自動変速機
【課題】伝達効率の低下を抑制させると共に、構造が簡単であり、大幅な設計変更を要せず、且つ、変速をスムーズに行うことができる自動変速機を提供する。
【解決手段】前進1速段から所定の中速段に亘る低速段域の全ての変速段を確立させる際には、第1プラネタリギヤ4の出力要素Caと変速用のプラネタリギヤPGの1つの要素とを連結する状態となり、所定の中速段を超える変速段からなる高速段域の全ての変速段を確立させる際には前記連結を断つ状態となる第1係合機構を備える。第1係合機構は噛合機構S1で構成される。前記中速段は4速段以上である。
【解決手段】前進1速段から所定の中速段に亘る低速段域の全ての変速段を確立させる際には、第1プラネタリギヤ4の出力要素Caと変速用のプラネタリギヤPGの1つの要素とを連結する状態となり、所定の中速段を超える変速段からなる高速段域の全ての変速段を確立させる際には前記連結を断つ状態となる第1係合機構を備える。第1係合機構は噛合機構S1で構成される。前記中速段は4速段以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸の回転をプラネタリギヤを介して複数段に変速して出力部材から出力する自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力軸の回転をプラネタリギヤを介して複数段に変速して出力部材から出力する自動変速機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のものでは、入力用のプラネタリギヤと、変速用のプラネタリギヤとを備えている。入力用のプラネタリギヤは、サンギヤと、リングギヤと、サンギヤ及びリングギヤに噛合するピニオンを自転及び公転自在に軸支するキャリアとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0004】
入力用のプラネタリギヤのリングギヤは入力軸に連結される入力要素であり、サンギヤは変速機ケース内に固定される固定要素であり、キャリアが出力要素となって、入力軸の回転を減速してキャリアから出力する。
【0005】
変速用のプラネタリギヤは、第1サンギヤと、第2サンギヤと、リングギヤと、互いに噛合すると共に、一方が第1サンギヤに噛合し、他方が第2サンギヤ及びリングギヤに噛合する一対のピニオンを自転及び公転自在に軸支するキャリアとから成るラビニヨ型のプラネタリギヤで構成している。
【0006】
又、特許文献1のものは、係合機構として、クラッチドラムが入力用のプラネタリギヤの出力要素たるキャリアに連結された第1クラッチと、第1クラッチのクラッチハブを変速用のプラネタリギヤの第1サンギヤに連結する第1連結状態、第1クラッチのクラッチハブを第2サンギヤに連結する第2連結状態、第1クラッチのクラッチハブと第1及び第2サンギヤとの連結を断つ状態の3つのニュートラル状態のうち何れか1つの状態に切換自在な第1同期噛合機構と、クラッチハブが変速用のプラネタリギヤのキャリアに連結された第2油圧式多板クラッチと、第2油圧式多板クラッチのクラッチドラムを入力軸に連結する第3連結状態、第2油圧式多板クラッチのクラッチドラムを変速機ケースに固定する第4連結状態、第2油圧式多板クラッチのクラッチドラムと入力軸との連結を断ち、且つ第2油圧式多板クラッチのクラッチドラムと変速機ケースとの固定を断つニュートラル状態の3つの状態のうちいずれか1つの状態に切り換え自在な第2同期噛合機構と、第1サンギヤと入力軸とを解除自在に連結する第3油圧式多板クラッチと、第2サンギヤを変速機ケースに解除自在に固定する第1ブレーキとを備える。
【0007】
そして、特許文献1のものでは、第1油圧式多板クラッチと第2油圧式多板クラッチを係合し、第1同期噛合機構を前記第1連結状態とし、第2同期噛合機構を前記第4連結状態とすることにより、前進1速段を確立する。又、第1油圧式多板クラッチと第1ブレーキとを係合し、第1同期噛合機構を前記第1連結状態とし、第2同期噛合機構を、前記ニュートラル状態とすると共に、車両の走行状態に基づいて前記第4連結状態となる側で待機させるプリシフト状態とすることにより、前進2速段を確立する。
【0008】
又、第3油圧式多板クラッチと第1ブレーキとを係合し、第1同期噛合機構を、前記ニュートラル状態とすると共に、車両の走行状態に基づいて前記第1連結状態となる側又は前記第2連結状態となる側で待機させるプリシフト状態とし、第2同期噛合機構を前記ニュートラル状態することにより、前進3速段を確立する。又、第1油圧式多板クラッチと第3油圧式多板クラッチとを係合し、第1同期噛合機構を前記第2連結状態とし、第2同期噛合機構を、前記ニュートラル状態とすると共に、車両の走行状態に基づいて前記第3連結状態となる側で待機させるプリシフト状態とすることにより、前進4速段を確立する。
【0009】
又、第2油圧式多板クラッチと第3油圧式多板クラッチとを係合し、第1同期噛合機構を前記第2連結状態とし、第2同期噛合機構を前記第3連結状態とすることにより、前進5速段を確立する。又、第1油圧式多板クラッチと第2油圧式多板クラッチとを係合し、第1同期噛合機構を前記第2連結状態とし、第2同期噛合機構を前記第3連結状態とすることにより、前進6速段を確立する。
【0010】
又、第2油圧式多板クラッチと第1ブレーキとを係合し、第1同期噛合機構を、ニュートラル状態とすると共に、車両の走行状態に基づいて前記第2連結状態となる側で待機させるプリシフト状態とし、第2同期噛合機構を前記第3連結状態とすることにより、前進7速段を確立する。
【0011】
特許文献1の自動変速機によれば、同期噛合機構を用いないものと比較して、各変速段における非係合状態の油圧式多板クラッチの数(開放数)を減少させることができ、連結を断つ状態に切り換えた油圧式多板クラッチの引き摺りトルクの発生を低減させることができ、引き摺りトルクに伴うフリクションロスにより伝達効率が低下することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−75665号公報(第4−8頁、第2図−第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来の自動変速機は、伝達効率の低下を抑制させることができるというメリットを有する反面、1の油圧式多板クラッチと1の同期噛合機構とを一組として用いるため、同期噛合機構を用いない自動変速機から大幅な設計変更が必要になると共に、構造が複雑となって、製造コストが嵩むという問題がある。
【0014】
又、上記従来の自動変速機の第1同期噛合機構は、前進2速段と前進3速段との間で変速する際、及び前進3速段と前進4速段との間で変速する際に切り換えられ、第2同期噛合機構は、前進1速段と前進2速段との間で変速する際、及び前進4速段と前進5速段との間で変速する際に切り換えられる。
【0015】
ここで、上記従来の自動変速機の各変速段のうち、前進1速段から前進3速段までを低速段域、前進4速段から前進7速段までを高速段域とすると、上記従来の自動変速機は、低速段域において、変速時における第1同期噛合機構および第2同期噛合機構の切換えが1箇所ずつある。
【0016】
また、低速段域においては、回転しているプラネタリギヤの各要素の伝達トルクが大きい上、更に従来技術では、本来低速段側では油圧多板式のブレーキを用いて高い伝達トルク容量を確保するべき締結要素を、低速段域で切り替える油圧式多板クラッチと同期噛合機構の直列配置によって置き換えている。このため、従来技術では低速段域で締結が必要な第1油圧式多板クラッチと第2油圧式多板クラッチの高容量化が必要となり、コスト及び重量面で不利となるという問題がある。
【0017】
更に、従来技術では低速段域と高速段域のいずれにおいても、油圧式多板クラッチあるいは同ブレーキの開放数が同じ為、高速段域でも低速段域と同様に、開放している油圧式多板クラッチあるいはブレーキの引き摺りによるフリクションロスが発生して、伝達効率を低下させるという問題点があった。
【0018】
本発明は、以上の点に鑑み、特に高速段域における伝達効率の低下を抑制させると共に、構造が簡単であり、大幅な設計変更を要せず、且つ、変速をスムーズに行うことができる自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明は、変速機ケース内に配置された複数のプラネタリギヤを介して入力軸の回転を複数段に変速して出力部材から出力する自動変速機において、前記各プラネタリギヤは複数の要素を備え、前進1速段から所定の中速段に亘る低速段域の全ての変速段を確立させる際には、前記プラネタリギヤの1の要素と、他の要素又は入力軸又は変速機ケースとを連結する状態となり、前記所定の中速段を超える変速段からなる高速段域の全ての変速段を確立させる際には前記連結を断つ状態となる第1係合機構を備え、第1係合機構は、噛合機構で構成され、前記所定の中速段は4速段以上でであることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、第1係合機構が同期噛合機構(シンクロメッシュ機構)又はドグクラッチ機構からなる噛合機構で構成されるため、油圧式多板クラッチで構成されるものと比較して、特に高速段域において引き摺りトルクによるフリクションロスを大幅に低減し、伝達効率の低下を防止することができる。
【0021】
又、第1係合機構たる噛合機構は、前記低速段域においては前記連結する状態となり、前記高速段域では前記連結を断つ状態となるため、低速段域内では連結状態の切換えが行われない。このため、本発明の噛合機構は、連結状態の切換えは、比較的トルクが小さい高速段側でのみ切り換えられ、更に中速段から高速段域の変速段に変速するアップシフトにおいては、次段の油圧式多板クラッチあるいはブレーキの係合に伴って、噛合機構における伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけで済むため、切替がスムーズに行われ、変速を迅速に行うことができる。
【0022】
本発明の第1具体的態様としては、例えば、前記複数のプラネタリギヤを、入力用のプラネタリギヤと変速用のプラネタリギヤとで構成し、入力用のプラネタリギヤは、入力軸に連結される入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、入力軸の回転を変速して出力要素から出力し、第1係合機構たる噛合機構は、出力要素と、変速用のプラネタリギヤの1の要素とを解除自在に連結するように構成することができる。
【0023】
より具体的な例として、例えば、入力用のプラネタリギヤは、入力軸の回転を減速して出力要素から出力し、変速用のプラネタリギヤは、速度線図においてギヤ比に対応する間隔で並ぶ4つの回転要素を構成し、これら回転要素を速度線図における並び順に夫々第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素、第4回転要素として、第2回転要素を出力部材に連結し、係合機構として、入力用のプラネタリギヤの出力要素と変速用のプラネタリギヤの第1回転要素とを解除自在に連結する第1係合機構たる噛合機構と、入力軸と変速用のプラネタリギヤの第3回転要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、入力用のプラネタリギヤの出力要素と変速用のプラネタリギヤの第4回転要素とを解除自在に連結する第3係合機構と、第4回転要素を変速機ケースに解除自在に固定する第4係合機構と、第3回転要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0024】
かかる構成によれば、後述する実施形態から明らかなように、前進6速段の変速を行うことができる共に、1速段から4速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、5速段、6速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、4速段と5速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0025】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0026】
更に5速段、6速段の高速段域における油圧式多板クラッチの開放数を一つ減らすことが出来る為、高速段域における油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスを低減し、伝達効率を向上させることが出来る。
【0027】
又、入力軸と第4回転要素とを解除自在に連結する第6係合機構を設ければ、後述する実施形態の説明から明らかなように前進8速段の変速を行うことができる共に、1速段から5速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、6速段から8速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、5速段と6速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0028】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
更に6速段から8速段の高速段域における油圧式多板クラッチの開放数を一つ減らすことが出来る為、高速段域における油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスを低減し、伝達効率を向上させることが出来る。
【0029】
本発明の第2の具体的態様としては、例えば、変速機ケース内に第1から第4の4つのプラネタリギヤを備え、第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順にサンギヤ側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順にサンギヤ側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順にサンギヤ側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とし、第4プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順にサンギヤ側から夫々第10要素、第11要素及び第12要素として、入力軸と第1プラネタリギヤの第2要素とが連結され、第1プラネタリギヤの第1要素と、第3プラネタリギヤの第7要素とを連結して第1連結体が構成され、第1プラネタリギヤの第3要素と第2プラネタリギヤの第6要素とを連結して第2連結体が構成され、第2プラネタリギヤの第4要素と第4プラネタリギヤの第10要素とを連結して第3連結体が構成され、第3プラネタリギヤの第8要素と第4プラネタリギヤの第12要素とを連結して第4連結体が構成され、第4プラネタリギヤの第11要素と出力部材とが連結され、係合機構として、第3プラネタリギヤの第9要素を変速機ケースに解除自在に固定する第1係合機構たる噛合機構と、入力軸と第3連結体とを解除自在に連結する第2係合機構と、第2プラネタリギヤの第5要素と第4プラネタリギヤの第11要素とを解除自在に連結する第3係合機構と、第2連結体と第3連結体とを解除自在に連結する第4係合機構と、第1連結体を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0030】
本発明の第2の具体的態様によれば、後述する実施形態から明らかなように、前進8速段の変速を行うことができる共に、1速段から5速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、6速段から8速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、5速段と6速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0031】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを1組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
更に6速段から8速段の高速段域における油圧式多板ブレーキの開放数を一つ減らすことが出来る為、高速段域における油圧式多板ブレーキの引き摺りによるフリクションロスを低減し、伝達効率を向上させることが出来る。
【0032】
本発明の第3の具体的態様としては、例えば、変速機ケース内に第1プラネタリギヤと第2プラネタリギヤとを備え、第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第1要素が入力軸に連結され、入力軸に平行に配置した出力部材たる出力軸に、第2要素が第1ギヤ列を介して連結されると共に、第6要素が第1ギヤ列とは異なるギヤ比の第2ギヤ列を介して連結され、係合機構として、第3要素と第5要素とを解除自在に連結する第1係合機構たる噛合機構と、第4要素と入力軸とを解除自在に連結する第2係合機構と、第5要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第4要素を変速機ケースに解除自在に固定する第4係合機構と、第5要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0033】
かかる構成によれば、後述する実施形態の説明から明らかなように、前進6段の変速を行うことができる。そして、本発明では、プラネタリギヤとして軸方向に並ぶ第1と第2の2つのプラネタリギヤを用いるだけであるため、変速機の軸長を短縮できる。更に、2速段と3速段以外の変速段では第1と第2の両プラネタリギヤの片方のプラネタリギヤ単独での動力伝達が行われると共に、4速段と5速段との2つの変速段において夫々第1プラネタリギヤと第2プラネタリギヤとがロック状態になるため、噛合伝達効率は100%になり、全ての変速段のトータルの伝達効率が向上する。
【0034】
又、後述する実施形態から明らかなように、1速段から4速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、5速段、6速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、4速段と5速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0035】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
更に5速段、6速段の高速段域における油圧式多板クラッチの開放数を一つ減らすことが出来る為、高速段域における油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスを低減し、伝達効率を向上させることが出来る。
【0036】
本発明の第4の具体的態様としては、例えば、入力用のプラネタリギヤを第1プラネタリギヤとして、変速用のプラネタリギヤは、第2と第3の2つのプラネタリギヤで構成され、第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、第6要素と第9要素とを連結して連結体を構成し、第8要素が出力部材に連結され、係合機構として、連結体と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第4要素と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第5要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第4要素と第7要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第5要素と第7要素とを解除自在に連結する第5係合機構と、第5要素を変速機ケースに解除自在に固定する第6係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0037】
かかる構成によれば、後述する実施形態の説明から明らかなように、前進8段の変速を行うことができると共に、第1乃至第6の6個の係合機構のうち各変速段において3個の係合機構が係合することになる。そのため、各変速段で開放している係合機構の数は3個になる。従って、4個の係合機構が開放しているものに比し、開放している係合機構によるフリクションロスを低減でき、変速機の効率が向上する。
【0038】
更に、第1係合機構が噛合機構で構成されるため、油圧式多板クラッチで構成されるものと比較して、高速段域において開放している油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスが大幅に低減し、噛合機構が開放される高速段域(6速段〜8速段)では、フリクションロスが発生する油圧式多板クラッチあるいはブレーキの数が2個になる。従って、第4の具体的態様によれば、高速段域の伝達効率をより向上させることができる。
【0039】
又、後述する実施形態から明らかなように、1速段から5速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、6速段から8速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、5速段と6速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0040】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0041】
本発明の第5の具体的態様としては、例えば、ポンプとタービンとを機械的に連結させるロックアップクラッチを有し動力源に連結される流体トルクコンバータと、サンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を有する第1から第3の3つのプラネタリギヤとを備え、流体トルクコンバータを介して動力源の回転が入力される入力軸の回転をプラネタリギヤで複数段に変速して出力部材に出力し、入力軸は第1と第2の2つの入力軸で構成され、第1入力軸はタービンに連結され、第2入力軸は、ロックアップクラッチに介設された第2入力軸用ディスクと、プラネタリギヤの何れか1つの要素とに連結され、ロックアップクラッチの係合で動力源の回転が伝達される状態となり、ロックアップクラッチの開放で動力源の回転の伝達を断たれる状態となり、第1プラネタリギヤは、第1入力軸に連結される入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、第5要素が第2入力軸に連結され、第6要素と第9要素とを連結して連結体を構成し、第8要素が出力部材に連結され、係合機構として、連結体と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第4要素と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第4要素と第7要素とを解除自在に連結する第3係合機構と、第5要素と第7要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第5要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0042】
かかる構成によれば、ロックアップクラッチが係合する高速段側の変速段を確立する際にのみ係合される係合機構の機能を、ロックアップクラッチと第2入力部材用ディスクとで果たすことができ、変速機の高速段側でのみ係合される係合機構を1つ少なくすることができる。これにより、係合機構のピストンや油圧回路等をロックアップクラッチのもので共通化でき、自動変速機の小型化及び構造の簡略化を図ることができる。
【0043】
又、後述する実施形態から明らかなように、前進8速段の変速を行うことができると共に、1速段から5速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、6速段から8速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、5速段と6速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0044】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
更に6速段から8速段の高速段域における油圧式多板クラッチの開放数を一つ減らすことが出来る為、高速段域における油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスを低減し、伝達効率を向上させることが出来る。
【0045】
本発明の第6の具体的態様としては、入力用のプラネタリギヤを第1プラネタリギヤとして、変速用のプラネタリギヤを、第2と第3の2つのプラネタリギヤで構成し、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第3要素と第5要素とを連結して連結体を構成し、連結体が出力部材に連結され、係合機構として、第6要素と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第1係合機構たる噛合機構と、第1要素と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第2要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第1要素と第4要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第2要素と第4要素とを解除自在に連結する第5係合機構と、第2要素を変速機ケースに解除自在に固定する第6係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0046】
かかる構成によれば、後述する実施形態の説明から明らかなように、前進7段の変速を行うことができると共に、第1乃至第6の6個の係合機構のうち各変速段において3個の係合機構が係合することになる。そのため、各変速段で開放している係合機構の数は3個になる。従って、4個の係合機構が開放しているものに比し、開放している係合機構によるフリクションロスを低減でき、変速機の効率が向上する。
【0047】
更に、第1係合機構が噛合機構で構成されるため、油圧式多板クラッチで構成されるものと比較して、高速段域において開放している油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスが大幅に低減し、噛合機構が開放される高速段域(6速段、7速段)では、フリクションロスが発生する油圧式多板クラッチあるいはブレーキの数が2個になる。従って、第6の具体的態様によれば、高速段域の伝達効率をより向上させることができる。
【0048】
又、後述する実施形態から明らかなように、1速段から5速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、6速段、7速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、5速段と6速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0049】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0050】
本発明の第7の具体的態様としては、変速機ケース内に配置した入力用の第1プラネタリギヤと変速用の第2と第3の2つのプラネタリギヤとを備え、第1プラネタリギヤは、入力軸に連結された入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第3要素と第6要素とを連結して連結体を構成し、第4要素が出力部材に連結され、係合機構として、第2要素と第5要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第2要素と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第1要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第1要素と第5要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第1要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構と、連結体と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第6係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0051】
かかる構成によれば、後述する実施形態の説明から明らかなように、前進8段の変速を行うことができると共に、第1乃至第6の6個の係合機構のうち各変速段において3個の係合機構が係合することになる。そのため、各変速段で開放している係合機構の数は3個になる。従って、4個の係合機構が開放しているものに比し、開放している係合機構によるフリクションロスを低減でき、変速機の効率が向上する。
【0052】
更に、第1係合機構が噛合機構で構成されるため、油圧式多板クラッチで構成されるものと比較して、高速段域において開放している油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスが大幅に低減し、噛合機構が開放される高速段域(7速段、8速段)では、フリクションロスが発生する油圧式多板クラッチあるいはブレーキの数が2個になる。従って、第6の具体的態様によれば、高速段域の伝達効率をより向上させることができる。
【0053】
又、後述する実施形態から明らかなように、1速段から6速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、7速段、8速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、6速段と7速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0054】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0055】
本発明の第8の具体的態様としては、変速機ケース内に配置した入力用の第1プラネタリギヤと変速用の第2と第3の2つのプラネタリギヤとを備え、第1プラネタリギヤは、入力軸に連結された入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第3要素と第6要素とを連結して連結体を構成し、第4要素が出力部材に連結され、係合機構として、第2要素と第5要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第2要素と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第1要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第1要素と第5要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第1要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構と、連結体を変速機ケースに解除自在に固定する第6係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0056】
かかる構成によれば、後述する実施形態の説明から明らかなように、前進8段の変速を行うことができると共に、第1乃至第6の6個の係合機構のうち各変速段において3個の係合機構が係合することになる。そのため、各変速段で開放している係合機構の数は3個になる。従って、4個の係合機構が開放しているものに比し、開放している係合機構によるフリクションロスを低減でき、変速機の効率が向上する。
【0057】
更に、第1係合機構が噛合機構で構成されるため、油圧式多板クラッチで構成されるものと比較して、高速段域において開放している油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスが大幅に低減し、噛合機構が開放される高速段域(7速段、8速段)では、フリクションロスが発生する油圧式多板クラッチあるいはブレーキの数が2個になる。従って、第6の具体的態様によれば、高速段域の伝達効率をより向上させることができる。
【0058】
又、後述する実施形態から明らかなように、1速段から6速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、7速段、8速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、6速段と7速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけで良いため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0059】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0060】
又、第8の具体的態様では、第7の具体的態様のものと比較して、入力軸上に配置される構成部品の多い第6係合機構たるクラッチを、入力軸上に配置される構成部品の少ないブレーキに置き換えたものであり、自動変速機の軸長を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a)は本発明の自動変速機の第1実施形態を示すスケルトン図。(b)は第1実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図2】第1実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図3】(a)は本発明の自動変速機の第2実施形態を示すスケルトン図。(b)は第2実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図4】第2実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図5】(a)は本発明の自動変速機の第3実施形態を示すスケルトン図。(b)は第3実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図6】第3実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図7】(a)は本発明の自動変速機の第4実施形態を示すスケルトン図。(b)は第4実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図8】第4実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図9】(a)は本発明の自動変速機の第5実施形態を示すスケルトン図。(b)は第5実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図10】第5実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図11】本発明の自動変速機の第6実施形態を示すスケルトン図。
【図12】(a)は本発明の自動変速機の第7実施形態を示すスケルトン図。(b)は第7実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図13】第7実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図14】(a)は本発明の自動変速機の第8実施形態を示すスケルトン図。(b)は第8実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図15】第8実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図16】(a)は本発明の自動変速機の第9実施形態を示すスケルトン図。(b)は第9実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図17】第9実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【発明を実施するための形態】
【0062】
[第1実施形態]
図1(a)は、本発明の自動変速機の第1実施形態を示している。第1実施形態の自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と同心に配置された出力ギヤから成る出力部材3とを備えている。出力部材3の回転は、図外のデファレンシャルギヤを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0063】
又、変速機ケース1内には、入力軸2の周りに位置させて、入力用の第1プラネタリギヤ4と、変速用のプラネタリギヤPGとが配置されている。第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSa及びリングギヤRaに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなるシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0064】
第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaは入力軸2に連結されて入力要素となり、サンギヤSaは変速機ケース1に固定されて固定要素となり、キャリアCaが出力要素となる。図2の上段に第1プラネタリギヤ4の速度線図を示す。第1プラネタリギヤ4の速度線図において、下方の横線は回転速度が「0」であることを示し、上方の横線は回転速度が入力軸の回転を「1」としてこれと同一である「1」であることを示している。第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとすると、第1プラネタリギヤ4は入力軸2の回転速度「1」をi/(i+1)に減速して出力要素たるキャリアCaから出力する。即ち、出力要素たるキャリアCaの回転速度N1はi/(i+1)となる。
【0065】
変速用のプラネタリギヤPGは、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とで構成される。第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、互いに噛合すると共に、一方が第1サンギヤSbに噛合し、他方がリングギヤRbに噛合する一対のピニオンPb,Pb’を自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとから成るダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0066】
第3プラネタリギヤ6は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤSc及びリングギヤRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0067】
