説明

膜形成用組成物

【課題】誘電率、金属拡散バリア性などの膜特性が良好な絶縁膜を形成するための膜形成組成物、該膜形成組成物を用いて得られる絶縁膜およびそれを有する電子デバイスを提供する。
【解決手段】一般式(I)で表される化合物の重合体を含有することを特徴とする膜形成用組成物。
(X)−Q−(Y) (I)
一般式(I)中、Qは環員数5または6の含窒素複素環を表す。
Xは任意の置換基を表す。
mは0〜10の整数を表し、
nは1〜10の整数を表す。
Yは所定の基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膜形成用組成物に関し、さらに詳しくは電子デバイスなどに用いられる誘電率、金属拡散バリア性、機械強度、耐熱性等の膜特性が良好な絶縁膜を形成するための組成物に関し、さらには該組成物を用いて得られる絶縁膜および、該絶縁膜を有する電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性(比誘電率3.0以下)の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。
(特許文献1参照)
【0003】
約400℃程度の加熱時にも配線に用いられる金属(銅など)が、絶縁膜内に拡散しないことが必要であるが、通常のlow-k絶縁膜は配線金属の拡散バリア性を有しないため、絶縁膜への金属の拡散を回避するために、絶縁膜と金属との間に絶縁性バリア膜が用いられる。このようなバリア膜としては、例えば、窒化ケイ素、シリコンカーバイドなどが用いられているが、これらは一般的に比誘電率が4.0以上であるため、層間絶縁膜の実効誘電率が上昇する原因となっている。
【0004】
そこで、比誘電率が小さく、金属拡散を抑止する効果の高い絶縁膜の開発が望まれていた。
【特許文献1】特表2002-534546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点を解決するための膜形成用組成物に関し、さらに詳しくは電子デバイスなどに用いられる、誘電率、金属拡散バリア性などの膜特性が良好な絶縁膜を形成するための膜形成組成物に関し、さらには該膜形成組成物を用いて得られる絶縁膜およびそれを有する電子デバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題が下記の<1>〜<11>の構成により解決されることを見出した。
<1>
一般式(I)で表される化合物またはその重合体を含有することを特徴とする膜形成用組成物。
(X)−Q−(Y) (I)
一般式(I)中、
Qは環員数5または6の含窒素複素環を表す。
Xは任意の置換基を表す。
mは0〜10の整数を表す。
nは1〜10の整数を表す。
Yは下記一般式(Y−1)〜(Y−6)のいずれかで表される基を表す。
【化4】


一般式(Y−1)〜(Y−6)中、
Zは水素原子または任意の置換基を表す。
1はC(X)2、NX、O、Sから選ばれる原子または基を表す。
2はそれぞれ独立に水素原子または任意の置換基を表す。
2は環状またはカゴ状構造を有する基、またはSiX (3-n2)を表す。
はそれぞれ独立に水素原子または任意の置換基を表す。
X、Y、Z、X1およびQ2は複数存在する場合は、各々同一でも異なっていてもよい。
2は1〜10の整数を表す。ただし、Q2がSiX (3-n2)を表す場合、n2は1〜3の整数を表す。
<2>
一般式(I)で表される化合物において、Qが下記一般式(Q−1)〜(Q−5)のいずれかで表される基であることを特徴とする上記<1>に記載の膜形成用組成物。
【化5】

一般式(Q−1)〜(Q−5)中、
はそれぞれ独立にC(X)2、NX、O、Sから選ばれる原子または基を表す。
はそれぞれ独立にCX、Nから選ばれる原子または基を表す。
は水素原子または任意の置換基である。
はそれぞれ独立に水素原子または一般式(I)のXまたはYに対応する基である。
<3>
一般式(I)で表される化合物において、Qが一般式(Q−1)で表される基であることを特徴とする請求項2に記載の膜形成用組成物。
<4>
一般式(I)で表される化合物において、Qが下記一般式(Q−6)で表される基であることを特徴とする請求項2に記載の膜形成用組成物。
【化6】

