説明

自動寸法測定装置

【課題】1回のマスター較正でスケール内での絶対寸法測定が可能な3次元寸法・形状測定機能を備えた自動寸法測定装置を提供する。
【解決手段】フローティング機構11が、案内テーブル7と、案内テーブル7上の案内レール12に係合し、直動軸受からなる案内部29を介して案内テーブル7に対してX軸方向に相対移動可能に配設されたフローティングテーブル30を備えている。X軸検出ヘッド5はX軸の不動部位に固定され、X軸検出ヘッド5に対峙するX軸スケール15がフローティングテーブル30に配設されている。測定プローブ13は、フローティングテーブル29に配設され、コイルばねまたはエアシリンダからなる弾性支持部31、31によって挟持されているので、測定プローブ13がワーク16に接触した時に適度な測定荷重を付与した状態で計測することができ、高精度で安定した測定結果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受部品等の機械加工された精密な部品の寸法測定を高精度に測定する自動寸法測定装置、特に、1回のマスター較正でスケール内での絶対寸法測定が可能な3次元寸法・形状測定機能を備えた自動寸法測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、転がり軸受部品等、大量生産される精密部品の寸法測定(抜き取りの比較測定)は、ブロックゲージあるいは専用のマスターを予め製作し、ダイヤルゲージを用いた比較測定により行われている。これらの測定は、マスターとの比較測定を行うため、基本的に測定寸法毎のマスターあるいは測定台を備え、作業者がゲージの値を読み取り、それを記録し、部品寸法が公差内であるかを判断して行われる。
【0003】
このような従来の寸法測定を自動化した装置として、図9に示すような三次元比較測定装置が知られている。この三次元比較測定装置は、計測台上に保持されたワーク(計測対象物)と、測定装置のスライダに支持されたプローブとを、互いに直交するX・Y・Z軸方向に相対移動させる三次元比較測定装置において、ワークのX・Y・Z座標値51と、マスターのX・Y・Z座標値52とを比較演算部53により比較してその減算値を算出し、次にこの減算値と、公差測定部54から入力されている寸法公差とが比較判別部55により測定される。この結果は記録表示部56を介して記録あるいは表示される。また、温度変化に対する較正は、マスター座標値更新手段57によって行われる。すなわち、ワーク温度センサ58によって計測された温度が所定の時点よりどの程度変化したかを温度演算部59でチェックし、この値を温度比較部60により、予め温度差測定器61にセットされた値と比較して、温度演算部59の値が設定値を超えた場合には、測定値更新指令部62へ起動信号が出される。一方、測定時間の経過を検出する時間計測器63を設けて、この所定時点からの時間を時間演算部64により積算し、この値を時間比較部65により、予め時間差設定器66にセットされた値と比較して、時間演算部64の値を超えた場合に、測定値更新指令部62へ起動信号が出される。
【0004】
これにより、ワークの良否判定が正確かつ容易で、その判別結果を使用し、他の関連機器を迅速に連動させることができる。また、測定作業の環境温度が変化した場合に対応して、温度較正機能を備え、この装置から指示される更新指令に基いてモデルのX・Y・Z座標値51を計測し直し、メモリーに記憶されている基準データを更新して行くので、常に精度の高い比較測定結果を得ることが可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平05−60543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然しながら、この従来の三次元比較測定装置では、1つのワーク内で予めプログラミングされた位置での測定を前提とし、測定装置のスケール有効範囲内における絶対寸法測定装置としての機能を備えていない。すなわち、比較測定を短時間に行う場合は問題ないが、3次元測定を行うのであれば、1回のマスターの較正が完了後は、スケール有効範囲内の絶対寸法測定が可能でなければ、転がり軸受部品等、大量生産される精密部品の寸法測定を行う現場では実用性が低い。