膜電位変化検出装置および膜電位変化検出方法
【課題】ラベルすることなく非侵襲的な方法で細胞の膜電位の変化を検出することが可能な膜電位変化検出装置および膜電位変化検出方法を提供する。
【解決手段】膜電位変化検出装置1は、反射干渉計測用光源106と、細胞101が載置された透明部材102aを保持する保持部103と、反射干渉計測用光源106から放射され、透明部材102aを介して細胞101から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉検出用カメラ110と、反射干渉画像から細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータdIを算出し、当該パラメータdIの変化に基づいて細胞101の膜電位の変化を検出する解析部202と、を備えている。
【解決手段】膜電位変化検出装置1は、反射干渉計測用光源106と、細胞101が載置された透明部材102aを保持する保持部103と、反射干渉計測用光源106から放射され、透明部材102aを介して細胞101から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉検出用カメラ110と、反射干渉画像から細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータdIを算出し、当該パラメータdIの変化に基づいて細胞101の膜電位の変化を検出する解析部202と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜電位変化検出装置および膜電位変化検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞のイオンチャンネルを標的とした治療薬の開発は、創薬の開発において重要度を増している。従来の生細胞を用いたアッセイにおいてはパッチクランプ電極を用いた膜電位の測定や膜電位感受性色素を用いた光学的な膜電位の計測などが用いられてきた。例えば、非特許文献1には、蛍光色素によって細胞を染色し、蛍光干渉コントラスト顕微鏡画像を用いて基板に載置された当該細胞と基板との距離(細胞の接着度)を求めたり、膜電位感受性色素によって細胞を染色し、光学的に細胞の膜電位の変化を求めたりする技術が開示されている。また、非特許文献2には、FRET色素によって細胞を染色(着色)し、FRET現象を用いて細胞の膜電位の変化を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Raimund Gleixner and PeterFromherz, “The Extracellular Electrical Resistivity in Cell Adhesion.” ,Biophysical Journal , Volume90, 2600-2611, (2006)
【非特許文献2】Jesus E Gonzalez and Roger YTsien, “Improved indicators of cell membrane potential that use fluorescenceresonance energy transfer” , Chemistry & Biology,1997,Vol.4, No.4,Page.269-277
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細胞の膜電位変化を測定するためのラベル剤である蛍光色素を細胞に取り込ませる必要がある。また、上記の測定には強い励起光を照射する必要があり、生細胞の状態に影響を及ぼす。生細胞の正常な状態を保って測定するには色素濃度や励起光照射強度の最適な条件を試行錯誤により見極める必要がある。また今後、幹細胞をもとにヒト細胞が薬効評価の対象として利用が拡大するとこれらの細胞の中にはダメージを受けやすい細胞も多く、ラベルした測定はますます難しくなる。したがって、できるだけラベルをせず、細胞を培養した状態からできるだけ手を加えずに膜電位を非侵襲に測定するラベルフリー技術が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたもので、ラベルすることなく非侵襲的な方法で細胞の膜電位の変化を検出することが可能な膜電位変化検出装置および膜電位変化検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の膜電位変化検出装置は、反射干渉計測用光源と、細胞が載置された透明部材を保持する保持手段と、反射干渉計測用光源から放射され、透明部材を介して細胞から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉撮像手段と、反射干渉画像から細胞と透明部材との接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞の膜電位の変化を検出する解析手段と、を備えている。
【0007】
また、本発明の膜電位変化検出方法は、反射干渉撮像手段が、反射干渉計測用光源から放射され、細胞が載置された透明部材を介して細胞から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉撮像ステップと、解析手段が、反射干渉画像から細胞と透明部材との接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて、細胞の膜電位の変化を検出する解析ステップと、を含んでいる。
【0008】
このような発明によれば、反射干渉計測用光源、保持手段、反射干渉撮像手段および解析手段を備えることにより、細胞からの反射光をもとに細胞と透明部材との接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞の膜電位の変化を検出している。発明者らは、細胞が載置された透明部材と細胞との接着度合と、細胞の膜電位の変化との間に相関関係があることを発見した。本発明は、発見されたこのような相関関係を利用して、細胞の膜電位の変化を、細胞と透明部材との接着距離(接着度合)の変化として捉えているところに特徴がある。当該接着距離に基づく細胞と透明部材との接着に関するパラメータは非侵襲的な方法で得られるので、細胞の膜電位の変化をラベルすることなく非侵襲的に検出することが可能となる。
【0009】
また、本発明では、解析手段は、脱分極になると細胞が透明部材から離れ、過分極になると細胞が透明部材に近づくという相関関係に基づいて細胞の膜電位の変化を検出してもよい。この発明によれば、発明者らが発見した上記相関関係に基づいて、細胞が脱分極および過分極になったときの細胞の膜電位の変化を検出することができる。
【0010】
また、本発明では、反射干渉計測用光源から放射され細胞から反射される光が集光される対物レンズを更に備えており、対物レンズと透明部材とは空気層を介して配置されていてもよい。この発明によれば、対物レンズの操作性を改善することができるので、細胞が載置された透明部材全体をスキャンしながら撮像することが容易となる。これにより、細胞の膜電位の変化を検出する際のスループットを向上させることができる。
【0011】
また、本発明では、透明部材の載置面とは反対側の面は、反射防止コートが施されていてもよい。この発明によれば、ドライ系の対物レンズを用いる場合であっても、高いコントラストで細胞接着面の反射干渉画像を得ることができる。
【0012】
また、本発明では、対物レンズの反射干渉計測用光源側の開口絞りと共役な位置に配置されているリング状のスリットを更に備えていてもよい。この発明によれば、リング状に開口したスリットを反射干渉計測用光源からの照明光が通り、照明光は対物レンズの中心は通らず周辺を通って照明され、角度のついた高いNAの光のみを使って細胞が照明されるため、細胞上部の溶液からの反射光の影響を低減することができる。また、リング状のスリットを用いることにより、対物レンズ内部の反射による背景光を低減することもできる。
【0013】
また、本発明では、定量位相計測用光源と、定量位相計測用光源から放射され細胞を透過する光を撮像することにより、定量位相画像を生成する定量位相撮像手段と、を更に備えていてもよい。この発明によれば、定量位相計測用光源と定量位相撮像手段とを備えることにより、個々の細胞の光学的厚さ、体積および面積などの情報を取得している。定量位相撮像手段から取得できる個々の細胞の光学的厚さ、体積および面積などの情報を用いることにより、細胞と透明部材との接着に関するパラメータのバリエーションを増やすことが可能となる。
【0014】
また、本発明の膜電位変化検出装置では、反射干渉画像と定量位相画像との間で、空間的な位置を一致させることにより、両画像の位置合わせを行う画像位置合わせ手段と、定量位相画像に基づき、細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、輪郭抽出手段が抽出した輪郭を反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用手段と、を更に備えており、解析手段は、輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、細胞と透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出してもよい。
【0015】
また、本発明の膜電位変化検出方法では、反射干渉撮像手段が、反射干渉計測用光源から放射され、細胞が載置された透明部材を介して細胞から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉撮像ステップと、定量位相撮像手段が、定量位相計測用光源から放射され、細胞を透過する光を撮像することにより、定量位相画像を生成する定量位相撮像ステップと、画像位置合わせ手段が、反射干渉画像と定量位相画像との間で、空間的な位置を一致させることにより、両画像の位置合わせを行う画像位置合わせステップと、輪郭抽出手段が、定量位相画像に基づき、細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出ステップと、輪郭適用手段が、輪郭抽出手段が抽出した輪郭を反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用ステップと、解析手段が、輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、細胞と透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出する解析ステップと、を含んでいてもよい。
【0016】
これらの発明によれば、画像位置合わせ手段と、輪郭抽出手段と、輪郭適用手段とを備えることにより、定量位相画像に基づき細胞の輪郭を抽出し、当該輪郭を反射干渉画像と重ね合わせている。これにより、反射干渉撮像手段および定量位相撮像手段により取得される画像の中に複数の細胞が含まれている場合には、個々の細胞について膜電位の変化を検出することが可能となる。
【0017】
また、本発明では、反射干渉計測用光源から放射される光の光量を調整する反射干渉光量調整手段と、定量位相計測用光源と、定量位相計測用光源から放射される光の光量を調整する定量位相光量調整手段と、を更に備えており、反射干渉撮像手段は、反射干渉計測用光源から放射され、細胞から反射される反射光を撮像することにより、反射干渉画像を生成するとともに、定量位相計測用光源から放射され、細胞を透過する透過光を撮像することにより、定量位相画像を生成し、反射干渉画像を生成する際に、定量位相光量調整手段が定量位相計測用光源からの光を遮光し、反射干渉撮像手段が反射光を撮像し、定量位相画像を生成する際に、反射干渉光量調整手段が反射干渉計測用光源からの光を遮光し、反射干渉撮像手段が透過光を撮像してもよい。この発明によれば、定量位相計測用光源と定量位相撮像手段とを備えることにより、個々の細胞の光学的厚さ、体積および面積などの情報を取得している。定量位相撮像手段から取得できる個々の細胞の光学的厚さ、体積および面積などの情報を用いることにより、細胞と透明部材との接着に関するパラメータのバリエーションを増やすことが可能となる。
【0018】
また、本発明の膜電位変化検出装置では、反射干渉光量調整手段は、反射干渉計測用光源から放射される光の光量を調整するシャッタであり、定量位相光量調整手段は、定量位相計測用光源から放射される光の光量を調整するシャッタであってもよい。この発明によれば、光の光量を調整するための具体的な手段が提供される。
【0019】
また、本発明の膜電位変化検出装置では、反射干渉光量調整手段は、反射干渉計測用光源のON/OFFによる切り替えにより、反射干渉計測用光源から放射される光の光量を調整し、定量位相光量調整手段は、定量位相計測用光源のON/OFFによる切り替えにより、定量位相計測用光源から放射される光の光量を調整してもよい。この発明によれば、光の光量を調整するための具体的な方法が提供される。この方法は、光源がLED(発光ダイオード)やLD(レーザーダイオード)、SLD(スーパールミネッセントダイオード)などの半導体型光源である場合に特に有用である。
【0020】
また、本発明の膜電位変化検出装置では、定量位相画像に基づき、細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、輪郭抽出手段が抽出した輪郭を反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用手段と、を更に備えており、解析手段は、輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、細胞と透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出してもよい。
【0021】
また、本発明の膜電位変化検出方法では、撮像手段が、反射干渉計測用光源から放射され、細胞から反射される反射光を撮像することにより、反射干渉画像を生成するとともに、定量位相計測用光源から放射され、細胞を透過する透過光を撮像することにより、定量位相画像を生成する撮像ステップと、輪郭抽出手段が、定量位相画像に基づき、細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出ステップと、輪郭適用手段が、輪郭抽出手段が抽出した輪郭を反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用ステップと、解析手段が、輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、細胞と透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出する解析ステップと、を含んでおり、反射干渉画像を生成する際に、定量位相光量調整手段が定量位相計測用光源からの光を遮光し、撮像手段が反射光を撮像し、定量位相画像を生成する際に、反射干渉光量調整手段が反射干渉計測用光源からの光を遮光し、撮像手段が透過光を撮像してもよい。
【0022】
これらの発明によれば、画像位置合わせ手段と、輪郭抽出手段と、輪郭適用手段とを備えることにより、定量位相画像に基づき細胞の輪郭を抽出し、当該輪郭を反射干渉画像と重ね合わせている。これにより、反射干渉撮像手段および定量位相撮像手段により取得される画像の中に複数の細胞が含まれている場合には、個々の細胞について膜電位の変化を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の膜電位変化検出装置および膜電位変化検出方法によれば、ラベルすることなく非侵襲的な方法で細胞の膜電位の変化を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る膜電位変化検出装置の全体構成を示す概要図である。
【図2】第1実施形態に係る処理部のハードウェア構成図である。
【図3】容器の構成を示す断面図である。
【図4】反射防止コートによる効果を示すための図である。
【図5】反射防止コートによる効果を示すための図である。
【図6】波長幅の違いによる反射干渉画像の違いを示す図である。
【図7】処理部の機能および動作を示すフローチャートである。
【図8】変化率の時間的変化の一例を示す図である。
【図9】測定例1における反射干渉画像の変化を示す図である。
【図10】測定例1における変化率の時間的変化を示すグラフである。
【図11】測定例1における濃度とピーク時の変化率との関係を示すグラフである。
【図12】測定例2における反射干渉画像の変化を示す図である。
【図13】測定例2における変化率の変化を示すグラフである。
【図14】測定例2における濃度とピーク時の変化率との関係を示すグラフである。
【図15】第2実施形態に係る膜電位変化検出装置の全体構成を示す概要図である。
【図16】第2実施形態に係る処理部の機能および動作を示すフローチャートである。
【図17】第2実施形態に係る画像位置合わせに用いる標本を示す図である。
【図18】第2実施形態に係る輪郭抽出処理および輪郭適用処理の一例を示す図である。
【図19】第3実施形態に係る膜電位変化検出装置の全体構成を示す概要図である。
【図20】参照光カット装置として機能する参照光シャッタを示す図である。
【図21】定量位相撮像および反射干渉撮像にかかるタイミングチャートに示す図である。
【図22】第3実施形態に係る処理部の機能および動作を示すフローチャートである。
【図23】第3実施形態に係る輪郭抽出処理および輪郭適用処理の一例を示す図である。
【図24】第3実施形態の変形例に係る膜電位変化検出装置の全体構成を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明にかかる膜電位変化検出装置および膜電位変化検出方法の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
第1実施形態では、反射干渉の計測から得られる反射干渉画像を利用して細胞の膜電位の変化を検出する装置について説明を行う。第2実施形態と第3実施形態では、反射干渉の計測と同時に定量位相の計測を行い、反射干渉画像と定量位相画像とを取得し、これらの両画像を利用して細胞の膜電位の変化を検出する方法について説明を行う。
【0027】
[第1実施形態]
(膜電位変化検出装置1の全体構成)
まず、本発明の実施形態に係る膜電位変化検出装置1の全体構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、膜電位変化検出装置1の全体構成を示す概要図である。図1に示すように、膜電位変化検出装置1は、画像取得部10および処理部20から構成されている。
【0028】
画像取得部10は、保持部103(特許請求の範囲の「保持手段」に相当)、対物レンズ104、反射干渉計測用光源106、リング状のスリット107、ハーフミラー108、反射干渉検出用カメラ110(特許請求の範囲の「反射干渉撮像手段」に相当)、XYステージ115およびディスペンサ117を備えている。処理部20は、画像受信部201、解析部202(特許請求の範囲の「解析手段」に相当)および記憶部203を備えている。
【0029】
保持部103は、透明部材102aで形成され、細胞101が収容(載置)された容器102を静置(保持)する。対物レンズ104は、反射干渉計測用光源106から放射され細胞101から反射される光を集光する。対物レンズ104と透明部材102aとは、空気層を介して配置されている。反射干渉計測用光源106は照明光を放射する。リング状のスリット107は輪体照明を行う。ハーフミラー108は、所定の比率で入射光を反射または透過する。反射干渉検出用カメラ110は、反射干渉計測用光源106から放射され、透明部材102aを介して細胞101から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する。XYステージ115は測定領域を切り換える。ディスペンサ117は細胞101に薬液を投与する。画像受信部201は、反射干渉検出用カメラ110が出力した反射干渉画像を受信する部分である。解析部202は、反射干渉画像から細胞と透明部材との接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータに基づいて細胞の膜電位の変化を検出する部分である。本実施形態では、解析部202は、脱分極になると細胞101が透明部材102aから離れ、過分極になると細胞101が透明部材102aに近づくという相関関係に基づいて、細胞101の膜電位の変化を検出している。記憶部203は、解析部202によって算出されるパラメータや、反射干渉検出用カメラ110から出力される画像を記憶する部分である。
【0030】
図2は、上述した機能的構成要素を備える処理部20のハードウェア構成図である。図2に示すように、処理部20は、物理的には、CPU21、ROM22及びRAM23などの主記憶装置、キーボード及びマウスなどの入力デバイス24、ディスプレイなどの出力デバイス25、画像取得部10との間でデータの送受信を行うためのネットワークカードなどの通信モジュール26、ハードディスクなどの補助記憶装置27などを含む通常のコンピュータシステムとして構成される。処理部20の各機能は、CPU21、ROM22、RAM23などのハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU21の制御の元で入力デバイス24、出力デバイス25、通信モジュール26を動作させると共に、主記憶装置22,23や補助記憶装置27におけるデータの読み出しおよび書き込みを行うことで実現される。
【0031】
(膜電位変化検出装置1の詳細説明)
(画像取得部10の説明)
再び、図1を参照しながら説明する。保持部103は、計測中の細胞101の状態を維持するために、細胞101の状態に適した温度に維持することが望ましい。また、細胞101の測定が長時間に及ぶ場合には、保持部103は、細胞101の生育、状態維持に適した温度、湿度、炭酸ガス濃度などが整った環境に維持することが望ましい。
【0032】
図3は、容器102の構成を示す断面図である。保持部103に保持される容器102は、細胞101が載置される部分が透明部材102aによって形成されている。容器102としては、例えばディッシュやマイクロプレートが例示される。容器102における細胞101の載置面102bは帯電されており、本実施形態においては+に帯電されている。
【0033】
容器102は、細胞101の載置面102bの反対側(容器102の観察領域の対物レンズ104側)102cに反射防止コート102dが施されている。この反射防止コート102dは、反射干渉画像を取得する上で著しい効果を発揮する。できるだけ多くの細胞101を計測するためには、低倍率の対物レンズを利用することが望ましい。しかし、低倍率の対物レンズは開口数(NA:Numerical Aperture)が低く、通常油浸や水浸ではなく、ドライ系の対物レンズが一般的である。しかしながら、反射干渉画像において、ドライ系の対物レンズを用いると、対物レンズから出射した照明光は細胞の入っている容器の底面で大きく反射する。これは空気と容器の底面のガラスなどの屈折率差が大きいためである。そのため、大幅に背景光が増加して細胞の接着面の反射干渉画像を見ることはほとんど困難となる。従来、反射干渉観察に、油浸や水浸の対物レンズが用いられてきた理由はここにある。
