説明

自動分析装置及びその方法

【課題】検体量が十分な確保できなくても安定した測定結果を得ることを可能とすること。
【解決手段】採血管3とサンプルカップ4とに対してプローブ14を下降するときの採血管プローブ下死点Ldとサンプルカップ内プローブ下死点Luとをそれぞれ設定し、これら採血管3とサンプルカップ4とに対するプローブ14の下降位置を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば採血管に収容されている血清等をサンプリングして生化学分析を行う自動分析装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、例えば患者から採血した血液等の検体を収容した採血管等を複数保持するサンプルディスクを備える。このサンプルディスクは、例えば円盤状に形成され、円周に沿って採血管等を保持する複数の保持部が形成されている。このサンプルディスクには、採血管とサンプルカップとを混在して保持する。採血管とサンプルカップとは、それぞれ検体を収容する容量が異なる。サンプルカップは、例えば小児や老人から採血した検体又は再検査依頼により初回測定の残した微量の検体を収容する。例えば小児や老人向けの病院では、最小量の検体量での測定が要求される。小児や老人の血液等の少量検体は、例えば真空採血管などにより採取され、前処理が行われる。この前処理後の検体は、採血管からサンプルカップに移される。このサンプルカップは、例えば採血管上に載せられてサンプルディスクに保持される。これら採血管、又はサンプルカップを載せた採血管には、それぞれ検体IDバーコードが貼り付けられている。
【0003】
これら採血管及びサンプルカップには、それぞれ分析に十分必要な検体量が確保されていることが必要である。これら採血管及びサンプルカップに収容する検体量は、それぞれ複数の測定項目毎の各サンプル量及びその測定項目数とデットボリュームとを加味した量により設定される。例えば採血管は数mlであり、サンプルカップは数百mlである。
【0004】
サンプルディスク上に保持されている採血管内やサンプルカップ内に収容されている検体のサンプリングは、プローブをサンプリングアームの移動、すなわちプローブを下降させて採血管内又はサンプルカップ内に挿入する。このプローブの挿入によりプローブは、サンプル液面検知機能により採血管内又はサンプルカップ内の検体の液面を検知する。この液面の検知によりサンプリングアームは、プローブの下降を停止し、検体の吸引を開始する。
【0005】
検体の測定は、測定を依頼した診療科によってそれぞれ異なった複数の測定項目毎に行われる。サンプルカップに収容されている微量の検体に対しても診療科からの依頼によって複数の測定項目毎に分析が行われる。このため、サンプルカップに収容される検体のように検体量が微量であると、測定項目数によってはサンプル量が不足する場合もある。複数の測定項目毎の測定の途中で検体のサンプル量が不足すると、正確な測定結果を取得できなくなる。測定の結果、極端な異常低値となることが想定される。この異常低値が測定された理由がサンプル量の不足として容易に判断することもできる。すなわち、サンプル量の過不足は、分析員等のユーザによって見極められる。測定中にサンプル量が若干不足すると、測定結果は、期待される値よりも数10%程度低い値を示す。このような事例から測定中の検体の残量を確認することでサンプル量の不足を判断することが可能である。しかしながら、測定中の検体の残量の確認を見落とすことも想定される。
【0006】
又、従来装置は、サンプル液面検知機能を利用して採血管内の検体の不足を液不足として検知する機能を有する。この液不足の検知は、検体の液性に依存している。このため、液面検知感度が高い検体に対しては、検体量が不足している場合でも液不足として検知しないことがある。
【0007】
これを改善して安定に液不足の検知を実現する技術がある。この技術は、再検査や検体数の少ない場合を想定し、液不足を検知可能とする位置を例えばSTAT位置等の特定ポジションに限定している。この技術は、採血管から採取して測定した場合との区別をユーザの操作によって行わなければならず不便である。又、この技術は、検体数が多くなると、操作ミスの発生や測定結果を得るまでの時間的な遅れの要因となる。この技術は、検知位置を特定ポジションに限定しているため、例えば小児や老人から採血した微量の検体が多数ある場合などのルーチンの運用には適さない。
【0008】
