説明

腫瘍の診断およびGB3発現腫瘍への薬物送達のためのベクターとしてのシガトキシンBサブユニット

本発明は、癌の治療または診断のための新規な化合物に関し、さらに具体的には受容体Gbを過剰発現している細胞への診断用製品または薬物のベクターとしてシガトキシン変異体の無毒性Bサブユニットを使用することに関し、そのような化合物は以下の式、STxB−Z(n)−Cys−Y(m)−Tを有し、式中STxBはシガトキシンBサブユニットまたはその機能的同等物であり、Z(n)でnは0または1あり、nが1の場合、Zはスルフヒドリル基を欠くアミノ酸残基であるか、またはポリペプチドであり、Cysはシステインのアミノ酸残基であって、Tは、インビボ診断用薬剤、細胞毒性剤、プロドラッグ、またはプロドラッグを薬物に変換する酵素、を含む群から選択される、CysのS部分に共有結合により連結する分子であり、Y(m)でmは0または1であって、mが1の場合、YはTとCysの間のリンカーであり、前記リンカーはハイブリッド化合物が前記細胞にインターナリゼーションした後にTを放出するために開裂できるか、または開裂できない。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、癌の治療または診断のための新規の化合物に関し、さらに具体的には受容体Gbを過剰発現している細胞への診断用製品または薬物のベクターとしての無毒性シガトキシンBサブユニット変異体の使用に関する。
【0002】
腫瘍学の分野で数十年も基礎研究および臨床研究がなされたにもかかわらず、攻撃的な疾病を有する患者の長期の見通しは気力を失わせるものである。現在の癌の治療法である化学療法と放射線療法の主な制限の1つは、癌細胞への標的づけが不足していることである。標的づけに対する最も合理的で成功する取り組みは、腫瘍細胞への癌化学療法剤、放射性同位体、または生物トキシンの局在を促進することを期待して、癌細胞表面の特異的リガンド(例えばモノクローナル抗体、ペプチド性ホルモンなど)にそれらの物質を結合させることを必要とする。
【0003】
細胞の形質転換と腫瘍発生はスフィンゴ糖脂質の発現と構造の変化を伴っている。これらの変化は、細胞の接着と細胞のシグナル伝達に果たすスフィンゴ糖脂質の提案された機能と関係していると一般に考えられている。実際にスフィンゴ糖脂質は、コレステロールと共に受容体の凝集に、そしてSrcファミリーキナーゼなどのシグナル伝達分子との受容体の相互作用に、中心的な役割を演じる膜ミクロドメイン(ラフト)の主要成分である。さらに、細胞内でのソーティングに果たすスフィンゴ糖脂質と膜ミクロドメインの役割について現在評価が行われている。Simonsと共同研究者らにより提唱されたいわゆる「ラフト仮説」によると、膜面に沿った脂質と蛋白質の分布が非対称であることが細胞内で別個の場所への膜ソーティングが行われることに寄与している。
【0004】
GSLであるグロボトリアオシルセラミド(GbまたはCD77)は、分化を方向づけられたB細胞の狭い範囲および関連するB細胞リンパ腫に発現する(Gordonら、1983;Kalisiakら、1991;Mangeneyら、1991;Murrayら、1985;Oosterwijkら、1991)。実際に、全てのグレードの濾胞中心細胞リンパ腫でGb特異的リガンドの結合部位を検出でき、患者の腫瘍検体の70%超が陽性であることが最近報告された(LaCasseら、1999)。小リンパ球性リンパ腫、大B細胞リンパ腫または多発骨髄腫の検体の30〜40%も陽性であることが認められた。卵巣の過形成(Arabら、1997)およびヒト乳房腫瘍から得られた細胞懸濁物(LaCasseら、1999)はGb陽性と検査された。最後に、Gbは若干のヒト星状細胞腫由来細胞系でも顕著に増加していた(Arabら、1999)。
【0005】
記載されたヒト癌細胞上でのGbの発現に照らして、この脂質をベクター化目的に使用する提案は心をそそるものである。志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)由来の細菌タンパク質毒素シガトキシンおよび大腸菌(Escherichia coli)由来ベロ毒素を包含する、Gbの天然リガンドが記載された(Lingwood、1996;Sandvigとvan Deurs、1996)。これらの毒素は2つのサブユニットから構成される。酵素であるAサブユニットはリボソームRNAを修飾することによってタンパク質の生合成を阻害する。細胞と結合し細胞内輸送を行うために、Aサブユニットは5つのB断片のホモ五量体である無毒性Bサブユニットと相互作用しなければならない。Bサブユニットは一定条件で10〜15個のGb分子と協同的に結合する。このクラスター形成によってこのトキシンは膜のミクロドメインと会合することになる。これは、このトキシンの細胞内輸送に重要なできごとである(Falguieresら、2001)。トキシン感受性細胞ではシガトキシンとその無毒性Bサブユニットは、初期エンドソームとゴルジ装置を介して形質膜から小胞体へと逆輸送により標的づけされる(総説は(Johannes、2002)を参照のこと)。小胞体のレベルでは、Aサブユニットは次に逆移行により膜を通過して細胞質ゾルに達する。一部の種類の細胞はGbを発現しているにもかかわらずこのトキシンの作用に耐性であることに注目することが重要である(Falguieresら、2001)。このことは、これらの細胞での細胞内輸送パターンの変化に関係するようである(Falguieresら、2001)。
【0006】
シガトキシンのホロ毒素はマウスでの異種移植片を用いて抗腫瘍剤として記載された(Arabら、1999)。さらに除去に応用すると、このホロ毒素はクローン原性腫瘍細胞を排除する(LaCasseら、1996)。しかし、治療薬としてのホロ毒素の使用には重大な制限がある。第1に、この毒素のAサブユニットの作用は腫瘍細胞に特異的ではない。第二に、このホロ毒素は固形腫瘍に浸潤する能力が限られている高分子量のタンパク質である。第三に、ホロ毒素などの高分子量の細菌タンパク質は有効な免疫応答を生じる。第四に、GbとAサブユニットが同時に結合することを維持する必要性によって、免疫の回避または細胞内標的づけに有利に働く突然変異を導入する可能性が制限される。
【0007】
したがって、本発明においてわれわれは、Aサブユニットの非存在下における癌細胞へのベクター化手段としてシガトキシンのBサブユニットを使用した。Bサブユニットへの部位特異的化学結合が可能で、Gbとの相互作用を保った、以前に構築したBサブユニット変異体を使用した。
【0008】
さらに具体的には、Bサブユニット変異体またはSTxB−Z(n)−Cys(nは0または1)と名付けた誘導体を設計した。このタンパク質では成熟STxBのC末端にシステインを付加している。細菌から精製した場合、このタンパク質は野生型STxBと同様に分子内ジスルフィド結合を保持するが、C末端のCysにあるスルフヒドリル基は遊離である。求核性によって遊離スルフヒドリル基は部位特異的結合法の優れたアクセプターとなる(Philippe Schelteら、1999)。
【0009】
受容体Gb発現細胞に分子を標的づけするための万能の担体としてこれらの変異体を使用できる。
【0010】
したがって、本発明は、受容体Gbを過剰発現する細胞を診断または治療するための、以下の式、STxB−Z(n)−Cys−Y(m)−Tを有するハイブリッド化合物に関し、式中、
− STxBは、シガトキシンBサブユニットまたはその機能的同等物であり、
− Z(n)で、nは0または1であり、nが1の場合、Zはスルフヒドリル基を欠くアミノ酸残基またはポリペプチドであり、
− Cysは、システインのアミノ酸残基であり、
− Tは、
・インビボ診断用薬剤、
・細胞毒性剤、
・プロドラッグ、または
・プロドラッグを薬物に変換するための酵素
から成る群から選択される、CysのS部分に共有結合により連結する分子であり、
− Y(m)で、mは0または1であり、mが1の場合、YはTとCysの間のリンカーであり、前記リンカーは前記細胞にハイブリッド化合物がインターナリゼーションした後にTの放出のために開裂できるか、または開裂できない。
【0011】
したがって、本発明において、Tは共有結合により直接、またはリンカーYを介して間接的にCysと作動可能に結合されており、T部分の前記の放出を可能にするか、または可能にしない。
【0012】
好ましい実施形態では、Z(n)で、n=0であり、このハイブリッド化合物のSTxB−Z(n)−Cys部分は以下の配列(配列番号1)を有する。
COOHMKKTLLIAASLSFFSASALATPDCVTGKVEYTKYNDDDTFTVKVGDKELFTNRWNLQSLLLSAQITGMTVTIKTNACHNGGGFSEVIFRC−NH2
【0013】
Z(n)で、n=0の場合、上記部分はSTxB/Cysとしても表される。
【0014】
事実上、Z部分が長すぎる、すなわちnが2以上である場合、細胞内ジスルフィド架橋が数か所形成し、受容体Gb3に対するSTxBの結合および、特に目的分子に対する結合を阻害するおそれがある。
【0015】
