説明

腸の前処置のための運動促進剤

本発明は、運動促進剤として5−HT受容体作用薬を用いた、診断、外科手術または治療手順の前の腸前処置、特に結腸内視鏡検査手技の前の腸前処置の方法を提供する。一つの実施形態において、本発明は、有効量の1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミド(以下、化合物1)、またはこの薬学的に許容できる塩を投与することを含む、結腸の診断、外科手術または治療手順の前処置において、患者の腸を清浄にする方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、運動促進剤として5−HT受容体作用薬を用いた、診断、外科手術または治療手順の前の腸前処置、特に結腸内視鏡検査手技の前の腸前処置の方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
(先行技術)
結腸内視鏡検査は広く用いられており、結腸直腸癌のスクリーニングおよびサーベイランス、ならびに他の消化器症状の評価に有効な手技である。しかし、疑わしい病変の検出に不可欠である、結腸の可視化の成功は、適切な腸前処置に依存している。腸を糞便の残渣から完全に清浄にすることが、結腸内視鏡検査、バリウム注腸などの他の手技、または消化管もしくは他の外科手術手技の前処置において必要とされている。
【0003】
腸の清浄には数々の様々なレジメンが利用可能である。一般的に用いられている腸清浄の前処置には、浸透圧が平衡になされているポリエチレングリコール(PEG)電解質溶液、浸透圧性緩下薬(例えば、リン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、およびマンニトール)、ならびに刺激性緩下薬(例えば、ビサコジル、センナ、およびピコスルファートナトリウム)が含まれる。これらのレジメンのほとんどが、患者を手技の24時間以上前から、清澄流動食に限定し、大量の液体(少なくとも、1ガロン(米国:3.7853リットル、英国:4.546リットル))を摂取することを必要とする。
【0004】
消化管外科医が作成した最近の合意文書において、現在利用可能な前処置方法に、効果的な清浄および患者の耐容性に対する必要要件を全て理想的に満たすものはないことが示された(非特許文献1)。最適以下または不十分な結腸内視鏡検査のかなりの数が不適切な腸前処置に起因し得ることが見出されている(非特許文献2;非特許文献3)。現在用いられている前処置レジメンに対する患者のコンプライアンスが低いことが、不十分な前処置の一般的原因である(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Wexnerら、(2007年)Dis Colon Rectum、49巻、792〜809頁
【非特許文献2】Belseyら、(2007年)Aliment Pharmacol Ther、25巻、373〜384頁
【非特許文献3】Barkunら、(2006年)Can J Gastroenterol、20巻(11)、699〜710頁
【非特許文献4】Barkunら;Deleggeら、(2005年)Aliment Pharmacol Ther、21巻、1491〜1495頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、患者のコンプライアンスを改善するために、現在利用可能な手技よりも患者が耐えられる、診断または外科手術の手技の前に腸を清浄にする方法が必要とされている。完全な排便をもたらし、現在用いられている手法よりも速やかに実施する方法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、有効量の1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミド(以下、化合物1)、またはこの薬学的に許容できる塩を投与することを含む、結腸の診断、外科手術または治療手順の前処置において、患者の腸を清浄にする方法を提供する。
【0008】
別の態様において、本発明は、有効量の化合物1および十分量の澄明な液体を投与することを含む、腸の前処置方法を提供する。さらに別の態様において、本発明の腸前処置の方法は、有効量の化合物1、ならびに浸透物質および刺激性緩下薬から選択される有効量の1つまたは複数の緩下薬を投与することを含む。
【0009】
5−HT受容体作用薬である、化学構造
【0010】
【化1】

を有する1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミドを、US2005/0228014に開示する。
【0011】
本発明者らは、化合物1を健常対象に投与した場合、速やかで効果的な運動促進効果があることを発見した。したがって、本化合物は、現在利用可能な手技よりも患者が耐えられる腸前処置の方法を提供することが予想される。液体のレジメンを本発明の化合物と組み合わせて用いた場合、液体のレジメンは伝統的な液体のレジメンよりも要求が少ないことが予想される。あるいは本発明の化合物は、速やかな腸の排便をもたらすことによって腸前処置のレジメンの有効な補助であることが予想される。本発明の化合物を使用すれば、現在のレジメンよりも投与がずっと容易である、より速やかで完全な排便をもたらし、したがって患者のより良好なコンプライアンスを促すことが予想される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本発明の方法、化合物、および組成物を記載する場合、別段の指摘がなければ、以下の語は以下の意味を有する。