プローブは、サンプルアームの移動と共に採血管又はサンプルカップ内に挿脱される。従って、サンプルアームが下降する移動量に対して事前に制限を設けることで、検体の残量が例えば数10μlの微量であっても、この検体の不足を安定して検知できる。但し、サンプルアームの上下方向への移動の停止精度が例えば0.1mm以下程度に安定していることが条件となる。このようにサンプルアームの移動量に制限を設ける技術は、主にサンプルカップ内に対してプローブを下降させる限度位置(以下、下死点と称する)を設けることにより行われる。この下死点は、例えば採血管に対しても一律に設定される。
【0009】
サンプルディスクに採血管とサンプルカップとを混在して保持する場合、プローブの下死点をサンプルカップに対して一律に設定すると、サンプルカップに対する下死点は、採血管に収容されている検体の液面よりも高い位置に設定される。このため、採血管内にプローブを挿入しても、このプローブは、サンプルカップに対して設定された下死点で停止し、採血管内の検体の液面まで到達できない。この結果、採血管に収容されている検体をサンプリングできなくなる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、検体量が十分な確保できなくても安定した測定結果を得ることが可能な自動分析装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の局面に係る自動分析装置は、検体を収容する第1の収容管と、第1の収容管に取り付け、取り外し可能で、検体を収容する容量が第1の収容管よりも小さい第2の収容管と、第2の収容管の有無を判定する判定手段と、第1又は第2の収容管内に挿脱し、第1又は前記第2の収容管に収容されている検体をサンプリングするプローブと、プローブと検体との接触を検出する液面検出手段と、液面検出手段の検出結果に基づいてプローブの移動を制御し、かつ判定手段の判定結果に基づいてプローブを挿入する制限位置を変える制御手段とを具備する。
【0012】
本発明の第2の局面に係る自動分析装置は、検体を収容する第1の収容管と、第1の収容管に取り付け、取り外し可能で、検体を収容する容量が第1の収容管よりも小さい第2の収容管と、第2の収容管の有無を判定する判定手段と、第1又は第2の収容管内に挿脱し、第1又は第2の収容管に収容されている検体をサンプリングするプローブと、プローブと検体との接触を検出する液面検出手段と、液面検出手段の検出結果に基づいてプローブの移動を制御し、かつ判定手段の判定結果に基づいて検体量の不足の判定位置を変えることを制御手段とを具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検体量が十分な確保できなくても安定した測定結果を得ることが可能な自動分析装置及びその方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は自動分析装置の主要部分の構成図を示す。この自動分析装置は、例えば人体から採取された血液や尿等の検体1を複数の計測項目別に分析する。同装置は、例えば検体1の生化学分析を行う。同装置には、保持機構としてのサンプルディスク2が設けられている。このサンプルディスク2は、図2に示すような第1の収容管としての採血管3と、図3に示すような第2の収容管としてのサンプルカップ4とが混在して保持する。なお、サンプルカップ4は、採血管3の開口3a上に載せてサンプルディスク2に保持される。これら採血管3とサンプルカップ4とは、それぞれ検体1を収容する容量が異なる。例えば採血管3は数mlであり、サンプルカップ4は数百mlである。
【0015】
サンプルカップ4は、例えば小児や老人から採血した検体1又は再検査のため微量の検体1を収容する。なお、小児や老人の血液等の検体1は、例えば真空採血管などにより採取されて前処理が行われ、採血管3からサンプルカップ4に移される。採血管3は、例えば小児や老人以外の一般の患者から採血した検体1を収容する。これら採血管3とサンプルカップ4を載せた採血管3とには、それぞれ患者を識別する各ID番号を記載した各ラベル5、6が貼り付けられている。
【0016】
サンプルディスク2は、例えば円盤状に形成されている。このサンプルディスク2の円周縁には、同円周縁に沿って複数の架設用孔7が設けられている。これら架設用孔7内には、それぞれ図2及び図3に示すような収容管ホールド部としての各採血管ホールド部8が設けられている。これら採血管ホールド部8は、採血管3又は採血管3の開口上に載せたサンプルカップ4の保持位置を所定の高さ位置に位置決めする。これら採血管ホールド部8は、ホルダ部9上に複数のツメ部10を立設している。ホルダ部9内には、ゴム等の樹脂部材から成る弾性部材11が設けられている。各ツメ部10は、互いに対向する方向すなわち内側に向かって付勢力を有する。
