説明

膨張可能なエアバッグ

【課題】乗用車用の膨張可能なサイドカーテンエアバッグを提供する。
【解決手段】エアバッグは、ガスの流れを制限し、実質的に隔離された複数のセルを形成する新たなダイオード設計を備えている。送出チューブが、セルに開口した複数の出口オリフィスを通してガスをセルに送出する。セルがガスで膨張されるとき、実質的に隔離された複数のセルの各々の間のガス流が、乗員により負荷が加えられる最中に制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、側方衝突及び転覆に対する保護として使用されるサイドカーテンエアバッグに関するが、本設計は、他の種類のエアバッグの用途でも使用できる。
【背景技術】
【0002】
サイドカーテンエアバッグは、一般的には、車輛のルーフライン内の格納位置から下方に展開し、乗員と、側方の窓及びAピラー、Bピラー、及び/又はCピラー等の車輛内部の側方構造との間で膨張する。
【0003】
サイドカーテンエアバッグは、一般的には、二枚のファブリックパネルを含み、これらのパネルは互いに縫い合わされるか或いは互いに織り合わせられて膨張可能なセルを形成する。これらのセルは、事故中に膨張し、所望の側方拘束を提供する。サイドカーテンは、様々な構成の複数のセルを含んでいてもよい。代表的には、縫合又は織り合わせによって形成した、ファブリック層を連結するシームによって、膨張厚さが5.08cm乃至20.32cm(2インチ乃至8インチ)の範囲内の膨張可能なセルを形成してもよい。セルの膨張厚さ(即ちカーテン厚さ)は、膨張させたときの二枚のファブリックパネル間の距離である。
【0004】
従来のエアバッグカーテン設計は、チャンバセル間に「開放流」を有する。開放流は、セル内のガスが、隣接したセルと実質的に開放状態で流体連通していることを特徴とする。この形体により、ガスはエアバッグ全体を均等に充填できる。これは、ガスが、全ての又はほぼ全てのエアバッグセル又は膨張領域の間で分配されるためである。従来の開放流エアバッグの一例が、トベ等に付与された米国特許第6,481,743号の第2図に開示されている。同特許に触れたことにより、この特許に開示された内容は本明細書中に含まれたものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,481,743号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の構造及び方法の考えを理解してこれに対処し、乗用車用の新規な膨張可能なエアバッグを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、実質的に隔離された複数のセルと、複数の出口オリフィスを持つ送出チューブとを含むエアバッグを提供する。オリフィスはセルに対して開口しており、これによって、ガスをガス源からセルに入れることができる。幾つかの実施例では、ガスは、事故が起こったときにセンサによって賦勢される膨張器内に収容されている。
【0008】
送出チューブの少なくとも一つの出口オリフィスは、実質的に隔離された複数のセルの各々にガスを供給するように形成されている。セルが膨張するとき、乗員により負荷が加えられる最中にセル間のガスの流れを制限する。
【0009】
幾つかの実施例では、送出チューブは、セルの膨張を補助するため、スクープが組み込れていてもよい。このようなスクープは、セルから送出チューブ内への逆流を制限しながら、セル内にガスを差し向けるように設計されている。更に、本発明によって最適化した縫合シームを使用し、隣接したセル間及びセルと大気との間のガスの連通量を減少してもよい。
【0010】
本明細書に組み込まれ、本明細書の部分を構成する添付図面は、本発明の一つ又はそれ以上の実施例を例示するものであって、以下の説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0011】
本発明の最良の態様を含む、本発明の完全であり且つ本発明を実施可能にする開示を、当業者に対し、添付図面を参照して以下に説明する。
本明細書及び添付図面において、本発明の同じ又は等価な特徴を示すため、同じ参照番号を繰り返し使用する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、膨張可能なサイドカーテンエアバッグを備えた車輛の側面図である。
【図2】図2は、図1のエアバッグの正面図である。
【図3】図3は、図2の3−3線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図2の4−4線に沿った断面図である。
【図5】図5は、本発明によるサイドカーテンエアバッグの別の実施例の正面図である。
【図6】図6は、図5の6−6線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の現在の好ましい実施例を詳細に参照する。これらの実施例のうちの一つ又はそれ以上の例を添付図面に示す。各例は、本発明の説明として提供されたものであって、本発明を限定しようとするものではない。実際、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本発明に変形及び変更を行うことができるということは、当業者には明らかであろう。例えば、一つの実施例の部分として例示し又は説明した特徴を別の実施例で使用してもよく、これにより更に別の実施例が提供される。かくして、本発明は、このような変形及び変更を、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲に入るものとして含もうとするものである。
【0014】
添付図面のうち、特に図1を参照すると、代表的な車輛10が示してある。この車輛10は、Aピラー12、Bピラー14、及びCピラー16を備えている。本発明によるサイドカーテンエアバッグ18がAピラー12とCピラー16との間を延びている。図1では、エアバッグ18は、膨張状態で示してある。これに関し、膨張器20は、エアバッグ18を膨張するのに必要なガスを提供する。図1には、膨張器用の二者択一的な位置を示すため、膨張器21及び23が示してある。かくして、膨張器は、Bピラー、Cピラー、ルーフ、又は車輛10内の別の適当な位置に配置されていてもよい。
【0015】
エアバッグ18は、展開される前に、車輛10のルーフレール22内に収容されていてもよい。随意であるが、テザー24及び26を使用してエアバッグ18を拘束してもよい。図1に示す実施例では、テザー24及び26は、一端がエアバッグ18に取り付けられており、他端が車輛のボディに取り付けられている。
【0016】
次に、図2を参照すると、サイドカーテンエアバッグ18の更なる詳細を更に容易に説明できる。エアバッグ18は、実質的に隔離された複数のセル28、30、32、34、36、38、及び40を含む。セル28、30、及び32は、Bピラー14とCピラー16との間にセルの後バンクを形成するのに対し、セル34、36、38、及び40は、Aピラー12とBピラー14との間にセルの前バンクを形成する。領域42は膨張されない。これは、乗員がこの領域と接触することがほとんどないためである。しかしながら、幾つかの実施例では、領域42はセルであってもよいし、又は他のセルに遅れて膨張してもよい。
【0017】
図2を参照し続けると、この実施例では、エアバッグ18をルーフレール22に取り付けるため、タブ44が設けられている。これらのタブ44の代わりに、任意の適当な取り付け方法を使用してもよい。更に、複数の出口オリフィス48を持つ送出チューブ46が設けられている。例示の実施例では、出口オリフィス48はスクープ(scoop)として形成されている。オリフィス48は、セル28、30、32、34、36、38、及び40に対して開口している。チューブ46内の乱流を減少するため、及びガスを良好に分配するため、出口オリフィス48は、チューブ46の周囲で食い違って配置されていてもよい。このような食い違いは、図4でわかる。送出チューブ46は、端部50がシールしてある。膨張器20からのガスは、端部52のところで送出チューブ46に進入し、出口オリフィス48を通してセル内に分配される。
【0018】
