説明

膵臓癌の処置のためのゲムシタビンおよびチロシンキナーゼ阻害剤を含む組み合わせ

本発明は、膵臓癌を有する温血動物の処置方法に関し、特にそれは
膵臓癌を有する温血動物に、上皮細胞増殖因子受容体(EGF−R)チロシンキナーゼ活性および血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGF−R)チロシンキナーゼ活性の二重阻害剤を投与することを含む方法、
(a)膵臓癌を有する温血動物の処置方法であって、該温血動物にEGFの活性を低下させる化合物および(b)VEGFの活性を低下させる化合物を含む組み合わせを投与することを含む、方法、
(a)EGF−Rチロシンキナーゼ活性およびVEGF−Rチロシンキナーゼ活性の二重阻害剤、または代替的にEGFの活性を低下させる化合物およびVEGFの活性を低下させる化合物および(b)血小板由来増殖因子受容体(PDGF−R)チロシンキナーゼ活性阻害剤および抗新生物代謝拮抗剤から選択される、少なくとも1種の化合物を含む組み合わせ;
膵臓癌を有する温血動物を処置する方法であって、該温血動物に該組み合わせを投与することを含む、方法;
膵臓癌の処置用薬剤の製造のための、このような組み合わせの使用;および
このような組み合わせを膵臓癌の処置のための指示書と共に含む、商業用包装物または製品
に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵臓癌を有する温血動物の処置方法に関し、特にそれは
膵臓癌を有する温血動物に、上皮細胞増殖因子受容体(EGF−R)チロシンキナーゼ活性および血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGF−R)チロシンキナーゼ活性の二重阻害剤を投与することを含む方法、
(a)膵臓癌を有する温血動物の処置方法であって、該温血動物にEGFの活性を低下させる化合物および(b)VEGFの活性を低下させる化合物を含む組み合わせを投与することを含む、方法、
(a)EGF−Rチロシンキナーゼ活性およびVEGF−Rチロシンキナーゼ活性の二重阻害剤、または代替的にEGFの活性を低下させる化合物およびVEGFの活性を低下させる化合物および(b)血小板由来増殖因子受容体(PDGF−R)チロシンキナーゼ活性阻害剤および抗新生物代謝拮抗剤から選択される、少なくとも1種の化合物を含む組み合わせ;
膵臓癌を有する温血動物を処置する方法であって、該温血動物に該組み合わせを投与することを含む、方法;
膵臓癌の処置用薬剤の製造のための、このような組み合わせの使用;および
このような組み合わせを膵臓癌の処置のための指示書と共に含む、商業用包装物または製品
に関する。
【背景技術】
【0002】
膵臓腺癌は最も攻撃的な悪性腫瘍の一つであり、ほとんどの患者が転移性疾患を発症する。ゲムシタビンが患者の生存を延長できるが、3%未満のみが最初の診断後5年生存し、中央生存期間は6ヶ月より短い。明らかに、膵臓癌の新規処置選択肢の開発の緊急の必要性がある。
【発明の開示】
【0003】
驚くべきことに、本発明の最初の局面において、EGFRおよびVEGFRの同時の阻害がヒト膵臓癌腫の増殖を阻害することが判明した。さらなる局面において、抗新生物代謝拮抗剤の投与と組み合わせたEGFR、VEGFRおよび、所望により、PDGFRの同時の阻害が、ヒト膵臓癌腫の増殖を非常に強力に阻害し、そして、抗新生物代謝拮抗剤単独の投与と比較して、生存の延長の展望を示すことが判明した。
【0004】
故に、本発明は膵臓癌の処置用薬剤の製造のための、EGF−Rチロシンキナーゼ活性およびVEGF−Rチロシンキナーゼ活性の二重阻害剤の使用、または代替的に(a)EGFの活性を低下させる化合物および(b)VEGFの活性を低下させる化合物を含む組み合わせの使用に関する。
【0005】
さらに、本発明は、膵臓癌の処置における同時、別々または連続的使用のための(a)EGF−Rチロシンキナーゼ活性およびVEGF−Rチロシンキナーゼ活性の二重阻害剤、または代替的に(a)EGFの活性を低下させる化合物および(b)VEGFの活性を低下させる化合物および(b)PDGF−Rチロシンキナーゼ活性阻害剤および抗新生物代謝拮抗剤から選択される少なくとも1種の化合物(ここで、これらの活性成分はいずれの場合も遊離形でまたはそれらの薬学的に許容される塩もしくは何らかの水和物の形で存在する)、および所望により少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む組み合わせに関する。
【0006】
他の局面において、本発明は膵臓癌を有する温血動物の処置方法であって、該温血動物にEGF−Rチロシンキナーゼ活性およびVEGF−Rチロシンキナーゼ活性の二重阻害剤を膵臓癌に対する治療的有効量を投与することを含む方法(ここで、EGF−Rチロシンキナーゼ活性およびVEGF−Rチロシンキナーゼ活性の二重阻害剤はまた薬学的に許容される塩の形でも存在できる)、ならびに膵臓癌を有する温血動物を処置する方法であって、該温血動物に(a)EGFの活性を低下させる化合物および(b)VEGFの活性を低下させる化合物を膵臓癌に対する治療的有効量を含む組み合わせを投与することを含む方法(ここで、組み合わせの成分はまたそれらの薬学的に許容される塩の形でも存在できる)にも関する。
【0007】
本発明に適当な“EGF−Rチロシンキナーゼ活性およびVEGF−Rチロシンキナーゼ活性の二重阻害剤”は、特にWO03/013541に記載されたものであり(この公報は引用により本明細書に包含させる)、式(I)
【化1】

〔式中、RおよびRは、互いに独立して水素、非置換または置換アルキルまたはシクロアルキル、環炭素原子を介して結合したヘテロ環式ラジカル、または式R−Y−(C=Z)−のラジカルであり、ここで、Rは非置換、モノまたはジ置換アミノまたはヘテロ環式ラジカルであり、Yは存在しないかまたは低級アルキルであり、そしてZは酸素、硫黄またはイミノである。ただし、RおよびRは両方同時に水素ではない;または
およびRはそれらが結合している窒素原子と一体となってヘテロ環式ラジカルを形成し;
はヘテロ環式ラジカルまたは非置換または置換芳香族性ラジカルであり;
GはC−C−アルキレン、−C(=O)−、またはC−C−アルキレン−C(=O)−であり、ここで、該カルボニル基がNR部分に結合しており;
Qは−NH−または−O−である。ただし、Gが−C(=O)−またはC−C−アルキレン−C(=O)−であるとき、Qは−O−であり;そして
Xは、存在しないかまたはC−C−アルキレンのいずれかである。ただし、Xが存在しないならば、ヘテロ環式ラジカルRは環炭素原子を介して結合していない。〕