サンプルディスク2は、軸12を中心として例えば図示しないモータの駆動によって矢印A方向にステップ回転する。
【0017】
サンプリング機構13は、例えばサンプリングアーム14と、このサンプリングアーム14の先端部に設けられたプローブ15とにより成る。このサンプリング機構13は、例えばサンプリングアーム14を矢印B方向に回転させると共に、矢印C方向に上下移動させる。これにより、サンプリング機構13は、サンプリングアーム14を回転及び上下動させてプローブ15を採血管3又はサンプルカップ4内の検体1中に浸し、プローブ15により検体1を吸引し、プローブ15を反応管16内に移動して検体1を吐き出す。
【0018】
検知部17は、検体1が採血管3内又はサンプルカップ4内のいずれかに収容されているのかを検知する。この検知部17は、図4に示すように第1の反射型センサ18と第2の反射型センサ19とを有する。第1の反射型センサ18は、サンプルディスク2に保持される採血管3の高さ位置、例えば採血管3の高さ方向の中間部に対応した高さ位置に設けられる。第1の反射型センサ18は、光を投光し、採血管3の表面からの反射光を受光して第1の検出信号を出力する。第2の反射型センサ19は、サンプルディスク2に保持されるサンプルカップ4の高さ位置、例えば採血管3上に載せられているサンプルカップ4の縁部4aに対応した高さ位置に設けられる。この第2の反射型センサ19は、光を投光し、サンプルカップ4の縁部4aの表面からの反射光を受光して第2の検出信号を出力する。
【0019】
制御装置20には、図4に示すように採血管3に対してプローブ15を挿入するときの第1の制限位置としての採血管プローブ下死点Ldが設定され、かつサンプルカップ4に対してプローブ15を挿入するときの第2の制限位置としてのサンプルカップ内プローブ下死点Luが設定されている。なお、採血管プローブ下死点Ldは、採血管3内底面ー数mmに設定される。サンプルカップ内プローブ下死点Luも同様に、サンプルカップ4内底面ー数mmに設定される。
しかるに、制御装置20は、検体1をサンプリングするときの採血管3内に対するプローブ15の下降位置を採血管プローブ下死点Ldに制限し、検体1をサンプリングするときのサンプルカップ4内に対するプローブ15の下降位置をサンプルカップ内プローブ下死点Luに制限する。これら採血管プローブ下死点Ld及びサンプルカップ内プローブ下死点Luは、操作部画面から変更可能である。
【0020】
制御装置20には、図4に示すようにプローブ15を上昇させる限度位置としてサンプリングプローブ上死点Lpが設定されている。これにより、制御装置20は、プローブ15の上昇位置をサンプリングプローブ上死点Lpに制限する。これにより、制御装置20によって移動制御されるプローブ15の採血管3に対する第1の最大移動量は、サンプリングプローブ上死点Lpと採血管プローブ下死点Ldとの間のMとなる。又、制御装置20によって移動制御されるプローブ15のサンプルカップ4に対する第2の最大移動量は、サンプリングプローブ上死点Lpとサンプルカップ内プローブ下死点Luとの間のMとなる。
【0021】
制御装置20は、コンピュータにより成る。具体的に制御装置20は、図1に示す機構ブロックに示すようにサンプリングアーム制御部21を有する。このサンプリングアーム制御部21は、サンプリングアーム駆動部22と、サンプル種別位置検出部23と、サンプル液面検知部24と、サンプリングアーム現下降量算出部25と、エラー判定部26とにそれぞれ指令を発して動作制御する。又、サンプリングアーム制御部21には、サンプリングアーム最大下降量設定部27が接続されている。
【0022】
サンプリングアーム駆動部22は、サンプリング機構13に設けられている回転用のパルスモータを駆動してサンプリングアーム14を矢印B方向に回転させ、かつ上下用のパルスモータを駆動してサンプリングアーム14を矢印C方向に上下移動させる。
【0023】
