説明

脈管境界を検出するための方法および装置

【課題】脈管境界をより正確かつ確実に検出すること。
【解決手段】画像内で、複数の距離にわってデータポイント間の強度変化に基づいて複数のエッジを検出し、前記複数のエッジからエッジセットを選択し、当該選択されたエッジセットに基づいて初期の脈管境界を定め、最終的な脈管境界を定めるために当該初期の脈管境界に形状記述子を適用する、ことを特徴とする、画像内で脈管境界を検出する方法およびこれに相応する装置およびコンピュータ読み出し可能な媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本願明細書に参照として取り入れられた2005年4月19日出願のアメリカ合衆国仮出願60/672,634号の便益を主張するものである。
【0002】
本発明は一般的に医療診断に関し、より詳細には医療画像における脈管境界(vessel boundaries)を定めることに関する。
【背景技術】
【0003】
患者の問題を診断するために、医療専門者はしばしば患者の脈管(例えば血管)を検査する必要がある。医療専門者が脈管を検査することができるように脈管を照明するために、患者はコントラスト増強剤を消費する(例えば飲む)。コントラスト増強剤は周辺領域に対して1つまたは複数の脈管を明るくする。
【0004】
多くのコントラスト増強された(CE)磁気共鳴血管造影法(MRA)およびコンピュータトモグラフィ血管造影法(CTA)の主な目的は診断および循環系における病理の質的または量的な評価である。病理箇所が特定されると、オリジナル2次元スライスデータまたは、より一般的には、ユーザによって選択された位置および配向で作成された2次元の多断面再フォーマット(multi planar reformat:MPR)画像上で量的な測定が行われる。狭窄の数量化において、脈管の断面積/半径プロファイルを作成することがしばしば望まれる。これによって同じ脈管の病理領域を健康な領域と比較することができる。
【0005】
脈管境界の正確なかつ確固とした検出は従来から困難な課題である。殊に、脈管境界検出アルゴリズムは正確かつ確実であり、このアルゴリズムが多くの種類の医療画像上で脈管境界を正確に検出するために使用可能でなければならない。脈管境界検出アルゴリズムが不正確であると(数少ないケースであったとしても)、コンピュータのアウトプットを信頼している医療専門家(例えばレントゲン技師)は患者を不正確に診断することになる。
【0006】
脈管境界の正確で確固とした検出が困難な課題であるのかには多くの理由がある。まず第1に、コンピュータトモグラフィ(CT)および磁気共鳴(MR)画像における甚大なノイズレベルの存在が、しばしば脈管内に強いエッジを形成してしまう(すなわち、データポイント間の強度変化)。第2に、脈管のサイズがある脈管位置と他の脈管位置とで変わる。これによって付加的なエッジが生じてしまう。第3に脈管境界の強度プロファイルが一方の側で拡散され、他方の側では浅くなる(例えば他の脈管または高いコントラス構造体の存在が原因で)。第4に、血管病理(例えば石灰化プラク)の存在によって、しばしば脈管断面境界の形状が円形と異なってしまう。これら全てによって、付加的なエッジが生じ、この付加的なエッジは脈管境界を正確に定めるのに悪影響を及ぼす。
【0007】
図1(a)には、脈管104に沿って異なったコントラストを有する脈管104の3次元図が示されている。特に脈管104の頂上部108は脈管104の底部112よりも明るい。なぜなら、造影剤が患者によって摂取されているからである。このコントラスト変化によって、結果として、脈管104の直交(すなわち横断面)図が使用される場合に、エッジが作成されてしまう。これらのエッジは、脈管104の境界を定めるのにアルゴリズムが使用される場合に誤りを生じさせる。
【0008】
図1(b)には、3つの脈管116,120,124の直交図が示されている。これらの3つの脈管116,120および124が接近している場合、1つの脈管境界を、それに隣接している脈管境界と区別するのはしばしば困難である。図1(c)には、2つの脈管128,132の直交図が示されている。各脈管境界を別の脈管境界と区別するのは困難である。なぜなら、境界の甚大な拡散134があるからである。
【0009】
上述の課題を解決するために用いられている種々の技術がある。例えば医療専門者は脈管の境界を、コンピュータ支援されたドローイングプログラムを使用して推定する。これは不正確なプロセスである。なぜなら、境界の推定は実際の境界と大幅に異なることがあるからである。
【0010】
