説明

腹膜透析用薬剤の製造のための医学的溶液を調製する方法

医学的溶液を調製する方法であって、a)1以上のアセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖を含む溶液を、容器の少なくとも1つの区画内に2.0〜5.0のpHで提供する工程と、b)前記少なくとも1つの区画およびその内容物を最終的に殺菌する工程とを含む方法について開示するとともに、医学的溶液を調製するために使用される溶液、前記溶液を含む容器、および腹膜透析用薬剤の製造のための前記溶液について開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、医学的溶液を調製する方法、医学的溶液を調製するために使用される溶液、前記溶液を入れる容器、および腹膜透析用薬剤の製造のための前記溶液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
N-アセチルグルコサミン(NAG)およびグルコサミンは、生化学的にはアミノ糖として分類される。アミノ糖は、ほとんど全ての細胞において一連の生化学的反応を通して血中グルコースから形成される。ヒアルロナンは、N-アセチルグルコサミンおよびグルクロン酸を含む二量体から構成されるポリマーである。外因性ヒアルロナンを補充した液体で長期間透析を受けたラットでは、透析膜としての腹膜の機能が良好に保たれることが明らかになっている(Wieczorowska K, Breborowicz A et al、腹膜障害に対するヒアルロン酸の保護効果、Perit Dial Int 1995; 15: 81-83を参照)。
【0003】
Breborowicz A、Kuzlan-Pawlaczyk M et al、ヒト腹膜中皮細胞および繊維芽細胞によるグリコサミノグリカンのインビボ合成のための基質としてのN-アセチルグルコサミンの作用、腹膜透析における前進、1998; 14:31-35は、ヒト腹膜中皮細胞および繊維芽細胞によるヒアルロナンおよび硫酸化グリコサミノグリカンの生成をNAGが急速に刺激することを教示している。
【0004】
Wu G、Wieczorowska-Tobis K, et al、「N-アセチルグルコサミンはラットにおける長期的腹膜透析中に腹膜の透過性を変化させる」Perit Dial Int, 1998; 18:217-224は、N-アセチルグルコサミンを補充した透析溶液での腹膜透析が、腹膜間質内にグルコサミノグリカンの蓄積を引き起こし、腹膜透過性の好ましい変化を生じさせると結論づけている。
【0005】
Breborowicz, M et alは、腹膜透析液体中でグルコースをN-アセチルグルコサミンに置き換えることを開示している。
【0006】
米国特許5,536,469は、グルコースまたはグルコース様化合物を含む無菌医学的溶液を使用するシステムおよび前記システムを対象とした溶液を開示している。
【0007】
その有利な特性のために、より生体適合性の腹膜透析溶液を得ることを目的として、NAGは、腹膜透析溶液の中でグルコース成分の一部または全ての代替成分として導入されてきた(WO97/06810を参照)。
【0008】
腹膜透析とは、患者の腹膜の毛細血管中にある溶質および水分を、腹膜腔に注入された高張液と交換する方法である。この方法の原理は、濃度勾配によって移動される溶質の拡散と、浸透圧の差異による水の移動とにある。この方法は、例えば、特別な装置を一般に必要としないなど、多くの利点をもつ。患者の血液の体外循環を必要としないので、血液動態への影響が少なく、さらに腹膜透析は連続的処理であるから、腎臓の機能に非常に近似している。
【0009】
腹膜透析は、一般に持続的外来腹膜透析(CAPD)、間欠的腹膜透析(IPD)、持続性周期的腹膜透析(CCPD)または自動腹膜透析(APD)として分類される。
【0010】
CAPDでは、カテーテルを患者の腹壁内に持続的に差し込み、約1.5〜2.5 Lの透析液をカテーテルを通して腹膜腔内に正常に導入する。腹膜腔をこの液体で浸し、適切な時間の経過まで放置し、その後に排出を行う。溶質および水の除去は、半透膜として機能する腹膜を通して行う。
腹膜透析のために通常使用される透析液は、浸透圧物質、例えばグルコースおよびその類縁体、電解質、例えばナトリム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、および有機酸塩、例えば乳酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、またはピルビン酸ナトリウムを含む水溶液である。これらの腹膜透析液体の成分は、電解質または酸−塩基平衡のレベルを制御し、老廃物を除去し、および限外ろ過を効果的に行うように選択される。