本発明は、癌細胞、さらに具体的には腫瘍、さらに具体的には腸腫瘍および結腸直腸腫瘍が下記の図1、図2および図10からわかるように受容体Gbを過剰発現するという観察に由来する。Gbはヒトの正常な腸上皮には存在しない(Jonesら、2000)。結果的に、Gbはマウスにおいて低レベルないし検出できないレベルしか存在しないことが示された。逆にGbはヒト結腸癌細胞系CaC02に過剰発現する(Jonesら、2000)。したがって、Gbはヒトならびにマウスモデルの両方において腫瘍細胞と正常腸細胞を識別するための優れたマーカーとなる。Gbの発現パターンの相違は直腸結腸癌、さらに一般的にはGb過剰発現腫瘍または癌細胞における本発明の治療および診断での新しい開発の基礎となっている。マウスモデルを評価する場合、特に生検材料から開始する場合に、実施例1に開示したような方法を実施することにより、細胞上での受容体Gb3の過剰発現を評価できる。別の方法はGb3の分布の測定にMRIを実施することを包含している。しかし、治療すべき腫瘍がGb3を過剰発現する腫瘍であるという確認が治療の開始前に特異的に探索されない状況もある。
【0016】
本発明によると、「治療上の処置」という表現は、治療を受けている患者に有益効果を招く本発明のハイブリッド化合物の作用を包含し、結果として患者の状態の改善または寛解状態または健康状態の回復を包含することを含めて、その効果は細胞レベルまたは臨床レベルのどちらかで得られる。本発明において、前記治療上の処置は腫瘍を有し、特に癌を患う患者に提供される。
【0017】
本発明によると、「診断」という表現は病理学的状態の検出を、または他のパラメータと可能的に組み合わせて、病理学的状態と直接もしくは間接的に相関でき、診断プロトコールに有用な情報を提供できる1つもしくは複数のパラメータの検出を、包含している。この表現はそのような病理学的状態に関係するパラメータの考えられる定量的検出も包含している。
【0018】
一実施形態では、本発明のハイブリッド化合物は、磁気共鳴画像(MRI)などの生命画像化法によりGb発現癌細胞を検出するための造影剤であるT部分を有することができる。他の非侵襲性の生命画像化法には二光子顕微鏡、造影超音波、X線造影、コンピュータ断層撮影、同位元素スキャン、造影サーモグラフィーがある。
【0019】
さらに具体的には、ポルフィリン−ガドリニウム、ポルフィリン−マンガン、合成ポリマー−ガドリニウム、ガドリニウム−エトキシベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸、DOPTA−ガドリニウム、磁性流体およびナノ粒子などの常磁性化合物を含む群から前記造影剤を選択でき、それらは次にヒトまたは動物に投与される。
【0020】
本発明は腫瘍のインビボ診断、さらに具体的にはMRIによる診断へのそのような化合物の使用にも関する。その使用は、受容体Gbが癌細胞に特異的に発現するが正常細胞には発現しないことが示される限り腸癌および結腸直腸癌に好都合である。
【0021】
別の実施形態では、本発明のハイブリッド化合物は、Gb陽性癌細胞における腫瘍特異的輸送経路に向けてベクター化された腫瘍特異的薬物またはプロドラッグをT部分として有することができ、これらの治療の有効性および/または特異性の増大を可能にする。T部分はプロドラッグ活性化剤でもあり得、一方でプロドラッグ単独は公知の薬物送達系、すなわち全身投与、経皮投与、経口投与、直腸投与により直接投与される。
【0022】
全般的にみて、癌への標的づけ手段としてのBサブユニットの使用は以下の利点を有する。第1に、サイズが小さいことから組織へのBサブユニットの透過が効率的である。第二に、Bサブユニットに対する抗体応答は非効率的である。第三に、腫瘍選択的な化合物をBサブユニットに結合することができる。第四に、治療の効率を高めるために腫瘍特異的輸送経路を利用することができる。第五に、Bサブユニットの修飾がなされる場合に保存する必要があるのはGb結合能のみである。
【0023】
本発明の一態様において、薬物は光線力学療法(DPT)に適した光増感剤である。DPTはヒトの固形腫瘍を治療するための最近開発された技術である。DPTは、腫瘍組織内にポルフィリンなどの色素またはそれに関連する系を標的づけして光活性化することに基づく。アポトーシスによる細胞死やミトコンドリア、核などに影響を与える他のメカニズムなどの分子的なできごとについては理解が始まった最中である。一部の光増感剤は医療機関ですでに使用されている(Photofrin(登録商標)、Foscan(登録商標)など)。しかし、これらの物質にはいくつかの欠点があり、その最たるものは腫瘍特異的な標的づけの欠如である。光増感剤の腫瘍選択性を向上させるために種々の戦略が提案されてきた。それらには色素の生体分布を変更するリポソーム、リポタンパク質、モノクローナル抗体、ナノ粒子などの適合した送達系の使用を含んでいる。Curie研究所が開発した別の取り組みはマクロ環の両親媒性をモジュレートすることである。テトラピロール系の糖複合により誘導される構造修飾は親水性と疎水性の間のバランスを作り出す効果的な手段である。この取り組みに続き、中性のトリ−およびテトラ−糖複合テトラピロールマクロ環が調製され、それらの光細胞毒性がインビトロで評価された(Momenteauら、1999)。
【0024】
したがって、糖が複合した比較的親水性の高いテトラピロールマクロ環(ポルフィリン)が合成された。そのマクロ環はSTxB/Cysとの結合を可能にするブロモベンジル基を保有している。得られた化合物の合成、STxB/Cysとの結合、および精製を以下に解説する。腫瘍細胞との接触を果たした場合、STxB/Cysから構成される治療用化合物および糖複合ポルフィリンは小胞体とゴルジ装置に安定して蓄積する。次に、樹状細胞のように保護する必要のある細胞から細胞毒性化合物が除去された後に可視光を照射することにより、ポルフィリンの光毒性を局所的に活性化できる(Falguieresら、2001)。樹状細胞ではSTxBは逆ルートを標的としない。
【0025】
本発明の別の態様では、Tは細胞毒性剤である。前記細胞毒性剤は、直接または間接的にインターナリゼーションした後に第2の成分の作用を介して細胞に対して毒性であり得、前記第2の成分はプロドラッグを細胞毒性薬に変換する手段として働く。
【0026】
細胞毒性剤の一例はネオカルジノスタチン(NCS)である。この場合、m=0で、Tはホロ−NCSである。
【0027】
ホロ−ネオカルジノスタチン(ホロ−NCS)はタンパク質性抗生物質ファミリーの原型である。これは細胞毒性活性を含有するドデカジイン抗生物質(NCSChrom)がアポ−ネオカルジノスタチン(アポ−NCS)として知られている担体タンパク質に可逆的に結合したものから成る11.3kDaの複合体である(総説は(Favaudon、1982)を参照のこと)。ホロ−NCSはナノモル領域で活性で、NCSChromは自殺反応の過程でDNAを開裂させ培養数分後には活性薬物を残留しない。薬物の細胞内輸送(MDR)の減少に伴うNCSChromに対する耐性は報告されていない。
【0028】
DNAにおいてNCSChromにより誘導される主なDNAの損傷はラジカルによる攻撃に起因し、一方の鎖でのチミジン−5’−アルデヒド残基を有する平滑末端切断と、その相補鎖でのヌクレオチド2つを隔てた無塩基部位とから成る。この無塩基部位はエンドヌクレアーゼIIIの基質であり、生細胞においてNCSChromが誘導した損傷が非常に迅速にDNA二本鎖の切断に変換される。最も顕著にはDNA依存性プロテインキナーゼの欠陥により、二本鎖切断の修復経路に欠陥のある大腸菌、酵母または哺乳動物細胞の変異体は、NCSにより誘導される細胞死に一貫して過敏である。
【0029】
NCSの精製、NCSがCysと共有結合しているハイブリッド化合物の入手法、およびこのハイブリッド化合物の細胞毒性作用を下の実施例1で説明する。
【0030】
本発明のハイブリッド化合物の別の実施形態では、Tはプロドラッグで、m=1である。プロドラッグは不活性であるが生体内変換により活性代謝物に変換される治療薬として定義される。次にプロドラッグは、ハイブリッド化合物のインターナリゼーション後に細胞内で第2の成分により変換される。前記第2の成分は酵素などの細胞代謝物であり得る。本実施形態の一例は、Tがアントラサイクリン(ダウノマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシンなど)、イダルビシン、シスプラチン、マイトマイシンC、デスアセチルビンブラスチン、メトトレキサート、N−アセチルメルファン(N−acetylmelphan)、5−フルオロウラシル、ナイトロジェンマスタード、カリチェアミシン、マイタンシノジド(maytansinodid)などの細胞毒性薬で、Yがマンノシダーゼなどの内因性酵素に感受性のリンカーであるハイブリッド化合物である。
【0031】
別の実施形態は(SaxonとBertozzi、2000)により記載された取り組みを包含する。アジド基を含有する糖前駆体をSTxB/Cysを介して癌細胞に標的づける。ゴルジ装置中でアジド保有糖を遊離させた後に、後者のアジド保有糖は癌細胞の糖鎖に組み込まれる。ホスフィン保有プロドラッグと相互作用して、腫瘍環境で特異的に働く治療用化合物が放出される。
【0032】
別の実施形態は、アミドキシム(N−ヒドロキシアミジン)を内因性レダクターゼにより開裂できるプロドラッグとして使用することを包含する。
【0033】
種々のレダクターゼがアミドキシムからアミジンへの還元を担っている。シトクロムb5、そのレダクターゼおよびP450イソ酵素から成るミクロソーム酵素系がブタおよびヒトの肝臓から精製された(Clement Bら、1997)。類似の酵素系はミトコンドリアに存在する。還元活性は種々の臓器、例えば肝臓、腎臓、肺および脳にさえも局在する。
【0034】
別の定式化では、マンノシダーゼに感受性である結合を組み込んだプロドラッグを作製する。このプロドラッグをSTxB/Cysと結合させ、Gb発現癌細胞に標的づける。この場合、酵素を前もってベクター化することなしに癌細胞のゴルジ装置内で内因性マンノシダーゼによりプロドラッグの活性化が起こる。