他の例は、脈管中央線と直交する面に脈管境界をセグメント化する「スネーク」モデルである。このスネークモデルは典型的に、脈管の直径より狭い直径を有するチューブを脈管の表示内に挿入し、パラメータを使用して、このチューブを脈管の壁部に達するまで広げる。しかしパラメータの選択はしばしば初期に推定される。1つまたは複数のパラメータを不正確に選択することによって、実際の脈管境界を越えてチューブが広がってしまう。従って、このスネークモデルは常に正確な結果を提供するわけではない。
【0011】
上述の課題を解決する別の試みは、放射線伝播方法(ray propagation method)である。この方法は脈管のセグメント化に対する強度勾配およびその中央線の検出に基づく。しかし勾配強さそれ自体を使用することはしばしば確実なセグメント化には充分ではない。
【0012】
上述した問題を解決する別のアプローチは正規化ベクトルを介した明確なフロントプロパゲーションに基づく。これは、平滑拘束(smoothness constraints)を平均値シフトフィルタリングと結び付ける。特に、曲線発展方程式
【0013】
【数1】

が脈管境界に対して定められており、ここでC(s,t)は輪郭であり、S(x,y)は発展輪郭の速度であり、
【0014】
【数2】

はC(s,t)に対する正規化ベクトルである。この試みにおいて、輪郭C(s,t)がサンプリングされ、各サンプルの発展に時機を得て続いて、曲線発展方程式がベクトルの形に書き換えられる。放射線の速度、すなわちS(x,y)は画像情報および以前の形状(shape priors)に基づく。S(x,y)=S(x,y)+βS(x,y)が提案されており、ここでS(x,y)は画像不連続性を測定し、S(x,y)は以前の形状をあらわし、βはこれら2つの項のバランスを取る。画像不連続性は放射線に沿った平均値シフト手段分析を介して検出される。結合空間−レンジ領域(joint spatial-range domain)において機能する平均値シフト分析は、しばしば、画像における対象境界の確実な検出に使用される。ここでこの結合空間−レンジ領域では、2次元格子の空間が空間領域をあらわし、強度値の空間がレンジ領域を構成する。脈管境界が良好に分離されている場合には、この試みはしばしば効果的である。しかし空間、レンジ核フィルタサイズおよび/または平滑拘束のようなパラメータを脈管の確実なセグメント化のために推定するのはしばしば困難である。殊に、脈管が非常に良好に分離されていない場合には、平滑拘束に基づいた信号空間スケールおよび湾曲の使用は、正確な結果を得るためには典型的には充分ではない。
【0015】
従って、脈管境界をより正確かつ確実に検出する必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、脈管境界をより正確かつ確実に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題は、画像内で、複数の距離にわたったデータポイント間の強度変化に基づいて複数のエッジを検出し、前記複数のエッジからエッジセットを選択し、当該選択されたエッジセットに基づいて初期の脈管境界を定め、最終的な脈管境界を定めるために当該初期の脈管境界に形状記述子を適用する、ことを特徴とする、画像内で脈管境界を検出する方法によって解決される。さらに上述の課題は、画像内で、複数の距離にわってデータポイント間の強度変化に基づいて複数のエッジを検出する手段と;前記複数のエッジからエッジセットを選択する手段と;当該選択されたエッジセットに基づいて初期の脈管境界を定める手段と;最終的な脈管境界を定めるために当該初期の脈管境界に形状記述子を適用する手段;を含む、ことを特徴とする、画像内で脈管境界を検出する装置によって解決される。さらに上述の課題は、プロセッサ内で実行される、コンピュータプログラムインストラクションを含むコンピュータ読み出し可能な媒体であって、当該コンピュータプログラムインストラクションは、画像内で、複数の距離にわってデータポイント間の強度変化に基づいて複数のエッジを検出するステップと、前記複数のエッジからエッジセットを選択するステップと、当該選択されたエッジセットに基づいて初期の脈管境界を定めるステップと、最終的な脈管境界を定めるために当該初期の脈管境界に形状記述子を適用するステップとを含むステップを定める、ことを特徴とする、コンピュータ読み出し可能な媒体によって解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、画像内の脈管境界を検出する方法およびシステムである。境界を正確に検出するためには、脈管境界に関するエッジを正確に検出することが必要である。また脈管境界に関係しない他の構造体に関連するエッジを認識しないことが必要である。エッジは、複数の距離にわたったデータポイント間の強度変化に基づいて検出される。ある実施例では、エッジは脈管に沿った1つまたは複数の放射線の伝播によって検出される。その後、これらの検出されたエッジからエッジセットが選択される。さらに、正しくないエッジがこれらのエッジから除去される。選択されたエッジセット内の各エッジは、その強さ(strength)に基づいて選択される。
