説明

脳循環機能異常検出装置

【課題】従来の脳循環機能異常検出装置としてMRI、PETという高価な機械を使わないと異常が検出できなかった。
【解決手段】鼓膜の振動を検出し、脳循環機能の異常を検出するための脳循環機能検出装置であって、耳栓本体ケースと、耳栓本体ケースの中に配置されたマイクロフォンのような鼓膜振動検出ユニットと、該検出ユニットにより検出した信号を判定する脳循環異常判定回路を設け、マイクロフォンの出力波形から脳循環機能の異常を検出することができ、また、左右の耳の脳循環機能を比較して脳循環異常判定を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳循環機能の異常を簡単に検出する脳循環機能異常検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳循環機能の測定は健康管理に極めて必要であり現在MRI、PETが一般に使用されている。また簡単な方法として臨床では頸動脈の超音波ドップラー血流計が利用されているが熟練が必要である。
【0003】
しかしながら、脳循環機能測定装置としてMRI、PETのような装置は高価であり、大掛かりで、検査に時間がかかり、何処でも簡単に受けられものではない。また、超音波ドップラー血流計は左右の脳循環を同時に測定する事は難しくその操作は熟練が必要である。また、上述の装置では脳循環機能を連続的に測定することができなかったので負荷による変化を観察する事が出来なかった。
【0004】
体内で発生する生体現象によって引き起こされる左右の外耳道や鼓膜の振動及び/又は動きを決定すべく、人間の耳内から生体音の情報を得るための装置と方法を提供する技術は特許文献1に開示されており、さらに得られた生体音により、心拍数、圧脈波伝播速度、血圧といった有用な生理学的なパラメータへと変換される技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特表2006−505300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、左右の一方の耳にイヤフォンを取り付けて左右の外耳道や鼓膜の振動及び動きから生体音を検出し、心拍数、圧脈波伝播速度、血圧のような生理学的パラメータに変換するものであり、本発明に示すように脳循環機能を測定する技術を示すものではない。ましてや脳循環機能の異常に対して何も示唆されていないし、左右の脳のどちらが異常であるかを示唆していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1は、鼓膜の振動を検出し、脳循環機能の異常を検出するための脳循環機能検出装置であって、耳栓本体ケースと、該耳栓本体ケースの中に配置された鼓膜振動検出ユニットと、該検出ユニットにより検出した信号波形から脳循環機能が異常か否かを判定する異常判定回路を設けた脳循環機能異常検出装置を提供することにある。
【0008】
請求項2は、左右の耳に装着して鼓膜の振動をそれぞれ検出し、左右のそれぞれの脳の循環機能の異常を検出するための脳循環機能検出装置であって、耳栓本体ケースと、該耳栓本体ケースの中に配置された鼓膜振動検出ユニットと、該検出ユニットにより検出した信号を脳循環機能が異常か否かを判定する異常判定回路をそれぞれ設けた脳循環機能異常検出装置を提供することにあり、左右の耳に装着して同時に左右の脳の循環機能が異常か否かを同時に検出することができる脳循環機能異常検出装置を提供することにある。
【0009】
請求項3は、前記検出ユニットは、0.1〜100Hzの範囲で所定以上のレベルを出力する特性を示すマイクロフォンであり、脳の異常レベルを検出するのに適したマイクロフォンである請求項1または2に記載の脳循環機能異常検出装置を提供するものである。
【0010】
請求項4は、前記検出ユニットは、前記鼓膜に向けて超音波信号を発する発振素子と、前記発振素子により発信され、鼓膜で反射された超音波信号を受信する受信素子とを備えた外部ノイズに強い検出ユニットである請求項1または2に記載の脳循環機能異常検出装置を提供することにある。
【0011】