換言すれば、この温度情報だけで補正する方法では、測定精度に最も影響する要因として、測定温度とは別に、各テーブルの真直度および案内面の姿勢変化を極力低減させないと、所定の3次元空間の絶対値寸法を正確に測定することは難しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、1回のマスター較正でスケール内での絶対寸法測定が可能な3次元寸法・形状測定機能を備えた自動寸法測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、ベッド上に設けられ、ワークが載置される回転テーブルと、前記ベッドに立設されたZ軸テーブルと、このZ軸テーブルに装備され、任意の位置に位置決め可能な送り機構を介してZ軸方向に相対移動可能なX軸テーブルと、このX軸テーブルに装備され、任意の位置に位置決め可能な送り機構を介してX軸方向に相対移動可能な案内テーブルと、この案内テーブル上に配設された高さ寸法測定用のディテクタ、およびフローティング機構を介して配設され、X軸方向に相対移動可能に構成された測定プローブとを備え、前記X軸テーブルとZ軸テーブル間に、Z軸スケールと、このZ軸スケールに対峙するZ軸検出ヘッドが配設されると共に、前記X軸テーブルと案内テーブル間に、X軸スケールと、このX軸スケールに対峙するX軸検出ヘッドが配設され、前記測定プローブが、弾性支持部によって支持されている。
【0008】
このような構成を採用することにより、測定プローブがワークに接触した時に適度な測定荷重を付与した状態で計測することができ、高精度で安定した測定結果を得ることができると共に、1回のマスター較正でスケール内での絶対寸法測定が可能な3次元寸法・形状測定機能を備えた自動寸法測定装置を提供することができる。
【0009】
好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記フローティング機構が、直動軸受からなる案内部を介して前記案内テーブルに対してX軸方向に相対移動可能に配設されたフローティングテーブルを備えていれば、測定プローブとX軸スケールとが一対の連動された動きができ、高精度で安定した測定結果を得ることができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明のように、前記送り機構が、駆動モータと、この駆動モータの回転を軸方向運動に変換し、前記X軸テーブルと案内テーブルとを相対移動させるボールねじ機構とを備えていても良い。
【0011】
また、請求項4に記載の発明のように、前記弾性支持部がコイルばねまたはエアシリンダからなり、前記測定プローブが両側から当該弾性支持部によって挟持されていれば、測定プローブとX軸スケールとが一対の連動された動きができ、測定プローブがワークに接触した位置をX軸スケールで高精度に安定して読み取ることができる。
【0012】
また、請求項5に記載の発明のように、前記高さ寸法測定用のディテクタにより予め前記回転テーブルの基準面の面振れデータが演算装置に記憶されていれば、回転テーブルのチャックにワークを保持する場合、測定データから差し引きして基準面の面振れの補正をすることができる。
【0013】
また、請求項6に記載の発明のように、前記測定プローブを基準面に接触させた状態でZ軸方向に移動させ、前記X軸スケールの変局点を求めれば、基準面からの段差測定が可能となり、ワークの段差測定を行うことができる。
【0014】
また、請求項7に記載の発明のように、前記測定プローブを前記ワークに接触させた状態でZ軸方向に移動させ、前記X軸スケールの変化量を読み取り、前記Z軸スケールの読取値とで演算させれば、曲率等の形状測定が可能となると共に、回転テーブルを回転させることにより3次元形状測定も可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る自動寸法測定装置は、ベッド上に設けられ、ワークが載置される回転テーブルと、前記ベッドに立設されたZ軸テーブルと、このZ軸テーブルに装備され、任意の位置に位置決め可能な送り機構を介してZ軸方向に相対移動可能なX軸テーブルと、このX軸テーブルに装備され、任意の位置に位置決め可能な送り機構を介してX軸方向に相対移動可能な案内テーブルと、この案内テーブル上に配設された高さ寸法測定用のディテクタ、およびフローティング機構を介