説明

自動弁

【課題】 水撃の防止を簡便な仕組みを用いて過流防止をすること、また、弁体開度の設定、調整が簡易な構造で容易に行える。
【解決手段】 本体内を一次側と二次側とに隔壁によって区画して、該隔壁に形成された弁座を閉鎖する弁体を備える自動弁であって、前記弁体は、シリンダ装置内のピストンに連動し、該ピストンは、加圧室の加圧度合いによって変位し、さらに、該加圧室は、前記二次側に接続される二次側配管内へ充水する間、前記加圧室への加圧を逃がす開閉弁を介した逃がし配管を設けることで、簡便に弁体を所定位置に停止させることが可能である。そして、アジャスタを用いることで、簡便にその停止位置を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とくに道路用トンネルなどでの散水システムに用いられる自動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の散水システムについて、例えばトンネルに用いる場合、その長手方向を所定の距離ごと、25mや50mなどに区切って防火区画を設定し、火災発生時にその火点を含む防火区画を特定し、その防火区画の領域全体に散水する。図7にこの場合のシステムを概略的に示す。この散水システムは、貯水槽1の消火水を送水するポンプ2等の加圧水供給源と、この加圧水供給源に接続されてトンネル3内に延びてトンネル3内に加圧水を供給する主配管4と、トンネル3内でこの主配管4に接続された複数の分岐配管5とを備えている。
【0003】
主配管4は、トンネル3内ではいわゆる監査路6内に埋設されてトンネル3内に延びている。そして、各防火区画において、主配管4からトンネル3の側壁に沿って立ち上がり、それぞれの先端にはトンネル3内の所定領域内に加圧水を散水するための放水ヘッド7が接続されている。この放水ヘッド7は防火区画の大きさによって1個または複数の必要な個数が設けられる。分岐配管5には仕切弁8と、その二次側に設けられた自動弁10が設けられている。この自動弁10は、火災時等に開いて放水ヘッド7に加圧水を供給し、鎮火後に閉じて加圧水の供給を停止させるものである。
【0004】
このような自動弁10は、その一例として図8に示すように、弁座12が隔壁13により一次側Aと二次側Bとに区切られた本体14と、弁開口を開閉する弁体15と、弁体15に連結されて図示しないばねで付勢されたピストン17を内部に有するシリンダ18を有し、本弁15の開閉動作を行わせるシリンダ装置とを備えている。一次側Aは、ストレーナ19、遠隔起動弁20、排気弁21を有する加圧流路25を介して、シリンダ18内に配置された加圧室34に連通している。また、加圧流路25は、ニードル弁26および圧力調整装置27を備えて排圧流路35を介して二次側Bに連通している。
【0005】
そして、加圧流路25の遠隔起動弁20を開くと、一次圧がシリンダ18の加圧室34に導入され、ピストン17を押し上げ、弁体15を開動作させる。また、遠隔起動弁20を閉じると、加圧室34の圧力は二次側Bへ排圧され、弁体15が閉動作する。このように、必要に応じて配置された自動弁10の遠隔起動弁20を開閉することで、圧力調整装置27の機能に基づき二次側Bが調圧されながら、火災の発生した区画に対して散水を行うことができる。
【0006】
また、自動弁10の二次側Bから流水検知用圧力スイッチ30、自動排水弁31およびメンテ放水弁32が設けられ、自動排水弁31によって常時二次側Bが空とされ、メンテ放水弁32によって制水弁49の遮蔽時にメンテナンスのための放水動作を行わせることが可能となっている。さらに、圧力調整装置27からの排水流路35は二次側Bと接続されていて、自動弁10の通常の開放時と同様に、メンテナンスのための放水時にも二次側Bの圧力を圧力調整装置27によって検出でき、圧力調整装置27の流量調整機能によって加圧室34の加圧度合いが調整され、さらに弁体15の開度が調整されて、二次側Bは所定圧に調整されることとなる。
【0007】
このような自動弁10において、遠隔起動弁20を開いて弁体15を開動作させるときに、当初は二次側Bおよび二次側配管5b内は空であり、一次側Aの加圧水が一度に流出することになる。このときに流水の勢いが強すぎると、配管や機器に衝撃が加わる、いわゆる水撃(ウォーターハンマ)が発生する。この水撃を防止するため、いわゆる過流防止機能を有する開閉弁(自動弁)が用いられている。
