説明

自動二輪車

【課題】液圧ブレーキ装置を備えた自動二輪車において、車輌のコンパクト性を維持しつつ、液圧ユニットを車輌側方から容易に着脱できるようにする。
【解決手段】左右一対のフレーム部材41bを有するメインフレーム41と、該メインフレーム41の下方に配置されたエンジン15を備える。液圧式ブレーキ装置は、ポンプ38を内蔵するABSユニット10を有し、該ABSユニットは、メインフレームとエンジンのクランクケースとの上下方向間に配置されると共に、メインフレームの車幅方向の最外郭線で囲まれる範囲内の車幅方向の一方端部寄りに配置され、メインフレームに、車幅方向に着脱自在に取り付けられている。ブラケット50は、好ましくは、メインブラケット部材とサブブラケット部材との2分割構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動二輪車に関し、特に、左右一対のフレーム部材を有するメインフレームと、該メインフレームの下方に配置されたエンジンと、液圧式ブレーキ装置と、を備えている自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車の液圧式ブレーキ装置は、一般に、操舵用ハンドルに設けられたブレーキレバー及びステップ近傍に設けられたブレーキペダルの各マスターシリンダーと、前後の車輪に設けられた制動部、たとえば液圧式ディスクブレーキ装置とが、ブレーキ配管を介して液圧ユニットに接続されており、前記マスターシリンダーから液圧ユニットに伝達されたブレーキ操作力が、液圧ユニットにて増幅され、液圧式ディスクブレーキ装置のキャリパにー伝達されるようになっている。
【0003】
液圧ユニットの具体例としては、周知のアンチロック制御用のABSユニット(アンチロックブレーキシステムユニット)があり、複数のバルブを有すると共にブレーキ液圧を発生あるいは増大あるいは発生させるための液圧ポンプを内蔵しており、このABSユニットは、一般に、シート下の後部フレーム内に配置されている(特許文献1)。
【0004】
また、従来のABSユニットは、一つのブラケットによりフレームに固定されており、メンテナンス時に取り外す場合には、シートを取り外し、ブラケットの被取付部を固定しているボルト等を外し、上方に取り出すように構成されている。
【0005】
なお、前記の従来技術の他に、バルブ類からなる調圧ユニットと、液圧を発生させる液圧ポンプ類とを、分散して別々の箇所に配置した液圧ブレーキ装置を有する自動二輪車も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−88158号公報
【特許文献2】特開2009−241797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前者の従来例のように、液圧ポンプ及びバルブ類等が一体化されたABSユニットを、エンジン等から離れた車輌後部に配置していると、重量物が分散配置されることになり、マスの集中化の妨げとなる。
【0008】
また、自動二輪車の仕様によっては、リヤショックアブソーバがシート下の空間を大きく占有する場合があり、そのような場合、ABSユニットの配置空間の確保が困難になると共に、着脱作業が困難になる。
【0009】
後者の従来例のように、バルブと液圧ポンプを別々の箇所に分散して配置すると、取付作業に手間がかかると共に、ブレーキ配管が複雑になる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、液圧ブレーキ装置を備えた自動二輪車において、車輌のコンパクト性を維持しつつ、液圧ユニットを車輌側方から容易に着脱できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、左右一対のフレーム部材を有するメインフレームと、該メインフレームの下方に配置されたエンジンと、液圧式ブレーキ装置と、を備えている自動二輪車において、前記液圧式ブレーキ装置は、車輪の制動部への作動液圧を発生あるいは増大するポンプを内蔵する液圧ユニットを有し、前記液圧ユニットは、前記メインフレームと前記エンジンのクランクケースとの上下方向間に配置されると共に、前記メインフレームの車幅方向の最外郭線で囲まれる範囲内の車幅方向の一方端部寄りに配置され、前記メインフレームに、車幅方向に着脱自在に取り付けられていることを特徴としている。
【0012】
前記自動二輪車の発明において、好ましくは、次のような構成を採用する。
(a)前記メインフレームは、前記液圧ユニットを取り付けるための取付部を有しており、前記取付部は、前記メインフレームの最外郭面を除く部分に形成されている。