【0034】
そこで、本実施形態の容器102では、細胞101が入れられた容器102の細胞101の載置面102bの反対側102cに反射防止コート102dを施すことによって、ドライ系の対物レンズでの反射干渉画像の取得を可能にした。図4に示すように、反射防止コート102dをしていない状態で対物レンズから照射された照明光は空気とガラスとの界面で4%程度の反射があるが、ガラス底面に照明光の波長範囲(420nm〜720nm)において反射率Rを0.5%程度に抑えた反射防止コート処理を行うことによって、背景光を1/8以下に低減することができる。このため、本実施形態によれば、ドライ系の対物レンズを用いる場合であっても、高いコントラストで細胞接着面の反射干渉画像を得ることができる。
【0035】
図5に容器102の底面102cに反射防止コート102dを施した場合のドライ系の対物レンズを用いた反射干渉画像を示す。図5(A)のように反射防止コート102dを施さないと、容器102の底面102cからの反射が大きいために、反射干渉画像のコントラストは極めて低下してしまう。これに対して、図5(B)のように底面102cに反射防止コート102dを施した容器102を用いることによって、ドライ系の対物レンズでも良好なコントラストを得ることができる。
【0036】
図1に戻り、対物レンズ104は、上述したようにできるだけ多くの細胞を視野に入れるため、10倍または20倍の低倍率でかつ開口数のより大きい対物レンズであることが望ましい。また、対物レンズ104は、水浸や油浸ではなく、上述したようにドライ系の対物レンズであることが望ましい。本実施形態では、このようなドライ系の対物レンズを使用することにより、対物レンズ104の操作性が改善されるので、容器102全体をスキャンしながら撮像することが可能となる。これにより、細胞101の膜電位の変化を検出する際のスループットを向上させることが可能となる。また、対物レンズ104には、図示しないフォーカス機構が設けられており、後述する反射干渉検出用カメラ110にて得られた画像に基づいてオートフォーカスを実行することができる。
【0037】
反射干渉計測用光源106は、ハロゲンランプやキセノンランプなどの広い波長範囲にわたって放射感度を有する光源が望ましい。従来、コントラストを得るためにある程度波長幅を制限したバンドパスフィルタを用いた照明光が利用されていた。しかしながら、バンドパスされた照明光では、干渉性が高く、細胞の接着面とは関係のない細胞の上部の細胞膜と培養液との界面からの反射による干渉縞が映り込むことがしばしばある。本実施形態では、波長幅の広く干渉性の低い低コヒーレント光を使用している。広い波長幅の照明光を用いることにより、干渉が起きる距離を狭くすることができ、細胞の基板への接着面に限定した反射干渉画像を取り出すことが可能となる。また、ハロゲンランプやキセノンランプなどの広い波長範囲にわたって放射感度を有する光源であれば、700nm〜2500nmの近赤外領域の光を照明光として用いることが可能であり、細胞101に対する毒性を低減できる。なお、反射干渉計測用光源106としては、LED(発光ダイオード)や半導体レーザー(レーザーダイオード)、SLD(スーパールミネッセントダイオード)などの光源を用いてもよい。
【0038】
図6に420nm〜750nmの波長幅の広い照明光を用いた場合と480nm、530nmを中心波長として波長幅30nm程度に狭い波長範囲でバンドパスされた照明光を用いた場合の反射干渉画像の違いを示す。図6(A)と図6(B)のように狭い波長範囲でバンドパスされた照明光では、細胞の接着面ではない細胞の上部の細胞膜と培養液との界面からの反射が干渉縞のように重なって観察されるが、図6(C)のように波長幅の広い照明光を用いることにより、細胞の上部からの反射光による干渉は観察されず、細胞の接着面により限定した情報のみを取り出すことが可能である。
【0039】
本実施形態の反射干渉計測用光源106は、広い放射波長を有するハロゲンランプを光源として用い、出力光に420nmから800nm程度の可視から近赤外の波長域において任意の広い波長幅のバンドパスフィルタを用いている。中心波長が500nmから1000nmで、半値全幅が100nm以上のバンドパスされた光を用いると、細胞の接着面に限定した反射干渉画像を取り出すことができる。基板に接着している細胞と基板との距離は、光軸方向に最大でも1μm以下であると考えられることから、細胞と基板の接着面の情報のみを特異的に取り出すためには反射干渉の過干渉距離を1μm以下になるようにすることが好ましいと考えられる。そこで、反射干渉用の照明光は、細胞に悪影響を与える紫外線領域および熱線領域を除外したうえで、白色光または近赤外光の領域にて波長幅が数百nm程度になるように光学フィルタにてバンドパスされた光を照射する。このように、波長幅を広げることにより光のコヒーレンス長を短くし、可干渉距離を短くすることによって、細胞と容器底面との接着領域から得られる反射光の干渉のみを取り出すことができる。例えば中心波長600nm、波長幅200nmの広帯域にバンドパスされた光を用いると、可干渉距離は500nm程度に短くすることができ、細胞の接着面付近の500nm程度の距離における干渉のみを取り出すことができる。
【0040】
図1に戻り、リング状のスリット107は、照明光の光束の対物レンズ104の瞳と共役の位置に配置され、輪帯照明を行うことが望ましい。一般に、統計的に優位なデータを取得するためにはできるだけ多くの細胞について計測を行う必要がある。そのため、できるだけ低倍率の対物レンズを用いて一度に広い視野を計測することが望まれる。しかしながら、低倍率の対物レンズはNAが低く、NAの低い照明光は標本に垂直に照射される成分が多く、細胞上部に存在する溶液と空気の界面で反射し、反射光によって細胞が照明されるという現象を引き起こす。これによって接着面とは無関係な細胞の形態像が観察側に含まれるようになる。また、対物レンズの中心部分を通過した照明光は、対物レンズ内部で反射され、反射光が観察側に多く含まれて高い背景光となり、接着面の反射干渉画像のコントラストを低下させる原因となる。
【0041】
本実施形態に係る膜電位変化検出装置1の反射干渉計測において、低いNAの対物レンズ104を使う場合は、対物レンズ104の反射干渉計測用光源106側の開口絞りと共役な位置にリング状のスリット107を設ける。リング状に開口したスリット107を反射干渉計測用光源106からの照明光が通り、照明光は対物レンズ104の中心は通らず周辺を通って照明され、角度のついた高いNAの光のみを使って細胞101が照明されるため、細胞101上部の溶液からの反射光の影響を低減することができる。また、リング状のスリット107を用いた照明は、低NAの対物レンズ104のみならず、広く対物レンズ104内部の反射による背景光を低減することができる。リング状に開口したスリット107は使用する対物レンズ104の瞳径に適合して対物レンズ104ごとに変えられるように、使用する対物レンズ104に適合したリング状のスリット107が円盤上に複数個取り付けられて、必要に応じて、円盤を回転させることによって、使用者がリング状のスリット107を選択できるように構成されている。なお、リング状のスリット107を、対物レンズ104の瞳そのものの存在する位置に配置することでも同じ効果を得ることができる。
【0042】
次に、反射干渉計測について述べる。図1に示すように、反射干渉計測用光源106から放射された照明光は、リング状のスリット107を通過して、ハーフミラー108にて反射して、対物レンズ104を通って、測定対象となる細胞101を入れた容器102の底面側から入射する。ハーフミラーに限らず、照明光強度が十分ある場合には5:95(反射:透過)や20:80(反射:透過)にするなど、反射比率を低減させたビームスプリッタを用いてもよい。また、波長によって反射率・透過率が異なるダイクロイックミラーを用いてもよい。容器102の底面の細胞101の接着面から得られる反射光は細胞101の接着距離に応じて干渉を生じ、得られた反射干渉光は再び対物レンズ104にて集光され、ハーフミラー108を介して、反射干渉検出用カメラ110にて撮像される。このようにして、容器102の底面の細胞101の接着面から反射した光は、細胞101の接着距離に応じて干渉した光の振幅が異なり、明暗のコントラストとして撮影される。
【0043】
ここで、反射干渉の原理について簡単に説明する。一般に、反射干渉計測においては照明光を細胞の接着している基板の裏面側から入射し、基板と培養液との界面からの反射光とその上部の培養液と細胞底面の界面からの反射光が干渉することにより細胞と基板との距離に応じた明暗のコントラストを得ることができる。可視光の照明においては、おおむね細胞と基板との距離が数十nm以下に近づいた状態では暗く撮影される。一方、細胞と基板との距離が100nmから200nm程度に離れた状態では明るく撮影される。
【0044】
本実施形態の膜電位変化検出装置1では、できるだけ多くの細胞101を測定したり、異なる試薬に対する応答を測定したりするために、観察する位置を移動させる機構を有していてもよい。細胞101への影響を少なくするため、および定量位相計測において液面の揺れを抑えるために、細胞101を入れた容器は静止したままで、照明光学系と観察光学系を一体とした画像取得部10の本体をXY平面上で移動させることによって観察位置を変える方法が望ましい。これと合わせて、観察しているXYの空間平面座標を画像に記録することが望ましい。本実施形態では、稼動距離が容器102の観察範囲を十分にカバーしており、かつ位置決め精度が数十μm以下(好ましくは1μm以下)のXYステージ115が備えられている。
【0045】
(処理部20の説明)
図7のフローチャートを更に参照しながら、処理部20の機能および動作について説明する。最初に、反射干渉検出用カメラ110にて細胞101の接着面の反射干渉画像が得られる(ステップS101、特許請求の範囲の「反射干渉撮像ステップ」に相当)。容器102の底面の基板上に接着している細胞101の容器102の底面の基板からの距離に応じて干渉光の振幅が異なり、反射干渉画像は明暗のコントラストとして撮影される。次に、反射干渉画像の視野内の反射光のシェーディングを補正する。あわせて細胞101のない背景の値が時間的に変動しないように、時間ごとに背景部のオフセット補正を行う。これらの画像演算補正によって、空間的、時間的に変動の少ない反射干渉画像を得ることができる。
【0046】
反射干渉検出用カメラ110は、例えば1秒間隔で反射干渉画像を取得している。なお、反射干渉画像の取得間隔は、細胞101の膜電位の変化の速度に合わせて適宜調節することが好ましい。そして、反射干渉検出用カメラ110が画像の取得を開始した一定時間の後、ディスペンサ117の薬液分注操作を行い、細胞101の入っている溶液に目的の薬液を目的の濃度になるように投与する。
【0047】
解析部202は、このようにして継続的に得られる反射干渉画像を用いて細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータを算出する(ステップS102、特許請求の範囲の「解析ステップ」に相当)。本実施形態では、細胞101の膜電位の変化を評価するパラメータ(特許請求の範囲の「接着に関するパラメータ」に相当)として、「平均輝度の変化率」を算出している。解析部202は、反射干渉画像から細胞101の接着している領域と細胞101が接着していない領域とを区別して、細胞101の接着している領域を特定し、当該領域(以下、「計測領域」と示す)の平均輝度を計測する。
【0048】
解析部202は、反射干渉検出用カメラ110から順次出力されてくる反射干渉画像を画像受信部201が受信すると、当該反射干渉画像における計測領域の平均輝度I(t)を算出し、薬液投与前に予め取得されている計測領域の平均輝度(以下、「基礎となる平均輝度I(base)」と示す)に対する変化率dIを算出する(ステップS103、特許請求の範囲の「解析ステップ」に相当)。なお、基礎となる平均輝度は、例えば薬液投与前に取得された計測領域の反射干渉画像から得られる平均輝度を用いてもよいし、細胞の種類ごとに予め初期値として記憶されている初期輝度を用いてもよい。このような基礎となる平均輝度は、記憶部203に記憶されており、解析部202は記憶部203から適時、基礎となる平均輝度を読み出して、変化率dIを算出する。変化率dIは、以下の式により算出される。
【0049】
変化率dI(t)={I(t)−I(base)}/I(base)
I(t)=反射干渉の平均輝度(背景補正された値)
I(base)=薬液投与前のI(t)の平均値
【0050】
解析部202は、上記式によって算出される変化率dIに基づいて細胞101の膜電位の変化を検出する。すなわち、解析部202は、所定の変化率dIが算出されたとき、細胞101における膜電位に何らかの変化が検出されたと評価している。また、解析部202は、上記式によって算出される薬液投与前の平均的な輝度に対する変化率dI(%)を時間軸にプロットした、例えば図8(A)や図8(B)に示すようなグラフを出力してもよい。すなわち、薬液投与前の輝度に対する変化率dI(%)をプロットしたグラフを、細胞101の膜電位の変化を示したグラフとして出力してもよい。
【0051】
また、本実施形態の膜電位変化検出装置1では、脱分極になると細胞101が透明部材102aから離れ反射干渉画像が明るくなり、過分極になると細胞101が透明部材に近づき反射画像が暗くなるという相関関係に基づいている。したがって、変化率dIのプラス方向への変化により細胞101の膜電位が脱分極になったことを検知し、変化率dIのマイナス方向への変化により細胞101の膜電位が過分極になったことを検知することができる。また、薬液投与後の一定時間内におけるピーク(脱分極の場合は最大値、過分極の場合は最小値)を求めて、当該数値の大小から細胞101に投与した薬液濃度に対する判定も行うことができる。なお、この点については後段の測定例1および2の欄で述べる。
【0052】
膜電位変化検出装置1は、ひとつのウエルの解析が終了すると、次の計測を行うべきウエルの位置にXYステージ115を移動させ、細胞101の載置面102bに焦点を合わせて再び計測を開始する。これを繰り返し、各種の薬剤に対して細胞101の反応を測定する。
【0053】
(測定例1)
ここでは、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)が収容された容器102を保持部103にセットし、当該CHO細胞に脱分極を引き起こすKCl(薬品:塩化カリウム)を投与した場合に、反射干渉検出用カメラ110により取得される反射干渉画像と、解析部202により算出される平均輝度の変化率dI(パラメータ)とについて検証を行った。
【0054】
まず、反射干渉検出用カメラ110にて取得される、CHO細胞にKClを投与する前、KClを投与して5分後、KClを投与して10分後、およびKClを投与して15分後の反射干渉画像について検証を行った。これによると、図9に示されるようにCHO細胞にKClを投与した後に、CHO細胞が載置されている透明部材から離れる離反現象が起きて、反射干渉画像が明るくなっていることが観察できた(5分後の画像)。これにより、本実施形態の膜電位変化検出装置1では、細胞101の膜電位の変化を評価するパラメータ(接着に関するパラメータ)として、例えば「平均輝度の変化率dI」を算出し、当該パラメータの変化を検出することで、細胞101の膜電位が脱分極になったことを検出できることが確認できた。
【0055】
次に、当該CHO細胞に、濃度の異なる(6.25mM、25mM、50mM、100mM)KClをそれぞれ投与し、解析部202による平均輝度の変化率dI(パラメータ)の算出をそれぞれ行った。この結果、図10に示されるようなグラフを得た。これによれば、細胞101の膜電位が脱分極になると、一過的に平均輝度の変化率dIがプラス方向に変化することが確認できた。これにより、本実施形態の膜電位変化検出装置1では、図10に示すように、解析部202によって一過的に平均輝度の変化率dIがプラス方向に大きくなることが検出できるので、細胞101の膜電位が脱分極になったことを検出することができる。
【0056】
また、図10のグラフからは、投与したKClの濃度に比例して平均輝度の変化率dIがプラス方向に最大振幅が大きくなることが確認できた。そこで、平均輝度の変化率dIのピーク時(図10において5分少し経過したとき)におけるKClの濃度と平均輝度の変化率dIとの関係をグラフ化すると、図11に示すような、KCl濃度が6.25mM、25mM、50mM、100mMと高くなるにつれ、ピーク時の平均輝度の変化率も+8%、+35%、+55%、+95%と順に高くなる結果を得た。これにより、ピーク時の平均輝度の変化率と投与した薬品の濃度とには依存関係があることが確認できた。本実施形態の膜電位変化検出装置1では、投与した薬品の濃度に比例(濃度に依存)した平均輝度の変化率dIが算出されるので、投与した薬品の濃度ごとに細胞101の膜電位の変化を評価することができる。このため、細胞101に対する薬効評価をする場合にも本実施形態の膜電位変化検出装置1を利用することが可能となる。
【0057】
(測定例2)
ここでは、MIN−6膵β細胞株(マウス由来膵β細胞株)を用いたカルシウムイオン依存性カリウムチャンネル(以下、「試料細胞」と示す)に作動性化合物を投与した場合に、反射干渉検出用カメラ110により取得される反射干渉画像と、解析部202により算出される平均輝度の変化率dI(パラメータ)とについて検証を行った。
【0058】
まず、反射干渉検出用カメラ110にて取得される、試料細胞に作動性化合物を投与する前、作動性化合物を投与した直後、および作動性化合物を投与して5分後の反射干渉画像について検証を行った。これによると、図12に示されるように試料細胞に作動性化合物を投与した後に、試料細胞が載置されている透明部材に近づく接近現象が起きて、反射干渉画像が暗くなっていることが観察できた(作動性化合物した直後の画像)。これにより、本実施形態の膜電位変化検出装置1では、細胞101の膜電位の変化を評価するパラメータ(接着に関するパラメータ)として、例えば「平均輝度の変化率dI」を算出し、当該パラメータの変化を検出することで、細胞101の膜電位が過分極になったことを検出できることが確認できた。
【0059】
次に、当該試料細胞に、リガンド濃度の異なる(100μM、25μM、6.25μM)作動性化合物をそれぞれ投与し、解析部202による平均輝度の変化率dI(パラメータ)の算出をそれぞれ行った。この結果、図13に示されるようなそれぞれのグラフを得た。これによれば、細胞101の膜電位が過分極になると、一過的に平均輝度の変化率dIがマイナス方向に変化することが確認できた。これにより、本実施形態の膜電位変化検出装置1では、図13に示すように、解析部202によって一過的に平均輝度の変化率dIがマイナス方向に大きくなることが検出できるので、細胞101の膜電位が過分極になったことを検出することができる。
【0060】
また、図13のグラフを総じてみると、投与した作動性化合物の濃度に比例して平均輝度の変化率dIがマイナス方向に最大振幅が大きくなることが確認できた。そこで、平均輝度の変化率dIのピーク時(図12において300ミリ秒付近)における作動性化合物の濃度と平均輝度の変化率dIとの関係をグラフ化すると、図14に示すような、作動性化合物の濃度が100μM、25μM、6.25μMと高くなるにつれ、薬剤投与後の平均輝度の変化率dIのマイナス方向への変化量も10%、17%、23%、42%、49%、55%と順に大きくなる結果を得た。これにより、ピーク時の平均輝度の変化率と投与した薬品の濃度とには依存関係があることが確認できた。本実施形態の膜電位変化検出装置1では、投与した薬品の濃度に比例(濃度に依存)した平均輝度の変化率dIが算出されるので、投与した薬品の濃度ごとに細胞101の膜電位の変化を評価することができる。このため、細胞101に対する薬効評価をする場合にも本実施形態の膜電位変化検出装置1を利用することが可能となる。
【0061】
(第1実施形態の作用及び効果)
続いて、以上まで説明した第1実施形態に係る膜電位変化検出装置1の作用及び効果について説明する。本実施形態の膜電位変化検出装置1によれば、反射干渉計測用光源106、保持部103、反射干渉検出用カメラ110、および解析部202を備えることにより、細胞101からの反射光をもとに細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞101の膜電位の変化を検出している。発明者らは、細胞が載置された透明部材と細胞との接着度合と、細胞の膜電位の変化との間に相関関係があることを発見した。本発明は、発見されたこのような相関関係を利用して、細胞の膜電位の変化を、細胞と透明部材との接着距離(接着度合)の変化として捉えていることに特徴がある。当該接着距離に基づく細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータは非侵襲的な方法で得られるので、細胞101の膜電位の変化をラベルすることなく非侵襲的に検出することが可能となる。
【0062】
また、上記膜電位変化検出装置1によれば、細胞101が脱分極および過分極になったときの細胞101の膜電位の変化を検出することができる。
【0063】
(第1実施形態の変形例)
上記実施形態においては、細胞101の膜電位変化を評価するための解析対象となる計測領域として、細胞101の接着している領域を「計測領域」とする例を挙げて説明したがこれに限定されるものではない。例えば細胞101をコンフルエント(容器の面積に対して約80%)に培養した被検体を用意し、測定開始時に得られた反射干渉画像の視野全体を計測領域として定めてもよい。また、測定開始時に得られた反射干渉画像から一定の輝度のしきい値や画像処理を用いて抽出した細胞101の存在する領域を計測領域として定めてもよい。
【0064】
上記実施形態においては、細胞101の膜電位変化を評価するパラメータとして、「平均輝度の変化率」を用いた例を挙げて説明したがこれに限定されるものではない。例えば細胞101の膜電位変化を評価するパラメータとして「接着面積の増減の変化」を用いることもできる。この場合、時系列に取得した反射干渉画像から一定の輝度のしきい値や画像処理を用いて抽出した細胞101の接着に相当する領域を計測領域として定めて、視野全体における計測領域の画素数を求める。この場合の接着面積の増減の変化率dAは、以下の式により算出される。
【0065】
変化率 dA(t)={A(t)−A(base)}/A(base)
A(t)=反射干渉の各時間の接着領域の画素数
A(base)=薬液投与前のA(t)の平均値
