説明

脂質低下薬を経口腔粘膜投与する処方物(formulation)

脂質低下薬を経口腔粘膜投与するための処方物。本発明は、1種類以上の脂質低下薬有効成分(好ましくは、スタチン族から選択された有効成分)を経口腔粘膜投与で送達するための処方物に関する。前記処方物は、塩基形又は塩形の前記有効成分と、アルコール度数を30度以上に設定した水性アルコール溶液と、オプションのpH調整剤及び/又は酸化防止剤とを有し、前記有効成分は、水性アルコール溶液に完全に溶解して安定した状態となっている。本発明は又、高脂血症及び/又は心血管疾病の治療及び予防を目的とした、前記処方物の調剤方法と、好ましくは1回分ずつ包装した形での前記処方物の使用法とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種類以上の脂質低下薬有効成分(特にスタチン系に属する有効成分)を経口腔粘膜ルートから瞬時に全身投薬するための処方物に関する。
本発明はまた、当該処方物の調剤方法及び医薬用途に関する。医薬用途の点では、特に高脂血症の治療及び/又は心血管疾病の予防及び治療に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界的な医薬市場における大きな部分を、心血管疾病の治療又は予防を目的とした製品が占めている。こうした製品は、相当な割合で、高コレステロール血症を含む高脂血症の治療を目的とした脂質低下薬分子を含んでいる。
脂質低下薬とは、血中の脂質のレベルを下げること、特にコレステロールの生成を抑制することのできる医薬有効成分である。いくつかの脂質低下薬は、コレステロール前駆体(すなわちメバロナート)の合成に使われる肝臓細胞酵素であるHMG CoA還元酵素の活動を抑制することにより、肝臓におけるコレステロールの内性合成を減らすことが主要な機能である。
【0003】
脂質低下薬有効成分には様々なものがある。
特によく知られているのはスタチン族であり、中でも、アトルバスタチン、プラバスタチン、シムバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、ロスバスタチンが有名である。
全ての脂質低下薬と同様、スタチン分子も、HMG CoA還元酵素の活動を抑制することでコレステロールの合成を減らす。ただし、スタチン分子は更に、動脈内皮にあるアテロームプラクを減らすことで、虚血性症候群を予防又は抑制するという潜在能力を有している。さらに、スタチンを使用した長期治療では、最初の脳虚血発作の後、一次性の心筋梗塞や二次性の再発症状(event)の発生が相当程度まで防止される。
【0004】
更に、別のクラスに属するフィブラート(フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、エゼチミブなど)も知られている。これらの分子は主に、腸壁からのコレステロールの吸収を減らす形で作用する(吸収領域は「刷子縁粘膜」として知られている)。対照的に、これらは主たるコレステロールの肝臓合成に対しては効果がなく、そのため、スタチンを用いた治療と組み合わされる補助的又は付随的な治療法に留まり、いくつかの特殊性の高い事例で、通常はスタチンを用いた治療と同時に処方される。
【0005】
脂質低下薬全般、特にスタチンは、経口投与されるのが普通である。
静脈注射による投与の実験も行われてきた。しかし、迅速で効果もあがるものの、高コレステロール血症に対して毎日行われる基本的治療や心臓発作予防には適していない。輸液の形での投与は、専任の人員を当てて専用の装置を使用する必要がある。これはコスト高であり、患者への負担もあまりに大きい。患者としては、最も簡単で利用が容易な外来治療が望ましい。
【0006】
経口投与の形として最もよく知られているのは、錠剤やカプセルによるものである。
しかし、脂質低下薬(とりわけスタチン)は、それが有する物理化学的特性及び薬理学的特性から、全身的な生体利用度及び活性に関する問題が生じる。そうした特性のいくつかは、経口投与される量によっては、不耐性の問題、主に消化管及び筋肉の問題を引き起こす。
【0007】
これは、ほとんどの場合、これらの低分子量分子の性質が脂肪親和性又は両親媒性であることに起因する。消化管や胃に導入されると、これら低分子量分子には、いわゆる「消化管ファーストパス(digestive first pass)」効果が生じる。これは、胃の環境や腸管生理における変化に関連した劣化や損失を指す。pHが強い酸性である胃の後には十二指腸を通過し、更にその次の小腸では、既知の物理化学的又は酵素的な干渉が生じるが、こうした干渉は、脂質低下薬分子の吸収特性を変質、劣化させる場合がある。投与された脂質低下薬のうち、損なわれずに済んだ残りの部分は、吸収された後、腸間膜静脈網を通って門脈に達し、最終的に肝臓の肝小葉及び構造体(Disse腔として知られるもの)に至る。そしてここで、いわゆる「肝臓ファーストパス(hepatic first pass)」効果の影響を受ける。これにより、代謝及び/又は多少とも激しい効能低下が生じ、数多くの代謝物質が形成されるが、その一部は不活性及び/又は毒性のもので、副作用の一因ともなる。
【0008】
従って、実際に生態利用可能な有効成分の量は少ない:投与された量のうちの残余部分だけが肝臓に達し、HMG CoA還元酵素の活動を抑制して、内因性合成されるコレステロールを減らす働きをする。これら有効成分の生体利用度は、吸収時間についても、吸収される有効成分の割合についても、個人差がある。
例えば、残余部分の平均的な生体利用度としては、以下のような値が知られている:
・20ミリグラム(mg)又は40mgのロバスタチン又はシムバスタチンを投与した場合、投与量の5%程度;
・20mg又は40mgのプロバスタチンを投与した場合、投与量の17%程度;
・10mgから80mgのアトルバスタチンを投与した場合、投与量の12%から14%。
【0009】
加えて、摂取してからプラスマチックピーク(plasmatic peak)が表れるまでの時間が比較的長く、平均で1、2時間かかる。一部のスタチン分子は生体内の非常に広い範囲に分散する。これは、その性質が脂肪親和性であることに関連しており、その結果として、有効成分の大部分は広い生体空間(organ space)及び組織空間(tissue space)に分配されることになる。この空間の大きさは、アトルバスタチンの場合、600リットル(L)を上回る。このように極めて広い範囲に分散するメカニズムになっていることを考えれば、肝臓細胞において薬理学的効果を発揮するのが、有効成分のわずかな残余部分に限られることは明らかである。
【0010】
このように、大きな問題が生じる。
第1の課題は、充分な量の脂質低下薬を患者に投与することであり、その際には、人物の体重や、生体組織内での有効成分の希薄および分散を考慮し、HMG CoA還元酵素に作用する有意な有効部分がごく一部だけであっても、そのごく一部で効果が表れるように投与しなければならない。
【0011】
第2の課題は、脂質低下薬分子が作用し始めるまでの待ち時間であり、これは、生体内の代謝及び拡散に起因する。
さらにもう1つの課題は、副作用や不耐性(主に消化管及び筋肉の不耐性)の出現であり、これは、投与された分子から生じるいくつかの代謝生成物に関連している。
このように、現在使用されている唯一のルートである脂質低下薬の腸内投与は、決して満足のゆくものではなく、薬物動態的にも、薬理学的にも、そして治療的にも、より効率の高い投与の形を実現する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2008/079295号
【特許文献2】米国特許第6 440 453号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のことから、使用が簡単であると共にコストも比較的低く、容易に利用できる一方で侵襲性は特に強くはない、そして、生体利用可能な量の脂質低下薬を、吸収及び消化管の代謝の問題なしに瞬時に投与することで、迅速、効果的、継続的に、そして、高コレステロール血症及び/又は心血管疾病に最も適した効果/投与量比率で治療又は予防を行うことができる、というガレン処方物(galenic formulation)が今も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
こうした必要に応えるために、本発明が提案する脂質低下薬処方物は、生体利用度に関する問題なしに効果を発揮するのに必要な量だけを、直接かつ遅延なしに生体に送達することを可能にし、投与量/効果比率は、必要な薬理学的効果にとって理想的に適切な割合に可能な限り近い、というものである。
本発明の処方物は、1以上の脂質低下薬及び/又は心血管保護用の有効成分(特に、スタチン系から選択された有効成分)が瞬時に経粘膜投与されることを保証することのできる、非常に特別なガレン処方物であり、当該処方物は、脂質低下薬及び心血管保護の一方又は両方に用いられる前記有効成分と、前記有効成分が完全に溶解した安定状態において存在し、水とエタノールとから成る、アルコール度数を30度以上に設定した水性アルコール溶液と、オプションとしてのpH調整剤及び酸化防止剤の一方又は両方とを含む。
【0015】
本発明はまた、当該処方物の調剤方法と、高脂血症の治療及び/又は心血管疾病の予防及び/又は治療を目的とした当該処方物の用法とを提案する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の処方物による効果は、可能な限り少ない量で、脂質低下薬及び/又は心血管保護剤用の有効成分で得られる脂質低下薬効果及び/又は心血管疾病予防効果について最高の結果を得ることができる、というものである。唾液による希薄と嚥下とを防ぎ、それによって不都合な消化管を通過せずにすむため、1以上の脂質低下薬分子(具体的にはスタチン)に基づく医薬調剤物を瞬時に残らず経口腔粘膜通過させることができる。スタチンは、動脈の循環網を通って、ほぼ瞬時に、そして直接的に肝臓に送達され、HMG CoA還元酵素の抑制剤として働く。スタチンは早い段階で、直接的なルートによって、搬送路である微細動脈及び動脈血管網の全体に分配され、生体・組織内で前記有効成分の生体・組織分散が生じる前に、血管網の頭頂病変部と直接接触して潜在的なアテローム還元剤の役割を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
他の特徴及び効果については、以下の本発明の詳細な説明に見られる。詳細な説明は特にスタチンに集中しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、フィブラート(例えば、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、エゼチミブ)など、他の脂質低下薬及び/又は心血管保護剤用の有効成分にも当てはまる。
本発明は、第1の様態として、脂質低下薬及び/又は心血管保護に用いられる1以上の有効成分(特にスタチン族から選択された有効成分)を経口腔粘膜投与するための処方物を提供する。当該処方物は以下を含む:
・塩基形又は塩形の、脂質低下薬及び/又は心血管保護に用いられる1以上の前記有効成分;
・前記有効成分が安定し完全に溶解した状態で存在する、30度以上にアルコール度数を設定した、水とエタノールとからなる水性アルコール溶液;
・オプションとして、pH調整剤及び/又は酸化防止剤。
【0018】
有効成分は、水性アルコール溶液において安定して完全に溶解した状態で存在しており、そのため、前記有効成分は口腔粘膜から速やかに吸収することができる。
本発明の処方物は、好ましい構成として、有効成分と、水とエタノールとからなる水性アルコール溶液と、そして、オプションとしてのpH調整剤及び/又は酸化防止剤とから成る。
【0019】
「脂質低下薬及び/又は心血管保護剤用の有効成分」という表現は、以下のものを指す:
・脂質低下有効成分、すなわち、HMG CoA還元酵素を抑制し、血中の過剰なコレステロール及び/又はトリグリセリドに対して作用する何らかの分子;
・心血管保護有効成分、すなわち、心血管のリスクを軽減できる何らかの分子であって、とりわけ心臓発作、動脈の肥厚(thickness)、冠血管アテロームプラクなどのリスクを軽減することのできる分子;
・脂質低下薬と心血管保護剤との両方の効果を有すると考えられる有効成分、すなわち、高コレステロール血症の症状を大幅に軽減できると共に、心血管のリスクも軽減できるもの(例えば、アトルバスタチン、プラバスタチン)。
【0020】
分子が属する薬物療法のカテゴリは、その市販承認(又は”Notice of Compliance“)において定められている。
「経粘膜ルート」という表現は、脂肪親和性又は両親媒性の分子が、舌粘膜、舌下粘膜、歯茎粘膜、口蓋粘膜、頬粘膜又は口腔の他の粘膜を通過する受動経路(passive passage)を指す。
【0021】
また、「安定し完全に溶解した状態」との表現は、溶媒中で有効成分が弱イオン化された分子の状態になっている溶液状態を指し、この溶液状態では、不都合な再結晶が生じることはありえない。こうした、「完全に溶解して安定した状態」は、本発明の処方物の使用時に観察される。観察は、得られた溶液の視覚的外観の評価(透明度の測定)によって、次に濾過残留物(結晶出現の有無)のレベルで行う。そして、最終的には、温度及び相対湿度を様々に変化させながら中期的及び長期的な安定性追跡テストを行う。
【0022】
「X度にアルコール度数を設定した水性アルコール溶液」という表現は、Xに等しいアルコール度数を示す溶液を指す。そして、Xは、水性アルコール溶液に含まれる純粋(100度)アルコールの量と溶液全体の量との比率に当たる。水性アルコール溶液のアルコール度数は、水溶液の形成に用いられるアルコールの度数や水溶液の水/アルコール比率に応じて変化する。例えば、アルコールが100度で、水/アルコール比率が50/50の場合、それは、アルコール度数を50度に設定した水性アルコール溶液となる。
【0023】
「pH調整剤」とは、有効成分の物理化学的な特性を損なうことのない、何らかの酸剤(acid agent)又は塩基剤(base agent)のことである。
pH調整剤は、炭酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウム、1ナトリウムリン酸塩又は2ナトリウムリン酸塩、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム(NaOH)そして水酸化カリウム(KOH)から選択するのが好ましく、そしてまた、塩化水素剤、硫酸剤、リン酸剤、クエン酸剤、リンゴ酸剤、乳酸剤、コハク酸剤及び/又は酪酸剤から選択してもよい。
【0024】
「酸化防止剤」とは、分子が1以上の電子を損失するのを防止する剤を指し、陽子(H+)の損失を伴う場合がある。酸化防止剤は、ビタミンE、Cから選択するのが好ましい。
脂質低下薬及び/又は心血管保護剤用の有効成分は、塩基形又は塩形で存在する。
有効成分が塩基形でのみ存在する場合、本発明の処方物には、酸性pH調整剤を含ませるのが好ましい。
【0025】
有効成分が塩形(例えば、琥珀酸塩、塩化水素、硫酸塩の形)でのみ存在する場合、本発明の処方物には、塩基性pH調整剤を含ませることが好ましい。
非常に好適な実施の形態では、有効成分は塩基形で存在している。塩基形の脂質低下薬分子(特に塩基形のスタチン)は、塩形の場合よりも分子量が小さいため、本発明の処方物において、より容易に溶解し安定化するため、経口腔粘膜通過を速めるのに適している。
【0026】
こうした有効成分は、具体的にはスタチン族の分子から選択され、例えば、アトルバスタチン、プラバスタチン、シムバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、ロスバスタチンがある。有効成分は、塩基アトルバスタチン、塩基シムバスタチン、塩基ロバスタチン、メバスタチン、又は塩基ピバスタチンとするのが好ましい。同様に、有効成分は、フィブラート(例えば、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、エゼチミブ)から成るものとしてもよい。
【0027】
本発明の処方物は、体積で30%〜90%のエタノールと、体積で10%〜70%の水とを含む水性アルコール溶液の形とするのが好ましい。更には、本発明の処方物は、体積で40%〜85%のエタノールと、体積で15%〜60%の水とを含む水性アルコール溶液の形とするのがいっそう好ましい。
この水性アルコール溶液のアルコール度数は可変であって、30度以上であるが、30度から70度の範囲が好ましい。さらに、40度から70度の範囲であればより好ましく、45度から65度が理想的である。
