説明

脱亜鉛装置

【課題】装置内の均熱化を実現し、確実な亜鉛の除去を可能とする脱亜鉛装置を提供する。
【解決手段】 スクラップ鋼板2が投入される誘導加熱容器10と、容器蓋20と、誘導加熱容器10の底部から、上方へ向かうガスを通気させる主通気パイプ12および副通気パイプ13と、誘導加熱容器10の上部から容器内のエアーを吸気する吸排気パイプ21とを備える。各通気パイプには、カーボン製の多孔質の成形体である充填材14が充填され、誘導加熱容器10の底部にはカーボンが敷設されてカーボン層17が形成され、さらに、スクラップ鋼板2と接するように伝熱板18が配置されている。また、容器蓋20の内側には内板22が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛メッキ鋼板を加熱して亜鉛を蒸発させて除去する誘導加熱方式の脱亜鉛装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳物業界においては、スクラップ鋼板を溶解して鋳鉄の原材料とする割合が増えており、再利用されるスクラップ鋼板の代表的なものに亜鉛メッキ鋼板がある。スクラップ鋼板の溶解手段としては電気炉溶解法が常用されているが、これにより亜鉛メッキ鋼板を溶解する場合には種々の問題がある。例えば、亜鉛メッキ鋼板をそのまま溶解すると、亜鉛が炉の耐火物を劣化させたり、耐火物を浸透通過して加熱コイルを損傷させたりして、溶解設備の寿命を縮めることになって保全費を増加させてしまう。また、亜鉛は沸点が低くて蒸発しやすく、亜鉛蒸気による作業環境の悪化を招いたり、亜鉛が製品に混入されて品質を劣化させてしまったりすることもある。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1に示されるような誘導加熱式脱亜鉛装置が提案されている。この誘導加熱式脱亜鉛装置によれば、加熱コイルに通電して亜鉛メッキ鋼板を誘導加熱して亜鉛を溶融させるとともに、溶融した亜鉛の一部が酸化して生じる亜鉛華を材料排出口から外部に排気することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−83676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の脱亜鉛装置では、容器に投入された亜鉛メッキ鋼板のうち、容器中部に投入された亜鉛メッキ鋼板は十分な加熱が施されるものの、容器の上部側に投入された亜鉛メッキ鋼板は、放熱等により十分な加熱が施されないという問題がある。そのため、容器内を均一な温度で加熱することができず、亜鉛の除去が不十分なままのスクラップ鋼板が溶解炉に搬送され、亜鉛が製品に混入してしまうおそれがある。また、容器内を均一な温度に保たなければ、局所加熱によるスクラップ鋼板の溶融や加熱容器の劣化を招いてしまうおそれもある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、装置内の均熱化を実現し、確実な亜鉛の除去を可能とする脱亜鉛装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る脱亜鉛装置は、亜鉛メッキ鋼板を誘導加熱して亜鉛を除去する脱亜鉛装置であって、亜鉛メッキ鋼板が投入される加熱容器と、前記加熱容器の底部から、加熱容器の上方へ向けて通風する通気手段と、前記加熱容器の上部から容器内のガスを排気する排気手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
これにより、通気パイプから通風して容器内のガスを容器底から上方へ流れさせることによって熱を容器上方へ向けるので、装置内の均熱化を実現し、確実に亜鉛を除去することができる脱亜鉛装置が実現される。
【0009】
ここで、前記通気手段において通風されるガスは、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、不活性ガス又はこれらの混合ガスのいずれかであるとするのが好ましい。
【0010】
また、前記脱亜鉛装置は、炭素含有材料からなる成形体が充填されているとするのが好ましく、前記加熱容器の底部に、炭素含有材料が敷設されているとするのがさらに好ましい。
【0011】
これにより、送気されるガスに酸素が含まれている場合に、酸素が加熱された炭素含有材料を通過することで還元ガスに改質されるので、亜鉛の酸化を抑えることができ、より確実な亜鉛除去を実現することができる。
【0012】
また、前記加熱容器の底部に、投入された亜鉛メッキ鋼板と接するように磁性又は非磁性のステンレス板が配置されているとしてもよい。
【0013】
炉体への放熱が大きい容器底部の亜鉛メッキ鋼板を、磁性体のステンレスが加熱されることによって、間接的に加熱することができるようになるほか、ステンレスに接した複数の亜鉛メッキ鋼板に対して、ステンレスを経由して誘導電流が流れやすくなり、結果的に亜鉛メッキ鋼板も誘導加熱されるようになる。また、非磁性のステンレス板としても、その付近の亜鉛メッキ鋼板に磁束が集まりやすくなり、加熱が促進されることになる。これにより、装置内の均熱化をさらに進めることが可能となる。
