説明

脱水有機廃棄物の含水率低減方法及び燃料化方法並びにバイオマス燃料

【課題】家畜排泄物や食品廃棄物等を含む脱水有機廃棄物の含水率を低減することにより、エネルギー源としての有効利用を図ることができ、さらにはセメント焼成設備の燃料として有効利用することができる脱水有機廃棄物の含水率低減方法及び燃料化方法並びにバイオマス燃料を提供する。
【解決手段】本発明の脱水有機廃棄物の含水率低減方法は、撹拌槽1に、有機廃棄物スラリー、及び粒子径が50mm以下かつ比重が3.0以下の可燃性粒子等からなる脱水助剤を投入して撹拌し、得られた混合物を脱水機2を用いて脱水し、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が75質量%以下の脱水ケーキとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水有機廃棄物の含水率低減方法及び燃料化方法並びにバイオマス燃料に関し、更に詳しくは、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、あるいは百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等にて廃棄される食品廃棄物等の有機廃棄物を含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減することが可能な脱水有機廃棄物の含水率低減方法、及び、この脱水有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥することにより塩素濃度及び含水率の低いバイオマス燃料としての利用が可能な脱水有機廃棄物の燃料化方法、並びに、脱水有機廃棄物の塩素濃度を3000ppm以下かつ含水率を35質量%以下としたバイオマス燃料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、あるいは百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、飲食店等にて廃棄される売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物は、そのままの状態もしくは発酵させた状態で肥料として利用するのが一般的であるが、焼却炉等を用いて焼却することで減容化し、得られた焼却灰を肥料として利用することもある。
特に、近年、家畜排泄物の管理に関する適正化法が施行されたことにもより、畜糞尿を含む家畜排泄物の多くが肥料化されることが予想される一方、農地の減少傾向により使用される肥料の総量も減少傾向にある。そこで、家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するために、肥料以外の用途の多角化が急務になっており、エネルギーとしての利用もその一つである。
【0003】
一般に、家畜排泄物は35質量%以下の低含水率状態では高位の発熱量を有するものであるが、低含水率状態とするためには、長時間の自然乾燥や化石燃料を用いた加熱乾燥を必要とするために、エネルギーとしての利用はごく一部では行われているものの総体的には進んでいない。
現在行われている家畜排泄物のエネルギー利用としては、鶏糞を発電や廃棄物ボイラーの燃料として用いたり、牛や豚の糞尿をメタン発酵させてメタンガスを主成分とするバイオガスを生成させ、このバイオガスを燃料として用いる等がある。
【0004】
このような家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するための様々な方法や装置が提案されており、例えば、次のような提案がなされている。
(1)鶏糞、家畜糞等の含水廃棄処理物を、蒸気管と燃焼室を備えた熱風炉と多段式の乾燥炭化炉との間に発生蒸気の循環系統を配設して密閉系内で熱源を循環させながら炭化物及び灰化物を生成する方法(特許文献1)。
この方法では、乾燥炭化炉から炭化物を、熱風炉から灰化物を、それぞれ回収することで、二次利用可能な炭化物及び灰化物を同時に資源回収するとともに、省資源化と無公害化の推進を図っている。
(2)畜糞を乾燥させる乾燥機と、乾燥された畜糞を小粒と大粒に分離する分離機と、分離された小粒の乾燥畜糞を焼却処理する焼却炉と、乾燥未完了の畜糞を破砕して金属類の混入異物を露出するとともに、この混入異物を磁石を介して除去する磁石付振動式篩とを有する畜糞乾燥焼却装置(特許文献2)。
この装置では、畜糞原料に混入している石、金属などの金属類異物を簡単容易に撤去することで、金属類異物に起因する機械のトラブルを未然に回避するとともに、この畜糞を焼却処理することにより発生する熱を有効利用している。
【特許文献1】特開2004−330092号公報
