説明

自動分析装置

【課題】より確実に液面や異物を検知することを可能とする。また、装置に生じている不具合内容の推定を可能とする。さらには、前述で確認した結果をアラーム警告で表示するなど、装置へのフィードバックを実施することで、適切な分注と適切な攪拌をすることを可能とする。
【解決手段】試料と試薬を反応させて反応容器内の化学反応を計測する装置において、反応容器を撮影する手段と、画像を取得し記憶する手段と、取得した画像を解析する手段を備え、測定プロセスの進行中に、あらかじめプログラムされた所定のタイミングに従って鉛直方向または側面の少なくとも一方から反応容器を撮影し、取得した画像を解析することで、試薬が正常に分注されたことを試薬種別に応じて確認する機能を備えた自動分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液,尿等の生体試料中の成分を測定する自動分析装置に係り、特に分析中に異常が発生したか否かを検出する検出機構を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から血液等の生体試料の成分を自動で分析する技術が提供されている。専用の反応容器中で検体と試薬との化学反応を進行させ、一定時間ごとに混合物の吸光度を計測し、吸光度の時間変化から生体試料中に存在する所定物質の濃度を測定する。測定濃度の信頼性を向上させるためには、吸光度のデータの精度を向上させる必要がある。しかしながら、分注や攪拌に関る機構の動作の不具合により、データ不良が生じる。例えば、分注機能の不具合などで試薬に不足が生じた場合、データが正常なデータ(701)に対し全体的に高めに推移する傾向がある(702)。また、攪拌機能の不具合などで飛び散りが存在する場合、データに不連続な差が生じる(703)。さらに、気泡の存在により、突発的な高値(スパイク)が生じることがある(704)。これらの要素は測定結果の正確性または精度に影響を与えることが知られている。
【0003】
上述の問題に対し、特許文献1には、ダストカバーを開けずに分析の動作を確認できる自動分析装置が記載されている。また、特許文献2には、分注動作を適切にモニタリングする手段を具備することで、液体の吸引および吐出の検知を行う技術が記載されている。その他、特許文献3には、分注ノズルの先端に液面センサーを搭載することで一定の深さでのサンプリングを行うことで分注量の精度を維持する方法が、特許文献4,5には、脱気処理を使用することで、気泡の発生それ自体を抑制する方法が、それぞれ記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−227797号公報
【特許文献2】特開2001−174469号公報
【特許文献3】特開2002−162403号公報
【特許文献4】特開昭60−064256号公報
【特許文献5】特開平08−160054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動分析装置で測定できる項目は複数あり、分注する試薬の種類および試薬の量は測定項目ごとに異なる。また、一つの項目についても、第一試薬,第二試薬のように複数の種類を用いるのが通常である。一方で、反応容器には測定項目によって異なるということはなく、すべて同等の容器を用いている。そのため、理想とする液面の位置は、使用されるそれぞれの分析容器ごとおよび分注した試薬の種類ごとに異なってくる。この事情のもとで、正しく分注がなされたことを保障するには、分注ごとに個別に正しく分注されることを確認する必要がある。
【0006】
しかしながら、前述の手段のみでは、分注や攪拌が実際に適切になされたことを反応過程の進行中に確認することはできず、その確認には最終データの出力を待たなければならいことから、多大な時間を要した。
【0007】
この点、分析の過程中に異物の検知する手段として、吸光度計測用の光学系検知方式を用いる方法も考えられる。確かに、光度計を用いて上記の撮影を行うことで、吸光度の計測と同時に、液面位置や異物の検出ができる画像の取得も可能であるとも考えられる。しかし、光度計が計測する視野は反応容器中の混合物が存在する領域の一部に限られており、単独で液面や異物を検出するのには限界があった。