【0013】
「有効量」の語は、患者に投与した場合に記載する効果を生成するのに十分な量を意味する。
【0014】
「腸(bowel)」は腸(intestine)の同義語であり、小腸および大腸を包含し、大腸は、盲腸、上行結腸、横行結腸、および下行結腸、ならびに直腸を含む。本明細書で用いられる「腸清浄」または同等に「腸の清浄」または「腸前処置(prep)」の語は、当業者が理解するように、「腸の前処置」、「腸の排便」、「結腸の清浄」、「結腸内視鏡の清浄」、「結腸瀉下」、および類似の語を包含する。
【0015】
本明細書で用いられる「浸透物質」の語は、等張溶液における硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、および塩化カリウムの混合物である、ポリエチレングリコール(PEG)電解質溶液を含む。高分子の浸透圧効果の結果として、電解質溶液が結腸において保持され、そこで結腸清浄物質として作用する。PEG電解質溶液は、例えば、Colyte(登録商標)およびGoLYTELY(登録商標)として、NuLYTELY(登録商標)およびTriLyte(登録商標)などの硫酸を含まない製剤において、ならびにHalflytely(登録商標)、およびMiralax(登録商標)などの低体積の製剤において米国において市販されている。風味を改善するために香味物質が含まれることがある。
【0016】
「浸透物質」の語には、リン酸ナトリウムおよびクエン酸マグネシウムなどの浸透圧性緩下薬も含まれる。これらの物質は、腸管腔中に液体を浸透圧的に引き込むことによってその瀉下作用を発揮する。リン酸ナトリウムが、水溶液、例えば、Fleet(登録商標)Phopho Sodaとして、また錠剤の形態のVisicol(登録商標)として提供される。さらに、グリセリン、ソルビトール、およびマンニトールなどの物質が、浸透物質の語に含まれる。
【0017】
「刺激性緩下薬」の語には、主に腸壁の平滑筋の活性を増強することによって緩下作用を生成する物質が含まれる。さらに、これらは腸の水分含量を増大することもある。刺激性緩下薬には、数ある中でも、ビサコジル、例えば、Dulcolax(登録商標)、Fleet(登録商標)Bisacodyl、およびDulcogenの商標の下に市販されている、吸収の劣るジフェニルメタンであるビサコジルが含まれる。刺激性緩下薬には、結腸の細菌によって活性化されるアントラキノン誘導体(グリコシドおよびセンノシド)を含むセンナ緩下薬(例えば、X−Prep(登録商標)およびSenakotとして入手可能である)、ならびに最も一般的にはPicolax(登録商標)としてクエン酸マグネシウムと組み合わせて提供されるピコスルファートナトリウム、ならびにフェノールフタレインおよびヒマシ油が含まれる。
【0018】
「薬学的に許容できる塩」の語は、患者への投与に許容できる酸または塩基から調製される塩を意味する。このような塩は、薬学的に許容できる無機酸または有機酸に、および薬学的に許容できる塩基に由来することができる。典型的には、本発明の化合物の薬学的に許容できる塩は酸から調製される。
【0019】
薬学的に許容できる酸に由来する塩には、それだけには限定されないが、酢酸、アジピン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、臭化水素酸、塩酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、シュウ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、キシナホ酸(1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸)、ナフタレン−1,5−二スルホン酸などが含まれる。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる、単数形である「1つの(a)」、「1つの(an)」、「1つの(one)」、および「その(the)」は、内容が他の方法で明らかに指示されなければ、複数の対象物も含むことがあることに留意しなければならない。
【0021】
化学命名法
本発明で用いられる運動促進剤(化合物1)は、市販されているAutoNomソフトウエア(MDL Information Systems、GmbH、フランクフルト、ドイツ)を用いて1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミドと命名される。(1S,3R,5R)の命名は、二環式環系に関連する結合の相対的な配向を記載するものである。あるいは、この化合物は、N−[(3−エンド)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル]−1−(1−メチルエチル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3−キノリンカルボキサミドと表される。
【0022】
合成手順
化合物1は、以下の実施例に記載する手順を用いて、または本発明の譲受人に譲渡されたUS2005/0228014およびUS2006/0183901に記載されている手順を用いて、容易に入手できる出発材料から調製することができる。