【0066】
解析部202は、上記式によって算出される変化率dAに基づいて細胞101の膜電位の変化を検出する。すなわち、解析部202は、所定の変化率dAが算出されたとき、細胞101における膜電位に何らかの変化が検出されたと評価してもよい。また、解析部202は、上記式によって算出される変化率dAを時間軸にプロットしたグラフを、細胞101の膜電位の変化を示したグラフを出力してもよい。すなわち、薬液投与前の接着面積に対する変化率dA(%)をプロットしたグラフを、細胞101の膜電位の変化を示したグラフとして出力してもよい。これにより、膜電位変化検出装置1を使用する使用者に対して、細胞101における膜電位の変化を明示的に示すことができる。
【0067】
上述したように、本実施形態の膜電位変化検出装置1では、脱分極になると細胞101が透明部材102aから離れ、過分極になると細胞101が透明部材に近づくという相関関係に基づいているので、変化率dAのプラス方向への変化により膜電位の細胞101が脱分極になったことを検知し、変化率dAのマイナス方向への変化により細胞101の膜電位が過分極になったことを検知することができる。また、薬液投与後の一定時間内におけるピーク(脱分極の場合は最大値、過分極の場合は最小値)を求めて、当該数値の大小から細胞101に投与した薬液濃度に対する判定も行うことができる点も同様である。
【0068】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態にはない構成についてのみ詳細な説明を行い、第1実施形態と同じ構成については同じ参照番号を付して詳細な説明を省略する。
【0069】
(膜電位変化検出装置41の全体構成)
まず、本発明の実施形態に係る膜電位変化検出装置41の全体構成について、図15を参照しながら説明する。図15は、膜電位変化検出装置41の全体構成を示す概要図である。図15に示すように、膜電位変化検出装置41は、画像取得部10および処理部20から構成されている。
【0070】
画像取得部10は、保持部103(特許請求の範囲の「保持手段」に相当)、対物レンズ104、定量位相計測用光源121、照射光絞り部121B、反射干渉計測用光源106、ハーフミラー108、ダイクロイックミラー122、全反射ミラー123、反射干渉検出用カメラ110(特許請求の範囲の「反射干渉撮像手段」に相当)、回折型干渉光学系124、および定量位相検出用カメラ125(特許請求の範囲の「定量位相撮像手段」に相当)を備えている。ハーフミラー108は反射干渉計測用光源106からの光を細胞101へ導くための反射干渉入射用光学系であり、また、ダイクロイックミラー122は、反射干渉検出用カメラ110へ細胞101からの光を導くための反射干渉計測用光学系である。また、対物レンズ104およびハーフミラー108、ダイクロイックミラー122は、細胞101の同一範囲からの光を反射干渉検出用カメラ110および定量位相検出用カメラ125へ導くための共通光学系である。つまり、本実施形態では、反射干渉入射用光学系と反射干渉計測用光学系が共通光学系となっている。また、全反射ミラー123および回折型干渉光学系124は、定量位相検出用カメラ125へ光を導くための定量位相光学系である。反射干渉検出用カメラ110は、反射干渉計測用光源106から放射され、細胞101から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する。定量位相検出用カメラ125は、定量位相計測用光源121から放射され、細胞101を透過する光を撮像することにより、定量位相画像を生成する。照射光絞り部121Bは、照明光を絞る手段である。照射光絞り部121Bとしては、ピンホールやアパーチャーが例示される。
【0071】
処理部20は、画像位置合わせ部211(特許請求の範囲の「画像位置合わせ手段」に相当)、輪郭抽出部212(特許請求の範囲の「輪郭抽出手段」に相当)、輪郭適用部213(特許請求の範囲の「輪郭適用手段」に相当)、解析部202(特許請求の範囲の「解析手段」に相当)、および記憶部203を備えている。
【0072】
画像位置合わせ部211は、反射干渉画像と定量位相画像との間で、空間的な位置を一致させることにより、両画像の位置合わせを行う部分である。輪郭抽出部212は、定量位相画像に基づき、細胞101の範囲である輪郭を抽出する部分ある。輪郭適用部213は、輪郭抽出部212が抽出した輪郭を反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する部分である。解析部202は、輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、細胞101と透明部材102aとの接着に関する細胞101ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞101ごとの膜電位の変化を検出する部分である。図2は、以上のような機能的構成要素を備える処理部20のハードウェア構成図である。当該ハードウェア構成についても第1実施形態の膜電位変化検出装置1と同様であるのでここではその説明を省略する。
【0073】
次に、図15を参照しながら、画像取得部10について詳細に説明する。定量位相計測について述べる。細胞101の入った容器102の上部に設置した、ハロゲンランプやキセノンランプなどの定量位相計測用光源121から放射された照明光は、ピンホールやアパーチャーなどの照明光絞り部121Bを通過することで点光源に近い照射光となり、細胞101の入った容器102を透過し、対物レンズ104にて集光される。なお、定量位相計測用光源121としては、LED(発光ダイオード)や半導体レーザー(レーザーダイオード)、SLD(スーパールミネッセントダイオード)などの光源を用いてもよい。なお、レーザーやSLDの場合には、光源サイズが十分小さいため、照明光絞り部121Bは不要になる。そして、ハーフミラー108を介し、定量位相像と反射干渉像を波長で分離するためのダイクロイックミラー122を透過して、更に全反射ミラー123を介して、位相計測のための回折型干渉光学系124にて物体光と参照光の干渉像を形成し、定量位相検出用カメラ125にて干渉縞画像が撮像される。なお、ダイクロイックミラー122はハーフミラーなどのビームスプリッタでもよく、この場合、ビームスプリッタと定量位相検出用カメラ125の間に定量位相検出に用いる波長を選択するためのフィルタを配置する。
【0074】
反射干渉計測について述べる。反射干渉計測用光源106から放射された照明光は、ハーフミラー108にて反射して、対物レンズ104を通って、測定対象となる細胞101を入れた容器102の底面側から入射する。ハーフミラーに限らず、照明光強度が十分ある場合には5:95(反射:透過)や20:80(反射:透過)にするなど、反射比率を低減させたビームスプリッタを用いてもよい。また、波長によって反射率・透過率が異なるダイクロイックミラーを用いてもよい。容器102の底面の細胞101の接着面から得られる反射光は細胞101の接着距離に応じて干渉を生じ、得られた反射干渉光は再び対物レンズ104にて集光され、ハーフミラー108を介し、定量位相像と反射干渉像とを波長で分離するためのダイクロイックミラー122にて反射干渉像のみを反射して、反射干渉検出用カメラ110にて撮像される。なお、ダイクロイックミラー122の代わりにハーフミラーなどのビームスプリッタを用いる場合は、ビームスプリッタと反射干渉検出用カメラ110との間に反射干渉検出に用いる波長を選択するためのフィルタを配置すればよい。容器102の底面の細胞101の接着面から反射した光は、細胞101の接着距離に応じて干渉した光の振幅が異なり、明暗のコントラストとして撮影される。なお、定量位相像および反射干渉像は、共通の対物レンズ104を介して取得されるので、細胞101の撮像範囲は、定量位相計測および反射干渉計測においてほぼ同一範囲となる。
【0075】
定量位相画像を取得するカメラ125と反射干渉画像を取得するカメラ110は同じ性能、同じ画素分解能のカメラに限定する必要はない。それぞれのカメラに入射する光量や入射波長は互いに異なるので、それぞれに適した性能、空間分解能のカメラを用いてもよい。例えば定量位相検出用カメラ125には830nmに感度が高く、画素サイズが大きめの感度優先のカメラを用い、反射干渉検出用カメラ110には可視域に感度が高く、画素サイズが小さめの空間分解能優先のカメラを利用するなどしてよい。このような場合に二つのカメラの空間座標を一致させる処理が必要となるが、これについては後段にて詳述する。
【0076】
定量位相計測と反射干渉計測を波長で区別できるように、反射干渉計測用光源106と定量位相計測用光源121のそれぞれの照明波長には、異なる波長域の光を用いても良い。ダイクロイックミラー122にて特定の波長で定量位相像と反射干渉像を分離選択することができる。したがって、定量位相計測と反射干渉計測で、クロストークなく同時刻の像を得ることができる。
【0077】
次に、図16のフローチャートを更に参照しながら、処理部20の機能および動作について説明する。最初に、定量位相検出用カメラ125にて参照光と細胞101を透過した物体光の干渉縞画像が得られる(ステップS201、特許請求の範囲の「定量位相撮像ステップ」に相当)。干渉縞画像から公知の演算方法を用いて定量的な位相画像を形成する。定量位相画像を得るためには、細胞101のない背景領域のオフセット補正および背景領域の視野におけるシェーディング補正を施し、背景部分は空間的に均一で、背景部の位相の値を0に補正し、細胞101の位相(光路長)の2次元マップを得る。
【0078】
一方で、ステップS201とともに、反射干渉検出用カメラ110にて細胞101の接着面の反射干渉画像が得られる(ステップS202、特許請求の範囲の「反射干渉撮像ステップ」に相当)。容器102の底面の基板上に接着している細胞101の容器102の底面の基板からの距離に応じて干渉光の振幅が異なり、反射干渉画像は明暗のコントラストとして撮影される。反射干渉画像の視野内の反射光のシェーディングを補正する。あわせて細胞101のない背景の値が時間的に変動しないように、時間ごとに背景部のオフセット補正を行う。これらの画像演算補正によって、空間的、時間的に変動の少ない定量位相画像および反射干渉画像を得ることができる。
【0079】
次に、定量位相画像および反射干渉画像の空間的位置補正が行われる(ステップS203、特許請求の範囲の「画像位置合わせステップ」に相当)。図17は、画像位置合わせに用いる標本30を示す。位置合わせの標本30として、ガラス基板に格子31が刻まれたマイクロスケールやドットパターンなどを用いる。マイクロスケールやドットパターンには2つのカメラで撮影したときに同じ位置が分かるように、少なくとも1か所以上に目印が付いていると操作が簡便である。図17の例では、三角と丸の二つの目印が付いている。
【0080】
ここで、反射干渉側のカメラ110の像を定量位相の像に合わせて位置をずらす手順について詳細に説明する。まず、細胞101の標本の代わりにマイクロスケールまたはドットパターンを置き、反射干渉および定量位相のそれぞれの撮影用カメラで撮影する。次に、マイクロスケールまたはドットパターンを撮影して得られた反射干渉画像と定量位相画像をそれぞれ異なる疑似カラー(例えば反射干渉画像は緑、定量位相画像は赤など)で重ね合わせる。場合によっては画像の輝度を反転すると見やすくなる。続いて、反射干渉画像の格子像またはドット像を定量位相側の格子像またはドット像に合致させるために、重ね合わせた画像を見ながら、反射干渉画像に対して(1)拡大縮小倍率、(2)水平方向の移動量(画素数)、(3)垂直方向の移動量(画素数)、(4)回転角度、(5)回転方向、(6)左右反転などを微調整し、調整量を決定する。調整量は、重ね合わせて表示した格子像またはドット像が重なり、エッジが出なくなるような位置に決定されればよく、例えば、それぞれの格子像またはドット像が重なり合って緑色と赤色が黄色になるような位置で決定される。
【0081】
撮影した2つのカメラの像に空間歪があり、両者の空間歪のパターンが大きく異なる場合は、上述の(1)から(6)のデータだけで一律にすべての画素の位置を合致させることは難しい場合がある。その場合は視野内のすべての画素における移動量が異なるため、各々の画素に対して移動量を定める必要がある。具体的には、格子像の各交点またはドット像の各ドットの中心座標が2つのカメラで一致するように、各点のずらし量を決定する。格子またはドットの存在する座標以外の空間座標は補間することによってずらし量を決定する。このようにして空間的に全画素(全座標)について1画素単位でずらし量を記憶したテーブルを作成して、位置合わせデータとする。得られた位置合わせデータをファイルで保存する。新規に測定を行い画像を取得したときに、ファイルで保存した位置合わせデータを用いて、画像間の位置合わせを行い、位置を補正した画像を出力する。また、新規に測定を行い取得した画像データをファイルに保存するときには、位置合わせデータを画像データと一緒にファイルに保存することが好ましい。こうすることによって、画像ファイルを呼び出した時にも、画像を新規に取得した時の最も適切であった位置合わせデータを援用して、当該呼び出した画像を補正することができる。
【0082】
なお、以上のような位置合わせは定量位相や反射干渉の計測のたびに行う必要はなく、同じ光学系を利用するのであれば、使用環境や振動の影響による位置ずれを考慮して、例えば1カ月に1回程度の頻度で行えば良い。また、観察側の光学系に観察用のフィルタを選択する部品(例えば電動フィルタホイールなど)が装着されている場合は、位置合わせは使用するフィルタごとに行うことが望ましい。なぜなら、使用するフィルタの傾きや平行度によって像の位置ずれ量や位置ずれの方向が異なるからである。
【0083】
なお、繰り返しとなるため説明は省略するが、以上とは逆に、定量位相側のカメラ125の像を反射干渉の像に合わせて位置をずらす場合にも、上述の手順を適宜適用することができる。また、以上の手順は、自動化された画像処理によって、人の手に寄らずに、行うことができる。
【0084】
図16に戻り、ステップS203の位置合わせの後に、細胞101の輪郭領域を抽出する処理(以下、「セグメンテーション」ともいう。)が行われる(ステップS204およびS205、特許請求の範囲の「輪郭抽出ステップ」に相当)。
【0085】
まず、図18に示すように、同時刻に撮像され、位置合わせが行われた後の定量位相画像および反射干渉画像のうち、定量位相画像から個々の細胞101の輪郭となる領域を画像処理により検出する(ステップS204:輪郭抽出ステップ)。つまり、定量位相画像では、細胞101のない背景となる溶液を通る光に対して細胞101を通る光は、細胞101の屈折率が溶液の屈折率よりも大きいために、光路長が長くなる。そのため、細胞101の存在する領域の画素の位相の値は背景よりも大きな値となる。そこで、適正な閾値または空間フィルタ処理を用いることにより、人の手に寄らず自動的に、背景と細胞101を分離することができる。そして、一つ一つの細胞101に対応した輪郭を決定し、それぞれの細胞101の占める領域に対応する画素座標の領域を決定することができる。
【0086】
次に、ステップS204で得られた個々の細胞101の輪郭領域の画素座標を空間座標の一致した反射干渉画像に適応させ、つまりステップS204で得られたセグメンテーション領域を反射干渉画像にコピーすることにより、定量位相画像で決定された個々の細胞101の輪郭領域を反射干渉画像に当てはめる(ステップS205、特許請求の範囲の「輪郭適用ステップ」に相当)。このようにすることで、図18に示すように、定量位相画像と反射干渉画像の両方の画像A,Bに対して同じ輪郭領域を決定することができる。また、一つ一つの細胞に対応した輪郭を決定し、それぞれの細胞の占める領域に対応する画素座標の領域を決定することができる。
【0087】
図16に戻り、次に、解析部202は、定量位相画像で決定された個々の細胞101の輪郭領域を反射干渉画像に当てはめた画像(以下、「合成画像」と示す)を用いて、個々の細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータを算出する(ステップS206、特許請求の範囲の「解析ステップ」に相当)。本実施形態の処理が第1実施形態における処理と異なる点は、第1実施形態の解析部202が、反射干渉画像全体から細胞101の接着している領域を計測領域としているのに対し、本実施形態の解析部202は、個々の細胞の領域を計測領域としている点である。
【0088】
本実施形態では、個々の細胞101の膜電位の変化を評価するパラメータ(特許請求の範囲の「接着に関するパラメータ」に相当)として、「平均輝度の変化率」を算出している。解析部202は、上述したように個々の細胞の領域を計測領域としての平均輝度を計測する。
【0089】
解析部202は、画像位置合わせ部211から出力される順次出力されてくる合成画像を受信すると、当該合成画像における個々の計測領域の平均輝度I(t)を算出し、薬液投与前に予め取得されている個々の計測領域の平均輝度(以下、「基礎となる平均輝度I(base)」と示す)に対する変化率dIを算出する。なお、基礎となる平均輝度は、例えば薬液投与前に取得された個々の計測領域の合成画像から得られる平均輝度を用いてもよいし、細胞の種類ごとに予め初期値として記憶されている初期輝度を用いてもよい。このような基礎となる平均輝度は、記憶部203に記憶されており、解析部202は記憶部203から適時、基礎となる平均輝度を読み出して、変化率dIを算出する。変化率dIは、以下の式により算出される。
【0090】
変化率dI(t)={I(t)−I(base)}/I(base)
I(t)=反射干渉の平均輝度(背景補正した値)
I(base)=薬液投与前のI(t)の平均値
【0091】
解析部202は、上記式によって算出される変化率dIに基づいて個々の計測領域に対する細胞101の膜電位の変化を検出する。すなわち、解析部202は、個々の計測領域において所定の変化率dIが算出されたとき、個々の細胞101における膜電位に何らかの変化が検出されたと評価している。また、解析部202は、上記式によって算出される変化率dIを時間軸にプロットした、例えば図8(A)や図8(B)に示すようなグラフを出力してもよい。また、薬液投与前の接着面積に対する変化率dI(%)をプロットしたグラフを、細胞101の膜電位の変化を示したグラフとして出力してもよい。なお、上記グラフを出力する際には、個々の計測領域ごと、すなわち個々の細胞ごとに出力することが好ましい。
【0092】
また、本実施形態の膜電位変化検出装置41では、脱分極になると細胞101が透明部材102aから離れ反射干渉画像が明るくなり、過分極になると細胞101が透明部材に近づき反射画像が暗くなるという相関関係に基づいている。したがって、変化率dIのプラス方向への変化により膜電位の個々の細胞101が脱分極になったことを検知し、変化率dIのマイナス方向への変化により個々の細胞101の膜電位が過分極になったことを検知することができる。また、薬液投与後の一定時間内におけるピーク(脱分極の場合は最大値、過分極の場合は最小値)を求めて、当該数値の大小から個々の細胞101に投与した薬液濃度に対する判定も行うことができる。
【0093】
(第2実施形態の作用及び効果)
第2実施形態に係る膜電位変化検出装置41では、定量位相計測用光源121、反射干渉計測用光源106、反射干渉検出用カメラ110、定量位相検出用カメラ125、および解析部202を備えることにより、細胞101の接着に関する情報、また細胞101の面積、光学的厚さに関する情報を同時に取得することができるので、細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータのバリエーションを増やすことができる。また、自動化された処理により細胞101のセグメンテーションが実行されるので、個々の細胞101に対してデータを取得することが容易に可能となる。また、薬液分注後の細胞の反応が早く、できるだけ短いインタバルで計測を行いたい場合には、本実施形態に係る膜電位変化検出装置41のような反射干渉画像と定量位相画像を同時に取得する構成が有効である。
【0094】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態においては、定量位相画像から取得できる細胞の輪郭を反射干渉画像にコピー(セグメンテーション)する例を挙げて説明したがこれに限定されるものではない。例えば、セグメンテーションの工程を経なくても、細胞101の膜電位の変化を検出することが可能である。すなわち、定量位相画像から一定のしきい値にて得られる細胞101の存在を示す領域全体を計測領域とし、この計測領域における平均的な輝度を用いて細胞101の膜電位の変化を検出してもよい。なお、計測領域の平均輝度に対する変化率dIを算出することについては上述したとおりなので、ここではその説明を省略する。
【0095】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1実施形態にはない構成についてのみ詳細な説明を行い、第1実施形態と同じ構成については同じ参照番号を付して詳細な説明を省略する。
【0096】
(膜電位変化検出装置61の全体構成)
まず、本発明の実施形態に係る膜電位変化検出装置61の全体構成について、図19を参照しながら説明する。図19は、膜電位変化検出装置61の全体構成を示す概要図である。図19に示すように、膜電位変化検出装置61は、画像取得部10および処理部20から構成されている。
【0097】
画像取得部10は、保持部103(特許請求の範囲の「保持手段」に相当)、対物レンズ104、定量位相計測用光源121、定量位相シャッタ121A(特許請求の範囲の「定量位相光量調整手段」に相当)、照明光絞り部121B、反射干渉計測用光源106、反射干渉シャッタ106A(特許請求の範囲の「反射干渉光量調整手段」に相当)、反射干渉照明用光学系としてのハーフミラー108、全反射ミラー131、回折型干渉光学系132、参照光カット装置133およびカメラ134(特許請求の範囲の「反射干渉撮像手段」に相当)を備えている。
【0098】
処理部20は、画像受信部221、輪郭抽出部212(特許請求の範囲の「輪郭抽出手段」に相当)、輪郭適用部213(特許請求の範囲の「輪郭適用手段」に相当)、解析部202、および記憶部203を備えている。画像受信部221は、カメラ134の撮像により生成された反射干渉画像および定量位相画像を受信する部分である。輪郭抽出部212は、定量位相画像に基づき、細胞101の範囲である輪郭を抽出する部分である。輪郭適用部213は、輪郭抽出部212が抽出した輪郭を反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する部分である。解析部202は、輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、細胞101と透明部材102aとの接着に関する細胞101ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞101ごとの膜電位の変化を検出する部分である。図2は、以上のような機能的構成要素を備える処理部20のハードウェア構成図である。当該ハードウェア構成についても第1実施形態の膜電位変化検出装置1と同様であるのでここではその説明を省略する。
