説明

自動分析装置及び撹拌子

【課題】混合液全体を均一に撹拌することができる自動分析装置及び撹拌子を提供する。
【解決手段】反応容器3内の第1混合液を撹拌するための、圧電素子182,183及びこの圧電素子182,183の振動によって屈曲振動する板状のブレード188を有する第1撹拌子18と、第1撹拌子18を駆動する駆動部27とを備え、駆動部27から供給される所定の周波数の交流電圧により第1撹拌子18の各圧電素子182,183を振動させて、第1混合液に接触する下板188が各圧電素子182,183の振動方向に対してねじれ角θ傾斜したブレード186をR1方向及びR2方向に屈曲振動させて、反応容器3内の第1混合液を撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に含まれる成分を分析する自動分析装置及び撹拌子に係り、特に、ヒトの血液や尿などに含まれる化学成分を分析する自動分析装置及び撹拌子に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目等を対象とし、被検体から採取された被検試料を、この被検試料の検査項目に該当する試薬との混合液の反応によって生ずる色調や濁りの変化を分光光度計や比濁計等の測光部を用いて光学的に測定する。この測定により、被検試料中の様々な検査項目成分の濃度や酵素の活性等で表される分析データを生成する。
【0003】
この自動分析装置では、被検試料及び検査項目に該当する試薬を反応容器に分注し、分注された反応容器内の被検試料及び試薬の混合液を撹拌子で撹拌した後、反応容器内の混合液を測光部で測定する。そして、多数の被検試料及び被検試料毎に設定された多数の検査項目を分析を必要とするため、高速で処理する。
【0004】
ところで、自動分析装置には、上側に開口部を有し、上下方向に長い反応容器が用いられている。この反容器内の混合液を撹拌する方法には、へら状の撹拌子を先端に取り付けた撹拌棒を開口部から反応容器内の混合液に挿入し、挿入した撹拌棒を長手方向の中心軸を回転軸としてモータで回転させて撹拌する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、撹拌子を回転させて撹拌する方法では、撹拌子の周囲の混合液が撹拌され、撹拌子から離れた上部を含む混合液全体を短時間で均一に撹拌できない問題がある。この問題を解決するために、圧電素子を接合した板状の撹拌子を振動させることにより、短時間に混合液を上下方向に流動させて撹拌する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平6−258328号公報
【特許文献2】特許第3135605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の撹拌方法では、特に分析対象の成分の分子量が大きい検査項目の混合液や粘度の高い混合液を上下方向に流動させて撹拌しても、撹拌子の周囲の撹拌が不十分となり、混合液全体を均一に撹拌できない問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、混合液全体を均一に撹拌することができる自動分析装置及び撹拌子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る本発明の自動分析装置は、被検試料と試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、前記反応容器内の混合液を撹拌するための、圧電素子及びこの圧電素子の振動によって屈曲振動する板状のブレードを有する撹拌子と、前記撹拌子を駆動する駆動手段とを備え、前記ブレードの前記混合液に接触する面が前記圧電素子の振動方向に対して傾斜していることを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に係る本発明の撹拌子は、自動分析装置の反応容器内の被検試料と試薬の混合液を撹拌するための、圧電素子及びこの圧電素子の振動によって屈曲振動するブレードを有し、前記ブレードの前記混合液に接触する板状の面が振動方向に対して傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、混合液に接触する面を圧電素子の振動方向に対して傾斜させた板状のブレードを圧電素子の振動によって屈曲振動させることにより、短時間でその混合液全体を均一に撹拌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明による自動分析装置の実施例を、図1乃至図9を参照して説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目の標準試料や被検試料と各検査項目に該当する試薬の混合液を測定して標準データや被検データを生成する分析部24と、分析部24の測定に関る各分析ユニットの制御を行う分析制御部25とを備えている。