【0035】
別の実施形態では、前記第2の成分は本発明のハイブリッド化合物であり、Tはプロドラッグを薬剤に転換する酵素である。この場合、前記酵素は内在しないか、または細胞の標的区画、すなわちゴルジ装置に存在しない。
【0036】
一例は、ドキソルビシンのアミノグリコシドにリンカー部分を介して結合しているグルコロン酸を含有するプロドラッグの使用である。そのようなプロドラッグを(BakinaとFarquhar、1999)に記載されたように合成する。アントラサイクリン系プロドラッグをβ−グルクロニダーゼによりドキソルビシンに変換できる。この場合、第二化合物のT部分はβ−グルクロニダーゼである。第1のステップで、BSAとNCSについて下に解説するようにβ−グルクロニダーゼをSTxB/Cysと結合させる。この結合生成物はGb発現腫瘍細胞のゴルジ装置(図13)および小胞体に標的づけされ、この区画に保持される。樹状細胞などの他の細胞では結合生成物は速やかに分解する(Falguieresら、2001)。第二ステップでプロドラッグをSTxB/Cysと結合させる。すでにSTxB/Cys−β−グルクロニダーゼ結合生成物を保持した細胞(癌細胞)では第二ステップの生成物を活性化できるがこの生成物を失った細胞(樹状細胞)では活性化しない。
【0037】
別の実施形態では、このプロドラッグは酵素により転換した後に複製中のDNAに組み込まれ、その複製を終止できるヌクレオチドアナログである。癌の自殺遺伝子療法のためのそのようなプロドラッグはSinghal S.ら(1999)に総説されている。一例は、Tがガンシクロビル(GCV)またはアシクロビル(ACV)で、かつYがマンノニダーゼなどの内因性酵素により開裂できるリンカーであるハイブリッド化合物である。第二化合物は、Tが単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV−TK)である第二ハイブリッド化合物である。この酵素はGCVまたはACVをGCV一リン酸またはACV一リン酸に変換できる。これらのヌクレオシド一リン酸は次に内因性キナーゼによりリン酸化されて二リン酸エステルおよび三リン酸エステルであるヌクレオチドアナログになる。GCV三リン酸は、DNA鎖の伸長に必要なデオキシリボース上の3’OHと、2’および3’炭素の間の結合とを欠く。結果としてGCV三リン酸の組み込みはDNA鎖の未熟な状態での終止を引き起こしアポトーシスを招く。
【0038】
したがって、本発明は、以下も包含する。
− Yが、カルボキシペプチダーゼGにより開裂できる還元および非還元葉酸エステル、アルカリホスファターゼにより開裂できるリン酸化プロドラッグからのリン酸基、カルボキシペプチダーゼAによる加水分解で開裂できる化合物、プロドラッグ活性化用のニトロレダクターゼ、β−ラクタマーゼにより開裂できるラクタム環の加水分解、ペニシリンアミダーゼにより開裂できるアミド、プロドラッグ活性化用のシトシンデアミダーゼ、β−グルコロニダーゼにより開裂できるグルコロン酸、ガラクトシダーゼにより開裂できるガラクトース、マンノシダーゼにより開裂できるマンノースを含む群から選択される、酵素により開裂できるリンカーである、ハイブリッド化合物。
− Yが、グルタル酸、ジエチレントリアミン五酢酸の二無水物、カルボジイミドなどなどの非選択的リンカー、シス−アコニット酸無水物、アシルヒドラゾン、シッフ塩基、トリチルリンカーなどの酸で開裂できるリンカー、SPDPなどのリソソームで分解できるジスルフィドリンカーを含む群から選択される、ハイブリッド化合物。
【0039】
当業者は本発明のハイブリッド化合物を用いて、このプロドラッグ変換戦略を公知のプロドラッグ理論に、さらに具体的には多様で相補的な自殺遺伝子療法に容易に適用できる。多様な自殺戦略の相乗作用は低用量または個々の薬物で最大の感受性を得ることを可能にし、形質導入されていない細胞における細胞毒性を減少させる。さらに、2つ(以上)の別々の経路を標的づける場合に自殺戦略に対する耐性の発生は大きく減少する。
【0040】
本発明は、Gb発現細胞に対する治療のための式STxB−Z(n)−Cys−Y(m)−Tのハイブリッド化合物の使用に関する。これらの細胞の一例は、これらの細胞が腫瘍細胞である場合にだけ受容体Gbを発現する腸細胞、具体的には直腸結腸細胞である。
【0041】
したがって、本発明で定義されたSTxB−Z(n)Cys−Y(m)−Tは腫瘍細胞上での受容体Gb3の過剰発現を伴う腫瘍または癌を含めた病原状態の治療手段を提供する。
【0042】
本発明は、受容体Gbを過剰発現している細胞を有する癌の診断または治療のための式STxB−Z(n)−Cys−Y(m)−Tの少なくとも1つのハイブリッド化合物を、許容できる薬学的担体と共に含有する医薬組成物にも関する。
【0043】
本明細書において医薬組成物は癌細胞または腫瘍のインビボ診断または治療のどちらかに適用され、本明細書において記載された如何なるハイブリッド化合物をも含有し得ることを理解すべきである。
【0044】
本発明の医薬組成物は、一段階で、または時間連続的に投与される1つまたは複数の成分を含むのが好都合である。例えば医薬組成物の第1の成分は有効成分としてハイブリッド化合物を含有し、このときTは酵素、例えばβ−グルコロニダーゼであり、この第1の成分は受容体Gbを過剰発現している細胞を有する腫瘍を有する患者にまず投与される。この第1の成分はそのような患者に単回投与され、その医薬組成物の第2の成分は本発明のハイブリッド化合物を含有し、このときTはプロドラッグでYはグルコロン酸であり、治療の長期効果を得るためにこの医薬組成物のこの第2の成分を患者に時間連続的に繰り返し投与できる。
【0045】
第1に腸腫瘍、さらに具体的には結腸直腸腫瘍が特異的に受容体Gbを発現し、第二に経口または直腸投与のための医薬用担体を有する医薬組成物がその医薬組成物の経口または直腸投与後に有効であることが本明細書において実証された限りでは、本発明の医薬組成物は、これらの腫瘍の治療にとって特に興味深い。
【0046】
本発明は、過剰発現している受容体Gbを有する癌細胞の死滅を誘導する方法にも関し、この方法は、本明細書において上に記載された少なくとも1つのハイブリッド化合物有効量を、癌細胞の死滅が生じるように投与することを含む。
【0047】
したがって、本発明は具体的には腫瘍のインビボ診断または癌のインビボ診断に適した手段に関する。
【0048】
本発明は受容体Gbを過剰発現する癌または腫瘍細胞のインビボ診断法にも関し、この方法は造影剤であるT部分を有する有効量のハイブリッド化合物を投与することを含む。
【0049】
本発明のハイブリッド化合物の製造法は、PCT/EP02/01627に記載されている。以下簡潔に説明する。
【0050】
このハイブリッド化合物のSTxB−Z(n)−Cys部分をコードするポリヌクレオチド配列を含む組換えベクターまたはプラスミドを用いて形質転換により得た組換え細胞系により、ハイブリッド化合物の普遍的部分、すなわちSTxB−Z(n)−Cysを製造できる。さらに具体的には、そのような分子を包含する配列は、以下の群から選択される単離されたポリヌクレオチドである。
(a)システインをコードするコドンTGTまたはコドンTGCを3’末端に有し、シガトキシンBサブユニットまたはその機能的同等物をコードするヌクレオチド配列STxBを含むポリヌクレオチド、
b)コドンTGTまたはTGCを3’末端に有し、シガトキシンBサブユニットまたはその機能的同等物をコードするヌクレオチド配列と少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
c)a)またはb)の配列と相補的なヌクレオチド配列。
【0051】
STxB−Z(n)−Cysに−Y(m)−T部分(mは0または1)を共有結合させる結合法は、技術者により記載または実施された方法またはプロセスであり得る。
【0052】
具体化できる第1の方法は、Carlssonらにより記載されたSPDPヘテロ二官能性架橋剤の使用である。しかし、SPDPは血清チオラーゼにより開裂可能であり、これは反応収率が減少する原因である。
【0053】
STxB−Z(n)−Cysペプチドを別の目的ペプチドと共有結合させる第二の方法は、P.Schelteらにより記載されたように後者にブロモアセチル官能基またはマレイミド官能基を作製することである。簡潔には、目的ペプチドを無水ブロモ酢酸で、またはマレイミド基によりそれぞれ化学的に活性化する。適当な反応条件(pH、温度、温置時間)でこれらの基はシス脱離により脱離し、それぞれ−S−S、−S−CH−、−S−CO−、または−S−NH−の共有結合を得る。
【0054】
例として、普遍的担体のC末端システインの−SH部分に結合させるポリペプチドまたはペプチドのN末端を以下の反応式にしたがって無水ブロモ酢酸で活性化する。
−CH−CO−O−CO−CH−B+NH−ペプチド→B−CH−CO−NH−ペプチド+B−CH−COOH
【0055】
ブロモアセチル官能基はペプチドのチオール基に対して高い化学選択性をもち、活性化ペプチドは以下のようにSTxB−Cysと反応できる。
STxB−Cys−SH+Br−CH−CO−NH−ペプチド→STxB−Cys−S−CH−CO−NH−ペプチド+HBr
【0056】
得られたチオエーテル結合は加水分解に対して安定である。
【0057】
本発明の普遍的担体に分子を結合させる別の方法は、図9に示すようにMBS(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)を使用することである。この結合により酵素などの大きな分子の輸送とプロセシングが可能になる。
【0058】