【0019】
その後、初期の脈管境界が選択されたエッジセットに基づいて定められる。この脈管は、初期の脈管境界を定めるために非網化構造体として定められる。形状記述子(shape descriptor)(例えば1つまたは複数の楕円形状記述子)が初期の脈管境界に対して適用され、最終的な脈管境界が定められる。
【0020】
本発明のこれらの利点および別の利点は、以下の詳細な説明および添付図面を参照することによって、当業者には明らかである。
【実施例】
【0021】
以下の説明は本発明を、本発明の実施形態を実行するために必要な処理ステップに関して説明する。これらのステップは、適切にプログラミングされたコンピュータによって実行される。このコンピュータの構成はこの分野においてよく知られている。適切なコンピュータが例えば公知のコンピュータプロセッサ、メモリユニット、記憶装置、コンピュータソフトウェアおよび他のコンポーネントを使用して実装される。このようなコンピュータのハイレベルブロックダイヤグラムが図2に示されている。コンピュータ202は、プロセッサ204を含む。このプロセッサは、この種の動作を定めるコンピュータプログラムインストラクションを実行することによってコンピュータ202の全体的な動作をコントロールする。このコンピュータプログラムインストラクションは記憶装置212(例えば磁気ディスク)内に記憶されており、コンピュータプログラムインストラクションの実行が所望されている場合に、メモリ210内にロードされてよい。コンピュータ202は、他のデバイスとのコミュニケーションのために1つまたは複数のインターフェース206も含む(例えば局部的にまたはネットワークを介して)。コンピュータ202はインプット/アウトプット208も有する。これは、コンピュータ202とのユーザインタラクションを可能にするデバイスをあらわす(例えばディスプレイ、キーボード、マウス、スピーカー、ボタン等)。当業者には、実際のコンピュータの実装は他のコンポーネントを含むことがあり、図2は分かり易くするために、この種のコンピュータの幾つかのコンポーネントのハイレベル表現であることがわかるだろう。さらに、当業者には、ここで説明される処理スステップが専用ハードウェアを用いて実行されてよいことがわかるだろう。このハードウェアの回路は特にこの種の処理ステップを実行するために構成されている。択一的に、この処理ステップが、ハードウェアとソフトウェアの様々な組み合わせを使用して実行されてよい。さらにこの処理ステップは、コンピュータ内で行われてもよく、または大きい機械(例えば医療画像機械)の一部でもよい。
【0022】
本発明に相応して、コンピュータ202は、マルチプルスケール(multiple scales)(すなわち、複数の距離にわたって)におけるエッジ検出のために平均値シフト分析の変位ベクトルを使用する。特に、1次元強度プロファイル(放射線)が、グレーレベルイメージから得られる。この放射線に沿った各ピクセルは、位置xおよび強度値lによって特徴付けられる。結果として、Nピクセルの入力放射線が、2次元点{x,l}の集団としてあらわされる。構成された2次元空間は前のように結合空間−強度領域と称される。その後、平均値シフトフィルタリングがこの結合領域に適用される。平均値シフトフィルタのアウトプットは変位ベクトル{d}を含む。これは、各空間点の空間移動を測定する。このアルゴリズムにおいて、この空間レンジ領域内の各点は平均値シフトオペレータを介して収束まで処理される。
【0023】
セグメント化の結果の確実性および正確性はしばしば、強く、平均値シフト分析の空間(σ)およびレンジ(σ)スケールパラメータの選択に依存する。なぜなら、脈管境界はしばしば多数の空間およびレンジスケール(spatial and range scales) 内にあるからである。コンピュータ202は、幾何学的形状に基づいたアルゴリズムを実行する。これは単独で、マルチプルスケールにおける脈管エッジ検出のために強度データのエッジ上でのみ機能する。
【0024】
図3には、典型的な脈管エッジの平均値シフトフィルタリングの図的表現が示されている。単独の断面脈管境界においてさえも、拡散エッジ、低コントラストエッジおよびギャップエッジがしばしば生じる(例えば図1(c)に示されているように)。コンピュータ202は、境界抽出方法を実行する。これは、放射線に沿った平均値シフトフィルタリングの異なった空間スケールから得られたエッジを結合させる。
