膜装置、および膜を調製する方法、および水素を生成する方法
本発明は、水素ガス、特に合成ガスを生成するための方法、装置、および装置の製造方法を開示する。本発明によれば、片面にTiO2薄膜で処理されているアルファアルミナ膜を含み、反対面に活性ガンマアルミナ層を有する。金属触媒、好ましくは、ロジウムが、アルミナの細孔中に沈着される。酸素はこの膜を通って進行し、活性化され、その後この膜の他方の面上でメタンと接触し、メタンの部分酸化を通して合成ガスを形成する。本発明の実施形態は種々の利点を有する。すなわち、酸素の高い転化率(100%)、爆発の危険をともなわずに最適比を用いることを可能にする、メタンと酸素との別々の供給原料ストリーム、および形成された生成物を交換することなく供給率を変える機会等である。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、膜、およびこの膜を調製する方法に関しており、この膜は特に、油およびガス探査産業における気体から液体へのフィッシャー−・トロプシュ生成への使用のための合成ガスの生成において、または燃料としての使用のための水素の生成のために有用であるが、それのみに限定されるわけではない。
【0002】
海底油生産は、近年わずかに高まっているが、天然ガス(これは主としてメタンからなる)生産は、顕著な増加を示している。天然ガスは、地中からの液体炭化水素、例えば油の抽出の間に抽出されることが多く、天然ガスを陸上の場所へ輸送するためのインフラの欠如のために望ましくないことが多い。インフラの欠如は、その基本的な気体状態において安全におよび/または効率的に輸送することを困難にする、天然ガスの物理的性質によって説明することができる。その結果、天然ガスは、燃やされる(着火される)ことが多く、経済的浪費および環境問題を引起こす。したがって、天然ガスを、容易に輸送することができるいくつかの他の物質に転化するか、または天然ガスを液体状態において輸送することが望ましい。このようにして、新しい分野の開発は、液体炭化水素を輸送するために海底油産業においてすでに実施されている広範なインフラおよび技術の利用を通して、財政的により存続しうるようになる。
【0003】
このような目的に適合するようにされた、特別に構成されたコンテナ積載船舶において液体天然ガス(LNG)として天然ガスを輸送することは公知である。しかしながらこれは多くの欠点を有する。これらの欠点には、より小さい生産現場に適するように、規模を縮小するのが難しい高価な加圧設備が必要なこと、輸送の間のガスの損失(「ボイルオフ」)、移動中に高圧によって船舶および乗組員にもたらされる危険性、非常に可燃性のガス、および末端顧客において使用可能な気体状態へLNGを減圧する必要性が含まれる。
【0004】
海底生産された天然ガス(CH4)を利用するより良い方法は、海底油生産プラットフォーム上で、またはその非常に近いところで、これを合成ガス(syngas)に転化することであると考えられ、これ自体は、気体、流体、および化学物質、例えばメタノール、アンモニア、および重要には、生産された油と同じパイプラインを通って容易に汲み上げることができる原油を生成するために用いることができる。合成ガスは、一酸化炭素(CO)と水素(H2)との混合物を含む。
【0005】
読者への背景情報として、合成ガスの液体炭化水素への転化は、不均一系触媒の表面上での一酸化炭素と水素との間の連鎖成長反応である。この触媒は、鉄またはコバルトベースであり、反応は非常に発熱的である。温度、圧力、および触媒は、軽質または重質合成原油が生成されるかどうかを決定する。例えば330℃において、主にガソリンおよびオレフィンが生成され、一方、180℃〜250℃で、主にディーゼルおよびワックスが生成される。2つの主要な型のフィッシャー−トロプシュ反応器がある。垂直固定管型は、加圧沸騰水によって外部から冷却される管中に触媒を有する。大きいプラントにおいて、平行に配列されたいくつかの反応器を用いることができ、これはエネルギーの節約になる。もう1つの方法では、スラリー反応器を用いる。この反応器において、予熱された合成ガスが反応器の底部に供給され、液体ワックスと触媒粒子とからなるスラリー中に分配される。合成ガスがスラリーを通って上方にバブリングするにつれて、これは拡散され、フィッシャー−トロプシュ反応によってより多くのワックスに転化される。発生された熱は、反応器の冷却コイルを通って除去され、ここで、このプロセスへの使用のため蒸気が発生される。ここでもまた読者への背景情報として、このことが図7に示される。
【0006】
このようにして、メタン(または他の気体炭化水素)が合成ガスに転化され、その後、液体炭化水素へ転化されうるならば、輸送費および上に概略が示されている問題は、緩和される。
【0007】
合成ガスは、メタンの部分酸化によって製造することができる(ただしより普通には、これは、加圧下の蒸気とメタンとの反応によって製造される)。
【0008】
メタンの部分酸化についての主要な安全性の問題は、メタンおよび空気(または酸素)が同時に反応器中に供給されるべきであり、したがって爆発の危険があるので生じる。
【0009】
酸素を伝導する比較的濃密なセラミック膜を有する反応器を、合成ガス生成のために用いることができることは、当分野において公知である(例えば国際公開第98/48921号パンフレットおよび国際公開第01/93987号パンフレット)。これらの膜は、酸素と炭化水素供給原料との間の直接接触を避けることによって合成ガスを発生させるが、これは、必要な酸素フラックスを達成するために、非常に高い温度の使用を必要とする。更には、この膜ができるだけ薄くなければならない濃密手段であるので、その結果、脆性および亀裂形成、効率性の欠如、および運転寿命の減少を生じる。いくつかの場合、この膜は、それ自身の重さを支えることができなくなるほど薄くなる必要があるであろうから、実際に使用することは不可能である。
【0010】
気体から液体への生産のための合成ガスへのコスト効率の良い天然ガス(メタン)の転化は、したがって重要な商業開発になる。
【0011】
水素は、クリーン燃料として用いることができる。しかしながら、再生可能な天然エネルギー源、例えば太陽、風、および水力を用いることによって生成することができる水素の量は、今のところ需要を満たすには十分でない。天然ガスの利用および/または天然ガスからの水素の生成は、実効可能な代替案であり、かつ少なくとも今世紀の前半においては最も現実的な解決策であると見られている[1,2]。
【0012】
天然ガスの広く行き渡った利用における進歩の一例は、マイクロガスタービンを用いた小規模コージェネレーションシステムの開発を包含する。更には燃料電池は、非常に効率的な電力発生システムであると期待されている。燃料電池は、電気自動車への取り付けに加えて、住居に配備されると予想される。燃料電池の家庭使用は、温水および電気を同時に供給しうる。据え置き型燃料電池を商品化するために、代替水素発生技術を確立することが必要である。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、第1チャンバと、第2チャンバと、第1チャンバと第2チャンバとを仕切る膜とを備える装置であって、この膜は、無機担体および触媒を備え、この膜は、第1チャンバから第2チャンバに、上記膜を通る第1反応体の通過を可能にするようになっており、第1反応体は、第2反応体と反応するように、上記通過の時に触媒によって十分なエネルギーが付与される装置が提供される。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、膜を調製する方法であって、
担体を設けるステップと、
触媒を担体へ添加するステップと
を備える方法が提供される。
【0015】
好ましくは、第1反応体は、第2反応体と反応するように、上記通過の時に触媒によって十分なエネルギーが付与されることによって活性化される。
【0016】
好ましくは、第1反応体へ付与されたエネルギーは、イオン種、例えばO2−を形成することなく、第1反応体の分子を活性化する。
【0017】
好ましくは、この担体は、250℃を超える温度で機能するようになっている。
【0018】
好ましくは、この担体は、無機担体を備える。
【0019】
好ましくは、この膜は最初に、粗い多孔質無機担体を備える。最も好ましくは、この膜は最初に、粗い多孔質セラミック担体、例えばアルファアルミナを備える。
【0020】
好ましくは、第1コーティングは、この担体の上記表面を改変し、より好ましくは、第1コーティングは、上記表面を粗面化する。
【0021】
好ましくは、第1コーティングは、細孔のサイズ、およびより好ましくは、直径および屈曲性(tortuosity)を選択的に改変する。好ましくは、第1コーティングは、薄め塗膜(wash coat)溶液、例えば収縮性(retracting)金属酸化物溶液を含んでいてもよい溶液中に担体を浸漬することによって加えられる。好ましい実施形態において、この薄め塗膜溶液は、二酸化チタン(TiO2)を含む。典型的には、第1コーティングは、担体の外側円筒表面であってもよい外側表面へ加えられる。
【0022】
典型的には、この方法は、更に、担体の第2表面へ第2コーティングを加えるステップも含む。上記第2表面は好ましくは、担体の内側表面であり、より好ましくは、担体の孔(bore)の内側表面である。第2コーティングは、好ましくは、フラックス制御層を備え、より好ましくは、第2コーティングは、無機多孔質層である。最も好ましくは、第2コーティングは、ガンマアルミナ層を備える。好ましくは、第2コーティングは、ベーマイト溶液を含んでいてもよい溶液中に担体を浸漬することによって加えられる。
【0023】
典型的には、この方法は、更に、担体の乾燥ステップ、および担体の加熱/燃焼ステップも含む。典型的には、第2コーティングの浸漬−乾燥−燃焼順序は、必要に応じて数回反復されてもよい。
【0024】
好ましくは、この方法は、更に、膜の表面へ触媒を加えるステップも含む。典型的には触媒は、膜の細孔の内部孔(inner bore)へ加えられる。典型的には触媒は、金属または非金属触媒を備え、より好ましくは、これは金属活性触媒である。最も好ましくは、触媒は活性ロジウムを備える。あるいは、触媒はニッケルを含んでいてもよい。好ましくは、触媒は、膜の第1面であってもよい上記第1表面上に浸透性溶液を通過させ、膜の他方の面であってもよい上記第2表面上にカチオン性またはアニオン性触媒先駆物質溶液を通過させることによって、上記表面へ加えられ、したがって触媒は、膜細孔の内部孔上に沈着される。好ましくは、この浸透性溶液は、室温で水性の溶液中に異なる電解質および非電解質を含む。より好ましくは、この浸透性溶液は、スクロース溶液を含む。
【0025】
好ましくは、この方法は、更に、膜を比較的高い温度に加熱するステップを含み、焼成が発生するように、膜細孔を通して水素を通過させる、更なるステップを含んでいてもよい。
【0026】
好ましくは、担体は、内部孔の内側表面の表面積を増加させるために、1つ以上の内側構造、例えば支柱(strut)を備えていてもよい。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、水素ガスを生成する方法であって、
担体および触媒を備える膜を設けるステップと、
第1チャンバから第2チャンバへ、この膜を通って第1反応体を通過させるステップと、
上記膜を通る通過時に、上記第1反応体を触媒と接触させるステップと、
第2反応体と反応させるように、第1反応体に十分なエネルギーを付与するステップと、
