説明

腹部大動脈瘤の自動検知および正確なセグメント分割

本発明は、腹部大動脈瘤(AAA)の自動的かつ正確なセグメント分割のための有効なアルゴリズムに関する。そのアルゴリズムは、最初に内腔(大動脈の内側部分)の位置を特定し、次に内腔をセグメント分割する。その後、内腔の腹部が、解剖学的および幾何学的特徴を用いて検出される。この内腔の部分は、平滑化された中心線に基づく幾何学的変換を用いて直線化される。次に、変換された内腔は、動脈瘤の存在を探すため、幾何的形状、強度、勾配、テクスチャの特徴などに基づき、多数のフィルタを通過させられる。動脈瘤が検知された場合、最初に変形可能モデルが動脈瘤のおおよその輪郭に初期化され、その後、全体的な位置情報を用いて精密化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹部大動脈瘤(AAA)の自動検知および正確なセグメント分割のための有効なアルゴリズムに関する。そのアルゴリズムは、最初に内腔(大動脈の内側部分)の位置を特定し、次に内腔をセグメント分割する。その後、内腔の腹部が、解剖学的および幾何学的特徴を用いて検出される。この内腔の部分は、平滑化された中心線に基づく幾何学的変換を用いて直線化される。次に、変換された内腔は、動脈瘤の存在を探すため、幾何的形状、強度、勾配、テクスチャの特徴などに基づき、多数のフィルタを通過させられる。動脈瘤が検知された場合、最初に変形可能モデルが動脈瘤のおおよその輪郭に初期化され、その後、全体的な位置情報を用いて精密化される。
【背景技術】
【0002】
腹部大動脈瘤(AAA)は、大動脈の局所的膨張(腫脹または拡張)である。AAAは通常、2つのセクション−内腔(内側部分)および血栓(外側脂肪部分)−からなる。CT血管造影(CTA)が利用されるとき、内腔内の血流とその可視度を高めることができる。動脈瘤の進行性成長は、診断または治療されない限り、最終的に破裂を引き起こす可能性がある。破裂が大量の内出血を招くと生命を脅かしかねない。破裂発生の可能性は、動脈瘤のサイズに依存する。たとえば、直径5cm以上のAAAを有する患者には、切開手術またはステントグラフト(血管内手法)によって弱化した部位を取り替える治療を施すべきである。4cmのAAAの場合、6ヶ月で動脈瘤が5mm以上増大すれば、治療を検討すべきである。手術後の経過観察として、さらなる破裂の可能性を防止するため、それ以上の膨張が起こらないように、頻繁な監視が生涯行われる。
【0003】
イングランドとウェールズでは、毎年6,000〜10,000人もの人々がAAAの破裂を経験する。その大半が65歳以上の男性である[1]。概して、英国では65歳超の20人に約1人に大動脈瘤が発生する[2]。米国では、毎年200,000人もの人々が大動脈瘤と診断され、年に約15,000人が死亡する[3]。よって、疑いなく、CTスキャンにおける動脈瘤の数量化は、手術前と手術後のいずれにおいても当該疾病の監視に重要な役割を果たす。
【0004】
典型的には、CTAは、CT画像内の血流を増進させるために、患者に造影剤を注射することによって実行される。その後、全体積の測定値を得るため、放射線技師が多数の断面画像上で大動脈の拡張部分を手作業で特定する。
【0005】
この極めて単調で時間のかかる工程は30分を要する場合があり、医師にとっては不都合である。さらに、最新のCTスキャン機によって生成されるデータセットが増えるにつれ、このアプローチは非現実的となる。加えて、このような手作業での方法は主観的であり、エラーを招きがちであり、再現性がない。実際のところ、この方法が、同一の動脈瘤領域に対し、様々な放射線技師によって、あるいは様々な時刻で同一の放射線技師によって実行される場合、異なる測定値が発生する場合があるため、その有効性には疑問が残る。
【0006】
AAAの境界とその周囲の筋肉またはその他の血管構造とを特定し、両者を区別することは、不可能ではないにせよ非常に困難であるため、AAA領域の検知と正確なセグメント分割は困難な課題である。コンピュータ化された測定を実現することのできるコンピュータ化されたAAAセグメント分割に関する研究刊行物は少ない。
【0007】
参考文献[6]は、スネーク法を使用して極座標で定義される5パートのエネルギー機能を紹介し、34個の超音波画像に基づくセグメント分割結果を実証している。
参考文献[7〜8]は、縁端強度または領域強度情報のいずれかを使用するレベルセット枠組を採用して、動脈瘤と大動脈流路の両方をセグメント分割する各種アプローチの研究を提示している。これらの方法は完全には自動化されておらず、初期化のために1つまたは複数の外部シード点を必要とする。さらに、それらの方法は、頑強に正当性を実証されていない。
【0008】
医用画像における異常をより効率的に検知する際に放射線技師を支援する画像処理解析を用いるコンピュータ支援検知(CAD)システムは、数多く市販されている。医用画像処理方法は非常に応用指向的であり、つまり、肺(Siemens社製のCAD[4b])、胸(GEマンモグラフィー[5b])などの人体の各種部位に対応するように、様々なアルゴリズムが開発されている。
【0009】
Mediar社の社員はこれまでにいくつかの科学的画像処理アルゴリズムを設計製造しており、各アルゴリズムは特定の医用撮像用途のために開発されたものである。刊行物のいくつかを参考文献[6b]〜[10b]に示す。[6b]には、修正期待最大化(MEM)法を用いる、心臓内石灰化プラークの数量化のための画像処理アルゴリズムが記載されている。参考文献[7b]は、重判別分析(MDA)を用いる、MRI画像からの脳のセグメント分割の課題に取り組んでいる。参考文献[8b]および[9b]は、ファジィ接続、形状指数、およびクラスタ分析などのいくつかの画像処理方法を用いる、結腸内CADシステムを提示している。参考文献[10b]は、形状ベースの領域成長アルゴリズムを用いる肺結節のセグメント分割を説明している。
【0010】
放射線技師が腹部大動脈瘤(AAA)の正確な測定を得るのを助ける動的アプローチの重要性が高まりつつあるにもかかわらず、市場で入手可能なコンピュータ画像処理解析システムは実現されていない。その理由は、CTスキャンからAAA領域を抽出し、コンピュータ画像解析システムによりそれを正確に測定するタスクに問題があるためである。これは、AAA境界がしばしば筋肉や筋肉と同様の強度を有するその他の組織に接触するという事実が、隣接組織間の境界を特定し区別することを、不可能ではないにせよ、非常に困難にするためである。