7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン誘導体ならびにこのような化合物の塩であり、
ここで、ラジカルおよび記号はWO03/013541に定義の意味を有する。
【0008】
一つの態様において、本発明における使用のために特に好ましい二重EGFおよびVEGFタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤は{6−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−フェニル]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}−(1−[フェニル−エチル)−アミンまたはその薬学的に許容される塩である。
【0009】
ここに記載のN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体は、US5,521,184およびUS2004−0102453に開示のものである。N−{5−[4−(4−メチル−ピペラジノ−メチル)−ベンゾイルアミド]−2−メチルフェニル}−4−(3−ピリジル)−2−ピリミジン−アミンはUS5,521,184に記載の通り製造でき、その公報は引用により本明細書に包含させる。N−{5−[4−(4−メチル−ピペラジノ−メチル)−ベンゾイルアミド]−2−メチルフェニル}−4−(3−ピリジル)−2−ピリミジン−アミンのモノメシル酸塩は、例えば、WO99/03854の実施例4および6に記載の通り、またはWO03/090720に記載の通り製造および製剤でき、これらの公報は引用により本明細書に包含させる。N−{5−[4−(4−メチル−ピペラジノ−メチル)−ベンゾイルアミド]−2−メチルフェニル}−4−(3−ピリジル)−2−ピリミジン−アミンのメシル酸塩(メシル酸イマチニブ、STI571)は商品名Glivec(登録商標)(Gleevec(登録商標))の下に市販されている。Glivec(登録商標)は慢性骨髄性白血病およびGIST(胃腸間質性腫瘍)の処置に適するチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0010】
用語“抗新生物代謝拮抗剤”は、5−フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、メトトレキサートおよびエダトレキサートを含むが、これらに限定されない。カペシタビンは、例えば、XELODATMの商品名の下、例えば市販の形で投与できる。ゲムシタビンは、例えば、GEMZARTMの商品名の下、例えば市販の形で投与できる。
【0011】
VEGFの活性を低下させる化合物は、とりわけVEGF受容体チロシンキナーゼ活性を阻害する化合物、VEGF受容体に結合する化合物およびVEGFに結合する化合物であり、特にWO98/35958、WO00/09495、WO00/27820、WO00/59509、WO98/11223、WO00/27819およびEP0769947に一般的におよび具体的に開示の化合物、タンパク質およびモノクローナル抗体;M. Prewett et al in Cancer Research 59(1999)5209-5218、F. Yuan et al in Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 93, pp. 14765-14770, Dec. 1996, by Z. Zhu et al in Cancer Res. 58, 1998, 3209-3214およびJ. Mordenti et al in Toxicologic Pathology, Vol. 27, no. 1, pp 14-21, 1999により記載のもの;WO00/37502およびWO94/10202に記載のもの;M. S. O'Reilly et al, Cell 79, 1994, 315-328により記載のアンジオスタチンTM;およびにより記載のEndostatinTMであり;
【0012】
EGFの活性を低下させる化合物は、とりわけEGF受容体チロシンキナーゼ活性を阻害する化合物、EGF受容体に結合する化合物およびEGFに結合する化合物であり、特にWO97/02266、EP0564409、WO99/03854、EP0520722、EP0566226、EP0787722、EP0837063、US5,747,498、WO98/10767、WO97/30034、WO97/49688、WO97/38983および、とりわけ、WO96/33980に記載の化合物であり;
【0013】
特許出願または科学文献に関する引用がされている各場合、特に化合物請求項および作業実施例の最終製品、最終生成物の対象。このような特許公報の医薬製剤および特許請求の範囲は、これらの公報の引用により本明細書に包含させる。同様にそれらに開示の対応する立体異性体ならびに対応する結晶変態、例えば溶媒和物および多型も包含する。ここに開示の組み合わせにおいて活性成分として使用する化合物は、各々引用した文献に記載の通り製造し、投与できる。
【0014】
一つの態様において、本発明において使用するための好ましいVEGFタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤はAvastinTM(ベバシズマブ)である。さらなる態様において、本発明において使用するための好ましいVEGFタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤は1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンスクシネートである。一つの態様において、本発明において使用するための好ましいEGFタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤はIressaTM(ゲフィチニブ)である。さらなる態様において、本発明において使用するための好ましいEGFタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤はErbituxTM(セツキシマブ)である。
【0015】
コード番号、一般名または商品名により同定した活性成分の構造は、標準概論“The Merck Index”の現行版からまたはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から取り得る。それらの対応する内容は引用により本明細書に包含させる。