して配設され、X軸方向に相対移動可能に構成された測定プローブとを備え、前記X軸テーブルとZ軸テーブル間に、Z軸スケールと、このZ軸スケールに対峙するZ軸検出ヘッドが配設されると共に、前記X軸テーブルと案内テーブル間に、X軸スケールと、このX軸スケールに対峙するX軸検出ヘッドが配設され、前記測定プローブが、弾性支持部によって支持されているので、測定プローブがワークに接触した時に適度な測定荷重を付与した状態で計測することができ、高精度で安定した測定結果を得ることができると共に、1回のマスター較正でスケール内での絶対寸法測定が可能な3次元寸法・形状測定機能を備えた自動寸法測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ベッド上に設けられ、ワークが載置される回転テーブルと、前記ベッドに立設されたZ軸テーブルと、このZ軸テーブルに装備され、任意の位置に位置決め可能な送り機構を介してZ軸方向に相対移動可能なX軸テーブルと、このX軸テーブルに装備され、任意の位置に位置決め可能な送り機構を介してX軸方向に相対移動可能な案内テーブルと、この案内テーブル上に配設された高さ寸法測定用のディテクタ、および案内部を介して前記案内テーブルに対してX軸方向に相対移動可能なフローティングテーブルからなるフローティング機構を介して配設され、X軸方向に相対移動可能に構成された測定プローブとを備え、前記X軸テーブルとZ軸テーブル間に、Z軸スケールと、このZ軸スケールに対峙するZ軸検出ヘッドが配設されると共に、前記X軸テーブルと案内テーブル間に、X軸スケールと、このX軸スケールに対峙するX軸検出ヘッドが配設され、前記測定プローブが、弾性支持部によって支持されている。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る自動寸法測定装置の一実施例を示す正面図、図2は、図1の側面図、図3(a)は、一般的な外径寸法の手動測定器を示す正面図、(b)は、(a)の側面図、図4(a)は、同上、高さ寸法の手動測定器を示す正面図、(b)は、(a)の側面図、図5は、本発明に係るフローティング機構を示す平面図、図6は、段付き部の測定動作を示す説明図、図7は、外径測定の実施例を示す説明図、図8は、本発明に係る自動寸法測定装置の機能ブロック図である。
【0018】
図1および図2を用いて本発明に係る自動寸法測定装置の構成を説明する。この自動寸法測定装置は、ベッド1上に設けられた回転テーブル(θ軸)2と、ベッド1に立設されたZ軸テーブル3に装備され、Z軸方向に相対移動可能なX軸テーブル4とを備えている。X軸テーブル4には、X軸検出ヘッド5が配設されると共に、任意の位置に位置決め可能な送り機構6が装備されている。さらに、この送り機構6はX軸方向に相対移動可能な案内テーブル7を備えている。
【0019】
送り機構6は、X軸テーブル4の一端部に固定された駆動モータ8と、この駆動モータ8の回転をX軸方向に変換し、X軸テーブル4に並設された案内レール9、9を介して案内テーブル7を相対移動させるボールねじ機構10とからなる。
【0020】
案内テーブル7上には、後述するフローティング機構11によって支持され、案内レール12、12を介してX軸方向に相対移動可能に構成された測定プローブ13と、高さ寸法測定用のディテクタ14と、光学的なガラススケール等からなるX軸スケール15とが配設されている。フローティングテーブル30に取付けてある測定プローブ13とX軸スケール15とは一対の動きがなされるように構成され、測定プローブ13が被測定物16(以下、ワークという)に接触した位置を読み取ることができる。なお、ワーク16は、前述した回転テーブル2上に載置される。
【0021】
Z軸テーブル3には、X軸テーブル4と同様、光学的なガラススケール等からなるZ軸スケール17とZ軸検出ヘッド18とが配設されると共に、任意の位置に位置決め可能な送り機構19が装備されている。送り機構19は、Z軸テーブル3の一端部に固定された駆動モータ20と、この駆動モータ20の回転をZ軸方向に変換し、Z軸テーブル3に並設された案内レール21、21を介してX軸テーブル7を相対移動させるボールねじ機構22とからなる。
【0022】