【0028】
効果的な点として、水性アルコール溶液は本発明の処方物で使用する唯一の溶媒である。
さらに、水性アルコール溶液中のアルコールは、水に溶けない分子の希釈液としての働きだけでなく、経粘膜吸収の加速を促進する働きも有する、吸収の速度は用いられるアルコール度数に応じて上昇する。しかしながら、本処方物のアルコール度数は70度を上回ってはならない。度数が高くなれば、粘膜の火傷のおそれがあるため、口腔使用する医薬製品と組み合わせて使うことはできない。一例として、エタノール中のスタチンの溶解係数では、約50度のエタノール0.75ミリリットル(mL)に対し2ミリグラム(mg)ものスタチンという値で、前記有効成分を完全に溶解させることができる。当該係数は、必要なアルコール量、用いるアルコール度数及び水/エタノール比率に応じて調節すればよい。
【0029】
本発明の処方物のpHは、5.0〜9.0の範囲であり、5.5〜7.5の範囲とするのが好ましい。こうしたpH値であれば、溶液の吸収を最大にするのに都合がよい。
本発明の処方物によれば、有効成分は投与から数秒以内に受動的に口腔粘膜を通過することができる。このように吸収が非常に速いことにより、口腔環境に溶液及び有効成分が停滞する事態や、唾液との不都合な混合を防ぐことができる。唾液との混合は、劣化の原因となりやすく、有効成分の溶解の継続性及び安定性を損なう。また、このように遅延が短いことで、溶液や当該溶液に含まれる有効成分の嚥下反射も防止できる。
【0030】
溶液中に存在する本発明の有効成分は、粘膜を介して外面(external)上皮性膜に達する。この膜はホスホ脂質構造から成り、完全に溶解して安定した状態で存在する脂肪親和性分子は、選択的親和性により受動的にホスホ脂質構造に吸収される。有効成分が外面上皮性膜に達するのは、前記膜を挟んで反対側に向かおうとする浸透圧又は引圧の力による。ここには、溶解した有効成分の濃度と関連するアルコール溶液の濃度とが共に関与する。浸透圧の活性及び強さは、吸収促進剤として働くアルコールの程度と共に高まる。従って、強力な二重の浸透効果が生じる。この効果は、処方物におけるアルコールの度数が高いこと、そして、溶解した状態で粘膜と接触する有効成分の濃度が局所的に高濃度となること、の両方によって実現される。
【0031】
特に脂質低下薬(具体的にはスタチン)の場合、適切なアルコール度数は40〜70度の範囲であり、45〜65度の範囲が好ましい。この範囲であれば、分子の溶解及び安定に関して最善の係数を得られると同時に、係数の調節もでき、経粘膜通過を促進して遅延を4〜6秒にすることができる。
1つの特に適切な実施の形態は、1mg又は4mgのスタチンに対し、約50度又は65度のアルコールを含む1.0mLの水性アルコール溶液というものである。
【0032】
口の粘膜は、微小血管の密度が非常に高い擬スポンジ配列を有し、そのため、アルコール溶媒及び溶解した有効成分の分子は、上皮性膜の脂肪親和性の孔を通過し、直ちに舌下静脈や口腔粘膜排水(draining)静脈に捕らえられて頸静脈に運ばれ、そこから上大静脈そして心臓の右側に運ばれる。その後、脂質低下薬分子は、心臓の左側から全身の動脈に送られ、動脈は脂質低下薬分子を遅延なしに直接、肝臓細胞に分配する。つまり、脂質低下薬分子は、それらの代謝生命(metabolic life)に不可欠な栄養及び酸素と同じ血流に含まれた状態で肝細胞に到達する。更に、こうした脂質低下薬有効成分の通路は、動脈の内皮組織と接触しており、このことは、一部の有効成分が有する抗アテローム作用及び抗虚血作用にも寄与する。
【0033】
上記の現象はアルコールの存在によって加速される。アルコールは血管を拡張させるため、処方物と直接接触する箇所の粘膜で微小血管の流量が局所的に大きくなる。こうして、局所的に循環流量が大きくなるため、上皮性膜を挟んだ両側で均衡状態が生じることは決してない。口内では、吸収すべき分子がなくなってメカニズムが解消するまで、上皮性膜の外表面における濃度の方が高い状態が続く。
【0034】
このように、本発明のガレン処方物を使用すれば、所定量の脂質低下薬(具体的にはスタチン)が受動投与されるにあたって、脂質低下薬は粘膜上に置かれると直ちに吸収され、さらに、心血管ルートを通って即座に分配されるため、薬理学的作用に関して遅延が生じることがなく、消化管及び肝臓を通過することによる最初の悪影響も受けない。従って、本発明のガレン処方物によれば、処方物に含まれる脂質低下薬分子を即座に完全に組織に吸収させることができ、吸収後、脂質低下薬分子は生体の中心循環系で分配されて、急速な「フラッシュ(flash)」型の薬理学的反応を生じる。
【0035】
例えば、塩基形のスタチン2mgを溶解させた50度のエタノール溶液1.0mLから調剤した本発明のガレン処方物の場合、受動的かつほぼ瞬時に、充分に効果的な量の有効成分が投与される。有効成分は、動脈によって直接肝臓に、そして、肝臓細胞の中心に運ばれ、そこでHMG CoA還元酵素拮抗薬としての機能を発揮する。この2mgという量は、腸内ルートで投与した場合に生体利用されて効果を発揮すると認められる量に等しいか、これを上回る。腸内ルートでは、関係するスタチンにも左右されるが、生体利用される量は、最大でも通常投与量の5%から20%である。本発明の処方物の場合、経口腔粘膜投与によって送達された分量の生体利用度は、経口ルートで大量投与(high dose)して消化及び代謝後に得られる生体利用度に匹敵するか、非常に近いものとなる。
【0036】