【0099】
次に、図19を参照しながら、画像取得部10について詳細に説明する。反射干渉シャッタ106Aは、ハロゲンランプやキセノンランプなどの反射干渉計測用光源106から放射される光の光量を調整する。定量位相シャッタ121Aは、ハロゲンランプやキセノンランプなどの定量位相計測用光源121から放射される光の光量を調整する。なお、ハロゲンランプやキセノンランプなどの広い波長範囲にわたって放射感度を有する光源であれば、700nm〜2500nmの近赤外領域の光を照明光として用いることが可能であり、細胞101に対する毒性を低減できる。ハロゲンランプやキセノンランプなどの電球系光源を、光源として用いた場合、光量や波長などの安定性を考慮すると、測定中は光源自体をON/OFFせずに光源をONにしておいたほうがよい。そのため、反射干渉シャッタ106Aや定量位相シャッタ121Aが必要となる。ただし、LED(発光ダイオード)や半導体レーザー(レーザーダイオード)、SLD(スーパールミネッセントダイオード)などの半導体系光源を光源として用いた場合、光源自体をON/OFFすることで反射干渉計測と定量位相計測との切り替えを行ってもよい。この場合、図24に示すように、反射干渉計測用光源106のON/OFFによる切り替えにより、反射干渉計測用光源106から放射される光の光量を調整し、且つ定量位相計測用光源121のON/OFFによる切り替えにより、定量位相計測用光源121から放射される光の光量を調整する光源制御部225を備えればよい。そして、図19に示す実施形態における画像取得部10から反射干渉シャッタ106A、定量位相シャッタ121A、および照明光絞り部121Bをなくせばよい。
【0100】
カメラ134は、反射干渉計測用光源106から放射され、細胞101から反射される反射光を撮像することにより、反射干渉画像を生成するとともに、定量位相計測用光源121から放射された照射光が、ピンホールやアパーチャーなどの照明光絞り部121Bを通過することで点光源に近い照射光となり、細胞101を透過する透過光を撮像することにより、定量位相画像を生成する。後述するように、反射干渉画像を生成する際には、定量位相シャッタ121Aが定量位相計測用光源121からの光を遮光した上で、カメラ134が反射光を撮像する。また、定量位相画像を生成する際には、反射干渉シャッタ106Aが反射干渉計測用光源106からの光を遮光した上で、カメラ134が透過光を撮像する。以上により、カメラ134は、反射干渉計測および定量位相計測に共通の一つのカメラとして、時間的に互いに排他的に両計測を行うこととなる。
【0101】
回折型干渉光学系132は、定量位相画像を生成するために、細胞101からの透過光を物体光および参照光に分離して干渉させる。参照光カット装置133は、回折型干渉光学系132において参照光が通る光路上に設置され、反射干渉画像を生成する際に、参照光を遮光する。
【0102】
定量位相計測について述べる。細胞101の入った容器102の上部に設置した定量位相計測用光源121から放射された照明光は、細胞101の入った容器102を透過し、対物レンズ104にて集光される。そして、ハーフミラー108を介し、更に全反射ミラー131を介して、位相計測のための回折型干渉光学系132にて物体光と参照光の干渉像を形成し、カメラ134にて干渉縞画像が撮像される。
【0103】
反射干渉計測について述べる。反射干渉計測用光源106から放射された照明光は、ハーフミラー108にて反射して、対物レンズ104を通って、測定対象となる細胞101を入れた容器102の底面側から入射する。反射干渉照明用光学系としては、ハーフミラーに限らず、照明光強度が十分ある場合には5:95(反射:透過)や20:80(反射:透過)にするなど、反射比率を低減させたビームスプリッタを用いてもよい。また、波長によって反射率・透過率が異なるダイクロイックミラーを用いてもよい。容器102の底面の細胞101の接着面から得られる反射光は細胞101の接着距離に応じて干渉を生じ、得られた反射干渉光は再び対物レンズ104にて集光され、ハーフミラー108を介し、更に全反射ミラー131を介して、カメラ134にて撮像される。容器102の底面の細胞101の接着面から反射した光は、細胞101の接着距離に応じて干渉した光の振幅が異なり、明暗のコントラストとして撮影される。なお、定量位相像および反射干渉像は、共通の対物レンズ104を介して取得されるので、細胞101の撮像範囲は、定量位相計測および反射干渉計測においてほぼ同一範囲となる。
【0104】
第3実施形態は、定量位相画像および反射干渉画像を一つのカメラ134を用いて、交互に時間差を置いて取得することを特徴の一つとする。このためには、定量位相計測用光源121および反射干渉計測用光源106がそれぞれの照明光を照射するタイミングにおいて互いに排他的に照明を行う必要がある。そこで、定量位相計測用光源121および反射干渉計測用光源106のそれぞれの照射口に光の照射・遮断を行うための機械シャッタ121A,106Aを備える。あわせて定量位相画像を作成するための回折型干渉光学系132の内部に、参照光カット装置133を備える。
【0105】
回折型干渉光学系132は定量位相画像を作成するための光学系であり、定量位相計測用光源121にて照明された透過照明像から回折素子132Aを通して物体光と参照光を分離してそれぞれ取り出し、干渉させる役目を果たす。また、定量位相像と反射干渉像はいずれも同じ回折型干渉光学系132を通るため、反射干渉画像を取り出すためには、回折素子132Aを通ることにより分離された参照光をカットするための装置が必要となり、本実施形態では参照光カット装置133を備えている。
【0106】
参照光カット装置133は、例えば参照光側の光路132B上に設けた機械シャッタとして構成することができる。図20は、参照光カット装置133として機能する参照光シャッタ133Aを示す図である。図20(A)は、定量位相画像撮像時の参照光シャッタ133Aの動きを示す。定量位相画像撮像時には、回折素子132Aにより分離された後に、ピンホール133Bを通る物体光およびピンホール133Cを通る参照光の両方が必要であるため、参照光シャッタ133Aはピンホール133Cを遮ることなく、物体光および参照光はピンホール133Bおよび133Cを通ってカメラ134に到達する。一方、図20(B)は、反射干渉画像撮像時の参照光シャッタ133Aの動きを示す。反射干渉画像撮像時には、回折素子132Aにより分離された後にピンホール133Bを通る物体光は必要であるが、ピンホール133Cを通る参照光は不要である。このため、参照光シャッタ133Aはピンホール133Cを遮ることにより参照光を遮光し、物体光のみがピンホール133Bを通ってカメラ134に到達する。
【0107】
図21は、定量位相シャッタ121A、参照光カット装置133、カメラ134による定量位相撮像、反射干渉シャッタ106A、およびカメラ134のそれぞれの動作にかかるタイミングチャートに示す。定量位相画像と反射干渉画像は時系列にお互い排他的に照明と画像取得を行う。具体的には、定量位相画像を取得する時は、定量位相シャッタ121Aが開口し、反射干渉シャッタ106Aが閉じる。逆に反射干渉画像を取得する時には、反射干渉シャッタ106Aが開口し、定量位相シャッタ121Aが閉じるという具合である。同時に、定量位相画像を取得するタイミングにおいては、回折型干渉光学系132の回折素子132Aによって得られる物体光と参照光のうち、参照光側に設けた参照光カット装置133が開口し、カメラ134にて物体光と参照光の干渉像が結像することによって定量位相画像を得る。一方、反射干渉画像を取得するタイミングにおいては、回折素子132Aによって得られた参照光は不要であるので、参照光側に設けた参照光カット装置133が閉じて、物体光のみが反射干渉画像としてそのままカメラ134に結像する。このように定量位相画像と反射干渉画像とを時間的に交互に取得して2つの画像をペアとして同時刻の画像として扱う。
【0108】
次に、図22のフローチャートを更に参照しながら、処理部20の機能および動作について説明する。最初に、カメラ134にて参照光と細胞101を透過した物体光の干渉縞画像が得られる(ステップS301、特許請求の範囲の「撮像ステップ」に相当)。干渉縞画像から公知の演算方法を用いて定量的な位相画像を形成する。定量位相画像を得るためには、細胞101のない背景領域のオフセット補正および背景領域の視野におけるシェーディング補正を施し、背景部分は空間的に均一で、背景部の位相の値を0に補正し、細胞101の位相(光路長)の2次元マップを得る。
【0109】
一方で、ステップS101とともに、カメラ134にて細胞101の接着面の反射干渉画像が得られる(ステップS302、特許請求の範囲の「撮像ステップ」に相当)。容器102の底面に接着している細胞101の容器102の底面からの距離に応じて干渉光の振幅が異なり、反射干渉画像は明暗のコントラストとして撮影される。反射干渉画像の視野内の反射光のシェーディングを補正する。あわせて細胞101のない背景の値が時間的に変動しないように、時間ごとに背景部のオフセット補正を行う。これらの画像演算補正によって、空間的、時間的に変動の少ない定量位相画像および反射干渉画像を得ることができる。
【0110】
ステップS301およびステップS302にて撮像および補正された両画像(定量位相画像および反射干渉画像)が処理部20に入力される(ステップS303)。
【0111】
次に、ステップS303にて入力された両画像に対して、細胞101の輪郭領域を抽出する処理(以下、「セグメンテーション」ともいう。)が行われる(ステップS304およびS305、特許請求の範囲の「輪郭抽出ステップ」および「輪郭適用手段」に相当)。
【0112】
まず、図23に示すように、同一観察位置および同時刻に撮像された定量位相画像および反射干渉画像のうち、定量位相画像から個々の細胞101の輪郭となる領域を画像処理により検出する(ステップS304、図23の画像A、特許請求の範囲の「輪郭抽出ステップ」に相当)。つまり、定量位相画像では、細胞101のない背景となる溶液を通る光に対して細胞101を通る光は、細胞101の屈折率が溶液の屈折率よりも大きいために、光路長が長くなる。そのため、細胞101の存在する領域の画素の位相の値は背景よりも大きな値となる。そこで、適正な閾値または空間フィルタ処理を用いることにより、人の手に寄らず自動的に、背景と細胞101を分離することができる。そして、一つ一つの細胞101に対応した輪郭を決定し、それぞれの細胞101の占める領域に対応する画素座標の領域を決定することができる。
【0113】
次に、ステップS304で得られた個々の細胞101の輪郭領域の画素座標を空間座標の一致する反射干渉画像に適応させ、つまりステップS304で得られたセグメンテーション領域を反射干渉画像にコピーすることにより、定量位相画像で決定された個々の細胞101の輪郭領域を反射干渉画像に当てはめる(ステップS305、図23の画像B、特許請求の範囲の「輪郭適用ステップ」に相当)。このようにすることで、図23に示すように、定量位相画像と反射干渉画像の両方の画像A,Bに対して同じ輪郭領域を決定することができる。また、一つ一つの細胞に対応した輪郭を決定し、それぞれの細胞の占める領域に対応する画素座標の領域を決定することができる。
【0114】
解析部202が、定量位相画像で決定された個々の細胞101の輪郭領域を反射干渉画像に当てはめた画像(以下、「合成画像」と示す)を用いて、個々の計測領域の「平均輝度の変化率」を算出し、この平均輝度の変化率dIに基づいて個々の計測領域に対する細胞101の膜電位の変化を検出する(ステップS306、特許請求の範囲の「解析ステップ」に相当)については、第2実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。また、個々の細胞に対して薬液投与後の一定時間内におけるピーク(脱分極の場合は最大値、過分極の場合は最小値)を求めて、これらの数値の大小から薬物濃度の判定をそれぞれ行うことができる点についても同様である。
【0115】
(第3実施形態の作用及び効果)
第3実施形態に係る膜電位変化検出装置61では、定量位相計測用光源121、定量位相シャッタ121A、反射干渉計測用光源106、反射干渉シャッタ106A、およびカメラ134備えることにより、細胞101の接着に関する情報、また細胞101の面積、光学的厚さに関する情報を同時に取得することができるので、細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータのバリエーションを増やすことができる。また、自動化された処理により細胞101のセグメンテーションが実行されるので、個々の細胞101に対してデータを取得することが容易に可能となる。
【0116】
また、第3実施形態の膜電位変化検出装置61は、第2実施形態に係る膜電位変化検出装置41と比べて定量位相画像および反射干渉画像を取得するためのカメラが1台で済むので低コスト化を図ることが可能であり、かつ2台のカメラの位置合わせの必要がないことにメリットがある。また、第3実施形態の膜電位変化検出装置61は、薬液投与に対して細胞の応答が比較的ゆっくりであり、定量位相画像と反射干渉画像とを順次に取得する場合の時間間隔であっても変化が検出できる用途に利用することが有用である。
【符号の説明】
【0117】
1,41,61…膜電位変化検出装置、10…画像取得部、20…処理部、101…細胞、102…容器、102a…透明部材、102b…載置面、102c…底面、102d…反射防止コート、103…保持部、104…対物レンズ、106…反射干渉計測用光源、106A…反射干渉シャッタ、107…リングスリット、108…ハーフミラー、110…反射干渉検出用カメラ、115…XYステージ、117…ディスペンサ、121…定量位相計測用光源、121A…定量位相シャッタ、121B…照明光絞り部、122…ダイクロイックミラー、123,131…全反射ミラー、124…回折型干渉光学系、125…定量位相検出用カメラ、132…回折型干渉光学系、132A…回折素子、133…参照光カット装置、133A…参照光シャッタ、133B,133C…ピンホール、134…カメラ、201,221…画像受信部、202…解析部、203…記憶部、211…画像位置合わせ部、212…輪郭抽出部、213…輪郭適用部、225…光源制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜電位変化検出装置および膜電位変化検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞のイオンチャンネルを標的とした治療薬の開発は、創薬の開発において重要度を増している。従来の生細胞を用いたアッセイにおいてはパッチクランプ電極を用いた膜電位の測定や膜電位感受性色素を用いた光学的な膜電位の計測などが用いられてきた。例えば、非特許文献1には、蛍光色素によって細胞を染色し、蛍光干渉コントラスト顕微鏡画像を用いて基板に載置された当該細胞と基板との距離(細胞の接着度)を求めたり、膜電位感受性色素によって細胞を染色し、光学的に細胞の膜電位の変化を求めたりする技術が開示されている。また、非特許文献2には、FRET色素によって細胞を染色(着色)し、FRET現象を用いて細胞の膜電位の変化を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Raimund Gleixner and PeterFromherz, “The Extracellular Electrical Resistivity in Cell Adhesion.” ,Biophysical Journal , Volume90, 2600-2611, (2006)
【非特許文献2】Jesus E Gonzalez and Roger YTsien, “Improved indicators of cell membrane potential that use fluorescenceresonance energy transfer” , Chemistry & Biology,1997,Vol.4, No.4,Page.269-277
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細胞の膜電位変化を測定するためのラベル剤である蛍光色素を細胞に取り込ませる必要がある。また、上記の測定には強い励起光を照射する必要があり、生細胞の状態に影響を及ぼす。生細胞の正常な状態を保って測定するには色素濃度や励起光照射強度の最適な条件を試行錯誤により見極める必要がある。また今後、幹細胞をもとにヒト細胞が薬効評価の対象として利用が拡大するとこれらの細胞の中にはダメージを受けやすい細胞も多く、ラベルした測定はますます難しくなる。したがって、できるだけラベルをせず、細胞を培養した状態からできるだけ手を加えずに膜電位を非侵襲に測定するラベルフリー技術が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたもので、ラベルすることなく非侵襲的な方法で細胞の膜電位の変化を検出することが可能な膜電位変化検出装置および膜電位変化検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の膜電位変化検出装置は、反射干渉計測用光源と、細胞が載置された透明部材を保持する保持手段と、反射干渉計測用光源から放射され、透明部材を介して細胞から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉撮像手段と、反射干渉画像から細胞と透明部材との接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞の膜電位の変化を検出する解析手段と、を備えている。
【0007】
また、本発明の膜電位変化検出方法は、反射干渉撮像手段が、反射干渉計測用光源から放射され、細胞が載置された透明部材を介して細胞から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉撮像ステップと、解析手段が、反射干渉画像から細胞と透明部材との接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて、細胞の膜電位の変化を検出する解析ステップと、を含んでいる。
【0008】
このような発明によれば、反射干渉計測用光源、保持手段、反射干渉撮像手段および解析手段を備えることにより、細胞からの反射光をもとに細胞と透明部材との接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞の膜電位の変化を検出している。発明者らは、細胞が載置された透明部材と細胞との接着度合と、細胞の膜電位の変化との間に相関関係があることを発見した。本発明は、発見されたこのような相関関係を利用して、細胞の膜電位の変化を、細胞と透明部材との接着距離(接着度合)の変化として捉えているところに特徴がある。当該接着距離に基づく細胞と透明部材との接着に関するパラメータは非侵襲的な方法で得られるので、細胞の膜電位の変化をラベルすることなく非侵襲的に検出することが可能となる。
【0009】
また、本発明では、解析手段は、脱分極になると細胞が透明部材から離れ、過分極になると細胞が透明部材に近づくという相関関係に基づいて細胞の膜電位の変化を検出してもよい。この発明によれば、発明者らが発見した上記相関関係に基づいて、細胞が脱分極および過分極になったときの細胞の膜電位の変化を検出することができる。
【0010】
また、本発明では、反射干渉計測用光源から放射され細胞から反射される光が集光される対物レンズを更に備えており、対物レンズと透明部材とは空気層を介して配置されていてもよい。この発明によれば、対物レンズの操作性を改善することができるので、細胞が載置された透明部材全体をスキャンしながら撮像することが容易となる。これにより、細胞の膜電位の変化を検出する際のスループットを向上させることができる。
【0011】
また、本発明では、透明部材の載置面とは反対側の面は、反射防止コートが施されていてもよい。この発明によれば、ドライ系の対物レンズを用いる場合であっても、高いコントラストで細胞接着面の反射干渉画像を得ることができる。
【0012】
また、本発明では、対物レンズの反射干渉計測用光源側の開口絞りと共役な位置に配置されているリング状のスリットを更に備えていてもよい。この発明によれば、リング状に開口したスリットを反射干渉計測用光源からの照明光が通り、照明光は対物レンズの中心は通らず周辺を通って照明され、角度のついた高いNAの光のみを使って細胞が照明されるため、細胞上部の溶液からの反射光の影響を低減することができる。また、リング状のスリットを用いることにより、対物レンズ内部の反射による背景光を低減することもできる。
【0013】
また、本発明では、定量位相計測用光源と、定量位相計測用光源から放射され細胞を透過する光を撮像することにより、定量位相画像を生成する定量位相撮像手段と、を更に備えていてもよい。この発明によれば、定量位相計測用光源と定量位相撮像手段とを備えることにより、個々の細胞の光学的厚さ、体積および面積などの情報を取得している。定量位相撮像手段から取得できる個々の細胞の光学的厚さ、体積および面積などの情報を用いることにより、細胞と透明部材との接着に関するパラメータのバリエーションを増やすことが可能となる。
【0014】
また、本発明の膜電位変化検出装置では、反射干渉画像と定量位相画像との間で、空間的な位置を一致させることにより、両画像の位置合わせを行う画像位置合わせ手段と、定量位相画像に基づき、細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、輪郭抽出手段が抽出した輪郭を反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用手段と、を更に備えており、解析手段は、輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、細胞と透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出してもよい。
【0015】
