説明

脂質代謝改善用組成物

【課題】本発明は脂質代謝の改善を図る組成物を開示する。
【解決手段】本発明は、cis9,trans11-共役リノール酸と、魚油を有効成分として含んでなる、脂質代謝改善用組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、cis9,trans11-共役リノール酸と、魚油を有効成分として含んでなる脂質代謝改善用組成物、飲食物、健康(補助)食品、飼料、または医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
動物(「人」を含む。以下同じである。)において、食喰(飲食物)から得た脂質は、小腸から吸収され、リンパ系を経由し、キロミクロンとして肝臓外の体組織で利用される。また、肝臓からの脂質は超低密度リポタンパク質(以下、「VLDL」と略称する。)の一部とされ、血液を経由し、体組織に輸送され、体組織表面のリポプロティンリパーゼの働きにより遊離脂肪酸に分解されエネルギーとして消費される。脂肪組織(脂肪細胞)にあっては、トリアシルグリセロールの加水分解化と(再)エステル化が不可逆的に行われ、脂質の蓄積と分解とが行われている。
【0003】
従って、動物は、過剰なエネルギーを摂取することにより、脂質代謝が脂肪の蓄積に傾き促進することとなる。この為、血中のVLDL濃度の上昇、低密度リポタンパク質(以下、「LDL」と略称する。)濃度の上昇、血中トリアシルグリセロール(以下、「TG」と略称する。)濃度の上昇、及び血中コレステロール(以下、「C」と略称する。)及び血中コレステロールエステル(以下、「CE」と略称する。)濃度の上昇をもたらし、さらには油滴が小腸、肝臓に蓄積されると云われている。この結果、いわゆる高トリアシルグセロール血症、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、肥満、糖尿病、高血圧症等に例示される生活習慣病、冠動脈疾患、脳動脈疾患等の様々な病気を引き起す一因となっている。従って、血中におけるTGとC及びCEの濃度を低下させると共に、血中LDL濃度を低下させる組成物を摂取することにより、これらの病気を予防、改善し、又は治療することが期待される。
【0004】
近年、肥満の防止または解消する相乗効果を発揮させる物質として、例えば、特許公開2003−116487号(特許文献1)によれば、アミノ酸ペプタイド、ギムネマシルベスタ、共役リノール酸、異性化リノール酸、難消化性デキストリン及びコ・エンザイムQ10を含んでなる、痩身用食品が提案されている。この提案は、各消化器官における脂質吸収抑制作用を主要としてなされたものとされている。また、国際公開WO00/64854号(特許文献2)によれば、脂質代謝改善効果、抗肥満効果、高脂血症予防又は治療を目的として、有効成分としての共役二重結合を有する共役脂肪酸、好ましくは共役リノール酸を分子内に有する共役脂肪酸グリセリドと、医薬上許容される成分とを含んでなる、経口薬剤が提案されている。
【0005】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、脂質代謝を改善する有用な物質は未だ提案されていない。
【特許文献1】特開平11−60557号
【特許文献2】国際公開WO00/64854号
【発明の概要】
【0006】
本発明者等は、本発明時において、cis9,trans11-共役リノール酸と、魚油と有効成分として組み合わせることにより、動物の脂質代謝を有効に改善することができることを見出した。このことから、本発明者等は、本発明時において、cis9,trans11-共役リノール酸と、魚油を有効成分として含んでなる、脂質代謝改善用組成物、飲食物、健康(補助)食品、飼料、及び医薬組成物を提供することができるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
従って、本発明は、cis9,trans11-共役リノール酸と、魚油を有効成分として含んでなる、脂質代謝改善用組成物等を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
脂質代謝改善用組成物/脂質代謝改善剤
定義