また、アルコール度数を30度以上に設定した本発明の水性アルコール溶液には、脂肪親和性又は両親媒性の脂質低下薬分子(具体的にはスタチン分子)でも溶解させることができる効果があり、それによって、やはり脂肪親和性かつ選択的な口腔粘膜からの自然吸収が可能となると共に、抗菌保存剤を加えなくとも、医薬処方物を微生物汚染から守ることができる。
【0037】
すなわち、本発明の水性アルコール溶液は4重の効果がある:
・脂質低下薬有効成分(具体的には、低分子量の脂肪親和性又は両親媒性の分子であるスタチン族から選択されたもの)を溶かす溶媒として働き、当該脂質低下薬有効成分を完全に溶解し安定した状態に維持する;
・分子状態で脂肪親和性の口腔粘膜に与えられた当該溶解有効成分の経粘膜移動を促進する;
・アルコール度数によって粘膜吸収の速度を2つの形で速める。1つは浸透効果によってであり、もう1つは、微小血管を反射的に拡張させて局所的に微小循環流速を加速させることによる;
・それ自体の安定剤であり、そのため、従来のような添加物を使用しなくともよい。
【0038】
本発明の効果として、製造が非常に簡単であること、非常に優れたガレン安定性を実現すること、が挙げられる:極度に単純化した水/アルコール溶液であるため、有効成分の溶解を確実にできると共に、従前の医薬調剤物に通常使用されていた補形剤(防腐剤を含む)の大部分が不要になる。
これにより、製造コストを下げられると同時に、不耐性(intolerance)や有効成分と補形薬との間で生じうる相互作用のリスクを軽減することができる。
【0039】
もう一つの効果として、既存の脂質低下薬の薬物療法では薬の吸収が遅く、経口消化管ルートで投与から1〜2時間を要するのに対し、本発明のガレン処方物では、薬力学的作用が生じるまでの遅延が非常に短い。
本発明が提案する血管による送達は、ほぼ瞬間的に実現するので、低脂血症及び高コレステロール血症の治療、そして、心血管疾病の予防及び/又は治療に全くふさわしいものである。これにより、体重から考えて経口ルートで実際に生体利用可能なものに相当する製品を、患者自身が投与することが可能になる。これは瞬時(flash)静脈注射の効率に匹敵し、この種の投与を何千万もの患者の継続的な基本治療に利用することを妨げたり不都合にしたりする問題も生じない。
【0040】
これは、既存の脂質低下薬投与方法と比較すると、投与ルートとしてはるかに優れている。単純であると共に非外傷性投与が可能であり、更に、単価及び治療費に関しても魅力がある。
投与量/効果比率に関しては、少なくとも70%〜95%向上する。よって、本発明の処方物では、投与量が70%〜95%以上少なく、しかも、治療効果は遅延なしで得られる。投与された脂質低下剤モジュールは、大きな障害に直面することなく、動脈を介して肝臓細胞に瞬時に分配され、肝臓細胞に達するまでの時間は数秒である。そのため、投与される基本量は、脂質低下薬に求められる薬理学的活動を行わせるのに不可欠と一般に認識されている生体利用量と比較して、相当小さい。もちろん、この量は、求められる効果によって変わってくる。0.2mL〜2mLの範囲の水性アルコール溶液量に対し、有効成分は2mg〜8mgの範囲とするのが好ましい。投与量は、水性アルコール溶液1.0mLにつき、2mg〜4mgの範囲とするのが好ましい。
【0041】
その上、口腔粘膜の総吸収面積は極めて大きい(絨毛状襞組織の特性として面積が大きくなる)。そのため、本発明の処方物は、投与にあたって、嚥下されてしまったり本来と異なるルートに進んだりする、という問題が生じるリスクがない。また、極めて迅速な経粘膜通過が可能になることから、投与された有効成分がアルコールと混合したり、嚥下されたりする事態を防止できる。そして、本発明の処方物の更なる効果として、既存の処方物のいくつかで生じうる、様々な成分や補形剤のために粘膜が不安定になるという問題も生じない。
【0042】
さらに、アルコールの影響は問題にならない。例えば、50度のエタノール水性アルコール溶液0.75mLであれば、アルコールの血中濃度は、公式のWidmark基本式によれば、血液1リットルあたり0.005グラム(g)を下回る値にしかならない。これは、血液1リットルにつき0.5gと定めたフランスの法定許容量の100分の1である。さらに、アルコール溶液には初めに肺で排除が行われ、蒸気の形を取るエタノールを実質的に完全に除去することができる。エタノールは、生体に分配される前に、呼吸ルートを通して抽出されたり、発散したりするからである。こうして、アルコールベクター(vector)は、呼吸によって実質的にほぼ完全に除去される。
【0043】
本発明の第2の様態は、上述した処方物の調剤方法に関する。
本発明のガレン処方物の特に適切な製造方法は、以下の処理から成る:
・アルコールと精製水とを混合し、得られた混合物に1以上の脂質低下薬有効成分(例えば、スタチン族から選択した1以上の有効成分)を加える;
・オプションとして、酸化防止剤を加える;
・均一な懸濁液が得られるまで調剤物を撹拌する;
・オプションとして、5.0〜8.0の範囲の所望のpHが得られるまで、徐々にpH調整剤を加える;
・有効成分が完全に溶解するまで、さらに撹拌する;
・必要であれば、所望の量になるまで水を補う;
・濾過する。
【0044】
使用するエタノールは、無水エタノールでもよいが、95度のエタノールが好ましい。
好適な実施の形として、本発明の方法は以下の処理から成る:
・エタノールと精製水とを混合し、得られた混合物に塩基形又は塩形の脂質低下薬(好ましくは、スタチン族から選んだもの)を加える;
・オプションとして、酸化防止剤を加える;
・均一な懸濁液が得られるまで、好ましくは10分〜60分の間、調剤物を撹拌する;
