説明

自動取引装置及びモバイル端末

【課題】
自動取引装置に実装される近距離通信によりモバイル端末上のキャッシュカードデータやクレジットカードデータを読んだり、データを書込んだりをするような取引の場合、モバイル端末を近距離通信の面に置き、取引終了後、その置き忘れの問題がある。
【解決手段】
自動取引装置に置き忘れを検知する手段と検知後にモバイル端末に近距離通信にて機能を停止するためのコマンドを送る手段を設け、モバイル端末側には近距離通信にて受け取った機能停止コマンドに従いモバイル端末の機能を停止する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金融や流通、交通、公共分野においてモバイル端末を用いた所望の取引を行う、特にモバイル端末と近距離通信を通じてデータの送受信を行う自動機取引装置、または自動取引装置と通信可能なモバイル端末、そしてこれらの装置及び端末からなる自動取引システムに係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などのモバイル端末には近距離通信のインタフェースが搭載されている。その代表例が非接触IC、赤外線、近距離通信である。特に非接触ICチップはそれを装置にかざすだけで様々な取引を可能とする提案がある。また、モバイル端末自身に非接触ICチップを搭載し、そのチップにキャッシュカード、クレジットカード、ポイントカード、クーポンなどの機能を持たせ、電子化する仕組みが構築されている。
【0003】
携帯電話から自動取引装置(ATM)の取引を実行する技術として特許文献1がある。この個人認証方式は、携帯電話にICチップを内蔵し、携帯電話に暗証番号や金融処理情報を入力することで携帯電話からATMの取引を行うことを開示する。
【0004】
【特許文献1】特開2001−297198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術によれば、携帯電話などのモバイル端末を用いて自動取引装置で取引を行う場合、モバイル端末上のデータを自動取引装置から読取るには自動取引装置の面にモバイル端末を置くなどの操作が必要になる。この場合、取引終了後に顧客がモバイル端末を置き忘れ、それを次の顧客によって盗難、不正利用される、との問題が考えられる。
【0006】
なお、モバイル端末自身の技術としてその不正利用を防止する目的で、正当な利用者が置き忘れのモバイル端末に電話をかけリモートでロックする方法もあるが、この方法を上述の技術に応用しても、その正当な利用者が取り忘れに気付き電話をかけるまでの間に不正利用されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために、特に、近距離通信用インタフェースを有するモバイル端末と通信可能な自動取引装置において、該自動取引装置の操作面近傍に、前記近距離通信用インタフェースのリーダライタを設け、該リーダライタ近傍に前記モバイル端末を当接させることで、前記近距離通信用インタフェースを用いてモバイル端末と通信し、モバイル端末全て或いは一部の機能を停止するコマンドを前記モバイル端末に対して送信できるように構成したことにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明は自動取引装置にてモバイル端末の置き忘れを検知し、モバイル端末機能の全て或いは一部を停止することができる。また、置き忘れ後に次に取引する顧客などに不正利用される間隙を最小化することができる。また、モバイル端末上のデータが盗み読まるなどの不正を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、金融機関等に設置される自動取引装置(ATM)を例に挙げ、非接触ICチップ搭載の携帯電話を用いた取引を中心に説明するが、鉄道用端末、契約端末等の自動取引装置にも応用可能であり、また、携帯電話に限らず近距離通信インタフェースを搭載するモバイル端末(携帯電話も含めて単にモバイル端末)にも適用できる。なお、自動取引装置又はモバイル端末が行う各処理、取引、実行内容は、それぞれが有する機能又は手段であることは言うまでもない。
【実施例1】
【0010】
図1は自動取引装置101と利用者が携帯する非接触ICチップを搭載する携帯電話(単にモバイル端末)1とによる自動取引システムを図示する。自動取引装置101は、非接触ICチップと近距離通信できる非接触ICリーダーライタ106を実装する。一方、モバイル端末1のICチップ上にはキャッシュカードデータやクレジットカードデータなど財布に入っている様々な媒体のデータが電子化されて格納されている。また、近距離通信用インタフェースを実装しており、近距離通信としては、非接触IC通信、赤外線やUWB(Ultra Wide Band)などを用いる。
【0011】
顧客は自動取引装置101の非接触ICリーダーライタ106上に、非接触IC携帯電話1を置き(又はかざし)、現金の入金・出金などの取引を行うことが可能である。自動取引装置101は非接触ICリーダーライタ106に置かれた非接触IC携帯電話1に内蔵された非接触ICチップに格納されているキャッシュカードなどのデータを近距離通信にて読取り、磁気のキャッシュカードで行う現金取引と同様の取引を行う。
【0012】
