説明

膨張可能な多孔性インプラント、及び薬物送達のための方法

【課題】グラフト、ステントグラフト、及び嚢体等の膨張可能な多孔性インプラント、並びに薬物送達のための方法及びキットを提供する。
【解決手段】グラフト及びステントグラフト10は、身体の流路内に治療薬及び/又は診断薬を送達する。膨張可能な多孔性インプラントは、薬物をより多量に、且つより正確な投与量で、より長い投与時間に亘って身体内に直接送達する。さらにこれら膨張可能な多孔性インプラントは、多くの場合、挿入時に柔軟であり、留置が容易なように小型の送達形態を有する。本発明のインプラントは、さらに、一体化された単一構造にて、薬物送達に加えて機械的又は構造的機能を提供し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、医療器具及び方法に関する。より詳細には、本発明は、例えばグラフト、ステントグラフト、及び嚢体(bladders)等の膨張可能な多孔性インプラント、並びに薬物送達のための方法及びキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
脈管及び器官の疾患は、罹患した脈管及び器官の機能を修復又は代替する補綴具であるグラフト又はステントグラフトを必要としてきた。本発明は特に、身体内の流路の完全性を損なう可能性がある疾病、又は損傷を治療するための補綴具に関する。例えば、補綴具は、胸部及び腹部大動脈瘤、動脈解離(例えば外傷を原因とするもの)等を含む心血管系における適応症の治療、並びに消化器系(胆管、食道、及び胃腸管内の同様の構造)、呼吸器系(気管支、気管、及び同様物)、生殖器系(卵管、子宮、及び同様物)、泌尿器系(尿道、尿管、及び同様物)、及び人間の身体の他の系内における適応症の治療に有用である。補綴具としてのグラフト又はステントグラフトは、修復、代替、又はバイパス形成される脈管又は器官の自然な流れを再建、又は再形成する。
【0003】
補綴具としてのグラフト又はステントグラフトは、ある程度の成功を収めているが、これらの埋め込み型器具を改良することは有益であると思われる。より詳細には、改良点の一つとして、埋め込み型補綴具を介して、治療薬を身体の流路内に直接送達することがある。腹部大動脈瘤又は他の血管の動脈瘤に使用されるグラフトは、グラフトを閉塞させ得る血栓形成等の合併症を起こすことがある。また、一般にステントグラフトは肥厚化を引き起こす場合があり、この肥厚化によりグラフトが破損し得る。このような場合、これら合併症を治療又は予防する治療薬を送達することが特に有用である。
【0004】
この必要性に対処する目的で、治療薬を身体の流路内に直接送達する種々の埋め込み型器具が設計されている。治療薬の局所送達は、いくつかの理由により全身送達よりも優れている。第一に、局所送達は、標的としない他の脈管又は器官をその薬剤に晒すことなく、標的部位に適切な量の治療薬を送達することができる。第二に、治療薬の局所濃度は、全身投与によって通常達成され得る濃度と比較して、相当高くすることができる。第三に、局所送達は、通常であれば治療薬の吸収が遅い標的組織に、薬剤を集中させることができる。
【0005】
治療薬の直接投与は、主としてカテーテル注入又は被覆補綴器具の使用により達成されている。カテーテルを介した治療薬の直接投与では、通常、薬物送達の継続時間全体に亘ってカテーテルが身体内の定位置に配置されている必要がある。したがって、カテーテル注入による治療は、主として治療継続時間が短いものに適している。被覆補綴器具、例えばステント、グラフト、又は他のインプラント等も幅広く利用されている。これらの被覆器具は様々な程度にて成功を収めているが、いくつかの明白な欠点が存在する。すなわち、被覆補綴器具は、その製造工程が複雑であり、場合によっては器具の組立て中(例えばステントを搬送カテーテル又はシースに通過させる時)又は留置中に被覆が剥がれ落ちることがある。被覆補綴器具に関する別の懸念の一つは、薬物の投与量、送達の正確さ及び継続時間が、インプラント全体に対して通常小さい部分を占める被覆自体によって、制限され得ることである。
【0006】
これらの理由により、身体の流路内に治療薬を送達するための改良された埋め込み型器具、及び方法を提供することが望ましい。特に、より多量に、且つより正確な量で、より長い投与時間に亘って、薬物を身体内に直接送達する改良された埋め込み型器具及び方法を提供することが望ましい。また、留置が容易なように、柔軟性を有する小型の埋め込み型器具を提供することがさらに望ましい。また、薬物送達に加えて、機械的又は構造的機能を果たす一体化された埋め込み型器具を提供することがさらに望ましい。
【0007】
活性物質を埋め込み型器具、及び他の器具から放出するための方法及び装置は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26、特許文献27、特許文献28、特許文献29、特許文献30、特許文献31、特許文献32、特許文献33、特許文献34、特許文献35、特許文献36、特許文献37、特許文献38、特許文献39、特許文献40、特許文献41、特許文献42、特許文献43、特許文献44、特許文献45、特許文献46、特許文献47、特許文献48、特許文献49、特許文献50、特許文献51、特許文献52、特許文献53、特許文献54、特許文献55、特許文献56、特許文献57、特許文献58、特許文献59、特許文献60、特許文献61、特許文献62、特許文献63、特許文献64、特許文献65、特許文献66、特許文献67、特許文献68に記載されている。
【0008】
上記の各引用の開示全体は、参照により本願に援用される。
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,652,581号明細書
【特許文献2】米国特許第6,652,575号明細書
【特許文献3】米国特許第6,616,650号明細書
【特許文献4】米国特許第6,613,084号明細書
【特許文献5】米国特許第6,613,083号明細書
【特許文献6】米国特許第6,613,082号明細書
【特許文献7】米国特許第6,599,275号明細書
【特許文献8】米国特許第6,554,857号明細書
【特許文献9】米国特許第6,545,097号明細書
【特許文献10】米国特許第6,537,195号明細書
【特許文献11】米国特許第6,521,284号明細書
【特許文献12】米国特許第6,471,980号明細書
【特許文献13】米国特許第6,471,687号明細書
【特許文献14】米国特許第6,409,716号明細書
【特許文献15】米国特許第6,387,124号明細書
【特許文献16】米国特許第6,379,382号明細書
【特許文献17】米国特許第6,379,381号明細書
【特許文献18】米国特許第6,364,856号明細書
【特許文献19】米国特許第6,361,780号明細書
【特許文献20】米国特許第6,358,276号明細書
【特許文献21】米国特許第6,355,063号明細書
【特許文献22】米国特許第6,355,055号明細書
【特許文献23】米国特許第6,328,762号明細書
【特許文献24】米国特許第6,316,522号明細書
【特許文献25】米国特許第6,306,165号明細書
【特許文献26】米国特許第6,254、632号明細書
【特許文献27】米国特許第6、251,136号明細書
【特許文献28】米国特許第6,240,616号明細書
【特許文献29】米国特許第6,165,210号明細書
【特許文献30】米国特許第6,096,070号明細書
【特許文献31】米国特許第6,004,346号明細書
【特許文献32】米国特許第5,972,027号明細書
【特許文献33】米国特許第5,843,069号明細書
【特許文献34】米国特許第5,609,629号明細書
【特許文献35】米国特許第5,443,458号明細書
【特許文献36】米国特許第5,411,550号明細書
【特許文献37】米国特許第5,383,928号明細書
【特許文献38】米国特許出願公開第2003/0143330号明細書
【特許文献39】米国特許出願公開第2003/0074048号明細書
【特許文献40】米国特許出願公開第2003/0060871号明細書