一般式(Q−6)中、Aはそれぞれ独立に水素原子または一般式(I)のXまたはYに対応する基である。
<5>
一般式(I)で表される化合物の分子量が100以上1500以下であることを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<6>
一般式(I)で表される化合物を遷移金属触媒存在下または重合開始剤存在下で重合して得られた重合物を含むことを特徴とする上記<1>〜<5>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<7>
一般式(I)で表される化合物またはその重合体がシクロヘキサノンまたはアニソールに25℃で3質量%以上溶解することを特徴とする上記<1>〜<6>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<8>
さらに有機溶剤を含むことを特徴とする上記<1>〜<7>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<9>
上記<1>〜<8>のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成した絶縁膜。
<10>
上記<1>〜<8>のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成した金属拡散バリア膜。
<11>
上記<9>に記載の絶縁膜または上記<10>に記載の金属拡散バリア膜を有する電子デバイス。
【発明の効果】
【0007】
本発明の膜形成用組成物を用いて形成した絶縁膜は低い誘電率、高い金属拡散バリア性が得られるため、電子デバイスなどにおける層間絶縁膜として適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の膜形成用組成物は、下記一般式(I)で表される化合物またはその重合体を含有する。
(X)−Q−(Y) (I)
一般式(I)中、
Qは環員数5または6の含窒素複素環を表す。
Xは任意の置換基を表す。
mは0〜10の整数を表す。
nは1〜10の整数を表す。
Yは下記一般式(Y−1)〜(Y−6)のいずれかで表される基を表す。
ここで、環員数5または6の含窒素複素環としては、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン等が挙げられる。
環員数5または6の含窒素複素環には、さらに5乃至7員の、飽和、不飽和、もしくは芳香族の、炭素環又は複素環が縮合していてもよく、縮合している環としては芳香族の、炭素環又は複素環が好ましい。縮合して形成される環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、芳香族複素環(例えば、ピリジン、ピラジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、フラン、チオフェン)、シクロヘキセン環、またはシクロペンテン環等が挙げられる。
【0010】
【化7】

【0011】
一般式(Y−1)〜(Y−6)中、
Zは水素原子または任意の置換基を表す。
1はC(X)2、NX、O、Sから選ばれる原子または基を表す。
2はそれぞれ独立に水素原子または任意の置換基を表す。
2は環状またはカゴ状構造を有する基、またはSiX (3-n2)を表す。
はそれぞれ独立に水素原子または任意の置換基を表す。
X、Y、Z、X1およびQ2は複数存在する場合は、各々同一でも異なっていてもよい。
2は1〜10の整数を表す。ただし、Q2がSiX (3-n2)を表す場合、n2は1〜3の整数を表す。
【0012】
一般式(I)で表される化合物において、Qは、銅拡散良バリア能の観点から、一般式(Q−1)〜(Q−5)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0013】
【化8】

【0014】
一般式(Q−1)〜(Q−5)中、
はそれぞれ独立にC(X)2、NX、O、Sから選ばれる原子または基を表す。
はそれぞれ独立にCX、Nから選ばれる原子または基を表す。
はそれぞれ独立に水素原子または任意の置換基であるが、一般式(I)のYで表される基であってもよい。
は水素原子または一般式(I)のXまたはYで表される基である。
【0015】
一般式(I)で表される化合物において、Qで表される含窒素複素環は、一般式(Q−1)で表される環であることが好ましく、下記一般式(Q−6)で表される環が最も好ましい。一般式(Q−6)中、Aはそれぞれ独立に水素原子または一般式(I)のXまたはYに対応する基である。
【0016】
【化9】

