説明

腎毒性を低めるために有用な組成物及びその使用方法

本発明は、腎毒性薬物により引起される腎損傷を低めるための組成物及び方法を提供する。本発明は、アニオン的に置換されたオリゴ糖、腎毒性薬物及び医薬的に許容できるキャリヤーを含んで成る組成物を提供し、ここで前記オリゴ糖は前記薬物の腎毒性効果を実質的に阻害するために効果的な量で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腎毒性を低めるために有用な組成物及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの薬物及び他の物質は、腎毒性であることが知られており、そして多くの種類の機構、例えば腎尿細管、アレルギー性間質性腎炎、及び急性乏尿性腎不全を導くことができる、腎尿細管内での薬物の結晶化を通して腎不全を引起すことができる。腎毒性薬物は、抗癌剤、例えばシスプラチン、メトトレキセート、及びドキソルビシン、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDS)、例えばCOX-2インヒビター、抗生物質(例えば、アミノグリコシド、アンホテリシン)、抗ウィルス剤(例えば、アシクロビア、インジエビア)、アセチルコリンエステラーゼインヒビター、アンギオテンシンII受容体ブロッカー(ARB)、リチウム及びRT造影剤を包含する。
腎毒性薬物により引起される腎損傷を低める必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、腎毒性薬物により引起される腎損傷を低めるための組成物及び方法を提供する。本発明は、アニオン的に置換されたオリゴ糖、腎毒性薬物及び医薬的に許容できるキャリヤーを含んで成る組成物を提供し、ここで前記オリゴ糖は前記薬物の腎毒性効果を実質的に阻害するために効果的な量で存在する。
【0004】
腎毒性効果を有する医薬活性化合物、及び前記医薬活性化合物の腎毒性効果を実質的に低めるのに効果的な量で存在するポリアニオン性オリゴ糖を含んで成る、低められた腎毒性効果を有する組成物がまた供給される。
【0005】
医薬的活性化合物とポリアニオン性オリゴ糖とを接触することを含んで成る、前記医薬的活性化合物の腎毒性効果を低めるための方法がまた、本明細書において開示される。さらに、環状多糖スルフェート、腎毒性誘発薬物及び任意には、医薬的に許容できるキャリヤーを含んで成る医薬組成物を投与することを含んで成る、腎毒性薬物に関連する腎毒性を阻害するための方法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、酸性水溶液中、メトトレキセート(MTX)及びカプチソールに関する溶解性研究結果を示す。
【図2】図2は、MTX及びMTX+カプチソールによる処理に続く、ミエリン−希突起膠細胞−糖タンパク質(MOG)により誘発された実験自己免疫脳脊髄炎(EAE)マウスモデルにおける全体の腎損傷を示す腎病理学的評点を示す。
【図3】図3は、EAEマウスにおけるMTX又はMTX+カプチソールによる処理後の臨床学的評点を示す。
【0007】
【図4】図4は、正常なマウスにおける異なったモル比率での同時カプチソールを伴って又は伴わないでの単一ボーラス静脈内MTX後の腎切片における腎病理学的評点を示す。
【図5】図5は、異なったモル比率での同時カプチソールを伴って又は伴わないでのMTXによる処理の24及び48時間後のマウスの腎組織における腎病理学的評点を示す。
【図6】図6は、表面腎皮質のレベルでの個々の処理グループについてのドキソルビシン誘発された腎毒性モデルにおける平均病理学的評点を示す。
【図7】図7は、表面腎皮質のレベルでのドキソルビシン又はドキソルビシン+カプチソールにより処理された個々のマウスについての腎病理学的評点を示す。
【0008】
【図8】図8は、深部腎皮質+外部髄質のレベルでの個々の処理グループについてのドキソルビシン誘発された腎毒性モデルにおける平均病理学的評点を示す。
【図9】図9は、深部腎皮質+外部髄質のレベルでのドキソルビシン又はドキソルビシン+カプチソールにより処理された個々のマウスについての腎病理学的評点を示す。
【図10】図10は、シスプラチン及びシスプラチン+カプチソール処理されたグループにおける表面皮質のレベルでの平均評点を示す。
【図11】図11は、表面腎皮質のレベルでの個々の処理グループにおける個々のマウスのシスプラチン誘発された腎毒性モデルにおける病理学的評点を示す。
【0009】
【図12】図12は、シスプラチン及びシスプラチン+カプチソール処理されたグループにおける深部腎皮質+外部髄質のレベルでの平均評点を示す。
【図13】図13は、深部腎皮質及び外部髄質のレベルでの個々の処理グループにおける個々のマウスのシスプラチン誘発された腎毒性モデルにおける病理学的評点を示す。
【図14】図14は、白血病細胞の増殖に対するシスプラチン/HPβCD及びシスプラチンのみの効果の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の組成物は典型的には、アニオン的に置換されたオリゴ糖、腎毒性薬物、及び典型的には、当業界において、通常使用される医薬的に許容できるキャリヤー又は他の賦形剤を含んで成る。オリゴ糖は、薬物の腎毒性効果を実質的に阻害するのに効果的な量で存在する。1つの態様においては、オリゴ糖は、極性又は荷電された成分、例えばカチオン性又はアニオン性置換基により置換される。1つの例においては、アニオン的に置換されたオリゴ糖は、スルホネート、スルフェート、カルボキシレート、ホスホネート及びホスフェートから成る群から選択された1又は複数のアニオン性置換基を有するシクロデキストリンを含んで成るポリアニオン性オリゴ糖である。もう1つの態様においては、オリゴ糖は、環状多糖スルフェート、好ましくはα、β又はγ−シクロデキストリンスルフェートである。
【0011】
本発明はまた、腎毒性誘発効果を有する医薬的活性化合物及びポリアニオン性オリゴ糖を含んで成る、低められた腎毒性効果を有する組成物をまた提供する。本明細書において使用されるような腎毒性とは、腎臓又はその成分のいずれかに対して毒性であるか又は破壊的であることを意味する。
【0012】
置換されたオリゴ糖
置換されたオリゴ糖とは一般的に、分子当たり少なくとも1つの置換基、好ましくは荷電された又は極性置換基を有するオリゴ糖を言及する。オリゴ糖は好ましくは、約5〜約10の糖単位の糖であり、そして置換されていない場合、約650〜約1300の分子量を有する。オリゴ糖がアニオン的に置換される場合、置換基は、スルホネート、スルフェート、カルボキシレート、ホスホネート及びホスフェート基、及びそれらの組合せから成る群から選択されることが一般的に好ましい。置換基は好ましくは、糖単位当たり約0.5〜約3個の置換基の程度まで分子に存在する。特に好ましい組成物は、糖単位当たり約1個のスルホネート置換基を有するオリゴ糖に基づくそれらである。他の好ましい組成物は、糖単位当たり約2〜約3個の置換基を有するオリゴ糖に基づかれ、ここで置換基はスルフェート、スルホネート及び/又はホスフェート置換基を含んで成る。
【0013】
オリゴ糖は、グルコシド酸素原子を通して結合される、いくつかの糖単位、例えばグルコース単位の鎖である。本明細書において使用される場合、接頭語“オリゴ”とは、スクロースにおけるように1又は多くとも2個の単糖単位、及び20又はそれ以上の糖単位及び高分子を有する多糖に比較して、中間数の糖又はサッカリド単位を示す。すべてのそのようなオリゴ糖は本発明の範囲内で操作できると思われるが、そのオリゴ糖は好ましくは、分子当たり約5〜約10のサッカリド単位を有する。この範囲は、約650〜約1300の範囲の分子量を有する置換されていないサッカリドに対応する。分子当たり約5〜約10のサッカリド単位を有するオリゴ糖は時々、“単純”又は“低分子量”オリゴ糖として本明細書において言及される。オリゴ糖は通常、広範囲のサイズのオリゴ糖フラグメントをもたらす澱粉又はセルロースの分解方法により得られる。
【0014】
いくつかの関連するファミリーの材料は、グルコサミノグリカンである。それらは、窒素、硫黄及び酸素原子を含む種々の置換基により変性される多糖骨格、及び種々のセグメント、例えばグルコサミン、イズロネート、グルクロネート及び同様のものを含んで成る構造体である。それらの構造は、同じ名称グループ、例えばコンドロイタン、デルマダン、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸及びヘパリンの異なったサンプル間で変化する。個々のファミリーは、異種である、すなわち組成物の混合物であることが知られている。それらの分子量範囲は一般的に、10,000〜25,000である。