本発明において、用語「脂質代謝改善」とは、脂質代謝において、体組織または血中、リンパ(リンパ組織)中に存在する脂質及びその成分(脂肪酸)を分解(分解促進)させること、体組織(特に、脂肪組織)に脂質及びその成分が蓄積することを予防、抑制すること、及び体組織(特に、脂肪組織)に蓄積した脂質及びその成分を低減すること等を意味する。具体的には、「脂質代謝改善」という用語には、食喰により摂取した脂質及びその成分が血中(特に、血清)、リンパ(リンパ組織)中に高濃度で存在することを予防、抑制すること、血中、リンパ(リンパ組織)中に高濃度で存在する脂質を低減させること、食喰により摂取した脂質及びその成分が体組織に蓄積されることを予防、抑制すること、体組織に蓄積された脂質及びその成分を分解若しくは低減すること、又は体組織に蓄積された脂質及びその成分が血中に放出された際に、血中(特に、血清)に存在する脂質及びその成分を分解し、若しくはそれらの濃度を低下させること等が挙げられる。従って、本発明によるcis9,trans11-共役リノール酸と、魚油との混合組成物は、脂質代謝改善として下記する様々な機能(用途)を有する。
【0008】
1.cis9,trans11-共役リノール酸
cis9,trans11-共役リノール酸は本発明における有効成分の一つである。cis9,trans11-共役リノール酸は、例えば、リノール酸を含む食用油(サフラワー油、ヒマワリ油等)又は高純度リノール酸を原料とし、リノール酸を共役リノール酸に転化するアルカリ共役化反応およびエステル化反応を行い、その後に精製分離する公知の方法により得ることができる。また、本出願人が既に特許出願した特開2004−248671号(この出願内容は本願明細書の内容の一部をなす。)に開示された共役リノール酸異性体の精製方法により好ましくは得ることができる。
【0009】
この方法を簡単に説明すると、(1)リパーゼの存在下、共役リノール酸の異性体混合物を構成成分とするグリセリドを、有機溶媒を含まない反応系で加水分解し、(2)得られたグリセリドを、リパーゼの存在下で更に1回以上、加水分解し、(3)cis9,trans11-共役リノール酸を遊離脂肪酸画分中に濃縮し、t10,c12-共役リノール酸をグリセリド画分中に濃縮し、(4)得られた遊離脂肪酸画分をグリセリンとエステル化することにより、cis9,trans11-共役リノール酸高含有グリセリドを得ることができる方法である。さらにcis9,trans11-共役リノール酸高含有グリセリドを精製工程に付すことにより、cis9,trans11-共役リノール酸を得ることができる。
【0010】
cis9,trans11-共役リノール酸の添加量は、脂質代謝改善用組成物の全質量に対して、5質量%以上95質量%以下程度であり、好ましくは下限が10質量%以上であり上限が95質量%以下程度である。
【0011】
本発明にあっては、cis9,trans11-共役リノール酸は、遊離脂肪酸、遊離脂肪酸の塩、遊離脂肪酸エステル、脂肪酸誘導体、及びこれらの二種類以上の混合物からなる群から選択された形態のものとして、脂質代謝改善用組成物に含まれてよい。
遊離脂肪酸の形態
cis9,trans11-共役リノール酸の遊離脂肪酸は、様々な方法で得ることができる。例えば、特開2004−248671号に開示されている方法が挙げられる。具体的には、(1)共役リノール酸の異性体混合物を構成成分とするグリセリド(通常トリグリセリドを主成分とし、ジグリセリド、モノグリセリドも含む)をリパーゼの存在下、有機溶媒を含まない反応系で選択的に加水分解し、cis9,trans11-共役リノール酸を遊離脂肪酸として得ることができる。また、(2)共役リノール酸の異性体混合物を、リパーゼの存在下、有機溶媒を含まない反応系で食品加工に利用できるアルコール(好ましくはメントール、ステロ一ル、グリセリン等)で選択的エステル化し、cis9,trans11-共役リノール酸をエステル体として回収し、得られたエステル体は更に加水分解して、cis9,trans11-共役リノール酸高含有遊離脂肪酸として得ることができる。
【0012】
遊離脂肪酸の塩形態
cis9,trans11-共役リノール酸が、その遊離脂肪酸の塩の形態である具体例としては、cis9,trans11-共役リノール酸の遊離脂肪酸の、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、及びこれらの二種以上の混合物、複塩、錯塩からなる群から選択されるものとして存在することができ、好ましくは、ナトリウム、カルシウムの塩として存在することができる。cis9,trans11-共役リノール酸の遊離脂肪酸の塩とする場合には、cis9,trans11-共役リノール酸の遊離脂肪酸を、通常の酵素反応によって容易に反応させることにより得ることができる。