メタロポルフィリンなどの錯体分子の結合についての別の実施例を下の実施例2に示す。
【0059】
本発明のハイブリッド化合物、それらの使用および医薬組成物の範囲を限定することなしに、下の実施例と図は本発明の利点を例示するものである。
【0060】
実施例1:ハイブリッド化合物のインビボ診断および治療用投与のためのマウスモデルの妥当性確認
本マウスモデルは結腸直腸癌を有する。
【0061】
注射後2.5時間または24時間におけるSTxBの組織分布を検討するためのパイロット実験を実施した。STxBは腫瘍組織に広範囲に取り込まれるが、低レベルのGbしか発現しない正常腸上皮には取り込まれない。STxBは無毒性であるため、治療に対する腫瘍の増大または腫瘍の退縮の長期研究のためにこの方法を繰り返し適用できる。
【0062】
1.1:Gbは腸腫瘍において強く過剰発現する:重複分析
遺伝的に改変された結腸直腸癌マウスモデル3種を使用し、これらのモデルは本研究において事実上同じ結果を示す。われわれは、B6D2の遺伝的背景で腸上皮においてビリンプロモーターの制御下で癌遺伝子Rasを発現するトランスジェニック動物(Tgビリン−K−rasV12G(Janssenら、2002)およびC57/Bl/6の背景でApc(大腸腺腫性ポリポーシス)遺伝子座にヘテロ接合性変異対立遺伝子を保持するマウス系統Apc1638N(Foddeら、1994)を使用する。さらに、2つのトランスジェニック系統を交配させることによってダブルトランスジェニック系統RasAPCを作製した。使用した動物は注射時に6か月齢を超え、体重25〜35gである。これらのマウスを12時間の明暗サイクルで飼育し、標準飼料を給餌し、水を自由摂取させる。
【0063】
動物の屠殺後直ちに腸標本を処理する。小腸および大腸を縦に開き、周囲の正常組織と共に腫瘍部分を切り離し、凍結切片用に包埋するか(下を参照)、またはAFA(75%エタノール、20%ホルマリンおよび5%酢酸)中で24時間固定する。包埋後に厚さ3μmの切片を組織ブロックから切り出し、ワックスを除き、水でもどして日常的なH&E染色により加工する。世界保健機関の腫瘍分類にしたがって腫瘍を分類しグレード分けする(HamiltonとAaltonen、2000)。腺様構造および/または索状構造をとって配列した悪性上皮細胞が少なくとも粘膜下組織に侵入していることが認められる場合、腺癌を侵襲性とみなす。
【0064】
BlighとDyerの方法(BlighとDyer、1959)にしたがって脂質を抽出する。ヒトとマウスの腫瘍組織および隣接する非腫瘍標本の重量を測定し、水性緩衝液1mlの中で機械的にホモジェナイズし、クロロホルム:メタノール(1:2)3.75mlの中に注入する。
【0065】
混合後にクロロホルム1.25mlと水1.25mlを加える。混合後に相を分離させ、水アルコール相をクロロホルム1.5mlで1回洗う。クロロホルム相を合わせ、窒素気流下で乾燥させ、メタノール/KOH1mlの中で脂質を56℃で1時間けん化する。けん化反応物を上記のようにもう一度抽出して、クロロホルム相をメタノール:水(1:1)で1回洗浄する。単離された中性糖脂質を高性能TLC板(メルク、ダルムシュタット、ドイツ)にスポットし、クロロホルム:メタノール:水(65:25:4)で分離する。0.1%のメタクリル酸ポリイソブチルを溶かしたヘキサンに乾燥した薄層板を浸し、ブロッキング溶液中に1時間浮遊させてからSTxB(20nM)、抗STxBポリクローナル一次抗体およびホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼと結合した二次抗ウサギ抗体と共に温置する。強化化学発光または化学蛍光(Amersham Pharmacia、リトルチャルフォント、イギリス)およびPhosphorImagerを使って反応性バンドを現す。
【0066】
正常組織と腫瘍組織の間でGbの発現レベルを比較する。
【0067】
図10は、マウスおよびヒトの腫瘍によるGbの過剰発現を示す。
【0068】
1.2:Gbは腸腫瘍において強く過剰発現する:組織切片のSTxB−Cy3標識
他の点では未処理の動物の正常腸組織と腫瘍組織における内因性Gbを検出するために凍結切片のSTxB−Cy3標識を実施する。STxB−Cy3の貯蔵液(0.22mg/ml)をPBS+0.2%BSAで22倍に希釈し(終濃度10μg/ml)、室温で20分間PFAで固定する前または後の切片に落とし30分間放置する。その後、パラホルムアルデヒドで固定した切片をPBSに溶かした50mMのNHClで20分間処理し、0.1%のトリトンX−100で5分間可溶化させる。FITC−ファロイジンおよびHoechst色素を用いて上記のように対比染色する。陰窩にときにみられる弱い染色および正常組織の単一細胞での偶発的染色を除き、正常組織は全般的に陰性である。これらの単一細胞は形態の基準に基づき胃腸内分泌/リンパ細胞を構成している可能性がある。対照的に、腫瘍は強く染色する。
【0069】
1.3:経口投与したSTxBはインビボで腸腫瘍に達する
マウスの腸内の注射された流体の分布を追跡するために着色マーカーを用いたパイロット実験を実施する。トリパンブルー0.5mlを注射する。動物を45分後に屠殺し、腸管を取り出し、トリパンブルーの分布を分析する。青い着色は小腸の大部分にわたってはっきりと進行した。
【0070】
次に、動物1匹に1mg/ml溶液0.5mlの用量(動物A)またはそれよりも低い0.1mg/ml溶液0.5mlの用量(動物B)を用い、動物2匹にSTxBを注射する。長さ40mmで直径0.4mmのプラスチック製フレキシブル針(Marquat Genie Biomedical、Boissy St Leger、V010440参照)を使用する。細菌からSTxBを精製し(MallardとJohannes、2002)、注射前にPBSに対して透析する。STxBをPBSに種々の濃度となるように溶かした溶液0.5mlを麻酔なしに動物の食道に単回注射する。強制給餌後に、動物を種々の時間飼育し、標準飼料を給餌し水を自由摂取させる。
【0071】
注射後2.5時間で頚椎脱臼によりマウスを屠殺し、組織を取り出し、以後の分析に供する。組織試料を腸管に沿って採取し、各動物から腫瘍も採取する。切除した正常組織および腫瘍組織を凍結切片用に調製するか、上記のように脂質抽出し、その後の重複実験用に加工する。凍結連続切片について、STxBに対するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を用いて動物を分析する。Tissue−tek OCT(Sakura)に包埋したマウス組織を厚さ5μmの連続切片に切断し、風乾し、3%パラホルムアルデヒドで室温で20分間固定する。パラホルムアルデヒドで固定した切片をPBSに溶かした50mMのNHClで20分間処理し、0.1%のトリトンX−100で5分間可溶化する。使用した抗体は、STxBに特異的なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の100倍希釈(Falguieresら、2001)、mAb抗ビリンID2C3(Dudouetら、1987)、抗Ki67pAb(Novocastra)、抗クロモグラニンA/Bポリクローナル抗血清(ProGen、ハイデルベルグ)で、二次抗体は、Alexa488またはCy3と結合したヤギ抗マウスIgGおよびヤギ抗ウサギIgG(Jackson Immunoresearch)で、アクチンを可視化するためのTRITC−ファロイジン(シグマ)、および核を染色するHoechst33258(シグマ)である。
【0072】
組織に関する標準的な基準により腫瘍の領域を確認する。それらの領域は増殖マーカーKi67に陽性である。上皮細胞を抗ビリンモノクローナル抗体で確認する。正常な腸上皮細胞ではSTxB染色がみられない(図1)が、上皮層に散在し、胃腸内分泌細胞の形態学的特徴を示し、胃腸内分泌細胞のマーカーであるクロモグラニンA/B染色が陽性であることがわかる単一細胞の偶発的な一部に強い染色が生じる(図2)。さらに、リンパ起源(マクロファージまたは樹状細胞)の可能性がある少数の細胞が標識される。この染色パターンは十二指腸、空腸、および回腸でみられるが、結腸ではみられない。パイエル板も事実上マークされない。動物Aの膨大部周囲腺癌は非常に強く標識される(図1)。標識は腫瘍表面積全体の約50%を構成し、上皮細胞が並んだ索状構造または腺様構造にみられる。さらに、炎症の兆候を有する間質領域もときに染色され、標識された細胞はリンパ起源であると推定される。それ以外では間質は陰性である。しかし、間質でリンパ起源と推定される細胞の染色とは別に、同一動物の2つの異なる病変が陰性である。低用量のSTxBを投与された動物Bは、少数の単一細胞を除いて正常組織は陰性であるという同じ結果を事実上示す。膨大部周囲腫瘍はマークされないが、十二指腸からの第二の腫瘍は(抗ビリン染色で証明されるように)上皮起源の腫瘍細胞が標識される。しかし、染色の全般的な強度は動物A(1.0mg/mlの用量)に比べ顕著に減少する。
【0073】
1.4:24時間培養後にSTxBは腫瘍に保持される
PBSに溶かした1mg/mlSTxB溶液0.35mlを動物2匹に注射する。24時間後にマウスを屠殺する。対照組織(肝臓)および腸管(十二指腸、空腸、回腸、近位結腸)から組織試料を採取する。両動物から腫瘍を単離し、凍結切片用に調製し、抗STxBポリクローナルAbおよび抗クロモグラニンA/Bで染色する。24時間後でさえもSTxBは偶発的な細胞で依然検出でき、上皮はそれ以外は陰性であり、腫瘍では依然として非常に強く存在する(図3)。両動物の肝切片では染色はみられない(図4)。
【0074】
