自動二輪車の変速制御装置
【課題】ハンドルおよび足ペダルの両方に変速スイッチを設ける場合であっても、違和感のない操作が可能な使い勝手のよい自動二輪車の変速制御装置を提供する。
【解決手段】ニュートラル状態および複数の変速段間の切り換えが可能な変速機TMと、該変速機TMの変速状態を制御する変速制御部132とを備え、ニュートラル状態と前記複数の変速段間の自動変速を行うドライブモードとの間を切り換えるN/D切り換えスイッチ85と、ドライブモード中の操作により複数の変速段間のマニュアル変速を可能とする手動変速スイッチ97とを自動二輪車1のハンドルまわりに設けた自動二輪車の変速制御装置において、シフトペダル7の操作に応じてドライブモード中に前記複数の変速段間のマニュアル変速を可能とする足動変速制御手段95を具備する。変速制御部132は、足動変速制御手段95によるニュートラル状態とドライブモードとの切り換えを実行可能に設定する。
【解決手段】ニュートラル状態および複数の変速段間の切り換えが可能な変速機TMと、該変速機TMの変速状態を制御する変速制御部132とを備え、ニュートラル状態と前記複数の変速段間の自動変速を行うドライブモードとの間を切り換えるN/D切り換えスイッチ85と、ドライブモード中の操作により複数の変速段間のマニュアル変速を可能とする手動変速スイッチ97とを自動二輪車1のハンドルまわりに設けた自動二輪車の変速制御装置において、シフトペダル7の操作に応じてドライブモード中に前記複数の変速段間のマニュアル変速を可能とする足動変速制御手段95を具備する。変速制御部132は、足動変速制御手段95によるニュートラル状態とドライブモードとの切り換えを実行可能に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の変速制御装置に係り、特に、ハンドルおよび足ペダルの両方に変速スイッチを設けるようにした自動二輪車の変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に設けられたシフトレバーの操作によって自動変速機の状態をニュートラルからドライブモードに切り換えると、このドライブモードでは走行状態に応じた自動変速(オートマチック変速)が実行されると共に、さらに、ドライブモードからマニュアル変速モードに切り換えることで、シフトレバー操作による手動変速(セミオートマチック変速)が可能となるように構成された車両の変速制御装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、四輪車用の変速制御装置において、ニュートラル/ドライブモード間の切り換えおよび変速ギヤ段の変更を可能とする1本のシフトレバーを、運転席横のフロアに立設配置するようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−292066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された構成では、1本のシフトレバーによってさまざまな変速状態の切り換え操作が可能となるものの、シフトレバーの位置を前後左右に変更できるような大型で複雑な機構が必要となる。したがって、上記したようなシフト機能を自動二輪車に適用しようとする場合には、ニュートラル/ドライブモード間の切り換えを行うニュートラル/ドライブモード(N/D)切り換えスイッチと、変速ギヤ段を変更する手動変速スイッチとを別々にハンドルまわり等に設ける必要があった。
【0006】
一方、自動二輪車の変速操作は足ペダルで行うのが一般的であることから、変速スイッチとしての足ペダルを設けて足動変速可能に構成することが考えられるが、単に足動変速可能としただけでは、N/D切り換えスイッチによって手動にてニュートラルからドライブモードに切り換えた後に足ペダルで変速ギヤ段を切り換えるという、通常の足ペダル操作と異なる2段階の操作が必要になるという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、N/D切り換えスイッチおよび手動変速スイッチを自動二輪車のハンドルまわりに設けるものにおいて、足ペダルによる足動変速スイッチをさらに設ける場合であっても、違和感のない操作が可能な使い勝手のよい自動二輪車の変速制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、ニュートラル状態および複数の変速段間の切り換えが可能な変速機(TM)と、該変速機(TM)の変速状態を制御する変速制御部(132)とを備え、前記ニュートラル状態と前記複数の変速段間の自動変速を行うドライブモードとの間を切り換えるN/D切り換えスイッチ(85)と、前記ドライブモード中の操作により前記複数の変速段間のマニュアル変速を可能とする手動変速スイッチ(97)とを自動二輪車(1)のハンドルまわりに設けた自動二輪車の変速制御装置において、足ペダル(7)の操作に応じて、前記ドライブモード中に前記複数の変速段とニュートラル状態への間のマニュアル変速を可能とする足動変速制御手段(95)を具備し、前記変速制御部(132)は、前記足動変速制御手段(95)による前記ニュートラル状態と前記ドライブモードとの切り換えを実行可能に設定されている点に第1の特徴がある。
【0009】
また、前記足ペダル(7)は、中立位置から一方側および他方側への回動動作が可能に構成されており、前記変速制御部(132)は、所定車速(VR1,VR2)以下の場合に、前記足動変速制御手段(95)によるニュートラル状態およびドライブモード間の切り換えを許可する点に第2の特徴がある。
【0010】
また、前記変速制御部(132)は、前記所定車速としての第1の車速(VR1)以下の場合に前記ドライブモードからニュートラル状態への切り換えを許可し、前記第1の車速(VR1)より大きい前記所定車速としての第2の車速(VR2)以下の場合に前記ニュートラル状態からドライブモードへの切り換えを許可する点に第3の特徴がある。
【0011】
また、前記変速制御部(132)は、前記手動変速スイッチ(97)の操作に基づいてシフトアップまたはシフトダウンの手動変速要求が確定したか否かを判断すると共に、前記足動変速制御手段(95)の操作に基づいてシフトアップまたはシフトダウンの足動変速要求が確定したか否かを判断し、前記手動変速要求または足動変速要求のうち先に確定した方の変速要求に基づいて変速制御を行う点に第4の特徴がある。
【0012】
また、前記変速制御部(132)は、前記手動変速要求または前記足動変速要求が確定してから一定時間(Tb)の間は、次の変速要求を受け付けない点に第5の特徴がある。
【0013】
また、前記変速制御部(132)は、前記手動変速要求および前記足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が共にシフトアップまたはシフトダウンで共通する場合には、その変速要求に従って変速制御を行う点に第6の特徴がある。
【0014】
また、前記変速制御部(132)は、前記手動変速要求および前記足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が互いにシフトアップおよびシフトダウンで異なる場合には、前記確定した両変速要求をキャンセルするように設定されている点に第7の特徴がある。
【0015】
また、前記変速制御部(132)は、前記手動変速スイッチ(97)が所定時間(Ta)の間継続して押圧操作されることで前記手動変速要求を確定する点に第8の特徴がある。
【0016】
また、前記足動変速制御手段(95)には、足ペダル(7)および該足ペダル(7)の回動角度を検知するシフトペダルセンサ(44)が含まれ、前記変速制御部(132)は、前記シフトペダルセンサ(44)の出力信号が、予め定められた入力信号パターン(P)の範囲に収まることで前記足動変速要求を確定する点に第9の特徴がある。
【0017】
また、前記予め定められた入力信号パターン(P)は、前記足ペダル(7)が回動動作中の期間に対応する略三角形部分(P1)と、前記足ペダル(7)が回動限界位置に突き当たってから所定時間が経過するまでの期間に対応する略長方形部分(P2)とからなる点に第10の特徴がある。
【0018】
さらに、前記手動変速スイッチ(97)は、自動二輪車(1)のハンドルスイッチ(64)に設けられるオンオフ式のシフトアップスイッチ(67)およびシフトダウンスイッチ(68)からなり、前記足動変速制御手段(95)のシフトペダルセンサ(44)は、前記足ペダル(7)の回動角度を検知するポテンショメータからなる点に第11の特徴がある。
【発明の効果】
【0019】
第1の特徴によれば、手動で変速を操作するときには、N/D切替スイッチでドライブ状態にした上で、そのまま自動変速も可能であり、そこから手動変速スイッチを操作すればマニュアル変速ができる。さらに、足ペダルの操作に応じて、ドライブモード中に複数の変速段とニュートラル状態への間のマニュアル変速を可能とする足動変速制御手段を具備し、変速制御部は、足動変速制御手段によるニュートラル状態とドライブモードとの切り換えを実行可能に設定されているので、ニュートラル状態から手動変速スイッチを操作してもドライブモードには切り換わらないのに対して、足ペダルを用いた際には、ニュートラル状態から足ペダルの操作によってドライブモードに切り換えてそのまま足ペダルによるマニュアル変速が可能となるため、ハンドルまわりに設けられたN/D切り換えスイッチを操作することなく、即座にニュートラル状態からドライブモードおよび足動マニュアル変速に移行することが可能となる。
【0020】
手動変速制御スイッチは、単に変速段をUPまたはDOWNとするだけで、通常ニュートラル状態への変速は設定されないが、足変速制御手段は、ニュートラル位置への変速ができるようにされているのでその特性を活かして足操作によりニュートラルとドライブモードを切り替えることができるようにし運転者のフィーリングに合った変速制御が提供できる。これにより、N/D切り換えスイッチおよび手動変速スイッチをハンドルに設ける自動二輪車の変速制御装置において、足ペダルによる足動変速スイッチをさらに設ける場合であっても、足ペダルの操作によってニュートラル状態から走行可能状態に切り替えるという通常の自動二輪車と同様のシフト操作が可能となり、運転者に違和感を与えることなく使い勝手を向上させることが可能となる。
【0021】
第2の特徴によれば、足ペダルは、中立位置から一方側および他方側への回動動作が可能に構成されており、変速制御部は、所定車速以下の場合に、足動変速制御手段によるニュートラル状態およびドライブモード間の切り換えを許可するので、例えば、足ペダルのアップ側またはダウン側への回動操作(つま先での踏み込みまたはかき上げ動作)によって、各変速段間の切り換えだけでなく、ニュートラル状態−ドライブモード間の切り換え操作をも実行可能に構成した場合でも、高車速状態でドライブモードからニュートラル状態へ切り換わってしまうようなことがなく、走行状態に適した変速制御が実行可能となる。
【0022】
第3の特徴によれば、変速制御部は、所定車速としての第1の車速以下の場合にドライブモードからニュートラル状態への切り換えを許可し、第1の車速より大きい所定車速としての第2の車速以下の場合にニュートラル状態からドライブモードへの切り換えを許可するので、例えば、第1の車速を小さい値に設定することで、停車する可能性の高い走行状態でニュートラル状態への切り換えを実行することが可能となる。また、第2の車速を第1の車速より大きく設定することで、例えば、下り坂での発進時等にニュートラル状態で車速がやや高まってしまった場合でもスムーズにドライブモードに切り換えることが可能となる。
【0023】
第4の特徴によれば、変速制御部は、手動変速スイッチの操作に基づいてシフトアップまたはシフトダウンの手動変速要求が確定したか否かを判断すると共に、足動変速制御手段の操作に基づいてシフトアップまたはシフトダウンの足動変速要求が確定したか否かを判断し、手動変速要求または足動変速要求のうち先に確定した方の変速要求に基づいて変速制御を行うので、乗員の変速要求に対して即座に応答することができる。
【0024】
第5の特徴によれば、変速制御部は、手動変速要求または足動変速要求が確定してから一定時間の間は、次の変速要求を受け付けないので、ごく短い時間内での連続シフト操作を受け付けることで不要なトルク変動が生じてしまう可能性を低減することができる。
【0025】
第6の特徴によれば、変速制御部は、手動変速要求および足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が共にシフトアップまたはシフトダウンで共通する場合には、その変速要求に従って変速制御を行うので、運転者の変速意思が確定していると判断して、迅速な変速制御を実行することができる。
【0026】
第7の特徴によれば、変速制御部は、手動変速要求および足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が互いにシフトアップおよびシフトダウンで異なる場合には、確定した両変速要求をキャンセルするように設定されているので、例えば、手動変速でシフトアップをしようとした際に路面の凹凸で車体が揺れて乗員が意図せずに足ペダルに触れてシフトダウン操作を同時にしてしまった場合等に、乗員が意図しないシフトチェンジが実行されることを防ぐことができる。
【0027】
第8の特徴によれば、変速制御部は、手動変速スイッチが所定時間の間継続して押圧操作されることで手動変速要求を確定するので、不意な動作やノイズ等が変速要求の確定判断に与える影響を低減することができる。
【0028】
第9の特徴によれば、足動変速制御手段には、足ペダルおよび該足ペダルの回動角度を検知するシフトペダルセンサが含まれ、変速制御部は、シフトペダルセンサの出力信号が、予め定められた入力信号パターンの範囲に収まることで足動変速要求を確定するので、ノイズ等が足動変速要求の確定処理に与える影響を低減することができる。
【0029】
第10の特徴によれば、予め定められた入力信号パターンは、足ペダルが回動動作中の期間に対応する略三角形部分と、足ペダルが回動限界位置に突き当たってから所定時間が経過するまでの期間に対応する略長方形部分とからなるので、足動変速要求を容易かつ適切に検知することが可能となる。
【0030】
第11の特徴によれば、手動変速スイッチは、自動二輪車のハンドルスイッチに設けられるオンオフ式のシフトアップスイッチおよびシフトダウンスイッチからなり、足動変速制御手段のシフトペダルセンサは、足ペダルの回動角度を検知するポテンショメータからなるので、手の指で操作する手動変速スイッチと、靴を履いた状態のつま先で操作する足ペダル側とで異なる方法を用いてスイッチ出力を得ることとなり、手動変速および足動変速の特性に沿った変速要求の検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る変速制御装置を適用した自動二輪車の左側面図である。
【図2】シフトペダルまわりの一部拡大図である。
【図3】シフト機構の拡大図である。
【図4】自動二輪車のメータまわりの一部拡大図である
【図5】右側ハンドルスイッチの正面図である。
【図6】右側ハンドルスイッチの上面図である。
【図7】自動マニュアル変速機およびその周辺装置のシステム構成図である。
【図8】AMTにおける各軸および変速ギヤの噛合関係を示す配置関係図である。
【図9】AMT制御ユニットおよびその周辺機器の構成を示すブロック図である
【図10】自動二輪車の車速と受け付け可能な変速操作との関係を示す図である。
【図11】ニュートラル状態とドライブモードとの関係を示す状態遷移図である。