【0013】
遊離脂肪酸エステル形態
cis9,trans11-共役リノール酸が、遊離脂肪酸エステル形態である具体例としては、cis9,trans11-共役リノール酸の遊離脂肪酸と、炭素数1〜10のアルコール、エチレングルコール、プロピレングリコール、グリセリン及びこれらの二種以上の混合物からなる群から選択されたものとのエステルの形態として存在することができる。具体的には、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、モノ、ジ、多価アルコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の形態が挙げられ、より具体的には、メントールエステル、ステロールエステル等の形態が挙げられる。cis9,trans11-共役リノール酸の遊離脂肪酸エステル形態は、上記した遊離脂肪酸形態のものを、上記したアルコール等とエステル反応をさせることにより得ることができる。例えば、(1)特開2004−248671号に開示されている方法、具体的には、cis9,trans11-共役リノール酸の遊離脂肪酸グリセリンとエステル化することによってグリセリドとして得ることができる。(2)共役リノール酸の異性体混合物を、リパーゼの存在下、有機溶媒を含まない反応系で食品加工に利用できるアルコール(好ましくはメントール、ステロ一ル、グリセリン等)で選択的エステル化しcis9,trans11-共役リノール酸のエステル化物を得ることができる。
【0014】
脂肪酸誘導体の形態
cis9,trans11-共役リノール酸が、脂肪酸誘導体形態である具体例としては、アスコルビン酸誘導体、脂肪酸メチル、脂肪酸エチル、塩化アシル、ヨウ化アシル、臭化アシル、フッ化アシル、脂肪酸ダイマー、トリマー、ポリマー等が例示される。これら誘導体を得る方法は、得ようとするそれぞれの誘導体に合わせて適宜行うことができる。
【0015】
2.魚油
魚油は、本発明における有効成分の一つである。魚油は、湖水域、汽水域、海水域のいずれに生息する魚の油であってよい。魚油の具体例としては、鰺、鰯、鯖、鰹、縞鰺、ヒラマサ、間八、鰤、鮪、鰆、秋刀魚、飛び魚、鰊、マナガツオ、イカナゴ、梭子魚、鮭、鱈、鮟鱇、ハタハタ、鱧、河豚、鱒、鰈、鮃、鱚、鱸、伊佐木、イトヨリ、真鯛、黒鯛、メバル等から採取されるものが挙げられる。精製した魚油を用いる場合には、上記魚油をさらに、脱ガム、脱水処理、脱酸処理、脱色処理、脱蝋処理、脱臭処理、ろ過処理等の工程によって精製する方法が好ましくは挙げられる。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、魚油は、エイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸を含んでなるもの、または、これら自体が好ましくは利用される。魚油の添加量は、脂質代謝改善用組成物の全質量に対して、5質量%以上95質量%以下であり、好ましくは下限が10質量%以上であり上限が90質量%以下程度である。
【0017】
機能、特性
cis9,trans11-共役リノール酸と、魚油とを有効成分として含んでなる脂質代謝改善用組成物の機能及び特性は具体的には以下の通りである。本発明による脂質代謝改善用組成物が動物に投与されると、血中(特に血清)、リンパ(リンパ組織)中及び/又は体組織におけるトリアシルグセロール、コレステロール及び/又はコレステロールエステルの濃度が低下され、血中、リンパ(リンパ組織)中及び/又は体組織におけるコレステロールの分解を促進させる。つまり、本発明による脂質代謝改善用組成物は、血中、リンパ(リンパ組織)中及び/又は体組織におけるトリアシルグリセロール、コレステロール及び/又はコレステロールエステルの濃度を低下させ、また、体組織に蓄積されたこれらの成分を減少させ、さらに、これら成分が体組織に蓄積されることを有効に防止する。また、本発明による脂質代謝改善用組成物は、血中、リンパ(リンパ組織)中及び/又は体組織における低密度リポタンパク質の濃度を低下させ、及び/又は、血中、リンパ(リンパ組織)中及び/又は体組織における高密度リポタンパク質の濃度を上昇させるものと思われる。
【0018】
用途