【0025】
特に図3は、強度プロファイル316における高強度領域308(例えば明るい領域)から低強度領域312(例えば暗い領域)へのエッジの変遷304を示している。図3のx軸は、画像に沿った距離(すなわちスケール)を表しており、図3のy軸は、左および右の区間に対する強度を表し、中間区間における移動値を表している。変遷304が大きくなればなるほど(すなわち変遷の距離量が大きくなればなるほど)、典型的にエッジを検出するためにより多くの画像処理が必要とされる。言い換えれば、スケール(すなわち距離)が大きくなればなるほど、この変遷がエッジであると検出するためにより多くの画像処理が必要とされる。複数の目盛内に複数のエッジがあってよい。正確なエッジ特定のために、コンピュータ202はマルチプルスケールにおいてエッジを検出する。
【0026】
マルチプルスケールエッジから正しいエッジを得るために典型的に2つの主な困難性がある。第1に、強度データにノイズがあることが原因でマルチプルエラーエッジがしばしば、正しいエッジの近傍に存在する。これらのエッジは典型的には意味論的に正しい構造体、例えば脈管境界に一致しない。結果として、これらのエッジは消去されるべきである。第2に、境界の構造に一致している放射線に従った幾つかのエッジがしばしば存在する。脈管の境界に相応するこのエッジは、脈管の幾何学的形状の特性および知覚によるエッジ機構から定められる。ある実施形態では、放射線に沿った正しくないエッジの存在は、エッジ信頼度およびエッジ強さに基づいて除去される。
【0027】
画像320は変位ベクトルをあらわしている。変位ベクトルの発散(divergence)は、強度のローカルモードに相応する。すなわち強度データのクラスター化に相応する。固有のスケール(σ)が選択されると、この強度データは、平均値シフトによってエッジ周辺で局部的にクラスター化される。この局部的なクラスター化が、エッジ信頼度を定めるために使用される。このエッジ信頼度は、局部的クラスター化の存在をチェックすることによって、エッジの妥当性を測定する。特に位置lでのスケール(σxk)に対するエッジ信頼度は、
【0028】
【数3】

によって得られる。
【0029】
ここでMはフィルタのサイズであり、Iはjでの平滑化された強度であり、Iは収束点の強度値、すなわち局部的な強度モードに一致する。エッジ周辺で局部的なクラスター化が形成されている場合にはこの測定は1に近づき、そうでない場合には0に近づく。ある実施例では、低い信頼度(例えば0.4より低い)を有するエッジが消去される。低い信頼度を有するエッジを、拡散されたエッジ上での小さい目盛りの平均値シフトフィルタリングを適用して形成してもよい。
【0030】
ある実施形態では、高い信頼度のエッジが正しいエッジの近傍にも生じる。これらの正しくないエッジを除去するために、エッジのエッジ強さ(edge strength)が定められる。このエッジ強さは、エッジ位置での強度と収束位置での強度との間の強度差である。収束位置は空間的な位置に一致する。ここでは変位ベクトルが平均値シフトフィルタリングの後で終了する。特に、エッジ位置iのエッジ強さはE(i)=2|l−l|によって表される。ここでlは、収束点の強度値である。各発散位置に対して2つの収束位置があることに注意されたい。理想的な条件(すなわち良好に隔離されたステップエッジ)においては、エッジ強さはlの選択に基づいて変化しない。この仮説は典型的には本当のままでなく、コンピュータ202は正しいものを選択する。
【0031】
イメージ324はフィルタリングされた強度とオリジナルの強度を一緒に示している。オリジナルの強度を表している部分は線328である(左側の区間でも示されている)。
【0032】
図4は、ギャップエッジでの、エッジ検出に基づいた平均値シフトの図的表現400を示している(すなわち、ここでは近くの構造体が強度プロファイルを著しく変える)。平均値シフトフィルタリングを詳細に分析することによって、エッジ位置およびエッジ強さが、フィルタの片側から正確に計算されることが示されている。ある実施形態では、エッジ強さはこの片側から測定される。正しい側面は、この側面のエッジ信頼度から定められる。殊に、ある実施形態では、より高いエッジ信頼度を与える側面がエッジ強さのために選択される。その後エッジはその強さおよびローカルモードに基づいて除去される。他のエッジのローカルモードの下にそれが位置していない場合には、エッジは正しいエッジである。これが他のエッジのローカルモード内にある場合には、これはより高いエッジ強さを有しているはずである。エッジのローカルモードは、その収束点間の間隔に一致する。