【0015】
置換されたオリゴ糖、及び特に極性又は荷電された置換基を有する低分子量オリゴ糖は、一定種類の薬物の腎毒性効果から腎臓を保護する能力を有する。アニオン的に置換されたシクロデキストリンは、相対的均一性、水溶液、例えば血流における改良された溶解性、低められた毒性、身体からの改良されたクリアランス及びそのような化合物の生成の容易性のために、少なくとも一部、好ましく、但し、他の極性置換基、例えばOHが使用され得る。
【0016】
アニオン置換基は、例に拠れば、アメリカ特許第3,426,011号に記載されるそれらを包含する。オリゴ糖は、下記一般式:
オリゴ糖−[(O-R-Y)-(Me)+]n
[式中、Rは直鎖又は枝分れ鎖のC1-10アルキル、アルケニル又はアルキニル;C3-8シクロアルキル及びC3-8アリール(個々の環は任意には、S, N及びOから選択された1又は複数のヘテロ原子を含む)から成る群から選択され;そして前述の基の個々は任意には、ハロ(すなわち、F, Cl, Br, I)又はヒドロキシルにより置換され;
Yは酸基、例えばOH、COOH、SO3、SO4、PO3H 又はPO4、又はリン酸、亜ホスフィン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、チオホスホン酸、チオホスフィン酸又はスルホン酸であるか;又は不在であり;
【0017】
Meは、医薬的に許容できるアニオン又はカチオン、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム又はアルミニウム、有機第一、第二又は第三アミン、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N, N−ジメチルアニリン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N, N−ジベンジルフェネチルアミン、1−エフェナミン及びN, N’−ジベンジルエチルレンジアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン及び同様のものであり;そして
【0018】
nは、オリゴ糖当たりの置換基の数であり、それらの個々は独立して選択され、すなわち個々の置換基は同じであっても又は異なっていても良い]のものであり得る。“n”は、1以上の整数であり、その上限は特定のオリゴ糖に依存する。オリゴ糖集団においては、nは分子当たりの置換基の平均数を表すことが理解されるであろう。
【0019】
1つの態様によれば、Rは、C1-10アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル及びブチルから選択されたC1-4アルキルであり、個々は任意には、ハロ又はヒドロキシルにより置換される。1又は複数の基において、YがSO3であるオリゴ糖が特に好ましい。得られる好ましい、ポリアニオン的に置換されたオリゴ糖は、約1600〜約4000の分子量を有する。
【0020】
シクロデキストリン
好ましい態様においては、オリゴ糖は、環状多糖類、好ましくはシクロデキストリン、及びより好ましくは、誘導体化されたシクロデキストリンである。
【0021】
シクロデキストリン(また、“CD”又は“CDs”として言及される)は、少なくとも6個のグルコピラノース単位から成る環状オリゴ糖である。12個までのグリコピラノース単位を有するCDは知られているが、最初の3個の相同体のみ、すなわちそれぞれ6,7及び8個のグルコピラノース単位を有するα、β及びγが集中的に研究されて来た。例えば、β−シクロデキストリン分子は、親水性外表面及び中心に親油性キャビティーを有する円錐形分子を形成する、7個までのα−1,4−結合されたグルコピラノース単位から製造される。シクロデキスオリンは、円錐の小端に位置する一次ヒドロキシル及び円錐の大開口部に位置する二次ヒドロキシルを有する円錐形状分子として存在すると思われる。
【0022】
【化1】

【0023】
地誌的に、CDは、一次−CH2OH基により並べられる上方リム、及びヒドロキシル基により並べられる下方リムから成る円環体として表され得る。それぞれ、α、β及びγ−CDについて約5,6又は7.5 A.U.直径のチャネル様キャビティーが、円環体と共軸整列される。それらのキャビティーは、適切な直径の疎水性ゲスト分子と共にシクロデキストリンの包接化合物の形成を可能にする。
【0024】
適度に多数のCD誘導体が調製され、そして文献に記載されて来た。一般的に、それらの化学的に修飾されたCDは、α(1→4)ヘミアセタール結合を妨げないで、炭素2,3又は6に結合される一次又は二次ヒドロキシ基の反応により形成される。そのような調製の再考は、引用により本明細書に組み込まれるCroft et al., (Tetrahedron (1983) 39(9): 1417-1474)に与えられる。グルコピラノース単位上のヒドロキシル基を通しての置換は、α−CDに関して、18;β−CDに関して、21;及びγ−CDに関して、24までを包含する。シクロデキストリンは、下記式;
【0025】
シクロデキストリン−[(O-R-Y)-(Me)+]n
[式中、R, Y, Me及びnは上記に記載される通りである]で表されるデキストリンから選択され得る。明らかなように、nは、α−CDに関して、1〜18;β−CDに関して、1〜21;及びγ−CDに関して、1〜24である。
【0026】
好ましくは、シクロデキストリンは、ヒドロキシル、スルホネート、スルフェート、カルボキシレート、ホスホネート及びホスフェートから成る群から選択される1又は複数の置換基を有するであろう。1つの態様によれば、Rは直鎖又は枝分れ鎖のC1-10アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル及びブチルから選択されたC1-4アルキルであり、個々は任意には、ハロ又はヒドロキシルにより置換される。1又は複数の基において、YがSO3であるオリゴ糖が特に好ましい。
【0027】
好ましいCDは、α、β及びγ−シクロデキストリンのスルフェート誘導体である。シクロアミローススルフェート及びスルホネート、及び修飾されたシクロデキストリンスルフェート及びスルホネートは、当業界において記載されている。例えば、引例により本明細書に組み込まれる、アメリカ特許第2,923,704号; 第4,020,160号; 第4,247,535号; 第4,258,180号; 第4,596,795号及び第4,727,064号を参照のこと。それらのシクロデキストリンスルフェート及びスルホネートは典型的には、生理学的に許容できるカチオンにより結合される。
【0028】
もう1つの態様によれば、ヒドロキシル基は、式- O - (C1-C8 アルキル)-SO3のアルキルエーテルスルホネートにより置換される。1つの例においては、シクロデキストリン分子当たり平均7個のスルホブチルエーテル基を有するβシクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体(すなわち、O-R-Yは-O-(CH2)4-SO3-Na+)である)(他方では、本明細書において、スルホブチルエチルβシクロデキストリン又はSBEβCDとして言及される)である市販のカプチソール(Cyclex)が使用され得る。カプチソールは、誘導体化されていないβ−シクロデキストリンに関連する腎毒性を示さない。
【0029】
追加のシクロデキストリン誘導体は、アメリカ特許第5,134,127号;第6,165,995号;第6,479,467号(例えば、ヒドロキシブテニル−シクロデキストリン);及び第6,060,597号及び特許公開第20060258537号(SAE-AE-CD)(それぞれは引用により本明細書に組み込まれる)に開示される。追加のCDは、例えば14(M14-b-CD)の平均MS、 及びグリコシル及びマルトシルCD含有モノ−(G1-b-CD)及びジサッカリド(G2-b-CD)置換基を有する、メチル化された誘導体を包含する。追加のシクロデキストリンは下記に示される(Mosher et al., Encyclopedia of Pharm. Tech. (2002) 531 -58から適合された)。
【0030】
【表1】

【0031】
もう1つの好ましい態様においては、シクロデキストリンは、下記式:
シクロデキスオリン−[(O-R)-(Me)+]n
[式中、Rは直鎖又は枝分れ鎖のC1-10アルキル、アルケニル又はアルキニルから成る群から選択され;1又は複数のヒドロキシルにより置換される]のものである。1つの態様においては、O-Rは、O-CH2CH(OH)CH3であり、すなわちシクロデキストリンは2−ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン(HPβCD)である。1つの態様においては、置換度は、下記例において使用されるように、4.7である。
【0032】
腎毒性薬物は、宿主への投与に基づいて腎損傷を引起す小分子及びペプチドを含むいずれかの医薬剤であり得る。そのような薬物は、例によれば、利尿剤、NSAID、ACEインヒビター、シクロスポリン、タクロリムス、放射線造影媒体、インターロイキン−2、血管拡張剤(ヒドララジン、カルシウム−チャネル遮断薬、ミノキシジル、ジアゾキシド)、マイトマイシンC、接合エストロゲン、キニーネ、5−フルオロウラシル、チクロピジン、クロピトグレル、インターフェロン、バラシクロビル、ゲムシタビン、ブレオマイシン、ヘパリン、ワルファリン、ストレプトキナーゼ、アミノグリコシド、シスプラチン、ネダプラチン、メトキシフルラン、テトラサイクリン、アンホテリシンB、セファロリジン、ストレプトゾシン、タクロリマス、カルパマゼピン、ミトラマイシン、キノロン、フォスカメト、ペンタミジン、静脈内ガンマグロブリン、フォスファミド、ゾレドロネート、シドフォビル、アデフォビル、テノフォビル、マンニトール、デキストラン、ヒドロキシエチル澱粉、ラバスタチン、ロバスタチン、エタノール、コデイン、バルビソラート、ジアゼパム、キニーネ、キニジン、スルホンアミド、ヒドララジン、トリアムテレム、ニトロフラントイシ、メフェニロイン、ペニシリン、メチシリンアンピシリン、リファンピン、スルホンアミド、サイアザイド、シメチジン、フェニロイン、アロプリノール、セファロスポリン、シトシンアラビノシッド、フロセミド、インターフェロン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、テリスロマイシン、ロフェコキシブ、パントプラゾール、オメプラゾール、アタザナビル、金、ペニシラミン、カプトプリル、リチウム、メフェナメート、フェノプロフェン、水銀、インターフェロン、パミドロネート、フェンクロフェナック、トルメチン、フォスカメット、アシクロビル、メトトレキセート、スルファニルアミド、トリアムテレン、インジナビル、フォスカメット、ガンシクロビル、メチセルギド、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、メチルドパ、ピンドロール、ヒドララジン、アテノロール、タキソール、腫瘍壊死因子、クロラムブシル、インターロイキン、ブレオマイシン、エトポシド、フルオロウラシル、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シスプラチン及び同様のものを包含する(一般的には、Devasmita et al., Nature Clinical Practice Nephrology (2006) 2, 80-91)を参照のこと)。
【0033】
メトトレキセート
1つの態様によれば、腎毒性薬物は、メトトレキセート、又はその誘導体又は医薬的に許容できる塩である。メトトレキセート(N-[4-[[(2,4-ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸)は、種々の腫瘍、特にCNSリンパ腫の処理のために使用されるS-期化学療法剤代謝拮抗剤である。MTXは、最も広く使用される抗癌剤であり、そして腫瘍性疾患、例えば妊娠性絨毛癌、骨肉腫、侵入胞状奇胎、胞状奇胎、急性リンパ性白血病、乳癌、頭頸部の類表皮癌、進行した菌状息肉症、肺癌、及び非ホジキンズリンパ腫の処理に使用される(Physicians Desk Reference (45th ed.), Medical Economical Co., Inc., 1185-89 (Des Moines, Iowa (1991)))。
【0034】
MTXはまた、組織移植に起因する移植片−対−宿主反応の予防、及び炎症性疾患の管理への使用を伴って、効果的な免疫抑制剤でもある。結果的に、MTXは、重度で且つ無力な乾癬及びリウマチ様関節炎の処理に使用され得る(Hoffmeister, The American Journal of Medicine (1983) 30:69-73; Jaffe, Arthritis and Rheumatism (1988) 31 : 299)。
【0035】
しかしながら、メトトレキセートは、典型的には、最大の効能を必要とされる“適用量レジメ”で適用される場合、腎及び肝毒性に関連している(Barak et al., J. American Coll. Nutr. (1984) 3 :93-96)。
【0036】
多くの特許がMTX及びMTX類似体を開示しており、それらのいずれかは本発明の実施に使用され得る。例えば、アメリカ特許第2,512,572号、第3,892,801号、第3,989,703号、第4,057,548号、第4,067,867号、第4,079,056号、第 4,080,325号、第 4,136,101号、第4,224,446号、第4,306,064号、第4,374,987号、第4,421,913号、第4,767,859号、第 3,981,983号、第 4,043,759号、第4,093,607号、第4,279,992号、第4,376,767号、第4,401,592号、第4,489,065号、第 4,622,218号、第 4,625,014号、第4,638,045号、第4,671,958号、第4,699,784号、第4,785,080号、第4,816,395号、第4,886,780号、第 4,918,165号、第 4,925,662号、第4,939,240号、第4,983,586号、第4,997,913号、第5,024,998号、第5,028,697号、第5,030,719号、第5,057,313号、第 5,059,413号、第5,082,928号、第5,106,950号、第5,108,987号、第4,106,488号、第4,558,690号、第4,662,359号、第 6,559,149号(それらは引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0037】
他のMTX類似体及び関連する抗葉酸化合物は、トリメトレキサート、エダトレキセート、AG331、ピリトレキセート、1843U89、LY231514、ZD9331、ラルトリトレキセート、ロメトレキソール、MTA及びAG337(Takimoto, Seminars in Oncology (1997) 24:S 18-40-51; Sorbello et al., Haematoligica (2001) 86:121-27);CB3717、LY309887(Calvert, Seminars in Oncology (1999) 26:S6, 3-10; Rosowsky, Progress in Med. Chem. (1989) 26:1- 237)を包含する。
【0038】
従って、本明細書に開示される組成物は、癌の処理又は癌の増殖の阻害、並びに多発生硬化症及びそれに関連する症状の処理のために使用され得る。組成物は、他の活性剤、例えばインターフェロンと共に又はそれと組合して使用され得る。さらに、組成物は、自己免疫障害、例えば狼蒼及びリウマチ様関節炎の処理のために使用され得る。
【0039】
抗生物質
アミノグリコシド抗生物質、例えばゲンタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン及びトブラマイシンは一般的に、例えばグラム陽性、グラム陰性及び抗酸性細菌に対して効果的な広範囲な抗微生物剤として使用される。しかしながら、アミノグルコシドはしばしば、所望しない副作用、例えば腎毒性及び聴覚毒性に関連している。本発明の実施において使用され得る、他の抗生物質は、アシロビル、バンコマイシン及びセファロスポリン、例えばRocephin(商標)及びKefzolを包含する。
【0040】
非ステロイド性抗−炎症薬物(NSAID)
NSAIDはすべて、腎毒性を表す。NSAIDは典型的には、痛みを低めるために使用され、同時に、オピエート誘導体の使用を回避する。2種の広く使用されるNSAIDは、Roche Pharmaceuticalsにより製造されるインドメタシン及びToradol(商標)である。