【0023】
薬剤組成物
本発明の運動促進剤は、典型的には、薬剤組成物の形態で患者に投与する。このような薬剤組成物は、それだけには限定されないが、経口、直腸、膣、経鼻、吸入、局所(経皮を含む)、および非経口の投与様式を含めた、あらゆる許容できる投与経路によって投与することができる。典型的には、このような薬剤組成物は、約1重量%から約70重量%までの、例えば約5重量%から約60重量%までの運動促進剤を含む、約0.1重量%から約95重量%までの運動促進剤を含む。
【0024】
あらゆる従来の担体または賦形剤を、運動促進剤を含む薬剤組成物において用いることができる。特定の担体もしくは賦形剤、または担体もしくは賦形剤の組合せの選択は、意図する投与様式に依存する。特定の投与様式に適する薬剤組成物の調製は、薬剤の技術分野の技術者の範囲内に十分ある。従来の製剤技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(2000年);ならびにH.C. Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(1999年)に記載されている。
【0025】
薬学的に許容できる担体として働くことができる材料の代表例には、それだけには限定されないが、糖、デンプン、セルロース、粉末トラガカント、バクガ、ゼラチン、タルク、カカオ脂、および坐剤用ロウ、油、グリコール、多価アルコール、寒天、緩衝物質、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンゲル溶液、エチルアルコール、リン酸緩衝溶液、および薬剤組成物で用いられる他の非毒性の相容性の物質が含まれる。
【0026】
本発明の運動促進剤を含む薬剤組成物は、単位剤形において包装されているのが好ましい。「単位剤形」の語は、患者に投薬するのに適する物理的に分離している単位を意味し、すなわち、各単位が、単独で、または1つもしくは複数のさらなる単位と組合せのいずれかで望ましい治療効果を生成するように計算されている予め決定された量の有効物質を含んでいる。例えば、このような単位剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤などであってよい。
【0027】
好ましくは、本発明の運動促進剤を、経口投与に適する薬剤組成物において提供する。このような薬剤組成物は、各々が有効成分として予め決定された量の本発明の化合物を含む、カプセル剤、錠剤、丸剤、トローチ剤、カシェ剤、ドラジェ剤、散剤、顆粒剤の形態において、または水性もしくは非水性の液体における溶液剤もしくは懸濁液剤として、または水中油型もしくは油中水型の液体乳剤として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、などの形態であってよい。
【0028】
固体剤形(すなわち、カプセル剤、錠剤、丸剤などとして)における経口投与を意図する場合、薬剤組成物は、典型的には、運動促進剤、および1つまたは複数の薬学的に許容できる担体、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムを含む。任意選択で、または代替的に、このような固体剤形は、充填剤または増量剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、液体遅延剤、吸収促進剤、浸潤剤、吸収剤、滑沢剤、着色剤、および緩衝剤も含むことができる。放出剤、浸潤剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤、保存剤、および抗酸化剤も存在していてよい。
【0029】
運動促進剤は、粉末化した形態の化合物1または薬学的に許容できるその塩、および任意選択でラクトースまたはデンプンなどの粉末化した賦形剤を含むカプセルまたはカートリッジ(例えば、ゼラチンから作成されている)の形態において提供してもよい。さらに、本発明の物質は、液体剤形において、例えば、薬学的に許容できる乳剤、マイクロエマルジョン、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、またはエリキシル剤として提供してもよい。
【0030】
本発明の方法および前処置
本発明は、有効量の運動促進剤1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミド、または薬学的に許容できるその塩の有効量を患者に投与することを含む、結腸の診断、外科手術または治療手順の前処置において、患者の腸を清浄にする方法を提供する。
【0031】
別の態様において、本発明は、有効量の運動促進剤1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミド、および十分量の澄明な液体を投与することを含む、患者の腸を清浄にする方法を提供する。
【0032】
本発明は、有効量の運動促進剤1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミドの有効量、ならびに浸透物質および刺激性緩下薬から選択される有効量の1つまたは複数の緩下薬を投与することを含む、患者の腸を清浄にする方法をさらに提供する。
【0033】
本発明の方法において用いられる運動促進剤の投与量は、典型的には、あるとすれば本発明の運動促進剤と組み合わせて用いられる特定の作用物質またはレジメンの性質、ならびに個々の患者の年齢、体重、および反応を含めた関連の状況を考慮に入れて医師が決定する。