【0033】
正しいサイズの平均値シフトが使用されている場合には、正しいエッジ位置が得られる(イメージ404に示されている)。より大きいスケールの平均値シフトはエッジを左へ移動させ、エッジ強さEを低くする。
【0034】
図5は、脈管の断面境界に一致するエッジを選択するためのアルゴリズムを示すフローチャートである。顕著なエッジを選択するアルゴリズム504、エッジグループ分けアルゴリズム508、楕円形状記述子から脈管境界を定めるためのアルゴリズム512が実装されている。
【0035】
顕著なエッジを選択するアルゴリズム504は、脈管が他の明るい構造内に組み込まれていないと過程する。従ってこの脈管は局部的に暗い背景によって取り囲まれる。この仮定は以下で「非網化構造体(no nested structures)」仮定と称される。この仮定は、脈管が完全に、暗く見える血小板(plaques)によって取り囲まれている場合に当てはまる。マルチスケールエッジからの顕著なエッジはこの「非網化構造体仮定」によって定められる。脈管内に顕著なノイズがない場合には、幾何学形状的に、シードポイント(seed point)から放射線に沿って伝播する間に遭遇する最初の顕著なエッジ(強さ)が、しばしば脈管境界と一致する。従って、右側に(外へ)より顕著なエッジが存在している場合には、エッジがエッジマップから消去される。数学的に、Esi<kEsj、ここでj>i≧0またはkEsi<Esj、ここでi>j≧0である場合には、エッジEは消去される。kは、エッジの相対的な強さを特定するパラメータである。ある実施例では、コンピュータは、マルチプルスケールから顕著なエッジを選択するためにk値の領域を適用する。例えばkは、0.1,0.2,0.3,0.5,0.7および0.9に設定され、顕著なエッジの全てが単独のイメージ内でマークされる。
【0036】
図6は、マークされたエッジを伴う脈管を含む複数のイメージを示している。例えばイメージ604は脈管608を含む。これはエッジ612のようなエッジを有する。イメージ604は、エッジ616のような、脈管608に関連しない他のエッジも含む。同じように、イメージ620は脈管628のエッジ624のようなエッジと、脈管628に関連しないエッジ632を有する。上述したアルゴリズムを使用して、顕著なエッジが選択され、他のエッジ(例えば616および632)は除去される。この顕著なエッジの選択はイメージ636および640に示されている。各脈管608,628に関連しないエッジの多くが除去されている。
【0037】
エッジグループ分けアルゴリズム508がその後実行される。エッジグループ分けアルゴリズム508は、エッジを、カーブ644,648のような「長い平滑なカーブ」に組織化する。
【0038】
図7(a)は、エッジ704,708の局部的なグループ分けダイヤグラムを示している。エッジグループ分けダイヤグラム508は、エッジエレメント(すなわちエッジ704,708)間の角度Q712,および距離(長さ)L716を利用する。特に、エッジグループ分けは3つのエッジエレメントからスタートする。これらは、平滑なカーブセグメントを形成する。すなわち小さい角度Q712である。カーブはその後、近隣角度に基づいてより多くのエッジエレメントを加えることによって2つの方向に広がる。複数のエッジエレメントが、カーブセグメントの拡がりの間の平滑化に対する「良好な」候補である場合には、分岐点が形成され、この分岐点から新たなカーブセグメントが初期化される。この反復エッジグループ分けは、全てのエッジエレメントが局部的なグループ分けに対して考慮されると終了する。このグループ分けアルゴリズムはエッジをカーブセグメントセット{C,...,C}に変える。
【0039】
顕著なエッジから平滑なカーブセグメントセットが得られた後に、1つまたは複数の形状記述子が適用される。ある実施例では楕円形状記述子が用いられる。このアルゴリズムの目的は、kカーブセグメントのサブセットを選択することである。これは脈管の断面境界に一致する。これは、全ての幾何学的に可能なカーブセグメントのサブセットを考慮し、楕円に最も近いサブセットを選択することによって行われる。幾何学形状的に可能なカーブセグメントは、小片に分裂されることなく、集合したときに、より平滑でより長いカーブセグメントを形成するセグメントに一致する。分離したカーブセグメントは平滑なカーブを形成する。これはその後、それらの間のギャップになる。脈管境界の幾つかの部分がいかなるエッジも含まない場合に、近くに明るい構造体が存在することによって、ギャップが生じる。
【0040】
