説明

膜の形成方法、膜及び塗布液

【課題】本発明は、物体の表面の撥水性を幅広く制御することが可能な膜の形成方法、膜及び塗布液を提供することを目的とする。
【解決手段】膜の形成方法は、メラミン誘導体、メラミン誘導体と反応することが可能な官能基を有する樹脂、疎水性基を有する材料及び溶媒を含む塗布液を物体の表面に塗布する工程と、物体の表面に塗布された塗布液に含まれるメラミン誘導体と樹脂を反応させる工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜の形成方法、膜及び塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の表面の撥水性を制御する方法としては、水に対する接触角が小さい膜を形成する方法、水に対する接触角が大きい膜を形成する方法、疎水撥油剤を塗布する方法等が知られている。また、疎水性の自己組織化膜を塗膜に積層したり、物理吸着又は化学吸着により固定したりする方法も知られている。
【0003】
特許文献1には、Si(OR)で示される珪素化合物(A)と、CF(CFCHCHSi(ORで示される珪素化合物(B)と、HNCONH(CH)Si(ORで示される珪素化合物(C)と、RCHOHで示されるアルコール(D)と、蓚酸(E)とを特定比率に含有する反応混合物を形成させ、この反応混合物を、水の不存在下に40〜180℃で加熱することによりポリシロキサンの溶液を生成させ、当該溶液を含有する塗布液を基材表面に塗布し、その塗膜を40〜450℃で熱硬化させることにより当該基材表面に密着して形成され、1.28〜1.41の屈折率と90〜115度の水接触角を示す被膜が開示されている。
【0004】
しかしながら、物体の表面の撥水性を幅広く制御することができないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、物体の表面の撥水性を幅広く制御することが可能な膜の形成方法、膜及び塗布液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、膜の形成方法において、メラミン誘導体、該メラミン誘導体と反応することが可能な官能基を有する樹脂、疎水性基を有する材料及び溶媒を含む塗布液を物体の表面に塗布する工程と、該物体の表面に塗布された塗布液に含まれるメラミン誘導体と樹脂を反応させる工程を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の膜の形成方法において、前記メラミン誘導体はアルキル化メラミン樹脂であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の膜の形成方法において、前記メラミン誘導体はメチル化メラミン樹脂であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の膜の形成方法において、前記樹脂は、ヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有し、前記疎水性基を有する材料は、該ヒドロキシル基と反応することが可能な官能基を有し、前記物体の表面に塗布された塗布液に含まれるメラミン誘導体と樹脂を反応させる際に、前記疎水性基を有する材料と前記樹脂を反応させることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の膜の形成方法において、前記樹脂は、ヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有し、前記疎水性基を有する材料は、ポリイミドであることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の膜の形成方法において、前記樹脂は、ポリイミドであり、前記疎水性基を有する材料は、ポリアミド酸であり、前記物体の表面に塗布された塗布液に含まれるメラミン誘導体と樹脂を反応させる際に、前記疎水性基を有する材料と前記メラミン誘導体を反応させることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、膜において、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の膜の形成方法を用いて形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、塗布液において、メラミン誘導体、該メラミン誘導体と反応することが可能な官能基を有する樹脂、疎水性基を有する材料及び溶媒を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、物体の表面の撥水性を幅広く制御することが可能な膜の形成方法、膜及び塗布液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
本発明の膜の形成方法は、メラミン誘導体、メラミン誘導体と反応することが可能な官能基を有する樹脂、疎水性基を有する材料及び溶媒を含む塗布液を物体の表面に塗布する工程と、物体の表面に塗布された塗布液に含まれるメラミン誘導体と樹脂を反応させる工程を有する。
【0017】
メラミン誘導体としては、特に限定されないが、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂等のアルキル化メラミン樹脂;メラミン樹脂;メラミン、メチロールメラミン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0018】
メラミン誘導体と反応することが可能な官能基を有する樹脂としては、特に限定されないが、ポリビニルフェノール、フェノール樹脂等のヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有する樹脂;ポリイミド等のイミド基を有する樹脂;ポリアミド酸等のカルボキシル基を有する樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。絶縁膜を形成する場合は、ポリアミド酸又はポリイミドが好ましい。
【0019】
なお、メラミン誘導体と反応することが可能な官能基を有する樹脂は、疎水性基を有する材料よりも疎水性が小さいことが好ましい。また、メラミン誘導体と反応することが可能な官能基を有する樹脂及び疎水性基を有する材料は、同一の溶媒に可溶であることが好ましい。これにより、疎水性基を有する材料が膜の表面に浮上しやすくなる。
【0020】
メラミン誘導体と反応することが可能な官能基を有する樹脂に対するメラミン誘導体の質量比は、通常、0.001〜3であり、0.05〜1が好ましい。
【0021】
疎水性基を有する材料としては、特に限定されないが、ポリイミド、ポリアミド酸等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、ヒドロキシル基と反応することが可能な官能基を有する材料が好ましい。
【0022】
疎水性基としては、特に限定されないが、アルキル基、フルオロ基で置換されているアルキル基等が挙げられる。
【0023】
ヒドロキシル基と反応することが可能な官能基を有する材料としては、特に限定されないが、n−オクタデシルトリクロロシラン等のトリクロロシリル化合物等のシランカップリング剤、シルセスキオキサン等が挙げられる。
【0024】
溶媒としては、特に限定されないが、ブタノール、N−メチルピロリドン、γ−ブチルラクトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。電子デバイス用途で用いる場合は、沸点の低い溶媒を用いることが好ましい。
【0025】
表面に塗布液を塗布する物体としては、特に限定されないが、ガラス基板、ポリイミド基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリエーテルサルホン基板、ポリカーボネート基板、ポリエチレンナフトレート基板、ステンレス基板等が挙げられる。電子デバイス用途で用いる場合は、無アルカリガラス基板が好ましい。
【0026】
物体の表面に塗布液を塗布する方法としては、特に限定されないが、スピンコート法、ダイコーター法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、平版印刷法が挙げられる。
【0027】
表面に塗布液が塗布された物体は、必要に応じて、乾燥させた後、メラミン誘導体と、メラミン誘導体と反応することが可能な官能基を有する樹脂を反応させる。
【0028】
表面に塗布液が塗布された物体を乾燥させる方法としては、特に限定されないが、真空乾燥等が挙げられる。
【0029】
メラミン誘導体と、メラミン誘導体と反応することが可能な官能基を有する樹脂を反応させる方法としては、特に限定されないが、加熱、紫外線照射等が挙げられる。
【0030】
以下、本発明で用いられる塗布液の具体的な構成について説明する。
【0031】
塗布液の第一の実施形態は、メラミン誘導体と、ヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有する樹脂と、ヒドロキシル基と反応することが可能な官能基及び疎水性基を有する材料を含む。この場合、物体の表面に塗布された塗布液に含まれるメラミン誘導体とヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有する樹脂を反応させる際に、ヒドロキシル基と反応することが可能な官能基及び疎水性基を有する材料とヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有する樹脂が反応する。その結果、塗布液中のメラミン誘導体の含有量を増大させることにより、膜の撥水性が低下する。これは、ヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有する樹脂がメラミン誘導体と反応することにより、ヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有する樹脂とヒドロキシル基と反応することが可能な官能基及び疎水性基を有する材料が反応しにくくなるためであると考えられる。
【0032】
塗布液の第二の実施形態は、メラミン誘導体と、ヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有する樹脂と、疎水性基を有するポリイミドを含む。この場合、物体の表面に塗布された塗布液に含まれるメラミン誘導体とヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有する樹脂を反応させる際に、疎水性基を有するポリイミドとヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有する樹脂が反応しない。その結果、塗布液中のメラミン誘導体の含有量を増大させることにより、膜の撥水性が向上する。これは、ヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有する樹脂がメラミン誘導体と反応することにより、疎水性基を有するポリイミドが膜の表面に浮上しやすくなるためであると考えられる。
【0033】
塗布液の第三の実施形態は、メラミン誘導体と、ポリイミドと、疎水性基を有するポリアミド酸を含む。この場合、物体の表面に塗布された塗布液に含まれるメラミン誘導体とポリイミドを反応させる際に、疎水性基を有するポリアミド酸とメラミン誘導体が反応する。その結果、塗布液中のメラミン誘導体の含有量を増大させることにより、膜の撥水性が低下する。これは、疎水性基を有するポリアミド酸がメラミン誘導体と反応することにより、疎水性基を有するポリアミド酸又は疎水性基を有するポリアミド酸由来のポリイミドが膜の表面に浮上しにくくなるためであると考えられる。
【0034】
以上のようにして、物体の表面に塗布液を塗布して膜を形成することにより、物体の表面の撥水性を幅広く制御することができる。
【0035】
本発明の膜の形成方法は、電界効果型トランジスタのゲート絶縁膜、層間絶縁膜等の電子デバイスの絶縁膜の形成に適用することができる。
【0036】
また、本発明の膜の形成方法は、各種センサー材料、環境応答材料、各種スイッチング材料の他、印刷技術、防曇・防汚技術等の分野にも有用である。
【実施例】
【0037】
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されない。
【0038】
[比較例1]
重量平均分子量が22000のポリ(p−ビニルフェノール)のマルカリンカーM(丸善石油化学社製)10gをブタノール100mlに溶解させた後、n−オクタデシルトリクロロシラン(信越化学工業社製)0.20gを加え、スターラーを用いて攪拌し、塗布液を得た。
【0039】
スピンコート法により、得られた塗布液をガラス基板上に塗布した後、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成し、厚さが700nmの薄膜を得た。
【0040】
得られた薄膜の超純水に対する接触角を、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、液滴法により測定したところ、110°であった。
【0041】
[実施例1]
重量平均分子量が22000のポリ(p−ビニルフェノール)のマルカリンカーM(丸善石油化学社製)10gをブタノール100mlに溶解させた後、n−オクタデシルトリクロロシラン(信越化学工業社製)0.20gを加え、スターラーを用いて攪拌した。次に、メチル化メラミン樹脂(シグマ アルドリッチ ジャパン社製)を加え、スターラーを用いて攪拌し、塗布液を得た。なお、メチル化メラミン樹脂は、ポリ(p−ビニルフェノール)に対する質量比を表1に示すように変化させた。
【0042】
スピンコート法により、得られた塗布液をガラス基板上に塗布した後、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成し、厚さが700nmの膜を得た。
【0043】
得られた膜の超純水に対する接触角を、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、液滴法により測定した。測定結果を表1に示す。なお、質量比は、ポリ(p−ビニルフェノール)に対するメチル化メラミン樹脂の質量比を意味する。
【0044】
【表1】