フローティング機構11は、案内テーブル7と、この案内テーブル7上の案内レール12、12に係合し、直動軸受からなる案内部29を介して案内テーブル7に対してX軸方向に相対移動可能に配設されたフローティングテーブル30とを備えている。X軸検出ヘッド5はX軸の不動部位に固定されると共に、このX軸検出ヘッド5に対峙するX軸スケール15はフローティングテーブル30の端部に配設されている。また、測定プローブ13は、フローティングテーブル30に配設され、コイルばねまたはエアシリンダ等からなる弾性支持部31、31によって挟持されている。これにより、測定プローブ13とX軸スケール15とは一対の連動された動きができ、測定プローブ13がワーク16に接触した位置をこのX軸スケール15で読み取ることができる。換言すれば、測定プローブ13がワーク16に接触していない時は、両側から弾性支持部31、31で支持されている測定プローブ13は中立位置で停止している状態(X軸スケール15の読取値も一定値)であるが、測定プローブ13をX軸方向に移動させてワーク16に接触させた時点で、X軸スケール15の読取値に変化が生じる。この位置から一定量だけ送りを与えた位置で送りを停止させ、その位置でのX軸スケール15の読取値を計測することができる。すなわち、測定プローブ13がワーク16に接触した時に適度な測定荷重を付与した状態で計測することができ、高精度で安定した測定結果を得ることができる。
【0023】
ここで、本発明に係る自動寸法測定装置の高さ寸法および外径寸法の比較測定方法を説明する前に、軸受部品等のリング状部品の高さ寸法および外径寸法を手動で比較測定する方法を説明する。
【0024】
リング状部品の高さ寸法を手動で比較測定するには、一般的に図3に示すような手動測定器23が使用されている。この手動測定器23は、測定台24と、測定台24上に立設された支柱26と、この支柱26に対してZ軸方向に相対移動可能に取り付けられた固定部27と、この固定部27に装着されたダイヤルゲージ28とからなる。
【0025】
まず、測定台24上にマスター25が載置されると共に、マスター25の高さに対応するように固定部27の高さ調整が行われ、ダイヤルゲージ28の高さ調整が行われる。そして、ダイヤルゲージ28の測定子28aをマスター25に端面に接触させた状態で、マスター25を測定台24上を一周(一回転)させた時のダイヤルゲージ28の読取値の平均値がゼロ位置とされる。
【0026】
次に、マスター25に変えて、測定したいワークが測定台24上に載置されると共に、同じ要領でダイヤルゲージ28の測定子28aをワークに接触させた状態で、ワークを一周させた時のダイヤルゲージ28の読取値の平均値がワークの高さ寸法、すなわち、マスター25との比較値となる。
【0027】
リング状部品の外径寸法を手動で比較測定するには、一般的に図4に示すような手動測定器23が使用されている。まず、測定台24上にマスター25が載置されると共に、マスター25の外径に対応するように固定部27の高さ調整が行われ、ダイヤルゲージ28の高さ調整が行われる。そして、測定台24上でマスター25をY軸方向にスライドさせ、ダイヤルゲージ28の測定子28aをマスター25の外径に接触させた時のダイヤルゲージ28の読取値を記録する。そして、マスター25を所定量回転させてこの動作を繰り返し、マスター25の一周分を数箇所に分割してダイヤルゲージ28の読取値を記録する。これらの読取値の平均値がゼロ位置とされる。また、1周分の読取り値から最大値を求め、この位置をゼロ位置とする方法もある。
【0028】
次に、マスター25に変えて、測定したいワークが測定台24上に載置されると共に、同じ要領で、測定台24上でワークをY軸方向にスライドさせ、ダイヤルゲージ28の測定子28aをワークの外径に接触させた時のダイヤルゲージ28の読取値を記録する。そして、ワークを所定量回転させてこの動作を繰り返し、ワークの一周分を数箇所に分割してダイヤルゲージ28の読取値を記録する。これらの読取値の平均値がワークの外径寸法、すなわち、マスター25との比較値となる。また、1周分の読取り値から最大値を求め、その値とマスター25との比較を行う方法もある。
【0029】
図1および図2を用いて本発明に係る自動寸法測定装置によるリング状部品の高さ寸法および外径寸法の比較測定方法を説明する。高さ寸法測定(比較測定)は、