【0011】
例えば、WO 99/27885(Gambro Lundia AB)では、多区画の袋の中に医学的溶液を入れている。この袋の中では、特に、最終的に調製される溶液の活性成分の濃度を調製するために、異なる溶質を袋の別々の区画の中に保持することができる。
【0012】
医学的溶液は、通常は加熱殺菌される。多くの国の医療当局は、医薬製品の最終的なパッケージング後に殺菌を要求している。従って、多くの場合、溶液を無菌ろ過することができない。
【0013】
しかしながら、熱殺菌および貯蔵中の望まれない細胞傷害性物質の形成の問題は、様々な医学的溶液、特に腹膜分野、例えば腹膜透析溶液について存在する。例えばEP-B1-0 668 785(Gambro Lundia AB)によって、医学的溶液中のグルコースまたはグルコース様化合物から毒性分解生成物の量を減少させることが知られている。
【0014】
また、アミノ糖、例えばNAGは、従来の医学的溶液中では加熱殺菌後に細胞傷害性が増加することが解っている。この細胞傷害性は、前記アミノ糖からの毒性分解生成物の形成に依存する。グルコースと接触すると、既知のグルコース分解生成物は、加熱殺菌されたNAG溶液中では見出されなかった。この事実は、今まで知られておらず、本発明についての基礎を形成する。
【0015】
NAGおよび他のアミノ糖は、グルコース環に結合した1つのアミノ基と多分アセチル基とをもつことでグルコースおよびグルコース様化合物とは大きく異なる。分解プロセスとは無関係に、グルコースの場合にはpHが殺菌中に減少するにもかかわらず、NAG溶液のpHは殺菌中に増加することが解った。これは、グルコースとは対照的に、アセテートを形成するNAGが加水分解され、これがpHを増加させていることを示す。
【0016】
従って、上記した問題を解決し、かつアミノ糖、特にNAG、およびその誘導体を含むとともに、上述した細胞傷害性生成物の形成を伴わずに加熱殺菌される能力をもつ医学的溶液を提供する必要性がある。
【本発明の概要】
【0017】
本発明の目的は、上述した問題を解決することである。
【0018】
本発明によれば、この目的は、医学的溶液、好ましくは腹膜透析溶液を調製するための改善された方法であって、
a)2.0〜5.0のpHを示す、1以上のアセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖を含む溶液を、容器の少なくとも1つの区画内に提供する工程と、
b)前記少なくとも1つの区画およびその内容物を最終的に殺菌する工程と
を含む方法によって達成される。
【0019】
さらに、本発明は、医学的溶液を調製するために使用される溶液、および前記溶液を含む容器に関する。
【0020】
本発明はまた、腹膜透析用薬剤の製造のための前記溶液の使用に関する。
【0021】
他の態様では、本発明は腹膜透析を行う方法に関し、前記方法は、腹膜透析のための前記薬剤を患者の腹膜腔に導入することを含む。
【0022】
本発明の目的、課題、解決手段、およびその態様のさらなる開示は、図面および添付の特許請求の範囲を参照しながら以下の本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0023】
本発明は、上述した教示の発展であり、無菌の医学的溶液、好ましくは腹膜透析のための溶液を調製するための方法に関する。
【0024】
最終的な加熱殺菌中でpH値およびNAG濃度を変化させながら細胞増殖阻害(ICG)と蛍光のパーセンテージの測定を行った実験を、図1〜3に示す。実験の結果は、アミノ糖含有溶液のpHを中性よりも低下させ、かつ本発明の好ましい実施形態において、アミノ糖(1種類/複数種類)の濃度を最適化させることもできることを意味する。
【0025】
物質または医学的液体の細胞傷害性を研究する単純で信頼できる既知の方法は、培養された細胞の増殖性を、細胞増殖のインビトロ阻害(ICG)として評価することである。再構成されたアミノ糖の量の大ざっぱな見積を得るための他の方法は、蛍光の測定である。
【0026】
より正確には、図1のグラフを見ると、1.5%NAGを含む溶液においてpH2.5〜3.5付近で殺菌を行うと、細胞増殖の阻害が最小値に至ることが見てとれる。これは、インビトロでの毒性学的視点から、2.5〜3.5付近の最適pHで殺菌されたNAG含有溶液が、より高いまたはより低いpH値で殺菌してより高いパーセンテージで増殖を阻害する溶液よりもヒトに対して適合性があることを意味する。