【0008】
そこで、本発明は、光度計とは別の撮影手段として、反応容器の全体を撮影できる手段を備えることで、測定プロセスと同期して、複数の試薬の分注と攪拌が適正になされていることの確認を可能とする。このとき、撮影した画像に微分処理を施して反応容器や液面の位置を強調させ、同時に、あらかじめ適正な分注がされた状態の情報を装置に記憶させておき、実際に取得するデータと前記のデータを比較するという方法を用いることで、より確実に液面や異物を検知することを可能とする。また、液面と異物との相対位置の関係に基づき、異物を飛び散り,気泡,泡、およびその他の不純物、というように種類ごとに分類することで、装置に生じている不具合内容の推定を可能とする。さらには、前述で確認した結果をアラーム警告で表示するなど、装置へのフィードバックを実施することで、適切な分注と適切な攪拌をすることを可能とする。以上のように、本発明は、撮影した画像から得られる情報に基づいて、以降に実施される測定フローを再構成することで、より信頼性の高い分析が実施可能な自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の問題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の自動分析装置は、反応容器を撮影する手段と、画像を取得し記憶する手段と、取得した画像を解析する手段を備え、測定プロセスの過程で、あらかじめプログラムされた所定のタイミングに従って鉛直方向または側面の少なくとも一方から反応容器を撮影し、取得した画像を解析することで、測定プロセスと同期して複数の試薬が正常に分注されたことを確認する機能を備えたことを特徴とする。また、検出した液面と異物の位置関係を特定する機能と、この位置情報に基づき異物を種類ごとに区別する機能と、区別した種類に基づき発生原因を推定する機能と、前記内容を装置にフィードバックする機能、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に関る分析装置によれば、各反応容器で気泡の有無,容器に付着する汚れの有無,飛び散りの有無,分注量,測光タイミングなどが分析と同期してチェックされるため、各測定プロセスがより最適な条件下で行われたことをリアルタイムで保障することができる。そのため安心した運用と精度に関する信頼を格段に高めることができる。また、再測定・再検査の回数を低減することにより、ユーザーにとってのコスト削減に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る自動分析装置の概要図。
【図2】反応容器を撮影する手段を説明する図。
【図3】気泡の発生と成長および検出を説明する図。
【図4a】攪拌不具合の検出を説明する図。
【図4b】分注不具合の検出を説明する図。
【図5】判定処理を表すフローチャート。
【図6】測定のフローを示すブロックダイヤグラム。
【図7a】飛び散りによるデータの不具合を示す図。
【図7b】気泡によるデータの不具合を示す図。
【図7c】試薬不足によるデータの不具合を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、この発明は、本実施形態に限定しない。下記の実施例は、上述の発明における基本となる概念を実現するための代表的な例である。
【0013】
図1は、本実施の形態にかかる自動分析装置(1)の構成を示す模式図(上図面)である。自動分析装置は、主要機能として、生体試料の搬送部(20),分注機構(30),反応機構(40),第一保冷試薬ディスク(50),第二保冷試薬ディスク(60)、を備えている。分注機構(301)により透明な反応容器(401)に検体が分注され、これに試薬分注機構(304,306)により試薬を分注することで検体と試薬の混合物(410)を構成し、次に、一定時間毎に、測定部(405)にて、当容器内に存在する混合物(410)の吸光度を測定することで、検体に含まれる被測定物質の濃度を分析する機能を備える。
【0014】