本発明によるcis9,trans11-共役リノール酸と、魚油とを有効成分として含んでなる脂質代謝改善用組成物は、生活習慣病の予防、治療、改善をなし得るものである。「生活習慣病」とは、食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣がその発症、進行に関与する疾患群をいうものと厚生労働省により定義され、食事に起因する成人肥満症、小児高度肥満、栄養失調症、拒食症、糖尿病、胃がん、大腸がん、痛風、高脂血症、高血圧、動脈硬化症、腎臓結石、心筋梗塞、胃潰瘍、腎臓病、骨粗しょう症、歯周囲炎、飲酒に起因するアルコール性肝炎、脂肪肝、肝硬変肝臓がん、喫煙に起因する肺がん、慢性気管支炎、肺気腫、歯周病、脳卒中、心臓病、休養または睡眠に起因する過労死、不眠症などの病態が挙げられる。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による脂質代謝改善用組成物は、アテローム性動脈硬化症、肥満、高コレステロール血症、高トリアシルグセロール血症、高脂血病、脂肪肝、糖尿病、及び高血圧からなる群から選択される少なくとも一種又は二種以上の症状を予防し、改善し、又は治療する為に使用される。
【0020】
本発明による脂質代謝改善用組成物の摂取量は、動物の種類、性別、成長、体重等により変動しうるが、成人(60kg)1日当たり1mg以上、上限は敢えて限定されないが20g以下、好ましくは下限が0.1g以上であり上限が10g以下程度であってよい。
【0021】
本発明における脂質代謝改善用組成物の形状はいずれのものであってよく、液体、固体、半固体、ゲル体等であってよい。また、本発明における脂質代謝改善用組成物は、有効成分としてcis9,trans11-共役リノール酸と、魚油を含んでなるものであるが、それ以外の任意成分を含んでなるものであってよい。任意成分は、動物が摂取した際に安全なものであればいずれのものであってよく、具体的には、後記する飲食物、健康(補助)食品、飼料又は医薬組成物において説明されるものと同様であってよい。
【0022】
飲食物
本発明の好ましい態様によれば、本発明による脂質代謝改善用組成物を含んでなる飲食物が提案される。本発明による脂質代謝改善用組成物を含んでなる飲料物の形態は、液体、固形、半固形、グミ、ゼリー等の形態を問わないものである。本発明による脂質代謝改善用組成物を含んでなる飲食物の具体例としては、液体飲料、果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、茶、栄養補助飲料等の飲料食品;パン、めん類、ごはん、菓子類(ビスケット、ケーキ、キャンデー、チョコレート、和菓子)、豆腐およびその他の加工食品;清酒、焼酎、リキュール、薬用酒、みりん、食酢、醤油、味噌などの発酵食品;食用油脂などの油脂食品;ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージなどの畜産加工食品;かまぼこ、さつま揚げ、半片等の練り製品、干物等の水産加工食品等が挙げられる。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による脂質代謝改善用組成物を含んでなる飲食物として、油脂食品(脂肪酸、グリセリド)が好ましくは提案される。本発明による油脂食品は、上記した食用油脂のみならず、食用油脂組成物(植物性油脂、動物性油脂、加工油脂等)、食用乳化油脂組成物(バター、ラード、マヨネーズ、クリーム、ショートニング、マーガリン等)、調理用添加物(弁当、惣菜等)として利用される。
【0024】
本発明による飲食物は、本発明による脂質代謝改善用組成物の含有量が、飲食物の全質量に対して、5質量%以上95質量%以下であり、好ましくは下限が10質量%以上であり上限が90質量%以下程度である。
【0025】
健康(補助)食品
本発明の好ましい態様によれば、本発明による脂質代謝改善用組成物を含んでなる健康(補助)食品が提案される。本発明による健康(補助)食品は、本発明による脂質代謝改善用組成物を含んでなる食材であってよい。食材の具体例は先の飲食物において説明したのと同様であってよい。また、本発明による健康(補助)食品は、本発明による脂質代謝改善用組成物に、食品安全のある、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、香料、酸味料、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、着色料、食品添加物、調味料等と混合したものであってもよい。また、健康補助食品とする場合、栄養補助剤として、ローヤルゼリー、ビタミン類、アミノ酸類、プロテイン、キトサン、レシチン等と配合され、さらに糖液等を加えたものであってよい。