【0011】
したがって、有効にAAA領域を抽出し、正確な測定を生成する科学的アルゴリズムを使用する、新しく高度な画像処理アプローチが早急に必要とされている。
この課題に取り組もうと試みた学術論文が2、3あるが(参考文献[11b]〜[20b]を参照)、今後の商業的使用を検討するほど十分効果的ではない。
【0012】
参考文献[11b]は、スネーク法を使用して極座標で定義される5パートのエネルギー機能を紹介し、34個の超音波画像に基づくセグメント分割結果を実証している。
参考文献[12b〜13b]は、縁端強度または領域強度情報のいずれかを用いるレベルセット枠組を採用して、動脈瘤と大動脈流路の両方をセグメント分割する各種アプローチに関する研究を提示している。それらは頑強には実証されていない。これらの方法は完全には自動化されておらず、初期化のための1つまたは複数の外部シード点を必要とする。
【0013】
参考文献[9]では、活性形状モデル(ASM)がAAAをセグメント分割するのに使用される。本アプローチでは、ユーザは、1つのスライスがグレー値の類似性に基づき隣接スライスへ伝播される2次元(2D)輪郭を描かねばならない。最良適合は、連続的スライスでの輪郭周囲のグレー値の最大相関によって定義される。
【0014】
参考文献[10]では、対話型AAAセグメント分割システムが、活性形状モデルに基づき開発されている。得られた輪郭が十分に正確でない場合、ユーザは介入し、追加で手動の基準輪郭を提供することができる。正確であっても、スライス毎のユーザの干渉が必要とされるため、ユーザの干渉量が大きい。さらに、結果は試行毎に相当変動する場合がある。
【0015】
参考文献[11]は、AAAセグメント分割のためのノンパラメトリック分類手法に基づくグレー値外観モデルを有する3D活性形状モデル法を調査している。この方法は、手動で描かれる上下スライスと、中央スライスの略動脈瘤中心におけるユーザ入力点とを必要とする。
【0016】
別の方法が参考文献[12]に記載されており、ユーザによって球として描かれる初期領域から動脈瘤をセグメント分割するためにレベルセットアルゴリズムが使用される。その球は、AAAの境界を特定するように変形させられる。ユーザの干渉は最小だが、報告された結果は正確ではない。
【0017】
参考文献[13]では、条件付き輪郭進化方法を使用する大動脈瘤のセグメント分割方法が記載されている。反復毎に、スネーク点は、局所ハウンスフィールド単位(HU)値と血栓HUとの差に依存する拒否力、および縁部の形状が血栓領域の境界と適合する場合にのみ能動的となる画像勾配の導関数に沿って方向づけられる縁部力によって駆動される。良好な結果を達成するにはユーザの干渉が不可欠である。
【0018】
別の方法が参考文献[14]に提示されている。この方法は、3Dアクティブオブジェクトと呼ばれる変形可能モデルに基づく。最初に、アルゴリズムは内腔(大動脈の内側部分)をセグメント分割し、次に、AAA(拡張した脂肪部分の残部)のセグメント分割を初期化するために使用される。強度プロファイルに基づくノンパラメトリックグレー値外観モデルが、変形可能モデルを駆動するために使用される。ユーザの介入をあまり必要とすることなく、正確な結果が報告された。しかしながら、サブセットのデータに対してAAA境界の手動セグメント分割を要する様々なデータセットには、分類機を使用するパラメータ推定が必要とされる。いったんシステムが操作されれば、ユーザは同じスライスに2つのシードを提供し、アルゴリズムがAAAを抽出する。このアルゴリズムは、計17名の患者の手術前の事例でテストされたに過ぎない。
【0019】
AAAセグメント分割の別の方法が参考文献[15]に提示されている。この方法は大まかな初期面を推定し、その後、全体領域と局所特徴解析器で増補されるレベルセットセグメント分割スキームを用いてその初期面を精密化する。欠点の1つは、変形可能モデルセグメント分割は、動脈瘤が軸横断面においてほぼ円形であると想定しているため、非円形動脈瘤のセグメント分割に失敗することである。そのシステムは20のCTA AAAデータセットでテストされたに過ぎない。
【0020】
その他の従来技術文献には、特許文献1、特許文献2、および特許文献3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第03/075209号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/081874号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/025674号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
測定の信頼性は、該当領域がどのくらい正確にセグメント分割されるかに左右されるため、本発明の目的は従来技術の測定方法およびシステムを向上させることにある。
より具体的には、本発明の目的は、正確な測定のための最初の不可欠な段階として、自動的かつ正確なAAAのセグメント分割を開発することにある。
【0023】
AAAの手動による同定、セグメント分割および測定と比較して、提案されるシステムおよび方法は、より正確な、再現性の高い、費用効率の高い、かつ迅速な結果を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
該方法の主なステップの原則を概説すると、以下の通りである。
1.内腔を特定し抽出する。
2.内腔の腹部を特定する。
3.内腔の腹部の幾何学的変換(直線化)を行う。
4.動脈瘤の存在を示す特徴をサーチする。
5.動脈瘤が存在する場合(ステップ4)、抽出された内腔を初期面として使用して、動脈瘤をセグメント分割する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るシステムおよび方法全体の実施形態を示す。
【図2】内腔の検出および抽出を示し、(a)元の矢状断面図、(b)セグメント分割画像の3D図、(c)(b)でのモルフォロジ演算の3D図、(d)抽出された内腔であり、白矢印は内腔を指す。
【図3】横隔膜アーチが人工的に追加されている内腔の3D図である。
【図4】肺領域を示し、(a)肺領域での腹部大動脈を示す冠状図、(b)肺の軸方向図、(c)セグメント分割された肺の抽出された孔である。