【0013】
(b)前記液圧ユニットは、ブラケットを介して前記メインフレームに取り付けられており、前記ブラケットは、前記メインフレームに取り付けられたメインブラケット部材と、前記液圧ユニットが取り付けられると共に前記メインブラケット部材に対して着脱自在に取り付けられたサブブラケット部材と、を含んで構成され、前記液圧ユニットは、前記サブブラケット部材と共に前記メインブラケット部材から取り外し可能となっている。
【0014】
(c)前記分割式のブラケットを利用した取付構造において、前記メインブラケット部材は、取付状態の液圧ユニットに対して、車幅方向内方側の位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられる内側被取付部を有し、前記メインブラケット部材及び前記サブブラケット部材の少なくとも一方は、取付状態の前記液圧ユニットに対して、車幅方向外側の位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられる外側被取付部を有している。
【0015】
(d)前記メインブラケット部材及び前記サブブラケット部材の少なくとも一方は、取付状態の前記液圧ユニットに対して、前後方向前側の位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられる前側被取付部を有し、前記メインブラケット部材及び前記サブブラケット部材の少なくとも一方は、取付状態の前記液圧ユニットに対して、前後方向後側の位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられる後側被取付部を有している。
【0016】
(e)また、前記前側被取付部及び前記後側被取付部のいずれか一方と、前記内側被取付部とが、前記メインブラケット部材に形成され、前記前側被取付部及び前記後側被取付部のいずれか他方が、前記サブブラケット部材に形成されている。
【0017】
(f)前記サブブラケット部材を前記メインブラケット部材に着脱可能に結合する結合部は、前記液圧ユニットの下側、前側又は後側に配置されている。
【発明の効果】
【0018】
(1)本発明によると、液圧ポンプを含む液圧ユニットを、エンジンの近傍、具体的にはエンジンの側方に配置することになるので、車輌のマスの集中化ができるのは勿論のこと、エンジンをメインフレームから取り外すことなく、メインフレーム内のABSユニットを、車輌側方から着脱でき、液圧ユニットのメンテナンスが容易である。
【0019】
(2)メインフレームの内側に液圧ユニットを配置しているので、液圧ユニットを外部から保護することができる。
【0020】
(3)構成(a)のように、液圧ユニットの取付部を、前記メインフレームの最外郭面を除く部分に形成していることにより、車輌の美観が向上すると共に、取付部を保護することもできる。また、取付部をメインフレームの最外郭面に設ける場合に比べ、液圧ユニットと取付部との距離を短くでき、それにより支持強度を高めることができる。
【0021】
(4)構成(b)のように、ブラケットを、メインブラケット部材と、これに着脱自在なサブブラケット部材との2分割構造としていることにより、単一のブラケット部材を利用する場合に比べ、サブブラケット部材のみを液圧ユニットと共に取り外せば良く、着脱が容易である。
【0022】
(5)構成(c)のようにメインブラケット部材及びサブブラケット部材を配置し、車幅方向の両側に内側被取付部及び外側被取付部を設けることにより、ブラケットの支持剛性を高めることができ、液圧ユニットを強固に支持することができる。また、メインブラケット部材とサブブラケット部材の結合を解除することで、内側被取付部に手を延ばすことなく、液圧ユニットを取り外すことが可能となるので、着脱作業が容易になる。
【0023】
(6)構成(d)のようにメインブラケット部材及びサブブラケット部材を配置し、車幅方向の両側に前側被取付部及び後側被取付部を設けることにより、ブラケットに支持剛性を高めることができ、液圧ユニットを強固に支持することができる。
【0024】
(7)構成(e)のように、前記前側被取付部及び前記後側被取付部のいずれか一方と、前記内側被取付部とが、前記メインブラケット部材に形成され、前記前側被取付部及び前記後側被取付部のいずれか他方が、前記サブブラケット部材に形成されているので、メインブラケット部材とサブブラケット部材との結合を解除した状態で、サブブラケット部材と共に液圧ユニットを、メインブラケット部材に対して前方あるいは後方にずらすことができ、狭い空間でも、液圧ユニットを容易に着脱できる。