【0017】
一般式(I)で表される化合物において、Yは一般式(Y−1)、(Y−2)または(Y−3)で表される基であることが好ましく、(Y−1)または(Y−2)で表される基であることがより好ましい。
一般式(Y−1)〜(Y−6)で表される基において、Zは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。これらのうち、水素原子、メチル基およびフェニル基がより好ましく、水素原子が最も好ましい。
一般式(Y−2)、(Y−3)、(Y−5)および(Y−6)で表される基において、Qの表す環状またはカゴ状構造を有する基の例としては、芳香族環(ベンゼン環、ナフタレン環など)、複素環(イミダゾール環など)、シクロアルキル基(シクロヘキサンなど)、カゴ状アルキル基(アダマンタンなど)などがあげられ、ベンゼン環がより好ましい。Qはさらに置換基を有していても良く、さらなる置換基としてはアルキル基、水酸基、メルカプト基等が挙げられる。
は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
は1〜5が好ましく1〜2が、より好ましい。ただし、Q2がSiX(3-n2)を表す場合、n2は1〜2が好ましい。
一般式(I)で表される化合物において、Xの表す任意の置換基としては、たとえば、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10の複素環基、水酸基、メルカプト基、炭素数0〜10のアミノ基、炭素数1〜10のアシルアミノ基、カルボキシル基等が挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
mは0〜5の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましい。
nは1〜6の整数であることが好ましく、2〜4の整数であることがより好ましい。
【0018】
本発明で述べる「カゴ状構造」とは、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができないような分子を指す。例えば、アダマンタン構造はカゴ状構造と考えられる。対照的にノルボルナン(ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)などの単一架橋を有する環状構造は、単一架
橋した環状化合物の環が容積を定めないことから、カゴ状構造とは考えられない。
【0019】
本発明に使用するカゴ状構造は飽和、不飽和結合のいずれを含んでいても良く、酸素、
窒素、硫黄等のヘテロ原子を含んでも良いが、低誘電率の見地から飽和炭化水素が好ましい。また、「カゴ状アルキル」とは、カゴ状構造を有するアルキルを意味する。
【0020】
また、本発明に使用する化合物の重合体は、誘電率・膜の吸湿性の観点からポリイミド以外の化合物、即ちポリイミド結合を有しない化合物であることが好ましい。
【0021】
一般式(I)で表される化合物の分子量は、溶解性の観点から、好ましくは80〜1500、より好ましくは100〜1000、特に好ましくは150〜500である。
【0022】
一般式(I)で表される化合物は、単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
以下に一般式(I)で表される化合物の具体例を記載するが、本発明はこれらに限定はされない。
【0023】
【化10】

【0024】
【化11】

【0025】
【化12】

【0026】
【化13】

【0027】
【化14】

【0028】
一般式(I)の化合物は、例えば、マクロモルキュールズ(Macromolecules), 36巻, 16(2003),5947-5959頁に記載の方法等に従って合成した(I−a)やヘルベチカ・キミカ・アクタ(Helv.Chim. Acta), 54巻, 1971, 2060-2068頁に記載の方法になどに従って合成した(I−b)を用いて、実験化学講座第4版24巻等に記載の公知の複素環形成反応を行うことによって合成することができる。
また、別の方法では、芳香環に結合したハロゲン原子を(I−c)で置換することによって合成することができる。その際、必要に応じて、銅、パラジウムなどの触媒を用いてもよい。
さらに別の方法では、アセチル基またはビニル基を公知の方法でエチニル基に変換することによって合成することもできる。
【0029】
【化15】