【図5】腹腔動脈を示し、(a)腹腔動脈(矢印)を示す矢状断面図、(b)セグメント分割された大動脈の矢状断面投影図、(c)上部の隔離された対象が腹腔動脈である(b)のモルフォロジ演算である。
【図6】幾何学的変換を示し(セグメント分割された内腔の3D図)、(a)元の内腔、(b)幾何学的に変換された内腔、(c)元の位置を矢印により強調しているaとbとの重複である。
【図7】動脈瘤の存在例を示しており、下部画像はセグメント分割された大動脈の冠状図の投影であり、上部画像は白矢印によって指示されるスライスを示す。セグメント分割された内腔のみが底部画像に示されている。(a)内腔は湾曲し、大径を有している。(b)内腔は直線的かつ小径だが、不規則な内腔断面を有している。
【図8】脂肪領域を示し、(a)元の画像、(b)セグメント分割された脂肪領域、セグメント分割された脂肪領域の3D図である。
【図9】脊椎の骨縁間の間隙を充填する方法を示し、上部画像は軸方向図であり、下部画像は矢状断面図である。(a)元の画像である。(b)セグメント分割された脂肪および脊椎である。(c)(b)と類似の、骨縁間の間隙充填(矢印)を示す。
【図10】大動脈に隣接する血管の例である。(a)3D画像は血管と石灰化領域との間の幾何学的特徴における差異を明確に示しており、血栓は3D画像には示されていない。(b)血管が非AAA領域の一部として保持される結果を示す。
【図11】潜在領域(PR)から抽出される特徴から動脈瘤をサーチするプロセスを示す。全体フィルタは、異なる内腔拡張を有する各PRからのルールベースのフィルタの結果を使用する。
【図12】様々な内腔拡張と対応する付着領域(PR)の取得の例を示す。上列には動脈瘤があるが、下列には動脈瘤がない。
【図13】楕円体近似を示し、(a)白い領域が非AAA領域である非AAAマスク、(b)(a)上の距離マップ、(c)(b)の70%コア領域、(d)左領域は(c)からズームアウトしたもの、右領域は左領域の開放動作の結果、(e)非AAAの縁部に当たるように拡張された(d)、(f)元の画像に示される(e)内の同じ領域である。
【図14】パラメータTsize=6、Tcnt=6を用いて、40のCTA画像における肺と腹腔動脈との間の距離を示す表である。
【図15】AAAのセグメント分割の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上記の各ステップをより詳細に説明する。
1)内腔を特定する
内腔の特定は、他の組織に対する、内腔の形状、外観、および幾何学的表示に関する従来の知識を収集することによって達成される。解剖学的には、大動脈(内腔)は、脚部を下る2つの主動脈に分岐し、分岐の前では脊椎に沿って走っている。さらに、CT血管造影画像において内腔の強度レベルを増大させると、内腔の位置をより正確に特定する助けとなる。内腔の特定および抽出は以下のように行う。
a.造影剤強度範囲の強度を表す閾値限度を用いてCTA画像をセグメント分割する。
b.前記セグメント分割された画像内の3D物体間の弱い関連性を断つモルフォロジ収縮演算を実行する。
c.幾何学的フィルタを適用して、多数の3D物体間の内腔を特定する。これに関しては、内腔はZ方向に比較的長く、かつ細く(冠状図において)、身体のほぼ中央に位置する。
【0027】
2)内腔の腹部を特定する
内腔の腹部は腹腔動脈と腸骨動脈接合部間に位置する。腹腔動脈は横隔膜下の内腔から外に生じる最初の動脈であり、そこで肺がほぼ終端する。腸骨動脈接合部では、内腔が2つの主動脈に分かれる。内腔の腹部を特定するアルゴリズムを以下に概説する。
a.肺領域が検出されなくなるまで、スライス毎に以下の画像処理アルゴリズムを使用することによって肺領域の終端位置を検出する。
i.適応ファジィ閾値セグメント分割アルゴリズムを実行する。
ii.前記セグメント分割された画像内の孔を検出することにより、予想される肺領域を抽出する。前記孔の抽出は、前記セグメント分割された画像にフラッド・フィルアルゴリズムを適用し、前記セグメント分割された画像から結果を減算することによって実行される。
iii.ステップ2a_iiで得られる領域がいくつかの小孔を含むか否かを確認する。小孔は、肺空間内の多数の血管断面の観察結果である。
iv.肺領域がステップ2a_iiiで特定されれば、ステップ2a_iに進み、次のスライスを調べる。特定されなければ、現在のスライスが肺領域の終端位置である。
b.肺位置の端部(ステップ2aから)と抽出された内腔(ステップ1から)とを用いて腹腔動脈を検出する。
i.深度が肺位置の端部の50mm上および100mm下に限定されるサーチ量としてサブ画像を作成する。サブ画像の軸方向寸法は、ステップ1で得られた内腔を包含する矩形を10%拡張することによって得られる。
ii.ステップ1aに基づきサブ画像をセグメント分割し、内腔と交差する領域を保持する(ステップ1c)。
iii.矢状断面図中の全ボクセルを1スライスに投影する。
iv.15×15ウィンドウサイズの収縮演算後、19×19ウィンドウサイズの膨張演算を実行する。
v.ステップ2b_ivの画像をステップ2b_iiiの画像から減算する。その結果、前記内腔の分枝を表すいくつかの隔離された物体が生じる。
vi.前記内腔の最初の分枝として、前記腹腔動脈である左上からの最初の隔離された物体を得る。
c.平滑化された中心線とクラスタ連結性解析とを用いて腸骨動脈接合部を検出する。
i.遠隔変換ベース骨子化法を用いて中心線を得る。
ii.前記中心線内のボクセルの現在位置が隣接ボクセルの偏差ベクトルの前記荷重平均によって更新される反復法を用いることによって前記中心線を平滑化する。
iii.中心線のクラスタ連結性クラスを作成する。
iv.(クラスタ連結性クラスから)各分枝の長さを評価することによって主分枝(腸骨動脈)を特定する。他の分枝(動脈)の長さは比較的短い。
【0028】
3)幾何学的変換
ステップ2cの中心線と、腹腔動脈および腸骨動脈の位置(ステップ2bおよび2c)とを端点として用いて、2つの端点間の最短路を検出することによって中心線を直線化する。中心線の変換から得られる幾何学的マッピングは、セグメント分割された画像または元画像に適用することができる。このように、内腔および周囲のボクセルから収集されるすべての特徴は、内腔の元の位置に垂直な面から実質上得られる。
【0029】
4)動脈瘤の特徴をサーチする