【0025】
(8)構成(f)のように、前記サブブラケット部材を前記メインブラケット部材に着脱可能に結合する結合部が、前記液圧ユニットの下側、前側又は後側に配置されていることにより、メインフレームやエンジンが障害になることが防がれ、容易く結合部まで手を延ばし、着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る自動二輪車のメインフレーム及びABSユニット(液圧ユニット)の平面図である。
【図2】図1のメインフレーム、エンジン及びABSユニットの左半分の平面拡大図である。
【図3】図2の左側面図である。
【図4】図1の自動二輪車の液圧式ブレーキ装置の配管略図である。
【図5】ABSユニット取付用のブラケットの分解斜視図である。
【図6】ABSユニットの取付状態を示す平面拡大図である。
【図7】ブラケットに装着した状態のABSユニットの左側面図である。
【図8】図7の後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1の実施の形態]
(ブレーキ配管構造)
図1乃至図8は、本発明の第1の実施の形態に係る液圧式ブレーキ装置を備えた自動二輪車であり、図4に示すブレーキ配管図により、まず、液圧式ブレーキ装置の概略を説明する。図4において、液圧式ブレーキ装置は、ブレーキ操作部として、操舵用のハンドルに設けられた前輪用ブレーキレバー1と、右側ステップ近傍に設けられたブレーキペダル2とを備え、ブレーキレバー1及びブレーキペダル2にはそれぞれマスターシリンダー3,4が接続されている。車輪制動部として、前輪5に設けられた左右一対の前輪用ディスクブレーキ装置7と、後輪6に設けられた後輪用ディスクブレーキ装置8と、を備え、各ディスクブレーキ装置7,8には、それぞれブレーキディスクを挟圧するためのキャリパー7a、8aが設けられている。そして、ブレーキ液圧を増大あるいは発生し、かつ、ブレーキ液による作動を制御する液圧ユニットとして、該実施の形態では、アンチロック制御用のABSユニット(アンチロックブレーキシステムユニット)10を備えると共に、前輪5及び後輪6の各回転速度を検出する回転速度センサー11,12を備えている。
【0028】
ブレーキレバー1のマスターシリンダー3は、前輪用操作側ブレーキ配管30を介して、ABSユニット10の前輪用入力ポート21に接続され、ブレーキペダル2のマスターシリンダー4は、後輪用操作側ブレーキ配管32を介して、ABSユニット10の後輪用入力ポート23に接続されている。
【0029】
ABSユニット10の前輪用出力ポート22は、前輪用作動側ブレーキ配管31を介して、前輪制動用の左右のキャリパー7aに接続され、ABSユニット10の後輪用出力ポート24は、後輪用作動側ブレーキ配管33を介して、後輪制動用の各キャリパー8aに接続されている。
【0030】
各回転速度センサー11、12は、それぞれリード線35,36を介してABSユニット10の電気信号用接続端子部37に接続されている。
【0031】
(ABSユニット10の配置、構造及び取付)
図1は自動二輪車のメインフレーム41の平面図であり、該メインフレーム41は、ヘッドパイプ部(ヘッドボックス部)42から後方へ「ハ」の状に広がる左右一対のフレーム部材41a、41aを有しており、各フレーム部材41a、41aの後端部は、さらに下方に延びるスイングアームブラケット部41b、41bが一体に形成され、該スイングアームブラケット部41b、41bの上端部は上側クロス部材43により連結され、スイングアームブラケット部41b、41bの下端部は下側クロス部材44により連結されている。
【0032】
上側クロス部材43には、リヤショックアブソーバ(図示せず)の前端部(上端部)を回動自在に支持する支持部45が一体に形成され、下側クロス部材44には、リヤショックアブソーバの後端部(下端部)に連結されるリンク機構(図示せず)を支持するボス部46が一体に形成されている。前記支持部45及びボス部46は、車幅中心線C1よりも右側に偏倚した位置に形成されている。
【0033】
液圧ブレーキ装置用の前記ABSユニット10は、平面視において、両フレーム部材41a、41aと上側クロス部材43の最外郭面で囲まれた領域内に配置されており、該実施の形態では、左側フレーム部材41aの近傍位置であって、上側クロス部材43の前側近傍に位置している。
【0034】