第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcは、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと一体化されている。又、第3プラネタリギヤ6のピニオンPcは、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと噛合するピニオンPb’と一体化され、第3プラネタリギヤ6のキャリアCcは、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbのピニオンPb’を軸支する部分と一体化されている。即ち、第1実施形態の変速用のプラネタリギヤPGは、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とによりいわゆるラビニヨ型のプラネタリギヤを構成している。
【0068】
変速用のプラネタリギヤPGは、図2の下段の速度線図に示すように、縦線で表される4つの回転要素を備える。図2に示される各回転要素を左から順に、第1回転要素Y1、第2回転要素Y2、第3回転要素Y3、第4回転要素Y4とすると、第1回転要素Y1は第2プラネタリギヤ5の第1サンギヤSb、第2回転要素Y2は第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb及び第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc、第3回転要素Y3は第2プラネタリギヤ5のキャリアCb及び第3プラネタリギヤ6のキャリアCc、第4回転要素Y4は第3プラネタリギヤ6のサンギヤScで構成される。
【0069】
第2プラネタリギヤ5のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をj、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとすると、第1〜第4の各回転要素間の間隔は、j−1:1:kの割り合いとなっている。尚、変速用のプラネタリギヤPGの速度線図において、下方の横線は回転速度が「0」であることを示し、上方の横線は回転速度が入力軸の回転を「1」としてこれと同一である「1」であることを示している。又、第2回転要素Y2は出力部材3に連結されている。
【0070】
第1実施形態の自動変速機は、係合機構として、第1係合機構としての噛合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)と、第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1と、第3係合機構たる第2油圧式多板クラッチC2と、第4係合機構たる第1ブレーキB1と、第5係合機構たる第2ブレーキB2とを備える。
【0071】
第1係合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)は、第1回転要素Y1と第1プラネタリギヤ4の出力要素たるキャリアCaとを解除自在に連結する。第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1は、第3回転要素Y3と入力軸2とを解除自在に連結する。第3係合機構たる第2油圧式多板クラッチC2は、第4回転要素Y4と第1プラネタリギヤ4の出力要素たるキャリアCaとを解除自在に連結する。
【0072】
第4係合機構たる第1ブレーキB1は、バンドブレーキで構成され、第4回転要素Y4を変速機ケース1に解除自在に固定する。第5係合機構たる第2ブレーキB2は、油圧式多板ブレーキで構成され、第3回転要素Y3を変速機ケース1に解除自在に固定する。尚、第1実施形態の自動変速機には、第3回転要素Y3の正転(前進方向の回転)を許容し逆転を阻止する一方向クラッチF1が、第2ブレーキB2と並列に設けられている。
【0073】
第1実施形態の自動変速機においては、第1同期噛合機構S1を係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第3回転要素Y3の回転速度が一方向クラッチF1の働きで「0」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「1st」で回転して、1速段が確立される。尚、第1同期噛合機構S1に加えて第2ブレーキB2を係合させると、エンジンブレーキを効かせられる状態で1速段が確立される。
【0074】
第1同期噛合機構S1と第1ブレーキB1とを係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第4回転要素Y4の回転速度が「0」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「2nd」で回転して、2速段が確立される。
【0075】
第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第1回転要素Y1及び第4回転要素Y4が共にN1で回転し、変速用のプラネタリギヤPGの各回転要素が相対回転不能なロック状態となって、第2回転要素Y2がN1である「3rd」で回転して、3速段が確立される。
【0076】
第1同期噛合機構S1と第1油圧式多板クラッチC1とを係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第3回転要素Y3の回転速度が「1」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「4th」で回転して、4速段が確立される。
【0077】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第3回転要素Y3の回転速度が「1」、第4回転要素Y4の回転速度がN1となり、第2回転要素Y2が速度線図に示す「5th」で回転して、5速段が確立される。
【0078】
第1油圧式多板クラッチC1と第1ブレーキB1とを係合させると、第3回転要素Y3の回転速度が「1」、第4回転要素Y4の回転速度が「0」となり、第2回転要素Y2が速度線図に示す「6th」で回転して、6速段が確立される。
【0079】
第2油圧式多板クラッチC2と第2ブレーキB2とを係合させると、第4回転要素Y4の回転速度がN1、第3回転要素Y3の回転速度が「0」となり、第2回転要素Y2が速度線図に示すマイナスの「Rev」で回転して、後進段が確立される。
【0080】
図1(b)は、上述した各変速段における各係合機構の係合状態を纏めて示したものであり、「○」は係合を表している。又、図1(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを1.772、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを2.600、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを2.167とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)が適切となると共に、レシオレンジ(1速段のギヤレシオと6速段のギヤレシオの比(図1(b)の1速段の公比の欄に表示))も適切となる。
【0081】
又、図1(b)の開放数の欄には、各変速段において、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチおよびブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を示している。これによれば、全ての変速段において、開放数が3以下となっており、特に5速段、6速段、後進段では、開放数が2となっていることが分かる。
【0082】
第1実施形態の自動変速機によれば、第1回転要素Y1と第1プラネタリギヤ4のキャリアCaとを解除自在に連結する第1係合機構として、第1同期噛合機構S1を用いているため、第1係合機構を油圧式多板クラッチで構成するものと比較して、第1係合機構での引き摺りによるフリクションロスが大幅に低減し(具体的には、第1同期噛合機構S1が開放される5速段と6速段で、第1同期噛合機構S1による引き摺りトルクが大幅に低減する)、伝達効率の低下を抑制することができる。
【0083】
又、第1同期噛合機構S1は、1速段〜4速段に亘る低速段域においては連結する状態となり、5速段と6速段からなる高速段域では前記連結を断つ状態となるため、高速段域と比較して隣接する変速段間のトルク差が大きい低速段域内では連結状態の切換えが行われず、トルク差の小さい4速段と5速段の切り換え時のみ連結状態が切り換えられる。また、中速段たる4速段から高速段域の変速段たる5速段に変速するアップシフトの際には、伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、第1同期噛合機構S1の切替を迅速に行うことができ、変速をスムーズに行うことができる。
【0084】
又、第1実施形態の自動変速機は、第1係合機構を第1同期噛合機構S1で構成するだけでよいため、構成が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0085】
尚、第1実施形態においては、入力用の第1プラネタリギヤ4を、入力軸2の回転を減速して出力するものとしたが、これに限らず、第1プラネタリギヤ4を入力軸2の回転を増速して出力するものとしてもよい。この場合、例えば、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaを入力軸2に連結して入力要素とし、サンギヤSaを変速機ケース1に固定して固定要素とし、リングギヤRaを出力要素とすればよい。
[第2実施形態]
次に、図3、図4を参照して、本発明の自動変速機の第2実施形態について説明する。第2実施形態の自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と同軸上に配置された出力軸から成る出力部材3とを備えている。出力部材3の回転は、図外のプロペラシャフトを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0086】
又、変速機ケース1内には、入力軸2の周りに位置させて、入力用の第1プラネタリギヤ4と、変速用のプラネタリギヤPGとが配置されている。第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、互いに噛合すると共に、一方がサンギヤSaに噛合し、他方がリングギヤRaに噛合する一対のピニオンPa,Pa’を自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなるダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0087】
第1プラネタリギヤ4のキャリアCaは入力軸2に連結されて入力要素となり、サンギヤSaは変速機ケース1に固定されて固定要素となり、リングギヤRaが出力要素となる。図4の上段に第1プラネタリギヤ4の速度線図を示す。第1プラネタリギヤ4の速度線図において、下方の横線は回転速度が「0」であることを示し、上方の横線は回転速度が入力軸の回転を「1」としてこれと同一である「1」であることを示している。第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとすると、第1プラネタリギヤ4は入力軸2の回転速度「1」を(i−1)/iに減速して出力要素たるリングギヤRaから出力する。即ち、出力要素たるリングギヤRaの回転速度N1は(i−1)/iとなる。
【0088】
変速用のプラネタリギヤPGは、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とで構成される。第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、互いに噛合すると共に、一方がサンギヤSbに噛合し、他方がリングギヤRbに噛合する一対のピニオンPb,Pb’を自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとから成るダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0089】
第3プラネタリギヤ6は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤSc及びリングギヤRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0090】
第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと第3プラネタリギヤ6のキャリアCcとは、互いに連結されて第1連結体Rb,Ccを構成する。第2プラネタリギヤ5のキャリアCbと第3プラネタリギヤ6のサンギヤScとは、互いに連結されて第2連結体Cb,Scを構成する。
【0091】
変速用のプラネタリギヤPGは、図4の下段の速度線図に示すように、縦線で表される4つの回転要素を備える。図2に示される各回転要素を右から順に、第1回転要素Y1、第2回転要素Y2、第3回転要素Y3、第4回転要素Y4とすると、第1回転要素Y1は第2プラネタリギヤ5の第1サンギヤSb、第2回転要素Y2は第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc、第3回転要素Y3は第1連結体Rb,Cc、第4回転要素Y4は第2連結体Cb,Scで構成される。
【0092】
第2プラネタリギヤ5のギヤ比をj、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとすると、第1〜第4の各回転要素間の間隔は、jk−k−1:1:kの割り合いとなっている。第2回転要素Y2は出力部材3に連結されている。
【0093】
第2実施形態の自動変速機は、係合機構として、第1係合機構としての噛合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)と、第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1と、第3係合機構たる第2油圧式多板クラッチC2と、第4係合機構たる第1ブレーキB1と、第5係合機構たる第2ブレーキB2と、第6係合機構たる第3油圧式多板クラッチC3とを備える。
【0094】
第1係合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)は、第1回転要素Y1と第1プラネタリギヤ4の出力要素たるリングギヤRaとを解除自在に連結する。第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1は、第3回転要素Y3と入力軸2とを解除自在に連結する。第3係合機構たる第2油圧式多板クラッチC2は、第4回転要素Y4と第1プラネタリギヤ4の出力要素たるリングギヤRaとを解除自在に連結する。
【0095】
第4係合機構たる第1ブレーキB1は、油圧式多板ブレーキで構成され、第4回転要素Y4を変速機ケース1に解除自在に固定する。第5係合機構たる第2ブレーキB2は、油圧式多板ブレーキで構成され、第3回転要素Y3を変速機ケース1に解除自在に固定する。第6係合機構たる第3油圧式多板クラッチC3は、第4回転要素Y4と入力軸2とを解除自在に連結する。尚、第2実施形態の自動変速機には、第3回転要素Y3の正転(前進方向の回転)を許容し、逆転を阻止する一方向クラッチF1が、第2ブレーキB2と並列に設けられている。
【0096】
第2実施形態の自動変速機においては、第1同期噛合機構S1を係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第3回転要素Y3の回転速度が一方向クラッチF1の働きで「0」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「1st」で回転して、1速段が確立される。尚、第1同期噛合機構S1に加えて第2ブレーキB2を係合させると、エンジンブレーキを効かせられる状態で1速段が確立される。
【0097】
第1同期噛合機構S1と第1ブレーキB1とを係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第4回転要素Y4の回転速度が「0」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「2nd」で回転して、2速段が確立される。
【0098】
第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第1回転要素Y1及び第4回転要素Y4が共にN1で回転し、変速用のプラネタリギヤPGの各回転要素が相対回転不能なロック状態となって、第2回転要素Y2がN1である「3rd」で回転して、3速段が確立される。
【0099】
第1同期噛合機構S1と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第4回転要素Y4の回転速度が「1」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「4th」で回転して、4速段が確立される。
【0100】
第1同期噛合機構S1と第1油圧式多板クラッチC1とを係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第3回転要素Y3の回転速度が「1」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「5th」で回転して、5速段が確立される。
【0101】
第1油圧式多板クラッチC1と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第3回転要素Y3及び第4回転要素Y4の回転速度が共に「1」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2も「1」である「6th」で回転して、6速段が確立される。
【0102】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第3回転要素Y3の回転速度が「1」、第4回転要素Y4の回転速度がN1となり、第2回転要素Y2が速度線図に示す「7th」で回転して、7速段が確立される。
【0103】
第1油圧式多板クラッチC1と第1ブレーキB1とを係合させると、第3回転要素Y3の回転速度が「1」、第4回転要素Y4の回転速度が「0」となり、第2回転要素Y2が速度線図に示す「8th」で回転して、8速段が確立される。
【0104】
第2油圧式多板クラッチC2と第2ブレーキB2とを係合させると、第4回転要素Y4の回転速度がN1、第3回転要素Y3の回転速度が「0」となり、第2回転要素Y2が速度線図に示すマイナスの「Rev1」で回転して、後進1速段が確立される。
【0105】
第3油圧式多板クラッチC3と第2ブレーキB2とを係合させると、第4回転要素Y4の回転速度が「1」、第3回転要素Y3の回転速度が「0」となり、第2回転要素Y2が速度線図に示すマイナスの「Rev2」で回転して、後進2速段が確立される。
【0106】
図3(b)は、上述した各変速段における各係合機構の係合状態を纏めて示したものであり、「○」は係合を表している。又、図3(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを2.000、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを2.252、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを2.000とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)が適切となると共に、レシオレンジ(1速段のギヤレシオと8速段のギヤレシオの比(図3(b)の1速段の公比の欄に表示))も適切となる。
【0107】
又、図3(b)の開放数の欄には、各変速段において、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチ及びブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を示している。これによれば、6速段から8速段、及び後進1速段、後進2速段では、開放数が3と減少していることが分かる。
【0108】
第2実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、第1同期噛合機構S1がトルク差の小さい5速段と6速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
【0109】
尚、第2実施形態においては、入力用の第1プラネタリギヤ4を、入力軸2の回転を減速して出力するものとしたが、これに限らず、第1プラネタリギヤ4を入力軸2の回転を増速して出力するものとしてもよい。この場合、例えば、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaを入力軸2に連結して入力要素とし、サンギヤSaを変速機ケース1に固定して固定要素とし、キャリアCaを出力要素とすればよい。
[第3実施形態]
次に、図5、図6を参照して、本発明の自動変速機の第3実施形態について説明する。第3実施形態の自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と同軸上に配置された出力軸から成る出力部材3とを備えている。出力部材3の回転は、図外のプロペラシャフトを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0110】
又、変速機ケース1内には、入力軸2の周りに位置させて、第1から第4の4つのプラネタリギヤ4,5,6,7が配置されている。第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSa及びリングギヤRaに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0111】
図6の上から2段目に示す第1プラネタリギヤ4の速度線図(サンギヤ、キャリア、リングギヤの3個の要素の回転速度を直線で表すことができる図)を参照して、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSa、キャリアCa及びリングギヤRaから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に右側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSa、第2要素はキャリアCa、第3要素はリングギヤRaになる。
【0112】
ここで、サンギヤSaとキャリアCa間の間隔とキャリアCaとリングギヤRa間の間隔との比は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとして、i:1に設定される。尚、速度線図において、下の横線と上の横線は夫々回転速度が「0」と「1」(入力軸2と同じ回転速度)であることを示している。
【0113】
第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、サンギヤSb及びリングギヤRbに噛合するピニオンPbを自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。図6の上から3段目に示す第2プラネタリギヤ5の速度線図を参照して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb、キャリアCb及びリングギヤRbから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に右側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はリングギヤRb、第5要素はキャリアCb、第6要素はサンギヤSbになる。ここで、サンギヤSbとキャリアCb間の間隔とキャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2プラネタリギヤ5のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0114】
第3プラネタリギヤ6は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤSc及びリングギヤRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。図6の上から1段目に示す第3プラネタリギヤ6の速度線図を参照して、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc、キャリアCc及びリングギヤRcから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に右側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素はサンギヤSc、第8要素はキャリアCc、第9要素はリングギヤRcになる。ここで、サンギヤScとキャリアCc間の間隔とキャリアCcとリングギヤRc間の間隔との比は、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとして、k:1に設定される。
【0115】
第4プラネタリギヤ7は、サンギヤSdと、リングギヤRdと、サンギヤSd及びリングギヤRdに噛合するピニオンPdを自転及び公転自在に軸支するキャリアCdとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。図6の上から4段目に示す第4プラネタリギヤ7の速度線図を参照して、第4プラネタリギヤ7のサンギヤSd、キャリアCd及びリングギヤRdから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に右側から夫々第10要素、第11要素及び第12要素とすると、第10要素はサンギヤSd、第11要素はキャリアCd、第12要素はリングギヤRdになる。ここで、サンギヤSdとキャリアCd間の間隔とキャリアCdとリングギヤRd間の間隔との比は、第4プラネタリギヤ7のギヤ比をmとして、m:1に設定される。
【0116】
第1プラネタリギヤ4のキャリアCaは入力軸2に連結されている。又、第4プラネタリギヤ7のキャリアCdは出力部材3に連結されている。第1プラネタリギヤ4のサンギヤSaと第3プラネタリギヤ6のサンギヤScとは互いに連結され、第1連結体Sa,Scを構成する。第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaと第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbとは互いに連結され、第2連結体Ra,Sbを構成する。第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと第4プラネタリギヤ7のサンギヤSdとは互いに連結され、第3連結体Rb,Sdを構成する。第3プラネタリギヤ6のキャリアCcと第4プラネタリギヤ7のリングギヤRdとは互いに連結され、第4連結体Cc,Rdを構成する。
【0117】
又、第3実施形態の自動変速機は、係合機構として、第1係合機構としての噛合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)と、第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1と、第3係合機構たる第2油圧式多板クラッチC2と、第4係合機構たる第3油圧式多板クラッチC3と、第5係合機構たる第1ブレーキB1とを備える。
【0118】
第1係合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)は、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcを変速機ケース1に解除自在に固定する。第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1は、第3連結体Rb,Sdを入力軸2に解除自在に連結する。第3係合機構たる第2油圧式多板クラッチC2は、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbを第4プラネタリギヤ7のキャリアCdに解除自在に連結する。第4係合機構たる第3油圧式多板クラッチC3は、第2連結体Ra,Sbを第3連結体Rb,Sdに解除自在に連結する。第5係合機構たる第1ブレーキB1は、第1連結体Sa,Scを変速機ケース1に解除自在に連結する。
【0119】
第3実施形態の自動変速機においては、第1同期噛合機構S1と第1ブレーキB1と第1油圧式多板クラッチC1とを係合させると、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc(第9要素)の回転速度が「0」、第1連結体Sa,Sc(第1,第7要素)の回転速度が「0」となることにより、第3プラネタリギヤ6の各要素が相対回転不能なロック状態となって、第4連結体Cc,Rd(第8,第12要素)の回転速度も「0」となる。又、第3連結体Rb,Sd(第4,第10要素)の回転速度が「1」となる。従って、第4プラネタリギヤ7の速度線が図6に「1st」で示す線となり、1速段が確立される。
【0120】
第1同期噛合機構S1と第1ブレーキB1と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc(第9要素)の回転速度が「0」、第1連結体Sa,Sc(第1,第7要素)の回転速度が「0」となることにより、第3プラネタリギヤ6の各要素が相対回転不能なロック状態となって、第4連結体Cc,Rd(第8,第12要素)の回転速度も「0」となる。又、第1プラネタリギヤ4の速度線が「2nd」で示す線となり、第2連結体Ra,Sb(第3,第6要素)が(i+1)/iであるN1に増速されて回転し、第3連結体Rb,Sd(第4,第10要素)の回転速度もN1となる。従って、第4プラネタリギヤ7の速度線が図6に「2nd」で示す線となり、2速段が確立される。
【0121】
第1同期噛合機構S1と第1油圧式多板クラッチC1と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第2連結体Ra,Sb(第3,第6要素)及び第3連結体Rb,Sd(第4,第10要素)の回転速度が「1」となり、第1プラネタリギヤ4の各要素が相対回転不能なロック状態となるため、第1連結体Sa,Sc(第1,第7要素)の回転速度も「1」となる。従って、第3プラネタリギヤ6の速度線が図6に「3rd」で示す線となり、第4プラネタリギヤ7の速度線が図6に「3rd」で示す線となって、3速段が確立される。
【0122】
第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のキャリアCa(第2要素)の回転速度が「1」、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc(第9要素)の回転速度が「0」となり、第2プラネタリギヤ5及び第4プラネタリギヤ7の各要素が相対回転不能なロック状態となって、第1から第4の各プラネタリギヤ4,5,6,7の速度線が図6に「4th」で示す線となって、4速段が確立される。
【0123】
第1同期噛合機構S1と第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のキャリアCa(第2要素)及び第3連結体Rb,Sd(第4,第10要素)の回転速度が「1」、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc(第9要素)の回転速度が「0」となり、第1から第4の各プラネタリギヤ4,5,6,7の速度線が図6に「5th」で示す線となって、5速段が確立される。
【0124】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第1から第4の各プラネタリギヤ4,5,6,7の各要素が相対回転不能なロック状態となり、全ての要素が「1」の速度で回転して、6速段が確立される。
【0125】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2と第1ブレーキB1とを係合させると、第2連結体Ra,Sb(第3,第6要素)の回転速度がN1、第3連結体Rb,Sd(第4,第10要素)の回転速度が「1」となり、第2プラネタリギヤ5の速度線が図6に「7th」で示す線となって、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbと第4プラネタリギヤ7のキャリアCdとが等速度で回転し、7速段が確立される。
【0126】
第2油圧式多板クラッチC2と第3油圧式多板クラッチC3と第1ブレーキB1とを係合させると、第2連結体Ra,Sb(第3,第6要素)の回転速度がN1となり、第2プラネタリギヤ5及び第4プラネタリギヤ7の各要素が相対回転不能なロック状態となって、出力部材3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCd(第11要素)がN1で回転して、8速段が確立される。
【0127】
第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2と第1ブレーキB1とを係合させると、第1連結体Sa,Sc(第1,第7要素)及び第4連結体Cc,Rd(第8,第12要素)の回転速度が「0」、第2連結体Ra,Sb(第3,第6要素)の回転速度がN1となり、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbと第4プラネタリギヤ7のキャリアCdとが等速度で回転して、第2プラネタリギヤ5及び第4プラネタリギヤ7の各速度線が図6に「Rev」で示す線となって、後進段が確立される。
【0128】
図5(b)は、上述した各変速段における各係合機構の係合状態を纏めて示したものであり、「○」は係合を表している。又、図5(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを2.00、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを1.60、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを2.10、第4プラネタリギヤ7のギヤ比mを3.70とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)が適切となると共に、レシオレンジ(1速段のギヤレシオと8速段のギヤレシオの比(図5(b)の1速段の公比の欄に表示))も適切となる。
【0129】
又、図5(b)の開放数の欄には、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチおよびブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を各変速段毎に示している。これによれば、全ての変速段において、開放数が2以下となっており、特に6速段から8速段では、開放数が1となっていることが分かる。
【0130】
第3実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、第1同期噛合機構S1がトルク差の小さい5速段と6速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
[第4実施形態]
次に、図7及び図8を参照して、本発明の自動変速機の第4実施形態について説明する。第4実施形態の自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と平行に配置した出力軸たる出力部材3とを備えている。出力部材3の回転は、出力部材3に固定の出力ギヤ3aに噛合するファイナルドリブンギヤDfaを固定したデファレンシャルギヤDfを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0131】
また、変速機ケース1内には、第1プラネタリギヤ4と第2プラネタリギヤ5とが入力軸2と同心に配置されている。第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSaとリングギヤRaとに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に支持するキャリアCaとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0132】
図8の下段に示す第1プラネタリギヤ4の速度線図を参照して、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSa、キャリアCa及びリングギヤRaから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSa、第2要素はキャリアCa、第3要素はリングギヤRaになる。ここで、サンギヤSaとキャリアCa間の間隔とキャリアCaとリングギヤRa間の間隔との比は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとして、i:1に設定される。尚、速度線図において、下の横線と上の横線は夫々回転速度が「0」と「1」(入力軸2と同じ回転速度)であることを示している。
【0133】
第2プラネタリギヤ5は、第1プラネタリギヤ4と同様に、サンギヤSbと、リングギヤRbと、サンギヤSbとリングギヤRbとに噛合するピニオンPbを自転及び公転自在に支持するキャリアCbとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0134】
図8の上段に示す第2プラネタリギヤ5の速度線図を参照して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb、キャリアCb及びリングギヤRbから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はサンギヤSb、第5要素はキャリアCb、第6要素はリングギヤRbになる。尚、サンギヤSbとキャリアCb間の間隔とキャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2プラネタリギヤ5のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0135】
第1プラネタリギヤ4のサンギヤSa(第1要素)は入力軸2に連結されている。また、第1プラネタリギヤ4のキャリアCa(第2要素)は、キャリアCaに固定の駆動ギヤG1aと、駆動ギヤG1aに噛合する出力部材3に固定の従動ギヤG1bとから成る第1ギヤ列G1を介して出力部材3に連結され、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(第6要素)は、リングギヤRbに固定の駆動ギヤG2aと、駆動ギヤG2aに噛合する出力部材3に固定の従動ギヤG2bとから成る第2ギヤ列G2を介して出力部材3に連結されている。
【0136】