最初に、幾何学変換された内腔が動脈瘤の徴候について検査されて、次に内腔に付着した物体が評価される。動脈瘤のサーチを以下に提示する。
a.内腔が湾曲しているか否かを確認する。ステップ3での幾何学的変換量は、内腔がどの程度片側に移動しているかを示す。
b.内腔の径が拡張されているか否かを確認する。正常な内腔の径は約30mmであるはずである。
c.内腔の断面が非円形であるか否かを確認する。緻密度と円状率の測定を適用する。
d.内腔に付着した物体が動脈瘤の特徴を有するか否かを確認する。付着した物体を得るため、最初に非AAA領域が取得される。これらの領域は、動脈瘤とは大きく異なる強度および幾何学的特徴を有する。したがって、安全かつ容易に特定することができる。付着した物体からの動脈瘤のサーチを以下に概説する。
i.非AAA脂肪領域を得る。強度が−10未満かつ体積が500mm超の領域はいずれも脂肪領域の一部とみなされる。体積閾値は画像アーチファクトを排除するために使用される。
ii.非AAA高強度物体を得る。ステップ1cで廃棄された全ての物体(脊椎や腎臓など)は非AAA領域に追加される。
iii.非AAA脊椎骨間隙充填を実行する。脊椎椎間板は、動脈瘤と類似の強度値を有する。これによりスライス内に開口部が形成され、そこで椎間板が動脈瘤の境界に触れる。連続するスライスにおける脊椎骨の縁部間の幾何学的補間が、間隙を埋めるために実行される。
iv.付着した物体を抽出する。付着した物体は、拡張部から内腔を減算し、この結果と非AAA領域の逆数との交点を検出することによって得られる。このマスクは、元画像から強度、勾配、およびテクスチャの特徴を取得するために使用される。元画像のボクセルは幾何学的変換マップ(ステップ3)に基づき補間されることに注意されたい。抽出された特徴は、動脈瘤の存在をサーチするためにルールベースのフィルタに提供される。ルールベースフィルタの特性は、実験中に既知の領域(放射線技師によりAAAまたは非AAAと分類される)の特徴の統計学的解析を収集および評価することによって検出される。
【0030】
5)動脈瘤をセグメント分割する
抽出された内腔(ステップ2)は初期面として使用され、非AAA領域(ステップ4d_iおよび4d_ii)は変形可能モデルベースのセグメント分割のためのバリアとして使用される。
a.AAA領域は最初に、3D楕円異方性ガウスベース強度モデルを非AAA領域の境界に明確に適合させることによって近似化される。この領域と抽出された内腔との結合物は、境界で精密化されるべき初期領域として使用される。これは次のステップで提供される。
【0031】
先のステップで初期化された変形可能モデルは、全体情報および局所情報によって駆動される。全体情報が人体を構成する解剖学的構造および関係のグラフィカル表示を使用するのに対し、局所情報は局所形状情報の尺度として各ボクセルで算出される3D幾何学的特徴を利用する。
【0032】
その方法を、図面を参照しながら、以下により詳細に説明する。
図1は、AAAの自動的かつ正確なセグメント分割の全体設計を示す。
CTA画像は最初に、処理前段階での反幾何学的拡散法を用いて平滑化される。次に、内腔が、セグメント分割およびモルフォロジ演算を用いて処理前画像から抽出される。内腔の腹部が幾何学的情報、数学的モルフォロジ、および連結性クラスタ解析を用いて特定される。この後の幾何学的変換により、中心線を用いて内腔が直線化される。その後、動脈瘤の存在をサーチするため、腹部大動脈部位にいくつかの評価が実行される。動脈瘤が特定されれば、AAAの完全なセグメント分割が次に続く。
【0033】
1)内腔を検出し抽出する
内腔は動脈瘤を検出しセグメント分割するための初期領域として使用されるため、内腔の正確なセグメント分割は不要である。内腔のセグメント分割は低閾値Tおよび高閾値Tでの閾値ベースのセグメント分割を用いて実行され、これらの閾値限度はそれぞれ140および700であると実験で判明した。部分的体積効果のため、抽出された内腔は、腎動脈を通じて脊椎や腎臓などの類似のHU減衰を有する物体と緩やかに関連することが多い。内腔を他の物体から分離させるため、いくつかの隔離された3D物体を生じるモルフォロジ収縮演算が適用される。弱い関連性をさらに排除するため、特別な3Dラベリングアルゴリズムが適用されることにより、連続スライスの断面のコア領域が連結性の存在を特定するために使用される。領域のコアは、まず距離変換を行い、中心点(最大距離値)を検出することによって取得される。次に、領域コアは、中心点だけでなく最大距離のいくらかのパーセンテージの距離値を有するすべての点を含むブロブとして特定される。この実験では、70%の領域コアを使用した。
【0034】
モルフォロジ演算と特別な3Dラベリングの結果、いくつかの隔離された3D物体が生じる。これらの隔離された物体の中で、内腔はZ方向に比較的長く、かつ細い(冠状図において)物体として特定することができ、身体のほぼ中央に位置する。
【0035】
図2は、内腔を他の物体から分離する収縮演算の効果を示す。図2cでラベリングされた3D図は、収縮演算が内腔を完全に分離したことを示す。
2)腹部内腔部位を特定する
内腔の腹部は、図3に示すような腹腔動脈と腸骨動脈接合部の位置を検出することによって自動的に特定される。腹腔動脈は、肺がほぼ終わる横隔膜の後ろに位置する。人体内での大まかな位置を示すため、図3には横隔膜のアーチが人工的に描かれている。
【0036】
2.1)肺の端部
内腔の腹部を特定する際の最初のステップは、肺領域の終端位置を検出することである。図4bに示すように、肺領域は大量の空気の存在のためにCT画像内では中空の物体として出現する。モルフォロジ孔抽出アルゴリズムと共にファジィ閾値セグメント分割を用いて、肺領域を抽出することができる。孔抽出アルゴリズムは、セグメント分割された身体領域をフラッド・フィルし、次にそれを元のセグメント分割された身体から減算することによって実行される。その後、孔は隔離された物体として出現する。
【0037】
中空の物体として抽出された肺領域は小孔を多数含み、これは肺領域内の多数の血管の断面図の結果である。図4cにおけるセグメント分割された肺の断面は、多数の小孔の存在を示す。よって、肺物体の特定は、中空領域内の相当な大きさの孔を数えることによって実行することができる。すなわち、ノイズの原因となり得るため、小孔は検討されない。Oを現在のスライス中でk番目に抽出された中空の物体とすると、以下の条件が成立すれば、Oは肺領域の一部である(O∈L)。
【0038】
【数1】

