脱酸素剤及び脱酸素剤の製造方法
【課題】 ハンドリング時間を長くすることができる脱酸素剤及び脱酸素剤の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明に係る脱酸素剤は、雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、前記脱酸素剤が酸素欠損による酸素吸収サイトを有する無機酸化物であると共に、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体(例えばカルボニル基である二酸化炭素)により一時的に閉塞してなるものであり、脱酸素剤として機能するまでのハンドリング時間が向上する。脱酸素剤は、無機酸化物粉末を500℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することで好適に製造される。
【解決手段】 本発明に係る脱酸素剤は、雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、前記脱酸素剤が酸素欠損による酸素吸収サイトを有する無機酸化物であると共に、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体(例えばカルボニル基である二酸化炭素)により一時的に閉塞してなるものであり、脱酸素剤として機能するまでのハンドリング時間が向上する。脱酸素剤は、無機酸化物粉末を500℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することで好適に製造される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤及び脱酸素剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の安全性や品質維持への強い要求に対して、食品を包装する食品用包装体の内部を無酸素状態にすることにより、食品の酸化劣化を抑制することが行われている。
具体的には、雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤を食品と共に食品用包装体の内部に入れて、食品用包装体の内部の残留酸素を除去して食品用包装体の内部を無酸素状態とすることが行われている。また、酸素を含まない不活性ガス中において、食品を前記脱酸素剤と共に食品用包装体で包装し、前記食品用包装体の内部に酸素を入れないようにすると共に、前記食品用包装体を透過して内部に侵入する僅かな酸素も、内包された脱酸素剤により除去すること等が行われている。
【0003】
このように、雰囲気中の酸素を除去する脱酸素剤としては、有機系材料からなるものと無機系材料からなるものとがあるが、コスト的な観点から、無機系材料である鉄系脱酸素剤が主に利用されている。この鉄系脱酸素剤は、下記の化学式(1)に示すように、鉄を雰囲気中の僅かな水分と共に、雰囲気中の酸素と反応させることにより、雰囲気中から酸素を除去するようになっている。
【0004】
Fe+1/2H2O+3/4O2→FeOOH ・・・(1)
【0005】
しかしながら、前述したような従来の鉄系の脱酸素剤を用いた場合には、以下のような問題がある。
(1)酸素との反応の際に水分を僅かながらも必要とするため、乾燥食品や電子部品や半田粉等のように水分を嫌うものを保存する場合には、従来の脱酸素剤の性能を十分に発揮することができないという問題がある。
(2)包装体で不活性ガスと共に、従来の脱酸素剤を包装した食品中に金属等の異物が混入しているか否かの検査を行う場合には、鉄系脱酸素剤に金属探知機が反応し、簡便な審査を行うことができない、という問題がある。
(3)電子レンジ等のマイクロ波によって急加熱されて発火する、という問題がある。
【0006】
このため、鉄系の脱酸素剤の代わりに、酸化チタン等の無機酸化物を用いた脱酸素剤が提案されている(特許文献1〜5)。
【0007】
しかしながら、酸化チタン等の無機酸化物のみを用いた脱酸素剤では酸素吸収能力が十分ではない、という問題がある。
【0008】
そこで、前記無機酸化物において、前記酸化チタンの代わりに酸化セリウムが脱酸素剤として好適であることを見いだし先に提案した(特許文献6)。
【0009】
ところで、還元処理により酸素欠損を有する酸化セリウムは、非常に活性が高く、急に空気に触れさせると発火してしまう、という問題がある。このため、ユーザーが自社の製品(例えば医薬品や食品等)を密閉する際、酸化セリウムからなる脱酸素剤を封入するまでの時間(ハンドリング時間)も酸素吸収が進んで行き性能が悪くなるので、製品適用において問題がある。
【0010】
そこで、脱酸素剤を封入する際におけるハンドリング時間を長くすると共に、そのハンドリング時間を任意に調整できる脱酸素剤の出現が切望されている。
【0011】
【特許文献1】特開2005−104064号公報
【特許文献2】特開2005−105194号公報
【特許文献3】特開2005−105195号公報
【特許文献4】特開2005−105199号公報
【特許文献5】特開2005−105200号公報
【特許文献6】特開2007−185653号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記問題に鑑み、ハンドリング時間を長くすることができる脱酸素剤及び脱酸素剤の製造方法を提供することを課題とする。
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明は、生活環境雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、前記脱酸素剤が、酸素の強制的な引き抜きによって生じた可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを有する無機酸化物であると共に、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞してなることを特徴とする脱酸素剤を提供するものである。
【0014】
本発明は、生活環境雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、
前記脱酸素剤が、酸素の強制的な引き抜きによって生じた可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを有する無機酸化物であると共に、
不活性雰囲気状態から常温・常圧の大気中に開放した時点を開始点とし、該開始点からの経過時間と酸素吸収量(mL/g)との関係において、酸素吸収が緩やかな初期状態の酸素吸収ラインL1と、それに引き続き、かつラインL1よりも傾きの大きな酸素吸収ラインL2との交点Xでの時間をhとしたとき、前記脱酸素剤が、開始点から時間hまでの時間で定義されるハンドリング時間を有することを特徴とする脱酸素剤を提供するものである。
【0015】
また発明は、前記の脱酸素剤の製造方法であって、前記無機酸化物粉末を1000℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することを特徴とする脱酸素剤の製造方法を提供するものである。
【0016】
また発明は、前記の脱酸素剤の別の製造方法であって、前記無機酸化物粉末を1000℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後加熱真空処理して水素を除去し、次いで前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することを特徴とする脱酸素剤の製造方法を提供するものである。
【0017】
また発明は、前記の脱酸素剤の更に別の製造方法であって、前記無機酸化物粉末を1000℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後不活性ガス中で加熱処理して水素を除去し、次いで前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することを特徴とする脱酸素剤の製造方法を提供するものである。
【0018】
更に本発明は、前記の脱酸素剤が透気抵抗度を有する包装体に内包されてなることを特徴とする脱酸素包装体を提供するものである。
【0019】
更に本発明は、前記の脱酸素剤からなる脱酸素層を有することを特徴とする脱酸素機能フィルムを提供するものである。
【0020】
更に本発明は、前記の脱酸素剤を、酸素易透過性を有してなる樹脂に分散又は練込んでなることを特徴とする脱酸素樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の脱酸素剤によれば、酸素欠損による酸素吸収サイトが、サイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞されているので、脱酸素剤のハンドリング時間を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態及び実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態及び実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0023】
本発明で用いられる無機酸化物は、金属の無機酸化物の結晶中に占める酸素原子のサイトが欠損した状態になっている。このサイトは酸素吸収が可能なものである。この酸素吸収は、生活環境雰囲気中で起こるものである。本明細書において、例えば化石燃料で動作する動力用エンジンから排出される排気ガス等の高温及び/又は高圧の過酷な雰囲気は、この生活環境雰囲気には含まれない。ここで、生活環境雰囲気とは例えば食品、電子部品、医薬品などの商品を保存する際の一般的な雰囲気を指す。気圧については、例えば商品包装における減圧状態(真空包装など)から、加圧状態(レトルト処理における加圧・加熱殺菌や包装体の形状維持用途など)を包含する。温度については、−50℃(冷凍保存時)から180℃(食品のレトルト処理)程度を包含する。また、雰囲気は必ずしも空気である必要はなく、窒素ガスなどの不活性ガスにてパージを行い、酸素濃度を低下させたものでも良い。本発明で用いられる無機酸化物は、酸素欠損を有していない無機酸化物の還元処理により、結晶格子中から酸素が引き抜かれて酸素欠損状態となっている。還元処理は、例えば水素ガスやアセチレンガスや一酸化炭素ガス等の還元性ガスの濃度が高濃度でかつ高温熱処理である強還元雰囲気中で行われる。
【0024】
無機酸化物が有している酸素欠損には可逆的欠損と不可逆的欠損の2種類があるとことが知られている。可逆的欠損とは、本発明の脱酸素剤を構成する無機酸化物が有する酸素欠損のことであり、強力な還元条件下の処理によって酸素が強制的に引き抜かれることで生成するものである。可逆的欠損は、欠損したサイトに酸素が取り込まれることが可能な欠損である。例えば、無機酸化物が、後述する酸化セリウムである場合、可逆的欠損を有する酸化セリウムにおいては、酸素不足に起因する電荷のアンバランスな状態を、四価のセリウムの一部が三価に還元されることで補償している。三価のセリウムは不安定であり、四価に戻りやすいものである。したがって、欠損したサイトに酸素が取り込まれることで、三価となっているセリウムが四価に戻り、電荷のバランスが常にゼロに保たれる。
【0025】
一方、不可逆的欠損とは、金属無機酸化物に、該金属の価数よりも低価数の元素をドープすることで形成されるものである。不可逆的欠損は、可逆的欠損と異なり、強力な還元条件下の処理で発生した欠損ではない。不可逆的欠損は、例えば、金属無機酸化物に、該金属の価数よりも低価数の元素の酸化物を混合し、大気下で焼成することによって得られる。無機酸化物が、例えば、後述する酸化セリウムである場合、不可逆的欠損を有する酸化セリウムにおけるセリウムの価数はすべて四価である。したがって、欠損したサイトに酸素が取り込まれることはない。例えば、CeO2に20mol%のCaを固溶させた場合(Ce0.8Ca0.2O2)、陽イオンの平均価数は4×0.8+2×0.2=3.6なので、酸素の電荷をこの価数にバランスさせるための酸素原子の数は3.6÷2=1.8個となり、必要な酸素原子の数は2個よりも少なくなる。その分だけ酸素欠損が生じる。しかし、この酸素欠損は酸素の吸収が可能なものではない。このように不可逆的欠損は、酸素の強制的な引き抜きによって生じるものではなく、金属無機酸化物における電荷補償によって生じるものである。
【0026】
ところで、本発明で用いられる、可逆的な酸素欠損を有する金属無機酸化物の他に、酸素の吸収が可能な無機酸化物として、OSC(酸素吸蔵放出能力)材料が知られている。OSC材料は自動車用触媒の助触媒としてしばしば用いられる。OSC材料は酸化セリウムが有する酸素イオン伝導性と希土類元素の価数変化を利用して、雰囲気中から酸素を取り込み、それと同時に酸素を放出して、雰囲気中の酸素の量を一定にさせる材料である。しかし、OSC材料による酸素の取り込み及び放出は、数百℃という高温下で初めて起こる。したがって、大気中の生活環境雰囲気では、OSC材料による酸素の取り込み及び放出は生じない。この理由は、OSC材料は、生活環境雰囲気において可逆的な酸素欠損を有していないからである。
【0027】
本発明で用いられる可逆的な酸素欠損を有する金属無機酸化物の酸素吸収量は、例えば金属無機酸化物として酸化セリウムを用いた場合には、25℃、1気圧の環境下で5〜37mL/g、特に15〜34mL/gという理論限界に近い極めて高いものである。可逆的な酸素欠損を有する酸化セリウムの酸素吸収量の理論限界は37.2mL/gである。
【0028】
酸素吸収量の測定は次の方法で行われる。酸素吸収サイトが脱離可能に一時的にサイト閉塞因子体により閉塞された脱酸素剤2gを分取し、透気抵抗度を有する包装体(透気抵抗度10〜1000000秒)へ内包する。透気抵抗度を有する包装体の大きさは脱酸素剤2gを内包出来ればよく、大きさに特に制限は無い。これとは別に、脱酸素剤を内包しない同一材質・同一サイズで同一の透気抵抗度を有する包装体を用意する。なお、本作業は、窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことが望ましい。次に、作製した脱酸素剤の入った包装体を大気(25℃、1気圧)に曝露させ、一定時間毎に精密電子天秤(小数点以下4桁以上)にて重量を測定する。重量の増加は酸素の吸収に起因するものであるから、気体の状態方程式を用い、吸収した酸素量を求めることができる。なお、包装体自身に吸着される水分に起因する重量増加を補正するため、脱酸素剤を内包していない包装体の重量も同時に測定し、その重量を、脱酸素剤を内包した包装体の重量から減じる。ここで透気抵抗度とは、JIS P8117にしたがい測定され、空気100mLが0.000642m2の面積を気圧差1.23kPaで透過し終えるまでの時間を意味する。