自動取引装置1はキャッシュカードの磁気ストライプ等の読取、挿入・排出または明細票の排出を行うカードユニット103の口、通帳への印字やその挿入・排出を行う通帳ユニット102の口、紙幣の入出金、搬送、鑑別等を行う紙幣ユニット104の口とが、図示するとおり自動取引装置101の正面に配置される。またその水平面には利用者へのガイダンス表示や入力などの操作を行う操作部105を配設し、更に上述のリーダライタ106をその近傍に設置している。
【0013】
図2はモバイル端末1と自動取引装置101とを接続したブロック図を示す。
自動取引装置101は上述の各ユニットの他にこれら各ユニットを制御するCPU,メモリ等のハード構成、プログラムのソフト構成を含む制御部107を有し、後述する自動取引装置における各取引、処理の制御を司る。
【0014】
非接触IC携帯電話(モバイル端末)1は、大きく分けて非接触ICチップ201と携帯電話制御部207とこれに繋がる各ブロックで構成される。各ブロックは、電話としての通信機能をもつ通信部208、種々のメニューを表示する表示部209、数字又は文字からなるキー入力部210、音声を出力するマイク・スピーカー部211、撮影機能を有するカメラ部212がある。他、モバイル端末のプログラム等を格納する主記憶装置213、補助記憶装置214を有する。
そして、このモバイル端末1には非接触ICチップ201を内蔵する。非接触ICチップ201は自動取引装置101と近距離通信するための非接触通信送受信部203と、非接触ICチップの各ブロックを制御する非接触IC制御部202と、この制御部202からリード、ライト可能なキャッシュカード機能を有するキャッシュカードデータ204、クレジット機能を有するクレジットカードデータ205、その他データ206から構成される。
非接触IC制御部202は非接触通信送受信部203経由で自動取引装置101からの要求に応じてキャッシュカードデータ204やクレジットカードデータ205を読み取って、非接触通信送受信部203経由で自動取引装置101へ送信する。また、自動取引装置101から非接触通信送受信部203経由で書き込み要求を受け取り、その他データ206などにデータの書き込み処理を行う。また、非接触IC制御部202は非接触通信送受信部203経由で自動取引装置101からポーリングコマンド(携帯電話を検知するためのコマンド)を受け取り応答する。そして非接触IC携帯電話200が自動取引装置101のリーダライタ106上に置き忘れられた場合は、自動取引装置101から非接触通信送受信部203経由で機能停止コマンドを受け取り、非接触ICチップの機能を停止する。なお、上述のとおりモバイル端末の検知コマンドをポーリングコマンドとして説明したがこれ以外にモバイル端末を検知できるようなコマンドの類であれば、コマンド種類は問わず、監視コマンドとも言う。
これにより置き忘れられた非接触IC携帯電話200が不正に利用されるのを防止できる。また、機能停止コマンドには非接触ICチップ201の機能停止だけでなく、携帯電話制御部207の機能停止を指定する。つまり、非接触IC制御部202は機能停止コマンドの指定パラメータに携帯電話制御部が含まれていたら、この要求を携帯電話制御部207に転送する。携帯電話制御部207はこの要求を受け取り、その機能を停止する。非接触ICチップ201だけなのか携帯電話制御部207も停止するかは自動取引装置側の設定に任される。
【0015】
図3は非接触IC携帯電話を用いた自動取引装置の業務フローである。自動取引装置101の操作部105に表示するアイドル画面に携帯電話による取引メニュー「ケータイ取引」を表示する。そしてこの取引を選択すると(301)、取引種別を選択する(302)。取引種別には、キャッシュカード引出、預入、クレジット借入、返済等がある。この取引種別のうち所望の種別が操作部105より選択されると操作部105に表示するケータイセット案内画面にて「携帯電話を所定位置に置いて下さい」のガイダンスを表示する。自動取引装置101のリーダライタ106上に非接触IC携帯電話1が置かれるのを検知すると、非接触IC携帯電話に内蔵された非接触ICチップからステップ302による取引選択した種別に応じたデータ204,205を読取る(303)。
続いて、暗証番号の入力・照合処理(304)、操作部105への金額入力(305)、金額確認(306)の処理を行い、紙幣ユニット104からの出金等の処理や、カードユニットからの明細票発行処理(307)を制御部107中心に実行する。
そして、自動取引装置による取引が終了、完了すると、操作部105に「携帯電話をお取りください」とのガイダンス表示と共に音声出力し(308)、携帯電話1を置いたままか否かをリーダライタ106又は後述のポーリング応答によって検知する(309)。携帯電話1を検知しないとき、即ち、利用者が間違いなく携帯電話を保持したときは取引終了画面として「ご利用ありがとうございました」のガイダンスを操作部105に表示し、初期画面を表示する。一方、ステップ309にて携帯電話の置き忘れを検知すると、一定時間(数秒程度)の間或いは一定回数(リトライで3回程度)、「携帯電話をお取りください」(308)を繰り返し、タイムアップ等のときは非接触IC携帯電話をロック(機能停止)の処理を実行する(311)。
【0016】
図4は非接触IC携帯電話の置き忘れ検知と置き忘れ時に非接触IC携帯電話の機能を停止することを説明する内部処理フローで、図3にて説明したステップ309〜311の詳細を説明する。なお、図3にて既に説明した処理は同一の符号を付す。