次に、図2、図3、及び図4を参照すると、送出チューブ46とエアバッグ18との装着関係を説明できる。この実施例では、チューブ46をエアバッグ18の上部分に挿入する。上周囲シーム(seam)54がエアバッグ18の上部に沿って延びており、チューブ46に対して上拘束部を形成する。縫合によって形成した一連の楕円形56が、セル間に、ステッチ57によって形成されている(図3参照)。楕円形56の上部は、チューブ46の下部に関して実質的にぴったりと締まった装着部を形成する。本明細書中において、「ぴったりと締まった」という用語は、楕円形56とチューブ46との間をガスが流れることができないということを意味しない。その代わりに、「ぴったりと締まった」という用語は、隣接したセル間でガスを或る程度流すことができるように最適化した締まり嵌めに関する。楕円形56は、連続したシーム58、及びシーム66、68、70、72、及び74とともに、セル28、30、32、34、36、38、及び40を形成する。縫合によって形成したシームは、エアバッグの強度や気密性に関する要件に応じて、シングルステッチであってもよいしダブルステッチであってもよく、又は別の適当な方法で取り付けられていてもよい。エアバッグ18の厚さはtであり(図3及び図4参照)、これは、セルに亘って変化してもよい。
【0019】
特に図4を参照すると、スクープとして形成された出口オリフィス48がわかる。図4でのオリフィス48の向きは、チューブ周囲に亘って様々な角度位置に回転させてあるという点で、幾分食い違っている。スクープは、チューブ内を流れるガスを更に良好に且つ更に効果的に捕捉し且つセル内に流すため、好ましくは、チューブ46を中心として様々な角度位置に回転させてある。
【0020】
図5は、本発明の第2実施例を示す。この実施例では、エアバッグ76は、展開したエアバッグ78の中央と隣接してBピラーに位置決めされた膨張器78によって膨張される。膨張器78は、送出チューブ80の長さに沿った中間位置で、この場合、長さ方向中央の近くで、送出チューブ80に連結されている。この形体では、端部82及び84の両方がシールされており、膨張時にガスをセル86、88、90、92、及び94の各々に押し込む。テザー96及び97がエアバッグ76を車輛のボディに連結する。車輛又は用途に応じて、本発明のこの他の形体は、セルのバンクを2つ以上備えた実施例を含んでもよい。
【0021】
図5を参照し続けると、円98がセル88に縫い込まれていることがわかる。シーム100が、セルの周囲の部分を形成するシーム102に円98を連結する。シーム100は、セル88を部分的に分け、セル88の容積及び厚さを減少するように設計されていてもよい。図6でわかるように、強化層104が、円98のところで、エアバッグ76の一方の側部に含まれる。強化層104は、この実施例では、円98よりも僅かに大きい大きさの別のファブリック層であり、エアバッグ76を形成するファブリックとともに互いに縫い合わされる。楕円形56の各々もまた、楕円形よりも僅かに大きい大きさの強化層106を含む。30リットル程度のエアバッグの実施例では、各縁部のところでステッチよりも1.27cm(1/2インチ)大きい強化層が使用されてきた。更に別の実施例では、強化層をエアバッグの両側で使用し、4つの層を持つ構造をこの領域に形成し、これにより強化がなされた。
【0022】
次に図6を参照し、強化層104の構造を更に詳細に説明する。第1層108及び第2層110は、エアバッグ76の夫々の側部を形成する。縫合円98は、第1層108と、第2層110と、強化層104を通って延びるステッチ112によって形成される。強化層104を使用することの利点を以下に論じる。しかしながら、本発明では、エアバッグのいずれかの側又は両側で多数の強化層を使用することを含む、この他の形体が考えられるということに着目されたい。
【0023】
本明細書中に開示した新規なエアバッグは、エアバッグへのガスの流入中、チャンバセル間のガスの流れを大幅に減少するように設計されている。エアバッグへのガスの流入中のチャンバセル間のガスの流れを更に大きく減少することによって、実質的に隔離された所与のセル内の圧力上昇が、同じセル間に開放流れがある場合に生じるよりも大きくなる。流れを制限すること即ちセル間の流れを制限することによるセル内の圧力上昇は、乗員が、セルを介してぶつかる、すなわちストライクスルー(Strike through)ことがないように、従来のようにセルの間が開放流である場合よりも大きく抵抗する。セルから出るガスの移動を制限することにより、乗員の移動やストライクスルーに対する抵抗が大きくなる。従って、本発明は、チャンバセル間の流れを制限するエアバッグ及びエアバッグ製造方法を提供する。
【0024】
エアバッグを「ストライクスルー」又は「ペネトレイトスルー(penetrate through)」するということは、転覆事故中、乗員が、車輛の構造にぶつかったり、電柱や別の車輛や地面等の入り込んでくる物体にぶつかる前に、エアバッグに向かう乗員のエネルギが完全には吸収されないということを意味する。即ち、ストライクスルー中、加圧されたエアバッグによって乗員に加えられた抵抗力は、乗員が固い構造と接触する前に乗員の移動を停止するには不十分なのである。
【0025】
隣接したセル間の流れが制限されるため、実質的に隔離された各セルに必要な作動圧力を提供するため、膨張器からセルへ圧力を送出する上で、ガス送出システムを更に精密に設計することが必要とされる。例えば、ガスを個々のセルに送出するための一つのこのような送出方法は、サイドカーテンエアバッグの上部分内を延びる細長いチューブ(例えば送出チューブ46)を使用してもよい。チューブは、各セルに適当な量のガスを十分に送出するため、大きさ、数、及び位置が適当な出口オリフィスを備えて製造されていてもよい。更に、所望のガス送出を更に制御するため、所与のセル内に流れを向けるように形成されたスクープを使用してもよい。スクープは、有利には、チューブ内での超音波ガス流の挙動により、チューブ内を流れるガスが送出チューブの出口オリフィスを実質的に通過しようとする、送出チューブの領域に設けられていてもよい。本質的には、開口部を備えた、チューブの窪み区分であるスクープが、チューブに設けられている場合には、チューブ内を流れるガスは特定のセル内に向けられる。
【0026】
スクープは、ガスを各セル内に必要とされるように差し向けるため、送出チューブに沿って食い違っていてもよいし、又は段をなしていてもよい。例えば、一つのセルが二つ又はそれ以上のスクープを備えていてもよいが、好ましくは、これらのスクープは、送出チューブの長さ方向軸線に沿って互いに「同一直線上」に並べられない。その代わりに、スクープは、チューブ内を流れるガスを更に良好に、即ち更に効果的に捕捉し、セル内に差し向けるため、好ましくは、食い違っている。
【0027】
本発明の流れの制限は、「ダイオード」という用語を使用してその特徴を述べることができる。「ダイオード」という用語は、一般的には、電流を一方向では自由に通すが、逆方向では通さないデバイスに関し、電子工学で使用されている。本発明では、「ダイオード」という用語は、エアバッグのセル間の流れの制限に関して一般的に使用する。この「ダイオード効果」は、部分的には、圧力差による。セルの初期充填中、送出チューブ内のガス圧は非常に高いが、加圧された各セル内のガス圧は、膨張後、比較的かなり低い。かくして、各セルへのガスの流入は極めて迅速であるが、セルから隣接したセル内への、又は送出チューブ内への、又は大気中へのガスの流出は比較的低速である。
【0028】
セルからガスが漏出しないようにするための一つの方法は、セル間でエアバッグを送出チューブの周囲に装着する方法を適当に設計することである。以下の例は、セル間での送出チューブとエアバッグとの間の装着の特徴である。送出チューブを上周囲シームと楕円形との間に挿入する。楕円形は、セル即ち領域を互いから隔離するのを補助する。送出チューブの外径が1.59cm(5/8インチ)である場合には、上周囲シームと楕円形シームとの間の距離は(圧力が加わっていない状態でファブリックを平らに縫い合わせたとき)、2.59cm乃至2.79cm(1.02インチ乃至1.10インチ)の範囲内にあってもよい。外径が1.59cm(5/8インチ)の送出チューブは、公称4.98cm(1.96インチ)の周囲を備えている。楕円形シームと上周囲シームとの間の距離が2.59cm乃至2.79cm(1.02インチ乃至1.10インチ)である場合には、チューブを挿入することによって拡げたとき、内周は約5.18cm乃至5.59cm(約2.04インチ乃至2.20インチ)となる。チューブとファブリックの開口部との間の隙間は、設置を可能にするための十分な隙間を提供する。しかしながら、送出チューブとエアバッグとの間の装着は、それでも、チャンバ(即ちセル)間のガス流を制限するのに十分な流れ制限を、チューブの外径とエアバッグのファブリックとの間に提供する。
【0029】