【0039】
ただし、Nはk番目の物体O内の隔離された物体(孔)の総数であり、O(p)はp番目の隔離された物体であり、Tcntは物体のカウント閾値である。また、
【0040】
【数2】

【0041】
ただし、Tsizeは物体の大きさである。実験的に、Tsize=5およびTcnt=10を選択した。
肺領域を特定するこのプロセスは、肺領域が検出されなくなるまでスライス毎に継続される。これは、横隔膜または肺領域の端部の近似位置となる。
【0042】
2.2)腹腔動脈
肺領域の終端位置は、腹腔動脈のサーチを実行することができる近似位置を単に提供するだけである。サーチ体積は拡張した内腔(20%拡張)の体積以内となり、肺位置端部の上下20mmに限定される。適応セグメント分割を使用して、完全に細部の明らかな内腔が確実に取得されるようにサーチ体積で新たな内腔が取得される。先に抽出された内腔はモルフォロジ演算のために細部を欠くことに注意されたい。次に、図5bに示されるセグメント分割された大動脈の矢状断面投影図が取得される。収縮と膨張の2つのモルフォロジ演算(膨張演算のウィンドウサイズの方が収縮演算のウィンドウサイズよりも大きい)が行われる結果、主内腔から分枝が分離される。これは図5cに示される。腹腔動脈は内腔からの最初の分枝であるため、図5cに示されるように、モルフォロジ演算後の最上部の物体である。
【0043】
2.3)腸骨動脈接合部
腸骨動脈接合部は、腹部大動脈の特定のために検出される最後の位置である。ここで、大動脈は脚部を下る2つの主動脈に分かれる。この位置を特定するため、最初に大動脈の中心線が取得され、次に平滑化フィルタを通過させられた後、クラスタ連結性に変換される。このクラスタ連結性を用いて、主中心線(内腔)から生じるすべての分枝に対して、長さと角度に基づくクラスタ解析が使用される。これに関して、腸骨動脈を除く全分枝の長さは比較的短く、主中心線に対する角度は比較的急である。
【0044】
3)幾何学的変換
内腔の腹部は3D中心線を用いることによって幾何学的変換され、内腔が直線化される。変換の理由は、後続の特徴抽出が、内腔の元の中心線に垂直な面から得られる情報を確実に表すようにするためである。図6は内腔の変換結果を示す。より良い視覚化のために、元の内腔と変換された内腔を図6cの3D画像で合体させた。
【0045】
4)動脈瘤を検出する
いくつかの特徴が、動脈瘤の存在を検知するために使用される。最初に、抽出された内腔からの特徴が取得され評価される。動脈瘤が検知されない場合、未加工画像からの特徴がさらなる評価のために使用される。これらの特徴を以下に概説する。
1.内腔が拡張しているか否かを確認する。
2.内腔断面の一部が不規則である(非円形)か否かを確認する。
3.内腔が変位している(非直線)か否かを確認する。
4.大動脈に付着した物体が動脈瘤に対して予め定義された特徴を含むか否かを確認する。
【0046】
図7は、上記特徴1〜3から特定することのできる動脈瘤の存在の例を示す。図7aでは、セグメント分割された内腔の投影図は、内腔が大きな血栓の影響で湾曲しており、内腔の径も拡張していることを示す。図6bでは、冠状図でのセグメント分割された内腔の投影図は動脈瘤の存在を示していないが、上画面の断面は内腔が動脈瘤の存在のために変形している(非円形)ことを示している。このような場合、緻密度および円状率の測定値が内腔の断面を調査するために使用される。
【0047】
動脈瘤が特徴1〜3の評価後に検知されない場合、内腔に付着するすべての物体が最初に抽出され、次にHU減衰、勾配、およびテクスチャなどの未加工画像から取得可能な特徴に基づき調査される。抽出された内腔に付着するこれらの物体は潜在領域(PR)として扱われ、式3で提供されるものとして取得される。
【0048】
【数3】

