離の塩基又は薬学的に許容可能な塩としてのこれらの活性化合物の溶液又は懸濁液は、水中で、界面活性剤、例えばヒドロキシ-プロピルセルロースと適切に混合することにより調製することができる。また分散液は、グリセロール、液状ポリエチレングリコール、及びそれらと油との混合物において調製することができる。通常の保管及び使用条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を阻害する保存料を含む。
【0048】
注射使用に適した薬学的形態には、滅菌された水溶液又は分散液、及び滅菌された注射用溶液又は分散液を即席で調製するための滅菌パウダーが含まれる。それは、製造及び保管条件下では安定していなければならず、微生物、例えば細菌及び真菌の汚染作用を防止しなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物、及び植物性油を含む、溶媒又は分散液であってよい。
【0049】
通常、本発明の化合物は、再構築に適した凍結乾燥形態に、適切に調製することができる。再構築は、乳化可溶化剤、アルカノール及び水の混合物を用いて、好ましくは達成される。凍結乾燥された組成物は、好ましくは主として、増量剤、例えば少なくとも90%又は少なくとも95%の増量剤を含む。
【0050】
製剤は、単一投与又は複数回投与用の容器、例えば密封されたアンプル又はバイアルで提供されてよく、又は使用直前に、滅菌された液状担体、例えば注射用には水の添加のみが必要なフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されうる。よって、本発明は、凍結乾燥された組成物と再構築剤を収容する決別の容器を具備するキットを、さらに提供する。また、再構築法も提供される。
ここに記載したような薬学的生成物は、他の製薬的に活性な物質を含んでいてもよい。それは、一又は複数の製薬的に耐性のある担体と活性化合物とを混合し、混合物を適切な薬学的形態に転換させることによって調製可能である。
【0051】
臨床症状における使用
FASNを際だって阻害することを考慮すると、式(I)の化合物は、FASNの阻害が効能がある病的状態の処置及び/又は予防、例えば哺乳動物、特にヒトにおける癌又は肥満症の処置及び/又は予防に有用である。
【0052】
本発明の化合物を使用して処置可能な癌には、限定されるものではないが、血液細胞癌、例えば自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、慢性リンパ芽球性白血病、ヘアリーセル白血病、慢性リンパ性白血病、末梢性T細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、エプスタイン-バーウイルス-陽性T細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、ホジキン病、びまん性侵攻性リンパ腫、急性リンパ性白血病、Tガンマリンパ球増殖性疾患、皮膚B細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(すなわち、菌状息肉腫)、セザリー症候群、急性骨髄性白血病、慢性又は急性のリンパ芽球性白血病、及びヘアリーセル白血病が含まれる。本発明の方法で処置可能なさらなる癌には、固形腫瘍、特に肉腫、骨肉腫、及び癌腫、例えば腺癌(中でも乳癌)、及び扁平上皮癌、エプスタイン-バーウイルス-陽性上咽頭癌、グリオーマ、結腸、胃、前立腺、腎臓の細胞、子宮頸部及び卵巣の癌、肺癌(小細胞肺癌(SCLC)及び非小細胞肺癌(NSCLC))が含まれる。好ましい癌は、胸部、前立腺、結腸、卵巣、子宮内膜、中皮、肺、甲状腺、胃及び脳にあるものである。
【0053】
また、多発性骨髄腫を含む、浸潤性転移能を有する悪性腫瘍も、本発明の方法で処置することができる。上述した癌を処置することにより、癌に関連した兆候、癌関連性の悪液質、疲労、無力症、悪液質の腫瘍随伴症候群、及び高カルシウム血症が軽減又は改善されるであろうと考慮される。
【0054】
さらなる実施態様では、患者が固形腫瘍又は転移する腫瘍について処置されたケースでは、免疫細胞アクチベータと本発明の化合物との同時投与は、腫瘍量の外科的低減の後になされることが考慮される。さらに、患者が免疫学的に抑圧又は疲弊しないように、疾患進行の初期段階で、患者を治療可能であることが考慮される。
【0055】
治療的有効量とは、兆候を改善するのに十分な化合物の量を意味する。癌の兆候には、痛み、消耗、及び/又は食欲の喪失、腫瘍量、吐き気、疲労、下痢、嘔吐、及び便秘が含まれる。FASN阻害剤が他の治療剤と同時投与される場合、投与量は、治療剤の間で生じる任意の相互作用に応じて変えられる。
ここで所望の化合物は、脂肪酸の生合成経路の少なくとも一の酵素を発現する腫瘍細胞を処置する医薬の調製に使用することができる。特に、脂肪酸合成酵素(FASN)を発現する腫瘍細胞、及び/又は脂肪組織量の低減に敏感な状態を処置、又は減量誘発を処置する医薬の調製に使用される。
【0056】
本明細書及び請求の範囲にわたって、「含む」なる用語、及びその変形例、例えば「含有する」は、他の技術的特徴、添加剤、成分、又は工程を排除することを意図していない。
本発明のさらなる目的、利点及び特徴は、本記載の実験時に、当業者には明らかになるであろうし、又は本発明の実施により学ぶこともできるであろう。以下の実施例及び図は、例証のために提供されるものであって、本発明を限定することを意図しているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、EGCG及び新規の化合物e、f、i、h、k、m及びqが、SK-Br3乳癌細胞において、FASN活性を阻害することを示す。試験化合物を用い、細胞を、6、12及び24時間処理し、粒子の存在しない上清において、FASN活性(%nmol 酸化NADPH/分.mgコントロール細胞タンパク質)を分光光度的にアッセイした。
【図2】図2は、C75がCPT-1活性を刺激し、これに対して化合物e、f、i、o及びqがそうではないことを示す。P. pastorisを、ラットCPT-1をコードするプラスミドを用いて形質転換した。これらの細胞から単離されたミトコンドリアを、DMSO(コントロール)、C75、EGCG及び化合物e、f、i、o又はqの存在下、CPT-1活性(%mU/mg/分コントロール)についてアッセイした。
【実施例】
【0058】
(特定の実施態様の詳細な説明)
実施例1.一般構造(I)の化合物の合成。一般的手順(スキーム1を参照)。
式(IV)のカルボン酸(2.2当量)を、アルゴン雰囲気下、30分、無水テトラヒドロフランにおいてはDCC(2.2当量)及びDMAP(0.2当量)を用い、又は無水トルエンにおいては塩化チオニル(3.3当量)を用いて処理した。ついで、THF又はピリジンに、式(II)のジヒドロキシ誘導体(1当量)の溶液を滴下し、反応混合物を40-50℃で一晩攪拌した。混合物を濾過し、減圧下、溶媒を蒸発乾固させた。粗物質をジクロロメタンに再懸濁させ、重炭酸ナトリウムの5%水溶液で洗浄した。有機相を乾燥させ、溶媒を蒸発させた後に、適切な溶離液を使用し、シリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィーにより残留物を精製し、一般式(V)の保護された中間生成物を得た。
【0059】