【0026】
本発明による健康(補助)食品は、通常の方法により、例えば錠剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、顆粒剤、固形剤、散剤、粉末剤、丸剤、溶剤、チュアブル剤、ドリンク剤、ドレッシング類、菓子類等の形態に製造することができる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、本発明による健康(補助)食品は、その包装容器又は包装紙等において、脂質代謝改善のための表示を伴った形態で提供される。
【0028】
本発明による健康(補助)食品は、本発明による脂質代謝改善用組成物の含有量が、健康(補助)食品の全質量に対して、5質量%以上95質量%以下であり、好ましくは下限が10質量%以上であり上限が90質量%以下程度である。
【0029】
飼料
本発明の好ましい態様によれば、本発明による脂質代謝改善用組成物を含んでなる飼料が提案される。本発明による飼料は、本発明による脂質代謝改善用組成物に、飼料安全のある、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、香料、酵素、微生物製剤、酸化防止剤、増粘剤、着色料、飼料添加物、調味料等と混合したものであってもよい。本発明による飼料は、通常の方法により、例えば、固体、半固体、液体等の形態に製造することができる。本発明による飼料は、動物、特に家畜、ペットに使用することができる。
【0030】
本発明の別の態様によれば、本発明による飼料は、その包装容器又は包装紙等において、脂質代謝改善のための表示を伴った形態で提供される。
【0031】
本発明による飼料は、本発明による脂質代謝改善用組成物の含有量が、飼料の全質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下であり、好ましくは下限が0.1質量%以上であり上限が30質量%以下程度であり、より好ましくは下限が1質量%以上であり上限が10質量%以下程度であってよい。
【0032】
医薬組成物
本発明の別の態様によれば、cis9,trans11-共役リノール酸と、魚油とを有効成分として含んでなる、脂質代謝改善用医薬組成物が提案される。cis9,trans11-共役リノール酸と、魚油の内容は、先の脂質代謝改善用組成物において説明したのと同様であってよい。本発明による医薬組成物は、生活習慣病、好ましくは、アテローム性動脈硬化症、肥満、高コレステロール血症、高トリアシルグセロール血症、高脂血症、脂肪肝、糖尿病、及び高血圧からなる群から選択される少なくとも一種又は二種以上の症状を予防し、改善し又は治療する為に使用される。
【0033】
脂質代謝改善用医薬組成物は、その効果をより確実なものとするために、有効成分としてのcis9,trans11-共役リノール酸と、魚油に、例えば、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、矯味剤、安定化剤等の薬学上許容される担体または添加剤を適宜選択し、配合して調製されてなるものが好ましい。
【0034】
賦形剤の具体例としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、炭酸水素ナトリウム、ショ糖、マンニトール、デンプン、結晶セルロース、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、エチルセルロース、メタクリル酸コポリマー等が挙げられる。結合剤の具体例としては、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ブドウ糖、白糖、トラガント、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。