実施例2:MRIによるインビボ診断
2.1:ポルフィリン(造影剤)の合成とSTxB−Cysとの結合
RMI研究に通常使用される造影剤は常磁性メタロポルフィリンである。腫瘍細胞に親水性ポルフィリンを標的づけるために以下の物質を合成する。
【0075】
ポルフィリンI(図6)をLindseyの方法(Lindseyら、1987)によるピロール、パラ−2,3,4,6−テトラアセチルグルコシルオキシベンズアルデヒド(Halazyら、1990)および−ブロモ−パラ−トルアルデヒド(Wenら、1997)の縮合により高収率(31%)で調製する。塩化メチレン/アセトン(10/1、v/v)混液で溶離させた分取用シリカゲル薄層クロマトグラフィーにより化合物Iを精製し、物理学的方法でキャラクタリゼーションする。C:58.03、H:5.09、N:5.09のC8785BrN30、3HOの微量分析ではC:58.07、H4.77、N:2.74を確認し、塩化メチレン中の紫外可視スペクトルχmax(nm)、(εmmole−1cm−1)は419.5(414.3)、516(17.9)、552(10.5)、591(6.9)、647(5.9)で、CDCl中のHNMRスペクトルδ(ppm)は8.88(s、8H、ピロール)、8.26(d、2H、オルト−フェニル)、8.16(d、6H、オルト−フェノキシ)、7.82(d、2H、メタ−フェニル)、7.42(d、6H、メタ−フェノキシ)、5.50(m、9H、H「オース」)、5.33(m、3H、H「オース」)、4.88(s、2H、CHBr)、4.45(dd、3H、HC6a「オース」)、4.33(d、3H、HC6a「オース」)、4.08(m、3H、HC「オース」)、2.24(s、9H、アセチル)、2.14(s、9H、アセチル)、2.13(s、18H、アセチル)、−2.79(s、2H、NH)である。MeONa/MeOH(Zemplen、1927)を用いた処理により化合物Iから定量的に糖複合化合物II(図6)を得る。DMSO中の紫外可視スペクトルχmax(nm)、(εmmole−1cm−1)は422(373.7)、517.5(16.2)、554(11.5)、592.5(6.7)、649(6.6)、DMSOd中のHNMRスペクトルδ(ppm)は8.87(s、6H、ピロール)、8.82(s、2H、ピロール)、8.24(d、2H、オルト−フェニル、J=7.9Hz)、8.13(d、6Hオルト−フェノキシ、J=7.9Hz)、7.89(d、2H、メタ−フェニル、J=8.3Hz)、7.48(d、6H、メタ−フェノキシ、J=8Hz)、5.7(s、2H、CHBr)、5.23(d、3H、HC「オース」)、3.82(d broad、3H、HC6a「オース」)、3.54(m、3H、HC6a「オース」)、3.42(m、3H、HC「オース」)、−2.91(s、2H、NH)で、DMSOd中の13CNMRスペクトルδ(ppm)は157.4(パラ−Cフェノキシ)、141(メソ−Cフェニル)、137(パラ−Cフェニル)、135.1(メソ−Cおよびメタ−Cフェノキシ)、134.5(オルト−Cフェニル)、131(C−Hピロール)、127(メタ−Cフェニル)、120(メソ−C)、114.3(オルト−Cまたはメタ−Cフェノキシ)、100.5(C「オース」)、73.5(C「オース」)、60.7(C「オース」)、45.7(CHBr)で、MALDI−TOFではC6361BrN18の計算値1240.32に対して、M+1の実測値1241.48である。
【0076】
化合物IIまたはII−MをSTxB/Cysと結合させるために10mMホウ酸塩(pH9.0)、75mMのNaCl、50%DMSOに溶かした3mg/mlのSTxB/Cysを5倍過剰の化合物IIまたはII−Mと共に室温で2時間放置する。結合をMALDI−TOFで検証し、結合したタンパク質をゲルろ過で精製し−80℃で貯蔵する。
【0077】
2.2:STxB/Cysに対するBSAの結合とナノ粒子(または造影剤である磁性流体)との結合
100mMのHEPES(pH7.4)に溶かした20mg/ml精製ウシ血清アルブミン(BSA)を1mMのヘテロ二官能性架橋剤MBSと共に室温で30分間放置する。反応物にPBS/EDTA10mMで平衡化したゲルろ過カラムを通過させる。溶離したBSAを20mg/mlに濃縮する。PBS/EDTAに3.5mg/mlとなるように溶かしたSTxB/Cys1容を活性化BSA1容と混合し、室温で一晩放置する。抗STxB免疫精製カラムおよびMonoQ陰イオン交換カラムを通過させることにより結合生成物を精製する。ウエスタン分析によると、その生成物は事実上純粋である。ナノ粒子に対するSTxB/Cys−BSAの結合をすでに記載されたように行う(Wilhelmら、2002)。
【0078】
2.3:Gbの分布の非侵襲性画像化
原理
MRI法によるGbの分布の監視には、適当な常磁性造影剤(磁性流体またはポルフィリン)と連結した受容体特異的分子STxBから構成される化合物を投与する必要がある。この標的づけされた造影剤が定着部位に蓄積すると、水の緩和速度R1、R2、R2が局所的に変更され、T1および/またはT2および/またはT2強調画像シーケンスを用いたMRIシグナルの変更に至る。造影剤の投与前後に取得された画像の重大なシグナルの相違は、非特異的蓄積を除外できた場合のGb過剰発現領域を描写している。本プロトコールをGbを過剰発現している様々な種類の腫瘍に適用できる。下に解説する典型的な測定法は、われわれのトランスジェニックマウスモデルで発生した腸腫瘍を画像化するために最適化したものである。
【0079】
画像の取得
造影剤を投与しないスクリーニングセッションで、MRIにより腫瘍をまず検出する。高磁場ミニ画像化システムで、われわれの場合では4.7テスラの水平磁場を備えたBrukerのBiospec47/30システムを用いて画像化を行った。そのためにマウスを麻酔(好ましい麻酔薬はイソフルラン)し、背臥位でクレードルに配置した。循環している湯の入った管を動物の近くに置き、体温を保つ。動物の大きさに合わせたMRIプローブに動物を導入する。われわれが好んで用いるプローブは、自家製の溝のついたシリンダー型プローブ(d=44mm)である。R1/R2緩和速度を調整した水溶液が入った管もMRIプローブに導入し、シグナル強度の外部標準とする。運動のアーチファクトが最小となった腹部の画像を得るためには呼吸誘発を実施しなければならない。マウスに呼吸を誘発するために様々な取り組みがある。われわれが好んで用いる高感度誘発装置は自家製で、マウスの腹に設置され、誘発シグナルを適当な電子機器を介してMRIシステムに送る圧トランスデューサーと接続した可膨張性チャンバーを基本とする。肝臓と腸領域に概して及ぶ視野で高速スピンエコー法による3DのT2強調画像シーケンスにより腫瘍の検出を行う。これらの条件で腫瘍は過剰シグナル領域として現れる。解像度は概して0.1×0.1×0.5mmである。腫瘍を解剖学的マーカー、例えば胃腸接合部に対して位置決定する。次に、T1およびT2強調高速グラジエントエコーシーケンスで腫瘍を画像化する。これで第1の画像化セッションを終わる。
【0080】
造影剤を投与(好ましくは経口投与)後に同マウスについて第二画像化セッションを実施する。画像化プロトコールは第1の画像化セッションのプロトコールと正確に合致する。
【0081】
画像解析
2回の画像化セッションから得た共存するスライスで腫瘍をカバーする目的領域(ROI)を規定する。ROIの平均強度を測定し、外部標準の強度に対して標準化する。したがって、造影剤の投与後に腫瘍に検出された有意差のあるシグナル強度はGbの過剰発現を実証している。
【0082】
2.4RMIの追加実験
酸化鉄ナノ粒子性造影剤(ナノ粒子、NP)と共に培養してからエッペンドルフ試験管に入れて遠心分離して得られたHeLa細胞のペレット(約50×10個/ペレット)についてMRIを実施する。さらに詳しくは、細胞試料の調製は以下の主なステップを含む。1.細胞とNPを4℃で30分間培養する(結合)、2.洗浄(3回)、3.37℃で2時間培養(エンドサイトーシス)、4.洗浄(3回)、6.遠心分離。異なる4条件を使用した。1.未処理酸化鉄ナノ粒子と共に培養(NP)、2.BSAをコーティングしたナノ粒子と共に培養(NP−BSA)、3.標的づけした造影剤、すなわちSTxBと連結したNP−BSAと共に培養(STxB−Cys−MBS−BSA−NP)、4.Gbの発現を減少させるためにPPMPで処理した細胞を用いて(3.)と同条件。
【0083】
4.7テスラにおけるMR画像のために、細胞を試料ホルダーに配置し4つの試料を同時に画像化できるようにした。シングルスライスマルチエコーMRIシーケンス(10エコー、エコー時間4.5〜45msec)を用いてT2緩和時間(=緩和速度R2の逆数)の定量測定を実施した。
【0084】
結果を図15に示す。
【0085】
実施例3:多光子顕微鏡を用いた腫瘍画像化
方法:
ビリン−RasV12マウスから切除した腫瘍組織試料を、フェノールレッドを含まないダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)の入った画像化チャンバーに直接配置する。われわれはオリンパスIX70倒立顕微鏡を使用する。Nd−YVO4レーザー(Milennia、Spectra Physics)により励起する波長可変パルスTi:サファイアレーザー(Tsunami、Spectra Physics)は繰り返し周波数80MHzで750nmにおいて70fsのパルスを供給する。走査機能をもたない構成で内蔵のFluoview光電子倍増管(R928、浜松ホトニクス)により蛍光を検出する。
【0086】