また、式(III)のカルボン酸(1.1当量)を、同様の試薬と条件を使用し、式(II)のジヒドロキシ誘導体(1当量)で処理し、ついで、得られたモノエステル(1当量)を、同様の試薬と条件を使用し、式(IV)のカルボン酸(1.1当量)とカップリングさせ、一般式(V)の保護された中間生成物を得た。
【0060】
ジクロロメタン/エタノールの混合物に式(V)のベンジル化中間生成物が入った溶液に、20%の酸化パラジウム-炭素を添加し、混合物を室温で水素化した。ついで、触媒を濾過し、減圧下で溶媒を蒸発させ、固体として式(I)の所望する最終化合物を得、適切な溶媒からの再結晶により精製した。
【0061】
また、テトラヒドロフランに式(V)のシリル化中間生成物が入った溶液を、室温にて、フッ化水素酸-ピリジン複合体で処理した。ついで、水を添加し、溶液を酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和したCuSO水で洗浄した。式(I)の最終化合物を適切な溶媒から再結晶化し、又は適切な溶離液を使用し、シリカゲルにおけるカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0062】
実施例2.1,2-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ベンゼン(a)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸とピロカテコールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:37%(a)、44%(b);mp:210℃。IR(KBr):3427、1689、1624cm-1H NMR(CDOD):δ7.08(s,4H)、7.29-7.37(m,4H)。13C NMR(DMSO):δ109.1(4C)、118.1(2C)、123.2(2C)、126.0(2C)、142.0(4C)、145.0(4C)、163.5(2C)。MS:M−H=412.9。
【0063】
実施例3.1,3-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ベンゼン(b)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸とレゾルシノールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:68%(a)、38%(b);mp:194-195℃。IR(KBr):3370、1718、1618、1200cm-1H NMR(CDOD):δ7.06-7.14(m,3H)、7.20(s,4H)、7.48(t,J=8.4,1H)。13C NMR(CDOD):δ110.7(4C)、117.1(2C)、120.3(2C)、130.8(2C)、140.8(2C)、146.8(4C)、153.3(2C)、166.7(2C)。MS:M−H=412.8。
【0064】
実施例4.2-メチル-1,4-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ベンゼン(c)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸と2-メチルベンゼン-1,4-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:52%(a)、67%(b);mp:256℃(d)。IR(KBr):3385、1692、1604、1209cm-1H NMR(CDOD):δ2.31(s,3H)、6.95(dd,J=8.6,2.9,1H)、7.01-7.05(m,2H)、7.10(s,2H)、7.13(s,2H)。13C NMR(CDOD):δ16.4、110.7(4C)、120.4、120.6、121.3、124.1、125.2、133.1、140.6、140.7、146.7(2C)、146.8(2C)、148.0、150.1、166.7、167.0。MS:M+H=429.0。
【0065】
実施例5.2-メトキシ-1,4-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ベンゼン(d)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸と2-メトキシベンゼン-1,4-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:45%(a)、77%(b);mp:214-216℃。IR(KBr):3369、1712、1616、1175cm-1H NMR(CDOD):δ3.70(s,3H)、6.70(dd,J=8.6,2.5,1H)、6.87(d,J=2.5,1H)、7.05(d,J=8.6,1H)、7.09(s,2H)、7.11(s,2H)。13C NMR(CDOD):δ56.7、108.2、110.7(2C)、110.8(2C)、114.7、120.4、120.5、124.2、139.1(2C)、140.7、146.7(2C)、146.8(2C)、151.0、153.5、166.7、167.0。MS:M+H=444.9。
【0066】
実施例6.2,3-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(e)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸とナフタレン-2,3-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:54%(a)、40%(b);mp:182-183℃。IR(KBr):3308、1743、1618、1194cm-1H NMR(CDOD):δ7.12(s,4H)、7.51-7.56(m,2H)、7.79(s,2H)、7.89-7.92(m,2H)。13C NMR(CDOD):δ109.3(4C)、118.4(2C)、120.6(2C)、125.9(2C)、126.9(2C)、131.7(2C)、139.2(2C)、141.9(2C)、145.1(4C)、165.0(2C)。MS:M+Na=487.0。
【0067】
実施例7.1,3-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(f)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸とナフタレン-1,3-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:47%(a)、50%(b);mp:163-164℃。IR(KBr):3385、1709、1608、1198cm-1H NMR(CDOD):δ7.18-7.27(m,3H)、7.34(s,2H)、7.45-7.65(m,3H)、7.88-7.96(m,2H)。13C NMR(CDOD):δ109.7(2C)、109.8(2C)、114.7、116.8、119.1、119.4、121.4、125.6、126.3、127.4、128.0、134.8、139.7、139.9、145.8(2C)、145.9(2C)、148.1、148.6、165.7、165.9。MS:M−H=462.7。
【0068】
実施例8.1,3-ビス[(3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(g)

