説明

腸内スリーブ

【課題】消化器系の特定の部位において食品の吸収を制限するための方法および装置を提供する。
【解決手段】胃腸内埋め込み装置が、十二指腸に固定され、トライツ靭帯を超えて延びる。胃を出るすべての食物が、この装置を通過して流れる。この胃腸用装置は、当該装置を十二指腸に固定するためのアンカー(2810)、および十二指腸における栄養素の吸収を制限するための非支持の可撓スリーブ(202)を備えている。スリーブの上流部へと接続され、前記スリーブの下流端を非支持であり、十二指腸壁に係止され、完全に緩められた状態の直径が少なくとも40ミリメートルであるアンカーは、ステントおよび/または波状アンカーを備えることができ、カテーテルによる送入および取り出しのために畳むことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は、2003年12月9日付の米国特許仮出願第60/528,084号および2004年2月13日付の米国特許仮出願第60/544,527号の利益を主張する。上記出願の教示の全体は、参照により本明細書に引用したものとする。
【背景技術】
【0002】
疾病対策センター(Center for Disease Control(CDC))によれば、米国の人口の60%超が太り過ぎであり、ほぼ20%が肥満である。これは、米国において、肥満度指標(BMI)が30以上である成人が3,880万人存在することを意味する。BMIは、人間の体重(単位はキログラム)を身長(単位はメートル)の2乗で除算したものとして定義される。臨床上病的に肥満であると判断されるためには、35を超えるBMI、理想体重に対する100ポンドの体重超過または100%の超過という3つの条件のうちの1つを満たしていなければならない。さらには、体重が350ポンドを超える者については超肥満という分類もある。
【0003】
肥満症は、対策の困難な健康問題である。この過剰な体重の保持に伴う巨大な負担のため、各器官に悪影響が及び、神経系および循環系についても同様である。2000年に、国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(the National Institute of Diabetes, Digestive and Kidney Diseases(NIDDK))は、280,000人が肥満に直接関係して死亡したと推計した。さらにNIDDKは、米国における肥満に関する直接的な医療コストが510億ドルであると推定した。さらに、米国民は、減量関連製品に毎年330億ドルを費やしている。このような経済的コストおよび消費者の尽力にもかかわらず、肥満症は危険な速度で広がり続けている。1991年から2000年まで、米国における肥満は61%増加した。米国だけの問題にとどまらず、世界的な肥満の地域も劇的に増加している。
【0004】
医療システムの主要コストの1つは、肥満に関連する複合疾患に起因している。2型糖尿病が、人口の7.3%に上っている。2型糖尿病を患う者のうち、ほぼ半数が臨床的に肥満であり、3分の2が肥満に近い。他の複合疾患には、高血圧症、冠動脈疾患、高コレステロール血症、睡眠時無呼吸、および肺高血圧症がある。
【0005】
肥満の生理学および心理学は複雑であるが、その原因がきわめて単純であり、すなわち現代社会に見られるカロリーの過剰摂取とエネルギー消費の減少との組み合わせであることは、医学的に意見の一致するところである。治療がきわめて直観的であると思われるのに反し、治療法の確立は、医学の最良の努力を今日まで悩ませている複雑な問題である。食事療法は、大部分の人々にとって適切な長期的解決策ではない。ひとたびBMIが30を超えると、生活スタイルの大幅な変更が、唯一の解決策である。
【0006】
飲食への欲求を減らすことによって消費量の問題に対処するため、患者の生体構造を外科的に変更しようとする多くの試みが、過去になされてきている。胃の容積を減らして早めに満腹感を得るための胃サップリング術または胃プラスティー術が、1980年代および1990年代の初めに行なわれた。早期の体重減少が達成できるが、持続的な減少は得られなかった。その理由のすべてが判明しているわけではないが、いくつかの要因が関係するものと考えられている。その1つは、胃が時間とともに伸張して容積を増す一方で、心理学的要因が、小さくなった胃袋で完全に飲食するための新しい方法を見つけるように患者を誘導することにある。
【0007】
現時点において、長期的な体重減少を成功裏に生み出す2つの外科的施術が存在し、すなわち、ルー・ワイ型(Roux-en-Y)胃バイパス手術、およびBPD手術(十二指腸切換
を伴う胆膵路分岐術)である。両方の施術とも、胃の寸法を小さくするとともに、栄養素の吸収に利用できる腸の有効長さを短くしている。胃の寸法の縮小は、胃の容量および患者の食物摂取の能力を小さくする。十二指腸をバイパスすることによって、脂肪および糖分が多く炭水化物に富んでいる食品の消化がより困難になる。この施術の目的の1つは、これらの食品を飲食した場合にダンピング症候群を生じさせ、患者にフィードバックをもたらすことにある。ダンピングは、炭水化物が十二指腸で最初に調整されることなく、直接空腸に入った場合に生じる。その結果、腸の内壁から食物へと大量の流体が放出されることになる。この全体的影響が、患者に軽い頭痛を感じさせ、深刻な下痢を生じさせる。さらに、理由は未だはっきりしていないが、この施術は、糖尿病に対する迅速な治療上の効果を有している。
【0008】
生理学的に簡単であると思われるにもかかわらず、これらの施術の作用の正確なメカニズムはわかっていない。現在の理論は、誤った食品を大量に飲食したとき、食道への逆流およびダンピングの両者から不快なフィードバックがもたらされるというものである。最終的には、患者は、これらの問題の両方を回避するために、彼らの生体構造の変更によって課された食事の制約に従わなければならないことを学習する。BPD術においては、空腸の長さの多くがバイパスされて吸収不良を生じさせ、したがってカロリーの摂取が減らされる。実際には、BPD術においては胃の寸法がそれほど減らされず、患者は充分な量の食物を摂取して吸収の減少を補うことができる。この施術は、長期にわたる吸収不良のいくつかの深刻な副作用が存在するため、最も病的な肥満のために留保されている。
【0009】
残念なことに、これらの施術は大きな犠牲を伴う。外科的施術の不完全率の高さは憂慮すべきほどであり、11%は、矯正のための外科的介入を必要とする。これらの手術において、初期の小腸閉塞症が2〜6%の間の確率で生じ、死亡率が約0.5〜1.5%になると報告されている。外科的手術が有効な回答であるように思われるが、現在の侵襲施術は、これらの厄介事の割合のため容認できないものである。これらの外科的手術に腹腔鏡の技法を適用することで、手術上の厄介事を少なくすることができるが、依然として、これら重症患者を高い手術のリスクにさらしているほか、外科医にきわめて高いレベルの技能を要求している。小腸における吸収を少なくするための装置が、提案されている(特許文献1(Crabb)、特許文献2(Berry)、および特許文献3(Smit)を参照)。しかしながら、これらの装置は、成功裏に実現されてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,820,584号明細書
【特許文献2】米国特許第5,306,300号明細書
【特許文献3】米国特許第4,315,509号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、消化管の特定の部位における食品の吸収を制限し、病的肥満の患者に食習慣の改善を可能にする負のフィードバックをもたらすため、消化管内に阻害スリーブを適用するための方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
胃腸内埋め込み装置が、非支持の可撓スリーブおよびこのスリーブの上流端(上位端)に接続されたアンカーを備えている。可撓スリーブは両端において開いており、十二指腸へと延びて十二指腸における栄養素の吸収を制限するように構成されている。アンカーは、十二指腸内に保持されるように構成されており、特には幽門の直ぐ下流側(遠位側)の十二指腸球部に保持されるように構成されている。
【0013】
アンカーは、挿入および/または取り出しを容易にするため、最小限に畳むことが可能である。例えば、アンカーを、カテーテルによる手順を使用して管腔内を通って挿入および/または取り出すことが可能である。さらに、畳むことができるアンカーは、局所的な体構造の自然の動きに応答して畳んだり、および/または撓むことができ、十二指腸への挿入によく適合する。アンカーを、スリーブの上流部によって覆うことができ、いくつかの実施形態においては、アンカーがスリーブの第1の内側層と第2の外側層との間に挟まれる。スリーブは、胃を出てスリーブの上流端を通って流し込まれる糜粥が下流端を通ってスリーブから出る長さである。スリーブの長さはさまざまであってよい。いくつかの実施形態においては、スリーブがトライツ靭帯の下流まで延びる。好ましい実施形態においては、スリーブの素材が、約0.2未満の摩擦係数を有している。スリーブを、フッ素重合体などの生体適合性の低摩擦材料で形成することができる。いくつかの実施形態においては、スリーブが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE(ePTFE)、またはポリオレフィン(例えば、低密度ポリエチレン・フィルムなど)から形成される。さらに、透過性を小さくするため、スリーブをポリウレタンまたはシリコーンなどの第2の材料で被覆でき、あるいは含浸することができる。またさらには、スリーブの下流端に、方向性のある表面加工を施すことができる。
【0014】
アンカーは、縫合糸や外科用ホチキスなどの機械的な固定具を使用して、周囲の体構造に取り付けることができる。いくつかの実施形態においては、機械的な固定具が溶解可能であってよく、所定の時間の後に溶解して、装置の自然な通過を可能にする。他の実施形態においては、アンカーが、周囲の体構造に対するアンカーの相対的な大きさによってもたらされる干渉を伴う嵌まり合いを使用して、周囲の体構造へと取り付けられる。これに代え、あるいはこれに加えて、アンカーを、外科用の接着剤などの化学的な固定具を使用して、周囲の体構造へと取り付けてもよい。
【0015】
機械的な固定具としては、アンカーの外表面から延びてスリーブの上流部を周囲の体構造の筋肉組織へと固定する針状突起物が挙げられる。針状突起物は、可撓スリーブの上流部を十二指腸へと固定するため、2方向を向いてよい。スリーブの上流部に組み合わせられる他のアンカーとしては、リング、ストラットからなる網目によって形成されたステント、または波状に形成されたワイヤが挙げられる。
【0016】
さらには、座屈防止装置をスリーブに組み合わせることができ、スリーブのねじれおよび座屈を減らすべく、アンカーの下流から可撓スリーブの下流端まで延ばすことができる。スリーブは、十二指腸において分泌された酵素がスリーブの外側で十二指腸を通過できるようにしている。
【0017】
この胃腸内埋め込み装置は、送入カテーテルとの組み合わせにおいて管腔内を通って送入することができ、回収装置との組み合わせにおいて同様に取り外すことができる。より一般的に言えば、装置を、経口および/または経肛門など、生まれつきの体腔を通して埋め込むことができる。これに代え、あるいはこれに加えて、装置を経皮的に埋め込むことも可能である。一実施形態においては、送入装置が、腸の通過のためのカテーテルおよびカテーテルの下流端に接続された球状部材を備えている。いくつかの実施形態においては、球状部材を遠隔操作で解放することが可能である。
【0018】
他の態様においては、胃腸内埋め込み装置が、非支持の可撓スリーブおよびこのスリーブの上流部に接続された波状アンカーを備えている。波状アンカーは、中心軸を中心とする環状の波状パターンに形作られた追従性の高い半径方向のばねを備えており、外周において大きな撓みを可能にしつつ、半径方向外向きの力をもたらしている。このような撓みは、最小限の侵襲での送入を可能にするとともに、埋め込まれたときに装置が周囲の体構造に実質的に一致することを確実にするため、好都合である。環状の波状部材は、1つ以上の細長い弾性部材から形成することができ、2つの開放端の間に形成される中心軸に沿った管腔を定めている。埋め込まれたときに、アンカーの中心軸が十二指腸の中心軸に実質的に整列し、糜粥が装置を通過できるようにする。さらに、追従性の高い波状アンカーは、充分な柔軟性および追従性をもたらすことによって組織への傷を最小限にし、組織の侵食の可能性を最小限にしつつ、組織への堅固な固定点をもたらす。
【0019】
アンカーは、アンカーそのものへと取り付け手段で取り付けられ、および/またはアンカーそのものに形成された取り付け手段である。針状突起物を使用するなど、アンカーを固定するために本明細書において説明される任意の方法を使用して、体内に着脱可能に取り付けることができる。埋め込まれたとき、アンカーによってスリーブまたは障壁を、好ましくは上流端において流体に対する密封をもたらしつつ、十二指腸にしっかりと埋め込むことができる。流体に対する密封を向上させるため、スリーブの上流端を、波状アンカーの前縁に沿うように輪郭付けることができる。このようなやり方で、波状アンカーの付近には非支持のスリーブが実質的に残らない。したがって、糜粥を、アンカーにおいて捉えられることなく、実質的に妨げられずにスリーブ内へと流すことができる。
【0020】
この胃腸内埋め込み装置を、腸管の疾患を治療するための方法において使用することができる。非支持の可撓スリーブが、十二指腸に固定される。スリーブは両端において開いており、炎症を軽減する薬剤を含浸させることができる。
【0021】
この胃腸内埋め込み装置を、肥満を治療する方法として使用することができる。非支持の可撓スリーブが十二指腸に固定される。スリーブは両端で開いており、満腹ホルモンで強化されている。