【0027】
図2における棒グラフは、最終的な加熱殺菌中に異なるpH値でNAG濃度を増加させたときの影響を示す。細胞増殖の阻害パーセンテージは、pH5.5および7.2での最終的な加熱殺菌後よりもpH3.0での最終的な加熱殺菌後の方が低く、さらに、3つのpH値の全てにおいて、1.5%のNAG濃度よりも30%のNAG濃度の方が最終的な加熱殺菌後の細胞増殖の阻害が低いことがわかる。
【0028】
図3は、最終的に加熱殺菌したNAG含有溶液についてのpHと、350nmでの励起および430nmの発光で測定される蛍光との間の関係を示す。最も低い蛍光がpH4付近で観察され、その結果は図1において明らかになった毒性結果と近似している。
【0029】
本明細書中で使用される用語「最終的な」殺菌とは、製品がその最後のパッケージにおいてエネルギーの付加を伴う殺菌方法(例えば、加熱および/または放射)によって殺菌されることを意味する(この用語の詳細な説明および異なる殺菌の概要については、ヨーロッパ薬局方1977、p 283、欄1、最終段落から、欄2、第1段落まで、p284、欄2、「ろ過」を参照)。無菌ろ過は、製品中に含められる溶液のろ過を伴い、溶液は、容器内で無菌的に充填される。これは、この内容物に必要とされる無菌性を保障しないので、最終的殺菌によって薬剤を殺菌することができるときは、無菌ろ過は薬剤の殺菌方法として使用することができない。
【0030】
最終的殺菌は、加熱殺菌および/または放射線殺菌を含み得るが、好ましくは少なくとも100℃、好ましくは121℃のオートクレーブ内において行われる加熱殺菌である。殺菌時間は、殺菌温度、容器の型および殺菌されるその内容物に依存しながら変化させることができる。放射線殺菌は、イオン化または非イオン化殺菌のいずれでもよい。イオン化殺菌の例は、ガンマおよびベータ放射である。非イオン化放射線殺菌の例はUV放射線である。
【0031】
本発明による方法は、好ましくはWO 99/27885(Gambro AB)に開示されたような多区画容器で行われる。本発明では、前記容器は、生理学的に適合性のpH調整および希釈溶液を入れる少なくとも1つの区画と、1以上のアセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖を含む溶液(以下、単にアミノ糖溶液と呼ぶ)を入れる少なくとも1つの区画とを備える。アミノ糖溶液は1区画のみに存在していてもよい。異なる区画内の溶液は、加熱殺菌が可能であり、容器全体をオートクレーブ内において前記区画内に前記溶液を入れた状態で加熱殺菌することができる。殺菌および後の貯蔵中にお互いから区切られている分離された区画内の溶液を殺菌した後に混合し、最終的に調製された無菌の医学的溶液、好ましくは腹膜透析のための溶液を調製することができる。殺菌後に混合することができる。また、少なくとも1つの他の最終的に殺菌された容器の区画内で、最終的に殺菌されたpH調整および希釈溶液と混合し、医学的溶液を最終的に調製してもよい。このような医学的溶液は、前記最終的に調製されたpH調整および希釈溶液と混合する前に、最終的殺菌後に長時間にわたって貯蔵することができる。しかしながらまた、殺菌するための溶液を含み、無菌接続用の無菌接続バルブを含む接続手段を備えた分離した間接接続容器において最終的殺菌を行うこともできる。また、分離した容器を、切断可能なシール、例えば従来の壊れやすいピンを使って製造中に前もって接続しておくこともできる。
【0032】
本発明によれば、アミノ糖含有溶液のpHは2.0〜5.0である。本発明の1つの好ましい実施形態では、最終的殺菌工程中における細胞傷害性物質の形成が実質的に妨げられるので、アミノ糖含有溶液のpHは好ましくは2.5〜3.5であり、最も好ましくは3.0である。
【0033】
本発明の他の実施形態では、1以上の前記区画内において2.0〜5.0のpHを示すアミノ糖含有溶液中のアミノ糖は、各々の前記区画内の溶液に基づいて15〜40重量%、好ましくは20〜40重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%の濃度で存在し、例えば15、20、25、30、35および40重量%の濃度で存在する。好ましくは、前記アミノ糖は、N-アセチルグルコサミン(NAG)である。
【0034】