図2はメインフレーム41の左半分の拡大平面図であり、ABSユニット10の上面に前記各入力ポート21,23及び各出力ポート22,24が設けられており、前輪用操作側入力ポート21及び前輪用作動側出力ポート22は、ABSユニット10の上面の右半部に位置し、後輪用操作側入力ポート23及び後輪用作動側出力ポート24は、ABSユニット10の上面の左半部に位置している。また、各入力ポート21,23はABSユニット10の上面の後端部に、各出力ポート22,24はABSユニット10の上面の前端部に位置している。
【0035】
前記各ポート21,22,23,24は、前述のようにABSユニット10の上部に配置されると共に、メインフレーム41よりも内側の領域に配置され、また、各ポート21,22,23,24に接続されるブレーキ配管(図示せず)は、メインフレーム41の最外郭よりも内側を延びている。
【0036】
ABSユニット10は、出力ポート22,24から吐出されるブレーキ液を加圧するための液圧ポンプ38と、各ポートを開閉するための各種バルブ(図示せず)と、電気的なブレーキ制御のためのECU(図示せず)と、前記電気信号用接続端子部37とを、ユニットして一体的に備えている。
【0037】
前記液圧ポンプ38は後方に突出するように設けられ、前記接続端子部37は、ユニット本体部分の左側に配置されると共に、各接続端子が後方に向くように設けられ、後方からリード線の端子が接続できるようになっている。
【0038】
図1に戻り、前輪用操作側入力ポート21に接続された前輪用操作側ブレーキ配管30は、上側クロス部材43に沿ってメインフレーム41内を右方へ横断し、右側フレーム部材41aの上面に沿って前方へ延びてペッドパイプ部42に至り、ヘッドパイプ部42から前述のように(図4参照)ブレーキレバー1のマスターシリンダー3に至っている。前輪用作動側出力ポート22に接続された前輪用作動側ブレーキ配管31は、左側フレーム部材41aの上面に沿って前方へ延びて、ヘッドパイプ部42に至り、ヘッドパイプ部42から前述のように(図4参照)前輪制動用のキャリパー7aに至っている。
【0039】
後輪用操作側入力ポート23に接続された後輪用操作側ブレーキ配管32は、上側クロス部材43に沿ってメインフレーム41内を右方へ横断し、後下方に延びて前述のように(図4参照)ブレーキペダル2のマスターシリンダー4に至っている。後輪用作動側出力ポート24に接続された後輪用作動側ブレーキ配管33は、上側クロス部材43に沿ってメインフレーム41内を右方へ横断し、後下方に延びると共にスイングアーム(図示せず)に沿って更に後方に延び、前述のように(図4参照)後輪制動用のキャリパー8aに至っている。
【0040】
図3は図2の左側面図であり、この図3において、メインフレーム41の下側には、エンジン15が配置されており、該エンジン15は、たとえば並列4気筒エンジンであり、周知のように、前端部のシリンダブロック16、該シリンダブロック16に上面に締結されたシリンダヘッド17、及びシリンダブロック16の下端部から後方に延びるクランクケース18を備えており、クランクケース18はトランスミッションン室を一体に有すると共に、右半部の上面に、上方に突出するバランサ室あるいはブリーザ室18aが設けられている。エンジン15は、シリンダブロック16の前端部及びクランクケース18の後上端部がボルト等により左右のメインフレーム部材41aのエンジン取付部19a、19bに取り付けられ、クランクケース18の後下端部が、スイングアームブラケット部41bのエンジン取付部19cにボルト等により取り付けられている。
【0041】
シリンダヘッド17の上方には、エアクリーナボックス13が配置され、エアクリーナボックス13の後部部の上側からメインフレーム41の後端部に亘り、燃料タンク14が配置されている。
【0042】
前記ABSユニット10は、車輌の左側方から見て、メインフレーム部材41aとクランクケース(左半部分)18との上下方向間の空間に配置され、かつ、シリンダブロック16より後方に配置されており、左側方からABSユニット10の全体が視認可能となっている。なお、実際の自動二輪車では、車輌側面を覆う化粧カバー(図示せず)により部分的に覆われている。
【0043】
図5はABSユニット10を取り付けるためのブラケット50の分解斜視図であり、ブラケット50は、鉄製のメインブラケット部材51と鉄製のサブブラケット部材52とを有しており、メインブラケット部材51には、ABSユニット10の左側面、後面及び上面の一部を覆う樹脂製のユニットカバー53が左側から取り付けられるようになっている。なお、該ユニットカバー53は、図5のみで表しており、他の図面(図1乃至図4及び図6等)においては、図示を省略してある。
【0044】