【0049】
ただし、Lは抽出された内腔であり、Lexpは膨張した(拡張した)内腔であり、∩および‘〜’はそれぞれ交点および論理否定演算である。記号non_AAAは、動脈瘤の一部にはなり得ない領域を表す。これらの領域は脂肪、脊椎、および血管を含む。動脈瘤領域と比較して顕著な特徴のため、それらは容易に分離でき、その後の動脈瘤の検知およびセグメント分割中に固体の障害物として使用することができる。どのように潜在領域を取得し評価するかを説明する前に、非AAA領域の抽出に関して説明する。
【0050】
4.1)脂肪領域
脂肪領域は動脈瘤より暗く、閾値セグメント分割とそれに続くモルフォロジ開放演算とを用いて容易に抽出することができる。大型の動脈瘤では、小さく暗い領域が動脈瘤内に存在する場合があり、それは天然であるか、あるいは画像獲得のアーチファクトである可能性がある。これに関して、比較的小型の脂肪領域は無視される。脂肪領域特定のためのサイズの限界は、実験で50mであると判明した。図8は、動脈瘤部位周囲の抽出された脂肪領域の例を示す。
【0051】
4.2)脊椎受入れ
脊椎は、大動脈に非常に接近して位置する別の物体であるため、非AAA領域として使用するのに有用である。脊椎骨の抽出は高HU値のために容易に実行可能である。しかしながら、脊椎は、椎間板と呼ばれる筋肉のような物体と共に保持される骨片からなる。椎間板は血栓と同様のHU値を有する。このため、スライスに開口部が形成されて、そこで椎間板領域が動脈瘤の境界に接触する。これらの開口部(または間隙)は、上下数スライスに位置する脊椎の骨縁部間を補間することによって容易に充填することができる。図9は、脊椎の骨縁部間の間隙を満たす例を示す。図示されるように、動脈瘤(血栓部)は脊椎椎間板に接触しており、間隙が満たされたラインは、HU値の類似性に関わらず血栓を椎間板領域から明確に分離している。
【0052】
4.3)血管
いくつかの小さな血管が内腔から生じている。それらの血管は連続軸画像内で小円として出現する。それらは軸画像で見るときに石灰化領域と見誤りやすい。石灰化領域とは異なり、血管は動脈瘤の一部ではないため、非AAA領域に含めるべきである。血管と石灰化領域とを区別する顕著な特徴の1つは、血管が比較的多数のスライスに及ぶコンパクトな円形断面を有することである。石灰化領域が類似のコントラストを有し、その断面がコンパクトで円形である可能性はあるが、石灰化領域は通常数個のスライスを占める細長い表面を有する小さな3D物体である。したがって、円状率−緻密度と3D連結性解析との組み合わせが血管を特定するために使用される。図10aは、血管と石灰化領域の両方が存在する大動脈の一部を示す。3D図は、血管と石灰化領域の幾何学的特徴の差異を明確に示す。図10bは、非AAA領域に追加される血管特定の結果を示す。
【0053】
4.4)潜在領域
式3に示すように、潜在領域(PR)は、内腔から拡張部を減算し、この結果と非AAA領域の逆数との交点を検出することによって取得される。次に、PR領域は、未加工画像から対応する特徴を抽出するためにマスクとして使用される。特徴はルールベースのフィルタに供給され、PRが動脈瘤を含むか否かを特定する。このプロセスを確実にするため、内腔のいくつかの拡張部が使用される(式1を参照)。様々な拡張部からのPR領域がルールベースフィルタに別々に供給され、それらのルールベースフィルタから取得される特徴に基づき最終決定を下すために全体フィルタが使用される。このプロセスは図11に示される。最初のフィルタリング段階で使用される特徴は、強度、勾配、テクスチャに基づく。
【0054】
図12は、動脈瘤がある場合(上列)とない場合(下列)の2つのケースに関する様々な内腔拡張部と対応する付着領域のシーケンスを示す。
5)動脈瘤のセグメント分割
上述の非AAA領域は、動脈瘤の境界を検出する強力なバリア(マスク)として使用することができる。大動脈に接触し、一部が動脈瘤領域と類似の強度値を有する各種組織の存在のため、いくつかの間隙および開口部が生じるので、このマスクは完全には閉鎖されない。これらの間隙のため、領域セグメント分割に対する漏れ経路が生じる。漏れを防止するため、最初に動脈瘤領域の楕円体近似が検出され、次に変形可能モデルを用いて微調整される。
【0055】
5.1)楕円体近似
マスクの距離マップである非AAA領域は、動脈瘤の全体または一部がどこに存在する可能性があるかを示す有益な情報を提供する。距離値が最大となる中心点は、動脈瘤の窪みの最も深い部分を示す。この中心点から、その領域のコアは最大値の70%で抽出される。コア領域の抽出は上述した通りである。コアのパーセンテージが高いほど、元の領域の形状により近いコア領域が生じることに注意されたい。次に、コア領域の明確な縁部が、ウィンドウサイズ3x3の開放モルフォロジ演算を適用することによって鈍化される。その後、この領域はマスク領域の縁部に当たるまで膨張させられる。膨張プロセスは、最初にコア領域の縁部とマスクとの間の最小距離を検出し、その最小距離値に等しい量までコアを拡張することによって実行される。
【0056】
図13は楕円体近似の例を示す。図13cの70%コア領域は、図13aの非AAA領域マスクに適用される図13bの距離マップから作成される。開放演算はコア領域の底部及び左隅の小さく明確な縁部を鈍化し、図13dに示されるように、その領域は見易くするため拡大している。図13eおよび13fは、領域が動脈瘤の左および底部の比較的大きな間隙へと漏れるのを阻止した際の楕円体近似法の強度を明確に示している。
【0057】
変形可能モデル
楕円体近似は、動脈瘤の境界を定義するための非常に優れた推定を提供する。ほとんどの場合、楕円領域は動脈瘤の正確な境界をカバーする。その他の場合には、動脈瘤領域の実際の境界に非常に近接して配置されるであろう。これに関して、変形可能モデルは、楕円領域の拡張を微調整するだけでよい。
【0058】
実験結果
本明細書で提案する自動検知およびセグメント分割をテストするために、40回のCT血管造影走査を行った。患者は年齢55〜85歳の女性4名および男性36名である。画像を得るためにGE LightSpeed VCT機が使用された。走査パラメータは120kV、300〜400mA、スライス厚1.0〜2.0mmとした。
【0059】
CTデータにおけるAAA領域には、3名の専門放射線技師が注釈を付けた。臨床データにおいて動脈瘤の境界を定義するグラウンドトルース(ground truth)(すなわち「金字塔(gold standard)」)を得ることは非常に困難であることに留意すべきである。専門家によって提供される手動で略述されたAAAには、観察者間および観察者内の差異が生じる可能性がある。したがって、どのAAAセグメント分割アルゴリズムの容認性の実証も主観的である。
【0060】
内腔を検出し抽出する
この実験で、様々な閾値限度が内腔の検出および抽出に及ぼす効果が示される。内腔領域の注釈情報がない(すなわち、内腔と動脈瘤の境界との両方に注釈を付けるように放射線技師に要請すると費用も時間もかさむ)ため、1セットのパラメータを試験台として使用し、他の結果をそれと比較した。試験台は、熟練放射線技師の視覚判断に基づき計40画像に関して内腔を正確に抽出された1セットのパラメータを選択することによって取得された。この試験台のパラメータはT=140HUおよびT=700HUとして選択された(上述の説明を参照)。表1は40個のデータセットの内腔の検出および抽出のために様々なパラメータを試用した結果を示す。平均重複(MOv)は以下のように取得される。
【0061】
【数4】