溶液中の各アミノ糖についての濃度の上限は、その溶解性によって決定される。アミノ糖含有溶液を含む区画は、殺菌中にpHをさらに安定化させるために、任意の有機酸または他のpH安定剤を含んでいてもよい。異なる区画の溶液は、これらの区画の溶液を混合した後に最終的に調製された医学的溶液が、実質的には中性、すなわち6.0〜8.0、好ましくは約7.4のpHを示し、最終的に調製される溶液に基づいて0.2〜15.0%、好ましくは0.5〜6.0%、例えば0.5〜2.0重量%のアミノ糖濃度を示すように、各々のpH値、濃度および容積をもつ。
【0035】
各区画の容積、および区画間の比率は、実際には重要ではない。各区画の容積は、その中に存在する成分の容積に依存する。最も好ましい実施形態では、pH調整および希釈溶液を収容する区画は、アミノ糖含有溶液を収容する区画よりも大きく、また、この区画内において、1以上の他の区画からの溶液をpH調整および希釈溶液と混合する。
【0036】
好ましい実施形態では、調製される薬剤は、N-アセチルグルコサミンを含み、かつ7.4のpHをもつ腹膜透析溶液である。
【0037】
加熱殺菌中におけるアミノ糖溶液についての分解パターンは、幾つかの異なる毒性分解生成物を与える特定のメイラード反応の結果として起こることに注目すべきである。この分解パターンは、例えば加熱殺菌中のグルコース溶液とは異なり、異なる分解生成物が形成される。この差異を図4a〜4d(それぞれ、NAG溶液中およびグルコース溶液中における3-DGおよび3,4-DGEを分析したときのクロマトグラムを示す)に示す。分解における差異は、NAG分子が、メイラード反応を引き起こすことができる基を含み、それによってグルコース溶液中では観察されない多数の分解生成物を生じることに起因するであろう。
【0038】
本明細書中で使用される用語「アミノ糖含有溶液」とは、モノマーの形態のN-アセチルグルコサミン(NAG)、ガラクトースアミン、N-アセチルガラクトサミン、マンノースアミン、およびN-アセチルマンノースアミン、キチン、およびヒトグルコサミノグリカンを含むこれらのオリゴマーおよび/またはポリマー、並びにこれらの誘導体から選択される本発明中に含まれる1以上のアセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖を含む溶液を意味する。最も好ましいアミノ糖は、N-アセチルグルコサミン(NAG)である。従って、アセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖は、列挙されたアミノ糖のうち1種類のみによって、あるいはその組合せおよびその誘導体によって構成することができる。
【0039】
本明細書中で使用される用語「その誘導体」とは、殺菌中に細胞傷害性分解生成物を形成する同一または実質的に同一の能力をもつ前記アミノ糖の誘導体を意味する。
【0040】
本明細書中で使用される用語「pH調整および希釈溶液」とは、受容媒体として機能し、アミノ糖含有溶液と混合される溶液であって、かつ同時にアミノ糖含有溶液と混合した後に、溶液のpHを実質的に中性、例えば6.0〜8.0、好ましくは約7.4に調整する溶液を意味する。
【0041】
本明細書中で使用される用語「低度の細胞傷害性分解生成物」とは、本発明によって調製された医学的溶液中において、アミノ糖からの分解生成物の量が少なく、先行技術による透析溶液と比較して、培養細胞に対する毒性が低いことを意味する。
【0042】
好ましい実施形態におけるpH調整および希釈溶液は、pH調整剤、例えば無機酸の塩、有機酸、アルカリ物質などを薬学的に安定な範囲で含む。無機酸は塩酸などを含む。有機酸は、乳酸、リンゴ酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、ピルビン酸、クエン酸、グルコン酸などを含む。また、アルカリ物質は、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどを含む。また、様々なアミノ酸を、pH調整剤として使用することができる。
【0043】