【0034】
腸前処置に適する運動促進剤の投与量は、体重1kgあたり約0.14mgから約1.4mgまでの範囲と予想される。平均70kgのヒトでは、これは本発明の運動促進剤約20mgと約70mgの間、および約40mgと約60mgの間を含めた、約10mgから約100mgまでの量になる。
【0035】
本発明の方法において用いるための適切な澄明な液体には、それだけには限定されないが、水、チキンスープ、フルーツジュース(例えば、リンゴジュース、ホワイトクランベリー、またはホワイトグレープジュース)、レモネード、フルーツ風味の飲料(例えば、ゲータレード)、およびコーヒーまたは紅茶(クリームなし)が含まれる。十分量の澄明な液体は、約1リットルと約2リットルの間を含めた、約0.5リットルと約2.5リットルの間と予想される。例えば、手技の前夜、患者に固形食物を控え、水以外の澄明な液体約0.5リットルおよび水約1リットルを摂取するように指示する。
【0036】
本発明の特定の態様において、本方法は、1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミド、または薬学的に許容できるその塩約10mgと約100mgの間、ならびに任意選択で適切な量の澄明な液体、または浸透物質および刺激性緩下薬から選択される有効量の1つまたは複数の作用物質を患者に投与することを含む。
【0037】
本発明の特定の態様において、運動促進剤は1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミドの塩酸塩である。
【0038】
本発明の別の特定の態様において、浸透物質はPEG電解質溶液である。典型的なPEG電解質溶液は1リットルあたり以下の構成成分を含んでいる:ポリエチレングリコール3350約60グラム、塩化ナトリウム約1.46グラム、塩化カリウム約0.745グラム、炭酸水素ナトリウム約1.68グラム、硫酸ナトリウム約5.68グラム。有効量のPEG電解質溶液は、約2リットルから約4リットルまでの範囲であると予想される。
【0039】
本発明の代替の態様において、浸透物質はリン酸ナトリウム溶液またはリン酸ナトリウムの錠剤である。水性の調製物として提供されても、または錠剤の形態において提供されても、リン酸ナトリウムの有効投与量は、典型的にはリン酸ナトリウム約40グラムから約60グラムまでの範囲である。
【0040】
特定の態様において、刺激性緩下薬はビサコジルである。典型的には、ビサコジルの有効投与量は各5ミリグラムの錠剤4個である。
【0041】
本発明の運動促進剤を用いた腸前処置の例示のレジメンには、それだけには限定されないが、以下が含まれ、この場合化合物1は遊離の塩基として、または代替的に薬学的に許容できる塩として提供され得る。
レジメン1:化合物1(50mg)
レジメン2:化合物1(70mg)
レジメン3:化合物1(40mg);澄明な液体(1リットル)
レジメン4:化合物1(20mg);澄明な液体(2リットル)
レジメン5:化合物1(10mg);リン酸ナトリウム(6錠、合計30グラム)ビサコジル(4錠、合計20ミリグラム)
レジメン6:化合物1(30mg);リン酸ナトリウム(6錠、合計30グラム)ビサコジル(4錠、合計20ミリグラム)
レジメン7:化合物1(50mg);リン酸ナトリウム(6錠、合計30グラム)ビサコジル(4錠、合計20ミリグラム)
レジメン8:化合物1(70mg);リン酸ナトリウム(6錠、合計30グラム)ビサコジル(4錠、合計20ミリグラム)
レジメン9:化合物1(50mg);リン酸ナトリウム(6錠、合計30グラム)
レジメン10:化合物1(70mg);リン酸ナトリウム(6錠、合計30グラム)
レジメン11:化合物1(30mg);PEG電解質溶液(2リットル)ビサコジル(4錠、合計20ミリグラム)
レジメン12:化合物1(50mg);PEG電解質溶液(2リットル)ビサコジル(4錠、合計20ミリグラム)
レジメン13:化合物1(70mg);ビサコジル(4錠、合計20ミリグラム)
現在の前処置方法の簡便な使用を促進するために、本発明は、本発明の運動促進薬の剤形、すなわち錠剤またはカプセル剤を含む市販に適する治療用パッケージ、および澄明な液体の摂取に対する1セットの説明書をさらに提供する。さらに、本発明は、本発明の運動促進剤の剤形および浸透物質の剤形を含む、市販用のパッケージを提供する。浸透物質は、ある量の水に溶解または懸濁すべき粉末として、小体積の溶液として、または錠剤の形態において、簡便な形式において提供することができる。治療用パッケージは、典型的には固体の経口用剤形において提供される、刺激性緩下薬も含むことができる。別の代替において、治療用包装は、本発明の運動促進剤の剤形および刺激性緩下薬を含む。
【実施例】
【0042】
化学実施例
以下の合成の実施例は、本発明を説明するために提供するものであり、決して本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。以下の実施例において、下記の略語は別段の指摘がなければ下記の意味を有する。以下に定義しない略語は、一般に受け入れられている意味を有する。
【0043】
Boc = tert−ブトキシカルボニル
(Boc)O = ジ−tert−ブチルジカーボネート
DCM = ジクロロメタン