表1から、メチル化メラミン樹脂の添加量を増大させることにより、膜の撥水性が低下することがわかる。これは、ポリ(p−ビニルフェノール)がメチル化メラミン樹脂と反応して架橋することにより、立体障害が発生し、ポリ(p−ビニルフェノール)とn−オクタデシルトリクロロシランが反応しにくくなるためであると考えられる。なお、実施例1及び比較例1の膜は、超純水に対する接触角が70°以下であるポリ(p−ビニルフェノール)膜よりも撥水性が大きい。
【0045】
以上のように、n−オクタデシルトリクロロシラン及びメチル化メラミン樹脂の添加量を調整することにより、ポリ(p−ビニルフェノール)膜の撥水性を制御できることがわかる。なお、メチル化メラミン樹脂の代わりに、ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂等のアルキル化メラミン樹脂、メラミン樹脂、メチロールメラミンを用いても、同様の効果が得られる。
【0046】
[比較例2]
フェノール樹脂のレヂトップPSM−4326(群栄化学工業社製)20gをブタノール100mlに溶解させた後、n−オクタデシルトリクロロシラン(信越化学工業社製)0.4gを加え、スターラーを用いて攪拌し、塗布液を得た。
【0047】
スピンコート法により、得られた塗布液をガラス基板上に塗布した後、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成し、厚さが700nmの膜を得た。
【0048】
得られた膜の超純水に対する接触角を、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、液滴法により測定したところ、111°であった。
【0049】
[実施例2]
フェノール樹脂のレヂトップPSM−4326(群栄化学工業社製)20gをブタノール100mlに溶解させた後、n−オクタデシルトリクロロシラン(信越化学工業社製)0.4gを加え、スターラーを用いて攪拌した。次に、メチル化メラミン樹脂(シグマ アルドリッチ ジャパン社製)を加え、スターラーを用いて攪拌し、塗布液を得た。なお、メチル化メラミン樹脂は、フェノール樹脂に対する質量比を表2に示すように変化させた。
【0050】
スピンコート法により、得られた塗布液をガラス基板上に塗布した後、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成し、厚さが700nmの膜を得た。
【0051】
得られた膜の超純水に対する接触角を、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、液滴法により測定した。測定結果を表2に示す。なお、質量比は、フェノール樹脂に対するメチル化メラミン樹脂の質量比を意味する。
【0052】
【表2】