【特許文献41】米国特許出願公開第2003/0036794号明細書
【特許文献42】米国特許出願公開第2003/0033007号明細書
【特許文献43】米国特許出願公開第2003/0033004号明細書
【特許文献44】米国特許出願公開第2003/0028243号明細書
【特許文献45】米国特許出願公開第2003/0004565号明細書
【特許文献46】米国特許出願公開第2002/0138048号明細書
【特許文献47】米国特許出願公開第2002/0120326号明細書
【特許文献48】米国特許出願公開第2002/0103527号明細書
【特許文献49】米国特許出願公開第2002/0099434号明細書
【特許文献50】米国特許出願公開第2002/0098278号明細書
【特許文献51】米国特許出願公開第2002/0091440号明細書
【特許文献52】米国特許出願公開第2002/0082685号明細書
【特許文献53】米国特許出願公開第2002/0082682号明細書
【特許文献54】米国特許出願公開第2002/0082680号明細書
【特許文献55】米国特許出願公開第2002/0082552号明細書
【特許文献56】米国特許出願公開第2002/0042645号明細書
【特許文献57】米国特許出願公開第2002/0037145号明細書
【特許文献58】米国特許出願公開第2002/0026235号明細書
【特許文献59】米国特許出願公開第2001/0041928号明細書
【特許文献60】国際公開第2004/004603号パンフレット
【特許文献61】国際公開第03/082360号パンフレット
【特許文献62】国際公開第03/043539号パンフレット
【特許文献63】国際公開第03/026713号パンフレット
【特許文献64】国際公開第01/52914号パンフレット
【特許文献65】欧州特許出願公開第1360967号明細書
【特許文献66】欧州特許出願公開第1121945号明細書
【特許文献67】欧州特許出願公開第0997115号明細書
【特許文献68】欧州特許出願公開第0747069号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、膨張可能な多孔性のインプラント、例えばグラフト、ステントグラフト、及び嚢体、並びに薬物送達のための方法及びキットを提供する。特に、本発明のグラフト及びステントグラフトは、身体の流路内に治療薬及び/又は診断薬を送達する。この膨張可能な多孔性インプラントは、薬物をより多量に、且つより正確な投与量で、より長い投与時間に亘って、身体内に直接送達することができる。さらに、この膨張可能な多孔性インプラントは、多くの場合、挿入時には柔軟であり、留置が容易なように送達形態は小型化されている。以下に詳細に説明するように、本発明のインプラントは、一体化された単一構造にて、薬物送達に加えて機械的又は構造的機能をさらに提供し得る。
【0011】
本発明の膨張可能な多孔性のグラフト及びステントグラフトは、身体内の罹患した流路又はその一部を修復、代替、又はバイパス形成することが可能である。通常、このようなグラフト及びステントグラフトは、動脈(例えば大動脈)、静脈、並びに過去に移植したグラフト、シャント、フィステル及び同様物を含む、患者の脈管構造における任意の血管内に移植することが可能である。このような場合、その補綴器具は、胸部及び腹部大動脈瘤、動脈解離、胸部若しくは末梢動脈瘤、他の血管の動脈瘤、血管疾患、他の罹患した若しくは異常な血管、冠動脈内の罹患した伏在静脈グラフト等を含む、脈管構造内におけるいくつかの適応症の治療に有用である。しかしながら、本発明の器具は、脈管構造内への留置及び/又は移植に限定されないことが理解されよう。例えば、本発明のグラフト及びステントグラフトは、消化器系(胆管、食道、及び胃腸管内の同様の構造)、呼吸器系(気管支、気管、及び同様物)、生殖器系(卵管、子宮、及び同様物)、泌尿器系(尿道、尿管、及び同様物)、並びに人間の身体の他の系内における他の適応症の治療にも有用であり得る。
【0012】
本発明の一側面において、グラフトはグラフト本体部及び膨張媒体を備える。グラフト本体部は、近位端及び遠位端を有し、少なくとも一個の膨張可能な多孔性チャネルすなわち空洞を画成する。膨張媒体は、膨張可能なチャネル内に導入されるように構成された、少なくとも一種の治療薬を含有する。本発明にて使用され得るグラフトの例は、米国特許第6,395,019号明細書、及び同時係属の米国特許出願第10/327,711号明細書に詳細に記載されており、これら双方は本願の譲受人に譲渡され、参照により本願に援用される。本発明では、例えば、Holmanらに付与された米国特許第5,871,537号明細書、Kwan−Gettに付与された米国特許第5,151,105号明細書、Pigottに付与された米国特許第5,156,620号明細書、Samuelsに付与された米国特許第6,007,575号明細書、McDermottらに付与された米国特許第6,312,462号明細書、及びSherryによる米国特許出願第09/978,383号明細書(2001年10月16日出願)に記載されている他のグラフトを使用してもよく、それぞれその全体が参照により本願に援用される。
【0013】
少なくとも一種の治療薬は、膨張媒体から多孔性チャネルの壁を介して輸送され、例えば患者の脈管構造内の血管のような身体管腔内に放出され得る。少なくとも一種の治療薬は、グラフト本体部の管腔側及び反管腔側のいずれかの表面から身体内に放出されるように構成され得る。少なくとも一種の治療薬は、グラフトによって治療される特定の適応症に応じた任意の治療目的を果たす様々な薬剤からなり得る。例えば、治療薬は、内皮形成促進薬、血管新生促進薬、抗血栓薬、抗動脈瘤薬、抗感染薬、抗炎症薬、抗再狭窄薬、化学療法剤、及び抗癌剤からなる群から選択された一種又は二種以上の薬剤からなり得る。
【0014】
多孔性チャネルは様々な多孔度を有しており、身体管腔内への制御及び/又はプログラムされた薬物送達を実現し得る。グラフト本体部は、その表面を介した輸送を可能にする任意の生体適合性材料からなり得る。例えば、グラフト本体部は、フルオロポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフィン、及びポリアミドからなる群から選択された一種又は二種以上の材料からなり得る。グラフト本体部は、特に発泡ポリテトラフルオロエチレン、有孔ポリテトラフルオロエチレン、又は他の合成材料からなっていてもよい。このようなグラフトの製造方法及び装置は、本願の譲受人に譲渡され、参照により本願に援用される国際特許出願第PCT/US02/40997号明細書に、より詳細に記載されている。
【0015】
少なくとも一個のチャネルは、螺旋、長手方向すなわち直線状のチャネル、及びグラフトの端部間においてグラフトの長さの一部分のみ、又はグラフトの遠位端若しくは近位端の周囲のみに延び得る周方向のリングから選択された一種又は二種以上の構成を有し得る。例えば、相互に連結する格子又はリング、鋸歯状パターン、互い違い又は不連続パターン、非直線状又は波形パターンのような他の配置も、単独で、又は上述のチャネル構成と組合せて適切であり得る。さらに、グラフトはグラフト本体部の近位端、遠位端又はその双方に配置された少なくとも一個の膨張可能な多孔性のカフを備えてもよく、このカフは、必要に応じて上述の少なくとも一個のチャネルと流体が流れるように連通し、且つ膨張媒体を収容していてもよい。一個又は二個以上のチャネル及びカフは、膨張時に十分堅い構造となり、それによってグラフト本体部を支持して、身体内の自然な流路の再形成又は再建に役立つ。さらに、一個又は二個以上の膨張したチャネル及びカフは、グラフトを密着させていかなる洩れをも防ぐに十分な表面を提供し、また器具のねじれを防止することができる。ねじれ抵抗型グラフト及びエンドリークの取り扱いは、同時係属の米国特許出願第10/384,103号明細書及び米国特許出願第10/691,849号明細書にそれぞれより詳細に記載されており、これら双方は本発明の譲受人に譲渡され、参照により本願に援用される。
【0016】