【0029】
本発明で用いられる無機酸化物は、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等のいずれか一種又はこれらの混合物であることが好ましい。
特に単独での酸素吸収能力が大きい、酸化セリウムを無機酸化物として用いるのが好ましい。この無機酸化物には、後述するように特定の元素を添加してもよい。添加元素としては、前記無機酸化物のイオン半径近傍の元素を添加することが好ましいが、添加により酸素吸収量が増大するものであれば、これに限定されるものではない。
【0030】
ここで、本実施の形態では、無機酸化物として酸化セリウムを用いる場合について、図1を参照しつつ以下に説明する。
図1及び下記式(2)に示すように、前記酸素欠損を有する高温還元処理した酸化セリウムは、還元処理により結晶格子中から酸素が強制的に引き抜かれて酸素欠損状態(CeO2-x)となり、酸素吸収サイトを有することとなる。この酸素欠損状態は、上述した可逆的欠損である。そして、この酸素吸収サイトが生活環境雰囲気中の酸素と下記式(3)に示すようにして反応するので脱酸素剤としての効果が発揮される。酸化セリウムは蛍石構造(Fluorite−Type)であるので、構造的に安定であり、酸素欠損による酸素吸収サイトを安定して保持できる。また、酸素イオン導電性が高いので、内部まで酸素が出入りすることができ、酸素吸収能力が良好である。
CeO2+xH2→CeO2-x+xH2O ・・・(2)
CeO2-x+(X/2)O2→CeO2 ・・・(3)
【0031】
本発明では、前記酸素吸収サイトを、ユーザーが使用開始するまでの間、脱離可能に一時的にサイト閉塞因子体により閉塞することで、活性を制御するようにしている。
すなわち、本発明に係る脱酸素剤は、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体により脱離可能に一時的に閉塞してなるものである。
本発明で前記「酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体により一時的に閉塞する」の「一時的に閉塞」とは、脱酸素剤を製造し、所定雰囲気(窒素充填による酸素がない状態)の元で管理され、その後ユーザーの元において脱酸素剤として機能する所定濃度の酸素雰囲気下に至るまでの間(例えば御菓子等のパッケージ内におかれた後、酸素吸収機能を少なくとも発揮するまでの時間)をいう。また、「脱離可能」とは、生活環境雰囲気において、脱酸素剤の酸素吸収サイトを閉塞しているサイト閉塞因子体が、該酸素吸収サイトから自発的に脱離できることをいう。
前記サイト閉塞因子体とは、例えば二酸化炭素(CO2)等のカルボニル基を有する低分子化合物である。サイト閉塞因子体は、カルボニル基を1個又は2個以上有していてもよい。サイト閉塞因子体は、その分子量が28以上、特に44〜200程度であることが好ましい。サイト閉塞因子体は、被覆処理条件、例えば50〜600℃、1気圧において容易に液体又は気体となり、かつ分解しないものであることが好ましい。
【0032】
模式的に示すと、図2に示すように、還元により酸素欠損を有する還元酸化セリウム(CeO2-x)の表面を二酸化炭素(CO2)で被覆することにより、酸素(O2)のアタックを阻害することができ、活性を低下させ、発火を抑制することができる。同図に示すように、二酸化炭素による酸化セリウムの被覆は、(a)酸化セリウムの酸素吸収サイトに二酸化炭素が結合することに由来する被覆と、(b)酸化セリウムの表面に二酸化炭素が物理的に吸着することに由来する被覆の2種類がある。そして、どちらの被覆の態様によっても酸化セリウムの活性を一時的に低下させることが可能である。
【0033】
この結果、図3に示すように、二酸化炭素(CO2)を被覆していない従来の場合(図3中、破線で示す。)には、脱酸素剤として機能する際に、酸素吸収曲線が時間の経過と共に急激に立ち上がる結果、発火していたが、本発明の場合(図3中、実線で示す。)には、所定の経過時間までは酸素吸収がゆるやかであり(すなわち最初はしばらく酸素を吸わない状態となる。)、所定の経過時間後に、酸素吸収曲線が立ち上がり、脱酸素剤として機能することとなる。
【0034】
この結果、酸化セリウムの周囲に二酸化炭素(CO2)が存在するので、所定の間はしばらく酸素を吸収しない状態となる。よって、ユーザーが自己の製品のパッケージ内に脱酸素剤を入れ、パッケージを封止するまでの間、酸素吸収機能が抑制された状態にあり、ハンドリング時間が存在することとなる。
【0035】
前記ハンドリング時間とは、図4に示すように、不活性雰囲気状態にした脱酸素剤を常温(25℃、以下「常温」というときにはこれと同じ。)・常圧(1気圧、以下「常圧」というときにはこれと同じ。)の大気中に開放した時点を開始点とし、該開始点からの経過時間(h)と酸素吸収量(mL/g)との関係において、酸素吸収が緩やかな初期状態の酸素吸収ラインL1と、それに引き続き、かつラインL1よりも傾きの大きな酸素吸収ラインL2との交点Xでの時間をhとしたとき、開始点から時間hまでの時間で定義される。初期状態の吸収ラインL1の傾きは一般に3mL/g/h以下であり、それに引き続く吸収ラインL2の傾きはそれよりも大きい。
ここで、ユーザーにおけるハンドリング時間は好ましくは0.5時間以上7時間未満程度、更に好ましくは1時間以上2時間以下程度である。
よって、前記ハンドリング時間経過後は、酸素吸収能が急激に増加し、脱酸素剤として機能することとなる。
【0036】
図5に、還元処理した酸化セリウムを、二酸化炭素(CO2)で処理したときの温度(50〜600℃)と時間との関係を示す。
図5に示すように、50℃で2時間まで、100〜200℃で1時間までは発火現象が確認された。また、400℃で3時間以上、500℃及び600で1時間以上では、発火はしないが白色化(酸素欠損のない酸化セリウムに戻る)が確認された。
【0037】
よって、二酸化炭素(CO2)の処理温度は50℃で3時間以上、100〜200℃で2時間以上、250℃及び300℃で5分以上、400℃で30分から2時間、500℃で30分であれば、酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体により脱離可能に一時的に閉塞することができることを確認した。
【0038】
次に、二酸化炭素(CO2)処理の条件とハンドリング時間との関係について説明する。
前述した図5に示すように、二酸化炭素(CO2)処理の際の処理温度が低い(200℃なら1時間以下)と発火を抑制できず、一方高い(400℃なら3時間以上)と白色化(酸化)となるので、200℃、250℃、300℃、350℃及び400℃の各温度において、二酸化炭素(CO2)処理時間(h)とハンドリング時間との関係を求め、その結果を図6に示した。
【0039】
図6に示すように、200℃(図6中、「×」印)では、長期間処理してもハンドリング時間を延ばすことはできなかった。
一方、400℃(図6中、「△」印)では、白色化してしまうので長期間処理してもハンドリング時間を延ばすことはできなかった。
これに対し、250〜350℃で6時間以内での二酸化炭素(CO2)処理では、ハンドリング時間を自由に制御できることが判明した。
【0040】
よって、前記温度範囲であれば任意に処理時間を調整することで、ユーザーの要求に応じてハンドリング時間を調節することができることとなる。
【0041】
また、図7に二酸化炭素(CO2)処理における加熱温度を300℃とし、1時間処理、2時間処理、3時間処理、6時間処理及び12時間処理における経過時間と酸素吸収量との関係を示す。
これにより処理時間を長くすることでハンドリング時間を調節することができることが判明した。
【0042】
ここで、水素還元した還元酸化セリウムに形成される酸素吸収サイトを閉塞するサイト閉塞因子体としては、二酸化炭素を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば下記化1〜5に示されるようなカルボニル基を有する有機化合物でもよい。
【0043】
具体的には、例えばアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、サリチル酸メチル等のエステル類、酢酸、酪酸、コハク酸等のカルボン酸類、エタンアミド、ベンズアミド、ホルムアミド等のアミド類が挙げられる。
【0044】
【化1】
【0045】
【化2】
【0046】
【化3】
【0047】
【化4】
【0048】
【化5】
【0049】
これらは液体であるので、これらの溶液を加熱して蒸気とし、蒸気を所定温度の二酸化炭素(CO2)装置内に導入し、カルボニル基のサイト閉塞因子体を酸素吸収サイトに導入して閉塞するようにすればよい。
【0050】
また、図8に示すように、FT−IRを用いてIRスペクトルを測定することで酸化セリウム表面に存在する二酸化炭素(CO2)を確認できる。同図は、CO2で酸素吸収サイトを一時的に閉塞した還元酸化セリウムの加熱前後でのIRスペクトルを、バックグラウンドと比較した差分を示している。ここで、バックグラウンドとは、還元酸化セリウムにCO2処理を施した室温状態での試料のIRスペクトルのことである。加熱前の状態では、CO2の脱離が生じていないため、当然バックグラウンドとの差がなく、スペクトルはフラットなままである。これに対して、試料を加熱してCO2が脱離した後は、CO2による吸収が減少するため、そこからバックグラウンドのスペクトルを差し引くと、バックグラウンドとの差分が負のピークとなって現れる。具体的には、約2180〜2100cm-1付近及び約2310〜2390cm-1付近が、バックグラウンドと比較して減少していることが確認できる。約2180〜2100cm-1付近の吸収は、酸化セリウムの酸素吸収サイトに結合した二酸化炭素に由来する吸収である。この吸収は、通常の状態の二酸化炭素では観測されないものであり、むしろ一酸化炭素の吸収に近いものである。このことから、酸化セリウムの酸素吸収サイトに結合した二酸化炭素は、一酸化炭素に近い状態で存在していると考えられる。また、約2310〜2390cm-1付近の吸収は、酸化セリウムの表面に吸着した二酸化炭素に由来する吸収である。この吸収は、通常の状態の二酸化炭素においても観察される。図8及び次に説明する図9に示すIRスペクトルは、堀場製作所製のFT−720を用い、ヘリウム流通下で測定されたものである。測定にはDRS法(Diffuse Reflectance Spectroscopy)を用いた。
【0051】
図9は、二酸化炭素で酸素吸収サイトを閉塞した酸化セリウムが酸素を吸収する過程での、FT−IRを用いた赤外線吸収スペクトルを測定した結果を示している。酸素の吸収は、大気中にて常温・常圧で行っている。この結果から明らかなように、時間の経過とともに、換言すれば酸素の吸収とともに、約2125cm-1付近の吸収ピークが減少していることが判る。このことは、酸化セリウムの酸素吸収サイトを閉塞していた二酸化炭素が、酸化セリウムが酸素を吸収するにつれて脱離していることを意味している。
【0052】
二酸化炭素(CO2)等で処理する前に、水素還元した還元酸化セリウムから残存している水素を除去することにより、ハンドリング時間の向上を図ることができる。
図10は真空処理条件と昇温脱離(TPD)測定時の脱離水素量との関係図である。図11は水素脱離量とハンドリング時間との関係図である。
【0053】
図10及び図11に示すように、真空処理していない場合に較べて、真空処理を施した方が、水素が脱離し二酸化炭素(CO2)処理が効率よく行なわれ、ハンドリング時間の延長が可能であることが確認された。
なお、TPD測定は、所定温度(50℃)で30分経過した後に、10℃/1分で昇温させて測定した。キャリアガスはヘリウム(He)を50SCCMとした。
【0054】
次に、本発明における二酸化炭素(CO2)等での処理による被覆のメカニズムについて説明する。
図12−1〜図12−3は、還元前の酸化セリウム(CeO2)の状態から、水素還元処理し、次に必要に応じて真空中で水素除去処理し、二酸化炭素(CO2)処理し、その後脱酸素剤として機能する状態までの工程を模式的に示したものである。
図12−1は、還元前と還元後の状態である。
図12−1に示す「1)」のように、還元前においては、酸素イオン(O2-)とセリウムイオン(Ce4+)とが規則正しく並んでいる。
そして、還元処理を施すと、図12−1に示す「2)」のように、酸素欠損(図中破線の丸で示す。)である酸素吸収サイト101が生じている。なお、小さい黒丸は水素である。還元処理は、例えば水素ガスやアセチレンガスや一酸化炭素ガス等の還元性ガスの濃度が高濃度でかつ高温熱処理である強還元雰囲気中で行われる。還元性ガス濃度は好ましくは爆発下限以上〜100体積%、更に好ましくは20体積%〜100体積%である。処理温度は好ましくは500℃以上、更に好ましくは700℃〜1200℃、一層好ましくは1000℃〜1050℃である。強還元雰囲気は一般に常圧であるが、これに代えて加圧条件を用いてもよい。
【0055】
次に、本実施の形態では、二酸化炭素(CO2)で被覆処理する前に水素除去処理を行うことも可能である。
図12−2に示す「3−1)」は、真空中での加熱で水素を脱離させて除去する状態を示す。
【0056】
ここで、水素の脱離は、酸化セリウム中での水素の存在状態により異なる。図13は還元直後の酸化セリウムにおける水素の昇温脱離挙動である。
図13及び図14に示すように、[1]酸化セリウム(CeO2)の細孔内に停滞している水素は、比較的低い温度(250℃近傍)で脱離する。
また、図13に示すように[2]酸化セリウム(CeO2)の表面をターミネーションしている水素は、350℃近傍で脱離する。
そして、図13に示すように[3]酸化セリウム(CeO2)の結晶内に存在している水素は、400℃近傍で脱離する。このようにして適度に加熱することで水素が除去されるので、図12−2に示す「3−2)」のサイト101にサイト閉塞因子体が接触し易くなる。
【0057】
そして、図12−2に示す「3−2)」のように、適度に加熱されることにより、サイト閉塞因子体102である二酸化炭素(CO2)の酸素部分が酸素吸収サイト101に嵌まり込み(いわゆる鍵と鍵穴とによるキャッピング現象)、両者が強固に結合されることとなる。
この状態で脱酸素剤として製品化され、所定雰囲気(例えば不活性ガス充填で密封保存)の元で管理される。
【0058】
そして、所定雰囲気の元で管理された脱酸素剤をユーザー側において、開封し、自社の製品(例えば医薬品、お菓子等)を密封体(例えば袋、容器等)に密封等する際に、投入する。