【0041】
抗菌剤
カスポフンギン及びアンホテリランBは両者とも腎毒性であることが知られており、そして開示される発明の実施に使用され得る。
【0042】
抗癌剤
多くの抗癌剤は、用量制限腎毒性を示し、そして本発明の実施に使用され得る。そのような剤は、例によれば、シスプラチン、ドキシルビシン、シクロホスファミド、ブタスルファン及び同様のものを包含する。
【0043】
造影剤
造影剤は、x線走査の前、患者に注入される。造影剤は高く濃縮された(50〜60%溶液)、ヨウ素化された化合物である。この高濃度の観点から、最少1:1の比及び約10まで:1又はそれ以上の比の造影剤:シクロデキストリンがたぶん必要である。造影剤による腎損傷に対して保護するためへのシクロデキストリンの可能性ある使用の例は、Iohoxyl及びIoversolを包含する。本発明の実施に使用され得る他の造影剤は、ジアトリゾアートメグルミン及びイオキサグラートを包含する。
【0044】
投与
オリゴ糖は、組成物の抗腎毒性保護効果のために必要であるとは思われないが、腎毒性薬物により複合体化され得る。薬物:オリゴ糖の比率は好ましくは、薬物が、腎臓を通して薬物の移動時間を考慮して、腎臓において典型的には見出されるpHで沈殿しないような範囲内である。多くの場合、インビボでのオリゴ糖の量を最少にすることが所望される。例に記載されるような単純なインビトロ溶解性実験が、腎損傷から効果的に保護するために必要とされるオリゴ糖の最少量を決定するために使用され得る。他方では、損傷から腎臓を効果的に保護するために必要とされるオリゴ糖の最少量は、薬物誘発された腎臓病理学に対するオリゴ糖の効果の動物研究において決定され得る。
【0045】
1つの態様においては、薬物:オリゴ糖のモル比は、1:1以上であり、そして約1.1:1〜約50:1、好ましくは約1.25:1〜約25:1、より好ましくは約1.75:1〜約2:1〜約10:1の範囲であり得る。メトトレキセートの場合、単なる例によれば、約2:1のモル比のメトトレキセート:カプチソールがインビトロで溶液にメトトレキセートを維持するのに十分に作動し、そして所望する腎毒性効果を提供することが見出された。低い量のオリゴ糖が所望される場合、追加の溶解剤が使用されるが、但し組成物におけるオリゴ糖の量は腎保護効果を提供するのに十分にとどまるべきであることが想定される。例によれば、造影剤イオヘキシルの場合、例に示されるように、約10:1のモル比のイオヘキシル:SBEbCDが、マウスにおけるイオヘキシル誘発性腎損傷における腎病理学を著しく低めるよう十分に作動した。
【0046】
例えば、薬物の結合定数が低い場合、1:1よりも低い薬物:オリゴ糖の比率を有することが、多くの場合、所望され、又は薬物が腎臓により、シクロデキストリンよりも遅い速度で処理される場合、モル過剰のオリゴ糖を有することが有益であり得る。これは、治療効果のために必要とされる薬物の用量が低い多くの種類の薬物のために真実であり、従って、オリゴ糖のモル比は高いが、インビボでの絶対量又は濃度は必ずしも高められる必要はない。従って、組成物は、約2〜約50;約2〜約20;又は約2〜約10倍のモル過剰のオリゴ糖、又は好ましくは、約1〜約5:1、及びより好ましくは約2〜5:1の範囲のオリゴ糖:薬物を含んで成ることができる。
【0047】
医薬的活性化合物とポリアニオン性オリゴ糖とを接触することを含んで成る、前記化合物の腎毒性効果を低めるための方法がさらに提供される。ポリアニオン性オリゴ糖、腎毒性薬物及び任意には、医薬的に許容できるキャリヤーを含んで成る医薬組成物を投与することを含んで成る、腎毒性薬物に関連する腎毒性を阻害するか又は低めるための方法が包含される。投与は単一用量として存在することが好ましいが、特にオリゴ糖が薬物の溶解を助ける場合、前記方法はまた、ポリアニオン性オリゴ糖を含んで成る医薬組成物、及び腎毒性誘発薬物を含んで成る医薬組成物を、別々の用量で同時に投与することによりもたらされ得る。薬物及びオリゴ糖が単一投与量単位中に組合わされる場合、それらは医薬的に許容できるキャリヤー、例えば医薬的に許容できる不活性溶媒又は分散剤中、補助溶液又は分散体、又は同様のものと組合わされ得る。
【0048】
他方では、オリゴ糖は、医薬的に許容できる材料と別々に配合され、そして薬物と同時に、又は薬物の投与の前又は後、1時間以内に、別々に投与され得る。同時にとは、別々の用量の投与が、オリゴ糖及び薬物の両者がインビボで存在するように実質的に同時に存在することを意味する。他方では、投与は連続的に存在し、但しオリゴ糖は、腎臓における薬物の濃度が、薬物の毒性効果が生じるレベルまで上昇するにつれて、腎環境内に存在すべきである。
【0049】
投与のモード、投与量及び投与の頻度は、医薬剤と共に従来使用される、投与のモード及び投与量の考慮により支配される。従って、例えば、本発明の種々の組合せが筋肉内又は静脈内投与され得るか、又は他方では、使用される特定の薬物又は剤の所望する使用に関連する医学的及び薬理学的実施により指図されるように、投与され得る。投与は経口又は非経口、中でも局部適用、静脈内、動脈内又は皮下注射、及び吸収、及び体腔又は体口中への注入及び導入により達成され得る。
【0050】
いずれか特定の患者についての特定用量レベルは、種々の要因、例えば使用される特定化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、食餌、投与の時点、投与路、排泄速度、薬物の組合せ、及び治療を受ける特定疾病の重症度に依存するであろう。
本発明の他の特徴は、典型的な態様の次の記載から明らかに成るであろうが、但しそれらは本発明を例示するものであり、制限するものではない。
【実施例】
【0051】
例1:MTXの溶解性に対するpHの効果
溶解性の研究を実施し、カプチソールが腎臓を通してMTXの移動時間以上の時間(すなわち、2分以下)にわたってMTXの沈殿を妨げるかどうかを決定した。溶液を表2〜表5に示されるようにして調製した。個々の溶液をHClにより酸性化し、遠心分離し、そして上清液のアリコートを時間の関数として除去し、そして溶液におけるMTXの濃度を分光光度的に測定した。
【0052】
図1に示されるように、カプチソールは、濃度依存性速度でMTXの沈殿を妨げた。1:1のモル比で、MTXは無期限に溶液のままである。それよりも低い割合で、沈殿は濃度依存性割合で生じる。0.50:1の比のカプチソール:MTXで、MTXは少なくとも15分間、溶液のままで存続し、そして0.25:1の比で、その多くは10分間、存続する。腎臓における濾過の急速な移動時間内の観点から、腎損傷を妨げるためにMTX:カプチソールの最適比率を決定するためのインビボ実験が実施され得る。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
例2:カプチソール−MTXの保護効果
C57BL6マウスにおけるミエリン−希突起膠細胞−糖タンパク質(MOG)誘発された実験の自己免疫脳脊髄炎(EAE)におけるCaptisol(商標)(1:1のモル比)を伴って又は伴わないでのMTX40mg/kgの効果の比較を実施した。臨床学的兆候、CNS−病理学及び腎病理学を測定した。
【0058】
EAEを次の通りにして誘発した。マウスを、Avertin(2,2,2−トリブロモエタノール)により麻酔し、そして250μgのM. ツベルキュロシスH.37RAを含む、等体積のフロイント不完全アジュバント(合計用量500μg)に乳化された、PBS中、150μgのMOGの2回の皮下注射(合計用量300μg)を受けた。1つの注射は、首すじに与えられ、そして第2の注射は背側に与えられた。百日咳毒素(100ng;尾静脈を通してi.v.)を、脳炎誘発物質に続いて、0、3及び7日目に投与した。
【0059】
ストックMTXを、25mg/mlで使用した(Bedford laboratories)。MTXストックを、6.8mg/ml(14.9mM)の濃度で、7.34mlの合計体積のために、PBS(2mlのストック+5.34mlPBS)により3.67倍に希釈した。
【0060】
3.00mlの希釈されたMTX溶液をアリコートし、そして96.6mgのカプチソール粉末に添加し、そしてその溶液を渦巻き混合した。得られる溶液は、淡黄色であるのを除いて、ほとんど透明であった。すべての溶液は、注射まで、暗室においてRTで維持された。96.6mg/3ml=32.228mg/ml=14.9;MTX:カプチソールのモル比1:1.