メインブラケット部材51は、略水平な底壁51aと、該底壁51aの前端から略垂直に立ち上がる前壁51bと、前記底壁51aの右端(車幅方向の内側端)から略垂直に立ち上がる右側壁(内側壁)51cとを一体に有している。前壁51b及び右側壁51cには、軽量化のために肉抜き孔54a、54bが形成されている。
【0045】
前壁51bの左上端部(外側上端部)には、左上方に延びるアーム60が一体に形成され、アーム60の先端部には、第1の被取付孔61aを有する第1の被取付部61が一体に形成されている。この第1の被取付部61は、左右方向と直交する被取付面を有しており、また、第1の被取付孔61aの下側には、ユニットカバー53の前上端部を取り付けるための第1のカバー取付孔64aが形成されている。
【0046】
右側壁51cの上端部には、前後方向の略中間位置に、第2の被取付孔62aを有する第2の被取付部62が上方突出状に形成されており、この第2の被取付部62は、右側壁51cと略直交すると共に後方に傾斜した被取付面を有している。
【0047】
前壁51bの左下端には、前方に延びるカバー取付部65が一体に形成されており、該カバー取付部65には、カバー53の前下端部を取り付けるための第2のカバー取付孔65aが形成されている。
【0048】
底壁51aの後半部には、ABSユニット10の下面及びサブブラケット部材52の底壁52aを固定するために、第1のユニット固定部71が形成されており、この台1のユニット固定部71は、上方に隆起する裁頭円錐台状に形成されると共に第1のユニット固定孔71aが形成されている。底壁51aの前半部には、サブブラケット部材取付孔73が形成されている。前記ユニット固定孔71aと、サブブラケット部材取付孔73は、前後方向に長い長孔となっている。さらに、底壁51aの左後端部には、ユニットカバー53の後端部を取り付けるための第3のカバー取付孔66aが形成されている。
【0049】
サブブラケット部材52の底壁52aの前端部には、サブブラケット部材52をメインブラケット部材51に取り付けるためのナット(被取付部)67が溶着されており、該ナット67は、メインブラケット部材51の底壁51aのサブブラケット部材取付孔73に対応する位置に配置されている。サブブラケット部材52の底壁52aの右後端部には、後上方に延びるアーム68が一体に形成されており、該アーム68の後端部は、第3の被取付孔63aを有する第3の被取付部63となっている。該第3の被取付部63は、左右方向と直交する被取付面を有している。また、サブブラケット部材52の底壁52aには、ABSユニット10をサブブラケット部材52と共にメインブラケット部材51に固定するためのボルト挿通孔69が形成されており、このボルト挿通孔69は、左右方向に長い長孔となっている。さらに、サブブラケット部材52の右前端部には、後上方に延びる第2のユニット固定部72が形成されており、該第2のユニット固定部72には、第2のユニット固定孔72aが形成されている。
【0050】
前記ABSユニット10は、サブブラケット部材52の底壁52a上に載置されており、右側方からサブブラケット部材52の第2のユニット固定孔72aに挿通したボルト75を、ABSユニット10の右側面のめねじ孔に螺着することにより、ABSユニット10の右側面がサブブラケット部材52に固定され、かつ、下方からメインブラケット部材51の底壁51aの第1のユニット固定孔71aに挿通したボルト76を、サブブラケット部材52の底壁52aの挿通孔69を経過させ、ABSユニット10の底面に螺着することにより、サブブラケット部材52と共にメインブラケット部材51の底壁51aに固定(結合)されている。また、サブブラケット部材52の前端部は、メインブラケット部材51の底壁51aの下方からサブブラケット部材取付孔73に挿通したボルト77を、サブブラケット部材52のナット67に螺着することにより、メインブラケット部材51に固定されている。
【0051】
ユニットカバー53は、前上端部の第1のカバー被取付孔85、前下端部の第2のカバー被取付孔86及び後下端部の第3のカバー被取付孔87にそれぞれ挿通したボルト(図示せず)と、該各ボルトに螺着されるナット(図示せず)により、メインブラケット部材51の第1,第2及び第3のカバー取付孔64a,65a,66aの部分に取り付けられている。
【0052】
そして、ABSユニット10を搭載した状態のブラケット50全体は、左前上端部の第1の被取付部61と、右側上端部の第2の被取付部62と、右後端部の第3の被取付部63とが、図6に示す左側フレーム部材41aの第1の取付部81及びスイングアームブラケット部41bの第3の取付部83、並びに上側クロス部材43の第2の取付部82に、それぞれ環状のゴムダンパー81a,82a、83aを介して当接され、ボルト78,79,80により取り付けられている。各ゴムダンパー81a,82a、83aは外周環状溝を有し、各外周環状溝が、ブラケット50の第1,第2及び第3の被取付孔61a,62a,63aの内周淵に嵌着されている。