崩壊剤の具体例としては、デンプン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロールナトリウム、クロスポピドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、天然油脂およびロウ類のポリオキシエチレン誘導体、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーおよびブロックコポリマー型界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩、リン脂質、胆汁酸塩、脂肪酸、一価アルコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。保存剤の具体例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、バンジルアルコール等が挙げられる。着色剤の具体例としては通常、医薬品及び食品の分野で使用されるものが挙げられる。矯味剤としては、アミノエチルスルホン酸、アルギン酸ナトリウム、エタノール等が挙げられる。
【0035】
本発明による脂質代謝改善用医薬組成物は、経口および非経口(例えば、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で、人を含む動物に投与することができる。従って、本発明による脂質代謝改善用医薬組成物は、投与経路に応じた適切な剤形として提供されることが好ましい。例えば、注射液、カプセル剤、錠剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、チュアブル剤、固形剤、顆粒剤、散剤、溶剤、丸剤、細粒剤、ドリンク剤、軟膏剤、クリーム剤、トローチ錠等の経口剤、直腸投与剤等の種々に調製することができる。
【0036】
本発明による脂質代謝改善用医薬組成物は、cis9,trans11-共役リノール酸を、医薬組成物の全質量に対して、5質量%以上95質量%以下であり、好ましくは下限が10質量%以上であり上限が90質量%以下程度である。また、本発明による脂質代謝改善用医薬組成物は、魚油を、医薬組成物の全質量に対して、5質量%以上95質量%以下であり、好ましくは下限が10質量%以上であり上限が90質量%以下程度である。
【0037】
本発明による脂質代謝改善用医薬組成物の投与量は、治療目的、治療対象等により可変であり、一定量は一概に定めることはできないが、治療上有効な投与量としては、例えば、体重60kgの成人の場合、1日当たり10mg以上5g以下程度、好ましくは下限値が20mg以上であり上限値が3g以下程度である。
【実施の態様】
【0038】
本発明の内容を、以下の実施例により詳細に説明するが、本発明の内容はこれら実施例によって限定して解釈されるものではない。
【0039】
マウス飼育
Charles River Japan社より購入した、ICRマウス(雄、5週齢)を温度(20〜22℃)、湿度(55〜65%)、明暗条件(午前7時から午後7時まで点灯)で調節された室内で1匹ずつケージに入れて飼育した。市販の固形食 (Type NMF、オリエンタル酵母)を7日間与える予備飼育を行った後に、4群(1群7〜8匹)に分け、下記の実施例及び比較例の通り、組成の異なる実験飼料を22日間自由摂食として与えた。
【0040】
与えた実験飼料の基本組成(重量%)は以下の通りであった。脂肪として使用した魚油は、日本油脂(株)製(商品名DHA27)であり、脂肪酸組成(重量%)は14:0, 2.2; 16:0, 13.1;16:1(n-7),6.9; 18:0, 3.0; 18:1(n-9), 21.5; 18:2(n-6), 2.1; 18:3(n-3), 0.7; 20:4(n-6), 3.0; 20:5(n-3), 10.0; 22:4(n-6), 0.7; 22:5 (n-6), 1.7; 22:5(n-3), 2.6および 22:6(n-3), 32.6であった。
実験飼料の基本組成(重量%)
カゼイン 20
脂肪酸 0.4
脂肪 14.6
コーンスターチ 15
セルロース 2
AIN 76ミネラル混合 3.5
AIN 76ビタミン混合 1
DL−メチオニン 0.3
重酒石酸コリン 0.2
スクロース 43
【0041】
実施例1
実験飼料の基本組成において、脂肪酸として0.4重量%のcis9,trans11-共役リノール酸と、脂肪として6重量%の魚油と8.6重量%パーム油を添加して実験試料を調製した。
比較例1
実験飼料の基本組成において、脂肪酸として0.4重量%のリノール酸と、脂肪として14.6重量%パーム油を添加して実験試料を調製した。
比較例2