取得する生体試料を専用の検体容器(203)に注入する。当容器(203)は一定数をもって専用のラック(204)に設置され、自動分析装置(1)に投入される。搬送部(20)ではラック(204)の搬送経路(201a)が確保され、ラック(204)は経路(201)上に敷かれた搬送時の揺れや転倒の防止および位置の差異調整を担うレール(202)に沿って移動する。個々のラック(204)は、あらかじめシステムにプログラムされたタイミングに従い、サンプルディスク(205)の収納部(206)に搬送される。収納されたラック(204)は、あらかじめシステムにプログラムされたタイミングに従い、ディスクの回転動作を利用して分注機構の近くまで移動し、検体試料の分注機構(303)によって反応容器(401)に分注される。搬送する検体容器(203)の試料の分注が終了すると、ラック(204)は排出経路(201b)を通り排出される。
【0015】
反応容器(401)は、反応機構(40)の主な構造である反応ディスク(402)に設置され、その上を回転移動する。移動中に、あらかじめシステムにプログラムされたタイミングに従って試薬の分注機構(305,306)が作動し、試薬ディスク(501,601)に設置された試薬が前記反応容器(401)に分注される。分注機構(30)はそれぞれ回転軸(301),アーム(302),ノズル(303)から構成され、回転動作を介して分注位置が精度良く管理される。また、試薬ディスク(501,601)には、複数の試薬容器の収納部(502,602)が存在し、あらかじめ必要な試薬が配置されている。前述の分注過程で生成した検体と試薬の混合物(410)は、攪拌機構(406)により攪拌され、検体と試薬と化学反応が均一になるとともに化学反応が促進する。なお、場合によっては、試薬自体を攪拌することも必要になるため、各試薬ディスク(50,60)には、それぞれ試薬専用の攪拌機構(503,603)が備えられている。
【0016】
反応容器(401)内の混合物(410)は、一定時間間隔で測光部(405)を通過する。測光部(405)では、照射光源(403b)から照射される光を混合物(410)に当て、透過する光の量を測定する。これを一定の回数繰り返すことで、吸光度の時間変化に関するデータが得られ、化学反応理論に基づいて、生体試料中に含まれる被測定物の濃度を算出する。測定を終えた反応容器(401)は、洗浄機構(407)を通過した際に洗浄される。
【0017】
本自動分析装置では、反応ディス(402)上に、混合物(410)の吸光度を計測する測光部(405)とは別の手段として、照射光源(403a)と、反応容器(401)を撮影する撮影手段(404)からなる撮影機構を備える。撮影手段には、CCD,CMOS,PMTなどのセンサーを用いる。撮影手段(404)は、照射光源(403)とともに反応機構(40)内に位置の精度を良く保った状態で固定されている。
【0018】
図2に前述の撮影機構の詳細を示す。撮影機構では、反応容器(401)の側面(411)を撮影し、内部の検体と試薬の混合物(410)の画像を取得する。照射光源(403b)が反応ディスク(402)を介して撮影手段(404)と反対側にある場合、撮影手段(404)は、照射光源(403b)からの照射光(420)が混合物(410)を透過した光(421)を撮影する。一方、照射光源(403c)が反応ディスク(402)を介して撮影手段(404)と手前側にある場合、撮影手段(404)は、照射光源(403c)からの照射光(422)が混合物(410)に反射した光(423)を撮影する。
【0019】
このような仕組みで撮像し、取得した画像を解析することで、分注ごとにその都度、分注量(液面の位置),異物の存在の有無,異物を検知した場合はその位置の特定を行うことが可能となる。同様の方法を測定の開始時点において用い、反応容器(401)が確かに空であること、または汚れ等の異物が付着していないこと、の確認を行うことも可能である。
【0020】
上述の方法は、撮影手段(404)を反応ディスク(402)の外側から内側または内側から外側に移動させて、反応容器(401)の反対側の側面を撮影する方法でも良い。あるいは、反応ディスク(402)上で、鉛直方向を軸として一転速度で反応容器(401)を回転させて撮影することで、複数の側面から撮影するという方法も、フィブリンのような光学的検出が困難な物質の発見を容易にする方法のひとつとして有効である。
【0021】