【0053】
図6において、第1の被取付部81は、左側フレーム部材41aの右側面(内側面)に形成されており、その前後方向の位置は、シリンダヘッド17の後面近傍である。第2の被取付部82は、上側クロス部材43の左端部の前面に形成されている。第3の被取付部83は、左側のスイングアームブラケット部41bの右側面(内側面)に形成されており、その前後方向位置は、上側クロス部材43の後端近傍である。
【0054】
(ABSユニット10の組立及び取付作業)
ABSユニット10の組立は既に説明しているが、再度、図5により簡単に説明する。図5において、ABSユニット10は、サブブラケット部材52の底壁52aに載置され、右側面がボルト75によりサブブラケット部材52に固定される。そして、サブブラケット部材52と共にメインブラケット部材51の底壁51aに載置され、下方から挿入される後方側のボルト76により、ABSユニット10の下面及びサブブラケット部材52の底壁52aが、メインブラケット部材51の底壁51aの第1のユニット固定部71に共締めにより固定される。さらに、下方から挿入される前方側のボルト77により、サブブラケット部材52の前端部のみが、メインブラケット部材51の底壁51aに固定される。また、ユニットカバー53は、左方からメインブラケット部材51に3本のボルト(図示せず)により固定される。
【0055】
両ブラケット部材51,52及びABSユニット10の組立作業において、ブラケット50の3つの被取付部61,62,63のうち、第1及び第2の被取付部61,62がメインブラケット部材51に形成され、残りの第3の被取付部63がサブブラケット部材52に形成されているので、メインブラケット部材51及びサブブラケット部材52の製造寸法に誤差が生じている場合には、前後方向に長い第1のユニット固定孔71a及びサブブラケット部材取付孔73並びに左右方向に長いボルト取付孔69を利用して、3つの被取付部61,62,63の相対的な位置が正確に設定されるように、サブブラケット部材52のメインブラケット部材51に対する取付位置を調節することができる。
【0056】
上記のようにブラケット50に装着されたABSユニット10及びユニットカバー53は、図3に示すように、左側面視で、メインフレーム部材41aとクランクケース18との上下方向間の空間に配置され、かつ、シリンダブロック16より後方に配置される。このとき、メインブラケット部材51の底壁51aの下側には一定の空間が確保されている。なお、実際の車輌では、前述のように、メインフレーム41より下部の側面に着脱自在な化粧カバー(図示せず)が配置されており、この化粧カバーによってABSユニット10は左方から部分的に覆われている。また、図1に示すように、平面視では、左右のフレーム部材41aの最外郭で囲まれた領域内であって、上側クロス部材43の左端部の前側近傍に配置される。
【0057】
そして、図6に示すように、第1、第2及び第3の被取付部61,62,63が、ボルト78,79,80により、左側フレーム部材41aの内側面の第1の取付部81,上側クロス部材43の前面の第2の取付部82、及び左側フレーム部材41aの内側面の第3の取付部83に、それぞれゴムダンパー81a,82a、83aを介して取り付けられる。
【0058】
(ABSユニット10の取外作業)
図6において、メンテナンス等のために、ABSユニット10を車輌から取り外す場合には、ABSユニット10をサブブラケット部材52と共にメインブラケット部材51から取り外し、左側フレーム部材41aとクランクケース18との上下方向間の空間から、左側方に取り出す。
【0059】
具体的に説明すると、まず、図3において、ABSユニット10の上方を覆う燃料タンク14をメインフレーム41から取り外しておき、液圧ユニット10に対して、上方からアクセスして、各ブレーキ配管を着脱する。すなわち、メインフレーム41等との干渉を防いで、容易にブレーキ配管等を取り外すことができる。
【0060】
次いで、図7及び図8において、メインブラケット部材51の底壁51aから挿入してある前後ボルト77,76を、下方に取り外す。次に、図6において、上側クロス部材43の後上方から工具を差し入れ、サブブラケット部材52の第3の被取付部63のボルト80を取り外す。これにより、メインブラケット部材51に対するABSユニット10及びサブブラケット部材52の固定状態は解除される。ただし、サブブラケット部材52とABSユニット10とは、右方からのボルト75により締結された状態が保たれる。