【0022】
この胃腸内埋め込み装置を、2型糖尿病を治療する方法として使用することができる。両端で開いている非支持の可撓スリーブの上流部が、折り畳み可能なアンカーに結合される。アンカーは、アンカーが展張されたときにスリーブの上流部を十二指腸に固定するために、組織へと挿入される針状突起物を備えている。可撓スリーブは、少なくとも十二指腸まで延びて、栄養素の消化および/または吸収を制限する。
【0023】
本発明の前述の目的、特徴、および利点、ならびにその他の目的、特徴、および利点は、添付の図面に示される本発明の好ましい実施形態についての以下の詳細な説明から、明らかになるであろう。添付の図面においては、類似の参照符号は、異なる図面においても同一の部品を指す。図面は必ずしも比例尺ではなく、本発明の原理を示すことに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】体内の消化管の一部分の断面図である。
【図2】本発明の原理による胃腸内埋め込み装置の斜視図である。
【図3A】図2に示した胃腸内埋め込み装置の上流部の平面図である。
【図3B】図2に示したアンカーならびにスリーブの第1の内側層および第2の外側層を示している図3Aの線A−Aに沿って得た断面図である。
【図4】スリーブの第2の外側層は省略されている胃腸内埋め込み装置の斜視図である。
【図5】消化器系に埋め込まれた胃腸内埋め込み装置を示している人体の一部分の断面図である。
【図6】胃腸内埋め込み装置内の折り畳み可能な自動展張式アンカーの斜視図である。
【図7】図6に示したアンカーの圧縮された状態の斜視図である。
【図8】アンカーの別の実施形態の圧縮された状態の斜視図である。
【図9】ストラットの端部が曲げられて対向する針状突起物をもたらしている図8に示したアンカーの斜視図である。
【図10】図8に示したアンカーの展張時の斜視図である。
【図11】図2に示した胃腸内埋め込み装置を示しており、座屈防止機構が備えられている。
【図12】胃腸内埋め込み装置を届けるためのカテーテル・システムの斜視図である。
【図13】図12の線E−Eに沿って得た内側軸の断面図である。
【図14A】図12に示したデッドボルト機構の拡大斜視図である。
【図14B】スリーブを通過するスリーブ保持用ワイヤを示している図13Aに示したデッドボルト機構の断面図である。
【図15】折り畳まれて外側シース内に収容されたアンカーを示しているカテーテル・システムの一部分の断面図である。
【図16A】折り畳まれたアンカーが胃腸内埋め込み装置の外側シース内に収容されているカテーテル・システムの平面図である。
【図16B】外側シースからアンカーが解放された後の胃腸内埋め込み装置を示しているカテーテル・システムの平面図である。
【図16C】スリーブ保持用ワイヤが解放された後の展張済みの胃腸内埋め込み装置を示しているカテーテル・システムの平面図である。
【図17】図12に示したカテーテル・システムの別の実施形態の斜視図である。
【図18】より長さの長いスリーブを送入するための反転カテーテル・システムの断面図である。
【図19】胃腸内埋め込み装置を消化管から取り除くための回収装置の斜視図である。
【図20】アンカーと係合した回収装置の斜視図である。
【図21】胃腸内埋め込み装置の別の実施形態の斜視図である。
【図22】図21に示した固定用リングの斜視図である。
【図23】図21に示した固定用リングについて、挿入および取り出しのために畳まれた状態の斜視図である。
【図24】図23に示した折り畳み可能リングを十二指腸の筋肉組織に固定するためのアンカーの斜視図である。
【図25A】胃腸内埋め込み装置が十二指腸に配置された後にアンカーを送入するための送入システムの斜視図である。
【図25B】図25Aに示した送入システムの平面図である。
【図25C】図25Bの線B−Bに沿って得たカテーテルの下流端の断面図である。
【図25D】組織と係合したアンカーを示している胃腸内埋め込み装置の斜視図である。
【図25E】送入後に組織と係合している針状突起物を示した等角投影図である。
【図26A】スリーブの下流端を所定の位置に保持するための捕捉ワイヤを備えている送入システムの平面図である。
【図26B】図26Aの線CCに沿って得た内側シースの断面図である。
【図26C】外側シースの内側には内側シースを示している図26Aの線DDに沿って得た外側シースの断面図である。
【図26D】スリーブの下流端を保持する捕捉ワイヤを示しているカテーテルの下流部の断面図である。
【図26E】捕捉係止機構を示しているカテーテルの下流部の断面図である。
【図27】下流端に表面加工部分を有している胃腸内埋め込み装置の下流部の斜視図である。
【図28】アンカー装置の別の実施形態を備える胃腸内埋め込み装置の斜視図である。
【図29】図28のアンカー装置のさらに詳細な斜視図である。
【図30】消化器系に図28の胃腸内埋め込み装置が埋め込まれてなる人体の断面図である。
【図31】図28の胃腸内埋め込み装置の他の実施形態の斜視図である。
【図32A】胃腸内埋め込み装置の送入のためのカテーテル・システムの一部分の斜視図である。
【図32B】図32Aの線42B−42Bに沿って得たカテーテル軸の断面図である。
【図33】胃鏡/案内チューブ・アセンブリの配置を示している体内の消化管の一部分の断面図である。
【図34】案内チューブ4300の下流端から延びるカテーテルの下流端を示している体内の消化管の一部分の断面図である。
【図35】図28の胃腸内埋め込み装置が送入された後の体内の消化管の一部分の断面図である。
【図36】解放可能なボール端機構を示しているカテーテル・システムの下流端の平面図である。
【図37】解放可能なボール端機構の別の実施形態を示しているカテーテルの下流端の平面図である。
【図38】解放可能なボール端機構のさらに別の実施形態を示しているカテーテルの下流端の平面図である。
【図39】剛体球状部材の別の実施形態の断面図である。
【図40A】膨張可能な球状部材を備えるカテーテル下流端の平面図である。
【図40B】膨張可能な球状部材を膨張させた後のカテーテル下流端の平面図である。
【図41】胃腸内埋め込み装置を送入するための別の送入システムの平面図である。
【図42】図41に示した送入機構の別の実施形態の平面図である。
【図43A】胃、幽門を通過し、十二指腸に延びる腸鏡を示している消化管の一部分の断面図である。
【図43B】図43Aに示した腸鏡除去後のガイドワイヤが延びている消化管の一部分の断面図である。
【図43C】図43Bに示したガイドワイヤ上で延びているカテーテルを示している消化管の一部分の断面図である。
【図44】本発明の種々の実施形態について、代表的な追従曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下で、本発明の好ましい実施形態を説明する。図1は、体内の消化管の一部の断面図である。消化されるべき食物が、食道から噴門110を通って胃102に入る。胃での胃内消化によって生成された糜粥状、半流動体状、均質なクリーム状、または粥状の物質が、幽門口(幽門)108を通って胃から出て、小腸112に入る。幽門108は、胃102の下流側の開口であって、環状の筋肉の強い帯で囲まれている。小腸は、長さ約9フィートの回旋状の管状器官であって、幽門108から回盲弁まで延びており、回盲弁で大腸につながっている。小腸は、十二指腸104、空腸106、および回腸(図示されていない)という3つの部位を有している。小腸112の最初の8〜10インチの部分が十二指腸104であり、小腸112の最も短く、最も幅広く、かつ最も固定されている部分である。
【0026】
十二指腸104は、通常はU字を形成している上部、下行部、水平部、および上行部という4つの部位を有している。上部は約2インチの長さであり、胆嚢頸で終わっている。さらに上部は、十二指腸球部119と称される造作を定めており、十二指腸球部119は、幽門108の直ぐ下流側から始まって、成人においては約1〜1.5インチにわたって延びている。十二指腸球部119は、十二指腸104の下流部分よりもわずかに大きな管腔を、内部に定めている。好都合なことに、十二指腸球部119は、幽門108よりも運動せず、さらには十二指腸104の下流部分よりも運動しない。とりわけ、運動が直線成分をあまり有さず、実質的に収縮に限られている(すなわち、腸の中心軸に沿う方向の運動が存在しない)。一方で、幽門108から離れるにつれて組織は薄くなっている。
【0027】
十二指腸104の下行部は、約3〜4インチの長さであり、乳頭状の構造(ファーテル乳頭)114を有しており、そこから膵臓からの膵液、および肝臓で作られ胆嚢に保存された胆液が、膵管および胆管を通って十二指腸に入る。膵液は、たんぱく質の消化に不可欠な酵素を含んでおり、胆液は、脂肪消化の生成物を分解する。上行部は約2インチの長さであって、十二指腸空腸曲116を形成しており、ここで小腸の次の部位である空腸106につながっている。十二指腸空腸曲116は、トライツ靭帯118(十二指腸提筋)に固定されている。十二指腸内に分泌された液が、途中まで消化された食物を、人体によって吸収されるのに充分小さい粒子に分解する。消化系については、Gray’s Anatomy(Henry Grayの「Anatomy of the Human Body」)、およびVanderの「Human Physiology」、第3版、McGraw Hill、1980年に説明されており、これらの全内容は、参照により本
明細書に引用されたものとする。
【0028】
図2は、本発明の原理に関する胃腸内埋め込み装置200の斜視図である。胃腸内埋め込み装置200は、第1の上流側開口204と第2の下流側開口206とを有している細長くてかつ端部が開放されている非支持の可撓スリーブまたはチューブ202を含んでいる。スリーブ202の内側は、胃102(図1)を出た糜粥を輸送するため、第1の上流側開口204から第2の下流側開口206まで延びる通路である。通路の表面(埋め込み装置200の内面)は、糜粥が容易に通過できるよう平滑である。埋め込み装置200の外表面は組織が成長してくることがなく、かつ腸管を刺激することがないよう、平滑である。
【0029】
埋め込み装置200において、第1の上流側開口204を含む上流端には、折り畳み可能な自動展張式アンカー208が存在している。アンカー208は、埋め込み装置200を十二指腸104の筋肉組織に固定するため、複数の対向する針状突起物210を備えている。アンカー208の直径は、十二指腸104(図1)の直径によって決まり、人体構造のばらつきに応じて約1.0インチ〜2.5インチである。一実施形態において、アンカー208の長さlは、十二指腸球部119内に位置するように選択される。
【0030】
十二指腸球部119での固定は、胃腸管の他の領域への固定に比べ、いくつかの利点をもたらす。第1に、十二指腸球部119は、アンカーを捕らえるためにふさわしい大きさであり、すなわち、上流方向および下流方向の両方においてより小さな直径の生体構造によって区画されている比較的大きな直径の空洞をもたらしている。このように、十二指腸球部119は、適切な形状とされたアンカーを保持するように生まれつき構成されている。
【0031】
さらに、十二指腸球部119は、幽門または十二指腸の下流部分に比べ、比較的活動が少ない。十二指腸球部119は、少なくとも部分的には、胃から受け取った糜粥の保持領域として機能する。すなわち、十二指腸球部119は、そこでは運動が少ないため、より安定な固定用の基盤をもたらす。周囲の組織の運動は、アンカーを時間とともに脱離させるように作用しうる。またさらに、少なくとも十二指腸球部119の上流部分の組織は、十二指腸の下流部分の組織よりも厚い。したがって、十二指腸球部119は、より長い固定具(例えば、より長い針状突起物)の保持に適しているため、より優れた固定のための基盤をもたらしている。
【0032】
スリーブの素材は、腸内で小さな容積に収縮して腸管への刺激を最小にするよう、薄くて柔軟である。糜粥が容易に滑って通過でき、かつ腸管が容易に周囲を滑ることができるよう、小さい摩擦係数(約0.20未満)を有している。流体に対する透過性が低いため、糜粥が腸管の壁面に触れることがなく、かつ消化酵素が糜粥をあまり分解しない。また生物学的に不活性であって、組織を刺激しない。このような材料の一種として、フッ素重合体が挙げられる。いくつかの実施形態においては、スリーブが、壁の厚さが約0.006インチでありノード間距離が20ミクロンである延伸PTFEから形成される。この材料は疎水性であるが、わずかに多孔質である。しかしながら、これらの極小の孔は、時間とともに塞がるであろう。材料の内面または外面あるいは孔内を、シリコーンまたはポリウレタンの希釈液で被覆することにより、多孔性を減じてもよい。別の材料は、壁の厚さが0.001インチ未満であるポリエチレンである。他の材料としては、キャスト・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、例えばテフロン(登録商標))、ピン・ホールを最小にするためフッ化エチレンプロピレン(FEP)またはパーフルオロアルコキシ(PFA)を被覆してなるキャストPTFE、押し出しFEP、および押し出しPFAが挙げられる。これらの材料は、多孔性であるePTFEと対照的に中実であって無孔性であるが、やはりフッ素重合体であると考えられる。壁の厚さは、好ましくは、約0.001インチ未満である。ゴム状の材料は、通常は1〜4の摩擦係数を有し、これらの材料よりもかなり粘着性である。しかしながら、別の実施形態においては、同様の特性を有する他の材料も使用可能である。
【0033】
いくつかの実施形態においては、スリーブが、2つ以上の材料の組み合わせを使用して形成される。例えば、スリーブを、ePTFEとFEPとの組み合わせを使用して形成することができる。そのような組み合わせは、2つの材料を一体に積層することによって形成でき、一般的に、実質的に非透過性でありながら低い摩擦係数をもたらす。
【0034】