試験混合物を5つのグループのマウス(グループI−V;表6を参照のこと)に投与した。
【0061】
【表6】

【0062】
徴候の開始の24時間後、MTX(40mg/kg体重)を、尾の静脈を通して投与した。注射体積は、100〜120μlであった。MTX+カプチソールを、尾の静脈を通して、100〜120μlの体積で注射した。カプチソール(32.22mg/ml)のみを、100〜120μlの体積で、尾の静脈を通して注射した。ロイコポリン(20mg/kg体重)を、MTX注射の4時間後及び再び24時間後、尾の静脈を通して注射した。ロイコポリン(葉酸の活性代謝物)を、抗癌化学療法において、メトトレキセートと共に与え、正常細胞の保護を助けた。
【0063】
動物を計量し、そして臨床学的徴候について毎日、評点を付けた。評点は、次の徴候に基づかれた:
0−正常
1−弛緩性尾、立毛及び/又は体重減少
2−後脚の衰弱を起こす困難性
3−後脚の衰弱病因を起こす不能性
4−後脚麻酔、柔軟な歩行及び/又は失禁
5−部分的後脚の麻痺
6−全体的後脚の麻痺及び前脚の衰弱
7−全体的後脚の麻痺及び前脚の不全麻痺又は麻痺
8−死亡又は瀕死を必要とする犠牲
【0064】
マウスを、疾病の重症度について毎日、評点を付け、そして次に、疾病の10日目、殺害した。脳、腎臓及び脾臓をホルマリンに固定した。CNSへのT細胞の浸潤を評価するために、CD3+免疫組織化学を、未処理のEAEマウス及びMTX及びカプチソールにより同時処理されたEAEマウスの、パラフィンに包埋された8ミクロンの厚さの後部脳切片に対して実施した。光顕微鏡調査のために、腎臓を10%緩衝されたホルマリンに固定し、そしてパラフィン包埋のために通常通り処理した。5μmの組織切片を、ヘマトキシリン及びエオシンにより染色し、そしてNikon Coolpix光顕微鏡下試験した。
【0065】
全体の腎臓損傷の重症度を、記載されるような定量的測定により評価した。腎臓の個々の組織切片を、糸球体の構造の変性、糸球体混雑及び充血、ボーマン空間の肥大、近位及び遠位尿細管の変性及び腎尿細管の肥大、血管充血、及び炎症性細胞浸潤について評価した。糸球体衰退について、20個以上の核を含む糸球体を、“0”の評点を付け、そして10個以下の核を含む糸球体を“4”として評点を付けた。中間段階を、1,2及び3とした。他の基準を、0〜3の尺度で評点を付けた:0=なし; 1=軽い;2−中位;3=重度。
【0066】
個々の組織の顕微鏡的評点を、個々の基準に与えられる評点の合計として計算し、そして少なくとも100個のネフロン(糸球体+周囲の尿細管)切片当たり分析した。データは、平均±SEMとして表される(図2を参照のこと)。
MOG処理されたマウスは、10〜11日目に開始して、重度の臨床学的表示を進行した。それらは、13日目での殺害まで維持された。すべての動物は影響を受けた。部分的又は完全な後脚麻痺(臨床学的評点)。
【0067】
MTX40mg/kg+カプチソールの効力は、MTXのみの処理により見られる効力に相当した。
CNS病理学−CD3+免疫染色の結果は、未処理のEAEマウスが、後部脳及び脊髄におけるCD3+T細胞の大規模な浸潤を有したことを示した(示されていない)。MTX+カプチソール(40mg/kg+カプチソール 1:1のモル比)により同時に、後−徴候的に処理されたEAEマウスは、T細胞浸潤において80〜90%の低下を示した(示されていない)。MTX+カプチソール効力は、MTXのみの処理による効力に相当する。
【0068】
腎病理学評点は、図3に示される。MTX40mg/kgにより処理された3匹の異なったEAEマウスからの腎切片は、腎尿細管の肥大及び近位尿細管の変性を示した。MTX+カプチソールにより同時処理されたマウスからの腎切片は、尿細管に対する保護効果を示した。40mg/kgのMTXの単一の静脈内ボーラス注射は、皮質における腎尿細管の肥大にほとんど制限される腎臓における形態学的変化を生成した。MTXと共に同時カプチソール投与は、EAEマウスにおける病理学的評点の低下をもたらした。
【0069】
例3:種々のモル比率でのカプチソール−MTX
異なったモル比率での同時カプチソールを伴って又は伴わないでの単一のボーラス静脈内MTXの後の腎臓における組織病理学的変化の研究を実施した。
MTX溶液を次の通りにして調製した。溶液A(24mg/ml(53mM)を、無菌PBS(合計体積6ml)中、25mg/mlの(Bedford laboratoriesからのメトトレキセート)のストック溶液から調製した。溶液Bを、PBSにおいて溶液Aを1:1.33に希釈することにより調製し、18mg/ml(39.6mM)(pH7.4)の作業溶液を得た。溶液Cを、2mlの溶液Aを1:2に希釈することにより調製し、12mg/ml(26.4mM)(pH7.2)の作業溶液を得た。
【0070】
MTX+カプチソール溶液を次の通りにして調製した。溶液Dを、500μlのアリコートの溶液Aに57.32mgのカプチソールを添加することにより製造した(モル比1:1、中性pH)。溶液Eを、1mlのアリコートの溶液Bに85.6mgのカプチソールを添加することにより製造した(モル比1:1、中性pH)。溶液Fを、1mlのアリコートの溶液Cに57.10mgのカプチソールを添加することにより製造した(モル比1:1中性pH)。溶液Gを、1mlのアリコートの溶液Bに42.8mgのカプチソールを添加することにより調製した。溶液Hを、1mlのアリコートの溶液Cに28.6mgのカプチソールを添加することにより製造した。
【0071】
MTX及びカプチソールを、100〜120μlの体積での単一注射により、尾の静脈を通して、8グループのマウス(グループI-VIII ;表7を参照のこと)に投与した。動物を48時間後、殺害した。臨床学的徴候、体重を記録した。腎臓を病理学のために保存した(1つを凍結し、1つをホルマリン固定した)。ロイコポリンを、4時間で及び18時間後、与えた。尿はアルカリ性化されなかった。
【0072】
【表7】

【0073】
MTX80mg/kg、120mg/kg及びMTX:カプチソールの1:1及び1:0.5のモル比でのMTX+カプチソールの組合せにより処理されたマウスにおける全体の腎臓損傷の判定量的評価が図4に示される。対照腎臓についての評点は、3〜4であった(グラフには示されていない)。パラフィン包埋された腎臓のヘマトキシリン及びエオシン切片を、腎損傷の程度について顕微鏡分析した。データは、平均±SEMとして表される。MTX160mg/kgについてのデータは、このグループには、1匹のマウスしか存在しないので、グラフには包含されていない。
【0074】
ヘマトキシリン及びエオシンにより染色された腎臓のパラフィン切片(示されていない)は、80mg/kgのMTXを投与されたマウスからの腎臓が、尿細管における退化的変化、糸球体における超細胞性、及び間質細胞及び痙攣された尿細管の非典型的集合を有したことを示した。1:1のモル比のMTX:カプチソールでの80mg/kgのMTX+カプチソール、及び1:0.5のモル比でのMTX:カプチソールでの80mg/kgのMTX+カプチソールを投与されたマウスからの腎臓は、尿細管の軽い変性、正常な糸球体、及び存在しない炎症性細胞の浸潤を示した。しかしながら、腎臓保護の程度は、MTX:カプチソールのモル比が1:0.5である場合、より高かった。
【0075】
ヘマトキシリン及びエオシンにより染色された腎臓のパラフィン切片(示されていない)は、120mg/kgのMTX、ivを投与されたマウスからの腎臓が、糸球体衰退、ボーマン嚢上の基底膜の変性、尿細管における退性変化、糸球体における超細胞性、及び単核細胞の肥大を有したことを示した。1:1のモル比のMTX:カプチソールでの120mg/kgのMTX+カプチソール、及び1:0.5のモル比でのMTX:カプチソールでの120mg/kgのMTX+カプチソールを投与されたマウスからの腎臓は、ほとんど正常な糸球体、近位及び遠位細胞の保護、及び存在しない炎症性細胞の浸潤を示した。
【0076】
例4:カプチソール−MTXの時間研究
MTX−カプチソール混合物は、表8に示されるようにして、投与された。
【表8】

【0077】
光顕微鏡調査のために、腎臓を10%緩衝されたホルマリンに固定し、そしてパラフィン包埋のために通常通り処理した。5μmの組織切片を、ヘマトキシリン及びエオシンにより染色し、そしてNikon Coolpix光顕微鏡下試験し、写真はNicon Coolpixカメラにより撮られた。全体の腎臓損傷の重症度を、記載されるように損傷の半定量的測定により評価した。腎臓の個々の組織切片を、糸球体の構造の変性、糸球体混雑及び充血、ボーマン空間の肥大、近位及び遠位尿細管の変性及び腎尿細管の肥大、血管充血、及び炎症性細胞浸潤について評価した。糸球体衰退について、20個以上の核を含む糸球体を、“0”の評点を付け、そして10個以下の核を含む糸球体を“4”として評点を付けた。中間段階を、1,2及び3とした。他の基準を、0〜3の尺度で評点を付けた:0=なし; 1=軽い;2−中位;3=重度。