【0016】
組み合わせパートナーに関する記載はまた薬学的に許容される塩も含むことは理解されよう。組み合わせパートナーが、例えば、少なくとも1種の塩基性中心を有するとき、それらは酸付加塩を形成できる。対応する酸付加塩もまた、さらに存在する塩基性中心を有して形成できる。酸基(例えばCOOH)を有する組み合わせパートナー(a)、(b)、(c)または(d)はまた塩基と塩を形成できる。N−{5−[4−(4−メチル−ピペラジノ−メチル)−ベンゾイルアミド]−2−メチルフェニル}−4−(3−ピリジル)−2−ピリミジン−アミン、すなわち組み合わせパートナー(a)は、好ましくは本発明においてそのモノメシル酸塩の形(STI571)で使用する。
【0017】
本発明の組み合わせは、組み合わせ製剤または医薬組成物の形で使用できる。
【0018】
ここで使用する用語“組み合わせ製剤”は、とりわけ上記で定義の組み合わせパートナー(a)および(b)を独立して、または組み合わせパートナー(a)および(b)の異なった量で異なって固定された組み合わせの使用により、すなわち、同時にまたは異なる時点で投与できる点で、“複数パーツのキット”と定義する。次いで、複数パーツのキットのパーツを、例えば、同時にまたはずれた時間で、すなわち、異なる時点で、複数パーツのキットの何らかのパーツと等しいまたは異なる間隔で投与できる。非常に好ましくは、時間間隔は、組み合わせ使用で処置している疾患に対する効果が、組み合わせパートナーのいずれか一方のみにより得られる効果より大きいように選択する。組み合わせ製剤において投与する組み合わせパートナー(a)および(b)の総量のお互いの比率は、特定の疾患、患者の年齢、性別、体重などにより異なる必要性が起こり得る、例えば処置すべき患者亜集団の要求に合うため、または単独の患者の要求に合うために変換し得る。好ましくは、少なくとも1種の有益な効果、例えば、組み合わせパートナー(a)および(b)の相互の増強、特に相乗作用、例えば相加効果以上、さらなる有利な効果、少ない副作用、組み合わせパートナー(a)および(b)の一方または両方の非有効量での組み合わせ治療効果、および非常に好ましくは組み合わせパートナー(a)および(b)の強い相乗効果が存在する。
【0019】
用語“処置”は、処置を必要とする患者における、固形腫瘍疾患の進行遅延をもたらす処置を含む。ここで使用する用語“進行遅延”は、処置すべき疾患の前段階または初期相にある患者への組み合わせの投与を意味し、ここで、該患者は、例えば、対応する疾患の前形態であることが診断されているか、または、該患者は、例えば医学的処置または事故に起因する状態にあって対応する疾患を発症しそうな状態にある。
【0020】
同時、別々または連続的使用のための(a)EGF−Rチロシンキナーゼ活性およびVEGF−Rチロシンキナーゼ活性の二重阻害剤、または代替的にEGFの活性を低下させる化合物およびVEGFの活性を低下させる化合物および(b)PDGF−Rチロシンキナーゼ活性阻害剤および抗新生物代謝拮抗剤から選択される少なくとも1種の化合物(ここで、これらの活性成分はいずれの場合も遊離形でまたはそれらの薬学的に許容される塩もしくは何らかの水和物の形で存在する)、および所望により少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む組み合わせを、以後本発明の組み合わせと呼ぶ。
【0021】
確立された試験モデルおよび特にここに記載の試験モデルにおいて、本発明の組み合わせが膵臓癌腫の処置に適することを示すことができる。関連分野の当業者は、前記および後記の治療適用および有益な効果を確認するための適切な試験モデルを選択することが十分に可能である。本発明の組み合わせの薬理学的活性は、例えば、実質的に以下に記載の臨床試験または試験法により証明できる。実施例に記載の試験において、ヒト膵臓癌細胞であるL3.6plをヌードマウスの膵臓に移植する。このモデルの腫瘍関連内皮細胞は、リン酸化EGFR、VEGFR、およびPDGFRを高度に発現する。EGFRおよびVEGFRの二重チロシンキナーゼ阻害剤である{6−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−フェニル]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}−(1−[フェニル−エチル)−アミンの経口投与は、EGFRおよびVEGFRのリン酸化を低下させる。PDGFRリン酸化はSTI571により阻害される。ゲムシタビンの腹腔内(i.p.)注射は腫瘍増殖を阻害しないが、その{6−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−フェニル]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}−(1−[フェニル−エチル)−アミンおよびSTI571との組み合わせは腫瘍増殖の>80%阻害をもたらし、腫瘍細胞および腫瘍関連内皮細胞アポトーシスの数の増加、減少した微小血管密度、低下した増殖速度、および延長した生存と平行して生存を延長する。STI571処置はまた腫瘍関連内皮細胞上の周皮細胞被覆も低下させる。故に、ゲムシタビンと組み合わせたEGFR、VEGFR、およびPDGFRのリン酸化の阻害は、ゲムシタビンの効果を増強し、実験的ヒト膵臓癌増殖の阻止しおよび生存の著しい延長をもたらす。
【0022】
ヒト患者での適当な試験は、例えば、膵臓癌患者でのオープンラベル非無作為化、用量漸増試験である。このような試験は、特に抗新生物代謝拮抗剤単独での処置を超える本発明の組み合わせの優位性ならびに本発明の組み合わせの治療的効果を証明する。膵臓癌に対する有益な効果は、これらの試験の結果を介して直接、またはそれ自体当業者に既知の試験設計の変化により決定できる。
【0023】
本発明の組み合わせはまた外科的介入、穏やかな長時間全身高熱療法および/または照射療法と組み合わせても適用できる。
【0024】
併用で固形腫瘍疾患に対して治療的有効量で本発明の組み合わせを含む、医薬組成物を提供することは本発明の目的の一つである。この組成物において、組み合わせパートナー(a)および(b)を一緒に、交互にまたは別々に、一つの組み合わせ単位投与形態でまたは別々の単位投与形態で投与できる。単位投与形態はまた固定された組み合わせでもよい。
【0025】