従来の開放流エアバッグにおけるセル間の有効流れ面積と本発明によるエアバッグにおけるセル間の有効流れ面積との間の相違を以下の例に示す。送出チューブからダイオードセル内への推定有効流れ面積は、初期側方衝突充填についての要件を満たすため、30リットルのサイドエアバッグについて、0.323cm乃至0.968cm(0.05平方インチ乃至0.15平方インチ)の範囲内の有効流れ面積であってもよい。チューブのオリフィスからのこの有効流れ面積は、セル間の領域で、送出チューブの外径と送出チューブの周囲で縫い合わせたファブリック層との間の隙間から生じる有効流れ面積に追加される。送出チューブの外径とセル間でチューブを取り囲む縫い合わせたファブリック層との間の様々な隙間を使用してもよく、これにより様々な有効流れ面積が提供される。例えば、チューブ周囲のファブリック周囲が5.18cm(2.04インチ)である場合には、1.59cm(5/8インチ)のチューブ外径とファブリック周囲との間の最大可能な流れ面積は、約0.323cm(約0.025平方インチ)となる。同じチューブでファブリックの周囲が5.588cm(2.2インチ)である場合には、最大流れ面積は、0.503cm(約0.078平方インチ)となる。ファブリック周囲が大きい方の5.588cm(2.2インチ)であり、チューブのオリフィスからの有効流れ面積が大きい方の0.968cm(0.15平方インチ)である場合には、隣接したダイオードセル間の最大有効流れ面積は、1.484cm(0.23平方インチ)となる。
【0030】
従来のエアバッグでは、流れ面積は、セル間の直径2.54cm(1インチ)の開口部によって制限されている場合でも、約5.161cm(約0.8平方インチ)である。セル間の直径2.54cm(1インチ)の開口部は、実際には、現在の従来のエアバッグに遥かに大きい制限をもたらすように作用し、全てではないにしろ多くのエアバッグが、流れが更に大きく開放された有効流れ面積を有する。この例における有効流れ面積の相違は、従来の設計の開放流れ面積を、上文中に論じたダイオード設計と比較して、3倍乃至4倍にする。本発明のダイオード設計に対して与えられた有効流れ面積の範囲は、例示を目的とした単なる例であって、設計をその範囲に限定しようとするものではない。セルの大きさ、セルの容積、又は場合によってはセルを充填する上でのタイミングを等しくする要件に応じて、有効流れ面積の要件は変化してもよい。かくして、様々な大きさのエアバッグについて、様々な有効流れ面積が有効となる。
【0031】
ダイオードエアバッグを、チューブの外径とセル間のファブリックとの間の装着状態又は隙間で変えて試験した。チューブの外径とセル間のファブリックとの間の有効流れ面積が1.936cm(0.3平方インチ)を越えたとき、ストライクスルーの危険が増大する。かくして、セル間の流れ面積が大き過ぎるようになると、セルへのマスの流入中、セル内の圧力は、それ以前よりも効果的に増大しない。従って、隣接したセル間の有効流れ面積(ファブリックとチューブとの間の流れ面積にオリフィスからの流れ面積を加えた値)が、3.226cm(0.5平方インチ)以下である場合に、30リットル程度のエアバッグの用途で保護を有効に提供できるということが確認された。1.613cm(0.25平方インチ)以下の流れ面積が更に理想的であるということがわかった。
【0032】
エアバッグの端部以外にあるセルの最大流れ面積は、端部セルのほぼ二倍であってもよいということに着目すべきである。これは、ガスが流入する内側セルから、流れが左右両側の隣接したセル内に漏出するためである。このため、エアバッグの端部にあるセル(隣接したセルが1つしかないセル)は、乗員により負荷が加えられる最中に、内側セル(隣接したセルが2つあるセル)よりも硬くなる。エアバッグの設計において、端部セルの方が硬くなるということを考慮しなければならない。
【0033】
本発明の膨張させたセル内のガス圧は、膨張器によるセルの膨張中、送出チューブ内の圧力と比較してかなり低い。代表的には、サイドエアバッグは、トリガーされた後、最初の約25ms中に膨張する。エアバッグと乗員との相互作用は、幾つかの用途では、約30msで開始し、他の用途では、遅くとも約55ms又はそれ以上で開始する。かくして、エアバッグのセルに乗員により負荷が加えられる最中に、即ち乗員がエアバッグのセルと相互作用するときまでに、送出チューブ内の圧力は大幅に低下する。このとき、送出チューブ内の圧力は、実際には、エアバッグのセル内の圧力と近いか或いはこれと等しくなってもよい。例えば、膨張器によるセルの初期充填中、セル内の圧力は20kPa乃至40kPaであるのに対し、送出チューブ内の圧力は500kPa乃至1500kPaである。
【0034】
乗員がセルに飛び込み、セルの圧力が上昇するとき、セル内のガスは、送出チューブの出口オリフィスをセルの「ベント」として使用してもよい。ガスが、送出チューブの穴を通って逆流し、本質的には、エアバッグの他のセルに逆流ベントすることによって、セルは、過度に硬くなり過ぎないようにされる。通常の目的は、送出チューブ出口オリフィスの大きさを、所与のセルについての必要な充填タイミングを得るのに十分に大きいが、逆流を制限するのに十分小さい総有効流れ面積を持つようにするとともに、乗員により負荷が加えられる最中にセルの圧力が所望の通りに上昇するように、送出チューブとエアバッグとの間の装着により流れを制限し、シームを最適にすることである。
【0035】
本発明の利点により、本発明では、エアバッグのセル間で従来の開放流れ構造を使用する同様のセル膨張断面で必要とされた圧力と比較して、低いセル作動圧力を使用できる。作動圧力は、エアバッグのストライクスルー前に乗員のエネルギを効果的に逃がすため、乗員がセルと相互作用する(即ち乗員によりセルに負荷が加えられる)前に膨張器がエアバッグに送出しなければならない圧力である。ダイオード設計では、作動圧力の必要条件が低いため、低い膨張器出力で全体として同様の条件保護性能を得ることができるため、従来技術よりも有利である。例えば、本発明の比較的制限的な流れ設計を持たないエアバッグは、セルを比較的高い必要作動圧力に合わせて充填するため、比較的高出力(比較的大型)の膨張器を必要とする。本発明で必要とされる膨張器は、低出力であり、又は小型であるため、価格が低く、軽量であり、膨張器を車輛内に配置する上で必要な空間が小さいという利点を提供する。
【0036】
ダイオードエアバッグの別の可能な利点は、所望の乗員保護特性を保持したまま、各セルの全体としての容積を減少できるということである。従来のエアバッグの膨張させた状態でのセルの厚さを減少することによって、この容積の減少を行うことができるが、同様の乗員保護を提供するため、膨張させた状態でのセル厚さが厚いエアバッグよりもセルの作動圧力を高くすることが必要とされる。本発明で必要とされるセルの容積が小さければ小さい程、充填時間を速くでき、所定の位置に達する時間を速くできる。これは、代表的には、比較的小さなセル容積を充填するのに要する時間が短いために行うことができるのである。
【0037】
セル断面が比較的厚い(10.16cm乃至12.7cm(4インチ乃至5インチ)程度)ダイオード設計の場合には、現在の衝突要件を満たす圧力は、約20kPaである。セルの容積を減少するとともに膨張させた状態でのセル厚さを約6.35cm乃至7.62cm(2.5インチ乃至3インチ)にする場合には、作動圧力を約60kPaに増大する必要がある。しかしながら、各アプローチに対して同じ大きさの膨張器を使用できる。20kPaのアプローチには、シームにあまり大きな応力を加えることがなく、及びかくしてエアバッグの全体としての漏れを減少するという利点がある。60kPaでセルの厚さ/容積が小さいアプローチでは、同じ膨張器出力について、所定位置に達する時間即ち定位完了時間(in−position time)が迅速であるという利点が得られる。特定の用途の要件及び目的に応じて、これらのアプローチのいずれを実行してもよい。
【0038】
別の態様では、剛性の又は固体のチューブの代わりに、軟質の即ち可撓性の送出チューブを使用してもよい。ガスを個々のセルに適切に分配するため、出口穴が適当に段階的に設けられた、ファブリックから形成された送出チューブを使用してもよい。剛性の送出チューブを使用することによって、融通性を高め且つ調整自在にできる(スクープを備えたチューブ壁輪郭を形成できるため)が、比較的つぶれ易い(平らに置かれる)チューブには、幾つかの用途について、設置を行う上での利点がある。
【0039】
固体の送出チューブでは、ガス流を特定のセル領域に向けるのに使用されるスクープにより、送出チューブ内の更に効率的な層流を損なうことなく、セル内へのガスの流量を更に効率的に高めることができる。ガスを従来のエアバッグ内に送出するのに使用される幾つかの固体の送出チューブでは、チューブ壁に穴を形成することによって出口オリフィスを形成する。これらの場合、穴が形成されたチューブ壁は、チューブの内径内に障害を形成する。これらの穴は、チューブの残りの部分への有効流れ面積を制限することに加え、乱流の程度が大きいガス流をチューブ内に形成する。乱流は、層流の程度が大きい流れと比較すると、大きな圧力損失を発生することが知られている。送出チューブ内の流れの乱流の程度が大きくなればなる程、これらの圧力損失が積み上がり、これにより、膨張器から送出されたガスのエネルギが非効率に使用されることになる。かくして、個々のセルの各々についてスクープが適当に位置決めされた送出チューブを更に効果的に最適化することにより、膨張器のガスのエネルギが更に効率的に使用されるようになる。