【0059】
図12−3に示す「4)」は、このような脱酸素剤の機能を発揮する場面である。
前記製品(例えば医薬品、お菓子)を密封体に密封すると内部に存在する酸素が酸素吸収サイトに導入される。
そして、図12−3に示す「5)」のように、この導入された酸素により局所的に発熱域103が形成され、一時的に閉塞していたサイト閉塞因子体である二酸化炭素(CO2)は、CO2として脱離するか又はCOとして脱離し、残った酸素(O)が内部の酸素欠損部位に移動する。
【0060】
その後、図12−3に示す「6)」のように、酸素(O)が常に内部に向かって伝搬するために、常に酸素欠損部位が最外層に存在し、密封体内部に存在する酸素を吸収し続け、脱酸素機能を発揮することとなる。
【0061】
このように、前記酸素欠損である酸素吸収サイト101の少なくとも一部を、サイト閉塞因子体102により一時的に閉塞してなるので、その後脱酸素剤として機能する所定濃度の酸素雰囲気下に至るまでの間は酸素欠損部位の割合を少なくし、酸素を吸収し始めると、発熱域が形成されて酸素欠損部位である酸素吸収サイト101を閉塞していたサイト閉塞因子体102が外れるので、急激な酸素吸収による発火減少を抑制することができる。また、処理温度と時間とを組み合せることにより、ハンドリング時間を任意に調節することもできることとなる。
【0062】
製造法について図15〜図19を用いて説明する。
図15に示すように、酸化セリウム粉末200を焼成炉201内で焼成(300〜1000℃:1時間)し、その後還元焼成炉202内において水素雰囲気で還元処理する。その後二酸化炭素(CO2)処理装置203でCO2被覆処理をし、その後フィルムパック処理装置204でフィルムパックを施し、脱酸素包装体とする。
【0063】
図16−1、図16−2は、本発明の第1の製造方法であり、直接CO2被覆法である。
図16−1に示す二酸化炭素(CO2)処理装置203にCO2ガスを導入し、直接酸化セリウムにCO2を処理している。CO2ガスは100%のものを用いてもよく、あるいはCO2に加え、他のガスを含んでいるものを用いてもよい。他のガスとしては、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンなどの不活性ガス;水蒸気;カルボニル基を有するアルデヒド類、ケトン類、エステル類、カルボン酸類、アミド類などの有機化合物ガス等を用いることができる。他のガスの割合は、該ガスが不活性ガス又は水蒸気の場合には50体積%程度以下とすることができ、有機化合物ガスであれば0〜100体積%の任意の割合とすることができる。CO2ガスは流通状態で供給することができる。あるいは、一定量のCO2ガス雰囲気中に酸化セリウムを静置して処理を行ってもよい。いずれの場合であっても、圧力は常圧とすることができる。流通状態でCO2ガスを供給する場合には、酸化セリウム1gあたり、0.5SCCM以上の供給量とすることが好ましいが、酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞できれば特に制限はない。
図16−2示すように、還元処理した酸化セリウムを室温又は還元後の所定の温度から昇温を開始する(例えば10℃/分昇温)、所定の処理温度(例えば50〜600℃)と処理時間(0.5〜12時間)で処理し、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞し、その後降温して、室温で取り出す。
【0064】
図17−1、図17−2は、本発明の第2の製造方法であり、加熱真空処理による水素除去を行った後に、二酸化炭素(CO2)被覆処理する方法である。
図17−1に示すように、先ず加熱真空処理装置205を用いて、真空ポンプ206により、真空度76mmHg以下とし、400〜800℃で10分〜9時間真空加熱処理を行なう。
その後、第1の製造方法と同様にして、室温又は真空加熱処理後の所定の温度から昇温を開始する(例えば10℃/分昇温)、所定の処理温度(例えば50〜600℃)と処理時間(0.5〜12時間)で処理し、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞し、その後降温して、室温で取り出す。
【0065】
図18−1、図18−2は本発明の第3の製造方法であり、不活性ガス中の加熱処理による水素除去を行った後に、二酸化炭素(CO2)被覆処理する方法である。
図18−1に示すように、先ず不活性ガス加熱処理装置207内に不活性ガス(ヘリウム、アルゴン、窒素等)を導入し、400〜900℃で数時間(2〜5時間)加熱処理を行なう。不活性ガスは流通状態で供給することができる。あるいは、一定量の不活性ガス雰囲気中に酸化セリウムを静置して処理を行ってもよい。いずれの場合であっても、圧力は常圧とすることができる。流通状態で不活性ガスを供給する場合には、酸化セリウム1gあたり、0.5SCCM以上の供給量とすることが好ましいが、酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞できれば特に制限はない。
その後、第1の製造方法と同様にして、室温又は不活性ガス加熱処理後の所定の温度から昇温を開始する(例えば10℃/分昇温)、所定の処理温度(例えば50〜600℃)と処理時間(0.5〜12時間)で処理し、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞し、その後降温して、室温で取り出す。
【0066】
このような各種の二酸化炭素(CO2)被覆処理法により、酸素吸収サイトの少なくと
も一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞することで、発火を防止すると共にハンドリング時間を確保することができる。
【0067】
さらに、本発明では、前記酸素欠損を有する酸化セリウムに対して、酸化物を調整する際に、特定の添加元素を添加して置換固溶させて複合酸化物とし、酸素吸収量を大幅に増大させるようにしている。
この特定の添加元素としては、例えばイットリウム(Y)、カルシウム(Ca)又はプラセオジム(Pr)のいずれか一種又はこれらの混合物とするのが望ましい。
これらの添加元素を酸化セリウム粉末製造の際に、添加して酸化セリウムと共に複合酸化物を形成するようにしている。
【0068】
この特定の添加元素を添加することで酸素吸収量が増大するのは次の通りである。
先ず、酸化セリウムは通常は4+であるが、高温で還元処理すると3+へと価数が変化する。この価数の変化に伴い、酸化セリウムのイオン半径が膨張し、結晶格子自体は膨張するが、前記イットリウム、カルシウム及びプラセオジムは、膨張した3+のセリウムイオンよりもイオン半径が小さく、これらのいずれかを添加したことで格子の膨張を抑制できることとなる。この結果、結晶が安定化し、より多くの酸素欠損を保持することができるものとなる。
【0069】
なお、添加量としては、1〜20mol%とするのが好ましい。これは、1mol%未満ではその添加効果の発現量が小さいからである。
【0070】
また、一般に価数変化が無い又は少ないものを酸化セリウムに添加する場合には、酸素の吸収量の増大効果は発現されないが、特定のイオン半径を有する前記添加元素(Y、Ca、Pr)の添加量として20mol%程度迄の添加であれば、酸化セリウムの蛍石型の格子の膨張抑制機能が十分に発揮され、この結果、酸素吸収量の増加を図ることができるからである。
【0071】
他方、タブレットやフレーク等の成形体の場合には、添加元素を添加した酸化セリウムとの複合酸化物の粉体を、所定圧力(例えば0.5t/cm2以上)で加圧して成形体を製造し、これを1000℃以上の温度で焼結した後に、例えば水素等の還元性ガス気流中で500℃1時間還元焼成し、その後前述したのと同様にして二酸化炭素(CO2)処理を施し、酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体により一時的に閉塞してハンドリング時間を向上した加圧成形体とすることができる。
【0072】
このように製造された脱酸素剤は、酸素を必要十分に透過させ得る公知の多孔性フィルム等の脱酸素用包装体でラミネート等の処理により封入されることにより、利用される。
【0073】
このような本実施の形態に係る脱酸素剤においては、前記化学式(2)に示したように雰囲気中の酸素と反応することにより、雰囲気中から酸素を大幅に吸収・除去することができる。
【0074】
このため、本実施の形態に係る酸化セリウムを主体とした複合酸化物からなる脱酸素剤では、(1)水分を全く必要とすることなく、酸素と反応することができるので、例えば乾燥食品、電子部品、半田粉等のような水分を嫌うものの場合の保存に利用することができる。また、(2)酸化セリウムは非金属であるので、金属探知機には検知されることがなく、金属探知機を用いて食品中の異物を発見することができる。また、(3)耐マイクロ波の特性も優れているので、酸化セリウムからなる脱酸素剤はマイクロ波調理における加熱を防ぐことができる。さらに、(4)酸化セリウムに添加物を添加することにより、酸素吸収量が増大するので、酸化セリウム単独の場合に較べて単位重量当りの酸素吸収量の大幅な増大を図ることができる。
【0075】
よって、本実施の形態によれば、無機酸化物である酸化セリウム単独の場合に較べて酸素吸収量が増大する脱酸素剤を提供することができる。
【0076】
このように、本実施の形態によれば、無機酸化物である酸化セリウムを用いて脱酸素機能を発揮する脱酸素剤及び密封雰囲気中の脱酸素方法を提供することができる。
よって、例えば医薬品やサプリメント、化学薬品(例えば色素、香料、脂質、酵素、ビタミン、脂肪酸)又は酸化され易い食品素材並びに食品、精密機械及びその部品、半導体基板等を安定保存できるようにすることが可能となる。
【0077】
また、図19に示すように、脱酸素機能フィルム20Aとしてもよい。この脱酸素機能フィルム20Aは、図19に示すように、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞した脱酸素剤からなる脱酸素層21と、該脱酸素層21の一面側に設けられ、酸素ガスバリア性を有するガスバリア層22と、前記脱酸素層21の他面側に設けられ、酸素ガス易透過性を有してなるガス易透過層23とから構成されており、脱酸素機能フィルムを提供するようにしてもよい。ここで、図19中、符号25は酸素を図示する。この脱酸素機能フィルム20Aは、ガス易透過層23の側(図19中、内側)が、脱酸素したい雰囲気に向くように用いられる。
なお、図19においては、前記ガスバリア層22の外側に外層24を設け、前記ガスバリア層22を保護するようにしている。
【0078】
ここで、前記脱酸素層21としては、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞した脱酸素剤を含有する樹脂、例えば不織布、ポリエチレン(超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、低密度直鎖ポリエチレン、中密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン―プロピレン共重合体、エチレン―プロピレンランダム重合体、エチレン―αオレフィン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレンプロピレンゴム、エチレン―アクリル酸エチル共重合体等の単層又は多層からなるものを例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
ここで、前記ガスバリア層22としては、アルミ箔等の金属箔や、各種樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、テレフタル酸―トリメチルヘキサメチレンジアミン縮重合体、2,2―ビス(p―アミノシクロヘキシル)プロパン―アジピン酸共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、ナイロンMXD(商品名)、ナイロン6(商品名)、ナイロン6,6(商品名)、アクリル樹脂等の単層又は多層からなるものを例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
また、前記ガス易透過層23としては、各種樹脂、例えば、ポリエチレン(超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、低密度直鎖ポリエチレン、中密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン―プロピレン共重合体、エチレン―プロピレンランダム重合体、エチレン―αオレフィン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレンプロピレンゴム、エチレン―アクリル酸エチル共重合体等の単層又は多層からなるものを例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば紙、不織布等の繊維類からなる層も用いることもできる。
また、前記ガス易透過層23はシーラント層(例えばPP又はPE等のポリオレフィン)の機能を併用するようにしてもよい。
【0081】
また前記外層24としては、例えばポリエチレン・ポリプロピレン・ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(商品名)等を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
また、図20の脱酸素機能フィルム20Bに示すように、前記脱酸素層21とガスバリア層22との間に、緩衝層27を設け、接着性及び緩衝性をフィルムに付与するようにしてもよい。
また、ガスバリア層22と外層24との間に酸素ガスに対する高度ガスバリア層28を設け、外部からの酸素ガスの侵入を防止の確実性を向上させるようにしてもよい。
【0083】
ここで、緩衝層27としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の緩衝作用及び接着作用を備えた樹脂を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
また、高度ガスバリア層28としては、例えばアルミ箔をはじめとする各種金属箔、アルミ蒸着フィルム、各種酸化物(シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ)蒸着フィルム等を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