本発明に従った組み合わせパートナー(a)および(b)を別々に投与するための医薬組成物、および固定された組み合わせで投与するための医薬組成物、すなわち少なくとも2個の組み合わせパートナーを含む一つのガレヌス(galenical)組成物は、それ自体既知の方法で製造でき、治療的有効量の少なくとも1種の薬理学的に活性な組み合わせパートナーを単独でまたは、とりわけ経腸または非経腸投与に適する薬学的に許容される担体を含む、ヒトを含む哺乳動物(温血動物)への経口または直腸のような経腸および非経腸投与に適する組成物である。
【0026】
新規医薬組成物は、例えば、約10%から約100%、好ましくは約20%から約60%の活性成分を含む。経腸または非経腸投与用の組み合わせ治療用の医薬製剤は、例えば、糖衣錠、錠剤、カプセル剤または坐薬、およびさらにアンプルのような単位投与形態のものである。他に指示がない限り、これらはそれ自体当業者に既知の方法で、例えば慣用の混合、造粒、糖コーティング、溶解または凍結乾燥工程の手段により製造する。各投与形態の個々の製剤に含まれる組み合わせパートナーの単位含量は、必要な用量が複数の投与単位の投与により達成できるため、それ自体有効量を構成する必要はない。
【0027】
特に、治療的有効量の本発明の組み合わせの組み合わせパートナーの各々を、同時にまたは任意の順番で連続して投与でき、そしてこれらの成分を別々にまたは固定された組み合わせで投与できる。例えば、本発明の膵臓癌の処置方法は、併用で治療的有効量の、好ましくは相乗的有効量の、例えばここに記載の量に対応する1日量での、(i)遊離または薬学的に許容される塩形態の組み合わせパートナー(a)の投与および(ii)遊離または薬学的に許容される塩形態の組み合わせパートナー(b)の当時のまたは任意の順番で連続的な投与を含み得る。本発明の組み合わせの個々の組み合わせパートナーは、治療経過中の異なる時点で別々に、または分割されたまたは単一の組み合わせ形態で同時に投与してよい。さらに、用語投与は、インビボで組み合わせパートナーそれ自体に変換する組み合わせパートナーのプロドラッグの使用も含む。本発明は、故に、同時もしくは交互の処置の全てのこのようなレジメンを包含すると理解すべきであり、そして用語“投与する”はそれに応じて解釈すべきである。
【0028】
本発明の組み合わせで用いる組み合わせパートナーの各々の有効量は、用いる特定の化合物または医薬組成物、投与形態、処置すべき状態、処置する状態の重症度に依存して変化し得る。故に、本発明の組み合わせの投与レジメンは、投与経路ならびに患者の腎臓および肝臓機能を含む種々の因子に従い選択する。通常の技術の医師、臨床医または獣医師は、本状態の予防、回復または進行の停止に必要な単独の活性成分の有効量を容易に決定し、処方できる。毒性を伴わない効果を発現する活性成分濃度の範囲を達成するための最適な詳細は、標的部位の活性成分の利用能の動態に基づく投与計画を必要とする。本発明の組み合わせにおいて使用する組み合わせパートナーを単一薬剤として市販されている形で適用するとき、それらの投与量および投与形態は、特記しない限り、ここに記載の有益な効果を得るために、各市販薬剤の添付文書に提供されている情報に従い得る。
【0029】
N−{5−[4−(4−メチル−ピペラジノ−メチル)−ベンゾイルアミド]−2−メチルフェニル}−4−(3−ピリジル)−2−ピリミジン−アミンモノメシレートは、好ましくはヒトに、約25から1000mg/日、より好ましくは50から800mg/日および最も好ましくは100から400mg/日の範囲の投与量で投与する。ここで他に記載されていない限り、本化合物は、好ましくは1日1回から4回投与する。
【0030】
5−フルオロウラシルは、ヒトに、約50から1000mg/m日で変化する投与範囲、例えば500mg/m日で投与できる。
カペシタビンは、ヒトに、約10から1000mg/m日で変化する投与範囲で投与できる。
【0031】
塩酸ゲムシタビンは、ヒトに約1000mg/週を中心とする投与量範囲で投与できる。
メトトレキサートは、ヒトに約5から500mg/m日で変化する投与範囲で投与できる。
【0032】
WO98/35958の実施例62に記載のコハク酸塩は、ヒトに、約50から1500、より好ましくは約100から750、および最も好ましくは250から500mg/日で変化する投与範囲で投与できる。
【0033】
さらに、本発明は、膵臓癌の処置のための、および膵臓癌の処置用薬剤の製造のための、本発明の組み合わせの使用に関する。
【0034】
さらに、本発明は、活性成分として本発明の組み合わせを、膵臓癌の処置に置けるそれらの同時、別々または連続的使用のための指示書と共に含む商業用包装物を提供する。
【実施例】
【0035】
以下の実施例は、上記の本発明を説明するが、如何なる方法でも本発明の範囲を限定することを意図しない。関連分野の当業者にそれ自体既知の他の試験モデルもまた本発明の組み合わせの有益な効果を決定できる。
【0036】
膵臓癌細胞株および培養条件。ヒト膵臓癌細胞株L3.6plを、Hwang et al. in Clin Cancer Res 2003;9:6534-44に以前に記載の通り、10%ウシ胎児血清(FBS)、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、L−グルタミン、2倍ビタミン溶液(Life Technologies, Inc., Grand Island, NY)、およびペニシリン−ストレプトマイシン混合物(Flow Laboratories, Rockville, MD)を補った最小必須培地に維持する。
【0037】
試薬。経口投与のために、{6−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−フェニル]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}−(1−[フェニル−エチル)−アミンをDMSOで希釈し、そしてSTI571を滅菌水で希釈する。ゲムシタビン(Gemzar, Eli Lilly Co, Indianapolis, IN)を室温に維持し、使用する日にリン酸緩衝化食塩水(PBS)に溶解する。それをi.p.注射により投与する。
【0038】