殺菌後、pH調整および希釈溶液と混合させ、任意的に容器の他の区画の溶液と混合させることによって、使用のためのアミノ糖含有溶液を最終的に調製する。こうして得られた医学的溶液、好ましくは腹膜透析溶液はまた、異なる電解質イオン、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、乳酸塩、および重炭酸イオンを、前記電解質イオンが生体適合性であり、かつ実質的に等張性となる濃度状態で含む。電解質はまた、殺菌および貯蔵中のそれらの適合性に依存しながら、通常は薬学的許容可能な塩の形態で、初めからpH調整および希釈溶液中、アミノ糖含有溶液中および/または容器の1以上の他の区画内における他の溶液中に存在していてもよい。使用のために用意される腹膜透析溶液中のカチオンの量は、一般に110〜140 mEq/mlのナトリウムイオン、0〜0.05 mEq/lのカリウムイオン、0〜3 mEq/lのマグネシウムイオンおよび0〜6 mEq/lのカルシウムイオンである。好ましくは、塩化物イオンの量は80〜144 mEq/lである。
【0044】
本発明による医学的溶液の好ましい実施形態としての腹膜透析溶液はまた、他の生理学的に適合性の成分、例えばさらなる浸透剤、例えば炭水化物、好ましくはグルコース、タンパク質およびペプチド、好ましくはアルブミン、および酸化防止剤、例えば重亜硫酸塩(bisulphite)を含んでいてもよい。
【0045】
上述した本発明の腹膜透析溶液は、持続的外来腹膜透析(CAPD)に適用可能なだけでなく、間欠的腹膜透析(IPD)、持続性周期的腹膜透析(CCPD)、および自動腹膜透析(APD)にも適用可能である。さらに、アミノ糖からの低度の細胞傷害性分解生成物を含む。
【0046】
本発明はまた、上記に定義された特性をもつような溶液に関する。
【0047】
本発明はまた、少なくとも1つの区画内のアミノ糖含有溶液であって、殺菌され、かつ低度の細胞傷害性分解生成物を含む溶液を入れる容器に関する。
【0048】
さらに、本発明は、腹膜透析用薬剤の製造のための本発明による溶液であって、殺菌されたpH調整および希釈溶液と混合される溶液の使用に関する。
【0049】
上述したように、本発明はまた腹膜透析を行う方法であって、前記腹膜透析用薬剤を患者の腹膜腔に導入することを含む方法に関する。
【0050】
本発明の異なる実施形態を例示するために、腹膜透析溶液を調製するための成分を入れる異なる区画構成をもつ容器について、各区画中の溶液の成分とともに以下の例において説明する。例において、N-アセチルグルコサミン(NAG)をアミノ糖として使用し、前記容器の1つまたは2つの区画に入れる。各区画内におけるNAG含有溶液のpHは、混合する前は2.0〜5.0の間で変化し、最終的に調製された医学的溶液中では6.0〜8.0の間で変化する。
【0051】

例1
区画A 容積 100ml
ナトリウム 0-140ml
NAG 300g/l
区画B 容積 180ml
ナトリウム 0-140 mM
NAG 300g/l
区画C 容積 1900ml
ナトリウム 0-140 mM
乳酸塩 40 mM
マグネシウム 0.25-0.75 mM
カルシウム 0.9-2.0 mM
【0052】
区画A+Cの内容物を混合したときの最終組成物:
容積 2000ml
ナトリウム 0-140 mM
NAG 15g/l
乳酸塩 38 mM
マグネシウム 0.24-0.71 mM
カルシウム 0.85-1.9 mM
【0053】
区画B+Cの内容物を混合したときの最終組成物:
容積 2080ml
ナトリウム 0-140 mM
NAG 26g/l
乳酸塩 36.5 mM
マグネシウム 0.22-0.68 mM
カルシウム 0.82-1.8 mM
【0054】
区画A+B+Cの内容物を混合したときの最終組成物:
容積 2180ml
ナトリウム 0-140 mM
NAG 38.5g/l
乳酸塩 34.9 mM
マグネシウム 0.21-0.65 mM
カルシウム 0.78-1.7 mM
【0055】
例2
区画A 容積 100ml
ナトリウム 0-140mM
NAG 300g/l
区画B 容積 180ml
ナトリウム 0-140 mM
グルコース 500g/l
区画C 容積 1900ml
ナトリウム 0-140 mM
乳酸塩 40 mM
マグネシウム 0.25-0.75 mM
カルシウム 0.9-2.0 mM
【0056】
区画A+Cの内容物を混合したときの最終組成物:
容積 2000ml
ナトリウム 0-140 mM
NAG 15g/l
グルコース 0 g/l
乳酸塩 38 mM
マグネシウム 0.24-0.71 mM
カルシウム 0.85-1.9 mM
【0057】
区画A+B+Cの内容物を混合したときの最終組成物:
容積 2100 ml
ナトリウム 0-140 mM
NAG 14.3 g/l
グルコース 23.8 g/l
乳酸塩 36 mM
マグネシウム 0.23-0.68 mM
カルシウム 0.81-1.8 mM
【0058】
例3
区画A 容積 60 ml
ナトリウム 0-140 ml
NAG 165 g/l