スリーブ202は、少なくとも上流端に、2つの材料の層を有している。第1の外側層は、アンカー208の外側を覆っている。第2の内側層は、アンカー208の内表面を覆っている。針状突起物210は、アンカー208の外表面から突き出して、スリーブ202の第1の外側層を貫いている。第1の外側層において針状突起物210が突き出している孔を、消化液と通路を通過して流れる糜粥との混合を制限するため、シリコーンまたはウレタンなどの不浸透性の材料で満たすことができる。スリーブ202の直径は、スリーブ202の第1の外側層がアンカー208を覆って納まるように選択されている。
【0035】
スリーブの長さ212はさまざまであり、約1フィート〜約5フィートの範囲にあってよい。スリーブ202の典型的な長さは、十二指腸球部119に位置するアンカー(針状突起物210)からトライツ靭帯118(図1)の下流まで測定し、約2〜4フィートである。スリーブ202の長さ212は、十二指腸104(図1)および空腸106の一部をバイパスするように選択されている。随意により、空腸106(図1)をより長い部分にわたってバイパスすることによって吸収をさらに減らすため、長さを増すことができる。このように、スリーブ202の長さ212は、さまざまであってよく、患者の肥満度指標(BMI)によって決めることができる。この施術は、肥満および病的肥満の治療のための外科的手術に代わり、より非侵襲的であり、さらに2型糖尿病に対する新たな治療方法をもたらす。
【0036】
被覆されているアンカー208を、管腔内を通っての送入および/またはカテーテルによる送入ができるように、直径が約12mmよりも小さいシースへと折り畳むことができる。アンカー208の外表面をスリーブ202の第1の外側層で覆うことにより、アンカー208の外表面への組織の成長を防止して、埋め込み装置200のカテーテルによる取り出しを可能にできる。
【0037】
さらに、蛍光透視画像でスリーブの位置および向きを検出し、さらにスリーブが捩れていないかどうかを検出するため、スリーブ202の外表面にマーキングを付加することができる。例えば、タンタル含浸インクを使用し、装置200の全長にわたって放射線不透過性のストライプを塗装することができ、あるいは装置の内表面などの表面に、タンタル帯を貼り付けることができる。スリーブ202が捩れている場合、上流端にバルーンを挿入して装置を密閉し、次いでスリーブ202内に水を低圧で注入することによって、スリーブ202の捩れを戻すことができる。さらに一般的には、放射線不透過性のマーキングを、装置の設置および/または取り出しを容易にするためにも使用することができる。
【0038】
図3Aは、図2に示した胃腸内埋め込み装置200の上流部分の平面図である。図3Bは、図3Aの線AAに沿って得た断面図であり、図2に示したスリーブ202のアンカー208ならびに第1の外側層300および第2の内側層302が示されている。図2に関連して説明したとおり、スリーブ202は、第1の外側層300および第2の内側層302を備えている。第1の外側層300は、アンカー208の下流端の下流の位置306およびアンカー208の上流端の上流の位置308において、第2の内側層300に貼り付けられている。スリーブ202の第2の内側層302の内側の通路304によって、糜粥がスリーブ202を通って通過することができる。アンカー208は、スリーブ202の上流端において第1の外側層300と第2の内側層302との間にサンドイッチ状に挟まれており、下流端において、スリーブ202の第1の外側層300と第2の内側層302との内側で自由に動くことができる。アンカー208の外表面が覆われていることによって、埋め込み装置200の取り外しを妨げる可能性がある組織の成長が防止される。アンカー208の内表面が覆われていることによって、糜粥が十二指腸104をバイパスするための滑らかな通路がもたらされている。
【0039】
図4は、胃腸内埋め込み装置200の斜視図であり、スリーブ202の第1の外側層300は省略されている。相互に連結しているストラットによって、ダイアモンド状に開いた開口を有するメッシュ(ストラットからなる網目)が形成されており、これらストラットは充分に柔軟であって、アンカーを送入用カテーテルの内側に折り畳むことができるようにするとともに、アンカーに充分な弾性を持たせて、カテーテルが引き抜かれたときに腸の被覆領域の内壁に係合できるようにしている。アンカー208が、完全な直径から押し縮められたときに、流体を密封するために必要な力がもたらされる(例えば、緩められた状態のアンカーの直径が約1.75インチであり、埋め込まれた状態の直径が約1.5インチである)。
【0040】
図5は、消化器系内に埋め込まれた胃腸内埋め込み装置200を示す人体の断面図である。埋め込み装置200の第1の上流端204が、十二指腸104に固定されている。針状突起物210は、埋め込み装置200が胃102および腸の運動とともに胃102の中に引き込まれたり、あるいは腸へと下流に引き込まれたりすることがないよう、埋め込み装置200を所定の位置に固定すべく筋肉組織を把持する。
【0041】
スリーブ202は、トライツ靭帯118を超えて上流の空腸を過ぎて延びている。スリーブ202をトライツ靭帯118の下流まで延ばすことによって、スリーブ202が十二指腸104を通って胃102に向かって戻る可能性が少なくなる。
【0042】
胃腸内埋め込み装置200が体内に配置されて十二指腸104に固定されたのち、胃を離れる糜粥は、スリーブ202の内側の通路304(図3B)を通過して、十二指腸104および上流の空腸106をバイパスする。糜粥を、スリーブ202を通って導くことによって、十二指腸104における消化および吸収プロセスが妨げられる。糜粥と十二指腸104内の液との混合を妨げることによって、途中まで消化された食物物質が、体による吸収のための充分小さい粒子に分解されることがない。さらに、糜粥が空腸106に至るまで、胆液と糜粥との混合も発生しない。胆液と糜粥との混合を遅らせることによって、脂肪および炭水化物の吸収が低減される。
【0043】
スリーブ202は、不快なフィードバックをもたらし、脂肪の消化を減少させ、さらに食欲を減らすことによって、減量のメカニズムを提供する。脂肪の消化の減少は、スリーブ202が胆液および膵液と胃からの糜粥との混合を、糜粥がスリーブ202を出るまで遅らせることによって生じる。食欲の減少は、スリーブ202が十二指腸104からのホルモンの放出を阻害するために生じうる。さらには、あまり消化されていない食物を、回腸などの腸の下流部分へともたらすことによって、食欲を減じるホルモンを引き起こすことができる。
【0044】
スリーブ202が腸壁に沿わずに腸壁から離れて垂れ下がることで、膵液がファーテル乳頭114を通って十二指腸104へと、妨げられることなく流れることができる。腸を通って糜粥、胆液、および膵液を前進させるため、腸管の通常の蠕動が使用される。
【0045】
図6は、図2に示した胃腸内埋め込み装置200内の折り畳み可能な自動展張式アンカー600についての展張時の斜視図である。アンカー600は、編み合わされておらず、収縮可能であり、かつ自動展張性を有し、埋め込み装置200のカテーテルによる挿入および取り出しを可能にしている。アンカー600は、自動展張性を確保しつつ容易に畳むことができるよう、開放空間パターンを構成する複数の平坦なストラット602を備えている。この開放空間パターンによって、管腔内を通っての送入および取り出しのためのカテーテルへと畳むことが可能である。ストラット602は、熱処理されたばね鋼などの弾性金属から製作することができ、あるいは一般にニチノールと称されているNiTi合金などの合金から製作することができる。他の合金としては、カリフォルニア州Newport BeachのAsahi Intecc Co,. Ltd.から市販されているMP35Nなど、きわめて高い引っ張り強度の独特な組み合わせを有しているニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金が挙げられる。
【0046】
図示の実施形態においては、アンカーの長さLは約1.5インチであり、直径Dは約1.5インチである。ストラット602は平坦であって、幅が約0.010インチであり、厚さが約0.004〜0.010インチである。このアンカーは、管状の素材から、レーザ切断ならびに引き続く引き延ばしおよび熱処理によって形成でき、あるいは当業者にとって公知の他の方法で形成することもできる。
【0047】
別の実施形態では、ストラット602を個別に形成して、ストラットの交点を溶接することができ、あるいは当業者にとって公知の他の手段によって取り付けることができる。外観上、ストラットは、アンカーの周囲を巡る部位604を形成している。各部位は一連の三角形を有しており、三角形のそれぞれは、1つの下流側ストラット接続部606および2つの上流側ストラット接続部608、610によって形成されている。このアンカーについて、展張時の直径に対する収縮時の直径の比は、約1:4である。
【0048】
展張されたとき、分岐するストラットの部位間の角度αは約45〜50°であり、アンカーの直径は約1.5インチである。圧縮されたとき、分岐するストラットの部位間の角度βは約5〜6°となり、アンカーの直径を約0.5インチにまで減じて、カテーテルによる送入および取り出しを可能にする。ストラットの弾性が、このような圧縮を可能にする。半径方向の圧縮が解放されたとき、ストラットの弾性がアンカーを直径Dへと展張させる。アンカーは、弾性回復力が最小の応力を求めるため、所望の直径をとる。
【0049】
いくつかの実施形態においては、十二指腸104の筋肉組織への固定のため、アンカー600の上流端においてストラットの端部を引き延ばし、針状突起物612をもたらすような形状とすることができる。
【0050】
図7は、図6に示したアンカー600について、圧縮された状態の斜視図である。アンカー600は、カテーテルによる送入および取り出しのため、分岐するストラットの部位間の角度βが約5〜6°になって、アンカー600の直径Dが約0.5インチに減少するまで圧縮される。アンカーの上流端の針状突起物704は、細長く引き延ばされている。針状突起物704を、アンカーを十二指腸104の筋肉組織へと固定するための形状とすることができる。
【0051】
図8は、アンカー800の別の実施形態について、圧縮された状態の斜視図である。アンカー800の上流端に位置するペアの針状突起物802は、細長く引き延ばされており、アンカー800を十二指腸104の筋肉組織に固定するための対向する針状突起物をもたらすように形作ることができる。
【0052】
図9は、図8に示した圧縮された状態のアンカー800の斜視図であり、ストラットの端部902、900が、対向する針状突起物904、906をもたらすように曲げられている。針状突起物904、906は十二指腸104の筋肉組織と係合して、胃腸内埋め込み装置を十二指腸104の筋肉組織に固定する。図2に示されているように、ストラットの端部900、902は、アンカー800の外表面から反対向きに突き出している。これらは、お互いに対して直角であってもよい。対向するストラット端900、902のそれぞれの端部の針状突起物904、906は、アンカーを固定するために周囲の筋肉組織に埋め込まれる。対向して突き出しているストラット端900、902の端部の針状突起物904、906は、アンカー800の両方向への移動を防止し、すなわち、アンカー800の胃102への動きを防止し、十二指腸104を通って下流に向かうアンカー800の動きを防止する。
【0053】
図10は、図8に示したアンカー800について、展張した状態の斜視図である。図9に関連して述べたとおり、アンカー800が展張されたとき、対向するストラット端904、906が十二指腸104の筋肉組織に係合する。この係合位置において、針状突起物904、906はアンカー800の長手軸から半径方向外向きに広がり、針状突起物の先端が組織と接触して係合する。
【0054】
図11は、図2に示した胃腸内埋め込み装置1100を示しており、座屈防止機構1102を備えている。柔軟であって回転しない座屈防止機構1102がスリーブ202に取り付けられ、アンカーの下流端の下流からスリーブ202の下流端まで、スリーブの長さLに沿って延びている。図示の実施形態においては、座屈防止機構1102は、可撓スリーブの外側層の外表面に取り付けられたガイドワイヤ機構である。ガイドワイヤ装置は、当業者には公知である。ガイドワイヤ機構の第1の上流端1104が、アンカーの下流側に取り付けられ、ガイドワイヤ装置の第2の下流端1106が、可撓スリーブの下流端に取り付けられている。ガイドワイヤの直径は、約0.010インチ〜0.016インチの範囲である。
【0055】
胃腸内埋め込み装置200は、カテーテルによって配置(例えば、管腔内を通って)されるように設計されている。図12は、胃腸内埋め込み装置を送入するためのカテーテル・システム1200の一部についての斜視図である。このカテーテル・システムはガイドワイヤ1212に追従して、食道および胃102などの生まれつきの管腔を通過し、幽門108そのものを通過する。ガイドワイヤ1212は、カテーテル・システム1200の上流端1208において第1の内側管腔に進入し、カテーテル・システム1200の下流端1222において第1の内側管腔から出る。
【0056】
カテーテル・システム1200は、アンカー208を畳んだ形態で収容する外側シース1202、外側シース1202を引き戻すためのフランジ1216、およびアンカーが外側シース1202から解放された後に可撓スリーブ202の上流端から可動部材であるスリーブ保持用ワイヤ1210を解放するためのスリーブ解放機構であるスリーブ保持用ワイヤ解放機構1224を備えている。
【0057】