【0030】
本発明の組成物は、一般式(I)で表される化合物またはその重合体を含むが、一般式(I)で表される化合物の重合体を含んでいることが好ましい。
【0031】
一般式(I)で表される化合物の重合体は、一般式(I)で表される化合物の2種以上を共重合体であってもよいし、一般式(I)で表される化合物と、反応性基(エチニル基、ビニル基、ジエン官能基等)を有する他の反応性化合物を共重合体であってもよい。
【0032】
一般式(I)で表される化合物またはその重合体は有機溶剤へ十分な溶解性を有することが好ましい。好ましい溶解度は25℃でシクロヘキサノンまたはアニソールに3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。
【0033】
一般式(I)の化合物を重合して、本発明の組成物に含まれる重合体を合成する際の反応は、該化合物に置換した重合性基の反応によるものであることが好ましい。ここで重合性基とは、化合物を重合せしめる反応性の置換基を指し、たとえば重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を含む基などがあげられる。
該重合反応としてはどのような重合反応でも良いが、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重付加、遷移金属触媒重合、熱重合等が挙げられる。ラジカル重合反応が好ましい。
【0034】
本発明の組成物から不溶不融の絶縁膜を製造する際に、用いられる反応も、該化合物に置換した重合性基の反応によるものであることが好ましい。ここで重合性基とは、化合物を重合せしめる反応性の置換基を指し、たとえば重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を含む基などがあげられる。該重合反応としてはどのような重合反応でも良いが、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重付加、遷移金属触媒重合等が挙げられる。ラジカル重合および熱重合が好ましい。
【0035】
本発明に使用する化合物の重合反応は遷移金属触媒の存在下または重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。
本発明において重合反応は、非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有する化合物を、熱または光エネルギー照射によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤存在下で重合することが出来る。
重合開始剤としては有機過酸化物または有機アゾ系化合物が好ましく用いられるが特に有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、日本油脂株式会社より市販されているパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類、パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類、パーブチルH−69等のハイドロパーオキサイド類、パークミルD、パーブチルC、パーブチルD等のジアルキルパーオキサイド類、ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類、パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5、−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジー(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル4,4−ジーt−ブチルパーオキシバレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、シ゛−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーイキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル-2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,3−ジメチルー2,3−ジフェニルブタン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジーt−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコールビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート等が好ましく用いられる。
【0036】
有機アゾ系化合物としては和光純薬工業株式会社で市販されているV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70等のアゾニトリル化合物類、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111等のアゾアミド化合物類、VA−044、VA−061等の環状アゾアミジン化合物類、V−50、VA−057等のアゾアミジン化合物類、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)、1−〔(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシブチル)プロピオンアミド〕、2,2−アゾビス〔N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド〕、2,2−アゾビス(N−ブチルー2−メチルプロピオンアミド)、2,2−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオアミド)、2,2−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジスルフェートジヒドレート、2,2−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス〔2−〔2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン〕、2,2−アゾビス(1−イミノー1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン〕テトラヒドレート、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が好ましく用いられる。
【0037】
本発明において重合開始剤は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に使用する重合開始剤の使用量は化合物1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0038】
本発明に使用する化合物の重合反応は遷移金属触媒存在下で行うことも好ましい。遷移金属触媒は、本発明に使用する化合物の重合反応を進行させ得るものであればどのようなものを使用してもよい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有する化合物を例えばPd(PPh3)4、Pd(OAc)2等のPd系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネート等のNi系触媒、WCl等のW系触媒、MoCl等のMo系触媒、TaCl等のTa系触媒、NbCl等のNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒等を用いて重合することが好ましい。