DMF = N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO = ジメチルスルホキシド
EtOAc = 酢酸エチル
mCPBA = m−クロロ安息香酸
MeCN = アセトニトリル
MTBE = tert−ブチルメチルエーテル
PyBop = ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノ−ホスホニウム−ヘキサフルオロリン酸
= リテンションファクター
RT = 室温
TFA = トリフルオロ酢酸
THF = テトラヒドロフラン。
【0044】
試薬(2級アミンを含む)および溶剤は、市場の供給業者(Aldrich、Fluka、Sigmaなど)から購入し、さらなる精製なしに用いた。別段の記載がなければ、反応は窒素雰囲気下で行った。反応混合物の進行を、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析用高速液体クロマトグラフィー(分析用HPLC)、および質量分析によってモニターし、それらの詳細は下記に、および反応の詳しい実施例に別々に記載した。反応混合物は、各反応において詳しく記載したように作成し、一般には、抽出、ならびに温度依存の、および溶媒依存の結晶化、および沈澱などの他の精製方法によって精製した。さらに、反応混合物は、プレパラティブHPLCによってルーチン的に精製した。反応生成物のキャラクタリゼーションは、質量分析およびH−NMR分光分析によってルーチン的に行った。NMR測定では、試料を重水素化した溶媒(CDOD、CDCl、またはDMSO−d)に溶解し、標準の観察条件下、Varian Gemini2000機器(300MHz)でH−NMRスペクトルを得た。化合物の質量分析同定は、エレクトロスプレーイオン化法(ESMS)によって、Applied Biosystems(Foster City、CA)モデルAPI 150EX機器またはAgilient(Palo Alto、CA)モデル1100LC/MSD機器で行った。水分含量は、Brinkmann(Westbury、NY)Metrohm Karl Fischer Model 813クーロメーターを用いてカールフィッシャー滴定によって決定した。
【0045】
調製1:(1S,3R,5R)−3−アミノ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステル
a.8−ベンジル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オンの調製
2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン(82.2g、0.622mol)の均一な水溶液(170mL)に撹拌しながら、濃塩酸(30mL)を加えた。0℃に冷却した(氷浴)別のフラスコ中、ベンジルアミン(100g、0.933mol)の水溶液(350mL)に、濃塩酸(92mL)をゆっくりと加えた。2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン溶液を約20分間撹拌し、水(250mL)で希釈し、次いでベンジルアミン溶液を加え、その後1,3−アセトンジカルボン酸(100g、0.684mol)の水溶液(400mL)を加え、次いでリン酸水素ナトリウム(44g、0.31mol)の水溶液(200mL)を加えた。pHを、40%NaOHを用いてpH1からpH〜4.5に調節した。得られた、濁った淡黄色の溶液を一夜撹拌した。次いで、溶液を、50%塩酸を用いてpH7.5からpH3に酸性化し、85℃に加熱し、2時間撹拌した。溶液を室温に冷却し、40%NaOHを用いてpH12に塩基性化し、ジクロロメタンで抽出した(3×500mL)。有機層を併せ、食塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、減圧下で濃縮して粘稠性の褐色油状の粗製の表題中間生成物を生成した。
【0046】
0℃で、粗製中間生成物のメタノール溶液(1000mL)に、ジ−tert−ブチルジカーボネート(74.6g、0.342mol)を加えた。溶液を室温に温め、一夜撹拌した。メタノールを減圧下で除去し、得られた油をジクロロメタン(1000mL)に溶解した。中間生成物を1M HPO(1000mL)中に抽出し、ジクロロメタンで洗浄した(3×250mL)。水層を、NaOH水溶液を用いてpH12に塩基性化し、ジクロロメタンで抽出した(3×500mL)。有機層を併せ、乾燥し(MgSO)、ろ過し、減圧下で濃縮して粘稠性の明褐色油状の表題中間生成物を生成した。H−NMR (CDCl)δ(ppm)7.5−7.2(m,5H,C),3.7(s,2H,CHPh),3.45(広幅s,2H,CH−NBn),2.7−2.6(dd,2H,CHCO),2.2−2.1(dd,2H,CHCO),2.1−2.0(m,2H,CHCH),1.6(m,2H,CHCH).(m/z):[M+H]1417NOの計算値216.14;実測値,216.0。
【0047】
b.3−オキソ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