膨張媒体は、通常、治療薬を収容するホストポリマーからなるが、必ずしもそうでなくてもよい。治療薬はポリマーから徐放的に放出される。治療薬は、ホストポリマーを介した放散により放出させるか、又は代替的にホストポリマーの減成又は分解により放出させることが可能である。ポリマーの減成による放出の場合、グラフト本体部はホストポリマー塊の輸送を阻止することが可能な生体適合性材料から形成される。一般的には、治療薬の所望の放出速度を達成するために、チャネルの多孔度、及び/又はホストポリマーの放散若しくは減成特性を調節し得る。通常、身体管腔内に放出可能な治療薬の量は、μg〜mgレベルの範囲内にあり、おおよそ約10μg〜約100mg又はそれ以上である。治療薬は、約1週間未満〜約2、3ヶ月又は多数ヶ月間、おおよそ約7日間〜12ヶ月間、身体管腔内に輸送されるように構成されている。
【0017】
ホストポリマーは一般に、グラフトの留置及び/又は移植の前、留置及び/又は移植の間、又は留置及び/又は移植の後に、膨張可能なチャネル内に導入されることが可能な、任意の生体適合性材料からなり得る。例えば、ホストポリマーは、グラフトが搬送カテーテルから留置された後であって、その部位にグラフトが実際に移植される前に、グラフトを膨張させるよう使用され得る。ホストポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プルロニックポリオキシマー(polyoxymer)、アクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸、ポリエチレン/アクリル酸共重合体、ポリエチルオキサゾリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン/ビニルピロリドン共重合体、ポリマレイン酸、ポリエチレン/マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、及びポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体からなる群から選択された一種又は二種以上の材料からなり得る。膨張媒体は液体からなってもよく、その液体は注入後に液体のままであってもよく、相変化又は架橋形成によって固化してもよい。後者の場合、膨張媒体は約3分〜約12分の範囲の硬化時間、及び約345kPa〜2758kPa(約50psi〜約400psi)の範囲の硬化後の弾性係数を有する硬化性の液体とすることができる。
【0018】
本発明の別の一側面では、近位端及び遠位端を有し、該近位端と遠位端との間に少なくとも一個の膨張可能な多孔性チャネルを画成するグラフト本体部を備えるステントグラフトを提供する。グラフト本体部の近位端又は遠位端には接続部材が取り付けられ、同接続部材は一個又は二個以上の接続要素を有している。接続部材の一個又は二個以上の接続要素には、もう一個の近位端側ステント接続要素を有するステントが連結されている。少なくとも一種の治療薬を含有する膨張媒体は、膨張可能なチャネル内に導入されるように構成されている。
【0019】
本発明のさらなる別の一側面では、治療薬を送達する方法を提供する。一つの方法は、近位端及び遠位端を有し、且つ少なくとも一個の膨張可能な多孔性チャネルを画成するグラフト本体部を提供する工程を含む。グラフト本体部は、身体管腔内に移植される。多孔性チャネルが膨張され、すなわち少なくとも一種の治療薬を含有する膨張媒体が注入される。グラフトは標準的な外科的手法を用いて移植されてもよく、管腔内又は他の送達モードにより移植されてもよい。通常、多孔性チャネルは、グラフトの留置及び/又は移植前、留置及び/又は移植中、又は留置及び/又は移植後に膨張される。次に、本願の譲受人に譲渡され、参照により本願に援用される同時係属の米国特許出願第10/686,863号明細書に、その例がより詳細に記載されているグラフト送達システムを分離して身体から除去し、インプラントをその位置に残留させた後、身体内に一定期間薬剤を放出させる。治療薬は膨張媒体から多孔性チャネルを介して輸送されて、グラフト本体部の管腔側又は反管腔側の表面から身体管腔内に放出される。多孔性チャネルは、様々な多孔度を有する発泡又は有孔ポリテトラフルオロエチレンから形成されている。膨張媒体は、治療薬を収容するホストポリマーからなり、該ポリマーは放散又は減成プロセスにより治療薬を放出する。一般にグラフト本体部は、ホストポリマー塊の輸送を阻止する。本発明によれば、有用なホストポリマーは、液体として注入され、約3分〜約12分の範囲の硬化時間を有し、約345kPa〜2758kPa(約50psi〜約400psi)の範囲の硬化後の弾性係数を有するポリエチレングリコールからなり得る。
【0020】
本発明のさらなる別の一側面では、グラフトと、治療薬を送達するために該グラフトを移植及び膨張させる方法に関する使用説明書とを備えたキットを提供する。このキットは、少なくとも一種の治療薬を含有する膨張媒体の原料も備え得る。グラフトは、本願に記載されている任意の送達構造を有してよく、使用説明書には、一般に上述した方法の一つ又は二つ以上を実行するステップが列挙されている。使用説明書は多くの場合印刷され、場合によっては少なくとも一部が包装上に記述される。あるいは、使用説明書は、上述した任意の方法を説明する、及び/又は列挙するビデオテープ、CD、DVD、他の機械判読可能なフォーマット若しくはコード、グラフィック描写、又は同様物に含められていてもよい。
【0021】
本発明の薬物送達機構は、多数の異なる埋め込み型器具に導入することができる。上記の説明はグラフト及びステントグラフトに関するものであるが、治療薬送達のために他の膨張可能な多孔性のインプラント器具を使用し得ることが理解されるであろう。より詳細には、嚢状又は管状の形態を有する膨張可能な多孔性の嚢体を使用することもできる。嚢体は、不定期間且つ潜在的に長期間、治療部位に移植可能である点で永久性を有する。嚢体は、脈管構造(例えば血管)、又は他の身体管腔、臓器、及び嚢体の存在がいずれの生体機能にも悪影響を及ぼさない身体内組織構造に適用され得る。また通常、嚢体は薬物送達のプラットフォームとしての役割を果たす上に、いくつかの機械的機能を発揮する。嚢体はさらに、例えば卵管を遮断する等の閉塞性を有し、又は例えば組織充填、尿失禁の治療、癌の治療、受胎調節処置、サイナス移植、美容若しくは形成外科における補綴、脊椎構造の支持、管腔又は管路内の流量若しくは開閉弁の制御、及び同様の用途等の他の能力が利用される。
【0022】
一実施態様において、人間の身体内に移植するのに適した膨張可能な多孔性インプラントは、一般的に膨張可能な多孔性の嚢体を備え、この嚢体は、その容積を画成する実質的に非弾性の壁を有し得る。少なくとも一種の治療薬を含有する膨張媒体を導入するために、少なくとも一つの嚢体壁開口部が形成されている。少なくとも一つの嚢体開口部の各々には、少なくとも一つの嚢体壁閉鎖具も設けられて、容積内に膨張媒体を保持する。嚢体壁及び膨張媒体は、移植部位に所望の治療薬を送達するよう選択され得る。本発明にて使用され得る典型的な膨張可能なインプラントは、本願の譲受人に譲渡され、参照により本願に援用される同時係属の米国特許出願第10/461,853号明細書に詳細に記載されている。膨張可能な多孔性嚢体は、膨張可能な多孔性グラフトチャネルに関して上記した任意の材料からなり得、またこのインプラント材料の輸送及び多孔度に関しても上記した任意の特性を採用し得る。同様に、本実施態様においては、前述したような膨張媒体、治療薬、種々の放出モード、薬剤の投与量及び継続時間を適用し得る。
【0023】
別の一実施態様において、閉塞嚢体は、カテーテル、外科移植又は他の移植技術を用いて、患者の身体の治療部位に留置することができる。本実施例では、膨張媒体は、嚢体を膨張させて脈管を閉鎖すると共に、治療薬を送達するために使用され得る。治療薬は、閉塞具の周囲の洩れの危険を低減するために血栓薬からなってもよく、閉塞具により提供された止血シールの永久性を高めるために細胞成長剤からなってもよく、及び/又は、嚢体の周囲の組織に対して他の治療的利点を提供するために他の治療薬からなってもよい。膨張媒体は身体管腔内の流体の流れを減少させ、又は閉塞するために機械的障害物として働き、また標的塞栓部位の領域へ治療薬を局所送達するために治療薬のリザーバとして働くといった二役を果たす塞栓組成物をさらに含有し得る。塞栓組成物は、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、又はポリプロピレングリコールジアクリレートの、ペンタエリスリトールテトラ3(メルカプトプロピオネート)及び生理学的に許容される緩衝液との組合せからなり得る。本発明と関連して使用され得る塞栓物質は、“Methods、Compositions、and Devices for Embolizing Body Lumens”と題された2004年1月7日出願の、同時係属の米国特許出願第10/ 明細書(代理人整理番号:021630−005700US)に詳細に記載されており、その開示全体は参照により本願に援用される。
