説明

膜厚測定装置および膜厚測定方法

【課題】新規な膜厚測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】膜厚測定装置は、光源4、偏光板3,6、ビームスプリッタ7、1/4波長板9、対物レンズ8、結像レンズ2、CCDセンサ1より構成される。この膜厚測定装置では、白色偏光干渉法によって、接触状態にあるガラス板11と試料10の間の干渉画像を取得する。ガラス板11には、クロム薄膜12とシリカ薄膜13が形成されている。その色情報をHSV色空間に変換して色相値を求め、二面間のすきまの厚さとの校正結果に基づき、すきまの厚さあるいは膜厚ゼロに相当する真実接触部を可視化する。すきま厚さ測定の分解能は±3nmを超える性能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な膜厚測定装置に関する。
また、本発明は、前記膜厚測定装置に使用する新規な膜厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の表面が粗面や低反射率面である場合、潤滑下の真実接触部(油膜厚さゼロに相当する)の測定・観察は、従来、プリズムとの接触面における光の全反射を利用した方法が広く用いられ、湿式ペーパ材への適用例がある(特許文献1参照。)。ところがこれは、表面に対し斜めからみた画像(アスペクト比が1とならない)となるので後処理を必要とし、高倍率としたときにピントのぼけが生じたり、また、測定原理上、光干渉法に比べて測定精度が低いという欠点があった。
【0003】
無潤滑下の場合においては、上述の欠点を解決するものとして、白色偏光干渉法を利用した装置が報告されている(特許文献2参照。)。しかし、これは潤滑下においては、ガラス板と潤滑油間の屈折率の差が小さいため、コントラストのある干渉画像の取得が困難という欠点があった。
【0004】
上述の欠点を解決するものとして、鋼球などの平滑・高反射率面の表面に対し接触面圧が高い(ヘルツ接触)場合について、クロム反射膜のみをガラス面にコートした通常の多重反射干渉法に対し、さらにシリカスペーサ膜を付与したnmオーダの膜厚測定法(スペーサ法)が知られている(非特許文献1参照。)。この方法は鋼球表面に粗さを付加した場合についても報告がある(非特許文献2参照。)。
【0005】
さらに、鋼球(高い反射率と平滑な面を持つ)を対象としたEHL膜厚測定において、通常のクロム反射膜のみの多重反射干渉法によって干渉縞を求め、色情報としてHSV色空間を用いて色相とすきま間の校正によって膜厚測定した例が報告されている(非特許文献3参照。)。
【0006】
なお、発明者は、本発明に関連する技術内容を開示している(非特許文献4参照。)。この非特許文献4は、特許法第30条第1項を適用できるものと考えられる。
【0007】
【特許文献1】特開平8-247747号公報
【特許文献2】特開2005-55413号公報
【非特許文献1】G.J.JOHNSTON, R.WAYTE and H.A.SPIKES: The Measurement and Study of Very Thin Lubricant Films in Concentrated Contacts, Tribology Transactions, 34,2 (1991) 187-194
【非特許文献2】H.A.Spikes and P.M.Cann: The development and application of the spacer layer imaging method for measuring lubricant film thickness, PIME part J, 215 (2001) 261-277
【非特許文献3】L. Gustafsson, E. Hoglund and O. Marklund: Measuring lubricant film thickness with image analysis,ImechE J. Enginerring Tribology, 208 (1994) 199-205
【非特許文献4】江口正夫・山本隆司:白色スペーサ干渉法とHSV色空間を利用したすきま測定と真実接触部の可視化,トライボロジー会議予稿集,東京2006-5,229-230
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、鋼球などの平滑・高反射率面の表面に対し接触面圧が高い場合について、クロム反射膜のみをガラス面にコートした通常の多重反射干渉法に対し、さらにシリカスペーサ膜を付与したnmオーダの膜厚測定法(スペーサ法)が知られている。この方法は鋼球表面に粗さを付加した場合についても報告がある。
しかし、画像処理作業は、RGB色空間の輝度情報を用いて行うため、RGBの3要素に注目する必要があり、校正作業の見通しが悪くなるという問題がある。