表題化合物を、出発物質として、3,5-ジヒドロキシ安息香酸とナフタレン-1,3-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:60%(a)、52%(b);mp:167-169℃。IR(KBr):3386、1710、1603、1166cm-1H NMR(CDOD):δ6.58(t,J=1.5,1H)、6.62(t,J=1.5,1H)、7.15(d,J=1.5,2H)、7.23(d,J=1.5,2H)、7.34(d,J=1.5,1H)、7.54-7.60(m,2H)、7.71(d,J=1.3,1H)、7.90-7.99(m,2H)。13C NMR(CDOD):δ109.0(2C)、109.3(4C)、115.4、117.9、122.2、126.4、127.4、128.4、129.9、131.7、132.1、135.7、148.8、149.3、160.0(2C)、160.1(2C)、166.3、166.5。MS:M+Na=454.8。
【0069】
実施例9.1,3-ビス[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(h)

表題化合物を、出発物質として、3,4-ジヒドロキシ安息香酸とナフタレン-1,3-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:51%(a)、26%(b);mp:79-81℃。IR(KBr):3423、1712、1603、1126cm-1H NMR(CDOD):δ6.90(d,J=8.2,1H)、6.95(d,J=8.2,1H)、7.29(d,J=2.1,1H)、7.50-7.75(m,7H)、7.89-7.97(m,2H)。13C NMR(CDOD):δ115.8、116.2、116.4、117.9、118.0(2C)、121.3、121.6、122.4、124.6、124.7、126.6、127.4、128.4、129.0、135.8、146.5、146.7、149.1、149.6、152.7、152.9、166.6、166.7。MS:M+Na=454.9。
【0070】
実施例10.1,4-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(i)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸とナフタレン-1,4-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:64%(a)、88%(b);mp:252℃(d)。IR(KBr):3406、1718、1612、1196cm-1H NMR(CDOD):δ7.36(s,4H)、7.39(s,2H)、7.57-7.60(m,2H)、7.92-7.95(m,2H)。13C NMR(CDOD):δ110.8(4C)、119.2(2C)、120.2(2C)、122.8(2C)、128.2(2C)、129.4(2C)、140.9(2C)、146.2(2C)、146.9(4C)、167.1(2C)。MS:M+Na=486.9。
【0071】
実施例11.1,4-ビス[(3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(j)

表題化合物を、出発物質として、3,5-ジヒドロキシ安息香酸とナフタレン-1,4-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:57%(a)、60%(b);mp:201-203℃。IR(KBr):3406、1701、1608、1155cm-1H NMR(CDOD):δ6.63(t,J=2.2,1H)、7.24(d,J=4.6,2H)、7.42(s,2H)、7.59-7.62(m,2H)、7.93-7.96(m,2H)。13C NMR(CDOD):δ109.2(2C)、109.3(4C)、119.1(2C)、122.6(2C)、128.2(2C)、129.1(2C)、131.9(2C)、146.0(2C)、160.2(4C)、166.9(2C)。MS:M+Na=454.8。
【0072】
実施例12.1,4-ビス[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(k)

表題化合物を、出発物質として、3,4-ジヒドロキシ安息香酸とナフタレン-1,4-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:27%(a)、76%(b);mp:261℃(メタノール/ジクロロメタン)。IR(KBr):3497、1700、1610、1122cm-1H NMR(CDOD):δ6.93-7.01(m,2H)、7.40(s,2H)、7.57-7.63(m,2H)、7.70-7.77(m,4H)、7.91-7.95(m,2H)。13C NMR(CDOD):δ116.3(2C)、118.0(2C)、119.3(2C)、121.5(2C)、122.8(2C)、124.7(2C)、128.2(2C)、129.4(2C)、146.2(2C)、146.7(2C)、152.9(2C)、166.9(2C)。MS:M+Na=454.8。
【0073】
実施例13.2,6-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(l)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸とナフタレン-2,6-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:40%(a)、54%(b);mp:272℃(d)。IR(KBr):3415、1712、1608。1205cm-1H NMR(CDOD):δ7.21(s,4H)、7.32(dd,J=8.8,2.2,2H)、7.66(d,J=2.2,2H)、7.90(d,J=8.8,2H)。13C NMR(CDOD):δ109.6(4C)、118.8(2C)、119.5(2C)、122.4(2C)、129.0(2C)、132.2(2C)、139.7(2C)、145.7(4C)、149.3(2C)、166.1(2C)。MS:M−H=462.7。
【0074】
実施例14.1,5-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(m)

表題化合物を、出発物質として、3,4-ジヒドロキシ安息香酸とナフタレン-1,5-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:42%(a)、30%(b);mp:265℃(d)。IR(KBr):3406、1718、1618、1209cm-1H NMR(CDOD):δ7.29(s,4H)、7.33(d,J=7.0,2H)、7.47(t,J=7.6,2H)、7.60(d,J=8.0,2H)。13C NMR(DMSO-d):δ109.2(4C)、117.5(2C)、119.1(2C)、119.3(2C)、127.8(2C)、128.4(2C)、139.6(2C)、145.8(4C)、146.7(2C)、164.5(2C)。MS:M−H=462.7。
【0075】
実施例15.2,3-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(n)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸と1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,3-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:20%(a)、95%(b)。H NMR(CDOD):δ1.40(s,6H)、1.52(s,6H)、5.61(s,2H)、6.99(s,4H)、7.24-7.27(m,2H)、7.43-7.46(m,2H)。13C NMR(CDOD):δ27.5(2C)、30.9(2C)、40.3(2C)、78.0(2C)、110.4(4C)、121.5(2C)、127.7(2C)、127.9(2C)、140.0(2C)、143.6(2C)、146.6(4C)、168.1(2C)。
【0076】
実施例16.2,5-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(o)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸と1,1'-ビフェニル-2,5-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:57%(a)、75%(b);mp:114-116℃。IR(KBr):3362、1701、1616、1165cm-1H NMR(CDOD):δ7.06(s,2H)、7.24(s,2H)、7.26-7.38(m,6H)、7.45-7.49(m,2H)。13C NMR(CDOD):δ110.6(2C)、110.7(2C)、120.4、120.5、122.8(2C)、124.9、125.4、128.9、129.5(2C)、130.0(2C)、137.6、138.2、140.7、146.6(2C)、146.8(2C)、147.0、150.4、166.9、167.0。MS:M−H=488.6。
【0077】
実施例17.6-(ベンゾイルオキシ)-1,1'-ビフェニル-3-イル-3,4,5-トリヒドロキシベンゾアート(p)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸、安息香酸及び1,1'-ビフェニル-2,5-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:20%(a)、54%(b);mp:82-84℃。IR(KBr):3381、1713、1611、1164cm-1H NMR(CDOD):δ7.07(s,2H)、7.29-7.39(m,6H)、7.47-7.50(m,2H)、7.55-7.60(m,2H)、7.68-7.74(m,1H)、8.20-8.24(m,2H)。13C NMR(CDOD):δ110.6(2C)、120.2、122.8、124.8、125.4、128.9、129.4(2C)、129.8(2C)、129.9(2C)、130.6、131.1、(2C)、135.0、137.6、138.0、140.5、146.6(2C)、147.1、150.0、166.6、166.9。MS:M+Na=464.9。
【0078】
実施例18.4,4'-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(q)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸と1,1'-ビフェニル-4,4'-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:44%(a)、70%(b);mp:268℃(d)。IR(KBr):3396、1701、1608、1192cm-1H NMR(CDOD):δ7.24(s,4H)、7.24-7.28(m,4H)、7.67-7.71(m,4H)。13C NMR(CDOD):δ110.8(4C)、120.8(2C)、123.5(4C)、129.2(4C)、139.4(2C)、140.6(2C)、146.9(4C)、152.4(2C)、167.2(2C)。MS:M−H=488.8。
【0079】
実施例19.4,4'-ビス[(2,6-ジヒドロキシイソニコチノイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(r)