【0013】
また、分析部24で生成された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量線の作成や分析データの生成を行うデータ処理部30と、データ処理部30で作成された検量線や生成された分析データを出力する出力部40と、各種コマンド信号等の入力を行う操作部50と、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括して制御するシステム制御部60とを備えている。
【0014】
図2は、分析部24の構成を示した斜視図である。この分析部24は、各検査項目に該当する標準試料や被検試料の各試料を収容した試料容器17を回動可能に保持するディスクサンプラ5と、各試料に含まれる各検査項目成分に反応する成分を含む1試薬系又は2試薬系の第1試薬を収容する試薬容器6と、この試薬容器6を回動可能に保持する試薬ラック1aを有する試薬庫1と、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器7と、この試薬容器7を回動可能に保持する試薬ラック2aを有する試薬庫2と、上側に開口部を有する上下方向に長い反応容器3と、円周上に配置された複数の反応容器3を回転可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
【0015】
また、ディスクサンプラ5に収納された試料容器17内の各試料を吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、各試料の分注終了毎にサンプル分注プローブ16を洗浄する洗浄槽16aと、試料容器17から反応容器3への各試料の分注を行うために、サンプル分注プローブ16を回動及び上下移動可能に保持するサンプル分注アーム10とを備えている。
【0016】
また、試薬庫1に収納された試薬容器6内の第1試薬を吸引して、各試料が分注された反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ14と、第1試薬の分注終了毎に第1試薬分注プローブ14を洗浄する洗浄槽14aと、試薬容器6から反応容器3への第1試薬の分注を行うために、第1試薬分注プローブ14を回動及び上下移動可能に保持する第1試薬分注アーム8とを備えている。
【0017】
また、反応容器3に分注された各試料及び第1試薬からなる第1混合液を一部を屈曲振動させて撹拌する第1撹拌子18と、第1混合液の撹拌終了毎に第1撹拌子18を洗浄する洗浄槽19と、第1撹拌子18を回動及び上下移動可能に保持する第1撹拌アーム20とを備えている。
【0018】
また、試薬庫2に収納された試薬容器7内の第2試薬を吸引して、各試料及び第1試薬が分注された反応容器3内に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ15と、第2試薬の分注終了毎に第2試薬分注プローブ15を洗浄する洗浄槽15aと、試薬容器7から反応容器3への第2試薬の分注を行うために、第2試薬分注プローブ15を回動及び上下移動可能に保持する第2試薬分注アーム9とを備えている。
【0019】
また、反応容器3内に分注された各試料、第1試薬、及び第2試薬からなる第2混合液を一部を屈曲振動させて撹拌する第2撹拌子21と、第2混合液の撹拌終了毎に第2撹拌子21を洗浄する洗浄槽22と、第2撹拌子21を回動及び上下移動可能に保持する第2撹拌アーム23と、反応容器3内の第1混合液や第2混合液を光学的に測定する測光部13と、反応容器3内の測定を終えた第1混合液や第2混合液を吸引した後に、反応容器3内を洗浄する洗浄ユニット12とを備えている。
【0020】
そして、測光部13は、回転移動する反応容器3内の標準試料を含む第1混合液や第2混合液に光を照射し、その混合液内を透過した各検査項目の波長光を検出して電気信号に変換する。そして、その変換した電気信号を処理して吸光度や吸光度変化量で表される標準データを生成し、生成した標準データをデータ処理部30に出力する。
【0021】
また、反応容器3内の被検試料を含む第1混合液や第2混合液に光を照射し、その混合液内を透過した各検査項目の波長光を検出して電気信号に変換する。そして、その変換した電気信号を処理して吸光度や吸光度変化量で表される被検データを生成し、生成した被検データをデータ処理部30に出力する。
【0022】