【特許文献1】特開平5−253314号公報
【特許文献2】特開平10−272202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの自動弁は、二次側配管の圧力上昇を検出して、それまで絞っていた自動弁の弁体開度を開放するものであり、弁体の開放を抑制するため自動弁本体への工夫および二次側配管の圧力上昇を検出するための系装配管が複雑化してしまうという欠点があった。
【0009】
したがって、この発明では、水撃の防止を簡便な仕組みを用いて過流防止をする自動弁を得ることを目的とする。
【0010】
また、これらの自動弁に比較して、弁体開度の設定、調整が簡易な構造で容易に行えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、本体内を一次側と二次側とに隔壁によって区画して、該隔壁に形成された弁座を閉鎖する弁体を備える自動弁であって、前記弁体は、シリンダ装置内のピストンに連動し、該ピストンは、加圧室の加圧度合いによって変位し、さらに、該加圧室は、前記二次側に接続される二次側配管内へ充水する間、前記加圧室への加圧を逃がす開閉弁を介した逃がし配管を設けていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、二次側に接続される二次側配管内へ充水する間、加圧室への加圧を逃がす開閉弁を介した逃がし配管を設けることで、簡便に弁体を所定位置に停止させることが可能である。そして、アジャスタを用いることで、簡便にその停止位置を調整することができる。また、逃がし配管の開閉弁の動作は、二次側配管の圧力上昇や充水時間によって制御することができ、さらに、逃がし配管は、加圧室への加圧流路に設けても同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1は、参考例としての自動弁および仕切弁を簡単に示す概略構成図であり、図2は図1の仕切弁の機構を簡単に示す概略構成図、図3は図2の通常状態に対する最終状態を示す概略構成図、図4は図2のハンドルによる全閉状態を示す概略構成図である。
【0014】
図1において、この自動弁10aは、従来の技術の自動弁10と外観上は異なるが実質的に同様の構成を備え、弁座12が隔壁13により一次側Aと二次側Bとに区切られた本体14と、弁開口を開閉する弁体15と、弁体15に連結されて図示しないばねで付勢されたピストン17を内部に有するシリンダ18を有し、本弁15の開閉動作を行わせるシリンダ装置とを備えている。一次側Aから遠隔起動弁20を有する加圧流路25がシリンダ18内に配置された加圧室34に連通し、また、圧力調整装置27を備えた排圧流路35が二次側Bに連通している。また、二次側Bにメンテ放水弁32が設けられている。
【0015】
そして、加圧流路25の遠隔起動弁20を開くと、一次圧がシリンダ18の加圧室34に導入され、ピストン17を押し上げ、弁体15を開動作させる。また、遠隔起動弁20を閉じると、加圧室34の圧力は二次側Bへ排圧され、弁体15が閉動作する。このように、必要に応じて配置された自動弁10の遠隔起動弁20を開閉することで、圧力調整装置27の機能に基づき二次側Bが調圧されながら、火災の発生した区画に対して散水を行うことができる。
【0016】
この自動弁10aの二次側Bには、仕切弁体51を備えた仕切弁49aが設けられ、この仕切弁体51は、常時は半開状態、二次側配管5b内の圧力上昇を検出して全開状態、となり、ハンドル52の操作によって全閉状態とできるものである。この仕切弁49bの機構について、図2から図4を用いて説明する。図2は仕切弁体51の半開状態、図3はその全開状態、図4はその全閉状態をそれぞれ示している。
【0017】
この仕切弁体51は、連動する歯車59によってラックギヤ58の変位で開閉制御され、ラックギヤ58は、加圧室55を有するシリンダ53内のピストン54に連結されている。加圧室55は二次側配管5bの圧力が導入されるようになっていて、通常状態では無加圧である。この場合、図2に示すように、強いばね56とそれより弱いばね57とのバランスによってピストン54が位置決めされ、それに基づいて仕切弁体51は半開状態とされている。
【0018】