【0078】
個々の組織の顕微鏡的評点を、個々の基準に与えられる評点の合計として計算し、そして少なくとも100個のネフロン(糸球体+周囲の尿細管)切片当たり分析した。例えば、Bhat et al., PNAS (2003) 100(7); Sener et al., Cell Biol Toxicol (2006) 22:470-60を参照のこと。
【0079】
図5を参照のこと、MTX処理されたマウスの腎組織は、24及び48時間後、広範な組織病理学的変化を示す。24及び48時間で、糸球体の衰退、ボーマン空間の変性及び肥大、及び間質における炎症性細胞浸潤及び尿細管変性が存在した。カプチソール+MTX処理されたグループは、軽い糸球体及び尿細管変化及び炎症性細胞の低い浸潤を示した。しかしながら、24時間後に見られる前記変化のいくらかは、累積性病理学的評点が、24時間に比較して、48時間では低いので、可逆的であるように思えた。
【0080】
腎臓における組織病理学的変化を、カプチソール同時投与を伴って、又は伴わないで、MTX注射の24時間後で研究した。マウスは、MTX又はMTX+カプチソール同時投与に続いて24時間後、殺害された。腎臓のパラフィン切片を、ヘマトキシリン及びエオシンにより染色した(示されていない)。MTX160mg/kgの投与は、糸球体構造の変性及びボーマン空間の肥大、近位及び遠位尿細管の変性及び炎症性細胞浸潤をもたらした。軽い糸球体及び尿細管変性が、1:1のMTX:カプチソールモル比で、MTX160mg/kg+カプチソールについて観察された。1:05のMTX:カプチソールモル比でのMTX160mg/kg+カプチソールが、糸球体及び尿細管構造の保存において最も効果的であった。炎症性細胞の浸潤は完全に不在であった。1:0.25のモル比で使用されるMTX160mg/kg+カプチソールは、腎臓損傷に対して保護しなかった。
【0081】
腎臓における組織病理学的変化を、カプチソール同時投与を伴って、又は伴わないで、MTX注射の48時間後に記録した。マウスは、MTX又はMTX+カプチソール同時投与に続いて48時間後、殺害された。腎臓のパラフィン切片を、ヘマトキシリン及びエオシンにより染色した(示されていない)。注射の48時間後、MTX160mg/kgの投与(i.v.)は、糸球体構造の変性、ボーマン空間の肥大、近位及び遠位尿細管の肥大、近位及び遠位尿細管の変性及び炎症性細胞浸潤をもたらした。軽い糸球体及び尿細管変性が、1:1のMTX:カプチソールモル比で、MTX160mg/kg+カプチソールについて観察された。1:05のモル比でのMTX160mg/kg+カプチソールが、糸球体及び尿細管構造の比較的良好な保存をもたらした。1:0.25のモル比で使用されるMTX160mg/kg+カプチソールは、MTX誘発された損傷からの腎臓の保護において効果的ではなかった。最高の保護が、MTX:カプチソールモル比が1:05である場合、見られた。
【0082】
組織病理学的変化をまた、MTX投与の1週間後、腎臓について研究した。マウスは、MTX160mg/kgの単一i.v.ボーラス注射に続いて、1週間後に殺害された。腎臓のパラフィン切片を、ヘマトキシリン及びエオシンにより染色した(示されていない)。単独でのMTX投与は主に、時折の糸球体衰退又は混雑を伴って、近位及び遠位尿細管の変性をもたらした。肥大した核を有する変性細胞が近位及び遠位細胞の裏側に見られた。時折、いくつかの尿細管は、二重細胞層により内側を被覆されているように見られた。いくつかの尿細管は、好酸性材料により充血されていた。病理学的変化は、腎臓の皮質部分にほとんど見出された。糸球体構造のほとんどは、正常であった。
【0083】
組織病理学的変化をまた、MTX+カプチソールの投与の1週間後、腎臓について記録した。マウスは、MTX+カプチソールの同時投与に続いて、1週間後に殺害された。4匹の別々のマウスからの腎臓のパラフィン切片を、ヘマトキシリン及びエオシンにより染色した(示されていない)。1:1のモル比のMTX:カプチソールでのMTX160mg/kg+カプチソールにより同時投与されたマウスの腎臓は、有意に低い糸球体破壊及び尿細管の高い保存性を示した。炎症性細胞の浸潤は不在であった。
【0084】
例5:マウスにおけるドキソルビシン誘発された腎毒性モデルにおけるカプチソールの腎毒性効果の評価
雌のC57BL/6マウスを、単一用量(10mg/kg)のドキソルビシンにより静脈内注射した。マウスは、72時間後、殺害された。ドキソルビシン及びドキソルビシン+カプチソール投与後の糸球体及び尿細管間質損傷の進行を、腎組織学により評価した。5μMのパラフィン切片を切断し、そしてH&E及び過ヨウ素酸Schiff(PAS)により染色した。それらを、光顕微鏡により試験し、そしてブラインド型式で評点を付けた。30個の糸球体及び隣接する尿細管が、表面皮質(尿細管の表面近く)で評点を付けられた。100個の糸球体及び隣接する尿細管が、深部の腎皮質レベルで及び外側髄質の外側細部の周囲のレベルでの評点を付けられた。
【0085】
図6は、表面腎皮質のレベルでの個々の処理グループについての平均病理学的評点を示す。図7は、表面腎皮質のレベルでのドキソルビシン又はドキソルビシン+カプチソールにより処理された個々のマウスについての腎病理学的評価を示す。図8は、深部腎皮質+外側髄質のレベルでの個々の処理グループについての平均病理学的評点を示す。図9は、深部腎皮質+外側髄質のレベルでのドキソルビシン又はドキソルビシン+カプチソールにより処理された個々のマウスについて腎病理学的評点を示す。
【0086】
対照又はカプチソール処理されたマウスのいずれも、尿細管間質変化を有さなかった。ドキソルビシン処理されたグループは、いくつかの近位尿細管における、尿細管円柱、多くの肥大尿細管及び刷子縁の適度な損失を示した。糸球体のいくつかは破壊され、そして種々の変性段階で存在した。病理学は、腎皮質の外周囲において、より顕著であることが見出された。尿細管衰退又は好中球浸潤は見られなかった。ドキソルビシン+カプチソール処理されたマウスにおいては、変性のほとんど71%の低下、及び尿細管肥大におけるほとんど72%の低下が存在した。より深部の腎皮質及び髄質で、糸球体変性の90%の低下及び尿細管肥大における50%の低下が存在した。
【0087】
例6:マウスにおけるシスプラチン誘発された腎毒性モデルにおけるカプチソールの腎保護効果の評価
雌のC57BL/6マウスを、単一用量(10mg/kg)のシスプラチン(N=5)又は1:1、1:0.5及び1:0.25のモル比のシスプラチン:カプリソールでのシスプラチン+カプチソール(それぞれ、N=5、N=4及びN=6)により、静脈内注射した。動物は、72時間後、殺した。
シスプラチン投与後の糸球体及び尿細管間質損傷の進行及びシスプラチン+カプチソールによる保護を、腎組織学により評価した。5μMのパラフィン切片を切断し、そしてH&E及び過ヨウ素酸Schiff(PAS)により染色した。それらを、光顕微鏡により試験し、そしてブラインド型式で評点を付けた。30個の糸球体及び隣接する尿細管が、表面皮質(尿細管の表面近く)で評点を付けられた。100個の糸球体及び隣接する尿細管が、深部の腎皮質レベルで及び外側髄質の外側細部の周囲のレベルでの評点を付けられた。
【0088】
図10は、シスプラチン及びシスプラチン+カプチソール処理されたグループ(1:1、1:0.5及び1:0.25のモル比のシスプラチン:カプチソール)における表面皮質のレベルでの平均評点を示す。図11は、表面腎皮質のレベルでの個々の処理グループにおける個々のマウスの病理学的評点を示す。図12は、シスプラチン及びシスプラチン+カプチソール処理されたグループ(1:1、1:0.5及び1:0.25のモル比のシスプラチン:カプチソール)における深部皮質及び外側髄質のレベルでの平均評点を示す。図13は、深部腎皮質及び外側髄質のレベルでの個々の処理グループにおける個々のマウスの病理学的評点を示す。
【0089】