【図12】足動変速制御手段による変速要求確定の条件を示すグラフである。
【図13】手動変速スイッチの出力信号と手動変速要求との関係を示すグラフである。
【図14】足動変速スイッチとしてのシフトペダルセンサの出力信号と足動変速要求との関係を示すグラフである。
【図15】足動変速要求と手動変速要求との関係を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る変速制御装置を適用した自動二輪車1の左側面図である。また、図2は、シフトペダルまわりの一部拡大図である。自動二輪車1の車体フレームFは、前輪WFを軸支するフロントフォーク3を操向可能に支承するヘッドパイプ21、該ヘッドパイプ21から後下がりに延びる左右一対のメインフレーム18、両メインフレーム18の後部に連結されて下方に延びる左右一対のピボットフレーム9を有する。メインフレーム18には、その中間部から下方に延びるエンジンハンガ5が一体に連接される。またピボットフレーム9に前端が揺動可能に支承されるスイングアーム12の後部に後輪WRが軸支される。
【0033】
メインフレーム18の下方には、水冷式のエンジンEのエンジン本体14が配置されている。エンジン本体14は、エンジンハンガ5、メインフレーム18およびピボットフレーム9の下部に懸架されており、エンジンEから出力される回転動力は、前後に延びてスイングアーム12内を通るドライブシャフト13を介して前記後輪WRに伝達される。
【0034】
メインフレーム18の上部には、燃料タンク19が搭載されており、燃料タンク19の後方には乗車用シート15が設けられる。シート15の後方にはリヤカバー15が配設されている。車体フレームFの一部およびエンジンEの一部はカウリング2で覆われており、カウリング2は、燃料タンク19の大部分を側方から覆うタンクカバー20を有する。
【0035】
エンジン本体14の前方には、ラジエータ4が配置される。また、エンジン本体14の左側面には、シフト制御モータ6の回転動力によってシフトドラム114(図7参照)を回動させるシフトアクチュエータ17が設けられている。
【0036】
図2,3を参照して、車体フレームFの一部を構成する左側のピボットフレーム9の下部には、乗員の左足を載せるステップ10が設けられるステップホルダ11が、2本のボルト38で取り付けられる。ステップホルダ11には、ステップ10に載せた左足の爪先側で回動操作可能な足ペダルとしてのシフトペダル7が回動可能に支承されるものであり、該シフトペダル7は、前後方向に延びるアーム部7aと、該アーム部7aの後端に設けられる円筒状の被支持部7bと、アーム部7aの先端部に設けられる踏部7cとからなり、被支持部7bは、車幅方向に指向する支軸23を介してステップホルダ11の前端部に回動可能に支承される。
【0037】
ステップ105がピボットフレーム9の前後方向に沿う略中央部に対応する位置でステップホルダ11に設けられ、シフトペダル7がステップホルダ11の前端部から前方に延出されるので、左側のピボットフレーム9の前側下部は、シフトペダル7に載せられた運転者の左足の車幅方向内側への移動を規制する足規制部24を構成する。
【0038】
車幅方向左側のピボットフレーム9の下部には、車体フレームFの一部を構成するサイドスタンドブラケット33が固着されており、このサイドスタンドブラケット33には、自動二輪車1を左側に傾斜した状態で駐車させるためのサイドスタンド8が回動可能に取り付けられる。
【0039】
サイドスタンドブラケット8には、左側のピボットフレーム9の車幅方向内側に配置される支持部材35が取り付けられている。支持部材35には、シフトペダル7に連動する可動部材としての可動プレート53を含むと共に、操作ペダル7の回動操作範囲を規制するストッパ機構54およびリターン機構40を有する可動部30が支持される。可動部30は、ドライブシャフト13の下方に配置される。
【0040】
支持部材35は、車幅方向に延びる軸線を有する支持孔(不図示)を形成する円筒状の支持筒部35aと、該支持筒部35aの車幅方向に沿う内端寄りの部分から側方に張り出す支持板部35bとを一体に有するように形成される。サイドスタンドブラケット33の外側面と、このサイドスタンドブラケット33の外側方に配置される平板状の支持板部35bとの間には、円筒状のスペーサ47が介装されており、支持部材35の支持板部35bは、各スペーサ47に挿通される一対のボルト32,34でサイドスタンドブラケット33に取り付けられる。
【0041】
シフトペダル7による変速操作は、抵抗式角度センサ(ポテンショメータ)であるシフトペダルセンサ44で検出され、このシフトペダルセンサ44の検出結果に基づいて、変速機TM(図7参照)の変速作動が制御される。シフトペダルセンサ44を支持するセンサステー43は、支持部材35の支持板部35bから車幅方向内方に間隔をあけた位置にシフトペダルセンサ44が配置されるようにして、一対のねじ部材(不図示)で支持板部35bに締結される。
【0042】
支持部材35に形成された支持孔には、シフトペダル7の操作に応じて回動する回動軸26が回動可能に噛合されている。支持孔の内端からの突出部で回動軸26の外周には、支持筒部35aの内端との間にワッシャ42を挟むようにして止め輪45が装着されている。回動軸26には、ワッシャ42との間に支持部材35の支持筒部35aを挟む鍔部が設けられる。これにより、回動軸26は、軸方向一を一定としつつ支持部材35の支持筒部35aで回動可能に支承されることになる。回動軸26の車幅方向内側の端部は、シフトペダルセンサ44のケース内に気密に突入されて、シフトペダルセンサ44の検出軸に連結される。
【0043】
回動軸26の車幅方向外側の端部には、該回動軸26の径方向外方に延びるアーム28の一端部がボルト39で締結されている。シフトペダル7のアーム部7aの中間部には、上下方向に延びるリンクロッド37の一端部が回動軸26と平行な軸線を有する第1連結ピン25を介して回動可能に連結されている。アーム28の他端部およびリンクロッド37の他端部は、第1連結ピン25と平行な軸線を有する第2連結ピン36を介して回動可能に連結される。回動軸26は、シフトペダル7の回動に応じて回動することにより、その回動をシフトペダルセンサ44が検出するので、シフトペダルセンサ44はシフトペダル7によるシフトアップおよびシフトダウンのいずれかの変速操作を検出することになる。
【0044】
可動部30は、回動軸26に固定される可動プレート53と、該可動プレート53に対向して支持部材35に固定されるクリックプレート41とを備えている。支持部材35の支持板部35bに当接する平板状に形成されるクリックプレート41には、支持部材35の支持筒部35aを挿通せしめる挿通孔と、支持部材35の支持板部35bをサイドスタンドブラケット33に取り付けるための一対のボルト32,34のうち一方のボルト32を係合させる円弧状の係合凹部とが設けられ、その一方のボルト32は、係合凹部に係合するようにしつつクリックプレート41を支持板部35bと共にサイドスタンドブラケット33に取り付けることになる。
【0045】
可動プレート53は回動軸26に固着されており、この可動プレート53には、クリックプレート41側に開口した有底の収容孔を有して先端部をクリックプレート41に近接、対向させる円筒部49が設けられる。可動部30は、シフトペダル7の操作にクリック感を付与するクリック機構を備えている。このクリック機構は、収容孔の先端部に収容されるクリックボール(不図示)と、該クリックボールをクリックプレート41との間に付勢するばね(不図示)とを含んで構成される。
【0046】
シフトペダル7の操作によって可動プレート53が、その中立位置からシフトアップ側もしくはシフトダウン側に回動する際には、可動プレート53の回動初期には、クリック機構のばねを圧縮しつつテーパ部(不図示)をクリックボールが登るので、操作トルクが漸次大きくなり、可動プレート53の回動量が所定値以上となると操作トルクが小さくなるので、シフトペダル7を足で操作する乗員がクリック感を感じることができる。
【0047】
また、可動部30は、シフトペダル7の回動操作範囲を規制するストッパ機構54を備えている。ストッパ機構54は、支持部材35の支持板部35bにねじ込んで固定されるストッパピン55と、このストッパピン55を挿通させるようにして可動プレート53に設けられる規制孔とで構成される。このストッパ機構54によれば、可動プレート53すなわちシフトペダル7の回動範囲は、規制孔内でストッパピン55が移動可能な範囲に規制されることになる。
【0048】
さらに、可動部30は、シフトペダル7に戻り方向のばね力を作用せしめるリターン機構40を備えており、このリターン機構40は、規制孔の回動軸26側の縁部からクリックプレート41側に突出するようにして可動プレート53に一体に設けられる係止突部およびストッパピン55を両側から挟む挟み片48を両端部に有するコイル状の戻しばね46が、支持部材35の支持筒部35aを囲繞するようにして支持部材35に装着されてなり、可動プレート53がシフトペダル7の回動操作に応じて中立位置からシフトアップ側またはシフトダウン側に回動したときに、戻しばね46の両挟み片48の一方から可動プレート53に、該可動プレート53を中立位置に戻す方向すなわちシフトペダル7を非操作位置に戻す方向のばね力が作用することになる。可動部30は、カバー52で覆われており、このカバー52はクリックプレート41に着脱可能に取り付けられる。
【0049】
図4は、自動二輪車1のメータまわりの一部拡大図である。この図は、車体後方かつ上方からハンドル回りを俯瞰したものであり、シート15に着座した運転者が見た状態とほぼ同じ状態を示す。前輪WFを操舵する操向ハンドル58の車体前方側は、外装部品としてのカウリング2で覆われている。カウリング2の上端部には防風スクリーン63が取り付けられており、その下方には、回転計60、車速等を表示する左側液晶パネル61、距離計等を備える右側液晶パネル62を有するメータ装置59が配設されている。
【0050】
自動二輪車1の前輪WFは、左右一対のフロントフォーク3の下端に回転自在に軸支されており、フロントフォーク3の上部は、メインスイッチ57が取り付けられたトップブリッジ56によって連結固定されている。トップブリッジ56は、不図示のステアリングステムを介して自動二輪車1の車体フレームFに回動可能に取り付けられており、操向ハンドル58は、フロントフォーク3の上端部に固定されている。トップブリッジ56と不図示のシートとの間には、燃料タンク20が配設されている。
【0051】
左右の操向ハンドル58のバー部分には、筒状のゴム等で形成され、乗員が把持するハンドルグリップ71がそれぞれ取り付けられている。右側のハンドルグリップ71の車体前方側には、前輪ブレーキレバー84が配設されており、この前輪ブレーキレバー84の基部には、油圧ブレーキシステムの作動油を貯留するリザーブタンク81が取り付けられている。また、右側のハンドルグリップ71は、ハンドルバーに対して回動可能に支持されており、この回動操作によってスロットル機構を操作するように構成されている。
【0052】
右側の操向ハンドル58には、ハンドルグリップ71に隣接して、各種電装品の操作スイッチを備えるハンドルスイッチ80が取り付けられている。ハンドルスイッチ80には、エンジンストップスイッチ82、ニュートラル/ドライブ(N/D)切換スイッチ85、スタータスイッチ86および走行モード切換スイッチ83が設けられている。
【0053】
車体前方側に取り付けられた揺動押圧式(押圧力を解除すると初期位置に戻る)の走行モード切換スイッチ83は、右手の人差し指で手前(乗員側)に引いて操作するものであり、1回操作する毎に、ドライブモード(AT)とマニュアル変速モード(MT)との切換が行われる。また、エンジンストップスイッチ82は、操作力を加えない限り一方側または他方側の位置を保持するシーソー切換式とされ、エンジン運転中にオフ側に操作することで点火装置の駆動を停止してエンジンを緊急停止させるものである。
【0054】
シーソー押圧式(押圧力を解除すると中立位置に戻る)のN/D切換スイッチ85は、自動二輪車1の停車時において、左方のD側または右方のN側を押すことで、自動変速機のニュートラル(N)と1速(D)との切換操作を行うものである。本実施形態では、ドライブモードが選択されている間にさらにD側を押すと、通常のドライブモードより駆動力を重視したスポーツ走行モード(Sモード)に切り換わるように構成されている。
【0055】
ハンドルスイッチ80の最下位に配設される押圧式のスタータスイッチ86は、イグニッションスイッチがオン状態でかつ変速機がニュートラル状態である場合に、これを操作してエンジンを始動するものである。
【0056】
他方、左側の操向ハンドル58には、ハンドルグリップ71の車体中央側に隣接して、各種電装品の操作スイッチを備えるハンドルスイッチ64が取り付けられている。左側のハンドルスイッチ64には、ヘッドライト(前照灯)の光軸切換スイッチ65、ホーンスイッチ70、ウインカスイッチ69、ハザードランプスイッチ66、自動変速機の変速操作を行うシフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68が設けられている。
【0057】
図5は、右側のハンドルスイッチ80の正面図である。また、図6は、同上面図である。ハンドルスイッチ80は、樹脂等で形成された箱状のスイッチケース80aに、各種電装品を操作する複数のスイッチを取り付けた構成とされる。スイッチケース80aは、乗員側の後側ケース半体87と車体前方側の前側ケース半体88とからなる。
【0058】
スイッチケース80aの車体前方側に取り付けられた走行モード切換スイッチ83は、1回操作する毎に、ドライブモード(AT)とマニュアル変速モード(MT)との切り換えが行われる。また、ハンドルバー58aの軸線Cに対して、車体上下方向でほぼ同じ高さに配設されるN/D切り換えスイッチ85は、揺動軸89を中心に揺動するシーソー押圧式とされており、自動二輪車1の停車時に、親指でD側またはN側を押すことで、自動変速機のニュートラル(N)状態と1速(D)との間の切り換えを行うことができる。N/D切り換えスイッチ85の上下には、親指の方向を案内して正確な操作を可能とする仕切板92が設けられている。また、N/D切り換えスイッチ85の揺動軸90は、その中心線90aが車体上下方向に指向するように配設されている。
【0059】
ハンドルスイッチ80の最下位に配設される押圧式のスタータスイッチ86は、揺動軸90を中心に揺動する揺動押圧式とされ、揺動軸90は、その中心線90aが車体上下方向に指向するように配設されている。スイッチケース80aの下面部には、スイッチケース80aの内部に侵入した水分を車体後方側に向けて排出するための3つの水抜き孔91が形成されている。
【0060】
図7は、自動二輪車1に適用される自動変速機としての自動マニュアル変速機(以下、AMT)119およびその周辺装置のシステム構成図である。また、図8は、AMT119における各軸および変速ギヤの噛合関係を示す配置関係図である。AMT119は、主軸(メインシャフト)上に配設された2つのクラッチによってエンジンEの回転動力を断接するツインクラッチ式変速装置である。エンジンEに連結されるAMT119は、クラッチ用油圧装置99および変速制御装置としてのAMT制御ユニット128によって駆動制御される。エンジンEは、スロットル・バイ・ワイヤ形式のスロットルボディ102を有し、スロットルボディ102には、スロットルバルブ開閉用のモータ101が備えられている。スロットルボディ102の近傍には、燃料噴射装置のインジェクタ100が気筒毎に設けられている。
【0061】