ここで、第1ギヤ列G1のギヤ比(従動ギヤの歯数/駆動ギヤの歯数)をp、第2ギア列G2のギヤ比をqとして、p>qになっている。また、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaと第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbは、両ギヤ列G1,G2を介して出力部材3で連結されることになる。そして、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbは、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度のq/pの速度で回転する。
【0137】
また、第4実施形態では、係合機構として、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb(第4要素)と入力軸2とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1と、第2プラネタリギヤ5のキャリアCb(第5要素)と入力軸2とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第3係合機構たる第2クラッチC2と、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRa(第3要素)と第2プラネタリギヤ5のキャリアCb(第5要素)とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第1係合機構としての噛合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)と、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb(第4要素)を変速機ケース1に固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第4係合機構たる第1ブレーキB1と、第2プラネタリギヤ5のキャリアCb(第5要素)を変速機ケース1に固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第5係合機構たる第2ブレーキB2とを備えている。
【0138】
第4実施形態においては、第1同期噛合機構S1と第2ブレーキB2とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSaの回転速度が「1」、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaの回転速度が「0」になり、第1プラネタリギヤ4の速度線が図8に「1st」で示す線になる。そして、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度は1/(i+1)になり、出力部材3が第1ギヤ列G1を介して1/{(i+1)p}の速度で回転して、1速段が確立される。
【0139】
第1同期噛合機構S1と第1ブレーキB1とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSaの回転速度が「1」、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbの回転速度が「0」になると共に、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaと第2プラネタリギヤ5のキャリアCbとが等速度で回転し、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbが第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度のq/pの速度で回転して、第1プラネタリギヤ4と第2プラネタリギヤ5の速度線は図8に「2nd」で示す線になる。そして、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度は(j+1)p/{(i+1)(j+1)p−ijq}、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbの回転速度は(j+1)q/{(i+1)(j+1)p−ijq}になり、出力部材3が(j+1)/{(i+1)(j+1)p−ijq}の速度で回転して、2速段が確立される。
【0140】
第1油圧式多板クラッチC1と第1同期噛合機構S1とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSaの回転速度と第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbの回転速度とが共に「1」になると共に、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaと第2プラネタリギヤ5のキャリアCbとが等速度で回転し、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbが第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度のq/pの速度で回転して、第1プラネタリギヤ4と第2プラネタリギヤ5の速度線は図8に「3rd」で示す線になる。そして、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度は(i+j+1)p/{(i+1)(j+1)p−ijq}、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbの回転速度は(i+j+1)q/{(i+1)(j+1)p−ijq}になり、出力部材3が(i+j+1)/{(i+1)(j+1)p−ijq}の速度で回転して、3速段が確立される。
【0141】
第2油圧式多板クラッチC2と第1同期噛合機構S1とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSaの回転速度と第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaの回転速度とが共に「1」になって、第1プラネタリギヤ4がロック状態になり、第1プラネタリギヤ4の速度線は図8に「4th」で示す線になる。そして、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度は「1」になり、出力部材3が1/pの速度で回転して、4速段が確立される。
【0142】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbの回転速度と第2プラネタリギヤ5のキャリアCbの回転速度とが共に「1」になって、第2プラネタリギヤ5がロック状態になり、第2プラネタリギヤ5の速度線は図8に「5th」で示す線になる。そして、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbの回転速度は「1」になり、出力部材3が1/qの速度で回転して、5速段が確立される。
【0143】
第2油圧式多板クラッチC2と第1ブレーキB1とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbの回転速度が「0」、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbの回転速度が「1」になり、第2プラネタリギヤ5の速度線は図8に「6th」で示す線になる。そして、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbの回転速度は(j+1)/jになり、出力部材3が(j+1)/(jq)の速度で回転して、6速段が確立される。
【0144】
第1油圧式多板クラッチC1と第2ブレーキB2とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbの回転速度が「1」、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbの回転速度が「0」になり、第2プラネタリギヤ5の速度線は図8に「Rev」で示す線になる。そして、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbの回転速度は−1/jになり、出力部材3が−1/(jq)の速度で回転して、後進段が確立される。
【0145】
尚、図8中の点線で示す速度線は、第1と第2の両プラネタリギヤ4,5のうち動力伝達する一方のプラネタリギヤに追従して他方のプラネタリギヤの各要素が回転することを表している。
【0146】
図7(b)は、上述した各変速段と第1同期噛合機構S1、油圧式多板クラッチC1,C2、ブレーキB1,B2の係合状態との関係を纏めて表示した図であり、「○」は係合を表している。また、図7(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを2.30、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを3.20、第1ギヤ列G1のギヤ比pを1.32、第2ギヤ列G2のギヤ比qを0.95とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)が適切になると共に、レシオレンジ(一速レシオ/6速レシオ)も適切になる。
【0147】
又、図7(b)の開放数の欄には、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチおよびブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を各変速段毎に示している。これによれば、全ての変速段において、開放数が3以下となっており、特に5速段、6速段、後進段では、開放数が2となっていることが分かる。
【0148】
第4実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、第1同期噛合機構S1がトルク差の小さい4速段と5速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
【0149】
また、プラネタリギヤとして第1と第2の2つのプラネタリギヤ4,5を用いるだけであるため、3つのプラネタリギヤを用いるものに比し、変速機の軸長を短縮できる。更に、2速段と3速段以外の変速段では第1と第2の両プラネタリギヤ4,5の片方のプラネタリギヤ単独での動力伝達が行われると共に、4速段と5速段とにおいて夫々第1プラネタリギヤ4と第2プラネタリギヤ5とがロック状態になるため、噛合伝達効率は100%になり、全ての変速段のトータルの伝達効率が向上する。
【0150】
尚、第4実施形態では、第1と第2の各プラネタリギヤ4,5をシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成したが、ダブルピニオン型のプラネタリギヤで第1プラネタリギヤ4や第2プラネタリギヤ5を構成することも可能である。第1プラネタリギヤ4をダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成した場合、サンギヤとキャリアとの一方が第1要素、リングギヤが第2要素、サンギヤとキャリアとの他方が第3要素になる。また、第2プラネタリギヤ5をダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成した場合、サンギヤとキャリアとの一方が第4要素、リングギヤが第5要素、サンギヤとキャリアとの他方が第6要素になる。
【0151】
また、第4実施形態では、入力軸2の周りに、一端側から順に、第1ギヤ列G1と、第1プラネタリギヤ4と、第1同期噛合機構S1と、第2ブレーキB2と、第2ギヤ列G2と、第2油圧多板クラッチC2と、第2プラネタリギヤ5と、第1ブレーキB1と、第1油圧多板クラッチC1とを配置したが、これに限定されない。例えば、第1ギヤ列G1と第2ギヤ列G2との間に、第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2と第2ブレーキB2とを配置してもよい。更に、入力軸2の一端側から順に、第1ブレーキB1と、第2ギヤ列G2と、第2プラネタリギヤ5と、第1油圧式多板クラッチC1と、第2油圧式多板クラッチC2と、第1同期噛合機構S1と、第2ブレーキB2と、第1ギヤ列G1と、第1プラネタリギヤ4とを配置してもよい。また、第1プラネタリギヤ4と第2プラネタリギヤ5との間に第1ギヤ列G1と第2ギヤ列G2とを配置することも可能である。
[第5実施形態]
次に、図9及び図10を参照して、本発明の自動変速機の第5実施形態について説明する。
【0152】
第5実施形態の自動変速機は、動力源たる図外のエンジンに連結される流体トルクコンバータTCを備えている。流体トルクコンバータTCは、エンジンのフライホイール2aに回転振動吸収用のダンパ2bを介して連結されるポンプPoと、ポンプPoから内部流体を介して動力伝達されるタービンTaと、ポンプPoとタービンTaとの間に介設され一方向クラッチを介して変速機ケース1に固定されるステータStと、タービンTaをポンプPoに機械的に連結するロックアップクラッチLCとを備えている。
【0153】
又、変速機ケース1内には、タービンTaと連結する中空の第1入力軸21と、第1入力軸21内に同心に内挿された第2入力軸22とが回転自在に軸支されている。又、自動変速機は、入力用の第1プラネタリギヤ4と、変速用の第2プラネタリギヤ5及び第3プラネタリギヤ6と、出力ギヤからなる出力部材3とを備え、何れも第1,第2入力軸21,22と同心に配置される。出力部材3の回転は、図外のデファレンシャルギヤを介して車両の左右両輪に伝達される。
【0154】
ロックアップクラッチLCには、第2入力軸22と連結する第2入力軸用ディスク22aが介設されている。ロックアップクラッチLCを係合させるとポンプPoとタービンTaとが機械的に連結されると共に、第2入力軸22も第2入力軸用ディスク22aを介してポンプPoとタービンTaとに機械的に連結される。尚、ロックアップクラッチLCは、単板式のものでも多板式のものでもよい。
【0155】
第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSaとリングギヤRaとに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に支持するキャリアCaとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0156】
図10の上段に示す速度線図を参照して、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSa、キャリアCa及びリングギヤRaから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSa、第2要素はキャリアCa、第3要素はリングギヤRaになる。
【0157】
尚、サンギヤSaとキャリアCa間の間隔とキャリアCaとリングギヤRa間の間隔との比は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとして、i:1に設定される。第5実施形態では、サンギヤSaを変速機ケース1に固定される固定要素とし、リングギヤRaを第1入力軸21に連結される入力要素として、キャリアCaが出力要素になるようにしている。第1プラネタリギヤ4の出力速度(キャリアCaの回転速度)N1はi/(i+1)になり、速度線図から明らかなように、第1入力軸21の回転が減速されてキャリアCaから出力される。尚、速度線図において、下の横線と上の横線は夫々回転速度が「0」と「1」(入力軸2と同じ回転速度)であることを示している。
【0158】
第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、互いに噛合すると共に一方がサンギヤSb、他方がリングギヤRbに噛合する一対のピニオンPb,Pb’を自転及び公転自在に支持するキャリアCbとから成るダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0159】
第3プラネタリギヤ6は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤScとリングギヤRcとに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に支持するキャリアCcとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0160】
図10の下段に示す速度線図を参照して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb、キャリアCb及びリングギヤRbから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はキャリアCb、第5要素はリングギヤRb、第6要素はサンギヤSbになる。尚、サンギヤSbとキャリアCb間の間隔とキャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2プラネタリギヤ5のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0161】
又、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc、キャリアCc及びリングギヤRcから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素はサンギヤSc、第8要素はキャリアCc、第9要素はリングギヤRcになる。尚、サンギヤSc(縦線Y2)とキャリアCc(縦線Y4)間の間隔とキャリアCc(縦線Y4)とリングギヤRc(縦線Y5)間の間隔との比は、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとして、k:1に設定される。
【0162】
ここで、第5実施形態では、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(第5要素)を第2入力軸22に連結し、サンギヤSb(第6要素)と第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc(第9要素)とを連結して連結体Sb,Rcが構成され、キャリアCc(第8要素)を出力部材3に連結している。
【0163】
又、係合機構として、第1プラネタリギヤ4のキャリアCa(第2要素)と第2プラネタリギヤ5のキャリアCb(第4要素)とを連結する状態とこの状態を断つ状態とに切換自在な第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1と、第1プラネタリギヤ4のキャリアCa(第2要素)と連結体Sb,Rc(第6,第9要素)とを連結する状態とこの状態を断つ状態とに切換自在な第1係合機構としての噛合機構たる第1同期噛合機構S1と、第2プラネタリギヤ5のキャリアCb(第4要素)と第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc(第7要素)とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第3係合機構たる第1切換クラッチCxと、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(第5要素)と第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc(第7要素)とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第4係合機構たる第2切換クラッチCyと、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(第5要素)を変速機ケース1に固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第5係合機構たる第1ブレーキB1とを備えている。両切換クラッチCx,Cyは油圧式多板クラッチで構成される。
【0164】
上記の如く第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbと第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcとを連結して連結体Sb,Rcを構成することにより、図10の下段に示す速度線図において、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbは、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcと同一の縦線Y5上に常時位置する。一方、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbとキャリアCbの速度線図上の位置は、第1切換クラッチCxを係合させた場合と第2切換クラッチCyを係合させた場合とで異なる。
【0165】
これを詳述するに、第1切換クラッチCxの係合時には、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbが第3プラネタリギヤ6のサンギヤScと同一の縦線Y2上に位置し、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbは、縦線Y2と縦線Y5間の間隔の1/jだけ縦線Y2から右側に離れた縦線Y3上に位置する。又、第2切換クラッチCyの係合時には、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbが縦線Y2上に位置し、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbは、縦線Y2との間の間隔と縦線Y5との間の間隔との比が1:jとなるように縦線Y2から左に離れた縦線Y1上に位置する。
【0166】
第1同期噛合機構S1と第1切換クラッチCxと第1ブレーキB1とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(縦線Y3)の回転速度が「0」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のキャリアCcが位置する縦線Y4での回転速度は「1st」になって、1速段が確立される。
【0167】
第1同期噛合機構S1と第2切換クラッチCyと第1ブレーキB1とを係合させると、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc(縦線Y2)の回転速度が「0」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のキャリアCcが位置する縦線Y4での回転速度は「2nd」になって、2速段が確立される。
【0168】
第1同期噛合機構S1と第1切換クラッチCxと第2切換クラッチCyとを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbとキャリアCbとが連結されて、第2プラネタリギヤ5が各要素の相対回転不能なロック状態になるため、縦線Y2での回転速度と縦線Y5での回転速度とが共に第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、縦線Y4での回転速度もN1である「3rd」になって、3速段が確立される。尚、3速段においては、第1油圧式多板クラッチC1も一緒に係合させてもよい。これにより、第1油圧式多板クラッチC1でフリクションロスが発生することを確実に防止することができる。
【0169】
第1同期噛合機構S1と第2切換クラッチCyとロックアップクラッチLCとを係合させると、縦線Y2での回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度がN1になり、縦線Y4での回転速度が「4th」になって、4速段が確立される。第5実施形態では、4速段以上の変速段においてはロックアップクラッチLCを係合させてトルクコンバータTCにおけるスリップを防止することで燃費の向上を図るように構成されている。
【0170】
第1同期噛合機構S1と第1切換クラッチCxとロックアップクラッチLCとを係合させると、縦線Y3での回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度がN1になり、縦線Y4での回転速度が「5th」になって、5速段が確立される。
【0171】
第1切換クラッチCxと第2切換クラッチCyとロックアップクラッチLCとを係合させると、第2プラネタリギヤ5が各要素の相対回転不能なロック状態になるため、縦線Y2での回転速度と縦線Y5での回転速度とが共に「1」になり、縦線Y4での回転速度も1である「6th」になって、6速段が確立される。
【0172】
第1油圧式多板クラッチC1と第1切換クラッチCxとロックアップクラッチLCとを係合させると、縦線Y2での回転速度がN1、縦線Y3での回転速度が「1」となり、縦線Y4での回転速度が「7th」となって、7速段が確立される。
【0173】
第1油圧式多板クラッチC1と第2切換クラッチCyとロックアップクラッチLCとを係合させると、縦線Y1での回転速度がN1、縦線Y2での回転速度が「1」となり、縦線Y4での回転速度が「8th」となって、8速段が確立される。
【0174】
第1油圧式多板クラッチC1と第1切換クラッチCxと第1ブレーキB1とを係合させると、縦線Y2での回転速度がN1、縦線Y3での回転速度が「0」となり、縦線Y4での回転速度がマイナスの「Rev1」となって、後進1速段が確立される。
【0175】
第1油圧式多板クラッチC1と第2切換クラッチCyと第1ブレーキB1とを係合させると、縦線Y1での回転速度がN1、縦線Y2での回転速度が「0」となり、縦線Y4での回転速度がマイナスの「Rev2」となって、後進2速段が確立される。
【0176】
図9(b)は、上述した各変速段と第1同期噛合機構S1、クラッチC1,Cx,Cy、ブレーキB1、ロックアップクラッチLCの係合状態との関係を纏めて表示した図であり、「○」は係合を表している。又、図9(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを1.4、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを2.4、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを1.7とした場合における各変速段のギヤレシオ(第1入力軸21の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)およびレシオレンジ(1速段と8速段のギヤレシオの比(図9(b)の1速段のギヤレシオの右隣の欄に表示))が適切になる。
【0177】
第5実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、第1同期噛合機構S1がトルク差の小さい5速段と6速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
【0178】
又、ロックアップクラッチLCを除く第1同期噛合機構S1、クラッチC1,Cx,Cy、ブレーキB1の5つの係合機構で、前進8段の変速を行うことができる。従って、従来のものよりも係合機構が1つ少ないにもかかわらず、前進変速段が1段多い自動変速機を構成することができ、又、係合機構が1つ減るため、小型化と構成の簡略化を図ることができる。又、第5実施形態のものによれば、図9(b)の開放数の欄に示すように、全ての変速段において開放されている係合機構の数を3つ以下とすることができ、特に1〜3速段と、6〜8速段においては開放されている係合機構の数を2、2つの後進段においては1とすることができ、更に3速段においては第1油圧式多板クラッチC1も係合させれば、開放されている係合機構の数を1とすることができる。従って、第5実施形態のものによれば、フリクションロスを軽減し、自動変速機の効率を向上させることができる。
【0179】
尚、第5実施形態の自動変速機においては、入力用の第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaを第1入力軸21に連結される入力要素、サンギヤSaを変速機ケース1に固定される固定要素、キャリアCaを出力要素としているが、サンギヤSaを入力要素、リングギヤRaを固定要素、キャリアCaを出力要素としてもよい。又、第1プラネタリギヤをダブルピニオン型のブラネタリギヤで構成し、サンギヤSaとキャリアCaの一方を入力要素、他方を固定要素、リングギヤRaを出力要素としてもよい。この場合、第1要素がサンギヤSaとキャリアCaの一方、第2要素がリングギヤRa、第3要素がサンギヤSaとキャリアCaの他方となる。
【0180】
又、第3プラネタリギヤ6を第2プラネタリギヤ5の径方向内側に配置して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbと第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcとを一体化してもよい。これによれば、自動変速機の軸長を更に短縮できる。
[第6実施形態]
次に、図11を参照して、本発明の自動変速機の第6実施形態を説明する。第6実施形態の自動変速機は、第5実施形態の自動変速機の第2入力軸22及び第2入力軸用ディスク22aに代えて、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(第5要素)と入力軸2とを解除自在に連結する第2油圧式多板クラッチC2を設けたものであり、他の構成は第5実施形態と同一である。尚、第6実施形態の自動変速機においては、第2油圧式多板クラッチC2を第3係合機構とし、第1切換クラッチCxを第4係合機構とし、第2切換クラッチCyを第5係合機構とし、第1ブレーキB1を第6係合機構とする。
【0181】
第6実施形態の自動変速機によれば、高速段域および低速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、第1同期噛合機構S1がトルク差の小さい5速段と6速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
[第7実施形態]
次に、図12、図13を参照して、本発明の自動変速機の第7実施形態について説明する。第7実施形態の自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と同心に配置された出力ギヤから成る出力部材3とを備えている。出力部材3の回転は、図外のデファレンシャルギヤを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0182】
又、変速機ケース1内には、入力軸2の周りに位置させて、入力用の第1プラネタリギヤ4と、変速用のプラネタリギヤPGとが配置されている。第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、互いに噛合すると共に、一方がサンギヤSaに噛合し、他方がリングギヤRaに噛合する一対のピニオンPa,Pa’を自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなるダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0183】
第1プラネタリギヤ4のキャリアCaは入力軸2に連結されて入力要素となり、サンギヤSaは変速機ケース1に固定されて固定要素となり、リングギヤRaが出力要素となる。図13の上段に第1プラネタリギヤ4の速度線図を示す。第1プラネタリギヤ4の速度線図において、下方の横線は回転速度が「0」であることを示し、上方の横線は回転速度が入力軸の回転を「1」としてこれと同一である「1」であることを示している。第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとすると、第1プラネタリギヤ4は入力軸2の回転速度「1」を(i−1)/iに減速して出力要素たるリングギヤRaから出力する。即ち、出力要素たるリングギヤRaの回転速度N1は(i−1)/iとなる。
【0184】
変速用のプラネタリギヤPGは、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とで構成される。第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、サンギヤSb及びリングギヤRbに噛合するピニオンPbを自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0185】
第3プラネタリギヤ6は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤSc及びリングギヤRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0186】
第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと第3プラネタリギヤ6のキャリアCcとは、互いに連結されて連結体Rb,Ccを構成する。連結体Rb,Ccは出力部材3に連結されている。
【0187】
図13の中段に示す速度線図を参照して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb、キャリアCb及びリングギヤRbから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSb、第2要素はキャリアCb、第3要素はリングギヤRbになる。尚、サンギヤSbとキャリアCb間の間隔とキャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2プラネタリギヤ5のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0188】
又、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc、キャリアCc及びリングギヤRcから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はサンギヤSc、第5要素はキャリアCc、第6要素はリングギヤRcになる。尚、サンギヤSc(縦線Y2)とキャリアCc(縦線Y4)間の間隔とキャリアCc(縦線Y4)とリングギヤRc(縦線Y5)間の間隔との比は、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとして、k:1に設定される。
【0189】
又、第7実施形態の自動変速機は、係合機構として、第1係合要素としての噛合機構たる第1同期噛合機構S1と、第2係合要素たる第1油圧式多板クラッチC1と、第3係合要素たる第2油圧式多板クラッチC2と、第4係合要素たる第1切換クラッチCxと、第5係合要素たる第2切換クラッチCyと、第6係合要素たる第1ブレーキB1とを備える。両切換クラッチCx,Cy及び第1ブレーキB1は、油圧式多板クラッチおよび油圧式多板ブレーキで構成される。
【0190】
第1同期噛合機構S1は、第1プラネタリギヤ4の出力要素たるリングギヤRaと第3プラネタリギヤ6の第6要素たるリングギヤRcとを解除自在に連結する。第1油圧式多板クラッチC1は、第1プラネタリギヤ4の出力要素たるリングギヤRaと第2プラネタリギヤ5の第1要素たるサンギヤSbと解除自在に連結する。
【0191】
第2油圧式多板クラッチC2は、第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbと入力軸2とを解除自在に連結する。第1切換クラッチCxは、第2プラネタリギヤ5の第1要素たるサンギヤSbと第3プラネタリギヤ6の第4要素たるサンギヤScとを解除自在に連結する。第2切換クラッチCyは、第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbと第3プラネタリギヤ6の第4要素たるサンギヤScとを解除自在に連結する。第1ブレーキB1は、第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbを変速機ケース1に解除自在に固定する。
【0192】
上記の如く第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと第3プラネタリギヤ6のキャリアCcとを連結して連結体Rb,Ccを構成することにより、図13の下段に示す速度線図において、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbは、第3プラネタリギヤ6のキャリアCcと同一の縦線Y4上に常時位置する。一方、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbとキャリアCbの速度線図上の位置は、第1切換クラッチCxを係合させた場合と第2切換クラッチCyを係合させた場合とで異なる。
【0193】
これを詳述するに、第1切換クラッチCxの係合時には、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbが第3プラネタリギヤ6のサンギヤScと同一の縦線Y2上に位置し、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbは、縦線Y2と縦線Y4間の間隔のj/(j+1)だけ縦線Y2から右側に離れた縦線Y3上に位置する。又、第2切換クラッチCyの係合時には、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbが縦線Y2上に位置し、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbは、縦線Y2との間の間隔と縦線Y4との間の間隔との比がj:j+1となるように縦線Y2から左に離れた縦線Y1上に位置する。
【0194】
第1同期噛合機構S1と第1切換クラッチCxと第1ブレーキB1とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のキャリアCb(縦線Y3)の回転速度が「0」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のキャリアCcが位置する縦線Y4での回転速度は「1st」になって、1速段が確立される。
【0195】
第1同期噛合機構S1と第2切換クラッチCyと第1ブレーキB1とを係合させると、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc(縦線Y2)の回転速度が「0」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のキャリアCcが位置する縦線Y4での回転速度は「2nd」になって、2速段が確立される。
【0196】
第1同期噛合機構S1と第1切換クラッチCxと第2切換クラッチCyとを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbとキャリアCbとが連結されて、第2プラネタリギヤ5が各要素の相対回転不能なロック状態になるため、縦線Y2での回転速度と縦線Y5での回転速度とが共に第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、縦線Y4での回転速度もN1である「3rd」になって、3速段が確立される。尚、3速段においては、第1油圧式多板クラッチC1も一緒に係合させてもよい。これにより、第1油圧式多板クラッチC1でフリクションロスが発生することを確実に防止することができる。