一次抗体を以下の製造業者から購入する:ウサギ抗pVEGFR2/3(Flk−1)(Oncogene, Boston, MA);ウサギ抗ヒト、マウス、ラットVEGF−R(Flk−1)(C1158)(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA);ウサギ抗ヒトpEGFR(Tyr1173)(Biosource, Camarillo, CA);パラフィンサンプルのためのウサギ抗ヒトEGFおよびウサギ抗ヒトEGFR(Santa Cruz Biotechnology);凍結サンプルのためのウサギ抗ヒトEGFR(Zymed, San Francisco, CA);ウサギ抗VEGF(A20)(Santa Cruz Biotechnology);ポリクローナルウサギ抗PDGFR−β、ポリクローナルヤギ抗リン酸化PDGFR−β、およびポリクローナルウサギ抗PDGF−β(全てSanta Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CAから得た);ラット抗マウスCD31(BD PharMingen, San Diego, CA);マウス抗増殖細胞核抗原(PCNA)クローンPC10(Dako A/S, Copenhagen, Denmark);およびウサギ抗デスミン(Dako A/S)(周皮細胞マーカーとして)。以下の二次抗体を比色免疫組織化学のために使用する:ペルオキシダーゼ接合ヤギ抗ウサギIgG;F(ab')2(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc., West Grove, PA);ビオチニル化ヤギ抗ウサギ(Biocare Medical, Walnut Creek, CA);ストレプトアビジンホースラディッシュペルオキシダーゼ(Dako A/S);ラット抗マウスIgG2aホースラディッシュペルオキシダーゼ(Serotec, Harlan Bioproducts for Science, Inc., Indianapolis, IN);およびヤギ抗ratホースラディッシュペルオキシダーゼ(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.)。以下の蛍光二次抗体を使用する:Alexa488接合ヤギ抗ウサギIgG(Molecular Probes Inc., Eugene, OR)およびAlexa 594接合ヤギ抗ラットIgG(Molecular Probes Inc.)。末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ仲介ニック末端標識(TUNEL)染色を市販のアポトーシス検出キット(Promeg, Madison, WI)を改変して使用して行う。
【0039】
動物および腫瘍細胞の同所移植。雄無胸腺ヌードマウス(NCI−nu)をAnimal Production Area of the National Cancer Institute Frederick Cancer Research and Development Center(Frederick, MD)から購入する。マウスを特異的無病原体条件下に飼育し、維持する。マウスを、8から12週齢のときに使用する。膵臓腫瘍を産生するために、L3.6pl細胞を、0.25%トリプシンおよび0.02%EDTAへの短い暴露によりサブコンプルエントな培養から回収する。トリプシン処理を、10%FBS含有培地で停止させ、細胞を1回無血清培地で洗浄し、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)に再懸濁する。90%製造能を超える単独細胞からなる懸濁液のみを先に記載の通り(Hwang et al. in Clin Cancer Res 2003;9:6534-44)、ヌードマウスの膵臓への注射に使用する。
【0040】
無胸腺ヌードマウス膵臓で増殖する確立されたヒト膵臓癌腫瘍の処置。50μl HBSS中の0.5×10生存L3.6pl細胞の膵臓内注射21日間、膵臓腫瘍は5−6mmのサイズに達する。その時点で、マウスを以下の8処置に無作為化する(n=10):(1)コントロールマウス:1週間に3回DMSO−0.5%Tween 80(希釈剤)で1:20希釈された水の強制喫食による経口投与、滅菌水の毎日の強制喫食による経口投与、および1週間に2回PBSのi.p.注射;(2)1週間に3回希釈剤の強制喫食による経口投与、滅菌水の毎日の強制喫食による経口投与、および1週間に2回ゲムシタビン(50mg/kg)のi.p.注射;(3)1週間に3回AEE788(50mg/kg)の強制喫食による経口投与、滅菌水の毎日の強制喫食による経口投与、および1週間に2回PBSのi.p.注射;(4)1週間に3回AEE788(50mg/kg)の強制喫食による経口投与、滅菌水の毎日の強制喫食による経口投与、および1週間に2回ゲムシタビン(50mg/kg)のi.p.注射;(5)STI571(50mg/kg)の毎日の強制喫食による経口投与、1週間に3回AEE788の希釈剤の強制喫食による経口投与および1週間に2回PBSのi.p.注射;(6)毎日のSTI571(50mg/kg)の経口投与、1週間に3回AEE788の希釈剤の強制喫食による経口投与、および1週間に2回ゲムシタビン(50mg/kg)のi.p.注射;(7)1週間に3回経口AEE788(50mg/kg)、毎日のSTI571(50mg/kg)、および1週間に2回PBSのi.p.注射の組み合わせ;および(8)1週間に3回経口AEE788(50mg/kg)、1週間に7回STI571(50mg/kg)、および1週間に2回ゲムシタビン(50mg/kg)のi.p.注射の組み合わせ。全マウスを4週間処置し、実験49日目に殺す。
【0041】
生存試験のために、50μl HBSS中1.0×10腫瘍細胞の膵臓内注射21日後(その時点で膵臓内の腫瘍は6から8mm直径を超える)、マウスを上記の8処置群の一つに無作為化する(n=10)。マウスを、瀕死になったとき、殺し、検死する。生存をカプラン・マイヤー法で評価する。
【0042】
剖検および組織学的試験。最初の処置試験において、マウスを腫瘍細胞注射49日後に殺し、秤量し、および検死する。膵臓内で増殖した腫瘍を、摘出し、秤量する。免疫組織化学的染色法のために、腫瘍組織の一部をホルマリンで固定し、パラフィン包埋し、他をOCT化合物(Miles, Inc., Elkhart, IN)に包埋し、液体窒素で急速に凍結させ、−70℃で貯蔵する。
【0043】