AMT119は、前進6段の変速機TM、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、シフトドラム114、シフトドラム114を回動させるシフト制御モータ6を備えている。変速機TMを構成する多数のギヤは、主軸106およびカウンタ軸(カウンタシャフト)109にそれぞれ結合または遊嵌されている。主軸106は、内主軸107と外主軸108とからなり、内主軸107は第1クラッチCL1と結合され、外主軸108は第2クラッチCL2と結合されている。主軸106およびカウンタ軸109には、それぞれ主軸6およびカウンタ軸109の軸方向に変位自在な変速ギヤが設けられており、これら変速ギヤおよびシフトドラム114に形成されたガイド溝(不図示)に、それぞれシフトフォーク115の端部が係合されている。
【0062】
エンジンEの出力軸、すなわちクランク軸104には、プライマリ駆動ギヤ105が結合されており、このプライマリ駆動ギヤ105はプライマリ従動ギヤ110に噛み合わされている。プライマリ従動ギヤ110は、第1クラッチCL1を介して内主軸107に連結されると共に、第2クラッチCL2を介して外主軸108に連結されている。また、AMT119は、カウンタ軸109上の所定の変速ギヤの回転速度を計測することで、内主軸107および外主軸108の回転速度をそれぞれ検知する内主軸回転速度センサSE3および外主軸回転速度センサSE4を備えている。
【0063】
カウンタ軸109の端部にはリングギヤ111が結合されており、このリングギヤ111に、ドライブシャフト13の端部に固定されたピニオンギヤ112が噛合している。ドライブシャフト13は、駆動輪としての後輪WRに回転動力を伝達する。
【0064】
AMT119には、プライマリ従動ギヤ110の外周に対向配置されたエンジン回転数センサSE1と、シフトドラム114の回転位置に基づいて現在のギヤ段位を検出するギヤポジションセンサSE7と、シフト制御モータ6の回動量を検知するために減速ギヤのスピンドル118の回動位置を検知するスピンドルセンサSE5と、シフトドラム114がニュートラル位置にあることを検知するニュートラルスイッチSE6とが設けられている。シフト制御モータ6の回転動力は、スピンドル118を介して、シフトドラムギヤ117を回動させる変速ロッド116に伝達される。
【0065】
スロットルボディ102には、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサSE2が設けられている。また、AMT制御ユニット128には、操向ハンドル等に配設されるスロットル機構103の操作量を検知するスロットルグリップ開度センサSE11、サイドスタンド8の格納状態を検知するサイドスタンドスイッチSE12からの情報が入力される。AMT制御ユニット128は、エンジン回転数や車速等のほか、各種センサ情報に基づく車両情報をメータ装置59に表示することができる。なお、メータ装置59には、駐車時に使用するパーキングブレーキの作動状態を検知するパーキングブレーキスイッチSE15からの情報も入力される。
【0066】
クラッチ用油圧装置99は、エンジンEの潤滑油とクラッチCLを駆動する作動油とを兼用する構成とされている。クラッチ用油圧装置99は、オイルタンク127と、このオイルタンク127内のオイル(作動油)を第1クラッチCL1および第2クラッチCL2に給送するための管路121とを備えている。
【0067】
オイルタンク127内には、油温センサSE13が設けられている。管路121上には、ライン油圧センサSE14、オイルフィルタ122、油圧供給源としての油圧ポンプ123および電動アクチュエータとしてのバルブ(電子制御弁)120が設けられており、管路121に連結される戻り管路125上には、バルブ120に供給する油圧を一定値に保つためのレギュレータ124が配置されている。バルブ120は、第1クラッチCL1および第2クラッチCL2に個別に油圧を供給することが可能に構成されている。また、バルブ120a,120bにもそれぞれオイルの戻り管路126が設けられている。
【0068】
第1バルブ120aと第1クラッチCL1とを連結している管路には、第1クラッチCL1に生じる油圧を計測する第1クラッチ油圧センサSE8が設けられている。同様に、第2バルブ120bと第2クラッチCL2とを連結している管路には、第2クラッチCL2に生じる油圧を計測する第2クラッチ油圧センサSE9が設けられている。
【0069】
AMT制御ユニット128には、自動変速を行うドライブモード(ATモード)とマニュアル変速モード(MTモード)との切り換えを行う走行モード切換スイッチ83と、シフトアップ(UP)またはシフトダウン(DN)を指示するシフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68からなる手動変速スイッチ97と、ニュートラル(N)とドライブ(D)との切り換えを行うN/D切換スイッチ85と、シフトペダル7および該シフトペダル7の回動操作を検知するポテンショメータ44を含む足動変速制御手段95が接続されている。AMT制御ユニット128は、中央演算処理装置(CPU)を備え、上記した各センサやスイッチの出力信号に応じてバルブ120およびシフト制御モータ6を制御し、AMT119のギヤ段位を自動的または半自動的に切り換える。
【0070】
AMT制御ユニット128は、ドライブモードの選択時には、車速、エンジン回転数、スロットル開度等の情報に応じて変速段位を自動的に切り換え、一方、マニュアル変速モードの選択時には、手動変速スイッチ97またはシフトペダル7の操作に伴って、変速機TMをシフトアップまたはシフトダウンする。なお、マニュアル変速モード選択時でも、エンジンの過回転やストールを防止するための補助的な自動変速制御を実行することが可能である。
【0071】
クラッチ用油圧装置99においては、油圧ポンプ123によってバルブ120に油圧がかけられており、この油圧が上限値を超えないようにレギュレータ23で制御されている。AMT制御ユニット128からの指示でバルブ120aまたは120bが開かれると、第1クラッチCL1または第2クラッチCL2に油圧が印加されて、プライマリ従動ギヤ110が第1クラッチCL1または第2クラッチCL2を介して内主軸107または外主軸108に連結される。一方、バルブ120が閉じられて油圧の印加が停止されると、第1クラッチCL1および第2クラッチCL2は、リターンスプリング(不図示)の付勢力によって、内主軸107および外主軸108との連結を断つ方向へ駆動される。
【0072】
管路121と両クラッチCL1,CL2とを連結する管路を開閉することでクラッチを駆動するバルブ120は、AMT制御ユニット128が駆動信号に基づいて、管路の全閉状態から全開状態に至るまでの時間等を任意に変更することができる。
【0073】
シフト制御モータ6は、AMT制御ユニット128からの指示に従ってシフトドラム114を回動させる。シフトドラム114が回動すると、シフトドラム114の外周に形成されたガイド溝の形状に従ってシフトフォーク115がシフトドラム114の軸方向に変位する。これに伴い、カウンタ軸109および主軸106上のギヤの噛み合わせが変わり、変速機TMのシフトアップまたはシフトダウンが実行される。
【0074】
本実施形態に係るAMT119では、第1クラッチCL1と結合される内主軸107が奇数段ギヤ(1,3,5速)を支持し、第2クラッチCL2と結合される外主軸108が偶数段ギヤ(2,4,6速)を支持するように構成されている。したがって、例えば、奇数段ギヤで走行している間は、第1クラッチCL1への油圧供給が継続されて接続状態が保たれている。そして、シフトチェンジが行われる際には、シフトドラム114の回動によってギヤの噛み合わせを予め変更する、すなわち、「予備変速」を実行することにより、両クラッチの接続状態を切り換えるのみで変速動作を完了することができる。
【0075】
図8は、変速ギヤの噛合関係を示す配置関係図である。第1クラッチCL1に接続される内主軸107は、奇数変速段の駆動ギヤM1,M3,M5を支持している。第1速駆動ギヤM1は、内主軸107に一体的に形成されている。また、第3速駆動ギヤM3は、軸方向に摺動可能かつ周方向に回転不能に取り付けられており、第5速駆動ギヤM5は、軸方向に摺動不能かつ周方向に回転可能に取り付けられている。
【0076】
第2クラッチCL2に接続される外主軸108は、偶数変速段の駆動ギヤM2,M4,M6を支持している。第2速駆動ギヤM2は、外主軸108に一体的に形成されている。また、第4速駆動ギヤM4は、軸方向に摺動可能かつ周方向に回転不能に取り付けられており、第6速駆動ギヤM6は、軸方向に摺動不能かつ周方向に回転可能に取り付けられている。
【0077】
一方、カウンタ軸109は、駆動ギヤM1〜M6に噛合する被動ギヤC1〜C6を支持している。第1速から4速の被動ギヤC1〜C4は、軸方向に摺動不能かつ周方向に回転可能に取り付けられており、第5,6速の被動ギヤC5,C6は、軸方向に摺動可能かつ周方向に回転不能に取り付けられている。シフトフォーク115は、上記歯車列のうち、駆動ギヤM3,M4および被動ギヤC5,C6、すなわち、軸方向に摺動可能なギヤをシフトフォーク115(図7参照)で摺動させることにより、各ギヤに形成されたドグクラッチを断接させる。
【0078】
AMT119は、例えば、第1速ギヤの選択時には、クランク軸104からプライマリ従動ギヤ110に伝達されたエンジンの回転動力を、第1クラッチCL1が接続されることで内主軸107に伝達し、第1速駆動ギヤM1から第1速被動側C1を介してカウンタ軸109に伝達している。このとき、第1速用のドグクラッチは、第1速被動ギヤC1と第5速被動ギヤC5との間で噛み合った状態にある。
【0079】
そして、AMT119は、第1速ギヤによって回転動力が伝達されている際に、第2速用のドグクラッチ、すなわち、第6速被動ギヤC6と第2速被動ギヤC2との間のドグクラッチを噛合させて第2速への変速に備える「予備変速」を実行する。このとき、第2クラッチCL2は遮断されているので、第1速ギヤでの走行中に第2速用のドグクラッチが噛合されても、エンジンの回転動力は、第2速駆動ギヤM2を介して外主軸108を空転させるのみである。そして、この予備変速の完了後に、接続側クラッチを第1クラッチCL1から第2クラッチCL2に持ち替えると、回転動力を途切れさせることなく、瞬時に2速ギヤを介して回転動力が出力されることとなる。
【0080】
図9は、AMT制御ユニット128およびその周辺機器の構成を示すブロック図である。前記と同一符号は同一または同等部分を示す。AMT制御ユニット128には、シフトスイッチ電圧検知部130と、変速指令決定部131と、変速制御部132とが含まれる。変速制御部132には、変速マップ133および各種時間を計測するタイマ134が含まれる。
【0081】
シフトスイッチ電圧検知部130は、シフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68の出力信号と、シフトペダルセンサ44の出力信号とを検知する。本実施形態において、シフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68は、オンまたはオフ信号を出力するスイッチで構成されており、一方、シフトペダルセンサ44は、シフトペダル7の回動角度に応じた電圧を出力するポテンショメータで構成されている。
【0082】
変速指令決定部131は、シフトスイッチ電圧検知部130からの情報に基づいて、シフトアップまたはシフトダウンの変速要求が満たされたか否かを判断し、変速制御部132に伝達する。この変速要求には、シフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68、すなわち、手動変速スイッチの出力信号に基づく手動変速要求と、シフトペダルセンサ44、すなわち、足動変速スイッチの出力信号に基づく足動変速要求とが含まれる。変速指令決定部131は、N/D切り換えスイッチ85からの出力信号が入力されており、変速制御部132は、ドライブモードが選択されている場合には予め定められた変速マップ133に基づいて自動変速を実行する。
【0083】
なお、シフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68をポテンショメータで構成した場合には、タイマ134によって両スイッチの操作速度を算出し、この操作速度に応じた変速制御を実行することもできる。
【0084】
前記したように、変速制御部132は、ドライブモードの選択時には、エンジン回転数センサSE1、スロットル開度センサSE2、ギヤポジションセンサSE7等の出力情報に基づいて、3次元マップ等からなる変速マップ133に従って、シフト制御モータ6およびバルブ120(第1バルブ120aおよび第2バルブ120b)を駆動して変速動作を自動的に実行する。ドライブモードにおいて、現在の変速段から隣り合う変速段に変速させる際のクラッチ持ち替え速度は、変速マップ133等によって規定されている。これに対し、マニュアル変速モードの選択時には、エンジンEの過回転やエンスト等が生じない範囲内で、手動変速スイッチおよび足動変速スイッチの変速要求に応じたマニュアル変速が実行可能とされる。
【0085】
図10は、自動二輪車1の車速と受け付け可能な変速操作との関係を示す図である。まず、本実施形態では、車速VRがVR3(例えば、18km/h)を超えた状態のときに、手動変速スイッチ(シフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68)または、足動変速スイッチ(シフトペダルセンサ44)によるマニュアル変速操作を受け付けるように設定されている。次に、車速VR3より小さい第2の車速としての車速VR2(例えば、10km/h)未満のときに、N/D切り換えスイッチの操作よるニュートラル状態からドライブモードへの切り換えを受け付けるように設定されている。そして、車速V2より小さい第1の車速としての車速VR1(例えば、3km/h)未満のときに、N/D切り換えスイッチの操作よるドライブモードからニュートラル状態への切り換えを受け付けるように設定されている。
【0086】
上記したような設定によれば、高車速状態でドライブモードからニュートラル状態へ切り換わってしまうようなことがなく、走行状態に適した変速制御が実行可能となる。また、第1の車速VR1をごく小さい値に設定することで、停車する可能性の高い状態でニュートラル状態への切り換えを実行することが可能となる。また、第2の車速VR2を第1の車速VR1より大きく設定することで、例えば、下り坂での発進時等にニュートラル状態で車速がやや高まってしまった場合でもスムーズにドライブモードに切り換えることが可能となる。
【0087】
そして、本実施形態では、ニュートラル状態からドライブモードへの切り換えを、ハンドルスイッチ80に設けられたN/D切り換えスイッチ85だけでなく、シフトペダル7によっても実行可能とした点に特徴がある。一方、車速VRの大小にかかわらず、ニュートラル状態において、ハンドルスイッチ64に設けられたシフトアップスイッチ67またはシフトダウンスイッチ68を操作しても、ニュートラル状態からドライブモードへの切り換えは実行されないように設定されている。
【0088】
図11は、ニュートラル状態とドライブモードとの関係を示す状態遷移図である。まず、イグニッションスイッチをオンにした場合には、変速機TMはニュートラル状態200にある。なお、本実施形態では、イグニッションスイッチをオフにした際にドライブモード201が選択されていた場合でも、イグニッションスイッチをオフにすることでニュートラル状態200に切り換わるように構成されている。