第1反応体と第2反応体とを反応させて、水素ガスを生成するステップと、
を備える方法が提供される。
【0028】
好ましくは、この膜は、実質的に環状の円筒を備えており、より好ましくは、第1および第2チャンバは、実質的に円筒形の横断面を備える。より好ましくは、この膜の側壁は、第1チャンバと第2チャンバとを分離し、第2円筒形チャンバは、第1円筒形チャンバの中に配置されていてもよい。
【0029】
好ましくは、第2円筒形チャンバは、この膜の内部孔によって画成される。
【0030】
好ましくは、この膜の一部分は、浸透性である。あるいは、膜全体が浸透性である。
【0031】
好ましくは、第1反応体は、第1チャンバからこの膜の側壁中に形成された細孔を通って第2チャンバへ通過する。
【0032】
あるいは、第2反応体は、第2チャンバからこの膜を通って第1チャンバへ通過する。
【0033】
好ましくは、第1反応体は酸素であり、第2反応体は炭化水素である。より好ましくは、第2反応体はメタンである。典型的には、合成ガスは、一酸化炭素および水素を含む。
【0034】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して、例としてのみ記す。
【0035】
本発明による膜装置8が図1に示されており、これは、管状膜10および外側管状シェル16を備える。このようにして2つのガス流通路が形成され、これらは実質的に互いから密閉されている。第1通路は、膜10の孔14の中にあり、第2通路は、膜10とシェル16との間の環22の中にある。
【0036】
変性膜10の内部孔14は、図2に示されているように、いくつかの支持支柱34を有していてもよい。これらは、変性膜10の構造強度を増す。操作中、支柱34はまた、内部孔14を通って流れるメタンが、変性膜10表面と接触せずに、変性膜10内部孔の中心を通って直接通過する機会を減少させることによって、膜10の側壁13を通って流れる酸素の流れパターンも変更する。支柱34はまた、変性膜10の単位容積あたりの内部表面積を増加させ、これによって、完全に中空の断面と比べて活性化の機会を増す。
【0037】
図3cを参照すると、変性膜10は、α−アルミナ担体10、担体10の外側表面上のTiO2薄め塗膜28、およびα−アルミナ担体10の内側にあるγ−アルミナ層30を備える。Rh触媒粒子12は、変性膜10の側壁13の内側表面および外側表面の孔の中に含浸されている。
【0038】
細孔半径を増加させる更なる層が、γ−アルミナ層30およびTiO228層に隣接して備えられていてもよい。
【0039】
図2A、図2B、および図3a−図3bを参照しつつ、ここで膜10層の調製について記載する。
【0040】
この方法は、無機(好ましくは、セラミック)粗多孔質担体10から出発する。この種類の担体は、今では広く入手可能であり、現在非常に多様な会社がこれらのベース材料を供給しており、好ましい担体10は、典型的には110〜180nmの細孔サイズを有する、外径10mm、内径7mmのアルファ−アルミナ管を備える。担体10は、典型的には長さが約300mmの多孔質中間部分11、および膜10の各末端部に長さ約25mmの2つの残りの非多孔質部分26を備える。末端部分26は、1100℃において、これらにシーラント、例えばSiO2−BaO−CaOを掛ける(glaze)ことによって非多孔質にされる。
【0041】
次いで薄め塗膜28は、担体10を、例えばTiO2などの物質中に浸漬することによって、担体10の外側円筒形表面へ加えられる。この薄め塗膜28浸漬ステップは、担体10の外側円筒形表面を粗面化し、膜触媒12の壁へ微小孔性を追加する。(操作中、薄め塗膜28の粗面は、強制的に酸素粒子(図示されていない)を薄め塗膜12のでこぼこ面の周りで巻き込むようにし、制限的な反応体(酸素)の触媒部位への物質移動を改良するのに役立つ。この結果、改良された合成ガス収率を生じる)。
【0042】
次いで酸素フラックス制御層30を、担体10の内部孔14の内側表面に加える。この層30は、高温での膜10の操作を可能にするために無機であるべきであり、濃度0.6モル/Lのベーマイト(AlO(OH))溶液に由来するガンマアルミナ層を備えていてもよい。担体10の内側表面は、約2分間の浸漬を介して、ベーマイト溶液へ暴露される。次いで担体を一晩空気乾燥し、次いで1℃/分の率で700〜750℃に加熱する。担体10上で要求されるガンマ−アルミナ層厚さを達成するために、全部で3サイクルまでの間、この浸漬−乾燥−燃焼順序を反復する必要があるかもしれない。
【0043】
担体10上への触媒12の沈着は、浸透性イオン交換方法を用いて達成される。これについて、ここで記載する。
【0044】
[浸透性イオン交換触媒沈着]
触媒12は、先駆物質としての有機媒質(0.2g/L)中のそれぞれRhNO3またはRhCl3.2H2Oを用いて、カチオンまたはアニオン交換のどちらかを用いて調製する。図3aに示されている膜(すなわち薄め塗膜28+担体10+ガンマアルミナ層(ベーマイト)30)の非対称性によって、担体10への触媒12の様々な導入方法が利用される。第1例において、浸透作用プロセスは、触媒先駆物質溶液(例えばRhNO3またはRhCl3.2H2O)が、部分的に変性された膜10の内部孔14を通って循環されている間に、6.0モルスクロース溶液中に部分的に変性された膜10の外側表面を浸漬するステップを包含する。この構成は、第2例において、今や触媒先駆物質溶液中の部分的に変性された膜10の外側表面の浸漬、および部分的に変性された膜10の内部孔14中の今や循環された浸透性(スクロース)溶液を用いて逆転される。次いで膜10は、蒸留水を用いて洗浄され、その後、今や変性された膜10の内部孔を通るか、または外側円筒形表面を横断して乾燥空気を吹きつけることによって乾燥される。
【0045】
焼成(これは、変性膜10を非常に高い温度まで加熱するステップ、次いで変性膜10を通る水素を通過するステップを包含する)は、次いで400℃で2時間、大気圧下に実施される。金属(活性)Rh(触媒12)は、400℃で2時間、水素を用いたロジウムイオン種の還元によって得られる。
【0046】
変性膜10の特徴は、今や測定されうる。これは、変性膜10細孔網状構造の充填度を示すため、およびガンマアルミナ(ベーマイト)層30の厚さを評価するために、走査電子顕微鏡(SEM)によって実施することができる。
【0047】
代替材料を選択することができる。しかしながら選択された材料は、隣接層と同様な熱膨張率を有することが重要である。活性多孔質層および多孔質担体層の熱膨張率に差があるならば、活性多孔質層についての値に近い値から、外部多孔質担体層についての値に近い値へ徐々に変化する膨張率を用いた場合、中間多孔質担体層のための材料の選択において利点がある。これを達成する1つの方法は、連続する多孔質担体層において漸減する活性多孔質層の形成に用いられる材料の混合物から、中間層を調製する方法である。例えば、多孔質担体層は、活性多孔質層の形成に用いられる材料の75重量%を含有しうる。
【0048】
上記考察は、活性多孔質層および多孔質担体層における同一材料の使用を除外しない。このような材料選択は、化学的不適合性および示差熱膨張の問題を排除するであろうが、典型的には、強度および材料費において必然的に犠牲をともなう。
【0049】
多孔質担体層の数は、隣接活性多孔質層の細孔半径による。これらは、特定範囲の上限から選択された活性多孔質層細孔半径についての単一層から、特定の範囲の下限から選択された細孔半径についての4層まで様々である。
【0050】
材料の表面積は、その物理的性質および化学的性質の多くを決定する。これには、水保持能力、および栄養素および汚染物質との反応性が含まれる。制御条件下に吸収される特定のガスの容積を測定することによって、固体の特定の外部比表面積を評価するために、BET表面積分析器を用いることができる。BET表面積分析器は典型的には、様々な膜材料、およびプロセスエンジニアリング系において重要な合成無機類似体の日常的な特徴決定に用いられてきた。
【0051】
本発明の状況において、窒素吸着を用いたBET表面積分析を用いて、変性膜10中の細孔サイズ分布を評価し、また多孔度および細孔容積の値も示す。変性膜10のエネルギー分散型X線分析(EDXA)表面分析を用いて、変性膜10が連続ガンマアルミナ網状構造を形成するかどうか、およびあらゆる欠陥の程度を確認する。これはまた、触媒12の元素組成およびその相対分布も提供する。次いでX線光電子分光法(XPS)を、変性膜10の化学分析のために用いる。
【0052】
メタンの部分酸化は、2つの異なるメカニズム、すなわち、直接部分酸化、または全酸化を介して、次いでリフォーミング反応によって発生しうることが認められる。
【0053】
メタンを合成ガスに転化するために、部分酸化が必要とされる。
CH4+O2→CO+H2
【0054】
万一、完全酸化が発生するならば、反応生成物は、CO2およびH2Oである。
【0055】
膜装置8における変性膜10の操作を、ここで記載する。
【0056】
酸素(O2)供給18を、膜装置8の一端において外部孔22中に供給し、天然ガス(これは主としてメタン(CH4)を含む)供給20を、内部孔14の対応末端部の中に供給する。
【0057】
酸素18の分圧を、メタン供給20の圧力よりも高い圧力に維持し、その結果、酸素を生じ、これは変性膜10の細孔(図示されていない)を通って、外部孔22から内部孔14へ通過する。そのようにした時、酸素分子は、変性膜10の側壁13中に存在する触媒12と接触し、これは、変性膜10の内部孔中に存在するメタンと接触する前に、酸素分子を活性化する。この活性化は、O2分子に十分なエネルギーを与え、したがってこれは、酸素イオンを形成することなく、比較的低い温度で反応しうる。
【0058】
活性化された酸素分子がメタン分子と接触する時、合成ガスは、次の化学反応にしたたがって即座に形成される。
CH4+O2*⇒触媒CO+H2
【0059】
生成された合成ガスは、メタン供給20によって生じた自然の圧力差によって、内部孔14の他方の末端部から膜装置8を出て行き、したがって合成ガス流24が生じる。酸素供給18流量の空気制御によって、メタン供給20の異なる流量を用いることが可能になる。その理由は、酸素供給の圧力の増加の結果として、変性膜10の細孔を通る酸素のより大きいフラックスを生じるであろうからである。
【0060】
使用中、メタンを含む気体ストリームが、触媒含浸層12の隣で、またはこれを通って流れる。孔側14のガンマアルミナ層30は、浸透された酸素とメタンとの間の反応を向上させる。酸素分子は、ガンマアルミナ層30の孔側14および隣接多孔質層へ拡散しなければならないので、この孔のところ、およびその近くにあるガンマアルミナ層30の気体環境は、外側多孔質層よりも還元性でない。その結果、完全または部分酸化反応がここで起こり、気体がそれぞれガンマアルミナ層30から離れるにつれて、いくらかのリフォーミングが発生する。最後の多孔質担体層の細孔を、リフォーミング触媒、例えばRhでコーティングし、燃焼生成物が多孔質担体層を通って流れるにつれて、いくらかの吸熱リフォーミングを誘発することが有利である。このことは、発熱酸化反応の熱を、活性多孔質層の表面から除去するのを補助する。
【0061】
多孔質層中の酸素活性の勾配は、非常に低い酸素分圧への暴露からのガンマアルミナ層30への損傷を防ぎ、このようにして、これらの層のための材料の選択においてより大きい自由度を可能にする。
【0062】