・オプションとして、5.0〜8.0の範囲の所望のpHが得られるまで、徐々にpH調整剤を加える;
・有効成分が完全に溶解するまで、好ましくは5分〜30分の間、更に撹拌する;
・必要であれば、所望の量になるまで水を補う;
・濾過する。
【0045】
また、第1の変形例における本発明の方法は、以下の処理から成る:
・エタノールと水とを混合し、得られた混合物に塩基形の脂質低下薬有効成分(好ましくは、スタチン族から選んだもの)を加える;
・オプションとして、酸化防止剤を加える;
・均一な懸濁液が得られるまで、好ましくは10分〜60分の間、調剤物を撹拌する;
・5.0〜7の範囲、好ましくは6.0に近いpHが得られるまで、徐々に酸性pH調整剤を加える;
・有効成分が完全に溶解するまで、好ましくは5分〜30分の間、更に撹拌する;
・必要であれば、所望の量になるまで水を補う;
・5μmのフィルタを用いて濾過し、濾過後の調剤物を分けて1回分ずつビンに詰める。
【0046】
また、第2の変形例における本発明の方法は、以下の処理から成る:
・エタノールと水とを混合し、得られた混合物に塩形の脂質低下薬有効成分(好ましくは、スタチン族から選んだもの)を加える;
・オプションとして、酸化防止剤を加える;
・均一な懸濁液が得られるまで、好ましくは10分〜60分の間、調剤物を撹拌する;
・6.0〜8.0の範囲、好ましくは7.0に近いpHが得られるまで、徐々に塩基性pH調整剤を加える;
・有効成分が完全に溶解するまで、好ましくは5分〜30分の間、更に撹拌する;
・必要であれば、所望の量になるまで水を補う;
・5μmのフィルタを用いて濾過し、濾過後の調剤物を分けて1回分ずつビンに詰める。
【0047】
本発明は、脂質低下薬及び/又は心血管保護剤(特にスタチン、例えば、アトルバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、シムバスタチン)を、より少量で効果的に、瞬時に経粘膜全身投与するために用いられる。
本発明の処方物は、特に、高脂血症の治療及び/又は、心臓疾患の予防及び/又は治療を目的とした薬物療法の確立に用いられる。当該薬物療法は、非常に短い時間で医薬効果を発揮し、従前のものに比べて投与量も遥かに少ない。
【0048】
つまり、本発明は、経口腔粘膜ルートでの高脂血症治療を目的とした薬物療法を、本発明の処方物を用いて確立すること、そして、心血管疾病の予防及び/又は治療のために経口腔粘膜投与する薬物療法を、本発明の処方物を用いて確立することを目的とする。
本発明の処方物は、液体体積が非常に小さいため、投与も極めて容易である。患者は容易に、処方物を口の中に入れて、口中、歯茎、又は舌下の特定の狭い範囲の粘膜に直接接触させることができる。
【0049】
そして、本発明の最後の様態として、本処方物は特別な工業包装を必要とするが、これは、安全、簡単かつ人間工学的に使用できるようにすること、そして、空気との接触による有効成分の劣化やアルコールの損失の防止を目的としている。
1つの特定の実現形態では、不透明なガラスや可撓性の金属プラスチック又はプラスチックの包装を用いる。当該包装については、小型なものとし、充填は窒素などの不活性気体の中で行うのが好ましい。不活性気体の中で充填するのは、組成物の安定性を保つため、そして、酸素や放射を通さないようにするためである。こうした包装により、本発明の有効成分が水性アルコール溶液に溶解し、溶解した有効成分が長期間安定状態に保たれることが保証される。
【0050】
こうした形の包装については、本発明の溶液の置き位置を、適切な面積の粘膜と接触するよう厳密に決められるように、カニューレを設けるのが好ましい。
患者が快適に使用できるように、また、搬送が容易になるように、当該包装については、専用の密封包装を用いるのが好ましい。更には、本発明のガレン処方物は、有効成分を適正な量で提供するのに適した、0.5mL〜2mLを1回分とする包装に入れるのが好ましい。
【0051】
こうした包装は、搬送が簡単である点、そして、1日のいかなる時点でもガレン処方物を簡単に使用できる点で効果的である。
本発明のスタチンの処方物の例として挙げられるものは、体積が0.75mL又は1.00mLであって、約50度のアルコールを使用するものであり、特に、わずか数分の遅延で、肝臓系のレベルで効果的なコレステロール合成抑制作用を生じるものである:
処方物1:1mgのアトルバスタチン、1.0mLの50度アルコール
・塩基形のアトルバスタチン(有効成分):1.0mg
・95度エタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.5mL
・精製水(希釈剤):qsp 1.0mL
この第1の処方物の例は、下記の方法を用いて、1000回分(すなわち1.0L)をひとまとめに製造する。
【0052】
まず、ステンレス鋼タンクに、0.5Lの95%V/Vエタノールと0.5Lの精製水とを入れる。
水性アルコール溶液に塩基形のアトルバスタチン1gを加える。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌して、均一な懸濁液を得る。
完全に溶解するまで継続して撹拌する。
【0053】
5μmのポリプロピレンフィルタ又は類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1.2mLの1回分のビンに分けて詰める。
処方物2:5mgのアトルバスタチン、1.2mLの50度アルコール
・塩基形のアトルバスタチン(有効成分):5.0mg