【0089】
ニュートラル状態200からドライブモード201への切り換えは、条件Aまたは条件Bが満たされることで実行される。条件Aは、シフトペダル7の操作を伴う場合であり、スロットル開度THがTh1(例えば、0.49度)未満で、かつ車速VRが10km/h未満で、かつギヤがニュートラルで、かつN/D切り換えスイッチ85の操作がなしで、かつエンジン回転数NEがNE1(例えば、750rpm)を超えてNE2(例えば、2300rpm)未満の状態で、シフトペダル7がDOWN(シフトダウン)操作されたこととされる。なお、本実施形態では、シフトペダル7をつま先で踏み下げることがシフトダウン操作となる。一方、条件Bは、N/Dスイッチ85の操作による場合であり、スロットル開度THがTh1未満で、かつ車速VRが10km/h未満で、かつエンジン回転数NEがNE1を超えてNE2未満の状態で、N/D切り換えスイッチ85のD側を押したこととされる。
【0090】
一方、ドライブモード201からニュートラル状態200への切り換えは、条件Cまたは条件Dが満たされることで実行される。条件Cは、N/Dスイッチ85の操作を伴う場合であり、スロットル開度THがTh2(Th1<Th2。例えば、0.78度)未満で、かつ車速VRが3km/h未満の状態で、N/D切り換えスイッチ85のN側を押したこととされる。一方、条件Dは、シフトペダル7の操作による場合であり、スロットル開度THがTh2未満で、かつ車速VRが3km/h未満で、かつN/D切り換えスイッチ85の操作がなしで、シフトペダル7がUP(シフトアップ)操作されたこととされる。なお、本実施形態では、シフトペダル7をつま先でかき上げることがシフトアップ操作となる。
【0091】
なお、本実施形態では、スロットル開度THが0.8度以上でクラッチ油圧が発生するように構成されている。したがって、上記した条件Cおよび条件Dでは、クラッチ油圧が発生していないことが条件に含まれることとなる。
【0092】
一方、ドライブモード201に遷移した場合には、走行条件に応じた異なる変速マップを有する標準モード204または高負荷モード205を含む自動Dモード203となる。自動Dモード203では、標準モード204と高負荷モード205との切り換えも自動的に行われる。そして、この自動Dモードにあるときに、N/D切り換えスイッチ85のD側をさらに押すと、エンジンEの高回転領域を積極的に使う変速マップを有するSモード(スポーツモード)202に移行するように設定されている。
【0093】
また、自動Dモード203およびSモード202からなるAT変速208の状態において、走行モード切換スイッチ83を操作すると、一時シフト介入207が可能なMT変速206の状態に遷移する。そして、AT変速208の状態において、手動変速スイッチ(シフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68)または、足動変速スイッチ(シフトペダルセンサ44)を操作した場合には、最初の変速動作と共にMT変速206の状態に移行する。
【0094】
MT変速206からAT変速208への移行は、走行モード切換スイッチ83の操作のほか、停車時等の自動復帰によっても行われる。
【0095】
上記したような設定によれば、ニュートラル状態から手動変速スイッチ97を操作してもドライブモードに切り換わらないのに対して、シフトペダル7を用いた際には、ニュートラル状態からシフトペダル7の操作によってドライブモードに切り換えてそのままシフトペダル7によるマニュアル変速が可能となるため、ハンドルまわりに設けられたN/D切り換えスイッチ85を操作することなく、即座にニュートラル状態からドライブモードおよび足動マニュアル変速に移行することが可能となる。
【0096】
これにより、N/D切り換えスイッチ85および手動変速スイッチ97をハンドルに設ける自動二輪車の変速制御装置において、シフトペダル7による足動変速スイッチをさらに設ける場合であっても、シフトペダル7の操作によってニュートラル状態から走行可能状態に切り替えるという通常の自動二輪車と同様のシフト操作が可能となり、運転者に違和感を与えることなく使い勝手を向上させることが可能となる。
【0097】
図12は、足動変速制御手段95による変速要求確定の条件を示すグラフである。本実施形態では、シフトペダルセンサ44にポテンショメータを用いており、このシフトペダルセンサ44のセンサ出力が予め定められた入力信号パターンP(P1,P2)の範囲内に収まった場合に限り、シフトアップまたはシフトダウンの足動変速要求を確定する。これにより、ノイズ等が足動変速要求の確定処理に与える影響を低減することができる。
【0098】
具体的には、入力信号パターンPは、シフトペダル7が一方向または他方向に回動動作をしている期間に対応する略三角形部分P1と、シフトペダル7がストッパ機構54(図3参照)によってそれ以上回動不能となった状態で所定時間T1が経過するまでの期間に対応する略長方形部分P2とからなる。センサ出力は複数の黒丸で示す。
【0099】
三角形部分P1は、例えば、シフトペダル7の回動が開始された時刻t1から時刻t2までの所定時間T1(例えば、100ms)の間に、センサ出力の変化量が所定値V1(例えば、105mV)以上となるように形成することができる。また、長方形部分P2は、時刻t2から時刻t3までの所定時間T2(例えば、70ms)の間に、センサ出力の変化量が所定値V2(例えば、40mV)以内となるように形成することができる。このようなパターンPを用いることにより、運転者が誤ってシフトペダル7に触れてしまった場合等には、足動変速要求が確定しないように設定することが可能となり、足動変速要求を容易かつ適切に検知することができる。
【0100】
図13は、手動変速スイッチ97の出力信号と手動変速要求との関係を示すグラフである。本実施形態では、時刻t1で手動スイッチ97をオンに切り換えると、所定時間Ta(例えば、15ms)後の時刻t2で手動変速要求が確定するように設定されている。これにより、乗員の意図しない変速動作を防ぎ、乗員の変速意思を確認した上で変速要求を確定することができる。一方、押圧していた手動変速スイッチ97を離す際には、センサ出力がゼロになると速やかに手動変速要求が「なし」に戻る。
【0101】
図14は、足動変速スイッチとしてのシフトペダルセンサ44の出力信号と足動変速要求との関係を示すグラフである。足動変速スイッチ97を操作した場合には、時刻t5でシフトペダル7の操作を開始した後、図12に示した入力信号パターンPとの照合を行って、時刻t6において足動変速要求が確定し、足動変速要求が「あり」となる。シフトペダル7を中立位置に戻す際には、センサ出力が所定値を下回る時刻t7で足動変速要求が「なし」に戻る。
【0102】
図15は、足動変速要求と手動変速要求との関係を示すタイムチャートである。本実施形態では、手動変速要求および足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が共にシフトアップまたはシフトダウンで共通する場合には、その変速要求に従って変速制御を行うように設定されている。したがって、例えば、シフトアップの手動変速要求とシフトアップの足動変速要求が同じタイミングで確定した場合には、運転者の変速意思が確定していると判断して、シフトアップを実行するように構成されている。
【0103】
これに対し、このタイムチャートに示すパターンA,B,C,Dは、いずれも、シフトアップの足動変速要求と相反するシフトダウンの手動変速要求とが、互いに近いタイミングで確立した場合を示している。本実施形態では、先に確定した変速要求に基づいて変速制御を実行すると共に、変速動作を実行した後は、所定時間Tb(例えば、500ms)が経過するまで次の変速要求を受け付けないように構成されている。
【0104】
パターンAでは、時刻t10において、シフトダウンの手動変速要求が確定したことに伴いシフトダウンが実行される。ここで、シフトダウンの手動変速要求が確定した直後に、シフトアップの足動変速要求が確定しているものの、シフトダウンの手動変速要求が確定してから所定時間Tbが経過するまでは次の変速要求は受け付けないので、後に確定した足動変速要求は無視される。
【0105】
次に、パターンBでは、時刻t11において、シフトアップの足動変速要求が確定したことに伴いシフトアップが実行される。シフトアップの手動変速要求が確定した直後に、シフトダウンの手動変速要求が確定しているものの、シフトアップの足動変速要求が確定してから所定時間Tbが経過するまでは次の変速要求は受け付けないので、後に確定した先の手動変速要求は無視される。
【0106】
さらに、パターンCでは、時刻t12において、シフトダウンの手動変速要求が確定したことに伴いシフトダウンが実行される。シフトダウンの手動変速要求が確定した直後に、シフトアップの足動変速要求が確定しているものの、シフトダウンの手動変速要求が確定してから所定時間Tbが経過するまでは次の変速要求は受け付けないので、先の足動変速要求は無視される。
【0107】
そして、パターンDでは、時刻t13において、シフトダウンの手動変速要求とシフトアップの足動変速要求が同時に確定している。本実施形態では、手動変速要求および足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が互いにシフトアップおよびシフトダウンで異なる場合には、確定した両変速要求をキャンセルするように設定されている。したがって、時刻t13では変速が実行されずに、次の変速要求の待機状態となる。
【0108】
上記したような設定によれば、例えば、手動変速でシフトアップをしようとした際に路面の凹凸で車体が揺れて乗員が意図せずに足ペダルに触れてシフトダウン操作を同時にしてしまった場合等に、乗員が意図しないシフトチェンジが実行されることを防ぐことができる。
【0109】
なお、ハンドルスイッチ、手動変速スイッチ(シフトアップスイッチおよびシフトダウンスイッチ)、シフトペダル、シフトペダルセンサの形状や構造、所定車速VR1,2,3等の各種設定数値、ニュートラル状態およびドライブモードの相互切り換え条件等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。本発明に係る変速制御装置は、自動二輪車に限られず、鞍乗型の三/四輪車等の各種車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1…自動二輪車、7…シフトペダル、44…シフトペダルセンサ、67…シフトアップスイッチ、68…シフトダウンスイッチ、80…ハンドルスイッチ、83…走行モード切り換えスイッチ、85…N/D切り換えスイッチ、95…足動変速制御手段、97…手動変速スイッチ、119…AMT(ツインクラッチ式自動変速機)、128…AMT制御ユニット、132…変速制御部、200…ニュートラル状態、201…ドライブモード、202…Sモード、203…自動Dモード、204…標準モード、205…高負荷モード、206…MT変速、208…AT変速、TM…変速機
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の変速制御装置に係り、特に、ハンドルおよび足ペダルの両方に変速スイッチを設けるようにした自動二輪車の変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に設けられたシフトレバーの操作によって自動変速機の状態をニュートラルからドライブモードに切り換えると、このドライブモードでは走行状態に応じた自動変速(オートマチック変速)が実行されると共に、さらに、ドライブモードからマニュアル変速モードに切り換えることで、シフトレバー操作による手動変速(セミオートマチック変速)が可能となるように構成された車両の変速制御装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、四輪車用の変速制御装置において、ニュートラル/ドライブモード間の切り換えおよび変速ギヤ段の変更を可能とする1本のシフトレバーを、運転席横のフロアに立設配置するようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−292066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された構成では、1本のシフトレバーによってさまざまな変速状態の切り換え操作が可能となるものの、シフトレバーの位置を前後左右に変更できるような大型で複雑な機構が必要となる。したがって、上記したようなシフト機能を自動二輪車に適用しようとする場合には、ニュートラル/ドライブモード間の切り換えを行うニュートラル/ドライブモード(N/D)切り換えスイッチと、変速ギヤ段を変更する手動変速スイッチとを別々にハンドルまわり等に設ける必要があった。
【0006】
一方、自動二輪車の変速操作は足ペダルで行うのが一般的であることから、変速スイッチとしての足ペダルを設けて足動変速可能に構成することが考えられるが、単に足動変速可能としただけでは、N/D切り換えスイッチによって手動にてニュートラルからドライブモードに切り換えた後に足ペダルで変速ギヤ段を切り換えるという、通常の足ペダル操作と異なる2段階の操作が必要になるという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、N/D切り換えスイッチおよび手動変速スイッチを自動二輪車のハンドルまわりに設けるものにおいて、足ペダルによる足動変速スイッチをさらに設ける場合であっても、違和感のない操作が可能な使い勝手のよい自動二輪車の変速制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、ニュートラル状態および複数の変速段間の切り換えが可能な変速機(TM)と、該変速機(TM)の変速状態を制御する変速制御部(132)とを備え、前記ニュートラル状態と前記複数の変速段間の自動変速を行うドライブモードとの間を切り換えるN/D切り換えスイッチ(85)と、前記ドライブモード中の操作により前記複数の変速段間のマニュアル変速を可能とする手動変速スイッチ(97)とを自動二輪車(1)のハンドルまわりに設けた自動二輪車の変速制御装置において、足ペダル(7)の操作に応じて、前記ドライブモード中に前記複数の変速段とニュートラル状態への間のマニュアル変速を可能とする足動変速制御手段(95)を具備し、前記変速制御部(132)は、前記足動変速制御手段(95)による前記ニュートラル状態と前記ドライブモードとの切り換えを実行可能に設定されている点に第1の特徴がある。
【0009】
また、前記足ペダル(7)は、中立位置から一方側および他方側への回動動作が可能に構成されており、前記変速制御部(132)は、所定車速(VR1,VR2)以下の場合に、前記足動変速制御手段(95)によるニュートラル状態およびドライブモード間の切り換えを許可する点に第2の特徴がある。
【0010】
また、前記変速制御部(132)は、前記所定車速としての第1の車速(VR1)以下の場合に前記ドライブモードからニュートラル状態への切り換えを許可し、前記第1の車速(VR1)より大きい前記所定車速としての第2の車速(VR2)以下の場合に前記ニュートラル状態からドライブモードへの切り換えを許可する点に第3の特徴がある。
【0011】
また、前記変速制御部(132)は、前記手動変速スイッチ(97)の操作に基づいてシフトアップまたはシフトダウンの手動変速要求が確定したか否かを判断すると共に、前記足動変速制御手段(95)の操作に基づいてシフトアップまたはシフトダウンの足動変速要求が確定したか否かを判断し、前記手動変速要求または足動変速要求のうち先に確定した方の変速要求に基づいて変速制御を行う点に第4の特徴がある。