8−ベンジル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン(75g、0.348mol)のEtOAc溶液(300mL)に、ジ−tert−ブチルジカーボネート(83.6g、0.383mol、1.1当量)のEtOAc溶液(300mL)を加えた。得られた溶液およびすすぎ液(100mL EtOAc)を、窒素流動下、水酸化パラジウム(Pd20重量%、無水ベース、炭素上、水で〜50%に湿潤したもの;例えば、パールマン触媒)23gを含む1Lパール水素化装置容器に加えた。反応容器を脱気し(真空とNを5回交替する)、Hガス60psiに加圧する。反応溶液を2日間かき混ぜ、シリカ薄層クロマトグラフィーによってモニターして反応が完了するまで60psiのH加圧を持続するのに必要とされるHを再充填した。次いで、黒色溶液をCelite(登録商標)のパッドを通してろ過し、減圧下で濃縮して、粘稠性の黄色から橙色油状の表題中間生成物を定量的に得た。これを、さらなる処理なしに次のステップにおいて用いた。H NMR (CDCl)δ (ppm)4.5(広幅,2H,CH−NBoc),2.7(広幅,2H,CHCO),2.4−2.3(dd,2H,CHCH),2.1(広幅m,2H,CHCO),1.7−1.6(dd,2H,CHCH),1.5(s,9H,(CHCOCON))。
【0048】
c.(1S,3R,5R)−3−アミノ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
メカニカルスターラーによって撹拌しながら、前のステップの生成物(75.4g、0.335mol)のメタノール溶液(1L)に、N流動下、ギ酸アンモニウム(422.5g、6.7mol)、水(115mL)、および活性炭上のパラジウム65g(10%、無水ベース、水で〜50%に浸潤したもの;DegussaタイプE101NE/W)を加えた。24時間後および48時間後、各時間に、さらなる部分のギ酸アンモニウム(132g、2.1mol)を加えた。分析用HPLCによってモニターして反応の進行が止まったら、Celite(登録商標)(>500g)を加え、得られた濃厚懸濁液をろ過し、次いで回収した固体をメタノール(〜500mL)ですすいだ。ろ液を併せ、メタノールが全て除去されるまで減圧下で濃縮した。次いで、得られた、濁った二相性の溶液を1Mリン酸で希釈してpH2の〜1.5から2.0Lの最終体積にし、ジクロロメタンで洗浄した(3×700mL)。40%NaOH水溶液を用いて水層をpH12に塩基性化し、ジクロロメタンで抽出した(3×700mL)。有機層を併せ、MgSO上で乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーションによって濃縮し、次いで高真空で、白色から淡黄色固体の、一般にはN−Boc−endo−3−アミノトロパンである表題中間生成物52g(70%)を残した。生成物のendoアミンのexoアミンに対する異性体比は、H−NMR分析に基づいて>99であった(分析用HPLCによって純度>96%)。H NMR(CDCl)δ(ppm)4.2−4.0(広幅d,2H,CHNBoc),3.25(t,1H,CHNH),2.1−2.05(m,4H),1.9(m,2H),1.4(s,9H,(CHOCON),1.2−1.1(広幅,2H).(m/z):[M+H]1222の計算値227.18;実測値,227.2.分析用HPLC(イソクラティック法;5分かけて2:98(A:B)から90:10(A:B):保持時間2.14分)。
【0049】
調製2:1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸
2−アミノフェニルメタノール(255.2g、2.07mol)および酢酸(3.56mL、62mmol)の懸濁水溶液(2L)を撹拌したものに、室温で、最初にアセトン(228.2mL、3.11mol)を加えた。4時間後、懸濁液を0℃に冷却し、さらなる2.5時間撹拌し、次いでろ過した。固体を回収し、水で洗浄し、湿った固体を冷却し、凍結乾燥によって乾燥して、オフホワイト固体の2,2−ジメチル−1,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,3]オキサジン(332.2g、98%)を得た。H NMR (CDCl;300MHz):1.48(s,6H,C(CH),4.00(bs,1H,NH),4.86(s,2H,CH),6.66(d,1H,ArH),6.81(t,1H,ArH),6.96(d,1H,ArH),7.10(t,1H,ArH)。
【0050】
2,2−ジメチル−1,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,3]オキサジン(125g、0.77mol)のTHF(1L)溶液を、シンチレーション漏斗を通してろ過し、次いで2.5時間かけて、0℃の1.0M LiAlHのTHF溶液(800mL)の撹拌しているものにさらなる漏斗を通して滴加した。0℃で、1.5時間かけてNaSO・10HO(110g)をゆっくりと部分ごとに加えることによって反応をクエンチした。反応混合物を一夜撹拌し、ろ過し、固体の塩をTHFで徹底的に洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮して、黄色油状の2−イソプロピルアミノフェニルメタノール(120g、95%)を得た。H NMR(CDCl;300MHz):1.24(d,6H,CH(CH),3.15(bs,1H,OH),3.61(七重線,1H,CH(CH),4.57(s,2H,CH),6.59(t,1H,ArH),6.65(d,1H,ArH),6.99(d,1H,ArH),7.15(t,1H,ArH).