【特許文献2】特開2005−156085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したように、家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するための様々な方法や装置が提案されているが、これらの方法や装置においても、次のような問題点があった。
鶏糞をエネルギー源として利用しようとした場合、鶏糞のエネルギー利用を阻んでいる主たる点は、塩素含有量が高いという点である。鶏糞の塩素含有量が高いと、この塩素成分のために燃焼装置が腐食したり、あるいは低融点塩素化合物が発生して配管等の様々な箇所で閉塞等の様々なトラブルが発生する虞があるという問題点があった。
また、この鶏糞を、例えば、セメント焼成設備に燃料として投入した場合、それに含まれる塩素成分がセメントクリンカに混入してセメントの品質を低下させる虞がある。また、塩素成分がセメント焼成設備を腐食させる等のトラブルが発生する虞があるために、セメントの操業に悪影響を及ぼす虞がある。
【0006】
また、牛や豚の糞尿がエネルギー利用され難いのは、鶏糞と同様に塩素含有量が高いことと、含水率が80%前後と高いために、燃料として用いた場合、燃焼時に発生する熱エネルギーが糞尿に含まれる水分の蒸発潜熱に奪われてしまい、燃料としてのエネルギーの有効利用を図ることが難しいからである。
このように、様々な理由から、家畜排泄物や食品廃棄物等を含む有機廃棄物のエネルギー源としての有効利用ははかばかしくないのが現状である。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物等を含む脱水有機廃棄物の含水率を低減することにより、エネルギー源としての有効利用を図ることができ、さらにはセメント焼成設備の燃料として有効利用することができる脱水有機廃棄物の含水率低減方法及び燃料化方法並びにバイオマス燃料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、家畜排泄物や食品廃棄物を含む有機廃棄物スラリーを脱水して脱水有機廃棄物とする際に、有機廃棄物スラリーに脱水助剤を添加し、得られた混合物を脱水すれば、含水率が70質量%以下と低い脱水有機廃棄物を得ることができ、さらに、この脱水有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥して、含水率を35質量%以下の乾燥有機廃棄物とすれば、バイオマス燃料等のエネルギー源として、さらにはセメント焼成設備のバイオマス燃料として有効利用することができ、しかもセメント焼成設備の操業やセメント品質に悪影響を及ぼす虞が無いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の脱水有機廃棄物の含水率低減方法は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減する方法であって、前記有機廃棄物スラリーに脱水助剤を添加し、得られた混合物を脱水し、脱水有機廃棄物とすることを特徴とする。
【0010】
この脱水有機廃棄物の含水率低減方法では、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーに脱水助剤を添加して混合物とし、この混合物を脱水することにより、有機廃棄物スラリーの脱水効率が高まり、その結果、得られた脱水有機廃棄物は、従来よりもまして低含水率となる。また、有機廃棄物スラリーを脱水することで該有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物が効率的に除去され、塩素濃度が極めて低い脱水有機廃棄物となる。よって、この脱水有機廃棄物は、低含水率かつ低塩素濃度のバイオマス燃料として有効利用することが可能となる。
また、塩素濃度が極めて低いために、燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、この脱水有機廃棄物をセメント焼成設備に燃料として投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0011】
前記脱水助剤は、粒子径が50mm以下の可燃性粒子であることが好ましい。
粒子径が50mm以下の可燃性粒子を脱水助剤とすることで、有機廃棄物スラリーの脱水効率が改良されるとともに、得られた脱水有機廃棄物が可燃性粒子を含むこととなり、よって、この脱水有機廃棄物をバイオマス燃料として用いた場合、燃料としての燃焼効率が向上する。
【0012】
前記脱水助剤は、比重が3.0以下であることが好ましい。
脱水助剤の比重を3.0以下とすることにより、この脱水助剤を有機廃棄物スラリーに添加した場合においても、脱水助剤と有機廃棄物とが比重差により分離する虞が無くなり、得られた脱水有機廃棄物は均一性に富んだものとなる。
【0013】
前記脱水有機廃棄物の含水率は、75質量%以下であることが好ましい。