【0012】
また、前記変速制御部(132)は、前記手動変速要求または前記足動変速要求が確定してから一定時間(Tb)の間は、次の変速要求を受け付けない点に第5の特徴がある。
【0013】
また、前記変速制御部(132)は、前記手動変速要求および前記足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が共にシフトアップまたはシフトダウンで共通する場合には、その変速要求に従って変速制御を行う点に第6の特徴がある。
【0014】
また、前記変速制御部(132)は、前記手動変速要求および前記足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が互いにシフトアップおよびシフトダウンで異なる場合には、前記確定した両変速要求をキャンセルするように設定されている点に第7の特徴がある。
【0015】
また、前記変速制御部(132)は、前記手動変速スイッチ(97)が所定時間(Ta)の間継続して押圧操作されることで前記手動変速要求を確定する点に第8の特徴がある。
【0016】
また、前記足動変速制御手段(95)には、足ペダル(7)および該足ペダル(7)の回動角度を検知するシフトペダルセンサ(44)が含まれ、前記変速制御部(132)は、前記シフトペダルセンサ(44)の出力信号が、予め定められた入力信号パターン(P)の範囲に収まることで前記足動変速要求を確定する点に第9の特徴がある。
【0017】
また、前記予め定められた入力信号パターン(P)は、前記足ペダル(7)が回動動作中の期間に対応する略三角形部分(P1)と、前記足ペダル(7)が回動限界位置に突き当たってから所定時間が経過するまでの期間に対応する略長方形部分(P2)とからなる点に第10の特徴がある。
【0018】
さらに、前記手動変速スイッチ(97)は、自動二輪車(1)のハンドルスイッチ(64)に設けられるオンオフ式のシフトアップスイッチ(67)およびシフトダウンスイッチ(68)からなり、前記足動変速制御手段(95)のシフトペダルセンサ(44)は、前記足ペダル(7)の回動角度を検知するポテンショメータからなる点に第11の特徴がある。
【発明の効果】
【0019】
第1の特徴によれば、手動で変速を操作するときには、N/D切替スイッチでドライブ状態にした上で、そのまま自動変速も可能であり、そこから手動変速スイッチを操作すればマニュアル変速ができる。さらに、足ペダルの操作に応じて、ドライブモード中に複数の変速段とニュートラル状態への間のマニュアル変速を可能とする足動変速制御手段を具備し、変速制御部は、足動変速制御手段によるニュートラル状態とドライブモードとの切り換えを実行可能に設定されているので、ニュートラル状態から手動変速スイッチを操作してもドライブモードには切り換わらないのに対して、足ペダルを用いた際には、ニュートラル状態から足ペダルの操作によってドライブモードに切り換えてそのまま足ペダルによるマニュアル変速が可能となるため、ハンドルまわりに設けられたN/D切り換えスイッチを操作することなく、即座にニュートラル状態からドライブモードおよび足動マニュアル変速に移行することが可能となる。
【0020】
手動変速制御スイッチは、単に変速段をUPまたはDOWNとするだけで、通常ニュートラル状態への変速は設定されないが、足変速制御手段は、ニュートラル位置への変速ができるようにされているのでその特性を活かして足操作によりニュートラルとドライブモードを切り替えることができるようにし運転者のフィーリングに合った変速制御が提供できる。これにより、N/D切り換えスイッチおよび手動変速スイッチをハンドルに設ける自動二輪車の変速制御装置において、足ペダルによる足動変速スイッチをさらに設ける場合であっても、足ペダルの操作によってニュートラル状態から走行可能状態に切り替えるという通常の自動二輪車と同様のシフト操作が可能となり、運転者に違和感を与えることなく使い勝手を向上させることが可能となる。
【0021】
第2の特徴によれば、足ペダルは、中立位置から一方側および他方側への回動動作が可能に構成されており、変速制御部は、所定車速以下の場合に、足動変速制御手段によるニュートラル状態およびドライブモード間の切り換えを許可するので、例えば、足ペダルのアップ側またはダウン側への回動操作(つま先での踏み込みまたはかき上げ動作)によって、各変速段間の切り換えだけでなく、ニュートラル状態−ドライブモード間の切り換え操作をも実行可能に構成した場合でも、高車速状態でドライブモードからニュートラル状態へ切り換わってしまうようなことがなく、走行状態に適した変速制御が実行可能となる。
【0022】
第3の特徴によれば、変速制御部は、所定車速としての第1の車速以下の場合にドライブモードからニュートラル状態への切り換えを許可し、第1の車速より大きい所定車速としての第2の車速以下の場合にニュートラル状態からドライブモードへの切り換えを許可するので、例えば、第1の車速を小さい値に設定することで、停車する可能性の高い走行状態でニュートラル状態への切り換えを実行することが可能となる。また、第2の車速を第1の車速より大きく設定することで、例えば、下り坂での発進時等にニュートラル状態で車速がやや高まってしまった場合でもスムーズにドライブモードに切り換えることが可能となる。
【0023】
第4の特徴によれば、変速制御部は、手動変速スイッチの操作に基づいてシフトアップまたはシフトダウンの手動変速要求が確定したか否かを判断すると共に、足動変速制御手段の操作に基づいてシフトアップまたはシフトダウンの足動変速要求が確定したか否かを判断し、手動変速要求または足動変速要求のうち先に確定した方の変速要求に基づいて変速制御を行うので、乗員の変速要求に対して即座に応答することができる。
【0024】
第5の特徴によれば、変速制御部は、手動変速要求または足動変速要求が確定してから一定時間の間は、次の変速要求を受け付けないので、ごく短い時間内での連続シフト操作を受け付けることで不要なトルク変動が生じてしまう可能性を低減することができる。
【0025】
第6の特徴によれば、変速制御部は、手動変速要求および足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が共にシフトアップまたはシフトダウンで共通する場合には、その変速要求に従って変速制御を行うので、運転者の変速意思が確定していると判断して、迅速な変速制御を実行することができる。
【0026】
第7の特徴によれば、変速制御部は、手動変速要求および足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が互いにシフトアップおよびシフトダウンで異なる場合には、確定した両変速要求をキャンセルするように設定されているので、例えば、手動変速でシフトアップをしようとした際に路面の凹凸で車体が揺れて乗員が意図せずに足ペダルに触れてシフトダウン操作を同時にしてしまった場合等に、乗員が意図しないシフトチェンジが実行されることを防ぐことができる。
【0027】
第8の特徴によれば、変速制御部は、手動変速スイッチが所定時間の間継続して押圧操作されることで手動変速要求を確定するので、不意な動作やノイズ等が変速要求の確定判断に与える影響を低減することができる。
【0028】
第9の特徴によれば、足動変速制御手段には、足ペダルおよび該足ペダルの回動角度を検知するシフトペダルセンサが含まれ、変速制御部は、シフトペダルセンサの出力信号が、予め定められた入力信号パターンの範囲に収まることで足動変速要求を確定するので、ノイズ等が足動変速要求の確定処理に与える影響を低減することができる。
【0029】
第10の特徴によれば、予め定められた入力信号パターンは、足ペダルが回動動作中の期間に対応する略三角形部分と、足ペダルが回動限界位置に突き当たってから所定時間が経過するまでの期間に対応する略長方形部分とからなるので、足動変速要求を容易かつ適切に検知することが可能となる。
【0030】
第11の特徴によれば、手動変速スイッチは、自動二輪車のハンドルスイッチに設けられるオンオフ式のシフトアップスイッチおよびシフトダウンスイッチからなり、足動変速制御手段のシフトペダルセンサは、足ペダルの回動角度を検知するポテンショメータからなるので、手の指で操作する手動変速スイッチと、靴を履いた状態のつま先で操作する足ペダル側とで異なる方法を用いてスイッチ出力を得ることとなり、手動変速および足動変速の特性に沿った変速要求の検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る変速制御装置を適用した自動二輪車の左側面図である。
【図2】シフトペダルまわりの一部拡大図である。
【図3】シフト機構の拡大図である。
【図4】自動二輪車のメータまわりの一部拡大図である
【図5】右側ハンドルスイッチの正面図である。
【図6】右側ハンドルスイッチの上面図である。
【図7】自動マニュアル変速機およびその周辺装置のシステム構成図である。
【図8】AMTにおける各軸および変速ギヤの噛合関係を示す配置関係図である。
【図9】AMT制御ユニットおよびその周辺機器の構成を示すブロック図である
【図10】自動二輪車の車速と受け付け可能な変速操作との関係を示す図である。
【図11】ニュートラル状態とドライブモードとの関係を示す状態遷移図である。
【図12】足動変速制御手段による変速要求確定の条件を示すグラフである。
【図13】手動変速スイッチの出力信号と手動変速要求との関係を示すグラフである。
【図14】足動変速スイッチとしてのシフトペダルセンサの出力信号と足動変速要求との関係を示すグラフである。
【図15】足動変速要求と手動変速要求との関係を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る変速制御装置を適用した自動二輪車1の左側面図である。また、図2は、シフトペダルまわりの一部拡大図である。自動二輪車1の車体フレームFは、前輪WFを軸支するフロントフォーク3を操向可能に支承するヘッドパイプ21、該ヘッドパイプ21から後下がりに延びる左右一対のメインフレーム18、両メインフレーム18の後部に連結されて下方に延びる左右一対のピボットフレーム9を有する。メインフレーム18には、その中間部から下方に延びるエンジンハンガ5が一体に連接される。またピボットフレーム9に前端が揺動可能に支承されるスイングアーム12の後部に後輪WRが軸支される。
【0033】
メインフレーム18の下方には、水冷式のエンジンEのエンジン本体14が配置されている。エンジン本体14は、エンジンハンガ5、メインフレーム18およびピボットフレーム9の下部に懸架されており、エンジンEから出力される回転動力は、前後に延びてスイングアーム12内を通るドライブシャフト13を介して前記後輪WRに伝達される。
【0034】
メインフレーム18の上部には、燃料タンク19が搭載されており、燃料タンク19の後方には乗車用シート15が設けられる。シート15の後方にはリヤカバー15が配設されている。車体フレームFの一部およびエンジンEの一部はカウリング2で覆われており、カウリング2は、燃料タンク19の大部分を側方から覆うタンクカバー20を有する。
【0035】
エンジン本体14の前方には、ラジエータ4が配置される。また、エンジン本体14の左側面には、シフト制御モータ6の回転動力によってシフトドラム114(図7参照)を回動させるシフトアクチュエータ17が設けられている。
【0036】
図2,3を参照して、車体フレームFの一部を構成する左側のピボットフレーム9の下部には、乗員の左足を載せるステップ10が設けられるステップホルダ11が、2本のボルト38で取り付けられる。ステップホルダ11には、ステップ10に載せた左足の爪先側で回動操作可能な足ペダルとしてのシフトペダル7が回動可能に支承されるものであり、該シフトペダル7は、前後方向に延びるアーム部7aと、該アーム部7aの後端に設けられる円筒状の被支持部7bと、アーム部7aの先端部に設けられる踏部7cとからなり、被支持部7bは、車幅方向に指向する支軸23を介してステップホルダ11の前端部に回動可能に支承される。
【0037】
ステップ105がピボットフレーム9の前後方向に沿う略中央部に対応する位置でステップホルダ11に設けられ、シフトペダル7がステップホルダ11の前端部から前方に延出されるので、左側のピボットフレーム9の前側下部は、シフトペダル7に載せられた運転者の左足の車幅方向内側への移動を規制する足規制部24を構成する。
【0038】
車幅方向左側のピボットフレーム9の下部には、車体フレームFの一部を構成するサイドスタンドブラケット33が固着されており、このサイドスタンドブラケット33には、自動二輪車1を左側に傾斜した状態で駐車させるためのサイドスタンド8が回動可能に取り付けられる。
【0039】
サイドスタンドブラケット8には、左側のピボットフレーム9の車幅方向内側に配置される支持部材35が取り付けられている。支持部材35には、シフトペダル7に連動する可動部材としての可動プレート53を含むと共に、操作ペダル7の回動操作範囲を規制するストッパ機構54およびリターン機構40を有する可動部30が支持される。可動部30は、ドライブシャフト13の下方に配置される。
【0040】
支持部材35は、車幅方向に延びる軸線を有する支持孔(不図示)を形成する円筒状の支持筒部35aと、該支持筒部35aの車幅方向に沿う内端寄りの部分から側方に張り出す支持板部35bとを一体に有するように形成される。サイドスタンドブラケット33の外側面と、このサイドスタンドブラケット33の外側方に配置される平板状の支持板部35bとの間には、円筒状のスペーサ47が介装されており、支持部材35の支持板部35bは、各スペーサ47に挿通される一対のボルト32,34でサイドスタンドブラケット33に取り付けられる。
【0041】
シフトペダル7による変速操作は、抵抗式角度センサ(ポテンショメータ)であるシフトペダルセンサ44で検出され、このシフトペダルセンサ44の検出結果に基づいて、変速機TM(図7参照)の変速作動が制御される。シフトペダルセンサ44を支持するセンサステー43は、支持部材35の支持板部35bから車幅方向内方に間隔をあけた位置にシフトペダルセンサ44が配置されるようにして、一対のねじ部材(不図示)で支持板部35bに締結される。
【0042】
支持部材35に形成された支持孔には、シフトペダル7の操作に応じて回動する回動軸26が回動可能に噛合されている。支持孔の内端からの突出部で回動軸26の外周には、支持筒部35aの内端との間にワッシャ42を挟むようにして止め輪45が装着されている。回動軸26には、ワッシャ42との間に支持部材35の支持筒部35aを挟む鍔部が設けられる。これにより、回動軸26は、軸方向一を一定としつつ支持部材35の支持筒部35aで回動可能に支承されることになる。回動軸26の車幅方向内側の端部は、シフトペダルセンサ44のケース内に気密に突入されて、シフトペダルセンサ44の検出軸に連結される。
【0043】
回動軸26の車幅方向外側の端部には、該回動軸26の径方向外方に延びるアーム28の一端部がボルト39で締結されている。シフトペダル7のアーム部7aの中間部には、上下方向に延びるリンクロッド37の一端部が回動軸26と平行な軸線を有する第1連結ピン25を介して回動可能に連結されている。アーム28の他端部およびリンクロッド37の他端部は、第1連結ピン25と平行な軸線を有する第2連結ピン36を介して回動可能に連結される。回動軸26は、シフトペダル7の回動に応じて回動することにより、その回動をシフトペダルセンサ44が検出するので、シフトペダルセンサ44はシフトペダル7によるシフトアップおよびシフトダウンのいずれかの変速操作を検出することになる。