図2に関連して説明したとおり、胃腸内埋め込み装置の下流端は、十二指腸および空腸を通り抜けることができる非支持の可撓スリーブ202を含んでいる。スリーブ保持用ワイヤ1210は、第2の内側管腔を通って移動して第2の内側管腔を出て、スリーブ202の下流端を内側シース1226に固定する。スリーブ保持用ワイヤ1210は、胃腸内埋め込み装置が十二指腸104に配置された後にスリーブ保持用ワイヤ1210を解放するため、スリーブ保持用ワイヤ解放機構1224に接続されている。この解放機構1224については、図16Bに関連して後で説明する。
【0058】
スリーブ202は、内側シース1226の外側に一時的に固定され、胃腸内埋め込み装置を適切に配置し、次いで解放することができるようにしている。図示のとおり、スリーブ202は、デッドボルト機構1206を使用し、スリーブ保持用ワイヤ1210によって固定される。曲がりくねった人体の通路に適合して解放を容易にするため、スリーブ保持用ワイヤ1210にはテフロンなどの非粘着性被覆を施すことが好ましい。スリーブ保持用ワイヤ1210は、カテーテル・システム1200の解放機構1224からデッドボルト機構1206まで、第2の内側管腔を通って延びている。デッドボルト機構1206については、図14Aに関連して後で説明する。
【0059】
スリーブ保持用ワイヤ1210は、スリーブを所定の位置に保持している。畳まれたスリーブの下流端が、スリーブ保持用ワイヤ1210をカテーテルの上流端1208から後方へと引くことにより、解放機構1224によって解放される。
【0060】
図2に関連して説明したとおり、胃腸内埋め込み装置の上流部分は、被覆されたアンカーを備えている。この胃腸内埋め込み装置のアンカーは畳まれて、フランジ1216と外側シース1202の上流端1208の間において、外側シース1202の外側管腔に収容される。アンカーは、外側シース1202によって、畳まれた形態で支持される。カテーテル1200が、食道を通り、胃の幽門部を通って消化器系に挿入される。外側シース1202の上流端が、位置決めリング1240を使用することによって十二指腸に配置される。外側シース1202を配置した後、フランジ1216をカテーテル・システム1200の上流端に向かって引くことによって、アンカーがカテーテルの外側管腔から引き出される。解放後、アンカーは自身の弾性回復力によって自動的に展張し、周囲の十二指腸の筋肉組織において固定位置に係合する。
【0061】
図13は、図12の線E−Eに沿って得た内側軸1226の断面図である。スリーブ保持用ワイヤ1210は、内側シース1226の第2の内側管腔1314を通過する。スリーブ保持用ワイヤ1210は、図14Aの1302にて第2の内側管腔1314から出て、スリーブ202の襞に通されている。スリーブ保持用ワイヤ1210は、1302(図14A)において第2の内側管腔1314に再度進入している。ガイドワイヤ1212は、第1の内側管腔1310を通過している。
【0062】
図14Aは、図12に示したデッドボルト機構1206の拡大斜視図である。スリーブ202は、送入のために折り畳まれている。スリーブ202は、内側シース1226の周囲を囲み、内側シース1226上に束ねられている。スリーブ202は、スリーブ保持用ワイヤ1210をスリーブ202の襞を通過して通すことによって、内側シース1226の周囲で折り畳まれた状態に保持される。スリーブ保持用ワイヤ1210は、開口1304を通って第2の内側管腔1314から出て、1304においてスリーブ202の襞を貫通している。スリーブ202の襞を通過してスリーブ保持用ワイヤ1210を通すことにより、スリーブ202の下流端に複数の小さな孔が生じる。これらの孔は、材料の裂けを防止するため、シリコーンまたはウレタンで補強される。スリーブ保持用ワイヤ1210は、第2の孔1302を通って第2の内側管腔に再び進入し、第2の内側管腔の引き抜きに抗するため、第2の内側管腔内を第2の内側管腔の下流端に向かって充分な距離だけ前進している。
【0063】
図14Bは、図14Aに示したデッドボルト機構1206の断面図であり、スリーブ202を貫通して通されたスリーブ保持用ワイヤ1210が示されている。スリーブ保持用ワイヤ1210は、1306において第2の内側管腔から出て、1304においてスリーブ202の襞を貫通している。スリーブ保持用ワイヤ1210は、1302において第2の内側管腔に再度進入している。
【0064】
図15は、図12に示したカテーテル・システム1200の一部分の断面図であり、畳まれたアンカー208が外側シース1202の内側に収容されて示されている。アンカー208は前もって畳まれ、畳まれた形態でカテーテルの外側シース1202の内側に保持されている。外側シース1202がフランジ1216によってカテーテル・システム1200の上流端に向かって引き戻されることで、自動展張式のアンカー208が解放される。アンカー208は、それ自体の弾性回復力により半径方向に展張する。ガイドワイヤ1212が、内側シース1226の第1の内側管腔を通って案内されており、スリーブ保持用ワイヤ1210は第2の内側管腔を通って案内されている。内側シース1226は、ガイドワイヤ1212が通過する第1の内側管腔、およびスリーブ保持用ワイヤ1210が通過する第2の内側管腔を備えている。
【0065】
図16A〜Cは、胃腸内埋め込み装置の送入方法を示している。図16Aは、カテーテル・システム1200の平面図であり、畳まれたアンカー208が胃腸内埋め込み装置の外側シース1202の内側に収容されて示されている。図12に関連して説明したとおり、アンカー208が外側シースの内側に収容され、スリーブ202の下流端が、スリーブ保持用ワイヤ1210によって内側シース1226の外側に固定されている。
【0066】
図16Bは、カテーテル・システムの平面図であって、解放機構によってアンカーが外側シースから解放された後の胃腸内埋め込み装置200を示している。外側シース1202をアンカー208から引き戻すため、フランジ1216がカテーテル・システム1200の上流端に向かって引き戻され、アンカー208が自動的に展張している。スリーブ保持用ワイヤ1210はスリーブ202の下流端を保持している。
【0067】
ひとたび所定の位置に置かれると、スリーブ保持用ワイヤ1210を取り去ることができる。図12に関連してすでに述べたように、スリーブ保持用ワイヤ1210は係止機構1224に接続されている。係止機構1224のハンドル1600が、スリーブ保持用ワイヤ1210をデッドボルト機構1206から引き出すための旋回装置として機能する。胃腸内埋め込み装置200の下流端は、ハンドル1600を時計方向1604に動かすことによって解放される。ハンドル1600が時計方向1604に動かされるとき、スリーブの襞を貫通して通されているスリーブ保持用ワイヤ1210は、第2の内側管腔1314を通って引き戻され、胃腸内埋め込み装置200の下流端においてスリーブ202から外れる。スリーブ保持用ワイヤ1206は、胃腸内埋め込み装置200の下流端から、第2の内側管腔1314を通って延びている。このワイヤは、カテーテルの上流端においてハンドル1600に接続されている。
【0068】
図16Cは、カテーテル・システム1200の平面図であって、スリーブ保持用ワイヤ1210が解放された後の展張した状態の胃腸内埋め込み装置200を示している。ハンドル1600が時計方向に動かされ、スリーブ保持用ワイヤ1210が第2の内側管腔1314を通って引き戻されて、スリーブ202の下流端が解放されている。
【0069】
図17は、図16に示したカテーテル・システム1200の別の実施形態の斜視図である。このカテーテルは、カテーテルを消化管を通して胃102の幽門部の向こうまで案内するため、ボール1800を内側シース1226の下流端1222に接続して備えている。このボール1800は充分に小さく、したがって胃腸内埋め込み装置200が送入され、アンカーが展張し、スリーブ保持用ワイヤ1210が解放された後に、胃腸内埋め込み装置を通って引き戻すことができる。スリーブ1204は、均一に折り畳まれて示されている。しかしながら、スリーブ1204を必ずしも均一に折り畳む必要はない。
【0070】
図18は、より長い非支持の可撓スリーブ1902を送入するために折り返されているカテーテル・システム1900の断面図である。胃腸内埋め込み装置200が、スリーブ・アンカー1901および付随のスリーブ1902が人体に送入された状態で示されている。次いで、先に説明した送入用カテーテルが取り除かれる。バルーン・カテーテル1906がスリーブ・アンカー1901に導入され、バルーン1908がアンカー1901の管腔を密閉するように膨らまされる。スリーブ1902は内側に折り返され、スリーブの端部を密閉するため弾性バンド1912が使用されている。次いで、バルーン・カテーテル軸1906を通じてスリーブ管腔1910に流体が注入され、管腔を満たして圧力を加える。この流体の圧力が、内側スリーブを下流方向1904に押すために利用される。スリーブ1902が下流方向に完全に展開されたとき、弾性バンド1912は、スリーブ1902の閉じられている端部から脱落し、腸内を下流方向に通過して排泄される。この機構によれば、送入装置の長さよりも(例えば、2倍)長いスリーブを展開することができる。これは、ガイドワイヤでは腸の下流部分にアクセスすることが困難であるときに必要とされるであろう。この折り返しのカテーテル・システム1900によれば、図12に関して説明した送入カテーテルのみを使用してできることよりも、より長い長さのスリーブを送入することができる。
【0071】
図19は、胃腸内埋め込み装置200を消化管から取り除くための回収装置2000の斜視図である。すでに述べたとおり、アンカー208の外表面を、細胞の成長を防止してアンカー208の容易な取り出しを可能にする材料で覆うことができる。回収装置2000は、内側シース2004および外側シース2006を備えている。複数のフィンガ2002が、内側シース2004の上流端から延びている。これらのフィンガ2002が、胃腸用装置の外表面と係合する。内側シース2004がフィンガに被さるように下流に移動すると、フィンガ2002が半径方向内側に引かれて、アンカーの上流側の直径を減少させ、畳まれた状態の装置が外側シース2006内に引き込まれる。
【0072】
図20は、アンカー208と係合した状態の回収装置2000の斜視図である。回収装置のフィンガ2002は、アンカー208の周囲に位置している。内側シース2004がフィンガ2002に被さるように押されたとき、フィンガがアンカー208の上流端を半径方向内側に引き込み、アンカー208の上流端が畳まれる。アンカー208が充分に畳まれ、上流側のアンカー直径が外側シース2006の直径よりも小さくなった後、アンカーは外側シース2006の内側に引き込まれる。次いで、回収装置2000を胃および食道を通過して引くことによって、胃腸内埋め込み装置の全体を患者から容易に取り去ることができる。
【0073】
他の実施形態においては、アンカー208を、引き紐を備えて構成できる。引き紐を、アンカー208の好都合な開口を通して、アンカー208の周囲を巡って選択的に編み込むことができる。開口は、アンカー208において互いにつながる隣接のストラットによって定めることができる。これに代え、あるいはこれに加えて、引き紐を、アンカー208に設けられた小孔などの専用の開口を通して、選択的に編み込むことができる。いくつかの実施形態においては、引き紐が、アンカー208の上流端の開口を通過して編み込まれる。動作時、引き紐を回収装置によって上流方向へと引くことができる。引かれたとき、引き紐はアンカー208の周囲で収縮し、アンカー208の直径を減少させる。このように、引き紐を、アンカー208を周囲の人体から離すように引き締めて、針状突起物を周囲の筋肉組織から引き抜くことで、埋め込まれているアンカー208の取り外しを容易にするために使用することができる。
【0074】
図21は、胃腸内埋め込み装置2200の別の実施形態の斜視図である。この胃腸内埋め込み装置2200は、スリーブ202および固定用リング2204を備えている。固定用リング2204の下流端が、スリーブ202の上流端に結合されている。この装置を図24に示すアンカーを使用して十二指腸104の筋肉組織に固定するため、複数の小孔2206がリングの上流端の周辺周りに分布している。固定用リング2204は、シリコーンなどの柔軟な生体適合性の材料で作られ、カテーテルによる挿入および取り出しを可能すべく、リング2204を畳むことができるようにしている。好ましくは、固定用リング2204は、幽門108の通常の開閉を妨げることがない。
【0075】
図22は、図21に示した固定用リング2204の展張した状態の斜視図である。スリーブ202は、直径が1.0インチまたはスリーブ202の直径とほぼ同一の固定用リング2204の上流端の外表面2300に結合される。固定用リング2204は、胃腸内埋め込み装置2200を所定の位置に固定するための少なくとも4つの小孔2206を備えている。リング2204の最大外径は、約1インチである。別の実施形態においては、4つよりも多くの小孔2206を設けることができる。
【0076】
図23は、図21に示した固定用リング2204が挿入および取り出しのために畳まれた状態の斜視図である。図21に示した環状のリング2204は圧縮されて長円形になり、これにより、固定用リングを送入用のカテーテルの管腔内に挿入できるようになる。
【0077】
図24は、図23に示した折り畳み可能リングを十二指腸104の筋肉組織に固定するアンカー2500の斜視図である。アンカー2500は、可撓軸2502で第2のピン2506に接続されたアンカー・ピン2504を備えている。アンカー・ピン2504は、アンカー2500を組織に係止する成型針状突起物2508を備えている。アンカー2500は、折り畳み可能リングが十二指腸104に配置された後に送入される。アンカー2500は、アンカー・ピン2504の針状突起物部分が組織に向かって案内された状態で、アンカー・ピン2504が対応する小孔2206を通って導かれるよう案内される。針状突起物2508が組織内に係止された後、第2のピン2506が胃腸内埋め込み装置内に位置する一方で、アンカー・ピン2504の針状突起物部分2508は、十二指腸104の筋肉組織内に位置する。胃腸内埋め込み装置を体内から取り出すためには、アンカー2500の可撓軸2502が切断される。