火災発生時、自動弁10aが開放制御される。その開放当初、仕切弁49aの仕切弁体51は半開状態であって、自動弁10aから流出する加圧水は、この仕切弁体49aによって流量制限されて、一気に二次側配管5b内に流れ込むことができない。したがって、二次側配管5b内には加圧水が徐々に充水され、水撃は発生しない。
【0019】
そして、二次側配管5b内の圧力上昇に伴って、シリンダ53の加圧室55内も圧力上昇する。加圧室55内が加圧されるとピストン54が弱いばね57を押して移動する。このピストン54の移動に伴い、ラックギヤ58が移動して歯車59を回し、図3に示すように、通常では半開状態の仕切弁体51を全開とする。この仕切弁体51の全開に従って自動弁10aから流出する加圧水は、そのまま流れ込むことになるが、このときには、すでに、二次側配管5b内に充水が進んでいて、水撃は発生しない。このように、この仕切弁49aによって、自動弁10aの開放当初は加圧水の流量を制限しながら、二次側配管5b内に充水が進んだ段階で、加圧水の流量を十分に流すことができる。
【0020】
なお、仕切弁体51の全開状態は、ラックギヤ58の移動過多で再閉動しないように、ストッパを設ける必要があり、ここでは、ハンドル52のシャフト60に当接することで行過ぎを防止している。
【0021】
また、仕切弁49aの閉鎖は、ハンドル52の回動によって、図4に示すように、仕切弁体51を全閉状態とすることができる。すなわち、ハンドル52を回転させると、ねじがきられたシャフト60が移動して、ラックギヤ58を開放方向とは逆側に押して歯車59を回して仕切弁体51を閉鎖させることができる。このとき、ラックギヤ58に連結されたピストン54が強いばね56を押して移動する。
【0022】
つぎに、この発明を利用する第1の実施形態について説明する。図5は第1の実施形態の自動弁を概略的に示す構成図であり、その要部拡大した概略断面図について図6に示す。この自動弁10eは、基本的な構造は、参考例における自動弁10aと同様であり、共通の部材には同じ符号を付け、その機能等は同様であるので、説明を省略する。
【0023】
自動弁10eは、弁体15の所定のリフト量において一度停止し、二次側Bの充水後に弁体15の自由な調圧動作を可能とするものであり、そのため、弁体15の開放動作中に加圧室34の加圧水が未だ低圧の二次側Bに排圧することで、弁体15の変位を一時的に停止させる。
【0024】
すなわち、シリンダ18内のピストン17に連結されたシャフト86内に加圧室34に通じる通孔87を形成し、シリンダ18のボンネット88に設けられた開口89に、二次側Bに通じる配管90を形成して、シャフト86の変位で通孔87がボンネット88の開口89に合わさるときに、加圧室34内を加圧するときに未だ低圧の二次側Bに圧力を逃がし、その位置でシャフト86に連結された弁体15が停止されるものである。
【0025】
この弁体15の停止は、二次側Bからボンネット88の開口89につながる配管90に設けられたパイロット弁91が、二次側Bの圧力上昇によって閉止するもので、このパイロット弁91が二次側Bに十分水が流出したときに閉止して、加圧室34からの排圧を停止して弁体15の自由な調圧動作を行わせる。このとき、弁体15が大きく開放したとしても、二次側Bにはすでに所定の充水が行われた後なので、水撃は発生しない。
【0026】
このボンネット88の開口89の部分を詳細に示したのが図6である。シャフト86は、ボンネット88に設けられたねじ込みにより上下変位調整が可能なアジャスタ92内に貫通され、ボンネット88の開口89は、スペース94を介して連通される開口93を用いることで、アジャスタ92とともに開口93を上下に位置調整することができる。これにより、シャフト86の停止する位置、すなわち、ピストン17および弁体15が停止する位置を調整することが可能である。したがって、現場において、水撃の起こらない範囲を調査して、弁体15をなるべく大きく開ける位置で停止させるような設定が可能となる。
【0027】
また、この第1の実施形態の変形例として、配管90をシリンダ外周部分に直接設けて加圧室34に連通するように構成してもよい。この場合、ピストン17の位置によって加圧室34が二次側Bに連通するようになるが、このときのアジャスタは、図示しないが弁体15のスカート形状に形成すればよく、弁体15の外周からの突出量によって、弁体15の停止位置を上下に調整することができる。