分析制御部25は、分析部24の第1及び第2撹拌子18,21以外の各分析ユニットを駆動する機構を有する機構部26と、分析部24の第1及び第2撹拌子18,21を撹拌駆動する駆動部27と、機構部26の各機構及び駆動部27を制御する制御部28とを備えている。
【0023】
そして、機構部26は、分析部24のディスクサンプラ5、試薬庫1の試薬ラック1a、及び試薬庫2の試薬ラック2aを夫々回動する機構、反応ディスク4を回転する機構、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、第1撹拌アーム20、及び第2撹拌アーム23を夫々回動及び上下移動する機構、並びに洗浄ユニット12を上下移動する機構等を備えている。
【0024】
図1に示したデータ処理部30は、分析部24の測光部13から出力された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量線の作成や分析データの生成を行う演算部31と、演算部31で作成された検量線や生成された分析データを保存するデータ記憶部32とを備えている。
【0025】
演算部31は、測光部13から出力された標準データと、システム制御部60から供給されるその標準データに対応する標準試料の予め設定された標準値との関係を表す検量線を作成し、作成した検量線をデータ記憶部32に保存すると共に出力部40に出力する。
【0026】
次いで、測光部13から出力された被検データに対応する検査項目の検量線をデータ記憶部32から読み出し、読み出した検量線を用いてその被検データから濃度値や活性値として表される分析データを生成し、生成した分析データをデータ記憶部32に保存すると共に出力部40に出力する。
【0027】
データ記憶部32は、ハードディスク等のメモリデバイスを備え、演算部31から出力された検量線を検査項目毎に保存する。また、演算部31から出力された各検査項目の分析データを被検試料毎に保存する。
【0028】
出力部40は、データ処理部30の演算部31から出力された検量線や分析データを印刷出力する印刷部41及び表示出力する表示部42を備えている。そして、印刷部41は、プリンタなどを備え、演算部31から出力された検量線や分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷する。
【0029】
表示部42は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、演算部31から出力された検量線や分析データを表示する。また、自動分析装置100で検査可能な検査項目の分析パラメータを設定するための分析パラメータ設定画面、検査項目に該当する標準試料及びこの標準試料に値付けされた標準値を設定するための標準試料設定画面、被検試料毎にこの被検体の検査項目を設定するための検査項目設定画面等を表示する。
【0030】
操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、検査項目毎の分析パラメータの設定、標準試料及び標準値の設定、標準試料の測定、被検試料毎の検査項目の設定、被検試料の測定等を行うための入力を行う。
【0031】
システム制御部60は、CPU及び記憶回路を備え、操作部50から入力されたコマンド信号、各検査項目の分析パラメータ、標準試料及びこの標準試料の標準値、被検試料毎に設定された検査項目等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括してシステム全体を制御する。
【0032】
以下、図1乃至図9を参照して、分析部24における第1撹拌子18の構成及び動作を説明する。図3は、第1撹拌子18の構成を示す図である。図4は、第1撹拌子18の一部を下方から見た図である。図5は、第1撹拌子18の変形例を示す図である。図6は、反応容器3内の第1混合液を撹拌する第1撹拌子18を示す図である。
【0033】
また、図7は、図6に示した第1撹拌子18の一部を屈曲させたときの反応容器3、第1混合液、及び第1撹拌子18の一部のA−A線矢視断面図である。図8は、第1撹拌子18の一部を屈曲させたときに第1混合液を流動する三次元方向の水平面に射影される方向を示す図である。図9は、第1撹拌子18の一部を屈曲させたときに第1混合液を流動する三次元方向の鉛直面に射影される方向を示す図である。
【0034】
図3において、第1撹拌子18は、撹拌子本体181と、この撹拌子本体181を矢印L1及びこのL1方向とは反対方向である矢印L2方向に振動させる2つの圧電素子182,183と、この圧電素子182,183による撹拌子本体181の振幅を調整する錘184とにより構成される。
【0035】