【0040】
ダイオード型エアバッグは、当該技術分野で周知の多くの膨張器のうちの任意の膨張器で使用できるが、出力を長くされた膨張器は、転覆時の用途で、この他の膨張器よりも良好に作動できる。出力を長くされた膨張器の1例が、フィンクに付与された米国特許第6,543,806号に示してあり且つ論じられている。同特許に触れたことにより、この特許に開示された内容は本明細書中に含まれたものとする。出力を長くされた膨張器に性能上の利点を提供する特徴の1つは、膨張器内に収容されたガス混合物を使用することである。分子が小さいヘリウム等のガスを、分子が大きいアルゴン、窒素、二酸化炭素、酸化窒素、等のガスと組み合わせて使用してもよい。
【0041】
分子が小さいヘリウム等のガスは、こうしたガスがエアバッグを更に迅速に充填することが示されてきたため、使用されてもよい。これは、ヘリウムの分子量が小さく、4であるためである。例えば、アルゴンは、分子量が比較的大きいガスであり、分子量が約40である。ヘリウム分子は、所与の流れ面積を通って、アルゴン等の比較的大きな分子よりも迅速に流れる。
【0042】
格納状態から膨張状態までのエアバッグのセルの初期膨張は、代表的には、衝突センサから信号を受け取った後、15ms乃至25ms(定位完了時間)内に行われる必要がある。定位完了時間は、エアバッグが、車輛のルーフライン内にある格納状態から、実質的に拡げられ且つ膨張された位置まで展開し、車輛内部の側方構造を覆うのに必要な時間である。かくして、ガス混合物中のヘリウムにより、加圧ガス混合物を、必要な定位完了時間に適合するように、エアバッグ内に迅速に流入できる。しかしながら、ヘリウムは、その分子の大きさが小さいため、分子の大きさが大きいガスよりも、エアバッグの任意の潜在的漏洩路を通って漏れてしまい易い。従って、加圧ガス混合物中のアルゴン等の分子の大きさが大きいガスは、この加圧ガス混合物に、エアバッグの任意の漏洩路を通る漏れ量を低くする特徴を提供する。従って、ガス混合物は、定位完了時間が迅速であるという要求、及び漏れが低いという要求の両方を、特定の用途の要件を満たすように最良の混合割合を使用することによって満たすように最適化できる。
【0043】
分子の大きさが大きいアルゴン等のガスしか含んでいないコールドガス膨張器は、必要とされる15ms乃至20msの定位完了充填時間を単独では達成できないということがわかっている。コールドガス膨張器では、ボトル内のガスは膨張中に減圧が作用し、急速に冷える。分子の大きさが大きいガスは、大きさが小さい分子と比較すると、冷却したとき、流れが更に緩くなる。流れがどれ程緩くなるのかは、各ガスの臨界温度で決まる。ガスの分子が大きければ大きい程、ガスの臨界温度が高くなる。減圧による冷却中にガスがその臨界温度に近づくと、分子のランダムな動きがゆっくりとしてくる。かくして、分子量が高いガスは、冷却されたとき、分子量が低いガスよりも流れが緩くなる。従って、一般的には、所与の出口面積を通る分子量が高いガスの流量は、分子量が低いガスと比較して小さくなる。
【0044】
エアバッグの機能にとって、高分子量のガスと低分子量のガスとを最適に混合することが重要であるということがわかった。ガスの理想的な混合は用途で決まり、又は、更に詳細には、エアバッグの内部容積と充填時間の要件で決まる。内部容積が小さい、例えば約25リットル乃至35リットルのエアバッグは、必要な充填時間及び定位完了時間を満たす限り、ヘリウム−アルゴン混合物中のアルゴン濃度を高くできる。上文中に論じたように、分子の大きさが大きいガスの濃度が適当なだけ高いガスをエアバッグに提供することにより、エアバッグで良好なガス圧を経時的に保持する。詳細には、転覆時の保護が問題である場合には、高い圧力を経時的に保持するのが望ましい。
【0045】
エアバッグの容積がこれよりも大きい場合には、大きな容積を充填するのに必要な定位完了時間を満たすのを補助するため、アルゴン濃度を低下する必要がある。小さいエアバッグについての代表的なガス混合物は、ヘリウム60%及びアルゴン40%乃至ヘリウム75%及びアルゴン25%である。大きなエアバッグ容積(40リットル及びそれ以上)については、ヘリウムの割合を高める必要がある。効果的であることがわかっている代表的な割合は、ヘリウム65%及びアルゴン35%乃至ヘリウム80%及びアルゴン20%である。こうした割合は、従来の開放流エアバッグについて効果的であることがわかっている代表的な範囲である。
【0046】
本明細書中に開示したように、ダイオードエアバッグ設計により、アルゴン濃度を高めることができる。これは、ガスの混合比に関わらず、定位完了時間を更に迅速にする技術による。この場合も、大きなガス分子の濃度をこのように高めることができるため、エアバッグの圧力保持が更に高められる。混合物は、出力を長くされたコールドガス膨張器で、場合によっては単チャンバコールドガス膨張器で、ヘリウム50%及びアルゴン50%の範囲で使用されてきた。この特定の混合物は、定位完了時間が40ms程度であった。かくして、充填時間要件(定位完了時間が長いと、アルゴンの割合を高めることができる)に応じて、アルゴン等の大きいガス分子の濃度は、10%乃至100%であってもよい。
【0047】
滲出は、多孔質障壁/穴/オリフィス、又は漏れが起こる可能性がある任意の小さな漏洩路又は開口部を、ガスが通過する流量である。滲出は、エアバッグに適用される場合には、ヘリウム等の小さなガス分子がエアバッグの漏洩路を通って大気中に、アルゴン等の大きなガス分子よりも高い流量で漏れる傾向に関する。
【0048】
ガス混合物中の大きなガス分子は、ひとたびエアバッグに入ると、ヘリウム分子の幾分かがシーム開口部又は他の漏洩路を通って漏れることに抵抗する「ブロッカー(blocker)」として効果的に作用する。比較的大きなアルゴン分子が漏洩路を通ってランダムに漏出するのではない場合には、ヘリウム分子は更に制限なく、即ち更に自由に漏洩路を通って漏出する。ヘリウム分子は、この場合、大きなアルゴン分子と衝突し、かくしてアルゴン分子がない場合には大気と直接つながった経路から逸れる。
【0049】
膨張器の必要なガス混合比に影響を及ぼす別のエアバッグ特性は、エアバッグの作動圧力である。作動圧力が低い本発明のダイオードエアバッグの明確な利点は、アルゴン等の大きなガス分子の濃度が高いようにガスの混合比を定めることができるということである。ダイオードエアバッグは、従来の開放流設計が約60kPa乃至120kPaの作動圧力を必要とするのに対し、約20kPa乃至40kPaの作動圧力で膨張できる。ダイオードエアバッグは作動圧力が低いため、小型の膨張器の少量のガスが必要とされるに過ぎないのである。
【0050】
更に、エアバッグの作動圧力が低いため、シームでの漏れを減少でき、シームに作用する応力を減少できる。更に、出力を長くされた膨張器が、低い作動圧力を長時間に亘って効果的に維持する方が、膨張器が高い必要作動圧力を維持する場合よりも容易である。従って、出力を長くされた膨張器とダイオードエアバッグ設計の組み合わせは、システムレベルで大きな利点を提供できる。
【0051】
作動圧力が低いエアバッグの別の利点は、所定の位置にいない乗員を傷つけることを少なくできるということである。幾つかの場合では、乗員は、展開するエアバッグに非常に近づいた位置にいる。エアバッグは、極めて速い速度で展開する必要があり、膨張するエアバッグの展開経路に入り込んだ乗員を怪我させることが知られている。所定の位置にいない乗員を傷つける可能性に影響を及ぼす1つの特徴は、エアバッグの内部圧力である。本発明のダイオードエアバッグは、所与の表面積についての内部圧力が低いため、所定の位置にいない乗員が被る力を効果的に減少する。
【0052】
更に、エアバッグを「調整」することの利点として、ダイオードエアバッグは、エアバッグ内の幾つかのセルだけに比較的高い圧力を送出するように設計されていてもよい。最初の約20ms乃至60msの初期充填/乗員相互作用時に亘り、選択されたセル内の圧力を高くすることができる。例えば、特定のセルが、乗員の初期衝突に亘り比較的高い圧力で機能を良好に果たす場合、これらのセルを調整するのが有利である。例えば、車輛又は電柱との衝突中に乗員と相互作用することがわかっているセルを、圧力が高くなるように調整してもよい。選択されたセルが、ひとたび、初期側方衝突についての要件を満たす高い圧力を受け取ると、その特定のセル内の圧力は、ガスが送出チューブの出口オリフィスを通って徐々に逆流するに従って、残りのセルと等しくなってもよい。
