説明

自動原稿搬送装置及び画像形成装置

【課題】両面原稿を連続して読み取り、コンパクトで安価な生産性の高いシートスルー方式自動原稿搬送装置及びこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】原稿束P1を載置する原稿トレイ31と、原稿束から原稿を給紙する給紙手段と、原稿を1枚ずつ分離給送する分離手段と、原稿を読取位置22へ搬送する搬送手段25と、原稿を排出する排紙手段26と、原稿載置する排紙トレイ19と、読み取られた原稿を再度読取位置に搬送する反転手段27を備え、給紙手段は最上位側から給紙する上給紙手段34と最下位側から給紙する下給紙手段36を有し、分離手段は上給紙手段で給紙された原稿を分離給送する上分離手段38と下給紙手段で給紙された原稿を分離給送する下分離手段39を有し、片面原稿読取時には上給紙手段及び上分離手段により1枚の原稿を搬送手段に給送し、両面原稿読取時には下給紙手段及び下分離手段により1枚の原稿を搬送手段に給送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に搭載され光学系を原稿よりも短いスリットガラスの下方に停止させたままスリットガラス上を通過する原稿に照射した光の反射光を取り込んで原稿画像を読み取る、いわゆるシートスルー方式の自動原稿搬送装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写装置等の画像形成装置に設けられた画像読取装置おいて複数枚の表裏両面原稿を読み取る際には、一般的に先ず原稿の表面を読取位置で読み取った後に原稿を反転させて同じ読取位置で裏面を読み取るが、このままでは原稿の向きが最初に読み取った向きとは反対であり原稿の順序が逆になってしまうため、裏面を読み取った後に順序を合わせるため原稿を再度反転させ読取位置を通過させている。このように従来の画像形成装置では、原稿の順序を合わせるためだけに読取位置に原稿が搬送されるため、その間は読取動作が行えず複数枚の原稿を連続して読み取る際に時間がかかり、生産性が悪くなるという問題点があった。
【0003】
そこで、両面原稿の裏面読取後に順合わせの反転を行うための搬送経路を設け、順合わせの反転動作中にも次の原稿を読取可能とした技術が、例えば「特許文献1」に開示されている。また、片面原稿用のトレイと両面原稿用のトレイとを設け、片面時は載置された原稿束の最上位の原稿から、両面時は載置された原稿束の最下位の原稿から読み取ることにより、両面原稿の裏面読取後に再度反転させることなく原稿の順序を合わせる技術が、例えば「特許文献2」に開示されている。さらに、トレイに載置された原稿束の最下位の原稿から読み取り、片面原稿と両面原稿とで排出先を変えることにより、両面原稿の裏面読取後に再度反転させることなく原稿の順序を合わせる技術が、例えば「特許文献3」に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
「特許文献1」に開示された技術では、順合わせのために両面原稿の裏面読取後に原稿を反転させるためだけの搬送経路を設けているために装置が大型化してしまうという問題点や、装置の大型化を防止すべく搬送経路を小さなスペースに収納しようとすると搬送経路の形状が窮屈となり、紙詰まりや原稿の損傷といった搬送不良が発生してしまうという問題点がある。「特許文献2」に開示された技術では、片面原稿用と両面原稿用との2つの原稿トレイを設けるため装置が大型化すると共に、片面原稿と両面原稿とで読取位置における搬送方向が逆となるため搬送速度の設定や読取部の形状等、設計上の制約事項が多くなり、良好な画像を得られない虞がある。また、片面原稿と両面原稿とでセット位置が異なるためにユーザによるセットミスが発生し易い。「特許文献3」に開示された技術では、片面原稿用と両面原稿用との2つの排紙トレイを設けるために装置が大型化してしまうという問題点がある。
【0005】
本発明は上述の問題点を解決し、両面原稿を連続して効率よく読み取ることができると共に装置をコンパクトかつ安価に構成して生産性を高めることが可能なシートスルー方式の自動原稿搬送装置及びこれを備えた画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、原稿束を載置可能な原稿トレイと、前記原稿トレイ上の原稿束から数枚の原稿を給紙する給紙手段と、給紙された原稿を1枚ずつに分離給送する分離手段と、分離給送された原稿を読取位置へ搬送する搬送手段と、前記読取位置で読み取られた原稿を排出する排紙手段と、排出された原稿が載置される排紙トレイと、前記読取位置で読み取られた原稿を反転させた後に再度前記読取位置に搬送する反転手段とを備えた自動原稿搬送装置において、前記給紙手段は前記原稿トレイ上に載置された