【0009】
上述したように、鋼球を対象としたEHL膜厚測定において、通常のクロム反射膜のみの多重反射干渉法によって干渉縞を求め、色情報としてHSV色空間を用いて色相とすきま間の校正によって膜厚測定した例が報告されている。
しかし、クロム反射膜コートによる光学的位相遅れの発生のために、95nm以下のすきまにおいて色相が定義できない、つまり膜厚測定ができないという問題がある。
【0010】
そのため、このような課題を解決する、新規な膜厚測定装置と膜厚測定方法の開発が望まれている。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、新規な膜厚測定装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記膜厚測定装置に使用する新規な膜厚測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の膜厚測定装置は、反射膜とスペーサ膜を順次形成し、前記スペーサ膜を試料に接する光透過性基板と、前記スペーサ膜とは反対側から、前記光透過性基板に白色光を照射する照射手段と、前記白色光の反射光を受光する受光手段と、前記反射光から色彩情報を取得する色彩情報取得手段を有する。
【0013】
本発明の膜厚測定方法は、光透過性基板に反射膜とスペーサ膜を順次形成し、前記スペーサ膜を試料に接触させ、前記スペーサ膜とは反対側から前記光透過性基板に白色光を照射し、前記白色光の反射光を受光し、前記反射光から色彩情報を取得する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
【0015】
本発明の膜厚測定装置は、反射膜とスペーサ膜を順次形成し、前記スペーサ膜を試料に接する光透過性基板と、前記スペーサ膜とは反対側から、前記光透過性基板に白色光を照射する照射手段と、前記白色光の反射光を受光する受光手段と、前記反射光から色彩情報を取得する色彩情報取得手段を有するので、新規な膜厚測定装置を提供することができる。
【0016】
本発明の膜厚測定方法は、光透過性基板に反射膜とスペーサ膜を順次形成し、前記スペーサ膜を試料に接触させ、前記スペーサ膜とは反対側から前記光透過性基板に白色光を照射し、前記白色光の反射光を受光し、前記反射光から色彩情報を取得するので、新規な膜厚測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、膜厚測定装置および膜厚測定方法にかかる発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0018】
本発明の膜厚測定装置について説明する。本発明の膜厚測定装置は、反射膜とスペーサ膜を順次形成し、前記スペーサ膜を試料に接する光透過性基板と、前記スペーサ膜とは反対側から、前記光透過性基板に白色光を照射する照射手段と、前記白色光の反射光を受光する受光手段と、前記反射光から色彩情報を取得する色彩情報取得手段を有する。
【0019】
図1に本発明の干渉縞による膜厚測定装置の概略図を示す。基本的な光学系は、既報の白色偏光干渉法(江口正夫・山本隆司:無潤滑下の低反射率粗面を対象とした白色干渉法による真実接触面積の測定,トライボロジスト,50, 6 (2005) 471.)と同一である。測定原理の概略はつぎの通りである。実体顕微鏡、CCDカメラ、落射同軸照明装置と白色偏光を利用して光学系を構成している。CCDカメラにはCCDセンサ1が内蔵されている。スペーサ膜(シリカ薄膜13、膜厚:420nm)を最上層に反射膜(クロム薄膜12、光透過率:64%)をその下にコーティングした光透過性基板(ガラス板11)を試料10に押し付けている。試料10としては、低反射率粗面を有する物体が採用されている。白色干渉法による干渉縞によって真実接触部やすきまを可視化することができる。以下、この方法を「白色スペーサ干渉法」と称する。
【0020】
このとき、光学系に偏光子6・検光子3からなる偏光板と1/4波長板9を挿入して、試料10が粗面・低反射率を有する物体で、かつ潤滑下であってもコントラストのある明瞭な色相分布を持つ干渉画像が得られる。
【0021】
光透過性基板は、ガラス、サファイヤ、またはポリカーボネイトからなる。
反射膜は、クロムまたは銀を含有する。
反射膜の膜厚は、数nmであることが好ましい。
スペーサ膜は、シリカまたはDLC膜(ダイヤモンド・ライク・カーボン膜)を含有する。
【0022】
スペーサ膜の膜厚は130nm〜900nmの範囲内にあることが好ましい。膜厚が130nm以上であると、干渉縞を有彩色にできるという利点がある。膜厚が900nm以下であると、干渉縞の輝度の低下を抑制できるという利点がある。
【0023】
試料としては、鋼球、ゴムタイヤ、ブレーキ用摩擦材、湿式クラッチ用摩擦材などを採用することができる。