【0062】
【数5】

【0063】
ただし、Ovは2つの物体間の重複であり、V(C)およびV(T)はそれぞれ現在の物体とテスト物体の体積であり、NはCTA画像の数である。
表1の結果に関しては、収縮ウィンドウサイズをそのまま3×3×3に設定し、閾値TおよびTを変更した。アルゴリズムは、Tが700に維持された場合、T>300HUで成功した。一方、脊椎の強力な存在が原因で、T=130HUでは1データセットについて失敗した。すなわち、内腔が検出されたが脊椎に付着した。閾値が低いほど脊椎骨間の間隙をより多く満たし(椎間板部への部分体積効果を含む)、内腔と脊椎間の相当強力な関連性を形成する。表1の2番目の部分は、上限閾値Tの変更結果を示す。Tが低い値の場合(<500HU)、多くの点が内腔のセグメント分割結果から除外されて、モルフォロジ演算(上述の説明を参照)を通過後に内腔をばらばらにした。したがって、アルゴリズムは、内腔の幾何学的特徴を有するコンパクトな3D物体を検出できなかった。
【0064】
【表1】

【0065】
表2は、セグメント分割された画像において内腔と他の物体とを分離する収縮演算の効果を示す。その結果は、パラメータT=150HU、T=600HU、および収縮ウィンドウサイズ7×7×1(スライス毎の2D収縮)の試験台と比較される。これらの結果に基づき、2D収縮演算は3D演算より迅速であるが、本実験のケースの場合、3D演算の方が確実である。確実性と速度とのトレードオフとして、7×7×1の2D収縮演算を選択することができる。
【0066】
【表2】

【0067】
上述のように、特別な3D領域ラベリングが、モルフォロジ収縮演算後、セグメント分割された領域に適用される。この領域ラベリングは、連続スライスでの領域断面のコアを使用して、連結性の存在を特定する。領域コアのサイズは、距離マップの最大値のパーセンテージに依存する。領域コアは連結性を特定するためにだけ使用され、内腔の最終サイズを判定するためには使用されないため、そのサイズは結果に大きな影響を及ぼさない。このことは、中心点の距離値の60%〜99%のコア領域サイズ範囲を用いて実験で立証された。すなわち、コア領域の抽出は上述した通りである。これらのテストは、パラメータT=140、T=700、および収縮サイズ3×3×3を用いて全データセットに適用された。監察の結果、70%超のコアサイズは結果に大きな影響を及ぼさず、70%未満では連結性の欠如のためにいくつかの断面が追加されなかったため、内腔の大きさが減少した。アルゴリズムは従来の3Dラベリングでもテストされた。そこでは、アルゴリズムは2つのケースで成功結果を残せなかった。一方のケースでは、内腔が脊椎に付着され、他方のケースでは内腔腎動脈を通じて腎臓に接合された。
【0068】
肺位置の端部
本実験は、肺位置の端部を検出する式1および2のパラメータTsizeおよびTcntに対するアルゴリズムの感度を調査する。表1は、様々なパラメータを使用して肺位置の端部を検出した結果を示す。肺位置端部と腹腔動脈の実際の位置との間の最小、最大、および平均距離(mm)が与えられる。腹腔動脈の実際の位置は放射線技師のうち1人によって提供された。隔離された物体を特定するサイズ限度が小さいとき(Tsize=3)、1つのデータでアルゴリズムが失敗した。これは、セグメント分割された肺からのアーチファクトのいくつかが有効な隔離された物体として特定されたためである。小さなサイズ限度の選択とは別に、アルゴリズムは実験値範囲において確実であった。すなわち、紙面上の制約により、パラメータの組み合わせの多数は表3に示されていない。これらの結果のうち、Tsize=6およびTcnt=6のパラメータが確実性と正確性とのトレードオフとして選択された。
【0069】
【表3】

【0070】
図14は、40個のCT画像にパラメータTsize=6およびTcnt=6を使用した肺位置端部と腹腔動脈との間の距離マップを示す。図示されるように、画像の過半数において、腹腔動脈はアルゴリズムが検出する肺位置の後ろに位置する。この結果から、腹腔動脈を検出するためのサーチ限度は自動的に、肺位置の40mm上および120mm下に安全に設定し得ると安全に結論づけることができる。
【0071】
動脈瘤のセグメント分割
図15は、AAAのセグメント分割の例を示す。
参考文献
【0072】
【表4】