【0061】
上記のように締結状態が保たれているABSユニット10及びサブブラケット部材52を、少し後方に傾斜させ、車輌の左側方に抜き出す。この場合、メインブラケット部材51は、左側壁を有していないので、メインブラケット部材51が邪魔になることなく、左方に抜き出すことができる。
【0062】
[実施の形態による効果]
(1)該実施の形態では、メインブラケット部材51の底壁51aから挿入されている2本のボルト76,77を下方へ取り外し、サブブラケット部材52の後端部に挿入されている1本のボルト77を右方に取り外すことにより、メインブラケット部材51に対してABSユニット10及びサブブラケット部材52を取り出すことができるので、工具を挿入する際に、邪魔になる部材が少なく、取り外し作業が容易である。
【0063】
(2)エンジン15を取り外すことなく、燃料タンク14を外すだけで、ABSユニット10及びサブブラケット部材52を、車輌の左側方に簡単に取り出すことができる。
【0064】
(3)メインブラケット部材51は、底壁51a、前壁51b、右側壁51cから構成されているので、高い剛性が得られ、重量のあるABSユニット10を強固に支持することができ、また、振動によるがたつきを少なくすることもできる。
【0065】
(4)ブレーキ配管接続用の入力ポート21,23及び出力ポート22,24がABSユニット10の上面に設けられているので、ブレーキ配管作業が楽である。
【0066】
(5)メインフレーム41のフレーム部材41a,41aの最外郭で囲まれた領域内にABSユニット10が配置されるので、ABSユニット10を保護できる。
【0067】
[他の実施の形態]
(1)ABSユニットを、入力ポート及び出力ポートが側方に向くようにブラケット50に装着することも可能である。
【0068】
(2)ABSユニット10の配置位置は、前記実施の形態では、平面視で、左右のフレーム部材41a、41aの最外郭で囲まれる領域内の左後端部であるが、通常、自動二輪車では、ブレーキペダル及びブレーキレバーが右側に配置されているので、ABSユニット10を右側に配置して、ブレーキ配管を簡素化することも可能である。ただし、一般的には、クランクケースの右側にはクラッチやジェネレータが配置されていることが多く、この場合は、クラッチやジェネレータの反対側となる左側にABSユニットを配置するのが有利である。
【0069】
(3)メインフレーム41のフレーム部材41a等に形成される第1,第2及び第3の取付部81,82,83の位置は、フレーム部材41aの内側面には限定されず、メインフレーム41の最外郭面を除く他の面、たとえば上面あるいは下面でも可能である。
【0070】
(4)2分割形式のブラケット50において、ブラケット50をメインフレーム41に取り付けるための第1、第2及び第3の被取付部61、62、63の形成位置は、前記第1の実施の形態で説明した形成位置には限定されない。たとえば、サブブラケット部材52をメインブラケット部材51に対して左側方に抜き出すことが可能な構造であれば、サブブラケット部材52の第3の被取付部63を、ブラケット50の下方、上方あるいは前方に配置することも可能である。
【0071】
(5)前記第1に実施の形態では、ABSユニット10及びサブブラケット部材52を、メインブラケット部材51の底壁51aの上面に固定しているが、メインブラケット部材51の前側又は後側に固定することも可能である。すなわち、メインブラケット部材51と、ABSユニット10及びサブブラケット部材52との結合部を、ブラケットの前側又は後側に固定することも可能である。
【0072】
(6)ブラケット50のメインブラケット部材51は、メインフレーム41に対する被取付部を2箇所有以上有していることが好ましい。すなわち、前記第1の実施の形態では、メインブラケット部材51は、メインフレーム41に対する被取付部を2箇所有しているが、3箇所以上有することもできる。
【0073】
(7)ブレーキ用の液圧ユニットとしては、ABSユニットには限定されず、前後輪ブレーキ連動用の液圧ブレーキ装置の液圧ユニット等も適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 前輪用ブレーキレバー
2 後輪用ブレーキペダル
3 ブレーキレバー用マスターシリンダー
4 ブレーキペダル用マスターシリンダー
7 前輪用ディスクブレーキ装置(車輪制動部)
8 後輪用ディスクブレーキ装置(車輪制動部)