サンプル種別位置検出部23は、第1の反射型センサ18から出力される第1の検出信号と第2の反射型センサ19から出力される第2の検出信号とを入力し、これら第1と第2の検出信号とから検体1をサンプルするのが採血管3又はサンプルカップ4のいずれであるかを検出する。例えば、第1の反射型センサ18からの第1の検出信号の入力があり、第2の反射型センサ19からの第2の検出信号の入力が無ければ、サンプル種別位置検出部23は、採血管3から検体1をサンプリングすることを検出する。第1の反射型センサ18からの第1の検出信号の入力があり、第2の反射型センサ19からも第2の検出信号の入力があれば、サンプル種別位置検出部23は、サンプルカップ4から検体1をサンプリングすることを検出する。
【0024】
サンプル液面検知部24は、プローブ15に有するサンプル液面検知機能により採血管3内又はサンプルカップ4内の検体1の液面を検知したときの検知信号を入力し、採血管3内又はサンプルカップ4内の検体1の液面を検知した時点を検出する。
【0025】
サンプリングアーム現下降量算出部25は、サンプリングアーム14の上下方向の移動量を検出する。すなわち、サンプリングアーム駆動部22は、上下用のパルスモータに供給するパルス数に応じた上下方向の移動量だけサンプリングアーム14を上下方向に移動させる。従って、サンプリングアーム現下降量算出部25は、上下用のパルスモータに供給するパルス数をカウントすることによりリアルタイムでサンプリングアーム14の下方向の移動量すなわち下降量Pbを算出する。具体的に下降量Pbの算出は、コンピュータを構成する制御LSIの内部ロジックにより検体1の液面(サンプル液面)を検知してサンプリングアーム14が停止した時点のパルス数による。
【0026】
サンプリングアーム最大下降量設定部27には、図4に示す採血管3に対してプローブ15を挿入するときの採血管プローブ下死点Ldと、サンプルカップ4に対してプローブ15を挿入するときのサンプルカップ内プローブ下死点Luとが予め設定されている。なお、採血管プローブ下死点Ldには、プローブ15の採血管3に対する第1の最大移動量Mが設定されている。サンプルカップ内プローブ下死点Luには、プローブ15のサンプルカップ4に対する第2の最大移動量Mが設定されている。サンプリングアーム最大下降量設定部27には、プローブ15を上昇させる限度位置としてサンプリングプローブ上死点Lpも予め設定されている。
【0027】
エラー判定部26は、サンプリングアーム現下降量算出部25により算出されるサンプリングアーム14の下降量Pbとサンプリングアーム最大下降量設定部27に予め設定されている採血管プローブ下死点Ld又はサンプルカップ内プローブ下死点Luとを比較し、サンプリングアーム14の下降量Pbが採血管プローブ下死点Ld又はサンプルカップ内プローブ下死点Luと一致又は下回った(Pb≦Ld、又はPb≦Lu)か否かを判断する。この比較の結果、サンプリングアーム14の下降量Pbが採血管プローブ下死点Ld又はサンプルカップ内プローブ下死点Luと一致又は下回った場合、エラー判定部26は、検体量の不足と判定し、検体量の不足を警告等により報知し、検体1のサンプリングを停止する。
【0028】
なお、サンプリングアーム制御部21は、サンプル液面検知部24により採血管3内又はサンプルカップ4内の検体1の液面を検知すると、サンプリングアーム駆動部22に対して指令を発して検体1の液面の高さ位置よりも予め設定された一定距離だけプローブ15を下降させた後に停止し、プローブ15を吸引動作させる。
【0029】
次に、上記の如く構成された装置のサンプリング動作について説明する。
サンプルディスク2の各架設用孔7には、採血管3又はサンプルカップ4が混在して保持される。これら採血管3又はサンプルカップ4には、それぞれ患者等の人体から採取した血液等の検体1が収容されている。採血管3をサンプルディスク2に保持する場合、採血管3は、図2に示すように採血管ホールド部8の各ツメ部10の間に挿入される。この場合、採血管3は、弾性部材11上に載置されると共に、各ツメ部10の付勢力により挟持される。これにより、採血管3は、所定の高さ位置に位置決めされる。
【0030】
一方、サンプルカップ4は、図3に示すように採血管3の開口3a上に載せてサンプルディスク2に保持される。サンプルカップ4を載せた採血管3は、図3に示すように採血管ホールド部8の各ツメ部10の間に挿入され、弾性部材11上に載置されると共に、各ツメ部10の付勢力により挟持される。これにより、サンプルカップ4は、所定の高さ位置に位置決めされる。
【0031】