表題化合物を、出発物質として、2,6-ジヒドロキシイソニコチン酸と1,1'-ビフェニル-4,4'-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:26%(a)、66%(b);mp:285℃(d)。IR(KBr):3452、1742、1645、1234cm-1H NMR(CDOD):δ6.55(s,4H)、7.47(d,J=8.6,4H)、7.87(d,J=8.6,4H)。MS:M−H=458.7。
【0080】
実施例20.4,4'-ビス[(3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(s)

表題化合物を、出発物質として、3,5-ジヒドロキシ安息香酸と1,1'-ビフェニル-4,4'-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:77%(a)、65%(b);mp:272℃(d)。IR(KBr):3328、1733、1702、1604、1161cm-1H NMR(CDOD):δ6.57(t,J=2.3,2H)、7.11(d,J=2.3,4H)、7.29-7.32(m,4H)、7.71-7.74(m,4H)。13C NMR(CDOD):δ109.1(2C)、109.4(4C)、123.3(4C)、129.1(4C)、132.4(2C)、139.5(2C)、152.1(2C)、160.1(4C)、167.2(2C)。MS:M−H=456.9。
【0081】
実施例21.4,4'-ビス[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(t)

表題化合物を、出発物質として、3,4-ジヒドロキシ安息香酸と1,1'-ビフェニル-4,4'-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:14%(a)、60%(b);mp:286℃(d)。IR(KBr):3295、1693、1610、1217、1200cm-1H NMR(DMSO-d):δ6.90(d,J=8.7,2H)、7.33(d,J=8.5,4H)、7.51-7.53(m,4H)、7.75(d,J=8.6,4H)、9.51(s,2H)、9.99(s,2H)。13C NMR(DMSO-d):δ115.9(2C)、117.1(2C)、119.8(2C)、122.9(4C)、123.0(2C)、128.1(4C)、137.3(2C)、145.8(2C)、150.8(2C)、151.7(2C)、164.8(2C)。MS:M−H=456.9。
【0082】
実施例22.4'-[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル-4-イル-4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシベンゾアート(u)

表題化合物を、出発物質として、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシ安息香酸及び1,1'-ビフェニル-4,4'-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:65%(a)、88%(b);mp:252-254℃。IR(KBr):3386、1734、1697、1599、1218、1198cm-1H NMR(CDCOCD):δ6.99-7.03(m,1H)、7.34-7.46(m,6H)、7.63-7.68(m,2H)、7.75-7.81(m,4H)、8.49(br s,1H)、8.87(br s,1H)、9.29(br s,2H)。13C NMR(CDCOCD):δ105.4(C)、109.2(2C)、116.0、117.6、121.9、123.1(2C)、123.3(2C)、124.2、128.7(2C)、128.8(2C)、130.4、138.4、138.9、145.8、151.6(2C)、151.9、156.5(2C)、164.9、165.2。MS:M−H=535.0。
【0083】
実施例23.4'-[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル-4-イル-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシベンゾアート(v)

表題化合物を、出発物質として、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸及び1,1'-ビフェニル-4,4'-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:56%(a)、77%(b);mp:240℃(d)。IR(KBr):3348、1731、1700、1608、1196cm-1H NMR(DMSO-d):δ3.85(s,3H)、6.90(d,J=8.8,1H)、7.22(d,J=1.7,1H)、7.30(d,J=1.6,1H)、7.32-7.36(m,4H)、7.51-7.53(m,2H)、7.76(d,J=8.6,4H)、8.38(s,1H)、9.54(s,2H)、10.0(s,1H)。13C NMR(DMSO-d):δ56.2、105.3、111.2、115.5、116.7、118.2、119.4、122.5(4C)、122.7、127.7(4C)、136.8、136.9、140.2、145.2、145.4、148.0、150.3(2C)、151.2、164.4、164.5。MS:M−H=487.0。
【0084】
実施例24.1,3-ビス[(4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(w)

表題化合物を、出発物質として、4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシ安息香酸とナフタレン-1,3-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:42%(a)、51%(b);mp:271℃(d)。IR(KBr):3410、1721、1592、1212cm-1H NMR(CDCOCD):δ7.38(s,2H)、7.47(s,2H)、7.52(d,J=2.2,1H)、7.58-7.69(m,2H)、7.82(d,J=2.1,1H)、7.99-8.06(m,2H)。13C NMR(CDCOCD):δ105.3、105.5、108.7(4C)、115.1、117.3、121.7、125.5、126.9、127.9、128.3、129.3、129.6、134.7、147.9、148.5、156.3(2C)、156.5(2C)、164.4、164.6。MS:M−H=586.8。
【0085】
実施例25.1,3-ビス[(3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(x)