【0024】
この二役の実施態様において、最初に治療薬は塞栓組成物の容積全体に収容され得る。治療薬は、懸濁物、混合物のいずれかとして、又は塞栓組成物の構成要素の一つに化学結合されることによって収容され得る。治療薬は、塞栓組成物の構成要素の主鎖、又は側鎖に結合され得る。例えば、治療薬はポリエチレングリコールの主鎖に結合されてもよい。いくつかの典型的な薬物、及び該薬物を塞栓組成物に結合させる方法は、J.M.Harris、“Laboratory Synthesis of Polyethylene Glycol Derivatives、”Journal of Macromolecular Science−Reviews in Macromolecular Chemistry、vol.C−25、No.3、pp.325−373、Jan.1、1985、M.Harris、Ed.、“Biomedical and Biotechnical Applications of Poly(Ethylene Glycol) Chemistry”、Plenum、NewYork、pp.1−14、1992、Greenwaldら、“Highly Water Soluble Taxol Derivatives:7−Polyethylene Glycol Carbamates and Carbonates:”、J.Org.Chem.、vol.60、No.2、pp.331−336、1995、Matsushimaら、“Modification of E.Coli Asparaginase with 2、4−Bis(O−Methoxypolyethylene Glycol)−6−Chloro−S−Triazine(Activated PEG.sub.2);Disappearance of Binding Ability Towards Anti−Serum and retention of Enzymic Activity”、Chemistry Letters、pp.773−776、1980、及びNathanら、“Copolymers of Lysine and Polyethylene Glycol:A New Family of Functionalized Drug Carriers、”Bioconjugate Chem.4,54−62(1993)に記載されており、これら各々は参照により本願に援用される。治療薬は、製造中、構成要素の一つと共によく混合されるか、又は別々に保管されて使用前に他方のポリマー構成要素と混合され得る。塞栓組成物は、その開示全体が参照により本願に援用される、Hubbellによる“Biomaterials formed by Nucleophilic Addition Reaction to Conjugated Unsaturated Groups”と題された国際公開第00/44808号パンフレット、及びHubbell等による“Conjugate Addition Reactions for the Controlled Delivery of Pharmaceutically Active Compounds”と題された国際公開第01/92584号パンフレットに記載されているマイケル付加反応によるインビボでの重合により形成され得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、薬剤を収容するホストポリマーを含む多孔性の容積(例、グラフトチャネル又は嚢体)を有する膨張可能なインプラントは、薬剤がより多量に、且つより正確な投与量で、より長い投与時間に亘って、身体内に送達される可能性を有している。これは、薬剤収容ホストポリマーがインプラント全体のかなりの部分を占め得ることによるが、必ずしもそれが理由とは限らない。また、本発明の埋め込み型グラフト及び嚢体器具は、インプラントの留置中、又は留置後にホストポリマーをチャネル又は嚢体内に充填することができるため、器具を柔軟且つ小型の状態で挿入することができ、したがって身体内への留置又は移植がより容易であり得る。インプラントは、一旦留置されると、膨張媒体の注入によってより堅くなり得る。さらに、これら薬物送達のための膨張可能なチャネル又は嚢体は、留置中に薬剤が剥がれ落ちるという、いかなる懸念も低下させる。さらに、本発明のグラフト及び嚢体インプラントは、一体化された単一構造にて、薬物リザーバの機能に加えて、機械的又は構造的な機能を提供する。例えば、グラフト本体部の膨張したチャネル及び/又はカフは、身体内で流体管路を提供し得る。嚢体の場合、膨張媒体が注入されると、身体管腔を閉塞する役割を果たすか、又は組織の充填に使用され得る。
【0026】
本発明の性質及び利点のさらなる理解は、明細書の残りの部分及び図面を参照することにより、より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施態様による、膨張可能な多孔性グラフトの留置形態を示す図である。
【図2】本発明の別の一実施態様による、脈管壁内の移植可能なグラフトの断面図である。
【図3A】治療薬の輸送を示す図2の部分断面図である。
【図3B】治療薬の輸送を示す図2の部分断面図である。
【図4A】二重チャンバのカフ/チャネル形態を有する、本発明の別の一実施態様による埋め込み型グラフト本体部の部分断面図である。
【図4B】二重チャンバのカフ/チャネル形態を有する、本発明の別の一実施態様による埋め込み型グラフト本体部の部分断面図である。
【図4C】二重チャンバのカフ/チャネル形態を有する、本発明の別の一実施態様による埋め込み型グラフト本体部の部分断面図である。
【図5】本発明のさらなる別の一実施態様によるキットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の図面の説明は、詳細な説明を参照して読むべきである。異なる図面中の同様の符号は、同様の要素を指す。必ずしも等尺でない図面は、本発明の実施態様を具体的に説明するために示したものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0029】
図1において、膨張可能な多孔性グラフト10は、留置形態にて示されている。別に述べない限り、本願にて用語“グラフト”又は“ステントグラフト”は、修復、代替、又はバイパス形成するべき脈管又は器官の疾患部内に、自然な流路を再形成、又は再建することが可能な補綴具を意味し、一般的には管状又は二叉の器具と、そこに取り付けられ、又はそれと一体化された任意の構成要素とを含む。解説を目的として、以下に説明するグラフトの実施態様は、腹部大動脈瘤(AAA)の血管内治療に最も有用であると考えられる。本願のために、グラフト装置を参照して、用語“近位端”は、器具が身体通路内に留置された際に、通常は血液である体液が流入する側に向けられるグラフト端部を意味する。したがって、用語“遠位端”は、近位端と反対側のグラフト端部を意味する。この説明は例証のみを目的としており、必ずしもグラフト10の実際の形状、大きさ、寸法、又は特定の構成(カフ、チャネル、グラフト形態、接続部材、ステント、充填孔ブリッジ、近位端頸部及び遠位端頸部等、及びそれらの個々の構成)を反映するものではない。このようなものとして、本願に図示し且つ説明する実施態様は、単なる例示であり、本発明の範囲内で多様に変更され得る。加えて、本願に示した本発明のステントグラフトの実施態様は、膨張可能なチャネル(一個又は複数)の封止性、剛性付与、及び他の機械的及び臨床的な利点を示すが、これらの利点は本発明の範囲内に含まれるものと理解する必要はない。例えば、接続部材30,36及びステント32,38を有するグラフト10が示されているが、これらの構成は任意である。このことは本願の全ての説明及び実施態様に適用される。