非侵襲性精密画像化法により腸腫瘍に標的づけし、確認するために官能化STxBを使用できる
STxBと結合した場合、発蛍光団Cy3は腸腫瘍に強く蓄積し、STxBがGb3発現腫瘍に対してインビボ診断のための造影剤を送達することを実証している。生検が光学的に多光子画像を形成する能力を使ってわれわれはこれを示す。まず第1に、切除した正常組織または癌組織の十二指腸絨毛を、予め固定または染色せずに非線形自己蛍光を使って観察する(図11A〜C)。上皮細胞における核の規則的な整列(黒い部分)がはっきりと見える(図11B)。対照的に、脱分化した腫瘍試料では核は拡大し不規則である(図11C)。次に、トランスジェニックマウスに発蛍光団と結合したSTxBを強制給餌する。6時間後に腫瘍試料および正常粘膜の試料を切除し多光子画像により観察する。正常組織は暗く見えるが、腫瘍組織はインターナリゼーションしたSTxBで明るく標識される(図11D〜E)。
【0087】
結果を図11に示す。
【0088】
実施例4:光線力学療法による腫瘍の治療
方法:
グリコポルフィリンH2TPP(p−O−□−D−GluOAc)3(p−CH2Br)を0.7mMとなるようにDMSOに溶かし、等体積の5.3mg/mlのSTxB−Cysと混合する。この混合物を室温で2時間放置してからG25ゲルろ過カラムを通過させる。結合生成物を液体窒素に入れて急速冷凍し、−80℃で保存する。
【0089】
ヒト腫瘍細胞(HT29結腸癌またはHela子宮頚部腺癌)を、10%ウシ胎仔血清(FCS)を補充したダルベッコのMEMで培養する。対数増殖期の細胞を96ウェル平板に植え(0.2mL、3×10個/ウェル)、ウォータージャケット式培養器に入れ空気/CO雰囲気(5%CO)下で37℃で3時間培養する。試験化合物を最小体積で添加する。平板を3時間培養し、培地を除き、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄してから薬物を含まない新鮮培地を加える。オレンジ色のフィルター(520nmで0%T、590nm以上で80%T)を装着し2mW/cmのフルエンスを生じる自家製の「光源」を使って平板の底から可視光(2J/cm)の照射を行う。平板を3日間培養してからMTTアッセイ(Mosmann、1983)を使って、10μg/ウェルの3−[4,5−ジメチルチアゾル−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT、シグマ)と共に30分間培養して細胞の生存率を評価する。培地を除去した後に、ホルマザンの結晶をDMSO100μLに溶解させ540nmにおける吸光度をBio−Radマイクロプレートリーダー(モデル450)で測定する。生存率を未処理対照に対する%として表す。
【0090】
HeLa−Gb細胞、HT29細胞(Gbの発現は低レベル)または完全にGbの発現を阻害したHeLa細胞のいずれかを遊離ポルフィリンまたはSTxB−ポルフィリン複合体で処理した場合を比較するとSTxBによる色素の特異的標的づけを検証できる。
【0091】
結果を図12に示す。
【0092】
実施例5:ネオカルジノスタチンによる腫瘍の治療
a)ネオカルジノスタチンの精製
ホロ−NCSを日本化薬株式会社(東京、日本)から購入し、記載されたように精製する(Favaudon、1983)。1mMの酢酸で酸性にした蒸留水に対して精製ホロ−NCSを透析し、凍結乾燥し、−80℃で暗所保存する。
【0093】
ホロ−NCS調製物はポリアクリルアミドゲルを用いた等電点電気泳動(pH2.4〜4.5の勾配)で純度≧98%であり、吸光度と蛍光スペクトルからみてアポ−NCSの混入はない。NCSChromはその大部分(>90%)がNapierらの命名による「A」型である(Napierら、1981)。
【0094】
モル消衰係数、すなわちアポ−NCSではε277=14.4mM−1.cm−1、ホロ−NCSではε273=35.4mM−1.cm−1およびε340=10.9mM−1.cm−1を使って、ホロ−NCS溶液を吸収分光測定により滴定する。
【0095】
b)アポ−NCSとSTxB−Cysとの結合
100mMのHEPES(pH7.4)に溶かした20mg/mlの精製アポ−NCSを1mMのヘテロ二官能性架橋剤MBSと共に室温で30分間放置する。反応物に、10mMのEDTAを含有するPBSで平衡化したゲルろ過カラムを通過させる。溶離した活性化アポ−NCSを20mg/mlに濃縮する。PBS/EDTAに溶かした3.5mg/mlのSTxB/Cys1容を活性化アポ−NCS 1容と混合し、室温で一晩放置する。抗STxB免疫精製カラムおよびゲルろ過カラムを通過させることにより結合生成物を精製する。ウエスタン分析によると、アポ−NCS/STxBと名付けたこの結合生成物は事実上純粋である。
【0096】
c)アポ−NCS/STxB複合体へのNCSChromの取り込み
凍結乾燥ホロ−NCS粉末1μmol(乾燥重量11.3mg)を1NのHClで酸性にした氷冷無水メタノール1mlに懸濁し、2分ごとにボルテックスミキサーで撹拌しながら10分間放置し、その後遠心分離する(11000×gで10分間)。遊離NCSChromを含有する上清画分を回収し記載されたように吸収分光測定により滴定する(Favaudon、1983)。全ての手技を氷温暗所で実施する。NCSChromの抽出効率はほぼ50%である。
【0097】
PBS緩衝液(pH7.4)1mlに溶かしたアポ−NCS/STxB複合体6nmolを氷冷し、ボルテックスミキサーで撹拌しながら10倍モル濃度過剰の上記の調製によるNCSChromを混合する。おそらく酸性pHであることか、または水性媒質での遊離NCSChromの溶解度が低いことが原因で沈殿が形成する。調製物を遠心分離する(10分間、11000×g)。20mMリン酸緩衝液(pH6.4)で平衡化したセファデックスG−25の1.0×20cmカラムに上清画分を載せる。ペレットを同緩衝液500μlに再溶解し、第1の上清画分と共にカラム上でプールする。20mMリン酸緩衝液(pH6.4)で溶離を行う。全ての操作を4℃で遮光して実施する。集めた画分を吸収分光測定でチェックする。(280nmにおける吸光度から検出した)タンパク質を含有する画分は、タンパク質が結合したNCSChromに典型的な340nmを中心とする吸収バンドを示す(図7)。
【0098】
このタンパク質画分をプールし、Centricon(登録商標)遠心フィルターユニット(分画分子量3000Da)を用いて遠心分離し、Millex(登録商標)ユニット(孔径0.2μm)でろ過することで滅菌し液体窒素の温度で遮光して保存する(長期保存にはpH5.0まで下げることを薦める)。タンパク質が結合したNCSChromの340nmにおける吸光度から、再構成されたホロ−NCS/STxBの終濃度は9.8μMである。
【0099】
d)細胞毒性のアッセイ
4.5g/lグルコース、0.1g/lピルビン酸塩、10Ul/lペニシリン、0.1g/lストレプトマイシン、0.86g/lのGlutamax Iおよび10%v/vウシ胎仔血清(37℃、5%CO)を含むダルベッコ変法イーグル最小必須培地で、Gbの発現を阻害するための5μMのDL−トレオ−1−フェニル−2−ヘキサデカノイル−アミノ−3−モルホリノ−1−プロパノール(PPMP)を無添加または添加して、ヒト子宮頚部腺癌であるHeLa細胞を対数増殖している単層として維持する。添加する場合PPMPを細胞毒性アッセイ前の少なくとも6日間の前培養に導入し、薬物を洗浄するまで存在させる。
【0100】
PPMP存在下または非存在下で継代培養したHeLa細胞を並行して使用して細胞毒性のアッセイを実施する。簡潔には、800個の密度(25cmのフラスコ)で細胞を植え、処理前に4時間培養して接着させ伸展させる。播種用細胞懸濁液に細胞の小塊が混入しないように注意する。それは、細胞の小塊が存在するとクローン原性の測定に主な誤差が生じるからである。
【0101】
ホロ−NCSまたはホロ−NCS/STxBの細胞毒性を測定するために、薬物の滅菌液の一部を使用直前に解凍し、pH6.0のPBSで適当な濃度に調整し、直ちに培養フラスコに導入する。全ての実験を減光下で実施し、薬物の光分解を防止する。
【0102】
本発明者らはホロ−NCSの最大細胞毒性効果がわずか6分間以内の培養(37℃)で発生し、それ以上薬物との接触時間を延ばしても細胞死は増加しないことを観察する。この理由から、薬物に対する曝露時間は全体で15分間に限定した。
【0103】
処理後にフラスコをハンクス平衡塩類溶液で2回洗い、新鮮培地を補充し、培養器に戻し8日間培養する。コロニーをメタノールで固定し、染色し、評点する。
【0104】
e)HeLa細胞に対する細胞毒性
ホロ−NCSの細胞毒性がSTxB/Cysと結合した後でも変化しないままであることを最初に検証する。ホロ−NCSとホロ−NCS/STxBを用いたとき、細胞数の50%を死滅させる薬物濃度は0.71±0.05nMである。次に、PPMP非存在下および存在下で致死濃度のNCS(4nM)を用いて、ホロ−NCSおよびホロ−NCS/STxBの細胞毒性を0℃で検討する。この実験の原理は、ホロ−NCSは低温で不活性であることが知られているが(Kappenら、1980)、STxBはこれらの条件でも受容体と結合し飽和させることができ(Johannesら、1997)、温度を上げるとインターナリゼーションすることが期待されるというものである。
【0105】
フラスコに植えた細胞を15分間氷冷してからホロ−NCSまたはホロ−NCS/STxBを曝露する。次に、薬物(4nM)を導入し、氷冷しながらさらに15分間放置する。それから培地を吸引除去し、氷冷したハンクス平衡塩類溶液でフラスコを注意深く2回洗い薬物を除去する。最後に氷冷した無薬物培地をフラスコに補充し、室温で再び平衡化してから37℃で8日間培養する。ブランクを作り、実験期間の間に細胞を冷却することにより毒性が導入されないことを確認する。結果を図8に示す。