サンプルディスク2は、軸12を中心として例えば図示しないモータの駆動によって矢印A方向にステップ回転する。サンプルディスク2のステップ回転により例えば採血管3がプローブ15の下方に位置決めされると、第1の反射型センサ18は、光を投光し、採血管3の表面からの反射光を受光して第1の検出信号を出力する。これと共に、第2の反射型センサ19は、光を投光するが、サンプルカップ4が存在しないので、第2の検出信号を出力しない。
【0032】
従って、サンプル種別位置検出部23は、第1の反射型センサ18からの第1の検出信号の入力があるが、第2の反射型センサ19からの第2の検出信号の入力が無いので、採血管3から検体1をサンプリングすることを検出する。
【0033】
サンプリングアーム制御部21は、サンプル種別位置検出部23により検出された採血管3から検体1をサンプリングする情報を受け、図4に示すようにサンプリングアーム最大下降量設定部27に設定されている採血管3に対してプローブ15を挿入するときの採血管プローブ下死点Ldをエラー判定部26に設定する。
【0034】
一方、サンプリングアーム駆動部22は、サンプリング機構13に設けられている上下用のパルスモータを駆動してサンプリングアーム14を矢印C方向に下降させる。サンプリングアーム14の下降によりプローブ15が採血管3内に収容されている検体1の液面に到達すると、プローブ15に有するサンプル液面検知機能は、採血管3内の検体1の液面を検知してその検知信号を出力する。
【0035】
サンプル液面検知部24は、プローブ15に有するサンプル液面検知機能から出力された検知信号を入力し、採血管3内の検体1の液面を検知した時点を検出する。
サンプリングアーム制御部21は、サンプル液面検知部24により採血管3内の検体1の液面を検知すると、この液面を検知してからプローブ15を一定距離下降させて停止させる指令をサンプリングアーム駆動部22に発する。これにより、プローブ15は、採血管3内の検体1の液面を検知してから一定距離下降した後に停止する。この場合、サンプリングアーム制御部21は、予め設定された加減速動作(スローアップ、スローダウン)に従って最高速から低速に減速して、即停止可能な速度に制御してからプローブ15の下降を停止する。なお、検体1の液面を検知してからのプローブ15の下降する一定距離は、サンプリングアーム14の機械的な慣性負荷とパルスモータの起動、回転時のトルク特性により決定される。次に、サンプリングアーム制御部21は、プローブ15の下降が停止すると、プローブ15による採血管3内の検体1の吸引動作を開始する。
【0036】
プローブ15による検体1の吸引動作が終了すると、サンプリング機構13は、サンプリングアーム14を回転及び上下動させてプローブ15を反応管16内に移動し、検体1を反応管16内に吐き出す。これにより、採血管3内の検体1に対する第1の測定項目のサンプリングが終了する。
【0037】
これ以降、上記同様に、図5に示すように第2〜第nの測定項目における検体1のサンプリングが行われる。これらサンプリングは、各測定項目毎に、サンプリングアーム14を下降させてプローブ15を採血管3内に収容されている検体1内に浸し、プローブ15を吸引動作させて採血管3内の検体1を予め設定されたサンプル量だけ吸引し、プローブ15を反応管16内に移動し、検体1を反応管16内に吐き出す動作を繰り返す。これら測定項目毎の検体1のサンプリングにより採血管3内の検体1の液面の高さ位置は、図5に示すように低下する。
【0038】
サンプリングアーム14を下方向に移動するとき、サンプリングアーム駆動部22は、下方向の移動量に対応してパルス数のパルス信号を上下用のパルスモータに供給する。サンプリングアーム現下降量算出部25は、上下用のパルスモータに供給するパルス数をカウントすることによりリアルタイムでサンプリングアーム14の下方向の移動量すなわち下降量Pbを算出する。
【0039】
エラー判定部26は、サンプリングアーム現下降量算出部25により算出されるサンプリングアーム14の下降量Pbとサンプリングアーム最大下降量設定部27に予め設定されている採血管プローブ下死点Ldとを比較し、サンプリングアーム14の下降量Pbが採血管プローブ下死点Ldと一致又は下回った(Pb≦Ld)か否かを判断する。具体的にエラー判定部26は、サンプル液面検知部24により採血管3内の検体1の液面を検知し、プローブ15が一定距離下降の後停止するので、このときのサンプリングアーム14の下降量Pbと採血管プローブ下死点Ldとを比較し、サンプリングアーム14の下降量Pbが採血管プローブ下死点Ldと一致又は下回った(Pb≦Ld)か否かを判断する。