15 エンジン
18 クランクケース
21 前輪用入力ポート
22 前輪用出力ポート
23 後輪用入力ポート
24 後輪用出力ポート
30,31,32,33 ブレーキ配管
38 液圧ポンプ
41 メインフレーム
41a、41a 左右のフレーム部材
50 ブラケット
51 メインブラケット部材
52 サブブラケット部材
61 第1の被取付部(前側被取付部又は外側被取付部)
62 第2の被取付部(内側被取付部)
63 第3の被取付部(後側被取付部又は内側被取付部)
71 ユニット固定部71
81,82,83 第1,第2及び第3の取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のフレーム部材を有するメインフレームと、該メインフレームの下方に配置されたエンジンと、液圧式ブレーキ装置と、を備えている自動二輪車において、
前記液圧式ブレーキ装置は、車輪の制動部への作動液圧を発生あるいは増大するポンプを内蔵する液圧ユニットを有し、
前記液圧ユニットは、前記メインフレームと前記エンジンのクランクケースとの上下方向間に配置されると共に、前記メインフレームの車幅方向の最外郭線で囲まれる範囲内の車幅方向の一方端部寄りに配置され、前記メインフレームに、車幅方向に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする、自動二輪車。
【請求項2】
前記メインフレームは、前記液圧ユニットを取り付けるための取付部を有しており、
前記取付部は、前記メインフレームの最外郭面を除く部分に形成されている、請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記液圧ユニットは、ブラケットを介して前記メインフレームに取り付けられており、
前記ブラケットは、前記メインフレームに取り付けられたメインブラケット部材と、前記液圧ユニットが取り付けられると共に前記メインブラケット部材に対して着脱自在に取り付けられたサブブラケット部材と、を含んで構成され、
前記液圧ユニットは、前記サブブラケット部材と共に前記メインブラケット部材から取り外し可能となっている、請求項1又は2記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記メインブラケット部材は、取付状態の液圧ユニットに対して、車幅方向内方側の位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられる内側被取付部を有し、
前記メインブラケット部材及び前記サブブラケット部材の少なくとも一方は、取付状態の前記液圧ユニットに対して、車幅方向外側の位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられる外側被取付部を有している、請求項3記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記メインブラケット部材及び前記サブブラケット部材の少なくとも一方は、取付状態の前記液圧ユニットに対して、前後方向前側の位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられる前側被取付部を有し、
前記メインブラケット部材及び前記サブブラケット部材の少なくとも一方は、取付状態の前記液圧ユニットに対して、前後方向後側の位置に配置されて前記メインフレームに取り付けられる後側被取付部を有している、請求項4記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記前側被取付部及び前記後側被取付部のいずれか一方と、前記内側被取付部とが、前記メインブラケット部材に形成され、
前記前側被取付部及び前記後側被取付部のいずれか他方が、前記サブブラケット部材に形成されている、請求項5記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記サブブラケット部材を前記メインブラケット部材に着脱可能に結合する結合部は、前記液圧ユニットの下側、前側又は後側に配置されている、請求項3乃至6のいずれか一つに記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−16969(P2012−16969A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153902(P2010−153902)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】