【0078】
図25Aは、胃腸内埋め込み装置が十二指腸104に配置された後にアンカー2500を送入する送入システム2600の斜視図である。アンカー2500は、ただ1つの管腔筒2600を有するカテーテルの下流端に装填されている。送入装置2600の中空の下流端は、十二指腸104の筋肉組織に貫入するように作られた鋭い針である。別の実施形態においては、管腔内を通ってのアプローチによる小孔2206へのアクセスを改善するため、送入装置2600の下流端を円弧状に形成することができる。カテーテル2600は、アンカー2500を解放するための押出器2604を備えている。押出器2504は長手方向2602に移動して、アンカー2500を管腔から解放する。
【0079】
図25Bは、図25Aに示した送入システム2600の平面図である。図25Cは、図25Bの線B−Bに沿って得たカテーテル2600の下流端の断面図である。図24に関連して説明したとおり、アンカー2500は、可撓軸2502で接続されたピン2504、2506を備えている。アンカー2500は、カテーテル2600の下流端において管腔内に装填されている。アンカー・ピン2504はチューブ2600の下流端に位置し、第2のピン2506は上流端に位置する。アンカー・ピン2504の針状突起物2508は、筋肉組織内で解放されたときに組織と係合するよう、チューブ2506の上流端を向いている。カテーテル2600が、十二指腸104に位置するリングの中心へと進められる。次いで、鋭い端部2510が小孔2206を通過して周囲の筋肉組織へと押し込まれる。押出器2506を長手方向2602に押して、アンカーの下流側2506を解放する。アンカーの下流側2506が解放されると、送入システム2600が引き戻され、可撓軸が小孔2206を通過した状態でアンカーの上流部分が送入システムの外に引き出され、アンカーの上流部分は装置の内側に残る。図22に示したリングの実施形態においては、4つのアンカー2506を送入して、4つの小孔によって胃腸内埋め込み装置を固定する。
【0080】
図25Dは、アンカー2500を組織2512に送入するために小孔2206を通って挿入される針の尖端2510を示した等角投影図である。カテーテルの下流端は、小孔2206へのアクセスを改善するため円弧状2520に形成されている。カテーテルの尖端2510は、小孔2206を通って組織2512に挿入されている。アンカーのアンカー・ピン2504は、管腔から組織2512へと押し出されている。
【0081】
図25Eは、送入後に組織2512と係合している針状突起物2508を示した等角投影図である。カテーテルは、アンカー・ピン2504を組織2516と係合した状態に残しつつ、小孔2206から取り外されている。
【0082】
図26A〜Eは、胃腸内埋め込み装置200の送入の際にスリーブ202の下流端を所定の位置に保持するための係止機構の別の実施形態を示している。捕捉ワイヤ2656が、カテーテル2650の管腔の1つを通過して下流端へと延びている。下流端において、捕捉ワイヤ2656の端部がループを描いて戻り、カテーテル2650内に固定または係止されている。スリーブ202の折りたたみが、この捕捉ループを通って進められる。捕捉ハンドル2664が捕捉ワイヤ2656を引っ張り、さらには解放することで、スリーブ202の下流端を係止したり、解放したりする。この送入システム2600は、アンカーを畳まれた状態に保持している引き紐を解放するための引張り栓2666を備えている。
【0083】
図26Bは、内側シース2650を図26Aの線C−Cに沿って切断した断面図である。内側シース2650は2つの管腔2654、2656を有しており、直径は約0.078インチである。第1の内側管腔2654は、内側シースを通ってガイドワイヤを通過させるためのものであり、直径は約0.04インチである。第2の内側管腔2656は、内側シース2650を通って可動部材である捕捉ワイヤ2656を通過させるためのものであり、直径は約0.02インチである。捕捉ワイヤの端部2658は、内側シース2650の内部に固定されている。
【0084】
図26Cは、外側シース2600を図26Aの線DDに沿って切断した断面図であり、外側シース2600の内側に内側シース2650が示されている。外側シース2600の内径は約0.1インチであり、外径は約0.143インチである。外側シース2600の内側の開放空間を、外側シース2600を通って引き紐を通過させるために使用できる。
【0085】
図26Dは、カテーテルの下流部の断面図であり、捕捉ワイヤ2656がスリーブ202の下流端を捉えた状態で示されている。スリーブ202の下流端は、捕捉ワイヤ2656によって形成されたループでスリーブ202の下流端を引っ張ることで、捕捉ワイヤ2656に捉えられている。
【0086】
図26Eは、カテーテルの下流部の断面図であり、捕捉係止機構が示されている。スリーブ202の下流端が、スリーブの襞を内側軸に捕捉すべく捕捉ワイヤ2656を送入システムの上流端に向かって長手方向2664に引くことによって係止される。胃腸内埋め込み装置200が体内の適切な位置に配置された後、捕捉ワイヤ2656は送入システムの下流端に向かって長手方向2662に進められる。これにより、捕捉ワイヤ2656が開き、スリーブ202が解放される。
【0087】
図27は、表面加工部分2700を備えている胃腸内埋め込み装置の実施形態の下流部の斜視図である。蠕動の作用によってスリーブ202が胃102に向かって上流方向に進むことがなく、スリーブ202が腸112内で引っ張られた状態に保たれることを確実にするため、スリーブ202の下流端に表面加工を追加することができる。スリーブ202の下流端において、方向性を有する表面加工2700が付加される。表面加工2700は、スリーブの素材中に成型することができ、あるいは接着剤または熱溶着法によって付加することができる。表面加工の材料は、上流方向に移動する蠕動波によってスリーブに作用する力が、下流方向への蠕動波によってスリーブに作用する力よりも小さくなるよう、上流方向に向けられた小繊維形状を含んでいる。
【0088】
この胃腸内埋め込み装置は、他の減量手段および行動様式の変更努力が効果を発揮しない場面において、新規の代替方法を提供する。この胃腸内埋め込み装置は小径のカテーテルによって(例えば、管腔内を通って)導入されるため、挿入時のリスクが外科的手術に比べて低減される。さらに、この施術が完全に元の状態に戻れることが、この方法を体重増につながる行動様式を変更することに必死の患者にとって理想的な解決策にしている。
【0089】
体内に挿入されたとき、この胃腸内埋め込み装置は、ルー・ワイ(Roux-en-Y)術によ
る十二指腸のバイパスに類似する。この埋め込み装置は、酵素と食物の混合を遅らせてカロリーの吸収を少なくし、糖分の多い食事を摂取したときにダンピング症候群を生じさせることによって、ルー・ワイ術により生成されるフィードバックを提供する。この埋め込み装置は、侵襲が最小限であって元の状態に戻れるため、ルー・ワイ術に対する改良であるといえる。大幅な減量が達成されない超肥満の治療においては、患者を吸収不良の状態にさらに近づけるため、アンカーの下流の埋め込み装置の長さをさらに増やすことができる。
【0090】
胃腸内埋め込み装置の設置は、効果的に、摂取された食物が通常通りには消化されないようにし、通常放出される消化管ホルモンを変化させる。これらのホルモンは、空腹および消化に影響を与えるいくつかの生理的変化を引き起こす。消化管ホルモンとしては、ペプチドYY(PYY)、コレシストキニン(CCK)、およびグレリンが挙げられる。
【0091】
消化不足の食物が空腸または小腸112の下流部分に進入すると、ペプチドYYまたはPYYと呼ばれるホルモンが分泌される。このホルモンは、食欲に直接作用し、分泌時に食欲を減退させることが明らかになっている。空腸に未消化の食物が存在することは、食物が過剰に摂取されたことを示す。したがって、この胃腸内埋め込み装置は、スリーブの長さに応じて、未消化または途中まで消化された食物を腸管の下流部分に溜めることを促進できる。この結果、腸内へのスリーブの配置によって、未消化の食品の空腸への送入が促進され、PYYの分泌を促進して人間の食欲を減退させる。
【0092】
コレシストキニン(CCK)ホルモンは、食物が十二指腸104に接触したときに分泌される。CCKは、胆嚢からの胆液の分泌を生じさせる。したがって、十二指腸104にスリーブを配置することによってCCKの分泌が少なくなり、胆液の分泌が少なくなって、食物の消化の低減がもたらされる。
【0093】
食物が十二指腸104に接触すると、いくらかのグレリンが分泌される。グレリンは、食欲の制御における一要因であることが判明している。この埋め込み装置は、十二指腸をバイパスすることによってグレリンの分泌を少なくし、これによって食欲を減退させる。
【0094】
2型糖尿病は、患者が自身の生成するインシュリンを適切に使用できない場合に生じる肥満の疾患である。通常は、患者が充分なインシュリンを生成できないのではなく、生成されたインシュリンを患者の体が効果的に使用することができない。2型糖尿病の特に危険な結果は、食事後の血糖値の急上昇である。これは、摂食後過血糖と呼ばれている。この血糖の急上昇は、心血管および微小血管に障害を引き起こす。摂食後過血糖を抑制するのに使用される薬剤の一種は、α−グルコシダーゼ抑制剤である。それらは、炭水化物の糖への分解および吸収を減らすことによって機能する。スリーブは、胆液を減らし、通常は十二指腸で容易に吸収されるが、空腸および回腸ではあまり吸収されない傾向にある炭水化物について、分解および吸収を遅らせるため、同様の機能を有しているといえる。したがって、炭水化物の消化を遅らせるために腸の上流部分にスリーブを配置することで、摂食後過血糖が軽減され、2型糖尿病を抑制することができる。
【0095】
この胃腸内埋め込み装置は、十二指腸104をバイパスすることによって2型糖尿病の症状を軽減するために使用できる。胃のバイパス手術の後、患者は一般に、2型糖尿病の完全な回復を経験する。この注目すべき影響の正確なメカニズムには未だ知られていないが、この事例については高い割合で臨床結果が報告されている。胃のバイパス後の2型糖尿病の回復については、Rubinoらの「Potential of Surgery for Curing Type-2 Diabetes Mellitus」)に記載されており、その全内容は、ここでの参照によって本明細書に引用されたものとする。胃腸内埋め込み装置は、これと同等の阻害効果を十二指腸でのプロセスにもたらすため、手術による障害なく同様の効果が得られる。肥満ではないが2型糖尿病の患者には、変更された胃腸内埋め込み装置が挿入される。この胃腸内埋め込み装置は、吸収を阻害することなく膵臓のプロセスおよび受容体を抑制するために必要な効果を提供する。
【0096】
糖尿病を治療するための胃腸内埋め込み装置の実施形態においては、アンカーを胃および/または十二指腸に配置することで、幽門108を通常どおり機能させることができる。スリーブの長さは、十二指腸のバイパスを模擬するために短くできる。スリーブは、トライツ靭帯118の直ぐ下流まで延びるが、さらに空腸106まで延びることはなく、したがって空腸106における吸収が可能である。
【0097】
胃腸内埋め込み装置を、十二指腸104内に一時的に配置して、組織の治癒させることができる。例えば、スリーブを一時的に配置することにより、十二指腸104の潰瘍の治癒を促進できる。潰瘍は、十二指腸104の組織に形成される病変である。それらが出血する場合、それらは通常は、電気外科によって焼灼される。潰瘍が治癒するには、それらが酸性の雰囲気から保護されなければならない。スリーブを、例えば1〜2週間程度の短い期間にわたって配置することで、酸性の雰囲気を除いて組織の治癒を可能にすることによって、十二指腸104における潰瘍の治癒が促進される。
【0098】
腸管の疾患部位を除去するため、腸の吻合が実行される。ホチキス止めや縫合による接続は、治癒するまでの間の漏れを生じやすい。この胃腸内埋め込み装置の腸管内への一時的設置を利用して、この領域を糜粥から保護し漏れを最小にすることによって、小腸の吻合の治癒を促進することができる。
【0099】
この胃腸内埋め込み装置を利用して、薬剤、ホルモン、および他の作用物質を直接腸へと届けることができる。物質を届けるため、スリーブおよび/またはアンカーが、当該物質で被覆され、あるいは当該物質によって含浸される。この物質としては、体内へのアンカーの配置に起因する刺激を少なくするための抗炎症剤が挙げられる。この物質は、満腹ホルモンを随意により、あるいは追加で含むことができる。
【0100】
最も一般的な2つの腸管疾患は、クローン病および潰瘍性大腸炎である。クローン病は、消化管のあらゆる部分で生じる可能性がある。この疾患の正確な原因は明らかでないが、腸の内壁の慢性の炎症につながる患者の異常な免疫反応であると思われている。
【0101】
クローン病は、炎症を抑える目的の薬品を用いて治療される。それらには、アミノサリチル酸、コルチコステロイド、アザチオプリンおよびメトトレキサートなどの免疫抑制剤、ならびにアンピシリンおよびシプロを含む抗生物質が含まれる。これらの薬品は、全身に投与された場合には副作用を生じる。薬品は、本当に局所的にのみ必要とされているため、組織へと直接届けられるならば、使用する薬品の量をより少なくすることができる。すなわち、そのような薬品で処理された埋め込みスリーブは、周囲の組織を好都合に治療する。
【0102】
腸用スリーブを、これらの薬品を含浸させたポリマーで被覆することができる。被覆としては、ポリウレタン、シリコーン、およびニュージャージ州SomervilleのHydromerから市販されているような親水性ポリマーが挙げられる。これらの被覆は、浸漬技法または噴霧技法によって、スリーブの素材に適用することができる。ePTFEなどの多孔性のスリーブ素材が使用される場合は、薬品で満たされたポリマーを、スリーブ内の内圧など、スリーブへと加えられる圧力を利用して孔内に押し込むことができる。これにより、利用できる薬品の量を増やすことができる。