また、撮影手段を移動する機能を応用して反応容器を個別に追い、反応容器を定期的に撮影していき、連続した前後の画像の差分を経時的に監視して異物の混在についてリアルタイムに把握するのも有効な方法である。
【0022】
この方法で気泡を検知する例を図3に示す。図3は、時間を追って、反応容器(401)を撮影したものであり、注目する分注動作後、初めて撮像する画像(401d),定期的な間隔を置いて次に撮像した画像(401e)、さらに定期的な時間間隔を置いて撮像した画像(401f)、の順に並んでいる。
【0023】
気泡の主な発生原因は、溶液に対する気体の飽和溶解量の低下である。この現象の多くは、分注後、温度,気圧など溶液を取り巻く環境が変化することにより引き起こされる。そのため、分注が正しくされたとしても分析の途中で気泡生ずることがあり、分析結果に悪い影響を与える。これを回避するにはセルを経時的に監視して発見するのが最も有効な方法である。
【0024】
分注後、時間が経過すると、小さな気泡(801,401e)が発生する。さらに時間が経過すると、気泡は成長する(802,401f)。これらの画像について、前後の画像の差分をとったものが、それぞれ401g,401h、である。前後の画像の差分であるから、変化の無い部分であるセル自体や混合物の部分は、平均的には0となる。もっとも、撮像の厳密な条件としては、照射光量,カメラ自体の輝度揺らぎに違いがあるため、撮像系に特有の揺らぎは介在する。
【0025】
差分した画像について、(i)新たに気泡が生じた部分は正の輝度(803)を持つ領域となる。一方で、(ii)既に生じた気泡が移動した場合、あるいは、(iii)既に生じた気泡が成長した場合は、負の値(804)をもつ領域となる。
【0026】
次に、画像ごとに、全画像の信号平均量からの差のχ二乗根(輝度のゆらぎ)を算出し、時系列グラフ(810)に記録する。横軸は時間(811)、縦軸は輝度ゆらぎ(812)である。気泡が発生しない場合は、輝度ゆらぎは、時間の経過によらず、前述した撮像系に特有の値(813)を保ち続ける(814)。一方で、気泡が発生した場合は、画像の輝度に前述した正負の凹凸ができるため、輝度ゆらぎは大きくなり、右肩上がり(815)の状態となる(816)。ここで、予め、基準値(817)を設定しておき、撮像した画像の輝度揺らぎが当該基準値を超えた場合は、気泡の発生(818)と認識する。
【0027】
他の別方法として、物理量を用いて異物を特定できる方法を記載する。多くの場合、異物は発生原因別に特徴を有している。例として飛び散りの現象を挙げる。液量不足等で攪拌棒が適切に混合液に浸らず液面近くで攪拌が行われた場合、表面の液体が攪拌棒でかき回されることにより大量の液体が飛び散り、分析容器の内側に連続的な液体が生ずる。これに対し、分注した試薬が混合物に跳ね返ることによって飛び散った場合、分析容器の壁には点状の液粒が生じる。このような発生原因ごとの違いを活かし、本発明では、発生原因ごとに異物の特徴を抽出し、異物の特定に利用する。
【0028】
この例を図4に示す。図4aは攪拌動作の不具合による飛び散りを、図4bは分注動作の不具合による飛び散りを表す。
【0029】
両者それぞれ、反応容器(401i)の内側の側面に、飛び散りによる水滴(805,806)が付着する。この水滴の存在する領域は、気泡と異なり、底面から見て液面の上部である(805,806)。この特徴を検出するために、まず、底面からの水滴の位置をグラフに表す(820)。横軸は水滴番号(検出した水滴番号順)(821)、縦軸は位置(822)である。混合物の液面の位置(823)も記載している。水滴の位置は全て水面の上部に存在する(824,825)。このデータから、気泡と異なるものであると判定する。次に、水滴に関して、面積についてのヒストグラム(830)を求める。横軸は面積(831)、縦軸は個数分布(832)を示す。前者、攪拌動作の不具合による場合は、反応容器の側面に付着する水滴の大きさが異なるため、分布は幅広くなる(833)。一方、後者、分注動作の不具合による場合は、水滴の大きさは単一であるから、ヒストグラムは1箇所のみピークを持つプロファイルとなる(834)。以上の方法で、飛び散りの様子から、不具合を生じている機構を推定することができ、アラームなどによる装置へのフィードバックをはかることができる。