変性膜10を通るガス透過率は、変性膜10サンプルの末端部を外側管状シェル16の末端部に対してぴったりと配置し、「O」環32によってそれらの間にシールを形成して測定することができる。外側管状シェル16の気体連結部(図示されていない)を、一定圧力源に付着させる。用いられている予め決定された圧力差は、膜10サンプルの側壁13を通る気体の安定流を生じ、流量を測定するのに用いられ、この流量は、変性膜10の気体透過性に比例する。
【0063】
多成分選択率は、それぞれ供給原料および透過物中の個別種の濃度を測定することによって得ることができる。
【0064】
反応体および生成物の分析は、メタン、O2、H2、およびCOを測定するための5m 1/8インチ分子篩カラムを用いたガスクロマトグラフィー(GC)オンラインを使用して分析する。Porapak(登録商標)QSの別個の2m長さのカラムを用いて、あらゆるCO2が分析される。この分析において、熱伝導率検出器も用いられる。反応の間に形成された水は、アイストラップ中で濃縮され、更にDrierite(登録商標)トラップを用いることによって除去される。
【0065】
クロマトグラフを校正するために、メタン、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、および酸素の認定された組成からなる多成分気体混合物を、変性膜10の片面(例えば外部孔22)に供給し、内部孔14を出入りするストリームを、ガスクロマトグラフのThermal Conductivity Detector(TCD)を用いて分析した。
【0066】
膜10のテストにおいて調査された他の態様には、操作温度(図4)、メタン流量(図5)、および合成ガス収率の組成および選択率(図4および6)の効果が含まれる。
【0067】
図9〜図18は、このような装置を用いた多様なこれらの結果を示している。各々の場合、酸素の値およびメタン転化率および水素および一酸化炭素の収率が監視される。
【0068】
CH4/O2供給原料の最初の反応生成物を調査するために、実験は低いメタン転化率で実施し、生成物を、上に詳細に記載されているように分析した。
【0069】
酸素供給原料流量は、75ml/分に一定に保持し、メタン供給原料流量は、150〜425ml/分に変え、225〜500ml/分の総供給原料流量の範囲を生じた。より高い総供給原料流量は、反応体と触媒との接触時間を減少させ、これによってメタン転化率を減少させる。
【0070】
図8において、15%以上および15%以下のメタン転化率の場合、CO2収率は、有意に増加することを観察しうる。
【0071】
それに対してCO収率は、20%未満の転換率の場合に増加し、約16%の転化率でわずかな上昇を有し、その後再び上昇する。平均CO収率は、いずれか1つの生成物の最高の平均収率である。水収率は、COについてのものと同じプロフィールにしたがうが、約18%のメタン転化率の場合、これは再び減少し、CO収率から逸脱する。平均水収率は、いずれか1つの生成物の最も低い平均収率である。水素収率は、16%メタン転化率まで、CO収率の鏡像であり、より高い転化率の場合にかなり上昇する。
【0072】
第2実験において、酸素の供給原料流量は、15〜75ml/分で様々に変えられるが、メタンの流量は150ml/分で一定に保持され、図9に示されているように、165〜225ml/分の総流量で反応を生じた。温度は、1023.15Kであった。メタン転化率は、総流量の増加、すなわち接触時間の減少に比例して減少する。
【0073】
より高いメタン転化率の場合、より多くの接触時間が可能になり、CO2収率は、30%メタン転化率まで上昇し続け、約15%収率でわずかに低下し、メタン転化率が約50%に達する時に有意に低下する。メタン転化率が55%以上である時、5%CO2の微々たる収率が見られる。このようにして、CO2の最低の収率が、50%超のメタン転化率の場合に見られる。
【0074】
CO収率は、20%超のメタン転化率の場合、約15%で安定する。水収率は、20%から約40%のメタン転化率の場合5%で安定し、約50%メタン転化率においてほぼ10%水収率に上昇し、55%メタン転化率で、再び約5%収率に低下する。水素収率は、30%から50%までのメタン転化率の場合、約18%水素に上昇し、より高いメタン転化率の場合0.16収率に低下する。
【0075】
このようにして、接触時間(供給率によって制御される)は、結果として生じる生成物に対して有意な影響を有しないが、メタン転化率に影響を与える。本発明のあるいくつかの実施形態の利点は、これらが、結果として生じる生成物に影響を与えることなく、低いおよび高い流量(対応する高いおよび低い接触時間を生じる)とともに用いることができるということである。より長い接触時間は、メタン転化を助長し、水素および一酸化炭素の高い収率、および水および二酸化炭素の低い収率を生じ、メタン転化率が約50%である。
【0076】
この接触時間を得るために、総供給原料流量は、この触媒負荷および1023.15Kの温度の場合、185ml/分よりも低くなる必要がある。本発明の他の実施形態では、異なる供給原料流量を用いることができる。
【0077】
メタンの部分酸化は、2つの異なるメカニズム、すなわち、直接部分酸化または全酸化、次いでリフォーミング反応を介して発生しうることは十分に認められている[3]。ここで用いられる触媒膜反応器についてのメカニズムを解明するために、メタン転化率および生成物収率に対する温度の効果を調査した。この分析の結果を、図4および図8aに示す。
【0078】
図8aは、165ml/分の総供給原料流量(150ml/分のメタンおよび15ml/分の酸素)についての、メタン転化率および生成物収率に対する温度の影響を示している。図8aは、すべての酸素が消費されることを示している。このことは、有意量の水素および一酸化炭素が形成される前に発生する。もう1つの重要な特徴は、メタンの転化率、水の収率、および水素の収率が、750℃で最大を通過することである。この挙動は、750℃以下では、水、一酸化炭素、および水素が主要生成物であり、一方で、二酸化炭素は、スキーム1に描かれているような平行副反応であることを示唆している。
r1
CH4+O2 → CO+H2+H2O スキーム1
r2
→ CO2
【0079】
動的モデリングは、全体的な反応が、スキーム1による平行酸化および完全酸化の寄与を用いて十分に説明することができることを示している。
【0080】
750℃以上で、全酸化反応r2は、水および二酸化炭素の有意な増加をともなって優勢であると予想される。しかしながら図8aを調べると、二酸化炭素収率は、750℃以上で小幅な増加しか示さず、一方で、水および水素についての収率は、この温度以上で低下する。このことは、水素、二酸化炭素、および水が、下記スキーム2にしたがって消費されることを示唆している。
r3
CO2+H2O+H2 → CH4+CO スキーム2
【0081】
スキーム2は、水および水素収率の低下、小幅なCO2収率の増加、および750℃以上でのメタン転化率の低下を説明するのに役立つ。
【0082】
フィッシャー−トロプシュ型反応を介した、合成ガスの液体へのその後の転化における1つの重要な態様は、水素:一酸化炭素比である。2/1の比が、この転化にとって最適である。図4を調べると、約750℃の最適温度は結果として、所望の合成ガス(H2/CO)比2を生じることが分かる。
【0083】
メタン対酸素の最適供給原料比が、図5では10であるとして示されている。ただし、所望の比2に比較的近い合理的結果は、供給原料比2〜6においても得られる。
【0084】
図4は、調査された温度範囲全体のH2/COのプロットを示している。気体から液体への転化に最適な値は、750℃の温度で得られる。この温度以上では、2.0以下の比が得られるが、一方で、750℃以下では2.0以上の値が得られる。
【0085】
選択率は、メタン転化の量に比例した特定の成分の収率として規定される。すなわち、
選択率X=収率X/転化率CH4
【0086】
低いおよび高いメタン転化率の場合の選択率が、図12および図13に示されている。ここで、CO選択率は、約0.9の値でほぼ一定に留まる。これはおそらく、低いメタン転化率におけるCOについての二次反応の不存在を示している。水素の選択率は、15%までのメタン転化率の場合減少し、その後増加し、同様なCO選択率値に達する。
【0087】
水選択率プロフィールは、水素選択率の鏡像にしたがい、15%までの転換率の場合に増加し、より高い転換率の場合に減少する。メタン転化率のより高い値の場合、水選択率は一定であり、これは、水形成についての二次反応の不存在を示している。
【0088】
水素選択率は、50%までのメタン転化率の場合に有意に減少し、その後わずかに増加する。
【0089】
COの選択率は、45%までのメタン転化率の場合、H2選択率よりも低い値に減少し、その後安定するが、このことは、46%超のメタン転化率の場合、COはどの二次反応によっても形成されないことを示している。
【0090】
CO2の選択率は、メタン転化率の増加とともに減少し、これは、この反応中に形成された最も選択的でない気体である。
【0091】
上記実験データは、選択率の値に影響を与えうる接触時間を変えて得られたことに注目することが重要である。一定の接触時間ではあるが、様々な温度について、値が図14に示されている。
【0092】
[反応器性能に対する供給原料組成変化の効果]
図15および図16は、様々な割合の窒素が、酸素供給原料へ添加された時の収率および選択率を示している。これは、試薬と触媒との接触時間に影響を与える。
【0093】
図15は、CO収率が、この系への窒素の添加とともに一定して低下することを示している。水素収率は、酸素供給原料中の50%までの窒素とともに減少し、その後一定である。
【0094】
収率チャートに示されている二酸化炭素および水の選択率は、系への窒素の添加によって影響されない。しかしながら一酸化炭素および水素選択率は、約50容量%の窒素における回復(pick up)後、連続低下を有する。
【0095】
水およびCO2収率値は、窒素が存在する時、または存在しない時で、有意には異ならない。ただし、空気組成(80%N2)の場合小さい上昇がある。
【0096】
図6もまた、80容量%N2供給原料(したがって20%O2供給原料)の場合でさえ、総酸素転化が、750℃の温度において起こることを示している。これらの結果は、本発明の実施形態が、純粋な酸素供給原料ではなく、むしろ空気供給原料を用いることによって機能し、これによって、この反応が行なわれるための酸素分離プラントの必要性が否定されることを示している。このことは明らかに、当初支出および反応を実施するための運転費の両方を低減する。このようにして、本発明のあるいくつかの実施形態の利点は、フィッシャー−トロプシュ反応を介した液体炭化水素への前進反応に最適な比の合成ガスを生成するために、空気分離が必要とされないということである。
【0097】
窒素と対照的に、供給原料へのCO2の添加は、CO収率に影響を与えず、水素収率を減少させる一方で、H2O収率を増加させる。これらの結果は、図17および図18に示されている。
【0098】
COおよびH2の選択率は、メタン供給原料中へのCO2の添加で、水素の場合、より高い割合でわずかに減少する。
【0099】
水の選択率は一般に一定であるが、供給原料中のCO2のより高い量の場合、わずかに増加する。
【0100】