【0039】
本発明において遷移金属触媒は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に使用する遷移金属触媒の使用量は化合物1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0040】
重合反応には溶媒を使用してもよく、使用する溶媒は、原料化合物が必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用しても良い。例えば水やメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。これらの中でより好ましい溶剤はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、より好ましくはテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、特に好ましくはγ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応液中の化合物の濃度は好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
【0041】
本発明における重合反応の最適な条件は、重合開始剤、化合物、溶媒の種類、濃度等によって異なるが、好ましくは内温0℃〜220℃、より好ましくは40℃〜210℃、特に好ましくは80℃〜200℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
重合して得られるポリマーの重量平均分子量の好ましい範囲は1000〜500000、より好ましくは5000〜300000、特に好ましくは10000〜200000である。
本発明の重合体は単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
本発明の膜形成用組成物は有機溶剤を含んでいてもよく、塗布液として使用することもできる。有機溶剤としては特に限定はされないが、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール,1−メトキシー2−プロパノール等のアルコール系溶剤、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロペンタノン,シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などが挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
より好ましい有機溶剤は、1−メトキシー2−プロパノール、2−プロパノール、アセチルアセトン,シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル,乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼンであり、特に好ましくは1−メトキシー2−プロパノール,シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル,γ−ブチロラクトン、t−ブチルベンゼン,アニソールである。
本発明の膜形成用組成物の固形分濃度は、好ましくは0.2〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%であり、特に好ましく1〜10質量%である。
ここで、固形分とは、この組成物を用いて得られる絶縁膜を構成する全成分に相当する。
【0043】
本発明の膜形成用組成物には不純物などの金属含量が充分に少ないことが好ましい。膜形成用組成物の金属濃度はICP−MS法にて高感度に測定可能であり、その場合の遷移金属以外の金属含有量は好ましくは30ppm以下、より好ましくは3ppm以下、特に好ましくは300ppb以下である。また、遷移金属に関しては酸化を促進する触媒能が高く、プリベーク、熱硬化プロセスにおいて酸化反応によって本発明で得られた膜の誘電率を上げてしまうという観点から、含有量がより少ないほうがよく、好ましくは10ppm以下、より好ましくは1ppm以下、特に好ましくは100ppb以下である。
膜形成用組成物の金属濃度は本発明の膜形成用組成物を用いて得た膜に対して全反射蛍光X線測定を行うことによっても評価できる。X線源としてW線を用いた場合、金属元素としてK、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pdが観測可能であり、それぞれ100×1010atom・cm−2以下が好ましく、より好ましくは50×1010atom・cm−2以下、特に好ましくは10×1010atom・cm−2以下である。また、ハロゲンであるBrも観測可能であり、残存量は10000×1010atom・cm−2以下が好ましく、より好ましくは1000×1010atom・cm−2以下、特に好ましくは400×1010atom・cm−2以下である。また、ハロゲンとしてClも観測可能であるが、CVD装置、エッチング装置等へダメージを与えるという観点から残存量は100×1010atom・cm−2以下が好ましく、より好ましくは50×1010atom・cm−2以下、特に好ましくは10×1010atom・cm−2以下である。
【0044】
更に、本発明の膜形成用組成物には、得られる絶縁膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、界面活性剤、シランカップリング剤、密着促進剤などの添加剤を添加してもよい。
【0045】
本発明にいかなるコロイド状シリカを使用してもよい。例えば、高純度の無水ケイ酸を親水性有機溶媒もしくは水に分散した分散液であり、通常、平均粒径5〜30nm、好ましくは10〜20nm、固形分濃度が5〜40重量%程度などが使用できる。
本発明で使用するコロイド状シリカは、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0046】
本発明にいかなる界面活性剤を使用してもよいが、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、さらにシリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。本発明で使用する界面活性剤は、一種類でも良いし、二種類以上でも良い。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0047】
本発明で使用する界面活性剤の添加量は、膜形成塗布液の全量に対して0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0048】
本発明において、シリコーン系界面活性剤とは、少なくとも1原子のSi原子を含む界面活性剤である。本発明に使用するシリコーン系界面活性剤としては、いかなるシリコーン系界面活性剤でもよく、アルキレンオキシド及びジメチルシロキサンを含む構造であることが好ましい。下記化学式を含む構造であることが更に好ましい。
【0049】
【化16】