1.回転テーブル2に設けられたチャック(図示せず)にマスター(ワーク)16をセットする。測定機に設けられた図示しないティーチング機構(ジョイスティック)を使って高さ寸法測定用のディテクタ14を機械原点位置からマスター16近傍へ移動させる。
2.次に測定開始スイッチを押すと、所定の速度で高さ寸法測定用のディテクタ14がマスター16へ接触を開始し、一定量の接触量に達すると送りが停止される。この時点から測定が開始可能状態となる。
3.その後、回転テーブル2を回転させ、マスター16を一周分回転させながら測定を行う。
4.高さ寸法測定用のディテクタ14をマスター16に接触させた状態で一周回転させた時のZ軸スケール17の値を読み取り、測定データを平均化させ、測定した高さ寸法をゼロ位置としても良いし、既定の高さ寸法としても良い。
5.このような動作でマスター16の高さ寸法の測定が完了しているため、高さ寸法測定用のディテクタ14を機械原点に戻す。
6.次に測定したいワーク16を回転テーブル2にセットし、予めプログラムされた一周分の測定回数(分割数)分の測定データを自動測定し、既に測定されたマスター16との差を演算させる。本実施形態では、プログラムにより任意の測定箇所も設定可能とされている。すなわち、1個のマスター16で模範較正を実施することで、X・Z軸に設けられた各スケール15、17の有効範囲内での絶対寸法の測定も可能となる。
【0030】
ここで、回転テーブル2のチャックにマスター16を保持する場合、回転テーブル2の基準面の面振れが問題となるが、予め高さ寸法測定用のディテクタ14により基準面の面振れデータを演算装置に記憶させておけば、測定データから差し引きして補正をすることもできる。
【0031】
また、外径寸法測定(比較測定)は、
1.回転テーブル2に設けられたチャックにマスター16をセットする。測定器に設けられたティーチング機構を使って測定プローブ13を機械原点位置からマスター16近傍へ移動させる。
2.次に測定開始スイッチを押すと、所定の速度で測定プローブ13がマスター16へ接触を開始し、一定量の接触量に達すると送りが停止される。この時点から測定が開始可能状態となる。
3.その後、回転テーブル2を回転させ、マスター16を一周分回転させながら測定を行う。
4.測定プローブ13をマスター16に接触させた状態で一周回転させた時のX軸スケール15の変化量を読み取り、測定データを平均化させ、測定した外径寸法をゼロ位置としても良いし、既定の外径寸法としても良い。
5.このような動作でマスター16の外径寸法の測定が完了しているため、測定プローブ13を機械原点に戻す。
6.次に測定したいワーク16を回転テーブル2にセットし、予めプログラムされた一周分の測定回数(分割数)分の測定データを自動測定し、既に測定されたマスター16との差を演算させる。本実施形態では、Z軸方向の測定と同様にプログラムにより任意の測定箇所も設定可能とされている。すなわち、Z軸テーブル3およびX軸テーブル4の走りに関する真直度、すなわち、ピッチングやヨーイング精度を高精度に保つと共に、回転テーブル2の回転精度(面振れ)および測定プローブ13のプローブ球の中心とθ軸中心の芯ズレ誤差を極限に小さく抑えることにより、1個のマスター16で模範較正を実施することで、Z軸テーブル3およびX軸テーブル4に配設されている各スケール15、17の有効範囲内での絶対寸法の測定も可能となる。
【0032】
ここでは、リング状部品からなるワーク16を例示したが、これに限らず、例えば図6に示すような径差のある軸部品からなるワーク32であっても良い。すなわち、ワーク32の段差測定を行う場合、外径寸法の測定プローブ13を基準面32aに接触させた状態でZ軸方向に移動させ、X軸スケール15の変局点を求めることにより、基準面32aからの段差測定が可能となる。
【0033】
また、Z軸テーブル3を上下動させ、測定プローブ13をワーク32にトレースすることで、曲率等の形状測定が可能となる。すなわち、測定プローブ13をワーク32に接触させた状態でZ軸方向に移動させ、X軸スケール15の変化量を読み取り、Z軸スケール17の読取値とで演算させることで曲率測定が可能となる。さらに、回転テーブル2を回転させることにより3次元形状測定も可能となる。
【0034】