【0024】
本発明の膜厚測定方法について説明する。本発明の膜厚測定方法は、光透過性基板に反射膜とスペーサ膜を順次形成し、前記スペーサ膜を試料に接触させ、前記スペーサ膜とは反対側から前記光透過性基板に白色光を照射し、前記白色光の反射光を受光し、前記反射光から色彩情報を取得する。
【0025】
校正方法の一例を図2に示す。これは既知の高精度な表面形状を持つ玉軸受用鋼球14を用いてガラス板11に接触させ、2面間に生じるすきまを利用するものである。このすきまはヘルツの接触理論によって詳細に解析可能であり、nmオーダのすきまを生じさせることが可能である。
【0026】
図2から分かるように、ガラス板11の上にクロム薄膜12を形成している。これは、反射率を高めるためである。クロム薄膜12を形成するだけでは、光の電磁波としての性質から反射光の位相遅れが生じ、その遅れに相当する光路差(光学すきまゼロの点)では無彩色となり、0次の暗部干渉縞を形成するまでには至らない。そこで、この光路差の延長とクロム薄膜の耐摩耗・耐剥離性向上の目的のために、クロム薄膜12の上にさらにシリカ薄膜13を形成する。このシリカ薄膜13によって、すきまゼロ部に相当する真実接触部のRGB干渉輝度が変化し、結果として有彩色の干渉縞が現れる。
【0027】
このように白色偏光干渉法にスペーサ法を組み合わせれば、膜厚測定が可能となる。この時、干渉光を分光してそのスペクトル分布のピークを用いれば、干渉縞の明暗とすきまとの間には以下の式(1)の関係がある。なお、すきまには空気が存在すると仮定する。
【0028】
【数1】

【0029】
ここで、nair:空気の屈折率、hair:空気の膜厚、nsp:スペーサ膜の屈折率、hsp:スペーサ膜の膜厚、φ:位相遅れ、λ:分光した光の波長、N:整数、ただし白色光は垂直に入射するものとする。しかし、この方法では膜厚の2次元分布測定は困難である。そこで、干渉光強度(輝度)の使用が考えられる。2光束干渉の場合の干渉光強度IRは、次の式(2)で表される。
【0030】
【数2】

【0031】
ここで、I1,I2:2光束の光強度、hopt:光学的すきま(= nairhair + nsphsp)である。また、白色光の低コヒーレンス性を考慮し、その輝度振幅の減衰の係数をKとすれば、次の式(3)で近似できる (P. Sandoz and G. Tribillon: Profilometry by Zero-order Interference Fringe Identification, J. of Modern Opt., 40(1993)1691.)。
【0032】
【数3】

【0033】
この白色光の低コヒーレンス性により、解析に邪魔となる高次の干渉縞が減衰し、解析が容易となる。本発明で対象とする試料や低反射率試料面では、二光束干渉と多重干渉の中間的挙動を示すと考えられるが、本発明の範囲内では見通しの良い式(3)による近似で充分と考えた。
【0034】
図3にスペーサ法を用いた白色干渉によって生じる干渉縞光強度(輝度)の分布を示すが、RGBの3原色波長に対してプロットしたものである。「Cr」、「SiO2」の文字は、それぞれの薄膜によるhopt(光学的すきま)への寄与分を示す。SiO2で示されるシリカ薄膜の膜厚は任意に調整することが可能で、その結果、真実接触時の色(RGB値)を調整することができる。膜厚の2次元分布測定には図3に示した干渉光強度を使用する。
【0035】
一般に画像処理作業はRGB色空間の輝度情報を用いて行うが、RGBの3要素に注目する必要があり、校正作業の見通しが悪いものとなる。そこで、HSV色空間(色相H、彩度S、明度V)に注目した。色相Hを利用すれば単一の値(0〜1.0に正規化)で、RGB3原色の輝度情報と等価な情報を持つことができる。RGBからHSVへの色空間の変換には、図4に示す六角錐モデルを用いた。RGBからHSVへの変換式を次の式(4)に示す。
【0036】
【数4】

【0037】
色相HはRGBの光強度を同時に評価するため、照明輝度の影響を受けにくいという利点を持っている。
【0038】
RGBからHSVへの色空間の変換方法は、上述の六角錐モデルと式 (4)を用いる方法に限定されるものではない。このほかRGBからHSVへの色空間の変換方法としては、双六角錐モデル、Haydnの定義に基づく変換、Rainesの定義に基づく変換などを採用することができる。
【0039】
図5に白色干渉画像の実データ近似に基づいたHSV値−すきまの関係のシミュレーションの一例を示す。ただし、図5(a)に示すRGB光強度(輝度)は式(3)および表1で表されるとした。またデジタルカメラのRGBフィルターの代表波長をR=595nm、G=540nm、B=505nmとし、φ=0.27、hsp=420nm、nsp=1.46、輝度振幅の減衰係数K=10-6nm-2と仮定した。この図5(b)より、色相Hは265nm程度の周期をもって変化し、その傾きも変化している。この色相の使用によって1周期中のすきまの算定が可能であることがわかる。一方、彩度Sと明度Vは、不規則に変化して変化の幅も小さく、すきまの測定には適当でない。