対照マウスは、いずれの尿細管間質変化も有さなかった。シスプラチン処理されたマウスは、壊死、尿細管上皮細胞の痂皮形成及びいくつかの近位尿細管における刷子縁の損失を示した。肥大した尿細管の多くの存在が、シスプラチン誘発された腎毒性の顕著な特徴であった。いくつかの糸球体は、破壊され、そしていくつかは初期変性変化を示した。それらの変化のすべては、シスプラチン+カプチソールによる処理により、明白に有意に低く、このことは、カプチソールが、1:1及び1:0.5の両モル比でのシスプラチン:カプチソールで、腎臓を保護したことを示す。
【0090】
例7:マウスにおけるゲンタマイシン誘発された腎毒性におけるSBE−βCDの腎保護効果
初期研究は、臨床学的に適切な用量でのゲンタマイシン投与がマウスにおける測定できる毒性を生成するのに失敗したことを示している。しかしながら、それらの用量は、ヒトにおける腎毒性を生成する。従って、軽い腎無防備状態のマウスにおけるSBE−βCDの腎保護効果を評価した。それらのマウスは、臨床学的に適切な用量で、腎臓における病理学的変化を表すことが示された。軽い腎無防備状態のマウスを生成するために、動物に、ゲンタマイシンの最初の注射の15〜20分前、L−NAME(L−アルギニンメチルエステル)10mg/kg及びインドメタシン10mg/kgをi.p.注射した。
【0091】
雌のC57BL/6マウスに、4.0mg/kgのゲンタマイシン(N=4)又はゲンタマイシン4.0mg/kg+SBE−βCD19.2mg/kg(N=4)、又はゲンタマイシン4.0mg/kg+SBE−βCD38.4mg/kg(N=4)の用量を、連続して10日間、ボーラス静脈内注射により投与した。ゲンタマイシン:SBE−βCDのモル比は、それぞれ1:1及び1:2であった。動物は、最後の注射の後48時間で殺害された。腎病理学を、光顕微鏡下で腎臓のH&E切片を評価することにより評価した。実験の詳細は、下記表9に与えられる。
【0092】
【表9】

【0093】
5μMのパラフィン切片を切断し、そしてH&E及び過ヨウ素酸Schiff(PAS)により染色した。それらを光顕微鏡により試験し、そしてブラインド形式で評点を付けた。個々の切片における40倍の倍率での5つの任意の領域を、下記に言及されるパラメーターについて評価し、そして言及される基準に従って評点を付けた。
【0094】
肥大した尿細管
0=正常、肥大した尿細管なし
1=軽い、1〜2個の肥大した尿細管
2=中位い、3〜5個の肥大した尿細管
3=重度、6〜8個の肥大した尿細管
4=非常に重度、8個以上の肥大した尿細管
【0095】
尿細管円柱
0=円柱不在
1=軽い、領域当たり1〜2個の円柱
2=中位い、領域当たり3〜5個の円柱
3=重度、領域当たり6〜8個の円柱
4=非常に重度、領域当たり8個以上の円柱
【0096】
小胞
0=正常、小胞なし
1=軽い、1〜4個の小胞
2=中位い、5〜8個の小胞
3=重度、9〜12個の小胞
4=非常に重度、13〜16個の小胞
【0097】
尿細管変性
0=なし
1=軽い、視野の25%までが変性尿細管を有する
2=中位い、視野の50%までが変性尿細管を有する
3=重度、視野の75%までが変性尿細管を有する
4=非常に重度、視野の75%以上が変性尿細管を有する
【0098】
炎症
0〜正常、炎症細胞が見られなかった。
1=軽い、視野の25%までが炎症細胞により被覆される
2=中位い、視野の50%までが炎症細胞により被覆される
3=重度、視野の75%までが炎症細胞により被覆される
4=非常に重度、視野の75%以上が炎症細胞により被覆される
【0099】
水腫
0=なし
1=軽い
2=中位
3=重度
4=非常に重度
【0100】
この条件下で、静脈投与された低用量ゲンタマイシン(4mg/kg)は、健康な腎臓における尿細管細胞の顕著な変化を誘発しなかった。しかしながら、マウスが軽い腎無防備状態である場合、4mg/kgでのゲンタマイシンが広範囲な尿細管小胞化及び腎皮質における壊死を生成し;尿細管細胞は平らになり、そして部分的に中断し、そして管腔が広くされる。遠位尿細管、集合管及び糸球体には顕著な変更は存在しなかった。
【0101】
1:1及び1:2のモル比でのゲンタマイシンとSBE−βCDとの組合せは、ゲンタマイシン誘発された腎毒性に対して有意な保護を提供した。すべての6種の評価パラメーターの平均としての腎病理学における低下率は、約62%であった。尿細管肥大及び近位尿細管小胞化の減衰、及び尿細管円柱の形式、並びに尿細管壊死及び単核細胞の浸潤の低下が存在した。SBE−βCDの効果は、用量依存性であり、そして1:2のモル比のゲンタマイシン:SBE−βCDは、個々のパラメーターのほとんどに関して、1:1のモル比よりも効果的であった。
【0102】
例8:マウスにおけるアシクロビル誘発された腎毒性におけるSBEβCDの腎保護効果
初期研究は、臨床学的に適切な用量でのアシクロビル投与がマウスにおける測定できる毒性を生成するのに失敗したことを示している。しかしながら、それらの用量は、ヒトにおける腎毒性を生成する。従って、軽い腎無防備状態のマウスにおけるスルホブチルエーテルβシクロデキストリン(SBEβCD)の腎保護効果を評価した。それらのマウスは、アシクロビルの臨床学的に適切な用量で、腎臓における病理学的変化を表すことが示された。
【0103】
軽い腎無防備状態のマウスを生成するために、動物に、アシクロビルの最初の注射の15〜20分前、L−NAME(L−アルギニンメチルエステル)10mg/kg及びインドメタシン10mg/kgをi.p.注射した。雌のC57BL/6マウスに、10mg/kgのアシクロビル(N=3)又はアシクロビル10mg/kg+SBEβCD173mg/kg(N=3)、又は10mg/kgのアシクロビル(N=3)又はアシクロビル30mg/kg+SBEβCD520mg/kg(N=3)の用量を、連続して10日間、ボーラス静脈内注射により投与した(表10)。両者の場合、アシクロビル:SBEβCDのモル比は、1:2であった。動物は、最後の注射の後48時間で殺害された。腎病理学を、光顕微鏡下で腎臓のH&E切片を評価することにより評価した。
【0104】
【表10】

【0105】
5μMのパラフィン切片を切断し、そしてH&E及び過ヨウ素酸Schiff(PAS)により染色した。それらを光顕微鏡により試験し、そしてブラインド形式で評点を付けた。個々の切片における40倍の倍率での5つの任意の領域を、下記に言及されるパラメーターについて評価し、そして言及される基準に従って評点を付けた。
【0106】
肥大した尿細管
0=正常、肥大した尿細管なし
1=軽い、1〜2個の肥大した尿細管
2=中位い、3〜5個の肥大した尿細管
3=重度、6〜8個の肥大した尿細管
4=非常に重度、8個以上の肥大した尿細管
【0107】
小胞
0=正常、小胞なし
1=軽い、1〜4個の小胞
2=中位い、5〜8個の小胞
3=重度、9〜12個の小胞
4=非常に重度、13〜16個の小胞
【0108】
炎症
0〜正常、炎症細胞が見られなかった。
1=軽い、視野の25%までが炎症細胞により被覆される
2=中位い、視野の50%までが炎症細胞により被覆される
3=重度、視野の75%までが炎症細胞により被覆される
4=非常に重度、視野の75%以上が炎症細胞により被覆される
【0109】
尿細管細胞の数の上昇
0=不在
1=軽い、細管の25%までが細胞数又は細胞の被覆を高めた
2=中位、細管の50%までが細胞数又は細胞の被覆を高めた
3=重度、細管の75%までが細胞数又は細胞の被覆を高めた
4=非常に重度、視野の75%以上が炎症細胞により被覆される
【0110】
軽い腎無防備状態のマウスにおけるアシクロビルの慢性的投与は、腎臓の形態学における病理学的変化の用量依存性上昇を引起した。アシクロビル処理は、多くの肥大した尿細管及び遠位尿細管上皮の不規則な小胞化により示されるように、中位い〜重度の徴候の細管病(Tubulopathy)を生成した。尿細管損傷の他の徴候、例えば上皮細胞の微小石灰化又は壊死は不在であった。単核細胞の軽い浸潤が、柔組織に見られた。病理学、特に尿細管肥大のほとんどが、皮質の周囲に沿って見られた。糸球体病理学は最少であった。
【0111】
1:2のモル比でのSBEβCDの同時投与は、外部皮質及び髄質の両者における尿細管肥大及び小胞形成の有意な減衰をもたらした。さらに、尿細管円柱の減衰及び柔組織内の単核細胞の浸潤が存在した。評価されるいくつかのパラメーターの平均としての腎病理学における低下は、30mg/kgの用量のアシクロビルに関して62%及び10mg/kgの用量に関して67%であった。
【0112】
例9:マウスにおけるイオヘキシル誘発された腎毒性におけるSBE−βCDの腎保護効果