【0053】
ダイオードを用いたアプローチと関連した別の性能「調整」の利点は、特定のセルが、他のセルよりも急速にガスを受け取るようにすることである。選択したセルにガスを更に速い速度で送出することにより、定位完了時間を速くできる。これにより、選択したセルがエアバッグの残りのセルを引き下げ、最初に送出されたガスを全てのセルが等しく受け取る場合よりも速く、完全に展開した定位完了状態になる。比較的高い圧力を受け取るセルであるように定められたセルは、充填時間が速いセルであるように選択されたセルと同じであってもよい。セルの圧力を高くすること、及びガスの送出速度を速くすることのこれらの二つの目的は、互いに良好に作用する。
【0054】
ダイオードを用いたアプローチと関連した別の選択肢は、長時間に亘って膨張する特定のセル又はセル領域を形成することである。これらのセルは、初期側方衝突中には必要とされないが、転覆型の事故については経時的に必要とされるセルであってもよい。これは送出チューブ出口オリフィスの有効流れ面積を、初期側方衝突に必要なセルを充填するのに使用されるチューブオリフィスの有効流れ面積よりもかなり小さくすることによって行ってもよい。これらの小さな出口オリフィスは、ゆっくりと充填されるセルと直接的に連通していてもよい。これらのゆっくりと充填されるセルは、15ms乃至25msで充填されるのではなく、その代わりに、比較的ゆっくりと、例えば100ms乃至500ms又はそれ以上の時間で充填できる。
【0055】
ゆっくりと充填されるセルの選択肢を使用することによって、初期側方衝突要件について必要な膨張器出力を小さくできる。これは、充填されるべき総容積が少ないためである。この場合、長時間に亘って膨張されるセルは、初期に急速に充填されるセルと比較して低い圧力で、ほぼ半分又はそれ以下の圧力で充填すればよい。かくして、膨張器出力の総必要量は、選択されたセルを段階的に膨張することによって減少する。しかし、必要なとき及び必要な場所で総保護領域が必要に応じて提供される。
【0056】
詳細には、ゆっくりと充填されるセルは、車輛のルーフ領域又は天井に保護を提供するために充填されるセルであってもよい。これらのセルは、初期側方衝突事故中には必ずしも必要とされないが、転覆事故中には利点を提供する。これらのセルは、側方衝突事故中に使用されるセルに対し、遥かに遅い時期に充填が行われてもよい。
【0057】
ルーフを保護するために膨張可能なセルを充填することにより、乗員の頭部とルーフとの間の空間が少なくなる。このことは、特に、体の大きな乗員や背の高い乗員に関していえる。ルーフライナ内の大きな表面積を覆うようになったセルについては、エアバッグは、別の態様では、折り畳まれていない状態でルーフライナ内に格納されていてもよい。これにより、本質的に直ちに定位完了時間にでき、即ち定位完了状態が予め存在し、背の高い乗員の場合のエアバッグの位置に関する懸念を小さくする。
【0058】
ゆっくりと充填されるセルの別の用途は、膨張させたエアバッグセルが覆う領域を車輛の側方構造上に拡げることである。これは、車輛の転覆時に広範な保護を提供する。これは、乗員が車輛内を転げ回り、転覆以外の事故では代表的でない車輛の領域と接触するためである。
【0059】
ガスで充填されるように意図的には設計されていない、一つの特定のエアバッグ内の幾つかの領域が、経時的に徐々に充填されるようにできる。これらの追加の意図されていないセルは、膨張されていないこれらのエアバッグ領域を閉鎖するのに使用されたシームにより、実際には、これらのシームを通って意図せぬセル領域内に漏れることができるため、形成される。出力を長くされた膨張器がエアバッグに圧力を供給し続けるため、これらの意図せぬセルがガスで充填される。シームでの漏れの程度に応じて、意図せぬセルを充填するのにかかる時間は変化する。一つの特定のエアバッグでは、意図せぬセルは、展開をビデオモニターで見て、約1秒で充填される。随意であるが、意図せぬセルを形成するオフェンディング(offending)シームを戦略的に開放し、ゆっくりと充填されるセルを形成してもよい。更に、これらのゆっくりと充填されるセルを経時的に膨張することによって、エアバッグの総張力を更に大きくしてもよい。
【0060】
乗員包含性が、エアバッグに求められる別の要求である。乗員包含性は、展開したエアバッグが乗員を車輛内に保持し、乗員が窓開口部から投げ出されないようにする性能である。窓開口部に亘るエアバッグの張力は、包含性即ち乗員が窓開口部を越えて変位する程度に影響を及ぼす。本発明によるエアバッグでは、エアバッグ断面レベルでのセルの変位は起こり難い。これにより、乗員の総移動量は、大きく変形し易いセル間の従来の開放流を使用する、同じ圧力レベルの同様のセルの膨張時の断面と比較した場合、小さくなる。
【0061】
本発明によるエアバッグに追加できる更に別の選択肢は、膨張可能なストラップである。ストラップは、多くの場合、エアバッグを車輛に固定するのに使用される。ストラップを膨張させることにより、ストラップの長さは、膨張させていない状態と比較して短くなり、これにより、ストラップ、及びこれらのストラップが取り付けられたエアバッグ内に張力を発生する。ストラップを、エアバッグの初期膨張後に膨張するように形成することにより、有利には、圧力が失われることにより張力が失われる場合にエアバッグに張力を追加できる。
【0062】
以下の例は、従来設計のエアバッグと比較することにより、本発明のダイオード設計の幾つかの利点を強調する。この特定の比較例は、30リットルの適当な容積を持つ2列カバー(AピラーからCピラーまで)エアバッグを使用する。この比較例のエアバッグは、両方とも、切断して縫い合わせたエアバッグ構造であり、シームがシールされておらず、同じファブリックを使用している。
【0063】
従来の開放流エアバッグは、動的柱試験(dynamic pole test)により、乗員の頭部がストライクスルーしないようにするために約60kPa乃至70kPaの作動圧力を必要とすることがわかった。エアバッグの内部容積は、本質的に一定に、30リットルに保持されている。エアバッグの各々に、一定のマスを所定の高さから各エアバッグの同じ位置/領域に落とすエネルギ吸収試験を行った。更に、同じ膨張断面厚さを使用した。使用されたマスは、直径が16.51cm(6.5インチ)の賦形体であり、これは、乗員の頭部の表面領域を大まかにシミュレートしている。量種類のエアバッグに試験を行うことにより、従来の開放流エアバッグは、同じマスエネルギでエアバッグのストライクスルーが起こらないようにするのに、本発明によるダイオードエアバッグが必要とする圧力と比較して、約2倍乃至3倍の圧力を必要とするということがわかった。
【0064】
必要とされる作動圧力のこの相違により、ダイオードエアバッグは、かなり小型の膨張器を使用できる。上述の例では、側方衝突保護だけ(転覆なし)をシミュレートすると、従来の開放流エアバッグにおける膨張器の要件は、60kPaを発生するのに出力が2.3モルのコールドガス膨張器(He/Ar)を必要とする。約22kPaの作動圧力を発生するためにダイオードエアバッグが必要とする膨張器は、出力が1.5モルのコールドガス膨張器(He/Ar)である。かくして、従来のエアバッグは、ダイオードエアバッグよりもモル出力が約50%高い膨張器を必要とする。これは、部分的には、ダイオードエアバッグの作動圧力の必要条件が低いためであるが、作動圧力が低いことによりエアバッグの応力を減少できる(エアバッグの漏れを少なくできる)ためでもある。
【0065】
次いで、縫い合わせてあり/シールしていない同じエアバッグの例を使用し、エアバッグ/膨張器組み合わせを、転覆保護と関連して評価した。従来の開放流エアバッグは、5秒間包含する目的が与えられた場合、包含性の要件を十分に満たすため、5秒で約15kPaを必要とするということが確認された。所定の5秒間の目的が与えられた場合、ダイオードエアバッグは、包含の目的について、5秒で約10kPaのエアバッグ圧力で同様に機能する。ダイオードエアバッグについてのこの圧力値は、ダイオードエアバッグに設けられたロードセル断面内での変位が、従来のエアバッグと比較して減少することにより概算される。試験により、従来のエアバッグは、5秒で約15kPaを達成するため、出力が3.5モルの、出力を長くされたコールドガス膨張器(Extended Output Inflator:EOI)を必要とするということが確認された。更に予備試験により、作動圧力が低いダイオードエアバッグは、5秒の臨界で10kPaを達成するため、出力が2.5モルのコールドガスEOIを必要とするということがわかった。
【0066】