【0030】
図1に示すように、グラフト10は、近位端12及び遠位端14を有し、管状構造、すなわちグラフト本体部16を備えている。グラフト本体部16は、近位端13及び遠位端15を有し、内部の流体の流れを制限するように構成された長手方向に延びる管腔18を形成しており、その長さは約5cm〜約30cm、特に約10cm〜約20cmの範囲内にあり得る。グラフト本体部16は、さらに、少なくとも一個の膨張可能な多孔性チャネル20すなわち空洞を画成し、該チャネル20すなわち空洞は、本実施例では長手方向に延びるチャネル、すなわち背骨を有し、これらチャネルすなわち背骨は、周方向に延びる一連の平行なチャネル、すなわちリングと流体が流れるように連通している。少なくとも一種の治療薬46を含有する膨張媒体22は、膨張可能なチャネル20内に導入されるように構成されている(図2参照)。
【0031】
チャネル20又は複数のチャネルは、膨張するとグラフト本体部16の剛性を高め、グラフト本体部16のねじれを防止することができ、また患者の身体通路内へのグラフト10の留置を容易にもし得る。膨張可能なチャネル20の長手方向及び径方向の寸法は、グラフト10による治療を意図される適応症に依存して、異なるグラフト本体部間において、及び同一のグラフト本体部においてさえも、必要に応じて変更され得る。さらに、膨張可能なチャネル20は、グラフト本体部16の長手方向軸25に関して様々な角度に向けられてよく、チャネルの間隔は、必要に応じて変更されてよい。
【0032】
膨張可能なチャネル20又は複数のチャネルは、図示するように、グラフト本体部に関して長手方向及び/又は周方向に延びる一種又は複数の構成を任意の組合せにて採用し得る。例えば螺旋、又は相互に連結する格子若しくはリングのような他の構成もまた、単独で、又は任意の他の構成との組合せにて適当であり得る。膨張可能な一つ又は複数のチャネルは、ねじれ又は折れに対する抵抗性を付与するために鋸歯状のパターンを有してもよい。鋸歯状の膨張可能なチャネルは、螺旋状に、周方向に、環状リブ及び背骨の構成で、又は同様にて配置され得る。このような膨張可能なチャネルのねじれ抵抗性は、鋸歯が蝶番式に動くことができて長手方向の折れが防止されるために向上され得る。場合により、鋸歯は異なる内側半径及び外側半径を有し得る。さらに、周方向リングを接続するチャネルは、代替的に、互い違った又は不連続の長手方向チャネルすなわち背骨を有して、グラフト本体部、すなわち肢の可撓性を向上し得る。膨張可能なチャネルを相互に連結する長手方向チャネルすなわち背骨はまた、非線形又は波形の構成を採用することによって、グラフトの長手方向の圧縮を改善し得る。このような構成はさらに、圧縮時のグラフトのねじれの可能性を低減し得る。
【0033】
近位端側の膨張可能な多孔性カフ26、及び遠位端側の膨張可能な多孔性カフ28を任意にてさらに設けてもよい。近位端側カフ26及び遠位端側カフ28は、膨張可能なチャネル20と流体が流れるように連通しており、膨張可能なカフ及びチャネルが互いに流体が流れるように連通するネットワークを形成している。充填孔24は、近位端側カフ26、遠位端側カフ28、及び膨張可能なチャネル20と流体が流れるように連通し、膨張媒体22のグラフト本体部16内への導入部を該ネットワークに付加している。カフ26及びカフ28は、膨張時に十分堅い構造を提供してグラフト本体部16を支持し、グラフトが留置された脈管の内面に対してグラフト10を十分に密着させる表面を提供するように構成され得る。密着によって、血流力学的圧力が動脈瘤へ伝達されることが防止され、またグラフト本体部16の外側表面の周囲における血液等の流体の流れが防止される。
【0034】
膨張可能なカフ26及びカフ28は、任意の数の構成にて配置され得る。例えば、カフ26及びカフ28は、グラフト本体部の近位端及び/又は遠位端の周囲に、軸対照の円筒パターンにて配置され得る。あるいは、近位端側及び遠位端側の密封カフは、鋸歯状の構成を採用してもよい。鋸歯状の膨張可能なカフは、圧縮時に折れにくい利点を有するため、グラフトに対する身体管腔径の変化による影響が少ない。鋸歯状の膨張可能なカフは、複数の頂部を規定するジグザグのチャネルからなり得る。膨張時、本発明による鋸歯状の膨張可能なカフは、グラフトと身体管腔との正反対の相互作用が原因となり得る内側への折れが少ない。さらに、鋸歯状の膨張可能なカフは、様々な半径の鋸歯を有することにより、内側に折れる可能性のある臨床用途にて、望ましくない内側折れの可能性をさらに低減し得る。
【0035】
複数の多孔性チャネル、カフ、又は多孔性チャネル若しくはカフ及び非多孔性チャネル若しくはカフの任意の組合せが同一のグラフト本体部に存在し、これらの各々又は全部が同一又は異なる膨張媒体によって別々に膨張可能であり得る構成も、本発明の範囲内に包含される。例えば、本発明のグラフト本体部の代替的な実施態様(図示せず)は、治療薬を含有しない第一の膨張媒体によって膨張可能な一個又は二個以上の比較的非多孔性のチャネルを有し得る。このような一個又は複数のチャネルは、グラフト本体部内で、例えばグラフト密封、ねじれ抵抗等の他の機能を果たす。この同一のグラフト本体部は、一個又は複数の非多孔性チャネルと流体が流れるように連通していない一個又は二個以上の比較的多孔性のチャネルをさらに有してもよく、この比較的多孔性のチャネルは、本願に記載する、標的領域への送達のための治療薬を収容する異なる膨張媒体によって、(例えば、一個又は二個以上の別個の充填孔を介して)別個に膨張可能である。
【0036】
このようなグラフト本体部が、一個又は複数の多孔性及び/又は非多孔性チャネルの一個又は二個以上と流体が流れるように連通し、又は連通していない、一個又は複数の多孔性及び/又は非多孔性カフの複数の組合せを有する他の構成もまた、本発明の範囲内に包含される。例えば、グラフト本体部は、背骨すなわちチャネルを介して互いに流体が流れるように連通する、治療薬を含有しない膨張媒体で膨張され得る非多孔性の近位端カフ及び遠位端カフを有してもよい。このようなカフは、例えば腹部大動脈瘤治療のための留置時に、主として密封の機能を果たすと想定される。あるいは、近位端カフを多孔性を有するように、また非多孔性の遠位端カフと流体が流れるように連通させずに形成して、治療薬を含有する異なる膨張媒体をグラフト本体部の基端領域内に(別個の充填孔を介して)別個に送達して、標的の身体管腔部内を治療し得る。このグラフト本体部は、さらに又は代替的に、例えば、カフの一個又は複数のネットワークと流体が流れるように連通していない、別個に膨張可能な二個の多孔性チャネルを有してもよい。これら多孔性チャネルの各々は、異なる膨張媒体によって二種の異なる治療薬を送達するように構成され得る。あるいは、チャネルの一個をカフと流体が流れるように連通しない非多孔性にし、治療薬を含有しないが、硬化時に異なる機械的性質を有して、例えばねじれ抵抗性を最大にする等、機械的機能を調節する第三の膨張媒体によって膨張させてもよい。
【0037】
複数の、相互に連結した、又は別個にネットワークが形成された多孔性及び非多孔性のカフ、チャネル、並びにそれらの膨張媒体等の他の組合せも、本発明の範囲内に包含される。
【0038】
図1に示すグラフト10の特定の構成は、以下のような任意の構成、すなわち、12個の冠部すなわち12個の頂部を有する近位端側接続部材30、6個及び3個の冠部を有する2段の近位端側ステント32、近位端側頸部31、遠位端側頸部34、遠位端側接続部材36、及び遠位端側ステント38も有している。遠位端側接続部材36及び遠位端側ステント38は、遠位端側ステントが1段であり、且つその任意の突起が近位端側ステント32の突起40に関して反対方向、すなわち近位端方向に向かう以外は、接続部材30及び近位端側ステント32と同様である。遠位端側接続部材36は、遠位端側ステント38に固着又は接続され、近位端側接続部材30は、ステント32に固着又は接続されている。次に、近位端側接続部材30及び遠位端側接続部材36は、管状構造すなわちグラフト本体部16に対して、より一般的には、各々、近位端側頸部31及び遠位端側頸部34に対して取り付けられ、固着され、一体形成され得る。遠位端側接続部材36は、任意の充填孔ブリッジ42をさらに有する。近位端側頸部31は、グラフト本体部の長手方向軸25に関して角度αをなす入口軸27を有している。この角度をなす入口軸27は、角度を有する脈管形態を有する患者の脈管構造に対してグラフトをより一致させる。任意の接続部材30及び接続部材36並びにステント32及びステント38は、従来の医療等級材料から製造され得る。