表題化合物を、出発物質として、3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸とナフタレン-1,3-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:49%(a)、93%(b);mp:260℃(d)。IR(KBr):3400、1719、1605、1200cm-1H NMR(CDCOCD):δ3.94(s,3H)、3.96(s,3H)、7.41(d,J=1.9,2H)、7.44-7.48(m,2H)、7.54(d,J=1.9,2H)、7.57-7.67(m,1H)、7.78(d,J=2.0,1H)、7.96-8.06(m,2H)、8.20(s,1H)、8.26(s,1H)、8.46(s,1H)、8.51(s,1H)。13C NMR(CDCOCD):δ56.7(2C)、106.4、106.5、112.3、112.4、115.8、117.6、120.2、120.6、122.3、126.2、127.1、128.2、128.7、135.3、140.6、140.8、146.1、146.2、148.7、148.9、149.4、165.2。165.3。MS:M−H=490.9。
【0086】
実施例26.1,3-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン(y)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸とナフタレン-1,3-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:47%(a)、92%(b);mp:213℃(d)。IR(KBr):3356、1705、1615、1200cm-1H NMR(CDOD):δ1.80(m,4H)、2.59(m,2H)、2.83(m,2H)、6.78(d,1H,J=2.3)、6.84(d,1H,J=2.3)、7.18(s,2H)、7.21(s,2H)。13C NMR(CDOD):δ23.6、23.8、24.3、30.6、110.7(4C)、114.4、120.4、120.6、120.8、128.4、140.6、140.7、141.1、146.7(2C)、146.8(2C)、150.3、151.0、166.6、167.0。MS:M−H=466.9。
【0087】
実施例27.1,4-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン(z)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸とナフタレン-1,4-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:64%(a)、88%(b);mp:206℃(d)。IR(KBr):3344、1701、1612、1184cm-1H NMR(CDOD):δ1.76(m,4H)、2.62(m,4H)、6.98(s,2H)、7.22(s,4H)。13C NMR(CDOD):δ23.1(2C)、24.8(2C)、110.6(4C)、120.5(2C)、120.9(2C)、132.6(2C)、140.6(2C)、146.8(4C)、148.4(2C)、166.8(2C)。MS:M−H=466.9。
【0088】
実施例28.1,4-ビス[(3,5-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾイル)オキシ]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン(aa)

表題化合物を、出発物質として、3,5-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸とナフタレン-1,4-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:31%(a)、18%(b);mp:204℃(d)。IR(KBr):3392、1707、1594、1197cm-1H NMR(CDOD):δ1.78(m,4H)、2.14(s,6H)、2.64(m,4H)、7.02(s,2H)、7.15(s,4H)。13C NMR(CDOD):δ8.0(2C)、22.0(2C)、23.8(2C)、107.7(4C)、118.3(2C)、119.8(2C)、127.1(2C)、131.5(2C)、147.3(2C)、156.8(4C)、165.7(2C)。MS:M+Na=487.2。
【0089】
実施例29.4-[(3,5-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾイル)オキシ]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル-3,4,5-トリヒドロキシベンゾアート(bb)

表題化合物を、出発物質として、3,5-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸、没食子酸及びナフタレン-1,4-ジオールから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:50%(a)、10%(b)。H NMR(CDOD):δ1.78(m,4H)、2.14(s,3H)、2.64(m,4H)、7.01(s,2H)、7.15(s,2H)、7.23(s,2H)。
【0090】
実施例30.メチル-1-[(4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-4-[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-2-ナフトアート(cc)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸、4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシ安息香酸、及びメチル-1,4-ジヒドロキシ-2-ナフトアートから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:40%(a)、79%(b);mp:236℃(d)。IR(KBr):3400、1713、1604、1180cm-1H NMR(CDOD):δ3.80(s,3H)、7.34(s,2H)、7.36(s,2H)、7.66-7.76(m,2H)、7.89(s,1H)、7.97-8.00(m,1H)、8.08-8.11(m,1H)。13C NMR(CDOD):δ52.0、105.3、108.3(2C)、109.8(2C)、118.6、118.8、119.4、121.8、123.2、128.3、128.8、129.1、129.6、130.5、140.0、145.1、145.9、146.1、156.2(2C)、165.0、165.3、165.7。MS:M−H=582.8。
【0091】
実施例31.メチル-1-[(3-ヒドロキシベンゾイル)オキシ]-4-[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-2-ナフトアート(dd)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸、3-ヒドロキシ安息香酸、及びメチル-1,4-ジヒドロキシ-2-ナフトアートから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:45%(a)、66%(b);mp:254℃(d)。IR(KBr):3401、1714、1605、1179cm-1H NMR(CDOD):δ3.80(s,3H)、7.18(ddd,J=8.2,2.5,0.9,1H)、7.37(s,2H)、7.46(t,J=8.0,1H)、7.66-7.77(m,3H)、7.80(dt,J=6.6,1.2,1H)、7.90(s,1H)、7.98-8.00(m,1H)、8.09-8.12(m,1H)。13C NMR(CDOD):δ52.0、109.8(2C)、116.7、118.6、118.9、119.4、121.3、121.5、121.8、123.3、128.2、128.9、129.6、130.0、130.5、130.6、140.0、145.1、145.9、146.2、158.2、165.1(2C)、165.7。MS:M−H=488.8。
【0092】
実施例32.メチル-1-[(4-ヒドロキシベンゾイル)オキシ]-4-[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-2-ナフトアート(ee)

表題化合物を、出発物質として、没食子酸、4-ヒドロキシ安息香酸、及びメチル-1,4-ジヒドロキシ-2-ナフトアートから出発し、実施例1に記載の一般的手順に従い調製した。
収率:45%(a)、82%(b);mp:262℃(d)。IR(KBr):3372、1712、1609、1155cm-1H NMR(CDOD):δ3.78(s,3H)、6.98-7.01(m,2H)、7.37(s,2H)、7.66-7.73(m,2H)、7.88(s,1H)、7.97-7.99(m,1H)、8.08-8.11(m,1H)、8.17-8.20(m,2H)。13C NMR(CDOD):δ51.9、109.8(2C)、115.6(2C)、118.6、118.9、119.5、120.1、121.8、123.4、128.1、129.1、129.6、130.5、132.9(2C)、140.0、144.9、145.9、146.4、163.5、165.2、165.6、165.7。MS:M−H=488.8。
【0093】
実施例33.細胞毒性アッセイ
MCF-7及びMDA-MB-231乳癌細胞を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から得、10%のウシ胎児血清(FBS、Bio-Whittaker)、1%のL-グルタミン、1%のピルビン酸ナトリウム、50U/mLのペニシリン、及び50μg/mLのストレプトマイシンを含有するダルベッコの変性イーグル培地(DMEM、Gibco)中において常套的に増殖させた。SK-Br3乳癌細胞をEucellbank(Universidad de Barcelona、Spain)から得、10%のFBS、1%のL-グルタミン、1%のピルビン酸ナトリウム、50U/mLのペニシリン、及び50μg/mLのストレプトマイシンを含有するマッコイの5A培地に継代した。非悪性線維芽細胞N-1をEucellbank(Universidad de Barcelona、Spain)から得、10%のFBS、1%のL-グルタミン、1%のピルビン酸ナトリウム、50U/mLのペニシリン、及び50μg/mLのストレプトマイシンを含有するDMEM培地に継代した。細胞はマイコプラズマがないままであり、確立されたプロトコルに従い、接着培養体を増殖させた。細胞を、37℃、95%の空気及び5%のCOの湿潤雰囲気下に保持した。
【0094】
薬物感受性を、標準的な比色分析MTT(3-4,5-ジメチルチアゾール-2-イル-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイを使用して測定した。簡潔に述べると、細胞を、7×10細胞/100μL/ウェルの密度で、96-ウェルマイクロタイタープレートに蒔き、付着期間、一晩放置した。ついで、培地を取り除き、種々の濃度の試験化合物が付加された新鮮な培地を、48時間、培養体に添加した。処理に続き、薬剤を含有しない培地(100μL/ウェル)、及び10mLのMTT溶液(5mg/mL;Sigma、St. Louis, MO)を細胞を与え、37℃で3時間、インキュベートを延長した。上清を注意深く除去した後、生存細胞により、代謝的に形成されたMTT-ホルマザン結晶を、ジメチルスルホキシド(100μL/ウェル)に溶解させ、マルチ-ウェルプレートリーダー(Model Anthos Labtec 2010 1.7 reader)において、吸光度を570nmで測定した。
【0095】
これらの細胞毒性アッセイから得られた結果を、以下の表1にまとめる。