撹拌子本体181は、2つの圧電素子182,183のL1方向及びL2方向への振動により微小な振幅で振動するプレート185と、このプレート185の振動により共振してプレート185の振幅よりも大きな振幅でR1及びR2方向に屈曲振動するブレード186とにより構成される。そして、プレート185及びブレード186は一枚の鋼弾性板から形成され、長方形のプレート185の長手方向における上端部が第1撹拌アーム20に保持されている。また、プレート185の下端部の中央部分の延長方向にブレード186が配置されている。
【0036】
ブレード186は、上側のプレート185近傍の部分である平板状の上板187、下側の反応容器3内の第1混合液に接触して撹拌する部分である平板状の下板188、及び上板187と下板188の間に形成されたねじれ189とにより構成される。
【0037】
ねじれ189は、図4に示すように、撹拌子本体181の長手方向における中心軸181aを回転軸としてプレート185及び上板187に対して下板188を、ブレード186の下方から見て時計回りにねじれ角θ(0°<θ<90°)ねじってまわすことにより形成される。従って、下板188は、第1混合液を撹拌するための両面が圧電素子182,183及びプレート185の振動方向であるL1方向及びL2方向に対してねじれ角θ傾斜している。
【0038】
2つの圧電素子182,183は、撹拌子本体181のプレート185の両面に貼り付けられ、バイモルフ形の圧電振動子を構成している。なお、1つの圧電素子をプレート185の片面に貼り付けて、ユニモルフ形の圧電振動子を構成するようにしてもよい。
【0039】
錘184は、ブレード186の上端部近傍のプレート185に固定され、プレート185をブレード186の質量よりも大きくして、ブレード186の振幅を圧電素子182,183の振幅よりも大きくさせるために設けられている。これにより、圧電素子182,183の振幅を小さくして破損を防ぎ、ブレード186の屈曲振動による撹拌を効率よく行うことができる。
【0040】
なお、図5に示すように、プレート185とブレード186を分割し、分割したプレート185aの両面に2つの圧電素子182,183を貼り付け、またプレート185aの下端部にスペーサ190を介して分割したブレード186aの上端部を例えばネジ191で固定することにより構成される第1撹拌子18aを用いて実施するようにしてもよい。この場合、スペーサ190とネジ191が錘184の役割を担うことになる。
【0041】
次に第1撹拌子18を用いて反応容器3内の第1混合液を撹拌する動作を説明する。
図6は、反応容器内の第1混合液を撹拌する第1撹拌子18を示した図である。分析制御部25の機構部26は分析部24の第1撹拌アーム20を駆動して、第1撹拌子18をホームポジションからブレード186の下板188が反応容器3内の第1混合液内に接触して撹拌可能な撹拌位置まで移動する。
【0042】
第1撹拌アーム20が停止した後、駆動部27は、第1撹拌子18を撹拌駆動する。第1撹拌子18の各圧電素子182,183は、駆動部27から供給される所定の周波数の交流電圧により交互に伸縮して振動し、プレート185を矢印L1及びL2方向に振動させる。ブレード186はプレート185の振動により共振してR1方向及びR2方向に屈曲振動し、反応容器3内の第1混合液を三次元方向に流動させて撹拌する。
【0043】
ここで、反応容器3内におけるブレード186をR1方向及びR2方向に屈曲振動したときの第1混合液の流動方向を、図7乃至図9を参照して説明する。
図7(a)は図6に示した第1撹拌子18のブレード186をR1方向に屈曲させたときの反応容器3、第1混合液、及びブレード186のA−A線矢視断面図であり、図7(b)はR2方向に屈曲させたときのA−A線矢視断面図である。また、図8(a)はブレード186をR1方向へ屈曲させたときに第1混合液を流動する三次元方向の水平面に射影される方向を示し、図8(b)はR2方向へ屈曲させたときに第1混合液を流動する三次元方向の水平面に射影される方向を示した図である。
【0044】
反応容器3の図6に示したA−A線矢視断面における内壁面の輪郭は例えば長方形を成し、この長方形の対向する2辺に対応する内壁面に対してプレート185が平行に位置している。水平方向におけるプレート185の面に平行な方向をY軸方向とし、またこのY軸に直交する方向をX軸方向とし、更にX,Y軸に直交する鉛直方向をZ軸方向とすると、水平面においてはX,Y軸に射影される。
【0045】