本発明のあるいくつかの実施形態の1つの利点は、酸素およびメタンが別々に装置中に供給され、したがって爆発の危険がないということである。酸素は、変性膜10を通って進行し、活性化され、次いでこれがメタンと接触する時に反応する。このようにして、供給原料中のメタンおよび酸素の比を、これらの反応により適した比に低下させることが可能である。このような比は通常、潜在的に爆発性であると考えられるであろうが、本発明のあるいくつかの実施形態は、部分的には別々の酸素/メタン供給原料によって、爆発の可能性をともなわずにこのような比を可能にする。
【0101】
本発明の実施形態は、その表面積および装置の有効性を増す、非常に分散された触媒から利益を得る。
【0102】
本発明の実施形態は、酸素の高い転化率から利益を得る。合成ガス生成における膜反応器操作の利点を例証するために、図8bは、60mgの触媒、25ml/分のO2、および673〜873Kの温度範囲を用いて、大気圧において固定床流型石英反応器(350−10mm)を用いて実施された、Ir負荷触媒上でのメタンの転化率に対する反応温度の効果を示している。873Kにおいて、IrおよびRhの性能は、大雑把には同一である[4]。
【0103】
同じ図面において、実験データは、900.15Kで本発明による膜システムについて示されている。固定床流反応器を用いて得られた転化率値は、平衡制限によって、膜反応器において得られたものよりも有意に低い。このことは、100%の酸素転化率および41%のメタン転化率を達成する膜反応器においては克服されている。
【0104】
変性膜10において、触媒12は高度に分散されているので、より低い反応温度が実行可能であり、これによってコークス形成および触媒12のその後の失活の傾向を減少させる。コークス形成がないことによって、高い合成ガス選択率を維持しつつ、触媒使用が最適化される。膜装置8の操作において、反応を更に向上させるために、追加触媒(図示されていない)が、必要に応じて変性膜10の内部孔中に挿入されてもよい。これらの追加触媒(図示されていない)は、変性膜10のもう1つのサンプルを適切な粒子サイズに物理的に破壊し、これらの粒子サイズをテストまたは操作サンプル中に挿入することによって得られる。
【0105】
本発明のあるいくつかの実施形態は、例えばメタンから水素を発生させるために用いられることから利益を得る。水素は、フィッシャー−トロプシュ反応を介して、より大きい炭化水素に転化されるよりも、むしろ燃料それ自体として用いることができる。
【0106】
本発明のあるいくつかの実施形態は、部分酸化方法が発熱的であり、したがってエネルギー消費を減少させるという事実から利益を得る。
【0107】
本発明のあるいくつかの実施形態は、この方法が、迅速な始動を有するという事実から利益を得る。
【0108】
対照的に、合成ガスを生成するための蒸気リフォーミングは、大きい吸熱反応および遅い始動時間を有する。
【0109】
このようにして、本発明のあるいくつかの実施形態は、酸素の全消費をともなう様々な操作条件下、水素、特に合成ガスを生成するために開発され、かつ使用されてきた触媒膜反応器を提供する。より低い供給原料比(CH4/O2)において、合成ガス比は、2.0を軽く超えており、一方、より高いCH4/O2比において、合成ガス比は2.0である。このようにして用途に応じて、この反応器は、天然ガスを液体炭化水素へ転化するためのフィッシャー−トロプシュ反応においてこれが使用されうる程度まで柔軟性がある。気体から液体への転化のためには、水素/一酸化炭素比が2.0である750℃の最適温度が確立されている。
【0110】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記方法に対して修正および改良を行なうことができる。
【0111】
例えば、記載された装置および方法は、メタンと酸素との間の反応からの合成ガスの生成に関しているが、同様な方法および装置を、あらゆる軽質炭化水素、例えばアルカンまたはアルケン族に属するものの反応に用いることができる。更には、この方法および装置は、反応が起こってしまう前にこれらを混合するのを望ましくないものにする制約、例えば可燃性の制約を有する2つの反応体がある場合、あらゆる反応に用いることができる。
【0112】
酸素のフラックスは、酸素を変性膜10の孔中に供給し、メタンを外部孔22中に供給することによって逆転することができるであろうと理解される。しかしながらこの場合、この配列はあまり望ましくないであろうが、その理由は、メタンが、触媒12を汚染するであろうような不純物、例えばH2Sをその中に有することがあるからである。したがって変性膜10を通る酸素の通過が好ましい。
【0113】
(引例)
1.Gobina,E.,The World Natural Gas Business,BCC,Inc.,2000
2.Gobina,E.,Hydrogen as a Chemical Constituent and as an Energy Source,BCC,Inc.2002.
3.Prettre,M.,C.Eichner,and M.Perrin,Trans.Faraday.Society,1946.43:p.335
4.Nakagawa,K.,et al.,Partial Oxidation of Methane to Synthesis Gas With Iridium−loaded Titania Catalyst.Chemistry Letters,1996:p.1029−1030
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明による膜装置の担体の横断面概略図である。
【図2A】図1の担体をより詳細に示す横断面図である。
【図2B】担体の「O」環および横断面形状を示す、図2Aの担体の端面図である。
【図3a】図2Aおよび2Bの膜装置の膜における層の形成を示す図表的横断面図である。
【図3b】膜装置の更に1つの図表的横断面図である。
【図3c】使用中の分子の運動を示す膜装置の更にもう1つの図表的横断面図である。
【図4】所望の合成ガス比を達成するのに必要とされる最適温度を示す、温度/合成ガス比プロットである。
【図5】所望の合成ガス比を達成するのに必要とされる最適供給原料比を示す、供給原料比/合成ガス比プロットである。
【図6】750℃におけるCH4およびO2の転化率を示す、N2容量%/転化率プロットである。
【図7】気体から液体へのフィッシャー−トロプシュ技術に関する背景情報を与える、概略フロー図表である。
【図8a】メタン転化率に対する温度の効果を示すグラフである。
【図8b】固定床および膜反応器についてのメタンの転化率に対する反応温度の効果を示すグラフである。
【図9】本発明による膜装置についての、低いメタン転化率での反応生成物の収率を示すグラフである。
【図10】固定温度において供給原料比を変えることによる、高いメタン転化率での様々な反応生成物の収率を示すグラフである。
【図11】固定供給原料比において温度を変えることによる、様々な反応生成物の収率を示すグラフである。
【図12】低いメタン転化率での様々な反応生成物の選択率を示すグラフである。
【図13】固定温度において供給原料比を変えることによる、様々な反応生成物の選択率を示すグラフである。
【図14】固定供給原料比において温度を変えることによる、様々な反応生成物の選択率を示すグラフである。
【図15】窒素/酸素供給原料中の窒素の割合に対する様々な反応生成物の収率を示すグラフである。
【図16】窒素/酸素供給原料中の窒素の割合に対する様々な反応生成物の選択率を示すグラフである。
【図17】メタン供給原料中の二酸化炭素の割合に対する様々な反応生成物の収率を示すグラフである。
【図18】メタン供給原料中の二酸化炭素の割合に対する様々な反応生成物の選択率を示すグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、膜、およびこの膜を調製する方法に関しており、この膜は特に、油およびガス探査産業における気体から液体へのフィッシャー−・トロプシュ生成への使用のための合成ガスの生成において、または燃料としての使用のための水素の生成のために有用であるが、それのみに限定されるわけではない。
【0002】
海底油生産は、近年わずかに高まっているが、天然ガス(これは主としてメタンからなる)生産は、顕著な増加を示している。天然ガスは、地中からの液体炭化水素、例えば油の抽出の間に抽出されることが多く、天然ガスを陸上の場所へ輸送するためのインフラの欠如のために望ましくないことが多い。インフラの欠如は、その基本的な気体状態において安全におよび/または効率的に輸送することを困難にする、天然ガスの物理的性質によって説明することができる。その結果、天然ガスは、燃やされる(着火される)ことが多く、経済的浪費および環境問題を引起こす。したがって、天然ガスを、容易に輸送することができるいくつかの他の物質に転化するか、または天然ガスを液体状態において輸送することが望ましい。このようにして、新しい分野の開発は、液体炭化水素を輸送するために海底油産業においてすでに実施されている広範なインフラおよび技術の利用を通して、財政的により存続しうるようになる。
【0003】
このような目的に適合するようにされた、特別に構成されたコンテナ積載船舶において液体天然ガス(LNG)として天然ガスを輸送することは公知である。しかしながらこれは多くの欠点を有する。これらの欠点には、より小さい生産現場に適するように、規模を縮小するのが難しい高価な加圧設備が必要なこと、輸送の間のガスの損失(「ボイルオフ」)、移動中に高圧によって船舶および乗組員にもたらされる危険性、非常に可燃性のガス、および末端顧客において使用可能な気体状態へLNGを減圧する必要性が含まれる。
【0004】
海底生産された天然ガス(CH4)を利用するより良い方法は、海底油生産プラットフォーム上で、またはその非常に近いところで、これを合成ガス(syngas)に転化することであると考えられ、これ自体は、気体、流体、および化学物質、例えばメタノール、アンモニア、および重要には、生産された油と同じパイプラインを通って容易に汲み上げることができる原油を生成するために用いることができる。合成ガスは、一酸化炭素(CO)と水素(H2)との混合物を含む。
【0005】
読者への背景情報として、合成ガスの液体炭化水素への転化は、不均一系触媒の表面上での一酸化炭素と水素との間の連鎖成長反応である。この触媒は、鉄またはコバルトベースであり、反応は非常に発熱的である。温度、圧力、および触媒は、軽質または重質合成原油が生成されるかどうかを決定する。例えば330℃において、主にガソリンおよびオレフィンが生成され、一方、180℃〜250℃で、主にディーゼルおよびワックスが生成される。2つの主要な型のフィッシャー−トロプシュ反応器がある。垂直固定管型は、加圧沸騰水によって外部から冷却される管中に触媒を有する。大きいプラントにおいて、平行に配列されたいくつかの反応器を用いることができ、これはエネルギーの節約になる。もう1つの方法では、スラリー反応器を用いる。この反応器において、予熱された合成ガスが反応器の底部に供給され、液体ワックスと触媒粒子とからなるスラリー中に分配される。合成ガスがスラリーを通って上方にバブリングするにつれて、これは拡散され、フィッシャー−トロプシュ反応によってより多くのワックスに転化される。発生された熱は、反応器の冷却コイルを通って除去され、ここで、このプロセスへの使用のため蒸気が発生される。ここでもまた読者への背景情報として、このことが図7に示される。
【0006】
このようにして、メタン(または他の気体炭化水素)が合成ガスに転化され、その後、液体炭化水素へ転化されうるならば、輸送費および上に概略が示されている問題は、緩和される。
【0007】