表2から、メチル化メラミン樹脂の添加量を増大させることにより、膜の撥水性が低下することがわかる。これは、フェノール樹脂がメチル化メラミン樹脂と反応して架橋することにより、立体障害が発生し、フェノール樹脂とn−オクタデシルトリクロロシランが反応しにくくなるためであると考えられる。なお、実施例2及び比較例2の膜は、超純水に対する接触角が70°以下であるフェノール樹脂膜よりも撥水性が大きい。
【0053】
以上のように、n−オクタデシルトリクロロシラン及びメチル化メラミン樹脂の添加量を調整することにより、フェノール樹脂膜の撥水性を制御できることがわかる。なお、メチル化メラミン樹脂の代わりに、ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂等のアルキル化メラミン樹脂、メラミン樹脂、メラミン、メチロールメラミンを用いても、同様の効果が得られる。
【0054】
[比較例3]
重量平均分子量が22000のポリ(p−ビニルフェノール)のマルカリンカーM(丸善石油化学)10gをN−メチルピロリドン100mlに溶解させた後、化学式
【0055】
【化1】

で表されるポリイミド(A)0.25gを加え、スターラーを用いて攪拌し、塗布液を得た。
【0056】
スピンコート法により、得られた塗布液をガラス基板上に塗布した後、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成し、厚さが700nmの膜を得た。
【0057】
得られた膜の超純水に対する接触角を、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、液滴法により測定したところ、80°であった。
【0058】
[実施例3]
重量平均分子量が22000のポリ(p−ビニルフェノール)のマルカリンカーM(丸善石油化学)10gをN−メチルピロリドン100mlに溶解させた後、ポリイミド(A)0.25gを加え、スターラーを用いて攪拌した。次に、メチル化メラミン樹脂(シグマ アルドリッチ ジャパン社製)を加え、スターラーを用いて攪拌し、塗布液を得た。なお、メチル化メラミン樹脂は、ポリ(p−ビニルフェノール)に対する質量比を表3に示すように変化させた。
【0059】
スピンコート法により、得られた塗布液をガラス基板上に塗布した後、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成し、厚さが700nmの膜を得た。
【0060】
得られた膜の超純水に対する接触角を、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、液滴法により測定した。測定結果を表3に示す。なお、質量比は、ポリ(p−ビニルフェノール)に対するメチル化メラミン樹脂の質量比を意味する。
【0061】
【表3】

表3から、メチル化メラミン樹脂の添加量を増大させることにより、膜の撥水性が向上することがわかる。これは、ポリ(p−ビニルフェノール)がメチル化メラミン樹脂と反応して架橋することにより、ポリイミド(A)が膜の表面に浮上しやすくなるためであると考えられる。なお、実施例3及び比較例3の膜は、超純水に対する接触角が70°以下であるポリ(p−ビニルフェノール)膜よりも撥水性が大きい。
【0062】
以上のように、ポリイミド(A)及びメチル化メラミン樹脂の添加量を調整することにより、ポリ(p−ビニルフェノール)膜の撥水性を制御できることがわかる。なお、メチル化メラミン樹脂の代わりに、ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂等のアルキル化メラミン樹脂、メラミン樹脂、メチロールメラミンを用いても、同様の効果が得られる。
【0063】
[比較例4]
ポリイミドCT4112(京セラケミカル社製)8gをN−メチルピロリドン100mlに溶解させた後、ポリイミド(A)0.26gを加え、スターラーを用いて攪拌し、塗布液を得た。
【0064】
スピンコート法により、得られた塗布液をガラス基板上に塗布した後、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成し、厚さが700nmの膜を得た。
【0065】
得られた膜の超純水に対する接触角を、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、液滴法により測定したところ、75°であった。
【0066】
[実施例4]
ポリイミドCT4112(京セラケミカル社製)8gをN−メチルピロリドン100mlに溶解させた後、ポリイミド(A)0.26gを加え、スターラーを用いて攪拌した。次に、メチル化メラミン樹脂(シグマ アルドリッチ ジャパン社製)を加え、スターラーを用いて攪拌し、塗布液を得た。なお、メチル化メラミン樹脂は、ポリイミドCT4112に対する質量比を表4に示すように変化させた。
【0067】
スピンコート法により、得られた塗布液をガラス基板上に塗布した後、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成し、厚さが700nmの膜を得た。
【0068】
得られた膜の超純水に対する接触角を、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、液滴法により測定した。測定結果を表4に示す。なお、質量比は、ポリイミドCT4112に対するメチル化メラミン樹脂の質量比を意味する。
【0069】
【表4】