二酸化マンガン(85%、182.6g、1.79mol)を、2−イソプロピルアミノフェニルメタノール(118g、0.71mol)のトルエン溶液(800mL)の撹拌しているものに加え、反応混合物を4時間、117℃に加熱した。反応混合物を、一夜、室温に放冷し、次いで、トルエンで溶出したCeliteのパッドを通してろ過した。ろ液を減圧下で濃縮して、橙色油状の2−イソプロピルアミノベンズアルデヒド(105g、90%)を得た。H NMR(CDCl;300MHz):1.28(d,6H,CH(CH),3.76(七重線,1H,CH(CH),6.65(t,1H,ArH),6.69(d,1H,ArH),7.37(d,1H,ArH),7.44(t,1H,ArH),9.79(s,1H,CHO)。
【0051】
一般にはメルドラム酸である2,2−ジメチル−[1,3]ジオキサン−4,6−ジオン(166.9g、1.16mol)を、0℃で、2−イソプロピルアミノベンズアルデヒド(105g、0.64mol)、酢酸(73.6mL、1.29mol)、およびエチレンジアミン(43.0mL、0.64mol)のメタノール溶液(1L)の撹拌しているものに加えた。反応混合物を0℃で1時間、次いで室温で一夜撹拌した。得られた懸濁液をろ過し、固体をメタノールで洗浄し、回収して、オフホワイト固体の表題中間生成物である1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸(146g、98%)を得た。H NMR(CDCl;300MHz):1.72(d,6H,CH(CH),5.50(bs,1H,CH(CH),7.44(t,1H,ArH),7.75−7.77(m,2H,ArH),7.82(d,1H,ArH),8.89(s,1H,CH)。
【0052】
実施例1:1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボキシル酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミドの合成
a.(1S,3R,5R)−3−[1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボニル]アミノ]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
3Lフラスコ中、1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸(112.4g、0.486mol、1.1当量)をトルエン(1L)に懸濁した。混合物を85℃に加熱し、70分かけて塩化チオニル(86.74g、0.729mol)を滴加した。混合物を撹拌しながら95℃で1.5時間加熱し、次いで室温に放冷した。
【0053】
別の12Lフラスコ中、(1S,3R,5R)−3−アミノ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステル(100.0g、0.442mol、1当量)をトルエン(1L)に懸濁し、3M NaOH(4当量)を加えた。混合物を室温で10分間撹拌し、次いで約5℃に冷却した。酸塩化物溶液を、40分かけて撹拌しながら内部温度を10度未満に保ってゆっくりと加えた。混合物を、3〜5℃で30分間撹拌し、一夜、層を分離させた。トルエン層(〜2.5L)を回収し、ロータリーエバポレーションによって約半分(〜1.2L)に濃縮し、次のステップにおいてそのまま用いた。
【0054】
b.1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミドの調製
前のステップにおいて調製したトルエン溶液(〜1.2L)に、20℃で撹拌しながら20分かけてトリフルオロ酢酸(200mL)を加えた。混合物を20℃で2時間撹拌した。水(1.55L)を加え、混合物を20℃で30分間撹拌した。30分後、混合物は3層に分離した。粘稠性の褐色油状である最下層(〜350mL)に粗製中間生成物が含まれていた。
【0055】
MTBE(2.8L)を充填した12Lフラスコ中、1〜2℃で撹拌しながら1時間かけて粗製褐色油を加えた。懸濁液を同じ温度で1時間撹拌し、次いでろ過した。ろ液をMTBEで洗浄し(2×300mL)、4日間室温で真空下乾燥して、淡黄色粉末の表題中間生成物(163.3g)のトリフルオロ酢酸塩を得た。
【0056】
c.N−メチル−N−[(S)−2−オキシラン−2−イルメチル]メタンスルホンアミドの調製
12Lフラスコに水(1L)を充填し、その後NaOHを加えた(50%水溶液、146.8g、1.835mol)。NaOHを含んでいるビーカーを水で洗浄し(2×500mL)、洗浄物をフラスコに加えた。混合物を室温で10分間撹拌し、〜8℃に冷却した。水(500mL)中(N−メチル)メタンスルホンアミド(200.2g、1.835mol)を5分かけて加えた。混合物を〜4℃で1時間撹拌し、(S)−2−クロロメチルオキシラン(339.6g、3.67mol)を加えた。混合物を3〜4℃で20時間撹拌した。ジクロロメタン(2L)を加え、混合物を5〜10℃で30分間撹拌した。2層を10分かけて分離させ、回収した。有機層(〜2.5L)を12Lフラスコに戻し、1M HPO(800mL)および食塩水(800mL)で洗浄した。ジクロロメタンをロータリーエバポレーションによって除去した。粗製生成物にトルエン(400mL)を加え、ロータリーエバポレーションによって除去した。さらなる3サイクルのトルエンプロセスの後、表題中間生成物(228.2g)を得、これをさらなる精製なしに次のステップにおいて用いた。
【0057】
d.1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミドの合成
3Lフラスコ中、1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミドトリフルオロ酢酸塩(105.0g、0.232mol)を無水エタノール(400mL)に懸濁した。この懸濁液に、室温でNaOH(50%水溶液、0.243mol、1.05当量)を無水エタノール(100mL)に溶解したものを加えた。このNaOHを含んでいるビーカーをエタノールで洗浄し(2×50mL)、洗浄物を反応混合物に加えた。30分撹拌後、N−メチル−N−[(S)−2−オキシラン−2−イルメチル]メタンスルホンアミド(62.0g、1.5当量)の無水エタノール溶液(100mL)を加えた。混合物を2時間還流し、室温に冷却し、表題化合物の種結晶を加えた。約5分撹拌後、白色固体が形成した。混合物を3〜5℃に冷却し、2時間撹拌した。白色固体をろ過し、湿潤したケークを冷無水エタノールで洗浄した(3×50mL)。固体を、30℃で60時間、真空下で乾燥させて表題化合物を得た(93.8g、カールフィッシャー法による水分含量2.03%)。H NMR (CDCl)δ ppm10.52(d,1H),8.83(s,1H),7.75(d,2H),7.64−7.60(m,2H),7.28−7.26m,1H),4.33−4.26(m,2H),3.78−3.75(m,1H),3.27−3.20(m,4H),3.01(s,3H),2.88(s,3H),2.58−2.53(m,1H),2.30−1.81(m,11H),1.68(d,6H)。