【0039】
膨張可能な多孔性チャネル20並びにカフ26及びカフ28のネットワークは、一種又は二種以上の固体、流体(気体及び/又は液体)、ゲル、又は他の媒体からなり得る材料の導入又は注入によって、インビボで膨張されることが最も有益である。例えば、膨張媒体22は、グラフト10の留置中又は留置後にチャネル20内に充填され得るように、液体からなり得る。膨張媒体22は、注入後に、液体のまま残留するか、又は例えば相変化若しくは架橋形成により固化して、柔軟な弾性材料に変化するかのいずれかであり得る。後者の場合、膨張媒体22は、約3分〜約12分の範囲の硬化時間、及び約345kPa〜約2758kPa(約50psi〜約400psi)の範囲の硬化後の弾性係数を有する硬化性液体からなり得る。
【0040】
本発明によれば、有用な膨張媒体22は、治療薬を収容するホストポリマーからなる。ホストポリマー22は、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プルロニックポリオキシマー、アクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸、ポリエチレン/アクリル酸共重合体、ポリエチルオキサゾリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン/ビニルピロリドン共重合体、ポリマレイン酸、ポリエチレン/マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体、又はそれらの官能基化された誘導体を含む同様の材料からなる群から選択されたもう一種の材料を含む。膨張媒体22は、さらに、グリシルグリシン又はN−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸](HEPES)のような緩衝液と、チオールからなる群、又チオールを含む群から選択された強い求核試薬とを含有し得る。この3成分からなる膨張媒体22に、生理食塩水、又は他の不活性な生体適合性の液体を、膨張媒体の全容積の約60%まで加えてもよい。膨張媒体は、様々な画像及び/又は探知モダリティを用いて、例えば、膨張媒体又はその一部を、磁気共鳴(MR)、超音波、X線透視、又は他の画像化モダリティの下で可視化する薬剤を加えることによって、視覚化又は別様に探知することが可能であり得る。例えば、膨張媒体22をX線透視下で可視化するために、タンタル、ヨウ素造影剤、硫酸バリウム等の放射線不透過性材料を3成分媒体に、通常は緩衝液中に加え得る。
【0041】
治療薬を収容するホストポリマー22は、一般にグラフト10の留置及び/又は移植の前、留置及び/又は移植の間、又は留置及び/又は移植の後に、膨張可能なチャネル20内に導入されることが可能な任意の生体適合性材料からなり得る。例えば、グラフトが外科的に移植される場合、治療薬46を含有するホストポリマー22は、製造中、使用前に病院内で、移植中、又は移植後であって外科処置部が閉じられる前に、器具内に充填され得る。器具が管腔内手法により移植される場合、治療薬46を含有するホストポリマー22は、留置工程の間又は後に注入され得る。
【0042】
図2を参照すると、管腔48を有する脈管壁44内の周方向のリングチャネル20’を備えた埋め込み型グラフト10の断面図が示されている。治療薬46の送達は、二つの放出モードを有し得る。第一に、治療薬46はホストポリマー22から徐放的に放出され得る。例えば、治療薬46はホストポリマー22を介した拡散により放出され得る。あるいは、治療薬46は、例えばエステル又は他の結合の加水分解による、減成又は分解プロセスによって放出され得る。ホストポリマー22は、減成すると同時に治療薬46を放出する一方で、グラフト本体部16の機械的強度及び/又は剛性を低下させてグラフト10にさらなる軟性又は可撓性を付与することが好ましいと思われる。この場合、ホストポリマー22は、結合が切断されて薬剤が放出されるとポリマーもまた切断されるように、単鎖ポリマーとして調製され得る。別の場合では、ホストポリマー22の塊が多孔性チャネル20’の内部に残留して、有意に減成しない(例、部分減成)ことが好ましいと思われる。例えば、減成のプロセスは、多孔性チャネル20’の隙間に位置する治療薬とホストポリマーとの結合部位において優位に行われて、薬剤の放出がホストポリマー22に必ずしも有意な変化をもたらさない。さらに、ポリマーの減成による放出の場合、グラフト本体部16、及び特にチャネル20’は、ホストポリマー22の塊の輸送を阻止することが可能な生体適合性の材料からなり得る。一般的には、減成プロセスは比較的大きい分子の送達に適切であり、拡散は比較的小さい分子の送達に適切である。しかしながら、一方のプロセスが他方のプロセスと比較して所望される場合、他の要因も寄与し得ることが理解されよう。
【0043】
第二に、多孔性チャネル20’は、細孔からの薬剤の溶出を介して脈管壁44又は管腔48内へ、制御及び/又はプログラムされた薬物送達を提供し得るように、特定のカフ、チャネル、又はカフ/チャネル部分内で、又はそれら間で様々な多孔度を有するように構成される。より詳細には、治療薬46は、膨張媒体22から多孔性チャネル20’の壁を通って輸送されて、脈管壁44又は管腔48内に放出され得る。治療薬46は、図3Aの矢印51に示すように、多孔性チャネル20’の管腔側の壁50から脈管腔48内に放出されるように構成され得る。あるいは、治療薬46は、図3Bの矢印53に示すように、多孔性チャネル20’の反管腔側の壁52から脈管壁44内に放出されるように構成されてもよい。本発明により想定される別の一実施例(図示せず)としては、特定のカフ又はチャネル20’の寸法(例えば、長さ、幅、高さ又はこれらの任意の組合せ)に沿って多孔性が変化し得るもの(図示せず)がある。例えば、このようにあつらえた構成は、特定の臨床的必要性や、その装置に想定される適応症のために、グラフト又はステントグラフトの薬物送達の速度及び他の性質(例、機械的性質)が調整され得る用途において有用であろう。加えて、多孔度は、特定のカフ又はチャネル内で均一で、任意の所定のチャネル及び/又はカフ間で異なっていてもよい。所定のカフ、チャネル、又はカフ/チャネル部分内、又はそれら間における多孔度の相違の任意の組合せが、本発明により想定される。
【0044】
多孔性チャネル20’並びにカフ26及びカフ28を含むグラフト本体部16は、その表面を介した輸送を可能にする任意の生体適合性材料からなり得る。例えば、多孔性チャネル20’は、フルオロポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフィン、及びポリアミドからなる群より選択された材料から形成された一つ又は二つ以上の層を有し得る。多孔性チャネル20’は、特にポリテトラフルオロエチレン、発泡ポリテトラフルオロエチレン、有孔ポリテトラフルオロエチレン、多孔性ポリテトラフルオロエチレン又は他の合成材料の任意の組合せから形成され得る。多孔性チャネル20’は、必ずしも機械的に多孔性を有する必要がないことが理解されよう。例えば、チャネル20’は治療薬46に対する透過性を有することにより、治療薬46の輸送を可能にしてもよい。
【0045】