図7(b)はギャップを有する脈管境界720を示している。例えば、コントラストが増強されたMRAにおいて動脈が静脈に接触していると、それらの間に境界は生じない。従って、近くの脈管はしばしば、脈管境界から幾つかのエッジを除去する。この結果、ギャップが生じる。同じように、CTAにおいて、強度が似ているので、骨と接触している脈管との間に境界はない。付加的に、ギャップは、脈管境界におけるノイズが原因で、エッジグループ分けステージにおいても生じる。
【0041】
閉成されたカーブを得るために、最適な完成曲線によってギャップがブリッジされる。カーブセグメントまたはエッジエレメント間のギャップに対するこれらの完成曲線は、例えば円弧から構成される。別の実施形態では、3次スプラインがギャップをブリッジするのに使用される。図7(b)は、脈管境界720においてギャップをブリッジするのに使用されている3次スプライン724を示している。
【0042】
ある実施形態では、脈管の断面境界を最適に表しているカーブセグメントが楕円適合尺度によって定められる。殊に、脈管境界の全体的な形状は楕円に似ているが、近くに脈管が存在することによって、脈管境界は楕円からの局部的な変化を示してよい。これらの局部的な変形は、正確な境界を再現するために保存されるべきである。
【0043】
ある実施形態では、全ての可能な楕円から最適なカーブを得るために楕円フーリエ記述子が使用される。フーリエ記述子は、イレギュラーな構造体の形状を数字によって表すことのできるカーブフィルタリング技術として、フーリエ分析、主にフーリエ級数の利用を示す。
【0044】
特に、所与のセットCから、楕円フーリエ記述子によって各幾何学的に可能なカーブセグメントサブセットに対して楕円適合尺度が計算される。これらの間で、楕円に最適に適合するカーブセグメントサブセットが脈管の境界として選択される。
【0045】
図7(c)は、カーブセグメントセットの楕円フーリエ記述子から構造化された閉じたカーブ730を示している。ある実施例では、幾つかのフーリエ係数が使用されている。なぜなら、小さい数の係数(例えば5よりも小さい)は境界の局部的な変形を捉えず、大きい多数の係数(例えば10より大きい)は過度の局部変形を可能にしてしまうからである。
【0046】
図8(a)−(h)は、初期イメージ804上で使用されている脈管境界検出のためのアルゴリズムを示している。このアルゴリズムに関連する全てのパラメータは、アルゴリズム処理の間、一定のままである。初期イメージ804は脈管802の直交図である。初期イメージ804はエッジを含む(例えばエッジ808および812)。コンピュータ202はシードポイントを選択し、このシードポイントから放射線(光線)を伝播させる。マルチスケールエッジがこの放射線(例えば1次元放射線)に沿って検出される。イメージ816は、正しくないエッジ820等の正しくないエッジ(白で示されている)を除去するための、このアルゴリズムにおける次のステップを表している。正しくないエッジ820が除去された後に、イメージ824が形成される。その後、kを0.1,0.2,0.3,0.5,0.7および0.9にセットすることによって顕著な(Prominent)エッジがイメージ828内で選択される。カーブセグメント832等のカーブセグメントはその後、局部的なエッジグループ分けアルゴリズムからイメージ836内で得られる。これらのカーブセグメントは、ギャップ840等のギャップを含む。このギャップは、カーブセグメントの間の3次スプライン(白で示されている)を使用して満たされる。その後、コンピュータ202は、このカーブセットを楕円フーリエ表現846(イメージ848において白で示されている)を用いてあらわす。脈管境界852は楕円適合から、イメージ856において得られる。
【0047】
このアルゴリズムは、3次元脈管を構成するのにも使用される。殊に、脈管の方向が始めに定められる。ある実施形態では、脈管の方向が、ヘッセの行列の固有値分析に基づいて定められる。次にこのアルゴリズムが単独のシードポイントで、この位置での脈管境界を定めるために使用される。このシードポイントはその後、増大して、脈管の方向に沿って動かされ、このアルゴリズムは各シードポイントで使用される。この結果、脈管の方向に沿って多数の脈管境界が得られる。これらの境界はその後、統合され、脈管の3次元表現が作成される。この技術を使用して、狭窄および動脈瘤の正確なモデリングが可能になる。
【0048】