【0103】
スリーブの素材は、薬品を直接壁面へと直接取り入れることができるポリマーであってもよい。このようなポリマーとしては、エチレンビニルアセテート(EVA)およびポリウレタンが挙げられる。この場合、壁面には単なる被覆よりも多くの素材が存在するため、被覆に比べてより多くの量の薬品を取り入れることができ、より長い時間の薬品の放出を実現できる。薬品をポリマー中に混合し、次いで、通常通りの押出し成形をして、スリーブを製造するためのチューブまたはシートを形成する。
【0104】
スリーブは、食道を通して十二指腸104および空腸106の上流部に配置される。スリーブが組織と接触したとき、被覆中の薬品が直接組織へと放出される。さらに、スリーブは食物が粘膜へと接触しないように機能でき、これにより、糜粥によって生じる刺激を少なくすることができる。薬品が素材から完全に溶出してしまうと、そのスリーブは取り除かれ、新しいスリーブが配置される。
【0105】
人間の食欲の制御は、ホルモンの相互作用の複雑な関数である。グレリン、ペプチドYY、レプチン、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、コレシストキニン(CCK)、およびインシュリンなどを含むいくつかのホルモンが、食欲の制御に関与している。これらのホルモンは、十二指腸内の食物の存在によって放出あるいは抑制される。例えば、PYYは、PYYの注入がラットおよび人間の両者において食物の摂取を減らすことが明らかになっているため、満腹ホルモンとして機能し、レプチンの減少は、空腹を刺激することが示されている。
【0106】
これらのホルモンの多くが放出される十二指腸104に配置されるスリーブを、これらのホルモンによって含浸することができる。埋め込まれたとき、ホルモンがスリーブから周囲の組織に溶出し、種々の満腹機構を活性化させる。
【0107】
図28は、折り畳み可能な自動展張式固定装置の他の実施形態を備える胃腸内埋め込み装置の斜視図である。胃腸内埋め込み装置2800は、スリーブ202と胃腸内埋め込み装置2800を十二指腸104に固定するための固定装置2810とを備えている。埋め込み装置2800は、波状のアンカー2810をスリーブ202の上流部に接続して備えている。図29を参照すると、波状のアンカー2810は、中心軸2910を中心とする環状の波状パターンに形作られた追従性のある半径方向のばね2900を備えており、外周において大きな撓みを可能にしつつ、外向きの半径方向の力をもたらしている。このような撓みは、最小限の侵襲での送入を可能にするとともに、埋め込まれたときに装置が周囲の体構造に実質的に適合することを確実にするため、好都合である。環状の波状部材2900は、1つ以上の細長い弾性部材から形成することができ、2つの開放端の間に形成される中心軸に沿った管腔を定めている。図30に示すように、埋め込まれたときには、アンカー2810の中心軸が十二指腸104の中心軸に実質的に整列し、糜粥が装置2800を通過できるようにする。さらに、追従性のある波状アンカー2810は、充分な柔軟性および追従性をもたらすことによって組織への傷を最小限にし、組織の侵食の可能性を最小限にしつつ、組織への堅固な固定点をもたらす。
【0108】
追従性のある波状アンカー2810は、熱処理されたばね鋼、またはステンレス鋼などの弾性金属から製造でき、あるいは広くニチノールと称されているNiTi合金などの合金から製造できる。他の合金としては、MP35Nなど、きわめて高い引っ張り強度の独特な組み合わせを有しているニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金が挙げられる。さらに、波状アンカー2810を、同様の特性を有するポリマーおよび/または複合材料から形成することができる。波状アンカー2810を、所望の形状へと輪郭付けられたワイヤなどのただ1本のストランドから製造できる。さらに、波状アンカー2810を、所望の形状へと同様に輪郭付けられた同じまたは異なる材料からなる複数のストランドで製造することができる。いくつかの実施形態においては、波状アンカー2810を、ニチノールなどの所望の材料の筒状の素材から、波状に切り出すことができる。
【0109】
アンカー2810は、アンカーそのものへと取り付けられ、かつ/またはアンカーそのものに形成された針状突起物を使用するなど、アンカー208を固定するために本明細書において説明される任意の方法を使用して、体内に着脱可能に取り付けることができる。埋め込まれたとき、アンカー2810によって、スリーブ202または障壁を、好ましくは上流端において流体に対する密封をもたらしつつ、十二指腸104にしっかりと埋め込むことができる。流体に対する密封を向上させるため、スリーブの上流端を、図31に示すように波状アンカーにあわせて輪郭付けることができる。波状アンカー2810にあわせて輪郭付けられたスリーブ202を使用する装置2800においては、上流端がチューリップ状を呈する。
【0110】
図32Aは、胃腸内埋め込み装置を送入するための小型カテーテル・システム4250の一部分の斜視図である。この小型カテーテルは内側軸4200の下流端に、着脱可能なほぼ球形の部材4218を取り付けて有し、これにより、消化管を通って腸までのカテーテルの送入を容易にしている。胃腸内埋め込み装置が送入された後、球形の部材(ボール)4218が取り外され、突起物のなくなったカテーテルが、胃腸内埋め込み装置を通過して取り去られる。解放されたボールを腸を通って移動させるため、腸管の通常の蠕動が利用される。
【0111】
カテーテル・システム4250は、胃腸内埋め込み装置の折り畳み可能なアンカー部を折り畳んだ形態で収容する外側シース4222を備えている。折り畳み可能な固定装置については、図7、23、および28〜31に関連してすでに説明した。スリーブ202は、内側シース4200の外側に一時的に固定され、胃腸内埋め込み装置の適切な位置決め、およびその後の解放を可能にしている。
【0112】
図32Bは、図32Aの線42B−42Bに沿って得たカテーテル・システムの内側軸4200の断面図である。一実施形態においては、内側軸4200はペバックス(Pebax)7233からなる3管腔の押出し材であって、0.080インチの外径を有するとともに、それぞれ0.040インチ、0.020インチ、および0.020インチの直径を有する円形の内側管腔4202、4204、4206を備えている。この材料は、良好な熱可塑性および接合特性を備える材料から、小型を保ち、小さな最小曲げ半径を維持し、すなわち捩れなしで0.5インチを下回る曲げ半径を維持し、内側のガイドワイヤ線で補強されたときに良好な柱強度を保ち、さらに低摩擦係数を維持するように選択される。
【0113】
第1の管腔4202は、腸内へのカテーテル導入においてカテーテル軸の剛性を向上させるため、カテーテル軸にガイドワイヤまたはマンドレル4226を通すために使用される。さらに、第1の管腔4202は、胃腸内埋め込み装置が腸に送入された後に、スリーブ素材202を内側軸4200から離れるように持ち上げるべく流体を注入するためにも使用される。第2の管腔4204は、可動部材であるスリーブ保持ワイヤ4208を胃腸内埋め込み装置の下流端へと通すために使用される。スリーブ保持ワイヤは、スリーブ202の下流端を内側軸4200の外側へと保持するために使用される。第3の管腔4206は、カテーテル・システム4250を人体から取り去る前に、スリーブ202の下流端を内側軸4200から持ち上げるべく、カテーテルの先端に流体を注入するために使用される。
【0114】
図32Aに戻ると、ガイドワイヤ4226は第1の管腔4202に接続された金具4210を通過している。スリーブ202は、カテーテルの内側軸4200上に同軸に位置している。スリーブ202は、その下流端において、スリーブ保持用ワイヤ4208によって内側軸4200に保持されている。スリーブ保持用ワイヤ4208は、送入の際にスリーブ202を所定に位置に保つ。
【0115】
上流側の金具4220が第2の管腔に接続され、上流側の金具4212が第3の管腔4206に接続されている。胃腸内埋め込み装置の送入の際、第1の管腔4202は、0.035インチのテフロン被覆ガイドワイヤ4226で満たされ、このガイドワイヤ4226によって、適度な推進の可能な柱強度が、カテーテルの内側軸4200の可撓性を損なうことなく与えられる。直径0.015インチのテフロン被覆鋼製ワイヤが第2の管腔4204に配置され、スリーブの下流側の保持用ワイヤとして機能する。第2の管腔4204は、カテーテル軸4200の下流端の近傍に、2つの横穴4214、4216を有している。スリーブ下流側保持用ワイヤ4208は、上流側の横穴4214を通って第2の管腔4204から出、カテーテル軸の下流側の外径に密に巻き付いているスリーブ素材202を通って送られ、下流側の横穴4216を通って第2の管腔4204に再度進入している。これにより、解放の準備ができるまでスリーブ202を軸4200に保持するデッドボルト式の係止が、図14Aおよび図14Bに示した2管腔カテーテル軸に関して説明したデッドボルト式の係止と同様に生み出される。
【0116】
軸の下流端は剛体または膨張可能である球形の部材4218で終端され、非外傷性の先端を形成する。図示の実施形態においては、この球形の部材は、図17に関連して説明したボールと同様の剛体球である。図示の実施形態においては、ボールの直径は約0.5インチ(12.7mm)であるが、直径の範囲は約0.25インチ(6.4mm)〜約0.75インチ(19.2mm)である。膨張可能な球形部材の実施形態については、図40A〜40Bに関連して後で説明する。カテーテル軸の端部のボール4218は、ボール4218への張力を維持するスリーブ保持用ワイヤ4208によって軸4200に保持されているが、これについては図36に関連して後で説明する。
【0117】
畳まれたアンカー・アセンブリが、外側シース4222内に位置している。カテーテルの端部のボール4218は、カテーテルを引き戻すために解放される。解放機構がスリーブ保持用ワイヤを引っ張り、ボール端を解放し、スリーブの端部を解放する。次いで、アンカー・アセンブリが、すでに説明したとおり外側シースから解放される。
【0118】
カテーテルは、腸管へのアクセスが望まれるあらゆる時点で使用できる。例えば、カテーテルを使用して、内視鏡を腸内に通すことができる。このカテーテルは、迅速に腸を通り、ガイドワイヤを配置し、次いで配置されたガイドワイヤを内視鏡のための進路として利用できる。
【0119】
図33〜35は、図32A〜32Bに関連して説明した小型カテーテルを使用した胃腸内埋め込み装置の送入のステップを示している。図33は、体内の消化管の一部分の断面図であり、胃鏡/案内チューブ・アセンブリの配置を示している。
【0120】
管腔内を通っての小腸へのアクセスが、半剛体であるチューブを胃、幽門108および十二指腸上流部まで通過させ、腸管を好ましくは水である流体で膨張させ、次いで大きな非外傷性のボール端を備える細い可撓カテーテルに腸管を通過させることによって行なわれる。
【0121】
案内チューブ4300が、胃鏡4302の端部を覆って配置される。次いで、案内チューブ/胃鏡アセンブリが、患者の口を通って食道を下り、胃102の中に配置される。次いで、アセンブリは、幽門108および十二指腸104へと通される。
【0122】
案内チューブ4300は、約0.63インチ(16mm)の内径、および約0.70インチ(18mm)の外径を有している。長さは約30インチ(76.2cm)であって、ウレタンなどの柔軟なポリマーで作られ、捩れの防止および推進性を与えるため、平ワイヤによる外皮を有している。案内チューブ4300の下流端には、幽門108の損傷を最小限にするため、短い柔軟な端部を備えることができる。
【0123】
ひとたび配置がなされると、下流側で腸を膨張させるため、胃鏡の通路4300を通って流体が導入される。生理食塩水または水が好ましいが、空気または二酸化炭素(CO)を使用することもできる。長さ4フィートのスリーブを送入するためには、約500〜1000ccの流体が導入される。スリーブが短いと、膨張させるべき腸の長さが短くなるため、必要とされる流体は少なくなる。同様に、より長さの長いスリーブは、より多くの流体を必要とする。流体が導入された後、胃鏡は案内チューブから取り除かれる。
【0124】
必要であれば、胃鏡4302を案内チューブ4300から取り除き、流体を送入するためにバルーン・カテーテルを導入することができる。バルーン・カテーテルは幽門に送入され、約0.394〜0.591インチ(10〜15mm)まで膨らまされて、腸を密閉する。バルーン・カテーテルについては、図18に関連してすでに説明した。
【0125】
図34は、体内の消化管の一部分の断面図であり、案内チューブ4300の下流部から延びるカテーテル・アセンブリの下流部分が示されている。カテーテル・アセンブリ4250は、胃鏡4302が案内チューブから取り去られた後、案内チューブ4300を通って進められる。カテーテルが腸の輪郭に従うよう、カテーテル・アセンブリ4250の端部のボール4218によって、カテーテルに非外傷性の先導する先端がもたらされている。
【0126】
図35は、図28の胃腸内埋め込み装置が送入された後の体内の消化管の一部分の断面図である。胃腸内埋め込み装置のアンカーが、幽門108を通って位置する送入用チューブ4222の内側に位置している。カテーテルが完全に挿入されたとき、カテーテル4200の上流端のマーカが、案内チューブ4300の対応するマーカと整列する。胃腸内装置が所定の位置に置かれると、スリーブ202を所定の位置に保持し、さらにボール4218をカテーテルの下流端に保持してもいるカテーテル4302内のスリーブ保持用ワイヤ4208を、図16A〜16Cに示したカテーテル・システムに関して説明したとおりに取り除くことができる。スリーブ保持用ワイヤが下流方向に引き戻されると、ボール4218およびスリーブの下流端4500の両者が解放される。次いで、スリーブ202を開いて、カテーテル軸4200から離れるよう展張するため、カテーテルの第3の管腔4206を通って流体が導入される。水または生理食塩水が好ましい流体であるが、空気またはCOを使用することもできる。約100〜200ccが注入される。流体は、中間点の横穴4502からカテーテルを出て、下流および上流の両方向に移動する。次いで、約20ccの流体が、第2の管腔4204を通って注入され、下流側の横穴4216から出る。この流体が、スリーブ202の下流端を持ち上げて、内側カテーテル軸4200から離す。