この図20に示すような6層構造の脱酸素機能フィルム20Bとすることで、緩衝作用が向上すると共に外部からの酸素ガスの侵入が困難になり、より付加価値の高いフィルムを提供することができる。
【0086】
また、図21−1に示すように、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞した脱酸素剤30と、該脱酸素剤30を包装すると共に、透気抵抗度を有してなる包装体31とから脱酸素包装体32Aを構成するようにしてもよい。
【0087】
また、図21−2に示すように、包装体31の一部又は全部を透明な窓32として内部を視認するようにすることにより、脱酸素剤の状態を確認するようにした脱酸素包装体32Bとしてもよい。
これは、脱酸素剤が酸素を吸収する前の酸素欠損を有する場合には、黒色であるが、酸素を吸収すると黄白色に変色することとなるからである。よって、黄白色となっているものはもはや脱酸素剤として機能することができないので、健全性を一目で確認することができる。
【0088】
また、図22に示すように、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞した脱酸素剤40を樹脂層41内に分散又は練り込んで脱酸素樹脂組成物42を構成するようにしてもよい。
【0089】
前記樹脂層41を構成する材料としては、酸素を透過することができる素材であればよく、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、これらのブレンド物などのオレフィン系樹脂、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体などのスチレン系樹脂などを例示することができる。また、これらの樹脂は単独でもまたはブレンド物としても使用することができる。
このような脱酸素樹脂組成物42を用いて、例えば樹脂トレーを成形して、例えば電子部品の搬送用トレーを構成するようにしてもよい。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の効果を確認するための一実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0091】
<原料の調整>
炭酸水素アンモニウムとアンモニアと炭酸アンモニウムとシュウ酸とを水に溶解した水溶液を攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を滴下し逆中和し、生成した沈殿物をイオン交換水で洗浄(本実施例では2回)してろ過した。その後、ろ過物を乾燥(300℃で2時間)することにより、酸化セリウム(CeO2)の粉末(平均粒径:約0.5μm)を得た。
【0092】
本実施例では、前記粉末(30g)の焼成条件は1100℃で1時間とした。さらに、還元条件は1000℃で1時間、水素100%ガスで400SCCMフローとした。圧力は常圧とした。
【0093】
その後、図16−1に示す二酸化炭素(CO2)処理装置203内に、前記還元処理した酸化セリウムを静置し、該処理装置203内に100%CO2ガスを導入し、酸化セリウムにCO2の処理をした。CO2ガスの流通量は800SCCMとした。圧力は常圧とした。
温度プログラムは、室温から昇温を開始し(10℃/分昇温)、その後処理温度(300℃)に達したのち、300℃で2時間処理し、その後自然放冷した。こうして酸素吸収サイトの一部を酸素吸収因子体(ここではCO2)により一時的に閉塞した試料を、透気抵抗度(7500秒)を有する包装体に内包した後にフィルムパック処理装置204でフィルムパックを施し、本実施例に係る脱酸素包装体を得た。
比較例としては、二酸化炭素(CO2)処理を施さなかった。
【0094】
本実施例と比較例の脱酸素剤包装体を空気中で開封してハンドリング時間を測定した。
この結果、本実施例の二酸化炭素(CO2)処理したものは、発火せず、しかも1.5時間のハンドリング時間であったが、処理しない比較例のものは、ハンドリングタイムが20分にも満たず、また発火した。
よって、二酸化炭素(CO2)処理した脱酸素包装体がハンドリング時間0.5時間以上であると共に、発火することがないので例えば医薬品やお菓子等の脱酸素剤として有効であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明に係る脱酸素剤は、ハンドリング時間を長くすることができるので、例えば食品の包装体の酸素の除去に用いて適している。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】酸化セリウムの結晶構造模式図である。
【図2】酸化セリウムの周囲を二酸化炭素(CO2)処理する模式図である。
【図3】酸化セリウムのハンドリング時間(酸素吸収経過時間)と酸素吸収量との関係図である。
【図4】ハンドリング時間の定義を示す経過時間と酸素吸収量との関係図である。
【図5】二酸化炭素(CO2)処理温度と二酸化炭素(CO2)被覆時間との関係図である。
【図6】二酸化炭素(CO2)処理時間とハンドリング時間との関係図である。
【図7】二酸化炭素(CO2)処理温度(300℃)を一定とした処理時間における酸素吸収経過時間と酸素吸収量との関係図である。
【図8】二酸化炭素で酸素吸収サイトを閉塞した酸化セリウムの、FT−IRを用いた赤外線吸収スペクトルのチャート図である。
【図9】二酸化炭素で酸素吸収サイトを閉塞した酸化セリウムが酸素を吸収する過程での、FT−IRを用いた赤外線吸収スペクトルのチャート図である。
【図10】真空処理条件とTPD測定時の脱離水素量との関係図である。
【図11】水素脱離量とハンドリング時間との関係図である。
【図12−1】還元前の酸化セリウム(CeO2)の状態から、水素還元処理した後の工程模式図である。
【図12−2】水素除去と二酸化炭素(CO2)被覆処理の工程模式図である。
【図12−3】酸素吸収開始から酸素吸収状態の工程模式図である。
【図13】還元直後の酸化セリウムにおける水素の昇温脱離挙動の図である。
【図14】酸化セリウム(CeO2)バルク内にターミネーションしている水素の模式図である。
【図15】酸化セリウム粉末から還元処理した後に、二酸化炭素(CO2)処理して脱酸素包装体を得るまでの製造工程の概略図である。
【図16−1】直接二酸化炭素(CO2)処理を行なう工程模式図である。
【図16−2】二酸化炭素(CO2)処理の昇温時間と処理時間との工程図である。
【図17−1】加熱真空処理して水素除去後に、直接二酸化炭素(CO2)処理を行なう工程模式図である。
【図17−2】加熱真空処理と二酸化炭素(CO2)処理の昇温時間と処理時間との工程図である。
【図18−1】不活性ガス加熱処理して水素除去後に、直接二酸化炭素(CO2)処理を行なう工程模式図である。
【図18−2】不活性ガス加熱処理と二酸化炭素(CO2)処理の昇温時間と処理時間との工程図である。
【図19】脱酸素機能フィルムの模式図である。
【図20】他の脱酸素機能フィルムの模式図である。
【図21−1】脱酸素包装体の模式図である。
【図21−2】他の脱酸素包装体の模式図である。
【図22】脱酸素樹脂組成物の模式図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤及び脱酸素剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の安全性や品質維持への強い要求に対して、食品を包装する食品用包装体の内部を無酸素状態にすることにより、食品の酸化劣化を抑制することが行われている。
具体的には、雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤を食品と共に食品用包装体の内部に入れて、食品用包装体の内部の残留酸素を除去して食品用包装体の内部を無酸素状態とすることが行われている。また、酸素を含まない不活性ガス中において、食品を前記脱酸素剤と共に食品用包装体で包装し、前記食品用包装体の内部に酸素を入れないようにすると共に、前記食品用包装体を透過して内部に侵入する僅かな酸素も、内包された脱酸素剤により除去すること等が行われている。
【0003】
このように、雰囲気中の酸素を除去する脱酸素剤としては、有機系材料からなるものと無機系材料からなるものとがあるが、コスト的な観点から、無機系材料である鉄系脱酸素剤が主に利用されている。この鉄系脱酸素剤は、下記の化学式(1)に示すように、鉄を雰囲気中の僅かな水分と共に、雰囲気中の酸素と反応させることにより、雰囲気中から酸素を除去するようになっている。
【0004】
Fe+1/2H2O+3/4O2→FeOOH ・・・(1)
【0005】
しかしながら、前述したような従来の鉄系の脱酸素剤を用いた場合には、以下のような問題がある。
(1)酸素との反応の際に水分を僅かながらも必要とするため、乾燥食品や電子部品や半田粉等のように水分を嫌うものを保存する場合には、従来の脱酸素剤の性能を十分に発揮することができないという問題がある。
(2)包装体で不活性ガスと共に、従来の脱酸素剤を包装した食品中に金属等の異物が混入しているか否かの検査を行う場合には、鉄系脱酸素剤に金属探知機が反応し、簡便な審査を行うことができない、という問題がある。
(3)電子レンジ等のマイクロ波によって急加熱されて発火する、という問題がある。
【0006】
このため、鉄系の脱酸素剤の代わりに、酸化チタン等の無機酸化物を用いた脱酸素剤が提案されている(特許文献1〜5)。
【0007】
しかしながら、酸化チタン等の無機酸化物のみを用いた脱酸素剤では酸素吸収能力が十分ではない、という問題がある。
【0008】
そこで、前記無機酸化物において、前記酸化チタンの代わりに酸化セリウムが脱酸素剤として好適であることを見いだし先に提案した(特許文献6)。
【0009】
ところで、還元処理により酸素欠損を有する酸化セリウムは、非常に活性が高く、急に空気に触れさせると発火してしまう、という問題がある。このため、ユーザーが自社の製品(例えば医薬品や食品等)を密閉する際、酸化セリウムからなる脱酸素剤を封入するまでの時間(ハンドリング時間)も酸素吸収が進んで行き性能が悪くなるので、製品適用において問題がある。
【0010】
そこで、脱酸素剤を封入する際におけるハンドリング時間を長くすると共に、そのハンドリング時間を任意に調整できる脱酸素剤の出現が切望されている。
【0011】
【特許文献1】特開2005−104064号公報
【特許文献2】特開2005−105194号公報
【特許文献3】特開2005−105195号公報
【特許文献4】特開2005−105199号公報
【特許文献5】特開2005−105200号公報
【特許文献6】特開2007−185653号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記問題に鑑み、ハンドリング時間を長くすることができる脱酸素剤及び脱酸素剤の製造方法を提供することを課題とする。
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明は、生活環境雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、前記脱酸素剤が、酸素の強制的な引き抜きによって生じた可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを有する無機酸化物であると共に、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞してなることを特徴とする脱酸素剤を提供するものである。
【0014】
本発明は、生活環境雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、
前記脱酸素剤が、酸素の強制的な引き抜きによって生じた可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを有する無機酸化物であると共に、
不活性雰囲気状態から常温・常圧の大気中に開放した時点を開始点とし、該開始点からの経過時間と酸素吸収量(mL/g)との関係において、酸素吸収が緩やかな初期状態の酸素吸収ラインL1と、それに引き続き、かつラインL1よりも傾きの大きな酸素吸収ラインL2との交点Xでの時間をhとしたとき、前記脱酸素剤が、開始点から時間hまでの時間で定義されるハンドリング時間を有することを特徴とする脱酸素剤を提供するものである。
【0015】
また発明は、前記の脱酸素剤の製造方法であって、前記無機酸化物粉末を1000℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することを特徴とする脱酸素剤の製造方法を提供するものである。
【0016】
また発明は、前記の脱酸素剤の別の製造方法であって、前記無機酸化物粉末を1000℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後加熱真空処理して水素を除去し、次いで前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することを特徴とする脱酸素剤の製造方法を提供するものである。
【0017】
また発明は、前記の脱酸素剤の更に別の製造方法であって、前記無機酸化物粉末を1000℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後不活性ガス中で加熱処理して水素を除去し、次いで前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することを特徴とする脱酸素剤の製造方法を提供するものである。
【0018】
更に本発明は、前記の脱酸素剤が透気抵抗度を有する包装体に内包されてなることを特徴とする脱酸素包装体を提供するものである。
【0019】
更に本発明は、前記の脱酸素剤からなる脱酸素層を有することを特徴とする脱酸素機能フィルムを提供するものである。
【0020】
更に本発明は、前記の脱酸素剤を、酸素易透過性を有してなる樹脂に分散又は練込んでなることを特徴とする脱酸素樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の脱酸素剤によれば、酸素欠損による酸素吸収サイトが、サイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞されているので、脱酸素剤のハンドリング時間を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態及び実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態及び実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0023】