脱水有機廃棄物の含水率を75質量%以下とすることにより、燃料として用いた場合においても、燃焼時に発生する熱エネルギーが脱水有機廃棄物に含まれる水分の蒸発潜熱に奪われてしまうことが無くなり、燃料としてのエネルギーの有効利用を図ることが可能になる。
【0014】
本発明の脱水有機廃棄物の燃料化方法は、本発明の脱水有機廃棄物を燃料化するための方法であって、前記脱水有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥して、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物とすることを特徴とする。
【0015】
この脱水有機廃棄物の燃料化方法では、脱水有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥して、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物とすることにより、得られた乾燥有機廃棄物は、含水率及び塩素濃度が極めて低くかつ高位の発熱量を有しており、燃焼効率が高いバイオマス燃料として有効利用することが可能である。
また、この乾燥脱塩素有機廃棄物をセメント焼成設備に燃料として投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0016】
前記加熱乾燥における熱源は、太陽熱、前記有機廃棄物の発酵過程にて発生する発酵熱のいずれか一方、または双方であることが好ましい。
太陽熱、有機廃棄物の発酵過程にて発生する発酵熱のいずれか一方、または双方を用いて加熱乾燥することにより、化石燃料を用いずに加熱乾燥することが可能になり、よって、省エネルギー効果が大きく、かつ、環境負荷も小さなものとなる。
【0017】
前記脱水有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥した後に、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことが好ましい。
脱水有機廃棄物は、乾燥または加熱乾燥した後では、通常、球状、塊状(ブロック状)、板状等、比較的大きな形状を有している。そこで、乾燥または加熱乾燥した脱水有機廃棄物に対して、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことにより、所望の形状の粉粒体とすることが可能である。
【0018】
本発明のバイオマス燃料は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物を低含水率化したバイオマス燃料であって、脱水助剤を含有し、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下であることを特徴とする。
【0019】
このバイオマス燃料では、脱水助剤を含有し、塩素濃度を3000ppm以下かつ含水率を35質量%以下としたことにより、燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、また、セメント焼成設備に投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【発明の効果】
【0020】
本発明の脱水有機廃棄物の含水率低減方法によれば、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーに脱水助剤を添加し、得られた混合物を脱水し、脱水有機廃棄物とするので、低含水率かつ低塩素濃度の有機廃棄物からなるバイオマス燃料を容易かつ安価に得ることができる。
また、塩素濃度が極めて低いために、燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルを防止することができる。また、このバイオマス燃料をセメント焼成設備に投入したとしても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0021】
本発明の脱水有機廃棄物の燃料化方法によれば、脱水有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥して、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物とするので、低含水率及び低塩素濃度でありかつ高位の発熱量を有し、しかも燃焼効率が高い有機廃棄物からなるバイオマス燃料を容易かつ安価に得ることができる。
また、このバイオマス燃料をセメント焼成設備に投入したとしても、燃焼効率が低下する虞がなく、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞も無い。
【0022】