合成ガスは、メタンの部分酸化によって製造することができる(ただしより普通には、これは、加圧下の蒸気とメタンとの反応によって製造される)。
【0008】
メタンの部分酸化についての主要な安全性の問題は、メタンおよび空気(または酸素)が同時に反応器中に供給されるべきであり、したがって爆発の危険があるので生じる。
【0009】
酸素を伝導する比較的濃密なセラミック膜を有する反応器を、合成ガス生成のために用いることができることは、当分野において公知である(例えば国際公開第98/48921号パンフレットおよび国際公開第01/93987号パンフレット)。これらの膜は、酸素と炭化水素供給原料との間の直接接触を避けることによって合成ガスを発生させるが、これは、必要な酸素フラックスを達成するために、非常に高い温度の使用を必要とする。更には、この膜ができるだけ薄くなければならない濃密手段であるので、その結果、脆性および亀裂形成、効率性の欠如、および運転寿命の減少を生じる。いくつかの場合、この膜は、それ自身の重さを支えることができなくなるほど薄くなる必要があるであろうから、実際に使用することは不可能である。
【0010】
気体から液体への生産のための合成ガスへのコスト効率の良い天然ガス(メタン)の転化は、したがって重要な商業開発になる。
【0011】
水素は、クリーン燃料として用いることができる。しかしながら、再生可能な天然エネルギー源、例えば太陽、風、および水力を用いることによって生成することができる水素の量は、今のところ需要を満たすには十分でない。天然ガスの利用および/または天然ガスからの水素の生成は、実効可能な代替案であり、かつ少なくとも今世紀の前半においては最も現実的な解決策であると見られている[1,2]。
【0012】
天然ガスの広く行き渡った利用における進歩の一例は、マイクロガスタービンを用いた小規模コージェネレーションシステムの開発を包含する。更には燃料電池は、非常に効率的な電力発生システムであると期待されている。燃料電池は、電気自動車への取り付けに加えて、住居に配備されると予想される。燃料電池の家庭使用は、温水および電気を同時に供給しうる。据え置き型燃料電池を商品化するために、代替水素発生技術を確立することが必要である。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、第1チャンバと、第2チャンバと、第1チャンバと第2チャンバとを仕切る膜とを備える装置であって、この膜は、無機担体および触媒を備え、この膜は、第1チャンバから第2チャンバに、上記膜を通る第1反応体の通過を可能にするようになっており、第1反応体は、第2反応体と反応するように、上記通過の時に触媒によって十分なエネルギーが付与される装置が提供される。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、膜を調製する方法であって、
担体を設けるステップと、
触媒を担体へ添加するステップと
を備える方法が提供される。
【0015】
好ましくは、第1反応体は、第2反応体と反応するように、上記通過の時に触媒によって十分なエネルギーが付与されることによって活性化される。
【0016】
好ましくは、第1反応体へ付与されたエネルギーは、イオン種、例えばO2−を形成することなく、第1反応体の分子を活性化する。
【0017】
好ましくは、この担体は、250℃を超える温度で機能するようになっている。
【0018】
好ましくは、この担体は、無機担体を備える。
【0019】
好ましくは、この膜は最初に、粗い多孔質無機担体を備える。最も好ましくは、この膜は最初に、粗い多孔質セラミック担体、例えばアルファアルミナを備える。
【0020】
好ましくは、第1コーティングは、この担体の上記表面を改変し、より好ましくは、第1コーティングは、上記表面を粗面化する。
【0021】
好ましくは、第1コーティングは、細孔のサイズ、およびより好ましくは、直径および屈曲性(tortuosity)を選択的に改変する。好ましくは、第1コーティングは、薄め塗膜(wash coat)溶液、例えば収縮性(retracting)金属酸化物溶液を含んでいてもよい溶液中に担体を浸漬することによって加えられる。好ましい実施形態において、この薄め塗膜溶液は、二酸化チタン(TiO2)を含む。典型的には、第1コーティングは、担体の外側円筒表面であってもよい外側表面へ加えられる。
【0022】
典型的には、この方法は、更に、担体の第2表面へ第2コーティングを加えるステップも含む。上記第2表面は好ましくは、担体の内側表面であり、より好ましくは、担体の孔(bore)の内側表面である。第2コーティングは、好ましくは、フラックス制御層を備え、より好ましくは、第2コーティングは、無機多孔質層である。最も好ましくは、第2コーティングは、ガンマアルミナ層を備える。好ましくは、第2コーティングは、ベーマイト溶液を含んでいてもよい溶液中に担体を浸漬することによって加えられる。
【0023】
典型的には、この方法は、更に、担体の乾燥ステップ、および担体の加熱/燃焼ステップも含む。典型的には、第2コーティングの浸漬−乾燥−燃焼順序は、必要に応じて数回反復されてもよい。
【0024】
好ましくは、この方法は、更に、膜の表面へ触媒を加えるステップも含む。典型的には触媒は、膜の細孔の内部孔(inner bore)へ加えられる。典型的には触媒は、金属または非金属触媒を備え、より好ましくは、これは金属活性触媒である。最も好ましくは、触媒は活性ロジウムを備える。あるいは、触媒はニッケルを含んでいてもよい。好ましくは、触媒は、膜の第1面であってもよい上記第1表面上に浸透性溶液を通過させ、膜の他方の面であってもよい上記第2表面上にカチオン性またはアニオン性触媒先駆物質溶液を通過させることによって、上記表面へ加えられ、したがって触媒は、膜細孔の内部孔上に沈着される。好ましくは、この浸透性溶液は、室温で水性の溶液中に異なる電解質および非電解質を含む。より好ましくは、この浸透性溶液は、スクロース溶液を含む。
【0025】
好ましくは、この方法は、更に、膜を比較的高い温度に加熱するステップを含み、焼成が発生するように、膜細孔を通して水素を通過させる、更なるステップを含んでいてもよい。
【0026】
好ましくは、担体は、内部孔の内側表面の表面積を増加させるために、1つ以上の内側構造、例えば支柱(strut)を備えていてもよい。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、水素ガスを生成する方法であって、
担体および触媒を備える膜を設けるステップと、
第1チャンバから第2チャンバへ、この膜を通って第1反応体を通過させるステップと、
上記膜を通る通過時に、上記第1反応体を触媒と接触させるステップと、
第2反応体と反応させるように、第1反応体に十分なエネルギーを付与するステップと、
第1反応体と第2反応体とを反応させて、水素ガスを生成するステップと、
を備える方法が提供される。
【0028】
好ましくは、この膜は、実質的に環状の円筒を備えており、より好ましくは、第1および第2チャンバは、実質的に円筒形の横断面を備える。より好ましくは、この膜の側壁は、第1チャンバと第2チャンバとを分離し、第2円筒形チャンバは、第1円筒形チャンバの中に配置されていてもよい。
【0029】
好ましくは、第2円筒形チャンバは、この膜の内部孔によって画成される。
【0030】
好ましくは、この膜の一部分は、浸透性である。あるいは、膜全体が浸透性である。
【0031】
好ましくは、第1反応体は、第1チャンバからこの膜の側壁中に形成された細孔を通って第2チャンバへ通過する。
【0032】
あるいは、第2反応体は、第2チャンバからこの膜を通って第1チャンバへ通過する。
【0033】
好ましくは、第1反応体は酸素であり、第2反応体は炭化水素である。より好ましくは、第2反応体はメタンである。典型的には、合成ガスは、一酸化炭素および水素を含む。
【0034】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して、例としてのみ記す。
【0035】
本発明による膜装置8が図1に示されており、これは、管状膜10および外側管状シェル16を備える。このようにして2つのガス流通路が形成され、これらは実質的に互いから密閉されている。第1通路は、膜10の孔14の中にあり、第2通路は、膜10とシェル16との間の環22の中にある。
【0036】
変性膜10の内部孔14は、図2に示されているように、いくつかの支持支柱34を有していてもよい。これらは、変性膜10の構造強度を増す。操作中、支柱34はまた、内部孔14を通って流れるメタンが、変性膜10表面と接触せずに、変性膜10内部孔の中心を通って直接通過する機会を減少させることによって、膜10の側壁13を通って流れる酸素の流れパターンも変更する。支柱34はまた、変性膜10の単位容積あたりの内部表面積を増加させ、これによって、完全に中空の断面と比べて活性化の機会を増す。
【0037】
図3cを参照すると、変性膜10は、α−アルミナ担体10、担体10の外側表面上のTiO2薄め塗膜28、およびα−アルミナ担体10の内側にあるγ−アルミナ層30を備える。Rh触媒粒子12は、変性膜10の側壁13の内側表面および外側表面の孔の中に含浸されている。
【0038】
細孔半径を増加させる更なる層が、γ−アルミナ層30およびTiO228層に隣接して備えられていてもよい。
【0039】
図2A、図2B、および図3a−図3bを参照しつつ、ここで膜10層の調製について記載する。
【0040】
この方法は、無機(好ましくは、セラミック)粗多孔質担体10から出発する。この種類の担体は、今では広く入手可能であり、現在非常に多様な会社がこれらのベース材料を供給しており、好ましい担体10は、典型的には110〜180nmの細孔サイズを有する、外径10mm、内径7mmのアルファ−アルミナ管を備える。担体10は、典型的には長さが約300mmの多孔質中間部分11、および膜10の各末端部に長さ約25mmの2つの残りの非多孔質部分26を備える。末端部分26は、1100℃において、これらにシーラント、例えばSiO2−BaO−CaOを掛ける(glaze)ことによって非多孔質にされる。
【0041】
次いで薄め塗膜28は、担体10を、例えばTiO2などの物質中に浸漬することによって、担体10の外側円筒形表面へ加えられる。この薄め塗膜28浸漬ステップは、担体10の外側円筒形表面を粗面化し、膜触媒12の壁へ微小孔性を追加する。(操作中、薄め塗膜28の粗面は、強制的に酸素粒子(図示されていない)を薄め塗膜12のでこぼこ面の周りで巻き込むようにし、制限的な反応体(酸素)の触媒部位への物質移動を改良するのに役立つ。この結果、改良された合成ガス収率を生じる)。
【0042】
次いで酸素フラックス制御層30を、担体10の内部孔14の内側表面に加える。この層30は、高温での膜10の操作を可能にするために無機であるべきであり、濃度0.6モル/Lのベーマイト(AlO(OH))溶液に由来するガンマアルミナ層を備えていてもよい。担体10の内側表面は、約2分間の浸漬を介して、ベーマイト溶液へ暴露される。次いで担体を一晩空気乾燥し、次いで1℃/分の率で700〜750℃に加熱する。担体10上で要求されるガンマ−アルミナ層厚さを達成するために、全部で3サイクルまでの間、この浸漬−乾燥−燃焼順序を反復する必要があるかもしれない。
【0043】
担体10上への触媒12の沈着は、浸透性イオン交換方法を用いて達成される。これについて、ここで記載する。
【0044】
[浸透性イオン交換触媒沈着]