また、本発明の膜電位変化検出方法では、反射干渉撮像手段が、反射干渉計測用光源から放射され、細胞が載置された透明部材を介して細胞から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉撮像ステップと、定量位相撮像手段が、定量位相計測用光源から放射され、細胞を透過する光を撮像することにより、定量位相画像を生成する定量位相撮像ステップと、画像位置合わせ手段が、反射干渉画像と定量位相画像との間で、空間的な位置を一致させることにより、両画像の位置合わせを行う画像位置合わせステップと、輪郭抽出手段が、定量位相画像に基づき、細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出ステップと、輪郭適用手段が、輪郭抽出手段が抽出した輪郭を反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用ステップと、解析手段が、輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、細胞と透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出する解析ステップと、を含んでいてもよい。
【0016】
これらの発明によれば、画像位置合わせ手段と、輪郭抽出手段と、輪郭適用手段とを備えることにより、定量位相画像に基づき細胞の輪郭を抽出し、当該輪郭を反射干渉画像と重ね合わせている。これにより、反射干渉撮像手段および定量位相撮像手段により取得される画像の中に複数の細胞が含まれている場合には、個々の細胞について膜電位の変化を検出することが可能となる。
【0017】
また、本発明では、反射干渉計測用光源から放射される光の光量を調整する反射干渉光量調整手段と、定量位相計測用光源と、定量位相計測用光源から放射される光の光量を調整する定量位相光量調整手段と、を更に備えており、反射干渉撮像手段は、反射干渉計測用光源から放射され、細胞から反射される反射光を撮像することにより、反射干渉画像を生成するとともに、定量位相計測用光源から放射され、細胞を透過する透過光を撮像することにより、定量位相画像を生成し、反射干渉画像を生成する際に、定量位相光量調整手段が定量位相計測用光源からの光を遮光し、反射干渉撮像手段が反射光を撮像し、定量位相画像を生成する際に、反射干渉光量調整手段が反射干渉計測用光源からの光を遮光し、反射干渉撮像手段が透過光を撮像してもよい。この発明によれば、定量位相計測用光源と定量位相撮像手段とを備えることにより、個々の細胞の光学的厚さ、体積および面積などの情報を取得している。定量位相撮像手段から取得できる個々の細胞の光学的厚さ、体積および面積などの情報を用いることにより、細胞と透明部材との接着に関するパラメータのバリエーションを増やすことが可能となる。
【0018】
また、本発明の膜電位変化検出装置では、反射干渉光量調整手段は、反射干渉計測用光源から放射される光の光量を調整するシャッタであり、定量位相光量調整手段は、定量位相計測用光源から放射される光の光量を調整するシャッタであってもよい。この発明によれば、光の光量を調整するための具体的な手段が提供される。
【0019】
また、本発明の膜電位変化検出装置では、反射干渉光量調整手段は、反射干渉計測用光源のON/OFFによる切り替えにより、反射干渉計測用光源から放射される光の光量を調整し、定量位相光量調整手段は、定量位相計測用光源のON/OFFによる切り替えにより、定量位相計測用光源から放射される光の光量を調整してもよい。この発明によれば、光の光量を調整するための具体的な方法が提供される。この方法は、光源がLED(発光ダイオード)やLD(レーザーダイオード)、SLD(スーパールミネッセントダイオード)などの半導体型光源である場合に特に有用である。
【0020】
また、本発明の膜電位変化検出装置では、定量位相画像に基づき、細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、輪郭抽出手段が抽出した輪郭を反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用手段と、を更に備えており、解析手段は、輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、細胞と透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出してもよい。
【0021】
また、本発明の膜電位変化検出方法では、撮像手段が、反射干渉計測用光源から放射され、細胞から反射される反射光を撮像することにより、反射干渉画像を生成するとともに、定量位相計測用光源から放射され、細胞を透過する透過光を撮像することにより、定量位相画像を生成する撮像ステップと、輪郭抽出手段が、定量位相画像に基づき、細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出ステップと、輪郭適用手段が、輪郭抽出手段が抽出した輪郭を反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用ステップと、解析手段が、輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、細胞と透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出する解析ステップと、を含んでおり、反射干渉画像を生成する際に、定量位相光量調整手段が定量位相計測用光源からの光を遮光し、撮像手段が反射光を撮像し、定量位相画像を生成する際に、反射干渉光量調整手段が反射干渉計測用光源からの光を遮光し、撮像手段が透過光を撮像してもよい。
【0022】
これらの発明によれば、画像位置合わせ手段と、輪郭抽出手段と、輪郭適用手段とを備えることにより、定量位相画像に基づき細胞の輪郭を抽出し、当該輪郭を反射干渉画像と重ね合わせている。これにより、反射干渉撮像手段および定量位相撮像手段により取得される画像の中に複数の細胞が含まれている場合には、個々の細胞について膜電位の変化を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の膜電位変化検出装置および膜電位変化検出方法によれば、ラベルすることなく非侵襲的な方法で細胞の膜電位の変化を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る膜電位変化検出装置の全体構成を示す概要図である。
【図2】第1実施形態に係る処理部のハードウェア構成図である。
【図3】容器の構成を示す断面図である。
【図4】反射防止コートによる効果を示すための図である。
【図5】反射防止コートによる効果を示すための図である。
【図6】波長幅の違いによる反射干渉画像の違いを示す図である。
【図7】処理部の機能および動作を示すフローチャートである。
【図8】変化率の時間的変化の一例を示す図である。
【図9】測定例1における反射干渉画像の変化を示す図である。
【図10】測定例1における変化率の時間的変化を示すグラフである。
【図11】測定例1における濃度とピーク時の変化率との関係を示すグラフである。
【図12】測定例2における反射干渉画像の変化を示す図である。
【図13】測定例2における変化率の変化を示すグラフである。
【図14】測定例2における濃度とピーク時の変化率との関係を示すグラフである。
【図15】第2実施形態に係る膜電位変化検出装置の全体構成を示す概要図である。
【図16】第2実施形態に係る処理部の機能および動作を示すフローチャートである。
【図17】第2実施形態に係る画像位置合わせに用いる標本を示す図である。
【図18】第2実施形態に係る輪郭抽出処理および輪郭適用処理の一例を示す図である。
【図19】第3実施形態に係る膜電位変化検出装置の全体構成を示す概要図である。
【図20】参照光カット装置として機能する参照光シャッタを示す図である。
【図21】定量位相撮像および反射干渉撮像にかかるタイミングチャートに示す図である。
【図22】第3実施形態に係る処理部の機能および動作を示すフローチャートである。
【図23】第3実施形態に係る輪郭抽出処理および輪郭適用処理の一例を示す図である。
【図24】第3実施形態の変形例に係る膜電位変化検出装置の全体構成を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明にかかる膜電位変化検出装置および膜電位変化検出方法の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
第1実施形態では、反射干渉の計測から得られる反射干渉画像を利用して細胞の膜電位の変化を検出する装置について説明を行う。第2実施形態と第3実施形態では、反射干渉の計測と同時に定量位相の計測を行い、反射干渉画像と定量位相画像とを取得し、これらの両画像を利用して細胞の膜電位の変化を検出する方法について説明を行う。
【0027】
[第1実施形態]
(膜電位変化検出装置1の全体構成)
まず、本発明の実施形態に係る膜電位変化検出装置1の全体構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、膜電位変化検出装置1の全体構成を示す概要図である。図1に示すように、膜電位変化検出装置1は、画像取得部10および処理部20から構成されている。
【0028】
画像取得部10は、保持部103(特許請求の範囲の「保持手段」に相当)、対物レンズ104、反射干渉計測用光源106、リング状のスリット107、ハーフミラー108、反射干渉検出用カメラ110(特許請求の範囲の「反射干渉撮像手段」に相当)、XYステージ115およびディスペンサ117を備えている。処理部20は、画像受信部201、解析部202(特許請求の範囲の「解析手段」に相当)および記憶部203を備えている。
【0029】
保持部103は、透明部材102aで形成され、細胞101が収容(載置)された容器102を静置(保持)する。対物レンズ104は、反射干渉計測用光源106から放射され細胞101から反射される光を集光する。対物レンズ104と透明部材102aとは、空気層を介して配置されている。反射干渉計測用光源106は照明光を放射する。リング状のスリット107は輪体照明を行う。ハーフミラー108は、所定の比率で入射光を反射または透過する。反射干渉検出用カメラ110は、反射干渉計測用光源106から放射され、透明部材102aを介して細胞101から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する。XYステージ115は測定領域を切り換える。ディスペンサ117は細胞101に薬液を投与する。画像受信部201は、反射干渉検出用カメラ110が出力した反射干渉画像を受信する部分である。解析部202は、反射干渉画像から細胞と透明部材との接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータに基づいて細胞の膜電位の変化を検出する部分である。本実施形態では、解析部202は、脱分極になると細胞101が透明部材102aから離れ、過分極になると細胞101が透明部材102aに近づくという相関関係に基づいて、細胞101の膜電位の変化を検出している。記憶部203は、解析部202によって算出されるパラメータや、反射干渉検出用カメラ110から出力される画像を記憶する部分である。
【0030】
図2は、上述した機能的構成要素を備える処理部20のハードウェア構成図である。図2に示すように、処理部20は、物理的には、CPU21、ROM22及びRAM23などの主記憶装置、キーボード及びマウスなどの入力デバイス24、ディスプレイなどの出力デバイス25、画像取得部10との間でデータの送受信を行うためのネットワークカードなどの通信モジュール26、ハードディスクなどの補助記憶装置27などを含む通常のコンピュータシステムとして構成される。処理部20の各機能は、CPU21、ROM22、RAM23などのハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU21の制御の元で入力デバイス24、出力デバイス25、通信モジュール26を動作させると共に、主記憶装置22,23や補助記憶装置27におけるデータの読み出しおよび書き込みを行うことで実現される。
【0031】
(膜電位変化検出装置1の詳細説明)
(画像取得部10の説明)
再び、図1を参照しながら説明する。保持部103は、計測中の細胞101の状態を維持するために、細胞101の状態に適した温度に維持することが望ましい。また、細胞101の測定が長時間に及ぶ場合には、保持部103は、細胞101の生育、状態維持に適した温度、湿度、炭酸ガス濃度などが整った環境に維持することが望ましい。
【0032】
図3は、容器102の構成を示す断面図である。保持部103に保持される容器102は、細胞101が載置される部分が透明部材102aによって形成されている。容器102としては、例えばディッシュやマイクロプレートが例示される。容器102における細胞101の載置面102bは帯電されており、本実施形態においては+に帯電されている。
【0033】
容器102は、細胞101の載置面102bの反対側(容器102の観察領域の対物レンズ104側)102cに反射防止コート102dが施されている。この反射防止コート102dは、反射干渉画像を取得する上で著しい効果を発揮する。できるだけ多くの細胞101を計測するためには、低倍率の対物レンズを利用することが望ましい。しかし、低倍率の対物レンズは開口数(NA:Numerical Aperture)が低く、通常油浸や水浸ではなく、ドライ系の対物レンズが一般的である。しかしながら、反射干渉画像において、ドライ系の対物レンズを用いると、対物レンズから出射した照明光は細胞の入っている容器の底面で大きく反射する。これは空気と容器の底面のガラスなどの屈折率差が大きいためである。そのため、大幅に背景光が増加して細胞の接着面の反射干渉画像を見ることはほとんど困難となる。従来、反射干渉観察に、油浸や水浸の対物レンズが用いられてきた理由はここにある。
【0034】
そこで、本実施形態の容器102では、細胞101が入れられた容器102の細胞101の載置面102bの反対側102cに反射防止コート102dを施すことによって、ドライ系の対物レンズでの反射干渉画像の取得を可能にした。図4に示すように、反射防止コート102dをしていない状態で対物レンズから照射された照明光は空気とガラスとの界面で4%程度の反射があるが、ガラス底面に照明光の波長範囲(420nm〜720nm)において反射率Rを0.5%程度に抑えた反射防止コート処理を行うことによって、背景光を1/8以下に低減することができる。このため、本実施形態によれば、ドライ系の対物レンズを用いる場合であっても、高いコントラストで細胞接着面の反射干渉画像を得ることができる。
【0035】
図5に容器102の底面102cに反射防止コート102dを施した場合のドライ系の対物レンズを用いた反射干渉画像を示す。図5(A)のように反射防止コート102dを施さないと、容器102の底面102cからの反射が大きいために、反射干渉画像のコントラストは極めて低下してしまう。これに対して、図5(B)のように底面102cに反射防止コート102dを施した容器102を用いることによって、ドライ系の対物レンズでも良好なコントラストを得ることができる。
【0036】
図1に戻り、対物レンズ104は、上述したようにできるだけ多くの細胞を視野に入れるため、10倍または20倍の低倍率でかつ開口数のより大きい対物レンズであることが望ましい。また、対物レンズ104は、水浸や油浸ではなく、上述したようにドライ系の対物レンズであることが望ましい。本実施形態では、このようなドライ系の対物レンズを使用することにより、対物レンズ104の操作性が改善されるので、容器102全体をスキャンしながら撮像することが可能となる。これにより、細胞101の膜電位の変化を検出する際のスループットを向上させることが可能となる。また、対物レンズ104には、図示しないフォーカス機構が設けられており、後述する反射干渉検出用カメラ110にて得られた画像に基づいてオートフォーカスを実行することができる。
【0037】
反射干渉計測用光源106は、ハロゲンランプやキセノンランプなどの広い波長範囲にわたって放射感度を有する光源が望ましい。従来、コントラストを得るためにある程度波長幅を制限したバンドパスフィルタを用いた照明光が利用されていた。しかしながら、バンドパスされた照明光では、干渉性が高く、細胞の接着面とは関係のない細胞の上部の細胞膜と培養液との界面からの反射による干渉縞が映り込むことがしばしばある。本実施形態では、波長幅の広く干渉性の低い低コヒーレント光を使用している。広い波長幅の照明光を用いることにより、干渉が起きる距離を狭くすることができ、細胞の基板への接着面に限定した反射干渉画像を取り出すことが可能となる。また、ハロゲンランプやキセノンランプなどの広い波長範囲にわたって放射感度を有する光源であれば、700nm〜2500nmの近赤外領域の光を照明光として用いることが可能であり、細胞101に対する毒性を低減できる。なお、反射干渉計測用光源106としては、LED(発光ダイオード)や半導体レーザー(レーザーダイオード)、SLD(スーパールミネッセントダイオード)などの光源を用いてもよい。
【0038】
図6に420nm〜750nmの波長幅の広い照明光を用いた場合と480nm、530nmを中心波長として波長幅30nm程度に狭い波長範囲でバンドパスされた照明光を用いた場合の反射干渉画像の違いを示す。図6(A)と図6(B)のように狭い波長範囲でバンドパスされた照明光では、細胞の接着面ではない細胞の上部の細胞膜と培養液との界面からの反射が干渉縞のように重なって観察されるが、図6(C)のように波長幅の広い照明光を用いることにより、細胞の上部からの反射光による干渉は観察されず、細胞の接着面により限定した情報のみを取り出すことが可能である。
【0039】
本実施形態の反射干渉計測用光源106は、広い放射波長を有するハロゲンランプを光源として用い、出力光に420nmから800nm程度の可視から近赤外の波長域において任意の広い波長幅のバンドパスフィルタを用いている。中心波長が500nmから1000nmで、半値全幅が100nm以上のバンドパスされた光を用いると、細胞の接着面に限定した反射干渉画像を取り出すことができる。基板に接着している細胞と基板との距離は、光軸方向に最大でも1μm以下であると考えられることから、細胞と基板の接着面の情報のみを特異的に取り出すためには反射干渉の過干渉距離を1μm以下になるようにすることが好ましいと考えられる。そこで、反射干渉用の照明光は、細胞に悪影響を与える紫外線領域および熱線領域を除外したうえで、白色光または近赤外光の領域にて波長幅が数百nm程度になるように光学フィルタにてバンドパスされた光を照射する。このように、波長幅を広げることにより光のコヒーレンス長を短くし、可干渉距離を短くすることによって、細胞と容器底面との接着領域から得られる反射光の干渉のみを取り出すことができる。例えば中心波長600nm、波長幅200nmの広帯域にバンドパスされた光を用いると、可干渉距離は500nm程度に短くすることができ、細胞の接着面付近の500nm程度の距離における干渉のみを取り出すことができる。
【0040】
図1に戻り、リング状のスリット107は、照明光の光束の対物レンズ104の瞳と共役の位置に配置され、輪帯照明を行うことが望ましい。一般に、統計的に優位なデータを取得するためにはできるだけ多くの細胞について計測を行う必要がある。そのため、できるだけ低倍率の対物レンズを用いて一度に広い視野を計測することが望まれる。しかしながら、低倍率の対物レンズはNAが低く、NAの低い照明光は標本に垂直に照射される成分が多く、細胞上部に存在する溶液と空気の界面で反射し、反射光によって細胞が照明されるという現象を引き起こす。これによって接着面とは無関係な細胞の形態像が観察側に含まれるようになる。また、対物レンズの中心部分を通過した照明光は、対物レンズ内部で反射され、反射光が観察側に多く含まれて高い背景光となり、接着面の反射干渉画像のコントラストを低下させる原因となる。
【0041】
本実施形態に係る膜電位変化検出装置1の反射干渉計測において、低いNAの対物レンズ104を使う場合は、対物レンズ104の反射干渉計測用光源106側の開口絞りと共役な位置にリング状のスリット107を設ける。リング状に開口したスリット107を反射干渉計測用光源106からの照明光が通り、照明光は対物レンズ104の中心は通らず周辺を通って照明され、角度のついた高いNAの光のみを使って細胞101が照明されるため、細胞101上部の溶液からの反射光の影響を低減することができる。また、リング状のスリット107を用いた照明は、低NAの対物レンズ104のみならず、広く対物レンズ104内部の反射による背景光を低減することができる。リング状に開口したスリット107は使用する対物レンズ104の瞳径に適合して対物レンズ104ごとに変えられるように、使用する対物レンズ104に適合したリング状のスリット107が円盤上に複数個取り付けられて、必要に応じて、円盤を回転させることによって、使用者がリング状のスリット107を選択できるように構成されている。なお、リング状のスリット107を、対物レンズ104の瞳そのものの存在する位置に配置することでも同じ効果を得ることができる。
【0042】
次に、反射干渉計測について述べる。図1に示すように、反射干渉計測用光源106から放射された照明光は、リング状のスリット107を通過して、ハーフミラー108にて反射して、対物レンズ104を通って、測定対象となる細胞101を入れた容器102の底面側から入射する。ハーフミラーに限らず、照明光強度が十分ある場合には5:95(反射:透過)や20:80(反射:透過)にするなど、反射比率を低減させたビームスプリッタを用いてもよい。また、波長によって反射率・透過率が異なるダイクロイックミラーを用いてもよい。容器102の底面の細胞101の接着面から得られる反射光は細胞101の接着距離に応じて干渉を生じ、得られた反射干渉光は再び対物レンズ104にて集光され、ハーフミラー108を介して、反射干渉検出用カメラ110にて撮像される。このようにして、容器102の底面の細胞101の接着面から反射した光は、細胞101の接着距離に応じて干渉した光の振幅が異なり、明暗のコントラストとして撮影される。
【0043】
ここで、反射干渉の原理について簡単に説明する。一般に、反射干渉計測においては照明光を細胞の接着している基板の裏面側から入射し、基板と培養液との界面からの反射光とその上部の培養液と細胞底面の界面からの反射光が干渉することにより細胞と基板との距離に応じた明暗のコントラストを得ることができる。可視光の照明においては、おおむね細胞と基板との距離が数十nm以下に近づいた状態では暗く撮影される。一方、細胞と基板との距離が100nmから200nm程度に離れた状態では明るく撮影される。
【0044】
本実施形態の膜電位変化検出装置1では、できるだけ多くの細胞101を測定したり、異なる試薬に対する応答を測定したりするために、観察する位置を移動させる機構を有していてもよい。細胞101への影響を少なくするため、および定量位相計測において液面の揺れを抑えるために、細胞101を入れた容器は静止したままで、照明光学系と観察光学系を一体とした画像取得部10の本体をXY平面上で移動させることによって観察位置を変える方法が望ましい。これと合わせて、観察しているXYの空間平面座標を画像に記録することが望ましい。本実施形態では、稼動距離が容器102の観察範囲を十分にカバーしており、かつ位置決め精度が数十μm以下(好ましくは1μm以下)のXYステージ115が備えられている。