【0050】
式中Rは水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基であり、xは1〜20の整数であり、m'、n'はそれぞれ独立に2〜100の整数である。複数のRは同じでも異なっていてもよい。
【0051】
本発明に使用するシリコーン系界面活性剤としては、例えばBYK306、BYK307(ビックケミー社製)、SH7PA、SH21PA、SH28PA、SH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、TroysolS366(トロイケミカル社製)等を挙げることができる。
【0052】
本発明に使用するノニオン系界面活性剤としては、いかなるノニオン系界面活性剤でもよい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリオキシエチレン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【0053】
本発明に使用する含フッ素系界面活性剤としては、いかなる含フッ素系界面活性剤でもよい。例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0054】
本発明に使用するアクリル系界面活性剤としては、いかなるアクリル系界面活性剤でもよい。例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
【0055】
本発明にいかなるシランカップリング剤を使用してもよいが、例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノグリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。本発明で使用するシランカップリング剤は、一種類でも良いし、二種類以上でも良い。
シランカップリング剤の好ましい使用量は、全固形分100質量部に対して10質量部以下、特に0.05〜5質量部であることが好ましい。
【0056】
本発明にはいかなる密着促進剤を使用してもよいが、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、ビニルトリクロロシラン、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、チオ尿素化合物等を挙げることができる。
密着促進剤の好ましい使用量は、全固形分100質量部に対して10質量部以下、特に0.05〜5質量部であることが好ましい。
【0057】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、膜形成用組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去することにより形成することができる。溶媒を乾燥するための加熱は100℃〜250℃で1分〜5分行なうことが好ましい。基板に塗布する方法としては,スピンコーティング法,スキャン法によるものが好ましい。特に好ましくは,スピンコーティング法によるものである。スピンコーティングについては,市販の装置を使用できる。例えば,クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製),D-スピンシリーズ(大日本スクリーン製),SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。スピンコート条件としては,いずれの回転速度でもよいが,膜の面内均一性の観点より,300mmシリコン基板においては1300rpm程度の回転速度が好ましい。また膜形成用組成物溶液の吐出方法においては,回転する基板上に組成物溶液を吐出する動的吐出,静止した基板上へ組成物溶液を吐出する静的吐出のいずれでもよいが,膜の面内均一性の観点より,動的吐出が好ましい。また,膜形成用組成物の消費量を抑制する観点より,予備的に溶剤のみを基板上に吐出して液膜を形成した後,その上から組成物を吐出するという方法を用いることもできる。スピンコート時間については特に制限はないが,スループットの観点から180秒以内が好ましい。また,基板の搬送の観点より,基板エッジ部の膜を残存させないための処理(エッジリンス,バックリンス)をすることも好ましい。熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した加熱方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。好ましくは,ホットプレート加熱,ファーネスを使用した加熱方法である。ホットプレートとしては市販の装置を好ましく使用でき,クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製),D-スピンシリーズ(大日本スクリーン製),SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。ファーネスとしては,αシリーズ(東京エレクトロン製)等が好ましく使用できる。
【0058】
一般式(I)で表される化合物またはその重合体は基盤上に塗布した後に加熱処理することによって硬化(焼成)させることが特に好ましい。例えば重合体中に残存する炭素三重結合の後加熱時の重合反応が利用できる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。後加熱処理は数回に分けて行っても良い。焼成時の気圧は通常0.13Pa〜267kPaであるが、0.13Pa〜107kPaが好ましい。この後加熱は、酸素による熱酸化を防ぐために、窒素雰囲気下または1.3kPa以下で行うことが特に好ましい。
【0059】
また、本発明では加熱処理ではなく高エネルギー線を照射することで重合体中に残存する炭素三重結合の重合反応を起こして硬化させても良い。高エネルギー線とは、電子線、紫外線、X線などが挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
高エネルギー線として、電子線を使用した場合のエネルギーは50keV以下であることが好ましく、より好ましくは30keV以下、特に好ましくは20keV以下である。電子線の総ドーズ量は好ましくは5μC/cm2以下であり、より好ましくは2μC/cm2以下、特に好ましくは0〜1μC/cm 2以下である。電子線を照射する際の基板温度は0〜450℃が好ましく、より好ましくは0〜400℃、特に好ましくは0〜350℃である。圧力は好ましくは0〜133kPa、より好ましくは0〜60kPa、特に好ましくは0〜20kPaである。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基盤周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、電子線との相互作用で発生するプラズマ、電磁波、化学種との反応を目的に酸素、炭化水素、アンモニアなどのガスを添加してもよい。本発明における電子線照射は複数回行ってもよく、この場合は電子線照射条件を毎回同じにする必要はなく、毎回異なる条件で行ってもよい。
【0060】
高エネルギー線として紫外線を用いてもよい。紫外線を用いる際の照射波長領域は190〜400nmが好ましく、その出力は基板直上において0.1〜2000mWcm−2が好ましい。紫外線照射時の基板温度は250〜450℃が好ましく、より好ましくは250〜400℃、特に好ましくは250〜350℃である。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基盤周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、その際の圧力は0〜133kPaが好ましい。
【0061】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、単独で、銅拡散バリア性を有する層間絶縁膜として使用してもよいし、銅拡散バリア膜として他の層間絶縁膜と組み合わせて用いてもよいが、低い誘電率を有する層間絶縁膜に銅配線を形成した上に本発明の絶縁膜を形成することが実効誘電率低下の観点から好ましい。
【0062】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、多様の目的に使用することが出来る。例えばLSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することが出来る。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。
【0064】
<合成例1>
Chem.Heterocycl.Compd.(Engl.Transl)(12)1976;1109-1110に記載の合成法に従って合成した5−ブロモ−2−(3−ブロモフェニル)ベンゾオキサゾール(14−a)10g(0.0283モル)にトリエチルアミン50mlとトリメチルシリルアセチレン13.36g(0.136モル)を加え、窒素気流下、(Ph3P)2PdCl2を0.8g、Ph3Pを0.6gを添加した。4時間加熱還流した後、室温まで冷却した。不溶物をろ過して除いた後に減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製することにより(14−b)6.1g(0.0157モル)を得た。
これをクロロホルム50mlに溶解し、テトラブチルアンモニウムフルオライド(1モル/リットルTHF溶液)を20mlを加えて室温で1時間攪拌した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水し、減圧濃縮したのちカラムクロマトグラフイーで精製し、例示化合物(I−14)2.92g(0.012モル)を得た。
【0065】
【化17】