膵臓腫瘍中のEGF、VEGF、PDGF−BB、EGFR、VEGFR、PDGFRβ、pEGFR、pVEGFR、pPDGF−Rを検出するための免疫組織化学的(IHC)分析。全処置群からのマウスのパラフィン包埋膵臓腫瘍を、EGF、VEGF、PDGF−BB、EGFR、VEGFR、PDGFRβ、リン酸化(p)EGFR、pVEGFR、およびpPDGFRβの発現の評価のために免疫染色する。切片をキシレンで脱パラフィン処理し、アルコールで脱水し、PBSで再水和する。内因性ペルオキシダーゼを3%過酸化水素のPBS溶液で遮断する。サンプルをタンパク質ブロック(PBS中5%正常ウマ血清、1%正常ヤギ血清)に曝し、一晩、4℃で適当な希釈の各一次抗体とインキュベートする。ペルオキシダーゼ接合二次抗体と1時間、室温でインキュベーション後、陽性反応を安定な3,3'−ジアミノベンジジン(DAB)(Phoenix Biotechnologies, Huntsville, AL)に曝すことにより検出する。スライドをGill's #3ヘマトキシリンで対比染色する。切片を免疫ペルオキシダーゼまたはヘマトキシリンについて染色し、エオシンを3チップ電荷結合素子(CCD)カラービデオカメラを備えた顕微鏡で試験する。デジタル画像をOptimas Image Analysis software(Media Cybernetics, MD)を使用して捕捉する。
【0044】
増殖細胞核抗原(PCNA)、CD31/PECAM−1(内皮細胞)およびTUNEL(アポトーシス)のIHC決定。パラフィン包埋組を増殖細胞核抗原(PCNA)のIHC同定に使用する。CD31/PECAM−1の同定に使用した凍結組織を切片にし(8−10μm)、正に荷電したスライドに載せ、および30分空気乾燥する。凍結切片を冷アセトン(5分)、アセトン/クロロホルム(v/v;5分)、および再びアセトン(5分)に固定し、PBSで洗浄する。IHC法を先に記載の通り行う(Hwang et al. in Clin Cancer Res 2003;9:6534-44)。二次抗体のみに曝したコントロールサンプルは特異的染色がないことを示す。CD31について染色した切片中の平均血管密度(MVD)の定量のために、10箇所の無作為の0.159mm視野を、X100倍率で各腫瘍について捕捉し、微小血管を定量する。PCNA発現の定量のために、正の細胞数を10箇所の無作為の0.159mm視野で、X100倍率で計数する。
【0045】
アポトーシス細胞の分析を、商業的に入手可能なTUNELキット(Promega)を以下の改変を加えて使用することにより行う:サンプルを平衡緩衝液、続いて反応緩衝液(ヌクレオチド混合物および末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ酵素を含む)で固定し、インキュベートする。免疫蛍光顕微鏡法をHBO 100水銀ランプ、緑色、赤色および青色蛍光を個々に選択するための狭帯域通過フィルター(Chroma Technology Corp., Brattleboro, VT)を備えたZeiss Axioplan顕微鏡(Carl Zeiss, Inc., Thornwood, NY)で行う。画像を冷却CCD Hamamatsu Orcaカメラ(Hamamatsu Corp., Bridgewater, NJ)およびImage Pro Analysisソフトウェア(Media Cybernetics, Silver Spring, MD)を使用して捕捉する。フォトモンタージュを、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe Systems, Inc., San Jose, CA)を使用して製造する。10箇所の無作為の0.159mm視野の、X100倍率でのTUNEL陽性細胞の数をアポトーシス定量として使用する。
【0046】
CD31/PECAM−1およびEGFR、pEGFR、VEGFR、pVEGFR、PDGFRβ、pPDGFRβ周皮細胞(デスミン陽性細胞)、およびTUNELのための二重免疫蛍光染色。膵臓腫瘍の凍結切片をスライドにマウントし、固定する。CD31のための免疫蛍光をAlexa594接合二次抗体を使用して行い、サンプルを上記の通り再び遮断溶液(PBS中5%正常ウマ血清および1%正常ヤギ血清)で短く遮断し、ヒトEGFR、pEGFR、VEGFR、pVEGFR、PDGFRβ、pPDGFRβまたはデスミンに対する抗体と4℃で一晩インキュベートする。洗浄および遮断溶液での遮断後、サンプルをAlexa488接合二次抗体とインキュベートする。内皮細胞を赤色蛍光で同定し、そしてEGF−R、pEGFR、VEGFR、pVEGFR、PDGFRβ、pPDGFRβおよびデスミン陽性細胞(周皮細胞)を緑色蛍光により同定する。内皮細胞上の増殖因子受容体およびリン酸化受容体の存在を、黄色に見える赤色および緑色蛍光の共局在化により検出する。
【0047】
内皮細胞上の周皮細胞の被覆を、5箇所の無作為に選択した顕微鏡視野において、デスミン陽性細胞と直接接触するCD31陽性細胞およびデスミン陽性細胞と直接関係がないCD31陽性細胞の計数により決定する。
TUNEL陽性アポトーシス細胞を細胞核内の局在化緑色蛍光により検出し、そして内皮細胞を赤色蛍光により同定する。アポトーシス内皮細胞を核内の黄色蛍光により同定する。アポトーシス内皮細胞の定量を、10箇所の0.159mm視野における、x100倍率での、内皮細胞の総数に対するアポトーシス内皮細胞の比率として示す。
【0048】
統計学的分析。体重、腫瘍重量、PCNA陽性細胞、平均血管密度(CD31/PECAM−1)、およびTUNEL陽性細胞を、マン・ホイットニーU検定を使用して比較する。生存分析をカプラン・マイヤー法により計算し、ログ・ランク検定により比較する。
【0049】
結果
ヌードマウスの膵臓におけるヒト膵臓癌増殖の治療。実験の第一セットにおいて、AEE788、STI571、およびゲムシタビンの単独および種々の組み合わせでの処置の効果を、十分に確立された(5−6mm)膵臓腫瘍に対して決定する。マウスを最初の試験の49日目に殺し、剖検する(表1)。膵臓における腫瘍発生率は、全処置群で100%である。処置はいずれも体重に顕著に影響しない。コントロールマウスは最大の腫瘍を有する(0.77g)。STI571またはゲムシタビン単独での処置は腫瘍増殖を阻害しないが、AEE788で処置したマウスは有意に小さい腫瘍を有する(0.33g:p<0.001)。AEE788とゲムシタビンまたはAEE788とSTI571の組み合わせ(STI571とゲムシタビンではない)は、膵臓における腫瘍重量を有意に減少させる(各々0.19g、p<0.0001、0.33g;p<0.001対コントロール、および0.71g)。治療のためのAEE788、STI571、およびゲムシタビンの組み合わせは、腫瘍増殖の最も有意な阻害をもたらす(0.14g、p<0.0001対コントロール)。
【0050】
【表1】

P<0.001対コントロール。
P<0.0001対コントロール。