【0045】
(処理部20の説明)
図7のフローチャートを更に参照しながら、処理部20の機能および動作について説明する。最初に、反射干渉検出用カメラ110にて細胞101の接着面の反射干渉画像が得られる(ステップS101、特許請求の範囲の「反射干渉撮像ステップ」に相当)。容器102の底面の基板上に接着している細胞101の容器102の底面の基板からの距離に応じて干渉光の振幅が異なり、反射干渉画像は明暗のコントラストとして撮影される。次に、反射干渉画像の視野内の反射光のシェーディングを補正する。あわせて細胞101のない背景の値が時間的に変動しないように、時間ごとに背景部のオフセット補正を行う。これらの画像演算補正によって、空間的、時間的に変動の少ない反射干渉画像を得ることができる。
【0046】
反射干渉検出用カメラ110は、例えば1秒間隔で反射干渉画像を取得している。なお、反射干渉画像の取得間隔は、細胞101の膜電位の変化の速度に合わせて適宜調節することが好ましい。そして、反射干渉検出用カメラ110が画像の取得を開始した一定時間の後、ディスペンサ117の薬液分注操作を行い、細胞101の入っている溶液に目的の薬液を目的の濃度になるように投与する。
【0047】
解析部202は、このようにして継続的に得られる反射干渉画像を用いて細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータを算出する(ステップS102、特許請求の範囲の「解析ステップ」に相当)。本実施形態では、細胞101の膜電位の変化を評価するパラメータ(特許請求の範囲の「接着に関するパラメータ」に相当)として、「平均輝度の変化率」を算出している。解析部202は、反射干渉画像から細胞101の接着している領域と細胞101が接着していない領域とを区別して、細胞101の接着している領域を特定し、当該領域(以下、「計測領域」と示す)の平均輝度を計測する。
【0048】
解析部202は、反射干渉検出用カメラ110から順次出力されてくる反射干渉画像を画像受信部201が受信すると、当該反射干渉画像における計測領域の平均輝度I(t)を算出し、薬液投与前に予め取得されている計測領域の平均輝度(以下、「基礎となる平均輝度I(base)」と示す)に対する変化率dIを算出する(ステップS103、特許請求の範囲の「解析ステップ」に相当)。なお、基礎となる平均輝度は、例えば薬液投与前に取得された計測領域の反射干渉画像から得られる平均輝度を用いてもよいし、細胞の種類ごとに予め初期値として記憶されている初期輝度を用いてもよい。このような基礎となる平均輝度は、記憶部203に記憶されており、解析部202は記憶部203から適時、基礎となる平均輝度を読み出して、変化率dIを算出する。変化率dIは、以下の式により算出される。
【0049】
変化率dI(t)={I(t)−I(base)}/I(base)
I(t)=反射干渉の平均輝度(背景補正された値)
I(base)=薬液投与前のI(t)の平均値
【0050】
解析部202は、上記式によって算出される変化率dIに基づいて細胞101の膜電位の変化を検出する。すなわち、解析部202は、所定の変化率dIが算出されたとき、細胞101における膜電位に何らかの変化が検出されたと評価している。また、解析部202は、上記式によって算出される薬液投与前の平均的な輝度に対する変化率dI(%)を時間軸にプロットした、例えば図8(A)や図8(B)に示すようなグラフを出力してもよい。すなわち、薬液投与前の輝度に対する変化率dI(%)をプロットしたグラフを、細胞101の膜電位の変化を示したグラフとして出力してもよい。
【0051】
また、本実施形態の膜電位変化検出装置1では、脱分極になると細胞101が透明部材102aから離れ反射干渉画像が明るくなり、過分極になると細胞101が透明部材に近づき反射画像が暗くなるという相関関係に基づいている。したがって、変化率dIのプラス方向への変化により細胞101の膜電位が脱分極になったことを検知し、変化率dIのマイナス方向への変化により細胞101の膜電位が過分極になったことを検知することができる。また、薬液投与後の一定時間内におけるピーク(脱分極の場合は最大値、過分極の場合は最小値)を求めて、当該数値の大小から細胞101に投与した薬液濃度に対する判定も行うことができる。なお、この点については後段の測定例1および2の欄で述べる。
【0052】
膜電位変化検出装置1は、ひとつのウエルの解析が終了すると、次の計測を行うべきウエルの位置にXYステージ115を移動させ、細胞101の載置面102bに焦点を合わせて再び計測を開始する。これを繰り返し、各種の薬剤に対して細胞101の反応を測定する。
【0053】
(測定例1)
ここでは、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)が収容された容器102を保持部103にセットし、当該CHO細胞に脱分極を引き起こすKCl(薬品:塩化カリウム)を投与した場合に、反射干渉検出用カメラ110により取得される反射干渉画像と、解析部202により算出される平均輝度の変化率dI(パラメータ)とについて検証を行った。
【0054】
まず、反射干渉検出用カメラ110にて取得される、CHO細胞にKClを投与する前、KClを投与して5分後、KClを投与して10分後、およびKClを投与して15分後の反射干渉画像について検証を行った。これによると、図9に示されるようにCHO細胞にKClを投与した後に、CHO細胞が載置されている透明部材から離れる離反現象が起きて、反射干渉画像が明るくなっていることが観察できた(5分後の画像)。これにより、本実施形態の膜電位変化検出装置1では、細胞101の膜電位の変化を評価するパラメータ(接着に関するパラメータ)として、例えば「平均輝度の変化率dI」を算出し、当該パラメータの変化を検出することで、細胞101の膜電位が脱分極になったことを検出できることが確認できた。
【0055】
次に、当該CHO細胞に、濃度の異なる(6.25mM、25mM、50mM、100mM)KClをそれぞれ投与し、解析部202による平均輝度の変化率dI(パラメータ)の算出をそれぞれ行った。この結果、図10に示されるようなグラフを得た。これによれば、細胞101の膜電位が脱分極になると、一過的に平均輝度の変化率dIがプラス方向に変化することが確認できた。これにより、本実施形態の膜電位変化検出装置1では、図10に示すように、解析部202によって一過的に平均輝度の変化率dIがプラス方向に大きくなることが検出できるので、細胞101の膜電位が脱分極になったことを検出することができる。
【0056】
また、図10のグラフからは、投与したKClの濃度に比例して平均輝度の変化率dIがプラス方向に最大振幅が大きくなることが確認できた。そこで、平均輝度の変化率dIのピーク時(図10において5分少し経過したとき)におけるKClの濃度と平均輝度の変化率dIとの関係をグラフ化すると、図11に示すような、KCl濃度が6.25mM、25mM、50mM、100mMと高くなるにつれ、ピーク時の平均輝度の変化率も+8%、+35%、+55%、+95%と順に高くなる結果を得た。これにより、ピーク時の平均輝度の変化率と投与した薬品の濃度とには依存関係があることが確認できた。本実施形態の膜電位変化検出装置1では、投与した薬品の濃度に比例(濃度に依存)した平均輝度の変化率dIが算出されるので、投与した薬品の濃度ごとに細胞101の膜電位の変化を評価することができる。このため、細胞101に対する薬効評価をする場合にも本実施形態の膜電位変化検出装置1を利用することが可能となる。
【0057】
(測定例2)
ここでは、MIN−6膵β細胞株(マウス由来膵β細胞株)を用いたカルシウムイオン依存性カリウムチャンネル(以下、「試料細胞」と示す)に作動性化合物を投与した場合に、反射干渉検出用カメラ110により取得される反射干渉画像と、解析部202により算出される平均輝度の変化率dI(パラメータ)とについて検証を行った。
【0058】
まず、反射干渉検出用カメラ110にて取得される、試料細胞に作動性化合物を投与する前、作動性化合物を投与した直後、および作動性化合物を投与して5分後の反射干渉画像について検証を行った。これによると、図12に示されるように試料細胞に作動性化合物を投与した後に、試料細胞が載置されている透明部材に近づく接近現象が起きて、反射干渉画像が暗くなっていることが観察できた(作動性化合物した直後の画像)。これにより、本実施形態の膜電位変化検出装置1では、細胞101の膜電位の変化を評価するパラメータ(接着に関するパラメータ)として、例えば「平均輝度の変化率dI」を算出し、当該パラメータの変化を検出することで、細胞101の膜電位が過分極になったことを検出できることが確認できた。
【0059】
次に、当該試料細胞に、リガンド濃度の異なる(100μM、25μM、6.25μM)作動性化合物をそれぞれ投与し、解析部202による平均輝度の変化率dI(パラメータ)の算出をそれぞれ行った。この結果、図13に示されるようなそれぞれのグラフを得た。これによれば、細胞101の膜電位が過分極になると、一過的に平均輝度の変化率dIがマイナス方向に変化することが確認できた。これにより、本実施形態の膜電位変化検出装置1では、図13に示すように、解析部202によって一過的に平均輝度の変化率dIがマイナス方向に大きくなることが検出できるので、細胞101の膜電位が過分極になったことを検出することができる。
【0060】
また、図13のグラフを総じてみると、投与した作動性化合物の濃度に比例して平均輝度の変化率dIがマイナス方向に最大振幅が大きくなることが確認できた。そこで、平均輝度の変化率dIのピーク時(図12において300ミリ秒付近)における作動性化合物の濃度と平均輝度の変化率dIとの関係をグラフ化すると、図14に示すような、作動性化合物の濃度が100μM、25μM、6.25μMと高くなるにつれ、薬剤投与後の平均輝度の変化率dIのマイナス方向への変化量も10%、17%、23%、42%、49%、55%と順に大きくなる結果を得た。これにより、ピーク時の平均輝度の変化率と投与した薬品の濃度とには依存関係があることが確認できた。本実施形態の膜電位変化検出装置1では、投与した薬品の濃度に比例(濃度に依存)した平均輝度の変化率dIが算出されるので、投与した薬品の濃度ごとに細胞101の膜電位の変化を評価することができる。このため、細胞101に対する薬効評価をする場合にも本実施形態の膜電位変化検出装置1を利用することが可能となる。
【0061】
(第1実施形態の作用及び効果)
続いて、以上まで説明した第1実施形態に係る膜電位変化検出装置1の作用及び効果について説明する。本実施形態の膜電位変化検出装置1によれば、反射干渉計測用光源106、保持部103、反射干渉検出用カメラ110、および解析部202を備えることにより、細胞101からの反射光をもとに細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞101の膜電位の変化を検出している。発明者らは、細胞が載置された透明部材と細胞との接着度合と、細胞の膜電位の変化との間に相関関係があることを発見した。本発明は、発見されたこのような相関関係を利用して、細胞の膜電位の変化を、細胞と透明部材との接着距離(接着度合)の変化として捉えていることに特徴がある。当該接着距離に基づく細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータは非侵襲的な方法で得られるので、細胞101の膜電位の変化をラベルすることなく非侵襲的に検出することが可能となる。
【0062】
また、上記膜電位変化検出装置1によれば、細胞101が脱分極および過分極になったときの細胞101の膜電位の変化を検出することができる。
【0063】
(第1実施形態の変形例)
上記実施形態においては、細胞101の膜電位変化を評価するための解析対象となる計測領域として、細胞101の接着している領域を「計測領域」とする例を挙げて説明したがこれに限定されるものではない。例えば細胞101をコンフルエント(容器の面積に対して約80%)に培養した被検体を用意し、測定開始時に得られた反射干渉画像の視野全体を計測領域として定めてもよい。また、測定開始時に得られた反射干渉画像から一定の輝度のしきい値や画像処理を用いて抽出した細胞101の存在する領域を計測領域として定めてもよい。
【0064】
上記実施形態においては、細胞101の膜電位変化を評価するパラメータとして、「平均輝度の変化率」を用いた例を挙げて説明したがこれに限定されるものではない。例えば細胞101の膜電位変化を評価するパラメータとして「接着面積の増減の変化」を用いることもできる。この場合、時系列に取得した反射干渉画像から一定の輝度のしきい値や画像処理を用いて抽出した細胞101の接着に相当する領域を計測領域として定めて、視野全体における計測領域の画素数を求める。この場合の接着面積の増減の変化率dAは、以下の式により算出される。
【0065】
変化率 dA(t)={A(t)−A(base)}/A(base)
A(t)=反射干渉の各時間の接着領域の画素数
A(base)=薬液投与前のA(t)の平均値
【0066】
解析部202は、上記式によって算出される変化率dAに基づいて細胞101の膜電位の変化を検出する。すなわち、解析部202は、所定の変化率dAが算出されたとき、細胞101における膜電位に何らかの変化が検出されたと評価してもよい。また、解析部202は、上記式によって算出される変化率dAを時間軸にプロットしたグラフを、細胞101の膜電位の変化を示したグラフを出力してもよい。すなわち、薬液投与前の接着面積に対する変化率dA(%)をプロットしたグラフを、細胞101の膜電位の変化を示したグラフとして出力してもよい。これにより、膜電位変化検出装置1を使用する使用者に対して、細胞101における膜電位の変化を明示的に示すことができる。
【0067】
上述したように、本実施形態の膜電位変化検出装置1では、脱分極になると細胞101が透明部材102aから離れ、過分極になると細胞101が透明部材に近づくという相関関係に基づいているので、変化率dAのプラス方向への変化により膜電位の細胞101が脱分極になったことを検知し、変化率dAのマイナス方向への変化により細胞101の膜電位が過分極になったことを検知することができる。また、薬液投与後の一定時間内におけるピーク(脱分極の場合は最大値、過分極の場合は最小値)を求めて、当該数値の大小から細胞101に投与した薬液濃度に対する判定も行うことができる点も同様である。
【0068】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態にはない構成についてのみ詳細な説明を行い、第1実施形態と同じ構成については同じ参照番号を付して詳細な説明を省略する。
【0069】
(膜電位変化検出装置41の全体構成)
まず、本発明の実施形態に係る膜電位変化検出装置41の全体構成について、図15を参照しながら説明する。図15は、膜電位変化検出装置41の全体構成を示す概要図である。図15に示すように、膜電位変化検出装置41は、画像取得部10および処理部20から構成されている。
【0070】
画像取得部10は、保持部103(特許請求の範囲の「保持手段」に相当)、対物レンズ104、定量位相計測用光源121、照射光絞り部121B、反射干渉計測用光源106、ハーフミラー108、ダイクロイックミラー122、全反射ミラー123、反射干渉検出用カメラ110(特許請求の範囲の「反射干渉撮像手段」に相当)、回折型干渉光学系124、および定量位相検出用カメラ125(特許請求の範囲の「定量位相撮像手段」に相当)を備えている。ハーフミラー108は反射干渉計測用光源106からの光を細胞101へ導くための反射干渉入射用光学系であり、また、ダイクロイックミラー122は、反射干渉検出用カメラ110へ細胞101からの光を導くための反射干渉計測用光学系である。また、対物レンズ104およびハーフミラー108、ダイクロイックミラー122は、細胞101の同一範囲からの光を反射干渉検出用カメラ110および定量位相検出用カメラ125へ導くための共通光学系である。つまり、本実施形態では、反射干渉入射用光学系と反射干渉計測用光学系が共通光学系となっている。また、全反射ミラー123および回折型干渉光学系124は、定量位相検出用カメラ125へ光を導くための定量位相光学系である。反射干渉検出用カメラ110は、反射干渉計測用光源106から放射され、細胞101から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する。定量位相検出用カメラ125は、定量位相計測用光源121から放射され、細胞101を透過する光を撮像することにより、定量位相画像を生成する。照射光絞り部121Bは、照明光を絞る手段である。照射光絞り部121Bとしては、ピンホールやアパーチャーが例示される。
【0071】
処理部20は、画像位置合わせ部211(特許請求の範囲の「画像位置合わせ手段」に相当)、輪郭抽出部212(特許請求の範囲の「輪郭抽出手段」に相当)、輪郭適用部213(特許請求の範囲の「輪郭適用手段」に相当)、解析部202(特許請求の範囲の「解析手段」に相当)、および記憶部203を備えている。
【0072】
画像位置合わせ部211は、反射干渉画像と定量位相画像との間で、空間的な位置を一致させることにより、両画像の位置合わせを行う部分である。輪郭抽出部212は、定量位相画像に基づき、細胞101の範囲である輪郭を抽出する部分ある。輪郭適用部213は、輪郭抽出部212が抽出した輪郭を反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する部分である。解析部202は、輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、細胞101と透明部材102aとの接着に関する細胞101ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞101ごとの膜電位の変化を検出する部分である。図2は、以上のような機能的構成要素を備える処理部20のハードウェア構成図である。当該ハードウェア構成についても第1実施形態の膜電位変化検出装置1と同様であるのでここではその説明を省略する。
【0073】
次に、図15を参照しながら、画像取得部10について詳細に説明する。定量位相計測について述べる。細胞101の入った容器102の上部に設置した、ハロゲンランプやキセノンランプなどの定量位相計測用光源121から放射された照明光は、ピンホールやアパーチャーなどの照明光絞り部121Bを通過することで点光源に近い照射光となり、細胞101の入った容器102を透過し、対物レンズ104にて集光される。なお、定量位相計測用光源121としては、LED(発光ダイオード)や半導体レーザー(レーザーダイオード)、SLD(スーパールミネッセントダイオード)などの光源を用いてもよい。なお、レーザーやSLDの場合には、光源サイズが十分小さいため、照明光絞り部121Bは不要になる。そして、ハーフミラー108を介し、定量位相像と反射干渉像を波長で分離するためのダイクロイックミラー122を透過して、更に全反射ミラー123を介して、位相計測のための回折型干渉光学系124にて物体光と参照光の干渉像を形成し、定量位相検出用カメラ125にて干渉縞画像が撮像される。なお、ダイクロイックミラー122はハーフミラーなどのビームスプリッタでもよく、この場合、ビームスプリッタと定量位相検出用カメラ125の間に定量位相検出に用いる波長を選択するためのフィルタを配置する。
【0074】
反射干渉計測について述べる。反射干渉計測用光源106から放射された照明光は、ハーフミラー108にて反射して、対物レンズ104を通って、測定対象となる細胞101を入れた容器102の底面側から入射する。ハーフミラーに限らず、照明光強度が十分ある場合には5:95(反射:透過)や20:80(反射:透過)にするなど、反射比率を低減させたビームスプリッタを用いてもよい。また、波長によって反射率・透過率が異なるダイクロイックミラーを用いてもよい。容器102の底面の細胞101の接着面から得られる反射光は細胞101の接着距離に応じて干渉を生じ、得られた反射干渉光は再び対物レンズ104にて集光され、ハーフミラー108を介し、定量位相像と反射干渉像とを波長で分離するためのダイクロイックミラー122にて反射干渉像のみを反射して、反射干渉検出用カメラ110にて撮像される。なお、ダイクロイックミラー122の代わりにハーフミラーなどのビームスプリッタを用いる場合は、ビームスプリッタと反射干渉検出用カメラ110との間に反射干渉検出に用いる波長を選択するためのフィルタを配置すればよい。容器102の底面の細胞101の接着面から反射した光は、細胞101の接着距離に応じて干渉した光の振幅が異なり、明暗のコントラストとして撮影される。なお、定量位相像および反射干渉像は、共通の対物レンズ104を介して取得されるので、細胞101の撮像範囲は、定量位相計測および反射干渉計測においてほぼ同一範囲となる。
【0075】
定量位相画像を取得するカメラ125と反射干渉画像を取得するカメラ110は同じ性能、同じ画素分解能のカメラに限定する必要はない。それぞれのカメラに入射する光量や入射波長は互いに異なるので、それぞれに適した性能、空間分解能のカメラを用いてもよい。例えば定量位相検出用カメラ125には830nmに感度が高く、画素サイズが大きめの感度優先のカメラを用い、反射干渉検出用カメラ110には可視域に感度が高く、画素サイズが小さめの空間分解能優先のカメラを利用するなどしてよい。このような場合に二つのカメラの空間座標を一致させる処理が必要となるが、これについては後段にて詳述する。
【0076】
定量位相計測と反射干渉計測を波長で区別できるように、反射干渉計測用光源106と定量位相計測用光源121のそれぞれの照明波長には、異なる波長域の光を用いても良い。ダイクロイックミラー122にて特定の波長で定量位相像と反射干渉像を分離選択することができる。したがって、定量位相計測と反射干渉計測で、クロストークなく同時刻の像を得ることができる。
【0077】
次に、図16のフローチャートを更に参照しながら、処理部20の機能および動作について説明する。最初に、定量位相検出用カメラ125にて参照光と細胞101を透過した物体光の干渉縞画像が得られる(ステップS201、特許請求の範囲の「定量位相撮像ステップ」に相当)。干渉縞画像から公知の演算方法を用いて定量的な位相画像を形成する。定量位相画像を得るためには、細胞101のない背景領域のオフセット補正および背景領域の視野におけるシェーディング補正を施し、背景部分は空間的に均一で、背景部の位相の値を0に補正し、細胞101の位相(光路長)の2次元マップを得る。
【0078】
一方で、ステップS201とともに、反射干渉検出用カメラ110にて細胞101の接着面の反射干渉画像が得られる(ステップS202、特許請求の範囲の「反射干渉撮像ステップ」に相当)。容器102の底面の基板上に接着している細胞101の容器102の底面の基板からの距離に応じて干渉光の振幅が異なり、反射干渉画像は明暗のコントラストとして撮影される。反射干渉画像の視野内の反射光のシェーディングを補正する。あわせて細胞101のない背景の値が時間的に変動しないように、時間ごとに背景部のオフセット補正を行う。これらの画像演算補正によって、空間的、時間的に変動の少ない定量位相画像および反射干渉画像を得ることができる。