【0058】
種結晶は、小規模のこの実施例の方法による表題化合物の以前の調製物から得たが、その場合結晶化は自発的に起きた。
【0059】
実施例2:1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミドの塩酸塩結晶の合成
1Lフラスコ中、1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミド(34.7g、0.069mol)を無水エタノール(210mL)に懸濁した。濃塩酸(1.1当量)を、室温で撹拌しながら加えた。混合物を、30分間還流して撹拌し、室温に冷却し、2時間撹拌した。固体をろ過し、湿潤したケークを冷無水エタノールで洗浄した(3×50mL)。固体を、30℃で48時間、真空下で乾燥して表題化合物を得た(34.5g、収率93.7%、カールフィッシャー法による水分含量0.13%)。
【0060】
臨床実施例
健常対象における腸運動の開始の測定
実施例1および2の方法にしたがって調製した、本発明の運動促進剤である1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミド塩酸塩最高10ミリグラム(遊離塩基等量)をゼラチンカプセルに充填した。
【0061】
対象に、増大する投与量の運動促進剤(0.1から70mg)またはプラセボを、対象10人の2パネルに交代で、および対象10人の第3のパネルに毎週投与した。便通日記カードを用いて、対象を、安全性および運動促進効果の証拠に対してモニターした。各々の腸運動の時間および硬さ(ブリストルスコア)を記録した。最初の腸運動までの時間の中間値、および投与期間後最初の24時間における腸運動の数の平均値は、表1に示すように投与量依存の効果を表した。
【0062】
【表1】

プラセボに対して、ブリストルスコアの平均(1[硬ペレット]で開始し、最大スコア7[液体]の、糞便の硬さの尺度)は3.2(0.7)であり、20〜70mgで5.4〜6.0のプラトーまで投与量依存性に増大し、例えば、50mgでは平均スコアは5.6(0.9)であり、よりやわらかい結腸の動きを示していた。効果は、投薬後24時間から48時間に消失した。
【0063】
本発明を、その特定の実施形態を参考にして記載してきたが、当業者であれば、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなしに様々な変更を行うことができ、同等物を置き換えることができることを理解すべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセスのステップまたは複数のステップを、本発明の目的、趣旨、および範囲に適応させるために多くの改変を行うことができる。このような改変は全て、本明細書に添付する特許請求の範囲内にあることが意図される。さらに、本明細書上記に引用する出版物、特許、および特許文書は全て、個々に参照によって援用されるごとく、全て参照によって本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の運動促進剤1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミド、または薬学的に許容できるその塩を投与することを含む、結腸の診断、外科手術または治療手順の前処置において、患者の腸を清浄にする方法。
【請求項2】
十分量の澄明な液体を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
浸透物質および刺激性緩下薬から選択される有効量の1つまたは複数の緩下薬を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記運動促進薬が、1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミド塩酸塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記浸透物質がポリエチレングリコール電解質物質である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記浸透物質がリン酸ナトリウムを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記刺激性緩下薬がビサコジルを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数の緩下薬が浸透物質である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記浸透物質がリン酸ナトリウムを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記運動促進剤が1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミド塩酸塩である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つまたは複数の緩下薬が刺激性緩下薬である、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記刺激性緩下剤がビサコジルを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記運動促進剤が1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミド塩酸塩である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数の緩下薬が浸透物質および刺激性緩下薬である、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記浸透物質がリン酸ナトリウムを含み、前記刺激性緩下薬がビサコジルを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記運動促進剤が1−イソプロピル−2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸{(1S,3R,5R)−8−[(R)−2−ヒドロキシ−3−(メタンスルホニル−メチル−アミノ)プロピル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル}アミド塩酸塩である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記診断手順が結腸内視鏡検査である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−527357(P2010−527357A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508420(P2010−508420)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/006209
【国際公開番号】WO2008/143916
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】