【0127】
次いで、案内チューブ4300が取り除かれ、胃鏡が胃内に再度導入されて十二指腸を観察すべく幽門108を通過する。続いて、カテーテルの上流端に接続されている送入チューブ4222を引き戻すことによって、上流側のアンカーが配置される。アンカーが配置された後、カテーテル・システム4250が患者から引き抜かれる。ボールがその場に残されるため、カテーテル4250は、幽門108および胃102ならびに食道を通って引き戻されるときにスリーブ202に引っ掛かる可能性のある縁部を有していない。カテーテルまたは他の装置を後方に残しつつ胃腸管から装置を引き抜くことが通常はきわめて困難であるため、この外形に突起物がないカテーテルの構造は重要である。
【0128】
口腔を通ってカテーテルを通過させることによって小腸にアクセスする方法を、図33〜35に関連して説明した。この小型のカテーテルは、胃の切開を通じて小腸にアクセスするためにも使用できる。カテーテルを、図33に示すように胃の上部を通過して送入する代わりに、カテーテルを、例えば図33の位置4304の切開部を通過し、胃を通過して送入できる。腸管が好ましくは水である流体で満たされ、次いで腸管を通過する大きな非外傷性のボール端を備える細い可撓カテーテルが、図33〜35に関して説明したとおり腸管に通される。
【0129】
図36〜38は、カテーテルの下流端に着脱可能な球状部材を取り付ける実施形態を示している。図36は、カテーテル・システムの下流端の平面図であって、着脱可能なボール端機構が示されている。図32に示したカテーテル・システムに関連して説明したとおり、スリーブ保持用ワイヤ4208が、カテーテル軸4200内の第2の管腔4204を通過して延び、上流側の横穴4214を通って第2の管腔4204から出て、下流側の横穴4216を通って第2の管腔に再度進入している。
【0130】
ワイヤまたは糸4600の両端はボール4218に取り付けられており、さらに糸4600は、スリーブ保持用ワイヤ4208を通してループを形成し、ボール4218をカテーテルの内側軸4200の下流端に保持する。ボール4218は、金具4220(図32A)を用いてスリーブ保持用ワイヤ4208を、糸4600がもはやスリーブ保持用ワイヤ4208によって保持されなくなるまで引き戻すことによって解放される。これにより、ボール4218は、カテーテルの内側軸4200の下流端から脱落し、通常の蠕動によって腸を通過して体内から出る。
【0131】
図37は、カテーテル下流端の平面図であり、着脱可能なボール端機構の別の実施形態を示している。内側軸4200は、ボール4218の凹所4706に嵌まり込んでいる。スリーブ保持用ワイヤ4208は、上流側の横穴4214を通って内側軸4200から出て、スリーブ202を貫き、下流側の横穴4216を通って内側軸4200に再度進入している。スリーブ保持用ワイヤ4208の下流端はコイル形状4700に形成され、ボール4218のポケット4702内に置かれている。ポケット4702は、凹所4706よりも直径が小さくかつポケット4702よりも直径が小さい孔4704によって、凹所4706に接続されている。スリーブ保持用ワイヤ4208の下流端は焼きなまし処理されており、これにより、ワイヤを真っ直ぐにして孔4704を通過できるようにしているので、スリーブ保持用ワイヤ4208を上流方向に引き戻すことができる。
【0132】
図38は、着脱可能なボール端機構のさらに別の実施形態である。内側軸4200が、ボール4218の凹所4706に嵌まり込んでいる。スリーブ保持用ワイヤ4208は、上流側の横穴4214を通って内側軸4200から出て、スリーブ202を貫き、下流側の横穴4216を通って内側軸4200に再度進入している。
【0133】
ボール4218は、凹所4706からボール4218の外表面に延びる2つの孔4800、4802を備えている。スリーブ保持用ワイヤ4208の下流端は、孔4800を通過し、ループを描いて孔4802に戻されている。スリーブ保持用ワイヤ4208が上流方向に引かれると、ワイヤ4208は、孔4802を通り、次いで孔4800を通って引き戻され、ボール4218がカテーテルの下流端から解放される。
【0134】
図39は、剛体球状部材の別の実施形態の断面図である。ボール4900が、2つの半球4902および4904で作られている。スリーブ保持用ワイヤ4600は、S字の通路4908に嵌まり込んでいる。通路4908のS字によって、胃腸内埋め込み装置の送入の際にボールをカテーテルの端部に保持するための充分な摩擦が生成されている。スリーブ保持用ワイヤ4600は、通路4908に隙間なく嵌まり込んでいるが、手前側に引くことにより、スリーブ保持用ワイヤ4600をボール4900から解放できる。カテーテルの軸は、凹所4906に嵌まり込む。
【0135】
カテーテルの下流端において、ボール4218の代わりに小型のバルーンを使用できる。図40A〜40Bは、図34に示したカテーテルの下流端の平面図であり、小型のバルーンを備えている。図示の実施形態においては、図34に示したカテーテルの下流端のボールが、小型のバルーンで置き換えられている。図40Aは、膨張可能な球状部材を備えたカテーテル下流端の平面図である。図40Bは、膨張可能な球状部材が膨らまされた後のカテーテル下流端の平面図である。
【0136】
図40Aを参照すると、シリコーン、TPE、またはラテックスのスリーブ202が、カテーテル軸4302の下流端に取り付けられている。注入孔5010がカテーテルの内側管腔につながっており、膨張可能球状部材(バルーン)5008の膨張のための通路をもたらしている。バルーン5008は、金属バンド5000によって軸4302に取り付けられており、この金属バンド5000は、先細りの上流側移行部5002を有して、スリーブ202を送入後にスリーブ202に引っ掛かる可能性のある縁部を最小限にしている。金属バンド5000の厚さは、約0.003〜0.005インチ(0.076〜0.127mm)である。バルーン5008は、壁の薄い、成型による、筒状のポリウレタンまたはシリコーンであってよい。バルーンは、バルーンがカテーテルの先端を超えて広がることがないよう、下流端をカテーテル軸の管腔に押し込んでプラグ5006によってカテーテル軸4302に取り付けた状態で、カテーテル軸4302の下流部に沿って保持されている。
【0137】
図40Bは、バルーン5002が球状に展張された後のカテーテル4302の下流端を示している。バルーンは、カテーテル軸を通過して流れて流体通過孔を通ってカテーテル軸からバルーン5008に進入する流体によって、展張される。カテーテル軸の端部のプラグ5006が、カテーテルの先端を超えてのバルーンの展張を制限することによって、バルーンが図40の実施形態に示したボールのように機能することを保証し、さらにプラグは、バルーンに若干の横方向強度をもたらしてもいる。カテーテル下流端のボールをバルーンで置き換えることによって、下流端が軸方向の圧縮に対してより安定する。さらに、カテーテルが横荷重によって偏向することがない。
【0138】
装置を、腸内のより深い所を通過させようと試みると、摩擦および曲がりが増加するため、さらに困難になる。図41は、胃腸内埋め込み装置を送入する別の送入システムの平面図である。この送入システムは、長いスリーブを腸内に送入できるようにし、折り畳まれたスリーブ素材を内部に有するピルを下流側に備えている。蠕動が、ピルを腸内で下流方向に運び、スリーブ素材の展開を生じさせる。
【0139】
この送入システムは、胃腸内埋め込み装置のこの実施形態のためのスリーブの下流部分の送入には限定されない。図28に関連して説明したとおり、胃腸内装置は、アンカー2810およびスリーブ202を備えている。スリーブ202の上流部分は完全に展開されており、スリーブ202の下流部分のいくらかは、ピル5100内に詰め込まれている。
【0140】
胃腸内埋め込み装置は、すでに説明したとおりに腸上流部に送入される。腸内に配置されると、腸の自然な活動からの蠕動によって、ピル5100が腸を通過して下流側へと引き込まれる。ピルが下流側に引き込まれるにつれて、スリーブ202の下流端がピルから引き出され、腸内で真っ直ぐに展開される。蠕動によって、ピルが腸の残りの部分を通過して引かれ、最終的にピルが体内から出される。
【0141】
長さ1フィートのスリーブ素材を、長さ1インチ(25.4mm)および直径0.47インチ(12mm)のピルに詰め込むことが可能である。したがって、胃腸内埋め込み装置の送入のためにカテーテルを腸内に2フィートほど進めようとする場合、ピル5100によって、ピル5100内に入れて送入される3フィート分のスリーブのうち、末端1フィートの部分を追加することで長さ3フィートのスリーブを送入できる。
【0142】
図42は、図41に示した送入機構の別の実施形態の平面図である。この送入機構は、長いスリーブを腸内に送入できるようにしており、ピルの形状に形成されたカプセルに入れたスリーブ素材を有している。各ピルは、体内において異なる速度で溶解し、ピルの被覆が溶解したときスリーブが展張され、蠕動によるスリーブの下流方向への引き出しを可能にしている。
【0143】
この送入機構を、図28に関連して説明した胃腸内埋め込み装置の送入について示す。すでに説明したとおり、スリーブ202の第1の部分は、胃腸内埋め込み装置が腸上流部に送入された後に完全に展張される。スリーブ202の複数の下流部分は、複数の溶解可能ピル5200、5202、5204を形成すべく被覆されている。それぞれのピル5200、5202、5204を形成すべく適用される被覆は、溶解可能な材料で作られており、被覆のそれぞれは、ポリマーの構成および周囲の環境に応じて異なる時点で溶解するように調製されている。ピル5200、5202、5204のそれぞれは、蠕動によって下流方向に運ばれる。第1のピル5200の被覆は最初に溶解するように選択されている。第1のピル5200の被覆が溶解した後、第2および第3のピル5202および5204が、詰め込まれているスリーブ202を下流方向に引っ張る。第2のピル5202の被覆が次に溶解し、第3のピル5204が、スリーブをさらに下流方向に引っ張る。最後に第3のピル5204の被覆が溶解し、スリーブ202が完全に展張される。溶解可能な複数のピルは、単にスリーブの最初の1〜2フィートの部分を腸上流部に送入するだけで、最終的に数フィートのスリーブ素材の送入を可能にする。図41に示した実施形態に関して説明したとおり、長さ1フィートのスリーブ素材を、長さ1インチ(25.4mm)、直径0.47インチ(12mm)のピルに詰め込むことが可能である。
【0144】
ポリエチレン・グリコール(PEG)、ポリ乳酸(PLA)、およびポリカプロラクトン(PCL)を含む多くの生体分解性材料を、ピルの被覆に使用できる。これらの材料は、成形可能な樹脂、またはさまざまな種類の化学および光化学反応によって固体に変化する液体として製造される。これらの材料は、体内組織にとって安全な化学物質に分解される。これらの樹脂は、主鎖内に加水分解に対して不安定な結合を有するように基本分子を組み合わせることで、生体分解性とされる。
【0145】
例えば、PEGは、主鎖に乳酸を取り入れることによって生体分解性となる。ラクチド分子の一端が、水の存在下で即座に分解する結合を形成する。分解速度を制御する一手段は、主鎖内のラクチド分子の数を変化させることによる。数が多いほど、鎖が素早く分解する。さらに、得られる固体の固体率または密度を変化させて、分解速度を変えることができる。より高密度の材料は、分解により長い時間を必要とする。さらに、加水分解に対して不安定である結合は、pHが高い環境において、より速く分解する。このような環境は、小腸内において、胆液および重炭酸塩が溜まっているスリーブの外側に自然に生じている。
【0146】
図43A〜43Cは、ガイドワイヤ上への配置のための中央管腔を有している別の実施形態のカテーテル・システム4250を送入するための方法を示している。図43Aは、体内の消化管の一部分の断面図であり、胃を通過し、幽門104を通過して十二指腸104に延びる腸鏡5300が示されている。続いて、ガイドワイヤ5302が、腸鏡5300を通過して通される。ガイドワイヤを通過させた後、腸鏡5300は取り除かれる。図43Bは、体内の消化管の一部分の断面図であり、腸鏡5300の除去後について、胃102および十二指腸104を通過して延びているガイドワイヤ5302が示されている。カテーテル・システムは、食道、胃102、および胃102の幽門部108を通過して十二指腸104まで、ガイドワイヤ5302に追従する。図43Cは、体内の消化管の一部分の断面図であり、ガイドワイヤ5300上で胃102および十二指腸104を通過して延びているカテーテルが示されている。胃腸内埋め込み装置が送入された後、カテーテル4200は胃を通過して引き戻される。カテーテルが取り除かれた後、ガイドワイヤ5302は腸および胃102を通って引き戻される。
【0147】
波状の設計の利点は、きわめて長い範囲の直径にわたってきわめて平坦な追従曲線を有するアンカーを形成できる能力にある。一般に、図44を参照すると、典型的な追従曲線は、種々の装置が半径方向に圧縮されたときにもたらす半径方向の力を示している。これは、腸が収縮したときでも、組織に対する力が事実上一定であることを意味している。このように追従性の高い装置は、周囲の組織にあまり傷をもたらさない。上述の波状アンカーの典型的なばね定数は、メッシュ式のステントに比べ一桁小さい。さらに、波状アンカーのもたらすばね定数は、チューブから作られた典型的なニチノール・ステントの約半分である。さらに、市販のステントの運動の範囲が、約0.5インチ未満であるのに対し、波状アンカーは、最大約1.5インチの範囲において、実質的に平坦な追従曲線にて動作可能である。公知のステント、および波状アンカーを含む他のいくつかの装置について、典型的な試験結果を表1に提示する。