本発明のバイオマス燃料によれば、脱水助剤を含有し、塩素濃度を3000ppm以下かつ含水率を35質量%以下としたので、燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルを防止することができ、このバイオマス燃料をセメント焼成設備に投入した場合においても、燃焼効率が低下する虞がなく、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞も無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の脱水有機廃棄物の含水率低減方法及び燃料化方法並びにバイオマス燃料の最良の形態について、図面に基づき説明する。
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0024】
「脱水有機廃棄物の含水率低減方法」
本実施形態の脱水有機廃棄物の含水率低減方法は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減する方法であり、前記有機廃棄物スラリーに脱水助剤を添加し、得られた混合物を脱水し、脱水有機廃棄物とする方法である。
【0025】
次に、この脱水有機廃棄物の含水率低減方法について図1に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施形態の脱水有機廃棄物の含水率低減方法に用いられる脱水・燃料化装置を示す模式図であり、図において、1は撹拌槽、2は脱水機、3は乾燥設備、4は乾燥機、5は粉砕機、6は排水処理装置である。
撹拌槽1は、有機廃棄物スラリーに脱水助剤を添加し撹拌することができるものであればよく、槽の少なくとも内面が有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物に対して耐食性を有する金属、例えばステンレス鋼等からなる槽と、撹拌手段とを備えた密閉式あるいは開放式の撹拌槽が好適である。
【0026】
脱水機2は、有機廃棄物及び水を含む有機廃棄物スラリーに脱水助剤が添加された混合物を脱水処理して固形状のケーキ(脱水有機廃棄物)と水分とに固液分離することができるものであればよく、濾過機、加圧濾過機、遠心脱水機、スクリュープレス等の各種脱水機が使用でき、特に、短時間で固液分離ができるスクリュープレスが好ましい。
【0027】
乾燥設備3は、固形状のケーキ(脱水有機廃棄物)を乾燥させるために、このケーキに含まれる家畜排泄物や食品廃棄物の種類や量に応じて太陽熱単独あるいは太陽熱及び自然の風力による天日乾燥、自然の風力あるいは他の設備からの排気等を利用した風力乾燥、有機廃棄物の発酵に伴う発酵熱による発酵乾燥のいずれか1種、あるいは2種以上を選択することができる設備であり、有機廃棄物の発酵乾燥を行う縦型撹拌式発酵装置、横型開放式発酵装置等の発酵装置と、太陽熱、自然の風力、他の設備からの排気等を利用して脱水機2で脱水処理された固形状のケーキの天日乾燥あるいは風力乾燥を行うハウスとを備えている。
なお、この乾燥設備3は、有機廃棄物に含まれる家畜排泄物や食品廃棄物の種類や量が限定される場合には、それらの用途に応じて、発酵装置、ハウスのいずれか一方のみにより構成してもよい。
【0028】
乾燥機4は、乾燥設備3で天日乾燥されたケーキの含水率を調整したり、あるいは脱水機2で固液分離されたケーキ(脱水有機廃棄物)をさらに乾燥する必要がある場合等に用いられる装置であり、特に、用途に応じて乾燥、加熱乾燥を使い分けることができるという使い勝手の点でヒータ内蔵の乾燥機が好ましい。
粉砕機5は、乾燥設備3(あるいは乾燥機4)から取り出された固形状の乾燥したケーキ(乾燥有機廃棄物)に対して、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことにより直径10mm以下の粒子状とする分級機能を有する装置であり、篩、分級機等を備えた自動乳鉢、スタンパ、ニーダー、ロールミル等が好適に用いられる。
排水処理装置6は、脱水機2からの排水に所定の排水処理を施し、処理済みの排水を放流する装置である。
【0029】
次に、この脱水・燃料化装置を用いて有機廃棄物スラリーを脱水処理する方法について説明する。
ここで、有機廃棄物スラリーとは、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、飲食店等にて廃棄される売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物等を含む有機廃棄物と、水とを含むスラリーであり、このスラリー中の有機廃棄物の含有率が60質量%以上かつ98質量%以下、好ましくは70質量%以上かつ95質量%以下のものである。
上記の家畜排泄物や食品廃棄物は、その用途や必要に応じて、家畜排泄物を1種、または食品廃棄物を1種としてもよく、あるいは、家畜排泄物及び食品廃棄物全体から2種以上を選択し、混合してもよい。
【0030】
ここでは、まず、有機廃棄物スラリーを所定量、撹拌槽1に投入する。