【0030】
統計データを用いて特徴を抽出し、異物を特定する別の方法を記載する。まず、異物の生じた複数のサンプルを予め用意し、発生原因別に分類する。次に、発生原因ごとに、異物の面積,形状,個数,個数分布、などの統計量を算出し、当異物の標準パターンとして予め装置に記憶しておく。異物のサンプル数が多くなればなるほど、当該標準パターンはより正確に特徴を表現することが期待できるため、装置の起動時にユーザーの選択に応じて、前回の起動時から取得している異物のサンプル情報を基に自動で標準パターンを更新する機能を持たせる。
【0031】
これに類似する方法としては、確率的ニューラルネットワークを用いて、抽出したパターンを成長させ、当発生原因で生じる異物のサンプルを適切な個数分求める。これと分注直後に取得する実サンプルの画像とのマッチングを行うことで、異物の特定を行う。
【0032】
また、上記の方法のより簡易な形態として、標準液のパターンを参照として記憶し、分注直後の実サンプルでのパターンを比較することで、標準パターンとの違いがあることをもって異物の存在を確認する方法も有効である。
【0033】
図5のフローチャートに、反応容器の画像に基づいて試薬の分注の状態を判定する方法を示す。まず、前述の解析で検知した液面の位置情報から試薬の分注量を算出(S0)する。この分注量が、あらかじめ設定された量より低いときは、試薬不足と判断する(S1)。試薬不足の場合、有効な分析結果を得る保障がないため、当該反応容器を測定プロセスから除外し、同時にアラームで試薬不足であることを表示する(S2)。一方で、試薬の分注量が十分得られていることを確認できた場合、次に、輝度の濃淡の存在を確認する(S3)。濃淡が存在しなければ、異常がないと判断し、反応容器を次のプロセスに進める(S4)。濃淡が存在する場合、先述の基準に基づき、飛び散り,気泡,泡等かそれ以外の不純物などの異物かを判定する(S5)。不純物が存在する場合は、分析結果の信頼性を上げるため、当該反応容器を測定プロセスから除外する(S6)。飛び散り,気泡,泡等の異物が存在する場合は、先に検知した液面と位置関係を求め、その異物が試薬の内部に存在するかを確認する(S7)。異物が試薬の内側に存在する場合、気泡と判断する(S8)。一方で、外部にある場合は、飛び散りと判断する(S9,S10)。また、液面上に存在する場合は、泡と判断する(S11)。これらの判定結果により試薬の分注や攪拌が十分になされているかを確認することができ、不十分の場合はアラーム警告などのフィードバックを行う。その他のフィードバック方法としては、気泡の存在が確認された場合、気泡の位置を避けて吸光度測定できるよう撮影のタイミングを制御するという方法もある。
【0034】
図6に、システムの構成をフローチャートに示す。自動分析装置に搭載した前述の撮影機構は、下記に記載する処理手順を備えることで、より有効な分析システムとして自動分析装置に搭載することができる。
【0035】
生体試料を取得した後、測定が開始(T0)する。始めに、所定の容器に所定のタイミングで、検体(T1)および試薬を分注(T2)し、一定時間経過後、反応容器(401)を撮影し取得する画像を解析し(T4a)、試薬が分注されたことを判定する(T5a、図5)。適切に分注がされたことが確認できた後は、次のプロセスとして、混合物の攪拌(T3)を行う。一定時間経過が経過した後、再度、反応容器(401)を撮影し取得する画像を解析する(T4b)。ここでは、取得する画像の解析から、輝度の濃淡の存在を検出し、異物の存在を判定(T5b、図5)する。正常であることが確認できた場合、通常の手順に進み、吸光度測定(T7)、結果取得(T8)、容器の洗浄(T9)を経て終了(T10)となる。一方で、先の判定(T5a,T5b)結果で異常と判定された場合は、解析結果(T4a,T4b、図5)に基づいて、不具合の原因を推定する(T11)。
【0036】
以後の手順は下記の二つに分かれる。
【0037】
1)不具合が検知された回数があらかじめ設定した所定の回数以内(T12)であれば、再測定を実施する。このとき、前述の画像解析の結果から推定した原因に影響を及ぼすステップから再測定を開始する。例えば、画像解析の結果から、液量が少ないという判定結果が得られた場合は、液体分注または試薬分注のステップ(T1,T2)から再測定を開始する。また、攪拌が不十分であるという結果が得られた場合は、攪拌のステップからプロセスを実行する(T3)。