【0044】
可動部30は、回動軸26に固定される可動プレート53と、該可動プレート53に対向して支持部材35に固定されるクリックプレート41とを備えている。支持部材35の支持板部35bに当接する平板状に形成されるクリックプレート41には、支持部材35の支持筒部35aを挿通せしめる挿通孔と、支持部材35の支持板部35bをサイドスタンドブラケット33に取り付けるための一対のボルト32,34のうち一方のボルト32を係合させる円弧状の係合凹部とが設けられ、その一方のボルト32は、係合凹部に係合するようにしつつクリックプレート41を支持板部35bと共にサイドスタンドブラケット33に取り付けることになる。
【0045】
可動プレート53は回動軸26に固着されており、この可動プレート53には、クリックプレート41側に開口した有底の収容孔を有して先端部をクリックプレート41に近接、対向させる円筒部49が設けられる。可動部30は、シフトペダル7の操作にクリック感を付与するクリック機構を備えている。このクリック機構は、収容孔の先端部に収容されるクリックボール(不図示)と、該クリックボールをクリックプレート41との間に付勢するばね(不図示)とを含んで構成される。
【0046】
シフトペダル7の操作によって可動プレート53が、その中立位置からシフトアップ側もしくはシフトダウン側に回動する際には、可動プレート53の回動初期には、クリック機構のばねを圧縮しつつテーパ部(不図示)をクリックボールが登るので、操作トルクが漸次大きくなり、可動プレート53の回動量が所定値以上となると操作トルクが小さくなるので、シフトペダル7を足で操作する乗員がクリック感を感じることができる。
【0047】
また、可動部30は、シフトペダル7の回動操作範囲を規制するストッパ機構54を備えている。ストッパ機構54は、支持部材35の支持板部35bにねじ込んで固定されるストッパピン55と、このストッパピン55を挿通させるようにして可動プレート53に設けられる規制孔とで構成される。このストッパ機構54によれば、可動プレート53すなわちシフトペダル7の回動範囲は、規制孔内でストッパピン55が移動可能な範囲に規制されることになる。
【0048】
さらに、可動部30は、シフトペダル7に戻り方向のばね力を作用せしめるリターン機構40を備えており、このリターン機構40は、規制孔の回動軸26側の縁部からクリックプレート41側に突出するようにして可動プレート53に一体に設けられる係止突部およびストッパピン55を両側から挟む挟み片48を両端部に有するコイル状の戻しばね46が、支持部材35の支持筒部35aを囲繞するようにして支持部材35に装着されてなり、可動プレート53がシフトペダル7の回動操作に応じて中立位置からシフトアップ側またはシフトダウン側に回動したときに、戻しばね46の両挟み片48の一方から可動プレート53に、該可動プレート53を中立位置に戻す方向すなわちシフトペダル7を非操作位置に戻す方向のばね力が作用することになる。可動部30は、カバー52で覆われており、このカバー52はクリックプレート41に着脱可能に取り付けられる。
【0049】
図4は、自動二輪車1のメータまわりの一部拡大図である。この図は、車体後方かつ上方からハンドル回りを俯瞰したものであり、シート15に着座した運転者が見た状態とほぼ同じ状態を示す。前輪WFを操舵する操向ハンドル58の車体前方側は、外装部品としてのカウリング2で覆われている。カウリング2の上端部には防風スクリーン63が取り付けられており、その下方には、回転計60、車速等を表示する左側液晶パネル61、距離計等を備える右側液晶パネル62を有するメータ装置59が配設されている。
【0050】
自動二輪車1の前輪WFは、左右一対のフロントフォーク3の下端に回転自在に軸支されており、フロントフォーク3の上部は、メインスイッチ57が取り付けられたトップブリッジ56によって連結固定されている。トップブリッジ56は、不図示のステアリングステムを介して自動二輪車1の車体フレームFに回動可能に取り付けられており、操向ハンドル58は、フロントフォーク3の上端部に固定されている。トップブリッジ56と不図示のシートとの間には、燃料タンク20が配設されている。
【0051】
左右の操向ハンドル58のバー部分には、筒状のゴム等で形成され、乗員が把持するハンドルグリップ71がそれぞれ取り付けられている。右側のハンドルグリップ71の車体前方側には、前輪ブレーキレバー84が配設されており、この前輪ブレーキレバー84の基部には、油圧ブレーキシステムの作動油を貯留するリザーブタンク81が取り付けられている。また、右側のハンドルグリップ71は、ハンドルバーに対して回動可能に支持されており、この回動操作によってスロットル機構を操作するように構成されている。
【0052】
右側の操向ハンドル58には、ハンドルグリップ71に隣接して、各種電装品の操作スイッチを備えるハンドルスイッチ80が取り付けられている。ハンドルスイッチ80には、エンジンストップスイッチ82、ニュートラル/ドライブ(N/D)切換スイッチ85、スタータスイッチ86および走行モード切換スイッチ83が設けられている。
【0053】
車体前方側に取り付けられた揺動押圧式(押圧力を解除すると初期位置に戻る)の走行モード切換スイッチ83は、右手の人差し指で手前(乗員側)に引いて操作するものであり、1回操作する毎に、ドライブモード(AT)とマニュアル変速モード(MT)との切換が行われる。また、エンジンストップスイッチ82は、操作力を加えない限り一方側または他方側の位置を保持するシーソー切換式とされ、エンジン運転中にオフ側に操作することで点火装置の駆動を停止してエンジンを緊急停止させるものである。
【0054】
シーソー押圧式(押圧力を解除すると中立位置に戻る)のN/D切換スイッチ85は、自動二輪車1の停車時において、左方のD側または右方のN側を押すことで、自動変速機のニュートラル(N)と1速(D)との切換操作を行うものである。本実施形態では、ドライブモードが選択されている間にさらにD側を押すと、通常のドライブモードより駆動力を重視したスポーツ走行モード(Sモード)に切り換わるように構成されている。
【0055】
ハンドルスイッチ80の最下位に配設される押圧式のスタータスイッチ86は、イグニッションスイッチがオン状態でかつ変速機がニュートラル状態である場合に、これを操作してエンジンを始動するものである。
【0056】
他方、左側の操向ハンドル58には、ハンドルグリップ71の車体中央側に隣接して、各種電装品の操作スイッチを備えるハンドルスイッチ64が取り付けられている。左側のハンドルスイッチ64には、ヘッドライト(前照灯)の光軸切換スイッチ65、ホーンスイッチ70、ウインカスイッチ69、ハザードランプスイッチ66、自動変速機の変速操作を行うシフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68が設けられている。
【0057】
図5は、右側のハンドルスイッチ80の正面図である。また、図6は、同上面図である。ハンドルスイッチ80は、樹脂等で形成された箱状のスイッチケース80aに、各種電装品を操作する複数のスイッチを取り付けた構成とされる。スイッチケース80aは、乗員側の後側ケース半体87と車体前方側の前側ケース半体88とからなる。
【0058】
スイッチケース80aの車体前方側に取り付けられた走行モード切換スイッチ83は、1回操作する毎に、ドライブモード(AT)とマニュアル変速モード(MT)との切り換えが行われる。また、ハンドルバー58aの軸線Cに対して、車体上下方向でほぼ同じ高さに配設されるN/D切り換えスイッチ85は、揺動軸89を中心に揺動するシーソー押圧式とされており、自動二輪車1の停車時に、親指でD側またはN側を押すことで、自動変速機のニュートラル(N)状態と1速(D)との間の切り換えを行うことができる。N/D切り換えスイッチ85の上下には、親指の方向を案内して正確な操作を可能とする仕切板92が設けられている。また、N/D切り換えスイッチ85の揺動軸90は、その中心線90aが車体上下方向に指向するように配設されている。
【0059】
ハンドルスイッチ80の最下位に配設される押圧式のスタータスイッチ86は、揺動軸90を中心に揺動する揺動押圧式とされ、揺動軸90は、その中心線90aが車体上下方向に指向するように配設されている。スイッチケース80aの下面部には、スイッチケース80aの内部に侵入した水分を車体後方側に向けて排出するための3つの水抜き孔91が形成されている。
【0060】
図7は、自動二輪車1に適用される自動変速機としての自動マニュアル変速機(以下、AMT)119およびその周辺装置のシステム構成図である。また、図8は、AMT119における各軸および変速ギヤの噛合関係を示す配置関係図である。AMT119は、主軸(メインシャフト)上に配設された2つのクラッチによってエンジンEの回転動力を断接するツインクラッチ式変速装置である。エンジンEに連結されるAMT119は、クラッチ用油圧装置99および変速制御装置としてのAMT制御ユニット128によって駆動制御される。エンジンEは、スロットル・バイ・ワイヤ形式のスロットルボディ102を有し、スロットルボディ102には、スロットルバルブ開閉用のモータ101が備えられている。スロットルボディ102の近傍には、燃料噴射装置のインジェクタ100が気筒毎に設けられている。
【0061】
AMT119は、前進6段の変速機TM、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、シフトドラム114、シフトドラム114を回動させるシフト制御モータ6を備えている。変速機TMを構成する多数のギヤは、主軸106およびカウンタ軸(カウンタシャフト)109にそれぞれ結合または遊嵌されている。主軸106は、内主軸107と外主軸108とからなり、内主軸107は第1クラッチCL1と結合され、外主軸108は第2クラッチCL2と結合されている。主軸106およびカウンタ軸109には、それぞれ主軸6およびカウンタ軸109の軸方向に変位自在な変速ギヤが設けられており、これら変速ギヤおよびシフトドラム114に形成されたガイド溝(不図示)に、それぞれシフトフォーク115の端部が係合されている。
【0062】
エンジンEの出力軸、すなわちクランク軸104には、プライマリ駆動ギヤ105が結合されており、このプライマリ駆動ギヤ105はプライマリ従動ギヤ110に噛み合わされている。プライマリ従動ギヤ110は、第1クラッチCL1を介して内主軸107に連結されると共に、第2クラッチCL2を介して外主軸108に連結されている。また、AMT119は、カウンタ軸109上の所定の変速ギヤの回転速度を計測することで、内主軸107および外主軸108の回転速度をそれぞれ検知する内主軸回転速度センサSE3および外主軸回転速度センサSE4を備えている。
【0063】
カウンタ軸109の端部にはリングギヤ111が結合されており、このリングギヤ111に、ドライブシャフト13の端部に固定されたピニオンギヤ112が噛合している。ドライブシャフト13は、駆動輪としての後輪WRに回転動力を伝達する。
【0064】
AMT119には、プライマリ従動ギヤ110の外周に対向配置されたエンジン回転数センサSE1と、シフトドラム114の回転位置に基づいて現在のギヤ段位を検出するギヤポジションセンサSE7と、シフト制御モータ6の回動量を検知するために減速ギヤのスピンドル118の回動位置を検知するスピンドルセンサSE5と、シフトドラム114がニュートラル位置にあることを検知するニュートラルスイッチSE6とが設けられている。シフト制御モータ6の回転動力は、スピンドル118を介して、シフトドラムギヤ117を回動させる変速ロッド116に伝達される。
【0065】
スロットルボディ102には、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサSE2が設けられている。また、AMT制御ユニット128には、操向ハンドル等に配設されるスロットル機構103の操作量を検知するスロットルグリップ開度センサSE11、サイドスタンド8の格納状態を検知するサイドスタンドスイッチSE12からの情報が入力される。AMT制御ユニット128は、エンジン回転数や車速等のほか、各種センサ情報に基づく車両情報をメータ装置59に表示することができる。なお、メータ装置59には、駐車時に使用するパーキングブレーキの作動状態を検知するパーキングブレーキスイッチSE15からの情報も入力される。
【0066】
クラッチ用油圧装置99は、エンジンEの潤滑油とクラッチCLを駆動する作動油とを兼用する構成とされている。クラッチ用油圧装置99は、オイルタンク127と、このオイルタンク127内のオイル(作動油)を第1クラッチCL1および第2クラッチCL2に給送するための管路121とを備えている。
【0067】
オイルタンク127内には、油温センサSE13が設けられている。管路121上には、ライン油圧センサSE14、オイルフィルタ122、油圧供給源としての油圧ポンプ123および電動アクチュエータとしてのバルブ(電子制御弁)120が設けられており、管路121に連結される戻り管路125上には、バルブ120に供給する油圧を一定値に保つためのレギュレータ124が配置されている。バルブ120は、第1クラッチCL1および第2クラッチCL2に個別に油圧を供給することが可能に構成されている。また、バルブ120a,120bにもそれぞれオイルの戻り管路126が設けられている。
【0068】
第1バルブ120aと第1クラッチCL1とを連結している管路には、第1クラッチCL1に生じる油圧を計測する第1クラッチ油圧センサSE8が設けられている。同様に、第2バルブ120bと第2クラッチCL2とを連結している管路には、第2クラッチCL2に生じる油圧を計測する第2クラッチ油圧センサSE9が設けられている。
【0069】
AMT制御ユニット128には、自動変速を行うドライブモード(ATモード)とマニュアル変速モード(MTモード)との切り換えを行う走行モード切換スイッチ83と、シフトアップ(UP)またはシフトダウン(DN)を指示するシフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68からなる手動変速スイッチ97と、ニュートラル(N)とドライブ(D)との切り換えを行うN/D切換スイッチ85と、シフトペダル7および該シフトペダル7の回動操作を検知するポテンショメータ44を含む足動変速制御手段95が接続されている。AMT制御ユニット128は、中央演算処理装置(CPU)を備え、上記した各センサやスイッチの出力信号に応じてバルブ120およびシフト制御モータ6を制御し、AMT119のギヤ段位を自動的または半自動的に切り換える。
【0070】
AMT制御ユニット128は、ドライブモードの選択時には、車速、エンジン回転数、スロットル開度等の情報に応じて変速段位を自動的に切り換え、一方、マニュアル変速モードの選択時には、手動変速スイッチ97またはシフトペダル7の操作に伴って、変速機TMをシフトアップまたはシフトダウンする。なお、マニュアル変速モード選択時でも、エンジンの過回転やストールを防止するための補助的な自動変速制御を実行することが可能である。
【0071】
クラッチ用油圧装置99においては、油圧ポンプ123によってバルブ120に油圧がかけられており、この油圧が上限値を超えないようにレギュレータ23で制御されている。AMT制御ユニット128からの指示でバルブ120aまたは120bが開かれると、第1クラッチCL1または第2クラッチCL2に油圧が印加されて、プライマリ従動ギヤ110が第1クラッチCL1または第2クラッチCL2を介して内主軸107または外主軸108に連結される。一方、バルブ120が閉じられて油圧の印加が停止されると、第1クラッチCL1および第2クラッチCL2は、リターンスプリング(不図示)の付勢力によって、内主軸107および外主軸108との連結を断つ方向へ駆動される。