請求項5は、前記異常判定回路は、検出される信号波形を所定のパターンと比較して行うパターン比較回路を備えた請求項1または2に記載の脳循環機能異常検出装置を提供することにある。
【0012】
請求項6は、前記所定のパターンは脈波に相当する波形である請求項5に記載の脳循環機能異常検出装置を提供することにある。
【0013】
請求項7は、前記異常判定回路は、左右の波形の違いを検出し更に前記波形は脈波に相当する波形のピークとピークの間に所定の周波数以上の高い周波数の波が所定より大きい振幅の波が所定数以上存在するか否かを判定する回路である請求項5または6に記載の脳循環異常検出装置を提供することにある。
【0014】
請求項8は、左右の耳に装着した前記検出ユニットにより検出した信号波形同士を比較する比較回路を備え、その信号を比較して左右の信号波形の左右差が所定以上あると、本来はほぼ同一であるべきところ、左右の信号波形の左右差が所定以上あると専門医の診断を要すると判定する請求項2または4に記載の脳循環異常検出装置を提供することにある。
【0015】
請求項9は、前記異常判定回路は左右の耳に装着した前記検出ユニットにより検出される波形を所定のパターン、たとえば脈波に相当する波形と比較しておこなうパターン比較回路と前記検出される左右の信号波形同士を比較する比較回路を備えた請求項2または4に記載の脳循環機能異常検出装置を提供することにある。左右の耳に装着した前記検出ユニットにより検出される波形と所定のパターンとを比較してそれぞれ許容差に入ったとしてもそれぞれの波形の差が所定以上あると異常であると判定する。
【発明の効果】
【0016】
上述したように本発明の脳循環機能異常検出装置はMRI、PETのような高価な機械を用いることもなく、また、頸動脈の超音波ドップラー血流計を用いることなく簡単に脳循環の異常を検出することができ、さらに左右の鼓膜を通して鼓膜を含めた左右の脳循環機能を連続的に測定し、左右の脳の脳循環機能異常を簡単に検出する事が出来て脳循環機能の異常の早期発見が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図11に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明の脳循環機能異常検出装置の第1の実施例を示すブロック図である。
左右のいずれかの鼓膜1からの振動を低周波特性のよいマイクロフォン2で受信し、その信号を増幅器3で増幅後、異常判定回路4に導き、脳循環機能の異常判定を行う。さらに記録装置5で不図示の記録紙に記録する。
【0019】
図2は本発明の第2の実施例を示すブロック図である。
左右の耳のそれぞれ左右の鼓膜1L、1Rからの振動を低周波特性の良いマイクロフォン2L、2Rで受信し、その信号を増幅器3L、3Rで増幅後、異常判定回路4に導き、脳循環機能の異常判定を行う。さらに記録装置5で不図示の記録紙に記録する。
【0020】
図3は、図1のブロック図の作動の流れを示すフローチャートを示す。
S1でまず被験者の腕の撓骨動脈脈波を測定する。S2でマイクロフォンで鼓膜の振動による信号を受信し、S3でそれぞれの信号波形を増幅し信号波形を所定のパターン、ここではS1で実測した脈波と比較する。S5で示すように脈波のピークとピークの間に所定のピーク値に対する所定の割合で設定した大きさの基準振幅値m0よりも大きい振幅値の波がn個以上存在するかどうかを検出し、存在しないとすればS6ように「異常なし」と判断する。もしn個以上あれば、S7に示すように専門医の診断を要する「要診断」と判断する。
【0021】
図4は無響室で左耳の鼓膜からの振動をマイクロフォン2Lで脳の動脈による脈波を検出した信号を鼓膜を介して記録装置5で記録した信号を示し、図5は右耳の鼓膜からの信号をマイクロフォン2Rで検出した信号を同じく記録装置5で記録した信号を示す。図4、5とも横軸25目盛が1秒に相当し、脈波に相当する箇所にピークを有し、そのピークとピークの間に脈波に相当するピークよりも細かいピークの波形が出力されている。
【0022】
図4と図5を比較すると本来ならば脈波に相当したところにピークを有するなだらかな波形が出力されるところ、図4に比べて図5では細かい周波数が記録されており、図4の方が耳鳴り乃至は脳循環機能の異常により周波数が細かく変化し、異常であることを示すものである。