表4から、メチル化メラミン樹脂の添加量を増大させることにより、膜の撥水性が向上することがわかる。これは、ポリイミドCT4112がメチル化メラミン樹脂と反応して架橋することにより、ポリイミド(A)が膜の表面に浮上しやすくなるためであると考えられる。なお、実施例4及び比較例4の膜は、超純水に対する接触角が73°以下であるポリイミドCT4112の膜よりも撥水性が大きい。
【0070】
以上のように、ポリイミド(A)及びメチル化メラミン樹脂の添加量を調整することにより、ポリイミドCT4112膜の撥水性を制御できることがわかる。なお、メチル化メラミン樹脂の代わりに、ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂等のアルキル化メラミン樹脂、メラミン樹脂、メラミンを用いても、同様の効果が得られる。
【0071】
[比較例5]
ポリイミドCT4112(京セラケミカル社製)8gをN−メチルピロリドン100mlに溶解させた後、化学式
【0072】
【化2】

で表されるポリアミド酸(A)の6質量%N−メチルピロリドン溶液8gを加え、スターラーを用いて攪拌し、塗布液を得た。
【0073】
スピンコート法により、得られた塗布液をガラス基板上に塗布した後、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成し、厚さが700nmの膜を得た。
【0074】
得られた膜の超純水に対する接触角を、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、液滴法により測定したところ、93°であった。
【0075】
[実施例5]
ポリイミドCT4112(京セラケミカル社製)8gをN−メチルピロリドン100mlに溶解させた後、ポリアミド酸(A)の6質量%N−メチルピロリドン溶液8gを加え、スターラーを用いて攪拌した。次に、メチル化メラミン樹脂(シグマ アルドリッチ ジャパン社製)を加え、スターラーを用いて攪拌し、塗布液を得た。なお、メチル化メラミン樹脂は、ポリイミドCT4112に対する質量比を表5に示すように変化させた。
【0076】
スピンコート法により、得られた塗布液をガラス基板上に塗布した後、不活性ガス雰囲気下、200℃で焼成し、厚さが700nmの膜を得た。
【0077】
得られた膜の超純水に対する接触角を、接触角計(協和界面科学社製)を用いて、液滴法により測定した。測定結果を表5に示す。なお、質量比は、ポリイミドCT4112に対するメチル化メラミン樹脂の質量比を意味する。
【0078】
【表5】

表5から、メチル化メラミン樹脂の添加量を増大させることにより、膜の撥水性が低下することがわかる。これは、ポリアミド酸(A)がメチル化メラミン樹脂と反応して架橋することにより、ポリアミド酸(A)又はポリアミド酸(A)由来のポリイミドが膜の表面に浮上しにくくなるためであると考えられる。なお、実施例5及び比較例5の膜は、超純水に対する接触角が73°以下であるポリイミドCT4112の膜よりも撥水性が大きい。
【0079】
以上のように、ポリアミド酸(A)及びメチル化メラミン樹脂の添加量を調整することにより、ポリイミドCT4112膜の撥水性を制御できることがわかる。なお、メチル化メラミン樹脂の代わりに、ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂等のアルキル化メラミン樹脂、メラミン樹脂、メラミンを用いても、同様の効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】WO2005/059050号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン誘導体、該メラミン誘導体と反応することが可能な官能基を有する樹脂、疎水性基を有する材料及び溶媒を含む塗布液を物体の表面に塗布する工程と、
該物体の表面に塗布された塗布液に含まれるメラミン誘導体と樹脂を反応させる工程を有することを特徴とする膜の形成方法。
【請求項2】
前記メラミン誘導体は、アルキル化メラミン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の膜の形成方法。
【請求項3】
前記メラミン誘導体は、メチル化メラミン樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の膜の形成方法。
【請求項4】
前記樹脂は、ヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有し、
前記疎水性基を有する材料は、該ヒドロキシル基と反応することが可能な官能基を有し、
前記物体の表面に塗布された塗布液に含まれるメラミン誘導体と樹脂を反応させる際に、前記疎水性基を有する材料と前記樹脂を反応させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の膜の形成方法。
【請求項5】
前記樹脂は、ヒドロキシル基で置換されている芳香族基を有し、
前記疎水性基を有する材料は、ポリイミドであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の膜の形成方法。
【請求項6】
前記樹脂は、ポリイミドであり、
前記疎水性基を有する材料は、ポリアミド酸であり、
前記物体の表面に塗布された塗布液に含まれるメラミン誘導体と樹脂を反応させる際に、前記疎水性基を有する材料と前記メラミン誘導体を反応させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の膜の形成方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の膜の形成方法を用いて形成されていることを特徴とする膜。
【請求項8】
メラミン誘導体、該メラミン誘導体と反応することが可能な官能基を有する樹脂、疎水性基を有する材料及び溶媒を含むことを特徴とする塗布液。

【公開番号】特開2011−183347(P2011−183347A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53592(P2010−53592)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】