【0038】
2)不具合が検知された回数があらかじめ設定した所定の回数を超えた場合(T12)、装置は、自己メンテナンス(T13)を実施する。自己メンテナンスは、あらかじめ装置に備えた機能である。前述の画像解析結果から推定した不具合の原因に影響を及ぼす機構の洗浄,稼動確認等のメンテナンスを実施する。例えば、画像解析の結果から、液量減少の不具合を検知した場合、ノズルの圧力を確認し詰まりが無いか確認した後、詰まりがある場合は洗浄またはエアジェットによる解消を試みる。攪拌の異常が見られた場合は、攪拌の回転数等諸機能の確認を行い、必要に応じて正常な状態への回復を試みる。その後、ユーザーの測定継続の意思を確認し、有る場合は、分析を継続し、無い場合は、洗浄過程を経て装置を停止させる。
【0039】
なお、画像解析における計算時間の短縮と計算容量の縮減のため、試薬の特異性を利用してチェックすべきポイントを絞りこみ、上記のフローの全てのポイントではなく必要最小限の内容を選択してチェックする方法も有効である。例えば、標準液,ブランク液,精度管理物質、ごとにそれぞれ生じやすい異物の形態を予め把握し、当該発生原因について集中的に判定を行うことで、より正確な特定も可能となる。
【0040】
さらに別の方法としては、測定項目ごとに反応容器(401)の形状を変え、どの項目に対しても、試薬が適切に分注された場合に同じ高さの液面となるようにしてもよい。このように設定することで、適正量の分注についてより容易に判定することが可能となる。
【0041】
試薬の特性のみならず、分注する試薬の種別ごとにそれぞれ適切なチェック方法を選択できる機能を持たせることも有効である。
【符号の説明】
【0042】
1 自動分析装置
20 生体試料搬送部
30 分注機構
40 反応機構
50 第一保冷試薬ディスク
60 第二保冷試薬ディスク
201 搬送経路
202 レール
203 検体容器
204 サンプルラック
205 サンプルディスク
206 ラック収納部
301 回転軸
302 アーム
303 ノズル
401 反応容器
402 反応ディスク
403 照射光源
404 撮影手段
405 測定部
406 攪拌機構
407 洗浄機構
410 混合物
411 反応容器側面
412 境界(液面)
420 照射光(透過光で撮影するとき)
421 透過光
422 照射光(反射光で撮影するとき)
423 反射光
501 試薬ディスク(第一試薬)
502 試薬容器収納部(第一試薬)
503 試薬攪拌機構(第一試薬)
601 試薬ディスク(第二試薬)
602 試薬容器収納部(第二試薬)
603 試薬攪拌機構(第二試薬)
701 理想の吸光度曲線
702 飛び散りによる段差
703 気泡によるスパイク
704 試薬不足によるシフト
801 気泡の発生
802 気泡の成長
803 正の輝度
804 負の輝度
805 飛び散り(攪拌不具合)
806 飛び散り(分注不具合)
810 時系列グラフ
811 時間
812 輝度ゆらぎ(χ二乗根)
813 撮像系特有値
814 気泡の発生が無い場合
815 右肩あがりを示す矢印
816 気泡が発生した場合
817 気泡の発生を判定する基準値
818 気泡の発生を認識した時刻
820 水滴の位置を表すグラフ
821 水滴番号
822 水滴の位置
823 液面の位置
824 水滴位置のデータ(攪拌不具合)
825 水滴位置のデータ(分注不具合)
830 水滴面積のヒストグラムを示すグラフ
831 水滴の面積
832 水滴の個数分布
833 水滴のヒストグラムのデータ(攪拌不具合)