なお、撹拌槽1にて有機廃棄物スラリーを作製する場合には、撹拌槽1に所定量の水(新水または一次処理水)を投入し、次いで、所定量の有機廃棄物を投入して撹拌し、有機廃棄物スラリーとすればよい。
撹拌時間は、有機廃棄物が水中に均一に分散するのに充分な時間であればよく、通常、3分〜60分の範囲である。
この撹拌の間に、有機廃棄物が水洗されると同時に微細化されて水中に拡散するとともに、この有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物が水中に容易に溶出し、この微細な有機廃棄物は脱塩素有機廃棄物となって水中に拡散する。
【0031】
次いで、この有機廃棄物スラリーに、所定量の脱水助剤を投入して撹拌し、混合物とする。
この脱水助剤としては、粒子径が50mm以下の可燃性粒子が好ましい。
この可燃性粒子とは、可燃性の有機物、例えば、セルロース類を含む粒子のことであり、家畜排泄物を堆肥化する際に水分調整材として用いられる籾殻、木屑、おが屑等が好適である。
ここで、可燃性粒子の粒子径を50mm以下とした理由は、粒子径が50mmを超えると、脱水機2での脱水の際、脱水機2の閉塞または損傷等を引き起こす虞が高いからである。
【0032】
この脱水助剤の比重は3.0以下であることが好ましい。
ここで、脱水助剤の比重を3.0以下とした理由は、比重が3.0を超えると、この脱水助剤を有機廃棄物スラリーに添加した場合、脱水助剤と有機廃棄物とが比重差により分離してしまい、濃度が均一なスラリーを得ることができないからである。
【0033】
撹拌時間は、有機廃棄物スラリーと脱水助剤とを均一に混合するのに充分な時間であればよく、通常、3分〜60分の範囲である。
この撹拌の間に、脱水助剤は微細な有機廃棄物と共に水中に拡散し、混合物となる。
【0034】
次いで、この混合物を脱水機2を用いて脱水し、脱水ケーキ(脱水有機廃棄物)とする。
この混合物は、脱水機2にて圧搾脱水されて、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が75質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下の脱水ケーキとなる。この脱水機2から排出される排水は、排水処理装置4により所定の排水処理が施された後、外部の排水路等へ放流される。
【0035】
この脱水過程では、有機廃棄物スラリーが脱水助剤を含んでいるので、有機廃棄物スラリー自体の脱水効率が高まり、より低含水率の脱水ケーキを生成することが可能である。また、有機廃棄物スラリー自体の脱水効率を高めることにより、この脱水の際に有機廃棄物に含まれる塩素および/または塩素化合物が効率的に除去される。これにより、低含水率かつ脱塩素の脱水ケーキ(脱水有機廃棄物)が容易に得られる。
【0036】
「脱水有機廃棄物の燃料化方法」
本実施形態の脱水有機廃棄物の燃料化方法は、上記の脱水・燃料化装置を用いて上述した脱水ケーキ(脱水有機廃棄物)を燃料化するための方法であって、脱水ケーキを乾燥または加熱乾燥して、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物とする方法である。
【0037】
この脱水ケーキの乾燥または加熱乾燥は、乾燥設備3を用いて、天日乾燥、風力乾燥、発酵乾燥のいずれか1種または2種以上を組み合わせて行う。
例えば、上記の脱水ケーキを乾燥設備3内に搬入し、太陽熱等の自然エネルギーを利用した天日乾燥、風力等の自然エネルギーあるいは他の設備からの排気等を利用した風力乾燥、縦型撹拌式発酵装置や横型開放式発酵装置等の発酵装置から発生する発酵熱を用いた発酵乾燥等のうち1種、あるいは2種以上を組み合わせて上記の脱水ケーキの乾燥を行い、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物とする。
なお、この脱水ケーキを発酵装置を用いて発酵させると同時に、この発酵熱を用いて乾燥を行えば、効率的な乾燥処理を行うことができる。この発酵装置では、発酵により生じる臭気及び水分を含む空気を水槽内に導入することにより、この臭気及び水分を取り除いているので、臭気等が外部へ漏れる虞はない。
【0038】
このようにして得られた乾燥有機廃棄物は、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が35質量%以下と低く、かつ高位の発熱量を有しているので、工業用各種燃料としての利用が可能である。
この乾燥有機廃棄物は、単に乾燥しただけでは、球状、塊状、板状等、比較的大きな形状をしていることが多い。用途によってはこのままの形状でもよいが、セメント焼成設備等にて用いる場合等では、粉砕機5を用いて分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行い、直径10mm以下の粒子状とするのがよい。