原稿束の最上位側から数枚の原稿を給紙する上給紙手段と最下位側から数枚の原稿を給紙する下給紙手段とを有し、前記分離手段は前記上給紙手段によって給紙された原稿を分離給送する上分離手段と前記下給紙手段によって給紙された原稿を分離給送する下分離手段とを有し、片面原稿読取時には上給紙手段及び上分離手段により1枚の原稿を前記搬送手段に分離給送し、両面原稿読取時には下給紙手段及び下分離手段により1枚の原稿を前記搬送手段に分離給送することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の自動原稿搬送装置において、さらに前記上分離手段及び前記下分離手段はそれぞれ接離自在なローラ対からなり、前記上給紙手段及び前記下給紙手段及び前記上分離手段及び前記下分離手段が同一の原稿搬送経路上に設けられ、前記上給紙手段により原稿が給紙される際には前記下分離手段のローラ対が互いに分離し、前記下給紙手段により原稿が給紙される際には前記上分離手段のローラ対が互いに分離することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の自動原稿搬送装置において、さらに前記上分離手段は正逆転自在な駆動ローラと該駆動ローラの下方に配置されこれに従動回転する下従動ローラとからなり、前記下分離手段は前記駆動ローラと該駆動ローラの上方に配置されこれに従動回転する上従動ローラとからなり、片面原稿読取時には前記上給紙手段によって給紙された原稿を前記上分離手段に案内し両面原稿読取時には前記下給紙手段によって給紙された原稿を前記下分離手段に案内する案内部材を有し、片面原稿読取時には前記駆動ローラを正回転させて前記上分離手段により前記案内部材によって案内された原稿の1枚を前記搬送手段に分離給送し、両面原稿読取時には前記駆動ローラを逆回転させて前記下分離手段により前記案内部材によって案内された原稿の1枚を前記搬送手段に分離給送することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の自動原稿搬送装置において、さらに前記案内部材は前記原稿トレイ上に載置された原稿束の搬送方向下流側端部を位置決めする位置決め部材を兼ねることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の自動原稿搬送装置において、さらに前記原稿トレイ上に載置された原稿束の搬送方向下流側端部を位置決めする位置決め部材を有し、前記下給紙手段及び前記位置決め部材によって前記下分離手段が構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の自動原稿搬送装置を有する画像形成装置であることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の画像形成装置において、さらに両面原稿に基づく画像形成を行う場合には、両面原稿が読み取られた順に画像形成を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の画像形成装置において、さらにステープルまたは用紙折りを行う後処理装置を有し、両面原稿の画像形成と共に何れかの後処理が行われる場合には、前記上給紙手段により両面原稿を給紙して読み取りを行い、両面読取完了後に原稿の順序を合わせるべく反転搬送を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、両面原稿読取時において裏面読取後に原稿を再度反転させることなく排紙トレイ上に排出される原稿の表裏及び順序を原稿トレイ上に積載された状態と合致させることができ、順序合わせのための原稿反転動作を行うことなく画像形成動作を完了することにより両面原稿読取時における作業効率を格段に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を適用可能な画像形成装置の概略正面図である。
【図2】本発明の一実施形態を適用可能な画像形成装置の要部概略正面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を採用した自動原稿搬送装置の概略正面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を採用した自動原稿搬送装置の概略正面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態を採用した自動原稿搬送装置の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態を適用可能な画像形成装置を示している。同図において画像形成装置200は、その装置本体の上部に両面原稿を読取可能なシートスルー方式の自動原稿搬送装置100を有している。自動原稿搬送装置100には、複数枚の原稿からなる原稿束P1を載置可能な原稿トレイ1がその上部に配設され、その下方には読み取られた原稿が排出される排紙トレイ8が配設されている。