【0040】
この比較の結果、サンプリングアーム14の下降量Pbが採血管プローブ下死点Ldと一致又は下回った場合、エラー判定部26は、検体量の不足と判定し、検体量の不足のエラーの警告等を発し、検体1のサンプリングを停止する。又、エラー判定部26は、検体量の不足と判定したときにサンプリングされた検体1の生化学分析の測定結果に対して検体量の不足のエラーコードを付加すると共に、プローブ15内外壁の洗浄を行わせる指令を発する。この後、次の検体1の測定に移る。
【0041】
一方、サンプルディスク2のステップ回転により例えばサンプルカップ4がプローブ15の下方に位置決めされると、第1の反射型センサ18は、光を投光し、採血管3の表面からの反射光を受光して第1の検出信号を出力する。これと共に、第2の反射型センサ19は、光を投光し、サンプルカップ4の縁部4aの表面からの反射光を受光して第2の検出信号を出力する。
【0042】
サンプル種別位置検出部23は、第1の反射型センサ18からの第1の検出信号の入力があり、第2の反射型センサ19からも第2の検出信号の入力があるので、サンプルカップ4から検体1をサンプリングすることを検出する。
【0043】
サンプリングアーム制御部21は、サンプル種別位置検出部23により検出されたサンプルカップ4から検体1をサンプリングする情報を受け、図4に示すようにサンプリングアーム最大下降量設定部27に設定されているサンプルカップ4に対してプローブ15を挿入するときのサンプルカップ内プローブ下死点Luをエラー判定部26に設定する。
【0044】
一方、サンプリングアーム駆動部22は、サンプリング機構13に設けられている上下用のパルスモータを駆動してサンプリングアーム14を矢印C方向に下降させる。サンプリングアーム14の下降によりプローブ15がサンプルカップ4内に収容されている検体1の液面に到達すると、プローブ15に有するサンプル液面検知機能は、サンプルカップ4内の検体1の液面を検知してその検知信号を出力する。
【0045】
サンプル液面検知部24は、プローブ15に有するサンプル液面検知機能から出力された検知信号を入力し、サンプルカップ4内の検体1の液面を検知した時点を検出する。
サンプリングアーム制御部21は、サンプル液面検知部24によりサンプルカップ4内の検体1の液面を検知すると、上記同様に、この液面を検知してからプローブ15を一定距離下降させて停止させる指令をサンプリングアーム駆動部22に発する。これにより、プローブ15は、サンプルカップ4内の検体1の液面を検知してから一定距離下降した後に停止する。この後、プローブ15を吸引動作させる。これにより、プローブ15は、サンプルカップ4内の検体1を予め設定されたサンプル量だけ吸引する。この後、サンプリング機構13は、サンプリングアーム14を回転及び上下動させてプローブ15を反応管16内に移動し、検体1を反応管16内に吐き出す。これにより、サンプルカップ4内の検体1に対する第1の測定項目のサンプリングが終了する。
【0046】
これ以降、上記同様に、第2〜第nの測定項目における検体1のサンプリングが行われる。これらサンプリングによりサンプルカップ4内の検体1の液面の高さ位置は、順次低下する。
サンプリングアーム14を下方向に移動するとき、サンプリングアーム駆動部22は、下方向の移動量に対応してパルス数のパルス信号を上下用のパルスモータに供給する。サンプリングアーム現下降量算出部25は、上下用のパルスモータに供給するパルス数をカウントすることによりリアルタイムでサンプリングアーム14の下方向の移動量すなわち下降量Pbを算出する。
【0047】
エラー判定部26は、サンプリングアーム現下降量算出部25により算出されるサンプリングアーム14の下降量Pbとサンプリングアーム最大下降量設定部27に予め設定されているサンプルカップ内プローブ下死点Luとを比較し、サンプリングアーム14の下降量Pbがサンプルカップ内プローブ下死点Luと一致又は下回った(Pb≦Lu)か否かを判断する。具体的にエラー判定部26は、上記同様に、サンプル液面検知部24によりサンプルカップ4内の検体1の液面を検知したときプローブ15が一定距離下降して停止するので、このときのサンプリングアーム14の下降量Pbとサンプルカップ内プローブ下死点Luとを比較し、サンプリングアーム14の下降量Pbがサンプルカップ内プローブ下死点Luと一致又は下回った(Pb≦Lu)か否かを判断する。
【0048】