【0040】
【表1】

【0041】
すきまゼロの点の色相はスペーサ膜厚等で変化するので、この点をシフトさせれば真実接触部の検出感度(色相の変化)を可変させることも可能である。図6は、このことを図5の色相Hに関するシミュレーション結果より示した一例である。色相が0.78〜0.85(hopt=604〜597nm相当)の間では、傾きの絶対値│ΔH/Δhopt│は0.01 nm-1以上となり、鋭敏な真実接触部の検出が期待できる。ここですきま測定(真実接触部抽出)の分解能について検討する。RGBによる256階調の取得画像の解析を考え、その輝度変化が100階調程度とする。これより、色相の分解能もΔH=0.01とし、上述の検出感度0.01nm-1を適用すればΔhopt=1nmを期待できる。この値を安全側に考え偏差の3倍の値としても、±3nmの分解能を充分に有することになる。
【0042】
つぎに、色相とすきまの関係の校正を目的として、RGBの各代表波長の干渉縞について、その次数とその平面上の座標位置を調べた。図7は鋼球を使用したヘルツ接触下(鋼球直径:4.763mm、最大ヘルツ圧力:245MPa)において、干渉縞(GとBの波長)中央部の座標とその次数から読み取ったすきまとの関係を示す。破線はGとBの測定点を同時に評価した回帰多項式である。この多項式による内挿によって、最小次数の干渉縞発生位置のすきま(Gの明部3次、すきま約119nm)まで、一本の滑らかな関係を得た。また、図中には荷重ゼロ(剛体)、および荷重(0.134N)負荷時のガラス板−鋼球間の理論計算した変形外形線も示した。この図より実験点および外挿線は、理論外形線にほぼ一致しており、外挿の妥当性が認められた。この結果から、約119nmより小さいすきまは、この回帰多項式を用いた。
【0043】
図8は、ヘルツ接触部中心線近傍上で測定した色相Hと上述したすきまの関係の一例である。図中のY=223、Y=232は色相値を測定した横640×縦480ピクセル画像の縦方向のピクセル位置を表す。ほぼヘルツ接触円の直径上にある。すきまゼロの点の色相は0.82で周期は260nm程度となる。
【0044】
また、図中に前述したシミュレーションによる色相の結果も記してある。すきま30nmを超える領域では、これら両者の色相値はおおむね一致しており、色相Hの有効性および式(3)の有効性が認められた。完全に一致しない原因としては、ヘルツ接触部近傍の変形や干渉光強度シミュレーションの近似度の問題と考えている。この図から、RGBの輝度変化が100階調程度とし、色相Hの分解能もΔH=0.01とすれば、図中に示したΔH/Δh=-1.0/300nm=-0.01/3nm 程度の勾配から、本法は±3nm程度の分解能を有しているといえる。
【0045】
図9にヘルツ接触中央部の色相値を最大ヘルツ接触圧力に対しプロットした結果、および一組の接触条件下の圧力分布に対応した色相プロットを示す。丸印はヘルツ接触中央部の色相値を示し、四角印はヘルツ接触内部の中央部から周縁部にかけた圧力分布に対応した色相値を示している。明らかに面圧の増加と共に色相が増大する、色相の面圧依存性を示している。さらに接触圧力ゼロの色相は0.82程度と推定され、この値が真実接触の開始点と見なせる。この依存性は、シリカスペーサ膜がヘルツ圧力によって圧縮され薄くなったためと考えられる。
【0046】
このようなシリカスペーサ層の薄化現象についての報告 (G. Guangteng, P. M. Cann, A. V. Olver, H. A. Spikes: Lubricant Film Thickness in Rough Surface, Mixed Elasthydrodynamic Contact, J. Tribology, 122, 1(2000)65.)によると、ほぼ同じ条件(hsp=400nm)でΔhsp/Δpmax=-1nm/100MPaの値が得られている。この値と上述した検出感度ΔH/Δh=-0.01nm-1より、ΔH/Δpmax=0.01/100MPaが得られる。図中にこの傾きを示す。検出感度の非線形性を考えれば、色相の面圧依存性の主たる原因はシリカスペーサ膜厚の薄化と考えられる。
【0047】
真実接触部の抽出に当たっては、この色相の面圧依存性をあらかじめ把握して幅を持たせることが必要となる。また、この依存性は、混合潤滑などの真実接触と油膜層が混在する場合、従来不可能であった、真実接触部の接触圧力も同時に測定できる可能性を示すものである。
【0048】