【0014】
さらに、前記脱亜鉛装置は、加熱容器の蓋となる蓋体を備え、前記蓋体の内側に磁性又は非磁性のステンレス板が設けられているとしてもよい。
【0015】
これらの設置により、上記と同様の効果で炉体上部への放熱が抑制され、より効率的な脱亜鉛が実現可能となる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に係る脱亜鉛装置によれば、通気パイプから通風して容器内のガスを容器底から上方へ流れさせることによって熱を容器上方へ向けるので、容器内の均熱化を図ることができ、確実な亜鉛の除去に資する脱亜鉛装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】脱亜鉛装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る脱亜鉛装置について図を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、脱亜鉛装置の概略を示す図である。
【0020】
脱亜鉛装置1は、亜鉛メッキ鋼板を加熱して亜鉛を蒸発させる誘導加熱式の脱亜鉛炉であり、誘導加熱容器10と容器蓋20を備えている。
【0021】
誘導加熱容器10は、上部にスクラップ鋼板2を投入するための投入口を備えており、装置内に投入されたスクラップ鋼板2を加熱するための容器である。この誘導加熱容器10の外周には加熱コイル11が巻回されている。また、誘導加熱容器10は、その底面に主通気パイプ12と副通気パイプ13とを備えている。
【0022】
加熱コイル11は、誘導加熱容器10の外周に巻回されており、誘導加熱電源(図示せず)に接続されている。誘導加熱電源として0.5〜10kHzの高周波電源装置を用い、誘導加熱電源から加熱コイル10へ通電すると、投入口から誘導加熱容器10内へ投入されたスクラップ鋼板2が誘導加熱されることとなる。なお、誘導加熱の温度は、誘導加熱容器10内の任意の位置でスクラップ鋼板2の温度を計測して温度制御をすることができる。ここでは、誘導加熱電源の電力一定制御又は電流一定制御による自動温度制御が可能な温度調節計を用いるものとし、計測されたスクラップ鋼板2の温度を温度調節計に入力し、予めプログラミングされている目標温度へ到達するように誘導加熱の温度が調整される。
【0023】
主通気パイプ12と副通気パイプ13は、容器の底から通風するためのパイプであり、この通風によって装置内のガスの流れは容器底から上方へ向けられることとなる。容器内のガスを底部から上方へ流れさせることにより、容器内の熱も上方へ向けることができ、容器内の均熱化を図ることが可能となる。ここでは、径の異なるパイプを用いる例を示しているが、主通気パイプ12のみとしてもよいし、同じ径のパイプを複数設ける構成としてもよい。なお、主通気パイプ12には、装置内のスクラップ鋼板2がパイプ内に落下しないようにするためのパイプ蓋15が設けられており、パイプ蓋15に形成された通気孔16から通風されることになる。
【0024】
また、各々の通気パイプには、パイプの径に合わせた円柱形状であり、炭素含有材料からなる(例えば、カーボン製の)多孔質(例えば、ハニカム状など)の成形体である充填材14が嵌入されている。この充填材14を通気パイプに嵌入し、装置内へのエアーを通過させることで、装置内を還元雰囲気とすることができ、亜鉛の酸化を抑制し、効率的な脱亜鉛が実現可能となる。なお、充填材14については、容器内からの伝熱でこれを加熱する手段を別途設けたり、カーボンヒータとして、炭素源と加熱手段とを兼用させたりしてもよい。
【0025】
さらに、誘導加熱容器10の底部には、炭素含有材料(例えば、カーボン)が敷き詰められてカーボン層17が形成されている。このカーボン層17により、各通気パイプからエアーが装置内へ送り込まれると、装置内を還元雰囲気とすることができ、酸化亜鉛の発生を抑えることが可能となる。なお、充填材14とカーボン層17は、いずれも還元雰囲気形成に用いられるものであることから、いずれか一方のみを設置することとしてもよい。
【0026】
また、容器底にスクラップ鋼板2と接するようにステンレス製の伝熱板18を配置するのが好ましい。つまり、ここではカーボン層17の上に伝熱板18を積層するのが好ましい。なお、伝熱板18にはスリット19を設けて各通気パイプからの風を通過させるようにしている。
【0027】
伝熱板18として磁性体のステンレス、例えばSUS340を用いると、炉体への放熱が大きい容器底部のスクラップ鋼板2を、伝熱板18が加熱されることによって、間接的に加熱することができるようになるほか、伝熱板18に接した複数のスクラップ鋼板2に対して、伝熱板18を経由して誘導電流が流れやすくなり、結果的にスクラップ鋼板2も誘導加熱されるようになる。
【0028】
また、伝熱板18として非磁性体のステンレス,例えばSUS310を用いても、伝熱板18の付近のスクラップ鋼板2に磁束が集まりやすくなり、加熱が促進されることになる。