この比較の結果、サンプリングアーム14の下降量Pbがサンプルカップ内プローブ下死点Luと一致又は下回った場合、エラー判定部26は、検体量の不足と判定し、検体量の不足のエラーの警告等を発し、検体1のサンプリングを停止する。上記同様に、エラー判定部26は、検体量の不足と判定したときにサンプリングされた検体1の生化学分析の測定結果に対して検体量の不足のエラーコードを付加すると共に、プローブ15内外壁の洗浄を行わせる指令を発する。この後、次の検体1の測定に移る。
【0049】
このように上記一実施の形態によれば、採血管3とサンプルカップ4とに対してプローブ14を下降するときの採血管プローブ下死点Ldとサンプルカップ内プローブ下死点Luとをそれぞれ設定し、これら採血管3とサンプルカップ4とに対するプローブ14の下降位置を制限する。これにより、検体1の量が十分な確保できなくても安定した測定結果を得ることが可能である。すなわち、採血管3とサンプルカップ4とがサンプルディスク2に混在して保持されていても、分析員等のユーザは、サンプルディスク2に微量な検体1を収容するサンプルカップ4の有無を認識しなくても、自動的に微量な検体1に対する測定結果を取得し、この測定結果を迅速に臨床に報告できる。
従って、微量な検体1を収容するサンプルカップ4に対する測定を行う場合、サンプルカップ内プローブ下死点Luに十分なマージン、例えば同サンプルカップ内プローブ下死点Luに製品仕様のダミー検体量の2分の1程度例えば30μlに設定すれば、サンプルカップ内プローブ下死点Lu等のプローブ15の下降限界位置を変更設定するなどの操作を行う必要はない。不注意から検体1の量が不足した状態で測定を行うリスクが回避できる。
【0050】
検体1が不足したとしても、検体量の不足のエラーの警告等を発して、検体1のサンプリングを停止したり、微量な検体1の生化学分析の測定結果に対して検体量の不足による測定可能なエラーコードを付加するので、検体量の不足の測定結果であることを認識できる。これにより、検体1の測定項目によっては、高額な測定用試薬を無駄に使用することが無くなる。測定結果を例えばモニタ画面上に表示して確認する前に、検体1を希釈するなどの対処が可能になる。検体量の不足のエラーが発せられることにより検体1のサンプリングを停止すれば、検体量の不足で不正確な測定結果を取得することもなくなる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、検体1を収容するのは、採血管3やサンプルカップ4に限らず、試験管等の他の容器を用いてもよい。
自動分析装置に限らず、容器内の検体を他の容器に分注する場合に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る自動分析装置の主要部分の一実施の形態を示す構成図。
【図2】同装置に用いる採血管を示す外観図。
【図3】同装置に用いるサンプルカップを示す外観図。
【図4】同装置に用いる採血管及びサンプルカップに対して設定される各下死点を示す図。
【図5】同装置に用いる採血管内における検体の測定項目毎の減少を示す図。
【符号の説明】
【0053】
1:検体、2:サンプルディスク、3:採血管、3a:採血管の開口、4:サンプルカップ、4a:サンプルカップの縁部、5,6:ラベル、7:架設用孔、8:採血管ホールド部、9:ホルダ部、10:ツメ部、11:弾性部材、12:軸、13:サンプリング機構、14:サンプリングアーム、15:プローブ、16:反応管、17:検知部、18:第1の反射型センサ、19:第2の反射型センサ、20:制御装置、21:サンプリングアーム制御部、22:サンプリングアーム駆動部、23:サンプル種別位置検出部、24:サンプル液面検知部、25:サンプリングアーム現下降量算出部、26:エラー判定部、27:サンプリングアーム最大下降量設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を収容する第1の収容管と、
前記第1の収容管に取り付け、取り外し可能で、前記検体を収容する容量が前記第1の収容管よりも小さい第2の収容管と、
前記第2の収容管の有無を判定する判定手段と、
前記第1又は前記第2の収容管内に挿脱し、前記第1又は前記第2の収容管に収容されている前記検体をサンプリングするプローブと、
前記プローブと前記検体との接触を検出する液面検出手段と、
前記液面検出手段の検出結果に基づいて前記プローブの移動を制御し、かつ前記判定手段の判定結果に基づいて前記プローブを挿入する制限位置を変える制御手段と、