ブレード186がR1方向へ屈曲したとき、下板188はプレート185に対して矢印R3方向にねじれ角θ傾斜しているため、下板188の一面とこの一面に直交する直線188aの交点188bに作用する撹拌駆動力Lx1は、X軸方向に向いている。この撹拌駆動力Lx1により、交点188bでは直線188aからR3方向にねじれ角θ傾斜した方向に第1混合液を流動させる流動力Lxy1が作用する。この流動力Lxy1は撹拌駆動力Lx1と反対方向及びY軸方向の流動力成分を含んでいるため、流動力Lxy1により流動した第1混合液は反応容器3のX軸に平行な内壁面に衝突して下板188の周囲のR3方向へ流動する。
【0046】
ブレード186がR2方向へ屈曲したとき、下板188の他面とこの他面に直交する直線188aの交点188cに作用する撹拌駆動力Lx2は、撹拌駆動力Lx1とは反対方向に向いている。この撹拌駆動力Lx2により、交点188cでは直線188aからR3方向にねじれ角θ傾斜した方向に第1混合液を流動させる流動力Lxy2が作用する。この流動力Lxy2は撹拌駆動力Lx2と反対方向及び流動力Lxy2のY軸方向とは反対方向の流動力成分を含んでいるため、流動力Lxy2により流動した第1混合液は反応容器3のX軸に平行な内壁面に衝突して下板188の周囲のR3方向へ流動する。
【0047】
このように、ブレード186のR1方向及びR2方向への屈曲振動により、反応容器3内の第1混合液を流動する三次元方向の水平面においてはR3方向に向いているため、ブレード186の周囲の第1混合液の撹拌を強力に行うことができる。
【0048】
図9(a)はブレード186をR1方向へ屈曲させたときに第1混合液を流動する三次元方向の鉛直面に射影される方向を示し、図9(b)はR2方向へ屈曲させたときに第1混合液を流動する三次元方向の鉛直面に射影される方向を示した図である。鉛直面においてはX,Z軸に射影される。
【0049】
ブレード186がR1方向へ屈曲したとき、図8(a)に示した下板188の交点188bに作用する撹拌駆動力Lxz1は、交点188bの接線に対して垂直方向であり、X軸方向から傾斜して斜め上方向に向いている。この撹拌駆動力Lxz1により、交点188bにおける第1混合液を斜め上方向に流動させる。
【0050】
ブレード186がR2方向へ屈曲したとき、図8(b)に示した下板188の交点188cに作用する撹拌駆動力Lxz2は、交点188cの接線に対して垂直方向であり、X軸方向から傾斜して斜め上方向に向いている。この撹拌駆動力Lxz2により、交点188cにおける第1混合液をX軸に対して斜め上方向に流動させる。
【0051】
このように、ブレード186のR1方向及びR2方向への屈曲振動により、反応容器3内の第1混合液を流動する三次元方向の鉛直面においては斜め上方向を向いているため、ブレード186の上下の第1混合液の撹拌を強力に行うことができる。
【0052】
第1混合液の撹拌終了後、第1撹拌アーム20は、第1撹拌子18を反応容器3内の撹拌位置から移動して、洗浄槽19内に供給された洗浄水で第1混合液に接触した下板188の洗浄が可能な洗浄位置で停止する。
【0053】
第1撹拌アーム20が停止した後、駆動部27は、各圧電素子182,183に交流電圧を供給して、ブレード186を屈曲振動させる。この振動によりブレード186の表面に付着した第1混合液が洗い落とされる。第1撹拌子18の洗浄後、第1撹拌アーム20は、第1撹拌子18を洗浄槽19の洗浄位置からホームポションへ移動して、次の反応容器3内の第1混合液の撹拌に備える。
【0054】
なお、第2撹拌子21は第1撹拌子18と同様に構成され、第1撹拌子18と同様に動作して反応容器3内の第2混合液を撹拌するので、その構成及び動作の説明を省略する。
【0055】
以上述べた本発明の実施例によれば、駆動部27から供給される所定の周波数の交流電圧により第1撹拌子18の各圧電素子182,183を振動させて、第1混合液に接触する下板188が各圧電素子182,183の振動方向に対してねじれ角θ傾斜したブレード186をR1方向及びR2方向に屈曲振動させることにより、反応容器3内の第1混合液を三次元方向に流動させることができる。
【0056】
そして、第1混合液を流動する三次元方向の水平面に射影される方向がR3方向に向いているため、ブレード186の周囲の第1混合液の撹拌を強力に行うことができる。また、第1混合液を流動する三次元方向の鉛直面に射影される方向が斜め上方向を向いているため、ブレード186の上下の第1混合液の撹拌を強力に行うことができる。
【0057】