【0029】
なお、各通気パイプから装置内へ送り込む風は、常温の風でもよいが、充填材14やカーボン層17等を通過する際に、効率的に一酸化炭素を発生させることや、容器内の温度低下を抑制する観点から熱風を送り込むのが好ましい。また、各通気パイプから通風されるガスとしては、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素やアルゴン等の不活性ガス、又は、これらの混合ガスのいずれかが用いられる。これらのガスを通風させることで、容器内を還元雰囲気に導くことができ、亜鉛の酸化を抑制して、効率的な脱亜鉛に資することになる。
【0030】
容器蓋20には吸排気パイプ21が設けられており、容器内の下方から上方へ向けられたエアーは、図中の破線矢印で示すように、この吸排気パイプ21から吸い上げられて集塵機(図示せず)に回収され、排気される。回収されたエアーは、熱交換器を通して各通気パイプから容器内に送り込まれる熱風として再利用するとしてもよい。
【0031】
また、容器蓋20の内側にステンレス製の内板22を設けるのが好ましい。内板22には、耐熱性を有し、かつ、磁性体又は非磁性体のステンレス、例えば、オーステナイト系ステンレス(SUS310)を用いる。この内板22による磁束の反射作用によって、容器上部のスクラップ鋼板2を加熱することが可能となる。
【0032】
このように、本実施の形態に係る脱亜鉛装置によれば、通気パイプから通風して容器内のガスを容器底から上方へ流れさせることによって熱を容器上方へ向けるので、容器内の均熱化を図ることができ、確実な亜鉛の除去に資する脱亜鉛装置を実現することができる。
【0033】
以上、本発明に係る脱亜鉛装置について、実施の形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0034】
例えば、上記実施の形態では、吸排気パイプを容器蓋の中央に設置する例を示しているが、容器の上部から容器内の気体を排気する構成であればよく、例えば、吸排気パイプを容器の側方に設けることとしてもよいし、吸気しない排気パイプのみとして、容器底からのガスの押し込みにより、排気する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る脱亜鉛装置は、亜鉛メッキがされたスクラップ鋼板の亜鉛除去装置として好適である。
【符号の説明】
【0036】
1 脱亜鉛装置
2 スクラップ鋼板
10 誘導加熱容器
11 加熱コイル
12 主通気パイプ
13 副通気パイプ
14 充填材
15 パイプ蓋
16 通気孔
17 カーボン層
18 伝熱板
19 スリット
20 容器蓋
21 吸排気パイプ
22 内板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛メッキ鋼板を誘導加熱して亜鉛を除去する脱亜鉛装置であって、
亜鉛メッキ鋼板が投入される加熱容器と、
前記加熱容器の底部から、加熱容器の上方へ向けて通風する通気手段と、
前記加熱容器の上部から容器内のガスを排気する排気手段とを備える
ことを特徴とする脱亜鉛装置。
【請求項2】
前記通気手段において通風されるガスは、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、不活性ガス又はこれらの混合ガスのいずれかである
ことを特徴とする請求項1記載の脱亜鉛装置。
【請求項3】
前記通気手段に、炭素含有材料からなる成形体が充填されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の脱亜鉛装置。
【請求項4】
前記加熱容器の底部に、炭素含有材料が敷設されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱亜鉛装置。
【請求項5】
前記加熱容器の底部に、投入された亜鉛メッキ鋼板と接するように磁性又は非磁性のステンレス板が配置されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱亜鉛装置。
【請求項6】
前記脱亜鉛装置は、加熱容器の蓋となる蓋体を備え、
前記蓋体の内側に磁性又は非磁性のステンレス板が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の脱亜鉛装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−128992(P2012−128992A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277665(P2010−277665)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000225027)特殊電極株式会社 (26)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】