本発明で用いられる無機酸化物は、金属の無機酸化物の結晶中に占める酸素原子のサイトが欠損した状態になっている。このサイトは酸素吸収が可能なものである。この酸素吸収は、生活環境雰囲気中で起こるものである。本明細書において、例えば化石燃料で動作する動力用エンジンから排出される排気ガス等の高温及び/又は高圧の過酷な雰囲気は、この生活環境雰囲気には含まれない。ここで、生活環境雰囲気とは例えば食品、電子部品、医薬品などの商品を保存する際の一般的な雰囲気を指す。気圧については、例えば商品包装における減圧状態(真空包装など)から、加圧状態(レトルト処理における加圧・加熱殺菌や包装体の形状維持用途など)を包含する。温度については、−50℃(冷凍保存時)から180℃(食品のレトルト処理)程度を包含する。また、雰囲気は必ずしも空気である必要はなく、窒素ガスなどの不活性ガスにてパージを行い、酸素濃度を低下させたものでも良い。本発明で用いられる無機酸化物は、酸素欠損を有していない無機酸化物の還元処理により、結晶格子中から酸素が引き抜かれて酸素欠損状態となっている。還元処理は、例えば水素ガスやアセチレンガスや一酸化炭素ガス等の還元性ガスの濃度が高濃度でかつ高温熱処理である強還元雰囲気中で行われる。
【0024】
無機酸化物が有している酸素欠損には可逆的欠損と不可逆的欠損の2種類があるとことが知られている。可逆的欠損とは、本発明の脱酸素剤を構成する無機酸化物が有する酸素欠損のことであり、強力な還元条件下の処理によって酸素が強制的に引き抜かれることで生成するものである。可逆的欠損は、欠損したサイトに酸素が取り込まれることが可能な欠損である。例えば、無機酸化物が、後述する酸化セリウムである場合、可逆的欠損を有する酸化セリウムにおいては、酸素不足に起因する電荷のアンバランスな状態を、四価のセリウムの一部が三価に還元されることで補償している。三価のセリウムは不安定であり、四価に戻りやすいものである。したがって、欠損したサイトに酸素が取り込まれることで、三価となっているセリウムが四価に戻り、電荷のバランスが常にゼロに保たれる。
【0025】
一方、不可逆的欠損とは、金属無機酸化物に、該金属の価数よりも低価数の元素をドープすることで形成されるものである。不可逆的欠損は、可逆的欠損と異なり、強力な還元条件下の処理で発生した欠損ではない。不可逆的欠損は、例えば、金属無機酸化物に、該金属の価数よりも低価数の元素の酸化物を混合し、大気下で焼成することによって得られる。無機酸化物が、例えば、後述する酸化セリウムである場合、不可逆的欠損を有する酸化セリウムにおけるセリウムの価数はすべて四価である。したがって、欠損したサイトに酸素が取り込まれることはない。例えば、CeO2に20mol%のCaを固溶させた場合(Ce0.8Ca0.2O2)、陽イオンの平均価数は4×0.8+2×0.2=3.6なので、酸素の電荷をこの価数にバランスさせるための酸素原子の数は3.6÷2=1.8個となり、必要な酸素原子の数は2個よりも少なくなる。その分だけ酸素欠損が生じる。しかし、この酸素欠損は酸素の吸収が可能なものではない。このように不可逆的欠損は、酸素の強制的な引き抜きによって生じるものではなく、金属無機酸化物における電荷補償によって生じるものである。
【0026】
ところで、本発明で用いられる、可逆的な酸素欠損を有する金属無機酸化物の他に、酸素の吸収が可能な無機酸化物として、OSC(酸素吸蔵放出能力)材料が知られている。OSC材料は自動車用触媒の助触媒としてしばしば用いられる。OSC材料は酸化セリウムが有する酸素イオン伝導性と希土類元素の価数変化を利用して、雰囲気中から酸素を取り込み、それと同時に酸素を放出して、雰囲気中の酸素の量を一定にさせる材料である。しかし、OSC材料による酸素の取り込み及び放出は、数百℃という高温下で初めて起こる。したがって、大気中の生活環境雰囲気では、OSC材料による酸素の取り込み及び放出は生じない。この理由は、OSC材料は、生活環境雰囲気において可逆的な酸素欠損を有していないからである。
【0027】
本発明で用いられる可逆的な酸素欠損を有する金属無機酸化物の酸素吸収量は、例えば金属無機酸化物として酸化セリウムを用いた場合には、25℃、1気圧の環境下で5〜37mL/g、特に15〜34mL/gという理論限界に近い極めて高いものである。可逆的な酸素欠損を有する酸化セリウムの酸素吸収量の理論限界は37.2mL/gである。
【0028】
酸素吸収量の測定は次の方法で行われる。酸素吸収サイトが脱離可能に一時的にサイト閉塞因子体により閉塞された脱酸素剤2gを分取し、透気抵抗度を有する包装体(透気抵抗度10〜1000000秒)へ内包する。透気抵抗度を有する包装体の大きさは脱酸素剤2gを内包出来ればよく、大きさに特に制限は無い。これとは別に、脱酸素剤を内包しない同一材質・同一サイズで同一の透気抵抗度を有する包装体を用意する。なお、本作業は、窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことが望ましい。次に、作製した脱酸素剤の入った包装体を大気(25℃、1気圧)に曝露させ、一定時間毎に精密電子天秤(小数点以下4桁以上)にて重量を測定する。重量の増加は酸素の吸収に起因するものであるから、気体の状態方程式を用い、吸収した酸素量を求めることができる。なお、包装体自身に吸着される水分に起因する重量増加を補正するため、脱酸素剤を内包していない包装体の重量も同時に測定し、その重量を、脱酸素剤を内包した包装体の重量から減じる。ここで透気抵抗度とは、JIS P8117にしたがい測定され、空気100mLが0.000642m2の面積を気圧差1.23kPaで透過し終えるまでの時間を意味する。
【0029】
本発明で用いられる無機酸化物は、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等のいずれか一種又はこれらの混合物であることが好ましい。
特に単独での酸素吸収能力が大きい、酸化セリウムを無機酸化物として用いるのが好ましい。この無機酸化物には、後述するように特定の元素を添加してもよい。添加元素としては、前記無機酸化物のイオン半径近傍の元素を添加することが好ましいが、添加により酸素吸収量が増大するものであれば、これに限定されるものではない。
【0030】
ここで、本実施の形態では、無機酸化物として酸化セリウムを用いる場合について、図1を参照しつつ以下に説明する。
図1及び下記式(2)に示すように、前記酸素欠損を有する高温還元処理した酸化セリウムは、還元処理により結晶格子中から酸素が強制的に引き抜かれて酸素欠損状態(CeO2-x)となり、酸素吸収サイトを有することとなる。この酸素欠損状態は、上述した可逆的欠損である。そして、この酸素吸収サイトが生活環境雰囲気中の酸素と下記式(3)に示すようにして反応するので脱酸素剤としての効果が発揮される。酸化セリウムは蛍石構造(Fluorite−Type)であるので、構造的に安定であり、酸素欠損による酸素吸収サイトを安定して保持できる。また、酸素イオン導電性が高いので、内部まで酸素が出入りすることができ、酸素吸収能力が良好である。
CeO2+xH2→CeO2-x+xH2O ・・・(2)
CeO2-x+(X/2)O2→CeO2 ・・・(3)
【0031】
本発明では、前記酸素吸収サイトを、ユーザーが使用開始するまでの間、脱離可能に一時的にサイト閉塞因子体により閉塞することで、活性を制御するようにしている。
すなわち、本発明に係る脱酸素剤は、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体により脱離可能に一時的に閉塞してなるものである。
本発明で前記「酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体により一時的に閉塞する」の「一時的に閉塞」とは、脱酸素剤を製造し、所定雰囲気(窒素充填による酸素がない状態)の元で管理され、その後ユーザーの元において脱酸素剤として機能する所定濃度の酸素雰囲気下に至るまでの間(例えば御菓子等のパッケージ内におかれた後、酸素吸収機能を少なくとも発揮するまでの時間)をいう。また、「脱離可能」とは、生活環境雰囲気において、脱酸素剤の酸素吸収サイトを閉塞しているサイト閉塞因子体が、該酸素吸収サイトから自発的に脱離できることをいう。
前記サイト閉塞因子体とは、例えば二酸化炭素(CO2)等のカルボニル基を有する低分子化合物である。サイト閉塞因子体は、カルボニル基を1個又は2個以上有していてもよい。サイト閉塞因子体は、その分子量が28以上、特に44〜200程度であることが好ましい。サイト閉塞因子体は、被覆処理条件、例えば50〜600℃、1気圧において容易に液体又は気体となり、かつ分解しないものであることが好ましい。
【0032】
模式的に示すと、図2に示すように、還元により酸素欠損を有する還元酸化セリウム(CeO2-x)の表面を二酸化炭素(CO2)で被覆することにより、酸素(O2)のアタックを阻害することができ、活性を低下させ、発火を抑制することができる。同図に示すように、二酸化炭素による酸化セリウムの被覆は、(a)酸化セリウムの酸素吸収サイトに二酸化炭素が結合することに由来する被覆と、(b)酸化セリウムの表面に二酸化炭素が物理的に吸着することに由来する被覆の2種類がある。そして、どちらの被覆の態様によっても酸化セリウムの活性を一時的に低下させることが可能である。
【0033】
この結果、図3に示すように、二酸化炭素(CO2)を被覆していない従来の場合(図3中、破線で示す。)には、脱酸素剤として機能する際に、酸素吸収曲線が時間の経過と共に急激に立ち上がる結果、発火していたが、本発明の場合(図3中、実線で示す。)には、所定の経過時間までは酸素吸収がゆるやかであり(すなわち最初はしばらく酸素を吸わない状態となる。)、所定の経過時間後に、酸素吸収曲線が立ち上がり、脱酸素剤として機能することとなる。
【0034】
この結果、酸化セリウムの周囲に二酸化炭素(CO2)が存在するので、所定の間はしばらく酸素を吸収しない状態となる。よって、ユーザーが自己の製品のパッケージ内に脱酸素剤を入れ、パッケージを封止するまでの間、酸素吸収機能が抑制された状態にあり、ハンドリング時間が存在することとなる。
【0035】
前記ハンドリング時間とは、図4に示すように、不活性雰囲気状態にした脱酸素剤を常温(25℃、以下「常温」というときにはこれと同じ。)・常圧(1気圧、以下「常圧」というときにはこれと同じ。)の大気中に開放した時点を開始点とし、該開始点からの経過時間(h)と酸素吸収量(mL/g)との関係において、酸素吸収が緩やかな初期状態の酸素吸収ラインL1と、それに引き続き、かつラインL1よりも傾きの大きな酸素吸収ラインL2との交点Xでの時間をhとしたとき、開始点から時間hまでの時間で定義される。初期状態の吸収ラインL1の傾きは一般に3mL/g/h以下であり、それに引き続く吸収ラインL2の傾きはそれよりも大きい。
ここで、ユーザーにおけるハンドリング時間は好ましくは0.5時間以上7時間未満程度、更に好ましくは1時間以上2時間以下程度である。
よって、前記ハンドリング時間経過後は、酸素吸収能が急激に増加し、脱酸素剤として機能することとなる。
【0036】
図5に、還元処理した酸化セリウムを、二酸化炭素(CO2)で処理したときの温度(50〜600℃)と時間との関係を示す。
図5に示すように、50℃で2時間まで、100〜200℃で1時間までは発火現象が確認された。また、400℃で3時間以上、500℃及び600で1時間以上では、発火はしないが白色化(酸素欠損のない酸化セリウムに戻る)が確認された。
【0037】
よって、二酸化炭素(CO2)の処理温度は50℃で3時間以上、100〜200℃で2時間以上、250℃及び300℃で5分以上、400℃で30分から2時間、500℃で30分であれば、酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体により脱離可能に一時的に閉塞することができることを確認した。
【0038】
次に、二酸化炭素(CO2)処理の条件とハンドリング時間との関係について説明する。
前述した図5に示すように、二酸化炭素(CO2)処理の際の処理温度が低い(200℃なら1時間以下)と発火を抑制できず、一方高い(400℃なら3時間以上)と白色化(酸化)となるので、200℃、250℃、300℃、350℃及び400℃の各温度において、二酸化炭素(CO2)処理時間(h)とハンドリング時間との関係を求め、その結果を図6に示した。
【0039】
図6に示すように、200℃(図6中、「×」印)では、長期間処理してもハンドリング時間を延ばすことはできなかった。
一方、400℃(図6中、「△」印)では、白色化してしまうので長期間処理してもハンドリング時間を延ばすことはできなかった。
これに対し、250〜350℃で6時間以内での二酸化炭素(CO2)処理では、ハンドリング時間を自由に制御できることが判明した。
【0040】
よって、前記温度範囲であれば任意に処理時間を調整することで、ユーザーの要求に応じてハンドリング時間を調節することができることとなる。
【0041】
また、図7に二酸化炭素(CO2)処理における加熱温度を300℃とし、1時間処理、2時間処理、3時間処理、6時間処理及び12時間処理における経過時間と酸素吸収量との関係を示す。
これにより処理時間を長くすることでハンドリング時間を調節することができることが判明した。
【0042】
ここで、水素還元した還元酸化セリウムに形成される酸素吸収サイトを閉塞するサイト閉塞因子体としては、二酸化炭素を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば下記化1〜5に示されるようなカルボニル基を有する有機化合物でもよい。
【0043】
具体的には、例えばアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、サリチル酸メチル等のエステル類、酢酸、酪酸、コハク酸等のカルボン酸類、エタンアミド、ベンズアミド、ホルムアミド等のアミド類が挙げられる。
【0044】
【化1】
【0045】
【化2】
【0046】
【化3】
【0047】
【化4】
【0048】
【化5】
【0049】
これらは液体であるので、これらの溶液を加熱して蒸気とし、蒸気を所定温度の二酸化炭素(CO2)装置内に導入し、カルボニル基のサイト閉塞因子体を酸素吸収サイトに導入して閉塞するようにすればよい。
【0050】