P<0.05対AEE788またはAEE788およびSTI571。
【0051】
次の生存試験において、処置を1.0×10 L3.6pl細胞の膵臓内注射21日後に開始する。膵臓腫瘍は、直径6−8mmの大きさである。処置をマウスが瀕死となるまで続け、その時点で殺す。生存をカプラン・マイヤー法を使用して分析する。STI571単独またはゲムシタビン単独以外の全処置は、コントロール処置群と比較して有意に生存を延長する。AEE788、STI571、およびゲムシタビンの組み合わせで処置したマウスは生存が最大に延長する。
【0052】
L3.6pl膵臓腫瘍の免疫組織化学的分析。腫瘍切片を、EGF、EGFR、およびpEGFR、VEGF、VEGFR、およびpVEGFRおよびPDGF−BB、PDGFRβおよびpPDGFRβの発現について免疫組織化学的に分析する。AEE788、STI571、ゲムシタビンでの処置、または組み合わせ処置のいずれも腫瘍細胞による、または間質細胞におけるEGF、VEGF、PDGF−BB、EGFR、VEGFR、およびPDGFRの発現レベルを変えない。EGFRおよびVEGFR(PDGFRではない)のリン酸化は、AEE788単独またはAEE788を含む組み合わせ全てで処置したマウス由来の腫瘍において有意に減少する。対照的に、PDGFRβ(EGFRまたはVEGFRではない)のリン酸化はSTI571単独またはSTI571を含む組み合わせ治療で処置されたマウス由来の腫瘍で阻害される。これらのデータは、マウスに投与した濃度で、PTK阻害剤はそれらの標的受容体の特異的阻害をもたらすことを確認する。AEE788とSTI571およびAEE788、STI571とゲムシタビンの組み合わせ治療は、全3受容体のリン酸化を阻害する。
【0053】
腫瘍関連内皮細胞上のEGF−R、VEGFR、PDGFR、pEGFR、pVEGFRおよびpPDGFR。腫瘍関連内皮細胞がEGFR、VEGFR、PDGFRβ、pEGFR、pVEGFR、またはpPDGFRβを発現するか否かを決定するために、免疫蛍光染色法を使用する。全処置群からの腫瘍関連内皮細胞は類似のレベルのEGFR、VEGFR、およびPDGFRβを発現する。EGFRおよびVEGFRのリン酸化は、AEE788またはAEE788を含む組み合わせ処置で処置したマウスの腫瘍由来の内皮細胞で減少する。
【0054】
PDGFRβのリン酸化は、STI571またはSTI571を含む組み合わせ処置で処置したマウスの腫瘍由来の内皮細胞で減少する。AEE788およびSTI571またはAEE788、STI571、およびゲムシタビンの投与は、腫瘍関連内皮細胞上のEGFR、VEGFR、およびPDGFRβのリン酸化を阻害する。
【0055】
細胞増殖(PCNA)、アポトーシス(TUNEL)、および平均血管密度(MVD)。細胞増殖をPCNAの染色により評価する。コントロールマウスからの腫瘍において、PCNA陽性細胞の中央数は371±88である。表2に示す通り、ゲムシタビン単独またはSTI571単独での処理は、分裂しているPCNA陽性細胞の数を減らす。PCNA陽性細胞の有意な減少が、他の全ての処置群由来の腫瘍で見られ、AEE788、STI571、およびゲムシタビンで処置されたマウス由来の腫瘍において最大に阻害される(155±54、P<0.001)。
【0056】
【表2】

PCNA、増殖している細胞核抗原;TUNEL、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ仲介ニック末端標識;中央±S.D.;P<0.05対コントロール;P<0.01対コントロール;P<0.001対コントロール;P<0.001対コントロール;P<0.05対AEE788;P<0.01対AEE788;P<0.05対AEE788+STI571;P<0.05対AEE788。
【0057】
膵臓腫瘍におけるアポトーシスの誘導をTUNEL法により評価する(表2)。コントロール処置マウス由来の腫瘍において、アポトーシス腫瘍細胞の中央数は最小である(1±1)。他の全処置群(STI571単独での処置群を除く)のマウス由来の腫瘍におけるアポトーシス細胞数は増加し、AEE788、STI571、およびゲムシタビンの組み合わせでの治療が最大である(30±10)。
【0058】
腫瘍におけるMVDを、CD31に対する抗体でのIHC染色により決定する(表2)。コントロールマウスからのCD31陽性腫瘍細胞の中央数は46±11である。ゲムシタビン単独またはSTI571単独の処置はMVDを減少させない。CD31陽性細胞の数は、他の全処置群由来の腫瘍で有意に減少しており、AEE788、STI571、およびゲムシタビンで処置されたマウス由来の腫瘍においてMVDの減少は最大である(16±6)(P<0.001)。
【0059】
CD31/PECAM−1およびTUNELについての免疫蛍光二重染色。CD31/TUNEL蛍光二重標識法の使用により、治療が内皮細胞のアポトーシスと関連するか否かを決定する。コントロールマウス由来の腫瘍は、腫瘍関連内皮細胞においてアポトーシスがない。AEE788、STI571、およびゲムシタビンでのマウスの処置は、腫瘍関連内皮細胞において中央値8±5%アポトーシスをもたらす(表2)。
【0060】
本試験のさらなる詳細が、Kenji Yokoi, Takamitsu Sasaki, Corazon D. Bucana, Dominic Fan, Cheryl H. Baker, Yasuhiko Kitadai, Toshio Kuwai, James L. Abbruzzese, およびIsaiah J. Fidler in Cancer Research, 2005 Nov 15;65(22):10371-80に記載されており、この刊行物を引用により本明細書に包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膵臓癌の処置用薬剤の製造のための、EGF−Rチロシンキナーゼ活性およびVEGF−Rチロシンキナーゼ活性の二重阻害剤の使用。
【請求項2】
膵臓癌を有する温血動物の処置方法であって、該温血動物にEGF−Rチロシンキナーゼ活性およびVEGF−Rチロシンキナーゼ活性の二重阻害剤を膵臓癌に対する治療的有効量で投与することを含む方法(ここで、EGF−Rチロシンキナーゼ活性およびVEGF−Rチロシンキナーゼ活性の二重阻害剤は薬学的に許容される塩の形でも存在できるものとする)。
【請求項3】
膵臓癌の処置用薬剤の製造のための、(a)EGFの活性を低下させる化合物および(b)VEGFの活性を低下させる化合物を含む組み合わせの使用。
【請求項4】