【0197】
第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2と第2切換クラッチCyとを係合させると、縦線Y2での回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度がN1になり、縦線Y4での回転速度が「4th」になって、4速段が確立される。
【0198】
第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxとを係合させると、縦線Y3での回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度がN1になり、縦線Y4での回転速度が「5th」になって、5速段が確立される。
【0199】
第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxと第2切換クラッチCyとを係合させると、第2プラネタリギヤ5が各要素の相対回転不能なロック状態になるため、縦線Y2での回転速度と縦線Y5での回転速度とが共に「1」になり、縦線Y4での回転速度も1である「6th」になって、6速段が確立される。
【0200】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2と第2切換クラッチCyとを係合させると、縦線Y1での回転速度がN1、縦線Y2での回転速度が「1」となり、縦線Y4での回転速度が「7th」となって、7速段が確立される。
【0201】
第1油圧式多板クラッチC1と第2切換クラッチCyと第1ブレーキB1とを係合させると、縦線Y1での回転速度がN1、縦線Y2での回転速度が「0」となり、縦線Y4での回転速度がマイナスの「Rev」となって、後進段が確立される。
【0202】
図12(b)は、上述した各変速段と第1同期噛合機構S1、クラッチC1,C2,Cx,Cy、ブレーキB1の係合状態との関係を纏めて表示した図であり、「○」は係合を表している。又、図12(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを2.0、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを2.0、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを2.0とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)およびレシオレンジ(1速段と7速段のギヤレシオの比(図12(b)の1速段のギヤレシオの右隣の欄に表示))が適切になる。
【0203】
又、図12(b)の開放数の欄には、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチおよびブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を各変速段毎に示している。これによれば、全ての変速段において、開放数が3以下となっており、特に6速段、7速段、後進段では、開放数が2となり、3速段でも第1油圧式多板クラッチC1を係合させれば、開放数を2とすることができる。
【0204】
第7実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、第1同期噛合機構S1がトルク差の小さい5速段と6速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
【0205】
尚、第7実施形態においては、入力用の第1プラネタリギヤ4を、入力軸2の回転を減速して出力するものとしたが、これに限らず、第1プラネタリギヤ4を入力軸2の回転を増速して出力するものとしてもよい。この場合、例えば、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaを入力軸2に連結して入力要素とし、サンギヤSaを変速機ケース1に固定して固定要素とし、キャリアCaを出力要素とすればよい。
[第8実施形態]
次に、図14、図15を参照して、本発明の自動変速機の第8実施形態について説明する。第8実施形態の自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と同心に配置された出力ギヤから成る出力部材3とを備えている。出力部材3の回転は、図外のデファレンシャルギヤを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0206】
又、変速機ケース1内には、入力軸2の周りに位置させて、入力用の第1プラネタリギヤ4と、変速用のプラネタリギヤPGとが配置されている。第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSa及びリングギヤRaに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなるシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0207】
第1プラネタリギヤ4のサンギヤSaは入力軸2に連結されて入力要素となり、リングギヤRaは変速機ケース1に固定されて固定要素となり、キャリアCaが出力要素となる。図15の上段に第1プラネタリギヤ4の速度線図を示す。第1プラネタリギヤ4の速度線図において、下方の横線は回転速度が「0」であることを示し、上方の横線は回転速度が入力軸の回転を「1」としてこれと同一である「1」であることを示している。第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとすると、第1プラネタリギヤ4は入力軸2の回転速度「1」を1/(i+1)に減速して出力要素たるキャリアCaから出力する。即ち、出力要素たるキャリアCaの回転速度N1は1/(i+1)となる。
【0208】
変速用のプラネタリギヤPGは、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とで構成される。第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、サンギヤSb及びリングギヤRbに噛合するピニオンPbを自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0209】
第3プラネタリギヤ6は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤSc及びリングギヤRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0210】
第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと第3プラネタリギヤ6のサンギヤScとは、互いに連結されて連結体Rb,Scを構成する。又、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcは出力部材3に連結されている。
【0211】
図15の中段に示す速度線図を参照して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb、キャリアCb及びリングギヤRbから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSb、第2要素はキャリアCb、第3要素はリングギヤRbになる。尚、サンギヤSbとキャリアCb間の間隔とキャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2プラネタリギヤ5のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0212】
又、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc、キャリアCc及びリングギヤRcから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はリングギヤRc、第5要素はキャリアCc、第6要素はサンギヤScになる。尚、サンギヤSc(縦線Y5)とキャリアCc(縦線Y3)間の間隔とキャリアCc(縦線Y3)とリングギヤRc(縦線Y2)間の間隔との比は、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとして、k:1に設定される。
【0213】
又、第8実施形態の自動変速機は、係合機構として、第1係合要素としての噛合機構たる切換用同期噛合機構Syと、第2係合要素たる第1油圧式多板クラッチC1と、第3係合要素たる第2油圧式多板クラッチC2と、第4係合要素たる第1切換クラッチCxと、第5係合要素たる第1ブレーキB1と、第6係合要素たる第3油圧式多板クラッチC3とを備える。第1切換クラッチCx及び第1ブレーキB1は、油圧式多板クラッチおよび油圧式多板ブレーキで構成される。
【0214】
切換用同期噛合機構Syは、第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbと第3プラネタリギヤ6の第5要素たるキャリアCcとを解除自在に連結する。第1油圧式多板クラッチC1は、第1プラネタリギヤ4の出力要素たるキャリアCaと第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbとを解除自在に連結する。
【0215】
第2油圧式多板クラッチC2は、第2プラネタリギヤ5の第1要素たるサンギヤSbと入力軸2とを解除自在に連結する。第1切換クラッチCxは、第2プラネタリギヤ5の第1要素たるサンギヤSbと第3プラネタリギヤ6の第5要素たるキャリアCcとを解除自在に連結する。第1ブレーキB1は、第2プラネタリギヤ5の第1要素たるサンギヤSbを変速機ケース1に解除自在に固定する。
【0216】
上記の如く第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと第3プラネタリギヤ6のサンギヤScとを連結して連結体Rb,Scを構成することにより、図15の下段に示す速度線図において、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbは、第3プラネタリギヤ6のサンギヤScと同一の縦線Y5上に常時位置する。一方、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbとキャリアCbの速度線図上の位置は、第1切換クラッチCxを係合させた場合と切換用同期噛合機構Syを係合させた場合とで異なる。
【0217】
これを詳述するに、第1切換クラッチCxの係合時には、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbが第3プラネタリギヤ6のキャリアCcと同一の縦線Y3上に位置し、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbは、縦線Y3と縦線Y5との間の間隔のj/(j+1)だけ縦線Y3から右側に離れた縦線Y4上に位置する。又、切換用同期噛合機構Syの係合時には、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbが縦線Y3上に位置し、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbは、縦線Y3との間の間隔と縦線Y5との間の間隔との比がj:j+1となるように縦線Y3から左に離れた縦線Y1上に位置する。
【0218】
切換用同期噛合機構Syと第3油圧式多板クラッチC3と第1ブレーキB1とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb(縦線Y1)の回転速度が「0」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「1st」になって、1速段が確立される。
【0219】
切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第1ブレーキB1とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb(縦線Y1)の回転速度が「0」、縦線Y3での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「2nd」になって、2速段が確立される。
【0220】
切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第2、第3プラネタリギヤ5,6の各要素が、相対回転不能なロック状態となると共に、N1の速度で回転して、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度もN1である「3rd」となり、3速段が確立される。
【0221】
切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb(縦線Y1)の回転速度が「1」、縦線Y3での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「4th」になって、4速段が確立される。
【0222】
切換用同期噛合機構Syと第2油圧式多板クラッチC2と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb(縦線Y1)の回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「5th」になって、5速段が確立される。
【0223】
切換用同期噛合機構Syと第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxとを係合させると、第2、第3プラネタリギヤ5,6の各要素が、相対回転不能なロック状態となると共に、「1」の速度で回転して、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度も「1」である「6th」となり、6速段が確立される。
【0224】
第2油圧式多板クラッチC2と第3油圧式多板クラッチC3と第1切換クラッチCxとを係合させると、縦線Y3での回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「7th」になって、7速段が確立される。
【0225】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxとを係合させると、縦線Y3での回転速度が「1」、縦線Y4での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「8th」になって、8速段が確立される。
【0226】
第3油圧式多板クラッチC3と第1切換クラッチCxと第1ブレーキB1とを係合させると、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1、縦線Y3での回転速度が「0」になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度はマイナスの「Rev1」になって、後進1速段が確立される。
【0227】
第1油圧式多板クラッチC1と第1切換クラッチCxと第1ブレーキB1とを係合させると、縦線Y4での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1、縦線Y3での回転速度が「0」になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度はマイナスの「Rev2」になって、後進2速段が確立される。
【0228】
図14(b)は、上述した各変速段と切換用同期噛合機構Sy、クラッチC1,C2,C3,Cx、ブレーキB1の係合状態との関係を纏めて表示した図であり、「○」は係合を表している。又、図14(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを1.4、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを1.4、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを3.0とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)およびレシオレンジ(1速段と8速段のギヤレシオの比(図14(b)の1速段の公比の欄に表示))が適切になる。
【0229】
又、図14(b)の開放数の欄には、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチおよびブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を各変速段毎に示している。これによれば、全ての変速段において、開放数が3以下となっており、特に7速段、8速段、後進1速段、後進2速段では、開放数が2となることがわかる。
【0230】
第8実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、切換用同期噛合機構Syがトルク差の小さい6速段と7速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
【0231】
尚、第8実施形態においては、入力用の第1プラネタリギヤ4を、入力軸2の回転を減速して出力するものとしたが、これに限らず、第1プラネタリギヤ4を入力軸2の回転を増速して出力するものとしてもよい。この場合、例えば、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaを入力軸2に連結して入力要素とし、リングギヤRaを変速機ケース1に固定して固定要素とし、サンギヤSaを出力要素とすればよい。
[第9実施形態]
次に、図16、図17を参照して、本発明の自動変速機の第9実施形態について説明する。第9実施形態の自動変速機は、第2プラネタリギヤ5の第1要素をリングギヤRb、第3要素をサンギヤSbとし、第2プラネタリギヤ5の第3要素たるサンギヤSbと第3プラネタリギヤ6の第6要素たるサンギヤScとを連結して連結体Sb,Scを構成し、第8実施形態の第3油圧式多板クラッチC3に代えて、連結体Sb,Scを変速機ケース1に解除自在に固定する第6係合機構たる第2ブレーキB2を備える点で、第8実施形態の自動変速機と異なる。
【0232】
この場合、第1切換クラッチCxの係合時には、第2プラネタリギヤ5の第1要素たるリングギヤRbが第3プラネタリギヤ6の第5要素たるキャリアCcと同一の縦線Y3上に位置し、第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbは、縦線Y3と縦線Y5との間の間隔の1/(j+1)だけ縦線Y3から右側に離れた縦線Y4上に位置する。
【0233】
又、切換用同期噛合機構Syの係合時には、第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbが縦線Y3上に位置し、第2プラネタリギヤ5の第1要素たるリングギヤRbは、縦線Y3との間の間隔と縦線Y5との間の間隔との比が1:j+1となるように縦線Y3から左に離れた縦線Y1上に位置する。他の構成は第8実施形態の自動変速機と同一である。
【0234】
第9実施形態の自動変速機では、切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第1ブレーキB1とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(縦線Y1)の回転速度が「0」、縦線Y3での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「1st」になって、1速段が確立される。
【0235】
切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第1切換クラッチCxとを係合させると、第2、第3プラネタリギヤ5,6の各要素が、相対回転不能なロック状態となると共に、N1の速度で回転して、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度もN1である「2nd」となり、2速段が確立される。
【0236】
切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第2ブレーキB2とを係合させると、縦線Y3での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1、縦線Y5での回転速度が「0」となり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「3rd」になって、3速段が確立される。
【0237】
切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(縦線Y1)の回転速度が「1」、縦線Y3での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「4th」になって、4速段が確立される。
【0238】
切換用同期噛合機構Syと第2油圧式多板クラッチC2と第2ブレーキB2とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(縦線Y1)の回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度が「0」となり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「5th」になって、5速段が確立される。
【0239】
切換用同期噛合機構Syと第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxとを係合させると、第2、第3プラネタリギヤ5,6の各要素が、相対回転不能なロック状態となると共に、「1」の速度で回転して、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度も「1」である「6th」となり、6速段が確立される。
【0240】
第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxと第2ブレーキB2とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(縦線Y3)の回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度が「0」となり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「7th」になって、7速段が確立される。
【0241】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxとを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(縦線Y3)での回転速度が「1」、縦線Y4での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「8th」になって、8速段が確立される。
【0242】
第1油圧式多板クラッチC1と第1切換クラッチCxと第1ブレーキB1とを係合させると、縦線Y4での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1、縦線Y3での回転速度が「0」になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度はマイナスの「Rev」になって、後進段が確立される。
【0243】
図16(b)は、上述した各変速段と切換用同期噛合機構Sy、クラッチC1,C2,Cx、ブレーキB1,B2の係合状態との関係を纏めて表示した図であり、「○」は係合を表している。又、図16(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを1.7、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを1.4、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを3.3とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)およびレシオレンジ(1速段と8速段のギヤレシオの比(図16(b)の1速段の公比の欄に表示))が適切になる。
【0244】
又、図16(b)の開放数の欄には、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチおよびブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を各変速段毎に示している。これによれば、全ての変速段において、開放数が3以下となっており、特に7速段、8速段、後進段では、開放数が2となることがわかる。
【0245】
第9実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、切換用同期噛合機構Syがトルク差の小さい6速段と7速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
【0246】
又、第9実施形態の自動変速機は、第8実施形態のものと比較して、入力軸2上に配置される構成部品の多い第3油圧式多板クラッチC3を、入力軸2上に配置される構成部品の少ない第2ブレーキB2に置き換えているため、自動変速機の軸長を短くすることができる。
【0247】
尚、第8実施形態においては、入力用の第1プラネタリギヤ4を、入力軸2の回転を減速して出力するものとしたが、これに限らず、第1プラネタリギヤ4を入力軸2の回転を増速して出力するものとしてもよい。この場合、例えば、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaを入力軸2に連結して入力要素とし、リングギヤRaを変速機ケース1に固定して固定要素とし、サンギヤSaを出力要素とすればよい。
【0248】
又、上記各実施形態においては、本発明の噛合機構として、擦り合わせ摩擦による回転同期機能を備えた同期噛合機構(シンクロメッシュ機構)を用いて説明したが、噛合機構は、同期噛合機構に限られず、回転同期機能を備えないドグクラッチ機構であってもよく、これによっても同様に本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0249】
1…変速機ケース、2…入力軸、3…出力部材、4…第1プラネタリギヤ、Sa…サンギヤ、Ra…リングギヤ、Pa…ピニオン、Ca…キャリア、PG…変速用のプラネタリギヤ、5…第2プラネタリギヤ、Sb…サンギヤ、Rb…リングギヤ、Pb,Pb’…ピニオン、Cb…キャリア、6…第3プラネタリギヤ、Sc…サンギヤ、Rc…リングギヤ、Pc…ピニオン、Cc…キャリア、7…第4プラネタリギヤ、Sd…サンギヤ、Rd…リングギヤ、Pd…ピニオン、Cd…キャリア、S1…第1同期噛合機構、Sy…切換用同期噛合機構、C1…第1油圧式多板クラッチ、C2…第2油圧式多板クラッチ、C3…第3油圧式多板クラッチ、Cx…第1切換クラッチ、Cy…第2切換クラッチ、B1…第1ブレーキ、B2…第2ブレーキ、F1…一方向クラッチ、TC…流体トルクコンバータ、G1…第1ギヤ列、G2…第2ギヤ列。
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸の回転をプラネタリギヤを介して複数段に変速して出力部材から出力する自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力軸の回転をプラネタリギヤを介して複数段に変速して出力部材から出力する自動変速機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のものでは、入力用のプラネタリギヤと、変速用のプラネタリギヤとを備えている。入力用のプラネタリギヤは、サンギヤと、リングギヤと、サンギヤ及びリングギヤに噛合するピニオンを自転及び公転自在に軸支するキャリアとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0004】
入力用のプラネタリギヤのリングギヤは入力軸に連結される入力要素であり、サンギヤは変速機ケース内に固定される固定要素であり、キャリアが出力要素となって、入力軸の回転を減速してキャリアから出力する。
【0005】
変速用のプラネタリギヤは、第1サンギヤと、第2サンギヤと、リングギヤと、互いに噛合すると共に、一方が第1サンギヤに噛合し、他方が第2サンギヤ及びリングギヤに噛合する一対のピニオンを自転及び公転自在に軸支するキャリアとから成るラビニヨ型のプラネタリギヤで構成している。
【0006】
又、特許文献1のものは、係合機構として、クラッチドラムが入力用のプラネタリギヤの出力要素たるキャリアに連結された第1クラッチと、第1クラッチのクラッチハブを変速用のプラネタリギヤの第1サンギヤに連結する第1連結状態、第1クラッチのクラッチハブを第2サンギヤに連結する第2連結状態、第1クラッチのクラッチハブと第1及び第2サンギヤとの連結を断つ状態の3つのニュートラル状態のうち何れか1つの状態に切換自在な第1同期噛合機構と、クラッチハブが変速用のプラネタリギヤのキャリアに連結された第2油圧式多板クラッチと、第2油圧式多板クラッチのクラッチドラムを入力軸に連結する第3連結状態、第2油圧式多板クラッチのクラッチドラムを変速機ケースに固定する第4連結状態、第2油圧式多板クラッチのクラッチドラムと入力軸との連結を断ち、且つ第2油圧式多板クラッチのクラッチドラムと変速機ケースとの固定を断つニュートラル状態の3つの状態のうちいずれか1つの状態に切り換え自在な第2同期噛合機構と、第1サンギヤと入力軸とを解除自在に連結する第3油圧式多板クラッチと、第2サンギヤを変速機ケースに解除自在に固定する第1ブレーキとを備える。
【0007】
そして、特許文献1のものでは、第1油圧式多板クラッチと第2油圧式多板クラッチを係合し、第1同期噛合機構を前記第1連結状態とし、第2同期噛合機構を前記第4連結状態とすることにより、前進1速段を確立する。又、第1油圧式多板クラッチと第1ブレーキとを係合し、第1同期噛合機構を前記第1連結状態とし、第2同期噛合機構を、前記ニュートラル状態とすると共に、車両の走行状態に基づいて前記第4連結状態となる側で待機させるプリシフト状態とすることにより、前進2速段を確立する。
【0008】
又、第3油圧式多板クラッチと第1ブレーキとを係合し、第1同期噛合機構を、前記ニュートラル状態とすると共に、車両の走行状態に基づいて前記第1連結状態となる側又は前記第2連結状態となる側で待機させるプリシフト状態とし、第2同期噛合機構を前記ニュートラル状態することにより、前進3速段を確立する。又、第1油圧式多板クラッチと第3油圧式多板クラッチとを係合し、第1同期噛合機構を前記第2連結状態とし、第2同期噛合機構を、前記ニュートラル状態とすると共に、車両の走行状態に基づいて前記第3連結状態となる側で待機させるプリシフト状態とすることにより、前進4速段を確立する。
【0009】
又、第2油圧式多板クラッチと第3油圧式多板クラッチとを係合し、第1同期噛合機構を前記第2連結状態とし、第2同期噛合機構を前記第3連結状態とすることにより、前進5速段を確立する。又、第1油圧式多板クラッチと第2油圧式多板クラッチとを係合し、第1同期噛合機構を前記第2連結状態とし、第2同期噛合機構を前記第3連結状態とすることにより、前進6速段を確立する。
【0010】
又、第2油圧式多板クラッチと第1ブレーキとを係合し、第1同期噛合機構を、ニュートラル状態とすると共に、車両の走行状態に基づいて前記第2連結状態となる側で待機させるプリシフト状態とし、第2同期噛合機構を前記第3連結状態とすることにより、前進7速段を確立する。
【0011】
特許文献1の自動変速機によれば、同期噛合機構を用いないものと比較して、各変速段における非係合状態の油圧式多板クラッチの数(開放数)を減少させることができ、連結を断つ状態に切り換えた油圧式多板クラッチの引き摺りトルクの発生を低減させることができ、引き摺りトルクに伴うフリクションロスにより伝達効率が低下することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−75665号公報(第4−8頁、第2図−第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来の自動変速機は、伝達効率の低下を抑制させることができるというメリットを有する反面、1の油圧式多板クラッチと1の同期噛合機構とを一組として用いるため、同期噛合機構を用いない自動変速機から大幅な設計変更が必要になると共に、構造が複雑となって、製造コストが嵩むという問題がある。
【0014】
又、上記従来の自動変速機の第1同期噛合機構は、前進2速段と前進3速段との間で変速する際、及び前進3速段と前進4速段との間で変速する際に切り換えられ、第2同期噛合機構は、前進1速段と前進2速段との間で変速する際、及び前進4速段と前進5速段との間で変速する際に切り換えられる。
【0015】
ここで、上記従来の自動変速機の各変速段のうち、前進1速段から前進3速段までを低速段域、前進4速段から前進7速段までを高速段域とすると、上記従来の自動変速機は、低速段域において、変速時における第1同期噛合機構および第2同期噛合機構の切換えが1箇所ずつある。
【0016】
また、低速段域においては、回転しているプラネタリギヤの各要素の伝達トルクが大きい上、更に従来技術では、本来低速段側では油圧多板式のブレーキを用いて高い伝達トルク容量を確保するべき締結要素を、低速段域で切り替える油圧式多板クラッチと同期噛合機構の直列配置によって置き換えている。このため、従来技術では低速段域で締結が必要な第1油圧式多板クラッチと第2油圧式多板クラッチの高容量化が必要となり、コスト及び重量面で不利となるという問題がある。
【0017】
更に、従来技術では低速段域と高速段域のいずれにおいても、油圧式多板クラッチあるいは同ブレーキの開放数が同じ為、高速段域でも低速段域と同様に、開放している油圧式多板クラッチあるいはブレーキの引き摺りによるフリクションロスが発生して、伝達効率を低下させるという問題点があった。
【0018】
本発明は、以上の点に鑑み、特に高速段域における伝達効率の低下を抑制させると共に、構造が簡単であり、大幅な設計変更を要せず、且つ、変速をスムーズに行うことができる自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明は、変速機ケース内に配置された複数のプラネタリギヤを介して入力軸の回転を複数段に変速して出力部材から出力する自動変速機において、前記各プラネタリギヤは複数の要素を備え、前進1速段から所定の中速段に亘る低速段域の全ての変速段を確立させる際には、前記プラネタリギヤの1の要素と、他の要素又は入力軸又は変速機ケースとを連結する状態となり、前記所定の中速段を超える変速段からなる高速段域の全ての変速段を確立させる際には前記連結を断つ状態となる第1係合機構を備え、第1係合機構は、噛合機構で構成され、前記所定の中速段は4速段以上でであることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、第1係合機構が同期噛合機構(シンクロメッシュ機構)又はドグクラッチ機構からなる噛合機構で構成されるため、油圧式多板クラッチで構成されるものと比較して、特に高速段域において引き摺りトルクによるフリクションロスを大幅に低減し、伝達効率の低下を防止することができる。
【0021】
又、第1係合機構たる噛合機構は、前記低速段域においては前記連結する状態となり、前記高速段域では前記連結を断つ状態となるため、低速段域内では連結状態の切換えが行われない。このため、本発明の噛合機構は、連結状態の切換えは、比較的トルクが小さい高速段側でのみ切り換えられ、更に中速段から高速段域の変速段に変速するアップシフトにおいては、次段の油圧式多板クラッチあるいはブレーキの係合に伴って、噛合機構における伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけで済むため、切替がスムーズに行われ、変速を迅速に行うことができる。
【0022】
本発明の第1具体的態様としては、例えば、前記複数のプラネタリギヤを、入力用のプラネタリギヤと変速用のプラネタリギヤとで構成し、入力用のプラネタリギヤは、入力軸に連結される入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、入力軸の回転を変速して出力要素から出力し、第1係合機構たる噛合機構は、出力要素と、変速用のプラネタリギヤの1の要素とを解除自在に連結するように構成することができる。
【0023】
より具体的な例として、例えば、入力用のプラネタリギヤは、入力軸の回転を減速して出力要素から出力し、変速用のプラネタリギヤは、速度線図においてギヤ比に対応する間隔で並ぶ4つの回転要素を構成し、これら回転要素を速度線図における並び順に夫々第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素、第4回転要素として、第2回転要素を出力部材に連結し、係合機構として、入力用のプラネタリギヤの出力要素と変速用のプラネタリギヤの第1回転要素とを解除自在に連結する第1係合機構たる噛合機構と、入力軸と変速用のプラネタリギヤの第3回転要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、入力用のプラネタリギヤの出力要素と変速用のプラネタリギヤの第4回転要素とを解除自在に連結する第3係合機構と、第4回転要素を変速機ケースに解除自在に固定する第4係合機構と、第3回転要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0024】
かかる構成によれば、後述する実施形態から明らかなように、前進6速段の変速を行うことができる共に、1速段から4速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、5速段、6速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、4速段と5速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0025】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0026】
更に5速段、6速段の高速段域における油圧式多板クラッチの開放数を一つ減らすことが出来る為、高速段域における油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスを低減し、伝達効率を向上させることが出来る。
【0027】