【0039】
この乾燥有機廃棄物をセメント焼成設備のセメントキルンの窯尻部等に投入することにより、セメント焼成用燃料としての有効利用が可能である。
また、この乾燥有機廃棄物の含水率をさらに減少させたい場合には、乾燥機4を用いて所定の温度にて所定時間乾燥処理を施すことにより、含水率が極めて低い乾燥有機廃棄物を得ることができる。
【0040】
「バイオマス燃料」
本実施形態のバイオマス燃料は、上記の脱水ケーキ(脱水有機廃棄物)の含水率を低減したバイオマス燃料であって、脱水助剤を含有し、塩素濃度が3000ppm以下が好ましく、より好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下である。
また、含水率は35質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0041】
このバイオマス燃料は、上記の脱水ケーキ(脱水有機廃棄物)を乾燥または加熱乾燥し、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物とすることで、得ることができる。
なお、この乾燥有機廃棄物を粉砕機5を用いて直径10mm以下の粒子状に粉砕または解砕すれば、燃焼効率が向上するので好ましい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の脱水ケーキの含水率低減方法によれば、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーに脱水助剤を添加し、得られた混合物を脱水し、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が70質量%以下の脱水ケーキとするので、低含水率かつ低塩素濃度の有機廃棄物からなるバイオマス燃料を容易かつ安価に得ることができる。
また、この脱水ケーキの塩素濃度が極めて低いので、燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルを防止することができる。また、このバイオマス燃料をセメント焼成設備に投入したとしても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0043】
本実施形態の脱水ケーキの燃料化方法によれば、この脱水ケーキを乾燥または加熱乾燥して、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物とするので、低含水率及び低塩素濃度でありかつ高位の発熱量を有し、しかも燃焼効率が高い有機廃棄物からなるバイオマス燃料を容易かつ安価に得ることができる。
また、このバイオマス燃料をセメント焼成設備に投入したとしても、燃焼効率が低下する虞がなく、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞も無い。
【0044】
本実施形態のバイオマス燃料によれば、脱水ケーキを乾燥または加熱乾燥して、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物としたので、燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルを防止することができ、このバイオマス燃料をセメント焼成設備に投入した場合においても、燃焼効率が低下する虞がなく、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞も無い。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
有機廃棄物スラリーとして、含水率80質量%、塩素濃度8000ppmの豚糞尿100kgに脱塩処理を施した水道水100kgを加えた豚糞スラリーを用いた。
この豚糞スラリー200kgを撹拌槽1に投入し、この豚糞スラリーに、脱水助剤として、含水率20質量%、塩素濃度100ppmの木屑11kgを投入して10分間撹拌し、混合物を得た。
次いで、この混合物を脱水機2を用いて脱水し、含水率65質量%、塩素濃度1640ppmの豚糞脱水ケーキを82kg得た。
【0047】
次いで、この豚糞脱水ケーキを乾燥設備3内に搬入し、太陽熱及び風力を利用して天日乾燥を行い、含水率25質量%、塩素濃度1640ppmの乾燥豚糞を38kg得た。天日乾燥による豚糞脱水ケーキからの脱水量は44kgであった。
【0048】
(比較例1)
有機廃棄物スラリーとして、含水率80質量%、塩素濃度8000ppmの豚糞尿100kgに脱塩処理を施した水道水100kgを加えた豚糞スラリーを用いた。
この豚糞スラリー200kgを脱水機2を用いて脱水し、含水率85質量%、塩素濃度5040ppmの豚糞脱水ケーキを133kg得た。次いで、この豚糞脱水ケーキを乾燥設備3内に搬入して加熱乾燥を行い、含水率25質量%、塩素濃度5040ppmの乾燥豚糞を27kg得た。加熱乾燥による豚糞脱水ケーキからの脱水量は106kgであった。