ここで、回転テーブル2のチャックにマスター16を保持する場合、回転テーブル2のθ軸中心とマスター16の軸心に必然的に芯ズレが生じるが、この芯ズレがある状態でも正確な測定ができるように、対向する180°位相での測定データを参照して平均化処理を行うことにより、少なくともX軸方向の芯ズレが僅かに存在する状態でも正確な外径寸法の測定が可能となる。すなわち、図7に示すように、例えば、ワーク16の円周上で8分割のデータを取る場合、外径(直径)寸法にするため、分割数の2倍のn=16の測定データXnを採取し、その総和をn数で割ることにより外径寸法X=(X1+X2+・・・+Xn)/nを求めることができる。
【0035】
本実施形態では、X軸テーブル4を移動させると、X軸テーブル4上に載置されたフローティングテーブル30も弾性支持部31を介して同じ動作(移動)を開始する。この時、X軸スケール15の値はフローティングテーブル30の移動に対応して順次変化していく。次に、測定プローブ13がマスター16に接触した場合、フローティングテーブル30が拘束されるため、X軸スケール15の値がその位置にて停止する。この位置を接触開始点とし、ここから適宜な接触量だけ駆動モータ8に送りをかける。そして、この位置を接触完了位置とし、ここからX軸スケール15のスケール値のデータ収集を開始する。このように、測定プローブ13がフローティングテーブル29に配設され、弾性支持部31、31によって挟持されているので、測定プローブ13がワーク16に接触した時に適度な測定荷重を付与することができ、高精度な測定結果が得られると共に、例えば、3次元測定機のようなタッチプローブ形式を使用しなくても良く、低コストで安定した測定が可能となる。
【0036】
以上の構成は、図8に示すブロック図で示すことができる。各測定点におけるX軸スケール15とZ軸スケール17の値は、それぞれX軸座標読取部33とZ軸座標読取部34で読み取られ、座標値変換部35で変換されると共に、θ軸エンコーダ36の値はθ軸座標読取部37で読み取られ、角度位相演算部38を介して座標値変換部35で変換される。取り込まれたデータは記憶されると同時に演算処理の対象となる。すなわち、既に記憶されているマスター座標値39を取り出して、これらのデータとワークの測定により得られたワーク座標値40とが比較演算部41で比較・演算される。そして、この比較・演算された値と、予め公差設定部42で記憶されている公差とが比較判定部43で比較される。この比較結果により判定結果表示部44で良否の表示がなされる。すなわち、比較判定部43で測定結果が公差内にある場合は、良品としてOK表示され、逆に公差外の場合は、不良品としてNG表される。また、比較演算部41で比較・演算されたワークの絶対寸法は、絶対寸法判定部45で算出され、同じく判定結果表示部44で表示される。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る自動寸法測定装置は、転がり軸受等の軸受部品の比較測定をはじめ、各種部品の寸法・形状を測定する装置として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る自動寸法測定装置の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】(a)は、一般的な外径寸法の手動測定器を示す正面図である。 (b)は、(a)の側面図である。
【図4】(a)は、同上、高さ寸法の手動測定器を示す正面図である。 (b)は、(a)の側面図である。
【図5】本発明に係るフローティング機構を示す平面図である。
【図6】段付き部の測定動作を示す説明図である。
【図7】外径測定の実施例を示す説明図である。
【図8】本発明に係る自動寸法測定装置の機能ブロック図である。
【図9】従来の三次元比較測定装置の機能を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・・・・・・ベッド
2・・・・・・・・回転テーブル
3・・・・・・・・Z軸テーブル
4・・・・・・・・X軸テーブル
5・・・・・・・・X軸検出ヘッド
6、19・・・・・送り機構
7・・・・・・・・案内テーブル
8、20・・・・・駆動モータ
9、12、21・・案内レール
10、22・・・・ボールねじ機構
11・・・・・・・フローティング機構
13・・・・・・・測定プローブ
14・・・・・・・高さ寸法測定用のディテクタ
15・・・・・・・X軸スケール
16、25、32・ワーク(マスター)