【0017】
原稿トレイ1の上面上には、原稿の搬送方向と直交する方向である幅方向における位置を規制するためのサイドフェンス2と、原稿の搬送方向における位置を規制するための原稿ストッパ3とが設けられており、原稿ストッパ3の原稿搬送方向上流側にはピックアップローラ11が、同下流側にはフィードローラ12がそれぞれ配設され、フィードローラ12と原稿搬送経路を介して対向する位置には分離部材4が配設されている。フィードローラ12の原稿搬送方向下流側にはプルアウトローラ13が配設されており、さらにその下流側には読取前ローラ14が配設されている。読取前ローラ14の原稿搬送方向下流側には白色背景板5が配設されており、これと対向配置されたコンタクトガラス6との間に非常に狭い原稿搬送経路が形成され、この原稿搬送経路上に原稿読取位置22が設定されている。原稿読取位置22の原稿搬送方向下流側には排紙ローラ15が、さらにその下流側には反転ローラ16が配置されており、排紙ローラ15と反転ローラ16との間の位置には分岐爪7が配設されている。排紙ローラ15の上方には、反転ローラ16によって反転搬送された原稿を直接読取前ローラ14へと搬送するための反転搬送経路が形成されている。
【0018】
次に、自動原稿装置100の動作を説明する。先ず、原稿ストッパ3に原稿束P1の端部を突き当てて搬送方向の位置決めを行い、その後サイドフェンス2によって幅方向の位置決めを行って原稿トレイ1上に原稿束P1をセットする。そして画像形成装置200の図示しないスタートキーを押下すると、ピックアップローラ11が原稿束P1の上面に当接した後に回転することにより数枚の原稿がフィードローラ12へと給紙され、フィードローラ12の搬送力と分離部材4の摩擦抵抗による戻し力との作用により最上位の原稿が1枚分離給送される。
【0019】
分離給送された原稿はプルアウトローラ13及び読取前ローラ14を経由して原稿トレイ1上にセットされたときとは表裏反転した状態で白色背景板5とコンタクトガラス6とにより形成された原稿搬送経路へと搬送され、コンタクトガラス6の下方に配設された読取部41により原稿読取位置22において画像を読み取られつつ搬送され、排紙ローラ15へと搬送される。片面原稿読取時にはこの時点で原稿の読み取りが完了しているため、排紙ローラ15によって搬送された原稿は分岐爪7によって排紙トレイ8へと案内されて排出される。このとき、原稿の向きは原稿トレイ1上にセットされたときとは表裏反転しているが、次の原稿は前の原稿の上に重なるように排出されるため、原稿トレイ1上に積載されていたときと同じ順序で排紙トレイ8上に積載される。
【0020】
一方、両面原稿読取時にはさらに裏面の画像を読み取るため、排紙ローラ15によって搬送された原稿は分岐爪7に案内されて反転ローラ16へと送られる。反転ローラ16は原稿の後端(図1において右端)を保持した状態で一時停止後に逆回転し、原稿は移動した分岐爪7に案内されて反転搬送経路へと送られる。反転搬送経路へと送られた原稿は読取前ローラ14へと到達し、先ほどとは表裏反転された状態で白色背景板5とコンタクトガラス6とにより形成された搬送経路へと搬送され、読取部41において裏面画像を読み取られる。この時点で両面原稿の画像読取が完了するが、このとき原稿は原稿トレイ1上にセットされていた向き(表裏)が同じであるため、次の原稿が前の原稿の上に重なるように排出されると原稿の順序が原稿トレイ1上に積載された状態とは異なってしまう。このため原稿の順序を合わせるべく、両面画像読取後の原稿を再度反転ローラ16へと送り、再度反転搬送経路へと原稿を送り表裏を反転させた後に排紙トレイ8上に排出する。
【0021】
次に、画像形成装置200の構成及び動作について説明する。画像形成装置200の装置本体の下部には、それぞれ異なるサイズの転写紙を収納可能な給紙カセット51,52が配設されており、給紙カセット51,52内に収納された転写紙は呼び出しローラ51a,52aによって給紙された後、給紙ローラ51b,52b及びこれに摺接して用紙搬送方向とは逆方向に回転可能なリバースローラ51c,52cによって分離給送される。分離給送された転写紙は中継ローラ53,54を介してレジストローラ対55へと搬送され、レジストローラ対55によってタイミングを取られて感光体ドラム43と転写ベルト47との間の搬送路に搬送される。
【0022】