触媒12は、先駆物質としての有機媒質(0.2g/L)中のそれぞれRhNO3またはRhCl3.2H2Oを用いて、カチオンまたはアニオン交換のどちらかを用いて調製する。図3aに示されている膜(すなわち薄め塗膜28+担体10+ガンマアルミナ層(ベーマイト)30)の非対称性によって、担体10への触媒12の様々な導入方法が利用される。第1例において、浸透作用プロセスは、触媒先駆物質溶液(例えばRhNO3またはRhCl3.2H2O)が、部分的に変性された膜10の内部孔14を通って循環されている間に、6.0モルスクロース溶液中に部分的に変性された膜10の外側表面を浸漬するステップを包含する。この構成は、第2例において、今や触媒先駆物質溶液中の部分的に変性された膜10の外側表面の浸漬、および部分的に変性された膜10の内部孔14中の今や循環された浸透性(スクロース)溶液を用いて逆転される。次いで膜10は、蒸留水を用いて洗浄され、その後、今や変性された膜10の内部孔を通るか、または外側円筒形表面を横断して乾燥空気を吹きつけることによって乾燥される。
【0045】
焼成(これは、変性膜10を非常に高い温度まで加熱するステップ、次いで変性膜10を通る水素を通過するステップを包含する)は、次いで400℃で2時間、大気圧下に実施される。金属(活性)Rh(触媒12)は、400℃で2時間、水素を用いたロジウムイオン種の還元によって得られる。
【0046】
変性膜10の特徴は、今や測定されうる。これは、変性膜10細孔網状構造の充填度を示すため、およびガンマアルミナ(ベーマイト)層30の厚さを評価するために、走査電子顕微鏡(SEM)によって実施することができる。
【0047】
代替材料を選択することができる。しかしながら選択された材料は、隣接層と同様な熱膨張率を有することが重要である。活性多孔質層および多孔質担体層の熱膨張率に差があるならば、活性多孔質層についての値に近い値から、外部多孔質担体層についての値に近い値へ徐々に変化する膨張率を用いた場合、中間多孔質担体層のための材料の選択において利点がある。これを達成する1つの方法は、連続する多孔質担体層において漸減する活性多孔質層の形成に用いられる材料の混合物から、中間層を調製する方法である。例えば、多孔質担体層は、活性多孔質層の形成に用いられる材料の75重量%を含有しうる。
【0048】
上記考察は、活性多孔質層および多孔質担体層における同一材料の使用を除外しない。このような材料選択は、化学的不適合性および示差熱膨張の問題を排除するであろうが、典型的には、強度および材料費において必然的に犠牲をともなう。
【0049】
多孔質担体層の数は、隣接活性多孔質層の細孔半径による。これらは、特定範囲の上限から選択された活性多孔質層細孔半径についての単一層から、特定の範囲の下限から選択された細孔半径についての4層まで様々である。
【0050】
材料の表面積は、その物理的性質および化学的性質の多くを決定する。これには、水保持能力、および栄養素および汚染物質との反応性が含まれる。制御条件下に吸収される特定のガスの容積を測定することによって、固体の特定の外部比表面積を評価するために、BET表面積分析器を用いることができる。BET表面積分析器は典型的には、様々な膜材料、およびプロセスエンジニアリング系において重要な合成無機類似体の日常的な特徴決定に用いられてきた。
【0051】
本発明の状況において、窒素吸着を用いたBET表面積分析を用いて、変性膜10中の細孔サイズ分布を評価し、また多孔度および細孔容積の値も示す。変性膜10のエネルギー分散型X線分析(EDXA)表面分析を用いて、変性膜10が連続ガンマアルミナ網状構造を形成するかどうか、およびあらゆる欠陥の程度を確認する。これはまた、触媒12の元素組成およびその相対分布も提供する。次いでX線光電子分光法(XPS)を、変性膜10の化学分析のために用いる。
【0052】
メタンの部分酸化は、2つの異なるメカニズム、すなわち、直接部分酸化、または全酸化を介して、次いでリフォーミング反応によって発生しうることが認められる。
【0053】
メタンを合成ガスに転化するために、部分酸化が必要とされる。
CH4+O2→CO+H2
【0054】
万一、完全酸化が発生するならば、反応生成物は、CO2およびH2Oである。
【0055】
膜装置8における変性膜10の操作を、ここで記載する。
【0056】
酸素(O2)供給18を、膜装置8の一端において外部孔22中に供給し、天然ガス(これは主としてメタン(CH4)を含む)供給20を、内部孔14の対応末端部の中に供給する。
【0057】
酸素18の分圧を、メタン供給20の圧力よりも高い圧力に維持し、その結果、酸素を生じ、これは変性膜10の細孔(図示されていない)を通って、外部孔22から内部孔14へ通過する。そのようにした時、酸素分子は、変性膜10の側壁13中に存在する触媒12と接触し、これは、変性膜10の内部孔中に存在するメタンと接触する前に、酸素分子を活性化する。この活性化は、O2分子に十分なエネルギーを与え、したがってこれは、酸素イオンを形成することなく、比較的低い温度で反応しうる。
【0058】
活性化された酸素分子がメタン分子と接触する時、合成ガスは、次の化学反応にしたたがって即座に形成される。
CH4+O2*⇒触媒CO+H2
【0059】
生成された合成ガスは、メタン供給20によって生じた自然の圧力差によって、内部孔14の他方の末端部から膜装置8を出て行き、したがって合成ガス流24が生じる。酸素供給18流量の空気制御によって、メタン供給20の異なる流量を用いることが可能になる。その理由は、酸素供給の圧力の増加の結果として、変性膜10の細孔を通る酸素のより大きいフラックスを生じるであろうからである。
【0060】
使用中、メタンを含む気体ストリームが、触媒含浸層12の隣で、またはこれを通って流れる。孔側14のガンマアルミナ層30は、浸透された酸素とメタンとの間の反応を向上させる。酸素分子は、ガンマアルミナ層30の孔側14および隣接多孔質層へ拡散しなければならないので、この孔のところ、およびその近くにあるガンマアルミナ層30の気体環境は、外側多孔質層よりも還元性でない。その結果、完全または部分酸化反応がここで起こり、気体がそれぞれガンマアルミナ層30から離れるにつれて、いくらかのリフォーミングが発生する。最後の多孔質担体層の細孔を、リフォーミング触媒、例えばRhでコーティングし、燃焼生成物が多孔質担体層を通って流れるにつれて、いくらかの吸熱リフォーミングを誘発することが有利である。このことは、発熱酸化反応の熱を、活性多孔質層の表面から除去するのを補助する。
【0061】
多孔質層中の酸素活性の勾配は、非常に低い酸素分圧への暴露からのガンマアルミナ層30への損傷を防ぎ、このようにして、これらの層のための材料の選択においてより大きい自由度を可能にする。
【0062】
変性膜10を通るガス透過率は、変性膜10サンプルの末端部を外側管状シェル16の末端部に対してぴったりと配置し、「O」環32によってそれらの間にシールを形成して測定することができる。外側管状シェル16の気体連結部(図示されていない)を、一定圧力源に付着させる。用いられている予め決定された圧力差は、膜10サンプルの側壁13を通る気体の安定流を生じ、流量を測定するのに用いられ、この流量は、変性膜10の気体透過性に比例する。
【0063】
多成分選択率は、それぞれ供給原料および透過物中の個別種の濃度を測定することによって得ることができる。
【0064】
反応体および生成物の分析は、メタン、O2、H2、およびCOを測定するための5m 1/8インチ分子篩カラムを用いたガスクロマトグラフィー(GC)オンラインを使用して分析する。Porapak(登録商標)QSの別個の2m長さのカラムを用いて、あらゆるCO2が分析される。この分析において、熱伝導率検出器も用いられる。反応の間に形成された水は、アイストラップ中で濃縮され、更にDrierite(登録商標)トラップを用いることによって除去される。
【0065】
クロマトグラフを校正するために、メタン、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、および酸素の認定された組成からなる多成分気体混合物を、変性膜10の片面(例えば外部孔22)に供給し、内部孔14を出入りするストリームを、ガスクロマトグラフのThermal Conductivity Detector(TCD)を用いて分析した。
【0066】
膜10のテストにおいて調査された他の態様には、操作温度(図4)、メタン流量(図5)、および合成ガス収率の組成および選択率(図4および6)の効果が含まれる。
【0067】
図9〜図18は、このような装置を用いた多様なこれらの結果を示している。各々の場合、酸素の値およびメタン転化率および水素および一酸化炭素の収率が監視される。
【0068】
CH4/O2供給原料の最初の反応生成物を調査するために、実験は低いメタン転化率で実施し、生成物を、上に詳細に記載されているように分析した。
【0069】
酸素供給原料流量は、75ml/分に一定に保持し、メタン供給原料流量は、150〜425ml/分に変え、225〜500ml/分の総供給原料流量の範囲を生じた。より高い総供給原料流量は、反応体と触媒との接触時間を減少させ、これによってメタン転化率を減少させる。
【0070】
図8において、15%以上および15%以下のメタン転化率の場合、CO2収率は、有意に増加することを観察しうる。
【0071】
それに対してCO収率は、20%未満の転換率の場合に増加し、約16%の転化率でわずかな上昇を有し、その後再び上昇する。平均CO収率は、いずれか1つの生成物の最高の平均収率である。水収率は、COについてのものと同じプロフィールにしたがうが、約18%のメタン転化率の場合、これは再び減少し、CO収率から逸脱する。平均水収率は、いずれか1つの生成物の最も低い平均収率である。水素収率は、16%メタン転化率まで、CO収率の鏡像であり、より高い転化率の場合にかなり上昇する。
【0072】
第2実験において、酸素の供給原料流量は、15〜75ml/分で様々に変えられるが、メタンの流量は150ml/分で一定に保持され、図9に示されているように、165〜225ml/分の総流量で反応を生じた。温度は、1023.15Kであった。メタン転化率は、総流量の増加、すなわち接触時間の減少に比例して減少する。
【0073】
より高いメタン転化率の場合、より多くの接触時間が可能になり、CO2収率は、30%メタン転化率まで上昇し続け、約15%収率でわずかに低下し、メタン転化率が約50%に達する時に有意に低下する。メタン転化率が55%以上である時、5%CO2の微々たる収率が見られる。このようにして、CO2の最低の収率が、50%超のメタン転化率の場合に見られる。
【0074】
CO収率は、20%超のメタン転化率の場合、約15%で安定する。水収率は、20%から約40%のメタン転化率の場合5%で安定し、約50%メタン転化率においてほぼ10%水収率に上昇し、55%メタン転化率で、再び約5%収率に低下する。水素収率は、30%から50%までのメタン転化率の場合、約18%水素に上昇し、より高いメタン転化率の場合0.16収率に低下する。
【0075】
このようにして、接触時間(供給率によって制御される)は、結果として生じる生成物に対して有意な影響を有しないが、メタン転化率に影響を与える。本発明のあるいくつかの実施形態の利点は、これらが、結果として生じる生成物に影響を与えることなく、低いおよび高い流量(対応する高いおよび低い接触時間を生じる)とともに用いることができるということである。より長い接触時間は、メタン転化を助長し、水素および一酸化炭素の高い収率、および水および二酸化炭素の低い収率を生じ、メタン転化率が約50%である。