IC50値は、50%の細胞増殖が阻害される濃度である;N.T.:毒性がないことが同定;N.D.:測定せず。
【0096】
表1は、新規ポリヒドロキシ誘導体(I)化合物と、比較する目的でEGCGも含まれるものの増殖阻害をまとめている。際だって、新規ポリフェノール化合物の殆どが、SK-Br3細胞において2−30倍のIC50(EGCG)/IC50(化合物)比で、細胞毒性に関してEGCGよりかなり優れていた。
腫瘍細胞でのその細胞毒性IC50値の3倍の用量までは、非悪性細胞において、化合物c、d、f、h、i、k、l、m、q、s、w、y、z、cc、dd及びeeを用いての処置後に、細胞死における有意な効果も形態変化も観察されなかった。同じ条件下で、EGCGは、非悪性線維芽細胞におけいて大量の細胞死を引き起こした。
【0097】
実施例34.脂肪酸合成酵素の活性度アッセイ
化合物a、b、e、f、h、i、k、m及びqのFASN活性を、我々が先に記載したように、37℃で、NADPHの酸化によるA340nmの低減度を分光光度的に記録する(Lambda Bio 20、Perkin Elmer、EUA;UV Kinlab 2.80.02ソフトウェアを使用)ことにより、粒子の存在しない上清においてアッセイした。試験化合物に暴露して6、12、24時間後、トリプシン-EDTA溶液で処理することにより細胞を収集し、遠心分離によりペレット状にし、2回洗浄し、冷PBSに再懸濁させた。4℃で30分、細胞を超音波処理し(PSelecta ultrasons)、4℃で15分遠心分離させ、粒子の存在しない上清を維持した。サンプルを取り出し、BioRadアッセイ(Bio-Rad Laboratories)により、タンパク質含有量を測定した。温度平衡にするために、0.2Mのリン酸化合物バッファー、pH7.0において、37℃で15分、120mgのタンパク質をプレインキュベートした。ついでサンプルを、反応混合物:200mMのリン酸カリウムバッファー、pH7.0、1mMのEDTA(Sigma)、1mMのジチオスレイトール(Sigma)、30μMのアセチル-CoA(Sigma)、0.24mMのNADPH(Sigma)に添加し、0.3mLの反応容量を340nmで3分モニターし、NADPH酸化のバックグラウンドを測定した。50μMのマロニル-CoA(Sigma)を添加した後、さらに10分、反応体をアッセイし、NADPHのFASN-依存性酸化を測定した。アセチル-CoAの存在下、NADPH酸化のバックグラウンド率に対して、比率を補正した。FASN活性を、nmol酸化NADPH-1mgタンパク質-1で表した。
【0098】
EGCG、及び化合物e、f、i、m及びqに癌細胞を暴露して後、FASN活性は、24時間まで時間依存方式で低減した(図1)。さらに24時間、化合物e、f、i、m及びqにSK-Br3細胞を暴露すると、FASN活性が、それぞれコントロール細胞の69%、10±4%、31±16%、76%及び20%まで低減した(図1)。FASN活性の低減は、FASNタンパク質レベルにおける変化によって引き起こされるものではなく、ウエスタンブロット分析により、処理された及びコントロールとなるSK-Br3溶解物が、ウサギモノクローナル抗-FASN抗体により認識される、同じ単一バンド(〜250KDa)を示すことが明らかとなった。さらに12時間、化合物h、k及びmにSK-Br3細胞を暴露すると、FASN活性が、それぞれ77%、44%、及び77%まで低減した。
【0099】
これらをもとに、化合物f、i及びqは、SK-Br3乳癌細胞に際だった細胞毒性効果を有し(EGCGのIC50、149.8±19.8μMと比較して、それぞれIC50=21.3±6.7μM、28.7±0.3μM、及び4±1μM)、さらにFASN活性に最も大きな阻害を示す(細胞暴露の24時間後、FASN活性は50%低減、図1)。またさらに、正常な線維芽細胞は、IC50に対して同様の濃度では、化合物f、i及びqによる影響は受けなかった。
要約すると、化合物f、i及びqの癌細胞の成長阻害とFASN発現との間に、目立った相関関係は観察されなかった。
【0100】
実施例35.カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT-1)アッセイ
発現プラスミドpRCPT-Iβ/pHW010(Gebre Woldegiorgis,Beaverton, Oregon. Published in Woldegiorgis Gらにより公開. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2004, 325, 660-4から提供)を、AvrIIを用いて消化させることにより、GAP遺伝子プロモータにおいて直鎖状にし、エレクトロポレーションにより、P. pastoris GS115のGAPp遺伝子座に組み込んだ。ヒスチジン原栄養形質転換体をYNDプレートにおいて選択し、YND培地において成長させた。予め記載したガラスビーズを用いて、酵母細胞を崩壊させることにより、ミトコンドリアを単離した。
【0101】
CPT活性を、予め記載したようなL-[H]カルニチンを使用する、前方交換法(forward exchange method)によりアッセイした(Nicot,Cら, Biochem. Biophys. Res. Comm. 2004, 325, 2745-7)。全容量0.5mLにおいて、標準的な酵素アッセイ混合物は、0.2mMのL-[H]カルニチン(〜5000dpm/nmol)、80μMのパルミトイル-CoA、20mMのHEPES(pH7.0)、1%の脂肪酸を含有しないアルブミン、及び40-75mMのKClを含有し、示したように、マロニル-CoAは含有するか含有しない。単離された無傷の酵母ミトコンドリアを添加することにより、反応を開始させた。反応は4分までは直線状であり、全てのインキュベートを30℃で3分実施した。6%の過塩素酸を添加することにより、反応を停止させ、ついで、2000rpmで7分遠心分離した。得られたペレットを水に懸濁させ、生成物[H]パルミトイルカルニチンを、低pHで、ブタノールを用いて抽出した。2000rpmで2分遠心分離をした後に、ブタノール相のアリコートを、放射能を計測するために、バイアルに移した。
【0102】
これらのアッセイから得られた結果を、以下の表2に付与する。正の活性の参照として、化合物C75を使用し、負の活性の参照として、EGCGを使用した(Breast Cancer Res Treat 2008, 109:471-479)。