実験飼料の基本組成において、脂肪酸として0.4重量%のリノール酸と、脂肪として6質量%の魚油と8.6重量%パーム油を添加して実験試料を調製した。
比較例3
実験飼料の基本組成において、脂肪酸として0.4重量%のcis9,trans11-共役リノール酸と、脂肪として14.6重量%パーム油を添加して実験試料を調製した。
【0042】
評価試験
実施例と比較例の実験試料を与えた一群のマウスを、飼育期間終了後、エーテル麻酔を施し、下部大静脈より採血し、屠殺後肝臓を摘出した。得られた3000xg血液を、20分間遠心分離し血清を得た。血清および摘出した肝臓は凍結(−30℃)保存した。
【0043】
血清脂質濃度評価試験
得られた凍結血清中のトリアシルグリセロール、コレステロールおよびリン脂質濃度は和光純薬製の酵素法によるキットを用いて測定した(それぞれトリグリセライド E-テストワコー、コレステロール E-テストワコーおよびリン脂質C-テストワコー)。
【0044】
肝臓脂質濃度評価試験
得られた凍結肝臓からホルチ法により肝臓脂質を抽出し、トリアシルグリセロール、コレステロールを測定した。脂質抽出(ホルチ法)、トリアシルグリセロール測定、コレステロール測定は下記の通り行った。
ホルチ法
凍結肝臓0.2〜0.3gに3mLのメタノールを加え、ポリトロン型ホモジナイザーで磨り潰し、25mL容積のメスフラスコに移した。さらに、4mLのメタノールと14mLのクロロホルムを数回に分けてホモジナイザーし、容器を洗浄し、全て抽出液と混合した。抽出液を40℃で30分間加温し、室温へ戻した後、クロロホルム/メタノール(2:1,v/v)溶液で25mLに定容した。抽出液を濾過(アドバンテック社製「濾紙No.2」)し、濾液を定量した。濾液に約20%(v/v)の精製水を加え、静かに撹拌した後、一晩静置して、2層に分離した。上層の水層部を捨て、下層のクロロホルム層にメタノールを加えて20mLとし、抽出液とした。
トリアシルグリセロール測定法
得られた抽出液2mLを10mL容積スピンチューブに入れ、窒素下で乾燥した。5mLのクロロホルム、0.4gのSilic Acid 100Mesh(和光純薬(株)製)を加え、強く撹拌した。3000rpmで5分間遠心し、上層1mLを別の試験管に移した。ここで、トリアシルグリセロールの標準液として、トリオレイン(和光純薬(株)製)125μg/mL・クロロホルム/メタノール(2:1、v/v)溶液を用意し、以下、同様の操作を行い、検量線を作成した。抽出液、標準液それぞれを窒素下で乾燥した。2mLのイソプロパノール/精製水(9:1、v/v)、0.6mLの水酸化カリウム(5g/100mLイソプロパノール/精製水(40:60))溶液を加え、65℃で20分間加温後、室温に戻した。1mLの3mMNaIO溶液(溶媒;イソプロパノール/1N酢酸(20:80))を加え、強く撹拌した。0.5mLのアセチルアセトン溶液(0.75mLのアセチルアセトン、2.5mLのイソプロパノール、100mLの2M酢酸アンモニウムの混合溶液)を加え、強く撹拌し、50℃で30分間加温した。室温に戻して、405nmの吸光度を測定し、検量線よりトリアシルグリセロール含量を算出した。
コレステロール測定法
得られた抽出液1.2mLを試験管にとり、窒素下で乾燥した。1mLのエタノール、0.2mLの4N水酸化カリウムを加え、強く撹拌後、65℃で20分間加温した。1mLの精製水を添加後、約3mLのヘキサンで3回抽出した。ヘキサン層を別のチューブに移し、3回分を混合した。ここで、サンプルとは別にコレステロール標準液(和光純薬(株)製、50μg/2mLクロロホルム/メタノール(2:1))を用意し、以下、同様の操作を行い、検量線を作成した。サンプル溶液、標準液をそれぞれ窒素下で乾燥し、0.125mLのブタノールを加えて強く撹拌した。その後、3mLの0.5mL/L TritonX−100を含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.7)を加え撹拌した後、240nmの吸光度を測定した(OD1)。再度、試験管へ戻し、25μLのコレステロール酸化酵素溶液(東洋紡(株)製、0.5unit/25μL;0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.7),0.5mL/L TritonX−100)を加え撹拌し、37℃で1時間インキュベートした。室温に戻した後、240nmの吸光度を測定した(OD2)。ΔOD(OD2−OD1)の値を用いて、検量線を作成し、抽出液中のコレステロール含量を算出した。