【0066】
次に、例示化合物(I−14)次に、2gとジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.11g、t−ブチルベンゼン5mlを窒素気流下で内温150℃で7時間攪拌、重合した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール30mlに添加、析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで十分に洗浄した。重量平均分子量約7000の重合体(A)を0.35g得た。
重合体(A)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で5質量%以上であった。
【0067】
<合成例2>
J.Org.Chem,68;3;2003;832-838に記載の方法に従って、合成した3,5−ジエチニルベンズアルデヒド8.63gと2−アミノフェノール5.46gを50mlのエタノ−ルに加え、さらに0.5mlの酢酸を加えて2時間加熱還流した。ついで、15gのBaMnO4を加えた。1時間還流した後、濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製することによって例示化合物(I−13)4gを得た。
【0068】
【化18】

【0069】
次に、例示化合物(I−13)4gとジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.22g、t−ブチルベンゼン10mlを窒素気流下で内温150℃で7時間攪拌、重合した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール60mlに添加、析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで十分に洗浄した。重量平均分子量約6000の重合体(B)を0.6g得た。
重合体(B)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で5質量%以上であった。
【0070】
<実施例1−1>
重合体(A)0.35gをシクロヘキサノン7gに完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1μmのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.4μmのブツのない均一な膜が得られた。膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.84であった。
【0071】
<実施例1−2>
スパッタリングによって、最初にTi−W接着プロモーター層(100ml)でコーティングされ、次いで銅(500nm)でコーティングされたシリコンウエハを使用した。
実施例1−1と同様にして塗布液をウエハ(Cu表面)に塗布し、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した。この様式において得られた膜の表面は、顕微鏡での検査によって、平滑であることがわかった。銅粒子またはクラスターは、この表面上で検出することができなかった。
【0072】
<実施例2−1>
重合体(B)0.5gをシクロヘキサノン10gに完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1μmのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で250℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.47μmのブツのない均一な膜が得られた。膜の比誘電率は、2.87であった。
【0073】
<実施例2−2>
スパッタリングによって、最初にTi−W接着プロモーター層(100ml)でコーティングされ、次いで銅(500nm)でコーティングされたシリコンウエハを使用した。
実施例1−1と同様にして塗布液をウエハ(Cu表面)に塗布し、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した。この様式において得られた膜の表面は、顕微鏡での検査によって、平滑であることがわかった。銅粒子またはクラスターは、この表面上で検出することができなかった。
【0074】
〈比較例1−1〉
特表2002-534546号公報の実施例2の樹脂溶液Aを塗布液として用いて、実施1−1同様の試験を行った。
膜厚0.87μmのブツのない均一な膜が得られた。膜の比誘電率は、2.83であった。
【0075】
〈比較例1−2〉
特表2002-534546実施例2の樹脂溶液Aを塗布液として用いて、実施1−2同様の試験を行った。加熱した後、得られた膜の表面を顕微鏡で検査したところ、拡散された銅が可視できた。
【0076】
比較例に比べて、本発明の組成物から製造した絶縁膜は、金属拡散バリア膜として優れた性能を有することが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される化合物またはその重合体を含有することを特徴とする膜形成用組成物。
(X)−Q−(Y) (I)
一般式(I)中、
Qは環員数5または6の含窒素複素環を表す。
Xは任意の置換基を表す。
mは0〜10の整数を表す。
nは1〜10の整数を表す。
Yは下記一般式(Y−1)〜(Y−6)のいずれかで表される基を表す。
【化1】