化合物(b)がベバシズマブおよび1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンスクシネートから選択される、請求項3記載の使用。
【請求項5】
化合物(a)がゲフィチニブおよびセツキシマブから選択される、請求項3または4記載の使用。
【請求項6】
膵臓癌を有する温血動物の処置方法であって、該温血動物に(a)EGF−Rチロシンキナーゼ活性の阻害剤および(b)VEGF−Rチロシンキナーゼ活性の阻害剤を含む組み合わせを膵臓癌に対する治療的有効量で投与することを含む方法(ここで、組み合わせの成分はそれらの薬学的に許容される塩の形でも存在できるものとする)。
【請求項7】
同時、別々または連続的使用のための(a)EGF−Rチロシンキナーゼ活性およびVEGF−Rチロシンキナーゼ活性の二重阻害剤、または代替的にEGFの活性を低下させる化合物およびVEGFの活性を低下させる化合物ならびに(b)PDGF−Rチロシンキナーゼ活性阻害剤および抗新生物代謝拮抗剤から選択される少なくとも1種の化合物(ここで、これらの活性成分はいずれの場合も遊離形でまたはそれらの薬学的に許容される塩もしくは何らかの水和物の形で存在するものとする)、および所望により少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む組み合わせ。
【請求項8】
化合物(b)がベバシズマブおよび1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンスクシネートから選択される、請求項7記載の組み合わせ。
【請求項9】
化合物(a)がゲフィチニブおよびセツキシマブから選択される、請求項7または8記載の組み合わせ。
【請求項10】
式I
【化1】

〔式中、
およびRは、互いに独立して水素、非置換または置換アルキルまたはシクロアルキル、環炭素原子を介して結合したヘテロ環式ラジカル、または式R−Y−(C=Z)−のラジカルであって、ここで、Rは非置換、モノまたはジ置換アミノまたはヘテロ環式ラジカルであり、Yは存在しないかまたは低級アルキルであり、そしてZは酸素、硫黄またはイミノである。ただし、RおよびRは両方同時に水素ではない;または
およびRはそれらが結合している窒素原子と一体となってヘテロ環式ラジカルを形成し;
はヘテロ環式ラジカルまたは非置換または置換芳香族性ラジカルであり;
GはC−C−アルキレン、−C(=O)−、またはC−C−アルキレン−C(=O)−であり、ここで、該カルボニル基がNR部分に結合しており;
Qは−NH−または−O−である。ただし、Gが−C(=O)−またはC−C−アルキレン−C(=O)−であるとき、Qは−O−であり;そして
Xは、存在しないかまたはC−C−アルキレンのいずれかである。ただし、Xが存在しないならば、ヘテロ環式ラジカルRは環炭素原子を介して結合していない。〕
の7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン誘導体または該化合物の塩である化合物(a)ならびにN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体、5−フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、メトトレキサートおよびエダトレキサートから選択される少なくとも1種の化合物である(b)を含む、請求項7記載の組み合わせ。
【請求項11】
(a){6−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イルメチル)−フェニル]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}−(1−フェニル−エチル)−アミンならびに(b)N−{5−[4−(4−メチル−ピペラジノ−メチル)−ベンゾイルアミド]−2−メチルフェニル}−4−(3−ピリジル)−2−ピリミジン−アミンおよびゲムシタビンから選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項7記載の組み合わせ。
【請求項12】
N−{5−[4−(4−メチル−ピペラジノ−メチル)−ベンゾイルアミド]−2−メチルフェニル}−4−(3−ピリジル)−2−ピリミジン−アミンをそのモノメタンスルホン酸塩の形で使用する、請求項11記載の組み合わせ。
【請求項13】
膵臓癌の処置用薬剤の製造のための、請求項7から12のいずれかに記載の組み合わせの使用。
【請求項14】
膵臓癌を有する温血動物の処置方法であって、該温血動物に請求項7から12のいずれかに記載を膵臓癌に対する治療的有効量で投与することを含む、方法(ここで、組み合わせの成分はまたそれらの薬学的に許容される塩の形でも存在できる)。
【請求項15】
(a)EGF−Rチロシンキナーゼ活性およびVEGF−Rチロシンキナーゼ活性の二重阻害剤、または代替的にEGFの活性を低下させる化合物およびVEGFの活性を低下させる化合物、(b)PDGF−Rチロシンキナーゼ活性阻害剤および抗新生物代謝拮抗剤から選択される少なくとも1種の化合物(ここで、これらの活性成分はいずれの場合も遊離形でまたはそれらの薬学的に許容される塩もしくは何れかの水和物の形で存在するものとする)ならびに所望により少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含み;膵臓癌の処置におけるそれらの同時、別々または連続的使用に関する指示書を含む、商業用包装物。

【公表番号】特表2009−502960(P2009−502960A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524201(P2008−524201)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/029439
【国際公開番号】WO2007/014335
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(501449540)ザ・ボード・オブ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・テキサス・システム (4)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF REGENTS OF THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【Fターム(参考)】