また、図8に示すように、FT−IRを用いてIRスペクトルを測定することで酸化セリウム表面に存在する二酸化炭素(CO2)を確認できる。同図は、CO2で酸素吸収サイトを一時的に閉塞した還元酸化セリウムの加熱前後でのIRスペクトルを、バックグラウンドと比較した差分を示している。ここで、バックグラウンドとは、還元酸化セリウムにCO2処理を施した室温状態での試料のIRスペクトルのことである。加熱前の状態では、CO2の脱離が生じていないため、当然バックグラウンドとの差がなく、スペクトルはフラットなままである。これに対して、試料を加熱してCO2が脱離した後は、CO2による吸収が減少するため、そこからバックグラウンドのスペクトルを差し引くと、バックグラウンドとの差分が負のピークとなって現れる。具体的には、約2180〜2100cm-1付近及び約2310〜2390cm-1付近が、バックグラウンドと比較して減少していることが確認できる。約2180〜2100cm-1付近の吸収は、酸化セリウムの酸素吸収サイトに結合した二酸化炭素に由来する吸収である。この吸収は、通常の状態の二酸化炭素では観測されないものであり、むしろ一酸化炭素の吸収に近いものである。このことから、酸化セリウムの酸素吸収サイトに結合した二酸化炭素は、一酸化炭素に近い状態で存在していると考えられる。また、約2310〜2390cm-1付近の吸収は、酸化セリウムの表面に吸着した二酸化炭素に由来する吸収である。この吸収は、通常の状態の二酸化炭素においても観察される。図8及び次に説明する図9に示すIRスペクトルは、堀場製作所製のFT−720を用い、ヘリウム流通下で測定されたものである。測定にはDRS法(Diffuse Reflectance Spectroscopy)を用いた。
【0051】
図9は、二酸化炭素で酸素吸収サイトを閉塞した酸化セリウムが酸素を吸収する過程での、FT−IRを用いた赤外線吸収スペクトルを測定した結果を示している。酸素の吸収は、大気中にて常温・常圧で行っている。この結果から明らかなように、時間の経過とともに、換言すれば酸素の吸収とともに、約2125cm-1付近の吸収ピークが減少していることが判る。このことは、酸化セリウムの酸素吸収サイトを閉塞していた二酸化炭素が、酸化セリウムが酸素を吸収するにつれて脱離していることを意味している。
【0052】
二酸化炭素(CO2)等で処理する前に、水素還元した還元酸化セリウムから残存している水素を除去することにより、ハンドリング時間の向上を図ることができる。
図10は真空処理条件と昇温脱離(TPD)測定時の脱離水素量との関係図である。図11は水素脱離量とハンドリング時間との関係図である。
【0053】
図10及び図11に示すように、真空処理していない場合に較べて、真空処理を施した方が、水素が脱離し二酸化炭素(CO2)処理が効率よく行なわれ、ハンドリング時間の延長が可能であることが確認された。
なお、TPD測定は、所定温度(50℃)で30分経過した後に、10℃/1分で昇温させて測定した。キャリアガスはヘリウム(He)を50SCCMとした。
【0054】
次に、本発明における二酸化炭素(CO2)等での処理による被覆のメカニズムについて説明する。
図12−1〜図12−3は、還元前の酸化セリウム(CeO2)の状態から、水素還元処理し、次に必要に応じて真空中で水素除去処理し、二酸化炭素(CO2)処理し、その後脱酸素剤として機能する状態までの工程を模式的に示したものである。
図12−1は、還元前と還元後の状態である。
図12−1に示す「1)」のように、還元前においては、酸素イオン(O2-)とセリウムイオン(Ce4+)とが規則正しく並んでいる。
そして、還元処理を施すと、図12−1に示す「2)」のように、酸素欠損(図中破線の丸で示す。)である酸素吸収サイト101が生じている。なお、小さい黒丸は水素である。還元処理は、例えば水素ガスやアセチレンガスや一酸化炭素ガス等の還元性ガスの濃度が高濃度でかつ高温熱処理である強還元雰囲気中で行われる。還元性ガス濃度は好ましくは爆発下限以上〜100体積%、更に好ましくは20体積%〜100体積%である。処理温度は好ましくは500℃以上、更に好ましくは700℃〜1200℃、一層好ましくは1000℃〜1050℃である。強還元雰囲気は一般に常圧であるが、これに代えて加圧条件を用いてもよい。
【0055】
次に、本実施の形態では、二酸化炭素(CO2)で被覆処理する前に水素除去処理を行うことも可能である。
図12−2に示す「3−1)」は、真空中での加熱で水素を脱離させて除去する状態を示す。
【0056】
ここで、水素の脱離は、酸化セリウム中での水素の存在状態により異なる。図13は還元直後の酸化セリウムにおける水素の昇温脱離挙動である。
図13及び図14に示すように、[1]酸化セリウム(CeO2)の細孔内に停滞している水素は、比較的低い温度(250℃近傍)で脱離する。
また、図13に示すように[2]酸化セリウム(CeO2)の表面をターミネーションしている水素は、350℃近傍で脱離する。
そして、図13に示すように[3]酸化セリウム(CeO2)の結晶内に存在している水素は、400℃近傍で脱離する。このようにして適度に加熱することで水素が除去されるので、図12−2に示す「3−2)」のサイト101にサイト閉塞因子体が接触し易くなる。
【0057】
そして、図12−2に示す「3−2)」のように、適度に加熱されることにより、サイト閉塞因子体102である二酸化炭素(CO2)の酸素部分が酸素吸収サイト101に嵌まり込み(いわゆる鍵と鍵穴とによるキャッピング現象)、両者が強固に結合されることとなる。
この状態で脱酸素剤として製品化され、所定雰囲気(例えば不活性ガス充填で密封保存)の元で管理される。
【0058】
そして、所定雰囲気の元で管理された脱酸素剤をユーザー側において、開封し、自社の製品(例えば医薬品、お菓子等)を密封体(例えば袋、容器等)に密封等する際に、投入する。
【0059】
図12−3に示す「4)」は、このような脱酸素剤の機能を発揮する場面である。
前記製品(例えば医薬品、お菓子)を密封体に密封すると内部に存在する酸素が酸素吸収サイトに導入される。
そして、図12−3に示す「5)」のように、この導入された酸素により局所的に発熱域103が形成され、一時的に閉塞していたサイト閉塞因子体である二酸化炭素(CO2)は、CO2として脱離するか又はCOとして脱離し、残った酸素(O)が内部の酸素欠損部位に移動する。
【0060】
その後、図12−3に示す「6)」のように、酸素(O)が常に内部に向かって伝搬するために、常に酸素欠損部位が最外層に存在し、密封体内部に存在する酸素を吸収し続け、脱酸素機能を発揮することとなる。
【0061】
このように、前記酸素欠損である酸素吸収サイト101の少なくとも一部を、サイト閉塞因子体102により一時的に閉塞してなるので、その後脱酸素剤として機能する所定濃度の酸素雰囲気下に至るまでの間は酸素欠損部位の割合を少なくし、酸素を吸収し始めると、発熱域が形成されて酸素欠損部位である酸素吸収サイト101を閉塞していたサイト閉塞因子体102が外れるので、急激な酸素吸収による発火減少を抑制することができる。また、処理温度と時間とを組み合せることにより、ハンドリング時間を任意に調節することもできることとなる。
【0062】
製造法について図15〜図19を用いて説明する。
図15に示すように、酸化セリウム粉末200を焼成炉201内で焼成(300〜1000℃:1時間)し、その後還元焼成炉202内において水素雰囲気で還元処理する。その後二酸化炭素(CO2)処理装置203でCO2被覆処理をし、その後フィルムパック処理装置204でフィルムパックを施し、脱酸素包装体とする。
【0063】
図16−1、図16−2は、本発明の第1の製造方法であり、直接CO2被覆法である。
図16−1に示す二酸化炭素(CO2)処理装置203にCO2ガスを導入し、直接酸化セリウムにCO2を処理している。CO2ガスは100%のものを用いてもよく、あるいはCO2に加え、他のガスを含んでいるものを用いてもよい。他のガスとしては、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンなどの不活性ガス;水蒸気;カルボニル基を有するアルデヒド類、ケトン類、エステル類、カルボン酸類、アミド類などの有機化合物ガス等を用いることができる。他のガスの割合は、該ガスが不活性ガス又は水蒸気の場合には50体積%程度以下とすることができ、有機化合物ガスであれば0〜100体積%の任意の割合とすることができる。CO2ガスは流通状態で供給することができる。あるいは、一定量のCO2ガス雰囲気中に酸化セリウムを静置して処理を行ってもよい。いずれの場合であっても、圧力は常圧とすることができる。流通状態でCO2ガスを供給する場合には、酸化セリウム1gあたり、0.5SCCM以上の供給量とすることが好ましいが、酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞できれば特に制限はない。
図16−2示すように、還元処理した酸化セリウムを室温又は還元後の所定の温度から昇温を開始する(例えば10℃/分昇温)、所定の処理温度(例えば50〜600℃)と処理時間(0.5〜12時間)で処理し、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞し、その後降温して、室温で取り出す。
【0064】
図17−1、図17−2は、本発明の第2の製造方法であり、加熱真空処理による水素除去を行った後に、二酸化炭素(CO2)被覆処理する方法である。
図17−1に示すように、先ず加熱真空処理装置205を用いて、真空ポンプ206により、真空度76mmHg以下とし、400〜800℃で10分〜9時間真空加熱処理を行なう。
その後、第1の製造方法と同様にして、室温又は真空加熱処理後の所定の温度から昇温を開始する(例えば10℃/分昇温)、所定の処理温度(例えば50〜600℃)と処理時間(0.5〜12時間)で処理し、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞し、その後降温して、室温で取り出す。
【0065】
図18−1、図18−2は本発明の第3の製造方法であり、不活性ガス中の加熱処理による水素除去を行った後に、二酸化炭素(CO2)被覆処理する方法である。
図18−1に示すように、先ず不活性ガス加熱処理装置207内に不活性ガス(ヘリウム、アルゴン、窒素等)を導入し、400〜900℃で数時間(2〜5時間)加熱処理を行なう。不活性ガスは流通状態で供給することができる。あるいは、一定量の不活性ガス雰囲気中に酸化セリウムを静置して処理を行ってもよい。いずれの場合であっても、圧力は常圧とすることができる。流通状態で不活性ガスを供給する場合には、酸化セリウム1gあたり、0.5SCCM以上の供給量とすることが好ましいが、酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞できれば特に制限はない。
その後、第1の製造方法と同様にして、室温又は不活性ガス加熱処理後の所定の温度から昇温を開始する(例えば10℃/分昇温)、所定の処理温度(例えば50〜600℃)と処理時間(0.5〜12時間)で処理し、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞し、その後降温して、室温で取り出す。
【0066】
このような各種の二酸化炭素(CO2)被覆処理法により、酸素吸収サイトの少なくと
も一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞することで、発火を防止すると共にハンドリング時間を確保することができる。
【0067】
さらに、本発明では、前記酸素欠損を有する酸化セリウムに対して、酸化物を調整する際に、特定の添加元素を添加して置換固溶させて複合酸化物とし、酸素吸収量を大幅に増大させるようにしている。
この特定の添加元素としては、例えばイットリウム(Y)、カルシウム(Ca)又はプラセオジム(Pr)のいずれか一種又はこれらの混合物とするのが望ましい。
これらの添加元素を酸化セリウム粉末製造の際に、添加して酸化セリウムと共に複合酸化物を形成するようにしている。
【0068】
この特定の添加元素を添加することで酸素吸収量が増大するのは次の通りである。
先ず、酸化セリウムは通常は4+であるが、高温で還元処理すると3+へと価数が変化する。この価数の変化に伴い、酸化セリウムのイオン半径が膨張し、結晶格子自体は膨張するが、前記イットリウム、カルシウム及びプラセオジムは、膨張した3+のセリウムイオンよりもイオン半径が小さく、これらのいずれかを添加したことで格子の膨張を抑制できることとなる。この結果、結晶が安定化し、より多くの酸素欠損を保持することができるものとなる。
【0069】
なお、添加量としては、1〜20mol%とするのが好ましい。これは、1mol%未満ではその添加効果の発現量が小さいからである。
【0070】
また、一般に価数変化が無い又は少ないものを酸化セリウムに添加する場合には、酸素の吸収量の増大効果は発現されないが、特定のイオン半径を有する前記添加元素(Y、Ca、Pr)の添加量として20mol%程度迄の添加であれば、酸化セリウムの蛍石型の格子の膨張抑制機能が十分に発揮され、この結果、酸素吸収量の増加を図ることができるからである。
【0071】
他方、タブレットやフレーク等の成形体の場合には、添加元素を添加した酸化セリウムとの複合酸化物の粉体を、所定圧力(例えば0.5t/cm2以上)で加圧して成形体を製造し、これを1000℃以上の温度で焼結した後に、例えば水素等の還元性ガス気流中で500℃1時間還元焼成し、その後前述したのと同様にして二酸化炭素(CO2)処理を施し、酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体により一時的に閉塞してハンドリング時間を向上した加圧成形体とすることができる。
【0072】
このように製造された脱酸素剤は、酸素を必要十分に透過させ得る公知の多孔性フィルム等の脱酸素用包装体でラミネート等の処理により封入されることにより、利用される。
【0073】
このような本実施の形態に係る脱酸素剤においては、前記化学式(2)に示したように雰囲気中の酸素と反応することにより、雰囲気中から酸素を大幅に吸収・除去することができる。
【0074】
このため、本実施の形態に係る酸化セリウムを主体とした複合酸化物からなる脱酸素剤では、(1)水分を全く必要とすることなく、酸素と反応することができるので、例えば乾燥食品、電子部品、半田粉等のような水分を嫌うものの場合の保存に利用することができる。また、(2)酸化セリウムは非金属であるので、金属探知機には検知されることがなく、金属探知機を用いて食品中の異物を発見することができる。また、(3)耐マイクロ波の特性も優れているので、酸化セリウムからなる脱酸素剤はマイクロ波調理における加熱を防ぐことができる。さらに、(4)酸化セリウムに添加物を添加することにより、酸素吸収量が増大するので、酸化セリウム単独の場合に較べて単位重量当りの酸素吸収量の大幅な増大を図ることができる。