【0023】
異常である可能性を判定する基準となる波形の「所定のパターン」とは、図6で示すように先に測定した「脈波」に相当する波形のパターンでそのピークとピークの間に所定の周波数以上高い周波数の波で、所定より高い振幅値の波が存在することで、例えば脈波に相当する波形のピークの間で5Hz以上の周波数で振幅値で脈波に相当するピーク値の30%以上の振幅がある波が所定数以上存在する状態を示し専門医に診断をしてもらうよう指示する。
【0024】
図7は本発明の脳循環機能異常検出装置の第3の実施例を示すブロック図である。
図1のブロック図では耳の鼓膜からの信号を検出する環境を無響室で行ったが図7は超音波を鼓膜に対して投射して測定したので外部の雑音を拾うことなく検出することができる。左耳および右耳の鼓膜に対してそれぞれ超音波発振器6を作動させて超音波を投射し、反射した超音波を超音波受信器7で受信し、受信した超音波は周波数変調されているのでFM復調器8で復調し、信号波形を記録装置5で記録し、復調された信号を異常検出回路4に導き、異常を検出する。
【0025】
図8は本発明の脳循環機能異常検出装置の第4の実施例を示すブロック図である。
図2のブロック図では耳の鼓膜からの信号を検出する環境を無響室で行ったが図7は超音波を鼓膜に対して投射して測定したので外部の雑音を拾うことなく検出することができる。左耳および右耳の鼓膜に対してそれぞれ超音波発振器6L、6Rを作動させて超音波を投射し、反射した超音波を超音波受信器7Lで受信し、受信した超音波は周波数変調されているのでFM復調器8L、8Rで復調し、信号波形を記録装置5で記録し、復調された信号を異常検出回路4に導き、異常を検出する。
【0026】
図9は左右の脳循環機能を比較するブロック図である。
左右の耳の鼓膜から得た信号をそれぞれ増幅器3L、3Rで増幅し、その増幅された信号を比較回路9に導いて左右の信号波形がどの程度一致するかに応じて異常判定回路で異常判定を行なう。
【0027】
図10は左右の耳の鼓膜からの信号を取得することにより左右の脳循環機能を比較するフローチャートを示す。
【0028】
まずS21で示すように左右の信号波形を同時にそれぞれ出力し、S22で示すようにそれぞれの信号出力を増幅する。次にS23で示すように左右の信号波形を比較し、S24で左右の信号波形の差が所定以上かどうかを判定し、所定以上の差があればS25で示すように「要診断」を指示する。
【0029】
左右の信号波形を比較し、所定以上の差があるか否かの判断は、同時に出力される左右の信号波形の各時点の値を二乗して加算した総和の平方根の値が所定値以上の差があるかどうかで判断する。
【0030】
図11は左右の耳の鼓膜からの信号を取得し、まずそれぞれの信号について専門医の詳細な診断を要するか否かを判別し、もし詳細な診断を要しなければ、左右の耳の鼓膜からの信号を比較して所定以上の差があるか否かをみて正常か、または診断を要するか否かを判断するフローチャートを示す。
【0031】
まずS31で左右のイヤフォンで鼓膜からの信号波形を受信し、S32で増幅し、S33で増幅した信号を所定のパターン、ここでは脈波と比較する。S34で基準振幅値m0よりも大きな振幅値の波がピーク間内にn個以上あるか否かを検出し、ある場合はS35に示すように専門医の診察を要する「要診断」と判断する。もし振幅値m0よりも大きな振幅値の波が1脈波内にn個より少ない場合にはS36に示すように左右の鼓膜からの信号を比較し、S37に示すように所定以上の差があるかどうかを判定し、差があればS38に示すように専門医の診察を要する「要診断」と判断する。もしも所定以上の差がなければS39に示すように「異常なし」と判断する。
【0032】
各フローチャートで左右の鼓膜からの信号波形を「脈波」と比較しておこなったが、ここでは脈波そのものでなくても脈波に相当する信号波形でもよい。
【0033】