シールを施していないエアバッグでの圧力の保持を高めるためにシームを縫い合わせて漏洩路を減少することによっても、エアバッグの性能に影響を及ぼすことができる。エアバッグの漏れは、幾つかの重要な漏洩路に分けられる。第1に、漏れは、ベースとなるファブリックを通して生じる。これは、更に一般的には、ファブリックの透過性と呼ばれる。透過性は、ファブリック構造を通して、又は織り目を通して漏れるガスの量である。この潜在的漏洩路を減少するか或いはなくすのに幾つかの方法を使用できる。一つの従来の方法は、シリコーン等のガス不透過性基材でファブリックをコーティングすることである。ネオプレン、ポリウレタン、ポリエステル、等の他のコーティングを使用してもよい。一般に周知の別の方法は、積層体を使用することである。ファブリックの透過性を減少するための更に別の方法は、ファブリックにしみ込んでファブリックに結合し/接着し、漏れに対する障壁を形成する溶液に、ファブリックを浸漬することである。
【0067】
シリコーンでコーティングしたファブリックでは、コーティングのレベルを更に高くすることにより、エアバッグの漏れを減少するのを補助する。一般的な420デニールのナイロンファブリックで使用される代表的なコーティングレベルは、0.836m(1平方ヤード)のコーティング当たり24.692kg(0.7オンス)である。このコーティングレベルでは、透過性が、コーティングが施されていないファブリックと比較して大幅に減少する。しかしながら、特に圧力を上昇した場合、幾らかの透過性が存在する。
【0068】
サイドカーテンの用途では、エアバッグの作動圧力は大気圧よりも遥かに高い。代表的な圧力は50kPa乃至120kPa、そしてそれ以上である。サイドカーテンを形成するのに必要なこうした高い圧力及び大きな表面積では、ファブリックの透過性は、エアバッグの総漏れ量に更に大きな影響を及ぼす。このことは、膨張させたエアバッグを維持するのに必要な時間が長い場合に特にいえる。ファブリックの透過性は、コーティングが施されていないファブリックと比較して低いのがよいが、エアバッグの全表面積に亘って総体として考えると、たとえ小さな量であっても確実に積み上がる。
【0069】
第2の漏洩路は、ファブリックのパネルを接合するためにシームが使用された領域に存在する。シームを形成するために一般的に行われている一つの方法は、ステッチを使用してファブリックのパネルを互いに縫い合わせることである。縫い合わせたシームには、幾つかの潜在的漏洩路が存在する。一つの漏洩路は、ファブリックのパネル間に存在する。これは、これらのパネルが、縫い合わせたシームによって互いにサンドウィッチされているためである。即ち、ファブリック層間でファブリックの周囲開口部を通して漏れが生じるのである。ステッチの密度を高めることによっても漏れを減少できる。
【0070】
ステッチプロセス中にニードル穴が形成されたところに、更に別の漏洩路が存在する。これは、ニードル糸が各パネルファブリック層を通過するためである。形成されたニードル穴を縫い糸が通過するため、縫い糸が、幾らかのガス流をブロックするのを補助する。しかしながら、それでも幾らかの漏れが存在する。
【0071】
エアバッグの漏れを減少するのに使用される別の方法は、「シール及び縫合」と呼ばれる。この方法は、膨張したエアバッグのパターン及び形状を形成するのに必要な全ての領域で、ファブリックパネルに塗布した接着剤又はシーラントを使用する。この場合、強度及び一体性を向上するため、縫合ステッチをシーラントのビードの中央に加える。この方法は、エアバッグの,漏れを減少し、増大した圧力を保持するための可能な選択肢であることがわかっているけれども、欠点がある。必要とされる接着剤/シーラントは、極めて高価である。塗布プロセスは「べたつき」、時間がかかると考えられてきた。接着剤のビードを通過するニードルは、シーラントのビードから汚れを取り出し、これが、次いで、縫合プロセスに悪影響を及ぼす。更に、接着剤のビードの塗布後、縫合を開始する前に硬化時間が必要とされる。「シール及び縫合」方法と関連した別の大きな欠点は、こうしたシームが、エアバッグを折り畳んで車輛のルーフライナ領域に格納位置で収容する場合に大きな収納場所を必要とするということである。
【0072】
透過性が低いことが周知の種類のファブリックは、2004年12月2日に公開された、バスの、米国特許出願第2004/0242098A1号(以下、’098出願と呼ぶ)に開示されている。同特許出願に触れたことにより、この特許出願に開示された内容は本明細書中に含まれたものとする。このようなファブリックには、透過性が極めて低いために漏れが少ないという利点があるが、シームレベルで好ましい漏れ阻止特性を示す。処理を施したファブリックは、ニードル穴漏洩路での漏れが、この他のファブリック代替物と比較して少ないということがわかっている。このようなファブリックは、更に、糸の周囲で更に効果的に形成され、ガスがニードル穴を通って漏洩しないようにする良好なシールを形成する。
【0073】
別の一般的なシーム形成方法は、OPW即ち一部品織製(one piece woven)と呼ばれる。このプロセスは、ファブリックパネルを一緒に織製し、ファブリックが織機を通過する際に相互連結したシームを形成する。この方法は、糸を使用しないため、漏れが更に少ない。しかしながら、OPWでも、膨張によりシームに応力が加わり、漏洩路がこれらのシーム領域に形成される。
【0074】
ニードルの大きさが小さいと、一般的には、漏れが少なくなるため、幾つかの糸の大きさ及びニードルの種類/大きさを調査した。三つの異なるサイズ(#138、#92、及び#69)の糸を使用した。自動車のエアバッグで最も一般的に使用されているサイズの糸は、#138のナイロンである。糸が切れたりシームが不揃いになったりすることなく効率的に送出するため、糸の各大きさを最良のニードルと適合させた後、糸の大きさ/ニードル組み合わせを試験し、シームの漏れ量を比較評価する。
【0075】
シーム漏れを更に効果的に評価し、変数(シームの密度、糸のサイズ、ニードルのサイズ、ニードルのポイントの種類、糸の種類、糸のブランド、ボビン糸張力、ニードル糸張力、及びファブリックの種類)の大きさを比較するため、ファブリックの小片(swatches)を互いに縫い合わせ、多数の小さな膨張可能な正方形形状の「ピロー」を形成する。試験試料であるピローを使用し、ピロー外周のシーム並びに中央に形成した円形のシームのところでシーム漏れを評価する。様々なシーム構造を比較するため、4つのファブリックを使用した。これらの4つのファブリックは、’098出願に開示された315デニールのファブリック及び420デニールのファブリック、及びシリコーンでコーティングした315デニールのファブリック及び420デニールのファブリックである(コーティングを施したこれらのファブリックは、両方とも、0.836m(1平方ヤード)当たり約28.4g(約1オンス)のコーティングを備えている)。
【0076】
試験ピローに20kPaの圧力を加え、次いで60kPaの圧力を加える。これらの圧力は、漏れの評価中、それらのレベルの各々に維持される。漏れを評価する上で三つの方法を使用する。即ち、ピローを水中に入れて目で見て観察し、気泡漏れ検査溶液をシームにスプレーし、最後に供給圧力を遮断した後の圧力の減少を電子的に検査する。
【0077】
中央のシームは、比較的高い応力が加わった種類のシーム、即ち多くのサイドカーテンエアバッグパターンで代表的なシームをシミュレートするように選択される。比較的高い応力が加わるこれらの種類のシームは、エアバッグの膨張可能な領域を、実質的にシームの全周に亘ってシームのところで押し上げるシームである。更に、これらのシームは、エアバッグの必要な保護ゾーン内の非膨張領域のあまり大きい領域が追加されることがないように、代表的には大きさが比較的小さい。従って、比較的高い応力が加わるこれらのシームは、膨張させたエアバッグ内で発生する最も高い力の幾分かに対し、比較的小さいシーム長さ(周囲)を露呈する。比較的高い応力が加わるこれらのシームは、一般的には、膨張させたサイドカーテンの内側領域に設けられる。加圧状態での漏れの程度が最も顕著なのは、比較的高い応力が加わるこれらのシーム領域である。かくして、比較的高い応力が加わるこれらのシームでの漏れを減少するための最良の解決策を見つけることが、エアバッグの圧力保持を高める上で非常に有利であるということがわかっている。
【0078】
試験により、エアバッグの外面に追加の小さなファブリック層を追加することによって、漏れが大幅に減少する結果が得られるということが発見された。これは、膨張中及び加圧中に比較的大きな応力が加わる領域で有利である。強化体は、円形の中央シームを覆う小さな円形の切り出し小片(cutout)であってもよい。
【0079】