【0079】
次に、定量位相画像および反射干渉画像の空間的位置補正が行われる(ステップS203、特許請求の範囲の「画像位置合わせステップ」に相当)。図17は、画像位置合わせに用いる標本30を示す。位置合わせの標本30として、ガラス基板に格子31が刻まれたマイクロスケールやドットパターンなどを用いる。マイクロスケールやドットパターンには2つのカメラで撮影したときに同じ位置が分かるように、少なくとも1か所以上に目印が付いていると操作が簡便である。図17の例では、三角と丸の二つの目印が付いている。
【0080】
ここで、反射干渉側のカメラ110の像を定量位相の像に合わせて位置をずらす手順について詳細に説明する。まず、細胞101の標本の代わりにマイクロスケールまたはドットパターンを置き、反射干渉および定量位相のそれぞれの撮影用カメラで撮影する。次に、マイクロスケールまたはドットパターンを撮影して得られた反射干渉画像と定量位相画像をそれぞれ異なる疑似カラー(例えば反射干渉画像は緑、定量位相画像は赤など)で重ね合わせる。場合によっては画像の輝度を反転すると見やすくなる。続いて、反射干渉画像の格子像またはドット像を定量位相側の格子像またはドット像に合致させるために、重ね合わせた画像を見ながら、反射干渉画像に対して(1)拡大縮小倍率、(2)水平方向の移動量(画素数)、(3)垂直方向の移動量(画素数)、(4)回転角度、(5)回転方向、(6)左右反転などを微調整し、調整量を決定する。調整量は、重ね合わせて表示した格子像またはドット像が重なり、エッジが出なくなるような位置に決定されればよく、例えば、それぞれの格子像またはドット像が重なり合って緑色と赤色が黄色になるような位置で決定される。
【0081】
撮影した2つのカメラの像に空間歪があり、両者の空間歪のパターンが大きく異なる場合は、上述の(1)から(6)のデータだけで一律にすべての画素の位置を合致させることは難しい場合がある。その場合は視野内のすべての画素における移動量が異なるため、各々の画素に対して移動量を定める必要がある。具体的には、格子像の各交点またはドット像の各ドットの中心座標が2つのカメラで一致するように、各点のずらし量を決定する。格子またはドットの存在する座標以外の空間座標は補間することによってずらし量を決定する。このようにして空間的に全画素(全座標)について1画素単位でずらし量を記憶したテーブルを作成して、位置合わせデータとする。得られた位置合わせデータをファイルで保存する。新規に測定を行い画像を取得したときに、ファイルで保存した位置合わせデータを用いて、画像間の位置合わせを行い、位置を補正した画像を出力する。また、新規に測定を行い取得した画像データをファイルに保存するときには、位置合わせデータを画像データと一緒にファイルに保存することが好ましい。こうすることによって、画像ファイルを呼び出した時にも、画像を新規に取得した時の最も適切であった位置合わせデータを援用して、当該呼び出した画像を補正することができる。
【0082】
なお、以上のような位置合わせは定量位相や反射干渉の計測のたびに行う必要はなく、同じ光学系を利用するのであれば、使用環境や振動の影響による位置ずれを考慮して、例えば1カ月に1回程度の頻度で行えば良い。また、観察側の光学系に観察用のフィルタを選択する部品(例えば電動フィルタホイールなど)が装着されている場合は、位置合わせは使用するフィルタごとに行うことが望ましい。なぜなら、使用するフィルタの傾きや平行度によって像の位置ずれ量や位置ずれの方向が異なるからである。
【0083】
なお、繰り返しとなるため説明は省略するが、以上とは逆に、定量位相側のカメラ125の像を反射干渉の像に合わせて位置をずらす場合にも、上述の手順を適宜適用することができる。また、以上の手順は、自動化された画像処理によって、人の手に寄らずに、行うことができる。
【0084】
図16に戻り、ステップS203の位置合わせの後に、細胞101の輪郭領域を抽出する処理(以下、「セグメンテーション」ともいう。)が行われる(ステップS204およびS205、特許請求の範囲の「輪郭抽出ステップ」に相当)。
【0085】
まず、図18に示すように、同時刻に撮像され、位置合わせが行われた後の定量位相画像および反射干渉画像のうち、定量位相画像から個々の細胞101の輪郭となる領域を画像処理により検出する(ステップS204:輪郭抽出ステップ)。つまり、定量位相画像では、細胞101のない背景となる溶液を通る光に対して細胞101を通る光は、細胞101の屈折率が溶液の屈折率よりも大きいために、光路長が長くなる。そのため、細胞101の存在する領域の画素の位相の値は背景よりも大きな値となる。そこで、適正な閾値または空間フィルタ処理を用いることにより、人の手に寄らず自動的に、背景と細胞101を分離することができる。そして、一つ一つの細胞101に対応した輪郭を決定し、それぞれの細胞101の占める領域に対応する画素座標の領域を決定することができる。
【0086】
次に、ステップS204で得られた個々の細胞101の輪郭領域の画素座標を空間座標の一致した反射干渉画像に適応させ、つまりステップS204で得られたセグメンテーション領域を反射干渉画像にコピーすることにより、定量位相画像で決定された個々の細胞101の輪郭領域を反射干渉画像に当てはめる(ステップS205、特許請求の範囲の「輪郭適用ステップ」に相当)。このようにすることで、図18に示すように、定量位相画像と反射干渉画像の両方の画像A,Bに対して同じ輪郭領域を決定することができる。また、一つ一つの細胞に対応した輪郭を決定し、それぞれの細胞の占める領域に対応する画素座標の領域を決定することができる。
【0087】
図16に戻り、次に、解析部202は、定量位相画像で決定された個々の細胞101の輪郭領域を反射干渉画像に当てはめた画像(以下、「合成画像」と示す)を用いて、個々の細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータを算出する(ステップS206、特許請求の範囲の「解析ステップ」に相当)。本実施形態の処理が第1実施形態における処理と異なる点は、第1実施形態の解析部202が、反射干渉画像全体から細胞101の接着している領域を計測領域としているのに対し、本実施形態の解析部202は、個々の細胞の領域を計測領域としている点である。
【0088】
本実施形態では、個々の細胞101の膜電位の変化を評価するパラメータ(特許請求の範囲の「接着に関するパラメータ」に相当)として、「平均輝度の変化率」を算出している。解析部202は、上述したように個々の細胞の領域を計測領域としての平均輝度を計測する。
【0089】
解析部202は、画像位置合わせ部211から出力される順次出力されてくる合成画像を受信すると、当該合成画像における個々の計測領域の平均輝度I(t)を算出し、薬液投与前に予め取得されている個々の計測領域の平均輝度(以下、「基礎となる平均輝度I(base)」と示す)に対する変化率dIを算出する。なお、基礎となる平均輝度は、例えば薬液投与前に取得された個々の計測領域の合成画像から得られる平均輝度を用いてもよいし、細胞の種類ごとに予め初期値として記憶されている初期輝度を用いてもよい。このような基礎となる平均輝度は、記憶部203に記憶されており、解析部202は記憶部203から適時、基礎となる平均輝度を読み出して、変化率dIを算出する。変化率dIは、以下の式により算出される。
【0090】
変化率dI(t)={I(t)−I(base)}/I(base)
I(t)=反射干渉の平均輝度(背景補正した値)
I(base)=薬液投与前のI(t)の平均値
【0091】
解析部202は、上記式によって算出される変化率dIに基づいて個々の計測領域に対する細胞101の膜電位の変化を検出する。すなわち、解析部202は、個々の計測領域において所定の変化率dIが算出されたとき、個々の細胞101における膜電位に何らかの変化が検出されたと評価している。また、解析部202は、上記式によって算出される変化率dIを時間軸にプロットした、例えば図8(A)や図8(B)に示すようなグラフを出力してもよい。また、薬液投与前の接着面積に対する変化率dI(%)をプロットしたグラフを、細胞101の膜電位の変化を示したグラフとして出力してもよい。なお、上記グラフを出力する際には、個々の計測領域ごと、すなわち個々の細胞ごとに出力することが好ましい。
【0092】
また、本実施形態の膜電位変化検出装置41では、脱分極になると細胞101が透明部材102aから離れ反射干渉画像が明るくなり、過分極になると細胞101が透明部材に近づき反射画像が暗くなるという相関関係に基づいている。したがって、変化率dIのプラス方向への変化により膜電位の個々の細胞101が脱分極になったことを検知し、変化率dIのマイナス方向への変化により個々の細胞101の膜電位が過分極になったことを検知することができる。また、薬液投与後の一定時間内におけるピーク(脱分極の場合は最大値、過分極の場合は最小値)を求めて、当該数値の大小から個々の細胞101に投与した薬液濃度に対する判定も行うことができる。
【0093】
(第2実施形態の作用及び効果)
第2実施形態に係る膜電位変化検出装置41では、定量位相計測用光源121、反射干渉計測用光源106、反射干渉検出用カメラ110、定量位相検出用カメラ125、および解析部202を備えることにより、細胞101の接着に関する情報、また細胞101の面積、光学的厚さに関する情報を同時に取得することができるので、細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータのバリエーションを増やすことができる。また、自動化された処理により細胞101のセグメンテーションが実行されるので、個々の細胞101に対してデータを取得することが容易に可能となる。また、薬液分注後の細胞の反応が早く、できるだけ短いインタバルで計測を行いたい場合には、本実施形態に係る膜電位変化検出装置41のような反射干渉画像と定量位相画像を同時に取得する構成が有効である。
【0094】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態においては、定量位相画像から取得できる細胞の輪郭を反射干渉画像にコピー(セグメンテーション)する例を挙げて説明したがこれに限定されるものではない。例えば、セグメンテーションの工程を経なくても、細胞101の膜電位の変化を検出することが可能である。すなわち、定量位相画像から一定のしきい値にて得られる細胞101の存在を示す領域全体を計測領域とし、この計測領域における平均的な輝度を用いて細胞101の膜電位の変化を検出してもよい。なお、計測領域の平均輝度に対する変化率dIを算出することについては上述したとおりなので、ここではその説明を省略する。
【0095】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1実施形態にはない構成についてのみ詳細な説明を行い、第1実施形態と同じ構成については同じ参照番号を付して詳細な説明を省略する。
【0096】
(膜電位変化検出装置61の全体構成)
まず、本発明の実施形態に係る膜電位変化検出装置61の全体構成について、図19を参照しながら説明する。図19は、膜電位変化検出装置61の全体構成を示す概要図である。図19に示すように、膜電位変化検出装置61は、画像取得部10および処理部20から構成されている。
【0097】
画像取得部10は、保持部103(特許請求の範囲の「保持手段」に相当)、対物レンズ104、定量位相計測用光源121、定量位相シャッタ121A(特許請求の範囲の「定量位相光量調整手段」に相当)、照明光絞り部121B、反射干渉計測用光源106、反射干渉シャッタ106A(特許請求の範囲の「反射干渉光量調整手段」に相当)、反射干渉照明用光学系としてのハーフミラー108、全反射ミラー131、回折型干渉光学系132、参照光カット装置133およびカメラ134(特許請求の範囲の「反射干渉撮像手段」に相当)を備えている。
【0098】
処理部20は、画像受信部221、輪郭抽出部212(特許請求の範囲の「輪郭抽出手段」に相当)、輪郭適用部213(特許請求の範囲の「輪郭適用手段」に相当)、解析部202、および記憶部203を備えている。画像受信部221は、カメラ134の撮像により生成された反射干渉画像および定量位相画像を受信する部分である。輪郭抽出部212は、定量位相画像に基づき、細胞101の範囲である輪郭を抽出する部分である。輪郭適用部213は、輪郭抽出部212が抽出した輪郭を反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する部分である。解析部202は、輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、細胞101と透明部材102aとの接着に関する細胞101ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞101ごとの膜電位の変化を検出する部分である。図2は、以上のような機能的構成要素を備える処理部20のハードウェア構成図である。当該ハードウェア構成についても第1実施形態の膜電位変化検出装置1と同様であるのでここではその説明を省略する。
【0099】
次に、図19を参照しながら、画像取得部10について詳細に説明する。反射干渉シャッタ106Aは、ハロゲンランプやキセノンランプなどの反射干渉計測用光源106から放射される光の光量を調整する。定量位相シャッタ121Aは、ハロゲンランプやキセノンランプなどの定量位相計測用光源121から放射される光の光量を調整する。なお、ハロゲンランプやキセノンランプなどの広い波長範囲にわたって放射感度を有する光源であれば、700nm〜2500nmの近赤外領域の光を照明光として用いることが可能であり、細胞101に対する毒性を低減できる。ハロゲンランプやキセノンランプなどの電球系光源を、光源として用いた場合、光量や波長などの安定性を考慮すると、測定中は光源自体をON/OFFせずに光源をONにしておいたほうがよい。そのため、反射干渉シャッタ106Aや定量位相シャッタ121Aが必要となる。ただし、LED(発光ダイオード)や半導体レーザー(レーザーダイオード)、SLD(スーパールミネッセントダイオード)などの半導体系光源を光源として用いた場合、光源自体をON/OFFすることで反射干渉計測と定量位相計測との切り替えを行ってもよい。この場合、図24に示すように、反射干渉計測用光源106のON/OFFによる切り替えにより、反射干渉計測用光源106から放射される光の光量を調整し、且つ定量位相計測用光源121のON/OFFによる切り替えにより、定量位相計測用光源121から放射される光の光量を調整する光源制御部225を備えればよい。そして、図19に示す実施形態における画像取得部10から反射干渉シャッタ106A、定量位相シャッタ121A、および照明光絞り部121Bをなくせばよい。
【0100】
カメラ134は、反射干渉計測用光源106から放射され、細胞101から反射される反射光を撮像することにより、反射干渉画像を生成するとともに、定量位相計測用光源121から放射された照射光が、ピンホールやアパーチャーなどの照明光絞り部121Bを通過することで点光源に近い照射光となり、細胞101を透過する透過光を撮像することにより、定量位相画像を生成する。後述するように、反射干渉画像を生成する際には、定量位相シャッタ121Aが定量位相計測用光源121からの光を遮光した上で、カメラ134が反射光を撮像する。また、定量位相画像を生成する際には、反射干渉シャッタ106Aが反射干渉計測用光源106からの光を遮光した上で、カメラ134が透過光を撮像する。以上により、カメラ134は、反射干渉計測および定量位相計測に共通の一つのカメラとして、時間的に互いに排他的に両計測を行うこととなる。
【0101】
回折型干渉光学系132は、定量位相画像を生成するために、細胞101からの透過光を物体光および参照光に分離して干渉させる。参照光カット装置133は、回折型干渉光学系132において参照光が通る光路上に設置され、反射干渉画像を生成する際に、参照光を遮光する。
【0102】
定量位相計測について述べる。細胞101の入った容器102の上部に設置した定量位相計測用光源121から放射された照明光は、細胞101の入った容器102を透過し、対物レンズ104にて集光される。そして、ハーフミラー108を介し、更に全反射ミラー131を介して、位相計測のための回折型干渉光学系132にて物体光と参照光の干渉像を形成し、カメラ134にて干渉縞画像が撮像される。
【0103】
反射干渉計測について述べる。反射干渉計測用光源106から放射された照明光は、ハーフミラー108にて反射して、対物レンズ104を通って、測定対象となる細胞101を入れた容器102の底面側から入射する。反射干渉照明用光学系としては、ハーフミラーに限らず、照明光強度が十分ある場合には5:95(反射:透過)や20:80(反射:透過)にするなど、反射比率を低減させたビームスプリッタを用いてもよい。また、波長によって反射率・透過率が異なるダイクロイックミラーを用いてもよい。容器102の底面の細胞101の接着面から得られる反射光は細胞101の接着距離に応じて干渉を生じ、得られた反射干渉光は再び対物レンズ104にて集光され、ハーフミラー108を介し、更に全反射ミラー131を介して、カメラ134にて撮像される。容器102の底面の細胞101の接着面から反射した光は、細胞101の接着距離に応じて干渉した光の振幅が異なり、明暗のコントラストとして撮影される。なお、定量位相像および反射干渉像は、共通の対物レンズ104を介して取得されるので、細胞101の撮像範囲は、定量位相計測および反射干渉計測においてほぼ同一範囲となる。
【0104】
第3実施形態は、定量位相画像および反射干渉画像を一つのカメラ134を用いて、交互に時間差を置いて取得することを特徴の一つとする。このためには、定量位相計測用光源121および反射干渉計測用光源106がそれぞれの照明光を照射するタイミングにおいて互いに排他的に照明を行う必要がある。そこで、定量位相計測用光源121および反射干渉計測用光源106のそれぞれの照射口に光の照射・遮断を行うための機械シャッタ121A,106Aを備える。あわせて定量位相画像を作成するための回折型干渉光学系132の内部に、参照光カット装置133を備える。
【0105】
回折型干渉光学系132は定量位相画像を作成するための光学系であり、定量位相計測用光源121にて照明された透過照明像から回折素子132Aを通して物体光と参照光を分離してそれぞれ取り出し、干渉させる役目を果たす。また、定量位相像と反射干渉像はいずれも同じ回折型干渉光学系132を通るため、反射干渉画像を取り出すためには、回折素子132Aを通ることにより分離された参照光をカットするための装置が必要となり、本実施形態では参照光カット装置133を備えている。
【0106】
参照光カット装置133は、例えば参照光側の光路132B上に設けた機械シャッタとして構成することができる。図20は、参照光カット装置133として機能する参照光シャッタ133Aを示す図である。図20(A)は、定量位相画像撮像時の参照光シャッタ133Aの動きを示す。定量位相画像撮像時には、回折素子132Aにより分離された後に、ピンホール133Bを通る物体光およびピンホール133Cを通る参照光の両方が必要であるため、参照光シャッタ133Aはピンホール133Cを遮ることなく、物体光および参照光はピンホール133Bおよび133Cを通ってカメラ134に到達する。一方、図20(B)は、反射干渉画像撮像時の参照光シャッタ133Aの動きを示す。反射干渉画像撮像時には、回折素子132Aにより分離された後にピンホール133Bを通る物体光は必要であるが、ピンホール133Cを通る参照光は不要である。このため、参照光シャッタ133Aはピンホール133Cを遮ることにより参照光を遮光し、物体光のみがピンホール133Bを通ってカメラ134に到達する。
【0107】
図21は、定量位相シャッタ121A、参照光カット装置133、カメラ134による定量位相撮像、反射干渉シャッタ106A、およびカメラ134のそれぞれの動作にかかるタイミングチャートに示す。定量位相画像と反射干渉画像は時系列にお互い排他的に照明と画像取得を行う。具体的には、定量位相画像を取得する時は、定量位相シャッタ121Aが開口し、反射干渉シャッタ106Aが閉じる。逆に反射干渉画像を取得する時には、反射干渉シャッタ106Aが開口し、定量位相シャッタ121Aが閉じるという具合である。同時に、定量位相画像を取得するタイミングにおいては、回折型干渉光学系132の回折素子132Aによって得られる物体光と参照光のうち、参照光側に設けた参照光カット装置133が開口し、カメラ134にて物体光と参照光の干渉像が結像することによって定量位相画像を得る。一方、反射干渉画像を取得するタイミングにおいては、回折素子132Aによって得られた参照光は不要であるので、参照光側に設けた参照光カット装置133が閉じて、物体光のみが反射干渉画像としてそのままカメラ134に結像する。このように定量位相画像と反射干渉画像とを時間的に交互に取得して2つの画像をペアとして同時刻の画像として扱う。
【0108】
次に、図22のフローチャートを更に参照しながら、処理部20の機能および動作について説明する。最初に、カメラ134にて参照光と細胞101を透過した物体光の干渉縞画像が得られる(ステップS301、特許請求の範囲の「撮像ステップ」に相当)。干渉縞画像から公知の演算方法を用いて定量的な位相画像を形成する。定量位相画像を得るためには、細胞101のない背景領域のオフセット補正および背景領域の視野におけるシェーディング補正を施し、背景部分は空間的に均一で、背景部の位相の値を0に補正し、細胞101の位相(光路長)の2次元マップを得る。
【0109】
一方で、ステップS101とともに、カメラ134にて細胞101の接着面の反射干渉画像が得られる(ステップS302、特許請求の範囲の「撮像ステップ」に相当)。容器102の底面に接着している細胞101の容器102の底面からの距離に応じて干渉光の振幅が異なり、反射干渉画像は明暗のコントラストとして撮影される。反射干渉画像の視野内の反射光のシェーディングを補正する。あわせて細胞101のない背景の値が時間的に変動しないように、時間ごとに背景部のオフセット補正を行う。これらの画像演算補正によって、空間的、時間的に変動の少ない定量位相画像および反射干渉画像を得ることができる。
【0110】
ステップS301およびステップS302にて撮像および補正された両画像(定量位相画像および反射干渉画像)が処理部20に入力される(ステップS303)。
【0111】
次に、ステップS303にて入力された両画像に対して、細胞101の輪郭領域を抽出する処理(以下、「セグメンテーション」ともいう。)が行われる(ステップS304およびS305、特許請求の範囲の「輪郭抽出ステップ」および「輪郭適用手段」に相当)。
【0112】