これにより、反応容器3内の第1混合液全体を短時間で均一に撹拌することができるため、各試料に含まれる分子量が大きい検査項目成分を第1試薬中に均一に分散させることができる。また、高粘度の第1混合液に含まれる検査項目成分を第1試薬中に均一に分散させることができる。そして、撹拌不良による分析データの悪化を未然に防ぐことが可能となり、試料を精度よく測定することができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば駆動部27から供給される所定の周波数の交流電圧により第2撹拌子21の各圧電素子を振動させて、第2撹拌子21のブレードをR1方向及びR2方向に屈曲振動させることにより、反応容器3内の第2混合液を三次元方向に流動させることができる。そして、第2撹拌子21のブレードの周囲の第2混合液の撹拌を強力に行うことができる。また、ブレードの上下の第2混合液の撹拌を強力に行うことができる。
【0059】
これにより、反応容器3内の第2混合液全体を短時間で均一に撹拌することができるため、各試料に含まれる分子量が大きい検査項目成分、第1試薬に含まれる各成分、及び第2試薬に含まれる各成分を均一に分散させることができる。また、高粘度の第2混合液中の各試料に含まれる検査項目成分、第1試薬に含まれる各成分、及び第2試薬に含まれる各成分を均一に分散させることができる。そして、撹拌不良による分析データの悪化を未然に防ぐことが可能となり、試料を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示す図。
【図2】本発明の実施例に係る分析部の構成を示す斜視図。
【図3】本発明の実施例に係る第1撹拌子の構成を示す図。
【図4】本発明の実施例に係る第1撹拌子の一部を下方から見た図。
【図5】本発明の実施例に係る第1撹拌子の変形例を示す図。
【図6】本発明の実施例に係る反応容器内の第1混合液を撹拌する第1撹拌子を示す図。
【図7】図6に示した第1撹拌子のブレードを屈曲させたときの反応容器、第1混合液、及びブレードのA−A線矢視断面図。
【図8】本発明の実施例に係るブレードを屈曲させたときに第1混合液を流動する三次元方向の水平面に射影される方向を示す図。
【図9】本発明の実施例に係るブレードを屈曲させたときに第1混合液を流動する三次元方向の鉛直面に射影される方向を示す図。
【符号の説明】
【0061】
18 第1撹拌子
20 第1撹拌アーム
25 分析制御部
26 機構部
27 駆動部
28 制御部
181 撹拌子本体
181a 中心軸
182,183 圧電素子
184 錘
185 プレート
186 ブレード
187 上板
188 下板
189 ねじれ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料と試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記反応容器内の混合液を撹拌するための、圧電素子及びこの圧電素子の振動によって屈曲振動する板状のブレードを有する撹拌子と、
前記撹拌子を駆動する駆動手段とを備え、
前記ブレードの前記混合液に接触する面が前記圧電素子の振動方向に対して傾斜していることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記撹拌子は、前記圧電素子の振動により微小な振幅で前記圧電素子と同じ方向に振動する板状のプレートを有し、
前記ブレードは、前記プレートの下端部に配置され、前記プレートの振動により共振して前記プレーの振幅よりも大きな振幅で屈曲振動することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記ブレードは、上側の前記プレート近傍の部分である平板状の上板、下側の前記反応容器内の混合液に接触して撹拌する部分である平板状の下板、及び前記上板と前記下板の間に形成されたねじれにより構成され、
前記ねじれは、前記ブレードの長手方向における中心軸を回転軸として前記プレート及び前記上板に対して前記下板を所定の角度ねじってまわすことにより形成されていることを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記所定の角度は、0°よりも大きく、90°よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
自動分析装置の反応容器内の被検試料と試薬の混合液を撹拌するための、圧電素子及びこの圧電素子の振動によって屈曲振動するブレードを有し、
前記ブレードの前記混合液に接触する板状の面が振動方向に対して傾斜していることを特徴とする撹拌子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−139484(P2010−139484A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318849(P2008−318849)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】