【0028】
なお、パイロット弁91の閉止動作について、二次側Bの圧力上昇によるものを示したが、それに限らず、例えばタイマー機能を有した電動弁によって閉止してよく、すなわち、弁体15が停止している間に、二次側Bに十分充水できたことを圧力上昇なり時間なりで判別して閉止するように構成すればよい。
【0029】
また、第1の実施形態の第2の変形例として、加圧室34内の圧力を排圧する構成として、上記第1の実施形態および変形例の如く加圧室34から排圧せず、加圧配管25から圧力を抜いてもよく、十分に加圧室34を加圧しないことで、弁体15の開放を緩慢に行わせる。そして、二次側Bの圧力上昇等による所定の充水を上記の如く判別して二次側Bへの排圧を停止すればよい。
【0030】
上記各形態において、各自動弁10a、eは、いわゆる弁座一次側、水平配置で加圧開放型の制御を行う構造を用いているが、弁座二次側でも、本体の向きがどこであっても構わず、制御方式も減圧開放型であってよい。そして、圧力調整装置についても、いわゆるレギュレータ型あるいはエキゾースタ型などのいずれの方式であってもよい。
【0031】
以上のように、第1の実施形態では、本体内を一次側と二次側とに隔壁によって区画して、該隔壁に形成された弁座を閉鎖する弁体を備える自動弁であって、前記弁体は、シリンダ装置内のピストンに連動し、該ピストンは、加圧室の加圧度合いによって変位し、さらに、該加圧室は、前記二次側に接続される二次側配管内へ充水する間、前記加圧室への加圧を逃がす開閉弁を介した逃がし配管を設けることで、簡便に弁体を所定位置に停止させることが可能である。そして、アジャスタを用いることで、簡便にその停止位置を調整することができる。また、逃がし配管の開閉弁の動作は、二次側配管の圧力上昇や充水時間によって制御することができ、さらに、逃がし配管は、加圧室への加圧流路に設けても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】参考例を示す概略構成図。
【図2】図1の仕切弁を示す概略構成図。
【図3】図2の全開状態を示す概略構成図。
【図4】図2の全開状態を示す概略構成図。
【図5】この発明の第1の実施形態を示す概略構成図。
【図6】図5の要部を拡大した概略構成図。
【図7】従来の散水システムを示す概略系統図。
【図8】図7の自動弁を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0033】
10a、e自動弁、89 開口、90 配管、91 パイロット弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内を一次側と二次側とに隔壁によって区画して、該隔壁に形成された弁座を閉鎖する弁体を備える自動弁であって、
前記弁体は、シリンダ装置内のピストンに連動し、該ピストンは、加圧室の加圧度合いによって変位し、さらに、該加圧室は、前記二次側に接続される二次側配管内へ充水する間、前記加圧室への加圧を逃がす開閉弁を介した逃がし配管を設けていることを特徴とする自動弁。
【請求項2】
逃がし配管は、ピストンに連動するシャフト内に設けられた加圧室に通じる通孔と、変位調整可能なアジャスタに設けられた前記逃がし配管につながる開口と、を利用して、前記ピストンが変位するときに、前記通孔および開口が合わさるときに前記加圧室の加圧が前記逃がし配管から逃げる請求項1の自動弁。
【請求項3】
逃がし配管の開閉弁は、二次側配管の圧力上昇または自動弁の弁体開放から所定時間で閉止する請求項1または2の自動弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−20073(P2008−20073A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240020(P2007−240020)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【分割の表示】特願2001−137934(P2001−137934)の分割
【原出願日】平成13年3月31日(2001.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】