【0073】
商業的応用:
【0074】
【表5】

【0075】
Mediar社の社員による医用撮像科学論文:
心臓:
【0076】
【表6】

【0077】
脳:
【0078】
【表7】

【0079】
結腸:
【0080】
【表8】

【0081】
肺:
【0082】
【表9】

【0083】
AAAに関する学術論文:
【0084】
【表10】

【0085】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
(1)内腔を特定し抽出するステップと、
(2)内腔の腹部を特定するステップと、
(3)内腔の腹部の幾何学的変換(直線化)を行うステップと、
(4)動脈瘤の存在を示す特徴をサーチするステップと、
(5)動脈瘤が存在する場合(ステップ4)、抽出された内腔を初期面として使用して、動脈瘤をセグメント分割するステップと
を備える方法。
【請求項2】
ステップ(1)が、
a.造影剤の強度範囲の強度を表す閾値限度を用いてCTA画像をセグメント分割するサブステップと、
b.前記セグメント分割された画像内の3D物体間の弱い関連性を断つモルフォロジ収縮演算を実行するサブステップと、
c.幾何学的フィルタを適用して多数の3D物体間の内腔を特定するサブステップと
を備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(2)が、
a.肺領域の終端位置を検出するサブステップと、
b.腹腔動脈を検出するサブステップと、
c.平滑化された中心線とクラスタ連結性解析とを用いて腸骨動脈接合部を検出するサブステップであって、
i.遠隔変換ベース骨子化法を用いて前記中心線を得る工程と、
ii.前記中心線内のボクセルの現在位置が隣接ボクセルの偏差ベクトルの荷重平均によって更新される反復法を用いることによって前記中心線を平滑化する工程と、
iii.前記中心線のクラスタ連結性クラスを作成する工程と、
iv.(前記クラスタ連結性クラスから)各分枝の長さを評価することによって主分枝(腸骨動脈)を特定する工程と
を備える請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記肺領域の終端位置の検出が、
i.適応ファジィ閾値セグメント分割アルゴリズムを実行するステップと、
ii.前記セグメント分割された画像内の孔を検出することにより、予想される肺領域を抽出するステップであって、前記孔の抽出は、前記セグメント分割された画像にフラッド・フィルアルゴリズムを適用し、前記セグメント分割された画像から結果を減算することによって実行されるステップと、
iii.ステップiiで得られる前記領域が、肺空間内の多数の血管断面の観察結果である複数の小孔を含むか否かを確認するステップと、
iv.肺領域がステップiiiで特定された場合には、ステップiに進んで次のスライスを調べ、他の場合には、現在のスライスが肺領域の終端位置であるとするステップと
からなる画像処理アルゴリズムを使用することにより、肺領域が検出されなくなるまでスライス毎に実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
肺位置端部と前記抽出された内腔とを用いて腹腔動脈を検出するステップは、
i.深度が肺位置端部の50mm上および100mm下に限定されるサーチ量としてサブ画像を作成するステップと、
ii.前記サブ画像をセグメント分割し、前記内腔と交差する領域を保持するステップと、
iii.矢状断面図中の全ボクセルを1スライスに投影するステップと、
iv.15×15ウィンドウサイズの収縮演算を実行した後、19×19ウィンドウサイズの膨張演算を実行するステップと、
v.ステップiiiの画像からステップivの画像を減算し、その結果、前記内腔の分枝を表す複数の隔離された物体を生じさせるステップと、
vi.前記内腔の最初の分枝として、腹腔動脈である左上からの最初の隔離された物体を得るステップと
を備える請求項3に記載の方法。
【請求項6】
平滑化された中心線とクラスタ連結性解析とを用いて腸骨動脈接合部を検出するステップは、
i.前記遠隔変換ベース骨子化法を用いて前記中心線を得るステップと、
ii.前記中心線内のボクセルの現在位置が隣接ボクセルの偏差ベクトルの荷重平均によって更新される反復法を用いることによって前記中心線を平滑化するステップと、
iii.前記中心線のクラスタ連結性クラスを作成するステップと、
iv.(前記クラスタ連結性クラスから)各分枝の長さを評価することによって主分枝(腸骨動脈)を特定するステップと
を備える請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記中心線と、腹腔動脈および腸骨動脈の位置とを端点として用いて、前記2つの端点間の最短路を検出することによって前記中心線を直線化することにより、前記中心線の変換から得られる幾何学的マッピングが前記セグメント分割された画像または元画像に適用され得るようにするステップを備える請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
a.前記内腔が湾曲しているか否かを確認するステップと、
b.前記内腔の径が拡張しているか否かを確認するステップと、
c.前記内腔の断面が不規則であるか否かを確認するステップと、
d.前記内腔に付着した物体が動脈瘤の特徴を有するか否かを確認するステップと
を備え、かつ、
前記付着した物体内での動脈瘤のサーチは、
i.非AAA脂肪領域を得るサブステップと、
ii.非AAA高強度物体を得るサブステップと、
iii.非AAA脊椎骨間隙充填を実行するサブステップと、
iv.付着した物体を抽出するサブステップと
を備える請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
−)前記抽出された内腔を初期面として使用し、非AAA領域を変形可能モデルベースセグメント分割のためのバリアとして使用するステップと、
−)3D楕円異方性ガウスベース強度モデルを前記非AAA領域の境界に明確に適合させることによってAAA領域を近似化するステップと、
−)この領域と前記抽出された内腔との結合物を、境界で精密化されるべき初期領域として使用するステップと
を備える請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図9(c)】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図3】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−517986(P2011−517986A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504598(P2011−504598)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051588
【国際公開番号】WO2009/128042
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(510275286)ユニヴェルシテ ドゥ ローザンヌ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LAUSANNE
【Fターム(参考)】