【0106】
ホロ−NCSに対する生存率は90%以上の範囲である。したがって、低温はホロ−NCSの細胞毒性を効果的に打ち消す。対照的に、ホロ−NCS/STxBは0℃でも活性で、細胞生存率はわずか約30%である。PPMPはホロ−NCS/STxBに顕著な耐性を誘導する。
【0107】
まとめると、本実験はSTxBが他の経路による薬物の取り込みを制限する条件で細胞内への薬物の取り込みを行うことができることを示している。細胞表面でのSTxBの受容体部位の数は限られていることから、本方法はナノモル範囲で作用する薬物で特異的に作動することが示唆される。
【0108】
本研究でわれわれは、腫瘍細胞に特異的に標的づけるベクターとしてのSTxBの使用を拡大し、われわれは結腸直腸癌のためのマウスモデルにおいてその標的づけを試験することに成功した。われわれはSTxBをマウスに経口投与できることを示し、その場合STxBは2.5時間以内に腸腫瘍に達し、対照組織(肝臓)および正常腸組織に比べて腫瘍組織に高濃度を示す。さらに、STxBは24時間培養した後でさえも腫瘍に保持される。官能化STxBは新規な診断アプローチおよび治療アプローチを試験する価値ある手段である。これは、他の方法で明らかにするのが困難であることが証明された、腸での腫瘍の形成における初期のできごとを研究するために使われている。周辺組織から腫瘍をよりよく識別するために、STxBと結合した造影剤を適用する前後にRMI実験を実施する。さらに、非侵襲性画像化法に基づく長期実験をこの官能化薬剤を用いて実施する。最後に、免疫無防備状態のヌードマウスの盲腸に同所移植したヒト腫瘍にこの造影剤を使用する。
【0109】
さらに、担体としてSTxBを用いて新規な組成物を作製し、治療用化合物をGb3発現腫瘍に標的づけることを可能にする。インビトロの腫瘍細胞、記載された動物モデルでの腫瘍、およびヒトの腫瘍に及ぼすこれらの組成物の効果を実証する。
【0110】
実施例6:プロドラッグを活性化するための酵素の送達
β−グルクロニダーゼとSTxB−Cysとの化学結合
100mMのHEPES(pH7.4)に溶かした3mg/ml精製β−グルクロニダーゼ(β−GUS)を90μMヘテロ二官能性架橋剤MBSと室温で30分間反応させる。10mMのPBS−EDTAで平衡化したPD−10カラムを通過させるゲルろ過により、形成した複合β−GUS−MBSから未反応のMBSを分離する。次にこの活性化β−GUSを2mg/mlに濃縮し、35倍モル濃度過剰のSTxB−Cysと混合し、室温で一晩放置する。ゲルろ過カラムおよび抗STxB免疫アフィニティカラムを通過させることにより、形成した複合体STxB−Cys−β−GUSを精製する。精製した結合生成物はウエスタンブロット試験によると極めて純粋で、酵素活性は化学修飾により変化していない。
【0111】
細胞へのSTxB−Cys結合β−グルクロニダーゼの標的づけ
STxB−Cys−β−GUSの輸送特性をβ−GUSおよびSTxB−Cysと比べHela細胞で検討する。カバーグラス上に増殖させたHela細胞(0.75×10)に0.5μMのSTxB−Cys、β−GUSまたはβ−GUS−STxB−Cysを加えて4℃で30分間培養する(結合ステップ)。次に氷冷した培地で細胞を洗浄し、37℃に変え40分間培養し(インターナリゼーションステップ)、4%PFAで10分間固定し、サポニンで透過性にし、表示した一次および二次抗体で染色し、共焦点顕微鏡で分析する。得られた結果を図13に示す。
【0112】
共焦点顕微鏡実験は、STxBに対する抗体とβ−GUSに対する抗体で得られた標識が完全に重複することを示す(図13)。ベクター化されていないβ−GUSでは細胞の染色は観察されない(データは示さず)。これらの結果は、STxBを用いてベクター化すると、β−グルクロニダーゼが逆輸送経路に標的づけられることを明らかに実証している。結果を図13に示す。
【0113】
細胞に関連した、ベクター化されたβ−グルクロニダーゼ活性
STxB−Cysによりβ−GUSをベクター化することが、シガトキシン受容体Gb3を発現するか発現しないHela細胞における細胞性酵素活性の増加を生じるかどうかを試験した。β−GUSによる加水分解で蛍光性4−メチルウンベリフェロン(4−MU)を生成する4−メチルウンベリフェリルグルクロニドの存在下でβ−GUS酵素アッセイを行い、4−MUの蛍光活性を蛍光測定法で測定する。
【0114】
0.5μMのSTxB−Cys−β−GUSの存在下または非存在下で4℃で30分間Hela細胞(10個)を培養する(結合ステップ)。培地で洗浄後に、温度を37℃に変え、細胞を60分間培養する(インターナリゼーションステップ)。RIPA緩衝液(PBS1×、NP40(1%)、Doc(0.5%)、SDS(0.5%))を用いて細胞溶解液を調製する。細胞でのβ−GUSの基礎活性およびβ−GUS−STxB処理、Gb3発現、Gb3非発現のHela細胞に関連するβ−GUS活性を図14にまとめる。Gb3発現HeLa細胞は、非発現細胞に比べてβ−GUS活性の有意な増加を示す。これら非発現細胞は対照細胞(基礎活性)と同レベルのβ−グルクロニダーゼ活性を有する。このことはβ−GUS活性の細胞への標的づけはSTxB/Gb3系に依存することを示している。
【0115】
総合すれば、われわれのデータはβ−GUSとSTxB−Cysとの化学結合に基づくわれわれの取り組みによってβ−GUSの酵素活性は変化せず、この化学結合がプロドラッグ戦略用に活性酵素を標的づけるために適していることを実証している。
【0116】
結果を図14に示す。
【0117】
実施例7:代替結合法
スルフヒドリル基(−SH)を介した結合に代わるのはアミノ基(−NH2)、糖質、カルボキシル(−COOH)、または水酸基(−OH)を介したカップリングである。ベクター化する化合物上の反応性基の例は、イミドエステル(第1の級アミンと反応)、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(第1の級アミンと反応)、マレイミド(スルフヒドリルと反応)、ハロアセチル(スルフヒドリルと反応)、ヒドラジン(酸化した糖質と反応)、カルボジイミド(カルボキシルと反応)である。
【0118】
野生型STxBはグリコシル化されていない。化学結合のためのグリコシル化STxBは、酵母Pichia pastorisなどのグリコシル化コンピテント細胞に、グリコシル化部位を有するSTxB変異体を発現させることにより得ることができる。アミノ基、カルボキシル、および水酸基は野生型STxBに存在し、化学結合は不活性化タンパク質を含有する不均質混合物を生じる。ある程度の部位特異的結合を得るために、適当な側鎖をもつアミノ酸をSTxBのカルボキシル末端に融合させる。一例では、アミノ酸配列EDEKKK(Glu−Asp−Glu−Lys−Lys−Lys)を野生型STxBのカルボキシル末端に融合させる。N−ヒドロキシスクシンイミドエステルで活性化されたビオチンとの反応により、タンパク質を不活性化させないでSTxB−EDEKKKにビオチンを導入することが可能になる。図16に実施例を示すようにSTxBによりベクター化されたビオチンをHeLa細胞のゴルジ装置から検出できる。
【0119】
結果を図16に示す。
【0120】
引用文献
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【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】腸腫瘍による2.5h後のSTxBの取り込みを正常組織と比べて示す図である。上:正常十二指腸。下:膨大部周辺領域の腫瘍。左:Hoechst色素で核を染色。右:抗STxB染色。
【図2】正常組織では胃腸内分泌細胞がSTxBを取り込むことを示す図である。正常十二指腸の領域を示す。Hoechstで核を染色(左上)、抗クロモグラニンA/B抗体(右上)および抗STxB抗体(左下)。右下の図は3つの染色を重ね合わせたものを示す:核(青)、クロモグラニンA/B(赤)、STxB(緑)。黄色はクロモグラニンとSTxBの共存を実証している。
【図3】腸腫瘍による24h後のSTxBの取り込みを正常組織と比べて示す図である。上:正常十二指腸。下:膨大部周辺領域の腫瘍。左:Hoechst色素で核を染色。右:抗STxB染色。
【図4】24h後でさえも対照組織(肝臓)にSTxBが存在しないことを示す図である。上:未処理対照動物。下:STxBで処理して24h放置後の動物。左:核染色(Hoechst)、右:抗STxB染色。
【図5】STxB/Cysと結合した水溶性メタロポルフィリンの構造を示す図である。
【図6】RMI(II−M)における造影剤またはPDT(II)用の抗腫瘍細胞毒性剤として機能するようにSTxB/Cysと結合した化合物の合成を示す図である。
【図7】NCSChromを取り込みセファデックスG25でろ過して過剰な非特異的に結合したNCSChromを除去した後のホロ−NCS/STxBの光学吸収スペクトルを示す図である。
【図8】(NCSChromに関して)4nMのホロ−NCSまたはホロ−NCS/STxBに対するHeLa細胞の反応に及ぼす低温(0℃)およびPPMPの効果をまとめた図である。対照としてブランクを氷で処理する。
【図9】MBS結合法を示す図である。