本発明の膜厚測定装置および膜厚測定方法の適用について説明する。本発明は、低反射率粗面を有する接触面を対象とする油膜厚さ及び真実接触部の可視化測定に適用できる。具体的には、潤滑油などの液体が存在する機械摺動部、特に摩擦駆動面(湿式クラッチ面、路面とタイヤ面間)、およびシール面間における油膜厚さ(膜厚)の測定や接触状態のモニタリングに適用できる。
【0049】
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、以下の利点が得られる。
(1)偏光白色干渉法の採用によって、表面に対して正面から見た接触画像を取得することができ、粗面・低反射率表面を有する物体と透明(ガラス)板間の真実接触部や膜厚分布を可視化することができる。
(2)RGB3色のCCD画像情報に基づいたHSV色彩情報(色相値)の採用および(機械的)校正装置の併用によって、照明むらに強いなどの使用環境に左右されずに±3nmを超える分解能で油膜厚さの測定や真実接触部を抽出することができる。
(3)シリカスペーサ膜厚さおよびRGB3色光強度の調整によって、最適な校正曲線の構築ができる。
(4)油膜部と真実接触部が混在している接触面(混合潤滑面)であっても、これら両者を識別でき、さらに真実接触部の接触圧力をも推定可能である。
【0050】
なお、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に用いる装置の一例を示す図である。
【図2】本発明に用いるガラス板を示す図である。
【図3】スペーサ法を用いた白色干渉縞光強度分布を示す図である。
【図4】HSV色空間(HSV六角錐モデル)の説明に用いる図である。
【図5】HSV値とすきまの関係についてのシミュレーション結果を示す図である。
【図6】シミュレーションにおける検出感度の変化を示す図である。
【図7】半径とすきまの関係を示す図である。
【図8】色相値とすきま(膜厚)の関係を示す図である。
【図9】色相の面圧依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1‥‥CCDセンサ、2‥‥結像レンズ、3‥‥検光子、4‥‥ハロゲンランプ、5‥‥ライトガイド、6‥‥偏光子、7‥‥ビームスプリッタ、8‥‥対物レンズ、9‥‥1/4波長板、10‥‥試料、11‥‥ガラス板、12‥‥クロム薄膜、13‥‥シリカ薄膜、14‥‥鋼球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射膜とスペーサ膜を順次形成し、前記スペーサ膜を試料に接する光透過性基板と、
前記スペーサ膜とは反対側から、前記光透過性基板に白色光を照射する照射手段と、
前記白色光の反射光を受光する受光手段と、
前記反射光から色彩情報を取得する色彩情報取得手段を有する
膜厚測定装置。
【請求項2】
反射膜は、クロムまたは銀を含有する
請求項1記載の膜厚測定装置。
【請求項3】
スペーサ膜は、シリカまたはDLC膜(ダイヤモンド・ライク・カーボン膜)を含有する
請求項1記載の膜厚測定装置。
【請求項4】
スペーサ膜の膜厚は130nm〜900nmの範囲にある
請求項1記載の膜厚測定装置。
【請求項5】
光透過性基板は、ガラス、サファイヤ、またはポリカーボネイトからなる
請求項1記載の膜厚測定装置。
【請求項6】
色彩情報は、HSV色彩情報である
請求項1記載の膜厚測定装置。
【請求項7】
光透過性基板に反射膜とスペーサ膜を順次形成し、
前記スペーサ膜を試料に接触させ、
前記スペーサ膜とは反対側から、前記光透過性基板に白色光を照射し、
前記白色光の反射光を受光し、
前記反射光から色彩情報を取得する
膜厚測定方法。
【請求項8】
反射膜は、クロムまたは銀を含有する
請求項7記載の膜厚測定方法。
【請求項9】
スペーサ膜は、シリカまたはDLC膜(ダイヤモンド・ライク・カーボン膜)を含有する
請求項7記載の膜厚測定方法。
【請求項10】
スペーサ膜の膜厚は130nm〜900nmの範囲にある
請求項7記載の膜厚測定方法。
【請求項11】
光透過性基板は、ガラス、サファイヤ、またはポリカーボネイトからなる
請求項7記載の膜厚測定方法。
【請求項12】
色彩情報は、HSV色彩情報である
請求項7記載の膜厚測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−20318(P2008−20318A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192234(P2006−192234)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年4月20日 社団法人 日本トライボロジー学会発行の「トライボロジー会議予稿集 東京 2006−5」に発表
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(000102784)NSKワーナー株式会社 (149)
【Fターム(参考)】