又、入力軸と第4回転要素とを解除自在に連結する第6係合機構を設ければ、後述する実施形態の説明から明らかなように前進8速段の変速を行うことができる共に、1速段から5速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、6速段から8速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、5速段と6速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0028】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
更に6速段から8速段の高速段域における油圧式多板クラッチの開放数を一つ減らすことが出来る為、高速段域における油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスを低減し、伝達効率を向上させることが出来る。
【0029】
本発明の第2の具体的態様としては、例えば、変速機ケース内に第1から第4の4つのプラネタリギヤを備え、第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順にサンギヤ側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順にサンギヤ側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順にサンギヤ側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とし、第4プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順にサンギヤ側から夫々第10要素、第11要素及び第12要素として、入力軸と第1プラネタリギヤの第2要素とが連結され、第1プラネタリギヤの第1要素と、第3プラネタリギヤの第7要素とを連結して第1連結体が構成され、第1プラネタリギヤの第3要素と第2プラネタリギヤの第6要素とを連結して第2連結体が構成され、第2プラネタリギヤの第4要素と第4プラネタリギヤの第10要素とを連結して第3連結体が構成され、第3プラネタリギヤの第8要素と第4プラネタリギヤの第12要素とを連結して第4連結体が構成され、第4プラネタリギヤの第11要素と出力部材とが連結され、係合機構として、第3プラネタリギヤの第9要素を変速機ケースに解除自在に固定する第1係合機構たる噛合機構と、入力軸と第3連結体とを解除自在に連結する第2係合機構と、第2プラネタリギヤの第5要素と第4プラネタリギヤの第11要素とを解除自在に連結する第3係合機構と、第2連結体と第3連結体とを解除自在に連結する第4係合機構と、第1連結体を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0030】
本発明の第2の具体的態様によれば、後述する実施形態から明らかなように、前進8速段の変速を行うことができる共に、1速段から5速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、6速段から8速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、5速段と6速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0031】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを1組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
更に6速段から8速段の高速段域における油圧式多板ブレーキの開放数を一つ減らすことが出来る為、高速段域における油圧式多板ブレーキの引き摺りによるフリクションロスを低減し、伝達効率を向上させることが出来る。
【0032】
本発明の第3の具体的態様としては、例えば、変速機ケース内に第1プラネタリギヤと第2プラネタリギヤとを備え、第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第1要素が入力軸に連結され、入力軸に平行に配置した出力部材たる出力軸に、第2要素が第1ギヤ列を介して連結されると共に、第6要素が第1ギヤ列とは異なるギヤ比の第2ギヤ列を介して連結され、係合機構として、第3要素と第5要素とを解除自在に連結する第1係合機構たる噛合機構と、第4要素と入力軸とを解除自在に連結する第2係合機構と、第5要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第4要素を変速機ケースに解除自在に固定する第4係合機構と、第5要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0033】
かかる構成によれば、後述する実施形態の説明から明らかなように、前進6段の変速を行うことができる。そして、本発明では、プラネタリギヤとして軸方向に並ぶ第1と第2の2つのプラネタリギヤを用いるだけであるため、変速機の軸長を短縮できる。更に、2速段と3速段以外の変速段では第1と第2の両プラネタリギヤの片方のプラネタリギヤ単独での動力伝達が行われると共に、4速段と5速段との2つの変速段において夫々第1プラネタリギヤと第2プラネタリギヤとがロック状態になるため、噛合伝達効率は100%になり、全ての変速段のトータルの伝達効率が向上する。
【0034】
又、後述する実施形態から明らかなように、1速段から4速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、5速段、6速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、4速段と5速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0035】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
更に5速段、6速段の高速段域における油圧式多板クラッチの開放数を一つ減らすことが出来る為、高速段域における油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスを低減し、伝達効率を向上させることが出来る。
【0036】
本発明の第4の具体的態様としては、例えば、入力用のプラネタリギヤを第1プラネタリギヤとして、変速用のプラネタリギヤは、第2と第3の2つのプラネタリギヤで構成され、第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、第6要素と第9要素とを連結して連結体を構成し、第8要素が出力部材に連結され、係合機構として、連結体と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第4要素と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第5要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第4要素と第7要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第5要素と第7要素とを解除自在に連結する第5係合機構と、第5要素を変速機ケースに解除自在に固定する第6係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0037】
かかる構成によれば、後述する実施形態の説明から明らかなように、前進8段の変速を行うことができると共に、第1乃至第6の6個の係合機構のうち各変速段において3個の係合機構が係合することになる。そのため、各変速段で開放している係合機構の数は3個になる。従って、4個の係合機構が開放しているものに比し、開放している係合機構によるフリクションロスを低減でき、変速機の効率が向上する。
【0038】
更に、第1係合機構が噛合機構で構成されるため、油圧式多板クラッチで構成されるものと比較して、高速段域において開放している油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスが大幅に低減し、噛合機構が開放される高速段域(6速段〜8速段)では、フリクションロスが発生する油圧式多板クラッチあるいはブレーキの数が2個になる。従って、第4の具体的態様によれば、高速段域の伝達効率をより向上させることができる。
【0039】
又、後述する実施形態から明らかなように、1速段から5速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、6速段から8速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、5速段と6速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0040】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0041】
本発明の第5の具体的態様としては、例えば、ポンプとタービンとを機械的に連結させるロックアップクラッチを有し動力源に連結される流体トルクコンバータと、サンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を有する第1から第3の3つのプラネタリギヤとを備え、流体トルクコンバータを介して動力源の回転が入力される入力軸の回転をプラネタリギヤで複数段に変速して出力部材に出力し、入力軸は第1と第2の2つの入力軸で構成され、第1入力軸はタービンに連結され、第2入力軸は、ロックアップクラッチに介設された第2入力軸用ディスクと、プラネタリギヤの何れか1つの要素とに連結され、ロックアップクラッチの係合で動力源の回転が伝達される状態となり、ロックアップクラッチの開放で動力源の回転の伝達を断たれる状態となり、第1プラネタリギヤは、第1入力軸に連結される入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、第5要素が第2入力軸に連結され、第6要素と第9要素とを連結して連結体を構成し、第8要素が出力部材に連結され、係合機構として、連結体と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第4要素と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第4要素と第7要素とを解除自在に連結する第3係合機構と、第5要素と第7要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第5要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0042】
かかる構成によれば、ロックアップクラッチが係合する高速段側の変速段を確立する際にのみ係合される係合機構の機能を、ロックアップクラッチと第2入力部材用ディスクとで果たすことができ、変速機の高速段側でのみ係合される係合機構を1つ少なくすることができる。これにより、係合機構のピストンや油圧回路等をロックアップクラッチのもので共通化でき、自動変速機の小型化及び構造の簡略化を図ることができる。
【0043】
又、後述する実施形態から明らかなように、前進8速段の変速を行うことができると共に、1速段から5速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、6速段から8速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、5速段と6速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0044】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
更に6速段から8速段の高速段域における油圧式多板クラッチの開放数を一つ減らすことが出来る為、高速段域における油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスを低減し、伝達効率を向上させることが出来る。
【0045】
本発明の第6の具体的態様としては、入力用のプラネタリギヤを第1プラネタリギヤとして、変速用のプラネタリギヤを、第2と第3の2つのプラネタリギヤで構成し、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第3要素と第5要素とを連結して連結体を構成し、連結体が出力部材に連結され、係合機構として、第6要素と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第1係合機構たる噛合機構と、第1要素と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第2要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第1要素と第4要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第2要素と第4要素とを解除自在に連結する第5係合機構と、第2要素を変速機ケースに解除自在に固定する第6係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0046】
かかる構成によれば、後述する実施形態の説明から明らかなように、前進7段の変速を行うことができると共に、第1乃至第6の6個の係合機構のうち各変速段において3個の係合機構が係合することになる。そのため、各変速段で開放している係合機構の数は3個になる。従って、4個の係合機構が開放しているものに比し、開放している係合機構によるフリクションロスを低減でき、変速機の効率が向上する。
【0047】
更に、第1係合機構が噛合機構で構成されるため、油圧式多板クラッチで構成されるものと比較して、高速段域において開放している油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスが大幅に低減し、噛合機構が開放される高速段域(6速段、7速段)では、フリクションロスが発生する油圧式多板クラッチあるいはブレーキの数が2個になる。従って、第6の具体的態様によれば、高速段域の伝達効率をより向上させることができる。
【0048】
又、後述する実施形態から明らかなように、1速段から5速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、6速段、7速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、5速段と6速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0049】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0050】
本発明の第7の具体的態様としては、変速機ケース内に配置した入力用の第1プラネタリギヤと変速用の第2と第3の2つのプラネタリギヤとを備え、第1プラネタリギヤは、入力軸に連結された入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第3要素と第6要素とを連結して連結体を構成し、第4要素が出力部材に連結され、係合機構として、第2要素と第5要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第2要素と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第1要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第1要素と第5要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第1要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構と、連結体と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第6係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0051】
かかる構成によれば、後述する実施形態の説明から明らかなように、前進8段の変速を行うことができると共に、第1乃至第6の6個の係合機構のうち各変速段において3個の係合機構が係合することになる。そのため、各変速段で開放している係合機構の数は3個になる。従って、4個の係合機構が開放しているものに比し、開放している係合機構によるフリクションロスを低減でき、変速機の効率が向上する。
【0052】
更に、第1係合機構が噛合機構で構成されるため、油圧式多板クラッチで構成されるものと比較して、高速段域において開放している油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスが大幅に低減し、噛合機構が開放される高速段域(7速段、8速段)では、フリクションロスが発生する油圧式多板クラッチあるいはブレーキの数が2個になる。従って、第6の具体的態様によれば、高速段域の伝達効率をより向上させることができる。
【0053】
又、後述する実施形態から明らかなように、1速段から6速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、7速段、8速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、6速段と7速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0054】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0055】
本発明の第8の具体的態様としては、変速機ケース内に配置した入力用の第1プラネタリギヤと変速用の第2と第3の2つのプラネタリギヤとを備え、第1プラネタリギヤは、入力軸に連結された入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第3要素と第6要素とを連結して連結体を構成し、第4要素が出力部材に連結され、係合機構として、第2要素と第5要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第2要素と第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第1要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第1要素と第5要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第1要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構と、連結体を変速機ケースに解除自在に固定する第6係合機構とを備えるもので構成することができる。
【0056】
かかる構成によれば、後述する実施形態の説明から明らかなように、前進8段の変速を行うことができると共に、第1乃至第6の6個の係合機構のうち各変速段において3個の係合機構が係合することになる。そのため、各変速段で開放している係合機構の数は3個になる。従って、4個の係合機構が開放しているものに比し、開放している係合機構によるフリクションロスを低減でき、変速機の効率が向上する。
【0057】
更に、第1係合機構が噛合機構で構成されるため、油圧式多板クラッチで構成されるものと比較して、高速段域において開放している油圧式多板クラッチの引き摺りによるフリクションロスが大幅に低減し、噛合機構が開放される高速段域(7速段、8速段)では、フリクションロスが発生する油圧式多板クラッチあるいはブレーキの数が2個になる。従って、第6の具体的態様によれば、高速段域の伝達効率をより向上させることができる。
【0058】
又、後述する実施形態から明らかなように、1速段から6速段までの低速段域を確立する際には、第1係合機構たる噛合機構が前記連結する状態であり、7速段、8速段の高速段域を確立する際には、噛合機構が前記連結を断つ状態である。従って、前進段においては、噛合機構の状態が切り換えられるのは、6速段と7速段との間のみであり、この間のトルク差は小さく、更に前記アップシフトの際には伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけで良いため、切替をスムーズに行うことができ、迅速に変速を行うことができる。
【0059】
又、従来のように、油圧式多板クラッチと噛合機構とを一組として構成する必要が無く、第1係合機構を噛合機構で構成するだけでよいため、構造が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0060】
又、第8の具体的態様では、第7の具体的態様のものと比較して、入力軸上に配置される構成部品の多い第6係合機構たるクラッチを、入力軸上に配置される構成部品の少ないブレーキに置き換えたものであり、自動変速機の軸長を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a)は本発明の自動変速機の第1実施形態を示すスケルトン図。(b)は第1実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図2】第1実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図3】(a)は本発明の自動変速機の第2実施形態を示すスケルトン図。(b)は第2実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図4】第2実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図5】(a)は本発明の自動変速機の第3実施形態を示すスケルトン図。(b)は第3実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図6】第3実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図7】(a)は本発明の自動変速機の第4実施形態を示すスケルトン図。(b)は第4実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図8】第4実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図9】(a)は本発明の自動変速機の第5実施形態を示すスケルトン図。(b)は第5実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図10】第5実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図11】本発明の自動変速機の第6実施形態を示すスケルトン図。
【図12】(a)は本発明の自動変速機の第7実施形態を示すスケルトン図。(b)は第7実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図13】第7実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図14】(a)は本発明の自動変速機の第8実施形態を示すスケルトン図。(b)は第8実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図15】第8実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【図16】(a)は本発明の自動変速機の第9実施形態を示すスケルトン図。(b)は第9実施形態の各変速段における各係合機構の係合状態を示す説明図。
【図17】第9実施形態の各プラネタリギヤの速度線図。
【発明を実施するための形態】
【0062】
[第1実施形態]
図1(a)は、本発明の自動変速機の第1実施形態を示している。第1実施形態の自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と同心に配置された出力ギヤから成る出力部材3とを備えている。出力部材3の回転は、図外のデファレンシャルギヤを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0063】
又、変速機ケース1内には、入力軸2の周りに位置させて、入力用の第1プラネタリギヤ4と、変速用のプラネタリギヤPGとが配置されている。第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSa及びリングギヤRaに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなるシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0064】
第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaは入力軸2に連結されて入力要素となり、サンギヤSaは変速機ケース1に固定されて固定要素となり、キャリアCaが出力要素となる。図2の上段に第1プラネタリギヤ4の速度線図を示す。第1プラネタリギヤ4の速度線図において、下方の横線は回転速度が「0」であることを示し、上方の横線は回転速度が入力軸の回転を「1」としてこれと同一である「1」であることを示している。第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとすると、第1プラネタリギヤ4は入力軸2の回転速度「1」をi/(i+1)に減速して出力要素たるキャリアCaから出力する。即ち、出力要素たるキャリアCaの回転速度N1はi/(i+1)となる。
【0065】
変速用のプラネタリギヤPGは、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とで構成される。第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、互いに噛合すると共に、一方が第1サンギヤSbに噛合し、他方がリングギヤRbに噛合する一対のピニオンPb,Pb’を自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとから成るダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0066】
第3プラネタリギヤ6は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤSc及びリングギヤRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0067】
第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcは、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと一体化されている。又、第3プラネタリギヤ6のピニオンPcは、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと噛合するピニオンPb’と一体化され、第3プラネタリギヤ6のキャリアCcは、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbのピニオンPb’を軸支する部分と一体化されている。即ち、第1実施形態の変速用のプラネタリギヤPGは、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とによりいわゆるラビニヨ型のプラネタリギヤを構成している。
【0068】
変速用のプラネタリギヤPGは、図2の下段の速度線図に示すように、縦線で表される4つの回転要素を備える。図2に示される各回転要素を左から順に、第1回転要素Y1、第2回転要素Y2、第3回転要素Y3、第4回転要素Y4とすると、第1回転要素Y1は第2プラネタリギヤ5の第1サンギヤSb、第2回転要素Y2は第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb及び第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc、第3回転要素Y3は第2プラネタリギヤ5のキャリアCb及び第3プラネタリギヤ6のキャリアCc、第4回転要素Y4は第3プラネタリギヤ6のサンギヤScで構成される。
【0069】
第2プラネタリギヤ5のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をj、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとすると、第1〜第4の各回転要素間の間隔は、j−1:1:kの割り合いとなっている。尚、変速用のプラネタリギヤPGの速度線図において、下方の横線は回転速度が「0」であることを示し、上方の横線は回転速度が入力軸の回転を「1」としてこれと同一である「1」であることを示している。又、第2回転要素Y2は出力部材3に連結されている。
【0070】
第1実施形態の自動変速機は、係合機構として、第1係合機構としての噛合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)と、第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1と、第3係合機構たる第2油圧式多板クラッチC2と、第4係合機構たる第1ブレーキB1と、第5係合機構たる第2ブレーキB2とを備える。
【0071】
第1係合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)は、第1回転要素Y1と第1プラネタリギヤ4の出力要素たるキャリアCaとを解除自在に連結する。第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1は、第3回転要素Y3と入力軸2とを解除自在に連結する。第3係合機構たる第2油圧式多板クラッチC2は、第4回転要素Y4と第1プラネタリギヤ4の出力要素たるキャリアCaとを解除自在に連結する。
【0072】
第4係合機構たる第1ブレーキB1は、バンドブレーキで構成され、第4回転要素Y4を変速機ケース1に解除自在に固定する。第5係合機構たる第2ブレーキB2は、油圧式多板ブレーキで構成され、第3回転要素Y3を変速機ケース1に解除自在に固定する。尚、第1実施形態の自動変速機には、第3回転要素Y3の正転(前進方向の回転)を許容し逆転を阻止する一方向クラッチF1が、第2ブレーキB2と並列に設けられている。
【0073】
第1実施形態の自動変速機においては、第1同期噛合機構S1を係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第3回転要素Y3の回転速度が一方向クラッチF1の働きで「0」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「1st」で回転して、1速段が確立される。尚、第1同期噛合機構S1に加えて第2ブレーキB2を係合させると、エンジンブレーキを効かせられる状態で1速段が確立される。
【0074】
第1同期噛合機構S1と第1ブレーキB1とを係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第4回転要素Y4の回転速度が「0」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「2nd」で回転して、2速段が確立される。
【0075】
第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第1回転要素Y1及び第4回転要素Y4が共にN1で回転し、変速用のプラネタリギヤPGの各回転要素が相対回転不能なロック状態となって、第2回転要素Y2がN1である「3rd」で回転して、3速段が確立される。
【0076】
第1同期噛合機構S1と第1油圧式多板クラッチC1とを係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第3回転要素Y3の回転速度が「1」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「4th」で回転して、4速段が確立される。
【0077】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第3回転要素Y3の回転速度が「1」、第4回転要素Y4の回転速度がN1となり、第2回転要素Y2が速度線図に示す「5th」で回転して、5速段が確立される。
【0078】
第1油圧式多板クラッチC1と第1ブレーキB1とを係合させると、第3回転要素Y3の回転速度が「1」、第4回転要素Y4の回転速度が「0」となり、第2回転要素Y2が速度線図に示す「6th」で回転して、6速段が確立される。
【0079】
第2油圧式多板クラッチC2と第2ブレーキB2とを係合させると、第4回転要素Y4の回転速度がN1、第3回転要素Y3の回転速度が「0」となり、第2回転要素Y2が速度線図に示すマイナスの「Rev」で回転して、後進段が確立される。
【0080】
図1(b)は、上述した各変速段における各係合機構の係合状態を纏めて示したものであり、「○」は係合を表している。又、図1(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを1.772、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを2.600、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを2.167とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)が適切となると共に、レシオレンジ(1速段のギヤレシオと6速段のギヤレシオの比(図1(b)の1速段の公比の欄に表示))も適切となる。
【0081】
又、図1(b)の開放数の欄には、各変速段において、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチおよびブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を示している。これによれば、全ての変速段において、開放数が3以下となっており、特に5速段、6速段、後進段では、開放数が2となっていることが分かる。
【0082】
第1実施形態の自動変速機によれば、第1回転要素Y1と第1プラネタリギヤ4のキャリアCaとを解除自在に連結する第1係合機構として、第1同期噛合機構S1を用いているため、第1係合機構を油圧式多板クラッチで構成するものと比較して、第1係合機構での引き摺りによるフリクションロスが大幅に低減し(具体的には、第1同期噛合機構S1が開放される5速段と6速段で、第1同期噛合機構S1による引き摺りトルクが大幅に低減する)、伝達効率の低下を抑制することができる。
【0083】
又、第1同期噛合機構S1は、1速段〜4速段に亘る低速段域においては連結する状態となり、5速段と6速段からなる高速段域では前記連結を断つ状態となるため、高速段域と比較して隣接する変速段間のトルク差が大きい低速段域内では連結状態の切換えが行われず、トルク差の小さい4速段と5速段の切り換え時のみ連結状態が切り換えられる。また、中速段たる4速段から高速段域の変速段たる5速段に変速するアップシフトの際には、伝達トルクがゼロとなった時点で連結を断つだけでよいため、第1同期噛合機構S1の切替を迅速に行うことができ、変速をスムーズに行うことができる。
【0084】
又、第1実施形態の自動変速機は、第1係合機構を第1同期噛合機構S1で構成するだけでよいため、構成が簡略化されて、従来品からの設計変更が容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0085】
尚、第1実施形態においては、入力用の第1プラネタリギヤ4を、入力軸2の回転を減速して出力するものとしたが、これに限らず、第1プラネタリギヤ4を入力軸2の回転を増速して出力するものとしてもよい。この場合、例えば、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaを入力軸2に連結して入力要素とし、サンギヤSaを変速機ケース1に固定して固定要素とし、リングギヤRaを出力要素とすればよい。
[第2実施形態]
次に、図3、図4を参照して、本発明の自動変速機の第2実施形態について説明する。第2実施形態の自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と同軸上に配置された出力軸から成る出力部材3とを備えている。出力部材3の回転は、図外のプロペラシャフトを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0086】
又、変速機ケース1内には、入力軸2の周りに位置させて、入力用の第1プラネタリギヤ4と、変速用のプラネタリギヤPGとが配置されている。第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、互いに噛合すると共に、一方がサンギヤSaに噛合し、他方がリングギヤRaに噛合する一対のピニオンPa,Pa’を自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなるダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0087】
第1プラネタリギヤ4のキャリアCaは入力軸2に連結されて入力要素となり、サンギヤSaは変速機ケース1に固定されて固定要素となり、リングギヤRaが出力要素となる。図4の上段に第1プラネタリギヤ4の速度線図を示す。第1プラネタリギヤ4の速度線図において、下方の横線は回転速度が「0」であることを示し、上方の横線は回転速度が入力軸の回転を「1」としてこれと同一である「1」であることを示している。第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとすると、第1プラネタリギヤ4は入力軸2の回転速度「1」を(i−1)/iに減速して出力要素たるリングギヤRaから出力する。即ち、出力要素たるリングギヤRaの回転速度N1は(i−1)/iとなる。
【0088】
変速用のプラネタリギヤPGは、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とで構成される。第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、互いに噛合すると共に、一方がサンギヤSbに噛合し、他方がリングギヤRbに噛合する一対のピニオンPb,Pb’を自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとから成るダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0089】
第3プラネタリギヤ6は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤSc及びリングギヤRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0090】
第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと第3プラネタリギヤ6のキャリアCcとは、互いに連結されて第1連結体Rb,Ccを構成する。第2プラネタリギヤ5のキャリアCbと第3プラネタリギヤ6のサンギヤScとは、互いに連結されて第2連結体Cb,Scを構成する。