装置本体の上部に設けられた読取部41は、光源、反射ミラー、集光レンズ、CCD等のイメージセンサ等を有しており、読取部41によって読み取られた画像情報は書込部42から感光体ドラム43の表面に露光照射される。感光体ドラム43の周囲には、図2に示すように感光体ドラム43と共に画像形成部を構成する帯電装置44、電位センサ45、現像装置46、転写ベルト47、クリーニング装置48、除電装置49等が配設されている。帯電装置44は、暗中にプラス電荷のコロナ放電をグリッドにより制御して感光体ドラム43の表面を一定電位に帯電させるように構成されている。書込部42は、一定電位に帯電された感光体ドラム43上に画像情報を含んだレーザダイオードを照射し、感光体ドラム43上のマイナス電荷を除去して静電潜像を形成する。電位センサ45は、感光体ドラム43上の電位を測定し、プロセスコントロールにより補正を行う。現像装置46は、感光体ドラム43上の電荷除去された部分にマイナス帯電されたトナーを付着させて可視像を形成する。転写ベルト47にはプラスのバイアスが印加されており、マイナスに帯電された可視像を転写紙に転写して搬送する。クリーニング装置48はクリーニングブレードを備えており、感光体ドラム43上に残存したトナーを掻き落とす。除電装置49は、LEDを点灯させることにより感光体ドラム43上の残留電荷を除去して次の転写紙に対する画像形成の準備を行う。
【0023】
感光体ドラム43と転写ベルト47との間の搬送路に搬送され、感光体ドラム43上のトナー画像が転写された転写紙は、定着装置50へと搬送されてトナー画像を定着される。片面印刷時において、転写紙は定着後に搬送経路61へと送られて印刷面を下にした状態で排紙トレイ65上に排出される。一方両面印刷時には、原稿の両面読取が完了するまで待機して先に裏面の画像定着を行い、その後に搬送経路62へと搬送された転写紙はスイッチバックされて搬送経路63へと送られる。搬送経路63へと送られた転写紙は中継ローラ54とレジストローラ対55とを経由して再度感光体ドラム43と転写ベルト47との間へと搬送され、表面画像が転写される。表面画像転写後、転写紙は定着装置50へと送られて定着された後、搬送経路61を経由して表面画像を下にした状態で排紙トレイ65上に排出される。
【0024】
上述した画像形成装置200では、自動原稿搬送装置100によって両面原稿を読み取る場合に、両面読取後の原稿を順序合わせのために再度反転ローラ16へと送り、表裏を反転させた後に排紙トレイ8上に排出している。このため、「背景技術」の欄にも記載したように、順序合わせのために原稿を搬送している間は読取動作を行うことができず、複数枚の原稿を連続して読み取る際に時間がかかってしまい生産性が悪くなるという問題点がある。この問題点を解決する本発明の一実施形態を以下に説明する。
【0025】
本発明の第1の実施形態を示す図3において、自動原稿搬送装置30は原稿束P1を載置する原稿トレイ31を有しており、原稿トレイ31の上面には原稿束P1の幅方向におけるセット位置を規制するサイドフェンス32が設けられ、その原稿搬送方向下流側端部には原稿束P1の搬送方向におけるセット位置を規制する位置決め部材としての原稿ストッパ33が設けられている。原稿ストッパ33はその下端を原稿トレイ31に回動自在に支持されると共に図示しない駆動手段によって回動され、垂直に起立して原稿束P1の規制を行う図に実線で示す規制位置と、水平に倒伏して原稿の給送を許容する図に二点差線で示す給送位置とを選択的に占める。
【0026】
原稿トレイ31の上方であって原稿ストッパ33よりも原稿搬送方向上流側の位置には、原稿束P1の上面に当接して原稿をその最上位側から給送する上給紙手段としての上ピックアップローラ34が配設されている。上ピックアップローラ34は支持部材35によって回転自在に支持されており、図示しない駆動手段によって回転駆動される。支持部材35はその一端側で上ピックアップローラ34を支持しており、他端側を支点として揺動自在に構成されている。支持部材35は図示しない揺動手段によって揺動され、上ピックアップローラ34は原稿束P1の最上位の原稿に対して接離自在に構成されている。原稿束P1を介して上ピックアップローラ34と対向する位置には、原稿束P1の下面に当接して原稿をその最下位側から給送する下給紙手段としての下ピックアップローラ36が配設されている。下ピックアップローラ36は原稿トレイ31に回転自在に支持されており、図示しない駆動手段によって回転駆動される。
【0027】