を具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
検体を収容する第1の収容管と、
前記第1の収容管に取り付け、取り外し可能で、前記検体を収容する容量が前記第1の収容管よりも小さい第2の収容管と、
前記第2の収容管の有無を判定する判定手段と、
前記第1又は前記第2の収容管内に挿脱し、前記第1又は前記第2の収容管に収容されている前記検体をサンプリングするプローブと、
前記プローブと前記検体との接触を検出する液面検出手段と、
前記液面検出手段の検出結果に基づいて前記プローブの移動を制御し、かつ前記判定手段の判定結果に基づいて前記検体量の不足の判定位置を変える制御手段と、
を具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記判定手段による判定結果に応じて前記第1又は前記第2の制限位置を設定し、前記プローブの挿入位置を前記第1又は前記第2の制限位置に制限する、
ことを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記判定手段による判定結果に応じて前記検体量の不足の判定位置として第1又は第2の制限位置を設定することを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記プローブを前記第1又は前記第2の収容管内に挿入し、前記液面検出手段により前記検体の液面を検出したときの前記プローブの挿入位置が前記第1又は前記第2の制限位置を超えた場合、前記検体量の不足と判定することを特徴とする請求項4記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記検体量の不足と判定した場合、前記検体量の不足を報知し、前記検体のサンプリングを停止することを特徴とする請求項5記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記検体の測定項目数に応じて前記プローブを同一の前記第1又は前記第2の収容管に挿脱して前記検体をサンプリングし、前記プローブの挿入位置を前記第1又は前記第2の制限位置に制限することを特徴とする請求項3記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記判定手段は、少なくとも前記第2の収容管が前記第1の収容管に取り付けられているか否かを検知することを特徴とする請求項1又は2記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記第1の収容管と、前記第1の収容管に取り付けられた前記第2の収容管とを混在して保持する保持機構を有し、
前記保持機構は、前記第1の収容管に取り付けられた前記第2の収容管の保持位置を所定位置に位置決めする収容管ホールド部を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の自動分析装置。
【請求項10】
検体を収容する第1の収容管と、前記第1の収容管に取り付け、取り外し可能で、前記検体を収容する容量が前記第1の収容管よりも小さい第2の収容管とを混在して有し、
前記第1又は前記第2の収容管のいずれか一方にプローブを挿脱させて前記検体をサンプリングする場合、コンピュータ処理によりプローブと検体との接触を検出し、この検出結果に基づいてプローブの移動を制御し、かつ第2の収容管の有無の判定結果に基づいてプローブを挿入する制限位置を変える、
ことを特徴とする自動分析方法。
【請求項11】
検体を収容する第1の収容管と、前記第1の収容管に取り付け、取り外し可能で、前記検体を収容する容量が前記第1の収容管よりも小さい第2の収容管とを混在して有し、
前記第1又は前記第2の収容管のいずれか一方にプローブを挿脱させて前記検体をサンプリングする場合、コンピュータ処理によりプローブと検体との接触を検出し、この検出結果に基づいてプローブの移動を制御し、かつ第2の収容管の有無の判定結果に基づいて検体量の不足の判定位置を変える、
ことを特徴とする自動分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−263838(P2007−263838A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91058(P2006−91058)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】