・95度エタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.6mL
・精製水(希釈剤):qsp 1.2mL
・塩化水素酸(pH調整剤):qsp pH6.0
この第2の処方物の例は、下記の方法を用いて、1000回分(すなわち1.2L)をひとまとめに製造する。
【0054】
まず、ステンレス鋼タンクに、0.6Lの95%V/Vエタノールと0.25Lの精製水とを入れる。
水性アルコール溶液に塩基形のアトルバスタチン5gを加える。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌して、均一な懸濁液を得る。
その後、6に近いpH(±1)が得られるまで、塩化水素酸を徐々に加えていく。
【0055】
完全に溶解するまで継続して撹拌する。
精製水を補って溶液の体積を1.2Lとしてから、均一性を保証するために、調剤物を10分から30分の間撹拌する。
5μmのポリプロピレンフィルタ又は類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1.2mLの1回分のビンに分けて詰める。
処方物3:2mgのロバスタチン、1.0mLの50度アルコール
・塩基形のロバスタチン:2.0mg
・95度エタノール:0.5mL
・精製水:qsp 1mL
この処方物の例は、下記の方法を用いて、1000回分(すなわち1L)をひとまとめに製造する。
【0056】
まず、ステンレス鋼タンクに、0.5Lの95% V/Vエタノールと0.5Lの精製水とを入れる。
水性アルコール溶液に塩基形のロバスタチン2gを加える。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌して、完全に溶解した均一な懸濁液を得る。
【0057】
5μmのポリプロピレンフィルタ又は類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1.0mLの1回分のビンに分けて詰める。
処方物4:4mgのロバスタチン、1.0mLの65度アルコール
・塩基形のロバスタチン(有効成分):4.0mg
・95度エタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.65mL
・精製水(希釈剤):qsp 1.0mL
・HCl(pH調整剤):qsp pH7.0
この処方物の例は、下記の方法を用いて、1000回分(すなわち1.0L)をひとまとめに製造する。
【0058】
まず、ステンレス鋼タンクに、0.65Lの95% V/Vエタノールと0.350Lの精製水とを入れる。
水性アルコール溶液に塩基形のロバスタチン4gを加える。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌して、均一な懸濁液を得る。
その後、7に近いpH(±1)が得られるまで、塩化水素酸を徐々に加えていく。
【0059】
完全に溶解するまで継続して撹拌する。
5μmのポリプロピレンフィルタ又は類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1.0mLの1回分のビンに分けて詰める。
処方物5:2mgのシムバスタチン、1.0mLの65度アルコール
・塩基形のシムバスタチン(有効成分):2.0mg
・95度エタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.65mL
・精製水(希釈剤):qsp 1.0mL
・HCl(pH調整剤):qsp pH7.0
・ビタミンE TPGS(酸化防止剤):0.2mg
この処方物の例は、下記の方法を用いて、1000回分(すなわち1.0L)をひとまとめに製造する。
【0060】
まず、ステンレス鋼タンクに、0.650Lの95% V/Vエタノールと0.350Lの精製水とを入れる。
水性アルコール溶液に塩基形のシムバスタチン2gと0.2mgのビタミンE TPGSとを加える。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌して、均一な懸濁液を得る。
【0061】
その後、7.0に近いpH(±1)が得られるまで、塩化水素酸を徐々に加えていく。
完全に溶解するまで継続して撹拌する。
5μmのポリプロピレンフィルタ又は類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1.0mLの1回分のビンに分けて詰める。
処方物6:4mgのシムバスタチン、1.2mLの65度アルコール
・塩基形のシムバスタチン(有効成分):4.0mg
・95度エタノール(希釈剤兼吸収促進剤):0.80mL
・精製水(希釈剤):qsp 1.2mL
・HCl(pH調整剤):qsp pH7.0
・ビタミンE TPGS(酸化防止剤):0.2mg
この最後の処方物の例は、下記の方法を用いて、1000回分(1.2L)をひとまとめに製造する。
【0062】
まず、ステンレス鋼タンクに、0.800Lの95% V/Vエタノールと0.200Lの精製水とを入れる。
水性アルコール溶液に塩基形のシムバスタチン4gと0.2mgのビタミンE TPGSとを加える。
螺旋撹拌器を用い、調剤物を20〜40分の間撹拌して、均一な懸濁液を得る。
【0063】
その後、7.0に近いpH(±1)が得られるまで、塩化水素酸を徐々に加えていく。
完全に溶解するまで継続して撹拌する。
精製水を補って1.2Lの溶液としてから、均一性を保証するために、10分から30分の間調剤物を撹拌する。