上述の詳細な説明は、全ての点において分かりやすく説明する目的のものであり、かつ例として示されたものであり、本発明を制約するものではない。さらにここに開示された発明の範囲は、この詳細な説明から規定されるものではなく、特許法によって許可された全ての領域に従って解釈される特許請求の範囲から規定されるものである。ここに示され、説明された実施例は本発明の要旨を説明するためだけのものであって、本発明の範囲および概念から逸脱することなく、当業者によって様々な修正が可能であることを理解されたい。当業者は本発明の範囲および概念から逸脱することなく様々な他の特徴を組み合わせることが可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(a)脈管に従って異なるコントラストを有する脈管の従来の三次元図、(b)3つの脈管の従来の直交図、(c)拡散した境界を有している2つの脈管の、従来の直交図
【図2】本発明の実施形態に従ってコンピュータのハイレベルブロックダイヤグラム
【図3】強度プロファイルのグラフィックイメージ
【図4】ギャップエッジでのエッジ検出のグラフィック表現
【図5】本発明に相応して脈管境界を検出するのに使用されるコンピュータによって行われるステップのフローチャート
【図6】本発明に相応して脈管境界を検出するのに使用されるコンピュータによって行われるステップをあらわすイメージ
【図7】(a)本発明に相応するエッジの局部的グループ分けのダイヤグラム、(b)本発明に相応して脈管境界におけるギャップをブリッジするのに用いられている3次スプライン、(c)本発明に相応するカーブセグメントのセットの楕円フーリエ記述子から構成される接近しているカーブ
【図8】本発明に相応して初期イメージで脈管の脈管境界を検出するのに使用されるステップ
【符号の説明】
【0050】
104,116,120,124,128,132 脈管、 108 頂上部、 112 底部、 134 拡散、 202 コンピュータ、 204 プロセッサ、 206 インターフェース、 208 インプット/アウトプット、 212 記憶装置、 210 メモリ、 304 エッジの変遷、 308 高強度領域、 312 低強度領域、 316 強度プロファイル、 400 グラフィック再現、 404 イメージ、 504 顕著なエッジを選択するアルゴリズム、 508 エッジグループ分けアルゴリズム、 512 楕円形状記述子から脈管境界を定めるためのアルゴリズム、 604,620,636,640 イメージ、 608,628 脈管、 612,616,624,632 エッジ、 644,648 カーブ、 720 脈管境界、 730 カーブ、 802 脈管、 804 初期イメージ、 816,824,836,848,856 イメージ、 820 正しくないエッジ、 832 カーブセグメント、 840 ギャップ、 846 楕円フーリエ表現、 852 脈管境界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像内で脈管境界を検出する方法であって、
前記画像内で、複数の距離にわってデータポイント間の強度変化に基づいて複数のエッジを検出し、
前記複数のエッジからエッジセットを選択し、
当該選択されたエッジセットに基づいて初期の脈管境界を定め、
最終的な脈管境界を定めるために当該初期の脈管境界に形状記述子を適用する、
ことを特徴とする、画像内で脈管境界を検出する方法。
【請求項2】
エッジセットを選択する前記ステップはさらに、その強さに基づいて前記エッジセットを選択することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記複数のエッジにおける各エッジに対して強さを定めるステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記複数のエッジから正しくないエッジを除去することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記初期の脈管境界における正しくないエッジを削除するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
複数のエッジを検出する前記ステップは平均値シフト分析を行うことを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
初期の脈管境界を定める前記ステップはさらに、前記脈管を非網化構造体として定めるステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記適用ステップはさらに、楕円形状記述子を前記初期の脈管境界に適用するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
複数のエッジを検出する前記ステップはさらに、少なくとも1つの放射線を前記脈管に沿って伝播させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
画像内で脈管境界を検出する装置であって、