イオヘキシルは、ヒトにおける腎毒性であり、そして腎無防備状態の患者において急性腎不全を引起すことができる。従って、軽い腎無防備状態のマウスを包含する、造影剤誘発された腎障害モデルにおけるスルホブチルエーテルβシクロデキストリン(SBE-βCD)の腎保護効果を評価した。それらのマウスは、イオヘキシルの臨床学的に適切な用量で、腎臓における病理学的変化を進行することが示された。
【0113】
軽い腎無防備状態のマウスを生成するために、雌のC57BL/6マウスに、イオヘキシルの注射の15〜20分前、一酸化窒素シンターゼインヒビターL−NAME(L−アルギニンメチルエステル)10mg/kg及びプロスタグランジン合成インヒビターインドメタシン10mg/kgをi.p.注射した。マウスは、イオヘキシル1.5g/kg(N=4)又はイオヘキシル1.5g/kg+SBE-βCD1.3g/kg(N=4)の単一静脈内ボーラス注射を投与されるか、又はイオヘキシル1.5g/kg+SBE-βCD1.3mg/が、イオヘキシル注射(N=4)の30分前、それと同時に、及び30分後、投与された(表11)。両者の場合、イオヘキシル:SBE−βCDのモル比は、同時用量の間、1:0.1であった。しかしながら、第2場合、インビボでのモル濃度は、より高くなることが予測される。動物は、イオヘキシル注射の24時間後、殺害された。腎病理学を、光顕微鏡下で腎臓のH&E切片を評価することにより、評価した。
【0114】
【表11】

【0115】
5μMのパラフィン切片を切断し、そしてH&E及び過ヨウ素酸Schiff(PAS)により染色した。それらを光顕微鏡により試験し、そしてブラインド形式で評点を付けた。個々の切片における40倍の倍率での5つの任意の領域を、下記に言及されるパラメーターについて評価し、そして言及される基準に従って評点を付けた。合計4種の切片を、腎臓当たり分析した。
【0116】
軽く腎−無防備状態化されたマウスにおける造影剤イオヘキシルの投与は、腎尿細管の形態学の病理学的変化を引起した。イオヘキシル処理は、多くの肥大した尿細管、尿細管円柱、遠位尿細管上皮の小胞化及び遠位尿細管の変性の存在により示されるように、中位い〜重度の徴候の細管病(Tubulopathy)を生成した。尿細管損傷の他の徴候、例えば好塩基球増加の微小石灰化又は上皮細胞の壊死は不在であった。病理学、特に尿細管肥大のほとんどが、皮質の周囲に沿って見られた。大部分の糸球体は正常であった。
【0117】
1:0.1のモル比でのイオヘキシル:SBE−βCDによるSBE−βCDの同時投与は、尿細管肥大、尿細管円柱形成、及び外部皮質及び髄質の両者における尿細管上皮の小胞体化の有意な減衰をもたらした。SBE−βCDの保護効果は、3種の用量で与えられる場合(イオヘキシル注射の前、間及び後)、増強されたように思えた。しかしながら、小胞体化の上昇は、マウス腎臓において達成されるSBE−βCDの高い局部濃度のためであるそれらのマウスに見られた。より高い用量のSBE−βCD(マウスにおける)が、近位尿細管の可逆的小胞体化を生成することが示された。たとえ1.3g/kgが、マウスにおける小胞体化を生成することが予測されるよりも低くても、累積用量はより高くなる。評価されるいくつかのパラメーターの平均として腎病理学的評点の評価は、SBEβCDがイオヘキシルと同時に1回の用量で与えられる場合、約72%であった。
【0118】
例10:マウスにおけるメトトレキセート誘発された腎毒性モデルにおけるHPβCDの腎保護効果
他のシクロデキストリン分子の保護効果を決定するために、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)を評価した。雌のC57BL/6マウスを、単一用量のメトトレキセート80mg/kg、IV、又は1:1及び1:0.5のモル比のメトトレキセート:HPβCDでのメトトレキセート+HPβCD、IVにより静脈内注射した。動物は、24時間後、殺害された。メトトレキセート及びメトトレキセート+HPβCDによる保護後の糸球体及び尿細管間質損傷の進行を、光顕微鏡により、腎組織学の評価により、評価した。ロイコポリンは、4時間で及び18時間後、与えられた。尿は、アルカリ性化されなかった。
【0119】
5μMのパラフィン切片を切断し、そしてH&E及び過ヨウ素酸Schiff(PAS)により染色した。それらを光顕微鏡により試験し、そしてブラインド形式で評点を付けた。個々の切片における40倍の倍率での5つの任意の領域を、下記に言及されるパラメーターについて評価し、そして例7に示される基準に従って評点を付けた。
【0120】
正常なマウスにおいては、80mg/kgでのMTXによる単一IV注射は、軽く退化した糸球体、尿細管変性、円柱形成、単核細胞の肥大及び浸潤の形で、腎臓における有意な組織病理学的変化をもたらした。MTX+HPβCD(1:1及び1:0.5のモル比を有する)により同時処理されたマウスにおいては、尿細管病理学における有意な低下が存在し、そして糸球体構造の良好な保存が見られた。1:0.5のモル比での全体的なMTX:HPβCDは、1:0.05のモル比によりも効果的であった。測定されるいくつかのパラメーターの平均としての腎病理学において低減率は、約55%であった。
【0121】
上記明細書、例及びデータは、本発明の組成物の製造及び使用の完全な記載を提供する。本発明の多くの態様は、本発明の範囲内で製造され得るので、本発明はこの後に付随される請求の範囲に存在する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
シクロデキストリン−[(O-R)-(Me)+]n
[ 式中、Rは、直鎖又は枝分れ鎖のC1-10アルキル、アルケニル又はアルキニルから成る群から選択され;1又は複数のヒドロキシルにより置換され;
Meは、医薬的に許容できるカチオン又はアニオンであり;そして
nは、1以上の整数である]
で表される置換されたオリゴ糖;
腎毒性薬物又は剤;及び
医薬的に許容できるキャリヤーを含んで成り、前記オリゴ糖が、前記薬物又は剤の腎毒性効果を実質的に阻害するために効果的な量で存在する、組成物。
【請求項2】
RがO-CH2CH(OH)CH3である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記シクロデキストリンが、1又は複数のα、β又はγシクロデキストリンから成る群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記薬物:オリゴ糖のモル比が、1:1以上である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記薬物:オリゴ糖のモル比が、少なくとも約2:1である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記薬物が、メトトレキセート又はその誘導体又は医薬的に許容できる塩である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記薬物が、抗生物質である、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記剤が、造影剤である、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記薬物が、抗癌薬物である、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
有効量の請求項9記載の組成物を、その必要な対象に投与することを含んで成る、癌の増殖を阻害するための方法。
【請求項11】
前記薬物が、シスプラチンである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記オリゴ糖が、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリンである、請求項11記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−528045(P2010−528045A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509552(P2010−509552)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/064489
【国際公開番号】WO2008/147856
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509323174)バーロウ ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】