以上説明したように、左乃至は右の耳にそれぞれのマイクロフォンを装着し、左乃至は右のそれぞれのマイクロフォンから鼓膜の振動を検出して鼓膜を含む脳機能の異常を検出することができる。MRI、PETのような高価な機械で多額の費用をかけて当初から脳機能の異常を検出せずに、本発明の脳循環機能異常検出装置で異常が検出されてからMRI、PETのような機械で検査すればよいし、本発明による脳循環機能異常検出装置で脳循環機能が問題ないとわかれば、資金のない人にとって費用削減になる。従って本発明による脳循環機能異常検出装置は、MRI、PETのような高価な機械で診断を受けるか否かの一つのアドバイスになりうる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施例の作動を示すブロック図
【図2】本発明の第2の実施例の作動を示すブロック図
【図3】本発明の第1の実施例の作動内容を示すフローチャート
【図4】記録装置5に記録された左耳の鼓膜からの信号出力図
【図5】記録装置5に記録された右耳の鼓膜からの信号出力図
【図6】事前に測定した脈波の波形図
【図7】本発明の第3の実施例の作動を示すブロック図
【図8】本発明の第4の実施例の作動を示すブロック図
【図9】本発明の第5の実施例の作動を示すブロック図
【図10】左右の耳の鼓膜からの信号を比較するフローチャート
【図11】左右の耳の鼓膜からの信号のそれぞれについて診断を要するかどうかをみて後、左右のそれぞれの信号を比較するフローチャート
【符号の説明】
【0035】
1、1L、1R・・・・・鼓膜
2、2L、2R・・・・・マイクロフォン
3、3L、3R・・・・・増幅器
4・・・・・・・・・・・異常検出回路
5・・・・・・・・・・・記録装置
6、6L、6R・・・・・超音波発振器
7、7L、7R・・・・・超音波受信器
8、8L、8R・・・・・FM復調器
9・・・・・・・・・・・比較回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼓膜の振動を検出し、脳循環機能の異常を検出するための脳循環機能検出装置であって、耳栓本体ケースと、該耳栓本体ケースの中に配置された鼓膜振動検出ユニットと、該検出ユニットにより検出した信号波形を脳循環機能が異常か否かを判定する異常判定回路を設けた脳循環機能異常検出装置。
【請求項2】
左右の耳に装着して鼓膜の振動をそれぞれ検出し、左右のそれぞれの脳循環機能の異常を検出するための脳循環機能検出装置であって、耳栓本体ケースと、該耳栓本体ケースの中に配置された鼓膜振動検出ユニットと、該検出ユニットにより検出した信号波形を脳循環機能が異常か否かを判定する異常判定回路をそれぞれ設けた脳循環機能異常検出装置。
【請求項3】
前記検出ユニットは、0.1〜100Hzの範囲で所定以上のレベルを出力する特性を示すマイクロフォンである請求項1または2に記載の脳循環機能異常検出装置。
【請求項4】
前記検出ユニットは、前記鼓膜に向けて超音波信号を発する発振素子と、前記発振素子により発信され、鼓膜で反射された超音波信号を受信する受信素子とを備えた請求項1または2に記載の脳循環機能異常検出装置。
【請求項5】
前記異常判定回路は、検出される波形を所定のパターンと比較して行うパターン比較回路を備えた請求項1または2に記載の脳循環機能異常検出装置。
【請求項6】
前記所定のパターンは脈波波形である請求項5に記載の脳循環機能異常検出装置。
【請求項7】
前記異常判定回路は、前記波形が脈波に相当する波形のピークとピークの間に所定より大きい振幅の波が所定の数以上存在するか否かを判定する回路である請求項5または6に記載の脳循環異常検出装置。
【請求項8】
左右の耳に装着した前記検出ユニットにより検出した信号波形同士を比較する比較回路を備えた請求項2または4に記載の脳循環機能異常検出装置。
【請求項9】
前記異常判定回路は左右の耳に装着した前記検出ユニットにより検出される信号波形を所定のパターンと比較するパターン比較回路と前記検出される信号波形同士を比較する比較回路を備えた請求項2または4に記載の脳循環機能異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−17317(P2010−17317A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179613(P2008−179613)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(592144939)株式会社パラマ・テック (26)
【Fターム(参考)】