したがって、本発明によれば、治療薬46の所望の放出速度を達成するように、チャネル20’の多孔度、及び/又はホストポリマー22の放散若しくは減成特性を調節し得る。例えば、所望の治療薬46の輸送及びグラフト10の機械的性質を得るために、ホストポリマー22の官能基及び主鎖の分子量が選択され得る。本発明によれば、利便性の高いホストポリマー22は、官能基化ポリエチレングリコールのファミリーからなる。ポリエチレングリコールジアクリレートを、例えばペンタエリスリトールテトラ3(メルカプトプロピオネート)等のチオールからなる、又はチオールを含む化合物と架橋させて安定なゲルを形成し得る。このゲルは多孔性チャネル20’の細孔から治療薬46を管腔48内に直接放散又は溶出させて流体と直接接触させ、又は例えば脈管壁44内に直接放散又は溶出させて組織と直接接触させ得る。さらに、ポリエチレングリコールの主鎖に別の官能基を加えて、選択的減成プロセスを介した治療薬46の放出を可能にし得る。またさらに、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートからなるホストポリマー22を、チオールからなる、又はチオールを含む化合物と架橋させ、官能基化して治療薬46を収容及び放出してもよい。
【0046】
上述したように、ホストポリマー22は、液体として多孔性チャネル20’内に注入された後、相変化又は架橋形成によって固化し得る(すなわち、硬化性液体)。このようなホストポリマー22の例には、例えばBASFF−127のようなプルロニックポリオキシマーのファミリーに属するポリマー、又は適切な下限臨界溶液温度を有する、例えばn−イソプロピルポリアクリルアミドのようなアクリルアミドがある。硬化性液体と関連して、治療薬46は、ホストポリマー22のモノマーに結合されてもよく、これが架橋して固体を形成する。次に、時間の経過と共に、薬剤とポリマー主鎖とを結合している結合が、例えばホストポリマーの材料の選択、及び治療薬の取付けに使用された結合の種類等のいくつかの基準に基づき、所望の速度で減成して治療薬を放出させる。あるいは、治療薬46は、いずれの化学結合を有することなく、固化して薬剤分子をホストポリマーのネットワーク22内に閉じ込める、もう一種の液体からなる膨張媒体中に混合され得る。この場合、治療薬は、ある時間に亘り、放散によってホストポリマーネットワークの外部へ放出され得る。放散の速度は、例えばホストポリマーの材料、密度、調製、ホストポリマーネットワークの極性等のいくつかの基準に基づく。
【0047】
少なくとも一種の治療薬46は、グラフトにより治療される特定の適応症に応じて任意の治療目的を果たす、様々な薬剤からなり得る。治療薬46は、内皮形成促進薬(例、血管内皮細胞増殖因子)、血管新生促進薬、抗血栓薬(例、ヘパリン)、抗動脈瘤薬、抗感染薬、抗炎症薬、抗再狭窄薬、化学療法剤、及び坑癌剤からなる群から選択された一種又は二種以上の薬剤からなり得る。通常、身体管腔内に放出可能な治療薬の量は、μg〜mgレベルの範囲内にあり、おおよそ約10μg〜約100mgの範囲内ある。治療薬は、約1週間未満〜約2、3ヶ月間又は多数ヶ月間、おおよそ約7日間〜約12ヶ月間、身体管腔内に輸送されるように構成されている。
【0048】
図4A〜4Cに、本発明のさらなる実施態様を示す。図4Aは、図2、図3A及び図3Bの実施態様と同様の、管腔48を有する脈管壁44内の周方向リングチャネルを備えた埋め込み型グラフト10の断面図である。しかしながら、本実施態様では、周方向リングチャネル20’は、チャネル20’を2個のチャンバ23及びチャンバ33に分割する比較的非多孔性のフィルム層21(例えば、ポリテトラフルオロエチレン又は他の適切な材料から形成された)によって特徴付けられる二重チャンバのチャネルである。一個のインプラント又はグラフト本体部内に複数の膨張媒体を含めることができる、本願に解説した他の実施態様と同様、二種の異なる膨張媒体23’及び膨張媒体33’を、各々、チャネル20’のチャンバ23及びチャンバ33内に別々に導入することができる。
【0049】
例えば、図4Bの実施態様では、治療薬を含有しない第一の膨張媒体23’をチャンバ23内に送ることができ、膨張媒体23が’チャンバ23内に入った後、又は入っている間、媒体23’は硬化しながら、又は硬化した後に制御下にて膨張し、それによって媒体23’が層21上に圧力を加え、次にこの層が圧力をチャンバ33内に配置された第二の膨張媒体33’に伝達する。媒体33’は、治療薬46を含有するホスト材料からなる。適切なホスト材料は、治療薬がチャンバ33の壁を介して輸送されることが可能な材料であり、本実施態様ではホストポリマーである必要はなく、治療薬を含有する液体、固体、ゲル、及び他の物質形態を有する。第一の膨張媒体23’の拡張又は膨張により、層21を介してホスト材料33’へ圧力を加えることによって、治療薬46はホストポリマー33’中での移動を開始し、前述し、且つ矢印51’に示したように、チャネル20’の細孔を通って脈管腔48内に溶出する。図4Cに示すように、これと同一の機構は他方の方向にも働き得る。治療薬46、並びに媒体23’及び媒体33’は、代替的に、矢印53’で示すように、チャネル20’の反管腔側壁52を通った溶出による治療薬46の脈管壁44内への溶出を促進するように構成することができる。
【0050】
この治療薬46を脈管腔48又は脈管壁44内に移動させる“ポンプ”作用は、非常によく制御されるように調整することができ、治療薬46を所望のように放出させることができる。例えば、膨張工程と最終的な治療薬46の放出が、遅延して開始されるように、媒体23’及び媒体33’の調製、硬化時間又は固化時間を、個別に又は集合的に設計し得る。また、膨張の速度を調節してホストポリマーに付与される駆動力の速度を調節することによって、薬剤の放出速度を制御することができる。例えば、媒体23’及び/又は媒体33’は、媒体をインビボ環境に対して浸透勾配を有するように調製することで膨張させ得る。別の一実施例として、媒体23’及び/又は媒体33’は、これらの材料を固化後に吸水するヒドロゲルとして調製することによって膨張させ得る。この機構により、10%〜500%、又はそれ以上の膨張を達成し得る。媒体23’及び/又は33’を膨張させるために、他の機構も使用し得ることは勿論である。
【0051】
図4A〜図4Cの二重チャンバの実施態様は、周方向に配置された層21を有する周方向リングチャネルの構成を示しているが、本発明の他の実施態様と同様、チャネル及び層21は図示されているように完全に環状である必要はなく、また周方向に配向されている必要もない。二重チャンバ構成は、本発明の一個又は二個以上のカフ又は他の構成を含めることができる。加えて、本発明の他の実施態様に関して本願に記載されているグラフト、膨張材料、治療薬、構成、及び方法を、図4A〜4Cの実施態様中で任意に組合せて使用することができる。
【0052】
図5を参照すると、グラフト10’、該グラフト10’の使用説明書56、及び治療薬を含有する膨張媒体の原料58を備えたキット54が示されている。グラフト10’は、ステントグラフトを含む本願に記載されている任意の構造を有することができ、原料は本願に記載されている任意の媒体からなり、使用説明書56は、上述した方法の一つ又は二つ以上を実行するためのステップが列挙され得る。使用説明書62は多くの場合印刷物であるが、代替的に、上述した任意の方法を説明する、及び/又は列挙するビデオテープ、CD、DVD、他の機械判読可能なフォーマット又はコード、グラフィック描写、又は同様物に含められていてもよい。
【0053】
理解を明確にするために、また例示として、特定の典型的な実施態様及び方法を詳細に説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、これら実施態様及び方法を変化させ、修正し、変更し、また適合させ得ることが当業者には明らかであろう。したがって、上記の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものであると解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端及び遠位端を有し、且つ少なくとも一個の膨張可能な多孔性チャネルを画成するグラフト本体部と、
前記膨張可能なチャネル内に導入されるように構成された、少なくとも一種の治療薬を含有する膨張媒体と、
を備えるグラフト。
【請求項2】
前記治療薬は、前記膨張媒体から前記多孔性チャネルの壁を介して輸送されて、身体の管腔内に放出されることが可能である、請求項1に記載のグラフト。
【請求項3】