原稿ストッパ33の原稿搬送方向下流側には、上ピックアップローラ34あるいは下ピックアップローラ36によって原稿束P1から給送された原稿が搬送される搬送経路37が形成されており、この搬送経路37の最上流位置には上ピックアップローラ34によって給送された原稿を1枚ずつ分離給送する上分離手段38が配設されている。上分離手段38は、支持部材35に回転自在に支持され図示しない駆動手段によって回転駆動される上フィードローラ38aと、図示しない支持部材に回転自在に支持され図示しない接離手段によって上フィードローラ38aに対して接離自在に構成された上分離ローラ38bとからなるローラ対によって構成されている。上分離ローラ38bは、上フィードローラ38aに接触した状態で従動回転する。上分離手段38の原稿搬送方向下流側には、下ピックアップローラ36によって給送された原稿を1枚ずつ分離給送する下分離手段39が配設されている。下分離手段39は、図示しない側板に回転自在に支持され図示しない駆動手段によって回転駆動される下フィードローラ39aと、図示しない支持部材に回転自在に支持され図示しない接離手段によって下フィードローラ39aに対して接離自在に構成された下分離ローラ39bとからなるローラ対によって構成されている。下分離ローラ39bは、下フィードローラ39aに接触した状態で従動回転する。
【0028】
下分離手段39の原稿搬送方向下流側にはプルアウトローラ40、搬送手段としての読取前ローラ25、排紙手段としての排紙ローラ26、正逆回転可能な反転手段としての反転ローラ27がこの順で配設されており、読取前ローラ25と排紙ローラ26との間には白色背景板23とコンタクトガラス24とによって形成される読取経路が、排紙ローラ26と反転ローラ27との間には分岐爪28が、排紙ローラ26の左方には読取前ローラ25に繋がる反転経路29がそれぞれ設けられている。分岐爪28は図示しない揺動手段によって揺動され、図3に実線で示す通常位置と二点差線で示す両面位置とを選択的に占める。原稿トレイ31の下方には画像が読み取られた原稿が排出される排紙トレイ19が設けられ、読取経路上に原稿読取位置20が設定されている。
【0029】
以下に、自動原稿搬送装置30の動作を説明する。原稿トレイ31上にN枚の両面原稿束P1がセットされ、両面読取が指定された後に画像形成装置200の図示しないスタートキーが押下されると、原稿ストッパ33が給送位置に移動すると共に下ピックアップローラ36が回転し、原稿束P1の最下位原稿を含む少枚数の原稿が給送される。このとき上フィードローラ38aと上分離ローラ38bとは離間状態であり、給送された原稿は下分離手段39へと送られる。下フィードローラ39aと下分離ローラ39bとは当接状態であり、下分離手段39へと送られた原稿は1枚ずつに分離されて最下位のN枚目の原稿のみがさらに下流へと搬送される。
【0030】
搬送されたN枚目の原稿は、プルアウトローラ40及び読取前ローラ25によって原稿トレイ31上に載置された状態とは表裏反転された状態で読取経路に搬送され、原稿読取位置20において先ず表面画像を読み取られる。表面画像が読み取られたN枚目の原稿は排紙ローラ26によって図3の右方へと搬送され、両面位置を占めている分岐爪28に案内されて反転ローラ27へと搬送される。原稿は反転ローラ27の回転により図3において右方へと搬送され、原稿の左端が排紙ローラ26を抜けると反転ローラ27の回転が一時停止される。その後、分岐爪28が通常位置に変位すると反転ローラ27が先程とは逆方向に回転し、原稿は反転経路29へと送られて読取前ローラ25により読取経路に搬送され、原稿トレイ31上に載置された状態と同じ状態で原稿読取位置20において裏面画像を読み取られる。裏面画像を読み取られたN枚目の原稿は、排紙ローラ26によって表面が上を向いた状態、すなわち原稿トレイ31上に載置された状態と同じ状態で排紙トレイ19上に排出される。次に、(N−1)枚目の原稿がN枚目の原稿と同様にその両面画像を読み取られた後、N枚目の原稿の上に重なるように排紙トレイ19上に排出される。以降、同様の動作を繰り返してN枚の両面原稿の読み取りが全て完了すると、排紙トレイ19上に排出された両面原稿束P1は最上位の原稿が1枚目、最下位の原稿がN枚目で全て表面が上方を向いた状態となり、原稿トレイ31上に載置した状態と表裏及び順序とも同じとなる。両面原稿の読取動作が完了した順に、画像形成装置200においてN枚目から1枚目までの両面原稿に基づいた上述と同様の画像形成動作が行われる。
【0031】
一方、原稿トレイ31上にN枚の片面原稿束P1がセットされ、片面読取が指定された後に画像形成装置200の図示しないスタートキーが押下されると、原稿ストッパ33が給送位置に移動すると共に上ピックアップローラ34が回転し、原稿束P1の最上位原稿を含む少枚数の原稿が給送される。このとき下フィードローラ39aと下分離ローラ39bとは離間状態であり、給送された原稿は上分離手段38へと送られる。上フィードローラ38aと上分離ローラ38bとは当接状態であり、上分離手段38へと送られた原稿は1枚ずつに分離されて最上位の1枚目の原稿のみがさらに下流へと搬送される。以降、上述した自動原稿搬送装置100と同様に画像読取が行われ、排紙トレイ19上に排出された片面原稿束P1は最下位の原稿が1枚目、最上位の原稿がN枚目で全て裏面が上方を向いた状態となり、原稿トレイ31上に載置した状態とは順序が同じで表裏及び上下が逆の状態となる。