5μmのポリプロピレンフィルタ又は類似のフィルタを用いて調剤物を濾過し、濾過後の調剤物を1.2mLの1回分のビンに分けて詰める。
【0064】
本発明が上述した例に限定されないことは、言うまでもなく明らかである。それどころか、変形例(特に脂質低下薬の特性に関する変形例)は、全て本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質低下薬及び心血管保護の一方又は両方に用いられる1以上の有効成分を経口粘膜投与するための処方物であって、
・脂質低下薬及び心血管保護の一方又は両方に用いられる前記有効成分と、
・前記有効成分が完全に溶解した安定状態において存在し、水とエタノールとから成る、アルコール度数を30度以上に設定した水性アルコール溶液と、
・オプションとしてのpH調整剤及び酸化防止剤の一方又は両方と、
を含むことを特徴とする処方物。
【請求項2】
pH調整剤は、炭酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウム、1ナトリウムリン酸塩又は2ナトリウムリン酸塩、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムから選択される、または、塩化水素酸剤、硫酸剤、琥珀酸剤、酪酸塩剤、リン酸剤、塩酸剤、リンゴ酸剤または乳酸剤から選択されること、
を特徴とする請求項1に記載の処方物。
【請求項3】
酸化防止剤は、ビタミンC、ビタミンEから選択されること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の処方物。
【請求項4】
有効成分は塩基形であり、pH調整剤は酸剤であること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項5】
有効成分は塩形であり、pH調整剤は塩基剤であること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項6】
pHが5.0〜9.0の範囲にあること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項7】
pHが5.5〜7.5の範囲にあること、
を特徴とする請求項6に記載の処方物。
【請求項8】
水性アルコール溶液のアルコール度数を30度から70度に設定してあること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項9】
水性アルコール溶液は、体積で30%から90%のアルコールと体積で10%から70%の水とから成ること、
を特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項10】
有効成分はスタチンから選択されること、
を特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項11】
有効成分はフィブラート又はエゼチミブから選択されること、
を特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の処方物。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の処方物を調剤する処方物調剤方法であって、
・アルコールと精製水とを混合し、その混合物に、脂質低下薬有効成分を1以上加える処理と;
・オプションとして、酸化防止剤を加える処理と;
・均一な懸濁液が得られるまで調剤物を撹拌する処理と;
・オプションとして、5.0から8.0の範囲のpHが得られるまで、pH調整剤を徐々に加える処理と、
・有効成分が完全に溶解するまで、さらに撹拌する処理と;
・必要な場合に、所望の量になるまで水を追加する処理と;
・濾過する処理と、
を有することを特徴とする処方物調剤方法。
【請求項13】
・エタノールと精製水とを混合し、その混合物に、スタチン族から選択された1以上の有効成分を塩基形又は塩型で加える処理と;
・オプションとして、酸化防止剤を加える処理と;
・均一な懸濁液が得られるまで、10分から60分の間、調剤物を撹拌する処理と;
・オプションとして、5.0から8.0の範囲のpHが得られるまで、pH調整剤を徐々に加える処理と、
・有効成分が完全に溶解するまで、5分から30分の間、さらに撹拌する処理と;
・必要な場合に所望の量になるまで水を追加する処理と;
・濾過する処理と、を有すること
を特徴とする請求項12に記載の処方物方法。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の処方物を、高脂血症の治療を目的とした経口腔粘膜投与を行う薬物療法の確立のために用いる、処方物使用方法。
【請求項15】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の処方物を、心血管疾病の防止及び治療の一方又は両方を目的とした経口腔粘膜投与を行う薬物療法の確立のために用いる、処方物使用方法。

【公表番号】特表2012−513454(P2012−513454A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542870(P2011−542870)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052591
【国際公開番号】WO2010/072950
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511148455)
【出願人】(511148503)
【Fターム(参考)】