前記治療薬は、前記グラフト本体部の管腔側及び反管腔側のいずれか一方から身体の管腔内に放出されるように構成されている、請求項2に記載のグラフト。
【請求項4】
前記多孔性チャネルは様々な多孔度を有する、請求項2に記載のグラフト。
【請求項5】
前記グラフト本体部は、フルオロポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフィン、及びポリアミドからなる群から選択された一種又は二種以上の材料を含む、請求項2に記載のグラフト。
【請求項6】
前記グラフト本体部は、発泡又は有孔ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項2に記載のグラフト。
【請求項7】
身体管腔内に放出可能な前記治療薬の量は、約10μg〜約100mgの範囲内にある、請求項2に記載のグラフト。
【請求項8】
前記治療薬は、約7日〜約12ヶ月間、身体管腔内に輸送されるように構成されている、請求項2に記載のグラフト。
【請求項9】
前記少なくとも一種の治療薬は、内皮形成促進薬、血管新生促進薬、抗血栓薬、抗動脈瘤薬、抗感染薬、抗炎症薬、抗再狭窄薬、化学療法剤、及び抗癌剤からなる群から選択された一種又は二種以上の薬剤を含む、請求項2に記載のグラフト。
【請求項10】
前記膨張媒体は、治療薬を収容するホストポリマーを含む、請求項2に記載のグラフト。
【請求項11】
前記治療薬は、前記ホストポリマーを介した放散により放出されることが可能な、請求項10に記載のグラフト。
【請求項12】
前記治療薬は、前記ホストポリマーの減成により放出されることが可能な、請求項10に記載のグラフト。
【請求項13】
前記グラフト本体部は、前記ホストポリマーの塊の輸送を阻止することが可能な生体適合性材料を含む、請求項10に記載のグラフト。
【請求項14】
前記ホストポリマーは、グラフトの留置若しくは移植の前、留置若しくは移植の間、又は留置若しくは移植の後、前記膨張可能なチャネル内に導入されることが可能な、請求項10に記載のグラフト。
【請求項15】
前記ホストポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プルロニックポリオキシマー(polyoxymer)、アクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸、ポリエチレン/アクリル酸共重合体、ポリエチルオキサゾリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン/ビニルピロリドン共重合体、ポリマレイン酸、ポリエチレン/マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、及びポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体を含む群から選択されたもう一種の材料を含む、請求項10に記載のグラフト。
【請求項16】
前記膨張媒体は液体からなる、請求項1に記載のグラフト。
【請求項17】
前記膨張媒体は硬化性の液体からなる、請求項1に記載のグラフト。
【請求項18】
前記膨張媒体は、約3分〜約12分の範囲の硬化時間、及び約345kPa〜2758kPa(約50psi〜約400psi)の範囲の硬化後の弾性係数を有する、請求項17に記載のグラフト。
【請求項19】
前記チャネルは、螺旋、長手方向に延びるチャネル、及び周方向に延びるリングから選択された一つ又は二つ以上の構成を有する、請求項1に記載のグラフト。
【請求項20】
前記グラフト本体部の近位端及び遠位端のいずれかに配置され、且つ前記少なくとも一個のチャネルと流体が流れるように連通する少なくとも一個の膨張可能な多孔性のカフをさらに有する、請求項1に記載のグラフト。
【請求項21】
近位端及び遠位端を有し、該近位端と遠位端との間に少なくとも一個の膨張可能な多孔性チャネルを画成するグラフト本体部と、
前記グラフト本体部の近位端又は遠位端に固着され、一個又は二個以上の接続要素を有する接続部材と、
前記接続部材の前記一個又は二個以上の接続要素に連結したもう一個の近位端側ステント接続要素を有するステントと、
前記膨張可能なチャネル内に導入されるように構成された、少なくとも一種の治療薬を含有する膨張媒体と、
を備えるグラフト。
【請求項22】
近位端及び遠位端を有し、且つ少なくとも一個の膨張可能な多孔性チャネルを画成するグラフト本体部を提供する工程と、
前記グラフト本体部を身体の管腔内に移植する工程と、
少なくとも一種の治療薬を含有する膨張媒体によって前記多孔性チャネルを膨張させる工程と、
を含む、治療薬を送達する方法。
【請求項23】
前記多孔性チャネルは、グラフトの留置若しくは移植の前、留置若しくは移植の間、又は留置若しくは移植の後に膨張される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記膨張媒体から前記多孔性チャネルを通して前記治療薬を輸送して、前記治療薬を身体管腔内に放出する工程をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記治療薬を前記グラフト本体部の管腔側及び反管腔側のいずれか一方より身体管腔内に放出する工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記多孔性チャネルは、様々な多孔度を有する発泡又は有孔ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記膨張媒体は、治療薬を収容するホストポリマーを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記ホストポリマーを介した放散により前記治療薬を放出する工程をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ホストポリマーの減成により前記治療薬を放出する工程をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記グラフト本体部は、前記ホストポリマーの塊の輸送を阻止する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記ホストポリマーは、液体として注入されるポリエチレングリコールを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記膨張媒体は、約3分〜約12分の範囲の硬化時間、及び約345kPa〜2758kPa(約50psi〜約400psi)の範囲の硬化後の弾性係数を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも一種の治療薬は、内皮形成促進薬、血管新生促進薬、抗血栓薬、抗動脈瘤薬、抗感染薬、抗炎症薬、抗再狭窄薬、化学療法剤、及び抗癌剤からなる群から選択された一種又は二種以上の薬剤を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記治療薬を約7日〜約12ヶ月間、身体管腔内に放出する工程をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
グラフトと、請求項22〜34のいずれか一項に記載の、治療薬を送達するために前記グラフトを移植及び膨張させる方法に関する使用説明書と、を備えたキット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−152425(P2011−152425A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36448(P2011−36448)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【分割の表示】特願2006−551504(P2006−551504)の分割
【原出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(508225004)トリバスキュラー インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】