【0091】
変速用のプラネタリギヤPGは、図4の下段の速度線図に示すように、縦線で表される4つの回転要素を備える。図2に示される各回転要素を右から順に、第1回転要素Y1、第2回転要素Y2、第3回転要素Y3、第4回転要素Y4とすると、第1回転要素Y1は第2プラネタリギヤ5の第1サンギヤSb、第2回転要素Y2は第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc、第3回転要素Y3は第1連結体Rb,Cc、第4回転要素Y4は第2連結体Cb,Scで構成される。
【0092】
第2プラネタリギヤ5のギヤ比をj、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとすると、第1〜第4の各回転要素間の間隔は、jk−k−1:1:kの割り合いとなっている。第2回転要素Y2は出力部材3に連結されている。
【0093】
第2実施形態の自動変速機は、係合機構として、第1係合機構としての噛合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)と、第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1と、第3係合機構たる第2油圧式多板クラッチC2と、第4係合機構たる第1ブレーキB1と、第5係合機構たる第2ブレーキB2と、第6係合機構たる第3油圧式多板クラッチC3とを備える。
【0094】
第1係合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)は、第1回転要素Y1と第1プラネタリギヤ4の出力要素たるリングギヤRaとを解除自在に連結する。第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1は、第3回転要素Y3と入力軸2とを解除自在に連結する。第3係合機構たる第2油圧式多板クラッチC2は、第4回転要素Y4と第1プラネタリギヤ4の出力要素たるリングギヤRaとを解除自在に連結する。
【0095】
第4係合機構たる第1ブレーキB1は、油圧式多板ブレーキで構成され、第4回転要素Y4を変速機ケース1に解除自在に固定する。第5係合機構たる第2ブレーキB2は、油圧式多板ブレーキで構成され、第3回転要素Y3を変速機ケース1に解除自在に固定する。第6係合機構たる第3油圧式多板クラッチC3は、第4回転要素Y4と入力軸2とを解除自在に連結する。尚、第2実施形態の自動変速機には、第3回転要素Y3の正転(前進方向の回転)を許容し、逆転を阻止する一方向クラッチF1が、第2ブレーキB2と並列に設けられている。
【0096】
第2実施形態の自動変速機においては、第1同期噛合機構S1を係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第3回転要素Y3の回転速度が一方向クラッチF1の働きで「0」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「1st」で回転して、1速段が確立される。尚、第1同期噛合機構S1に加えて第2ブレーキB2を係合させると、エンジンブレーキを効かせられる状態で1速段が確立される。
【0097】
第1同期噛合機構S1と第1ブレーキB1とを係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第4回転要素Y4の回転速度が「0」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「2nd」で回転して、2速段が確立される。
【0098】
第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第1回転要素Y1及び第4回転要素Y4が共にN1で回転し、変速用のプラネタリギヤPGの各回転要素が相対回転不能なロック状態となって、第2回転要素Y2がN1である「3rd」で回転して、3速段が確立される。
【0099】
第1同期噛合機構S1と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第4回転要素Y4の回転速度が「1」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「4th」で回転して、4速段が確立される。
【0100】
第1同期噛合機構S1と第1油圧式多板クラッチC1とを係合させると、第1回転要素Y1の回転速度がN1、第3回転要素Y3の回転速度が「1」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2が速度線図に示す「5th」で回転して、5速段が確立される。
【0101】
第1油圧式多板クラッチC1と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第3回転要素Y3及び第4回転要素Y4の回転速度が共に「1」となり、出力部材3と連結する第2回転要素Y2も「1」である「6th」で回転して、6速段が確立される。
【0102】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第3回転要素Y3の回転速度が「1」、第4回転要素Y4の回転速度がN1となり、第2回転要素Y2が速度線図に示す「7th」で回転して、7速段が確立される。
【0103】
第1油圧式多板クラッチC1と第1ブレーキB1とを係合させると、第3回転要素Y3の回転速度が「1」、第4回転要素Y4の回転速度が「0」となり、第2回転要素Y2が速度線図に示す「8th」で回転して、8速段が確立される。
【0104】
第2油圧式多板クラッチC2と第2ブレーキB2とを係合させると、第4回転要素Y4の回転速度がN1、第3回転要素Y3の回転速度が「0」となり、第2回転要素Y2が速度線図に示すマイナスの「Rev1」で回転して、後進1速段が確立される。
【0105】
第3油圧式多板クラッチC3と第2ブレーキB2とを係合させると、第4回転要素Y4の回転速度が「1」、第3回転要素Y3の回転速度が「0」となり、第2回転要素Y2が速度線図に示すマイナスの「Rev2」で回転して、後進2速段が確立される。
【0106】
図3(b)は、上述した各変速段における各係合機構の係合状態を纏めて示したものであり、「○」は係合を表している。又、図3(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを2.000、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを2.252、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを2.000とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)が適切となると共に、レシオレンジ(1速段のギヤレシオと8速段のギヤレシオの比(図3(b)の1速段の公比の欄に表示))も適切となる。
【0107】
又、図3(b)の開放数の欄には、各変速段において、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチ及びブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を示している。これによれば、6速段から8速段、及び後進1速段、後進2速段では、開放数が3と減少していることが分かる。
【0108】
第2実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、第1同期噛合機構S1がトルク差の小さい5速段と6速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
【0109】
尚、第2実施形態においては、入力用の第1プラネタリギヤ4を、入力軸2の回転を減速して出力するものとしたが、これに限らず、第1プラネタリギヤ4を入力軸2の回転を増速して出力するものとしてもよい。この場合、例えば、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaを入力軸2に連結して入力要素とし、サンギヤSaを変速機ケース1に固定して固定要素とし、キャリアCaを出力要素とすればよい。
[第3実施形態]
次に、図5、図6を参照して、本発明の自動変速機の第3実施形態について説明する。第3実施形態の自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と同軸上に配置された出力軸から成る出力部材3とを備えている。出力部材3の回転は、図外のプロペラシャフトを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0110】
又、変速機ケース1内には、入力軸2の周りに位置させて、第1から第4の4つのプラネタリギヤ4,5,6,7が配置されている。第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSa及びリングギヤRaに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0111】
図6の上から2段目に示す第1プラネタリギヤ4の速度線図(サンギヤ、キャリア、リングギヤの3個の要素の回転速度を直線で表すことができる図)を参照して、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSa、キャリアCa及びリングギヤRaから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に右側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSa、第2要素はキャリアCa、第3要素はリングギヤRaになる。
【0112】
ここで、サンギヤSaとキャリアCa間の間隔とキャリアCaとリングギヤRa間の間隔との比は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとして、i:1に設定される。尚、速度線図において、下の横線と上の横線は夫々回転速度が「0」と「1」(入力軸2と同じ回転速度)であることを示している。
【0113】
第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、サンギヤSb及びリングギヤRbに噛合するピニオンPbを自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。図6の上から3段目に示す第2プラネタリギヤ5の速度線図を参照して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb、キャリアCb及びリングギヤRbから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に右側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はリングギヤRb、第5要素はキャリアCb、第6要素はサンギヤSbになる。ここで、サンギヤSbとキャリアCb間の間隔とキャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2プラネタリギヤ5のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0114】
第3プラネタリギヤ6は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤSc及びリングギヤRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。図6の上から1段目に示す第3プラネタリギヤ6の速度線図を参照して、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc、キャリアCc及びリングギヤRcから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に右側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素はサンギヤSc、第8要素はキャリアCc、第9要素はリングギヤRcになる。ここで、サンギヤScとキャリアCc間の間隔とキャリアCcとリングギヤRc間の間隔との比は、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとして、k:1に設定される。
【0115】
第4プラネタリギヤ7は、サンギヤSdと、リングギヤRdと、サンギヤSd及びリングギヤRdに噛合するピニオンPdを自転及び公転自在に軸支するキャリアCdとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。図6の上から4段目に示す第4プラネタリギヤ7の速度線図を参照して、第4プラネタリギヤ7のサンギヤSd、キャリアCd及びリングギヤRdから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に右側から夫々第10要素、第11要素及び第12要素とすると、第10要素はサンギヤSd、第11要素はキャリアCd、第12要素はリングギヤRdになる。ここで、サンギヤSdとキャリアCd間の間隔とキャリアCdとリングギヤRd間の間隔との比は、第4プラネタリギヤ7のギヤ比をmとして、m:1に設定される。
【0116】
第1プラネタリギヤ4のキャリアCaは入力軸2に連結されている。又、第4プラネタリギヤ7のキャリアCdは出力部材3に連結されている。第1プラネタリギヤ4のサンギヤSaと第3プラネタリギヤ6のサンギヤScとは互いに連結され、第1連結体Sa,Scを構成する。第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaと第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbとは互いに連結され、第2連結体Ra,Sbを構成する。第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと第4プラネタリギヤ7のサンギヤSdとは互いに連結され、第3連結体Rb,Sdを構成する。第3プラネタリギヤ6のキャリアCcと第4プラネタリギヤ7のリングギヤRdとは互いに連結され、第4連結体Cc,Rdを構成する。
【0117】
又、第3実施形態の自動変速機は、係合機構として、第1係合機構としての噛合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)と、第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1と、第3係合機構たる第2油圧式多板クラッチC2と、第4係合機構たる第3油圧式多板クラッチC3と、第5係合機構たる第1ブレーキB1とを備える。
【0118】
第1係合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)は、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcを変速機ケース1に解除自在に固定する。第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1は、第3連結体Rb,Sdを入力軸2に解除自在に連結する。第3係合機構たる第2油圧式多板クラッチC2は、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbを第4プラネタリギヤ7のキャリアCdに解除自在に連結する。第4係合機構たる第3油圧式多板クラッチC3は、第2連結体Ra,Sbを第3連結体Rb,Sdに解除自在に連結する。第5係合機構たる第1ブレーキB1は、第1連結体Sa,Scを変速機ケース1に解除自在に連結する。
【0119】
第3実施形態の自動変速機においては、第1同期噛合機構S1と第1ブレーキB1と第1油圧式多板クラッチC1とを係合させると、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc(第9要素)の回転速度が「0」、第1連結体Sa,Sc(第1,第7要素)の回転速度が「0」となることにより、第3プラネタリギヤ6の各要素が相対回転不能なロック状態となって、第4連結体Cc,Rd(第8,第12要素)の回転速度も「0」となる。又、第3連結体Rb,Sd(第4,第10要素)の回転速度が「1」となる。従って、第4プラネタリギヤ7の速度線が図6に「1st」で示す線となり、1速段が確立される。
【0120】
第1同期噛合機構S1と第1ブレーキB1と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc(第9要素)の回転速度が「0」、第1連結体Sa,Sc(第1,第7要素)の回転速度が「0」となることにより、第3プラネタリギヤ6の各要素が相対回転不能なロック状態となって、第4連結体Cc,Rd(第8,第12要素)の回転速度も「0」となる。又、第1プラネタリギヤ4の速度線が「2nd」で示す線となり、第2連結体Ra,Sb(第3,第6要素)が(i+1)/iであるN1に増速されて回転し、第3連結体Rb,Sd(第4,第10要素)の回転速度もN1となる。従って、第4プラネタリギヤ7の速度線が図6に「2nd」で示す線となり、2速段が確立される。
【0121】
第1同期噛合機構S1と第1油圧式多板クラッチC1と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第2連結体Ra,Sb(第3,第6要素)及び第3連結体Rb,Sd(第4,第10要素)の回転速度が「1」となり、第1プラネタリギヤ4の各要素が相対回転不能なロック状態となるため、第1連結体Sa,Sc(第1,第7要素)の回転速度も「1」となる。従って、第3プラネタリギヤ6の速度線が図6に「3rd」で示す線となり、第4プラネタリギヤ7の速度線が図6に「3rd」で示す線となって、3速段が確立される。
【0122】
第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のキャリアCa(第2要素)の回転速度が「1」、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc(第9要素)の回転速度が「0」となり、第2プラネタリギヤ5及び第4プラネタリギヤ7の各要素が相対回転不能なロック状態となって、第1から第4の各プラネタリギヤ4,5,6,7の速度線が図6に「4th」で示す線となって、4速段が確立される。
【0123】
第1同期噛合機構S1と第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のキャリアCa(第2要素)及び第3連結体Rb,Sd(第4,第10要素)の回転速度が「1」、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc(第9要素)の回転速度が「0」となり、第1から第4の各プラネタリギヤ4,5,6,7の速度線が図6に「5th」で示す線となって、5速段が確立される。
【0124】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第1から第4の各プラネタリギヤ4,5,6,7の各要素が相対回転不能なロック状態となり、全ての要素が「1」の速度で回転して、6速段が確立される。
【0125】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2と第1ブレーキB1とを係合させると、第2連結体Ra,Sb(第3,第6要素)の回転速度がN1、第3連結体Rb,Sd(第4,第10要素)の回転速度が「1」となり、第2プラネタリギヤ5の速度線が図6に「7th」で示す線となって、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbと第4プラネタリギヤ7のキャリアCdとが等速度で回転し、7速段が確立される。
【0126】
第2油圧式多板クラッチC2と第3油圧式多板クラッチC3と第1ブレーキB1とを係合させると、第2連結体Ra,Sb(第3,第6要素)の回転速度がN1となり、第2プラネタリギヤ5及び第4プラネタリギヤ7の各要素が相対回転不能なロック状態となって、出力部材3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCd(第11要素)がN1で回転して、8速段が確立される。
【0127】
第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2と第1ブレーキB1とを係合させると、第1連結体Sa,Sc(第1,第7要素)及び第4連結体Cc,Rd(第8,第12要素)の回転速度が「0」、第2連結体Ra,Sb(第3,第6要素)の回転速度がN1となり、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbと第4プラネタリギヤ7のキャリアCdとが等速度で回転して、第2プラネタリギヤ5及び第4プラネタリギヤ7の各速度線が図6に「Rev」で示す線となって、後進段が確立される。
【0128】
図5(b)は、上述した各変速段における各係合機構の係合状態を纏めて示したものであり、「○」は係合を表している。又、図5(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを2.00、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを1.60、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを2.10、第4プラネタリギヤ7のギヤ比mを3.70とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)が適切となると共に、レシオレンジ(1速段のギヤレシオと8速段のギヤレシオの比(図5(b)の1速段の公比の欄に表示))も適切となる。
【0129】
又、図5(b)の開放数の欄には、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチおよびブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を各変速段毎に示している。これによれば、全ての変速段において、開放数が2以下となっており、特に6速段から8速段では、開放数が1となっていることが分かる。
【0130】
第3実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、第1同期噛合機構S1がトルク差の小さい5速段と6速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
[第4実施形態]
次に、図7及び図8を参照して、本発明の自動変速機の第4実施形態について説明する。第4実施形態の自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と平行に配置した出力軸たる出力部材3とを備えている。出力部材3の回転は、出力部材3に固定の出力ギヤ3aに噛合するファイナルドリブンギヤDfaを固定したデファレンシャルギヤDfを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0131】
また、変速機ケース1内には、第1プラネタリギヤ4と第2プラネタリギヤ5とが入力軸2と同心に配置されている。第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSaとリングギヤRaとに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に支持するキャリアCaとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0132】
図8の下段に示す第1プラネタリギヤ4の速度線図を参照して、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSa、キャリアCa及びリングギヤRaから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSa、第2要素はキャリアCa、第3要素はリングギヤRaになる。ここで、サンギヤSaとキャリアCa間の間隔とキャリアCaとリングギヤRa間の間隔との比は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとして、i:1に設定される。尚、速度線図において、下の横線と上の横線は夫々回転速度が「0」と「1」(入力軸2と同じ回転速度)であることを示している。
【0133】
第2プラネタリギヤ5は、第1プラネタリギヤ4と同様に、サンギヤSbと、リングギヤRbと、サンギヤSbとリングギヤRbとに噛合するピニオンPbを自転及び公転自在に支持するキャリアCbとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0134】
図8の上段に示す第2プラネタリギヤ5の速度線図を参照して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb、キャリアCb及びリングギヤRbから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はサンギヤSb、第5要素はキャリアCb、第6要素はリングギヤRbになる。尚、サンギヤSbとキャリアCb間の間隔とキャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2プラネタリギヤ5のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0135】
第1プラネタリギヤ4のサンギヤSa(第1要素)は入力軸2に連結されている。また、第1プラネタリギヤ4のキャリアCa(第2要素)は、キャリアCaに固定の駆動ギヤG1aと、駆動ギヤG1aに噛合する出力部材3に固定の従動ギヤG1bとから成る第1ギヤ列G1を介して出力部材3に連結され、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(第6要素)は、リングギヤRbに固定の駆動ギヤG2aと、駆動ギヤG2aに噛合する出力部材3に固定の従動ギヤG2bとから成る第2ギヤ列G2を介して出力部材3に連結されている。
【0136】
ここで、第1ギヤ列G1のギヤ比(従動ギヤの歯数/駆動ギヤの歯数)をp、第2ギア列G2のギヤ比をqとして、p>qになっている。また、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaと第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbは、両ギヤ列G1,G2を介して出力部材3で連結されることになる。そして、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbは、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度のq/pの速度で回転する。
【0137】
また、第4実施形態では、係合機構として、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb(第4要素)と入力軸2とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1と、第2プラネタリギヤ5のキャリアCb(第5要素)と入力軸2とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第3係合機構たる第2クラッチC2と、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRa(第3要素)と第2プラネタリギヤ5のキャリアCb(第5要素)とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第1係合機構としての噛合機構たる第1同期噛合機構S1(シンクロメッシュ機構)と、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb(第4要素)を変速機ケース1に固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第4係合機構たる第1ブレーキB1と、第2プラネタリギヤ5のキャリアCb(第5要素)を変速機ケース1に固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第5係合機構たる第2ブレーキB2とを備えている。
【0138】
第4実施形態においては、第1同期噛合機構S1と第2ブレーキB2とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSaの回転速度が「1」、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaの回転速度が「0」になり、第1プラネタリギヤ4の速度線が図8に「1st」で示す線になる。そして、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度は1/(i+1)になり、出力部材3が第1ギヤ列G1を介して1/{(i+1)p}の速度で回転して、1速段が確立される。
【0139】
第1同期噛合機構S1と第1ブレーキB1とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSaの回転速度が「1」、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbの回転速度が「0」になると共に、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaと第2プラネタリギヤ5のキャリアCbとが等速度で回転し、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbが第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度のq/pの速度で回転して、第1プラネタリギヤ4と第2プラネタリギヤ5の速度線は図8に「2nd」で示す線になる。そして、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度は(j+1)p/{(i+1)(j+1)p−ijq}、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbの回転速度は(j+1)q/{(i+1)(j+1)p−ijq}になり、出力部材3が(j+1)/{(i+1)(j+1)p−ijq}の速度で回転して、2速段が確立される。
【0140】
第1油圧式多板クラッチC1と第1同期噛合機構S1とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSaの回転速度と第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbの回転速度とが共に「1」になると共に、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaと第2プラネタリギヤ5のキャリアCbとが等速度で回転し、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbが第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度のq/pの速度で回転して、第1プラネタリギヤ4と第2プラネタリギヤ5の速度線は図8に「3rd」で示す線になる。そして、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度は(i+j+1)p/{(i+1)(j+1)p−ijq}、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbの回転速度は(i+j+1)q/{(i+1)(j+1)p−ijq}になり、出力部材3が(i+j+1)/{(i+1)(j+1)p−ijq}の速度で回転して、3速段が確立される。
【0141】
第2油圧式多板クラッチC2と第1同期噛合機構S1とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSaの回転速度と第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaの回転速度とが共に「1」になって、第1プラネタリギヤ4がロック状態になり、第1プラネタリギヤ4の速度線は図8に「4th」で示す線になる。そして、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaの回転速度は「1」になり、出力部材3が1/pの速度で回転して、4速段が確立される。
【0142】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbの回転速度と第2プラネタリギヤ5のキャリアCbの回転速度とが共に「1」になって、第2プラネタリギヤ5がロック状態になり、第2プラネタリギヤ5の速度線は図8に「5th」で示す線になる。そして、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbの回転速度は「1」になり、出力部材3が1/qの速度で回転して、5速段が確立される。
【0143】
第2油圧式多板クラッチC2と第1ブレーキB1とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbの回転速度が「0」、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbの回転速度が「1」になり、第2プラネタリギヤ5の速度線は図8に「6th」で示す線になる。そして、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbの回転速度は(j+1)/jになり、出力部材3が(j+1)/(jq)の速度で回転して、6速段が確立される。
【0144】
第1油圧式多板クラッチC1と第2ブレーキB2とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbの回転速度が「1」、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbの回転速度が「0」になり、第2プラネタリギヤ5の速度線は図8に「Rev」で示す線になる。そして、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbの回転速度は−1/jになり、出力部材3が−1/(jq)の速度で回転して、後進段が確立される。
【0145】
尚、図8中の点線で示す速度線は、第1と第2の両プラネタリギヤ4,5のうち動力伝達する一方のプラネタリギヤに追従して他方のプラネタリギヤの各要素が回転することを表している。
【0146】
図7(b)は、上述した各変速段と第1同期噛合機構S1、油圧式多板クラッチC1,C2、ブレーキB1,B2の係合状態との関係を纏めて表示した図であり、「○」は係合を表している。また、図7(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを2.30、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを3.20、第1ギヤ列G1のギヤ比pを1.32、第2ギヤ列G2のギヤ比qを0.95とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)が適切になると共に、レシオレンジ(一速レシオ/6速レシオ)も適切になる。
【0147】
又、図7(b)の開放数の欄には、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチおよびブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を各変速段毎に示している。これによれば、全ての変速段において、開放数が3以下となっており、特に5速段、6速段、後進段では、開放数が2となっていることが分かる。
【0148】
第4実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、第1同期噛合機構S1がトルク差の小さい4速段と5速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
【0149】
また、プラネタリギヤとして第1と第2の2つのプラネタリギヤ4,5を用いるだけであるため、3つのプラネタリギヤを用いるものに比し、変速機の軸長を短縮できる。更に、2速段と3速段以外の変速段では第1と第2の両プラネタリギヤ4,5の片方のプラネタリギヤ単独での動力伝達が行われると共に、4速段と5速段とにおいて夫々第1プラネタリギヤ4と第2プラネタリギヤ5とがロック状態になるため、噛合伝達効率は100%になり、全ての変速段のトータルの伝達効率が向上する。
【0150】
尚、第4実施形態では、第1と第2の各プラネタリギヤ4,5をシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成したが、ダブルピニオン型のプラネタリギヤで第1プラネタリギヤ4や第2プラネタリギヤ5を構成することも可能である。第1プラネタリギヤ4をダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成した場合、サンギヤとキャリアとの一方が第1要素、リングギヤが第2要素、サンギヤとキャリアとの他方が第3要素になる。また、第2プラネタリギヤ5をダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成した場合、サンギヤとキャリアとの一方が第4要素、リングギヤが第5要素、サンギヤとキャリアとの他方が第6要素になる。
【0151】
また、第4実施形態では、入力軸2の周りに、一端側から順に、第1ギヤ列G1と、第1プラネタリギヤ4と、第1同期噛合機構S1と、第2ブレーキB2と、第2ギヤ列G2と、第2油圧多板クラッチC2と、第2プラネタリギヤ5と、第1ブレーキB1と、第1油圧多板クラッチC1とを配置したが、これに限定されない。例えば、第1ギヤ列G1と第2ギヤ列G2との間に、第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2と第2ブレーキB2とを配置してもよい。更に、入力軸2の一端側から順に、第1ブレーキB1と、第2ギヤ列G2と、第2プラネタリギヤ5と、第1油圧式多板クラッチC1と、第2油圧式多板クラッチC2と、第1同期噛合機構S1と、第2ブレーキB2と、第1ギヤ列G1と、第1プラネタリギヤ4とを配置してもよい。また、第1プラネタリギヤ4と第2プラネタリギヤ5との間に第1ギヤ列G1と第2ギヤ列G2とを配置することも可能である。
[第5実施形態]
次に、図9及び図10を参照して、本発明の自動変速機の第5実施形態について説明する。
【0152】
第5実施形態の自動変速機は、動力源たる図外のエンジンに連結される流体トルクコンバータTCを備えている。流体トルクコンバータTCは、エンジンのフライホイール2aに回転振動吸収用のダンパ2bを介して連結されるポンプPoと、ポンプPoから内部流体を介して動力伝達されるタービンTaと、ポンプPoとタービンTaとの間に介設され一方向クラッチを介して変速機ケース1に固定されるステータStと、タービンTaをポンプPoに機械的に連結するロックアップクラッチLCとを備えている。