【0148】
【表1】

【0149】
本発明を、本発明の好ましい実施形態を参照しつつ詳細に示して、説明してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の技術的範囲から離れることなく、形態および細部についてさまざまな変更が可能であることを理解できるであろう。
【符号の説明】
【0150】
104 十二指腸
200 胃腸内埋め込み装置
202 スリーブ
208 アンカー(自動展張式アンカー)
1202 外側シース
1224 スリーブ保持用ワイヤ解放機構
1226 内側シース
2000 回収装置
2002 フィンガ
2600 送入システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端において開いており、十二指腸へと延びて十二指腸における栄養素の吸収を制限するように構成されている非支持の可撓スリーブ、および
前記スリーブの上流部へと接続され、十二指腸内に保持されるように構成されており、緩められた状態の直径が少なくとも40ミリメートルであるアンカー
を有している胃腸内埋め込み装置。
【請求項2】
請求項1において、緩められた状態における前記アンカーの最小径が、少なくとも45ミリメートルである胃腸内埋め込み装置。
【請求項3】
請求項1において、前記アンカーが、埋め込まれた状態において、30〜35ミリメートルの直径を有している胃腸内埋め込み装置。
【請求項4】
請求項1において、前記アンカーが、埋め込まれた状態において、長さ対直径の比が1である長さおよび直径を定めている胃腸内埋め込み装置。
【請求項5】
請求項1において、前記アンカーが十二指腸球部に保持されるように構成されている胃腸内埋め込み装置。
【請求項6】
請求項1において、前記アンカーが折り畳み可能である胃腸内埋め込み装置。
【請求項7】
請求項1において、前記アンカーが前記スリーブの上流部によって覆われている胃腸内埋め込み装置。
【請求項8】
請求項4において、前記アンカーが、前記スリーブの第1の内側層と前記スリーブの第2の外側層との間に挟まれている胃腸内埋め込み装置。
【請求項9】
請求項1において、前記アンカーが、ストラットからなる網目を備えているステントを含んでいる胃腸内埋め込み装置。
【請求項10】
請求項1において、前記アンカーが、追従性の高い波状アンカーを含んでいる胃腸内埋め込み装置。
【請求項11】
請求項1において、前記アンカーが、当該アンカーが前記スリーブの上流部を十二指腸へと固定すべく広がるときに組織へと挿入されるように構成されている手段を有している折り畳み可能なアンカーである胃腸内埋め込み装置。
【請求項12】
請求項1において、前記スリーブが、胃を出て当該スリーブの上流端を通って流し込まれる糜粥がトライツ靭帯の下流端を通って当該スリーブから出る長さである胃腸内埋め込み装置。
【請求項13】
請求項1において、前記スリーブの素材が、0.2未満の摩擦係数を有している胃腸内埋め込み装置。
【請求項14】
請求項1において、前記スリーブがフッ素重合体で形成されている胃腸内埋め込み装置。
【請求項15】
請求項11において、前記フッ素重合体が延伸ポリテトラフルオロエチレンである胃腸内埋め込み装置。
【請求項16】
請求項12において、FEP層をさらに有している胃腸内埋め込み装置。
【請求項17】
請求項1において、前記スリーブがポリエチレンで形成されている胃腸内埋め込み装置。
【請求項18】
請求項12において、前記スリーブがシリコーンで被覆されている胃腸内埋め込み装置。
【請求項19】
請求項12において、前記スリーブがポリウレタンで被覆されている胃腸内埋め込み装置。
【請求項20】
請求項1において、前記スリーブの下流端が、方向性をもって表面加工されている胃腸内埋め込み装置。
【請求項21】
請求項1において、前記アンカーを十二指腸の筋肉組織へと固定するように構成された取り付け手段をさらに有している胃腸内埋め込み装置。
【請求項22】
請求項18において、前記取り付け手段が、前記スリーブの上流部を十二指腸へと取り付けるため前記アンカーの外表面から延びる針状突起物を含んでいる胃腸内埋め込み装置。
【請求項23】
請求項19において、前記針状突起物が2方向を向いている胃腸内埋め込み装置。
【請求項24】
請求項20において、前記針状突起物が、前記非支持の可撓スリーブを十二指腸の筋肉組織へと固定する胃腸内埋め込み装置。
【請求項25】
請求項1において、前記スリーブに組み合わされ、前記スリーブの座屈を減らすべく前記アンカーの下流から前記非支持の可撓スリーブの下流端まで延びている座屈防止装置をさらに有している胃腸内埋め込み装置。
【請求項26】
請求項1において、前記スリーブが、十二指腸において分泌された酵素が当該スリーブの外側で十二指腸を通過できるようにしている胃腸内埋め込み装置。
【請求項27】
請求項1において、前記非支持の可撓スリーブを挿入するためのカテーテルと組み合わせられている胃腸内埋め込み装置。
【請求項28】
請求項1において、前記非支持の可撓スリーブを取り出すための回収装置と組み合わせられている胃腸内埋め込み装置。
【請求項29】
請求項1において、前記アンカーの取り外しを容易にするように構成された引き紐をさらに有している胃腸内埋め込み装置。
【請求項30】
請求項26において、前記引き紐が、前記アンカーの上流部に沿って位置し、引っ張られたときに上流部の直径を減少させる胃腸内埋め込み装置。
【請求項31】
十二指腸において、両端が開いている非支持の可撓スリーブの上流部を固定するステップ、および
前記非支持の可撓スリーブを十二指腸へと下流方向に延ばし、栄養素の吸収を制限するステップを含んでいる治療方法。
【請求項32】
請求項28において、前記アンカーが十二指腸球部に保持される治療方法。
【請求項33】
請求項28において、前記アンカーが折り畳み可能である治療方法。
【請求項34】
請求項28において、前記アンカーが前記スリーブの上流部によって覆われている治療方法。
【請求項35】
請求項28において、前記スリーブの素材が、0.2未満の摩擦係数を有している治療方法。
【請求項36】
請求項28において、前記スリーブがフッ素重合体で形成されている治療方法。
【請求項37】
請求項28において、前記スリーブの上流部を、前記ステントの外表面から延びる針状突起物によって十二指腸へと固定するステップをさらに含んでいる治療方法。
【請求項38】
十二指腸に、両端が開いている非支持の可撓スリーブを固定するステップ、および
前記非支持の可撓スリーブを十二指腸へと延ばし、十二指腸における栄養素の吸収を制限するステップ
を含んでいる2型糖尿病を処置するための方法。
【請求項39】
請求項35において、前記アンカーが十二指腸球部に保持される方法。
【請求項40】
請求項35において、前記アンカーが追従性の高い波状アンカーを含んでいる方法。
【請求項41】
請求項35において、前記スリーブの素材が、0.2未満の摩擦係数を有している方法。
【請求項42】
請求項35において、前記スリーブがフッ素重合体で形成されている方法。
【請求項43】
請求項35において、前記スリーブの上流部を十二指腸に固定するため、前記スリーブの外表面から延びている針状突起物を、折り畳み可能なアンカーに組み合わせるステップ
をさらに含んでいる方法。
【請求項44】
胃腸内埋め込み装置を体内に配置するための送入システムであって、
胃腸内埋め込み装置を十二指腸に固定するために緩められた状態の最小直径が少なくとも40ミリメートルであるアンカー装置を備えている胃腸内埋め込み装置の上流部を収容するため、当該送入システムの上流部に位置する外側シース、
前記外側シースの内側に位置し、前記外側シースを超えて当該送入システムの下流端に向かって延びている内側シースであって、前記外側シースを過ぎてガイドワイヤを通すための第1の管腔と、前記ステントへと接続されたスリーブの下流端を当該内側シースに固定するための可動部材を移動させるための第2の管腔とを内部に有している内側シース、
前記アンカー装置を前記外側シースから解放するための解放機構、および
前記スリーブの下流端を解放するため、前記可動部材へと接続されたスリーブ解放機構
を有している送入システム。
【請求項45】
請求項41において、前記スリーブの下流部が、送入のためのピルに収容されており、前記スリーブの下流部が、蠕動によって前記ピルから解放される送入システム。
【請求項46】
請求項41において、前記スリーブの下流部が、送入のための溶解可能なピルに収容されている送入システム。
【請求項47】
請求項41において、前記可動部材によって保持されて、当該送入システムの下流端に位置する球状部材をさらに有している送入システム。
【請求項48】
請求項44において、前記球状部材を遠方から解放することができる送入システム。
【請求項49】
請求項45において、前記アンカー装置が解放された後に、前記スリーブ解放機構が、前記可動部材を当該送入システムの上流端に向かって引っ張り、前記球状部材を解放する送入システム。
【請求項50】
請求項41において、当該送入システムの下流端に位置する展張可能なバルーンをさらに有している送入システム。
【請求項51】
請求項41において、前記内側シースが、流体が通過して前記スリーブを当該送入装置の下流端から解放する第3の管腔を備えている送入システム。
【請求項52】
胃腸内埋め込み装置を体内から取り出すための回収装置であって、
胃腸内埋め込み装置を十二指腸に取り付けるための自動展張式アンカーであって、緩められた状態の最小直径が少なくとも40ミリメートルである自動展張式アンカーを備えている胃腸内埋め込み装置の上流部を収容するための外側シース、および
前記外側シースの内側に位置する内側シースであって、前記アンカーの上流端を折り畳んで前記アンカーを前記外側シースに引き込むことができるようにする複数のフィンガを、下流端から延伸させている内側シース
を有している回収装置。
【請求項53】
請求項49において、前記フィンガが、前記ステントに係合して前記アンカーの上流端を半径方向内向きに引くことによって前記ステントを折り畳む回収装置。
【請求項54】
請求項50において、前記フィンガが、前記内側シースが前記フィンガを覆うように移動するときに半径方向内向きに引く回収装置。
【請求項55】
十二指腸において、両端が開いており少なくとも一部が有効化合物で含浸されている非支持の可撓スリーブを固定するステップを含んでいる治療方法。
【請求項56】
請求項52において、前記有効化合物が、炎症を減らす薬物である治療方法。
【請求項57】
請求項52において、前記非支持の可撓スリーブを空腸へと延ばすステップをさらに含んでいる治療方法。
【請求項58】
請求項52において、前記有効化合物が満腹ホルモンを含んでいる治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図25D】
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【図25E】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図26D】
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【図26E】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32A】
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【図32B】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40A】
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【図40B】
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【図41】
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【図42】
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【図43A】
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【図43B】
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【図43C】
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【図44】
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【公開番号】特開2010−269158(P2010−269158A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161693(P2010−161693)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2006−543785(P2006−543785)の分割
【原出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【出願人】(505205362)ジーアイ・ダイナミックス・インコーポレーテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】GI DYNAMICS,INC.
【Fターム(参考)】