上述のステップ307,308の処理を実行後、自動取引装置101はモバイル端末の置き忘れを検知するタイマをスタートする、またはリトライ回数をセットする(403)。そしてモバイル端末の置き忘れ検知処理(404)に移行する。この置き忘れ検知処理は、自動取引装置101の制御部107からポーリングコマンドを送信し、モバイル端末からの応答によって置き忘れか否かを判定する(405)。言い換えれば、モバイル端末の応答監視機能を自動取引装置が有しているものである。応答がなかった場合は図3で説明したステップ312の処理を実行し、応答があった場合は即ち自動取引装置のリーダライタ106上にモバイル端末があることを示すため、ステップ308とほぼ同じガイダンス、音声を出力すると共に警告音を出力し(308’)、タイマスタートにてのカウント、またはリトライ回数のカウントを判定し(310)、タイプアップやリトライアウトのときはモバイル端末の機能停止コマンドを送信する(408)。このコマンドパラメータには図2で説明の非接触ICチップの機能201のみを停止するのか、携帯電話制御部207の機能も停止するのかが指定されている。なお、このステップ408は図3のステップ311とほぼ同様な処理を示している。一方、非接触IC携帯電話1は自動取引装置101からのコマンドに基づき、指定の機能を停止させる(409)が、後述の図5にて詳細を説明する。他方、自動取引装置101は非接触IC携帯電話が置き忘れされたことをロギングする(410)。なお、ロギングとは制御部107に端末を置き忘れた日時やデータ等を記憶することであり、その後、操作部105には初期画面としての種々の取引を表示する。
【0017】
図5は非接触IC携帯電話の機能停止について、携帯電話側を中心に説明した内部処理フローを示す。
自動取引装置は図3、図4で説明したとおり置き忘れの検知処理を実行すると、非接触IC携帯電話に機能停止コマンドを送信する(408)。非接触IC携帯電話1は非接触ICチップ201の非接触IC制御部202がその停止コマンドを受信し(502)、非接触ICチップ201自身の機能を停止する(503)。これによりICチップ201の機能、例えばキャッシュカード機能やクレジット機能等の使用が不可能となり、正当利用者以外による出金取引等ができない状態となる。
更に自動取引装置101から受信したコマンドのパラメータに携帯電話制御部の機能停止が指定されていればそれを判定し(504)、指定がなければ終了するが、指定があれば携帯電話制御部207に対してその指定コマンドを転送する(505)。携帯電話制御部207はその停止コマンドを受信し(506)、制御部207自身の機能を停止する(507)。これにより携帯電話、すなわちモバイル端末の全ての機能が停止するので、例えば、他のモバイル端末への通信等も不可能な状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】非接触IC携帯電話と自動取引装置とを示す自動取引システム構成図。
【図2】非接触IC携帯電話と自動取引装置の内部ブロック図。
【図3】非接触IC携帯電話を用いた自動取引装置の業務フロー図。
【図4】非接触IC携帯電話の機能を停止するフロー図。
【図5】非接触IC携帯電話側の処理フローの詳細図。
【符号の説明】
【0019】
1…非接触IC携帯電話(モバイル端末)、101…自動取引装置、106…非接触ICリーダーライタ、107…制御部、207…携帯制御部、201…非接触ICチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離通信用インタフェースを有するモバイル端末と通信可能な自動取引装置であって、
表示又は入力を行い操作部と、前記操作部近傍に配置され且つ前記モバイル端末とのデータ読取又書込を行うリーダライタと、制御部とを有し、
前記制御部は、前記操作部より選択された取引種別に応じて前記リーダライタ上に当接された前記モバイル端末とデータ通信する手段と、
前記リーダライタ上に当接された前記モバイル端末に対して予め指定された指定コマンドを発行し、当該モバイル端末の全て或いは一部の機能を停止する停止手段とを有することを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動取引装置において、
前記制御部は、前記操作部によって選択された取引終了後、前記リーダライタに対して監視コマンドの発行手段と、前記モバイル端末からの応答に基づき監視する監視手段とを有することを特徴とする自動取引装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動取引装置において、
警告表示又は警告音を出力する出力手段を有することを特徴とする自動取引装置。
【請求項4】
金融機関等に設置され、入金又は出金取引を実行する自動取引装置と近距離通信するモバイル端末において、
種々のデータを有する非接触ICチップと、制御部とを有し、
前記非接触ICチップ又は前記制御部は、前記自動取引装置から受信した指定コマンドに基づき、前記非接触ICチップ自身機能、又は、前記制御部及び前記非接触ICチップの機能を停止処理することを特徴とするモバイル端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−87233(P2007−87233A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277057(P2005−277057)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】