【0075】
よって、本実施の形態によれば、無機酸化物である酸化セリウム単独の場合に較べて酸素吸収量が増大する脱酸素剤を提供することができる。
【0076】
このように、本実施の形態によれば、無機酸化物である酸化セリウムを用いて脱酸素機能を発揮する脱酸素剤及び密封雰囲気中の脱酸素方法を提供することができる。
よって、例えば医薬品やサプリメント、化学薬品(例えば色素、香料、脂質、酵素、ビタミン、脂肪酸)又は酸化され易い食品素材並びに食品、精密機械及びその部品、半導体基板等を安定保存できるようにすることが可能となる。
【0077】
また、図19に示すように、脱酸素機能フィルム20Aとしてもよい。この脱酸素機能フィルム20Aは、図19に示すように、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞した脱酸素剤からなる脱酸素層21と、該脱酸素層21の一面側に設けられ、酸素ガスバリア性を有するガスバリア層22と、前記脱酸素層21の他面側に設けられ、酸素ガス易透過性を有してなるガス易透過層23とから構成されており、脱酸素機能フィルムを提供するようにしてもよい。ここで、図19中、符号25は酸素を図示する。この脱酸素機能フィルム20Aは、ガス易透過層23の側(図19中、内側)が、脱酸素したい雰囲気に向くように用いられる。
なお、図19においては、前記ガスバリア層22の外側に外層24を設け、前記ガスバリア層22を保護するようにしている。
【0078】
ここで、前記脱酸素層21としては、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞した脱酸素剤を含有する樹脂、例えば不織布、ポリエチレン(超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、低密度直鎖ポリエチレン、中密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン―プロピレン共重合体、エチレン―プロピレンランダム重合体、エチレン―αオレフィン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレンプロピレンゴム、エチレン―アクリル酸エチル共重合体等の単層又は多層からなるものを例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
ここで、前記ガスバリア層22としては、アルミ箔等の金属箔や、各種樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、テレフタル酸―トリメチルヘキサメチレンジアミン縮重合体、2,2―ビス(p―アミノシクロヘキシル)プロパン―アジピン酸共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、ナイロンMXD(商品名)、ナイロン6(商品名)、ナイロン6,6(商品名)、アクリル樹脂等の単層又は多層からなるものを例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
また、前記ガス易透過層23としては、各種樹脂、例えば、ポリエチレン(超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、低密度直鎖ポリエチレン、中密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン―プロピレン共重合体、エチレン―プロピレンランダム重合体、エチレン―αオレフィン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレンプロピレンゴム、エチレン―アクリル酸エチル共重合体等の単層又は多層からなるものを例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば紙、不織布等の繊維類からなる層も用いることもできる。
また、前記ガス易透過層23はシーラント層(例えばPP又はPE等のポリオレフィン)の機能を併用するようにしてもよい。
【0081】
また前記外層24としては、例えばポリエチレン・ポリプロピレン・ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(商品名)等を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
また、図20の脱酸素機能フィルム20Bに示すように、前記脱酸素層21とガスバリア層22との間に、緩衝層27を設け、接着性及び緩衝性をフィルムに付与するようにしてもよい。
また、ガスバリア層22と外層24との間に酸素ガスに対する高度ガスバリア層28を設け、外部からの酸素ガスの侵入を防止の確実性を向上させるようにしてもよい。
【0083】
ここで、緩衝層27としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の緩衝作用及び接着作用を備えた樹脂を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
また、高度ガスバリア層28としては、例えばアルミ箔をはじめとする各種金属箔、アルミ蒸着フィルム、各種酸化物(シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ)蒸着フィルム等を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
この図20に示すような6層構造の脱酸素機能フィルム20Bとすることで、緩衝作用が向上すると共に外部からの酸素ガスの侵入が困難になり、より付加価値の高いフィルムを提供することができる。
【0086】
また、図21−1に示すように、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞した脱酸素剤30と、該脱酸素剤30を包装すると共に、透気抵抗度を有してなる包装体31とから脱酸素包装体32Aを構成するようにしてもよい。
【0087】
また、図21−2に示すように、包装体31の一部又は全部を透明な窓32として内部を視認するようにすることにより、脱酸素剤の状態を確認するようにした脱酸素包装体32Bとしてもよい。
これは、脱酸素剤が酸素を吸収する前の酸素欠損を有する場合には、黒色であるが、酸素を吸収すると黄白色に変色することとなるからである。よって、黄白色となっているものはもはや脱酸素剤として機能することができないので、健全性を一目で確認することができる。
【0088】
また、図22に示すように、前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により一時的に閉塞した脱酸素剤40を樹脂層41内に分散又は練り込んで脱酸素樹脂組成物42を構成するようにしてもよい。
【0089】
前記樹脂層41を構成する材料としては、酸素を透過することができる素材であればよく、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、これらのブレンド物などのオレフィン系樹脂、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体などのスチレン系樹脂などを例示することができる。また、これらの樹脂は単独でもまたはブレンド物としても使用することができる。
このような脱酸素樹脂組成物42を用いて、例えば樹脂トレーを成形して、例えば電子部品の搬送用トレーを構成するようにしてもよい。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の効果を確認するための一実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0091】
<原料の調整>
炭酸水素アンモニウムとアンモニアと炭酸アンモニウムとシュウ酸とを水に溶解した水溶液を攪拌しながら、硝酸セリウム水溶液を滴下し逆中和し、生成した沈殿物をイオン交換水で洗浄(本実施例では2回)してろ過した。その後、ろ過物を乾燥(300℃で2時間)することにより、酸化セリウム(CeO2)の粉末(平均粒径:約0.5μm)を得た。
【0092】
本実施例では、前記粉末(30g)の焼成条件は1100℃で1時間とした。さらに、還元条件は1000℃で1時間、水素100%ガスで400SCCMフローとした。圧力は常圧とした。
【0093】
その後、図16−1に示す二酸化炭素(CO2)処理装置203内に、前記還元処理した酸化セリウムを静置し、該処理装置203内に100%CO2ガスを導入し、酸化セリウムにCO2の処理をした。CO2ガスの流通量は800SCCMとした。圧力は常圧とした。
温度プログラムは、室温から昇温を開始し(10℃/分昇温)、その後処理温度(300℃)に達したのち、300℃で2時間処理し、その後自然放冷した。こうして酸素吸収サイトの一部を酸素吸収因子体(ここではCO2)により一時的に閉塞した試料を、透気抵抗度(7500秒)を有する包装体に内包した後にフィルムパック処理装置204でフィルムパックを施し、本実施例に係る脱酸素包装体を得た。
比較例としては、二酸化炭素(CO2)処理を施さなかった。
【0094】
本実施例と比較例の脱酸素剤包装体を空気中で開封してハンドリング時間を測定した。
この結果、本実施例の二酸化炭素(CO2)処理したものは、発火せず、しかも1.5時間のハンドリング時間であったが、処理しない比較例のものは、ハンドリングタイムが20分にも満たず、また発火した。
よって、二酸化炭素(CO2)処理した脱酸素包装体がハンドリング時間0.5時間以上であると共に、発火することがないので例えば医薬品やお菓子等の脱酸素剤として有効であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明に係る脱酸素剤は、ハンドリング時間を長くすることができるので、例えば食品の包装体の酸素の除去に用いて適している。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】酸化セリウムの結晶構造模式図である。
【図2】酸化セリウムの周囲を二酸化炭素(CO2)処理する模式図である。
【図3】酸化セリウムのハンドリング時間(酸素吸収経過時間)と酸素吸収量との関係図である。
【図4】ハンドリング時間の定義を示す経過時間と酸素吸収量との関係図である。
【図5】二酸化炭素(CO2)処理温度と二酸化炭素(CO2)被覆時間との関係図である。
【図6】二酸化炭素(CO2)処理時間とハンドリング時間との関係図である。
【図7】二酸化炭素(CO2)処理温度(300℃)を一定とした処理時間における酸素吸収経過時間と酸素吸収量との関係図である。
【図8】二酸化炭素で酸素吸収サイトを閉塞した酸化セリウムの、FT−IRを用いた赤外線吸収スペクトルのチャート図である。
【図9】二酸化炭素で酸素吸収サイトを閉塞した酸化セリウムが酸素を吸収する過程での、FT−IRを用いた赤外線吸収スペクトルのチャート図である。
【図10】真空処理条件とTPD測定時の脱離水素量との関係図である。
【図11】水素脱離量とハンドリング時間との関係図である。
【図12−1】還元前の酸化セリウム(CeO2)の状態から、水素還元処理した後の工程模式図である。
【図12−2】水素除去と二酸化炭素(CO2)被覆処理の工程模式図である。
【図12−3】酸素吸収開始から酸素吸収状態の工程模式図である。
【図13】還元直後の酸化セリウムにおける水素の昇温脱離挙動の図である。
【図14】酸化セリウム(CeO2)バルク内にターミネーションしている水素の模式図である。
【図15】酸化セリウム粉末から還元処理した後に、二酸化炭素(CO2)処理して脱酸素包装体を得るまでの製造工程の概略図である。
【図16−1】直接二酸化炭素(CO2)処理を行なう工程模式図である。
【図16−2】二酸化炭素(CO2)処理の昇温時間と処理時間との工程図である。
【図17−1】加熱真空処理して水素除去後に、直接二酸化炭素(CO2)処理を行なう工程模式図である。
【図17−2】加熱真空処理と二酸化炭素(CO2)処理の昇温時間と処理時間との工程図である。
【図18−1】不活性ガス加熱処理して水素除去後に、直接二酸化炭素(CO2)処理を行なう工程模式図である。
【図18−2】不活性ガス加熱処理と二酸化炭素(CO2)処理の昇温時間と処理時間との工程図である。
【図19】脱酸素機能フィルムの模式図である。
【図20】他の脱酸素機能フィルムの模式図である。
【図21−1】脱酸素包装体の模式図である。
【図21−2】他の脱酸素包装体の模式図である。
【図22】脱酸素樹脂組成物の模式図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生活環境雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、
前記脱酸素剤が、酸素の強制的な引き抜きによって生じた可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを有する無機酸化物であると共に、
前記酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞してなることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項2】
請求項1において、
前記サイト閉塞因子体が、カルボニル基を有してなる材料であることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項3】
請求項2において、
FT−IRを用いた赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収ピークを約2180〜2100cm-1の範囲に有する脱酸素剤。
【請求項4】
請求項2において、
カルボニル基を有してなる材料が二酸化炭素(CO2)であることを特徴とする脱酸素
剤。
【請求項5】
請求項2において、
カルボニル基を有してなる材料がアルデヒド類、ケトン類、エステル類、カルボン酸類又はアミド類であることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一つにおいて、
前記無機酸化物が、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛のいずれか一種又はこれらの混合物であることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一つにおいて、
マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、ニオブ(Nb)、プラセオジム(Pr)又はイットリウム(Y)のいずれか一種又はこれらの混合物を、前記無機酸化物に固溶させてなることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項8】
請求項7において、
前記固溶元素の総添加量が1〜20mol%であることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項9】
生活環境雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、
前記脱酸素剤が、酸素の強制的な引き抜きによって生じた可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを有する無機酸化物であると共に、
不活性雰囲気状態から常温・常圧の大気中に開放した時点を開始点とし、該開始点からの経過時間と酸素吸収量(mL/g)との関係において、酸素吸収が緩やかな初期状態の酸素吸収ラインL1と、それに引き続き、かつラインL1よりも傾きの大きな酸素吸収ラインL2との交点Xでの時間をhとしたとき、前記脱酸素剤が、開始点から時間hまでの時間で定義されるハンドリング時間を有することを特徴とする脱酸素剤。
【請求項10】
請求項9において、
前記ハンドリング時間が0.5時間以上7時間未満である脱酸素剤。
【請求項11】
請求項1に記載の脱酸素剤の製造方法であって、
前記無機酸化物粉末を500℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の脱酸素剤の製造方法であって、
前記無機酸化物粉末を500℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後加熱真空処理して水素を除去し、次いで前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の脱酸素剤の製造方法であって、
前記無機酸化物粉末を500℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後不活性ガス中で加熱処理して水素を除去し、次いで前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項14】
請求項11ないし13のいずれか一つにおいて、
前記サイト閉塞因子が、カルボニル基を有してなる材料であることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項15】
請求項14において、
カルボニル基を有してなる材料が二酸化炭素(CO2)であることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項16】
請求項11ないし15のいずれか一つにおいて、
前記無機酸化物が、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛のいずれか一種又はこれらの混合物であることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項17】
請求項11ないし16のいずれか一つにおいて、
マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、ニオブ(Nb)、プラセオジム(Pr)又はイットリウム(Y)のいずれか一種又はこれらの混合物を、前記酸化セリウムに固溶させてなることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項18】
請求項17において、
前記固溶元素の総添加量が1〜20mol%であることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項19】
請求項11ないし13のいずれか一つにおいて、
前記無機酸化物粉末を500℃以上で還元焼成する前に、加圧成形して1000℃以上で焼結し、成形体とすることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項20】
請求項1ないし10のいずれか一つの脱酸素剤が透気抵抗度を有する包装体に内包されてなることを特徴とする脱酸素包装体。
【請求項21】
請求項20において、
前記透気抵抗度を有する包装体の少なくとも一部が透明であることを特徴とする脱酸素包装体。
【請求項22】
請求項1ないし請求項10のいずれか一つの脱酸素剤からなる脱酸素層を有することを特徴とする脱酸素機能フィルム。
【請求項23】
請求項22において、
前記脱酸素層の一面側に設けられた、酸素ガスバリア性を有するガスバリア層、および更にその外側の該酸素ガスバリア層保護のための外層と、
前記脱酸素層の他面側に設けられた、酸素ガス易透過性を有するガス易透過層とを有することを特徴とする脱酸素機能フィルム。
【請求項24】
請求項23において、
前記ガスバリア層と前記外層との間に酸素ガスに対する高度ガスバリア層を設けてなることを特徴とする脱酸素機能フィルム。
【請求項25】
請求項23又は24において、
前記脱酸素層と前記酸素ガスバリア層との間に、緩衝層を設けてなることを特徴とする脱酸素機能フィルム。
【請求項26】
請求項1ないし10のいずれか一つの脱酸素剤を、酸素易透過性を有してなる樹脂に分散又は練り込んでなることを特徴とする脱酸素樹脂組成物。
【請求項1】
生活環境雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、
前記脱酸素剤が、酸素の強制的な引き抜きによって生じた可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを有する無機酸化物であると共に、
前記酸素吸収サイトの少なくとも一部を、サイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞してなることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項2】
請求項1において、
前記サイト閉塞因子体が、カルボニル基を有してなる材料であることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項3】
請求項2において、
FT−IRを用いた赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収ピークを約2180〜2100cm-1の範囲に有する脱酸素剤。
【請求項4】
請求項2において、
カルボニル基を有してなる材料が二酸化炭素(CO2)であることを特徴とする脱酸素
剤。
【請求項5】
請求項2において、
カルボニル基を有してなる材料がアルデヒド類、ケトン類、エステル類、カルボン酸類又はアミド類であることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一つにおいて、
前記無機酸化物が、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛のいずれか一種又はこれらの混合物であることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一つにおいて、
マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、ニオブ(Nb)、プラセオジム(Pr)又はイットリウム(Y)のいずれか一種又はこれらの混合物を、前記無機酸化物に固溶させてなることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項8】
請求項7において、
前記固溶元素の総添加量が1〜20mol%であることを特徴とする脱酸素剤。
【請求項9】
生活環境雰囲気中の酸素を吸収除去する脱酸素剤であって、
前記脱酸素剤が、酸素の強制的な引き抜きによって生じた可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを有する無機酸化物であると共に、
不活性雰囲気状態から常温・常圧の大気中に開放した時点を開始点とし、該開始点からの経過時間と酸素吸収量(mL/g)との関係において、酸素吸収が緩やかな初期状態の酸素吸収ラインL1と、それに引き続き、かつラインL1よりも傾きの大きな酸素吸収ラインL2との交点Xでの時間をhとしたとき、前記脱酸素剤が、開始点から時間hまでの時間で定義されるハンドリング時間を有することを特徴とする脱酸素剤。
【請求項10】
請求項9において、
前記ハンドリング時間が0.5時間以上7時間未満である脱酸素剤。
【請求項11】
請求項1に記載の脱酸素剤の製造方法であって、
前記無機酸化物粉末を500℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の脱酸素剤の製造方法であって、
前記無機酸化物粉末を500℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後加熱真空処理して水素を除去し、次いで前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の脱酸素剤の製造方法であって、
前記無機酸化物粉末を500℃以上で還元焼成して酸素を強制的に引き抜き、可逆的な酸素欠損による酸素吸収サイトを形成し、その後不活性ガス中で加熱処理して水素を除去し、次いで前記酸素吸収サイトの少なくとも一部をサイト閉塞因子体により脱離可能に閉塞することを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項14】
請求項11ないし13のいずれか一つにおいて、
前記サイト閉塞因子が、カルボニル基を有してなる材料であることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項15】
請求項14において、
カルボニル基を有してなる材料が二酸化炭素(CO2)であることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項16】
請求項11ないし15のいずれか一つにおいて、
前記無機酸化物が、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛のいずれか一種又はこれらの混合物であることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項17】
請求項11ないし16のいずれか一つにおいて、
マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、ニオブ(Nb)、プラセオジム(Pr)又はイットリウム(Y)のいずれか一種又はこれらの混合物を、前記酸化セリウムに固溶させてなることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項18】
請求項17において、
前記固溶元素の総添加量が1〜20mol%であることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項19】
請求項11ないし13のいずれか一つにおいて、
前記無機酸化物粉末を500℃以上で還元焼成する前に、加圧成形して1000℃以上で焼結し、成形体とすることを特徴とする脱酸素剤の製造方法。
【請求項20】
請求項1ないし10のいずれか一つの脱酸素剤が透気抵抗度を有する包装体に内包されてなることを特徴とする脱酸素包装体。
【請求項21】
請求項20において、
前記透気抵抗度を有する包装体の少なくとも一部が透明であることを特徴とする脱酸素包装体。
【請求項22】
請求項1ないし請求項10のいずれか一つの脱酸素剤からなる脱酸素層を有することを特徴とする脱酸素機能フィルム。
【請求項23】
請求項22において、
前記脱酸素層の一面側に設けられた、酸素ガスバリア性を有するガスバリア層、および更にその外側の該酸素ガスバリア層保護のための外層と、
前記脱酸素層の他面側に設けられた、酸素ガス易透過性を有するガス易透過層とを有することを特徴とする脱酸素機能フィルム。
【請求項24】
請求項23において、
前記ガスバリア層と前記外層との間に酸素ガスに対する高度ガスバリア層を設けてなることを特徴とする脱酸素機能フィルム。
【請求項25】
請求項23又は24において、
前記脱酸素層と前記酸素ガスバリア層との間に、緩衝層を設けてなることを特徴とする脱酸素機能フィルム。
【請求項26】
請求項1ないし10のいずれか一つの脱酸素剤を、酸素易透過性を有してなる樹脂に分散又は練り込んでなることを特徴とする脱酸素樹脂組成物。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16−1】
【図16−2】
【図17−1】
【図17−2】
【図18−1】
【図18−2】
【図21−1】
【図21−2】
【図22】
【図1】
【図2】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図14】
【図19】
【図20】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16−1】
【図16−2】
【図17−1】
【図17−2】
【図18−1】
【図18−2】
【図21−1】
【図21−2】
【図22】
【図1】
【図2】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図14】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−78271(P2009−78271A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317412(P2008−317412)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【分割の表示】特願2008−509263(P2008−509263)の分割
【原出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【分割の表示】特願2008−509263(P2008−509263)の分割
【原出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
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