【0032】
上述の構成によれば、両面原稿読取時において裏面読取後に原稿を再度反転させることなく排紙トレイ上に排出される原稿の表裏及び順序を原稿トレイ上に積載された状態と合致させることができ、順序合わせのための原稿反転動作を行うことなく画像形成動作を完了することにより両面原稿読取時における作業効率を格段に向上することができる。また、上分離手段38と下分離手段39とを同一の搬送経路上に設けているので、装置の小型化を図ることができる。さらに、上分離手段38及び下分離手段39を構成する各ローラ対が必要に応じて接離するので、確実な分離給送を行うことができる。また、両面原稿に基づく画像形成を行う場合に、両面原稿が読み取られた順に画像形成動作を行うので、画像が形成された転写紙の順序を原稿の順序と合わせることができ、両面原稿に基づいた画像形成動作の作業効率を向上することができる。
【0033】
図4は、本発明の第2の実施形態を採用した自動原稿搬送装置70を示している。以下、この自動原稿搬送装置70を説明するが、第1の実施形態で示した自動原稿搬送装置30と同様の構成については同様の符号を付し、個々の詳細な説明は省略する。
【0034】
原稿トレイ31の原稿搬送方向下流側端部には原稿束P1の搬送方向におけるセット位置を規制する位置決め部材としての原稿ストッパ71が配設されている。原稿ストッパ71はその下端を原稿トレイ31に回動自在に支持されると共に図示しない駆動手段によって回動され、垂直に起立して原稿束P1の規制を行う図に実線で示す規制位置と、水平に倒伏して原稿の上分離給送路72への給送を許容する図に二点差線で示す上分離給送位置と、斜めに位置して原稿の下分離給送路73への給送を許容する図に一点鎖線で示す下分離給送位置とを選択的に占める。
【0035】
原稿ストッパ71の原稿搬送方向下流側には、上ピックアップローラ34によって原稿束P1から給送された原稿が搬送される上分離給送路72と、下ピックアップローラ36によって原稿束P1から給送された原稿が搬送される下分離給送路73とがそれぞれ形成されており、各分離給送路72,73の間の位置には図示しない側板に回転自在に支持され図示しない駆動手段によって正逆転される駆動ローラ74が配設されている。駆動ローラ74はその周面の一部を各分離給送路72,73内に望ませる態様で配置されており、上分離給送路72内において駆動ローラ74と接触する態様で下従動ローラ75が、下分離給送路73内において駆動ローラ74と接触する態様で上従動ローラ76がそれぞれ配設されている。上従動ローラ75は図示しない支持部材に、下従動ローラ76は支持部材35にそれぞれ回転自在に支持されると共に図示しない付勢手段によってそれぞれ駆動ローラ74に圧接されており、駆動ローラ74が回転駆動される際に各従動ローラ75,76はこれと従動回転する。駆動ローラ74と下従動ローラ75とによって上分離手段77が、駆動ローラ74と上従動ローラ76とによって下分離手段78がそれぞれ構成されている。
【0036】
上述の構成に基づき、以下に自動原稿搬送装置70の動作を説明する。原稿トレイ31にN枚の両面原稿束P1がセットされ、両面読取が指定された後に画像形成装置200の図示しないスタートキーが押下されると、原稿ストッパ71が下分離給送位置に移動すると共に下ピックアップローラ36が回転し、原稿束P1の最下位原稿を含む少枚数の原稿が下分離給送路73へと給送される。このとき駆動ローラ74は図4において反時計回り方向に回転駆動されており、下分離給送路73へと送られた原稿は下分離手段78によって1枚ずつに分離され、最下位のN枚目の原稿のみがさらに下流へと搬送される。搬送されたN枚目の原稿は、第1の実施形態と同様にその両面の画像を読み取られた後、排紙トレイ19上に排出される。
【0037】
一方、原稿トレイ31上にN枚の片面原稿束P1がセットされ、片面読取が指定された後に画像形成装置200の図示しないスタートキーが押下されると、原稿ストッパ71が上分離給送位置に移動すると共に上ピックアップローラ34が回転し、原稿束P1の最上位原稿を含む少枚数の原稿が上分離給送路72へと給送される。このとき駆動ローラ74は図4において時計回り方向に回転駆動されており、上分離給送路72へと送られた原稿は上分離手段77によって1枚ずつに分離され、最上位の1枚目の原稿のみがさらに下流へと搬送される。搬送された1枚目の原稿は、第1の実施形態と同様にその片面の画像を読み取られた後、排紙トレイ19上に排出される。
【0038】