グルコース 330 g/l
区画B 容積 100 ml
ナトリウム 0-140 mM
NAG 165 g/l
グルコース 330 g/l
区画C 容積 1900 ml
ナトリウム 0-140 mM
乳酸塩 40 mM
マグネシウム 0.25-0.75 mM
カルシウム 0.9-2.0 mM
【0059】
区画A+Cの内容物を混合したときの最終組成物:
容積 1960 ml
ナトリウム 0-140 mM
NAG 5.1 g/l
グルコース 10.1 g/l
乳酸塩 38.8 mM
マグネシウム 0.24-0.73 mM
カルシウム 0.87-1.9 mM
【0060】
区画B+Cの内容物を混合したときの最終組成物:
容積 2000 ml
ナトリウム 0-140 mM
NAG 8.25 g/l
グルコース 16.5 g/l
乳酸塩 38.0 mM
マグネシウム 0.24-0.71 mM
カルシウム 0.86-1.9 mM
【0061】
区画A+B+Cの内容物を混合したときの最終組成物:
容積 2060 ml
ナトリウム 0-140 mM
NAG 12.8 g/l
グルコース 25.6 g/l
乳酸塩 37 mM
マグネシウム 0.23-0.69 mM
カルシウム 0.83-1.8 mM
【0062】
例4
区画A 容積 1000 ml
NAG 10 g/l
グルコース 20 g/l
マグネシウム 0.48-1.46 mM
カルシウム 1.8-4.0 mM
区画B 容積 1000 ml
ナトリウム 0-140 mM
重炭酸塩 165 g/l
【0063】
区画A+Bの内容物を混合したときの最終組成物:
容積 2000 ml
ナトリウム 0-140 mM
NAG 5 g/l
グルコース 10 g/l
重炭酸塩 37.5 mM
マグネシウム 0.24-0.73 mM
カルシウム 0.9-2.0 mM
本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明について上述してきた。当業者は、さらなる組合せが可能であることを認識するであろう。当業者にとって明らかな改変は、本発明の範囲内に組み込まれ、添付された特許請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、1.5% NAGを含む溶液中のpHと細胞成長阻害(ICG)との間の関係を示すグラフである。
【図2】図2は、3つの異なるpH値についての1.5%および30%の増加したNAG濃度の影響を示す棒グラフである。
【図3】図3は、異なるpH値で加熱殺菌したNAG含有溶液の蛍光を示すグラフである。
【図4a】図4aは、加熱殺菌したNAG溶液と加熱殺菌したグルコース溶液との間の異なる分解パターンを示すHPLCクロマトグラムである。
【図4b】図4bは、加熱殺菌したNAG溶液と加熱殺菌したグルコース溶液との間の異なる分解パターンを示すHPLCクロマトグラムである。
【図4c】図4cは、加熱殺菌したNAG溶液と加熱殺菌したグルコース溶液との間の異なる分解パターンを示すHPLCクロマトグラムである。
【図4d】図4dは、加熱殺菌したNAG溶液と加熱殺菌したグルコース溶液との間の異なる分解パターンを示すHPLCクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医学的溶液を調製する方法であって、
a)2.0〜5.0のpHを示す、1以上のアセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖を含む溶液を、容器の少なくとも1つの区画内に提供する工程と、
b)前記少なくとも1つの区画およびその内容物を最終的に殺菌する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記pHが、2.5〜3.5、好ましくは3.0である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1以上のアセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖が、モノマー形態のN-アセチルグルコサミン(NAG)、ガラクトサミン、N-アセチルガラクトサミン、マンノースアミン、およびN-アセチルマンノースアミン、キチンおよびヒトグルコースアミノグリカンを含むこれらのオリゴマーおよび/またはポリマー、並びにこれらの誘導体から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1以上のアセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖が、前記少なくとも1つの区画中の溶液に基づいて15〜40重量%、好ましくは20〜40重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%の濃度で存在する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1以上のアセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖が、N-アセチルグルコサミン(NAG)である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記最終的殺菌が、少なくとも100℃、好ましくは121℃の温度での熱殺菌、および/または放射線殺菌である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記容器の各区画を、最終的殺菌中に他の区画から区切り、1以上のアセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖を含む最終的に殺菌された溶液を、前記容器の少なくとも1つの他の最終的に殺菌された区画中で、最終的に殺菌されたpH調整および希釈溶液と混合させる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
最終的に調製された医学的溶液中の前記pHが6.0〜8.0、好ましくは7.4である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
最終的に調製された溶液中のアセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖の濃度が、0.2〜15.0重量%、好ましくは0.5〜6.0重量%である請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
炭水化物、好ましくはグルコース、タンパク質、ペプチド、および酸化防止剤の形態の生理学的適合性の成分が、1以上の前記区画中に存在する請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
調製された医学的溶液が、腹膜透析溶液である請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
1以上のアセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖を含み、かつ2.0〜5.0、好ましくは2.5〜3.5、最も好ましくは3.0のpHをもつ溶液であって、最終的に殺菌され、低度の細胞傷害性分解生成物を含む溶液。
【請求項13】
前記1以上のアセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖が、15〜40重量%、好ましくは20〜40重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%の濃度で存在する請求項12に記載の溶液。
【請求項14】
前記アセチル化またはジアセチル化されたアミノ糖が、請求項3に定義されたものであり、好ましくはN-アセチルグルコサミンである請求項12または13に記載の溶液。
【請求項15】
請求項12ないし14のいずれか1項に記載の溶液を入れる少なくとも1つの区画を備える容器。
【請求項16】
腹膜透析用薬剤の製造のための請求項12ないし14のいずれか1項に記載の溶液の使用であって、前記溶液が最終的に殺菌されたpH調整および希釈溶液と混合される使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【公表番号】特表2006−509555(P2006−509555A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558966(P2004−558966)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001920
【国際公開番号】WO2004/052268
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(501473877)ガンブロ・ルンディア・エービー (49)
【氏名又は名称原語表記】GAMBRO LUNDIA AB
【Fターム(参考)】