前記画像内で、複数の距離にわってデータポイント間の強度変化に基づいて複数のエッジを検出する手段と;
前記複数のエッジからエッジセットを選択する手段と;
当該選択されたエッジセットに基づいて初期の脈管境界を定める手段と;
最終的な脈管境界を定めるために当該初期の脈管境界に形状記述子を適用する手段;を含む、
ことを特徴とする、画像内で脈管境界を検出する装置。
【請求項11】
前記エッジセットを選択する手段はさらに、前記複数のエッジにおける各エッジに関連する強さに基づいて前記エッジセットを選択する手段を含む、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記複数のエッジにおける各エッジに対して強さを定める手段を含む、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記複数のエッジから正しくないエッジを除去する手段を含む、請求項10記載の装置。
【請求項14】
前記初期の脈管境界において正しくないエッジを削除する手段を含む、請求項10記載の装置。
【請求項15】
前記複数のエッジを検出する手段はさらに、平均値シフト分析を行う手段を含む、請求項10記載の装置。
【請求項16】
前記初期の脈管境界を定める手段はさらに、前記脈管を非網化構造体として定める手段を含む、請求項10記載の装置。
【請求項17】
前記適用手段はさらに、前記初期の脈管境界に楕円形状記述子を適用する手段を含む、請求項10記載の装置。
【請求項18】
前記複数のエッジを検出する手段はさらに、少なくとも1つの放射線を前記脈管に沿って伝播させる手段を含む、請求項10記載の装置。
【請求項19】
プロセッサ内で実行される、コンピュータプログラムインストラクションを含むコンピュータ読み出し可能な媒体であって、当該コンピュータプログラムインストラクションは、
画像内で、複数の距離にわってデータポイント間の強度変化に基づいて複数のエッジを検出すること、
前記複数のエッジからエッジセットを選択すること、
当該選択されたエッジセットに基づいて初期の脈管境界を定めること、
最終的な脈管境界を定めるために当該初期の脈管境界に形状記述子を適用すること、を含むステップを定める、
ことを特徴とする、コンピュータ読み出し可能な媒体。
【請求項20】
エッジセットを選択する前記ステップはさらに、その強さに基づいて前記エッジセットを選択することを含む、請求項10記載のコンピュータ読み出し可能な媒体。
【請求項21】
前記複数のエッジにおける各エッジに対して強さを定めるステップを定めるコンピュータプログラムインストラクションをさらに含む、請求項20記載のコンピュータ読み出し可能な媒体。
【請求項22】
前記複数のエッジから正しくないエッジを除去するステップを定めるコンピュータプログラムインストラクションをさらに含む、請求項19記載のコンピュータ読み出し可能な媒体。
【請求項23】
前記初期の脈管境界における正しくないエッジを削除するステップを定めるコンピュータプログラムインストラクションをさらに含む、請求項19記載のコンピュータ読み出し可能な媒体。
【請求項24】
前記複数のエッジを検出するステップは、平均値シフト分析を行うことを含む、請求項19記載のコンピュータ読み出し可能な媒体。
【請求項25】
前記初期の脈管境界を定めるステップはさらに、前記脈管を非網化構造体として定めるステップを含む、請求項19記載のコンピュータ読み出し可能な媒体。
【請求項26】
前記適用ステップはさらに、前記初期の脈管境界に楕円形状記述子を適用するステップを含む、請求項19記載のコンピュータ読み出し可能な媒体。
【請求項27】
複数のエッジを検出する前記ステップはさらに、少なくとも1つの放射線を前記脈管に沿って伝播させるステップを含む、請求項19記載のコンピュータ読み出し可能な媒体。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−297104(P2006−297104A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−115697(P2006−115697)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(593078006)シーメンス コーポレイト リサーチ インコーポレイテツド (47)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Corporate Research,Inc.
【住所又は居所原語表記】755 College Road East,Princeton, NJ 08540,United States of America
【Fターム(参考)】