【0076】
この接触時間を得るために、総供給原料流量は、この触媒負荷および1023.15Kの温度の場合、185ml/分よりも低くなる必要がある。本発明の他の実施形態では、異なる供給原料流量を用いることができる。
【0077】
メタンの部分酸化は、2つの異なるメカニズム、すなわち、直接部分酸化または全酸化、次いでリフォーミング反応を介して発生しうることは十分に認められている[3]。ここで用いられる触媒膜反応器についてのメカニズムを解明するために、メタン転化率および生成物収率に対する温度の効果を調査した。この分析の結果を、図4および図8aに示す。
【0078】
図8aは、165ml/分の総供給原料流量(150ml/分のメタンおよび15ml/分の酸素)についての、メタン転化率および生成物収率に対する温度の影響を示している。図8aは、すべての酸素が消費されることを示している。このことは、有意量の水素および一酸化炭素が形成される前に発生する。もう1つの重要な特徴は、メタンの転化率、水の収率、および水素の収率が、750℃で最大を通過することである。この挙動は、750℃以下では、水、一酸化炭素、および水素が主要生成物であり、一方で、二酸化炭素は、スキーム1に描かれているような平行副反応であることを示唆している。
r1
CH4+O2 → CO+H2+H2O スキーム1
r2
→ CO2
【0079】
動的モデリングは、全体的な反応が、スキーム1による平行酸化および完全酸化の寄与を用いて十分に説明することができることを示している。
【0080】
750℃以上で、全酸化反応r2は、水および二酸化炭素の有意な増加をともなって優勢であると予想される。しかしながら図8aを調べると、二酸化炭素収率は、750℃以上で小幅な増加しか示さず、一方で、水および水素についての収率は、この温度以上で低下する。このことは、水素、二酸化炭素、および水が、下記スキーム2にしたがって消費されることを示唆している。
r3
CO2+H2O+H2 → CH4+CO スキーム2
【0081】
スキーム2は、水および水素収率の低下、小幅なCO2収率の増加、および750℃以上でのメタン転化率の低下を説明するのに役立つ。
【0082】
フィッシャー−トロプシュ型反応を介した、合成ガスの液体へのその後の転化における1つの重要な態様は、水素:一酸化炭素比である。2/1の比が、この転化にとって最適である。図4を調べると、約750℃の最適温度は結果として、所望の合成ガス(H2/CO)比2を生じることが分かる。
【0083】
メタン対酸素の最適供給原料比が、図5では10であるとして示されている。ただし、所望の比2に比較的近い合理的結果は、供給原料比2〜6においても得られる。
【0084】
図4は、調査された温度範囲全体のH2/COのプロットを示している。気体から液体への転化に最適な値は、750℃の温度で得られる。この温度以上では、2.0以下の比が得られるが、一方で、750℃以下では2.0以上の値が得られる。
【0085】
選択率は、メタン転化の量に比例した特定の成分の収率として規定される。すなわち、
選択率X=収率X/転化率CH4
【0086】
低いおよび高いメタン転化率の場合の選択率が、図12および図13に示されている。ここで、CO選択率は、約0.9の値でほぼ一定に留まる。これはおそらく、低いメタン転化率におけるCOについての二次反応の不存在を示している。水素の選択率は、15%までのメタン転化率の場合減少し、その後増加し、同様なCO選択率値に達する。
【0087】
水選択率プロフィールは、水素選択率の鏡像にしたがい、15%までの転換率の場合に増加し、より高い転換率の場合に減少する。メタン転化率のより高い値の場合、水選択率は一定であり、これは、水形成についての二次反応の不存在を示している。
【0088】
水素選択率は、50%までのメタン転化率の場合に有意に減少し、その後わずかに増加する。
【0089】
COの選択率は、45%までのメタン転化率の場合、H2選択率よりも低い値に減少し、その後安定するが、このことは、46%超のメタン転化率の場合、COはどの二次反応によっても形成されないことを示している。
【0090】
CO2の選択率は、メタン転化率の増加とともに減少し、これは、この反応中に形成された最も選択的でない気体である。
【0091】
上記実験データは、選択率の値に影響を与えうる接触時間を変えて得られたことに注目することが重要である。一定の接触時間ではあるが、様々な温度について、値が図14に示されている。
【0092】
[反応器性能に対する供給原料組成変化の効果]
図15および図16は、様々な割合の窒素が、酸素供給原料へ添加された時の収率および選択率を示している。これは、試薬と触媒との接触時間に影響を与える。
【0093】
図15は、CO収率が、この系への窒素の添加とともに一定して低下することを示している。水素収率は、酸素供給原料中の50%までの窒素とともに減少し、その後一定である。
【0094】
収率チャートに示されている二酸化炭素および水の選択率は、系への窒素の添加によって影響されない。しかしながら一酸化炭素および水素選択率は、約50容量%の窒素における回復(pick up)後、連続低下を有する。
【0095】
水およびCO2収率値は、窒素が存在する時、または存在しない時で、有意には異ならない。ただし、空気組成(80%N2)の場合小さい上昇がある。
【0096】
図6もまた、80容量%N2供給原料(したがって20%O2供給原料)の場合でさえ、総酸素転化が、750℃の温度において起こることを示している。これらの結果は、本発明の実施形態が、純粋な酸素供給原料ではなく、むしろ空気供給原料を用いることによって機能し、これによって、この反応が行なわれるための酸素分離プラントの必要性が否定されることを示している。このことは明らかに、当初支出および反応を実施するための運転費の両方を低減する。このようにして、本発明のあるいくつかの実施形態の利点は、フィッシャー−トロプシュ反応を介した液体炭化水素への前進反応に最適な比の合成ガスを生成するために、空気分離が必要とされないということである。
【0097】
窒素と対照的に、供給原料へのCO2の添加は、CO収率に影響を与えず、水素収率を減少させる一方で、H2O収率を増加させる。これらの結果は、図17および図18に示されている。
【0098】
COおよびH2の選択率は、メタン供給原料中へのCO2の添加で、水素の場合、より高い割合でわずかに減少する。
【0099】
水の選択率は一般に一定であるが、供給原料中のCO2のより高い量の場合、わずかに増加する。
【0100】
本発明のあるいくつかの実施形態の1つの利点は、酸素およびメタンが別々に装置中に供給され、したがって爆発の危険がないということである。酸素は、変性膜10を通って進行し、活性化され、次いでこれがメタンと接触する時に反応する。このようにして、供給原料中のメタンおよび酸素の比を、これらの反応により適した比に低下させることが可能である。このような比は通常、潜在的に爆発性であると考えられるであろうが、本発明のあるいくつかの実施形態は、部分的には別々の酸素/メタン供給原料によって、爆発の可能性をともなわずにこのような比を可能にする。
【0101】
本発明の実施形態は、その表面積および装置の有効性を増す、非常に分散された触媒から利益を得る。
【0102】
本発明の実施形態は、酸素の高い転化率から利益を得る。合成ガス生成における膜反応器操作の利点を例証するために、図8bは、60mgの触媒、25ml/分のO2、および673〜873Kの温度範囲を用いて、大気圧において固定床流型石英反応器(350−10mm)を用いて実施された、Ir負荷触媒上でのメタンの転化率に対する反応温度の効果を示している。873Kにおいて、IrおよびRhの性能は、大雑把には同一である[4]。
【0103】
同じ図面において、実験データは、900.15Kで本発明による膜システムについて示されている。固定床流反応器を用いて得られた転化率値は、平衡制限によって、膜反応器において得られたものよりも有意に低い。このことは、100%の酸素転化率および41%のメタン転化率を達成する膜反応器においては克服されている。
【0104】
変性膜10において、触媒12は高度に分散されているので、より低い反応温度が実行可能であり、これによってコークス形成および触媒12のその後の失活の傾向を減少させる。コークス形成がないことによって、高い合成ガス選択率を維持しつつ、触媒使用が最適化される。膜装置8の操作において、反応を更に向上させるために、追加触媒(図示されていない)が、必要に応じて変性膜10の内部孔中に挿入されてもよい。これらの追加触媒(図示されていない)は、変性膜10のもう1つのサンプルを適切な粒子サイズに物理的に破壊し、これらの粒子サイズをテストまたは操作サンプル中に挿入することによって得られる。
【0105】
本発明のあるいくつかの実施形態は、例えばメタンから水素を発生させるために用いられることから利益を得る。水素は、フィッシャー−トロプシュ反応を介して、より大きい炭化水素に転化されるよりも、むしろ燃料それ自体として用いることができる。
【0106】
本発明のあるいくつかの実施形態は、部分酸化方法が発熱的であり、したがってエネルギー消費を減少させるという事実から利益を得る。
【0107】
本発明のあるいくつかの実施形態は、この方法が、迅速な始動を有するという事実から利益を得る。
【0108】
対照的に、合成ガスを生成するための蒸気リフォーミングは、大きい吸熱反応および遅い始動時間を有する。
【0109】
このようにして、本発明のあるいくつかの実施形態は、酸素の全消費をともなう様々な操作条件下、水素、特に合成ガスを生成するために開発され、かつ使用されてきた触媒膜反応器を提供する。より低い供給原料比(CH4/O2)において、合成ガス比は、2.0を軽く超えており、一方、より高いCH4/O2比において、合成ガス比は2.0である。このようにして用途に応じて、この反応器は、天然ガスを液体炭化水素へ転化するためのフィッシャー−トロプシュ反応においてこれが使用されうる程度まで柔軟性がある。気体から液体への転化のためには、水素/一酸化炭素比が2.0である750℃の最適温度が確立されている。
【0110】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記方法に対して修正および改良を行なうことができる。
【0111】
例えば、記載された装置および方法は、メタンと酸素との間の反応からの合成ガスの生成に関しているが、同様な方法および装置を、あらゆる軽質炭化水素、例えばアルカンまたはアルケン族に属するものの反応に用いることができる。更には、この方法および装置は、反応が起こってしまう前にこれらを混合するのを望ましくないものにする制約、例えば可燃性の制約を有する2つの反応体がある場合、あらゆる反応に用いることができる。
【0112】
酸素のフラックスは、酸素を変性膜10の孔中に供給し、メタンを外部孔22中に供給することによって逆転することができるであろうと理解される。しかしながらこの場合、この配列はあまり望ましくないであろうが、その理由は、メタンが、触媒12を汚染するであろうような不純物、例えばH2Sをその中に有することがあるからである。したがって変性膜10を通る酸素の通過が好ましい。
【0113】
(引例)
1.Gobina,E.,The World Natural Gas Business,BCC,Inc.,2000
2.Gobina,E.,Hydrogen as a Chemical Constituent and as an Energy Source,BCC,Inc.2002.