図2に示すように、CPT-1は、コントロール化合物C75によりかなり活性化され(129±6%まで)、興味あることに、化合物f、i、q、e及びoはCPT-1活性、脂肪酸酸化を調節する一因である酵素を刺激しなかった。CPT-1活性を刺激することなく、最も重要なこととして、インビボにおける減量を誘発させることなく(データを図示せず)、それらの抗腫瘍効果が生じる。
【0103】
実施例36.FASN、p185HER2/neu、ホスホ-p185HER2/neu、抗-ERK1/2、抗-ホスホ-ERK1/2、抗-AKt、抗-ホスホ-AKTSer473及びPARPの免疫ブロット分析
所望の濃度及び時間間隔で、研究される化合物を用いてSK-Br3細胞を処理した後、トリプシン-EDTA溶液で処理することにより細胞を収集し、PBSで2回洗浄し、−80℃で保存した。溶解バッファー(1mMのEDTA、150mMのNaCl、100μg/mLのPMSF、及び50mMのトリス-HCl、pH7.5)に、細胞を溶解させ、4℃で保持し、それらを30分間、渦において、2分毎に常套的に混合した。BioRadアッセイ(Bio-Rad Laboratories)により、タンパク質含有量を測定するため、サンプルを取り出した。同量のタンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)サンプルバッファー(Laemmli)におおて、95℃で5分加熱し、3-8%のSDS-ポリアクリルアミドゲル(FASN、p185HER2/neu、ホスホ-p185HER2/neu)、又は4-12%のSDS-ポリアクリルアミドゲル(AKT、ホスホ-AKT、ERK1/2、ホスホ-ERK1/2及びPARP)において分離させ、ニトロセルロース膜に移した。ブロック用バッファー(TBS-T[10mMのトリス-HCI、pH8.0、150mMのNaCl、及び0.05%のトゥイーン-20]に2.5%のパウダー状のスキムミルクが入ったもの)において、室温で1時間、膜をインキュベートし、非特異的な抗体結合を防止させた。使用した主要な抗体はモノクローナル抗体であった。抗体希釈液をブロック用溶液において調製し、ブロットをモノクローナル抗体と共に、4℃で一晩インキュベートした。TBS-Tにおいて3x5分洗浄した後、抗-マウスIgGペルオキシダーゼコンジュゲートと共に、ブロットを1時間インキュベートし、市販のキット(West Pico chemiluminescent substrate)を使用して明らかにした。タンパク質の荷重及び移動をコントロールするために、β-アクチンに対する抗体を用いて、ブロットを再度調べた。
【0104】
ポリ-ADP-リボースポリメラーゼ(PARP)に対するウエスタンブロット分析を、化合物f(30μM)及び化合物i(30μM)に対して、12、24及び48時間暴露させたSK-Br3細胞において実施した。アポトーシス及びカスパーゼ活性化の誘発が、PARPの切断を示すウエスタンブロット分析により確認された。化合物f及びiを用いた処理により、89KDaのPARP切断の生成物が、時間依存性方式でかなり増加する結果となった。
【0105】
我々は、FASN阻害剤(C75及びEGCG)が、アポトーシスを誘発し、SK-Br3乳癌細胞(HER2の過剰発現モデル)において、癌遺伝子HER2、及びそれらの下流シグナル伝達経路ERK1/2及びPI3/AKTの活性化をブロックすることを、予め報告している。我々は、HER2、AKT及びERK1/2活性化における、化合物f(30μM)及び化合物i(30μM)の時間依存性効果を試験した。我々は、化合物f及びiを用いた処理の6時間後、p-HER2タンパク質のレベルが、全体的に低下していることを観察した。事実、化合物f及びiへの暴露後2時間以内に、p-HER2タンパク質の発現レベルはかなり低下していた。この期間中、ウエスタンブロット分析により、又はHER2-特異性ELISAにより評価した場合、全HER2のレベルに有意な変化はなかった。
【0106】
また、p-ERK1/2タンパク質の活性も、誘導体f及びiでの処理の6時間後に、かなり低減していることが示された。さらに、p-AKTタンパク質の発現レベルは、化合物f及びiでの処理の6時間後に低下していることも示された。いずれにおいても、p-AKTの際だった低減は、化合物fを用いた処理の24時間後、及び化合物iを用いた処理の12時間後に観察された。この期間中、それぞれのタンパク質の全レベルにおいて、有意な変化はなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)

[上式中、
、R、R、R、R、R、R及びRは独立して、H、(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、NH、(C-C)アルキルエステル、CONH、(C-C)アルキルアミド、CF、及びヒドロキシルからなる群から選択され;
Y及びZはそれぞれ独立して、C及びNから選択され;
Xは、各環が5−6員であり、芳香族、又は部分的に不飽和の、分離又は縮合した2−3の環を含む既知の環系の一つから誘導されるビラジカルであり;各環は、(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、NH、(C-C)アルキルエステル、CONH及び(C-C)アルキルアミドからなる群から選択される一又は複数の基で置換されていてもよく;環員の各一が、C、N、O及びSから独立して選択され;
但し、Xは、クロマン、アントラセン、式:

のビラジカル、又は化合物2,6-ビス[(3,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレンではない]
の化合物、その立体異性体、その薬学的に許容可能な塩、又はその薬学的に許容可能な溶媒和物。
【請求項2】
Xが、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン及びビフェニルからなる群から選択され、場合によっては、それぞれが(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、ニトロ、ハロゲン、NH、(C-C)アルキルエステル、CONH及び(C-C)アルキルアミドからなる群から選択される一又は複数の基で置換されていてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xがナフタレン及びビフェニルからなる群から選択され、場合によっては、それぞれが(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、ニトロ、ハロゲン、及び(C-C)アルキルエステルからなる群から選択される一又は複数の基で置換されていてもよい、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Xが、

[上式中、各環系は、H、(C-C)-アルキル、及び(C-C)アルキルエステルから選択される一又は複数の基で置換されていてもよい]
からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
Xが、

[上式中、R、R、R、R及びRは独立して、H、(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、NH、(C-C)アルキルエステル、CONH及び(C-C)アルキルアミドからなる群から選択される]
から選択されるビフェニルである、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
Xが、

[上式中、R、R、R及びRは独立して、H、(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、NH、(C-C)アルキルエステル、CONH及び(C-C)アルキルアミドからなる群から選択される]
から選択されるテトラヒドロナフタレンである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
、R、R、R及びRの少なくとも2つがヒドロキシルである、請求項1から6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
次の化合物:
2,3-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(e);
1,3-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(f);
1,3-ビス[(3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(g);
1,3-ビス[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(h);
1,4-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(i);
1,4-ビス[(3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(j);
1,4-ビス[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(k);
2,6-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(l);
1,5-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(m);
2,5-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(o);
6-(ベンゾイルオキシ)-1,1'-ビフェニル-3-イル-3,4,5-トリヒドロキシベンゾアート(p);
4,4'-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(q);
4,4'-ビス[(2,6-ジヒドロキシイソニコチノイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(r);
4,4'-ビス[(3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(s);
4,4'-ビス[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(t);
4'-[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル-4-イル-4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシベンゾアート(u);
4'-[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル-4-イル-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシベンゾアート(v);
1,3-ビス[(4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(w);
1,3-ビス[(3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(x);
1,3-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン(y);
1,4-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン(z);
1,4-ビス[(3,5-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾイル)オキシ]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン(aa);
4-[(3,5-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾイル)オキシ]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル-3,4,5-トリヒドロキシベンゾアート(bb);
メチル-1-[(4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-4-[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-2-ナフトアート(cc);
メチル-1-[(3-ヒドロキシベンゾイル)オキシ]-4-[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-2-ナフトアート(dd);
メチル-1-[(4-ヒドロキシベンゾイル)オキシ]-4-[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-2-ナフトアート(ee)
から選択される、請求項1から7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
次の化合物:
1,3-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(f);
1,3-ビス[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(h);
1,4-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(i);
2,5-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(o);
4,4'-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(q);
2,3-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(e);
1,4-ビス[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(k);
2,6-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(l);
1,5-ビス[(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(m);
4,4'-ビス[(3,5-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル(s);
4'-[(3,4-ジヒドロキシベンゾイル)オキシ]-1,1'-ビフェニル-4-イル-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシベンゾアート(v);及び
1,3-ビス[(3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシベンゾイル)オキシ]ナフタレン(x);
から選択される、請求項8に記載の化合物
【請求項10】
適切な量の薬学的に許容可能な希釈剤又は担体と組合せて、Xがクロマン又は

のものではない、請求項1に記載の式(I)の化合物を有効量含有する薬学的組成物。
【請求項11】
ヒトにおいて、FASNにより媒介される疾患、及び関連する臨床的兆候の処置及び/又は予防用の医薬を製造するための、Xがクロマン又は

のものではない、請求項1に記載の式(I)の化合物の使用であって、該疾患が癌及び肥満症から選択される使用。
【請求項12】
癌が、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、慢性リンパ芽球性白血病、ヘアリーセル白血病、慢性リンパ性白血病、末梢性T細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、エプスタイン-バーウイルス-陽性T細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、ホジキン病、びまん性侵攻性リンパ腫、急性リンパ性白血病、Tガンマリンパ球増殖性疾患、皮膚B細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、セザリー症候群、急性骨髄性白血病、慢性又は急性のリンパ芽球性白血病、ヘアリーセル白血病、肉腫、骨肉腫、乳癌、扁平上皮癌、エプスタイン-バーウイルス-陽性上咽頭癌、グリオーマ、結腸、胃、前立腺、腎臓の細胞、子宮頸部及び卵巣の癌、肺癌、小細胞肺癌、及び非小細胞肺癌からなる群から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
癌が、胸部、前立腺、結腸、卵巣、子宮内膜、中皮、肺、甲状腺、胃及び脳の癌からなる群から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
癌に関連した兆候が、癌関連性の悪液質、疲労、無力症、悪液質の腫瘍随伴症候群、及び高カルシウム血症から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
Xがクロマン、アントラセン、又は式

のビラジカルではない、請求項1に記載の式(I)の化合物の調製方法であって、
a)次の式(II)

[上式中、Xは請求項1に記載の通りである]
のジヒドロキシ誘導体を、式(III)のカルボン酸及び式(IV)のカルボン酸

[上式中、Y、Z及びR-Rは請求項1に記載の通りであり;Gp及びGpはそれぞれ独立して、ヒドロキシル保護基である]
と反応させて、式(V)

[上式中、Gp、Gp及びR-Rは請求項1に記載の通りである]
の化合物を得、
b)式(V)の化合物を脱保護して、保護基を除去し;
c)場合によっては、式(I)の化合物を、その薬学的に許容可能な塩に転換し;及び/又は式(I)の化合物の異性体の混合物を分離して、他の異性体が実質的に含まれない該異性体の一を分離し;及び/又はそれをそのプロドラッグに変換する、
工程を含んでなる方法。
【請求項16】
請求項10に記載の薬学的組成物、再構成剤、及び癌の処置又は予防のために組合せた各作用物質の使用のための使用説明書を収容する別個の容器を含んでなるキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−531335(P2010−531335A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513910(P2010−513910)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058099
【国際公開番号】WO2009/000864
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(510000356)フンダシオ プリバーダ インスティテュート ディンベスティガシオ ビオメディカ デ ジロナ ドクター. ホセプ トルエタ (1)
【出願人】(510000367)ユニベルシダード コンプルテンセ デ マドリッド (1)
【Fターム(参考)】