まず、図23に示すように、同一観察位置および同時刻に撮像された定量位相画像および反射干渉画像のうち、定量位相画像から個々の細胞101の輪郭となる領域を画像処理により検出する(ステップS304、図23の画像A、特許請求の範囲の「輪郭抽出ステップ」に相当)。つまり、定量位相画像では、細胞101のない背景となる溶液を通る光に対して細胞101を通る光は、細胞101の屈折率が溶液の屈折率よりも大きいために、光路長が長くなる。そのため、細胞101の存在する領域の画素の位相の値は背景よりも大きな値となる。そこで、適正な閾値または空間フィルタ処理を用いることにより、人の手に寄らず自動的に、背景と細胞101を分離することができる。そして、一つ一つの細胞101に対応した輪郭を決定し、それぞれの細胞101の占める領域に対応する画素座標の領域を決定することができる。
【0113】
次に、ステップS304で得られた個々の細胞101の輪郭領域の画素座標を空間座標の一致する反射干渉画像に適応させ、つまりステップS304で得られたセグメンテーション領域を反射干渉画像にコピーすることにより、定量位相画像で決定された個々の細胞101の輪郭領域を反射干渉画像に当てはめる(ステップS305、図23の画像B、特許請求の範囲の「輪郭適用ステップ」に相当)。このようにすることで、図23に示すように、定量位相画像と反射干渉画像の両方の画像A,Bに対して同じ輪郭領域を決定することができる。また、一つ一つの細胞に対応した輪郭を決定し、それぞれの細胞の占める領域に対応する画素座標の領域を決定することができる。
【0114】
解析部202が、定量位相画像で決定された個々の細胞101の輪郭領域を反射干渉画像に当てはめた画像(以下、「合成画像」と示す)を用いて、個々の計測領域の「平均輝度の変化率」を算出し、この平均輝度の変化率dIに基づいて個々の計測領域に対する細胞101の膜電位の変化を検出する(ステップS306、特許請求の範囲の「解析ステップ」に相当)については、第2実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。また、個々の細胞に対して薬液投与後の一定時間内におけるピーク(脱分極の場合は最大値、過分極の場合は最小値)を求めて、これらの数値の大小から薬物濃度の判定をそれぞれ行うことができる点についても同様である。
【0115】
(第3実施形態の作用及び効果)
第3実施形態に係る膜電位変化検出装置61では、定量位相計測用光源121、定量位相シャッタ121A、反射干渉計測用光源106、反射干渉シャッタ106A、およびカメラ134備えることにより、細胞101の接着に関する情報、また細胞101の面積、光学的厚さに関する情報を同時に取得することができるので、細胞101と透明部材102aとの接着に関するパラメータのバリエーションを増やすことができる。また、自動化された処理により細胞101のセグメンテーションが実行されるので、個々の細胞101に対してデータを取得することが容易に可能となる。
【0116】
また、第3実施形態の膜電位変化検出装置61は、第2実施形態に係る膜電位変化検出装置41と比べて定量位相画像および反射干渉画像を取得するためのカメラが1台で済むので低コスト化を図ることが可能であり、かつ2台のカメラの位置合わせの必要がないことにメリットがある。また、第3実施形態の膜電位変化検出装置61は、薬液投与に対して細胞の応答が比較的ゆっくりであり、定量位相画像と反射干渉画像とを順次に取得する場合の時間間隔であっても変化が検出できる用途に利用することが有用である。
【符号の説明】
【0117】
1,41,61…膜電位変化検出装置、10…画像取得部、20…処理部、101…細胞、102…容器、102a…透明部材、102b…載置面、102c…底面、102d…反射防止コート、103…保持部、104…対物レンズ、106…反射干渉計測用光源、106A…反射干渉シャッタ、107…リングスリット、108…ハーフミラー、110…反射干渉検出用カメラ、115…XYステージ、117…ディスペンサ、121…定量位相計測用光源、121A…定量位相シャッタ、121B…照明光絞り部、122…ダイクロイックミラー、123,131…全反射ミラー、124…回折型干渉光学系、125…定量位相検出用カメラ、132…回折型干渉光学系、132A…回折素子、133…参照光カット装置、133A…参照光シャッタ、133B,133C…ピンホール、134…カメラ、201,221…画像受信部、202…解析部、203…記憶部、211…画像位置合わせ部、212…輪郭抽出部、213…輪郭適用部、225…光源制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射干渉計測用光源と、
細胞が載置された透明部材を保持する保持手段と、
前記反射干渉計測用光源から放射され、前記透明部材を介して前記細胞から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉撮像手段と、
前記反射干渉画像から前記細胞と前記透明部材との接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて前記細胞の膜電位の変化を検出する解析手段と、
を備えている膜電位変化検出装置。
【請求項2】
前記解析手段は、脱分極になると前記細胞が前記透明部材から離れ、過分極になると前記細胞が前記透明部材に近づくという相関関係に基づいて、前記細胞の前記膜電位の変化を検出する、
請求項1に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項3】
前記反射干渉計測用光源から放射され前記細胞から反射される光が集光される対物レンズを更に備えており、
前記対物レンズと前記透明部材とは空気層を介して配置されている、
請求項1または2に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項4】
前記透明部材の前記載置面とは反対側の面は、反射防止コートが施されている、
請求項3に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項5】
前記対物レンズの前記反射干渉計測用光源側の開口絞りと共役な位置に配置されているリング状のスリットを更に備えている、
請求項3または4に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項6】
定量位相計測用光源と、
前記定量位相計測用光源から放射され前記細胞を透過する光を撮像することにより、定量位相画像を生成する定量位相撮像手段と、
を更に備えている、請求項1〜5の何れか1項に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項7】
前記反射干渉画像と前記定量位相画像との間で、空間的な位置を一致させることにより、両画像の位置合わせを行う画像位置合わせ手段と、
前記定量位相画像に基づき、前記細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、
前記輪郭抽出手段が抽出した前記輪郭を前記反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用手段と、
を更に備えており、
前記解析手段は、前記輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、前記細胞と前記透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出する、
請求項6に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項8】
前記反射干渉計測用光源から放射される光の光量を調整する反射干渉光量調整手段と、
定量位相計測用光源と、
前記定量位相計測用光源から放射される光の光量を調整する定量位相光量調整手段と、
を更に備えており、
前記反射干渉撮像手段は、前記反射干渉計測用光源から放射され、細胞から反射される反射光を撮像することにより、反射干渉画像を生成するとともに、前記定量位相計測用光源から放射され、前記細胞を透過する透過光を撮像することにより、定量位相画像を生成し、
前記反射干渉画像を生成する際に、前記定量位相光量調整手段が前記定量位相計測用光源からの光を遮光し、前記反射干渉撮像手段が前記反射光を撮像し、
前記定量位相画像を生成する際に、前記反射干渉光量調整手段が前記反射干渉計測用光源からの光を遮光し、前記反射干渉撮像手段が前記透過光を撮像する、
請求項1〜5の何れか1項に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項9】
前記反射干渉光量調整手段は、前記反射干渉計測用光源から放射される光の光量を調整するシャッタであり、
前記定量位相光量調整手段は、前記定量位相計測用光源から放射される光の光量を調整するシャッタである、
ことを特徴とする請求項8に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項10】
前記反射干渉光量調整手段は、前記反射干渉計測用光源のON/OFFによる切り替えにより、前記反射干渉計測用光源から放射される光の光量を調整し、
前記定量位相光量調整手段は、前記定量位相計測用光源のON/OFFによる切り替えにより、前記定量位相計測用光源から放射される光の光量を調整する、
ことを特徴とする請求項8に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項11】
前記定量位相画像に基づき、前記細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、
前記輪郭抽出手段が抽出した前記輪郭を前記反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用手段と、
を更に備えており、
前記解析手段は、前記輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、前記細胞と前記透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出する、
請求項8〜10の何れか1項に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項12】
反射干渉撮像手段が、反射干渉計測用光源から放射され、細胞が載置された透明部材を介して前記細胞から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉撮像ステップと、
解析手段が、前記反射干渉画像から前記細胞と前記透明部材との接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて、前記細胞の膜電位の変化を検出する解析ステップと、
を含んでいる膜電位変化検出方法。
【請求項13】
反射干渉撮像手段が、反射干渉計測用光源から放射され、細胞が載置された透明部材を介して前記細胞から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉撮像ステップと、
定量位相撮像手段が、定量位相計測用光源から放射され、細胞を透過する光を撮像することにより、定量位相画像を生成する定量位相撮像ステップと、
画像位置合わせ手段が、前記反射干渉画像と前記定量位相画像との間で、空間的な位置を一致させることにより、両画像の位置合わせを行う画像位置合わせステップと、
輪郭抽出手段が、前記定量位相画像に基づき、前記細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出ステップと、
輪郭適用手段が、前記輪郭抽出手段が抽出した前記輪郭を前記反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用ステップと、
前記解析手段が、前記輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、前記細胞と前記透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出する解析ステップと、
を含んでいる膜電位変化検出方法。
【請求項14】
撮像手段が、反射干渉計測用光源から放射され、細胞から反射される反射光を撮像することにより、反射干渉画像を生成するとともに、定量位相計測用光源から放射され、前記細胞を透過する透過光を撮像することにより、定量位相画像を生成する撮像ステップと、
輪郭抽出手段が、前記定量位相画像に基づき、前記細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出ステップと、
輪郭適用手段が、前記輪郭抽出手段が抽出した前記輪郭を前記反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用ステップと、
前記解析手段が、前記輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、前記細胞と前記透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出する解析ステップと、
を含んでおり、
前記反射干渉画像を生成する際に、定量位相光量調整手段が前記定量位相計測用光源からの光を遮光し、前記撮像手段が前記反射光を撮像し、
前記定量位相画像を生成する際に、反射干渉光量調整手段が前記反射干渉計測用光源からの光を遮光し、前記撮像手段が前記透過光を撮像する、
ことを特徴とする膜電位変化検出方法。
【請求項1】
反射干渉計測用光源と、
細胞が載置された透明部材を保持する保持手段と、
前記反射干渉計測用光源から放射され、前記透明部材を介して前記細胞から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉撮像手段と、
前記反射干渉画像から前記細胞と前記透明部材との接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて前記細胞の膜電位の変化を検出する解析手段と、
を備えている膜電位変化検出装置。
【請求項2】
前記解析手段は、脱分極になると前記細胞が前記透明部材から離れ、過分極になると前記細胞が前記透明部材に近づくという相関関係に基づいて、前記細胞の前記膜電位の変化を検出する、
請求項1に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項3】
前記反射干渉計測用光源から放射され前記細胞から反射される光が集光される対物レンズを更に備えており、
前記対物レンズと前記透明部材とは空気層を介して配置されている、
請求項1または2に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項4】
前記透明部材の前記載置面とは反対側の面は、反射防止コートが施されている、
請求項3に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項5】
前記対物レンズの前記反射干渉計測用光源側の開口絞りと共役な位置に配置されているリング状のスリットを更に備えている、
請求項3または4に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項6】
定量位相計測用光源と、
前記定量位相計測用光源から放射され前記細胞を透過する光を撮像することにより、定量位相画像を生成する定量位相撮像手段と、
を更に備えている、請求項1〜5の何れか1項に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項7】
前記反射干渉画像と前記定量位相画像との間で、空間的な位置を一致させることにより、両画像の位置合わせを行う画像位置合わせ手段と、
前記定量位相画像に基づき、前記細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、
前記輪郭抽出手段が抽出した前記輪郭を前記反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用手段と、
を更に備えており、
前記解析手段は、前記輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、前記細胞と前記透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出する、
請求項6に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項8】
前記反射干渉計測用光源から放射される光の光量を調整する反射干渉光量調整手段と、
定量位相計測用光源と、
前記定量位相計測用光源から放射される光の光量を調整する定量位相光量調整手段と、
を更に備えており、
前記反射干渉撮像手段は、前記反射干渉計測用光源から放射され、細胞から反射される反射光を撮像することにより、反射干渉画像を生成するとともに、前記定量位相計測用光源から放射され、前記細胞を透過する透過光を撮像することにより、定量位相画像を生成し、
前記反射干渉画像を生成する際に、前記定量位相光量調整手段が前記定量位相計測用光源からの光を遮光し、前記反射干渉撮像手段が前記反射光を撮像し、
前記定量位相画像を生成する際に、前記反射干渉光量調整手段が前記反射干渉計測用光源からの光を遮光し、前記反射干渉撮像手段が前記透過光を撮像する、
請求項1〜5の何れか1項に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項9】
前記反射干渉光量調整手段は、前記反射干渉計測用光源から放射される光の光量を調整するシャッタであり、
前記定量位相光量調整手段は、前記定量位相計測用光源から放射される光の光量を調整するシャッタである、
ことを特徴とする請求項8に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項10】
前記反射干渉光量調整手段は、前記反射干渉計測用光源のON/OFFによる切り替えにより、前記反射干渉計測用光源から放射される光の光量を調整し、
前記定量位相光量調整手段は、前記定量位相計測用光源のON/OFFによる切り替えにより、前記定量位相計測用光源から放射される光の光量を調整する、
ことを特徴とする請求項8に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項11】
前記定量位相画像に基づき、前記細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、
前記輪郭抽出手段が抽出した前記輪郭を前記反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用手段と、
を更に備えており、
前記解析手段は、前記輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、前記細胞と前記透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出する、
請求項8〜10の何れか1項に記載の膜電位変化検出装置。
【請求項12】
反射干渉撮像手段が、反射干渉計測用光源から放射され、細胞が載置された透明部材を介して前記細胞から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉撮像ステップと、
解析手段が、前記反射干渉画像から前記細胞と前記透明部材との接着に関するパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて、前記細胞の膜電位の変化を検出する解析ステップと、
を含んでいる膜電位変化検出方法。
【請求項13】
反射干渉撮像手段が、反射干渉計測用光源から放射され、細胞が載置された透明部材を介して前記細胞から反射される光を撮像することにより、反射干渉画像を生成する反射干渉撮像ステップと、
定量位相撮像手段が、定量位相計測用光源から放射され、細胞を透過する光を撮像することにより、定量位相画像を生成する定量位相撮像ステップと、
画像位置合わせ手段が、前記反射干渉画像と前記定量位相画像との間で、空間的な位置を一致させることにより、両画像の位置合わせを行う画像位置合わせステップと、
輪郭抽出手段が、前記定量位相画像に基づき、前記細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出ステップと、
輪郭適用手段が、前記輪郭抽出手段が抽出した前記輪郭を前記反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用ステップと、
前記解析手段が、前記輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、前記細胞と前記透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出する解析ステップと、
を含んでいる膜電位変化検出方法。
【請求項14】
撮像手段が、反射干渉計測用光源から放射され、細胞から反射される反射光を撮像することにより、反射干渉画像を生成するとともに、定量位相計測用光源から放射され、前記細胞を透過する透過光を撮像することにより、定量位相画像を生成する撮像ステップと、
輪郭抽出手段が、前記定量位相画像に基づき、前記細胞の輪郭を抽出する輪郭抽出ステップと、
輪郭適用手段が、前記輪郭抽出手段が抽出した前記輪郭を前記反射干渉画像に適用することにより、輪郭適用後の反射干渉画像を生成する輪郭適用ステップと、
前記解析手段が、前記輪郭適用後の反射干渉画像に基づいて、前記細胞と前記透明部材との接着に関する細胞ごとのパラメータを算出し、当該パラメータの変化に基づいて細胞ごとの膜電位の変化を検出する解析ステップと、
を含んでおり、
前記反射干渉画像を生成する際に、定量位相光量調整手段が前記定量位相計測用光源からの光を遮光し、前記撮像手段が前記反射光を撮像し、
前記定量位相画像を生成する際に、反射干渉光量調整手段が前記反射干渉計測用光源からの光を遮光し、前記撮像手段が前記透過光を撮像する、
ことを特徴とする膜電位変化検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24】
【図5】
【図6】
【図9】
【図12】
【図18】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24】
【図5】
【図6】
【図9】
【図12】
【図18】
【図23】
【公開番号】特開2011−232056(P2011−232056A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100284(P2010−100284)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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