3.Prettre,M.,C.Eichner,and M.Perrin,Trans.Faraday.Society,1946.43:p.335
4.Nakagawa,K.,et al.,Partial Oxidation of Methane to Synthesis Gas With Iridium−loaded Titania Catalyst.Chemistry Letters,1996:p.1029−1030
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明による膜装置の担体の横断面概略図である。
【図2A】図1の担体をより詳細に示す横断面図である。
【図2B】担体の「O」環および横断面形状を示す、図2Aの担体の端面図である。
【図3a】図2Aおよび2Bの膜装置の膜における層の形成を示す図表的横断面図である。
【図3b】膜装置の更に1つの図表的横断面図である。
【図3c】使用中の分子の運動を示す膜装置の更にもう1つの図表的横断面図である。
【図4】所望の合成ガス比を達成するのに必要とされる最適温度を示す、温度/合成ガス比プロットである。
【図5】所望の合成ガス比を達成するのに必要とされる最適供給原料比を示す、供給原料比/合成ガス比プロットである。
【図6】750℃におけるCH4およびO2の転化率を示す、N2容量%/転化率プロットである。
【図7】気体から液体へのフィッシャー−トロプシュ技術に関する背景情報を与える、概略フロー図表である。
【図8a】メタン転化率に対する温度の効果を示すグラフである。
【図8b】固定床および膜反応器についてのメタンの転化率に対する反応温度の効果を示すグラフである。
【図9】本発明による膜装置についての、低いメタン転化率での反応生成物の収率を示すグラフである。
【図10】固定温度において供給原料比を変えることによる、高いメタン転化率での様々な反応生成物の収率を示すグラフである。
【図11】固定供給原料比において温度を変えることによる、様々な反応生成物の収率を示すグラフである。
【図12】低いメタン転化率での様々な反応生成物の選択率を示すグラフである。
【図13】固定温度において供給原料比を変えることによる、様々な反応生成物の選択率を示すグラフである。
【図14】固定供給原料比において温度を変えることによる、様々な反応生成物の選択率を示すグラフである。
【図15】窒素/酸素供給原料中の窒素の割合に対する様々な反応生成物の収率を示すグラフである。
【図16】窒素/酸素供給原料中の窒素の割合に対する様々な反応生成物の選択率を示すグラフである。
【図17】メタン供給原料中の二酸化炭素の割合に対する様々な反応生成物の収率を示すグラフである。
【図18】メタン供給原料中の二酸化炭素の割合に対する様々な反応生成物の選択率を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1チャンバと、第2チャンバと、前記第1チャンバと前記第2チャンバとを仕切る膜とを備える装置であって、
前記膜が、担体および触媒を備え、
前記膜が、第1チャンバから第2チャンバへ、前記膜を通る第1反応体の通過を可能にするようになっており、
前記第1反応体が、第2反応体と反応するように、前記通過の時に触媒によって十分なエネルギーが付与される、装置。
【請求項2】
前記担体が、250℃を超える温度で機能するようになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記担体が、無機担体を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記担体が、細孔を備えており、前記担体の1つの表面の方へ向かって、平均細孔半径の漸変がある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記膜が、第2反応体との反応前にイオン種を形成することなく、第1反応体の分子を活性化するようになっている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記担体が粗面をともなった層を備え、該層が前記担体の他の部分の屈曲性と比べて高い屈曲性を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
比較的粗い表面が、前記担体の外側表面上に設けられている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
フラックス制御層が前記担体上に設けられている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
フラックス制御層が前記担体の第1表面上に設けられ、粗面を有する層が、前記担体の反対側表面上に設けられている、請求項6または7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記フラックス制御層が、触媒の一部分をその中に保持し、かつ前記膜を通る第1反応体の通過を制御するようになっている無機多孔質層を備える、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記フラックス制御層が、シリカおよびガンマアルミナからなる群から選択される、請求項8〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記触媒が金属触媒を備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記金属触媒が、ロジウム、ルテニウム、およびニッケルからなる群から選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記膜が、円筒の形状で備えられている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記膜が、1つ以上の支柱を備える、請求項1〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記担体が、アルファアルミナを備える、請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
水素ガスを生成する方法であって、
担体および触媒を備える膜を設けるステップと、
第1チャンバから第2チャンバに、前記膜を通って第1反応体を通過させるステップと、
前記膜を通過する際に、前記反応体を触媒と接触させるステップと、
第2反応体と反応させるように、第1反応体に十分なエネルギーを付与するステップと、
第1反応体と第2反応体とを反応させて、水素ガスを生成するステップと、
を備える方法。
【請求項18】
第1反応体へ付与されたエネルギーが、第2反応体との反応前に、イオン種を形成することなく第1反応体の分子を活性化する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
温度が500℃以上である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
温度が700℃〜800℃である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第1反応体が、酸素および炭化水素のうちの1つであり、第2反応体が、酸素および炭化水素のうちの他方のものである、請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
酸素および炭化水素が、第1反応体が、第1チャンバから第2チャンバに、前記膜を通って通過してしまうまで互いに接触しないようにした、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記炭化水素が、通常は気体の炭化水素を備える、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
第1チャンバ内の圧力が第2チャンバ内の圧力よりも大きい、請求項20〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
水素に加えて、一酸化炭素が形成される、請求項20〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
一酸化炭素と水素とが、更に反応させられ、フィッシャー−・トロプシュ型反応において、通常は液体の炭化水素を生成する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記水素が、燃料としての使用のために回収される、請求項20〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
膜を調製する方法であって、
担体を設けるステップと、
触媒を担体へ添加するステップと、
を備える方法。
【請求項29】
前記担体が無機担体である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
更に、前記担体の表面の1つへコーティングを加えるステップを含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記コーティングが、担体上に粗い表面を生成し、前記表面が、担体の他の部分の屈曲性と比べて高い屈曲性を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記コーティングが、金属酸化物または金属酸化物先駆物質を備える、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記金属酸化物または先駆物質が、第IV族金属酸化物または第IV族金属酸化物先駆物質を備える、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第IV族金属酸化物または先駆物質が、TiO2またはTiO2先駆物質を備える、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記コーティングが、前記膜上にフラックス制御層を生成する、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
フラックス制御層である第2コーティングもまた、担体に加えられる、請求項30〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記フラックス制御層が、ベーマイトゾルへの暴露によって、前記膜に加えられる、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記コーティングおよび/または第2コーティングが、コーティングを備える液体中に担体を浸漬することによって加えられる、請求項28〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
触媒先駆物質溶液を、前記担体の第1表面上に通過させ、浸透性溶液を、前記担体の反対側表面上に通過させ、触媒または触媒先駆物質を、浸透プロセスを介して担体上に沈着させることによって、前記膜の表面へ触媒を加えるステップを含む、請求項28〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
更に、担体を乾燥するステップ、および/または担体を加熱および燃焼するステップも含む、請求項28〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
第1チャンバと、第2チャンバと、前記第1チャンバと前記第2チャンバとを仕切る膜とを備える装置であって、
前記膜が、担体および触媒を備え、
前記膜が、第1チャンバから第2チャンバへ、前記膜を通る第1反応体の通過を可能にするようになっており、
前記第1反応体が、第2反応体と反応するように、前記通過の時に触媒によって十分なエネルギーが付与される、装置。
【請求項2】
前記担体が、250℃を超える温度で機能するようになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記担体が、無機担体を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記担体が、細孔を備えており、前記担体の1つの表面の方へ向かって、平均細孔半径の漸変がある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記膜が、第2反応体との反応前にイオン種を形成することなく、第1反応体の分子を活性化するようになっている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記担体が粗面をともなった層を備え、該層が前記担体の他の部分の屈曲性と比べて高い屈曲性を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
比較的粗い表面が、前記担体の外側表面上に設けられている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
フラックス制御層が前記担体上に設けられている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
フラックス制御層が前記担体の第1表面上に設けられ、粗面を有する層が、前記担体の反対側表面上に設けられている、請求項6または7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記フラックス制御層が、触媒の一部分をその中に保持し、かつ前記膜を通る第1反応体の通過を制御するようになっている無機多孔質層を備える、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記フラックス制御層が、シリカおよびガンマアルミナからなる群から選択される、請求項8〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記触媒が金属触媒を備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記金属触媒が、ロジウム、ルテニウム、およびニッケルからなる群から選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記膜が、円筒の形状で備えられている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記膜が、1つ以上の支柱を備える、請求項1〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記担体が、アルファアルミナを備える、請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
水素ガスを生成する方法であって、
担体および触媒を備える膜を設けるステップと、
第1チャンバから第2チャンバに、前記膜を通って第1反応体を通過させるステップと、
前記膜を通過する際に、前記反応体を触媒と接触させるステップと、
第2反応体と反応させるように、第1反応体に十分なエネルギーを付与するステップと、
第1反応体と第2反応体とを反応させて、水素ガスを生成するステップと、
を備える方法。
【請求項18】
第1反応体へ付与されたエネルギーが、第2反応体との反応前に、イオン種を形成することなく第1反応体の分子を活性化する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
温度が500℃以上である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
温度が700℃〜800℃である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第1反応体が、酸素および炭化水素のうちの1つであり、第2反応体が、酸素および炭化水素のうちの他方のものである、請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
酸素および炭化水素が、第1反応体が、第1チャンバから第2チャンバに、前記膜を通って通過してしまうまで互いに接触しないようにした、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記炭化水素が、通常は気体の炭化水素を備える、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
第1チャンバ内の圧力が第2チャンバ内の圧力よりも大きい、請求項20〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
水素に加えて、一酸化炭素が形成される、請求項20〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
一酸化炭素と水素とが、更に反応させられ、フィッシャー−・トロプシュ型反応において、通常は液体の炭化水素を生成する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記水素が、燃料としての使用のために回収される、請求項20〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
膜を調製する方法であって、
担体を設けるステップと、
触媒を担体へ添加するステップと、
を備える方法。
【請求項29】
前記担体が無機担体である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
更に、前記担体の表面の1つへコーティングを加えるステップを含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記コーティングが、担体上に粗い表面を生成し、前記表面が、担体の他の部分の屈曲性と比べて高い屈曲性を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記コーティングが、金属酸化物または金属酸化物先駆物質を備える、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記金属酸化物または先駆物質が、第IV族金属酸化物または第IV族金属酸化物先駆物質を備える、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第IV族金属酸化物または先駆物質が、TiO2またはTiO2先駆物質を備える、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記コーティングが、前記膜上にフラックス制御層を生成する、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
フラックス制御層である第2コーティングもまた、担体に加えられる、請求項30〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記フラックス制御層が、ベーマイトゾルへの暴露によって、前記膜に加えられる、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記コーティングおよび/または第2コーティングが、コーティングを備える液体中に担体を浸漬することによって加えられる、請求項28〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
触媒先駆物質溶液を、前記担体の第1表面上に通過させ、浸透性溶液を、前記担体の反対側表面上に通過させ、触媒または触媒先駆物質を、浸透プロセスを介して担体上に沈着させることによって、前記膜の表面へ触媒を加えるステップを含む、請求項28〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
更に、担体を乾燥するステップ、および/または担体を加熱および燃焼するステップも含む、請求項28〜39のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2007−527305(P2007−527305A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506186(P2006−506186)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001787
【国際公開番号】WO2004/098750
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(505229922)ザ ロバート ゴードン ユニヴァーシティー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001787
【国際公開番号】WO2004/098750
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(505229922)ザ ロバート ゴードン ユニヴァーシティー (3)
【Fターム(参考)】
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