【0072】
管路121と両クラッチCL1,CL2とを連結する管路を開閉することでクラッチを駆動するバルブ120は、AMT制御ユニット128が駆動信号に基づいて、管路の全閉状態から全開状態に至るまでの時間等を任意に変更することができる。
【0073】
シフト制御モータ6は、AMT制御ユニット128からの指示に従ってシフトドラム114を回動させる。シフトドラム114が回動すると、シフトドラム114の外周に形成されたガイド溝の形状に従ってシフトフォーク115がシフトドラム114の軸方向に変位する。これに伴い、カウンタ軸109および主軸106上のギヤの噛み合わせが変わり、変速機TMのシフトアップまたはシフトダウンが実行される。
【0074】
本実施形態に係るAMT119では、第1クラッチCL1と結合される内主軸107が奇数段ギヤ(1,3,5速)を支持し、第2クラッチCL2と結合される外主軸108が偶数段ギヤ(2,4,6速)を支持するように構成されている。したがって、例えば、奇数段ギヤで走行している間は、第1クラッチCL1への油圧供給が継続されて接続状態が保たれている。そして、シフトチェンジが行われる際には、シフトドラム114の回動によってギヤの噛み合わせを予め変更する、すなわち、「予備変速」を実行することにより、両クラッチの接続状態を切り換えるのみで変速動作を完了することができる。
【0075】
図8は、変速ギヤの噛合関係を示す配置関係図である。第1クラッチCL1に接続される内主軸107は、奇数変速段の駆動ギヤM1,M3,M5を支持している。第1速駆動ギヤM1は、内主軸107に一体的に形成されている。また、第3速駆動ギヤM3は、軸方向に摺動可能かつ周方向に回転不能に取り付けられており、第5速駆動ギヤM5は、軸方向に摺動不能かつ周方向に回転可能に取り付けられている。
【0076】
第2クラッチCL2に接続される外主軸108は、偶数変速段の駆動ギヤM2,M4,M6を支持している。第2速駆動ギヤM2は、外主軸108に一体的に形成されている。また、第4速駆動ギヤM4は、軸方向に摺動可能かつ周方向に回転不能に取り付けられており、第6速駆動ギヤM6は、軸方向に摺動不能かつ周方向に回転可能に取り付けられている。
【0077】
一方、カウンタ軸109は、駆動ギヤM1〜M6に噛合する被動ギヤC1〜C6を支持している。第1速から4速の被動ギヤC1〜C4は、軸方向に摺動不能かつ周方向に回転可能に取り付けられており、第5,6速の被動ギヤC5,C6は、軸方向に摺動可能かつ周方向に回転不能に取り付けられている。シフトフォーク115は、上記歯車列のうち、駆動ギヤM3,M4および被動ギヤC5,C6、すなわち、軸方向に摺動可能なギヤをシフトフォーク115(図7参照)で摺動させることにより、各ギヤに形成されたドグクラッチを断接させる。
【0078】
AMT119は、例えば、第1速ギヤの選択時には、クランク軸104からプライマリ従動ギヤ110に伝達されたエンジンの回転動力を、第1クラッチCL1が接続されることで内主軸107に伝達し、第1速駆動ギヤM1から第1速被動側C1を介してカウンタ軸109に伝達している。このとき、第1速用のドグクラッチは、第1速被動ギヤC1と第5速被動ギヤC5との間で噛み合った状態にある。
【0079】
そして、AMT119は、第1速ギヤによって回転動力が伝達されている際に、第2速用のドグクラッチ、すなわち、第6速被動ギヤC6と第2速被動ギヤC2との間のドグクラッチを噛合させて第2速への変速に備える「予備変速」を実行する。このとき、第2クラッチCL2は遮断されているので、第1速ギヤでの走行中に第2速用のドグクラッチが噛合されても、エンジンの回転動力は、第2速駆動ギヤM2を介して外主軸108を空転させるのみである。そして、この予備変速の完了後に、接続側クラッチを第1クラッチCL1から第2クラッチCL2に持ち替えると、回転動力を途切れさせることなく、瞬時に2速ギヤを介して回転動力が出力されることとなる。
【0080】
図9は、AMT制御ユニット128およびその周辺機器の構成を示すブロック図である。前記と同一符号は同一または同等部分を示す。AMT制御ユニット128には、シフトスイッチ電圧検知部130と、変速指令決定部131と、変速制御部132とが含まれる。変速制御部132には、変速マップ133および各種時間を計測するタイマ134が含まれる。
【0081】
シフトスイッチ電圧検知部130は、シフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68の出力信号と、シフトペダルセンサ44の出力信号とを検知する。本実施形態において、シフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68は、オンまたはオフ信号を出力するスイッチで構成されており、一方、シフトペダルセンサ44は、シフトペダル7の回動角度に応じた電圧を出力するポテンショメータで構成されている。
【0082】
変速指令決定部131は、シフトスイッチ電圧検知部130からの情報に基づいて、シフトアップまたはシフトダウンの変速要求が満たされたか否かを判断し、変速制御部132に伝達する。この変速要求には、シフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68、すなわち、手動変速スイッチの出力信号に基づく手動変速要求と、シフトペダルセンサ44、すなわち、足動変速スイッチの出力信号に基づく足動変速要求とが含まれる。変速指令決定部131は、N/D切り換えスイッチ85からの出力信号が入力されており、変速制御部132は、ドライブモードが選択されている場合には予め定められた変速マップ133に基づいて自動変速を実行する。
【0083】
なお、シフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68をポテンショメータで構成した場合には、タイマ134によって両スイッチの操作速度を算出し、この操作速度に応じた変速制御を実行することもできる。
【0084】
前記したように、変速制御部132は、ドライブモードの選択時には、エンジン回転数センサSE1、スロットル開度センサSE2、ギヤポジションセンサSE7等の出力情報に基づいて、3次元マップ等からなる変速マップ133に従って、シフト制御モータ6およびバルブ120(第1バルブ120aおよび第2バルブ120b)を駆動して変速動作を自動的に実行する。ドライブモードにおいて、現在の変速段から隣り合う変速段に変速させる際のクラッチ持ち替え速度は、変速マップ133等によって規定されている。これに対し、マニュアル変速モードの選択時には、エンジンEの過回転やエンスト等が生じない範囲内で、手動変速スイッチおよび足動変速スイッチの変速要求に応じたマニュアル変速が実行可能とされる。
【0085】
図10は、自動二輪車1の車速と受け付け可能な変速操作との関係を示す図である。まず、本実施形態では、車速VRがVR3(例えば、18km/h)を超えた状態のときに、手動変速スイッチ(シフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68)または、足動変速スイッチ(シフトペダルセンサ44)によるマニュアル変速操作を受け付けるように設定されている。次に、車速VR3より小さい第2の車速としての車速VR2(例えば、10km/h)未満のときに、N/D切り換えスイッチの操作よるニュートラル状態からドライブモードへの切り換えを受け付けるように設定されている。そして、車速V2より小さい第1の車速としての車速VR1(例えば、3km/h)未満のときに、N/D切り換えスイッチの操作よるドライブモードからニュートラル状態への切り換えを受け付けるように設定されている。
【0086】
上記したような設定によれば、高車速状態でドライブモードからニュートラル状態へ切り換わってしまうようなことがなく、走行状態に適した変速制御が実行可能となる。また、第1の車速VR1をごく小さい値に設定することで、停車する可能性の高い状態でニュートラル状態への切り換えを実行することが可能となる。また、第2の車速VR2を第1の車速VR1より大きく設定することで、例えば、下り坂での発進時等にニュートラル状態で車速がやや高まってしまった場合でもスムーズにドライブモードに切り換えることが可能となる。
【0087】
そして、本実施形態では、ニュートラル状態からドライブモードへの切り換えを、ハンドルスイッチ80に設けられたN/D切り換えスイッチ85だけでなく、シフトペダル7によっても実行可能とした点に特徴がある。一方、車速VRの大小にかかわらず、ニュートラル状態において、ハンドルスイッチ64に設けられたシフトアップスイッチ67またはシフトダウンスイッチ68を操作しても、ニュートラル状態からドライブモードへの切り換えは実行されないように設定されている。
【0088】
図11は、ニュートラル状態とドライブモードとの関係を示す状態遷移図である。まず、イグニッションスイッチをオンにした場合には、変速機TMはニュートラル状態200にある。なお、本実施形態では、イグニッションスイッチをオフにした際にドライブモード201が選択されていた場合でも、イグニッションスイッチをオフにすることでニュートラル状態200に切り換わるように構成されている。
【0089】
ニュートラル状態200からドライブモード201への切り換えは、条件Aまたは条件Bが満たされることで実行される。条件Aは、シフトペダル7の操作を伴う場合であり、スロットル開度THがTh1(例えば、0.49度)未満で、かつ車速VRが10km/h未満で、かつギヤがニュートラルで、かつN/D切り換えスイッチ85の操作がなしで、かつエンジン回転数NEがNE1(例えば、750rpm)を超えてNE2(例えば、2300rpm)未満の状態で、シフトペダル7がDOWN(シフトダウン)操作されたこととされる。なお、本実施形態では、シフトペダル7をつま先で踏み下げることがシフトダウン操作となる。一方、条件Bは、N/Dスイッチ85の操作による場合であり、スロットル開度THがTh1未満で、かつ車速VRが10km/h未満で、かつエンジン回転数NEがNE1を超えてNE2未満の状態で、N/D切り換えスイッチ85のD側を押したこととされる。
【0090】
一方、ドライブモード201からニュートラル状態200への切り換えは、条件Cまたは条件Dが満たされることで実行される。条件Cは、N/Dスイッチ85の操作を伴う場合であり、スロットル開度THがTh2(Th1<Th2。例えば、0.78度)未満で、かつ車速VRが3km/h未満の状態で、N/D切り換えスイッチ85のN側を押したこととされる。一方、条件Dは、シフトペダル7の操作による場合であり、スロットル開度THがTh2未満で、かつ車速VRが3km/h未満で、かつN/D切り換えスイッチ85の操作がなしで、シフトペダル7がUP(シフトアップ)操作されたこととされる。なお、本実施形態では、シフトペダル7をつま先でかき上げることがシフトアップ操作となる。
【0091】
なお、本実施形態では、スロットル開度THが0.8度以上でクラッチ油圧が発生するように構成されている。したがって、上記した条件Cおよび条件Dでは、クラッチ油圧が発生していないことが条件に含まれることとなる。
【0092】
一方、ドライブモード201に遷移した場合には、走行条件に応じた異なる変速マップを有する標準モード204または高負荷モード205を含む自動Dモード203となる。自動Dモード203では、標準モード204と高負荷モード205との切り換えも自動的に行われる。そして、この自動Dモードにあるときに、N/D切り換えスイッチ85のD側をさらに押すと、エンジンEの高回転領域を積極的に使う変速マップを有するSモード(スポーツモード)202に移行するように設定されている。
【0093】
また、自動Dモード203およびSモード202からなるAT変速208の状態において、走行モード切換スイッチ83を操作すると、一時シフト介入207が可能なMT変速206の状態に遷移する。そして、AT変速208の状態において、手動変速スイッチ(シフトアップスイッチ67およびシフトダウンスイッチ68)または、足動変速スイッチ(シフトペダルセンサ44)を操作した場合には、最初の変速動作と共にMT変速206の状態に移行する。
【0094】
MT変速206からAT変速208への移行は、走行モード切換スイッチ83の操作のほか、停車時等の自動復帰によっても行われる。
【0095】
上記したような設定によれば、ニュートラル状態から手動変速スイッチ97を操作してもドライブモードに切り換わらないのに対して、シフトペダル7を用いた際には、ニュートラル状態からシフトペダル7の操作によってドライブモードに切り換えてそのままシフトペダル7によるマニュアル変速が可能となるため、ハンドルまわりに設けられたN/D切り換えスイッチ85を操作することなく、即座にニュートラル状態からドライブモードおよび足動マニュアル変速に移行することが可能となる。
【0096】
これにより、N/D切り換えスイッチ85および手動変速スイッチ97をハンドルに設ける自動二輪車の変速制御装置において、シフトペダル7による足動変速スイッチをさらに設ける場合であっても、シフトペダル7の操作によってニュートラル状態から走行可能状態に切り替えるという通常の自動二輪車と同様のシフト操作が可能となり、運転者に違和感を与えることなく使い勝手を向上させることが可能となる。
【0097】
図12は、足動変速制御手段95による変速要求確定の条件を示すグラフである。本実施形態では、シフトペダルセンサ44にポテンショメータを用いており、このシフトペダルセンサ44のセンサ出力が予め定められた入力信号パターンP(P1,P2)の範囲内に収まった場合に限り、シフトアップまたはシフトダウンの足動変速要求を確定する。これにより、ノイズ等が足動変速要求の確定処理に与える影響を低減することができる。
【0098】
具体的には、入力信号パターンPは、シフトペダル7が一方向または他方向に回動動作をしている期間に対応する略三角形部分P1と、シフトペダル7がストッパ機構54(図3参照)によってそれ以上回動不能となった状態で所定時間T1が経過するまでの期間に対応する略長方形部分P2とからなる。センサ出力は複数の黒丸で示す。
【0099】
三角形部分P1は、例えば、シフトペダル7の回動が開始された時刻t1から時刻t2までの所定時間T1(例えば、100ms)の間に、センサ出力の変化量が所定値V1(例えば、105mV)以上となるように形成することができる。また、長方形部分P2は、時刻t2から時刻t3までの所定時間T2(例えば、70ms)の間に、センサ出力の変化量が所定値V2(例えば、40mV)以内となるように形成することができる。このようなパターンPを用いることにより、運転者が誤ってシフトペダル7に触れてしまった場合等には、足動変速要求が確定しないように設定することが可能となり、足動変速要求を容易かつ適切に検知することができる。
【0100】
図13は、手動変速スイッチ97の出力信号と手動変速要求との関係を示すグラフである。本実施形態では、時刻t1で手動スイッチ97をオンに切り換えると、所定時間Ta(例えば、15ms)後の時刻t2で手動変速要求が確定するように設定されている。これにより、乗員の意図しない変速動作を防ぎ、乗員の変速意思を確認した上で変速要求を確定することができる。一方、押圧していた手動変速スイッチ97を離す際には、センサ出力がゼロになると速やかに手動変速要求が「なし」に戻る。
【0101】