17・・・・・・・Z軸スケール
18・・・・・・・Z軸検出ヘッド
23・・・・・・・手動測定器
24・・・・・・・測定台
26・・・・・・・支柱
27・・・・・・・固定部
28・・・・・・・ダイヤルゲージ
28a・・・・・・測定子
29・・・・・・・案内部
30・・・・・・・フローティングテーブル
31・・・・・・・弾性支持部
32a・・・・・・基準面
33・・・・・・・・X軸座標読取部
34・・・・・・・Z軸座標読取部
35・・・・・・・座標値変換部
36・・・・・・・θ軸エンコーダ
37・・・・・・・θ軸座標読取部
38・・・・・・・角度位相演算部
39・・・・・・・マスター座標値
40・・・・・・・ワーク座標値
41・・・・・・・比較演算部
42・・・・・・・公差設定部
43・・・・・・・比較判定部
44・・・・・・・判定結果表示部
45・・・・・・・絶対寸法判定部
51・・・・・・・ワークのXYZ座標値
52・・・・・・・マスターのXYZ座標値
53・・・・・・・比較演算部
54・・・・・・・公差設定部
55・・・・・・・比較判別部
56・・・・・・・記録表示部
57・・・・・・・マスター座標値更新手段
58・・・・・・・温度センサ
59・・・・・・・温度演算部
60・・・・・・・温度比較部
61・・・・・・・温度差測定器
62・・・・・・・測定値更新指令部
63・・・・・・・時間計測器
64・・・・・・・時間演算部
65・・・・・・・時間比較部
66・・・・・・・時間差測定器
n・・・・・・・・測定の分割数
X・・・・・・・・外径寸法
X1+・+Xn・測定データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド上に設けられ、ワークが載置される回転テーブルと、
前記ベッドに立設されたZ軸テーブルと、
このZ軸テーブルに装備され、任意の位置に位置決め可能な送り機構を介してZ軸方向に相対移動可能なX軸テーブルと、
このX軸テーブルに装備され、任意の位置に位置決め可能な送り機構を介してX軸方向に相対移動可能な案内テーブルと、
この案内テーブル上に配設された高さ寸法測定用のディテクタ、およびフローティング機構を介して配設され、X軸方向に相対移動可能に構成された測定プローブとを備え、
前記X軸テーブルとZ軸テーブル間に、Z軸スケールと、このZ軸スケールに対峙するZ軸検出ヘッドが配設されると共に、
前記X軸テーブルと案内テーブル間に、X軸スケールと、このX軸スケールに対峙するX軸検出ヘッドが配設され、前記測定プローブが、弾性支持部によって支持されていることを特徴とする自動寸法測定装置。
【請求項2】
前記フローティング機構が、直動軸受からなる案内部を介して前記案内テーブルに対してX軸方向に相対移動可能に配設されたフローティングテーブルを備えている請求項1に記載の自動寸法測定装置。
【請求項3】
前記送り機構が、駆動モータと、この駆動モータの回転を軸方向運動に変換し、前記X軸テーブルと案内テーブルとを相対移動させるボールねじ機構とを備えている請求項1または2に記載の自動寸法測定装置。
【請求項4】
前記弾性支持部がコイルばねまたはエアシリンダからなり、前記測定プローブが両側から当該弾性支持部によって挟持されている請求項1乃至3いずれかに記載の自動寸法測定装置。
【請求項5】
前記高さ寸法測定用のディテクタにより予め前記回転テーブルの基準面の面振れデータが演算装置に記憶されている請求項1乃至4いずれかに記載の自動寸法測定装置。
【請求項6】
前記測定プローブを基準面に接触させた状態でZ軸方向に移動させ、前記X軸スケールの変局点が求められる請求項1乃至5いずれかに記載の自動寸法測定装置。
【請求項7】
前記測定プローブを前記ワークに接触させた状態でZ軸方向に移動させ、前記X軸スケールの変化量を読み取り、前記Z軸スケールの読取値とで演算させる請求項1乃至6いずれかに記載の自動寸法測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−85360(P2010−85360A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257354(P2008−257354)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】