以上により、実施例1では、比較例1と比べて豚糞脱水ケーキからの脱水量が62kg減少しており、加熱乾燥に要する熱量を33500kcal低減することができた。
【0049】
(実施例2)
有機廃棄物スラリーとして、含水率85質量%、塩素濃度9000ppmの牛糞尿100kgに脱塩処理を施した水道水100kgを加えた牛糞スラリーを用いた。
この牛糞スラリー200kgを撹拌槽1に投入し、この牛糞スラリーに、脱水助剤として、含水率15質量%、塩素濃度100ppmの籾殻8kgを投入して10分間撹拌し、混合物を得た。
次いで、この混合物を脱水機2を用いて脱水し、含水率60質量%、塩素濃度1090ppmの牛糞脱水ケーキを54kg得た。
【0050】
次いで、この牛糞脱水ケーキを乾燥設備3内の縦型撹拌式発酵装置に搬入して発酵させるとともに、この発酵熱を用いて乾燥を行い、含水率25質量%、塩素濃度1090ppmの乾燥牛糞を29kg得た。発酵熱乾燥による牛糞脱水ケーキからの脱水量は25kgであった。
【0051】
(比較例2)
有機廃棄物スラリーとして、含水率85質量%、塩素濃度9000ppmの牛糞尿100kgに脱塩処理を施した水道水100kgを加えた牛糞スラリーを用いた。
この牛糞スラリー200kgを脱水機2を用いて脱水し、含水率85質量%、塩素濃度4140ppmの牛糞脱水ケーキを100kg得た。次いで、この牛糞脱水ケーキを乾燥設備3内に搬入して加熱乾燥を行い、含水率25質量%、塩素濃度4140ppmの乾燥牛糞を20kg得た。加熱乾燥による牛糞脱水ケーキからの脱水量は80kgであった。
以上により、実施例2では、比較例2と比べて豚糞脱水ケーキからの脱水量が55kg減少しており、加熱乾燥に要する熱量を29700kcal低減することができた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態の脱水有機廃棄物の含水率低減方法に用いられる脱水・燃料化装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1 撹拌槽
2 脱水機
3 乾燥設備
4 乾燥機
5 粉砕機
6 排水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減する方法であって、
前記有機廃棄物スラリーに脱水助剤を添加し、得られた混合物を脱水し、脱水有機廃棄物とすることを特徴とする脱水有機廃棄物の含水率低減方法。
【請求項2】
前記脱水助剤は、粒子径が50mm以下の可燃性粒子であることを特徴とする請求項1記載の脱水有機廃棄物の含水率低減方法。
【請求項3】
前記脱水助剤は、比重が3.0以下であることを特徴とする請求項1または2記載の脱水有機廃棄物の含水率低減方法。
【請求項4】
前記脱水有機廃棄物の含水率は、75質量%以下であることを特徴とする請求項1、2または3記載の脱水有機廃棄物の含水率低減方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の脱水有機廃棄物を燃料化するための方法であって、
前記脱水有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥して、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物とすることを特徴とする脱水有機廃棄物の燃料化方法。
【請求項6】
前記加熱乾燥における熱源は、太陽熱、前記有機廃棄物の発酵過程にて発生する発酵熱のいずれか一方、または双方であることを特徴とする請求項5記載の脱水有機廃棄物の燃料化方法。
【請求項7】
前記脱水有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥した後に、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことを特徴とする請求項5または6記載の脱水有機廃棄物の燃料化方法。
【請求項8】
家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減したバイオマス燃料であって、
脱水助剤を含有し、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下であることを特徴とするバイオマス燃料。

【図1】
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【公開番号】特開2009−106894(P2009−106894A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283861(P2007−283861)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】