図14は、足動変速スイッチとしてのシフトペダルセンサ44の出力信号と足動変速要求との関係を示すグラフである。足動変速スイッチ97を操作した場合には、時刻t5でシフトペダル7の操作を開始した後、図12に示した入力信号パターンPとの照合を行って、時刻t6において足動変速要求が確定し、足動変速要求が「あり」となる。シフトペダル7を中立位置に戻す際には、センサ出力が所定値を下回る時刻t7で足動変速要求が「なし」に戻る。
【0102】
図15は、足動変速要求と手動変速要求との関係を示すタイムチャートである。本実施形態では、手動変速要求および足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が共にシフトアップまたはシフトダウンで共通する場合には、その変速要求に従って変速制御を行うように設定されている。したがって、例えば、シフトアップの手動変速要求とシフトアップの足動変速要求が同じタイミングで確定した場合には、運転者の変速意思が確定していると判断して、シフトアップを実行するように構成されている。
【0103】
これに対し、このタイムチャートに示すパターンA,B,C,Dは、いずれも、シフトアップの足動変速要求と相反するシフトダウンの手動変速要求とが、互いに近いタイミングで確立した場合を示している。本実施形態では、先に確定した変速要求に基づいて変速制御を実行すると共に、変速動作を実行した後は、所定時間Tb(例えば、500ms)が経過するまで次の変速要求を受け付けないように構成されている。
【0104】
パターンAでは、時刻t10において、シフトダウンの手動変速要求が確定したことに伴いシフトダウンが実行される。ここで、シフトダウンの手動変速要求が確定した直後に、シフトアップの足動変速要求が確定しているものの、シフトダウンの手動変速要求が確定してから所定時間Tbが経過するまでは次の変速要求は受け付けないので、後に確定した足動変速要求は無視される。
【0105】
次に、パターンBでは、時刻t11において、シフトアップの足動変速要求が確定したことに伴いシフトアップが実行される。シフトアップの手動変速要求が確定した直後に、シフトダウンの手動変速要求が確定しているものの、シフトアップの足動変速要求が確定してから所定時間Tbが経過するまでは次の変速要求は受け付けないので、後に確定した先の手動変速要求は無視される。
【0106】
さらに、パターンCでは、時刻t12において、シフトダウンの手動変速要求が確定したことに伴いシフトダウンが実行される。シフトダウンの手動変速要求が確定した直後に、シフトアップの足動変速要求が確定しているものの、シフトダウンの手動変速要求が確定してから所定時間Tbが経過するまでは次の変速要求は受け付けないので、先の足動変速要求は無視される。
【0107】
そして、パターンDでは、時刻t13において、シフトダウンの手動変速要求とシフトアップの足動変速要求が同時に確定している。本実施形態では、手動変速要求および足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が互いにシフトアップおよびシフトダウンで異なる場合には、確定した両変速要求をキャンセルするように設定されている。したがって、時刻t13では変速が実行されずに、次の変速要求の待機状態となる。
【0108】
上記したような設定によれば、例えば、手動変速でシフトアップをしようとした際に路面の凹凸で車体が揺れて乗員が意図せずに足ペダルに触れてシフトダウン操作を同時にしてしまった場合等に、乗員が意図しないシフトチェンジが実行されることを防ぐことができる。
【0109】
なお、ハンドルスイッチ、手動変速スイッチ(シフトアップスイッチおよびシフトダウンスイッチ)、シフトペダル、シフトペダルセンサの形状や構造、所定車速VR1,2,3等の各種設定数値、ニュートラル状態およびドライブモードの相互切り換え条件等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。本発明に係る変速制御装置は、自動二輪車に限られず、鞍乗型の三/四輪車等の各種車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1…自動二輪車、7…シフトペダル、44…シフトペダルセンサ、67…シフトアップスイッチ、68…シフトダウンスイッチ、80…ハンドルスイッチ、83…走行モード切り換えスイッチ、85…N/D切り換えスイッチ、95…足動変速制御手段、97…手動変速スイッチ、119…AMT(ツインクラッチ式自動変速機)、128…AMT制御ユニット、132…変速制御部、200…ニュートラル状態、201…ドライブモード、202…Sモード、203…自動Dモード、204…標準モード、205…高負荷モード、206…MT変速、208…AT変速、TM…変速機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニュートラル状態および複数の変速段間の切り換えが可能な変速機(TM)と、該変速機(TM)の変速状態を制御する変速制御部(132)とを備え、前記ニュートラル状態と前記複数の変速段間の自動変速を行うドライブモードとの間を切り換えるN/D切り換えスイッチ(85)と、前記ドライブモード中の操作により前記複数の変速段間のマニュアル変速を可能とする手動変速スイッチ(97)とを自動二輪車(1)のハンドルまわりに設けた自動二輪車の変速制御装置において、
足ペダル(7)の操作に応じて、前記ドライブモード中に前記複数の変速段とニュートラル状態への間のマニュアル変速を可能とする足動変速制御手段(95)を具備し、
前記変速制御部(132)は、前記足動変速制御手段(95)による前記ニュートラル状態と前記ドライブモードとの切り換えを実行可能に設定されていることを特徴とする自動二輪車の変速制御装置。
【請求項2】
前記足ペダル(7)は、中立位置から一方側および他方側への回動動作が可能に構成されており、
前記変速制御部(132)は、所定車速以下の場合に、前記足動変速制御手段(95)によるニュートラル状態およびドライブモード間の切り換えを許可することを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項3】
前記変速制御部(132)は、前記所定車速としての第1の車速(VR1)以下の場合に前記ドライブモードからニュートラル状態への切り換えを許可し、前記第1の車速(VR1)より大きい前記所定車速としての第2の車速(VR2)以下の場合に前記ニュートラル状態からドライブモードへの切り換えを許可することを特徴とする請求項2に記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項4】
前記変速制御部(132)は、前記手動変速スイッチ(97)の操作に基づいてシフトアップまたはシフトダウンの手動変速要求が確定したか否かを判断すると共に、前記足動変速制御手段(95)の操作に基づいてシフトアップまたはシフトダウンの足動変速要求が確定したか否かを判断し、前記手動変速要求または足動変速要求のうち先に確定した方の変速要求に基づいて変速制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項5】
前記変速制御部(132)は、前記手動変速要求または前記足動変速要求が確定してから一定時間(Tb)の間は、次の変速要求を受け付けないことを特徴とする請求項4に記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項6】
前記変速制御部(132)は、前記手動変速要求および前記足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が共にシフトアップまたはシフトダウンで共通する場合には、その変速要求に従って変速制御を行うことを特徴とする請求項3または4に記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項7】
前記変速制御部(132)は、前記手動変速要求および前記足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が互いにシフトアップおよびシフトダウンで異なる場合には、前記確定した両変速要求をキャンセルするように設定されていることを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項8】
前記変速制御部(132)は、前記手動変速スイッチ(97)が所定時間(Ta)の間継続して押圧操作されることで前記手動変速要求を確定することを特徴とする請求項3ないし7のいずれかに記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項9】
前記足動変速制御手段(95)には、足ペダル(7)および該足ペダル(7)の回動角度を検知するシフトペダルセンサ(44)が含まれ、
前記変速制御部(132)は、前記シフトペダルセンサ(44)の出力信号が、予め定められた入力信号パターン(P)の範囲に収まることで前記足動変速要求を確定することを特徴とする請求項3ないし8のいずれかに記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項10】
前記予め定められた入力信号パターン(P)は、前記足ペダル(7)が回動動作中の期間に対応する略三角形部分(P1)と、前記足ペダル(7)が回動限界位置に突き当たってから所定時間が経過するまでの期間に対応する略長方形部分(P2)とからなることを特徴とする請求項9に記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項11】
前記手動変速スイッチ(97)は、自動二輪車(1)のハンドルスイッチ(64)に設けられるオンオフ式のシフトアップスイッチ(67)およびシフトダウンスイッチ(68)からなり、
前記足動変速制御手段(95)のシフトペダルセンサ(44)は、前記足ペダル(7)の回動角度を検知するポテンショメータからなることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項1】
ニュートラル状態および複数の変速段間の切り換えが可能な変速機(TM)と、該変速機(TM)の変速状態を制御する変速制御部(132)とを備え、前記ニュートラル状態と前記複数の変速段間の自動変速を行うドライブモードとの間を切り換えるN/D切り換えスイッチ(85)と、前記ドライブモード中の操作により前記複数の変速段間のマニュアル変速を可能とする手動変速スイッチ(97)とを自動二輪車(1)のハンドルまわりに設けた自動二輪車の変速制御装置において、
足ペダル(7)の操作に応じて、前記ドライブモード中に前記複数の変速段とニュートラル状態への間のマニュアル変速を可能とする足動変速制御手段(95)を具備し、
前記変速制御部(132)は、前記足動変速制御手段(95)による前記ニュートラル状態と前記ドライブモードとの切り換えを実行可能に設定されていることを特徴とする自動二輪車の変速制御装置。
【請求項2】
前記足ペダル(7)は、中立位置から一方側および他方側への回動動作が可能に構成されており、
前記変速制御部(132)は、所定車速以下の場合に、前記足動変速制御手段(95)によるニュートラル状態およびドライブモード間の切り換えを許可することを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項3】
前記変速制御部(132)は、前記所定車速としての第1の車速(VR1)以下の場合に前記ドライブモードからニュートラル状態への切り換えを許可し、前記第1の車速(VR1)より大きい前記所定車速としての第2の車速(VR2)以下の場合に前記ニュートラル状態からドライブモードへの切り換えを許可することを特徴とする請求項2に記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項4】
前記変速制御部(132)は、前記手動変速スイッチ(97)の操作に基づいてシフトアップまたはシフトダウンの手動変速要求が確定したか否かを判断すると共に、前記足動変速制御手段(95)の操作に基づいてシフトアップまたはシフトダウンの足動変速要求が確定したか否かを判断し、前記手動変速要求または足動変速要求のうち先に確定した方の変速要求に基づいて変速制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項5】
前記変速制御部(132)は、前記手動変速要求または前記足動変速要求が確定してから一定時間(Tb)の間は、次の変速要求を受け付けないことを特徴とする請求項4に記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項6】
前記変速制御部(132)は、前記手動変速要求および前記足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が共にシフトアップまたはシフトダウンで共通する場合には、その変速要求に従って変速制御を行うことを特徴とする請求項3または4に記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項7】
前記変速制御部(132)は、前記手動変速要求および前記足動変速要求が同じタイミングで確定し、かつ両変速要求が互いにシフトアップおよびシフトダウンで異なる場合には、前記確定した両変速要求をキャンセルするように設定されていることを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項8】
前記変速制御部(132)は、前記手動変速スイッチ(97)が所定時間(Ta)の間継続して押圧操作されることで前記手動変速要求を確定することを特徴とする請求項3ないし7のいずれかに記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項9】
前記足動変速制御手段(95)には、足ペダル(7)および該足ペダル(7)の回動角度を検知するシフトペダルセンサ(44)が含まれ、
前記変速制御部(132)は、前記シフトペダルセンサ(44)の出力信号が、予め定められた入力信号パターン(P)の範囲に収まることで前記足動変速要求を確定することを特徴とする請求項3ないし8のいずれかに記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項10】
前記予め定められた入力信号パターン(P)は、前記足ペダル(7)が回動動作中の期間に対応する略三角形部分(P1)と、前記足ペダル(7)が回動限界位置に突き当たってから所定時間が経過するまでの期間に対応する略長方形部分(P2)とからなることを特徴とする請求項9に記載の自動二輪車の変速制御装置。
【請求項11】
前記手動変速スイッチ(97)は、自動二輪車(1)のハンドルスイッチ(64)に設けられるオンオフ式のシフトアップスイッチ(67)およびシフトダウンスイッチ(68)からなり、
前記足動変速制御手段(95)のシフトペダルセンサ(44)は、前記足ペダル(7)の回動角度を検知するポテンショメータからなることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の自動二輪車の変速制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−113325(P2013−113325A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257497(P2011−257497)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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