外部に位置決めされた強化体は、二つの目的で役立つ。第1に、高い応力が加わるシーム領域に追加のファブリック強度を追加し、かくしてファブリックの組織が拡がって離れることを効果的に減少する。第2に、ファブリック層によりガスケット効果が得られ、ファブリック層が設けられていない場合にはニードルの穴を通ってより容易に流れる漏れを減少する。
【0080】
更に、ピロー表面の内側又は圧力境界内に位置決めされた強化層に関して比較試験を行う。内側に位置決めした場合には、漏れを減少する見込みが大幅に低下する。強度や外ファブリック組織が拡がることに対する抵抗が追加されるといった幾つかの些細な利点が実現されるけれども、これらの応力点領域での全体としての漏れは、それでも、ファブリック強化層をピローの外側表面又は外側に縫い付けた場合よりもかなり高い。
【0081】
従って、エアバッグの応力が比較的高い領域では、強化層を外側に位置決めすることにより圧力の保持を改善できる。シリコーンをコーティングしたファブリック強化層及び’098出願のファブリック強化層の両方とも、外側に位置決めされた場合には効果的であることがわかった’098出願のファブリックは、シリコーン接着でコーティングしたファブリックを越える利点を示す。シリコーンファブリックは、コーティングを施した表面をエアバッグに向けることにより、良好な結果を示した。
【0082】
周囲に沿ったシーム密度と関連し、全ての種類のファブリックにおいて、シーム密度が高いと全体としての漏れが少なくなるという結果が得られた。#92の糸を用いて2.54cm(1インチ)あたり18個乃至22個のステッチの密度が好ましい。密度が、2.54cm(1インチ)あたり24個を越えると、糸のサイズに関わらず、漏れの顕著な減少は見られない。#92の糸は、#138の糸と比較して約50%多い長さの糸をボビンケース/スプールに巻き付けることができる。これにより、ボビンスプールを交換する場合の交換時間を減少できる。更に、#92の糸の断面が細いため、シームの厚さが減少する。これは、エアバッグを折り畳む場合に有利である。
【0083】
ボビンの張力が小さすぎると、漏れが増大するということが発見された。ボビン張力が低いことは、シームでの漏れを良好に制限するためにファブリックを互いに連結する上で効果的でない。そのため、比較的高い適当なボビン張力と、このボビン張力の約2倍乃至4倍のニードル張力を組み合わせることが、漏れを減少する上で極めて効果的であることがわかった。更に、シリコーンを加えたポリエステル糸は、同じ大きさの#92のナイロン糸よりも、機械/ニードルを通したプロセスが効果的であるということがわかった。
【0084】
エアバッグの膨張にコールドガス膨張器を使用することにより、ポリエステル糸を使用できる。従来、多くのエアバッグは、高温のガスを出力する膨張器を使用していた。従って、ナイロン糸が必要とされ、幾つかの場合では、更に高い温度に耐える、ケブラーやノメックス等の商標の糸が必要とされてきた。コールドガス膨張器を使用する場合には、ポリエステル型の糸を使用できる。
【0085】
最も効果的であることがわかった組み合わせは、ポリエステルコートの商標の#92の大きさの糸にシリコーン添加剤を結合した構造である。最も効果的であることがわかったニードルは、100−16である。最も効果的であることがわかったニードルのポイントの種類は、RGである。この種のニードルは、縫い合わせ中にファブリックを切ったり擦ったりすることが少なく、漏れ量に悪影響を及ぼさない。最も効果的であることがわかったボビン糸についての張力は、170.1g乃至255.1g(6オンス乃至9オンス)である。ニードル糸についての対応する有効張力は、510.3g乃至708.7g(18オンス乃至25オンス)である。
【0086】
様々な種類の糸の延びは、漏れについて所定の影響をもたらすことがわかっている。一般的には、糸の剛性が比較的高いと、エアバッグの加圧中の漏れが少なくなる。糸の剛性が高すぎると、ステッチの破壊強度に悪影響が及ぼされるが、結合したポリエステル等の糸は、きわめて効果的であることがわかっている。シリコーンコーティング即ち処理剤の含有量が高い糸は、縫い合わせたシームの漏れを減少する上で更に有利であることがわかっている。
【0087】
実際のパターンを縫い合わせてエアバッグにする幾つかの技術が、漏れを減少する上で有利であるということがわかった。これらの方法のうちの幾つかは、更に、プロセス時間を改善すると同時に、望ましいことに、シームを均等にし且つ一貫したものにする。プログラムした機械を使用して、小さな円形、楕円形、長円形、等の賦形パターンを縫い付けることにより、優れたシームの均等性を提供できる。これらのプログラムした機械は、エアバッグ全体を360°に亘って回転する必要なしに、ファブリックを円形パターンで移動する。
【0088】
更に、中央に配置されたシーム(例えば円形のシーム)をエアバッグの周囲シームに再び連結するために1つのシームを使用することにより、漏れを減少できるということに着目されたい。この連結シームについて形成されたニードル穴の数は、従来の二重シームと比較して約半分に減少する。
【0089】
漏れを減少する上で助けとなる別の特徴は、シーム及び二つの別々のファブリックパネルを使用するのでなく、エアバッグを下側周囲で折り畳むことである。この技術は、当該産業において、「タコ折り畳み(taco fold)」として周知である。
【0090】
以上、本発明の一つ又はそれ以上の好ましい実施例を説明したが、本発明の任意の等価物及び全ての等価物は、本発明の精神及び範囲内に含まれるということは理解されるべきである。図示の実施例は、例として提供されたものであって、本発明を限定しようとするものではない。かくして、本発明はこれらの実施例に限定されないということは、当業者には理解されるべきである。これは、変更を行うことができるためである。従って、これらの実施例のうちの任意の実施例及び全ての実施例は、本発明の範囲及び精神に含まれるため、本発明に含まれるものと考えられる。
【符号の説明】
【0091】
18 エアバッグ
46 送出チューブ
48 出口オリフィス
54 上周囲シーム
57 ステッチ
58、66、68、70、72、74 シーム
28、30、32、34、36、38、40 セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用車用の膨張可能なエアバッグアッセンブリにおいて、
実質的に隔離された複数のセルを持つエアバッグと、
前記実質的に隔離された複数のセルに開口した複数の出口オリフィスを持つ送出チューブとを含み、
少なくとも一つの出口オリフィスが、前記実質的に隔離された複数のセルの各々にガスを供給するように形成されており、
前記セルがガスで膨張されるとき、前記実質的に隔離された複数のセルの各々の間でのガスの流れが、乗員により負荷が加えられている間制限される、エアバッグアッセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
少なくとも一つのオリフィスが、前記オリフィスを通してガスを差し向けるように形成されたスクープを含む、エアバッグアッセンブリ。
【請求項3】
請求項2に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
各オリフィスは、前記オリフィスを通してガスを差し向けるように形成されたスクープを含む、エアバッグアッセンブリ。
【請求項4】
請求項3に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記スクープは、前記送出チューブの周囲で食い違っている、エアバッグアッセンブリ。
【請求項5】
請求項1に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記送出チューブ及び前記エアバッグは、実質的に隔離された隣接したセル間でぴったりと締まった嵌合いを形成する、エアバッグアッセンブリ。
【請求項6】
請求項5に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
隣接したセル間の有効流れ面積は、約3.226cm(約0.5平方インチ)よりも小さい、エアバッグアッセンブリ。
【請求項7】
請求項6に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
隣接したセル間の有効流れ面積は、約1.613cm(約0.25平方インチ)よりも小さい、エアバッグアッセンブリ。
【請求項8】
請求項1に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
出力を長くされた膨張器がガスを供給する、エアバッグアッセンブリ。
【請求項9】