上述の構成により、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができると共に、上分離手段77と下分離手段78とが共通の駆動ローラ74を使用するので部品点数を低減でき、コストダウン及び省スペース化を図ることができる。また、原稿ストッパ71が原稿を案内する案内部材を兼用するので、さらなるコストダウン及び省スペース化を図ることができる。
【0039】
図5は、本発明の第3の実施形態を採用した自動原稿搬送装置80を示している。以下、この自動原稿搬送装置80を説明するが、第1の実施形態で示した自動原稿搬送装置30及び第2の実施形態で示した自動原稿搬送装置70と同様の構成については同様の符号を付し、個々の詳細な説明は省略する。
【0040】
原稿トレイ31の原稿搬送方向下流側端部には原稿束P1の搬送方向におけるセット位置を規制する位置決め部材としての原稿ストッパ81が配設されている。原稿ストッパ81はその上端を図示しない側板に回動自在に支持されると共に図示しない駆動手段によって回動され、垂下されて原稿束P1の規制を行うと共に下分離手段として機能する図に実線で示す規制位置と、水平に持ち上げられて上ピックアップローラ34による給送を許容する図に二点差線で示す上給送位置とを選択的に占める。原稿ストッパ81の下端には高摩擦抵抗部材81aが設けられており、この高摩擦抵抗部材81aと下ピックアップローラ36とによって下分離手段82が構成される。
【0041】
原稿ストッパ81の原稿搬送方向下流側には、上ピックアップローラ34によって給送された原稿を1枚ずつ分離給送する上分離手段83が配設されている。上分離手段83は、支持部材35に回転自在に支持され図示しない駆動手段によって回転駆動される上フィードローラ83aと、これに接離自在に構成された高摩擦抵抗部材からなる上分離部材83bとによって構成されている。上分離部材83bは、図示しない接離手段によって上フィードローラ83aに対して接離される。
【0042】
上述の構成に基づき、以下に自動原稿搬送装置80の動作を説明する。原稿トレイ31にN枚の両面原稿束P1がセットされ、両面読取が指定された後に画像形成装置200の図示しないスタートキーが押下されると、下ピックアップローラ36が回転して原稿束P1の最下位原稿を含む少枚数の原稿が給送される。このとき、規制位置を占めた原稿ストッパ81の高摩擦抵抗部材81aの働きにより給送された少枚数の原稿は1枚ずつに分離され、最下位のN枚目の原稿のみがさらに下流へと搬送される。さらにこのとき上分離部材83bは上フィードローラ83aから離間した位置を占めており、搬送されたN枚目の原稿は第1の実施形態と同様にその両面の画像を読み取られた後、排紙トレイ19上に排出される。
【0043】
一方、原稿トレイ31上にN枚の片面原稿束P1がセットされ、片面読取が指定された後に画像形成装置200の図示しないスタートキーが押下されると、原稿ストッパ81が上給送位置に移動すると共に上ピックアップローラ34が回転し、原稿束P1の最上位原稿を含む少枚数の原稿が下流へと給送される。このとき上分離部材83bは上フィードローラ83aと当接する位置を占めており、上分離手段83へと搬送された原稿は1枚ずつに分離され、最上位の1枚目の原稿のみがさらに下流へと搬送される。搬送された1枚目の原稿は、第1の実施形態と同様にその片面の画像を読み取られた後、排紙トレイ19上に排出される。
【0044】
上述の構成により、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができると共に、下ピックアップローラ36及び原稿ストッパ81によって下分離手段82が構成されるので部品点数を削減でき、コストダウン及び省スペース化を図ることができる。
【0045】
上述した各実施形態では、各自動原稿搬送装置30,70,80が搭載される画像形成装置として画像形成装置200を示したが、画像形成装置としてステープルまたは用紙折りを行う後処理装置を有するものに各自動原稿搬送装置30,70,80を搭載してもよい。この場合、両面原稿の画像形成と共に何れかの後処理が行われる場合には、上ピックアップローラ34によって原稿を給送して読取を行い、両面読取完了後に原稿の順序を合わせるべく従来と同様の反転搬送を行う構成とすることが望ましい。これにより、転写紙の向き及び順序を片面原稿による画像形成時と合わせることができ、ステープルや用紙折りの向きが反対となるという不具合の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0046】
19 排紙トレイ
25 搬送手段(読取前ローラ)
26 排紙手段(排紙ローラ)
27 反転手段(反転ローラ)
30,70,80 自動原稿搬送装置
31 原稿トレイ
34 上給紙手段(上ピックアップローラ)
36 下給紙手段(下ピックアップローラ)
38,77,83 上分離手段
39,78,82 下分離手段
71 案内部材(原稿ストッパ)
74 駆動ローラ