834 水滴のヒストグラムのデータ(分注不具合)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬を反応させて反応容器内の化学反応を計測する装置において、反応容器を撮影する手段と、画像を取得し記憶する手段と、取得した画像を解析する手段を備え、測定プロセスの進行中に、あらかじめプログラムされた所定のタイミングに従って鉛直方向または側面の少なくとも一方から反応容器を撮影し、取得した画像を解析することで、試薬が正常に分注されたことを試薬種別に応じて確認する機能を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載する自動分析装置であって、撮影に用いる光が、反応容器を通過する透過光または反応容器からの反射光である自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載する自動分析装置であって、試薬の分注後、あらかじめ設定した所定の時間経過後に反応容器を撮影し、取得する画像を解析して、液面の位置および異物の存在の有無を検知する機能を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載する自動分析装置であって、試料の分注の前に反応容器を撮影し、取得する画像を解析することで、反応容器が空の状態であること、および反応容器の汚れの有無を確認する機能を備えた自動分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載する自動分析装置であって、撮像手段を移動する手段を備え、所定のタイミングで定期的に個々の反応容器を多角的に撮影する機能と、前後の画像の差分を経時的に監視できる機能を備え、画像の変化を追うことで、泡,気泡の発生,異物の混入有無の情報をリアルタイムで取得することが可能な自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載する自動分析装置であって、検出した液面と異物の位置関係,異物の面積,形状の対称性,個数、および個数分布,連続性等の物理量を取得する機能と、測定した情報に基づき異物を種類ごとに区別する機能と、区別した種類に基づき発生原因を推定する機能、を備えた自動分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載する方法であって、異物の特徴を抽出して発生原因別に標準パターンを取得する手段と、確率的ニューラルネットワークを利用して前記特徴の範囲内で異物のパターンを成長させる手段を備え、実際に分注されたサンプルにおけるパターンとニューラルネットワークを活用して得られるパターンとを比較して分類し、異物の特定を行うことを特徴とする確認方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、標準パターンを自動で更新する機能を有する自動分析装置。
【請求項9】
請求項1に記載する自動分析装置であって、あらかじめ反応容器の形状と前記容器に標準液が正しく分注されている状態のパターンを参照用のデータとして記憶しておく手段を備え、前記撮影手段で反応容器を撮影した画像と前記記憶した画像データを比較することで、分注で得られた液面の位置および異物の存在を検知する機能を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項1に記載する自動分析装置であって、標準液,ブランク液,精度管理物質,校正用物質、など試薬ごとの特異性を予め記憶しておく媒体を備え、前記情報から分注した試薬に応じて適切なチェックポイントを選択することができる手段を備えた自動分析装置。
【請求項11】
請求項1に記載する自動分析装置であって、取得する画像を記憶する手段と、保存する手段と、取得したデータを通信する手段のうち少なくとも一つ以上を備えた自動分析装置。
【請求項12】
請求項1に記載する自動分析装置であって、異なる形状をもつ反応容器を保持する手段と、分析項目ごとに専用の形状を持つ反応容器を選択する手段を備え、分析項目に応じた反応容器を使用することで、項目ごとに異なる試薬の分注量が正しく分注された場合、液面の位置が分析項目によらず一定の位置とすることができる機能を備えたことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【公開番号】特開2011−153944(P2011−153944A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16150(P2010−16150)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】