一般式(Y−1)〜(Y−6)中、
Zは水素原子または任意の置換基を表す。
1はC(X)2、NX、O、Sから選ばれる原子または基を表す。
2はそれぞれ独立に水素原子または任意の置換基を表す。
2は環状またはカゴ状構造を有する基、またはSiX (3-n2)を表す。
はそれぞれ独立に水素原子または任意の置換基を表す。
X、Y、Z、X1およびQ2は複数存在する場合は、各々同一でも異なっていてもよい。
2は1〜10の整数を表す。ただし、Q2がSiX (3-n2)を表す場合、n2は1〜3の整数を表す。
【請求項2】
一般式(I)で表される化合物において、Qが下記一般式(Q−1)〜(Q−5)のいずれかで表される基であることを特徴とする請求項1に記載の膜形成用組成物。
【化2】

一般式(Q−1)〜(Q−5)中、
はそれぞれ独立にC(X)2、NX、O、Sから選ばれる原子または基を表す。
はそれぞれ独立にCX、Nから選ばれる原子または基を表す。
は水素原子または任意の置換基である。
はそれぞれ独立に水素原子または一般式(I)のXまたはYに対応する基である。
【請求項3】
一般式(I)で表される化合物において、Qが一般式(Q−1)で表される基であることを特徴とする請求項2に記載の膜形成用組成物。
【請求項4】
一般式(I)で表される化合物において、Qが下記一般式(Q−6)で表される基であることを特徴とする請求項2に記載の膜形成用組成物。
【化3】

一般式(Q−6)中、Aはそれぞれ独立に水素原子または一般式(I)のXまたはYに対応する基である。
【請求項5】
一般式(I)で表される化合物の分子量が100以上1500以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項6】
一般式(I)で表される化合物を遷移金属触媒存在下または重合開始剤存在下で重合して得られた重合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項7】
一般式(I)で表される化合物またはその重合体がシクロヘキサノンまたはアニソールに25℃で3質量%以上溶解することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項8】
さらに有機溶剤を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成した絶縁膜。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成した金属拡散バリア膜。
【請求項11】
請求項9に記載の絶縁膜または請求項10に記載の金属拡散バリア膜を有する電子デバイス。

【公開番号】特開2007−177043(P2007−177043A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375704(P2005−375704)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】