請求項8に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記実質的に隔離された複数のセルの膨張時の作動圧力は、約20キロパスカル乃至40キロパスカルである、エアバッグアッセンブリ。
【請求項10】
請求項1に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記送出チューブは剛性である、エアバッグアッセンブリ。
【請求項11】
請求項1に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記送出チューブは可撓性である、エアバッグアッセンブリ。
【請求項12】
請求項11に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記可撓性送出チューブは、ファブリックで形成されている、エアバッグアッセンブリ。
【請求項13】
請求項8に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記出力を長くされた膨張器内の分子が大きいガスの重量%は、必要な充填時間が約15ms乃至20msである場合には、10重量%乃至40重量%である、エアバッグアッセンブリ。
【請求項14】
請求項8に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記出力を長くされた膨張器内の分子が大きいガスの重量%は、必要な充填時間が約40msである場合には、約50重量%である、エアバッグアッセンブリ。
【請求項15】
請求項13に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記分子が大きいガスはアルゴンである、エアバッグアッセンブリ。
【請求項16】
乗用車の乗員を保護するための膨張可能なサイドカーテンエアバッグアッセンブリにおいて、
第1層と第2層とを互いに接合することによって形成された、実質的に隔離された複数のセルを持つエアバッグと、
前記実質的に隔離された複数のセルに開口した複数の出口オリフィスを持つ送出チューブとを含み、
少なくとも一つの出口オリフィスが、前記実質的に隔離された複数のセルの各々にガスを供給するように形成されており、
前記セルがガスで膨張されるとき、前記実質的に隔離された複数のセルの各々の間でのガスの流れが、乗員により負荷が加えられる間、制限され、
前記セルのうちの少なくとも二つが互いに隣接して配置されている、エアバッグアッセンブリ。
【請求項17】
請求項16に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
隣接したセル間の有効流れ面積は、約3.226cm(約0.5平方インチ)よりも小さい、エアバッグアッセンブリ。
【請求項18】
請求項17に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
隣接したセル間の有効流れ面積は、約1.613cm(約0.25平方インチ)よりも小さい、エアバッグアッセンブリ。
【請求項19】
請求項16に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記第1層及び前記第2層は、糸を使用して互いに縫い合わせられ、ステッチシームを形成する、エアバッグアッセンブリ。
【請求項20】
請求項19に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記ステッチシームはシールされている、エアバッグアッセンブリ。
【請求項21】
請求項19に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、更に
ステッチの高応力領域に強化層を含む、エアバッグアッセンブリ。
【請求項22】
請求項16に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記第1層及び前記第2層は、一部品織製構造を使用して接合されている、エアバッグアッセンブリ。
【請求項23】
請求項16に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記第1層及び前記第2層は、ファブリックでできている、エアバッグアッセンブリ。
【請求項24】
請求項23に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記ファブリックは、コーティングを施したファブリックである、エアバッグアッセンブリ。
【請求項25】
請求項19に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記ステッチを形成するのに使用されたニードルの張力は、ボビンの張力の約2倍乃至4倍である、エアバッグアッセンブリ。
【請求項26】
乗用車用のエアバッグアッセンブリにおいて、
実質的に隔離された複数のセルを持つエアバッグと、
前記実質的に隔離された複数のセルに開口した複数の出口オリフィスを持つ送出チューブとを含み、
少なくとも一つの出口オリフィスが、前記実質的に隔離された複数のセルの各々にガスを供給するように形成されており、
前記セルがガスで膨張されるとき、前記実質的に隔離された複数のセルの各々の間でのガスの流れが、乗員により負荷が加えられる間制限され、
前記実質的に隔離された複数のセルのうちの少なくとも一つのセルは、他のセルよりも前に膨張するように形成されている、エアバッグアッセンブリ。
【請求項27】
請求項26に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
少なくとも一つのオリフィスが、オリフィスを通してガスを差し向けるように形成されたスクープを含む、エアバッグアッセンブリ。
【請求項28】
請求項26に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記オリフィスの各々は、オリフィスを通してガスを差し向けるように形成されたスクープを含む、エアバッグアッセンブリ。
【請求項29】
請求項28に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記スクープは、前記送出チューブの周囲で食い違っている、エアバッグアッセンブリ。
【請求項30】
請求項28に記載のエアバッグアッセンブリにおいて、
前記スクープの形体は、前記実質的に隔離された複数のセルのうちの少なくとも一つのセルのいずれが、別のセルよりも前に膨張するように形成されるのかを決定する、エアバッグアッセンブリ。
【請求項31】
乗用車出口使用するための乗員拘束システムにおいて、
出力を長くされた膨張器と、
所望の時期に、前記出力を長くされた膨張器に信号を送出するように形成されたセンサと、
前記出力を長くされた膨張器に連結された、複数の出口オリフィスを持つ送出チューブと、
実質的に隔離された複数のセルを持ち、前記複数の出口オリフィスが、前記実質的に隔離された複数のセルに開口しているエアバッグとを有し、
少なくとも一つの出口オリフィスは、前記実質的に隔離された複数のセルの各々にガスを供給するように形成されており、
前記セルがガスで膨張したとき、前記実質的に隔離された複数のセルの各々の間のガスの流れが、乗員により負荷が加えられる間制限される、乗員拘束システム。
【請求項32】
ガスの漏れを減らすための強化層を持つサイドカーテンエアバッグアッセンブリにおいて、
第1層及び第2層を持ち、これらの第1層及び第2層は、互いに縫い合わされて、内部及び外部を持つエアバッグを形成する、サイドカーテンエアバッグと、
前記第1層を前記第2層に固定するステッチの少なくとも部分を中心として取り付けられた強化層とを含み、
前記強化層は、前記エアバッグの前記外部と隣接しており、
前記強化層、前記第1層、及び前記第2層は、互いに縫い合わせられている、サイドカーテンエアバッグアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−51587(P2011−51587A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−252498(P2010−252498)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【分割の表示】特願2007−523737(P2007−523737)の分割
【原出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(507026040)ニクスジェン・テクノロジーズ・エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】