【0153】
又、変速機ケース1内には、タービンTaと連結する中空の第1入力軸21と、第1入力軸21内に同心に内挿された第2入力軸22とが回転自在に軸支されている。又、自動変速機は、入力用の第1プラネタリギヤ4と、変速用の第2プラネタリギヤ5及び第3プラネタリギヤ6と、出力ギヤからなる出力部材3とを備え、何れも第1,第2入力軸21,22と同心に配置される。出力部材3の回転は、図外のデファレンシャルギヤを介して車両の左右両輪に伝達される。
【0154】
ロックアップクラッチLCには、第2入力軸22と連結する第2入力軸用ディスク22aが介設されている。ロックアップクラッチLCを係合させるとポンプPoとタービンTaとが機械的に連結されると共に、第2入力軸22も第2入力軸用ディスク22aを介してポンプPoとタービンTaとに機械的に連結される。尚、ロックアップクラッチLCは、単板式のものでも多板式のものでもよい。
【0155】
第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSaとリングギヤRaとに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に支持するキャリアCaとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0156】
図10の上段に示す速度線図を参照して、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSa、キャリアCa及びリングギヤRaから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSa、第2要素はキャリアCa、第3要素はリングギヤRaになる。
【0157】
尚、サンギヤSaとキャリアCa間の間隔とキャリアCaとリングギヤRa間の間隔との比は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとして、i:1に設定される。第5実施形態では、サンギヤSaを変速機ケース1に固定される固定要素とし、リングギヤRaを第1入力軸21に連結される入力要素として、キャリアCaが出力要素になるようにしている。第1プラネタリギヤ4の出力速度(キャリアCaの回転速度)N1はi/(i+1)になり、速度線図から明らかなように、第1入力軸21の回転が減速されてキャリアCaから出力される。尚、速度線図において、下の横線と上の横線は夫々回転速度が「0」と「1」(入力軸2と同じ回転速度)であることを示している。
【0158】
第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、互いに噛合すると共に一方がサンギヤSb、他方がリングギヤRbに噛合する一対のピニオンPb,Pb’を自転及び公転自在に支持するキャリアCbとから成るダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0159】
第3プラネタリギヤ6は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤScとリングギヤRcとに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に支持するキャリアCcとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0160】
図10の下段に示す速度線図を参照して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb、キャリアCb及びリングギヤRbから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はキャリアCb、第5要素はリングギヤRb、第6要素はサンギヤSbになる。尚、サンギヤSbとキャリアCb間の間隔とキャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2プラネタリギヤ5のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0161】
又、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc、キャリアCc及びリングギヤRcから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素はサンギヤSc、第8要素はキャリアCc、第9要素はリングギヤRcになる。尚、サンギヤSc(縦線Y2)とキャリアCc(縦線Y4)間の間隔とキャリアCc(縦線Y4)とリングギヤRc(縦線Y5)間の間隔との比は、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとして、k:1に設定される。
【0162】
ここで、第5実施形態では、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(第5要素)を第2入力軸22に連結し、サンギヤSb(第6要素)と第3プラネタリギヤ6のリングギヤRc(第9要素)とを連結して連結体Sb,Rcが構成され、キャリアCc(第8要素)を出力部材3に連結している。
【0163】
又、係合機構として、第1プラネタリギヤ4のキャリアCa(第2要素)と第2プラネタリギヤ5のキャリアCb(第4要素)とを連結する状態とこの状態を断つ状態とに切換自在な第2係合機構たる第1油圧式多板クラッチC1と、第1プラネタリギヤ4のキャリアCa(第2要素)と連結体Sb,Rc(第6,第9要素)とを連結する状態とこの状態を断つ状態とに切換自在な第1係合機構としての噛合機構たる第1同期噛合機構S1と、第2プラネタリギヤ5のキャリアCb(第4要素)と第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc(第7要素)とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第3係合機構たる第1切換クラッチCxと、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(第5要素)と第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc(第7要素)とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第4係合機構たる第2切換クラッチCyと、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(第5要素)を変速機ケース1に固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第5係合機構たる第1ブレーキB1とを備えている。両切換クラッチCx,Cyは油圧式多板クラッチで構成される。
【0164】
上記の如く第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbと第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcとを連結して連結体Sb,Rcを構成することにより、図10の下段に示す速度線図において、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbは、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcと同一の縦線Y5上に常時位置する。一方、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbとキャリアCbの速度線図上の位置は、第1切換クラッチCxを係合させた場合と第2切換クラッチCyを係合させた場合とで異なる。
【0165】
これを詳述するに、第1切換クラッチCxの係合時には、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbが第3プラネタリギヤ6のサンギヤScと同一の縦線Y2上に位置し、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbは、縦線Y2と縦線Y5間の間隔の1/jだけ縦線Y2から右側に離れた縦線Y3上に位置する。又、第2切換クラッチCyの係合時には、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbが縦線Y2上に位置し、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbは、縦線Y2との間の間隔と縦線Y5との間の間隔との比が1:jとなるように縦線Y2から左に離れた縦線Y1上に位置する。
【0166】
第1同期噛合機構S1と第1切換クラッチCxと第1ブレーキB1とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(縦線Y3)の回転速度が「0」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のキャリアCcが位置する縦線Y4での回転速度は「1st」になって、1速段が確立される。
【0167】
第1同期噛合機構S1と第2切換クラッチCyと第1ブレーキB1とを係合させると、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc(縦線Y2)の回転速度が「0」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のキャリアCcが位置する縦線Y4での回転速度は「2nd」になって、2速段が確立される。
【0168】
第1同期噛合機構S1と第1切換クラッチCxと第2切換クラッチCyとを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbとキャリアCbとが連結されて、第2プラネタリギヤ5が各要素の相対回転不能なロック状態になるため、縦線Y2での回転速度と縦線Y5での回転速度とが共に第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、縦線Y4での回転速度もN1である「3rd」になって、3速段が確立される。尚、3速段においては、第1油圧式多板クラッチC1も一緒に係合させてもよい。これにより、第1油圧式多板クラッチC1でフリクションロスが発生することを確実に防止することができる。
【0169】
第1同期噛合機構S1と第2切換クラッチCyとロックアップクラッチLCとを係合させると、縦線Y2での回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度がN1になり、縦線Y4での回転速度が「4th」になって、4速段が確立される。第5実施形態では、4速段以上の変速段においてはロックアップクラッチLCを係合させてトルクコンバータTCにおけるスリップを防止することで燃費の向上を図るように構成されている。
【0170】
第1同期噛合機構S1と第1切換クラッチCxとロックアップクラッチLCとを係合させると、縦線Y3での回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度がN1になり、縦線Y4での回転速度が「5th」になって、5速段が確立される。
【0171】
第1切換クラッチCxと第2切換クラッチCyとロックアップクラッチLCとを係合させると、第2プラネタリギヤ5が各要素の相対回転不能なロック状態になるため、縦線Y2での回転速度と縦線Y5での回転速度とが共に「1」になり、縦線Y4での回転速度も1である「6th」になって、6速段が確立される。
【0172】
第1油圧式多板クラッチC1と第1切換クラッチCxとロックアップクラッチLCとを係合させると、縦線Y2での回転速度がN1、縦線Y3での回転速度が「1」となり、縦線Y4での回転速度が「7th」となって、7速段が確立される。
【0173】
第1油圧式多板クラッチC1と第2切換クラッチCyとロックアップクラッチLCとを係合させると、縦線Y1での回転速度がN1、縦線Y2での回転速度が「1」となり、縦線Y4での回転速度が「8th」となって、8速段が確立される。
【0174】
第1油圧式多板クラッチC1と第1切換クラッチCxと第1ブレーキB1とを係合させると、縦線Y2での回転速度がN1、縦線Y3での回転速度が「0」となり、縦線Y4での回転速度がマイナスの「Rev1」となって、後進1速段が確立される。
【0175】
第1油圧式多板クラッチC1と第2切換クラッチCyと第1ブレーキB1とを係合させると、縦線Y1での回転速度がN1、縦線Y2での回転速度が「0」となり、縦線Y4での回転速度がマイナスの「Rev2」となって、後進2速段が確立される。
【0176】
図9(b)は、上述した各変速段と第1同期噛合機構S1、クラッチC1,Cx,Cy、ブレーキB1、ロックアップクラッチLCの係合状態との関係を纏めて表示した図であり、「○」は係合を表している。又、図9(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを1.4、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを2.4、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを1.7とした場合における各変速段のギヤレシオ(第1入力軸21の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)およびレシオレンジ(1速段と8速段のギヤレシオの比(図9(b)の1速段のギヤレシオの右隣の欄に表示))が適切になる。
【0177】
第5実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、第1同期噛合機構S1がトルク差の小さい5速段と6速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
【0178】
又、ロックアップクラッチLCを除く第1同期噛合機構S1、クラッチC1,Cx,Cy、ブレーキB1の5つの係合機構で、前進8段の変速を行うことができる。従って、従来のものよりも係合機構が1つ少ないにもかかわらず、前進変速段が1段多い自動変速機を構成することができ、又、係合機構が1つ減るため、小型化と構成の簡略化を図ることができる。又、第5実施形態のものによれば、図9(b)の開放数の欄に示すように、全ての変速段において開放されている係合機構の数を3つ以下とすることができ、特に1〜3速段と、6〜8速段においては開放されている係合機構の数を2、2つの後進段においては1とすることができ、更に3速段においては第1油圧式多板クラッチC1も係合させれば、開放されている係合機構の数を1とすることができる。従って、第5実施形態のものによれば、フリクションロスを軽減し、自動変速機の効率を向上させることができる。
【0179】
尚、第5実施形態の自動変速機においては、入力用の第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaを第1入力軸21に連結される入力要素、サンギヤSaを変速機ケース1に固定される固定要素、キャリアCaを出力要素としているが、サンギヤSaを入力要素、リングギヤRaを固定要素、キャリアCaを出力要素としてもよい。又、第1プラネタリギヤをダブルピニオン型のブラネタリギヤで構成し、サンギヤSaとキャリアCaの一方を入力要素、他方を固定要素、リングギヤRaを出力要素としてもよい。この場合、第1要素がサンギヤSaとキャリアCaの一方、第2要素がリングギヤRa、第3要素がサンギヤSaとキャリアCaの他方となる。
【0180】
又、第3プラネタリギヤ6を第2プラネタリギヤ5の径方向内側に配置して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbと第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcとを一体化してもよい。これによれば、自動変速機の軸長を更に短縮できる。
[第6実施形態]
次に、図11を参照して、本発明の自動変速機の第6実施形態を説明する。第6実施形態の自動変速機は、第5実施形態の自動変速機の第2入力軸22及び第2入力軸用ディスク22aに代えて、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(第5要素)と入力軸2とを解除自在に連結する第2油圧式多板クラッチC2を設けたものであり、他の構成は第5実施形態と同一である。尚、第6実施形態の自動変速機においては、第2油圧式多板クラッチC2を第3係合機構とし、第1切換クラッチCxを第4係合機構とし、第2切換クラッチCyを第5係合機構とし、第1ブレーキB1を第6係合機構とする。
【0181】
第6実施形態の自動変速機によれば、高速段域および低速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、第1同期噛合機構S1がトルク差の小さい5速段と6速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
[第7実施形態]
次に、図12、図13を参照して、本発明の自動変速機の第7実施形態について説明する。第7実施形態の自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と同心に配置された出力ギヤから成る出力部材3とを備えている。出力部材3の回転は、図外のデファレンシャルギヤを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0182】
又、変速機ケース1内には、入力軸2の周りに位置させて、入力用の第1プラネタリギヤ4と、変速用のプラネタリギヤPGとが配置されている。第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、互いに噛合すると共に、一方がサンギヤSaに噛合し、他方がリングギヤRaに噛合する一対のピニオンPa,Pa’を自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなるダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0183】
第1プラネタリギヤ4のキャリアCaは入力軸2に連結されて入力要素となり、サンギヤSaは変速機ケース1に固定されて固定要素となり、リングギヤRaが出力要素となる。図13の上段に第1プラネタリギヤ4の速度線図を示す。第1プラネタリギヤ4の速度線図において、下方の横線は回転速度が「0」であることを示し、上方の横線は回転速度が入力軸の回転を「1」としてこれと同一である「1」であることを示している。第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとすると、第1プラネタリギヤ4は入力軸2の回転速度「1」を(i−1)/iに減速して出力要素たるリングギヤRaから出力する。即ち、出力要素たるリングギヤRaの回転速度N1は(i−1)/iとなる。
【0184】
変速用のプラネタリギヤPGは、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とで構成される。第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、サンギヤSb及びリングギヤRbに噛合するピニオンPbを自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0185】
第3プラネタリギヤ6は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤSc及びリングギヤRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0186】
第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと第3プラネタリギヤ6のキャリアCcとは、互いに連結されて連結体Rb,Ccを構成する。連結体Rb,Ccは出力部材3に連結されている。
【0187】
図13の中段に示す速度線図を参照して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb、キャリアCb及びリングギヤRbから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSb、第2要素はキャリアCb、第3要素はリングギヤRbになる。尚、サンギヤSbとキャリアCb間の間隔とキャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2プラネタリギヤ5のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0188】
又、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc、キャリアCc及びリングギヤRcから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はサンギヤSc、第5要素はキャリアCc、第6要素はリングギヤRcになる。尚、サンギヤSc(縦線Y2)とキャリアCc(縦線Y4)間の間隔とキャリアCc(縦線Y4)とリングギヤRc(縦線Y5)間の間隔との比は、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとして、k:1に設定される。
【0189】
又、第7実施形態の自動変速機は、係合機構として、第1係合要素としての噛合機構たる第1同期噛合機構S1と、第2係合要素たる第1油圧式多板クラッチC1と、第3係合要素たる第2油圧式多板クラッチC2と、第4係合要素たる第1切換クラッチCxと、第5係合要素たる第2切換クラッチCyと、第6係合要素たる第1ブレーキB1とを備える。両切換クラッチCx,Cy及び第1ブレーキB1は、油圧式多板クラッチおよび油圧式多板ブレーキで構成される。
【0190】
第1同期噛合機構S1は、第1プラネタリギヤ4の出力要素たるリングギヤRaと第3プラネタリギヤ6の第6要素たるリングギヤRcとを解除自在に連結する。第1油圧式多板クラッチC1は、第1プラネタリギヤ4の出力要素たるリングギヤRaと第2プラネタリギヤ5の第1要素たるサンギヤSbと解除自在に連結する。
【0191】
第2油圧式多板クラッチC2は、第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbと入力軸2とを解除自在に連結する。第1切換クラッチCxは、第2プラネタリギヤ5の第1要素たるサンギヤSbと第3プラネタリギヤ6の第4要素たるサンギヤScとを解除自在に連結する。第2切換クラッチCyは、第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbと第3プラネタリギヤ6の第4要素たるサンギヤScとを解除自在に連結する。第1ブレーキB1は、第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbを変速機ケース1に解除自在に固定する。
【0192】
上記の如く第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと第3プラネタリギヤ6のキャリアCcとを連結して連結体Rb,Ccを構成することにより、図13の下段に示す速度線図において、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbは、第3プラネタリギヤ6のキャリアCcと同一の縦線Y4上に常時位置する。一方、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbとキャリアCbの速度線図上の位置は、第1切換クラッチCxを係合させた場合と第2切換クラッチCyを係合させた場合とで異なる。
【0193】
これを詳述するに、第1切換クラッチCxの係合時には、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbが第3プラネタリギヤ6のサンギヤScと同一の縦線Y2上に位置し、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbは、縦線Y2と縦線Y4間の間隔のj/(j+1)だけ縦線Y2から右側に離れた縦線Y3上に位置する。又、第2切換クラッチCyの係合時には、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbが縦線Y2上に位置し、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbは、縦線Y2との間の間隔と縦線Y4との間の間隔との比がj:j+1となるように縦線Y2から左に離れた縦線Y1上に位置する。
【0194】
第1同期噛合機構S1と第1切換クラッチCxと第1ブレーキB1とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のキャリアCb(縦線Y3)の回転速度が「0」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のキャリアCcが位置する縦線Y4での回転速度は「1st」になって、1速段が確立される。
【0195】
第1同期噛合機構S1と第2切換クラッチCyと第1ブレーキB1とを係合させると、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc(縦線Y2)の回転速度が「0」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のキャリアCcが位置する縦線Y4での回転速度は「2nd」になって、2速段が確立される。
【0196】
第1同期噛合機構S1と第1切換クラッチCxと第2切換クラッチCyとを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbとキャリアCbとが連結されて、第2プラネタリギヤ5が各要素の相対回転不能なロック状態になるため、縦線Y2での回転速度と縦線Y5での回転速度とが共に第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、縦線Y4での回転速度もN1である「3rd」になって、3速段が確立される。尚、3速段においては、第1油圧式多板クラッチC1も一緒に係合させてもよい。これにより、第1油圧式多板クラッチC1でフリクションロスが発生することを確実に防止することができる。
【0197】
第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2と第2切換クラッチCyとを係合させると、縦線Y2での回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度がN1になり、縦線Y4での回転速度が「4th」になって、4速段が確立される。
【0198】
第1同期噛合機構S1と第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxとを係合させると、縦線Y3での回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度がN1になり、縦線Y4での回転速度が「5th」になって、5速段が確立される。
【0199】
第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxと第2切換クラッチCyとを係合させると、第2プラネタリギヤ5が各要素の相対回転不能なロック状態になるため、縦線Y2での回転速度と縦線Y5での回転速度とが共に「1」になり、縦線Y4での回転速度も1である「6th」になって、6速段が確立される。
【0200】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2と第2切換クラッチCyとを係合させると、縦線Y1での回転速度がN1、縦線Y2での回転速度が「1」となり、縦線Y4での回転速度が「7th」となって、7速段が確立される。
【0201】
第1油圧式多板クラッチC1と第2切換クラッチCyと第1ブレーキB1とを係合させると、縦線Y1での回転速度がN1、縦線Y2での回転速度が「0」となり、縦線Y4での回転速度がマイナスの「Rev」となって、後進段が確立される。
【0202】
図12(b)は、上述した各変速段と第1同期噛合機構S1、クラッチC1,C2,Cx,Cy、ブレーキB1の係合状態との関係を纏めて表示した図であり、「○」は係合を表している。又、図12(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを2.0、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを2.0、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを2.0とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)およびレシオレンジ(1速段と7速段のギヤレシオの比(図12(b)の1速段のギヤレシオの右隣の欄に表示))が適切になる。
【0203】
又、図12(b)の開放数の欄には、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチおよびブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を各変速段毎に示している。これによれば、全ての変速段において、開放数が3以下となっており、特に6速段、7速段、後進段では、開放数が2となり、3速段でも第1油圧式多板クラッチC1を係合させれば、開放数を2とすることができる。
【0204】
第7実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、第1同期噛合機構S1がトルク差の小さい5速段と6速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
【0205】
尚、第7実施形態においては、入力用の第1プラネタリギヤ4を、入力軸2の回転を減速して出力するものとしたが、これに限らず、第1プラネタリギヤ4を入力軸2の回転を増速して出力するものとしてもよい。この場合、例えば、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRaを入力軸2に連結して入力要素とし、サンギヤSaを変速機ケース1に固定して固定要素とし、キャリアCaを出力要素とすればよい。
[第8実施形態]
次に、図14、図15を参照して、本発明の自動変速機の第8実施形態について説明する。第8実施形態の自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力軸2と、入力軸2と同心に配置された出力ギヤから成る出力部材3とを備えている。出力部材3の回転は、図外のデファレンシャルギヤを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
【0206】
又、変速機ケース1内には、入力軸2の周りに位置させて、入力用の第1プラネタリギヤ4と、変速用のプラネタリギヤPGとが配置されている。第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSa及びリングギヤRaに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなるシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0207】
第1プラネタリギヤ4のサンギヤSaは入力軸2に連結されて入力要素となり、リングギヤRaは変速機ケース1に固定されて固定要素となり、キャリアCaが出力要素となる。図15の上段に第1プラネタリギヤ4の速度線図を示す。第1プラネタリギヤ4の速度線図において、下方の横線は回転速度が「0」であることを示し、上方の横線は回転速度が入力軸の回転を「1」としてこれと同一である「1」であることを示している。第1プラネタリギヤ4のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)をiとすると、第1プラネタリギヤ4は入力軸2の回転速度「1」を1/(i+1)に減速して出力要素たるキャリアCaから出力する。即ち、出力要素たるキャリアCaの回転速度N1は1/(i+1)となる。
【0208】
変速用のプラネタリギヤPGは、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とで構成される。第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSbと、リングギヤRbと、サンギヤSb及びリングギヤRbに噛合するピニオンPbを自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0209】
第3プラネタリギヤ6は、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤSc及びリングギヤRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成される。
【0210】
第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと第3プラネタリギヤ6のサンギヤScとは、互いに連結されて連結体Rb,Scを構成する。又、第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcは出力部材3に連結されている。
【0211】
図15の中段に示す速度線図を参照して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb、キャリアCb及びリングギヤRbから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSb、第2要素はキャリアCb、第3要素はリングギヤRbになる。尚、サンギヤSbとキャリアCb間の間隔とキャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2プラネタリギヤ5のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0212】
又、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSc、キャリアCc及びリングギヤRcから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はリングギヤRc、第5要素はキャリアCc、第6要素はサンギヤScになる。尚、サンギヤSc(縦線Y5)とキャリアCc(縦線Y3)間の間隔とキャリアCc(縦線Y3)とリングギヤRc(縦線Y2)間の間隔との比は、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとして、k:1に設定される。
【0213】
又、第8実施形態の自動変速機は、係合機構として、第1係合要素としての噛合機構たる切換用同期噛合機構Syと、第2係合要素たる第1油圧式多板クラッチC1と、第3係合要素たる第2油圧式多板クラッチC2と、第4係合要素たる第1切換クラッチCxと、第5係合要素たる第1ブレーキB1と、第6係合要素たる第3油圧式多板クラッチC3とを備える。第1切換クラッチCx及び第1ブレーキB1は、油圧式多板クラッチおよび油圧式多板ブレーキで構成される。
【0214】
切換用同期噛合機構Syは、第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbと第3プラネタリギヤ6の第5要素たるキャリアCcとを解除自在に連結する。第1油圧式多板クラッチC1は、第1プラネタリギヤ4の出力要素たるキャリアCaと第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbとを解除自在に連結する。
【0215】
第2油圧式多板クラッチC2は、第2プラネタリギヤ5の第1要素たるサンギヤSbと入力軸2とを解除自在に連結する。第1切換クラッチCxは、第2プラネタリギヤ5の第1要素たるサンギヤSbと第3プラネタリギヤ6の第5要素たるキャリアCcとを解除自在に連結する。第1ブレーキB1は、第2プラネタリギヤ5の第1要素たるサンギヤSbを変速機ケース1に解除自在に固定する。
【0216】
上記の如く第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbと第3プラネタリギヤ6のサンギヤScとを連結して連結体Rb,Scを構成することにより、図15の下段に示す速度線図において、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRbは、第3プラネタリギヤ6のサンギヤScと同一の縦線Y5上に常時位置する。一方、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbとキャリアCbの速度線図上の位置は、第1切換クラッチCxを係合させた場合と切換用同期噛合機構Syを係合させた場合とで異なる。
【0217】
これを詳述するに、第1切換クラッチCxの係合時には、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbが第3プラネタリギヤ6のキャリアCcと同一の縦線Y3上に位置し、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbは、縦線Y3と縦線Y5との間の間隔のj/(j+1)だけ縦線Y3から右側に離れた縦線Y4上に位置する。又、切換用同期噛合機構Syの係合時には、第2プラネタリギヤ5のキャリアCbが縦線Y3上に位置し、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSbは、縦線Y3との間の間隔と縦線Y5との間の間隔との比がj:j+1となるように縦線Y3から左に離れた縦線Y1上に位置する。
【0218】
切換用同期噛合機構Syと第3油圧式多板クラッチC3と第1ブレーキB1とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb(縦線Y1)の回転速度が「0」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「1st」になって、1速段が確立される。
【0219】
切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第1ブレーキB1とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb(縦線Y1)の回転速度が「0」、縦線Y3での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「2nd」になって、2速段が確立される。
【0220】
切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第2、第3プラネタリギヤ5,6の各要素が、相対回転不能なロック状態となると共に、N1の速度で回転して、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度もN1である「3rd」となり、3速段が確立される。