【図10】マウスおよびヒトの腫瘍によるGbの過剰発現を示す図である。(A)正常組織試料(Ctrl)およびRas−APCマウスから得られた腫瘍組織試料から抽出した中性GSLを使ったSTxB重複実験。(B)正常(白棒線)または腫瘍(灰色棒線)の腸組織試料におけるGb発現の定量。平均を黒棒線で示す。(C)正常ヒト結腸(Ctrl)および腫瘍組織から抽出した中性GSLを使ったSTxB重複実験。(D)ヒト結腸腫瘍によるGbの過剰発現の表示。結果を同患者から得た正常隣接組織におけるGb発現に対する腫瘍におけるGb発現の比として表す。6つの独立した実験(白棒線)および平均(黒棒線)を表す。
【図11】多光子顕微鏡を使った腫瘍の画像化を示す図である。(A、B、C)未固定、未染色組織での自己蛍光に現される未処理の腸組織の外観。(A)十二指腸の絨毛。(B)正常組織における整列した上皮細胞。(C)脱分化腫瘍における拡大した核を伴う不規則な細胞。(D、E)Cy5−STxBを用いた胃内強制投与実験。腫瘍組織は明るく標識されるが、周辺の正常組織は、(A〜C)と比べて励起様式が小さいことが原因で暗く見える。
【図12】癌細胞に対するグリコポルフィリンH2TPP(p−O−b−D−GluOAc)3(p−CH2Br)のベクター化を示す図である。上の青い線(白い四角)はGb3の発現がPPMPを用いて阻害されたHela細胞の応答を報告している。下の赤い線(白丸)は対照HeLa細胞について報告している。Gb3が発現しているHeLa細胞でのみ生存が有意に影響を受けることは、グリコ−ポルフィリンH2TPP(p−O−b−D−GluOAc)3(p−CH2Br)がSTxBを介して癌細胞へと受容体に依存して送達されることを示している。
【図13】STxBに依存してβ−GUSが癌細胞の逆ルートに標的づけられたことの分析を示す図である。STxB(赤、上)およびβ−GUS(緑、中央)に対する抗体を用いて得られた標識(黄色、下)が完全に重複することに注意。
【図14】癌細胞へのβ−GUS活性のベクター化を示す図である。β−GUS活性を任意の単位で示す。Gb3を発現しているHeLa細胞(Gb3+細胞)が非発現細胞(Gb3−細胞)に比べてβ−GUS活性の有意な増加を示すことに注意。精製β−GUSの活性を対照として示す。
【図15】4つの細胞調製物のコンピュータ定量T2マップを示す図である。NPが関連した細胞が暗く見えることに注意。コーティングしていないNPはHeLa細胞と容易に非特異的に結合する。BSAのコーティング(NP−BSA)は非特異的結合を減少させる。STxBで官能化したNP(STxB−Cys−MBS−BSA−NP)はHeLa細胞と受容体依存的に結合する。
【図16】HeLa細胞のゴルジ装置への、STxB−EDEKKKと結合したビオチンの標的づけを示す図である。製造業者の説明書(Pierce)にしたがってビオチンをSTxB−EDEKKKと結合させる。氷冷しながらHela細胞に結合させた後(30分間)、STxB−EDEKKKを37℃で45分間インターナリゼーションさせる。細胞を固定し、STxB(13C4抗体)について、およびベクター化されたビオチンを検出するためにストレプトアビジンについて二重染色する。ベクター化されたビオチンが核周辺のゴルジ装置に蓄積することに注意。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受容体Gbを過剰発現している細胞を診断または治療するための、以下の式、STxB−Z(n)−Cys−Y(m)−Tを有するハイブリッド化合物であって、
式中、
STxBは、シガトキシンBサブユニットまたはその機能的同等物であり、
Z(n)で、nは0または1であり、nが1の場合、Zはスルフヒドリル基を欠くアミノ酸基であるか、またはポリペプチドであり、
Cysは、システインのアミノ酸残基であり、
Tは、
インビボ診断用薬剤
細胞毒性剤、
プロドラッグ、または
プロドラッグを薬物に変換するための酵素、
を含む群から選択される、CysのS部分と共有結合により連結する分子であり、
Y(m)で、mは0または1であり、mが1の場合、YはTとCysの間のリンカーであり、前記リンカーは前記細胞に前記ハイブリッド化合物がインターナリゼーションした後にTを放出するために開裂できるかまたは開裂できない、ハイブリッド化合物。
【請求項2】
n=0である、請求項1に記載のハイブリッド化合物。
【請求項3】
Tが、ポルフィリン−ガドリニウム、ポルフィリン−マンガン、合成ポリマーガドリニウム、ガドリニウム−エトキシベンジル−ジエチレントリアミン五酢酸、DOPTA−ガドリニウム、磁性流体およびナノ粒子などの常磁性化合物を含む群から選択されるMRI用造影剤である、請求項1または2に記載のハイブリッド化合物。
【請求項4】
m=1であって、Tが、酵素感受性リンカーと結合したアントラサイクリン(ダウノマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン)、イダルビシン、シスプラチン、マイトマイシンC、デスアセチルビンブラスチン、メトトレキサート、N−アセチルメルファン、5−フルオロウラシル、ナイトロジェンマスタード、カリチェアミシン、マイタンシノジドなどの細胞毒性薬、
ガンシクロビルまたはアシクロビルなどのDNA複製を終止できるヌクレオチドアナログ、
アミドキシム、
を含む群から選択される、請求項1または2に記載のハイブリッド化合物。
【請求項5】
前記リンカーYが、カルボキシペプチダーゼGにより開裂できる還元および非還元葉酸エステル、アルカリホスファターゼで開裂できるリン酸化プロドラッグからのリン酸基、カルボキシペプチダーゼAにより加水分解で開裂できる化合物、プロドラッグ活性化用のニトロレダクターゼ、β−ラクタマーゼにより開裂できるラクタム環の加水分解、ペニシリンアミダーゼにより開裂できるアミド、プロドラッグ活性化用のシトシンデアミダーゼ、β−グルコロニダーゼにより開裂できるグルコロン酸、ガラクトシダーゼにより開裂できるガラクトース、マンノシダーゼにより開裂できるマンノースを含む群から選択される、酵素により開裂できるリンカーである、請求項1に記載のハイブリッド化合物。
【請求項6】
前記酵素がGbを過剰発現している細胞に内在するか、またはTが前記酵素である請求項1の第2のハイブリッド化合物と共にインターナリゼーションされる、請求項4に記載のハイブリッド化合物。
【請求項7】
Tがペプチダーゼ、HSVのチミジンキナーゼ、リパーゼ、グリコシダーゼを含む群から選択される酵素である、請求項1に記載のハイブリッド化合物。
【請求項8】
Tが光線力学療法用の光増感薬である、請求項1に記載のハイブリッド化合物。
【請求項9】
前記薬物が、Photoform(登録商標)、forean(登録商標)、ポルフィリンなどの糖複合テトラピロールマクロ環を含む群から選択される、請求項8に記載のハイブリッド化合物。
【請求項10】
Tがホロ−ネオカルジノスタチンである、請求項1に記載のハイブリッド化合物。
【請求項11】
受容体Gbを発現する腫瘍のインビボ診断用の造影剤として使用するための、請求項1から3のいずれかに記載のハイブリッド化合物。
【請求項12】
腸腫瘍のインビボ診断用の造影剤として使用するための、請求項11に記載のハイブリッド化合物。
【請求項13】
受容体Gbを過剰発現している腫瘍細胞を治療または死滅させるための薬剤として使用するための、請求項1に記載のハイブリッド化合物。
【請求項14】
腸腫瘍細胞を治療または死滅させるための薬剤として使用するための、請求項13に記載のハイブリッド化合物。
【請求項15】
薬学的に許容できる担体と共に、請求項1から10に記載の少なくとも1つのハイブリッド化合物を含有する、医薬組成物。
【請求項16】
Tがプロドラッグである第1のハイブリッド化合物と、前記プロドラッグを毒性薬物に変換するための第2の成分とを含有する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記第2の成分が請求項1に記載のハイブリッド化合物であって、Tが前記プロドラッグを毒性薬物に変換するための酵素である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記2つの化合物が同時または連続的に投与される、請求項16または17に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2006−509727(P2006−509727A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−528507(P2004−528507)
【出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2003/009308
【国際公開番号】WO2004/016148
【国際公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(503105572)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT CURIE
【出願人】(505041416)セントレ ナショナル ドゥ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク (7)
【出願人】(505041438)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サント エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (1)
【出願人】(500243886)ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー(パリ シズエム) (4)
【Fターム(参考)】