75 下従動ローラ
76 上従動ローラ
81 位置決め部材(原稿ストッパ)
200 画像形成装置
P1 原稿束
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開2003−2546号公報
【特許文献2】特開2005−89152号公報
【特許文献3】特開2008−48375号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿束を載置可能な原稿トレイと、前記原稿トレイ上の原稿束から数枚の原稿を給紙する給紙手段と、給紙された原稿を1枚ずつに分離給送する分離手段と、分離給送された原稿を読取位置へ搬送する搬送手段と、前記読取位置で読み取られた原稿を排出する排紙手段と、排出された原稿が載置される排紙トレイと、前記読取位置で読み取られた原稿を反転させた後に再度前記読取位置に搬送する反転手段とを備えた自動原稿搬送装置において、
前記給紙手段は前記原稿トレイ上に載置された原稿束の最上位側から数枚の原稿を給紙する上給紙手段と最下位側から数枚の原稿を給紙する下給紙手段とを有し、前記分離手段は前記上給紙手段によって給紙された原稿を分離給送する上分離手段と前記下給紙手段によって給紙された原稿を分離給送する下分離手段とを有し、片面原稿読取時には上給紙手段及び上分離手段により1枚の原稿を前記搬送手段に分離給送し、両面原稿読取時には下給紙手段及び下分離手段により1枚の原稿を前記搬送手段に分離給送することを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動原稿搬送装置において、
前記上分離手段及び前記下分離手段はそれぞれ接離自在なローラ対からなり、前記上給紙手段及び前記下給紙手段及び前記上分離手段及び前記下分離手段が同一の原稿搬送経路上に設けられ、前記上給紙手段により原稿が給紙される際には前記下分離手段のローラ対が互いに分離し、前記下給紙手段により原稿が給紙される際には前記上分離手段のローラ対が互いに分離することを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動原稿搬送装置において、
前記上分離手段は正逆転自在な駆動ローラと該駆動ローラの下方に配置されこれに従動回転する下従動ローラとからなり、前記下分離手段は前記駆動ローラと該駆動ローラの上方に配置されこれに従動回転する上従動ローラとからなり、片面原稿読取時には前記上給紙手段によって給紙された原稿を前記上分離手段に案内し両面原稿読取時には前記下給紙手段によって給紙された原稿を前記下分離手段に案内する案内部材を有し、片面原稿読取時には前記駆動ローラを正回転させて前記上分離手段により前記案内部材によって案内された原稿の1枚を前記搬送手段に分離給送し、両面原稿読取時には前記駆動ローラを逆回転させて前記下分離手段により前記案内部材によって案内された原稿の1枚を前記搬送手段に分離給送することを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項4】
請求項3記載の自動原稿搬送装置において、
前記案内部材は前記原稿トレイ上に載置された原稿束の搬送方向下流側端部を位置決めする位置決め部材を兼ねることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動原稿搬送装置において、
前記原稿トレイ上に載置された原稿束の搬送方向下流側端部を位置決めする位置決め部材を有し、前記下給紙手段及び前記位置決め部材によって前記下分離手段が構成されることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の自動原稿搬送装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6記載の画像形成装置において、
両面原稿に基づく画像形成を行う場合には、両面原稿が読み取られた順に画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の画像形成装置において、
ステープルまたは用紙折りを行う後処理装置を有し、両面原稿の画像形成と共に何れかの後処理が行われる場合には、前記上給紙手段により両面原稿を給紙して読み取りを行い、両面読取完了後に原稿の順序を合わせるべく反転搬送を行うことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−255971(P2011−255971A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129111(P2010−129111)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】