【0045】
評価試験により得られた血清および肝臓中の脂質分析の結果を表1に示す。
表1
実施例1 比較例1 比較例2 比較例3
血清脂質濃度(μmol/dl)
トリグリセリド 99.9 166 145 165
コレステロール 287 570 407 517
リン脂質 255 488 339 471
肝臓脂質濃度(μmol/g)
トリグリセリド 17.8 63.2 37.0 64.0
コレステロール 4.75 6.85 5.16 6.83

評価結果
表1の通り、実施例1は、比較例1乃至3のものと比較して、TG、C、リン脂質濃度の低下が著しいことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
cis9,trans11-共役リノール酸と、魚油を有効成分として含んでなる、脂質代謝改善用組成物。
【請求項2】
cis9,trans11-共役リノール酸が、遊離脂肪酸、遊離脂肪酸の塩、遊離脂肪酸エステル、脂肪酸誘導体、及びこれらの二種類以上の混合物からなる群から選択された形態のものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記遊離脂肪酸の塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、及びこれらの二種以上の混合物からなる群から選択されたものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記遊離脂肪酸エステルが、前記遊離脂肪酸と、炭素数1〜10のアルコール、エチレングルコール、プロピレングリコール、グリセリン及びこれらの二種以上の混合物からなる群から選択されたものとのエステルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記魚油が、前記組成物の全質量に対して、5質量%以上95質量%以下で含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記魚油が、エイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
血液中、リンパ中及び/又は体組織におけるトリアシルグリセロール、コレステロール及び/又はコレステロールエステルの濃度を低下させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
アテローム性動脈硬化症、肥満、高コレステロール血症、高トリアシルグリセロール血症、高脂血症、脂肪肝、糖尿病、及び高血圧からなる群から選択される少なくとも一種又は二種以上の症状を予防又は治療する為に使用される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、飲食物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、健康食品。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、飼料。
【請求項12】
cis9,trans11-共役リノール酸と、魚油を有効成分として含んでなる、脂質代謝改善用医薬組成物。
【請求項13】
前記cis9,trans11-共役リノール酸が請求項2〜4のいずれか一項により定義されるものである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記魚油が、請求項5又は6により定義されるものである、請求項12又は13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
アテローム性動脈硬化症、肥満、高コレステロール血症、高トリアシルグリセロール血症、高脂血症、脂肪肝、糖尿病、及び高血圧からなる群から選択される少なくとも一種又は二種以上の症状を予防又は治療する為に使用される、請求項12〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2007−314492(P2007−314492A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148770(P2006−148770)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】