【0221】
切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb(縦線Y1)の回転速度が「1」、縦線Y3での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「4th」になって、4速段が確立される。
【0222】
切換用同期噛合機構Syと第2油圧式多板クラッチC2と第3油圧式多板クラッチC3とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSb(縦線Y1)の回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「5th」になって、5速段が確立される。
【0223】
切換用同期噛合機構Syと第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxとを係合させると、第2、第3プラネタリギヤ5,6の各要素が、相対回転不能なロック状態となると共に、「1」の速度で回転して、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度も「1」である「6th」となり、6速段が確立される。
【0224】
第2油圧式多板クラッチC2と第3油圧式多板クラッチC3と第1切換クラッチCxとを係合させると、縦線Y3での回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「7th」になって、7速段が確立される。
【0225】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxとを係合させると、縦線Y3での回転速度が「1」、縦線Y4での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「8th」になって、8速段が確立される。
【0226】
第3油圧式多板クラッチC3と第1切換クラッチCxと第1ブレーキB1とを係合させると、縦線Y5での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1、縦線Y3での回転速度が「0」になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度はマイナスの「Rev1」になって、後進1速段が確立される。
【0227】
第1油圧式多板クラッチC1と第1切換クラッチCxと第1ブレーキB1とを係合させると、縦線Y4での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1、縦線Y3での回転速度が「0」になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度はマイナスの「Rev2」になって、後進2速段が確立される。
【0228】
図14(b)は、上述した各変速段と切換用同期噛合機構Sy、クラッチC1,C2,C3,Cx、ブレーキB1の係合状態との関係を纏めて表示した図であり、「○」は係合を表している。又、図14(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを1.4、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを1.4、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを3.0とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)およびレシオレンジ(1速段と8速段のギヤレシオの比(図14(b)の1速段の公比の欄に表示))が適切になる。
【0229】
又、図14(b)の開放数の欄には、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチおよびブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を各変速段毎に示している。これによれば、全ての変速段において、開放数が3以下となっており、特に7速段、8速段、後進1速段、後進2速段では、開放数が2となることがわかる。
【0230】
第8実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、切換用同期噛合機構Syがトルク差の小さい6速段と7速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
【0231】
尚、第8実施形態においては、入力用の第1プラネタリギヤ4を、入力軸2の回転を減速して出力するものとしたが、これに限らず、第1プラネタリギヤ4を入力軸2の回転を増速して出力するものとしてもよい。この場合、例えば、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaを入力軸2に連結して入力要素とし、リングギヤRaを変速機ケース1に固定して固定要素とし、サンギヤSaを出力要素とすればよい。
[第9実施形態]
次に、図16、図17を参照して、本発明の自動変速機の第9実施形態について説明する。第9実施形態の自動変速機は、第2プラネタリギヤ5の第1要素をリングギヤRb、第3要素をサンギヤSbとし、第2プラネタリギヤ5の第3要素たるサンギヤSbと第3プラネタリギヤ6の第6要素たるサンギヤScとを連結して連結体Sb,Scを構成し、第8実施形態の第3油圧式多板クラッチC3に代えて、連結体Sb,Scを変速機ケース1に解除自在に固定する第6係合機構たる第2ブレーキB2を備える点で、第8実施形態の自動変速機と異なる。
【0232】
この場合、第1切換クラッチCxの係合時には、第2プラネタリギヤ5の第1要素たるリングギヤRbが第3プラネタリギヤ6の第5要素たるキャリアCcと同一の縦線Y3上に位置し、第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbは、縦線Y3と縦線Y5との間の間隔の1/(j+1)だけ縦線Y3から右側に離れた縦線Y4上に位置する。
【0233】
又、切換用同期噛合機構Syの係合時には、第2プラネタリギヤ5の第2要素たるキャリアCbが縦線Y3上に位置し、第2プラネタリギヤ5の第1要素たるリングギヤRbは、縦線Y3との間の間隔と縦線Y5との間の間隔との比が1:j+1となるように縦線Y3から左に離れた縦線Y1上に位置する。他の構成は第8実施形態の自動変速機と同一である。
【0234】
第9実施形態の自動変速機では、切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第1ブレーキB1とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(縦線Y1)の回転速度が「0」、縦線Y3での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「1st」になって、1速段が確立される。
【0235】
切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第1切換クラッチCxとを係合させると、第2、第3プラネタリギヤ5,6の各要素が、相対回転不能なロック状態となると共に、N1の速度で回転して、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度もN1である「2nd」となり、2速段が確立される。
【0236】
切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第2ブレーキB2とを係合させると、縦線Y3での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1、縦線Y5での回転速度が「0」となり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「3rd」になって、3速段が確立される。
【0237】
切換用同期噛合機構Syと第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(縦線Y1)の回転速度が「1」、縦線Y3での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「4th」になって、4速段が確立される。
【0238】
切換用同期噛合機構Syと第2油圧式多板クラッチC2と第2ブレーキB2とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(縦線Y1)の回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度が「0」となり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「5th」になって、5速段が確立される。
【0239】
切換用同期噛合機構Syと第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxとを係合させると、第2、第3プラネタリギヤ5,6の各要素が、相対回転不能なロック状態となると共に、「1」の速度で回転して、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度も「1」である「6th」となり、6速段が確立される。
【0240】
第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxと第2ブレーキB2とを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(縦線Y3)の回転速度が「1」、縦線Y5での回転速度が「0」となり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「7th」になって、7速段が確立される。
【0241】
第1油圧式多板クラッチC1と第2油圧式多板クラッチC2と第1切換クラッチCxとを係合させると、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRb(縦線Y3)での回転速度が「1」、縦線Y4での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度は「8th」になって、8速段が確立される。
【0242】
第1油圧式多板クラッチC1と第1切換クラッチCxと第1ブレーキB1とを係合させると、縦線Y4での回転速度が第1プラネタリギヤ4の出力速度N1、縦線Y3での回転速度が「0」になり、出力部材3に連結される第3プラネタリギヤ6のリングギヤRcが位置する縦線Y2での回転速度はマイナスの「Rev」になって、後進段が確立される。
【0243】
図16(b)は、上述した各変速段と切換用同期噛合機構Sy、クラッチC1,C2,Cx、ブレーキB1,B2の係合状態との関係を纏めて表示した図であり、「○」は係合を表している。又、図16(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを1.7、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを1.4、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを3.3とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力部材3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)およびレシオレンジ(1速段と8速段のギヤレシオの比(図16(b)の1速段の公比の欄に表示))が適切になる。
【0244】
又、図16(b)の開放数の欄には、開放時に引き摺りトルクを発生させる油圧式多板クラッチおよびブレーキで構成される係合機構のうち非係合状態(連結が断たれた状態)にあるものの数(開放数)を各変速段毎に示している。これによれば、全ての変速段において、開放数が3以下となっており、特に7速段、8速段、後進段では、開放数が2となることがわかる。
【0245】
第9実施形態の自動変速機によれば、高速段域におけるフリクションロスを低減し、伝達効率の低下を抑制すると共に、切換用同期噛合機構Syがトルク差の小さい6速段と7速段との間でしか切換えを行わないため、変速をスムーズに行うことができ、又、従来品からの設計変更が容易なため、製造コストを抑えることができる。
【0246】
又、第9実施形態の自動変速機は、第8実施形態のものと比較して、入力軸2上に配置される構成部品の多い第3油圧式多板クラッチC3を、入力軸2上に配置される構成部品の少ない第2ブレーキB2に置き換えているため、自動変速機の軸長を短くすることができる。
【0247】
尚、第8実施形態においては、入力用の第1プラネタリギヤ4を、入力軸2の回転を減速して出力するものとしたが、これに限らず、第1プラネタリギヤ4を入力軸2の回転を増速して出力するものとしてもよい。この場合、例えば、第1プラネタリギヤ4のキャリアCaを入力軸2に連結して入力要素とし、リングギヤRaを変速機ケース1に固定して固定要素とし、サンギヤSaを出力要素とすればよい。
【0248】
又、上記各実施形態においては、本発明の噛合機構として、擦り合わせ摩擦による回転同期機能を備えた同期噛合機構(シンクロメッシュ機構)を用いて説明したが、噛合機構は、同期噛合機構に限られず、回転同期機能を備えないドグクラッチ機構であってもよく、これによっても同様に本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0249】
1…変速機ケース、2…入力軸、3…出力部材、4…第1プラネタリギヤ、Sa…サンギヤ、Ra…リングギヤ、Pa…ピニオン、Ca…キャリア、PG…変速用のプラネタリギヤ、5…第2プラネタリギヤ、Sb…サンギヤ、Rb…リングギヤ、Pb,Pb’…ピニオン、Cb…キャリア、6…第3プラネタリギヤ、Sc…サンギヤ、Rc…リングギヤ、Pc…ピニオン、Cc…キャリア、7…第4プラネタリギヤ、Sd…サンギヤ、Rd…リングギヤ、Pd…ピニオン、Cd…キャリア、S1…第1同期噛合機構、Sy…切換用同期噛合機構、C1…第1油圧式多板クラッチ、C2…第2油圧式多板クラッチ、C3…第3油圧式多板クラッチ、Cx…第1切換クラッチ、Cy…第2切換クラッチ、B1…第1ブレーキ、B2…第2ブレーキ、F1…一方向クラッチ、TC…流体トルクコンバータ、G1…第1ギヤ列、G2…第2ギヤ列。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケース内に配置された複数のプラネタリギヤを介して入力軸の回転を複数段に変速して出力部材から出力する自動変速機において、
前記各プラネタリギヤは複数の要素を備え、
前進1速段から所定の中速段に亘る低速段域の全ての変速段を確立させる際には、前記プラネタリギヤの1つの要素と、他の要素又は入力軸又は変速機ケースとを連結する状態となり、前記所定の中速段を超える変速段からなる高速段域の全ての変速段を確立させる際には前記連結を断つ状態となる第1係合機構を備え、
第1係合機構は、噛合機構で構成され、
前記所定の中速段は4速段以上であることを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
請求項1記載の自動変速機であって、前記複数のプラネタリギヤは入力用のプラネタリギヤと変速用のプラネタリギヤとで構成され、
入力用のプラネタリギヤは、入力軸に連結される入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、入力軸の回転を変速して出力要素から出力し、
前記第1係合機構は、該出力要素と、変速用のプラネタリギヤの1つの要素とを解除自在に連結することを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
請求項2に記載の自動変速機であって、前記入力用のプラネタリギヤは、前記入力軸の回転を減速して前記出力要素から出力し、
前記変速用のプラネタリギヤは、速度線図においてギヤ比に対応する間隔で並ぶ4つの回転要素を構成し、これら回転要素を速度線図における並び順に夫々第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素、第4回転要素として、第2回転要素が出力部材に連結され、
係合機構として、前記入力用のプラネタリギヤの出力要素と変速用のプラネタリギヤの第1回転要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、入力軸と変速用のプラネタリギヤの第3回転要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、入力用のプラネタリギヤの出力要素と変速用のプラネタリギヤの第4回転要素とを解除自在に連結する第3係合機構と、第4回転要素を変速機ケースに解除自在に固定する第4係合機構と、第3回転要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項4】
請求項3に記載の自動変速機であって、入力軸と第4回転要素とを解除自在に連結する第6係合機構を備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項5】
請求項1記載の自動変速機であって、変速機ケース内に第1から第4の4つのプラネタリギヤを備え、
第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア、リングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素とし、第4プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第10要素、第11要素及び第12要素として、
入力軸と第1プラネタリギヤの第2要素とが連結され、第1プラネタリギヤの第1要素と、第3プラネタリギヤの第7要素とを連結して第1連結体が構成され、第1プラネタリギヤの第3要素と第2プラネタリギヤの第6要素とを連結して第2連結体が構成され、第2プラネタリギヤの第4要素と第4プラネタリギヤの第10要素とを連結して第3連結体が構成され、第3プラネタリギヤの第8要素と第4プラネタリギヤの第12要素とを連結して第4連結体が構成され、第4プラネタリギヤの第11要素と出力部材とが連結され、
係合機構として、第3プラネタリギヤの第9要素を変速機ケースに解除自在に固定する前記第1係合機構と、入力軸と第3連結体とを解除自在に連結する第2係合機構と、第2プラネタリギヤの第5要素と第4プラネタリギヤの第11要素とを解除自在に連結する第3係合機構と、第2連結体と第3連結体とを解除自在に連結する第4係合機構と、第1連結体を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項6】
請求項1記載の自動変速機であって、変速機ケース内に第1プラネタリギヤと第2プラネタリギヤとを備え、
第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、
第1要素が入力軸に連結され、入力軸に平行に配置した出力部材たる出力軸に、第2要素が第1ギヤ列を介して連結されると共に、第6要素が第1ギヤ列とは異なるギヤ比の第2ギヤ列を介して連結され、
係合機構として、第3要素と第5要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第4要素と入力軸とを解除自在に連結する第2係合機構と、第5要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第4要素を変速機ケースに解除自在に固定する第4係合機構と、第5要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項7】
請求項2記載の自動変速機であって、前記入力用のプラネタリギヤを第1プラネタリギヤとして、前記変速用のプラネタリギヤは、第2と第3の2つのプラネタリギヤで構成され、
第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、第6要素と第9要素とを連結して連結体を構成し、第8要素が出力部材に連結され、
係合機構として、連結体と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第4要素と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第5要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第4要素と第7要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第5要素と第7要素とを解除自在に連結する第5係合機構と、第5要素を変速機ケースに解除自在に固定する第6係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項8】
請求項1記載の自動変速機であって、ポンプとタービンとを機械的に連結させるロックアップクラッチを有し動力源に連結される流体トルクコンバータと、サンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を有する第1から第3の3つのプラネタリギヤとを備え、流体トルクコンバータを介して動力源の回転が入力される入力軸の回転をプラネタリギヤで複数段に変速して出力部材に出力し、
入力軸は第1と第2の2つの入力軸で構成され、
第1入力軸はタービンに連結され、
第2入力軸は、ロックアップクラッチに介設された第2入力軸用ディスクと、プラネタリギヤの何れか1つの要素とに連結され、ロックアップクラッチの係合で動力源の回転が伝達される状態となり、ロックアップクラッチの開放で動力源の回転の伝達を断たれる状態となり、
第1プラネタリギヤは、第1入力軸に連結される入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、
第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、第5要素が第2入力軸に連結され、第6要素と第9要素とを連結して連結体を構成し、第8要素が出力部材に連結され、
係合機構として、連結体と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第4要素と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第4要素と第7要素とを解除自在に連結する第3係合機構と、第5要素と第7要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第5要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項9】
請求項2記載の自動変速機であって、前記入力用のプラネタリギヤを第1プラネタリギヤとして、前記変速用のプラネタリギヤは、第2と第3の2つのプラネタリギヤで構成され、
第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第3要素と第5要素とを連結して連結体を構成し、連結体が出力部材に連結され、
係合機構として、第6要素と出力要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第1要素と出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第2要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第1要素と第4要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第2要素と第4要素とを解除自在に連結する第5係合機構と、第2要素を変速機ケースに解除自在に固定する第6係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項10】
請求項1記載の自動変速機であって、変速機ケース内に配置した入力用の第1プラネタリギヤと変速用の第2と第3の2つのプラネタリギヤとを備え、第1プラネタリギヤは、入力軸に連結された入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、
第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第3要素と第6要素とを連結して連結体を構成し、第4要素が出力部材に連結され、
係合機構として、第2要素と第5要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第2要素と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第1要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第1要素と第5要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第1要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構と、連結体と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第6係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項11】
請求項1記載の自動変速機であって、変速機ケース内に配置した入力用の第1プラネタリギヤと変速用の第2と第3の2つのプラネタリギヤとを備え、第1プラネタリギヤは、入力軸に連結された入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、
第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第3要素と第6要素とを連結して連結体を構成し、第4要素が出力部材に連結され、
係合機構として、第2要素と第5要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第2要素と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第1要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第1要素と第5要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第1要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構と、連結体を変速機ケースに解除自在に固定する第6係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項1】
変速機ケース内に配置された複数のプラネタリギヤを介して入力軸の回転を複数段に変速して出力部材から出力する自動変速機において、
前記各プラネタリギヤは複数の要素を備え、
前進1速段から所定の中速段に亘る低速段域の全ての変速段を確立させる際には、前記プラネタリギヤの1つの要素と、他の要素又は入力軸又は変速機ケースとを連結する状態となり、前記所定の中速段を超える変速段からなる高速段域の全ての変速段を確立させる際には前記連結を断つ状態となる第1係合機構を備え、
第1係合機構は、噛合機構で構成され、
前記所定の中速段は4速段以上であることを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
請求項1記載の自動変速機であって、前記複数のプラネタリギヤは入力用のプラネタリギヤと変速用のプラネタリギヤとで構成され、
入力用のプラネタリギヤは、入力軸に連結される入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、入力軸の回転を変速して出力要素から出力し、
前記第1係合機構は、該出力要素と、変速用のプラネタリギヤの1つの要素とを解除自在に連結することを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
請求項2に記載の自動変速機であって、前記入力用のプラネタリギヤは、前記入力軸の回転を減速して前記出力要素から出力し、
前記変速用のプラネタリギヤは、速度線図においてギヤ比に対応する間隔で並ぶ4つの回転要素を構成し、これら回転要素を速度線図における並び順に夫々第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素、第4回転要素として、第2回転要素が出力部材に連結され、
係合機構として、前記入力用のプラネタリギヤの出力要素と変速用のプラネタリギヤの第1回転要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、入力軸と変速用のプラネタリギヤの第3回転要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、入力用のプラネタリギヤの出力要素と変速用のプラネタリギヤの第4回転要素とを解除自在に連結する第3係合機構と、第4回転要素を変速機ケースに解除自在に固定する第4係合機構と、第3回転要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項4】
請求項3に記載の自動変速機であって、入力軸と第4回転要素とを解除自在に連結する第6係合機構を備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項5】
請求項1記載の自動変速機であって、変速機ケース内に第1から第4の4つのプラネタリギヤを備え、
第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア、リングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素とし、第4プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第10要素、第11要素及び第12要素として、
入力軸と第1プラネタリギヤの第2要素とが連結され、第1プラネタリギヤの第1要素と、第3プラネタリギヤの第7要素とを連結して第1連結体が構成され、第1プラネタリギヤの第3要素と第2プラネタリギヤの第6要素とを連結して第2連結体が構成され、第2プラネタリギヤの第4要素と第4プラネタリギヤの第10要素とを連結して第3連結体が構成され、第3プラネタリギヤの第8要素と第4プラネタリギヤの第12要素とを連結して第4連結体が構成され、第4プラネタリギヤの第11要素と出力部材とが連結され、
係合機構として、第3プラネタリギヤの第9要素を変速機ケースに解除自在に固定する前記第1係合機構と、入力軸と第3連結体とを解除自在に連結する第2係合機構と、第2プラネタリギヤの第5要素と第4プラネタリギヤの第11要素とを解除自在に連結する第3係合機構と、第2連結体と第3連結体とを解除自在に連結する第4係合機構と、第1連結体を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項6】
請求項1記載の自動変速機であって、変速機ケース内に第1プラネタリギヤと第2プラネタリギヤとを備え、
第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、
第1要素が入力軸に連結され、入力軸に平行に配置した出力部材たる出力軸に、第2要素が第1ギヤ列を介して連結されると共に、第6要素が第1ギヤ列とは異なるギヤ比の第2ギヤ列を介して連結され、
係合機構として、第3要素と第5要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第4要素と入力軸とを解除自在に連結する第2係合機構と、第5要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第4要素を変速機ケースに解除自在に固定する第4係合機構と、第5要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項7】
請求項2記載の自動変速機であって、前記入力用のプラネタリギヤを第1プラネタリギヤとして、前記変速用のプラネタリギヤは、第2と第3の2つのプラネタリギヤで構成され、
第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、第6要素と第9要素とを連結して連結体を構成し、第8要素が出力部材に連結され、
係合機構として、連結体と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第4要素と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第5要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第4要素と第7要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第5要素と第7要素とを解除自在に連結する第5係合機構と、第5要素を変速機ケースに解除自在に固定する第6係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項8】
請求項1記載の自動変速機であって、ポンプとタービンとを機械的に連結させるロックアップクラッチを有し動力源に連結される流体トルクコンバータと、サンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を有する第1から第3の3つのプラネタリギヤとを備え、流体トルクコンバータを介して動力源の回転が入力される入力軸の回転をプラネタリギヤで複数段に変速して出力部材に出力し、
入力軸は第1と第2の2つの入力軸で構成され、
第1入力軸はタービンに連結され、
第2入力軸は、ロックアップクラッチに介設された第2入力軸用ディスクと、プラネタリギヤの何れか1つの要素とに連結され、ロックアップクラッチの係合で動力源の回転が伝達される状態となり、ロックアップクラッチの開放で動力源の回転の伝達を断たれる状態となり、
第1プラネタリギヤは、第1入力軸に連結される入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、
第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、第5要素が第2入力軸に連結され、第6要素と第9要素とを連結して連結体を構成し、第8要素が出力部材に連結され、
係合機構として、連結体と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第4要素と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第4要素と第7要素とを解除自在に連結する第3係合機構と、第5要素と第7要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第5要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項9】
請求項2記載の自動変速機であって、前記入力用のプラネタリギヤを第1プラネタリギヤとして、前記変速用のプラネタリギヤは、第2と第3の2つのプラネタリギヤで構成され、
第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第3要素と第5要素とを連結して連結体を構成し、連結体が出力部材に連結され、
係合機構として、第6要素と出力要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第1要素と出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第2要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第1要素と第4要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第2要素と第4要素とを解除自在に連結する第5係合機構と、第2要素を変速機ケースに解除自在に固定する第6係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項10】
請求項1記載の自動変速機であって、変速機ケース内に配置した入力用の第1プラネタリギヤと変速用の第2と第3の2つのプラネタリギヤとを備え、第1プラネタリギヤは、入力軸に連結された入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、
第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第3要素と第6要素とを連結して連結体を構成し、第4要素が出力部材に連結され、
係合機構として、第2要素と第5要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第2要素と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第1要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第1要素と第5要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第1要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構と、連結体と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第6係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項11】
請求項1記載の自動変速機であって、変速機ケース内に配置した入力用の第1プラネタリギヤと変速用の第2と第3の2つのプラネタリギヤとを備え、第1プラネタリギヤは、入力軸に連結された入力要素と、変速機ケースに固定される固定要素と、出力要素とを備え、
第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素として、第3要素と第6要素とを連結して連結体を構成し、第4要素が出力部材に連結され、
係合機構として、第2要素と第5要素とを解除自在に連結する前記第1係合機構と、第2要素と前記第1プラネタリギヤの出力要素とを解除自在に連結する第2係合機構と、第1要素と入力軸とを解除自在に連結する第3係合機構と、第1要素と第5要素とを解除自在に連結する第4係合機構と、第1要素を変速機ケースに解除自在に固定する第5係合機構と、連結体を変速機ケースに解除自在に固定する第6係合機構とを備えることを特徴とする自動変速機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−185505(P2010−185505A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29407(P2009−29407)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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